【乃木坂】嫁の真夏さんと愛人のなーちゃん【妄想】

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1名無しさん@実況は禁止です
前スレ
【乃木坂】嫁の真夏さんと愛人のなーちゃん【妄想】
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2 ◆lnkYxlAbaw :2014/02/27(木) 21:03:30.00 ID:yEtbErPY0
「この案件だが是非あなたたちに任せたい」


白髪で高級なスーツを身に纏う初老男性と契約書を交わして握手をする。
握手か。昔握手のためにいくら金を費やしたのだろう。
可愛いアイドルの子と握手するのが楽しみでがむしゃらに働いたな。

そのおかげで俺は出来る男になった。
そして色々なものを手に入れることができた。
それは決して金で買えるものじゃない。


「よくやったな。どうだ?祝いにみんなで飲みにいかないか?」
「部長。お誘いはありがたいのですが僕を待っている人がいるので…」
「いやあいつまでもラブラブだな。昔はよく朝方まで飲んでいたお前が今や家庭重視の夫とはな。まああの奥さんなら納得だな」
「すみません。では、お疲れ様です」

俺は昔、日中は仕事にがむしゃら、夜は上司や部下と酒を飲んでは朝帰りで休日はもっぱら握手会やイベントに出向くのが習慣だった。
だが、俺の人生は一人の女性と出会ったところで大きく変化した。
それまでは5時で家に帰る家庭持ちのサラリーマンを見下していた。
だが、今は彼らの気持ちが理解できる。
3 ◆lnkYxlAbaw :2014/02/27(木) 21:04:20.33 ID:yEtbErPY0
愛する嫁が料理を作って待っている。そう思うだけで帰宅願望が強くなる。
帰りの電車の中でひたすら今日の夕食は何なのかを妄想するのが何よりも心地良い。

駅の改札を出て徒歩15分のマンションへの道のりをワクワクしながら歩く。
おっと。帰りに玉葱とカレー粉を買ってきてとメールがきていたな。


「いつもありがとうございます。奥さんに頼まれごとですか?」
「ああ。全くど忘れが多くて困ったものだ」

週に五回は立ち寄るコンビニ。いつも決まってレジに立つ子がとてもカワイイ。
だが、外に出れば浮かぶのは嫁の笑顔だ。

マンションに着いてまずオートロックの扉を開けてエレベーターへ向かう。

「あっすみません!」
そこへコートを着た女性が駆け寄ってきた。確か5階に住んでいる子だ。

「ありがとうございます」
「いえいえ。それよりもかなり慌ててどうしたんです?」
俺はハァハァと息を切らす彼女に声をかける。バッグから出したハンカチで額の汗を拭う姿に思わずドキッとしてしまった。

「実は今日大事な日なんですよ。だから早く帰りたくて…」
「そうだったんですか。いや僕が乗っていて幸運でしたね。きっと素晴らしい日になるに違いない」
そう言っているうちにエレベーターは5階で止まる。彼女は軽く会釈をしてエレベーターを降りた。

様々な誘惑があったものの嫁に対する愛は不変だ。俺は部屋のある階に着くと一目散にエレベーターを降りる。
早歩きで部屋に向かいドアの前で一呼吸置いて扉を開けた。

「お帰りなさい。今日は昨日より5分遅刻だぞ!」
「ごめんごめん。だって頼まれたモノを買ってたからさ。はい。カレー粉と玉葱だ」
「ありがとう。ごめんねわざわざ」

袋を手に持って謝るその姿に俺の心はまさにズッキュンされた。出来る男もここでは完全に射抜かれた歩兵に過ぎない。

「いや、いいんだ。愛情たっぷりのカレーを頼んだよ。真夏」
4 ◆lnkYxlAbaw :2014/02/27(木) 21:05:43.32 ID:yEtbErPY0
「ところであの商談はまとまったの?」
「ああ。ウチが勝ち取ったよ。まああんなのは朝飯前だ」
「そうだと思って一生懸命作った甲斐があったな」
「作った?」

真夏はそう言うと急に照明を消した。

「うわっ!おい資料書いてる途中だぞ」
「ねぇパソコン閉じてくれる?」

俺はよく分からないままノートパソコンを閉じた。だが作ったという言葉が引っ掛かった。
しばらくすると蝋燭の火が灯っているのが見えた。
そして、急に照明がついてその眩しさに目を瞑る。
すぐに目を開くとそこには俺の大好きなケーキの上に20個の蝋燭が刺さっていた。

「何だ?誕生日はまだ先だぞ」
「違うよ。今日は私と結婚してから成功した商談が20回を記念して」
「え…?」

俺自身も忘れていた。結婚してから4年間で既に20回もまとめてきたんだな。
それを覚えていた真夏に俺は改めて心をズッキュンされた。

「さぁせっかくだから祝おうよ」
真夏は肩を出したグラスにワインを注ぐ。その姿がまたたまらない。
こんなに優しくて美しい嫁がいる俺はとんでもない幸せ者だ。やはりがむしゃらに頑張った努力は報われる。
この素晴らしき時間がずっと続くものだ。今の俺はそれを疑わなかった。


そう彼女と出会う日までは…
5 ◆lnkYxlAbaw :2014/02/27(木) 21:06:33.74 ID:yEtbErPY0
「ずっきゅーん!朝だぞ〜」

突然嫁の声がして俺はベッドから起き上がる。そうスマホのアラームだ。
世界に一つしかない大切な目覚まし。これがあるから朝も辛くはない。

寝室の扉を開けるとそこから焼けたソーセージの匂いや玉子焼きの匂いが漂う。
何とも食欲をそそる。そして何よりも朝から精力的に弁当と朝食を作る真夏の姿を見るだけで良き目覚めだ。


「パパ。はい、新聞」
歯を磨き、髭を剃り、洗顔を終えた俺の前に3歳の息子、春真が新聞を持って立っていた。
そう理想的な嫁を手に入れた後に出来たかけがえのない宝物だ。
春真は生れたのが桜咲く4月だったのがきっかけで真夏が名づけた。俺も気に入っている。

昔は朝食と言えば駅前のコンビニとかでおにぎりとパンを買って会社で早出で仕事しながら食べたもんだ。
だが、今は違う。嫁の作ったご飯に味噌汁、弁当で余った玉子焼きとウインナーとほうれん草のおひたし。
家族3人の束の間の団欒でスタートする朝は格別だ。

「おっタコさんウインナーか…いいなあ俺のおふくろはそんなもん入れてくれなかった」
「しかもこれ誰かに似てると思わない?」
「あっパパだー」
「おいおい。もっとパパの顔はイケてるぞ」
「自分で言うそういうこと?」

そうやって何気ないことで笑う日常の幸せ。こういう小さい幸せが大事なんだと思う。

この団欒の時間はテレビの占いの時間が無情に引き裂く。
俺はドルチェグストで淹れたコーヒーを飲みながら時計を見る。

「おっと出兵のお時間だ。さぁ今日も一日戦ってきますか」
俺は新聞と鞄を持って出勤に備える。

「じゃあ今日も6時までには帰れそうだから」
「分かった。今日の夕飯はね…」
「待て。それ以上言うな。俺の帰りの電車での楽しみを奪うなよ」
「ごめんごめん」
「じゃあ行ってくるよ」
「いってらっしゃ〜い」

「あれ?パパとママはチューしないの?」
息子の突然放った一言に俺と真夏は一気に顔を赤くする。

「ちょっと春真!どこでそんなの覚えたの?」
「昨日ママが見てたドラマでやってたよー」
「ハハハ。さすが我が息子だ。正直でいいよな。おっと遅れちゃうから」
俺はそう言うと玄関の扉を閉める。そこからは嫁に溺れ子煩悩な男から一気に企業戦士の顔に変わる。
颯爽と通路を歩き、エレベーターに乗る。




「さぁ準備してね。もう少しでバス来ちゃうんだから」
「ママー。パパお弁当忘れてるよぉ」
「ええ!!ウソでしょー!!」
6 ◆lnkYxlAbaw :2014/02/27(木) 21:07:24.11 ID:yEtbErPY0
あれ?弁当がない?しまった。うっかり忘れてしまったぞ。
電車の時間まではまだ少しある。駅まではペースを早めて歩けばいい。
俺はいつものコンビニでおにぎりとパンを買おうと立ち寄った。

「あれ?昨日の…」
「ああエレベーターの」
俺がフレンチトーストに手を伸ばした瞬間に触れた女性の手は昨晩エレベーターに駆け乗った女性だった。

「あっどうぞ。俺はそのコロッケパンでいいですから」
「いえいえ。そんな昨日も我儘したのに今日もってわけには…」
「いいんですよ。それにここのコロッケパンは好きなんでね」
「何かすみません」

俺は女性にフレンチトーストを譲り、おにぎり2個とコロッケパン1個とコーヒーを買って店を出た。
歩いていると先に店を出た女性が歩いている。

「おや?あなたもあの駅を利用してるんですか?」
「そうですけど。あなたも?」
「ええ。一緒に行きましょう。たまには話しながら通勤というのも悪くないでしょう」
「そうですね。いやここに越してきてまだ1か月ぐらいなので通勤はいつも一人で寂しくて…」
「そうだったんですか。おっとそういえば名前をまだ伺ってなかったですね」
「ごめんなさい。私乃木坂バレッタ生命に勤めてる深川と言います。これ一応名刺です」

乃木坂バレッタ生命と言えば米最大手の生命保険会社バレッタ生命と日本最大手の乃木坂生命が合併した最大の生命保険会社だ。
その保険外交員となるとかなり優秀だ。確かウチの会社の社員も何人も契約してよく外交員が勧誘してるな。

深川麻衣。

このおっとりした笑顔がまさに優秀な外交員だと断定して間違いなさそうだ。

「ほぉ。子供向けの保険をやっているんですか」
名刺を見るとどうやらこども保険を主に販売している部署にいるようだ。

「ええ。最近は早いうちから保険に入る人も多いんです」
「ああ僕の名刺も一応渡しておきましょう」
「え?あの乃木坂商事に勤めてるんですか?しかも第一営業部ってすごくエリート揃いって聞きますけど」
「いやぁそんな大したことないですよ。僕なんか浮きまくってます」

そんな他愛もない話をしているうちに駅に着いた。
するとどこかからか聞き慣れた声が聞こえた。

ふと振り返ると汗を流して弁当を片手に走ってきた真夏の姿が見えた。
7名無しさん@実況は禁止です:2014/02/27(木) 21:07:59.69 ID:WpNqxAHhP
帰ってきたか
8 ◆lnkYxlAbaw :2014/02/27(木) 21:08:21.41 ID:yEtbErPY0
「おい真夏。こんなところで何してんだよ?」
「だって…ハァハァ…お、お弁当忘れちゃってるし…」
「わざわざ走ってきたのか?鈍足なのに無茶しやがって」
「だってあなたがいけないんでしょ?愛妻弁当を忘れるなんて…ハァハァ…」

弁当を届けるために体力もないのに無理をしてくるとは。俺をそこまで思ってくれているとは。
俺は朝から感動していた。

「それより春真はどうしたんだよ?もうバスが来る時間だろ?」
「それなら大丈夫。隣の寧々さんにお願いしておいたから…」
「ならいいけど。とにかくこれ持って帰れ。はいタクシー代だ」
「ありがとう。じゃあ待ってるね。ん?この方は?」
真夏はふと深川の方を見る。深川は目が合うと軽く会釈をする。

「ああ。同じマンションに住む深川さんだ。昨日偶然エレベーターで会ってね」
「そうだったんだ。あっ妻の真夏です」
「深川です。そうですか。奥さんとお子さんもいらっしゃったんですね」
「深川さんは子供向けの保険を売っているんだ。そうだ深川さん。今度一緒にお食事でもどうです?妻は手料理を振る舞うのが好きでね。じっくり保険の話も聞きたいですし」
「えっ?」

深川は驚いた表情を見せる。そして少し曇った表情に変わる。
あれ?俺何か余計なこと言ったかな?何故か心の奥に何かが突き刺さった感じだ。

「ありがとうございます。考えてみますね。じゃあ私は電車が来ちゃうのでこれで…」
深川はそう言って一礼すると足早に改札を通って人混みに消えていった。

「ヤバイ。じゃあ俺も行くわ。ありがとう」
俺も真夏を見て足早にホームへ駆けて行った。
9名無しさん@実況は禁止です:2014/02/27(木) 21:08:41.41 ID:8J4eY8pg0
読んでるでー
10 ◆lnkYxlAbaw :2014/02/27(木) 21:09:12.02 ID:yEtbErPY0
乃木坂商事第一営業部。各所の営業部で優秀な営業成績を収めた精鋭が集う集団。
各所でトップに立った者同士が集まる場所で結果を出すのは非常に難しい。
クライアントは年商何十億は当たり前で動くお金も物も想像を遥かに絶する。
なかには国家すら関わる事業も手掛けるのだ。

「おお。ちょうどよかった。君を探していたところだ」

部長に声をかけられた俺は部長のオフィスに入る。扉を閉めてブラインドを閉める。
これだけで重要な用件を言うのは安易に想像できた。

「部長。お話とは何ですか?」
「うむ。心苦しいが今進めてるプロジェクトは第二営業部に任せようと思っている」
「何故ですか?あのプロジェクトは社運をかけた一大プロジェクトですよ」
「ああ君があれを取るのに苦労しているのは誰よりも私がよく知っているよ」
「だったら何故?」
「実はあの西野鉄鋼の社長令嬢さんがキャラクターブランドを立ち上げることになってな。そのプロジェクト責任者になってもらいたいんだ」
「待ってください部長。私がやってきたのは鉄道とか鉄鋼ですよ。キャラクターとかは分かりません」
「勿論だ。そこでキャラクタービジネスに精通した人材を集めておいた」
「何故私なんですか?だったらそのビジネスに精通した人間がやればいいでしょう」
「よく分からんが令嬢さんが社長に君じゃないと嫌だと言ったそうだ。西野鉄鋼は最重要取引先だ。失えば我が社は終わりだ」
「つまり。選択肢はないということですか」
「そういうことだ。頼むぞ」

俺は不安を隠せないなか部下がノックをして部長室の扉を開ける。

「部長。西野七瀬様がお見えになられました」
「分かった。お通ししろ」

大阪に本社を置く日本最大手のにして世界でもシェア70%以上を誇る鉄鋼企業西野鉄鋼の創業者一族の一人で社長令嬢である西野七瀬。
彼女が俺の今ある平凡でささやかな幸せを脅かす存在になるとはこの時は想像することもできなかった。
11 ◆lnkYxlAbaw :2014/02/27(木) 21:10:03.72 ID:yEtbErPY0
「こちらが今紹介した西野七瀬さんだ。今回世界的にキャラクタービジネスを始めることとなった」
「初めまして」
「いえ。あなたは覚えてないでしょうけど初めてじゃないんですよ」

西野の一言に俺は疑問を抱く。どこかで会った?いくら記憶を掘り起こしても浮かばない。

「どこかでお会いしましたかね?」
「多分覚えてないのも無理はないかと。何か恥ずかしくて遠目で見てたので。そうあれは確かベトナム新工場建設のときです」
「ああ。5年前に手掛けたやつですね」

5年前に海外事業部にいたときに最初に成功した鉄鋼関係のプロジェクトだ。日本最大手の西野鉄鋼の東南アジア進出の橋渡しをしたな。
ここから俺は出来る男としての軌跡が始まった。トントン拍子に鉄鋼関係で成功を収めて今の地位についた。
その頃から俺を知っているとは。俺はまた疑問がひとつ増えた。


「ところで部長。プロジェクトの概要は?」
「あっああ。確かコレだ」

俺は部長から渡された資料に目を通す。どいやさん?うわっ何なんだこのキャラクターは。これを世界に売り出すとか正気か?
ビジネスマンとして見た瞬間失敗の可能性が高いと予測できた。

だが「失敗すると思うのでやめましょう」なんて言えば俺は終わりだ。せっかく手に入れた家庭や地位を失ってたまるか。
残念ながら生まれながら持っている権限もあるということだ。
だが、大金持ちが幸せとは限らない。僅かながらの金で狭いマンション住まいだが可愛い嫁と息子のささやかな暮らしが一番いい。
だからこそ俺は西野のこういう手法はあまり好まない。

「とにかくやってみるしかないですね。ただ、最終的に責任を持つのはあなただ。そこは覚悟していただけますね?」
「もちろん。金持ちの道楽のつもりじゃないしビジネスの厳しさは私も分かっています」
「だったら安心だ。必ず成功させましょう」

やるしかない。成功すればまた何かを得られるはず。俺はそう思い腹を括るのだった。
12 ◆lnkYxlAbaw :2014/02/27(木) 21:10:54.20 ID:yEtbErPY0
乃木坂商事第一営業部の窓口。ここではクライアントとの商談やアポを取ったり日程調節をする。
勿論やってきたクライアントを案内するのも重要な仕事だ。

だが何もない時に窓口に座る二人は何やら噂話をする。

「ねぇねぇかりんちゃん。聞いた?」
「聞きましたよ。西野鉄鋼のお嬢様がキャラビジ持ち込んだらしいですよ」
「え?そうなの〜。アメイジング!」
「まさか高山さん知らなかったんですか…?」
「でもいいよなぁ〜。お嬢様ってだけで自分の書いたものを大手商社通じて売ろうっていうんだからさぁ」
「仕方ないですよ。生まれながらにしての大金持ちなんだし」
「あ〜あ私も金持ちだったらここじゃなくてハワイビーチで毎日のんびりと過ごすんだけどね〜」
「何ですかハワイビーチって」

全く今日も他愛もない会話をしている。
毎日ボロボロになるまで闘う企業戦士とはまるで無縁な二人が羨ましくも腹正しくも思える。

「そんなにハワイに行きたければもっと働くんだな」
「うわあああああああああああ」

突然驚いた表情で叫ぶのが高山一実。ルックスは良くてクライアントの評判もいいがいかんせん言動と思考回路がズレている。
だが、仕事は出来る。いくら窓口と言えど優秀でなければならない。時に俺は彼女に助けられたことも多々ある。
そして隣にいるのが伊藤かりん。言動も対応もピカイチ。頭の回転も速くて仕事も優秀だ。
高山を補佐する意味でこの二人は営業第一部を陰で支える屋台骨な存在としては今までで一番優秀だろう。

「それで頼んでおいたことは?」
「はい。10時に第二会議室しっかりおさえました。クライアントにも報告済みです」
「さすがはかりんちゃん。仕事が早い」
「いえ。窓口として当然です」
「あっそう。じゃあ褒美にこれ君にあげるよ」
出来る男は窓口の女の子にも気を遣う。第一部の営業マンは基本エリート意識が高くて威張り腐っている奴らが多いからこれだけでも心を掴める。

「え?これ行きたかったエステの無料体験チケットじゃないですか!」
「ひゃあ〜アメイジングゥ〜!!」

驚く二人の声を聞き、俺はただ颯爽とデスクへ歩く。
13 ◆lnkYxlAbaw :2014/02/27(木) 21:11:44.79 ID:yEtbErPY0
午前10時。

第二会議室には新たなプロジェクトメンバーが集う。

今までは肉に飢えた猛獣並みの野郎どもとやってきたが今回は違う。
今回集められたのはキャラクタービジネスや女性をターゲットにしたビジネスに精通した女性メンバーばかりだ。
しかも各部署から集められた。聞くところによると彼女たちを営業第一部に異動させるために5人が異動になった。
つまり5人の女性がエリートに昇格し、5人のエリート戦士が転落したということだ。
お嬢様の描いたキャラクターのビジネスで他人の人生を大いに狂わせる。

「さて。これからこのキャラクターどいやさんの販売展開に関するプロジェクトの第一回会合を始める」
スクリーンの前に立つ俺は新たに戦うメンバーの顔を見渡す。

「じゃあまずは自己紹介を。何しろ今回みんなの顔を見るのは初めてだ。信頼関係がなければこの戦いは勝てない。まずは君からだ」
俺はまず右隣に座っていた女性を指名した。

「営業第三部からきた桜井玲香です。主に版権ビジネスのリーダーをやってきました。実績はご存知でしょう。よろしくお願いします」
「君は我が社でも版権や商標、著作権には精通しているみたいだね。君にはサブとして俺を補佐してほしい。では次は君だ」

「はい。営業第五部からきた中元日芽香です。私は主にこういったリボンの販売を主にやってました」
「確か妹さんはさくら物産に勤めていたね。彼女はなかなかのやり手だ。まさか姉が我が社にいるとは思わなかったよ」
「ええ、まあ…」
「とにかく君はグッズ販売について任せたい。妹さんをここで見返してやろうじゃないか。じゃあ次は君だ」

「はい。広報部から来た中田花奈です。上から読んでも下から読んでも同じなので多分覚えやすいかと。あと営業は初めてでよく分からないですけど」
「気にするな。君は芸能関係に精通してるみたいだな。広報戦略も大事だから代理店との交渉などを頼みたい」
「お任せください」

彼女が立ち上がった瞬間に揺れる胸を見て少し動揺したが実にいい武器になるに違いない。

「よし、じゃあ君」
「はい。海外事業部から来た山崎怜奈です。英語ぐらいしか取り柄ないですけど…よろしくお願いします」
「英語は武器だ。君は事業部の窓口で海外クライアントを相手にしてきたそうじゃないか。このビジネスは海外進出がゴールだ。君は大きな戦力だ」

彼女に足りないのは自分に対する自信だ。窓口だったから当然バカにされていたのだろう。海外事業部の奴らはみんなそうだ。
だが彼女の英語力は我が社でもそういない逸材だ。だからこそ自信をつけさせて戦力になってもらいたい。

「最後は君だったね」
「はい。秘書課にいました堀未央奈です。よろしくお願いします」

秘書課はこの会社では一度入ればあまり異動のない部署だ。しかも前任は社長秘書。何故彼女がいきなり営業第一部でこのメンバーに。
俺はこの人選だけが納得がいかなかったがどうやら西野のお嬢様が一枚かんでいるのは間違いなさそうだ。

「桜井玲香、中元日芽香、中田花奈、山崎怜奈。そして、堀未央奈。俺を入れた6名でこの戦いを制しよう。では次回までの業務割だ」

俺は大きな瞳でじっと見つめる堀の視線が気になりつつも業務割を配布した。
14 ◆lnkYxlAbaw :2014/02/27(木) 21:12:43.44 ID:yEtbErPY0
「ただいま〜」
「あっお帰りなさ〜い」
相変わらずこの日常のやり取りに幸せを感じる。

あれ?靴の数が多いな?誰かお客さんでも来ているのか?
俺はリビングに向かうとそこには主婦仲間の伊藤寧々がいた。
彼女は越してきた時から仲が良く春真と同じ幼稚園に通うママ友でもある。

「あっいらっしゃい」
「お邪魔してます」
「あっ寧々さん。今日は春真を見てもらったそうで申し訳ない。僕が弁当を忘れたばっかりに。これお詫びに」
俺はそう言うと取引先にもらった鰹節のセットを渡した。何でも焼津産の高価なものらしい。

「え?いいんですかこんなもの」
「ええ。ウチにはまだたくさんあるもんでね。それに寧々さんの料理はまた格別に美味しいからね」
「は?じゃあ私のは?」
「この世で一番美味しいに決まっているじゃないか」

出来る男のお世辞も真夏の前では余計な火種を落とすだけだ。
出来る夫を見せるのは企業戦士で戦うより至難の業だ。


「あっ!?」
「どうしたんだ真夏」
「いっけない。ポン酢買うの忘れちゃったどうしよう…」
「またか。本当にドジだなぁ。いいよ近くのコンビニに売ってるから買ってくる」
「そんないいよ。私が行くから」
「気にするな。こんな寒空のなかでお前一人で行かせられんよ」

これはお世辞でもカッコつけたいからではなく本心だ。愛する嫁を一人で買い物に行かせる旦那じゃ失格だ。

「あとはいいのか?」
「うん。気をつけてね(。・ω・)ノ゙」
「ああ。いってきます」
俺はそう言うと玄関を出てコンビニへ向かった。
15 ◆lnkYxlAbaw :2014/02/27(木) 21:14:06.68 ID:yEtbErPY0
「うぅ…今日は一段と寒いなぁ」
コンビニに入った瞬間に寒空の中歩いて冷え切った体に店内の暖房の暖かさが身に染みる。
ふと見渡すとそこにはいつも夜にいるバイトの女の子がレジの前に立っていた。

俺は日用品のコーナーに向かい最後の一本であるポン酢を手に取ろうとした瞬間またも誰かの手に触れた。
ふと見ると触れた手の相手は深川であった。

「深川さん。あなたでしたか」
「あっ偶然ですね。二度も同じような境遇になるなんて」
「まったくだ。あっポン酢ですか?」
「ええ。今日は寒いしお鍋にしようと思ってスーパーで買ってきたんですけどポン酢だけなくて…」
「弱ったなあ…。実は妻に頼まれてましてね。あのスーパーにないとなると隣町までいかないといけないしなあ」
「あっいいんですよ。良かったら…」
「いやいや。せっかく具材まで買っておいてこれがなければ意味がないでしょう。これはあなたが…」
「いえ。そんな奥さんに申し訳ないし…」

俺は迷った。

ないとなれば隣町まで歩いて20分。そうなれば真夏が心配する。

だからと言って深川の夕食を台無しにするわけにもいかない。

「すみません」
俺はレジの前にいる女の子を呼んだ。普段はレジでしか会話しないが初めて呼んでみた。
名札には「橋本」と記されている。この時初めて俺は彼女の名を知った。

「何でしょうか?」
「ああ。このポン酢なんですが在庫はないんですか?」
「あぁ〜…。生憎在庫は切らしてて次に入荷するのは2日後になるかと…」

やはり呼んで正解だった。越してきた頃からずっとここでバイトをしている彼女ならそういう事情にも詳しいはず。
俺の読みは当たっていた。ただ、在庫が切れているのは計算外だが。

俺は考えに考えた末にある結論に達した。

「深川さん。もし良かったら家に来ませんか?丁度ウチも今日鍋なんです」
「えっ!?」

驚くのも無理はない。何しろ会ってまだ2日も経ってはいない人間がいきなり自宅へ食事に誘うのだから。
恐らく彼女の人生経験でもこれは初めてのことだろう。

だが、彼女の食材を無駄にせずかつこの1本のポン酢を活かす方法はこれしかない。

「そ、そんな悪いですよ」
「いえ構いません。妻は誰かに手料理を振る舞うのが好きでね。今日も同じマンションの人を誘っているんです」
「いやでも私とか場違いじゃ…」
「それに鍋は大勢で食べた方が美味しいでしょう。一人鍋よりはマシだ」
「じゃ、じゃあお言葉に甘えて…」

出来る男はその場の危機状況も打開し、誰も不幸にはさせない。
16 ◆lnkYxlAbaw :2014/02/27(木) 21:15:00.28 ID:yEtbErPY0
「ただいま」
「おかえり〜」
「これポン酢。そして、さっき電話で話した通り深川さんをお連れした」
今朝の駅で会ったとき以来の再会だ。まさか夜になって自宅で共に食事をすることになるとは誰も想像しなかっただろう。

「すみません…」
深川は頭を下げる。それを見た真夏は笑顔で迎える。

「いえ。いいですよ。それに深川さんの保険の話も聞きたいし」
一般家庭では考えられないだろう。普通旦那が同じマンションに住むとはいえ赤の他人の女性を自宅に入れるなんて。
通常なら浮気などを疑われ、一触即発になるか最悪の場合離婚の引き金にもなりかねない。

だが真夏は喜んで迎え入れた。それは俺を全面的に信頼してくれているからだ。
もちろん彼女は誰かをもてなしたり、誰かに手料理を振る舞うのが趣味であるがそれだけではない。
俺が築き上げた信頼と愛情があるからこそ今のこの状況があるのだ。

「じゃあ頑張って作るね。あっ深川さん。良かったらそこでワインでも飲んでてください」
真夏はそう言うとエプロンを身に纏い、料理を始めた。その間のキッチンは決して立ち入ることの出来ぬ絶対領域となる。
俺はダイニングで深川と寧々にワインを注いで身の上話でその場を盛り上げ、子供たちの遊び相手になる。


それから1時間ほどで真夏特製の鍋が出来上がった。深川が買った食材を無駄にせず、なおかつとても美味しい。
特に一日会社で戦い続けて帰宅後は寒空を歩いて色々あって疲弊した俺の体にとても染み渡る。

「それで学資保険って言うんだっけ?それについて…」
「あっ資料ありますよ。良かったら…」

当初はガチガチに緊張した深川も今では話を弾ませている。さすがは一流の保険外交員だ。伝え方が上手い。
深川の笑顔溢れる説明の仕方を見て俺は出来る女性だと感じた。

一見素朴で強い印象は受けないだろう。

だが生命保険は不安や最悪の事態に備えるものだ。俺みたいに計算高く勝ちにこだわる姿勢がむき出しの人間には売れない。
やはり安心感を与えられる印象。それは深川には持っている。だから出来る。

現に真夏や寧々も幼いわが子を見ながら話をしている。母親として子供の万一のことを真剣に考える。
その表情や思いを瞬時に読み取り笑顔で話を振る。そして二人の笑顔を作り出す。
また、小さい子供の扱いも上手い。子供と親の気持ちを理解している。

俺は出来る男だと自負するが深川が俺以上に出来る女であったことに驚きを隠せずひたすらワインを飲んだ。
17 ◆lnkYxlAbaw :2014/02/27(木) 21:15:51.43 ID:yEtbErPY0
「いやぁ今日は随分濃い一日だったよ」
「ホントに。あんなに大勢で食事を食べたのは久しぶりね」
「本当に勝手気ままな旦那ですみません」
「いいのよ。私も今日料理やってて楽しかったし。保険のことも色々分かったしね」
「俺は幸せ者だよ。こんな素晴らしい妻を持ててね」
「私だってこんな出来る夫がいて幸せ」

仕事が出来る女がいるように家庭で出来る女もいる。真夏はまさにこの家で出来る女を発揮している。
何気ないはにかんだ笑顔の癒し効果は計り知れないものだ。これは誰にも真似ができない。

「さぁ疲れたから寝るとするよ。君も明日は早いだろ?」
「そうだけどさ…」
真夏が何か言いたそうだった。出来る男はそれを事前に推測できるものだが真夏が何を言いたいか理解できなかった。
ワインの飲みすぎかな?いや酔いはさほどないし。一体何が言いたいんだ。

「だけど何?」
「いや、そろそろ春真にもさ…」
おいおい冗談だろ。確かに最近夜はご無沙汰だが、まさかこんな時に言うかね。
ただ確かにこのところ仕事ばかりで疲れて眠ることが多くてサービスもロクにしていなかった。
ならば今ここで恩を返すのが得策と言えよう。

俺はそう思って声をかけようとした瞬間寝室の扉が開く音が聞こえた。
ふと明かりを灯すとそこに立っていたのは3時間前に眠ったはずの春真だった。

どうやら起きてしまったらしい。

「ねぇ…このえほんよんで」
愛するわが子の要望を断るわけにはいかない。春真はベッドの真ん中に眠り込み、真夏が絵本を読む。
それを聞いていた俺は何だか心地よくなってそのまま眠りについた。
18名無しさん@実況は禁止です:2014/02/27(木) 21:16:26.32 ID:WpNqxAHhP
まさかこれ全部転載する気か?
19 ◆lnkYxlAbaw :2014/02/27(木) 21:16:41.75 ID:yEtbErPY0
「あの…お嬢様。そろそろ離してもらいたいんですけど…」
「ごめ〜ん。だってあみあみの背中って何か温かいからさ」
田園調布にあるとある豪邸の一室にいる西野七瀬とメイド服を着た世話人。

そうここは俺が深い眠りについている間に起きた出来事だ。

「お嬢様。堀様がお見えになりました」
「きいちゃん。お通しして」
もう一人メイド服を着た世話人が一礼して扉を閉めた。

しばらくして世話人とともに堀が一礼して部屋に入る。
「ありがとう北野さん。あら?能條さんもいらしたのね?また背中に密着を?」
「お嬢様のご要望を叶えるのも仕事なんで」

「それはそうと例の資料は?」
西野がそう言うと堀は持っていたヴィトンのバッグから一枚のファイルを差し出す。
受け取った西野はそれに目を通す。表紙には『部外秘』と書かれている。我が社の社員データだ。

「これ見つかったら私は終わりですよ」
「大丈夫。そんなんなかったことにしてやるわ。私が言えば誰も逆らうことはできへんし」
「しかし何故ですか?あなたなら何億いえ何十億、何百億と稼ぐ男性をいくらでも釣れるじゃないですか?それなのに…」
「何であの男にこだわるか…そう言いたいんやろ?」
「ええ。正直私には理解できません。それは恐らくここにいるお二人も同意されるのではないでしょうか?」
堀が二人を見ると西野もふと二人を見つめる。二人はまるで鬼に睨まれたかのように驚き、体が震えあがっていた。

「せやなぁ。確かに私なら日本一の大金持ちでも簡単や。でもそんなん面白くないやん」
「え?」
「普通の家庭に生まれて普通の学校に行って普通に就職して普通の家庭にある男ってどんなんか知りたくなってな」
「それが彼なのですか?」
「せや。彼に初めて会ったとき言ったんや。『お金で決して買えないものがある』って…」
「お金で買えないもの…?」
堀、北野、能條は首を傾げた。そんな二人を見て西野は笑みを浮かべながら椅子に腰かける。

「その買えないものが欲しくなってな…。そう、彼の心や」
西野の表情を見て何か不穏な空気を感じる二人。だが堀だけは違っていた。

「お嬢様。私に出来ることは何かありませんか…?」
「さすが堀ちゃん。すぐに社長秘書に登りつめただけあって出来る女やわ」
「いえ。私はお嬢様の願いを叶えるためなら何でもやる所存です」

西野と堀はお互いに笑みを浮かべて大声で笑いだす。
それを見た北野と能條はただ立ち尽くすしかなかった。
20 ◆lnkYxlAbaw :2014/02/27(木) 21:17:33.39 ID:yEtbErPY0
ハッ。

