【小説】晴らせぬ怨み晴らします

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1名無しさん@実況は禁止です@転載は禁止
〜安政某年〜



今日もお江戸は日本晴れ女だてらに悠々と町を闊歩する女針医師渡辺麻友

「どうも、女将さん腰の按配は如何ですか?」
行きつけの蕎麦屋の暖簾をくぐり麻友は案内も請わずにずけずけと店内の一番奥の座りなれた席に座る。

「これはこれは渡辺先生、おかげさまですっかりとよくなりましたよ」
五十年配の人の好さそうな女将が茶を持ち現れる。

「いやいや、簡単に安心して治療を疎かにするとすぐにまた腰が悲鳴をあげるんですからちゃんと通院はしてもらわないと困りますよ」

麻友は温和な微笑みを浮かべているが女将はすっかりと恐縮してしまっている。
それもそのはず以前女将は麻友の忠告を聞かず治療を疎かにして腰を悪化させてしまいその笑顔を豹変させてしまったのが五十年以上生きてきた中で最も恐怖を感じた時であったのだ。

蕎麦を食べ終わり満足気な顔で勘定をすませ麻友は自宅兼診療所のある浅草へと帰っていく。


一見ドコにでも居る面倒見のいい町医者、しかし彼女にはもう一つの顔があった。
2川波正次郎 ◆Y7FjQgxfdo @転載は禁止:2014/09/11(木) 21:55:11.26 ID:jsNv21n90
此処は浅草に程近い日本堤、付近を吉原、泪橋と江戸の二大苦界と呼ばれる界隈に囲まれた町だが吉原の遊女達に贔屓にされている腕の立つ職人が多く店を構えている。

破落戸長屋に店を構える石田屋、吉原の太夫達も懇意にしてる染め物屋だ。

「旦那、旦那ーー」 ドタンッガシャガシャ
けたたましい音と共に石田屋に駆け込んできたのは庶民的な着物に身を包んではいるが華やかさが醸し出されている美しい町娘だ。
「もぅ、わたしは女だよ、旦那はやめておくれよ」
そうはいいつつも満更でもない様子である。
仕上げ中の染め物の桶から娘の方に顔を向けるのは小柄な体つきだが整った顔立ちと鋭くも意志を持った眼差しが印象的なまだ乙女ともいえる職人だ。

染め物石田屋の晴香、年に二度は自らの足で長崎まで出向き阿蘭陀から入ってくる南蛮渡来の染料を仕入れて、何処にも真似のできない石田屋しか出せない色を出すのはこの界隈では有名だ。

もう一つ有名なのは彼女の頑固さだ。

〜昨年の夏〜

とある直参旗本の娘が石田屋の噂を聞きつけ浴衣の染め上げを注文しにきた。
しかし石田屋は常にお得意様の注文が立て込んでいるのでとてもではないがこの夏に着る浴衣の染め上げなど間に合わない。
晴香は事情を説明し今回は他所を当たってほしい旨を穏便に伝えた。
それに激昂した旗本の娘が石田屋に乗り込んできた。

「わらわの注文を受けられないとは随分と尊大な職人であるな」
絵に描いたような性悪な武家娘である、これにも晴香は冷静に対応する
「いえ決して姫様のお仕事が嫌な訳ではございません、今抱えてる仕事を蔑ろにするわけにいきませんので今回は他所を当たっていただきたいんです」
更に血相を変えた娘が続ける
「聞けばこの店の客は吉原の遊女達ばかりというではないかそんな人非人の注文など捨ておけばよかろうに、金なら遊女どもの倍出してやろう」
この言葉に晴香は抑えていた箍が一気に外れてしまった。
3名無しさん@実況は禁止です@転載は禁止:2014/09/11(木) 21:55:52.88 ID:mddycTVe0
しょうゆ
4川波正次郎 ◆Y7FjQgxfdo @転載は禁止:2014/09/11(木) 22:11:10.76 ID:jsNv21n90
ガシャン!!

桶をひっくり返し作務衣の腕をまくり娘に詰め寄る晴香、普段の冷静な態度とは一変している。
「ふざけんじゃないよ、誰が人非人だって?アンタみたいな武家のお姫様にゃ分からないだろうけどね苦界に身を置く女達は必死に生きてんだよ」

語気を荒げて捲し立てる晴香に旗本の娘はすっかり気圧されてしまってる。
「いいかいわたしにとっちゃねお客に貴賤なんかありゃしねぇ、わたしの染め物を求めてくれるそれだけでわたしにとっちゃ皆仏様よ」

そして一段と語気を強めて晴香は言う。
「アンタみたいな女相手にしちゃ私の仏様方に申し訳ないよ!!」
台所から升に山盛りにされた塩を持ち出し旗本の娘に投げつける娘は生まれてこの方こんな仕打ちなど受けた事もなく狼狽するばかりであった。

この話を聞いた吉原の遊女達は皆、涙を流し晴香の元を訪れた。
「旦那、アンタは世間から人として認められてねぇあたしらを仏様と言ってくれるんだね」
「あたしらにとっちゃ旦那が仏様だよ」とありがたがれる始末。
ちなみに晴香が旦那と呼ばれるようになったのはこの一件の気風のよさからであった。


「で、今日はなんの御用だい? 仕事ならもう今年いっぱいは手が空かないよ」
出された番茶を啜りながら町娘が言う
「いやさぁ今日はもう一つの仕事の方だよ」
娘は悪戯っぽく片目を瞑る。
「渡辺先生からの仕事かい、仏様でなく先生様からのお呼び出しじゃぁ応じない訳にいかないねぇ」

饅頭を頬張りながら立ち上がる娘は振り向き様続ける
「じゃあ、今夜いつもの庫裡に先生もいらっしゃるんで宜しくね、旦那」
晴香は語気を荒げて切り返す。
「だーかーらーわたしは女だってーのいい加減にしな」
ピシャリッと閉められた引き戸の向こうから大声が帰ってくる。
「旦那は旦那でしょ私が嫁なんだからさおまえさん」
大きな溜息をつきながらも満更でないような晴香であった。

「さぁてと、薬の方はまだ在庫はあるはずだよな」
そう呟くと染料の詰め物の棚の奥から取り出した横文字の書かれた瓶を確認した。
5川波正次郎 ◆Y7FjQgxfdo @転載は禁止:2014/09/11(木) 22:12:36.59 ID:jsNv21n90
五街道の起点として江戸で最も賑わう日本橋。
幕末の混乱により脱藩浪士、逃散百姓などが諸国から多く流れ込んで来て
混沌とした世相と合いまった風景が醸し出されている。

日本橋小伝馬町の両替商近江屋は慶長年間に創業した老舗の両替商である。

一口に両替商と言っても小判、丁銀を銭貨へと両替を行う三組両替
銭貨の売り買いや酒屋、質屋等を兼業する番組両替
といった小規模な両替商は此処江戸をはじめ全国津々浦々に点在している。


この近江屋はそんな数多ある両替商とは格が違う。
江戸市中でも十六人しか居ない金融業を扱う本両替の筆頭格である。
所謂大名貸しや旗本の禄米の現金化等である意味武家よりも権力を持った豪商である。
けたたましい喧噪の近江屋の店内、その中でひときわ動き回り忙しく働く娘がいた。

「いつも有難うございます」平身低頭お客への対応をしていたかと思えば
「ウチがやるけんまかせてください」と男衆がやる大荷物の運び出しまで
"出来ませんは言いません"と彼女の口癖の通り誰よりもよく働いた。
6川波正次郎 ◆Y7FjQgxfdo @転載は禁止:2014/09/11(木) 22:13:43.30 ID:jsNv21n90
娘の名前は志津香、豊前出身の奉公人である。
所謂口減らしで幼少の頃から福岡城下の旅籠に奉公に出ていたが
十六の春にたまたま近江屋の若旦那の茂吉が長崎へ向かう旅路の途中立ち寄った福岡城下での宿で志津香に出会い
彼女の健気さや仕事への取り組みを見て旅籠から身請けし、江戸へ連れ帰った。

勿論近江屋の主人勘平は何処の馬の骨とも知れぬ芋娘を連れ帰った事に大変激昂した。
しかし茂吉は決して美人といえる訳ではない志津香に惚れたのはその仕事に対する姿勢と綺麗な心根に惚れたのだ、
一緒にさせて貰えないのならば二人で駆け落ちするとまで言い勘平に詰め寄った。
これには勘平も閉口し向こう五年間近江屋での下働き奉公に耐えれれば二人が夫婦になるのを認めると約束した。


間もなくその約束の五年が来る茂吉と志津香はその日を心待ちにしている。
しかし勘平はあせっていた、
五年も馬車馬のようにこき使えば逃げ出すであろうと踏んでいたのだ、
さぁどうしたもんかと悩む勘平。

そんな勘平によからぬ知恵をつける輩がいた。

志津香の悲劇の幕がゆっくりと上がっていく。
7名無しさん@実況は禁止です@転載は禁止:2014/09/11(木) 22:13:52.59 ID:/f5ZMqSIO
読みにくい
8川波正次郎 ◆Y7FjQgxfdo @転載は禁止:2014/09/11(木) 22:14:47.13 ID:jsNv21n90
三ノ輪町の甘味処みかさ亭

日光街道に面したこじんまりとした店構えだが自家製の白玉が人気で
老若男女問わない客で常に店内は賑わっている。

日光街道を足早にみかさ亭へと向かう志津香の姿があった。
普段は時間より早く現れ決して人を待たせる事をしない志津香が何故急いでいるのか。

今日は久し振りに暇を貰い出かけれる日だったが出がけに店に荷が届いたのに気づいた志津香はそれを放っておけず荷の運び込みを手伝っていた。
「ごめん待たせてもうたね、怒っとらん?」店に入るなり平謝りだ。
「全然、しぃちゃんも座って早く注文しよう」と志津香がワケも無く遅れるはずはない事を承知してる娘は気にもとめない。その娘は先日石田屋に現れた娘であった。
9川波正次郎 ◆Y7FjQgxfdo @転載は禁止:2014/09/11(木) 22:16:12.85 ID:jsNv21n90
何でも屋のれいな江戸市中を練り歩きよろず頼み事を引き受ける娘だ。

石田屋の御用聞き、針医師渡辺麻友の助手まがいの仕事、
志津香のような諸国から流れてきた娘たちを親身になって面倒を見たりと何でも屋の看板に偽りはない商売をしている。

更にその何でも屋の人脈と情報網を活かした裏の仕事も抱えている。
各盛り場の顔役も彼女には一目を置いているそして渡辺や晴香と行う裏の仕事。

しかし志津香との関係だけは仕事を抜きの親友として付き合っている。

昨夜も人に言えない裏街道の仕事をこなしてきた自分には志津香の明るく綺麗な心根が癒しになり本来の自分を忘れただの娘に戻れる時間だった。
10川波正次郎 ◆Y7FjQgxfdo @転載は禁止:2014/09/11(木) 22:18:18.62 ID:jsNv21n90
「あとひと月で五年経つけん、とうとう茂吉さんと夫婦になれるとよ」
満面の笑みで語る志津香にれいなも心底嬉しそうな表情になる。

「あぁうらやましいな、わたしも誰かいい人見つけたいよ」
そう愚痴るれいなに志津香は悪戯っぽい表情で返す。
「なに言うとうと、れいなにはちゃんと旦那が居るんやけん浮気はアカンよ」

普段かられいなが語る旦那と呼ばれる人物、志津香はまだ会ったことはないが彼女の話を聞くかぎりでは気風がよくさっぱりとしたいい男であろうと想像してた。

「イヤイヤ、旦那っていってもさぁ、そのあれだからさぁ」歯切れの悪いれいな、まさか旦那と呼んでるのが日本堤の女職人だとは今更言えやしない。

「ま、その話は終わりにして、師匠のとこ行きましようよ」
そう言うと勘定をすませ二人連れ立って通っている琴の師匠のもとへと向かう竜泉に居を構える美しい師匠を二人とも敬愛しているのでたまの休みに手ほどきを受けるのが一番の楽しみである。


きっとこの何気ない日常が繰り返されると信じて疑いもしていなかった。
11川波正次郎 ◆Y7FjQgxfdo @転載は禁止:2014/09/11(木) 22:19:52.66 ID:jsNv21n90
夕刻、昼間の喧噪も過ぎ去り人もまばらな日本橋界隈。

「じゃあねしぃちゃんまた次のお休み一緒に師匠のトコいこうね」
近江屋のある小伝馬町に入る分かれ道でれいなが声をかける。

志津香はあらたまった表情でれいなをじっと見つめる。
「どうしたのしぃちゃん、わたしの顔になんかついてる」

意を決したように志津香が喋りだす
「れいな、ウチが江戸に来てからずっとれいなが面倒見てくれたね」

いきなり涙交じりに語りだす志津香にれいなは狼狽するばかりだ
「どうしたのさいきなり、友達なんだから何も特別な事してないよ」
12名無しさん@実況は禁止です@転載は禁止:2014/09/11(木) 22:20:01.55 ID:2IR1dITk0
絶望的にセンスが無い
13名無しさん@実況は禁止です@転載は禁止:2014/09/11(木) 22:21:42.54 ID:UnRIffFN0
【小説】は恥ずい・・・

【作文】にしてください
14名無しさん@実況は禁止です@転載は禁止:2014/09/11(木) 22:21:46.67 ID:z5xmw1J4i
誰だ荒らしてる奴は
15名無しさん@実況は禁止です@転載は禁止:2014/09/11(木) 22:22:31.49 ID:Mm5rAFPz0