何だ今の夢は?何故お嬢様の笑みが?何故堀君の笑顔が?
俺は何とも後味の悪い夢を見て相当疲れていると感じた。

「おはよう。どうしたの?顔色悪いぞ」
「ああ。昨日ワインを飲みすぎてまだ残っているみたいだ…」
俺はカプセルを取り出してドルチェグストでコーヒーを淹れる。

「パパー。このお姉ちゃんすごーい!!」
春真がテレビを指したので見てみるとそこにはインタビューに答える西野七瀬が映っていた。
それを見て夢がフラッシュバックしてコーヒーを吹いてしまった。

「きゃあ!」
「パパきたなーい」
「あなたどうしたの?何か変だよぉ」
妻と息子の声はしばらく俺の耳には届かなかった。何なんだこれは。
俺はただ西野のインタビュー映像が映るテレビを呆然と見つめていた。



これが俺のささやかな幸せを脅かす引き金になっていくことをいくら出来る男であっても予測することは不可能であっただろう。
21名無しさん@実況は禁止です:2014/02/27(木) 21:18:26.58 ID:A7y4sCwAO
指原「戸賀崎さんはすごいと思う。わたしの憧れ」
脱法ハーブ常用、未成年を含む女性たちと不倫
http://shukan.bunshun.jp/articles/-/3369
打ち上げツーショット!同じ服、同じ目、同じ…指原支配人
http://lh6.googleusercontent.com/-uRThmlMVepQ/UnTlsmzzF1I/AAAAAAADv34/R4oq4YGpAMs/s0/02+-+1.jpg
充血した目の指原支配人
http://i.imgur.com/lGCM20W.jpg

戸賀崎「女の子は風俗嬢、脱法ハーブは合法、何が悪いの?」
**指原「なんでやねん!」「いらおこ!」と1人だけ文春に怒り爆発

「ミニ戸賀崎さんみたいでしょ?」と後輩に自慢
脱法ハーブ常用、未成年を含む女の子たちと不倫した戸賀崎さんアピール
http://tvcap.info/2014/1/13/140113-1534580756.jpg
http://tvcap.info/2014/1/15/140115-0126220632.jpg

指原支配人は大丈夫だよね?
22 ◆lnkYxlAbaw :2014/02/27(木) 21:18:53.25 ID:yEtbErPY0
デスクに腰かけた俺は色々あって読めなかった日経新聞を鞄から取り出す。
一番楽しみなのは『私の履歴書』だ。今月は今野義雄という音楽プロデューサーだ。
彼の人生遍歴は読んでいて実に参考になる。紆余曲折を経て辿り着いた地位。
出来る男になるまでを見ているとやはり生まれながらの才能を努力で磨いてきたのだと感じた。

新聞を閉じて片付けると目の前に窓口の高山の姿があった。

「うわっ!おいビックリするじゃないか高山君」
「あ、あの。西野さんがお見えですけど…」
高山は有名人や地位の高い人間と会うと見境がつかない行動をとる。
普段なら声掛けもできるが彼女も今朝の情報番組を見たのだろう。

「分かった。応接室へ案内してくれ」
「はい。かしこまりましたぁー!!」
高山は何故か敬礼して駆けて行った。全く持って謎が多い。
恐らく人間工学の研究者なら興味を持つだろう。

俺は資料を持って応接室へ向かう。
何か今回の仕事は気乗りがしない。いつもは仕事となればアドレナリンが全開になるのだが今回は違う。

やはり仕事とはいえ一流企業の創業者一族のお嬢様の召使いになったような気分だ。
だがお嬢様とはいってもクライアントはクライアント。ビジネスマンとしてどうであれ任された仕事を成功させるのが仕事だ。
いくら無謀であっても結果を出さなければ終わりだ。


「すみません。資料を集めるのに時間がかかってしまって」
「いえ。こちらこそ突然押しかけちゃってごめんなさい」
互いに笑みを浮かべて挨拶を交わすもまた今朝見た夢の残像が頭をよぎる。

「それよりも今朝のニュース見ましたよ。なかなかいいことをおっしゃっていた」
「いえ。そんな大したことは…」
「自分の運命と財力を多くの弱き人たちに貢献したい。普通はなかなか言えるものじゃないですね」
「私は生まれながら巨大な財力を持っていてそれを自分の欲だけに使うのはどうかと思うて…」
「一見社会奉仕の思い溢れる素晴らしいものですが、あなたはかなり私欲の強いお方だ」

しばらく沈黙の時間が続いた後、プロジェクトメンバーが揃ってミーティングを始めた。
今日はとりあえず立ち上げまでのプランニングの方向性を確認し、決定した。
プロジェクトメンバーは全員が優秀で俺の求めていた以上の仕事をしてきた。
女性だからといっても男性企業戦士よりも素晴らしい仕事が出来る。それを知っただけでもこの仕事をやった甲斐があったと思う。

二時間ほどでミーティングは終わった。
23名無しさん@実況は禁止です:2014/02/27(木) 21:18:55.41 ID:QrjHnRh20
【ルール違反発覚後】の指原支配人
「本当じゃないし本当だし本当じゃないし」
「どれが事実で事実じゃないかは言い訳になるから話しません」
「(週刊誌の記事は)友達が勝手に言ってるだけなんです」と被害者ぶる
「犯罪犯した訳じゃないし恋愛なんか誰だってするし」

秋元「本当のとこはどうなの?」
指原「言えるわけないじゃないですか!そんなこと…本当じゃないし…本当だし…」

中居「本当はどうなの?」
指原「本当のことですか?エグいですよ」
中居「エグいの?」
中居「え?どうゆうこと?友達が勝手に言ってるってこと?」
指原「うん。友達の友達が勝手に…」 ← 人のせいにする指原支配人

**指原「…女って怖い」
マツコ「あなたのほうが怖いことしてるじゃない」
**指原「してないですよ〜w」
さんま「じゃあお前なんで博多行ったんや!」
**指原「あはははw」

さんま「恋愛バレたら坊主になって博多行ったらええねん。ほんで『わたし何で博多来たんやろ〜』って言ってればええねんw」

指原「AKBグループは恋愛禁止のルールが曖昧でファンの方も握手会で
『いい恋愛してね』って言ってくださったりとか理解のあるファンの方が多いです」

指原「ファンの方が喜ぶ恋愛をします!」
24 ◆lnkYxlAbaw :2014/02/27(木) 21:19:43.81 ID:yEtbErPY0
「とても素晴らしい人材が揃っていて驚きましたわ。さすが乃木坂商事さん」
「ええ。我が営業第一部に出来ない奴は一人もいません。強いて言えば私ぐらいなもんですかね」
「ホンマに冗談がお好きなんですなぁ」
「出来る男は自分を出来ると自惚れません。自惚れているのは大概出来ない奴です」

ロビーの前で西野と他愛もない会話をしていた時だった。

「きゃああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!」


突然受付嬢が悲鳴を上げた。ふと振り返るとそこにはスーツを着た男がナイフを片手に持って立っていた。
よく見るとプロジェクトでやってきたメンバーと入れ替わりで第一部から弾き出された一人だった。

「おい平野。どうしたそんな物騒なもの持って」
「うるさい!おい西野!よくも俺の人生台無しにしてくれたなぁ!!」

奴は平野。プロジェクトで何度かパートナーになったこともある。エリート街道を疑いもなく突き進んできたエリート営業マン。
しかしそれに奢って仕事は特に出来なかった。なので今回弾き出された時は大きく驚くこともなかった。

平野は第一部からグアテマラ駐在所に異動が決まっていた。海外事業とは無縁の彼は左遷と判断して発狂したようだ。
エリート家系に生まれて育ち、挫折を知らない人間が初めてぶち当たった壁。
彼にはそれを乗り越える方法を考えず絶望を感じてヤケを起こした。

つまり彼はキャリアと同時にこの先の明るい人生まで捨て去ってしまったのだ。

「やめておけ。そんなことしたら一生台無しになるぞ」
「うるせぇ!そこにいる金持ちのクソ女が我儘言わなきゃ俺はエリートだったんだ!」
「それは違う。お前は遅かれ早かれ第一部にはいられなかった。それで彼女を逆恨みするのはお門違いだ。慶応出てるのにそんなことも分からないのか?」
「うるさいうるさいうるさーい!!!!」
益々発狂する平野。顔は真っ赤になり震える手でナイフを振り回していた。
そんな時西野が前に出る。

「…いくらや?」
「は?」
「いくら払えば納得してくれるんや?」
西野はそう言うと小切手を取り出してペンを右手に持った。

「てめぇ俺をバカにしてるのかぁ!?」
「あなたがそないなことしてるのはお金が欲しいからやろ。エリートの地位にいればたくさん金入るし」
「ちょっと西野さん。やめた方がいい」
「いえ。この方はお金が欲しいのと私のせいで何かを失ったと思っているんです。だったら代償を支払うまでです」
やはり生まれながらに金持ちの人間は違う。何でも金で済ませてしまおうと考える。
金を渡せば人は幸せになるとでも思っているのだろう。
だがそれは財力に一生困らない大金持ちの考え方だ。恐らく平野には通用しないだろう。

「てめぇやっぱぶっ殺してやるうううううううううううううううううううううう!!!!!!」
平野がナイフを向けてこちらへ突進してきた。
俺は言うまでもなく西野を抱いて右の方へ押し倒した。

その時一人の女性が速いスピードで駆けてきて履いていたハイヒールの先が平野の急所を直撃した。

「くぁwせdrftgyふじこlp!!!!!!!!」

平野は口から泡を吹いてその場に倒れこんだ。
ロビーには平野が持っていたナイフが落ちた音が響き渡っていた。
25 ◆lnkYxlAbaw :2014/02/27(木) 21:20:34.93 ID:yEtbErPY0
「誰か手を貸してくれ!」
「こいつ完全に伸びてるな〜」

警察官が4人がかりで失神している平野に手錠をかけて持ち上げられてパトカーに乗せた。
それはまさにエリート街道を突き進んだ男が惨めな犯罪者に転落した瞬間だった。

「すみません。警視庁捜査一課の衛藤と申します」
「同じく若月です」

二人の黒いスーツを着た女性刑事が警察手帳を出す。
ドラマのように強面の男刑事から事情を聞かれるとは思っていたがまさかこんな女性から事情を聞かれるとは思わなかった。
警察も変わってきているようだ。


刑事から散々事情を聞かれたり実況見分に立ち会ったり何なりであっという間に昼が過ぎていった。
事件に巻き込まれるのがいかにいい迷惑か身を持って知った。


「ご協力ありがとうございました。最後に警視庁ではあなた方を表彰する意向とのことです。正式に決まりましたら連絡します」
衛藤刑事が俺と平野の急所に飛び蹴りを食らわせた堀にそう言って一礼して若月刑事と共に去って行った。

「表彰か。それにしてもやるじゃないか堀君。只者ではないとは思っていたが…」
「いえ。私はただ西野さんが大事なクライアントなのでお守りしたいという一心から本能で動いたまでです」
堀は真面目な表情を崩さずにその場を後にした。


「七瀬お嬢様。お迎えに上がりました」
北野が一礼してそう言うと西野は持っていたバッグを北野に渡して歩き出す。
俺はロビーを出て石段を下る。目の前には止まっている黒塗りのシボレー・タホ。
北野はトランクを開けて荷物を置くと、後部ドアを開けた。

「よろしければご自宅までお送りしましょうか?」
西野はパワーウィンドウを開けて誘う。

「いえ。僕はまだやることがあるので終わったら電車で帰りますよ」
「そうですか。では…」

西野はそう言うとウィンドウを閉め、タホがゆっくりと走り去っていった。
俺は何故かそのまま呆然と車が見えなくなるまで立ち尽くしていた。
26 ◆lnkYxlAbaw :2014/02/27(木) 21:22:02.75 ID:yEtbErPY0
「ただいま〜」
「お帰りったん(。・ω・)ノ゙」
「どうしたんだよ今日はやけに笑顔だな?何かいいことあったんか?」
俺はいつも以上にニコニコする真夏が気になった。
何だろう?福引でも当てたか?それともいい服でも買ったのか?

俺はリビングに入った時その理由を知る。

『本日正午頃東京丸の内にある乃木坂商事本社内にて刃物を持った男が玄関ロビーで暴れました…』

テレビでは今や乃木坂テレビの人気アナウンサーれなりんこと市來玲奈アナがあのニュースを読んでいた。
既に昼のニュースでも取り上げられており中で誰かが撮影していた動画が流れていたのだ。

「誰だよテレビ局に売った奴は…」
「それよりも凄いじゃない。刃物を持った男から女性を守ったんでしょ?それも相手は西野鉄鋼の社長の娘さんらしいじゃない」
「ああ。今俺がやってる仕事のクライアントだからな」
「え!?そうなのぉ。だって今朝もテレビに出てた超有名なセレブじゃない」
かなり興奮している。こんなにはしゃぐ真夏を見たのは去年家族でフロリダに行って以来だな。
だが、そこがまた惚れ込む理由でもある。

「今日は幼稚園の先生や母親からも言われて大変だったけど嬉しかったなあ」
「あの場で自分の身だけを守るようではダメだ。やはり真夏と春真がいたからこそ出来たことかもな」
「そんな自慢の旦那様にご褒美としてあなたの大好きなハッシュドビーフにしようと思うの。わざわざ駅前の肉屋で高いお肉買っちゃったわ」
「そんないいのに。それに褒美は後日警察から貰うことになるそうだ」
「えええええええええええええええ!!!凄いじゃない?あれでしょ?警視総監賞ってやつでしょ?テレビに出るの?」
「おいおいそんな大袈裟なもんじゃないだろ。感謝状一枚と記念品貰うだけだよ」

とにかく今日の出来事で我が家は誕生日や記念日を祝うかのようにささやかながらの贅沢を楽しんだ。
だが、その話をする度に俺の脳裏には西野の顔がちらついた。
27名無しさん@実況は禁止です:2014/02/27(木) 21:22:57.97 ID:WpNqxAHhP
28 ◆lnkYxlAbaw :2014/02/27(木) 21:23:03.23 ID:yEtbErPY0
俺が真夏と春真とで家族団欒を楽しんでいた頃、都心の街中を一台のトヨタクラウンアスリートが駆けていく。
運転席上部には赤色灯が置かれておりこれが覆面パトカーであることは誰の目から見ても分かる。
乗っているのはあの事件で事情聴取をした警視庁捜査一課の衛藤刑事と若月刑事だ。

「ねぇ若月。昼間の事件なんだけどさ」
ハンドルを握る衛藤が助手席でスマホを眺める若月に声を掛ける。

「あぁ乃木坂商事のヤツ?」
「何か引っ掛からない?」
「いや別にただエリートサラリーマンが左遷だって言ってヤケになって暴れただけの軽いヤマじゃん」
「だからよ。何で私たち一課が呼ばれたのかってことよ」
「ああ。そういえば。別に殺人とか強盗でもないのに…」
「これは私の刑事の勘なんだけどさ。キーマンはあの西野七瀬だと思うわけ」
「あの西野鉄鋼のセレブ様?」
「そう。自分が襲われたにも関わらずあの冷静沈着な表情。被害者とは思えないのよねえ」
「でもまあセレブってあんなもんじゃないの?どっかネジが緩んでるっていうか…」
「いやいや。それは違うなあ。所轄時代からずっと色んな事件見たけどあんな表情の当事者は初めてだった」
「じゃあ何なの?」
「そりゃ分かんないけどもしかしてあのお嬢様。こうなることを予め知ってたんじゃないかなって思えてさ」
「ちょっ。みさ先輩らしくもない。そんな自分が襲われるの仕組むとか有り得ないっしょ?」
「有り得ないことをやるような雰囲気はあったよ。あんたそういうところ鈍感だからダメなのよ」
「う〜ん。なんか違うような気がするけどなぁ」
若月は首を傾げる。しかし、衛藤は疑いを持たずにいられないようだ。

『警視庁より入電中。港区台場のお台場臨海公園内にて男性が血まみれで倒れているとの通報。付近にいる車両は至急急行せよ』

「ほらみさ先輩。事件は次から次へと起きるんだからそんなの気にせず今はこれに集中集中」
「そうね。さぁて今日も長い夜になりそう。あ〜お肌に大敵だぁ」
二人の乗ったパトカーは赤色灯を光らせてサイレンを夜の街に響かせ走って行った。
29 ◆lnkYxlAbaw :2014/02/27(木) 21:24:02.35 ID:yEtbErPY0
場面は変わり、レインボーブリッジを芝方面へ進むのは西野が乗っている黒塗りのシボレー・タホだ。

「もしもし…。そう。ありがとう。ええ。約束は必ず守るわ。それじゃ…」
スマホの画面をタッチしてバッグに入れる西野。隣には堀が座っていた。

「全くあなたも人が悪いお方ですね」
「そんなのは知ったうえで付き合ってるんとちゃう?」
「それはそうですけど…今回のやり方はいかがかと」
「ええやん。これで彼も私の存在が気になってきているはずや」
西野はそう言うとスケッチブックと鉛筆を取り出して何かを書き始めた。
堀は持っていた『高賀の森水』と書かれたペットボトルの水を一口飲む。

「お嬢様。この後はどちらに行かれますか?」
北野が助手席から西野に尋ねる。

「せやなあ。じゃあ代官山の『ビストローネ・ド・マイヤン』へ行ってや」
「かしこまりました。矢田。頼むわね」
「お任せください。早めに着けるようにします」
「頼んだで。あっそういえばりしゃこは乃木坂グルカー女学院を出ているんやって?」
「はい。そうですけど…」
矢田に尋ねた西野は笑みを浮かべて昨夜堀から受け取った俺の社員ファイルを見る。

「思った通りや。あんた先輩に真夏っていう人知らへんか?」
「え?ま、真夏さんですか?知っているも何も私がいた調理部の先輩ですよ。でも何故?」
「ええんや。こっちの話や。今のことは忘れてりしゃこは運転に集中してや」
「か、かしこまりました」

「七瀬さん。またあなた何かを企んでいるみたいですね」
「やっぱ堀ちゃんには分かってしまうんやなあ」
「当然です。あなたを追ってここまで来て無茶もしてきたんですよ」
「ほんまに堀ちゃんには感謝しとるよ」
「本当にそう思っていらっしゃるようなら少しはリスクも考えて行動してください。毎回心臓が持ちませんよ」
「せやな。次はもうちょい安全にやるわ」

様々な疑問や企みが交錯する夜が明けるにはまだ少し時間を要するようだ。
30 ◆lnkYxlAbaw :2014/02/27(木) 21:24:53.39 ID:yEtbErPY0
「ほんなら終わったら連絡するでまた迎えに来てや」
西野がそう言うとシボレー・タホはそのまま走り去っていった。


「本当にいいのですか?人通りは多いしお客さんもたくさんいますよ」
「いいんや。ここは友達のやっとる店や」
西野はそう言うとイタリアのフィレンツェにあるような建物の中に入っていく。
店員に一言言うとすぐに奥にある螺旋階段を登ったところにある部屋に案内された。

「あっなーちゃん久しぶりー」
「まいやーん」
部屋で待っていたのはこのレストランの経営者で女優、モデル、デザイナー、レストラン経営などと幅広く活躍する白石麻衣であった。
白石が着た服は必ず売れる。白石がつけたアクセサリーは翌日在庫切れになるなど今日本女性から支持されている女性だ。

「まいやん相変わらずその癖治んないんやなぁ」
「これでも人前ではやらないようにしてるんだけどさ」
白石はテンションが最高潮になると両手で胸を何度も摩る妙な癖がある。普段はクールで清ましたイメージが強い。
だが、それとは全く違う別の顔を堀は見てしまった。

「ところでなーちゃん。彼女は誰?」
白石が堀を見て尋ねる。その口調からどうやら酔っているようだ。テーブルにはワインの空になったボトルが数本置かれている。
「あー彼女は堀ちゃん。ホラ例の件の…」
「はいはいはい。凄い仕事が出来るっていうあの子ね」
「い、いえ私はそれ程でもありません」
堀はひどく戸惑っている様子だ。無理もない。このような狭い空間でまさにすごい二人の女性が会って楽しんでいるのだから。


「そんであの件はええんか?」
「うん。らりんに無理言って何とかスケ抑えたから大丈夫」
白石はそう言うと隣に立っているマネージャーの永島聖羅を向いた。

「まったく。有能な私がマネだったから出来たんだぞ。社長はもうカンカン」
「はいはい。らりんは日本一のマネージャーだよ。よしよし」
白石は永島の頭を撫でている。

「じゃあ一週間後やで」
「分かったよー。あっそうそうところでなーちゃんが狙ってる彼ってさどんな顔なの?」
「えー?教えちゃったら面白くないやん」
「いいじゃん。もう気になって気になってこれじゃ夜も眠れないよぉ〜」
白石が手を合わせていると根負けしたのか西野がスマホから俺の映った画像を見せた。

「へぇ〜これが出来る男ねぇ〜」
「これでええやろ。どうせ一週間後会えるんやし」
「うん。じゃあ来週楽しみにしてるねん」

そう言うと西野は堀とともに店を出た。



「あなたは一体何を企んでいるのですか?」
堀が尋ねる。
「さぁ来週になれば分かることだから…さぁ乗って」
西野は話をはぐらかして迎えに来たシボレー・タホに乗り込んだ。
31 ◆lnkYxlAbaw :2014/02/27(木) 21:26:19.71 ID:yEtbErPY0
俺が一家団欒を楽しみ、西野が白石と話をして何かを策略している夜。

その一方で悲惨な夜を迎える者らもいる。

お台場海浜公園。

俺もよくここで真夏とデートをして、家族で散歩に行くことがある。
そんな普段は平和でロマンチックな場所が今夜は惨劇の場と化した。

周囲は黄色い規制テープで封鎖され、何十台ものパトカーの赤色灯が周囲を赤く染め、サイレンが響き渡る。

しばらくして一台の覆面パトカーがサイレンを鳴らして停車した。
中から降りてきたのは衛藤と若月であった。


「衛藤に若月!お前らどこで油を売っていたんだ!」
「申し訳ありません三上警部!」
「チッ!全く上司よりも遅れて到着する部下は俺が捜査一課に入ってからお前らが初めてだよ」

衛藤と若月が一生懸命頭を下げる男の名は三上博史。警視庁捜査一課の警部で刑事歴20年のベテランだ。
元はキャリア組だが出世コースからは身を引き、現場主義である。
今は衛藤と若月の教育を担当する指導担当でもあり、今回乃木坂商事に彼女らを送った張本人だ。

「まあいい。お前ら二人はガイシャを知ってるだろ」
三上がブルーシートを捲るとそこには変わり果てた乃木坂商事の社員平野の姿であった。
ほんの半日前まで暴れまわっていたエリートサラリーマンはここで人生の終焉を迎えるとは誰も予測できなかったであろう。

「嘘でしょ…」
衛藤が遺体を見て呆然としている。
「てかおかしいっしょ。何でこいつはここにいるんですか?48時間は拘留されてるはずじゃ…」
若月は何故逮捕されたはずの平野が無残な姿に変わってしまったのか理解できずにいた。

「それが所轄の話じゃ被害届を出さないということですぐに釈放されたそうだ」
三上の話を聞いて衛藤はさっきまで話をしていたことが脳裏を過った。そして若月も同時に思い出す。

「まさかみさ先輩の勘が当たったんじゃ…」
「いやまさかそんなこと…」
「どうした?衛藤。言いたいことがあるなら言え」

衛藤は若月に話した勘を三上に全て話した。三上はしばらく黙りこんで5分ほど経過したところで言葉を発した。

「チッ!よし分かった。衛藤、若月。このヤマ徹底的に調べるぞ。責任は俺が取るから思う存分やれ」
「え?で、でも状況証拠すらないんですよ」
「バカかお前。証拠は見つけてくるんだよ。分かったらここで突っ立ってないで動け!それでもお前らは刑事か?」
「は、はいぃ!!」
衛藤と若月は慌ててクラウンアスリートに乗り込んで現場を後にした。

「チッ!」
三上は舌打ちをすると平野の持っていた財布を手に取る。



そして、入っていた俺の名刺をじっと見つめていた。
32 ◆lnkYxlAbaw :2014/02/27(木) 21:27:21.82 ID:yEtbErPY0
団欒を楽しみ、策略の駒を進め、惨劇が起こった夜が明けた。

『次のニュースです。昨夜お台場海浜公園で男性が血まみれになって倒れているのが発見され、警察では殺人事件として捜査を開始しました…』
テレビではれなりんが淡々とニュースを読み上げていた。

だが、被害者の名前を読み上げた瞬間、俺は淹れたてのレギュラーコーヒーを思わず吹いた。
「きゃあ!!」
「パパまたコーヒーこぼした〜」
「うぐっ…。す、すまん。それよりもウソだろ…」
「ねぇどうかしたの?」
「ああ。コレだよ」
俺は真夏に持っていた新聞を差し出した。

「ウソでしょ。平野さんが…」
「残念だが本当のようだ。それに昨日ニュースになったロビーで暴れた奴がまさに平野だ」
「は?え?どういうことなの?」
真夏も混乱しているようだ。そんな表情も可愛いが今の俺の頭の中は真夏以上に混乱している。
入ってくる情報に考えられる推測などで出来る男の脳はクラッシュ寸前の状態だ。

「それはそうと今日はお前同窓会行くんじゃなかったか?」
「はっいっけなーい。何も準備してないやぁ〜どうしよぉ〜!!」
「全くそそっかしいなぁ」
俺は今日有給を使って休んだ。最近は労働基準法とか何かとうるさいからな。
有給は必ず使い切れというのが命令が下っている。

とはいっても特にやることはない。
今日はとりあえず春真を幼稚園へ送り届ける事にした。

俺は春真に服を着させ鞄と弁当を持たせてマンションを出た。
普段なら幼稚園バスが来るのだが今日はバスの定期点検とかで各自送り届けるようにとのことだった。

「あっおはようございます寧々さんと紗々ちゃん」
駐車場の前で寧々とその娘の紗々が手をつないで待っていた。寧々は車を持っておらず頼れるのはウチしかない。

「おはようございます。すみませんいつも。あれ?今日真夏さんは?」
「ああ。真夏は同窓会があって準備に忙しいので今日は休みの僕が代わりです」
「普段お忙しくて体を休めたいのに何か申し訳ないです」
「いやいや。寧ろ寝てたら体がおかしくなりそうでね。おっといけない遅れますからどうぞ」

俺はそう言うと普段真夏が乗って歩く日産デイズルークスの後部ドアを開いて春真と紗々をチャイルドシートに乗せる。
そして、寧々が助手席に乗り込むと俺はハンドルを握った。

狭い都会に高い駐車場代、近年高騰する燃料費を考えて先日買い換えたばかりの軽自動車。やはり小回りが利くし広い車内は魅力だ。
最近の軽は侮れない。

出来る男は高級な車で外見を見せるのではなく車を経済的に選んで乗るのだ。
33 ◆lnkYxlAbaw :2014/02/27(木) 21:28:13.15 ID:yEtbErPY0
車で10分ほどのところに春真らが通う『でこぴん幼稚園』に着いた。
大勢の保護者が子供たちを幼稚園に送り出している。俺は初めて見る光景に緊張した。
同時に自分は父親なんだと改めて感じた。

「あっさゆにゃんせんせーおはよーございまーす」
春真はツインテールの幼稚園教諭のもとへ駆けて行った。全く俺に似て活発だな。
あれが受け持ちの井上小百合先生か。初めて会うが顔もいいし表情も素敵だ。

「あれ?今日はパパと一緒に来たのかな?」
「うんそう」
春真が俺を指すと井上が近づいてきた。

「春真君のお父さんですね。初めまして井上と言います」
「あっどうも。いつも息子がお世話になっています」
とても笑顔が素敵だ。なるほど子供たちに人気があるわけだ。

「いやぁ息子が言うように素晴らしい幼稚園ですな」
「そう言って頂けると嬉しいです」
「では、息子を頼みましたよ」
俺が一礼をして車に乗り込もうとしたときに庭で井上に駆け寄る春真を見た。

「せんせー今日もあれやってよー」
「もう仕方ないなぁ〜。さゆにゃんヽ(。・ω・。)正義!」

何ともユニークな人だ。俺まで笑顔になった。笑顔がうつることもあるものだ。
34 ◆lnkYxlAbaw :2014/02/27(木) 21:29:06.46 ID:yEtbErPY0
俺が息子の通う幼稚園の教諭に可愛さを感じている最中、出来る男に翻弄される美女もいる。

とある牛丼店のテーブル席に座っているのは三上警部に衛藤と若月だ。

「どうだ?何かつかめたのか?」
「いやぁ〜そんなまだ一日経ってないんですよ。そんな簡単には…」
「チッ!若月。お前は相変わらず軽いんだよ。いいか。時間が経つにつれて犯人の影は遠ざかるんだ」
「はぁ…」
「で、衛藤はどうなんだ?」
「はい。これは平野の釈放後からのケータイの発信履歴なんですが…」
衛藤は電話会社から取り寄せた平野が釈放されてからの携帯電話の通話履歴が書かれた紙を三上に渡す。
三上はじっと見ながら一息ついて水を飲み干した。

「ここからほぼ10分おきにかけているニシカワナナミって誰だ?」
「どうやら平野と交際関係にあった女性のようです。現在は乃木坂オイシャン証券で受付嬢をしているようです」
「で、その女はお前が言うお嬢様と何か繋がりがあったのか?」
「いえ。そこまではまだ…」
「だったらさっさとそのねぎマヨ牛丼をかきこんでこの女の交友関係を徹底的に洗え!」
「は、はい!」
衛藤と若月は牛丼を光の速さかと思うぐらいのスピードでかきこんだ。

「ご、ごちそうさまでした!」
「ここはいい。礼を言う暇があるなら情報取ってこい!」
「あの、警部は…?」
若月が尋ねると三上はまた舌打ちをする。
「俺は俺でやることがあるんだよ。つべこべ言わずにさっさと行け!」
三上が大声をあげると二人は一目散に店を出て行った。


「ごちそうさま」
代金を支払った三上はコートのポケットから一枚のメモを取り出す。

「この近くだな…」
三上はそう言うと俺が普段利用する最寄駅を見て俺が普段歩く道を歩き始めた。
35 ◆lnkYxlAbaw :2014/02/27(木) 21:29:58.15 ID:yEtbErPY0
「ただいまー」
「お帰り〜(。・ω・)ノ゙」
俺は普段着にエプロン姿の真夏に惚れているが普段見られないドレス姿の真夏を見てさらに惚れ込んだ。
これが俺の真夏なのか?これが妻なのか?これが母親なのか?俺は全く信じられなかった。
そして最初に真夏と出会った日を思い返してしまった。

「つんつん( σ`ω´)σ」
「…ハッ!!な、何だよ」
「もしかして見惚れてた?」
「当たり前だろ。こんなに肩出してももチラしてる服着たら男なら見惚れるわ」
俺はつい興奮して強い口調になってしまった。これを今から外の人間が見るのかと思うだけで想像したくない。
このままベッドに押し倒したいところだがそこは理性が働いて抑えた。

「同窓会楽しんでこいよ」
「ありがとう。久々に旧友と会えるの嬉しいな」
こんなにウキウキしている真夏を見るのも久しぶりだ。こうイキイキする真夏こそ本物だと思う。


「真夏!」
「何?」
「いつもありがとう。今日は主婦や母親を忘れて思い切り女として楽しんでこいよ」
「あなた…」
「って何言ってんだろうな俺。さぁ早く行かないと遅れるぜ」
「あっいけない。じゃあいってきま〜す(((っ・ω・)っ」

そう言って真夏は同窓会へ出かけて行った。普段は俺が出て真夏が見送るのだが今日は真逆だ。
こういう普段慣れないことをする日に限って大きな変化を生むものだ。

そうこの同窓会の参加で真夏が変わり始め、俺のささやかで幸せな生活に大きな変化をもたらすことになるとまでは予測できなかった。
36 ◆lnkYxlAbaw :2014/02/27(木) 21:30:54.47 ID:yEtbErPY0
「ちょっと何するのよ!」

コンビニの前で店員の橋本が大声を上げる。
橋本は普段の笑顔とはまるで異なる鋭い目線で黒いスーツを着た中年男性を睨みつけていた。

「お前こそこんなところで何をしているんだ?」
中年の男も厳しい表情で橋本に問いかける。

「はぁ?あなたには関係ないでしょ?」
「チッ!そうやってお前は問題の本質からすぐ逃げる」
「もう本当にウザイ!」
俺は見かねてその場に駆け寄った。

「すみません。こんな公の場で何をしているのですか?」
俺が声を掛けると中年の男が睨みつける。

「あなたには関係のないことです」
「いえ、関係なくはない。僕は彼女を数年間ここで働いている姿を見ている。彼女は仕事熱心で商品のすべてを覚えている」
「そ、そんなこと…」
「あなたと彼女の関係は知らないが少なくとも彼女はこのコンビニで一番の店員だと思っています」
それを聞いた男は黙り込む。橋本は手で口を覆っている。

「だから決して無関係ではない。彼女が困っているのに放ってはおけませんよ」
「チッ!お前それなりにやっているようだな」
俺を睨みつけた男はそう言うと橋本を見て腕をつかむ。


「ちょっと!これ以上何かあれば警察を呼びますよ」
俺は無意識に男の手を払った。しまった。男はやはり睨みつけてきた。

「いいんです!この方は…」
橋本がそう言いかけた時男は胸ポケットから黒いものを取り出した。

「失礼。私はこういう者です」
男は三上博史という警察官であった。俺はただ一気に顔から血の気が引くような気がした。
そこに橋本が言葉を放つ。

「私の…父親なんです」
橋本がそう言うと俺はさらに頭が真っ白になった。
37 ◆lnkYxlAbaw :2014/02/27(木) 21:31:45.19 ID:yEtbErPY0
「お父様だったんですか…。これは大変失礼なことを」
「いえ。私もこんな大衆の前でつい誤解を取るようなことをして申し訳ない」
俺と三上は互いに頭を下げる。その姿を見ている橋本はただ呆然としている。

「お聞きしますが父子と言えど何故苗字が違うのですか?」
何となく想像はついていたが俺はあえて尋ねる。

「私の両親は離婚しているんです。だから私は母方の姓になっていて…」
やはりそうだったか。分かっていて尋ねたが俺は後悔する一方でさらに気になることがあった。
だが、そんなことは尋ねて答えてくれるはずはない。
ここは触れない方が一番であると思い俺はコンビニへ入ろうとした。

「ああ。すみません」
三上が突然声を掛けた。
「何でしょう?」
「いえ。実はあなたに会うためにここに来たんですよ」

俺の頭はさらに混乱した。警察が俺を尋ねに来た?何故だ?まさか平野の事件で?
考えれば考えるほど不安と疑問が増す一方だ。

「コレあなたのですよね?」
三上はそう言うとポケットから証拠保全用の袋に入った俺の名刺を見せた。
それと同時に橋本に俺の名前と職業を知られてしまった瞬間でもある。

「一体何故これを?」
「本当はご自宅まで行って伺おうと思いましたが丁度いい。これは昨夜お台場海浜公園で見つかった被害者が持っていたモノです」
やはり平野の事件で尋ねてきたんだ。

それよりも何故平野は俺の名刺を持っていたんだ?
確かに同じ会社、同じ部にいて一緒に仕事もしたことがあるから名刺を持つチャンスはいくらでもあった。
だが、何故そんなことを?