16川波正次郎 ◆Y7FjQgxfdo @転載は禁止:2014/09/11(木) 22:22:53.24 ID:jsNv21n90
「九州の田舎から出てきた芋娘で、方言も直せんで、お店では茂吉さん以外みんなウチの事厄介者扱いで正直何度も逃げ出したくなったんよ」
堰を切ったようにあふれる涙とともに志津香は語る。

志津香の苦悩はれいなもよく知っていた、元々志津香と懇意になったのも彼女が一人上野の不忍池のほとりで声をひそめ泣いていた時にれいなが声をかけたのが始まりだった。

「れいなが居ってくれたけんウチは今まで逃げ出さんで居れてんホンマ感謝してもしきれんわ」しきりに頭を下げる志津香にただ閉口するだけだ。

感謝、自分こそ志津香にはどれほど救われたか。
きままな町娘を演じてはいるが裏の顔を持つ自分がすべてを忘れられるのは彼女と居る時だけだそんな親友の涙にもうとうに枯れ果てたと思っていた涙が頬を伝う。

「いい、しぃちゃん絶対幸せになるんだよ、そうじゃないと私が許さないんだからね」
「ありがとう、ありがとう・・・・」
オウム返しのようにただそう繰り返す志津香。

心の底から彼女の幸せを夕日に向かって祈った夕刻だった。


その頃近江屋で恐ろしい計画がすでに始っているとは二人とも夢にも思っていなかった。
17川波正次郎 ◆Y7FjQgxfdo @転載は禁止:2014/09/11(木) 22:23:52.58 ID:jsNv21n90
〜三日前〜

家人の寝静まった夜半奥の間で主人の勘平と若旦那の茂吉が膝詰で話す姿があった

「なぁ茂吉よ本気であんな芋娘を嫁に迎えるつもりか」
いかにも尊大な商人といった感じの勘平が茂吉に向かい言い放つ。

「父上、まだ志津香のことを認めて頂けないのですか志津香こそ我が生涯の伴侶と心に決めて居ると幾度も父上には伝えているはずです」
精悍な若者である茂吉の迫力に勘平は気圧されるばかりである。

茂吉は町人ながら九段坂の練兵館で神道無念流の目録を授かった腕前で年老いた勘平と迫力が雲泥の差である。

しかし彼の心の奥にある野心を勘平はちゃんと知っていた。
「実はなさる旗本の殿様がなお前を婿養子として迎えたいと仰ってくださってる」

茂吉の顔色が変わった、町人ながらに幼少から剣術を学んでいたのは彼の心中に武士への憧れがあったからである。
「そ、それは真でありますか」
18川波正次郎 ◆Y7FjQgxfdo @転載は禁止:2014/09/11(木) 22:24:51.57 ID:jsNv21n90
幕末当時、幕府の財政の困窮と共に旗本八万騎の窮状もひどいものだった。

商家への借金、家伝の名刀を質に入れる、御家人株を売り払い帰農するものまで出る始 末ですっかり武家の価値も下がってしまっていた。
市中の豪商の倅を養子に迎えその財力を得ようとする旗本もかなり居た。

しかしそんな事は関係なくまだまだ武家への憧れを持つ町人は掃いて捨てるほど居るので売り出された御家人株などはすぐに売れてしまう。
恐らく幕末の最後まで幕府は安泰と信じて疑わなかったのは江戸の市民だけであろう。

茂吉も自分の代になれば御家人株を買い武士になろうと密かに決めていた。
だが御家人株を買い直参になったものなど所詮は金満侍、成り上がり侍と揶揄され、幕府の要職に就くことも適わないと聞かされている。

しかし婿入りとなれば話は全然違う、請われて武家に入れる、そう思うと天にも昇る気分だ。
「茂吉よそうなればあの芋娘邪魔でしかないのう」
「みなまで言わんでください、ケジメは自分でつけます故」

そこに居るのはもう誠実な若旦那でなく欲にかられた醜い魍魎であった。
19名無しさん@実況は禁止です@転載は禁止:2014/09/11(木) 22:28:20.41 ID:E5WbxoDwi
杉上ID変えても分かるぞ
20川波正次郎 ◆Y7FjQgxfdo @転載は禁止:2014/09/11(木) 22:39:16.59 ID:jsNv21n90
「ただいまかえりました」

勝手口から屋敷に入る志津香に茂吉が声をかける。

「志津香まだ宵の口だ、少々二人で出掛けないか」
「はいもちろんです」

二人で出掛けるなど久し振りなので志津香は大喜びだ。

もうとっぷり暮れた町を抜け浅草寺まで足を伸ばす二人。

「茂吉さんウチは幸せですこんな女をここまで想ってくださる方に会えて」
「あ、ああ・・・・・」

自分が今からしようとしてる事を考えると心が痛まないと言えばウソになる。

五年間思い続けた志津香の存在より自分の立身出世は意味の有るものなのだろうか?
やはりすべてを捨ててでも志津香と二人江戸を出ようかとも父との密談をかわしたあとも考えはした。
21名無しさん@実況は禁止です@転載は禁止:2014/09/11(木) 22:54:29.61 ID:o4GJZuqU0
スレタイが一瞬小保方晴子関係かと思った
22名無しさん@実況は禁止です@転載は禁止:2014/09/11(木) 22:57:54.01 ID:7+VphWaIi
いい加減にしろ杉上
23川波正次郎 ◆Y7FjQgxfdo @転載は禁止:2014/09/11(木) 23:04:23.81 ID:jsNv21n90
しかし昨日茂吉の元に京都から届いた手紙で決心は固まった。

送り主は同門神道無念流免許皆伝の松前脱藩浪士、現新撰組二番隊組長永倉新八 であった永倉とは練兵館に通った頃共に切磋琢磨をした盟友である。

茂吉を決して下に見ることなく同門の士として遇してくれたただ一人の武士であった。
本来は免許皆伝の腕前であった茂吉が目録止まりなのも町人に皆伝を与える事を師範代が反対したためだが永倉は最後まで茂吉を正当に評価せよと訴え続けた。

そんな彼からの手紙にはこうあった
「近く局長近藤氏の肝煎りで江戸で隊士募集を行う、ついては貴殿にも是非大公儀のために身を捧げて頂きたく候」

新撰組など所詮諸国の浪士の集まりの烏合の衆、江戸市民はそれぐらいの見方しかされていなかった。
しかし茂吉は旧知の永倉が幹部を務めることと勤皇討幕の声が高まるこの時勢に佐幕の急先鋒を走る新撰組を敬愛していた。

旗本の婿養子となり直参となれば新撰組への評価の低いこの江戸で永倉に十分な助力ができるであろうと心に決めた。
24川波正次郎 ◆Y7FjQgxfdo @転載は禁止:2014/09/11(木) 23:13:03.11 ID:jsNv21n90
浅草寺境内から奥に入り人影もない林の中この奥にある庵で二人は時々家人の目を忍び逢瀬をしていた場所であるのでここに誘われたことに志津香は微塵の不審も感じてない。