事実や情報を聞かされるうちに更に疑問が深まっていった。

「なるほど。平野さんが持つチャンスはあったわけですね」
「そうです。もういいですか?昼食を取ったらすぐに子供を迎えに行かなきゃいけませんし」
「ええ。今日のところは。またお尋ねすることがあるかもしれませんがその時はお願いします」
「はい。あまり親しくはないですが共に仕事をした人間ですからね。協力は惜しみませんよ」
「この度はお騒がせしました。奈々未。しっかり体には気を付けるんだぞ…」
三上は一礼して駅の方向へ歩いて行った。

「本当にごめんなさい。こんな面倒なことに巻き込んでしまって…」
「いやいいんだよ。俺も何も知らずに出しゃばって申し訳なかった。それよりもお腹空いたし何か買って帰ろう」
「だったら今揚げたてのコロッケがあるのでよかったら…」
「いやおまけとかお礼とかそういうのは苦手でね。でもコロッケは欲しいかも」
俺は橋本と話をしながら店内に入っていった。







バサッ
通りの反対側で買い物袋を落としてただ呆然としている女性がいた。
そう、深川である。

深川が見たこの瞬間が後にまたも俺の頭の中の重荷になってしまうことは俺は知る由もないし予測なんて出来なかっただろう
38名無しさん@実況は禁止です:2014/02/27(木) 21:32:36.05 ID:WpNqxAHhP
いやいや
39 ◆lnkYxlAbaw :2014/02/27(木) 21:34:28.37 ID:uEF/hQ5e0
ところ変わって赤坂のとあるホテルの大ホール。


そう、真夏の通っていた乃木坂グルカー女学院の同窓会の会場である。
大勢の女性が立食形式でグラス片手に思い出話をしている。

「あれ?真夏じゃない?やっぱりそうだ」
声を掛けてきたのは西川七海だ。同級生で同じ調理部に所属していた間柄だ。

「あーななつん久しぶりー」
「いやぁ相変わらず童顔なのに露出度高いのは変わんないね」
「そっちこそ相変わらずキャピキャピしてるなあ」

元々この2人は住む世界や取り巻く環境は違っていた。
真夏は真面目で清純なイメージでそういう友達が多かった。
一方で西川はギャルと言うか時代の先端を取り入れるのが好きでそういう仲間といることが多かった。

そんな合わない二人が話をするようになったのは高校の調理部時代に遡る。

課題としてホールケーキを作るように提案され、教師からペアを組むように言われたことだ。
最初は合わないのかとギスギスしていたが、互いの意見をぶつけ合ううちに意気投合した。
二人で力を合わせて最初に作り出したホールケーキは製菓会社が主催したコンテストで見事入選。
それからは大学を出るまでずっと仲良く付き合っていたのである。

二人が昔話に花を咲かせているとき一人の女性が近寄ってくる。

「あっ真夏先輩に西川先輩」
現れたのは紫色のドレスを着た矢田であった。矢田も調理部に所属していた後輩である。

「りしゃこかぁ久しぶり」
「お久しぶりです」

そうやって楽しい同窓会もあっという間に終わりの時間を迎えた。
楽しい時間はあっという間に過ぎるというのはまさにこのことだ。
真夏はホテルを出ると腕を大きく上げて背伸びをした。


そこへ矢田が声を掛けてきた。
「真夏先輩。もうお帰りですか?」
「うん。家で旦那も子供も待っているしね」
「実は先輩のことを私が仕えるお嬢様にお話したら是非お会いしたいと仰られて今あの車で待っておられるんです」
矢田はそう言うと目の前に止まっているシボレー・タホを指した。
40 ◆lnkYxlAbaw :2014/02/27(木) 21:35:18.99 ID:uEF/hQ5e0
ん?スマホが鳴っているな。真夏から迎えの誘いかな?
今日は久々に3人で回転寿司でも食べに行くかな?俺は外での家族団欒を妄想してみた。

「もしもし?」
「あーもしもし。まなったんだよぉ」
「お前飲めないのに無理したな?仕方ない。今から迎えに行くよ」
「ううん。実はね。私の後輩がどうしても会いたい人を連れてきたって言うの。断るのも悪いし…」
「そうかぁ。まぁいつもお前に頼りきりだし。今日ぐらいはいいよ」
「ごめんね。なるべく早く帰るから」
「いやいいよ。俺は春真と適当に食べるからさ」
「本当にごめんなさい。じゃあ切るね」

そうかぁ。でも毎日真夏に家事や子育てを任せているからこそ俺が企業戦士としてやれている。
出来る男を支える妻のわがままの一つや二つも叶えられないんじゃダメだな。

出来る男と言えど掃除、料理、洗濯はまるっきり出来ない男だ。
だが息子にコンビニ弁当を食べさせるようなバカな真似は出来ない。

「春真。どこかへ食べに行こうと思うが何が食べたい?」
「ハンバーグがたべたい」
「ハンバーグかぁ。だったら駅前のファミレスに行こうか?」
「うん」

俺は春真の右手を握って扉の鍵を閉めてエレベーターに乗った。

エレベーターを出たところで俺は今まさに出かけようとしている深川を見つけた。

「深川さん!」
「あら?こんばんは。春真君も一緒にお出かけですか?」
「ええまあ。たまには父子二人でファミレスで夕飯でもと思いまして…」
「羨ましいですね」
「ところで深川さんはまたあそこのコンビニへ?」
「ええ。今日は何だか自炊する気になれなくて…」
深川はそう言うと何故か俺の目を見る。

ん?

俺何かしたか?

深川の鋭い視線に何か罪悪感を抱いた気分になった。

そんな時無邪気な子供は空気を読むことを知らずに思いがけない言葉を言い放つ。

「ねーねーお姉さんも一緒に食べよーよー」

春真はそう言うと深川のスカートを掴む。
我が子よ。一体何を思ったのだ?

こうして父子二人の夕食は会って間もない同じマンションに住む女性を連れての夕食を取ることになった。
41 ◆lnkYxlAbaw :2014/02/27(木) 21:37:01.01 ID:uEF/hQ5e0
真夏が後輩に誘われ、俺が息子と深川と食事に出かけた夜。
こちらは警視庁捜査一課のフロアだ。

中央のデスクで俺の名刺を見つめながらパソコンの画面を見る三上。
そして一番上の引き出しから若かりし頃の三上と橋本が笑顔で写った写真を取り出す。


「三上警部!」
そこへ衛藤と若月が走りながら戻ってきた。

「チッ!お前らは相変わらずバタバタバタバタと走ってきやがって!まさか手ぶらで帰って来たんじゃないんだろうな?」
「まさか。新情報ですよ」
若月がそう言うと一枚の紙を差し出す。

「これは西川七海の情報か?」
「はい。西川と平野が出会ったのはつい最近のようですね。仲介したのは矢田里沙子という西川の学校の後輩のようです」
「チッ!まさかそんな馴れ初めの話だけじゃないだろ?」
三上は脚を組んで衛藤を睨みつける。

「いえ。問題はその矢田の勤め先です」
「勤め先?」
衛藤は三上に矢田の情報の書いた資料を渡す。それを見た三上は目を疑った。

「衛藤。お前の読みはどうやら当たっていたようだ。いやそれ以上に大きな収穫だ」
「と言いますと?」
衛藤と若月が目を点にさせていると三上が俺の名刺を見せた。

「あれ?これ平野が暴れた際にいた乃木坂商事の社員のものですよね?」
「そうだ。平野の財布に入っていて今日話も聞いてきた。ずっとモヤモヤしてたが今衛藤が持ってきたやつでやっと分かったよ」
三上はそう言うとパソコンのモニターを二人に見せた。

「え!?」
「ウソでしょ…」
「一見まるで関係がない情報や関係だが、以外にも繋がっているということだ。そして繋がった線はひとつのゴールにたどり着く」
三上はそう言うと近くにあったホワイトボードを持ってきて次々に写真をマグネットで貼り、マジックで書き込んでいく。
数分で出来上がった見取り図。その中心には西野の写真があった。


「よし。これで捜査をするぞ。お前らそれなりに覚悟あるんだろうな」
「はい!」
「心配するな。責任は全部俺が取る。お前らは周囲を気にせず捜査に専念しろ。分かったら行け」
二人は一礼してまたフロアを飛び出していった。


「狙いは一体何なんだ?夫か?もしくは妻か?」
三上は俺の写真と真夏の写真を見ながら何やら考え込んだ。
42名無しさん@実況は禁止です:2014/02/27(木) 21:37:47.65 ID:AyKJaWpYO
応援してるやで
43 ◆lnkYxlAbaw :2014/02/27(木) 21:39:41.96 ID:uEF/hQ5e0
「何か不思議な感じですね」
「まるで本当の家族みたいで…」
他人から見たらどこにでもいるような普通の家族のようだ。
誰もただの同じマンションに住む知人だとは思わないだろう。

今日は何故か家族連れが多いなあ。そのせいかこの3人も意外に馴染んでしまっている。
俺は真夏に申し訳ない気持ちを感じざるにはいられなかった。

「わーいいただきまーす!!」
春真がお子様ハンバーグセットを食べている中で俺は思い切って尋ねる。

「さっきのことなんだが…」
「え?」
深川はオムライスを食べた最中で入ってはいけない場所に入ったようでムセこんだ。

「大丈夫ですか?」
俺はすかさず深川の背を摩る。深川は水を飲み、しばらくして咳込みは収まった。

「すみません…」
「いや、いいんだ。こっちこそ急に変なこと言ってしまって」
「だいじょーぶ?」
まるで家族でファミレスで食事しているあるあるな光景ではないか。
普段は真夏がいるべきなのに何故か深川でも十分絵になっているのが何とも言えない。

しばらくして聞こうとしたことを再度尋ねた。

「さっきは何故あんな目で見てきたのか気になってね」
「いや。言ってもいいかな?」
「ああ。このままでは会っても気まずい。お互い共に食事をする仲だ。もやもやするのは嫌でしょう」
深川はしばらく下を向いていたがさすがは出来る保険外交員だ。すぐに顔をあげた。

「今日のお昼コンビニにいませんでしたか?」
「ああ。昼ご飯を買いにね」
「確かその時コンビニの店員さんと何か仲良くやってるようで」
「え?あああのことか…」
俺は昼に起きたことを包み隠さず全て話した。それを聞いた深川に安堵の表情が見えた。

「そうだったんですかぁ。いやぁ私ったら変なことを考えじゃって…」
「いや。まさかあなたに見られているとは思わなかったよ」

こうして誤解やモヤモヤが取れてまたもよくある家族のように笑いあった。
そしてファミレスを出て3人でマンションまで仲良く帰る光景はまるで誰もが理想に描く家族のようだ。

この時俺は一瞬だけ真夏の存在を忘れてしまっていた。
その時真夏にも予期せぬことが起きていたなんて全く思ってもいなかったから。
44名無しさん@実況は禁止です:2014/02/27(木) 21:42:26.80 ID:WpNqxAHhP
45 ◆lnkYxlAbaw :2014/02/27(木) 21:42:31.06 ID:uEF/hQ5e0
真実の光が少し差した者、偽りの家族を演じ罪を感じる者がいる夜。
そんな夜の首都高を一台のシボレー・タホが駆けていく。

「へぇ〜こんな車運転してるんだぁ。大きいし左ハンドルだし私には無理だなぁ」
真夏はそわそわしている。無理もない本革シートでガラスもドアも防弾仕様な車に初めて乗れば無理もない。

「これも乗っていれば慣れましたよ」
「ところでどこへ行くの?その人はそこで待ってるの?」
「はい。お嬢様が良く行く店で待っています。そことても美味しいんです」
「へぇ〜」
真夏はウキウキしながら外の景色を眺めている。


しばらくして車は代官山の『ビストローネ・ド・マイヤン』に着いた。
矢田がドアを開けると真夏は降りた。

「先輩。こっちです」
落ち着いた雰囲気の店内を通り抜けて例のVIP部屋へ案内された真夏。
高級イタリアン料理屋にこんなところがあるとは。
真夏は段々慣れない感じでそわそわしていた。


「こちらです」
矢田が扉を開けると真夏は唖然とした。

「ほぉこの方が言うとったりしゃこの先輩なんか?」
「はい。真夏先輩。こちらが私がお仕えする西野七瀬お嬢様です」
矢田が紹介すると西野はテーブルから立ち上がって真夏の前に立つ。

「どうも。西野七瀬です。良かったらあちらで何か召し上がりませんか?」
「は、はぁ…」
真夏は言われるがままにテーブルへ案内された。





「あの人は一体何を企んでいるの?」
別室のモニターで西野の行動に疑問を呈する堀。だが傍にいた白石は笑っている。
「これだったのね。さすがはなーちゃん。ああ何か面白いことになってきた」
笑みを浮かべる白石に堀は何か企みがあるのではないかと感じた。


そしてここから俺と真夏の人生は西野によって大いに変わっていくことになっていく。
46 ◆lnkYxlAbaw :2014/02/27(木) 21:43:33.61 ID:uEF/hQ5e0
夜が明けた。

結局真夏は朝まで戻らなかった。
春真を寝かしつけている間に朝を迎えていた。

今日が土曜日で会社には行かなくても良いのが幸いだ。

それにしても昨日は昨日とてとても深い一日だったな。
今日は何事もない平和な一日を過ごしたいものだ。

ピンポーン。

俺がドルチェグストで作ったコーヒーを飲もうとしたときドアホンの音が鳴る。
こんな早朝に誰だ?そう思ってモニターを覗く。

「ただいまー」
「真夏!こんな時間に帰るってどういうことだ!?」
俺はドアホンの前で思わず叫んでしまった。
だが冷静になって考えれば俺も仕事とはいえ朝帰りしたこともあった。
その時に真夏は温かいお茶漬けを作って待っててくれたな。

「まぁいい。とりあえず上がってこい」
俺はオートロックの解除ボタンを押した。


「ごめんね。色々あって…」
「気にするな。済んだことを責めても何もならん。俺も徹夜明けで帰ることもあった時お前は待っててくれたし」
「それとは違うよ。結局あれだけで…」
真夏は頭を抑えている。相当飲んだようだな。俺は以前俺が酔って帰った際に作ってくれた梅茶漬けを出した。

「これ…」
「ホラいつも俺が飲み過ぎて帰ってきたときつくってくれたろ?まぁ味は保証できんがな」
真夏はビックリしながらも俺が作った茶漬けに手を付けた。

「おいしい…」
無理をしたのか本音なのか定かではないが真夏はただ小声で呟いた。
2分ほどで食べ終わった真夏はソファに腰かけるとそのまま眠ってしまった。

「まったくしょうがないな…」
俺は傍に合ったブランケットをかける。

寝顔の真夏も愛おしい。

その寝顔を見て昨日のあの夕食の記憶が俺の胸を締め付けた。

夢であってほしいがこれが現実なのだ。

俺は罪悪感に押しつぶされそうな思いだった。
47 ◆lnkYxlAbaw :2014/02/27(木) 21:44:24.54 ID:uEF/hQ5e0
俺が真夏の笑顔に癒され昨晩の罪悪感に苛まれている時、再会を心待ちにする人物もいる。
ここは成田国際空港の到着ロビー。
大勢の報道陣やファンが今か今かと何かを待っているようだ。
そして警備員がやってきた瞬間ロビーは歓声の渦とカメラのフラッシュ音が響き、フラッシュの光に包まれる。

「きゃー!」
「こっち向いてー!」
「ウェルカムトゥジャパーン!!」
「サイン!サインプリーズ!!」

大きなサングラスをし、まるでクッキーモンスターのような服を着た女性が手を振りながら歩いていく。
どうやら来日したスターのようだ。
周囲にはまるでプロ野球の助っ人外人選手みたいな男らが黒いスーツにサングラスを着けて周囲を囲っている。

「さゆりん!サイン!サイン!」
一番前でぴょんぴょん飛び跳ねて色紙を振り回し、「I LOVE SAYURIN」と書かれた鉢巻きをしているのは中田君だ。
そういえば彼女はアイドルが好きだと言っていたな。
その奇抜なアピールが功を奏したのか女性は中田のもとへ歩み寄る。
そして、色紙を持つとサインを書いて色紙を返す。

「オーサンキュー!サンキュー!」
感動のあまり泣き出す中田。それを見て両手で投げキッスのパフォーマンスをした女性はロビーを後にした。
48 ◆lnkYxlAbaw :2014/02/27(木) 21:45:15.32 ID:uEF/hQ5e0
空港のVIP専門出口に止められているシボレー・タホ。
その前で待っていたのは白石だった。

「おーさゆりーん!」
「まいやーん!!」

白石とさゆりんと呼ばれた女性が仲良くハグをしてキスを交わす。
一見頭がおかしいように見えるが欧米では基本的なコミュニケーションスタイルだ。
だが、この二人の関係はそれ以上に思えてならない。

彼女はサングラスを外して車に乗り込んだ。
サングラスを外した瞬間。女性の正体が分かった。

女性の名はSayuri Olivia Matsumura。世間一般ではサユリンという名称が知られている。
彼女は在米日本人夫婦との間の子でロサンゼルスで生まれ育った。
父親がハリウッド関連で仕事をしていた縁で子役として数多くの映画やドラマに出た。
その後はモデルやアイドルとして活躍して彼女が19歳の時に白石と共演したファッションショーで白石と意気投合した。

それからというものの来日する度に二人は会っておりもはや親密さは増すばかりである。

「さゆりんに会えなくて寂しかったー!!」
「うちもや。毎日スカイプしとってもこうやれへんやん。だから今とても嬉しいんよー」
「もう。車の中でいちゃつくのやめてーや」
二人が抱き合う姿を見ていた西野がつい言ってしまった。

「まいやん。彼女がこないだ言うてたお嬢様なんか?」
さゆりんが白石に尋ねる。

「そう。そして私たちが何も気にせずにいられるトコを提供してくれる人」
「ホンマに。ありがとうな」
さゆりんの両親は大阪出身でどうやら関西弁で育ったらしい。だから関西弁が目立つ。

「そんでウチに頼みたいことがあるって何や?」
「それはここでは話せへんなぁ」
西野は笑みを浮かべて言う。

「うーん。何か嫌な気するけどなぁ。でも断れへんなぁ」
さゆりんは表情を曇らせた。
49 ◆lnkYxlAbaw :2014/02/27(木) 21:46:05.70 ID:uEF/hQ5e0
罪悪感を覚える俺。一方で本当の犯罪を追う者もいる。

一生懸命ノートにメモを書く三上。
書けば書くほど分からなくなる関係。そして動機。
その時衛藤と若月が神妙な顔つきでやってきた。

「警部。参事官がお呼びです」
衛藤がそう言うと三上はまた舌打ちする。

参事官からのお呼び出しで良いことは何ひとつない。
大概捜査方針へ口出しする為だ。三上は何度も参事官に盾を突いてきた。
刑事部参事官は三上にずっと頭を悩ませていた。故にずっと参事官就任は貧乏くじと呼ばれていた。

だから上は参事官に女性を送り込んできた。これで三上もおとなしくするだろうと思ったようだ。

参事官執務室に着いた三上、衛藤、若月はノックをして入室した。

「失礼します」
三人は一礼してデスクの前に立った。

「あなたが噂の三上警部ね?」
窓の外を眺めていたショートカットの女性が前を向いて椅子に腰かける。
デスクには『刑事部参事官 生田絵梨花』と金色が光るプレートに刻まれていた。
50 ◆lnkYxlAbaw :2014/02/27(木) 21:46:55.78 ID:uEF/hQ5e0
「お話とは何でしょう?」
「あなたなら言わなくても分かるでしょ?」
「先日のお台場海浜公園で起きた殺人事件ですか?」
「そう。あなたたちどうやら随分遠回りに調べているみたいね」
グレーのスーツ姿で腕を組む生田は鋭い目をして少し笑みを見せる。

「上から何らかの力が入ったのですか?」
「そんなのはあなたに関係ありません。ただ適正な捜査をしているか気になっただけです」
「へぇ。そこまで言うのであれば何か決定的な証拠があってやってるのよね?」
痛いところを突いてくる。今までの感情的か部長などの犬みたいな奴とは一味違うな。
三上は険しい表情で生田を見つめる。

「残念ながらまだ推測の域を脱してはいません。ですが、調べていけば必ず見つかるはずです」
「そんな推測であれこれ調べてるの?それとも刑事なら何調べようが自由だとでも思ってるのですか?」
「そうは思っていませんしかしですね…」
三上が反論しようとしたときに衛藤が駆け寄った。

「生田参事官。違うんです!私がいけないんです。私が…」
「衛藤!」
衛藤を制止する三上。それを見た生田は冷静に見ている。

「三上警部は本当に部下を育てるのが上手いようね」
「参事官。責任は全て私が取ります。なのでこいつらの勘を信じてください!」
衛藤と若月は普段とは別の顔をした三上を見た。二人の心に何かが響いた。

「私もうすぐ会議だから今日はいいけど。三上警部。これは覚えておいてね」
生田は資料を右手に持ち椅子から立ち上がる。

「あなたも私も警察官。神じゃないの。だからスタンドプレーは絶対に許さない。以上」
生田は笑みを浮かべてそう言うと部屋から去っていった。

「警部…」
「チッ!お前らは気にせず直感を信じて動け。さぁグズグズしてたら証拠が消えるぞ!」
「は、はい!!」
二人は驚きつつももはや癖のように駆けて行った。

「やっぱりいつもの警部じゃん!」
「でもあの言葉は嘘だとは思えないんだけどね〜」
衛藤と若月は走りながら話した。
51名無しさん@実況は禁止です:2014/02/27(木) 21:49:38.75 ID:WpNqxAHhP
今日はどこまで進むんや?
52 ◆lnkYxlAbaw :2014/02/27(木) 21:49:45.05 ID:rYyh8dEV0
「ふぁぁよく寝たー\(。・ω・)/」
すっかり昼を過ぎた時間。ソファーで背伸びをする真夏。
俺はパソコンで資料を作成していた。

「随分眠っていたな。それだけ昨日楽しかったことがあったようだね」
「うん。まあね」
「ひとつ聞きたいんだけどさ…」
俺は真夏が眠っている間ずっと聞きたかったことを切り出した。

「昨日の夜は誰と会っていたんだ?」
「えっ?」
それを聞いた途端真夏の表情が一変した。

何か隠している。

俺はそう確信した。

「いや高校の後輩だよ」
「それは分かっている。知りたいのはその後輩が会わせたいと言ってた人だよ」
俺がそう言うと真夏は下を向いてしまった。
何か言いたくない様子だ。

「なあ真夏。結婚いや付き合ってた時から約束してたよな。お互い秘密はよそうって…」
「うん」
「俺はそれを着実に守ってきたつもりだ。まあ仕事上墓場まで持っていかなきゃいけないのもあるが」
「確かに…」
「だから正直に答えて欲しい。男でもいいし誰でもいい。俺はただ隠されるのが嫌なだけなんだ」
そう言うと真夏は立ち上がりバッグからスマホを取り出した。

「あなたも知ってる人でしょ?」
真夏はテーブルにスマホを置くとそのままトイレへ入っていった。
トイレで泣きじゃくる真夏。俺はその声を聞いて問い詰めたことを後悔した。

俺はスマホを見ると愕然とした。

写っているのは何と西野だった。

一体あの夜何があったのか。そしてこれが変化のカウントダウンのはじまりでもあった。
53 ◆lnkYxlAbaw :2014/02/27(木) 21:50:35.33 ID:rYyh8dEV0
世間一般は日曜日。
家でゴロゴロする者、家族団欒を楽しむ者、遊びに行く者、それを迎え入れるために働く者がいる。

治安を守る者に休みはない。
三上は捜査一課長の執務室にいた。

「三上さん。あの生田参事官に早速噛みついたそうですね」
ソファに腰かける三上の向かい側のソファに座っているのは捜査一課長の設楽統であった。

「もう課長の耳にも入ってきましたか…」
「ええ。桜田門は狭いですからねぇ。それに生田参事官は将来の総監候補とも言われる方ですし」
「いやぁあんな若くて綺麗な上司にはついたことがないですしね」
「そういえば自分とタッグを組んでやった事件でも三上さんは俺の直感を信じて上とぶつかってくれましたよね」
「あの頃は若かったからなぁ。それにその勘が当たってたから今ここにいるんだろ?」
「正直嬉しかったですよ。あれがあったから俺は上を目指したんです。三上さんがバカを見ない組織にしたいから」
「堂々と俺を踏み台にしていったよな」
「ところで衛藤と若月はどうです?」
設楽は煙草を吹かせて尋ねる。

「衛藤は直感が鋭いし人望もある。うまく若月を立てている。若月は荒削りで本能で動くところもあるが芯は強い」
「さすが三上さん。一流の刑事を何人も育ててきただけある」
「それはお前も含めみんな実力だ。俺なんか自分の娘すらまともに育てられなかったんだ」
「いやでもあれは三上さんは…」
「とにかく。責任は俺が取るからとりあえずあいつらの直感を信じた捜査をやらせてください。課長」
「分かりました。納得いくまでやってください。参事官や刑事部長は俺が何とか話つけるんで」
「すまない」
「そんな。言ったでしょ?三上さんみたいな刑事がやりやすい環境作るのが俺の夢だし。上なんか怖くないっすよ」
三上は一礼すると部屋を出た。
54 ◆lnkYxlAbaw :2014/02/27(木) 21:51:26.30 ID:rYyh8dEV0
「警部。どちらへ?」
若月が尋ねると三上は舌打ちしてデスクに座る。

「それよりもお前らこそ何をやっている?」
「はい。実は平野の預金口座を調べていたんですがコレ見てください」
衛藤が銀行の平野の預金口座の取引履歴が書かれた紙を渡す。

「この日に百万も振り込まれている。どういうことだ?」
「出処に関しては今調べている最中です」
「怪しいな。でもこれを掴めば動機も見えてくるかもしれん」
「それともう一つ報告が…」
若月がどや顔でバッグからクリアファイルを取り出してデスクに置いた。

「これは平野と西川じゃないか?」
「はい。代官山の飲食店に設置されてた防犯カメラを調べてたら映ってましたよ。しかも日付を見てください」
三上は画像下の日付と時間の印字に注目した。そして、取引履歴の書類を見る。

「この百万が振り込まれた当日に平野と西川は共にいた」
「そうです。そして二人はこのレストランに入っていきました」
若月はもう一枚の写真を取り出す。そこには例の『ビストローネ・ド・マイヤン』に入っていく二人の姿があった。

「この店は?」
「はい。モデルなどで活躍する白石麻衣が経営するイタリア料理店です。でも実質的なオーナーは彼女が所属する『ユッタンプロモーション』です」
「でも有名人が経営するレストランでイタ飯を食べるのは不思議じゃないよな?」
「いえ。重要なのはこの店です」
「実はこの店には西野七瀬が頻繁に出入りしていて白石ともよく会っているようです」
衛藤と若月の発言をメモしていくうちに三上は自分のメモ帳を見返した。
そして一息つくと舌打ちをした。

「お前らいいところまでいっているぞ。ただまだ繋がらない。確実にひとつの線で繋がるはずなんだ」
三上はホワイトボードを見つめながら頭を抱える。

「とにかく白石と西野の関係も洗ってみます」
そう言うと二人はフロアを後にした。
55 ◆lnkYxlAbaw :2014/02/27(木) 21:52:28.85 ID:rYyh8dEV0
「おーサユリン!ウェルカム」
そう言って出迎えるロングヘアにメガネ姿に黒いスーツを着た女性。
彼女こそ白石麻衣を世に送り出し今や日本の芸能界でも顔が効く『ユッタンプロモーション』社長の斉藤優里である。

「まさかあのサユリンが日本でも活動してしかもそのマネジメントをウチでやりたいって」
「まいやんが一番信頼おいてるなら間違いないやんかー。だからね」
サユリンは笑顔で頬に手を当てている。

「それにしても全米で活躍中のアイドルと日本のトップモデルの夢の共演なんて夢みたい」
「それもこれもなーちゃんのおかげね」
「この共演はプラスになる。そう思うたから企画したんや」
狭いオフィスの応接室には今や日本を代表する女性が集っている。

「では明日のお披露目会についてのことなんだけど…」
「ちょっと待って!」
永島がそう言った瞬間白石が挙手をした。
誰もが何事かと疑問を抱いているようだ。ただ一人サユリンを除いて。

「何まいやん。言いたいことがあるなら手短に言って」
優里がそう言うと白石とサユリンは互いに見つめあって衝撃的なことを口にする。

「ウチら結婚することにしたんよーヾ(@⌒ー⌒@)ノ」

この一言はさすがに誰もが唖然とした。
56名無しさん@実況は禁止です:2014/02/27(木) 21:53:44.25 ID:WpNqxAHhP
まいさゆが結婚とか同性婚は無理やろ
57 ◆lnkYxlAbaw :2014/02/27(木) 21:54:16.85 ID:oi18eeci0
衝撃に揺れる日曜日。一方俺と真夏にも衝撃的な出来事が起きる。

俺はリビングで相変わらず会議の資料を作っていた。
休みでもこういう時に作っておかねば万が一の場合に対応は出来ない
出来る男は休みの時間を有効に使うのだ。

「……(。・ω・)」
「どうした真夏」
俺が尋ねるも真夏は黙ったまま棚からカップを取り出してドルチェグストのカプセルを入れて機械でコーヒーを淹れる。
そして俺の正面の椅子に腰かけた。

「何か言いたそうだな?」
「うん。実はね…」
真夏はコーヒーを一口飲むと一息ついて思いがけないことを口にした。

「私ね。働きに出ようかなって思うの」
俺は衝撃を受けた。

まさか真夏からそのようなことを聞かされるとは夢にも思わなかった。
俺はただ呆然としていた。

「おいおい急に笑えない冗談はやめてくれよ」
「冗談じゃない私は本気だよ!」
急に真顔になった真夏。俺は今まで見たことのない真夏の顔を見て動揺している。
どうやら本気のようだ。

「一体何故だ?収入は問題ないし第一春真はどうするんだ?」
「心配ない。そのことも考えているしそれにあなたの収入に不満はないわ」
「じゃあ一体どうして?もしかして一昨日の同窓会の後でか?そうだろ?」
真夏は図星と言わんばかりの表情をする。

やはりそうだ。

西野と会ったあの日から真夏の様子はどうもおかしい。
そして急に働きたい?
まったくあのお嬢様は一体何を考えているのか。
俺は最初から会った時からの西野への不信感を思い出した。

「それでどこで働きたいんだ?」
「うん。代官山の『ビストローネ・ド・マイヤン』というイタリア料理店」
「それって確かモデルの白石麻衣の店か?予約で全然入れないで有名な」
「うん。そこでスイーツを作る係をやって欲しいって」

急に笑顔になった真夏。そういえばスイーツを作るのが好きだった。
それを何年も俺の為に尽くしてきた。やりたいことを抑えて俺に全てを捧げてくれた。
もうそろそろ解放してあげてもいいんじゃないか。やりたいようにやらせてやれよ。

もう一人の自分が俺の脳裏にそう囁いている気がした。
58 ◆lnkYxlAbaw :2014/02/27(木) 21:55:16.19 ID:oi18eeci0
「いらっしゃいませー」
橋本がレジの前で笑顔で答える。

俺はもう何が何だかよく分からなくなった。
西野のプロジェクトに携わって以来とても幸せだった、とてもささやかな幸せは今では滅茶苦茶だ。
ある人物は人生を狂わせて挙句にその日に生涯を終えた。
そしてある人物は親子の再会を果たした。
そして妻は自分の夢を求めた。

もう何が何だかよく分かんない。
俺はただ現実から逃げたいが故にこのコンビニにやってきた。
ここなら俺が俺でいられる。

そんな気がしたんだ。

「今日は日曜ですよ。いいんですか?」
「ああ。小腹が空いただけだからね」
「そうですか…」
「あれからお父様とは?」
「いえ。あれからは…」

そんな他愛もない話を笑顔でする俺。昔はコンビニでただ飯を買って金払って帰るのが当たり前だった。
まさか店員の女の子とこんな会話をするような人間になるとは。
人は変わるもんだ。

そんな自分の変化に少し嬉しさを感じていたが現実というのは実に皮肉だ。
相変わらず衝撃的なことを神は与えてくる。


「おいコラァ金出せや金!」
「出さなきゃてめーら全員命ねぇぞぉ!」

スクリームの仮装マスクをした強盗犯が持っていた金属バットを振り回してきた。

「きゃあ!」
スパイダーマンにプレデターなどおかしな仮面を着た強盗どもが橋本に詰め寄る。
俺は覚悟を決めた。何が何でも彼女を守りきらねばなるまい。
俺は何か制圧できないか考えていた。

その時奥にいた店長が警報ベルを鳴らした。
大きな警報音に驚いた犯人は慌てて出入口へ駆けて行った。

「覚えていやがれクソ野郎!これで終わりだと思うなよ」
スクリームのマスクをした男が何故か俺に金属バットを突きつけて走り去っていった。

俺は果たして強盗集団は強盗目的で押し入ったのか疑問だった。
59 ◆lnkYxlAbaw :2014/02/27(木) 21:56:17.69 ID:oi18eeci0
一方別件の事件の現場にいた三上、衛藤、若月。

「チッ!ただのバカップルの痴話喧嘩か」
三上は不満そうにして規制線のテープの外に出た。

「私たちやっぱ睨まれてるんですかね?」
若月が呟く。

「お前らが上がどうこう気にする必要はない。こっちはいいからさっさとあの捜査に戻れ!」
「はい」
三上は舌打ちしてクラウンアスリートに乗ろうとしたときだった。

「三上警部!大変です!」
「チッ!衛藤。何だそんなに慌てて」
「そ、それが。そこのコンビニで強盗未遂事件が発生しまして…」
「そんなもん所轄に任せりゃいいだろ?何でそんなことを」
「いえ。そのコンビニにいた従業員は橋本奈々未。警部の娘さんではないですか?」
三上はそれを聞き、鬼警部の顔から父親の顔に変わった。

そして目の前に止まっていたクラウンパトカーに向かって駆けて行った。
「おいお前!どけ!おい若月!飛ばせ!サイレン鳴らして全速力でな!」
「は、はい!」
衛藤と若月は意味も分からずパトカーに乗り込み、サイレンを鳴らして全速力で走り去った。

「頼む奈々未。無事でいてくれ…」
後部座席で祈る三上。それを見た衛藤は若月を見る。ハンドルを握る若月はアクセルを踏み込んでコンビニへ向かった。
60名無しさん@実況は禁止です:2014/02/27(木) 21:58:14.11 ID:NbulfVs7i
復活
61 ◆lnkYxlAbaw :2014/02/27(木) 21:58:46.76 ID:oi18eeci0
ここまでの登場人物一覧

俺…主人公。乃木坂商事第一営業部係長
真夏…嫁。専業主婦
春真…俺と真夏の息子で幼稚園児

【西野家】
西野七瀬…西野鉄鋼グループ社長令嬢。どいやさんを世界に売り込もうとする
能條愛未…西野家東京別宅に仕える世話人(メイド)
北野日奈子…西野家東京別宅に仕える世話人(メイド)
矢田里沙子…西野家専属運転手。真夏の後輩

【ユッタンプロモーション】
白石麻衣…女優、モデル、デザイナー、実業家。西野の親友で愛称はまいやん
松村沙友理…「サユリン」としてアメリカでモデルやアイドルで活躍
永島聖羅…白石専属のマネージャー
斉藤優里…ユッタンプロモーション代表取締役社長

【乃木坂商事】
部長…営業第一部部長。主人公を買っている上司
桜井玲香…営業第一部。プロジェクトサブリーダー。版権ビジネスに精通
中田花奈…営業第一部。広報業務に精通
中元日芽香…営業第一部。グッズ販売担当。妹がさくら物産のエリート営業マン
山崎怜奈…営業第一部。英語が得意
堀未央奈…営業第一部。何故か秘書から抜擢され西野と関係あり?
高山一実…営業第一部窓口担当
伊藤かりん…営業第一部窓口担当
平野…営業第一部→グアテマラ駐在所。事件を起こし逮捕されるも数時間後に殺害される

【マンション】
深川麻衣…乃木坂バレッタ生命の保険外交員。学資保険やこどもの保険を扱う
伊藤寧々…真夏のママ友。料理の腕は一流らしい
伊藤紗々…寧々の娘。春真と同い年

【でこぴん幼稚園】
井上小百合…春真のクラス担任。愛称はさゆにゃん

【コンビニ】
橋本奈々未…主人公が通う駅までの道にあるコンビニのベテラン店員。三上の娘

【警視庁】
生田絵梨花…警視庁刑事部参事官
設楽統…警視庁捜査一課課長
三上博史…警視庁捜査一課警部。衛藤、若月の上司で橋本奈々未の父
衛藤美彩…警視庁捜査一課刑事。みさ先輩と呼ばれている
若月佑美…警視庁捜査一課刑事。若月と呼ばれている


【乃木坂テレビ】
市來玲奈…看板アナウンサー。愛称れなりん

【乃木坂オイシャン証券】
西川七海…真夏の同級生。受付嬢
62名無しさん@実況は禁止です:2014/02/27(木) 22:06:28.82 ID:WpNqxAHhP
さあ今日も頼むよ
63名無しさん@実況は禁止です:2014/02/27(木) 22:28:08.91 ID:WpNqxAHhP
まだかー?
また落ちるぞー
64名無しさん@実況は禁止です:2014/02/27(木) 22:36:39.57 ID:8J4eY8pg0
hoshu
65名無しさん@実況は禁止です:2014/02/27(木) 23:16:50.23 ID:WpNqxAHhP
まだ?
66名無しさん@実況は禁止です:2014/02/27(木) 23:33:24.67 ID:7QJygvtq0
復活して良かった!!
67 ◆lnkYxlAbaw :2014/02/28(金) 00:35:11.07 ID:vrQsMmZQ0
普段は人通りも少なく閑静なコンビニの前だが今日は違う。
パトカーと救急車が止まり周囲は野次馬が殺到していて賑わしい。

俺は橋本に付き添って救急車で手当を受けていた。
「病院で精密検査を受けられますか?」
救急隊員が質問する。
「いや。結構」
俺はとにかく家に帰りたかった。
何でこんなところで足止めを。しかも散々警察に事情を聞かれて疲れた。
真夏に知られたらどうなることやら。

その時三上らが乗ったパトカーが到着した。
後部ドアから一目散に救急車の方へ駆けてくる三上。

「おい怪我はないか?」
三上は橋本の両肩に手を当てる。その表情は我が子の身を案じる父親の顔だった。

「大丈夫。大したことない」
「あぁ良かった。あれ?あなたは…」
俺は三上と目が合った。俺はただ一礼する。

「大丈夫ですよ。ただ襲ってきたので少しカウンターにぶつけたぐらいです」
俺は救急車を離れる。橋本は念の為に救急車で病院へ行くことになった。

「俺が付き添います。衛藤、若月。この方から聴取を頼む」
三上はそう言うと救急車に乗り込む。そしてドアが閉められて救急車はサイレンを鳴らして走り去っていった。

「刑事さん…」
俺は思っていたことを衛藤と若月に言おうと決めた。

「この強盗未遂事件。強盗目的じゃないがしましてね」
「どういうことですか?」
俺がそう言うと衛藤と若月は唖然としている様子だった。
何を言っているんだコイツはと言わんばかりだ。

「何故そんなことが分かるんです?」
「強盗の一人が去り際にこう言ったんです。「覚えていやがれクソ野郎!これで終わりだと思うなよ」って」
「でも強盗は大抵そういうもんでしょ」
「しかし明らかに僕の方を向いていた。普通はコンビニの店員とかに向かって言うはずなのに」
「強盗の現場に居合わせて気が動転してるのかも」
「いや。それに明らかにレジに興味もないし金庫があるはずの事務所の方にも行かず真っ先に僕の方へ向かってきた。明らかにおかしい」
「分かりました。一応警部の方には知らせます。では、ご自宅までお送りしましょうか?」
「本来なら断るがまだ犯人も捕まってないので今回はお言葉に甘えて」
俺はパトカーの後部座席に乗り込む。
68 ◆lnkYxlAbaw :2014/02/28(金) 00:36:50.65 ID:vrQsMmZQ0
あまり体調が優れないので申し訳ないが今日はここまでです
全然進まず申し訳ない

では、みなさんをお体には気を付けて(((っ・ω・)っ
69名無しさん@実況は禁止です:2014/02/28(金) 00:37:57.65 ID:WSQLZ7XKP
>>68
なら仕方ないな
ここを立て直ししたりでな

今度こそ落とさんよう気をつける
70名無しさん@実況は禁止です:2014/02/28(金) 00:46:21.21 ID:WSQLZ7XKP
俺は藤原竜也が合うな
71名無しさん@実況は禁止です:2014/02/28(金) 03:21:00.02 ID:ciV9C3r/i
保す
72名無しさん@実況は禁止です:2014/02/28(金) 04:14:43.27 ID:VCfUFAsH0
ほしゅ
73名無しさん@実況は禁止です:2014/02/28(金) 07:32:41.16 ID:WSQLZ7XKP
ほす
74 忍法帖【Lv=27,xxxPT】(1+0:8) :2014/02/28(金) 09:40:18.40 ID:iH57ASpNP
>>68
看病エピソード頼む。高熱で動けない俺が
なーちゃん達のオモチャに…
あと参事官の宿敵国際テロリストに茶髪の留学生R
75名無しさん@実況は禁止です:2014/02/28(金) 10:13:48.13 ID:WSQLZ7XKP
何やそれ
76名無しさん@実況は禁止です:2014/02/28(金) 12:08:45.50 ID:+Vcf/gJk0
保守
77名無しさん@実況は禁止です:2014/02/28(金) 13:46:33.86 ID:Cjks5qAt0
ほす
78名無しさん@実況は禁止です:2014/02/28(金) 13:48:26.30 ID:Cjks5qAt0
平野は会社のロビーで「西野のせいで異動になった」と喚きナイフを持って突進、しかし堀のキン的に撃沈。
釈放されたあと西川七海に連絡を取っていたがその夜、惨殺死体で発見される。

衛藤は刑事の勘で西野が関わっていると疑い、西川の線から西野を辿る。
すると西川の後輩の矢田が西野家に仕えていることが判明。

また平野と西川がマイヤンへ行ったその日に100万円が振り込まれていることもわかった。
ビストローネ・ド・マイヤンは西野がよく使う馴染みの店である。


真夏は同窓会のあと後輩の矢田の運転でマイヤンへ。
そこで七瀬にマイヤンで働かないかと提案されたらしい。

「俺」は深川と夕飯を共にしたことは隠しつつ、真夏の働きたいという願いに困惑。

そんなとき橋本のコンビニに強盗が入る。
しかし「俺」は自分へ向けられた敵意を察知し刑事に伝えることに。


西野は真夏&サユリンに何を企んでいるのか。
そして平野殺し&コンビニ強盗との関わりは?

次回「見知らぬ、後部座席」
この次も、サービス、サービスゥ!
79名無しさん@実況は禁止です:2014/02/28(金) 15:28:33.76 ID:WSQLZ7XKP
>>78
いい感じやな
80名無しさん@実況は禁止です:2014/02/28(金) 16:24:46.79 ID:vjY7BW6M0
ほす
81 忍法帖【Lv=28,xxxPT】(1+0:8) :2014/02/28(金) 16:35:17.18 ID:iH57ASpNP
NISSAN車の登場で
安部礼司連想したけど
こちらは出来る男だから
トヨタハイブリッド堺雅人
が近いのかな
82名無しさん@実況は禁止です:2014/02/28(金) 17:20:03.05 ID:VCfUFAsH0
ほしゅ
83名無しさん@実況は禁止です:2014/02/28(金) 19:04:06.85 ID:iVuvC7W+0
すべてはどこから始まっているんだー
84名無しさん@実況は禁止です:2014/02/28(金) 19:50:27.15 ID:7s+11PwO0
体調大丈夫なんか
85名無しさん@実況は禁止です:2014/02/28(金) 20:18:03.72 ID:zMVEIjFA0
保守
86名無しさん@実況は禁止です:2014/02/28(金) 21:10:01.00 ID:LewqyUAm0
保守
87名無しさん@実況は禁止です:2014/02/28(金) 21:37:27.23 ID:zMVEIjFA0
保守
88名無しさん@実況は禁止です:2014/02/28(金) 22:33:19.18 ID:ylU/OSrG0
捕手
89名無しさん@実況は禁止です:2014/02/28(金) 23:17:58.46 ID:VCfUFAsH0
ホシュ
90名無しさん@実況は禁止です:2014/02/28(金) 23:44:11.44 ID:C39LEsMO0
追いついた

ほすほす
91名無しさん@実況は禁止です:2014/03/01(土) 00:19:38.36 ID:ytUa81/A0
保守
92名無しさん@実況は禁止です:2014/03/01(土) 00:56:32.60 ID:RyZyoe9Di
恋をするのはいけないことか?

感情をなくしたら 制服を着たマネキンだ
93名無しさん@実況は禁止です:2014/03/01(土) 01:14:32.19 ID:vodSGb2gP
まだ?
94名無しさん@実況は禁止です:2014/03/01(土) 01:22:04.06 ID:aXY3jJ/90
保守点検
95 ◆lnkYxlAbaw :2014/03/01(土) 02:32:12.26 ID:Zkvg8ykz0
ごめんなさい
今日は更新なしです

明日の夜に出来たら更新しますのでまた保守してくださるとありがたいです
ではおやすみなさい
96名無しさん@実況は禁止です:2014/03/01(土) 02:38:29.15 ID:ytUa81/A0
>>95
楽しみにしてるよー
97名無しさん@実況は禁止です:2014/03/01(土) 02:47:25.69 ID:67FsOT6R0
>>95
お大事に
保守頑張るべ
98名無しさん@実況は禁止です:2014/03/01(土) 02:59:47.64 ID:vodSGb2gP
>>95
あらら
まあ仕方ない
明日はよろしく
99名無しさん@実況は禁止です:2014/03/01(土) 03:48:56.53 ID:ndwIFrfh0
ほしゆ
100名無しさん@実況は禁止です:2014/03/01(土) 03:57:21.19 ID:vodSGb2gP
100ゲト
101名無しさん@実況は禁止です:2014/03/01(土) 04:17:15.90 ID:wGB8RneO0
101
102名無しさん@実況は禁止です:2014/03/01(土) 06:35:04.31 ID:c4ozLtawO
あげとくやで
103名無しさん@実況は禁止です:2014/03/01(土) 08:42:06.39 ID:hmc/a/320
作品のテーマ曲として…

http://www.nicovideo.jp/watch/sm4531258(歌詞表示あり)

http://www.youtube.com/watch?v=GtPv7v0SPR0
104名無しさん@実況は禁止です:2014/03/01(土) 08:50:52.89 ID:lUGjl07k0
保守
105名無しさん@実況は禁止です:2014/03/01(土) 10:29:48.03 ID:SVEBaes20
保守
106 忍法帖【Lv=28,xxxPT】(1+0:8) :2014/03/01(土) 10:41:22.59 ID:+PceOb/EP
刑事姿のときは若も美彩もポニテ
スパイのときはボブがいいです
107名無しさん@実況は禁止です:2014/03/01(土) 10:49:00.14 ID:CyWssxS40
>>106
二人のスーツ姿とか脳内再現余裕すぎるよなw
108名無しさん@実況は禁止です:2014/03/01(土) 13:04:27.96 ID:vodSGb2gP
あげるとよ
109名無しさん@実況は禁止です:2014/03/01(土) 13:21:12.91 ID:LRE8oQRN0
age
110名無しさん@実況は禁止です:2014/03/01(土) 14:22:15.37 ID:SVEBaes20
保守
111名無しさん@実況は禁止です:2014/03/01(土) 14:25:40.44 ID:xQUhl3g+0
ほすほす
ほすほす
112名無しさん@実況は禁止です:2014/03/01(土) 14:31:50.97 ID:c8jVeARa0
幸福のりんごのほうは落ちてるみたいだけど結末だけどうなった書いてくれ
113 忍法帖【Lv=28,xxxPT】(1+0:8) :2014/03/01(土) 14:56:10.61 ID:+PceOb/EP
主人公の初恋はおさげで
せーらー服着たさゆにゃん
114 忍法帖【Lv=28,xxxPT】(1+0:8) :2014/03/01(土) 14:59:27.87 ID:+PceOb/EP
主人公の初恋はおさげで
せーらー服着たさゆにゃん
故郷でつき合ってたが、
主人公の上京で自然消滅
「毎日電話する」
「夏には会いに帰ってくる」
都会の忙しさにかまけて
約束を果たせなかった俺
115名無しさん@実況は禁止です:2014/03/01(土) 16:05:22.19 ID:vodSGb2gP
あげ
116名無しさん@実況は禁止です:2014/03/01(土) 17:48:50.78 ID:ftPejfH80
保守
117名無しさん@実況は禁止です:2014/03/01(土) 19:02:12.81 ID:CQ4gw9WV0
ひめたんのリボン
118名無しさん@実況は禁止です:2014/03/01(土) 19:40:54.18 ID:vodSGb2gP
まだかな?まだかな?
119名無しさん@実況は禁止です:2014/03/01(土) 21:14:14.47 ID:0A4JpXY90
保守
120名無しさん@実況は禁止です:2014/03/01(土) 22:02:16.73 ID:hN+/lW4s0
保守
121 ◆lnkYxlAbaw :2014/03/01(土) 22:41:16.30 ID:Zkvg8ykz0
「ん〜何にしようか?」
ソファに寝ころび贈答用ギフトのパンフレットを見ながら考え込む西野。
「これなんかいかがですか?」
「う〜ん。何かありきたりやない?」
能條がペアの熊のぬいぐるみのセットを指すが西野は気に召さないようだ。

「ちょっと!困ります」
北野の声が外から聞こえる。何やら困惑している様子だ。
やがてカツカツと誰かが近づいている音がする。

そしてノックもなく急に扉を開けた堀がものすごい剣幕で駆け寄ってきた。
能條の背にしがみついていた西野も驚いた様子で能條の背から離れてソファに座りこむ。

「何やそんな怖い顔して…」
西野はテーブルにパンフレットを置いて平静を装う。

「どうもこうもないです。あなたは一体何がしたいのですか?」
「またそれか?そんなんあんたが思うてることなんかあらへんよ」
「いい加減誤魔化さないでください。これだけ協力してるのだから私にだけでも真の目的を教えてください」
「もうええやんそんな話は。それよりも堀ちゃんも選んでや。まいやんとサユリンの結婚祝い」
パンフレットを再び手に取る西野。それを見た堀は拳を握りしめる。

「…あなたにとって私って何ですか?ただの道具なんですか?」
「へ?」
堀の呟きに西野は思わず顔をあげる。
西野が見たのは今までで見たこともない堀の表情であった。

「そんなことあらへん。あんたは大事なパートナーや」
「だったら何故隠すのですか?私を信頼してくれるなら話してくださいよ!」
堀が大声で怒鳴ると西野は笑みを浮かべて立ち上がる。

「それなら来週のまいやんとサユリンのユニット発表会や」
「え?」
「ここでどいやさんプロジェクトも同時に公表することになっとる。あんたも参加メンバーとして来ることになるやろ」
「えぇ。一応調整役なので」
「だったらそこで分かることになるやろ。それで納得できへんならここまでや」
「…信用してもいいんですね?」
「信用しとるからここへ来たんやろ?だったら今回も私を信じてや」
「分かりました。取り乱して申し訳ありません」
堀は一礼する。カーペットには涙が滴り落ちる。

「もうそんなんで泣かんといてやぁ」
西野は堀の背を摩る。
腕で涙を拭う堀の目は何か意図を感じさせるものであった。
122名無しさん@実況は禁止です:2014/03/01(土) 22:57:43.89 ID:+raYSCha0
泣いちゃったー
123 ◆lnkYxlAbaw :2014/03/01(土) 23:56:34.68 ID:Zkvg8ykz0
場面は大きく変わってここは警察病院。
三上は橋本の身を案じて警備が厳重なこの病院に搬送させていた。
そこへ俺を自宅へ送ってやってきた衛藤と若月が合流する。

「警部。娘さんは?」
「ああ。今CT検査を受けている。多分大丈夫だ」
「あぁよかった」
「それで無事に送り届けたか?」
「はい。所轄にも彼の自宅マンションへの巡回を強化するように言ってあります」
「そうか…」

3人は1階の自販機コーナーへ場所を移し、それぞれ飲み物を購入してソファに座る。

「それで彼は何と言っていた?」
「はい。このコンビニ強盗は強盗目的ではないのではないかと言っていました」
「どういうことだ若月?」
三上が眉をひそめると衛藤がタブレット端末を取り出した。

「警部。見てください」
衛藤がタブレット端末を三上に見せる。タブレットには強盗当時の防犯カメラの映像が映し出されている。

「今時こんな目立つ姿で入って来たのか?」
「まぁここまでならただの間抜けな武装強盗にしか見えません。しかしここを見てください」
衛藤は映像を早送りして問題の場面を見せる。

「レジに目もくれずに急に襲っているな」
「しかも金庫はこの奥の扉の事務所にあります。金目的ならまずこちらへ行くでしょう」
「それすら知らなかったんじゃないのか?」
「でも見てください。奴らは出入口を固めて誰も出られないように立っているんです。初めて行くコンビニでこんなに正確に出来ますか?」
「確かに迷いもなくいるな。明らかに計画的だ」
「ここで店長が非常警報ベルを鳴らして犯人が逃亡します。よく見たら犯人は特に動揺もせず入口へ向かってます」
「ああ。まるで分かっていたかのように行動が素早い」
「そしてここでこの男が彼に向けて金属バットを突きだして何かを言って去っています」

映像を見た三上は腕を組んで考え始めた。

分からない。

何故彼らはこんなことをしたのか?
目的は何なのか?
標的は彼だったのか?

考えれば考えるほど疑問はさらに増していく。

「彼の言った通りどうやらこの強盗未遂。何かありそうだな」
三上はそう言うと紙コップを丸めてゴミ箱に捨てて去っていった。
124名無しさん@実況は禁止です:2014/03/01(土) 23:57:28.23 ID:vodSGb2gP
もうすぐ乃木坂46SHOW終わるでー
125 ◆lnkYxlAbaw :2014/03/01(土) 23:57:35.78 ID:Zkvg8ykz0
「さてまたひとつ調べることが増えたわね」
「みさ先輩。これ見てください」
若月はまいやんとサユリンの発表会のサイトを衛藤に見せる。

「これ協賛のひとつに西野鉄鋼グループと乃木坂商事ってクレジットが。これ何かありそうじゃない?」
「若月。あんた冴えてきてない?」
「そう思う?」
「コラ自画自賛するな。さぁ今日も徹夜だね」
「チッ!時間が経てばその分証拠が消えていくんだ!」
「全然似てねぇし!」
二人の疲労はピークに達しているのは容易に想像できる。だがそれを見せない笑顔で会話する。

二人は笑いながらクラウンアスリートに乗り込んで病院を出た。

「チッ!成長してないな。アイツら…」
三上は少し笑みを見せて缶コーヒーを飲んだ。
126 ◆lnkYxlAbaw :2014/03/02(日) 00:40:18.39 ID:1mY6N+ho0
「随分パトカーが行き来してるわね」
「ああ。行きつけのコンビニに強盗が入って犯人も捕まってないからな」

いくら真夏でも言えるわけがない。
俺がそのコンビニ強盗未遂に巻き込まれたこと。
その強盗犯が俺を狙っているようだということ。
今まで事件のことで警察に聞かれたこと。
警察が巡回してるのは俺がいるからだということ。

俺はソファで日経新聞を読みながら何とか平静を装っている。

「ところで今までどこ行ってたの?(。・ω・)ノ」
「え?ああ隣町の本屋だよ。仕事でどうしても必要な本があってね」
「それで見つけたの?」
「いや。なかったから結局楽天で買ったよ」
「そう。それでね…」
真夏が料理の手を止める。俺はテーブルに新聞を置いて真夏の方を向く。

「お仕事のことなんだけどね」
「ああ。その話か…」
こんな時にあまりいい話題とは言えない。
未だに俺は真夏が外で働くことにあまり乗り気ではなかった。
そう考えるともう一人の俺が自分を偽善者、束縛魔と責め立てる。

「実は来週すごいところでケーキを作って欲しいって言われたの」
「すごいところ?」
「そう。あのモデルの白石麻衣とアメリカのトップアイドルサユリンのコラボ発表会なの」
「何だって!?」
俺は思わず声を荒げてしまった。

そのイベントは俺が今携わる「どいやさんプロジェクト」を発表する機会になっている。
そこに真夏が来る?それだけでも信じられなかった。

「一体どうして?そこまで後輩はパイプを持っているのか?」
「違う。実は…」
真夏はそう言うとスマホを取り出す。

俺はスマホを手に取ると誰かのブログのようだ。
そこには真夏が作ったであろう誕生日ケーキの画像があった。

これは伊藤さんのところの紗々ちゃんの誕生日に作ったものだ。
俺はそれを見てこのブログの主が寧々であると確信した。

「なるほど。これを見たわけか…」
「お願い。これだけでいいの。これをやったらもうやらないから…」
真夏が両手を合わせて懇願している。
その姿もまた可愛らしくて惚れ直してしまいそうだ。

「分かった。でも今回だけだぞ」
「わぁありがとう!さぁ今日も頑張っちゃうぞぉ(。・ω・)ノ゙」

俺は可愛さのあまり真夏の願いを聞き入れた。

しかしこのイベントで更なる変化を生み出すことを予想できたにも拘らず俺は完全に忘れていた。
127 ◆lnkYxlAbaw :2014/03/02(日) 00:43:23.64 ID:1mY6N+ho0
今日はここまでです
散々待たせた挙句にあんまり進まず申し訳ない
あと保守していただいて感謝してます
何とか希望や期待にこたえるべく妄想していくのでよろしくお願いします

今回は特に新たな登場人物がないので一覧は控えます

では、おやすみなさい(。・ω・)ノ゙
128名無しさん@実況は禁止です:2014/03/02(日) 01:13:01.30 ID:jZZwspbb0
129名無しさん@実況は禁止です:2014/03/02(日) 01:34:28.77 ID:Pz+6GaYp0
おつつ!
130名無しさん@実況は禁止です:2014/03/02(日) 01:44:13.73 ID:RCtCofM40
毎日楽しみにしています
131名無しさん@実況は禁止です:2014/03/02(日) 03:14:36.56 ID:Qx7lZHQq0
ほしゆ
132名無しさん@実況は禁止です:2014/03/02(日) 05:32:41.40 ID:MSlu76us0
保守
133名無しさん@実況は禁止です:2014/03/02(日) 08:41:28.94 ID:RLwLmkki0
おはよう
134名無しさん@実況は禁止です:2014/03/02(日) 10:09:32.51 ID:w846bz2X0
保守
135名無しさん@実況は禁止です:2014/03/02(日) 10:54:30.12 ID:9XcA25X9O
ここで聞いていいかわからんがさゆりんごSSってどうなった?

他の場所で書くとかって言ってた?
136名無しさん@実況は禁止です:2014/03/02(日) 13:41:04.36 ID:9XcA25X9O
>>610
下ネタとかやめてください
137名無しさん@実況は禁止です:2014/03/02(日) 14:27:55.72 ID:MSlu76us0
ほしゅ
138名無しさん@実況は禁止です:2014/03/02(日) 15:02:40.66 ID:9cmbb4vhP
>>135
書き終わったらあげるとよ
139名無しさん@実況は禁止です:2014/03/02(日) 15:28:25.70 ID:9XcA25X9O
>>138
なるほど、サンキューです

あと、>>136は誤爆です
申し訳ないです
140名無しさん@実況は禁止です:2014/03/02(日) 17:48:32.30 ID:RCtCofM40
ひなちまってる
141名無しさん@実況は禁止です:2014/03/02(日) 18:36:18.41 ID:gb1wnHk20
あげ
142名無しさん@実況は禁止です:2014/03/02(日) 20:13:28.94 ID:MSlu76us0
保守
143名無しさん@実況は禁止です:2014/03/02(日) 20:35:59.96 ID:9cmbb4vhP
乃木どこまでにどんだけ進むかな?
144名無しさん@実況は禁止です:2014/03/02(日) 22:19:45.62 ID:AfY09OLY0
保守
145名無しさん@実況は禁止です:2014/03/02(日) 22:46:37.14 ID:yEUIZzi10
age
146 ◆lnkYxlAbaw :2014/03/02(日) 22:49:31.64 ID:1mY6N+ho0
そして当日の朝が来た。
それぞれが決意を固めた朝だ。

「おはよう」
「おっはよー」
俺は早くからスーツを身に纏う。真夏もいつもより気合が入っていた。

「いよいよか…」
「ごめんね。我儘言っちゃって…」
「いや。今日だけだしそれに前からやってみたかったことがやれるんだしね。それに…」
「それに?」
「いや。もしかしたらお前が一生懸命ケーキを作る姿が見られるかもと思うと今から胸が躍る気がしてな」
「もうやめてよー」
笑顔の真夏だが俺の心の中は不安でいっぱいだ。
これでまたもとの平和な生活に戻ることができるのか?
俺はもう引き返すことができないのではないかと思うだけ胸が苦しい。

だが、夢を叶える真夏の表情は俺と結婚するときに見たイキイキした表情だ。
それを見ていかに自分が勝手で傲慢な亭主なんだと痛感する。
今まで散々真夏に甘え、頼ってきたことへのツケを払う時が来たのだ。そう告げられた気がする。

何気ない朝だが何か違う。
それよりも今日のプレゼンで全てが変わる。
妻の心配も大事だが企業戦士としても大事な一日なのだ。

「よし!行ってくる」
「いってらっしゃ〜い(。・ω・)ノ」
俺は普段通り家を出て真夏が普段通りに送り出す。

この当たり前なやり取りが崩れ落ちそうな気がする。そう感じるだけで何だかやるせない思いだ。
147名無しさん@実況は禁止です:2014/03/02(日) 23:09:53.72 ID:9cmbb4vhP
やっとキタ
148名無しさん@実況は禁止です:2014/03/03(月) 00:00:01.47 ID:5EUHF9SXP
149 ◆lnkYxlAbaw :2014/03/03(月) 00:42:18.86 ID:4WsVHc8T0
「おはようございます」
「あっ深川さん。おはようございます」
マンションを出てすぐのところで出勤途中の深川に出会った。

「あっまただ」
歩いていると何台もパトカーが通り過ぎていく。
あれから一週間が過ぎたがまだ犯人は捕まっていない。
コンビニや俺の住むマンションの周辺では幾度となくパトカーが巡回している。

「まさかあのコンビニが狙われるとは思いませんでしたね」
「まったく。行きつけだったからもし巻き込まれたらと思うと」
俺は深川にもコンビニのことは黙っている。
万が一深川にまで危害を加えられてはたまらないからな。
それもあってマンションの前もパトロールの強化をお願いした。

「それにしても物騒な世の中ですよね。乃木坂商事と言えばこないだお台場で殺された人もいましたよね」
「ええ。彼と一緒に仕事もしたことがあって本当に残念だ」
「そうだったんですか…」
駅までの道のりでパトカーとすれ違う度にそんな話ばかり。
深川は今の配属先の前は事故などの保険調査をやる仕事に就いておりこういうことには敏感だという。

「ところで今日は何かあるんですか?」
深川がいきなり尋ねてきて俺は少し動揺した。

「え?ああ今日は今やってる仕事で大事な正念場を迎えるんでね」
「やっぱり。何か今日は引き締まってるっていうか…」
こんな時に見る深川の素朴な笑顔が癒しになる。
何だろう。今はこの時間が何よりも安息できる時間だな。

駅の改札を入り深川と別れた時に俺は企業戦士の顔になる。
いざ戦場へ。
電車の汽笛はまさに戦の開始を告げるファンファーレであった。
150名無しさん@実況は禁止です:2014/03/03(月) 01:42:43.30 ID:WJfQ8nfj0
見てるよー
151名無しさん@実況は禁止です:2014/03/03(月) 03:21:56.25 ID:FHtmka7m0
揚げとく
152名無しさん@実況は禁止です:2014/03/03(月) 04:50:16.17 ID:WJfQ8nfj0
保守
153名無しさん@実況は禁止です:2014/03/03(月) 08:08:18.43 ID:Vy9IRcqbO
154名無しさん@実況は禁止です:2014/03/03(月) 10:02:18.21 ID:Rm5LfQCE0
君の名は希望と今知った
155名無しさん@実況は禁止です:2014/03/03(月) 10:55:49.84 ID:zAvfbJtw0
なんかまいまいが怪しい気がしてきた
156名無しさん@実況は禁止です:2014/03/03(月) 12:33:38.39 ID:5EUHF9SXP
結局続きこなかったか
今日に期待
157名無しさん@実況は禁止です:2014/03/03(月) 14:11:52.78 ID:WJfQ8nfj0
ほしゅ
158名無しさん@実況は禁止です:2014/03/03(月) 17:31:27.44 ID:Mq3HRMv50
リゲイン
159名無しさん@実況は禁止です:2014/03/03(月) 20:04:15.90 ID:69iLi6xj0
リボルケイン
160名無しさん@実況は禁止です:2014/03/03(月) 21:50:20.38 ID:bur+vXOj0
保守
161名無しさん@実況は禁止です:2014/03/03(月) 22:29:06.82 ID:xZKqAc2B0
まだかなー
162名無しさん@実況は禁止です:2014/03/03(月) 23:15:01.05 ID:5oz9bdkR0
さゆりんご母娘妄想まだかなー
163名無しさん@実況は禁止です:2014/03/03(月) 23:32:04.25 ID:NXfYtqya0
まだかー?
これ見るの密かな楽しみなんだが…
164名無しさん@実況は禁止です:2014/03/04(火) 00:05:41.73 ID:5EUHF9SXP
まだかな?まだかな?
165名無しさん@実況は禁止です:2014/03/04(火) 00:58:27.51 ID:nxRzSL240
166 ◆lnkYxlAbaw :2014/03/04(火) 01:25:53.32 ID:GuSux9AW0
昨日はそのまま寝落ちしてしまいました
今日もこんな時間でごめんなさいm(__)m