「茂吉さん、ウチはなんでもするけんどうかずっとお側に置いてください」

「その言葉偽りないな」

そう言うと庵の奥に隠してあった太刀を取り出し鞘を払う。

『ズバッ』

鈍い音が響き自分の肩口から下腹にかけて焼けるような痛みが走る。

「え・・・・・」

何が起こったのか理解できない志津香、止めどなく溢れる鮮血。
こんな量の血など生まれてはじめてみたな、へー血ってこんなに綺麗な赤なんだ。
そんな止めどもないことばかりが志津香の頭の中をよぎっていく。

「俺の為になんでもすると言ったな、その言葉どおり俺の為に死んでくれ」

後ろも見ず音も立てずに庵から出ていく茂吉何の後悔も懺悔もない醜悪な表情であった。

志津香は自分が斬られたと理解できたのは茂吉が庵を出て行ってからだった。
25名無しさん@実況は禁止です@転載は禁止:2014/09/11(木) 23:23:19.34 ID:dl11t7Zg0
読んでるよ〜続き楽しみにしてる!
26川波正次郎 ◆Y7FjQgxfdo @転載は禁止:2014/09/11(木) 23:27:19.03 ID:jsNv21n90
「でねぇしぃちゃんったら可愛いんだから」

「そうですか、しかし祝言が楽しみですね」

浅草と日本堤の中間に位置する竜泉、吉原に隣接する立地から吉原の太夫、花魁などが教養を身に付ける為に通う稽古場が多数ある。

れいなと志津香の琴の師匠お咲、二人を実の妹のように可愛がっている。

女性にしては長身で一見華奢にみえるが琴という楽器は想像以上の握力を要するものであるのでそこらの男衆よりはよっぽど腕力もある。

二人は志津香の幸せな未来に想いを巡らせ話は尽きない。

『ガタンッ』

玄関からこんな夜半に戸を開ける音が響いた。
27名無しさん@実況は禁止です@転載は禁止:2014/09/11(木) 23:34:48.39 ID:qGvyyP8U0
C
28川波正次郎 ◆Y7FjQgxfdo @転載は禁止:2014/09/11(木) 23:36:26.52 ID:jsNv21n90
「こんな時間になんでしょうね、ちょっと見てきますね」
気軽に立ち上るれいなをお咲は諌める
「だめですよれいなさん、こんな時間に一人で表にでるなんて」


『きゃあー』

れいなの叫び声が玄関口から響く。

そこに居たのは変わり果てた姿の志津香であった。
着物は無残に袈裟懸に斬られ、おびただしい量の血で染められている。
健康そのものでいつも笑顔を絶やさなかった顔は血の気もなく蒼白だった。

「しぃちゃんなにがあったの」
「あ、れいなも居るん、よかった最期に会えて」
「なに言ってるんですか、早くお医者さまに見てもらわなきゃ」

もう誰の目に見ても手遅れなのは解りきってるが認めたくないお咲は言う。

志津香は必死に懐をまさぐり使い古した巾着を取り出す。

「これを故郷のおとっつあんとおっかさんにお願い、何もしてあげれんかったけんせめて最期にこれくらい」
「最期なんて言わないで、ねぇ誰にやられたのまさか茂吉さんなの」
「茂吉さんは何も悪くないとよ、悪いんは身の程わきまえんで夢を見てたウチやけん」
「夢を見る事の何が悪いんですか、女なら誰でも惚れた男と添い遂げたいもんじゃないですか」
「れいな、師匠さんウチ、幸せやったよ、二人に会え・・・・」

その後の言葉が続くことはなく、志津香は物言わぬ亡骸となった。
29名無しさん@実況は禁止です@転載は禁止:2014/09/11(木) 23:40:43.36 ID:Hv0qnkTI0
小野晴香に見えた
30川波正次郎 ◆Y7FjQgxfdo @転載は禁止:2014/09/11(木) 23:44:34.79 ID:jsNv21n90
明日仕事早いんで今夜はこれくらいにしときます
31名無しさん@実況は禁止です@転載は禁止:2014/09/11(木) 23:46:34.27 ID:rKzbt/YD0
32名無しさん@実況は禁止です@転載は禁止:2014/09/11(木) 23:50:01.65 ID:DDjMtSTd0
>>30
おつやで
おもろいからゆっくり読みたいんで
マイペースでええと思ってる
33名無しさん@実況は禁止です@転載は禁止:2014/09/12(金) 00:28:39.75 ID:meGytqkf0
おつおつ
34名無しさん@実況は禁止です@転載は禁止:2014/09/12(金) 01:02:18.92 ID:DwBDtDWh0
乙!
明日の更新楽しみにしとくわ
35名無しさん@実況は禁止です@転載は禁止:2014/09/12(金) 06:07:46.44 ID:W3AyBk4M0
ほしゅ!
36名無しさん@実況は禁止です@転載は禁止:2014/09/12(金) 08:13:40.89 ID:8ZTfMl7pi
あげるよ
37名無しさん@実況は禁止です@転載は禁止:2014/09/12(金) 09:45:41.28 ID:wbPt1sFri
AKB小説・乃木坂小説を語るスレ★1
http://mastiff.2ch.net/test/read.cgi/akb/1410478541/
38名無しさん@実況は禁止です@転載は禁止:2014/09/12(金) 11:45:02.32 ID:zs1axjlwi
作者はおっさんか?
39名無しさん@実況は禁止です@転載は禁止:2014/09/12(金) 13:07:19.82 ID:mAERpX4Z0
ほすほす
40名無しさん@実況は禁止です@転載は禁止:2014/09/12(金) 13:42:54.29 ID:BL599JzNi
元ネタ知らないとキツイやつが沢山あるからな
どう描くか楽しみだ
41名無しさん@実況は禁止です@転載は禁止:2014/09/12(金) 17:18:56.85 ID:/LZis6Yf0
633やからな保守っとく
42名無しさん@実況は禁止です@転載は禁止:2014/09/12(金) 19:10:18.99 ID:rb/YeaRP0
小説()
43川波正次郎 ◆Y7FjQgxfdo @転載は禁止:2014/09/12(金) 19:39:03.93 ID:W5dCb6gN0
保守ありがとうございました
続けます

「しぃちゃーん」
れいなとお咲の悲痛な泣き声が家の中に響き渡る。

れいなは泣いた、赤子のようにただ声をあげて泣き続けた。
裏稼業で人の生き死になどもう見慣れたモノのはずなのに、人の死がこれだけ心を掻き毟るモノだと久し振りに思い出した。

どれだけ泣いたのだろうか、やがてれいながポツリと呟いた。

「師匠、しぃちゃんのお弔いお願いできますか、わたしはこの金子しいちゃんのご両親に届けますんで」
「え、でもれいなさん志津香さんのご両親をご存じで」
「ワタシに任せておいてください、全て片付けますんで」