今から始めていきます
167 ◆lnkYxlAbaw :2014/03/04(火) 01:27:05.80 ID:GuSux9AW0
一方でこちらも戦の場に出ようとしている。


「チッ!何で俺が若いアイドルなんぞのパーティーに出なきゃいけないんだ」
「でもこの一連の事件の鍵がこのパーティーにあると思うんです」
「それにここで接触できれば何かボロを出すかもしれないし」
乗り気な衛藤と若月とは対照的に三上はあまり乗り気ではないようだ。
きっと無駄骨に終わる。いやそれ以上の代償を支払うことになるかもしれない。
三上の心にはこのパーティーへ行くことが捜査上ハイリスクになると感じていた。

「言っておくが安易な接触はするな。バレたら終わりだ」
「分かっています。あくまで様子を探るだけです」
「もしひとつでもミスをしたら終わりだと思え」
三上はそう言って止めてあった日産エルグランドに乗り込んだ。
衛藤と若月も乗り込んでエンジンを始動させたところで誰かが後部ドアの窓を叩く。

スライドドアを開けたところそこにいたのは参事官の生田だった。

「参事官!」
「あなたたち一体何をしようとしているの?」
生田の問いに衛藤と若月はオロオロしている。だが、三上は動じずにハンドルに手を置く。

「もう我々がどこに行くのか知っているんですよね。参事官」
生田は三上の問いに動じることはない。
「さすがは三上警部。単純な揺さぶりには動じないわけね」
「それで?わざわざ我々を止めに来たんですか?」
「いえ。ただ私も同行させていただこうかしらと思って」
「え?」
衛藤と若月は生田の考えがまったく理解できなかった。
何故そんな行動に打って出るのか?
自分たちを監視するために行くのか?それともボロをだして捜査を潰す気なのか?
考えても分からなくなっていくが三上は冷静だった。

「だったら早くお乗りください。遅れますので…」
三上はそう言うとサングラスをかける。
生田は車に乗り込むと後ろの席に腰かけた。

車はそのまま発進し一路パーティー会場のホテルへ向かい走り始めた。
168名無しさん@実況は禁止です:2014/03/04(火) 01:27:48.17 ID:zGj0ZqSzP
キタキタ
169 ◆lnkYxlAbaw :2014/03/04(火) 02:27:52.28 ID:GuSux9AW0
「いよいよ今日このプロジェクトは本格的に始動する。みんな今までご苦労だった」
会社のオフィスでメンバーを前にして語る。
プロジェクトの初回プレゼンや大事な商談の前には必ずやる乃木坂商事の恒例行事だ。

全員が必要書類を鞄に入れて立ち上がる。
向かうはパーティー会場のホテル。
俺もノートパソコンや書類を鞄にまとめる。

「部長。行ってきます」
「しっかり頼むぞ。このプロジェクトは社運がかかっていることを忘れるな」
「分かっています」
俺はそう言って部長に一礼して部屋を出る。



会社からはタクシーに乗り込み会場へ向かう。
その車中は緊張感が支配して何とも言い難い息苦しさを感じる。
既に百戦錬磨で戦い抜いてきた俺だが他のメンバーはこういう大きなプロジェクトに携わるのは初めてだ。
だからそうなるのも無理はない。
まるで新入社員時代に初めて参加したプレゼンに向かう時のようだ。

「中元。どうした。緊張したって何も始まらないぞ」
「すいません…」
「そんな小声じゃ大失敗だぞ。もうなるようにしかならん。自分がやってきたことを信じろ」
「あぁもし失敗なんてしたら…」
「あぁもう。くだらんこと考えるな。この資料はお前が徹夜してでも書いたやつだろ?」
「そうです」
「だったらこれを説明するだけだ。それが出来るのはお前しかいないんだ」
俺は何とかして中元の緊張を解こうとする。だが、なかなか難しい。
やはり女性社員を説得するのは至難の業だ。

だがやるしかない。
みんなを信じよう。きっとうまくやってくれるはずだ。
俺も割り切った気持ちで会場へ向かうのであった。
170 ◆lnkYxlAbaw :2014/03/04(火) 02:28:42.75 ID:GuSux9AW0
ごめんなさい
今日はここまでにします

おやすみなさい
171名無しさん@実況は禁止です:2014/03/04(火) 02:32:00.83 ID:zGj0ZqSzP
>>170


明日は頼むぞ
172名無しさん@実況は禁止です:2014/03/04(火) 02:32:08.04 ID:LUBewB/E0
>>170
おやすみ
173名無しさん@実況は禁止です:2014/03/04(火) 04:40:45.48 ID:GIzDgYnM0
おもしろくなってきたーーー
174名無しさん@実況は禁止です:2014/03/04(火) 06:43:09.52 ID:5q7RwrDqO
お、あげとくか
175名無しさん@実況は禁止です:2014/03/04(火) 10:23:33.71 ID:zGj0ZqSzP
今日こそ頼むぞ
176名無しさん@実況は禁止です:2014/03/04(火) 12:04:48.12 ID:zGj0ZqSzP
昼の保守
177名無しさん@実況は禁止です:2014/03/04(火) 13:53:23.93 ID:qTnDFujq0
保守!
178名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/04(火) 15:23:15.28 ID:zGj0ZqSzP
ほす
179 忍法帖【Lv=31,xxxPT】(1+0:8) @転載禁止:2014/03/04(火) 15:34:01.36 ID:Kx9dvqlbP
衛藤刑事はコンビニ昼食で悲しんでる
…と思われるので真夏がお仕事お疲れ様です(^_^ゞ
と警官どもをもてなす大団円
180名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/04(火) 18:08:31.77 ID:z8Q71anA0
保守
181名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/04(火) 19:42:47.68 ID:qTnDFujq0
保守
182名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/04(火) 21:31:58.72 ID:LUBewB/E0
ほしゆ
183名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/04(火) 21:56:12.70 ID:4X1Nvz510
184名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/04(火) 22:44:31.01 ID:z8Q71anA0
保守
185名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/04(火) 23:08:16.12 ID:+bNxHAeU0
保守
186名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/04(火) 23:10:37.83 ID:Ti9u5HMWi
同じ空見上げるのに いつもと違ってる
いつの間に私達は こんなに遠くへ
時として全てに弱気になる 私を見つけていて

その愛で 私を見つけて
187名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/05(水) 00:42:24.49 ID:xYopIKnO0
待ってる
188 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/05(水) 01:46:52.51 ID:zVJNKc820
こんな時間にすみません
今日の更新は午前中にやりたいと思います

いつも保守してくださり大変感謝してます
ではまた出来上がったら更新します

おやすみなさい
189名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/05(水) 05:43:46.47 ID:ZFZf5ObH0
>>188
りょーかい
楽しみに待ってるよー
190名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/05(水) 08:43:30.21 ID:DRhusIqTi
保守
191名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/05(水) 11:18:58.17 ID:YQ7UJvvV0
保守
192名無しさん@実況は禁止です@転載禁止@転載禁止:2014/03/05(水) 12:41:04.66 ID:42BTmHhx0
保守
193 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/05(水) 13:25:00.09 ID:zVJNKc820
皆様大変お待たせしました
色々あってこんな時間になっちゃいましたが今から少しずつあげていきます
194 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/05(水) 13:28:18.41 ID:zVJNKc820
「なぁホンマにこの人大丈夫なん?」

一方で先に会場入りしていた西野はサユリンと白石から紹介された弁護士と会っている。
彼女は二人の法定代理人であり日本とカリフォルニア州の弁護士資格を持っている。
更には二人が立ち上げているブランドの商標や特許の申請にも携わった経験もある。
まさに今の西野が求めていた弁護士だ。

西野が受け取った名刺には『乃木坂国際法律事務所 弁護士和田まあや』と記されている。
だが実際に目の前にいる和田を見て西野は本当に優秀な弁護士なのかと疑念を抱いている。

「本当にあなた弁護士ですか?」
「イエス!これでもインポータントな案件メニーメニーやってきたんだよ」
上手とはお世辞でも言えぬ英語。ヘラヘラとした表情。時間が経つほどに不安が増す。

「なぁホンマにこの人弁護士なの?」
「まあやはこんなんだけどホントに凄い弁護士なんよー」
「そうには見えへん」
笑顔に溢れるサユリン、白石、和田を前に笑顔が消えていく西野。
どうやら思い描いていたプランとは違ったようだ。

「それでプレゼントはバッチリなんでしょうね?」
白石が西野に囁く。
「それはもちろん。この私の計画がうまくいったらな」
西野はそう言うと壇上の袖のカーテンから会場のテーブル席を見る。


「さぁ主役の登場ね」
西野は笑みを浮かべてカーテンを閉じた。
195名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/05(水) 14:03:03.27 ID:ZFZf5ObH0
きたあああああ
196名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/05(水) 17:13:36.93 ID:1wIu99hq0
保守
197名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/05(水) 17:13:50.90 ID:42BTmHhx0
保守
198 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/05(水) 17:18:02.28 ID:zVJNKc820
「ここにもうちょっと生クリームを…」
会場中央に巨大なケーキが運び込まれた。まるでウェディングケーキだ。
そこに何人ものパティシエが飾り付けの作業に入っている。

そこで飾り付けの指揮を執っている真夏。
まるでベテランのパティシエさながらの様子だ。

会場に到着した俺たち乃木坂商事の一同は早速プレゼンの準備に入る。
俺はパティシエの衣装でケーキの飾りつけをする真夏の姿にすっかり見惚れてしまった。

「係長。手を休めないでください」
桜井に声を掛けられて思わず企業戦士の顔から妻に翻弄される夫の顔になっていた。
俺は頬を叩いてプレゼンの準備を進める。

俺がスクリーンの映り具合を確認していると思わず人とぶつかってしまった。
「あっすみません」
「こちらこそごめんなさい」
ふと振り向くとぶつかった相手は何と真夏だった。

「あぁお前か」
「あなた…」
「随分似合っているな。その格好…」
「あなたが仕事しているの初めて見た」
「お前が仕切ってるのか。このケーキ。大きいなぁ」
「飾り付けだけだけど私の案が採用されて…」
「凄いじゃないか。こんなメインのものを」
「うん。だから凄いプレッシャー感じちゃう…」

俺が会話しながらケーキを眺めている。
真夏も笑顔でケーキの飾りつけ作業を見ている。

「主任。これチェックしてもらいたいんですけど」
そこへ中元が駆け寄ってきて資料のチェックを求めてきた。
「あぁ今行くよ」
俺は真夏を見ながらもテーブルへ戻った。





それから二時間ほど経過してそれぞれの準備が終わった。
俺も既に戦の準備は整えた。
あとは黙って狼煙が上がるのを待つだけだ。

「随分豪華なケーキだな」
「何かあれが食べ物とは思えない。まるで芸術ですよね」
桜井の一言は俺にとって何より嬉しかった。
あのケーキを作り上げたのが自分の妻である。
俺は言いたい気分を押し殺してテーブルに腰かけた。
199名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/05(水) 19:36:06.00 ID:6tZ0hnVLP
まだか?
200 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/05(水) 19:36:41.84 ID:zVJNKc820
「いよいよやなぁ」
西野が腕を組んでケーキを見ている時、堀がやってきた。

「本当に今日全てを明らかにしてくださるのですか?」
「そうや。まぁもうすぐやから座っててよ」
「一体このパーティーで何を仕掛けようとしておられるんです?」
「何もない。それにこのパーティーはサユリンとまいやんの為や。私はただの影武者」
「確かに。表向きはお二方の為ですが、実態はあなたの企みを一歩先へ踏み出す場ではないですか?」
「ホンマに疑り深いな堀ちゃん」
未だに堀は西野の企みが理解できないでいた。
本当にこのパーティーで明らかにしてくれるのか。
今まで西野を信じて動いてきた堀もにわかに信頼できなくなりつつあった。

「なーちゃん。ちょっといい」
白石が声を掛けると西野は何も言わず白石の方へ駆けて行った。



「最近何かおかしくない?」
堀の傍に寄ってきたのはメイドの北野だ。

「もう何を信じたらいいのか分からない」
「私も同じ気持ち。お嬢様はまるで私たちをただの駒にしか見てない」
「所詮私たちは歩兵に過ぎないわけ」
「でもこのままじゃ何か納得がいかないよね。未央奈」
北野がそう話しかけると堀は下を向いてクスクスと笑い始めた。
北野が恐怖を感じ始めた時に堀は顔をあげた。

「…きいちゃん。歩兵の本領を見せつけてやろうって思わない?」
「歩兵の本領?」
「そう。一歩先へ行くの」
「一歩先?」
「私たちが先に行って見せつけてやろうじゃない。私たちがどれだけ優秀か」

堀の視線の先に向けられる西野。
北野は堀が企んでいることが理解できず恐怖と不安を感じるのであった。
201名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/05(水) 19:39:01.12 ID:V7y8fCeDO
嫁のなーちゃんと愛人の真夏のほうが燃えねえか?
202名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/05(水) 19:40:43.95 ID:6tZ0hnVLP
>>201
人それぞれやろ
203 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/05(水) 20:04:23.88 ID:zVJNKc820
一方でこちらも会場に着いたようだ。
一見ただの招待客に見えるために警察官であるとは分からない。

「チッ!まったくこんなアイドルが人気とか世も末だな」
三上はサユリンと白石のパネルを見て舌打ちする。

「警部には分からないんスよ。二人とも凄い才能ですよ」
「分かりたくもないな。それに若月に言われても説得力がない」
「うわっ今のハラスメントっすよ」
「チッ!お前くだらないこと言っている暇があるなら衛藤みたいに何か聞き出せよ」
若月がふと目を横にやると衛藤は関係者に聞き込みをしていた。
元々コミュニケーション能力が高い。人見知りせず片っ端から声を掛けて情報を聞き出す。
刑事として大事な能力が高いのだ。


「警部。見てください」
衛藤が三上のもとに寄って俺らを指す。どうやら見つかったようだ。

「何故彼がここにいるんだ?」
「どうやら乃木坂商事が西野と何かやってるみたいでそれを発表するみたいで彼はその責任者です」
「なるほどな…。ん?」
三上はふとケーキの方を見る。そこでパティシエの衣装を着た女性を見つめる。

「衛藤。あれ彼の奥さんじゃないのか?」
衛藤は慌ててスマホを取り出して確認する。

「はい。間違いありません。妻の真夏ですね」
「ここに夫と妻がいる。偶然にしては出来過ぎている。衛藤。探りを入れろ」
「分かりました」
衛藤が人混みに消えると三上はシャンパングラスを手に取り一口飲み干す。

「夫と妻を引き寄せたとしたら一体目的は何なんだ?」
三上がそう呟いた瞬間広間の照明が全て消えた。



いよいよそれぞれの戦の狼煙が上がった瞬間だ。
204名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/05(水) 20:36:11.46 ID:6tZ0hnVLP
転載禁止になったからもうまとめでは見られないんだよなあ
205名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/05(水) 20:43:18.32 ID:ArXo8Gcy0
>>204
見る必要ないんだよなぁ
206名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/05(水) 21:19:33.86 ID:6tZ0hnVLP
続き続き
207 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/05(水) 22:17:34.57 ID:zVJNKc820
「さぁお待たせしました。これより弊社所属の白石麻衣とアメリカのトップアイドルサユリンのコラボ披露発表会を行います」
優里がスポットライトが照らす中央のマイクスタンドの前で開会を宣言した。
そしてベラベラとこれまでの経緯やら白石やサユリンについて10分ほど語りだした。

「まぁ堅苦しい挨拶はここまでにしてお待たせしました。主役の二人に登場してもらいましょー!!」
優里がそう言うとステージにドライアイスの煙が出てきて周囲を覆いつくす。
そして中央にスポットライトが当たると二人の黒い影が映し出される。
ドライアイスの煙が消えるとそこには斬新なファッションに身を包んだサユリンと白石がいた。
そして、楽曲が流れてパフォーマンスが始まった。

アメリカのトップアイドルと日本のトップアイドルの二人が歌う姿を日米のメディア関係者が次々に撮影する。
少しでも良いポジションで撮影しようとカメラマンたちの壮絶な戦いが繰り広げられている。


「よし。これが終わって会見があった後に発表だ。みんな頼んだぞ」
テーブルでパフォーマンスを見る俺らはプレゼンの最終確認を行った。

このどいやさんを展開するのは日本とアメリカだ。
その宣伝モデルを日本では白石、アメリカではサユリンがそれぞれ務めるのが決まっている。
そう、このどいやさんの展開と二人のコラボは関連しているのだ。

「しかし凄いですね。いくら世界大手の鉄鋼会社の社長令嬢とはいえ」
「ああ。何でも昔はアメリカで教育を受けてたそうだ。だからアメリカにも顔が利くそうだ」
確かにお嬢様だとしてもアメリカに留学経験があろうとも何故ここまでの大きなことが出来るのか。
寧ろ不思議で仕方がない。
しかし、今はそんなことを考えている余裕はない。


「さて行くか」
俺は水を飲むと資料を持ってステージの方へ向かった。
208 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/05(水) 22:39:08.08 ID:zVJNKc820
パフォーマンスが終わり今は二人の会見が行われている。
ステージ前には日米の報道陣が殺到しており、何台ものビデオカメラが撮影している。

「何か重大な発表があると情報があるのですが」
芸能リポーターがそう言うと二人は顔を見合わせてあのことを打ち明けた。


「あの私たち。この度結婚することにしました」


この発表で会場は騒ぎになった。
日本のトップアイドルとアメリカのトップアイドルの同性婚発表なんて史上初のことだ。
同性婚はアメリカではあまり珍しい事例ではないが日本では到底考えられないことである。
これはやがて日米関係さらには国際的な問題に発展することとなる。



そんな動揺が起きている最中にいよいよ俺たちのプレゼンを始めることとなった。

「あまりに予想外のことが起きたがこれをチャンスに有利に進めるぞ」
俺は動揺しているメンバーたちを宥めた。
とにかくこれをチャンスにこのプロジェクトを成功させよう。
出来る男は緊急事態をもチャンスに代えるのだ。
209 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/05(水) 23:39:15.77 ID:zVJNKc820
「さて、これからはこの二人のコラボのきっかけとなるある一大プロジェクトを発表します」
優里がそう言ってステージを去ると同時に西野が現れた。

「やっと姿を現したな…」
「そうですね。とんでもないオーラです」
三上がステージを見る。
その先にある西野が堂々とどいやさんについて語りだしていた。

スクリーンに映像が映し出されてプロジェクトが紹介されている。
全員が見入っているなかで三上は西野の様子を見ている。

何故か天井ばかりを見ている。
一体何を仕掛けているのだろうか。
一体何を気にしているのだろうか。

三上はただそればかりを気にして西野を見つめる。



「よし行くぞ!」
西野がスピーチを終えて一礼すると俺たちがステージに上がった。

「我々は乃木坂商事のプロジェクトチームです。これまで我々は入念に準備を重ねてまいりました」
俺は壇上でスピーチを始める。
210 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/05(水) 23:43:27.54 ID:zVJNKc820
「警部。あれ見てください」
若月が天井のひとつのスポットライトを指す。
三上はそれを見て確信した。

西野が何故天井を気にしていたのかを。

「マズイ!衛藤!若月!行くぞ」
3人が席を立とうとした瞬間その前に立ちはだかったのは生田だった。

「発表中に席を立つのは如何なものです?それも警察官が」
「参事官!どいて下さい!」
三上が声を荒げるが生田はどこうとしない。

そう言っているうちに若月が見つけたスポットライトのワイヤーが緩みだした。


「次にこのプロジェクトは…」
俺が次に話を進めようとしたとき天井のスポットライトが今にも落ちそうなのを見つけた。
そしてわずか数秒でスポットライトのワイヤが切れて西野の頭上めがけて落下し始めた。

「危ない!」
俺は咄嗟に駆け寄って西野に抱き着いた。そして中心にスポットライトが落下し破壊する音が響き渡る。

「どいてくれ!警察だ!」
「警察です!離れてください」

三上らが駆け寄り周囲は騒然としていた。



「大丈夫…ですか?」
俺は西野に問いかける。
「ええ…何とか…」
俺はそれを聞いて安心した。

だが、目の前には呆然と立ち尽くしている真夏の姿があった。

この出来事から俺たちのささやかな幸せな生活は崩れていくことになった。
211 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/05(水) 23:49:23.11 ID:zVJNKc820
今日はここまでにします
長々と待たせてすみません

では、また明日
212 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/05(水) 23:51:20.51 ID:zVJNKc820
ここまでの登場人物一覧

俺…主人公。乃木坂商事第一営業部係長
真夏…嫁。専業主婦
春真…俺と真夏の息子で幼稚園児

【西野家】
西野七瀬…西野鉄鋼グループ社長令嬢。どいやさんを世界に売り込もうとする
能條愛未…西野家東京別宅に仕える世話人(メイド)
北野日奈子…西野家東京別宅に仕える世話人(メイド)
矢田里沙子…西野家専属運転手。真夏の後輩

【ユッタンプロモーション】
白石麻衣…女優、モデル、デザイナー、実業家。西野の親友で愛称はまいやん
松村沙友理…「サユリン」としてアメリカでモデルやアイドルで活躍
永島聖羅…白石専属のマネージャー
斉藤優里…ユッタンプロモーション代表取締役社長

【乃木坂商事】
部長…営業第一部部長。主人公を買っている上司
桜井玲香…営業第一部。プロジェクトサブリーダー。版権ビジネスに精通
中田花奈…営業第一部。広報業務に精通
中元日芽香…営業第一部。グッズ販売担当。妹がさくら物産のエリート営業マン
山崎怜奈…営業第一部。英語が得意
堀未央奈…営業第一部。何故か秘書から抜擢され西野と関係あり?
高山一実…営業第一部窓口担当
伊藤かりん…営業第一部窓口担当
平野…営業第一部→グアテマラ駐在所。事件を起こし逮捕されるも数時間後に殺害される

【マンション】
深川麻衣…乃木坂バレッタ生命の保険外交員。学資保険やこどもの保険を扱う
伊藤寧々…真夏のママ友。料理の腕は一流らしい
伊藤紗々…寧々の娘。春真と同い年

【でこぴん幼稚園】
井上小百合…春真のクラス担任。愛称はさゆにゃん

【コンビニ】
橋本奈々未…主人公が通う駅までの道にあるコンビニのベテラン店員。三上の娘

【警視庁】
生田絵梨花…警視庁刑事部参事官
設楽統…警視庁捜査一課課長
三上博史…警視庁捜査一課警部。衛藤、若月の上司で橋本奈々未の父
衛藤美彩…警視庁捜査一課刑事。みさ先輩と呼ばれている
若月佑美…警視庁捜査一課刑事。若月と呼ばれている


【乃木坂テレビ】
市來玲奈…看板アナウンサー。愛称れなりん

【乃木坂オイシャン証券】
西川七海…真夏の同級生。受付嬢

【乃木坂国際法律事務所】
和田まあや…白石、サユリンの弁護士。日本と加州の弁護士資格を持つ
213名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/06(木) 00:02:09.47 ID:ZskcV2CK0
いいとこで終わらせたな
214名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/06(木) 00:53:47.86 ID:jX/XDQ8b0
続きが楽しみすぎる
215名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/06(木) 02:46:10.68 ID:rKYr6Tfv0
寝る前にあげ
216名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/06(木) 05:25:52.00 ID:W1/ODjaO0
217名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/06(木) 09:48:35.32 ID:GvdEr7yb0
保守
218名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/06(木) 10:31:12.90 ID:SkvmGztB0
いいね〜。気長に続き待ってます。
219名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/06(木) 12:02:01.98 ID:g4RO+x750
今日が楽しみすぎる
220名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/06(木) 14:03:40.46 ID:rKYr6Tfv0
捕手
221名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/06(木) 17:08:01.78 ID:jX/XDQ8b0
嫁真夏
222名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/06(木) 19:06:09.29 ID:g4RO+x750
保守
223名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/06(木) 20:21:41.91 ID:rTRI5c0r0
しえ
224名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/06(木) 21:55:01.99 ID:D5yxhncz0
しえ
225 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/06(木) 23:01:36.09 ID:BCoJ74Bh0
ホテルの前にはパトカーと救急車、レスキュー車が止まり騒然としている。
広間は警察の規制テープが貼られて事件現場と化していた。

落ちてきたスポットライト周辺は鑑識官らが写真撮影や指紋採取、証拠採取を行っている。
それをじっと見ながら天井を見る三上。

「警部。防犯カメラには特に異常は見られませんでした」
「だろうな…」
三上は白い手袋をしてスポットライトのワイヤを見る。


「まりっかまりっかまりっかりっかりっ…」
「チッ!何だそのわけが分からない歌は?」
一人の女性鑑識官に呆れる三上。だが、彼女はぶつぶつと歌い続ける。

「おい!」
三上が声を荒げるとその女性は驚いた表情をして立ち上がる。
名札には『警視庁鑑識課 伊藤万理華』とある。

「何か分かったのか?」
「あっ…。えーとまぁ結論から言っちゃうとコレは事故じゃなくて事件ね」
「それは分かる。このワイヤが人為的に切られていたのも。俺が知りたいのは他のことだ」
「あ〜。ワイヤやライトから指紋は残念ながら出なかったから計画的ね。でもいくら計画しても本番はミスしちゃうよね」
万理華はそう言うと小さい粉が付着した袋を見せる。

「何だこれは?」
「さぁね。後で詳しく分析するけど多分犯人がやらかしたものだと思う」



「警部!」
袋を見ていた三上のところに衛藤が駆け寄ってきた。

「聞き込みはどうだ?」
「ダメです。誰も上に登った人間を見た人はいないようです。直前にやったんじゃないかも」
「有り得るな。西野は頻りに天井を気にしていたからな」
「これも彼女が仕組んだことなんですか?」
「そうであれば辻褄が合う。だがどうも気になってな」
「気になるとは?」
「あまりに辻褄が合いすぎてる。西野はこんな見え透いたことをするような人間には思えん」
三上は破損したスポットライトを見ながら考え込んだ。
226名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/06(木) 23:26:19.43 ID:6AZKveNK0
お、きてた
227 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/06(木) 23:59:37.14 ID:BCoJ74Bh0
「少し痛みがありますよ…」

俺は救急車で軽い応急処置を受けていた。
あのスポットライトの落下で破片が飛び散って複数のけが人を出していた。
幸いにも全員が軽い切り傷で済んだ。
俺も飛び散った破片で顔や腕に少し傷を負った。

「病院で詳しい検査を受けられますか?」
「いや。僕は大丈夫です」
救急隊員がそう尋ねるが俺は拒否した。



「真夏…」
俺は救急車を降りると前で立っていた真夏に声を掛ける。

「…いつから?」
「は?」
真夏の問いに俺は戸惑った。

「いつからって何だ?」
「あの人とはいつから関係を持ってたのって聞いてんのよ!」
「西野さんとはまだ二週間ほど前のこのプロジェクトを立ち上げた時に初めてまともに会話したんだ」
「嘘よ。だったらその間に目覚めたの?」
「目覚めた?一体何に?」
「とにかくあなた最近おかしいわ。そうこの二週間で何かが変わったよ」
「それならお前もだ。ここ最近おかしいぞ。特にあの同窓会に行った夜からだ」
俺たちは付き合い始めて初めてと言っていいほどの言い争いを展開している。
普段にこやかに会話することが多かったいやそれしかなかった。
それが今では離婚寸前の冷めきった夫婦のようになってしまっている。
こんなことを言うつもりなかったのに。
何故こんなことを言うんだ。

俺はふと思った瞬間。言葉が出なくなってしまった。
真夏も同じことを思ったのか。会話が止まり涙を流している。


「あの…。詳しい事情をお聞きしたいので署までご同行願います。奥さまはパトカーでご自宅までお送りします」
衛藤がそう言うと俺は頷いて若月、三上が立っているパトカーに乗り込んだ。
真夏も警官に促されて俺が乗ったパトカーの隣に止まっているパトカーに乗り込む。

後部座席の窓から互いの顔を見合わせる。
だがそれも束の間でパトカーは逆の方向へ走り出した。
228 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/07(金) 01:34:56.06 ID:6Hb6E/oT0
「ご協力ありがとうございました」


警官が一礼すると去っていく。
堀は一息ついてペットボトルの水を飲む。

「事情聴取終わった…?」
北野が堀に近寄る。北野も既に事情を聞かれていた。

「うん。まあ形式的なものだけどね」
「お嬢様は警察署へ事情を聞かれに向かわれたけど…」
「あの捜査一課の刑事らはお嬢様を主犯と見ているからね」
「何かマズイことになってる気が…」
「いいの。全て計算通りよ」
堀は笑みを浮かべながら地下駐車場に向かうためにエレベーターに乗り込む。


「本当に計算通りなの?」
北野は不安そうに尋ねる。

「きいちゃんさ。今更引き返せないの。いい加減吹っ切れなさいよ」
「そうだけどでも何か違うような…」
「そもそもあんたでしょ?だから私は知恵を貸したのに」
「それは確かにそうだけど…」
「だったら私を信じてよ。現に今はうまくいってるんだから」
堀の口調に北野はただ黙り込むしかない。


「それで次はどうするの?」
「もう次の手は考えてあるよ」

堀はそう言うと笑みを浮かべて止まっている日産シーマの後部座席に乗り込む。
北野も黙ってドアを開けて乗り込むとそのまま地下駐車場から走り去っていった。




堀の言った次の手が俺たちにとんでもないことになろうとは予測することは誰にもできなかっただろう。
229 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/07(金) 01:36:01.92 ID:6Hb6E/oT0
とりあえずここまでにします
明日は更新できるかどうかまだ分かんないですが出来たらやりたいと思うのでまたお願いします

それではおやすみ
230 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/07(金) 01:37:07.43 ID:6Hb6E/oT0
ここまでの登場人物一覧

俺…主人公。乃木坂商事第一営業部係長
真夏…嫁。専業主婦
春真…俺と真夏の息子で幼稚園児

【西野家】
西野七瀬…西野鉄鋼グループ社長令嬢。どいやさんを世界に売り込もうとする
能條愛未…西野家東京別宅に仕える世話人(メイド)
北野日奈子…西野家東京別宅に仕える世話人(メイド)
矢田里沙子…西野家専属運転手。真夏の後輩

【ユッタンプロモーション】
白石麻衣…女優、モデル、デザイナー、実業家。西野の親友で愛称はまいやん
松村沙友理…「サユリン」としてアメリカでモデルやアイドルで活躍
永島聖羅…白石専属のマネージャー
斉藤優里…ユッタンプロモーション代表取締役社長

【乃木坂商事】
部長…営業第一部部長。主人公を買っている上司
桜井玲香…営業第一部。プロジェクトサブリーダー。版権ビジネスに精通
中田花奈…営業第一部。広報業務に精通
中元日芽香…営業第一部。グッズ販売担当。妹がさくら物産のエリート営業マン
山崎怜奈…営業第一部。英語が得意
堀未央奈…営業第一部。何故か秘書から抜擢され西野と関係あり?
高山一実…営業第一部窓口担当
伊藤かりん…営業第一部窓口担当
平野…営業第一部→グアテマラ駐在所。事件を起こし逮捕されるも数時間後に殺害される

【マンション】
深川麻衣…乃木坂バレッタ生命の保険外交員。学資保険やこどもの保険を扱う
伊藤寧々…真夏のママ友。料理の腕は一流らしい
伊藤紗々…寧々の娘。春真と同い年

【でこぴん幼稚園】
井上小百合…春真のクラス担任。愛称はさゆにゃん

【コンビニ】
橋本奈々未…主人公が通う駅までの道にあるコンビニのベテラン店員。三上の娘

【警視庁】
生田絵梨花…警視庁刑事部参事官
設楽統…警視庁捜査一課課長
三上博史…警視庁捜査一課警部。衛藤、若月の上司で橋本奈々未の父
衛藤美彩…警視庁捜査一課刑事。みさ先輩と呼ばれている
若月佑美…警視庁捜査一課刑事。若月と呼ばれている
伊藤万理華…警視庁鑑識課鑑識官。愛称はまりっか

【乃木坂テレビ】
市來玲奈…看板アナウンサー。愛称れなりん

【乃木坂オイシャン証券】
西川七海…真夏の同級生。受付嬢

【乃木坂国際法律事務所】
和田まあや…白石、サユリンの弁護士。日本と加州の弁護士資格を持つ
231名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/07(金) 01:38:27.11 ID:L3XspHAr0
おつです
232名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/07(金) 01:54:57.58 ID:fHeE57/50
233名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/07(金) 02:37:09.90 ID:4BYi/GVj0
おつー
234名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/07(金) 03:01:56.83 ID:v4kEuOYv0
平野は乃木坂商事のロビーで西野を襲い、釈放されたあと惨殺死体で発見された。
衛藤らの捜査により平野は西野と繋がっていたことが判明した。

そして乃木坂商事・西野グループ・真夏・警察・ユッタンプロらが一堂に会したユニット発表会で
落下する照明からまたしても「俺」は西野を守った。
しかしその光景を目撃した真夏とはケンカ別れになってしまった。

警察は西野を疑うが見え透いた犯行に真意を探る。


堀は次の手に何を企んでいるのか。
平野殺し&コンビニ強盗の犯人は?
もう「俺」と真夏に平穏は戻らないの?