れいなの初めて見せる冷酷な表情に背筋の凍るお咲。
闇に消えていくれいなの後ろ姿をただ見送ることしかできなかった。
44川波正次郎 ◆Y7FjQgxfdo @転載は禁止:2014/09/12(金) 20:12:44.96 ID:W5dCb6gN0
〜谷中霊園の片隅にある朽ちた庫裡〜

一本の蝋燭だけの灯りに照らされ密談を交わす三人の人影。

針医師渡辺麻友、石田屋の晴香、なんでも屋のれいな、江戸の裏世界に名を轟かせる晴らせぬ怨みを晴らす闇の仕事人とは彼女たちの事だ。

「で、お嬢今回の起こりは誰なんだい」

晴香が尋ねる起こりとは裏世界での依頼人の隠語である。

「起こりは近江屋の奉公人の志津香、殺るのは近江屋主人勘平、若旦那茂吉、それに近江屋に旗本の婿入りの斡旋をした音羽の顔役三郎太」

れいなの調べにより音羽の三郎太が勘平に入れ知恵をして婿入りを斡旋し、茂吉の志津香惨殺の段取りもした事がわかった。
45名無しさん@実況は禁止です@転載は禁止:2014/09/12(金) 22:40:00.30 ID:/Zw2OSQO0
46名無しさん@実況は禁止です@転載は禁止:2014/09/13(土) 00:21:01.57 ID:0C5AvLX/i
今日は終わりか?
47名無しさん@実況は禁止です@転載は禁止:2014/09/13(土) 02:24:53.47 ID:vhMuAmAo0
48名無しさん@実況は禁止です@転載は禁止:2014/09/13(土) 04:10:00.81 ID:U+evVeIoi
しっかり更新していかないと落ちるで
49川波正次郎 ◆Y7FjQgxfdo @転載は禁止:2014/09/13(土) 07:00:25.79 ID:Gb57x9pF0
それまで無表情に話を聞いていた麻友が口を開ける。

「しかしなんでも屋、志津香さんは既に亡くなられています、その方の怨みというのはお角違いではありませんか」
確かにもう死んだ人間から依頼というのはあり得ない、麻友の言う事はもっともだ。

「あの子の事は私が一番知ってる、いつも一緒に居たんだもんどうかあの子の怨みを晴らしおくれよ」
れいなは必死に麻友に反論する。

「しかしお嬢も分かってるでしょアタシらの掟、起こりの無い仕事はご法度だとそれを破ったモノをウチらで粛清したこともあたんだから」
「旦那そんな事分かってるよ、ただのワタシの私怨じゃ無いよ、しいちゃんから預かった金子も有るんで頼み料も有るんだし」
懐から志津香から託された巾着を取り出し三人の車座の中央に位置する三方載せる。

「志津香さんの性格を考えるとこの金子は親御さんへと貴方に言い遺したんではありませんか」
全てを見透かしたような目でれいなを見つめる麻友が言う。

「確かに先生のおっしゃる通りですがこの話を聞けばしぃちゃんの親御さんもきっと」
「きっとでは駄目です、確かな起こりが無いからには仕事は行えません」
れいなの必死の抗弁も麻友には暖簾に腕押しのようである。

しばらく沈黙の続く庵の中に不意に声が響く。

「その起こりというモノに私が成らせて頂いてよろしいですか」

闇の中から唐突に聞こえた声に三人は息を呑む。
50名無しさん@実況は禁止です@転載は禁止:2014/09/13(土) 07:09:25.95 ID:A0dQDxaqO
>>48
落とせよ馬鹿野郎
51川波正次郎 ◆Y7FjQgxfdo @転載は禁止:2014/09/13(土) 07:14:27.26 ID:FioR+qPVi
闇の中から姿を現したのは竜泉のお咲師匠であった。

「師匠なんでここに・・・」
疑問をぶつけるれいなに構わず話続けるお咲

「かねてより江戸には晴らせぬ恨みを晴らしてくださる方がおられると聞き及んでんおりました私の妹も同然だった志津香さんの無念どうか晴らしてください」

お咲の言葉に麻友が応える。
「しかしねお師匠さん、志津香さんは今わの際に若旦那を恨んでないと仰ってましたよね、志津香さんの恨みというにはお門違いですよね」

麻友の冷徹な言葉に怒りがこみ上げると同時にふと疑問を持った。
52名無しさん@実況は禁止です@転載は禁止:2014/09/13(土) 07:16:57.13 ID:5Fpw/KGB0
>>50
そうはいくかよ馬鹿野郎www
53川波正次郎 ◆Y7FjQgxfdo @転載は禁止:2014/09/13(土) 07:17:45.51 ID:FioR+qPVi
昨夜はいきなり仕事に呼び出されてあんまり更新出来ませんでした申し訳ないっす
まだ出先ですがトリップ発掘出来たんでiPhoneからも書き込めるから時間見つけてちょこちょこ更新します
54名無しさん@実況は禁止です@転載は禁止:2014/09/13(土) 08:54:51.11 ID:5gVkcLdEi
>>53

まあ大変だろうが頑張れ
55名無しさん@実況は禁止です@転載は禁止:2014/09/13(土) 13:20:18.15 ID:wA5jRxJYi
終了
56名無しさん@実況は禁止です@転載は禁止:2014/09/13(土) 14:34:35.16 ID:7Kh24V1I0
保守
57名無しさん@実況は禁止です@転載は禁止:2014/09/13(土) 14:40:30.03 ID:U7fToEFIi
危なかったな作者
58川波正次郎 ◆Y7FjQgxfdo @転載は禁止:2014/09/13(土) 15:12:04.71 ID:FioR+qPVi
「先生、なんでしいちゃんの今の際の言葉を知ってるんだい、一体いつ聞いたんだい、まさかウチらの周りに草を撒いてるのかい」
語気を荒げて麻友に詰め寄るれいなの目は鋭い。
ちなみに草とは密偵の隠語のことである。

「落ち着きなよお嬢、先生がそんな人だと思ってるのかい、あの日先生はねアンタと志津香ちゃんの為にとウチに染め上げを頼んだ揃いの単衣を持って行ってたんだよ」
晴香がれいなを諌める。

「そ、そうだったんですか、先生の気持ちも知らず失礼しました」
信頼してた筈の仲間を簡単に疑ってしまった事、そして自分の親友をそこまで気に掛けてくれていた麻友に素直に詫びるれいな。
59名無しさん@実況は禁止です@転載は禁止:2014/09/13(土) 15:15:31.39 ID:lJJwE5xGi
川波きたやんけ
60川波正次郎 ◆Y7FjQgxfdo @転載は禁止:2014/09/13(土) 15:17:02.59 ID:FioR+qPVi
暫らくの沈黙が庫裡の中を支配する、その沈黙をお咲が破った。