次回「ミオナ、心のむこうに」
さぁ〜てこの次も、サービス、サービスゥ!
235名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/07(金) 05:36:04.28 ID:Tdyx7DQX0
切ない別れを描いた名バラードナンバー
このストーリーと少しリンクしてくるのかな?
http://www.youtube.com/watch?v=HlQLCtKjvfM

http://www.nicovideo.jp/watch/sm3350754 …歌詞表示付き
236名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/07(金) 08:34:49.30 ID:31Oa52dc0
保守
237名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/07(金) 11:20:06.63 ID:F+cE7UMH0
保守
238名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/07(金) 14:03:43.90 ID:o4wj3EHX0
保守
239名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/07(金) 17:01:05.40 ID:4BYi/GVj0
240名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/07(金) 18:56:37.92 ID:L3XspHAr0
まなつんでれ
241名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/07(金) 19:31:39.10 ID:xehDyeWZ0
ハブ詰んでる
242名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/07(金) 22:19:00.52 ID:L3XspHAr0
待つ
243名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/07(金) 23:40:58.97 ID:4BYi/GVj0
待機
244名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/08(土) 00:50:26.79 ID:OcrfC45A0
保守
245 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/08(土) 01:22:02.44 ID:e015IF+70
いつも保守していただきありがとうございます
今日の更新ですが午前中になると思います
せっかくお待ちいただいたのに申し訳ないです
246名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/08(土) 01:58:56.55 ID:LZDn/4DH0
まりっかきくけ〜困ったときは言葉の魔法 へーんしん!
247名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/08(土) 05:02:01.45 ID:uLW45whI0
金曜日深夜はNOGIBINGO2
土曜日深夜はうまズキッ
日曜日深夜は乃木坂ってどこ
248 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/08(土) 10:23:07.45 ID:e015IF+70
おはようございます
もう少ししたら始めます
249名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/08(土) 10:55:03.79 ID:olvVywm80
期待あげ
250 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/08(土) 11:10:09.78 ID:e015IF+70
俺が事情を聞かれてマンションに戻ったときは既に周囲は暗くなっていた。
俺はパトカーでマンションの前まで送ってもらった。
未だにコンビニ強盗未遂の犯人も捕まってはいない。
その不安を伝えたら三上らの計らいでパトカーで送ってもらえたというわけだ。

「あら?」
そこへ仕事から帰ってきた深川に出くわした。

「とんでもないところを見られてしまったなぁ」
「何故パトカーから降りてきたんですか?」
当然の質問を投げかけてきた。

無理もない。

いきなり知り合いがパトカーから降りてきたのだから。


「それどうしたんですか?」
深川は当初の質問を忘れてスポットライトの破片で負った傷のところを見る。

「あぁ。ちょっとね」
「そうですか…」

沈黙したままエレベーターに乗り込む俺と深川。
するとエレベーターにある小型液晶ディスプレイのニュース表示で事件のことが報じられていた。
ふと目を逸らすと深川は感じたようだ。


「この事件ですね。その傷は…」
「え?」
深川がふと呟いた言葉に俺はどう言い訳しようか考え込むが浮かばない。
ここは正直に言え。
もう一人の俺の声が囁き、俺は全てを打ち明けようと決めた。

だがそんな時にピンポーンとエレベーターのチャイムが鳴る。
エレベーターの扉が開く。

「じゃあ私はこれで…」
深川は足早にエレベーターを降りて行った。
「ちょっちょっと待って…」
俺が止めようとするも非情にもエレベーターの扉が閉まり、上昇していった。

「ちくしょう!」
俺は思わずエレベーターの壁に拳をぶつけた。




「きゃっすみません」
「いえ。こちらこそごめんなさい…」
深川は部屋の前でフードを被った女性とぶつかる。
ぶつかった女性は謝ったら足早に去っていった。
深川は首を傾げるも鍵を開けて部屋に入っていった。


「もしもし未央奈。うん。今入っていったよ。分かった。じゃあ下で…」
スマホをタッチしてジャンパーのポケットに入れる女性。
フードを外すとそれは紛れもなく北野であった。
北野は笑みを浮かべて非常階段を下っていった。
251 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/08(土) 12:47:29.79 ID:e015IF+70
深川が北野と接触していることも知らない俺は家に戻る。

「ただいま。あれ?真夏?」
先に帰っていたはずの真夏が見当たらない。
鍵がかかっている時から怪しいとは思っていたがどこにもいない。

ふとリビングのテーブルの真ん中に置かれたメモ用紙を見つける。

『春真としばらく実家に帰ります。』

「…何だよコレ」
俺はメモを手で丸めてゴミ箱めがけて投げつけた。
そして奇声を上げてそこらじゅうの物を投げつけたり蹴飛ばしたりした。

我に返ったとき、既に部屋は荒れに荒れていた。
常に真夏が時間をかけて掃除をして綺麗だったリビングは僅か数分で地獄に変貌していた。
それがまるでささやかな幸せの崩壊を意味しているようだった。

「アハ、アハ、ハハハハハハハハ…」
俺はただ笑うしかなかった。
でなきゃ自分が自分でなくなりそうだからだ。

もはや俺は限界に達していた。
いつからこうなってしまったのだろう。
どこで間違えてしまったのだろう。
考えても考えても答えは見つからない。
まるで複雑な迷路に迷い込んでしまったような感じだ。
答えを見つけようという一心だけで頭がパニックになってしまっている。
いくら出来る男と言えど自分が持つ情報だけで答えは見つけられない。

俺は鏡を見て一番のどん底に堕ちたのだと感じるのだった。
252名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/08(土) 15:19:53.53 ID:qbPZNHIm0
sie
253 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/08(土) 16:03:48.01 ID:e015IF+70
「何でお前たちまでついてくる?」
「私たちは警部の部下ですよ。一緒に行くのは当然です」
「嘘つけ。お前らはただ俺の過去を知りたいだけだろ?」
「若月嘘つくの下手すぎなんだよ」

三上、衛藤、若月の3人は駅前のコインパーキングに車を停めて目の前のコンビニへ歩き始めた。

「警部。娘さんと会ってから何か様子がおかしいよね」
若月が三上とは一歩離れて歩く衛藤に話しかける。

「確かにね。まぁ分かるけど」
「え?どういうこと」
「あんたすぐ顔に出るから言わなかったけど私調べたのよ」
「調べた?」
「警部の過去よ」
「へ?いつの間に…」
「あんたと一緒にやったらバレるじゃない。だから黙ってたの」
「それで?それで?」
若月は衛藤の右腕に腕を絡めて問い詰める。


「お前ら無駄口叩いてるんなら帰れ!」
三上が怒鳴りつけ二人は驚いた表情をする。
三上は呆れて舌打ちをしてコンビニに入る。


「いらっしゃいま…」
橋本は突然現れた父の姿に手が止まる。

「何しに来たの?」
「被害者の様子を見に来るのが警察官の仕事だ」
「本当にそれだけ?」
「ああ。それに腹も減ったしな。弁当でも買っていこうかと」
「言っとくけど私はまだあなたを許したつもりないから」
「許しを乞いに来たわけじゃない。だがもう逃げるのはやめただけだ」
「は?」
「俺は今まで現実から自分の罪からお前からも逃げてきた。目の前にある罪を暴くことで償いをしたつもりだった」
三上はそう言うと橋本の右手を掴む。

「だが俺は逃げない。たとえお前に一生許されなくても構わない。俺は犯した罪を償いたいんだ」
「ちょっと離してよ!」
橋本が三上の腕を振り払う。

その時店内へ俺が一人の少女を連れて入ってきた。
少女は足早に橋本のもとへ歩み寄る。


「あの…。橋本奈々未さん…ですか…?」
突然橋本に話しかける少女。
三上は唖然としている。どうやら少女を知っているようだ。

「そうですけど…。あなたは…?」
橋本は初対面の少女に突然声を掛けられて戸惑っている。
だが、少女の一言で周囲の空気も事態も一変することとなる。


「やっと会えましたね。お姉ちゃん」
「日奈…。何故ここに…?」
254名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/08(土) 18:30:14.24 ID:0DbAl6mp0
ひっひなちま?
255 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/08(土) 19:57:02.85 ID:e015IF+70
事態が一変した数分前に話は戻る。


俺は何か食事をしようとコンビニに向かっていた。
コンビニの前に着くと前で何やらそわそわと動く少女が見えた。
俺は何か気になった。
まさかこないだの強盗未遂に関係あるのか?

「君。どうしたんだ?」
「え?い、いや…」
明らかに様子がおかしい。
少女は声を掛けられた途端に動揺した様子で走り去ろうとした。
もしや万引きでもしたのか?
俺は慌ててその後を追った。

「君。待ちなさい!」
「きゃっ!いきなり何ですかぁ?」
何だ?
少し関西の方の方言が入っているがどうも違和感がある。
イントネーション的に京都の人間だろう。
だが明らかに京都出身者とも思えない気がする。

「君。京都から来たのかい?」
「え?何で?」
「話し方だよ。僕もよく京都の人と話をするから分かるんだ」
「凄い。やっぱり東京にはそういう人が多いんやなぁ」
俺は彼女の右手に注目した。何か手紙みたいなのを持っているようだ。


「もし無断でお店から何かを持ってきたなら出しなさい。悪いようにはしない」
「え?い、いやあのお店には入ってないんです」
俺の勘は外れた。だが、安心した。
彼女がそういう行為に及んでいたと想像するだけでも恐ろしい。

「じゃああそこで何を?」
「実はあの店員さんに用事があって…」
「あぁ。彼女にか。だったら一緒に行ってあげよう」
俺は橋本に用があると知って親戚関係の子なのだろうと考えた。

「まぁ緊張しちゃうのは分かるがもし警官だったら職務質問を受けてたぞ」
「何かすいません…」
「ところで君、名前は?」
「はい。樋口日奈と言います。春からは京都の警察学校に」
「じゃあ警察官なのか。いやぁとんでもない疑いをかけてしまったなぁ」
「ええんです。確かに怪しかったし…」
こうして俺は樋口とコンビニの店内に入り、三上のパンドラの箱を開けてしまったのだ。
256 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/08(土) 21:01:57.43 ID:e015IF+70
場所はコンビニから近くのファミレスに移る。


窓際にあるテーブル席には三上と橋本と樋口が座る。
そこから少し離れたところに俺と衛藤、若月が座る。


「日奈?お姉ちゃん?どういうことなの?」
最初に口火を切ったのは橋本であった。

「奈々未。すまない。今まで黙っていて…」
「もう何が何だか分からない。まさか隠し子がいたなんて…」
「いや。聞いてくれ。そうじゃないんだ!」
「じゃあ何なのよ!一体この子は何なの?」
当然のごとく修羅場である。父と異母姉妹が揃ってしまえばこうなる。
俺らはただ黙ってコーヒーを飲みながら見守るしかなかった。


「私も知りませんでした。まさか実の姉がいたなんて」
隠してきた真実がどんどんと白日のもとに晒されていく。
まるで長きに渡り大衆を騙してきた作曲家のようである。
だが、崩れるのは案外簡単なものだ。
そして知れ渡ってしまうのも早い。現に俺らも知ってしまったのだから。

「すまなかった。だがこれには事情があってな…」
「くだらない!私帰るから…」
橋本が席を立とうとした瞬間、何故か俺が立って止めた。

「今ここで去ったらあなたは父親まで失う。そうなったら一人になる。嫌なら戻って真実を聞くのが賢明だ」
俺がそう言うと橋本はしばらく黙ってから席へ戻っていった。
色んな取引や商談の現場を知っているからこそ出た宥め方だ。
感情的なクライアントも多い。それをいかに宥めテーブルに着かせることが出来るかも出来る男には求められているのだ。

こうして席に戻った橋本を見てついに三上が長年秘め続けていたことを話し始めた。
その三上の秘め事は今後俺にとっても大変参考になるものだった。
257名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/08(土) 21:25:00.15 ID:ZfX3e/+C0
作曲家ww
258 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/08(土) 21:43:56.56 ID:e015IF+70
ここからまだ俺が真夏の存在すら知らない18年前のとある冬の日の話だ。

とある病院の病室にいるのは三上とまだ幼い橋本である。
「先生。妻はどうなんですか?」
「大分悪化してますね。今日明日がヤマでしょうなぁ」
「そんな…。ど、どうにかならないんですか?何かあるはずでしょう?」
三上は医師に詰め寄る。
その場にいた看護師が宥め、橋本は怯えるようにクマのぬいぐるみを握りしめる。

「申し訳ありません。手は尽くしたんです。これ以上はどうにも…」
医師は振り切ると足早に病室を出て行った。


「ねぇお父さん。ヤマってどういうこと?」
「お前が心配することじゃない。今からおじいちゃんたちが来るから向こうでジュースでも飲んで待っていなさい」
三上は橋本に小銭を渡す。幼い橋本はそのまま病室を出て行った。

「三上さん!」
そこに病室へ入ってきたのは当時コンビを組んでいた設楽であった。
「一体何だ?」
「奴が彼女を人質に立てこもりました」
「何だって!?」

三上はとある事件で知り合った被害者の女性から付きまといの相談を受けていた。
当時はまだストーカーという言葉が世間では浸透していない時代で何か起きなければ警察は動かなかった時代だ。
三上はその女性と親密な関係にあった。
最初は身を守るためにやっていたが時間が経過するにつれて被害者から警護対象者、ついには愛人となっていた。
当時三上の妻は子宮がんを患い、次々に転移して手が施しようがない状態だった。
当時末期がん患者への緩和ケアなんていう概念もなく妻は度重なる手術に放射線、抗がん剤治療でボロボロだった。
この時はもうこれ以上の治療は出来ない状態であった。
せめて最期ぐらい看取ってやりたい。
そう思っていた矢先に付きまとっていた男が覚せい剤の影響でハイになって暴れた挙句その女性の自室に立てこもったのだ。


「しかし妻はもう長くないんだ」
「三上さん。知ってるでしょう。彼女の状態を」
「ああ。だが…」
「奴はあなたを出せと騒いでます。時間がないですよ。もし次ブチ切れたら彼女もお腹にいる子だって…」
「分かってるよ!お前は少し黙っていろ!!」
三上は頭を抱えて椅子に座りこむ。

「お、奥さん!!」
設楽の声を聞いて顔をあげる三上。
三上が目にしたのは人工呼吸器をつけている中で目を開けた妻の姿だった。
259 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/08(土) 21:55:16.32 ID:e015IF+70
「ひ、陽菜。どうしたんだ?」
三上は妻三上陽菜の手を握り声を掛ける。
陽菜は呼吸器を自らの手で外して話し始める。

「あな…た…。い、行って…」
「はぁ?一体どこへ行けというんだ?」
「決ま…ってる…じゃない。現場よ…」
「現場?まさかお前聞いてたのか?」
「何もかも知ってるわよ。あなたが相談を受けてたこともその女性が妊娠してるのも…」
「チッ!何もかも知っていたわけか」
「えぇ…。設楽さんからも聞いてた…。でも責めないであげて。私が無理やり聞いたから…」
三上が振り向くと設楽は頭を下げていた。

「すいません。あれだけ言い寄られたら隠せなかったっす。半端ないっすよ奥さん」
「隠し事が下手だな俺は。うまく騙せていたと思ったが」
「私を騙すなんて百万年早いわよ…。もういいから行って…」
「いやしかし。奈々未もいるんだ。置いては…」
「いいの。奈々未はあなたに似て強い子だから大丈夫。いつかきっと分かってくれるはずよ」
陽菜の言葉に心情を汲み取った三上はコートを取り出す。

「いいか。すぐに終わらせてくからな。それまで頑張れよ」
「うん…」

そう言うと三上は設楽とともに病室を出た。

「お父さん…?」
橋本は祖父母と共に病院を足早に去る三上を見た。

それからしばらくして陽菜は息を引き取った。
三上との約束は果たせなかった。
それにより父娘関係に亀裂が入って現在に至る。
260 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/08(土) 22:25:52.43 ID:e015IF+70
都内の下町風情漂う住宅街の一角にあるアパートの前。
周囲はパトカーが何台も停車して物々しい雰囲気に包まれている。

そこへ一台のクラウン覆面パトカーが停車する。
助手席から降りてきた三上は一目散に現場の前に駆け寄った。


「三上。こんなとこで何やってんだ?」
「生駒警視!状況は?状況はどうなんですか?」
三上が声を掛けた男は生駒敏郎。当時は捜査一課の課長だ。
彼とその娘里奈は後に俺の起きていることに深く関わってくるがその話はまた後で。

「まぁ落ち着け。心配ない。だが油断は出来ん。これよりSITによる強行突入を行う」
「待ってください!強行突入はリスクが高すぎます!」
「相手が常人ならそれでいい。だが今立てこもってる奴はヤクでハイになってていつ危害を加えるか危険だ」
「そうですが、今突入したらヤツを更に刺激するだけで危険です!」
「これはもう決まったことだ。文句あるなら刑事部長に言え」
「あなたが進言したからだ!」
「少しは言葉を慎めぇ三上。もういい。設楽。下げさせろ」
「ちょっと待ってください!警視!せめてもう少し私に時間を下さい!お願いします!」
三上は設楽に促されて外へ出されてしまった。


「ようし!突入だぁ」
生駒警視は冷静な表情で突入を告げてSITの突入班が催涙ガス弾を部屋に投げ込んだ。
そしてそれからは一気に捜査官が部屋になだれこみ、大きな物音がする。

「犯人確保!」
奇声をあげて高笑いをする完全にイカれた男は「2ちゃんねる万歳」などと叫んでパトカーに乗せられていった。

「マズイ!破水している!」
「早く救急車を!」
捜査官らが大声を上げる。
三上は慌てて担架で運ばれる女性のところへ駆け寄った。

「おい!頑張れ!俺だ!俺がついている!」
三上は大声で彼女の耳元で励まし続けながら救急車に乗り込んだ。
そして救急車は一路先ほどまでいた病院へ向けて走り出したのであった。
261 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/08(土) 23:00:54.44 ID:e015IF+70
数時間後。緊急の帝王切開手術で女性は女児を出産した。

しかしその後出血が酷く我が子を見ないまま女性はこの世を去った。
三上は大切な女性を一夜で二人も亡くしたのだ。

だが代わりに新たな命が生まれた。


しかしその後は悲惨なものだった。
生まれた女児は女性の親族に引き取られることになった。
三上は名付け親になることを条件に引き取ることを認めた。
三上は女児に日奈と名付けた。
そう、妻と同じ名前だ。
妻を忘れないために、自分の犯した罪を忘れないためにそう考えたからだ。

それから日奈と出会ったのはそれから14年後のことだった。


一方で奈々未も最期に立ち会えなかった三上に激怒した陽菜の両親によって引き裂かれた。
まだ幼かった奈々未は母方の旧姓橋本となり祖父母の住む北海道に移り住んだ。
その祖父母によって今の橋本が持つ最低な父親像が生まれた。


市民を守る正義の心、先が見えた最愛の人間に何もできないもどかしさ。
ここから生まれた僅かな隙間に入り込んだ悪魔によって起こしてしまった罪。
その代償は18年経過した今でも支払い続けている。

そして現在日々隠し続けたことを晒した三上は穏やかな表情をしている。
まるで18年前に生まれた日奈を抱いた父のような。
永久の眠りについた妻の安らかな顔を見たかのような。

隠し事は良くない。
帰ったら真夏に真実を伝えよう。

俺がそう確信したその瞬間スマホのバイブ音が鳴る。

「もしもし。あぁ寧々さんか?どうしましたか?え?春真を預かっているって?どうして?」
「それが急に少しだけ預かってと言ってそれっきりなんです」
「そんなバカな。妻は実家に里帰りするとメモを残していたはずですが…」
「え!?一緒じゃないんですか?私はそう聞いてましたよ。何かの記念日で今夜は外で食べるからって」
「はぁ?一体誰がそんなことを…?え?ほ、本当ですか?はい。分かりました。ではすぐに…」
俺は電話を切ると立ち上がった。

「どうかしました?」
三上が俺に尋ねる。
「い、いえ。ちょっと子供を迎えに…」
「何かあったんですよね?我々も同行します。奈々未。すまないが日奈を頼む。衛藤!若月!行くぞ!」
「は?え?ちょっちょっと…」
橋本の返答も待たずにコートを持って走り去っていった。

橋本はその姿を見てあの時の病院から出ていくかつての父の姿を思い返した。
262 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/08(土) 23:03:30.17 ID:e015IF+70
今日はここまでです
諸事情により登場人物一覧などは明日更新します

では、また明日
おやすみなさい
263名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/08(土) 23:43:22.83 ID:0DbAl6mp0
お疲れ様です
264名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/08(土) 23:45:47.40 ID:S/3gZpUi0
一気に話が動いたな
思ったよりドロドロしてるな
265名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/09(日) 00:16:49.12 ID:OgsIxfmm0
いろいろ時事ネタが盛り込まれてるw
おもしろいです!
266名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/09(日) 00:27:44.37 ID:nQDUoinz0
明日も待ってるぜー
267名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/09(日) 00:32:09.00 ID:4puPSdrSO
人工呼吸器を自ら引き抜くとはなかなかの地獄絵図w
268 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/09(日) 09:05:48.44 ID:uyT8hO4b0
おはようございます
269名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/09(日) 10:58:51.56 ID:0QF1IAuY0
「気づいたら片想い」を聞きながら読むのも一興
270名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/09(日) 12:25:36.78 ID:OgsIxfmm0
保守
271名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/09(日) 13:24:47.05 ID:2LAliPiQ0
保守
272名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/09(日) 13:45:01.22 ID:iPc0xahU0
まだかね?
273名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/09(日) 14:05:33.29 ID:b64mKMrA0
愛人ネタいいね!登場する男性人に甲斐性ありまくりを期待
困ってる女性を捨てきれず八方美人真中淳平
274名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/09(日) 15:06:10.78 ID:bRPI4rg70
意味不明
275名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/09(日) 15:53:33.56 ID:k070be3p0
まだー?
276名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/09(日) 17:06:28.87 ID:d+jq4I3+0
保守
277名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/09(日) 18:22:31.13 ID:zwogKuAii
荻野暢也あげ
278名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/09(日) 18:38:24.44 ID:2LAliPiQ0
誰だよ
279 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/09(日) 19:23:31.80 ID:uyT8hO4b0
「ほなちょっと行ってくるからな。きいちゃん頼んだで」
「はい。行ってらっしゃいませお嬢様」

この話は俺が失意のどん底に堕ちていた時に起きたことである。
西野はメイドの能條と運転手の矢田を連れて銀座に買い物へ出かけた。
北野は自主的に留守を申し入れたわけだが当然これには理由がある。

西野らが出かけてから数分後にトヨタ・ヴェルファイアが入ってくる。
右側スライドドアが開くとそこから堀が降りてきた。

「誰もいないよね?」
「うん。今は私一人だしカメラもセキュリティも切ってあるから」
北野は防犯責任者としてセキュリティの管理も任されている。故に防犯カメラやセンサーを無効にするのはお手のものだ。
しかもあらかじめ点検をすると伝えてあるので切ってあっても問題はないのだ。

「未央奈。急いで。あと2分で全て元に戻っちゃうから」
「分かった。じゃあ早く乗って」
北野は堀と共にヴェルファイアに乗り込んで別邸を後にする。



「ねぇ未央奈。本当にうまくいくの?こないだのコンビニのようになるのは…」
「きいちゃん。あれは作戦通りで成功してるの。あれはデモンストレーションよ」
「デモンストレーション…?」
「そう。彼を警戒させるためのね。その方が面白いし」
「そうかなぁ…」
「まぁいいわ。ここからが本番だから」
「もうやるしかないんだよね」
「うん。これで少しはお嬢様の目的を果たせる気がする」

そう。コンビニ強盗未遂を企てたのは西野ではなく堀だった。
そして堀が次に企てたことは後に明らかになる。
280名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/09(日) 19:24:35.27 ID:bRPI4rg70
キタ
281名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/09(日) 19:53:01.22 ID:FFHxEY840
なんか場面が切り替わりすぎて読みづらい
282名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/09(日) 19:54:27.63 ID:lYUPuSgq0
>>281
じゃあ読むな
283 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/09(日) 20:10:08.81 ID:uyT8hO4b0
一方で場面は警視庁に移る。

「失礼いたします」

生田が一礼して部屋に入る。
立派な額縁に飾られている警視庁のマーク。
高級木材を使用したデスクに革張りのチェア。
そこに腰かけている制服姿の男。

「お呼びでしょうか…?生駒刑事部長」
そう。男は18年前に三上の上司だった生駒敏郎だ。
現在は順調に出世して刑事部長に登りつめていた。

「それでどうだぁ?三上たちはまだあの事件にこだわってるのか?」
「はい。未だに西野鉄鋼グループの社長令嬢を疑っているようです」
「あれだけ強気な生田君でも三上という男の難しさはよ〜く分かっただろ?」
「ええ。まさかあそこまで強情とは…」
「ヤツは一課一筋、現場一筋だからな。そんな簡単に引き下がらんぞぉ」
「十分承知しています」
生田はふとデスクに置かれた写真立てに注目する。

「娘さんですね」
「あぁ。これは秋田に里帰りした時に撮ったやつだ」
「確か娘の里奈さんは西野鉄鋼の顧問弁護士をなされているそうですね」
「顧問と言っても何十人もいるうちの一人に過ぎんよ」
「それでも立派だと思います。やはり部長が教育された賜物ではないでしょうか?」
「生田君は本当にそういうのが上手いな。次にここに来るのは君かもしれんな」
「いえいえ。私なんてそんな…」
生田は照れを隠すように頬に手を置いて下を向く。
それを生駒刑事部長はただ冷静な表情で見ている。

「申し訳ありません。それでお話というのは…?」
「ああ実は君にまた頼みたいことがあってな」

この頼まれごとについては後に明らかにすることとしよう。
284名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/09(日) 20:11:57.58 ID:OVhbL3Td0
生駒さんは弁護士か
あとはみなみがまだ出てないな
1期はあとはちはる、とまと、あしゅ、せいたんもまだか
285名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/09(日) 20:24:14.70 ID:lYUPuSgq0
生駒ちゃんとギバちゃん父娘か
286名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/09(日) 20:38:35.03 ID:2LAliPiQ0
すげー過疎やな
287名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/09(日) 21:21:51.72 ID:WoNN3GZN0
待ちくたびれたぞー
288名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/09(日) 22:00:12.87 ID:k070be3p0
一体どんな話なんや?
289名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/09(日) 22:20:21.39 ID:WoNN3GZN0
早よしろや
乃木どこ始まるやんか
290 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/09(日) 22:22:35.44 ID:uyT8hO4b0
時は戻り、ここは俺らが住むマンションの前。
そこに白いベルファイアが止まる。
そう、堀と北野を乗せたあのワゴン車である。

「いよいよね」
「出てきたところで一気に行くわよ」
堀は窓から玄関の方を見つめる。

「あっ出てきた!」
北野が叫ぶと堀はすかさず窓から玄関を見る。
そこには春真を連れて出てきた真夏の姿だった。
堀はスライドドアを開けて真夏のもとへ駆け寄った。


「あの。真夏さんですか?」
「そうですが、どなたですか?」
「私。乃木坂商事営業第一部の堀と申します。旦那様と同じ部署で働いています」
「あぁ主人がいつもお世話になっております」
二人が一礼する。ここまではよくある風景だ。
しかし、ここから堀は計画を実行する。

「実はご主人に頼まれて是非来ていただきたいのですが」
「え?何も連絡ないですし、それに今は主人とは…」
「分かります。ですから一言謝りたいと仰られていまして代わりに私が参りました」
「でもこれから私息子と出かけなきゃ…」
「心配いりませんよ。でしたら伊藤さんに預けられたらいかがです?」
「え?何で…?」
真夏は何故伊藤のことを知っているのか疑問を抱く。堀にはそのことも想定済みだ。

「ええ。ご主人からよく聞いているもので。本当に子煩悩なんですよ」
嘘だ。俺は家庭のことをペラペラ話したことはない。
ましてや近所の人間のことまで話すなんて有り得ない。
しかし、真夏はすっかり堀の話を信じてそのまま伊藤の部屋へ向かって歩き出した。
291名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/09(日) 22:25:45.61 ID:2LAliPiQ0
誰か読んでるんか?
292名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/09(日) 22:32:24.71 ID:8/Ji48qh0
読んでるよ
293名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/09(日) 23:01:07.53 ID:QdoN1Qkb0
期待しとるで
294 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/09(日) 23:21:15.70 ID:uyT8hO4b0
サイレンを鳴り響かせたクラウンアスリートが俺のマンションの前に止まる。
俺は一目散に降りて伊藤の部屋へ駆けていく。


「あっどうも。あれ?こちらの方々は?」
「すみません。警視庁捜査一課の三上と申します」
「同じく衛藤です」
「若月です」
「け、警察?」
3人が警察手帳を見せると寧々は驚いた様子だ。
無理もない。いきなり警察しかも捜査一課の人間が現れたとなれば誰でも驚く。

「一体何かあったんですか?」
「それよりも真夏はどこに行ったんです?」
「それは先ほども電話で話した通りで…」
「申し訳ないのですが我々にも詳しくお聞かせ願えませんか?」
衛藤がそう言うと寧々は詳しく事情を説明した。
それを聞いた俺も驚きが大きくて唖然としているしかなかった。

「一体どういうことなんだ?」
「僕にも分かりません」
「こんなことをする目的がさっぱり分かりません」
「やはり西野が動いているとは思えんな」
三上の考えは確信へと変わりつつある。やっていることが明らかに粗雑だからだ。
これは西野に対するメッセージとも取れるような行動ではないのか。
一体何故このような行動を?
まだ納得のいく答えは出来ていない。

「ちなみに真夏さんの隣にいた女性は誰だか分かりますか?」
若月が寧々に尋ねる。

「ええ。尋ねたら乃木坂商事の人だと仰っていました」
俺はそれを聞くと咄嗟にスマホを取り出して画像を見せる。
プロジェクト発足時に撮影した集合写真だ。

「あっこの人です!」
寧々は見た瞬間すぐに見つけてその人物のところを指す。
それが堀未央奈であるのは言うまでもない。

「堀君か…」
「その堀というのは?」
三上が尋ねる。

「彼女がメンバーに入った時から怪しいと思ってたんだ。彼女は西野ともかなり親密だったし」
「つまり堀が西野の気を引くために仕組んだ」
「恐らくそうだな…」
三上が腕を組んだその時三上のケータイの着信音が鳴る。

「奈々未?何の用だろう?」
三上がそう呟いて電話に出る。それから30秒後に衝撃的な事実を知らされる。

「何!深川さんが拉致されただと!?場所はどこだ?」
俺は驚きと同時に疑念を抱く。
何故深川が?
堀の目的は一体何なんだ?