「では、志津香さんの怨みとは申しません、妹を無残に殺された姉の怨みとしてどうかこの頼み聞き入れて貰えませんか」
れいなは改めて蝋燭の薄い灯りに照らされたお咲の顔を見た。
いつも微笑みを絶やさず自分や志津香に姉の様に時に母の様に接してくれた顔でなくそこにあったのは怒りと憎しみに溢れた表情だった。

「師匠さん、本来なら起こりは然るべき伝手をもってお嬢に渡りをつけてアタシらに依頼が廻ってくる寸法なんだよね」

「我々の正体を知った者は何者であろうと始末するという掟もあります」
晴香と麻友が平然と言い放った事に慌てるれいな。

「待って、私の所為だから、師匠はお上に注進したりもしないから」

「まぁお待ちなさいなんでも屋、私も貴女の知己を手に掛けたくはありません、それに師匠さんあなた只者では無いですね」

自分や晴香の様な百戦錬磨の仕事人に気配を気付かれず近づけるなど只者でない、恐らくお咲も人に言えない過去を秘めて居るのだろう。

「貴女なら何処に行っても生きていける筈、江戸を出て我々の事を忘れて頂けるなら、貴方からの頼みお受けしましょう」
麻友の言葉にお咲が答える。
「分かりました、外道たちに然るべき仕置きをお願いします」


三方の上に小判を五枚置きお咲は庫裡を後にした。
61名無しさん@実況は禁止です@転載は禁止:2014/09/13(土) 18:13:06.05 ID:hzT95qNY0
あげ
62名無しさん@実況は禁止です@転載は禁止:2014/09/13(土) 18:38:24.19 ID:uSJcRynDi
乃木坂でやれよ
63名無しさん@実況は禁止です@転載は禁止:2014/09/13(土) 21:17:45.50 ID:7Kh24V1I0
680保守
64名無しさん@実況は禁止です@転載は禁止:2014/09/13(土) 23:44:04.46 ID:cNlpnPgt0
保守
65名無しさん@実況は禁止です@転載は禁止:2014/09/14(日) 00:47:20.18 ID:9IcjPDa20
脳内でこれが再生されまくってます
https://www.youtube.com/watch?v=Z2E_C82Rxi4
66名無しさん@実況は禁止です@転載は禁止:2014/09/14(日) 03:32:28.20 ID:nJ7qfb5v0
597保守
67名無しさん@実況は禁止です@転載は禁止:2014/09/14(日) 03:45:36.63 ID:/2md3HgLO
こういうAKBのメンバーでやる意味のない改変パロディってたまにあるけどさあ
68名無しさん@実況は禁止です@転載は禁止:2014/09/14(日) 07:40:22.05 ID:qFdLchaU0
69名無しさん@実況は禁止です@転載は禁止:2014/09/14(日) 11:41:01.75 ID:nJ7qfb5v0
685
70名無しさん@実況は禁止です@転載は禁止:2014/09/14(日) 12:45:58.55 ID:f/k6QfMm0
俺の推しメン登場あるか?

兎に角期待保守
71名無しさん@実況は禁止です@転載は禁止:2014/09/14(日) 13:35:51.91 ID:mtKXbAQP0
72名無しさん@実況は禁止です@転載は禁止:2014/09/14(日) 14:59:38.42 ID:1MGKDCY30
保守
73名無しさん@実況は禁止です@転載は禁止:2014/09/14(日) 15:47:32.86 ID:f/k6QfMm0
期待あげ
74名無しさん@実況は禁止です@転載は禁止:2014/09/14(日) 16:35:37.85 ID:f/k6QfMm0
落とさないぜ
75名無しさん@実況は禁止です@転載は禁止:2014/09/14(日) 17:59:19.49 ID:T2pLX7Wz0
76名無しさん@実況は禁止です@転載は禁止:2014/09/14(日) 19:35:55.67 ID:1MGKDCY30
保守
77名無しさん@実況は禁止です@転載は禁止:2014/09/14(日) 19:46:56.54 ID:z1Kxf9tWi
保守だらけやないか
78名無しさん@実況は禁止です@転載は禁止:2014/09/14(日) 19:53:05.94 ID:Uvf/de3U0
あんにんは
組紐屋の竜
みたいな役が似合う
喋ったらダメだけど
79名無しさん@実況は禁止です@転載は禁止:2014/09/14(日) 21:26:35.85 ID:9IcjPDa20
一推しの咲子さん登場して嬉しいです
でももう出てこないのかな?
80川波正次郎 ◆Y7FjQgxfdo @転載は禁止:2014/09/14(日) 21:50:34.64 ID:m4FhG6WKi
お咲の立ち去った庫裡の中でしばらくの沈黙がつづく。

「しかしあの師匠さんやっぱり解せないね、五両きっかり置いてくなんてまるでウチらが五人組だったって知ってるようなもんだよ」
沈黙を破った晴香の言葉にれいなが反応する。

「そんなぁ、旦那考えすぎだよ、きっとありったけの金子を持ってきてくださったんだよ、あの方に限って変な勘繰りをするのはやめておくれよ」

「しかしねなんでも屋、我々の根城を嗅ぎ付けただけでもやはりきな臭さは拭えませんよ」
麻友あくまでも冷静な見解にれいなは二の句を継げない。
81川波正次郎 ◆Y7FjQgxfdo @転載は禁止:2014/09/14(日) 22:12:01.83 ID:m4FhG6WKi
「まぁ、あの師匠さんの正体はさておき、頼みは受けたんださっそく絵を描こうよ」
晴香の性格上頼まれた仕事は多少のきな臭さはあろうと完遂するというのがモットーだ。

「だが、実際に仕事にかかるとしても人手が足りませんな」
麻友の言葉にあるように、先日の仕事を最後に渡り巫女のすみれと流しの歌い手の美咲、二人の音信が途絶えている、この二人は元々俗に言う道々の輩(モノ)と呼ばれる自由に生きる流れ者であったので当然とも言える。

すみれはれいなとともに情報収集、仕事の補助といった役割を、美咲は明香、晴香と肩を並べる実働組として腕を振るっていた。

そんな二人が欠けたことによる戦力の低下が三人の目下の不安ではあった。
82川波正次郎 ◆Y7FjQgxfdo @転載は禁止:2014/09/14(日) 22:17:35.72 ID:m4FhG6WKi
ずっと書き込めずすいませんでした
ブラック勤めなもんで昨日からさっきまで拘束されててやっと書き込めました
明日も早いんで職場に泊り込みですが寝落ちするまでは書き続けます
83名無しさん@実況は禁止です@転載は禁止:2014/09/14(日) 22:18:33.64 ID:YTRS9FM2O
>>6
しーちゃんは豊前でなく筑前だよ。
84川波正次郎 ◆Y7FjQgxfdo @転載は禁止:2014/09/14(日) 22:29:59.90 ID:m4FhG6WKi
「ワタシがやるよ」
低い声でそう呟くれいなに二人は目を丸くする。

確かに裏の稼業に身を置いてはいるがれいなの腕をまったく知らない二人には彼女が感情に任せて名乗り出たとしか思えなかった。

「お嬢、無理な事をやらせてアンタを死なせちゃウチらも寝覚めが悪い、ウチが二人殺るよ」
ぶっきらぼうに言う晴香だが、れいなの身を案じての事だ。

「大丈夫だよ旦那、ワタシだってねすみれと江戸に流れてくるまでは散々修羅場をくぐってきたんだからさ」
そう言い帯から扇子を引き抜くどうやら仕込みの鉄扇のようだ。

「なんなら旦那にワタシの腕の検分してもらおうか」
すごむれいなに晴香も若干カチンときたようで険悪な雰囲気になる。

「わかりました、ではなんでも屋にも働いてもらいましょう、もう的の足取りは調べてありますね」
麻友の一言で晴香とれいなの争いに一応の決着がついた。

「ええ、今夜近江屋で音羽の三郎太を招いた酒宴が予定されています、三人が揃ってお誂えむきだから、決行は今夜半でよろしいですね」
二人に目配せをするれいな、無言で頷き立ち上がる麻友と晴香。

庫裡を照らしていた蝋燭の灯りがれいなによって吹き消された。
85名無しさん@実況は禁止です@転載は禁止:2014/09/14(日) 22:33:54.76 ID:f/k6QfMm0
>>82乙です(´□`)/
無理なく頑張ってください。
86名無しさん@実況は禁止です@転載は禁止:2014/09/14(日) 23:45:31.40 ID:s8AcLKmG0
>>82
楽しく読ませていただいてます
無理せず続けてください
87川波正次郎 ◆Y7FjQgxfdo @転載は禁止:2014/09/15(月) 00:16:13.56 ID:xy085T1Ui
月の無い夜江戸の市中は真の闇に包まれている。

浅草寿町の町屋の渡辺診療所、針を砥石にかける麻友の姿があった。
充分に砥ぎ澄ませた針を懐に入れて羽織を纏って診療所からひっそりと姿を消す麻友。
いつもの回診時の着物でなく着流しの上に纏った羽織、その背中には“南無阿弥陀仏”の文字が刺繍されている。

石田屋の仕事場で蝋燭の灯りに照らされ横文字が印字されたラベルの付いた瓶を取り出す晴香の姿が有った。
瓶の中身を擦り鉢で粉末状に擦りつぶす、擦り上げた粉末を小さな瓶に詰め一見細見の笛の様な物を腰に差し音も無く長屋から姿を消す晴香、身なりはいつもの作務衣のままである。

麻友と晴香の足が日本橋の近江屋へ向かって行く。
88名無しさん@実況は禁止です@転載は禁止:2014/09/15(月) 00:38:17.89 ID:g7jrCppi0
作者さん乙
あんま無理はせんでええで

保守してるから敢えてやけど
作者さんは学あるのになんでブラックぽいトコに勤めてんのかな(・・?
89名無しさん@実況は禁止です@転載は禁止:2014/09/15(月) 01:08:35.72 ID:cNDV5+Wo0
>>82
無理せず仕事優先で頑張ってくださいね

さあ仕事人たちの殺しテクが楽しみになってきた
師匠は再登場でまた絡んでくるのかも楽しみ
90名無しさん@実況は禁止です@転載は禁止:2014/09/15(月) 01:31:07.93 ID:l4cE4vE00
>>87BGMはわさみの演歌が脳内再生中
91名無しさん@実況は禁止です@転載は禁止:2014/09/15(月) 01:59:49.20 ID:1j3gDQ1p0
いよいよクライマックスですね
保守はしておくので無理のないペースで
書いてくださいね
楽しみにしています!
92名無しさん@実況は禁止です@転載は禁止:2014/09/15(月) 02:14:56.34 ID:0nxUW+Ldi
もうラストか
93名無しさん@実況は禁止です@転載は禁止:2014/09/15(月) 02:31:30.11 ID:l4cE4vE00
>>92まだ、わさみ&すーめろが出てきて無いからラストでは無いとオモ
94名無しさん@実況は禁止です@転載は禁止:2014/09/15(月) 04:31:34.11 ID:l4cE4vE00
ほしゅ
95川波正次郎 ◆Y7FjQgxfdo @転載は禁止:2014/09/15(月) 06:52:42.76 ID:xy085T1Ui
近江屋の軒下、黒装束に身を包んだれいなの姿があった、麻友や晴香と仕事をするようになってから直接的な仕事は初めてなのでいささか緊張気味ではある。

しかし無二の親友を無残に殺された怨みが自分にもある、気後れしてる場合ではないと自分に言い聞かせる。

程なく二人が到着した、れいなの見慣れない身なりに晴香は面食らっている。

「勘平と三郎太は奥の座敷で酒宴中、茂吉は何を思ったか仏間に籠ってるみたい」
いつもながられいなの状況把握の能力には恐れ入る。

「で、割り振りはどうします、旦那となんでも屋は一緒に行動した方がいいと思いますが」
暗に茂吉は自分が仕留めると言う麻友にれいなは逆らう。

「いえ先生、心配無用ですワタシが茂吉を仕留めますんで」
れいなは頑なに我を貫こうとする、二人も仕方ないと溜息を吐く。
96川波正次郎 ◆Y7FjQgxfdo @転載は禁止:2014/09/15(月) 06:55:01.65 ID:xy085T1Ui
保守ありがとうございます。
さっき起きました仕事までの時間また書きます
>>88さん別に大した学なんか無いですよ昔は物書きになりたかったんですが挫折して今は肉体労働者やってるんです
97川波正次郎 ◆Y7FjQgxfdo @転載は禁止:2014/09/15(月) 06:58:11.09 ID:xy085T1Ui
三人は身軽に塀を乗り越え屋敷内に侵入していく、人が見ればまるで夜盗の様である。

天井裏に潜り奥の間の真上に進む麻友と晴香、真下に醜悪な顔を突き合わせる勘平と三郎太の姿をみとめ、目配せをしあう。

気配を殺し仏間に近づくれいな、仏壇に向かい拝み続ける茂吉の姿が目に入った。

何を今更志津香に対する懺悔の念にでも駆られているのかと、呆れてしまう。

「ご先祖様、とうとうこの茂吉直参となり、公方様の為にこの身を捧げることができるようになりました」
この男に後悔という気持ちはまったく無いようだ、れいなの心に冷酷な夜叉が舞い降りたように、無慈悲に目の前の男の命を奪う事だけで心の中がいっぱいになった。

れいなは鉄扇を取り出し茂吉に狙いを定める。
98川波正次郎 ◆Y7FjQgxfdo @転載は禁止:2014/09/15(月) 07:13:21.53 ID:xy085T1Ui
奥の間ではすっかり酩酊した勘平と三郎太それぞれ寝床に引き籠ろうとしていた。