俺は人生経験でこれほどまでにない不安感におそわれた。
295名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/09(日) 23:27:28.76 ID:bRPI4rg70
まいまいまで拉致とか
296名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/09(日) 23:52:03.07 ID:8/Ji48qh0
まいまいも臭いような
297名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/09(日) 23:54:58.41 ID:Skbs02qk0
黒幕はまいまいか?
298 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/10(月) 00:47:38.04 ID:17/xs9PY0
場面はコンビニ近くの公園。そう深川が拉致される直前だ。

置いてかれた橋本と樋口。
会ったばかりの異母姉妹はなかなか会話が進まなかった。

「はい。一応ウチの店のカプチーノは美味しいって評判だから」
「す、すみません…」
橋本は樋口にコンビニで販売する特製のカプチーノの入ったカップを渡す。
それを貰った樋口は会釈して一口飲んだ。

「もういいよ。一応父親が一緒の姉妹なんだし全然タメ口でいこうよ」
「え?」
樋口は戸惑う。正直橋本も未だに戸惑っているがよく考えたら彼女には何も罪はない。
彼女自身自分の運命に向き合い辛い思いもしてきたのだろう。
母は違えど同じ血が通う妹に姉として何が出来るのか。
橋本はそんなことを考えていた。

「それでどうなの?その…あの人は?」
「あの人…?ああ父のことですか?」
「うん。私あの人とは18年離れて暮らしててあんまり会ってなかったしよく知らないんだ」
「父は立派な人だよ。だから私は警察官になろうって思ったの」
橋本から見たら母親より仕事を優先し最期も看取らない最低の父親だと教えられてきた。
だが、樋口にはそう映っていないようだ。

「それで何であなたはあの人と会うようになったの?」
「私も4年前までは父親の存在を知らなかった。でもある日私下校中にトラックに撥ねられてしまって」
「え?」
「かなり重傷でどうしても輸血が必要だったんですが私特殊な血液型で合うのがなかなかなくて…」
樋口の過去の話を聞く橋本はさらに驚くべき事実を聞かされる。

「それで私を育ててくれた叔母が父に頼んで輸血してもらって何とか一命を取り留めたの」
「そこから会うように…」
「後から聞いたんだけど父が叔母らに条件を付けたんです。月に一度は会えるようにしてほしいって」
「さすが刑事らしいわ」
橋本はカプチーノを飲みながら感じていた。
ふと横に目をやると衝撃的な光景が飛び込んできた。


「ちょっと何するんですか!?」
そこには深川と何やら怪しげな男らが取り囲んでいた。
「うるせぇんだよ黙って乗れ」
男らは深川の腕を掴み、無理矢理黒のシボレー・アストロに乗せて走り去っていった。

「確か常連の深川さんだった…」
「お姉さん?」
「確かこないだ貰った名刺がここに…あった!」
橋本はすかさず名刺に記された番号をスマホに打ち込んで父である三上に電話を掛けた。
299名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/10(月) 01:00:40.34 ID:17/xs9PY0
どうも違うっぽいな
300 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/10(月) 01:40:33.16 ID:17/xs9PY0
「お嬢様。契約に関しては全てこちらの要求が通りました」
ここは赤坂にある乃木坂タワービル。その一角に構える乃木坂国際法律事務所だ。
そしてショートカットに眼鏡、薄茶色のスーツを纏った女性が西野に話しかける。
そう、彼女こそが生駒里奈。この法律事務所の顔ともいえる弁護士だ。

「ホンマに生駒先生は出来るなぁ」
「いえいえそんなことは…」
「そんなことあらへん。こんな高度な要求を通してくれる人なんて早々おらへんよ」
西野は満足そうに資料を読んでいる。

西野はふと生駒のデスクにある写真を見る。
「なぁ。あれは先生のお父様か?」
「ええ。こないだ里帰りした時に撮ったものです」
写真は生駒刑事部長が自室のデスクに飾ってあるものと同じだ。
西野はそれをじっと見つめている。


「確か先生のお父様は警視庁の幹部やったな?」
「ええ。一応刑事部長ですけど大したことないですよ」
「そんなことあらへん。立派な地位におられるで」
「七瀬お嬢様こそ素晴らしいお父上ではありませんか」
「素晴らしいお父上。まぁ確かにそうかもしれへんなぁ…」
西野は一息ついて用意された紅茶を一口飲む。
すると慌てて能條が駆け寄ってきた。

「一体どうしたんや?そない慌てて」
「お嬢様大変です。北野が家にいません」
「え?どういうことや?」
「しかも聞いた話によると堀様とどこかへお出かけになられたとか…」
「ホンマか。何か嫌な予感するわ。先生悪いけど」
「いいんです。行ってください」
「すまんな」
西野は手を合わせて謝ると足早に事務所を後にした。


生駒はデスクに戻ると電話の受話器を取る。
「あっもしもしお父さん…里奈だけど…」
生駒は父敏郎としばらく話をしていた。
301 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/10(月) 02:12:53.69 ID:17/xs9PY0
「え?ここは一体…?」
真夏は連れてこられた倉庫のような場所を歩いて不安になっている。
確かレストランに行くはずなのに。
お洒落なレストランからでは想像もつかない場所だ。

「ちょっと話が違いますが…」
「いいから黙って歩いて」
真夏の不安も堀にはまったくもって関心はない。
堀の頭の中にはこの計画の成功と西野のことだけだ。

「そこに座って」
堀は用意した椅子に真夏を座らせた。
真夏の不安は極限に達して涙が溢れた。
何度拭ってもどんどん滴り落ちる涙の滴。
そこへ聞き慣れた声が聞こえてきた。

「きゃあ!」
真夏の前に倒れこんだのは深川であった。

「ふ、深川さん!?」
「え?あなたが何でここに…?」
「うるさい!そこに座れ!」
深川は北野に言われると真夏の隣に置かれた椅子に座る。

「では、お願いします」
堀がそう言うとコンビニを襲ったと思われる男たちが現れて真夏と深川の手足を拘束した。

「ちょっと何なのこれ?あなたたちは何なの?」
「一体あなたたちは?」
二人が声を出すも堀と北野は黙ったままだ。



「全て終わったの?」
何やら聞き慣れた声が聞こえる。その声の主は堀と北野に問いかけているようだ。

「ええ。全て順調です」
堀が笑みを浮かべて答える。
どうやら堀、北野の上に誰かがいたようだ。
その女性が姿を現す。

「嘘でしょ…」
「え?お知り合いなんですか?」
真夏は唖然とした。
何故彼女が。
ただそれだけしか浮かばなかった。


「さぁ。始めましょう真夏お母さん」
「何でですか?小百合先生…」

声の主は春真の通う幼稚園の教諭井上小百合であった。
何故彼女が堀や北野らと結託してこのような凶行に及んだのか。
それは今から明かされるある秘め事にあった。
302 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/10(月) 02:14:13.12 ID:17/xs9PY0
長々と待たせてすみません
登場人物一覧を更新してしばらく去ります
では、また夜に
303 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/10(月) 02:16:53.67 ID:17/xs9PY0
ここまでの登場人物一覧

俺…主人公。乃木坂商事第一営業部係長
真夏…嫁。専業主婦
春真…俺と真夏の息子で幼稚園児

【西野家】
西野七瀬…西野鉄鋼グループ社長令嬢。どいやさんを世界に売り込もうとする
能條愛未…西野家東京別宅に仕える世話人(メイド)
北野日奈子…西野家東京別宅に仕える世話人(メイド)
矢田里沙子…西野家専属運転手。真夏の後輩

【ユッタンプロモーション】
白石麻衣…女優、モデル、デザイナー、実業家。西野の親友で愛称はまいやん
松村沙友理…「サユリン」としてアメリカでモデルやアイドルで活躍
永島聖羅…白石専属のマネージャー
斉藤優里…ユッタンプロモーション代表取締役社長

【乃木坂商事】
部長…営業第一部部長。主人公を買っている上司
桜井玲香…営業第一部。プロジェクトサブリーダー。版権ビジネスに精通
中田花奈…営業第一部。広報業務に精通
中元日芽香…営業第一部。グッズ販売担当。妹がさくら物産のエリート営業マン
山崎怜奈…営業第一部。英語が得意
堀未央奈…営業第一部。何故か秘書から抜擢され西野と関係あり?
高山一実…営業第一部窓口担当
伊藤かりん…営業第一部窓口担当
平野…営業第一部→グアテマラ駐在所。事件を起こし逮捕されるも数時間後に殺害される

【マンション】
深川麻衣…乃木坂バレッタ生命の保険外交員。学資保険やこどもの保険を扱う
伊藤寧々…真夏のママ友。料理の腕は一流らしい
伊藤紗々…寧々の娘。春真と同い年

【でこぴん幼稚園】
井上小百合…春真のクラス担任。愛称はさゆにゃん

【コンビニ】
橋本奈々未…主人公が通う駅までの道にあるコンビニのベテラン店員。三上の娘
樋口日奈…三上の隠し子。今春から京都府警警察学校へ

【警視庁】
生駒敏郎…警視庁刑事部長
生田絵梨花…警視庁刑事部参事官
設楽統…警視庁捜査一課課長
三上博史…警視庁捜査一課警部。衛藤、若月の上司で橋本奈々未の父
衛藤美彩…警視庁捜査一課刑事。みさ先輩と呼ばれている
若月佑美…警視庁捜査一課刑事。若月と呼ばれている
伊藤万理華…警視庁鑑識課鑑識官。愛称はまりっか

【乃木坂テレビ】
市來玲奈…看板アナウンサー。愛称れなりん

【乃木坂オイシャン証券】
西川七海…真夏の同級生。受付嬢

【乃木坂国際法律事務所】
生駒里奈…エース弁護士。西野鉄鋼の顧問弁護士
和田まあや…白石、サユリンの弁護士。日本と加州の弁護士資格を持つ
304名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/10(月) 05:19:17.19 ID:w9GR2yaPi
まさかの松阪くん
305名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/10(月) 11:29:07.70 ID:4ToyZZW40
保守
306名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/10(月) 12:03:34.93 ID:aeFFFkke0
まさかまつさか
307名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/10(月) 14:54:06.62 ID:7uoKt1Tx0
>>301
最後の台詞は「さぁ。始めましょう春真くんママ」
でしょ〜
308名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/10(月) 15:25:52.68 ID:a+auZoGW0
日奈の存在に驚く橋本奈々未。
わけもわからず春真を預かっていた伊藤寧々。
北野不在を聞き及び、西野七瀬は弁護士事務所を後にした。

堀と北野は真夏と深川の拉致・監禁に成功。
その頭上には何故かさゆにゃん先生が!

平野殺しの犯人は?さゆにゃん先生の正体は?
そして「俺」と三上たちは真夏と深川を助け出せるのか?!


次回「決戦、第3新東京ふ頭」
この次も、サービスしちゃうわよんっ!
309名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/10(月) 17:38:09.22 ID:554nu5wi0
あげ
310名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/10(月) 19:42:50.56 ID:rXApFqFj0
ほしゆ
311 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/10(月) 21:44:45.43 ID:17/xs9PY0
もう少しお待ちください
312名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/10(月) 22:42:43.39 ID:LF3wX2c80
期待してます
313 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/10(月) 23:04:13.73 ID:17/xs9PY0
深川が拉致された現場は騒然としていた。
一体何故こんなことに。
妻が巻き込まれただけでなく親しい人間まで巻き込んでしまった。
俺は自分を責め続けた。

「あなたのせいじゃない。自分を責めても何も解決しない」
三上が俺の肩に手を置いて言う。
さすがは幾つもの事件に携わった刑事だけある。


「それでどういう男だった?」
若月が橋本らに事情を聞いている。橋本が説明するのを衛藤と若月が手帳にメモしていく。
そしてある程度時間が経ったときに三上の方へ歩み寄ってきた。

「警部。犯人は4人組の男だそうです。それもコンビニに押し入った男の声と似ていると」
「やはりあいつらか。でも何故なんだ?」
「その答え。もしかしたら見つけたかもしれません」
若月が少し自信を持った様子で語る。

「娘さ…いや日奈ちゃんが見てたんですよ」
「日奈が一体何を見たんだ?」
「コンビニ襲い損ねたおバカさんたちの乗る趣味悪い外車に女性が乗っていたそうです」
「正確に言えば黒色の2000年前後形式のシボレー・アストロ。ナンバーは品川88で下はすの…」
樋口は瞬時に様々な情報を掴んでいた。
恐らく女性を見た時間も一瞬の出来事だったはずだ。

「似顔絵作成に協力してもらえるかな?」
「ええもちろん」
若月はそう言うと樋口と共にハイエースのパトカーに乗り込んだ。


「まさかあいつがあそこまで瞬時に情報を掴んでいるとは」
「まさに父娘ですね」
衛藤が笑顔で言うと三上は眉をひそめる。

「どういうことだ?」
「警部も一瞬のことで推理を組み立てて真実に導いていますから」
「チッ!お前そんなのが見える目があるならそれを捜査に役立てろ」
三上は衛藤に一括するも内心は嬉しそうであった。
314名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/10(月) 23:15:30.43 ID:19gL+48+0
来た!
315名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/11(火) 00:39:58.42 ID:idMY6tFP0
待つわ
316 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/11(火) 00:55:39.57 ID:SB4yNURc0
一方で真夏と深川が連れてこられた倉庫に場面は変わる。
意外な黒幕の登場に真夏も深川も理解が出来ていない。

「何故ですか…。あれだけ子供思いの先生がどうして…?」
「ごちゃごちゃうるせーんだよ!」
真夏が言うと見張り役の男が怒鳴りつけて手をあげようとする。
その腕を掴んだ井上は男を投げ飛ばした。

「すみません。何しろしつけも何も出来てない子なんで」
そこに子供たちと笑顔ではしゃいでいる小百合先生の姿はなかった。
今そこにいるのはおかしな連中や野望に満ちた女性らを牛耳る悪女の姿だ。


「先生。一体何故こんなことをするんですか?私、何かしました?」
「それを今話したら意味がないじゃないですか。まぁしばらくお二人でガールズトークでも」
井上はそう言うと堀や北野がいる事務室に入っていった。


「全て順調通りに進んでいるわね」
「これも全て小百合さんがいてくださったからです」
笑みを浮かべる井上と堀であったが北野は曇った表情をしている。

「一体あなたたちは何をやろうとしているのですか?お嬢様と何か関係が?」
「きいちゃん。今はそんなことどうでもいいでしょ」
「どうでもよくないよ。もうやってることが滅茶苦茶だよ。今頃私がいないって騒ぎになってるし…」
「堀ちゃん。この子は何を言ってるの?そんなの想定の範囲内だよ」
「すみません。普段は明るくて元気がある子なんですけど」
北野の不安をよそに井上と堀は笑っている。
もしかしてただ自分は利用されているだけなんじゃないのか。
そんな不信感が北野に芽生え始めていた。



「小百合さん。きいちゃんそろそろかもしれません」
「そうね。でももうしばらくは使うわよ」
「でも万が一限界が来てしまったら」
「その時は片付けるだけ。それより果たして西野七瀬はここに来られるかしら?」
井上は事務室にあるブラインドから二人を見る。
その表情に堀は自分にも伝えていない秘め事を持っていると感じた。

「変な気は起こさないでくださいよ。あくまでお嬢様の為なんですから」
「もちろん分かってるよ」
井上はうまくはぐらかしているようだがどうやら堀と井上では目的は異なっているようだ。
317名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/11(火) 01:22:07.80 ID:zP9PO5Ny0
さゆにゃん二番目でもいいんだよね?!ほったんのジト目を感じながら
簀巻きの主人公にドSプレイ希望。そこに駆けつけるエロ愛犬のぼる
318名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/11(火) 07:51:33.98 ID:loT2RuCx0
>>278
この人です。
http://www.youtube.com/watch?v=q8JKk8rfgXk

数々の名言やジェスチャーが話題となったことがあります。
319名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/11(火) 11:39:44.57 ID:P2s2icUui
保守
320名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/11(火) 12:06:39.76 ID:QK6jTeRM0
また寝落ちしたんか?
321 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/11(火) 13:09:37.89 ID:SB4yNURc0
昨日は寝落ちしてすみません
今日も1つか2つぐらいになるかと思います
では、また夜に
322名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/11(火) 15:39:21.21 ID:ChA6WuCV0
323名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/11(火) 17:21:59.90 ID:U/FHjLoN0
324名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/11(火) 20:40:26.14 ID:NTECX9qR0
325名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/11(火) 21:18:36.76 ID:u80wWvb50
326名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/11(火) 21:52:28.42 ID:NTECX9qR0
!
327名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/11(火) 22:55:51.82 ID:n4bIElOu0
そろそろかな?
328名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/12(水) 00:00:31.15 ID:r+qbaTSp0
日付変わったぞ
329 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/12(水) 00:13:06.03 ID:C4UnYDQn0
今帰宅しました
もうしばらくお待ちください
330名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/12(水) 01:02:20.01 ID:T/Jp7v4s0
お疲れ様
待ってるで
331名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/12(水) 01:31:50.94 ID:2+dsqQta0
期待あげ
332 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/12(水) 01:58:17.32 ID:C4UnYDQn0
ところ変わってここは生駒家。と言っても警視庁幹部の公邸である。
西洋風なリビングルームにモダンなテーブルと椅子がある。
右側の椅子に里奈が腰かけている。
そして里奈の正面にもう一人女性が腰かける。
彼女は大きなスーツケースを持っている。スーツケースには日本最大手の航空会社乃木坂航空のステッカーがある。

「揃ったようだな」
敏郎が入ってきて上座にあたる場所の椅子に腰かけた。

「里奈。最近どうだぁ?」
「う〜ん。まぁまぁかな」
「まぁまぁ?あれか?西野鉄鋼のお嬢さんと何か関係があるのか?」
「え?何で?」
「まぁ色々耳に入ってきたりするもんでな。仕事柄法曹界の奴らと付き合うもんでな」
「やっぱり父さんは凄いわぁ」
「こんなことじゃダメだぞ。それで絢音はどうだ?」
そう、里奈の正面に座っている女性は妹の絢音。乃木坂航空の客室乗務員だ。
幼い時から航空機が好きだったのが縁で就いた職業だ。

「まぁ機長が最悪だったけどやっとエアバスA350に乗れたからいいかなぁって」
「そうか。本当にお前は飛行機が好きなんだな。里奈も里奈で弁護士の職を全うしているようだな」
他愛もない家族の会話。まさに一家団欒だ。
だが、一本の着信音で団欒のひとときは終わりを告げる。
里奈はバッグからスマホを取り出して耳に当てる。

「はいもしもし生駒です。これは七瀬お嬢様。え?メイドの北野さんが行方不明?どうして…?」
その時家の固定電話の着信音が鳴り響く。敏郎が席を立って受話器を取る。

「もしもし生駒です。え?若い女性の誘拐事件?それで詳細は…。うん、うん。分かったすぐに行く」
里奈と敏郎はほぼ同時に電話を切った。
そして慌てて外出の支度を始める。

「里奈どうした?」
「七瀬お嬢様からメイドさんが一人行方不明なんだって。何か分かったら知らせるね。あれお父さんも?」
「あぁ。誘拐事件だ。すぐに本庁で指揮を取らなきゃならん。その行方不明のは分かったら構わん。連絡くれ」
「うん。じゃあいってきます」
こうして二人は慌てるように自宅を出て行った。

「あっこのいとこ煮美味しいなぁ」
絢音は気にせずに食事をしていた。


この二つの出来事がやがてひとつに繋がることはまだ二人とも知る由もなかった。
333 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/12(水) 02:22:33.27 ID:C4UnYDQn0
「警部!似顔絵が出来上がりました」
若月がスケッチブックを持って駆けてきた。
それを受け取った三上はじっと見つめた。
そして、そのスケッチブックを持って俺のもとへやってきた。

「この女性。見覚えありませんか?」
スケッチブックを見た俺は衝撃が走った。
同時に疑問が浮かんだ。
「何故この人が」この言葉が何十回も何百回も脳裏をよぎる。

スケッチブックにある似顔絵は紛れもなく春真の通う幼稚園の教諭井上小百合だ。
三上にそのことを伝える。

「衛藤!堀未央奈と井上小百合を重要参考人として手配だ!」
衛藤はパトカーに向かい無線を手に取り、本部に伝えた。

こうして堀と井上は全警察官に写真が送られて手配された。
これで何か進展してほしい
それよりも真夏と深川が無事に戻れることを祈る方が先だな。

「しかし何故幼稚園の先生がこんなことを…」
「若月。井上と堀に何か接点がないか調べろ。一応西野との関係も洗え」
「分かりました!」

事件は大きく前進したが俺は未だによく分からない。
何故この二人はこんなことをしたのか。
西野が仕組んだことなのか。だったら彼女は一体何がしたいんだ。
俺はそんなことばかりを考えていた。

「事件は意外にどこかで繋がっているものです。ここは我々に任せてあなたは帰った方がいい」
「でも俺も出来ることは協力したいんです」
「いやそれよりもあなたは息子さんと共にいてください。容疑者が幼稚園の先生なら息子さんにも何か危害を加えるかもしれない」
三上に促されて俺はマンションに戻ることにした。

「お送りしますよ」
「いや。すぐそこなんで結構です」
俺がそう言うと三上はパトカーに乗り込んで現場を去っていった。

「無事でいてくれよ真夏…」
俺はそう呟くと足早にマンションへ駆けて行った。
334 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/12(水) 02:59:59.94 ID:C4UnYDQn0
一方こちらは真夏と深川がいる倉庫だ。
事態は思わぬ方に進む。

「ちょっとヤバイっすよ!」
男が事務室に駆けこんできた。

「何よ騒々しい」
井上が爪をやすりで削っている。

「サツに知れてますよ!」
「はぁ!?」
井上は慌てて無線機で警察無線を傍受する。
しばらくしてヘッドホンを外して机に叩きつけた。
そして傍にいた男の胸ぐらを掴む。

「てめぇら何やってんだよ!深川連れてくるときに誰かに見られてねーかよく見ろって言っただろ?」
「いやちゃんと慎重にやったっすよ。そんなの有り得ないっす」
「だったら何で私と堀ちゃんがサツにバレてんのか説明してみろよ」
「いや分かりません。とにかく俺はちゃんと見てたっす!」
「あーもうお前のくっだらない言い訳聞いてると耳が腐る。おい!こいつ片付けとけ」
井上がそう言うと男3人がその男を抱きかかえてシボレー・アストロに乗せる。



「まさかお前らじゃねぇだろ?」
井上は事務室を出て真夏と深川を監禁している部屋に来て尋ねた。

「一体何の話ですか?」
真夏が泣きじゃくりながら尋ねる。
「お前らケータイとか隠し持ってんじゃないの?」
「持ってないわよ。あなた達が取り上げて何も持ってないわ」
「まぁ持っててもそうやって縛ってあったら無理だわね」
井上が笑みを浮かべて、走り去るシボレー・アストロを見つめた。
真夏と深川は男が乗せられるところから見ているので不安な気持ちがさらに強まっていた。

「まっいずれあなた達も運ばれる運命だけどね」
「ねぇもういい加減教えてよ!何で私たちをこんな目に遭わせるの?」
深川が涙をこぼしながら井上に尋ねる。
井上は笑いながらナイフを出して振り回し始めた。

「まぁこうなったのも全て西野七瀬のせい。だからあんた達化けて出るなら西野のところに出なさいよ」
「はぁ?」
「西野七瀬ってあの西野鉄鋼グループのお嬢様でしょ?何で彼女が出てくるのか意味わかんない。あんた頭おかしいよ」
深川がそう言い放つと井上は深川にナイフを突きつける。

「あんまり調子に乗らない方がいいよ。自分の置かれてる立場を少しでも理解したら?」
「くっ…」
「最期にいいこと教えてあげる。あなたがこうなった理由は真夏さんに聞くといいわ。それじゃ」
井上はそう言うと出て行った。


「一体どういうことなんですか?西野七瀬と何かあるんですか?」
「うん…まぁ…」
「教えてください!一体あなたと西野はどんな関係なんですか!?」
深川の懇願に真夏はついに秘めていたことを明かすことを決めた。
それは俺も知らないとんでもない秘め事だった。

その秘め事を俺が知るのはまだ先の話である。
335 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/12(水) 03:01:43.55 ID:C4UnYDQn0
てことで遅いのでここまでにします
明日もまたこのぐらいになるかもしれませんがよろしくお願いします
いつも保守してくださりありがとうございます

ではまた
336 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/12(水) 03:07:14.19 ID:C4UnYDQn0
ここまでの登場人物一覧

俺…主人公。乃木坂商事第一営業部係長
真夏…嫁。専業主婦
春真…俺と真夏の息子で幼稚園児
西野七瀬…西野鉄鋼グループ社長令嬢。どいやさんを世界に売り込もうとする
深川麻衣…乃木坂バレッタ生命の保険外交員。学資保険やこどもの保険を扱う
堀未央奈…営業第一部。何故か秘書から抜擢され西野と関係あり?
北野日奈子…西野家東京別宅に仕える世話人(メイド)
能條愛未…西野家東京別宅に仕える世話人(メイド)
矢田里沙子…西野家専属運転手。真夏の後輩

白石麻衣…女優、モデル、デザイナー、実業家。西野の親友で愛称はまいやん
松村沙友理…「サユリン」としてアメリカでモデルやアイドルで活躍
永島聖羅…白石専属のマネージャー
斉藤優里…ユッタンプロモーション代表取締役社長
和田まあや…白石、サユリンの弁護士。日本と加州の弁護士資格を持つ

部長…営業第一部部長。主人公を買っている上司
桜井玲香…営業第一部。プロジェクトサブリーダー。版権ビジネスに精通
中田花奈…営業第一部。広報業務に精通
中元日芽香…営業第一部。グッズ販売担当。妹がさくら物産のエリート営業マン
山崎怜奈…営業第一部。英語が得意
高山一実…営業第一部窓口担当
伊藤かりん…営業第一部窓口担当
平野…営業第一部→グアテマラ駐在所。事件を起こし逮捕されるも数時間後に殺害される
伊藤寧々…真夏のママ友。料理の腕は一流らしい
伊藤紗々…寧々の娘。春真と同い年
井上小百合…春真のクラス担任。黒幕。愛称はさゆにゃん

三上博史…警視庁捜査一課警部。衛藤、若月の上司で橋本奈々未の父
橋本奈々未…主人公が通う駅までの道にあるコンビニのベテラン店員。三上の娘
樋口日奈…三上の隠し子。今春から京都府警警察学校へ

生駒敏郎…警視庁刑事部長
生駒里奈…エース弁護士。西野鉄鋼の顧問弁護士
鈴木絢音…里奈の妹。乃木坂航空国際線客室乗務員
生田絵梨花…警視庁刑事部参事官
設楽統…警視庁捜査一課課長
衛藤美彩…警視庁捜査一課刑事。みさ先輩と呼ばれている
若月佑美…警視庁捜査一課刑事。若月と呼ばれている
伊藤万理華…警視庁鑑識課鑑識官。愛称はまりっか

市來玲奈…看板アナウンサー。愛称れなりん
西川七海…真夏の同級生。受付嬢
337名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/12(水) 03:50:19.06 ID:VTyXou+z0
焦らすねぇ
338 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/12(水) 09:45:59.53 ID:C4UnYDQn0
おはようございます
339名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/12(水) 11:39:21.19 ID:VTyXou+z0
おはよう
340名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/12(水) 11:40:03.69 ID:/Fnmo+ms0
341名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/12(水) 11:41:35.04 ID:6Lv7Zfam0
今日はどこまで進むかな?
真夏さんの秘密が気になるわ
342名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/12(水) 12:44:58.27 ID:6Lv7Zfam0
昼間ぐらい保守しろよ
落ちるやん
343名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/12(水) 15:12:25.01 ID:j2zXCRo40
捕手
344名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/12(水) 16:38:20.66 ID:xIx8NRTE0
345名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/12(水) 18:03:17.68 ID:N9BGmVxc0
真夏となーちゃんの間には一体なにがあるんや
346名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/12(水) 19:01:02.82 ID:GJp2ljjS0
まさかこの2人が最速完売するとは。。。
347名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/12(水) 21:10:32.51 ID:N9BGmVxc0
ツートップ
348名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/12(水) 22:53:00.82 ID:T/Jp7v4s0
保守
349名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/13(木) 00:25:57.02 ID:ngHDwv270
まだか?
350名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/13(木) 00:26:21.41 ID:LKnP4+O90
保守
351 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/13(木) 01:00:00.01 ID:B8dr5i/a0
どうも今帰宅しました
もう少ししたらはじめます
352 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/13(木) 01:15:53.55 ID:B8dr5i/a0
「ホンマにどうなっているんや?」
西野が自宅に戻ると既に生駒が待っていた。
生駒は密かに調べ上げた北野についての情報が書かれたファイルを西野に渡した。

「なるほど。でもいなくなる理由が分からへん。最近少し様子がおかしいなあとは思うてたけど」
「ええ。でもこれを見てください」
生駒は複数の写真を手渡した。それを見て西野は驚きを隠せない。


「何やこれ…。堀ちゃんと話してるやん」
「ええ。このパーティーでも二人が何やら話し込んでいました」
二人の繋がりは西野も知らなかった。
確かに会う機会は多かったがまさかこんなに密接になっていたとは。
西野はただ唖然としていた。

だが、生駒が持ってきた情報はこれだけではなかった。
生駒はさらに写真を渡す。

「これ以来気になって独自に調べてたんです。そうしたら先日原宿のカフェで二人と会っている女性がいました」
生駒から渡された写真を見る西野は考え込むように見つめる。

「どうかされました?」
「うん。この女性どっかで見覚えがある気がするんやけど…」
「このツインテールの女性ですか?」
「せや。でも全然分からへんけどどっかで会ってる気がするんや」
西野はソファで腕を組んで考え込む。
するとそれを見た能條が驚いた表情を見せる。

「この子…」
能條は慌てて書棚からアルバムを取り出す。かなり昔のもののようだ。
何ページが捲って真ん中のページのところで手をとめる。
そして西野の方へ向けて人差し指でとある少女を示す。

これは13年ほど前にあったとあるパーティーでの集合写真だ。
その写真を見た西野は何かを思い出したかのように目を見開く。

「思い出したわ。あの時の子や…」
「あの時?」
西野は生駒らに過去に起きたことを話し始めた。
353 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/13(木) 02:46:36.87 ID:B8dr5i/a0
話は12年前に遡る。俺はまだ真夏という存在も知らずオタクに目覚め始めた頃だ。

ここはとある一流ホテルの宴会場。
その場に正装姿の男女はもちろん派手な衣装姿の子供たちが多くいる。
宴会場のステージの上には『西野七瀬令嬢生誕記念パーティー』とある。
そう、幼き西野の誕生日を祝うパーティーであった。
そこにいるのは主要取引先や学友たちとその家族が招かれていた。

「お嬢様。お誕生日おめでとうございます」
「あみあみありがと〜う。うわぁ凄い」
様々な人間から様々なお祝いをもらう幼き西野。
この頃からお嬢様オーラを全開にしていた。

その時ぎこちなく右手にハリケンジャーのフィギュアを持った少女が入ってくる。
そう、この少女こそ幼いときの井上である。
当時彼女の家は中規模な建設会社を営んでいた。
その主要取引先が西野鉄鋼グループでそれが縁で招かれたのだ。
普段は公立学校に通う一般庶民の井上にとってこの場は完全にアウェーと言えるだろう。
しかし何より親を思った井上は何とか馴染もうと懸命に模索していた。

「あら?あなたは井上建設の?」
西野が井上を見て声を掛ける。どうやら覚えていたようだ。
「あっさ、小百合です…」
「あぁ小百合ちゃんね。こないだのパーティーにも来てくれてたよね」
「え…あ…はい。覚えてくれてたんですねお嬢様…」
「ええ。他のみんなと違ってとてもユニークな服装だったから」
確かに多くが大金持ちで高級なドレスやブランドの服に身を包む者が多く井上の服装は目立っていた。

「それ何?」
西野は井上が持つハリケンジャーのフィギュアを見つめる。
「え?いやこれは…」
「何かいいじゃない。それ、ちょうだい」
「え!?これはダメです。大事な宝物なんで…」
「いいじゃない。また買えばいいんだし」
「いやそういうことじゃなくて…」
井上が拒否すると西野は涙目になり大きな声で泣き出した。
お嬢様が泣き出す。
これは大変な一大事であり、何人もの人間が集まってきた。
354 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/13(木) 02:48:11.53 ID:B8dr5i/a0
「一体どうしたんだ?」
「おい社長を呼べ!」

周囲が大混乱になるなかで現れたのが西野鉄鋼の社長だ。
「一体何の騒ぎや?」
「社長。どうやらこの子が関係しているようです。井上建設の社長のお子さんです」
「ほぉ。井上建設の社長はどこにおるんや?」
社長はじっと立っていると井上建設社長で小百合の父親そして母親が慌てて駆けてきた。

「しゃ、社長!一体どうかなさいましたか?」
「これは井上さん。いやぁウチの七瀬がお嬢さんの持ってるコレが気に入ってしもてな」
「すみません。家に置いてくるように言ったのですが…」
「そこでや。これを買い取ろうやないか?もちろん相場の倍は出すで」
「い、いやこれはこの子の誕生日に買ってあげたものでとても大事なものなんです。お金では買えません」
父親は井上がこの人形を買った経緯を説明する。その父の姿は今でも井上にとっては正義のヒーロー以上に輝いて見えた。

「なるほど。つまりこれはそこらのおもちゃ屋に行ったらどこにでも売ってるわけやな?」
「ええ。もし七瀬お嬢様がお気に召したのなら…」
「せや。この人形がどこにでもあるように建設会社もどこにでもあるわけや。おい。代わりの会社を探せ」
「ちょっと社長!今何と…」
「せやから今言うた通りや。何もあんたの建設会社やなくてもええ建設会社はあるわけでそこと取引したい。そう思うてな」
「待ってください!申し訳ありません!何でもしますのでどうか取引停止だけは勘弁してください!」
「もうええ。今日は帰りや」
「しかし!そうなったらいくつもの下請け会社や従業員が路頭に迷うんです!お願いです!どうかご勘弁を!」
父親と母親が頭をこすり付けて土下座をする。そんな哀れな姿を見て多くの者が嘲笑っている。

「ええか。お前がウチに不用意なことを言ったせいや。お前やその下で働く奴らが路頭に迷おうが苦しもうがウチらには知ったこっちゃないわ」
社長は父親に顔を近づけてこう言い放った。

「往生際が悪いわ。おいこの3人をつまみ出せや」
そう言った瞬間に警備員がやってきて井上家族をホテルから追い出した。
警備員に泣きながら退去させられる姿が西野の記憶に残っている最後の井上の姿であった。
355 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/13(木) 02:49:02.79 ID:B8dr5i/a0
ごめんなさい。睡魔が襲って限界です
続きは明日午前中にあげられればと思います

では、しばらくおやすみなさい
356名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/13(木) 04:13:50.17 ID:YpZQddw5i
塩谷か
357名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/13(木) 06:43:45.31 ID:XB5jwf65i
なーちゃんとはいつ愛人関係になるのですか?
358名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/13(木) 09:09:47.67 ID:MqeNCxBG0
しえ
359 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/13(木) 12:12:25.36 ID:B8dr5i/a0
こんにちは
今鋭意妄想中です
もうしばらくお待ちください
360名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/13(木) 14:05:50.95 ID:LKnP4+O90
保守
361名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/13(木) 15:16:04.67 ID:TLtpz+s80
ほしゅ
362 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/13(木) 16:50:06.52 ID:B8dr5i/a0
西野鉄鋼からの取引を打ち切られた井上建設は言うまでもなく倒産。
およそ50人ほどいた社員は全て職を失い、井上は自宅も車も何もかも失ってしまった。

「くそぉ!何でこうなっちまうんだよ〜!!」
倒産以後井上の父は親から受け継いだ会社を潰した負い目などもあり酒に溺れるようになった。
母親が賢明にパートを掛け持ちして身を粉にして働くもその収入は全て父の酒代とギャンブル費用で泡のように消える。
あんなに子煩悩で家族思いで優しかった父親はギャンブルと酒に溺れ、妻に暴力を振るう最悪なDV野郎と化してしまった。
幼いながらも井上は自分のせいだと感じていた。


そんなある日の夜。眠りについていた井上は不審な物音がして目が覚めた。

「おい平野!ここで一体何してやがる!?おい!や、やめろ…。つ、妻には手を出さないでくれ!!」
父の叫び声と同時にブスッという音が聞こえた。
「き、貴様ぁ!おい!やめろ!やめないか!やめ…うぐぅ!!」
再びブスッという音がして父の声は聞こえなくなった。

「平野!お前何てことしてるんだよ!!」
「しょうがねぇだろ。襲ってきたんだからよ!!」
「つかとりあえずどうすんだよ。ヤベェぞ!!」
「おい!この灯油まいて燃やそうぜ!そうすりゃ証拠も全部塵になるわ」
「さすが平野頭いいなぁ〜!!よし撒け撒け」
そう言うとビチャビチャという何か液体を流すような音が聞こえた。
音が聞こえなくなって数秒で部屋の向こうが妙に明るくなった。
同時に黒い煙が部屋に入ってくる。

火事だ。

井上は察知するも男たちが車で走り去るのを見てすかさず外に逃げ出した。
1階の部屋だったのが幸いだった。
井上が安全な場所に逃げた時にはアパートは業火に見舞われていた。
363名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/13(木) 17:04:38.64 ID:A/Jk4duC0
火曜サスペンスか土曜ワイド的な展開になってきたなw
364名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/13(木) 17:41:11.35 ID:/NuQInph0
なんか凄いことになったなww
365 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/13(木) 18:57:46.11 ID:B8dr5i/a0
火事から6時間ほど経過しようやく火は消し止められた。
井上はパトカーに乗せられ警官が買ってきてくれたジュースを飲んでいた。