灯りの無い廊下を千鳥足で歩く勘平の背後に音も無く舞い降りる麻友。
通常の治療に使う針より数倍の長さと太さの針をその手に携えている。

猫の様に素早く勘平に駆け寄り背中から勘平の心臓を針で一突きにする。
人を治療するという事は人の身体を破壊する方法もよく心得ている。
寸分の狂いもなく心臓を貫かれた勘平は自分の息絶える瞬間さえ自覚できなかった。

針を引き抜かれるとゆっくりと倒れていく勘平、既にその身体から体温が消え始めている。

表情ひとつかえずにえ何事もなかった様に勘平の亡骸の横を通り過ぎて行く麻友。

背中に浮かぶ“南無阿弥陀仏”の文字が不気味に闇に消えていく。
99川波正次郎 ◆Y7FjQgxfdo @転載は禁止:2014/09/15(月) 07:30:55.70 ID:xy085T1Ui
三郎太の寝床が用意された客間の屋根裏に晴香の姿があった。

流石に音羽の顔役を務める程の男の前に易々と姿を現そうとはしない。
しかし既に酔いが回り正体もない三郎太は程なく高いびきで眠りについた。

腰に差した細い筒の中に瓶から取り出した薬品を詰める。
三郎太の枕元に降り立つと同時に筒を首筋に当てる、鈍い音と共に三郎太の静脈に突き刺さった。
晴香が筒に唇を付け一息吹き込むと静脈を通じて三郎太の体内に薬品が充満していく。

薬品の正体は晴香が長崎で染料と一緒に仕入れてくる毒薬だ。
この時代毒物といえば口に含むものが主流であったがこの毒薬は血管を通じて体内に充満させる事で死に至らしめる代物だ。

三郎太はもがき苦しみ、苦悶のなか息を引き取った。
晴香がこの得物を選んだのは外道に安楽な死など与えない、という考えからであった。

首筋から筒を抜き音も無く天井裏へと飛び上がって姿を消す晴香。

息耐えた三郎太の枕元にはいつの間にか六枚の寛永通宝が置かれていた。
100名無しさん@実況は禁止です@転載は禁止:2014/09/15(月) 07:32:13.39 ID:2srLl54v0
なんだこのスレ
101川波正次郎 ◆Y7FjQgxfdo @転載は禁止:2014/09/15(月) 07:37:17.71 ID:xy085T1Ui
仏間では未だにれいなが機会を伺っている。
やはり長年実戦から遠ざかっているので勘が鈍っているのだろう、なかなか襲撃の間合いが取れない。

れいなの得物は鉄扇から飛ばす仕込み手裏剣である、初手を外すと相手に自分の姿が露見してしまうので慎重にならざるえない。

茂吉がひとしきり仏壇に向かって講釈を述べ終わったころに。
「今だ」
胸のなかでそう呟くと茂吉目がけて鉄扇を振るう。

『カチンッ』

鉄どうしが打ち合う音が響いた、居合一閃でれいなの放った手裏剣を茂吉は打ち落とした。

「殺気がだだ漏れだぞ、そんな腕で俺を狙うとは笑わせてくれるな」
忘れていたこの男は神道無念流目録の達人であったことを。

絶対絶命のれいなであった、しかし茂吉の背後に忍び寄るもう一つの影があった。
102名無しさん@実況は禁止です@転載は禁止:2014/09/15(月) 07:58:55.48 ID:l4cE4vE00
ワクテカワクテカ
103名無しさん@実況は禁止です@転載は禁止:2014/09/15(月) 09:06:53.60 ID:l4cE4vE00
(´□`)/ほしゅ
104名無しさん@実況は禁止です@転載は禁止:2014/09/15(月) 10:33:50.96 ID:Pz0KcKbZ0
105名無しさん@実況は禁止です@転載は禁止:2014/09/15(月) 11:34:12.67 ID:cNDV5+Wo0
作者さん今日も仕事なのかな
乙です
106名無しさん@実況は禁止です@転載は禁止:2014/09/15(月) 12:23:45.37 ID:l4cE4vE00
背後の影が気になるぜ…
107名無しさん@実況は禁止です@転載は禁止:2014/09/15(月) 12:27:23.45 ID:zqiVWIvki
みんな優しすぎ
108川波正次郎 ◆Y7FjQgxfdo @転載は禁止:2014/09/15(月) 12:43:16.87 ID:xy085T1Ui
『ビシュッ』

鋭い音がれいなと茂吉の耳に響いた、何事と思う間もなく茂吉の身体が奇妙な糸のようなモノでがんじがらめにされた。

「何だこれは、畜生がぁ身動きが取れん」
茂吉が糸を引きちぎろうともがくがちぎれるどころか益々絡みついてくる。

僅かに開いた襖の隙間から放たれた糸、襖が
開くとそこに立っていたのはお咲であった。

「師匠・・・・何で此処に・・・・」
れいなの問いに答える事無く茂吉の前に迫るお咲。
「一つだけ聞かせてください、懺悔する気持ちはありますか」
お咲の問いに茂吉は声を荒げる。

「懺悔、何の事だ俺はお天道様に恥じぬ生き方をしておるつもりだ」
茂吉の居直りにれいなの怒りが一気にこみ上げた、きっとこの外道は私が何故命を狙ったのかさえ分かっていないに違いない。

怒りにまかせ叫び出しそうになるがそれより早く、お咲が夜叉のような表情に豹変し茂吉に低い声で宣告する。

「では、死んで詫びていただきます」

その一言と共にお咲の右手が茂吉の首筋を撫でたかと思うと、茂吉の首筋からおびただしい鮮血が溢れ出た。

外道の死は惨たらしいものだった、止まることのない出血に徐々に奪われていく体温、止血をしたくても四肢の自由を奪う糸によって身動きができない。

やがて畳に溢れた血の海の中に突っ伏し茂吉は事切れた。
109川波正次郎 ◆Y7FjQgxfdo @転載は禁止:2014/09/15(月) 12:45:40.36 ID:xy085T1Ui
茂吉が事切れた後、れいなはお咲の手際を吟味していた。

茂吉の身体の自由を奪ったのは琴の弦であった、炙った蝋を塗り込んで強度を増したもので、並みの力では引きちぎることもできない代物だ。

お咲の右手の親指、人差指、中指にはめられた爪から鮮血が滴り落ちている。
普段琴に使う爪よりも先端が鋭く研ぎ澄まされている、どう見ても人の命を奪うために意匠されたモノにしか見えない

そして確実に頸動脈を掻っ切ったお咲の手際、熟練の仕事人でもこうも見事な仕事はできない。

「師匠、あなたは一体」

恐る恐る問いかけるれいなに対し、お咲は淡々と弦を回収しながら答える。

「まずはこの場を去りましょう、家人に露見して騒ぎになっては面倒です」

自分より余程冷静なお咲の言われるままに屋敷を後にする。

いつの間にか外は雨が降りはじめている、まるで拭っても拭いきれない自分たちの返り血を洗い流そうとしてるようだ。
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仕事が終わっても、まだ続きそうだ…

期待保守