「1階の部屋の遺体に刺し傷があり一人は右手にナイフを持っておりました」
検視担当の医者が刑事らに伝えている。

「こりゃ無理心中だな」
「生駒課長。まだ結論は早くないですか?」
「火元の住人は最近倒産したばかりの社長で酒浸りだったそうだ。ヤケになって妻を殺して自分で火をつけて自殺。単純なもんだ」
「でももう少し調べた方がいいんではないでしょうか?」
「三上。こんなのあとは所轄に任せておけばいい。俺らだってまだ幾つもヤマ抱えているんだ」

会話していたのは生駒敏郎と三上であった。
敏郎は無理心中だと確定しているが三上は納得していない様子だ。

パトカーが降りてきた井上が三上の方へやってきた。
「君が小百合ちゃんだね。おじさんは三上。警察の人間だ」
「聞いたの…」
「聞いた?」
「変な男が入ってきてね…。それでお父さんが怒鳴って…」
井上が語りだし三上が話に耳を傾けていた時だった。

「三上!事件だ!行くぞ!」
「わ、分かりました」
この時運悪く国会議員が右翼団体の男に刺殺される事件が発生し、全捜査員がこの事件に充てられた。
結局井上の事件は父親の無理心中で片付けられ、親戚からの引き取りさえ拒否された井上は南三陸にある児童養護施設へ行くこととなった。

とあるドラマとは違い修道院が営む施設であったので職員が悪いとかあだ名で呼ばれることはなかった。
だが、共に生活する者は過去を罵り、笑い者にするなど決して井上を肯定的に受け入れてはくれなかった。
それが故に井上を引き取りたいという里子は現れず18歳で退所となった。


だが、井上はこの施設でとある秘密を知った。
それが今回の悲劇につながっていく。
366 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/13(木) 19:14:49.23 ID:B8dr5i/a0
>>365
>それが故に井上を引き取りたいという里子は現れず18歳で退所となった。

里子ではなく里親でした
すみません
367名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/13(木) 19:31:53.94 ID:Dl+5Oz5B0
広がって来たな
368名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/13(木) 20:31:01.74 ID:7sxwL9pbI
さゆにゃん正義
369 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/13(木) 20:36:47.71 ID:B8dr5i/a0
話は現代に戻る。

特捜本部である本庁の大会議室は慌ただしく捜査員が動き回っていた。
まさに刑事ドラマでよく見る捜査本部の姿だ。

三上は井上の情報を見て頭を抱えていた。

「警部。どうなさいました?」
若月がコーヒーカップを置き、隣の椅子に座る。

「俺は12年前。彼女の証言から目を背けてしまった」
「確か彼女の父親が無理心中で母親を殺し、放火した挙句に自分の胸を刺して自殺したヤマですよね」
「あぁだが、あの時彼女は何かを聞いたと言っていたんだ。その何かに着目すべきだったんだ」
「警部。今更責めても仕方ないですよ。こうなったのは警部の責任ではありません」
「でもあの時きちんと捜査をしていればこんなバカげたことをせずに済んだかもしれない」
三上はただただあの時井上の言葉に耳を傾けなかったことを悔やむしかなかった。
僅かな情報を見逃したが故に大きな事件を生む。
それを誰よりも痛感していたのに何故こんなことに。

その時衛藤がとある女性を連れてやってきた。
「衛藤?この方は誰だ?」
「警部。こちら宮城県警の大和巡査部長です。重要な情報をお持ちだということで」
「どうも三上です。遠いところご足労頂いて感謝します」
「宮城県警生活安全課の大和里菜と申します。お会いでいて光栄です」
衛藤が連れてきて三上と握手を交わす女性は宮城県警生活安全課の大和里菜。
衛藤が井上の過去について調べていた時に協力したのが縁で上京してきたのだ。
どうやら重要な情報を持っているそうだ。

「ところで本件に関する重要な情報をお持ちだそうで」
「ええ。被疑者井上小百合が18歳まで過ごした南三陸にあった児童養護施設についてです」
「あったと申しますと…」
「ご存じの通りあの震災による津波被害で施設も流されてしまいましてね」
「そうでしたか…」
井上が青春時代を過ごした施設は東日本大震災による津波被害で壊滅的被害に遭って閉鎖。
関係者もほとんどが津波の犠牲になり、当時を知る関係者は修道院長で施設長だった女性のみだそうだ。
その女性は現在長崎にある修道院に身を置いているそうだ。

しかし大和が持ってきた情報が記されたファイルを読んで三上は愕然とした。

「そうか。そういうことか…」
三上は何かを確信したかのように立ち上がった。
「警部!何か分かったんですか?」
衛藤が尋ねる。
「あぁ。分かったぞ。今回の事件の動機がな」
三上はそう言うと慌てて本部を出て行った。その後を衛藤と若月が追った。
370 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/13(木) 21:45:19.95 ID:B8dr5i/a0
その頃真夏と深川が監禁されている倉庫では井上が思い出したくない辛い過去を思い出していた。
そして鞄にあるあのハリケンジャーのフィギュアを見つめる。

「どうかしたんですか?小百合さん」
「え?何でもないよ」
堀の問いに井上ははっとした。

「何かおかしいですよ。少し疲れているんじゃ…」
「何でもないって言ってるでしょ。変な心配してる暇があるならあいつらを監視しに行ってきて」
「…分かりました」
堀は井上の行動に疑問を感じ始めていた。
本当に自分が企てた西野の為に動いているのだろうか。
何か違う理由で参加しているような気がする。
段々メンバー内にも綻びが出始めていた。



「一体何でこんなことになってしまったの…」
「さぁ。私も検討がつかないです…」
監禁されて既にどれだけ経過したのだろう。
真夏と深川はじっと頑丈な扉を見つめていた。
早くあそこから出たい。
早く自由になりたい。
そんな希望を抱くも考えれば考えるほど虚しい現実に直面する。


「それもこれもあの西野とかいうお嬢様のせいよ」
深川がぼそっと呟く。真夏は目を見開いて深川の方を向いた。

「ちょっと落ち着いて下さい。深川さん」
「だってそうじゃないですか。旦那さんがおかしくなったのも何かあるのも全てそう」
「確かにそうだけど…」
「教えてくださいよ。一体あなたと西野さんは何の関係があるんですか?」
深川は真剣な眼差しで真夏に再度問いただした。
真夏は渋い顔をする。
余程詮索されたくない過去のようだ。

しばらく考え込んだ後に真夏は顔をあげた。

「何もかもお話します。私となーちゃんは…」
真夏がそう言いかけた時突然扉が開いた。
371名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/13(木) 22:12:31.04 ID:/NuQInph0
今全体のどれくらいまで進んでいるんだろう
372 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/13(木) 23:03:20.88 ID:B8dr5i/a0
「さぁお楽しみの時間よ!」
井上が堀と北野を連れてやってきた。
しかし、堀と北野は手を後ろに回されて拘束されている。
井上はその二人を床に叩きつけた。


「…小百合さん。やはり私の計画にただ乗っただけじゃないのね」
「当たり前でしょ?あんた自分がボスだと思ってたの?だったら余程おめでたい頭してるとしか言いようないわ」
「未央奈。やっぱりおかしいよ」
「黙れ。今からお前らもこいつらと同じだよ。おい!こいつらもあそこに縛りつけといて」
井上が指示すると男たちは堀と北野をそれぞれ用意された二つの椅子に縛り付けた。
実行犯だった二人は井上の策略にまんまと乗せられて自らも囚われの身となってしまった。


「一体あなたの目的は何?お嬢様に何か恨みでもあるの?」
北野が問いただすと井上は足早に駆け寄り北野の胸ぐらを掴んだ。

「ええとっても。だからあんたのようにあいつに仕える奴見てると無性に腹が立つの」
北野は井上の顔を見て怯えてしまっている。
井上は完全に復讐に全てを捧げているようだ。

「全く。あんな奴に入れ込む人間がいるなんて信じられないわ」
井上は呆れた様子で堀と北野を見つめる。
すると堀はある疑問が浮かんだ。

「ちょっと小百合さん。そういえばずっと気になっていたんですけど…」
「何よ?」
「一体私たちをどうやって見つけたんですか?」

そう。堀はずっと疑問に思っていた。
何故自分たちを知りこの計画を知ったのか。
堀は誰かが井上に自分たちや自分の企てを伝えたとしか考えられないと思っていた。


「あ〜あ。さすが堀未央奈。さすが短期間でのし上がってきただけあるなぁ」
そこに井上とは違う声が聞こえた。

「ちょっと!今出てきちゃマズイよ」
「いいじゃない。さゆにゃんと違って私はサツにバレてないしそれに見られても見つかった時にはもう何も言えないだろうし」
そう言って姿を現したのは意外な人物だった。

「そ、そんな…」
「嘘でしょ?何故あなたが…」
「一体誰なんですか?」
深川と北野は戸惑うが真夏と堀は面識があったが故に驚きを隠せない。
そうとてもじゃないがこのような凶行に及ぶ人間だとは思ってもいなかったからだ。


「お久しぶりね。まなったん」
「ひめたん。何で…?」

そう、姿を現したもう一人の実行犯。井上と堀を会わせ、この計画を遂行させた張本人。
誰もが予想もしなかったその人物は乃木坂商事で共にプロジェクトに参加していた中元日芽香であった。

何故中元がこのような凶行に及んだか。真夏とどんな関係があるのか。
そしてこの事件を企てた理由は。

その理由を俺が知るのはそう先の話ではない。
373名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/13(木) 23:30:00.92 ID:7sxwL9pbI
ひめたん・・
374名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/14(金) 01:19:09.07 ID:Ar3aDHh50
待ってる
375 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/14(金) 01:34:44.49 ID:kcnkaSHM0
すいません寝落ちしてました
とりあえずここまでにしてまた朝以降にしようと思います

では、しばらくおやすみなさい
376名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/14(金) 02:03:01.15 ID:FZ3Smynw0
ひめたあああああああん
悪役なんか
377名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/14(金) 03:22:11.45 ID:4Sddd1iU0
保守
378名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/14(金) 04:11:26.79 ID:RtygOfMXi
真夏の初恋の相手は誰ですか?
379名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/14(金) 08:39:35.96 ID:CEPrTNJH0
第86回選抜高校野球大会組み合わせ抽選まであと20分ちょっとです。
380 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/14(金) 10:18:43.59 ID:kcnkaSHM0
真夏、深川の行方が分からなくなって一日が経過した時だった。
俺は三上に呼ばれて本庁へ赴いた。
桜田門のあの建物が俺の目の前にある。
まさかここに入ることになるとは生まれてから一度も思うことはなかった。
しかし犯罪を犯した身で行くことにならずに済んだのは幸いとも言える。
俺はそう思いながら庁舎に入った。



受付に伝えると若月がやってきて案内されたのは応接室だった。
さすがに参考人でもないから取調室に入れられることはなかった。
俺は少しだけほっとしつつソファに腰かけた。


「おはようございます。朝早くからご足労頂きありがとうございます」
「いえ。春真はウチの両親が上京してくれて面倒見てもらってるんで大丈夫です。で、真夏は?」
「全力を挙げて捜索していますが未だ発見には至っておりません」
「じゃあ何でこんなところへ呼んだんです?」
俺は不安になるあまり少し腹が立って思わず当たってしまった。
三上と衛藤は沈痛な面持ちで頭を下げる。
こういう場面を幾度となく見て時には心ない言葉すら浴びせられてきたのだろう。
今は誰よりも真夏らの身を案じて捜査してくれているのに。

「すみません。でも何かあるから呼んだんですよね?」
「ええ。ただ、一点だけ申し上げます。今からお伝えするのは奥様の過去についてです」
「過去?」
「はい。失礼ですがあなたは奥様の真夏さんが宮城県内の児童養護施設にいたということは聞いていますか?」
「は?宮城?児童養護施設?一体何の話ですか?」
「もしかして何も聞かされていなかったのですか?」
俺はこれ以上ない衝撃を受けた。
真夏が児童養護施設にいただって。
真夏と出会い、結ばれて今日に至るまでそんなことは想像すらしていなかった。
何故真夏はそのことを隠してきたのか。
俺はただただショックの方が大きかった。



俺がショックのあまり下を向いているとノックする音が聞こえた。
「警部。長崎からのお客様が到着しました」
「ああ。通してくれ」

若月が修道服を身に纏った年配の女性と若い女性を応接室に案内する。
その時俺以上に驚いた様子で三上は若い方の修道女を見た。

「陽菜…?そんなバカな…」
三上はそう呟くとただ呆然としていた。
381名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/14(金) 10:55:08.56 ID:ZNXK6Oap0
明日ママがいない的な展開キタ━━━━(゚∀゚)━━━━ !!!!
ドラマ見たことないけど(真顔)
382 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/14(金) 12:29:17.59 ID:kcnkaSHM0
「なるほど。妻の妹の娘さんでしたか。似ているはずだ」
「はい。三上という苗字を聞いて思わず母に連絡したら叔母のことを教えてくれました」
「まさに神のお導きなのかもしれませんねぇ」
「ではご紹介します。長崎の聖ヒナピョン修道会長崎中央修道院の深川陽子院長と付き添いの川後陽菜さんです」
「深川…と言いますともしかして…」
「はい。今行方知れずの深川麻衣は私の孫でございます」
「そうでしたか…」
何と深川の祖母が例の児童養護施設の施設長などをやっていたシスターだった。
会った時から聖母マリアみたいな雰囲気があったがこれでその理由が分かった。


「お疲れですし不安でしょう。なので単刀直入にお伺いします。彼女たちはご存知ですか?」
三上は井上、西野、真夏の写真を見せた。
陽子は懐かしむような表情で写真を見る。

「ええ。3人とも私が南三陸町で勤めていた養護施設で育った子たちです」
「勤めていた?一応施設長に修道院の院長もしていたんですよね?」
「はい。私は元々静岡の磐田で修道院を開いていましたが同じ道に進んだ娘に託して私は各地で跡取りのない修道院で院長を引き受けるようにしたんです」
元々日本は仏教徒が多い。故に修道院も次に引き継ぐことができず閉鎖するところも珍しくはないという。
陽子はそういった身寄りのない修道院からの誘いで院長となり次に繋げ、残していく活動に全力を注いでいるそうだ。

しかし、俺は西野までいたことには驚いた。

「西野鉄鋼の社長令嬢である西野七瀬は養女だったということですか?」
「えぇまぁ。先方がいたくなーちゃ…いや七瀬さんを気に入りましてね。ただ…」
「ただ…?」
「はぁ…」
陽子は何か歯切れが悪い。どうやら何かあったようだ。
しばらく沈黙が続く。

しばらくして陽子は俺が警察に提供したプロジェクトメンバーの写真を見て驚いた表情をする。
「あぁひめたんちゃん。こんな立派になったのねぇ」
「深川さん。中元日芽香をご存じなんですか?」
「ええ。確か七瀬さんと真夏さんの二人と同じ時期にいたんですよ」

この事件はどうやら真夏らが児童養護施設にいた時にあったことが引き金になっているようだ。
383名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/14(金) 14:38:48.52 ID:Ar3aDHh50
児童養護施設で一体何が・・
384名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/14(金) 14:39:09.92 ID:ZHSUV4OJ0
同時期に施設にいた七瀬と真夏とひめたん
西野鉄鋼に引き取られた七瀬
その施設にあとからやってきた小百合
未央奈と小百合の間にいたひめたん
当時の施設長の孫であり真夏と共にターゲットにされてしまったまいまい

こんな感じで合ってる?
385 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/14(金) 14:52:11.65 ID:kcnkaSHM0
物語は一気に昔に戻る。


ここは旧宮城県志津川町にある『聖ハウス修道院』。教会と児童養護施設を併用している。
ここでは各地から身寄りのない子供を18歳まで預かる施設となっている。

ここでは真夏と西野の話ではなく中元の話をするとしよう。


「ひめたんちゃんに里親の話ですか?広島?あぁそうですかぁ…」
陽子が受話器を置くと立ち上がり庭に出る。

「ひめたん。ちょっと…」
幼き中元は真夏や西野と遊んでいた。
3人は同じ頃に入所したためにとても仲が良かった。

ちなみに井上がここにやってきた時既に3人は里親に出されて退所している。


「ひめたん。実はねお父さんとお母さんが出来るのよ」
「え…?」
中元は広島駅のコインロッカーから見つかり生みの親は誰かも分からず親の存在なく育ってきた。
それまでは広島の施設で育っていたが閉鎖に伴って陽子が引き取ったのだ。

「その人たちは広島に住んでるの。だから帰れるのよ広島に」
「え?広島に帰れるの?」
中元は幼いながらも広島が恋しかったようだ。
みんなの手前隠してはいたがずっと広島の風景やかつていた場所に思いを馳せていた。
それだけに嬉しかった。

あるドラマみたいに子供が里親を選ぶ権利はない。
里親が子供を希望したら里子に出来る大人が有利な制度である。
大概は一度会って住んでみて良かったら事務的な手続するだけで里子になるのが一般的だ。

中元もそういった手続きで里子として故郷広島へ戻っていった。


「なーちゃん。ひめたん新しいパパとママが見つかってよかったね」
「う〜ん。ホントにこれで幸せだったのかなぁ?」
「だってずっといなかったんだし広島に帰れるんだし幸せだよ〜」
「私はそうは思えないな」

幼き真夏と西野の会話は異なっていた。
386 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/14(金) 15:13:17.49 ID:kcnkaSHM0
広島の中元家に引き取られた日芽香。
ここでは下の名前で記すことにする。

しかし、中元家には既にすず香という一歳年下の実子が存在した。
何でもすず香本人が姉が欲しいと懇願したのが始まりであった。
日芽香になったのも最終的にはすず香本人の希望でそうなったそうだ。

当初は仲良く妹まで持てたことに喜び、両親も分け隔てなく育ててきた。
しかし現実は成長と共に知っていくこととなる。
青年期を迎え自分が実子ではないことや妹ばかりが優遇されるのを妬むようになった。
こういう場合大概悪い道に走ることが多いが幸い悪い仲間とつるんだりすることはなかった。
その代わりにがむしゃらに勉強やスポーツに励んだ。
高得点を取る。大会で優勝する。その度に両親が褒めてくれたからだ。

しかしながらそれ以上に妹のすず香は出来る子であった。
いい点数を取って褒められても後ですず香がそれ以上に褒められる。
優勝してもすぐに妹が違う大会で優勝する。
頑張って広島一の名門校に進むも妹はそれ以上の学校に合格。

大学も日本有数の名門乃木坂大学法学部に入った。
しかし1年後妹は東京大学経済学部に合格。

就職も頑張って世界でも有数の乃木坂商事に入社した。
だが、すず香はひとつ下のさくら物産に入社。即エリート部署に配属され結果を出した。

何をやっても勝てない。
何をやっても両親は実子の妹ばかりかわいがる。

そういったコンプレックスが日に日に募り次第に恨みに変わった。
そんなある日営業第一部に異動し西野の仕事をすることになった。
たまたま主任の俺のことを調べていたら井上の存在を知った。
堀が西野に何かしようとしているのは知っていた日芽香は堀をそそのかして井上と接触した。
そして井上の情報もありこの計画が実行された。
深川が院長の孫だと知るのも容易であった。
だから見せしめに拉致することにしたのだ。

井上、中元、堀。それぞれの思いからこのような凶行は実行されたのだ。
387名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/14(金) 16:57:06.36 ID:Ar3aDHh5I
ひっひめたん
388名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/14(金) 16:57:09.71 ID:aGYldztti
保守
389 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/14(金) 19:43:39.31 ID:kcnkaSHM0
もうしばらくお待ちください
390名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/14(金) 20:17:46.32 ID:Cj6L4C4R0
犯人はヤス!じゃなくて、ひめたんだったのか
391名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/14(金) 20:21:48.58 ID:ZNXK6Oap0
妹ネタ入れてきたか…
ひめたん推しとしては少し胸が痛い
392 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/14(金) 21:00:00.87 ID:kcnkaSHM0
「そうだったんですか…」


それぞれの過去を知った俺は考え込んだ。
児童養護施設とか里親とかそんなものはドラマの世界の話だと思っていた。
自分には関わりはないだろうと。
しかし、愛した妻も同僚もあのお嬢様ですら生みの親のもとで育たずに他人と暮らした。
生みの親に育てられて何不自由なく教育を受けられた自分が恵まれているのだと感じた。

「日本にもまだまだ親の愛情に恵まれない子どもたちは多くいます。でもその多くの子は本当にいい子なんです」
「それは分かります。犯罪者だから悪人だという決めつけもしていません」
「それにしても小百合ちゃんもひめたんちゃんもどうしてこんなことに…」
「ご自分を責めないでください。あなたがやってきたことは決して間違ってはいません」
三上は肩を落とす陽子を励ます。
思えば三上自身も自分の子供を育てられなかった。
色々考えると人生を単純に生きることはいかに難しいか実感する。



「警部!」
そこへ衛藤が応接室に駆けこんできた。

「どうした?」
「彼女らの監禁場所が分かったかもしれません!」
「何だと!?どこだ?」
「井上小百合の親が経営した会社が使用していた倉庫です!場所は日の出埠頭」
「よし!行くぞ!!」
三上がコートを持って行こうとしたとき俺は立ち上がった。

「俺も行かせてください!」
俺は自分でもこんなことを言うとは思わなかった。
だが、そこへ行かなくては。
俺は何故かそんな使命感を感じた。


「私も共に参ります」
陽子と陽菜も行くことを求めた。

「警部どうしますか?」
若月が尋ねる。三上は冷静に答える。

「時間がない!とりあえず連れて行くが我々の指示に従わない場合は帰ってもらいます」
そう言い残して走っていった。
そして駐車場でそれぞれパトカーに乗り込みいざ現場へ向けサイレンを鳴らして走っていった。







「もしもし。ええ。今そちらに向かいました…ええ…では」
駐車場の柱に隠れるようにしてどこかへ電話を掛ける参事官の生田の姿があった。
393名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/14(金) 22:21:10.01 ID:Ar3aDHh5I
ひめたんも警察ばれてたん?
394名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/14(金) 22:37:53.18 ID:FZ3Smynw0
やっぱりいくちゃんグルか
395 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/14(金) 22:50:30.66 ID:kcnkaSHM0
「ひめたん…。パーティーで見た時はまさかって思ったけど」
「ふん。私は随分前から知ってたわよ。まなったんの旦那さんは評判だから」
「でもどうして…?私も夫も何も危害は加えてないはず?」
「もちろんまなったんやなーちゃんに恨みはない。恨みがあるのはあんただよ」
中元は深川の服を掴む。

「一体何のこと…?そもそも私は初対面よ」
「そうね。でもあんたのばあさんはよく知ってるのよ」
「え?おばあちゃん…?」
「そう。あんたのばあさんがあっさり私をあんな家にやった。それで私の人生惨めなもんよ」
「は?一体何の話よ?さっぱり分かんない…」
深川は中元の話を祖母から何も聞いていないようだ。
無理もない。これまで何十人いや何百人という単位で子供を里子に出してきた。
そんな誰を里子に出したなんて身内にも軽く話せるものではない。
しかし、中元は自分の運命を恨み、そのターゲットは自分をその家に出した院長の陽子だった。


「でもそれって何か違うような…」
真夏がぼそっと呟く。

「そりゃああんたはいいよね。いい家庭に育ち、いい旦那さんに恵まれてさ」
「そう。それにあんなにかわいい息子まで。まさに理想的な生き方」
中元、井上双方にとって真夏はまさに妬ましい存在だ。
さて、どうしたものか。
そう考えていた時だ。

「西野七瀬が着いたっす」
「そう。じゃあ通して」
井上に言われた男は西野を倉庫に招き入れた。

「一体どないなってんのこれ…?」
「うるさい!さっさとこっちに来い」
戸惑う西野を無視して井上は西野を椅子に座らせた。

「もういいわ。あんたらはこれ持って消えなさい」
「約束の金っすね?あざーす!!」
男たちは喜びながらアストロに乗り込み走り去っていった。



「へへへ。これ持ってカリブにでも高飛びしよーぜー!」
「そうだな!」
「おい金見ようぜ!金!」
一人の男が笑顔でブリーフケースを開けたその時だった。

ドオオオオオン!!!

男たちが乗ったアストロは一気に業火に包まれ、そのまま岸壁から東京湾に沈んでいった。
396 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/14(金) 23:09:27.47 ID:kcnkaSHM0
「何、今の音?」
「なんか爆発したような音だったけど?」
真夏らがいるところからも音が聞こえた。
だが、二人は冷静だ。

「さて、主役もそろったし最終段階にいきますか」
「そうね」
「誰から行こうかな?」
「お先に小百合さんからどうぞ。私は後でいいからさ」
二人は笑みを浮かべながら犠牲者を選ぶ様子はまさに恐怖そのものである。
誰もが恐怖に脅えるなか西野だけは冷静だった。

「何やウチに泣かれて人生台無しになっただけで今頃復讐するんか?」
「黙れ!」
西野の挑発的な発言に井上は動揺している。

「あんたはただ不幸を他人のせいにして逃げてるだけやん。そんなんやっても何も意味ないと思うで」
「何だと!元々てめぇがこんなもん欲しいって言ってきたことが悪いんだろうがぁ!!」
井上は鞄から出したハリケンジャーのフィギュアを叩きつけた。

「そんなもん知らんわ。結局あんたは不幸な宿命を受け入れずに負けたんや。だからずっと不幸なんちゃう?」
「うるせぇ!さっきから黙って聞いてれば偉そうに…」
「なーちゃん。もうやめようよ。謝った方が…」
「真夏。あんたはそうやって腫れ物には触れへんようにしとるからこうなるんやで」
「え?」
「こいつらはもうここまで堕ちたんや。それも全部自己責任やということを教えてやるのがホンマの優しさちゃう?」
「それは違うと思う。二人ともそれなりに理由があるんだよ」
「どんな理由があろうとこんな人を縛って殺してもええことにはならへんよ」
「そりゃそうだけどなーちゃんはいつも相手を刺激するようなことを言うから」
二人が言い合いを始めた。
深川や堀、北野が唖然として井上と中元が怒りのあまり震えている。


「うるせぇ!やっぱてめぇからだ!!!」
井上がナイフを出した時だった。

「井上小百合!堀未央奈!警察だ!そこにいるのは分かっている!」
拡声器を通じた若月の声が響いた。

「ついに来たか…」
井上は小窓を見るとそこには二台の覆面パトカーが止まっていた。
397 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/15(土) 00:06:47.91 ID:kcnkaSHM0
「反応はどうだ?」
三上が若月に尋ねる。

「今のところ動きは見えません」
「警部。小窓から誰かが見ています。恐らく井上小百合かと…」
衛藤が双眼鏡を渡すと三上も覗いた。

「あそこにいるな。若月。見取り図を」
「はい」
若月はトランクから見取り図を取り出してボンネットの上に広げた。

「恐らくここにいるだろう」
三上は小窓のある事務室の奥にある中倉庫を指した。

「ここに真夏がいるんですか?」
俺は車から降りてボンネットの見取り図を見る。

「ちょっと!何やってるんですか?」
「犯人は銃を持ってるかもしれない。だから安易に外へ出ないでください」
「でもここにいるんですよね?だったら一刻も早く…」
俺は焦っていた。一刻も早く真夏をここから解放したい。
それが叶うなら俺はどうにでもなればいい。
そう思っていた。

「戻ってください。あなたには大事な息子さんがいるんです。奥さんは。真夏さんは必ず我々が救出しますので…」
「でも…」
「車に戻れ!あんたが犠牲になったら意味ないんだよ!」
三上に一喝され、俺が車に戻ろうと後部ドアを開けた時だった。

「何だこの音は?」
「警部!あおぞら1号です!」
「何?」
三上は戸惑った。何故誰にも知らせずに来た場所に来るのか?
するとかすかにサイレン音が響く。
しかもかなりの数のパトカーだ。
そして音は段々近づいてくる。

「警部!物凄い数のパトカーがこっちに向かってます!」
「何だと!?」
三上らが戸惑うなか、窓から見えたのは無数の赤い光だった。
反対側からも無数のパトカーがやってくる。

そしてあっという間に無数の警察車両が俺たちの周囲を取り囲んだ。
車両から多くの警察官が銃を出して包囲した。


「ご苦労だったなぁ三上…」
三上の肩に手を置いたのは敏郎だった。
そして傍に立ったのは笑みを浮かべている生田であった。
398名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/15(土) 00:07:15.98 ID:UD1vmewP0
ついにクライマックスか・・・
399 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/15(土) 00:20:44.94 ID:hwXdVAKH0
今日はここまでにします
みなさんお分かりのようにこの妄想もいよいよ佳境に入りました
近いうちに終わると思います

今思ってるのはこういうのは終わるとブログに移したりするものですが今は転載禁止なのでこういう場合どうなるんでしょうか?
もし問題ないなら分かりやすくしたいものですがね

では登場人物一覧更新して休みます
明日はまた夕方以降に更新する予定ですのでそれまで保守した頂けたらと思います
では、おやすみなさい
400 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/15(土) 00:24:00.61 ID:hwXdVAKH0
ここまでの登場人物一覧

俺…主人公。乃木坂商事第一営業部係長
真夏…嫁。専業主婦
春真…俺と真夏の息子で幼稚園児
西野七瀬…西野鉄鋼グループ社長令嬢。どいやさんを世界に売り込もうとする
深川麻衣…乃木坂バレッタ生命の保険外交員。学資保険やこどもの保険を扱う
堀未央奈…営業第一部。何故か秘書から抜擢され西野と関係あり?
北野日奈子…西野家東京別宅に仕える世話人(メイド)
能條愛未…西野家東京別宅に仕える世話人(メイド)
矢田里沙子…西野家専属運転手。真夏の後輩

白石麻衣…女優、モデル、デザイナー、実業家。西野の親友で愛称はまいやん
松村沙友理…「サユリン」としてアメリカでモデルやアイドルで活躍
永島聖羅…白石専属のマネージャー
斉藤優里…ユッタンプロモーション代表取締役社長
和田まあや…白石、サユリンの弁護士。日本と加州の弁護士資格を持つ

部長…営業第一部部長。主人公を買っている上司
桜井玲香…営業第一部。プロジェクトサブリーダー。版権ビジネスに精通
中田花奈…営業第一部。広報業務に精通
中元日芽香…営業第一部。グッズ販売担当。誘拐犯の一人
山崎怜奈…営業第一部。英語が得意
高山一実…営業第一部窓口担当
伊藤かりん…営業第一部窓口担当
平野…営業第一部→グアテマラ駐在所。事件を起こし逮捕されるも数時間後に殺害される
伊藤寧々…真夏のママ友。料理の腕は一流らしい
伊藤紗々…寧々の娘。春真と同い年
井上小百合…春真のクラス担任。誘拐犯の一人。愛称はさゆにゃん

三上博史…警視庁捜査一課警部。衛藤、若月の上司で橋本奈々未の父
橋本奈々未…主人公が通う駅までの道にあるコンビニのベテラン店員。三上の娘
樋口日奈…三上の隠し子。今春から京都府警警察学校へ

生駒敏郎…警視庁刑事部長
生駒里奈…エース弁護士。西野鉄鋼の顧問弁護士
鈴木絢音…里奈の妹。乃木坂航空国際線客室乗務員
生田絵梨花…警視庁刑事部参事官
設楽統…警視庁捜査一課課長
衛藤美彩…警視庁捜査一課刑事。みさ先輩と呼ばれている
若月佑美…警視庁捜査一課刑事。若月と呼ばれている
伊藤万理華…警視庁鑑識課鑑識官。愛称はまりっか
大和里菜…宮城県警生活安全課

市來玲奈…看板アナウンサー。愛称れなりん
西川七海…真夏の同級生。受付嬢
川後陽菜…聖ヒナピョン修道会長崎中央修道院の修道女
深川陽子…聖ヒナピョン修道会長崎中央修道院院長。かつて真夏らがいた養護施設の院長
401名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/15(土) 00:24:34.16 ID:JiUhDWYf0
402名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/15(土) 00:53:18.30 ID:BCgbXG1g0
ハッピーエンドで終わらせてほしいなぁ…
403名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/15(土) 01:07:46.23 ID:/W2oOlkG0
乙です!
明日以降も楽しみにしてます
404名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/15(土) 01:45:55.48 ID:YoqTdYSOI
お疲れ様です
405名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/15(土) 04:11:15.99 ID:Z3Kltazk0
保守
406名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/15(土) 06:39:06.57 ID:1+axJcAdi
実家に帰る予定だったんだよね、真夏と春真は?
407名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/15(土) 09:04:38.88 ID:YoqTdYSO0
楽しみや
408名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/15(土) 12:46:27.47 ID:YMMsSWAw0
保守
409名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/15(土) 14:50:27.61 ID:YoqTdYSOI
ひなちまってる
410名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/15(土) 16:02:47.83 ID:/W2oOlkG0
保守
411名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/15(土) 16:37:25.57 ID:JiUhDWYf0
保守
412名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/15(土) 18:05:57.12 ID:vuufPhTl0
捕手
413名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/15(土) 19:25:25.88 ID:YoqTdYSOI
まなかな
414名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/15(土) 21:23:11.31 ID:YoqTdYSOI
受付嬢辞退
415 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/15(土) 21:33:55.37 ID:hwXdVAKH0
「井上小百合!そして中元日芽香!お前らは完全に包囲されている。無駄な抵抗はせず人質を解放して出てきなさい!」
機動隊の警官が拡声器で呼びかける。

「どういうことですか?刑事部長」
「お前らがコソコソ嗅ぎまわっている間にこっちもきちんと捜査した。それだけだ」
どうも理解できない。
色々な情報を出した覚えはない。
それなのに何故ここまで辿り着いたのか。
三上はもしかして警察内部に内通する人間がいるのではないかと思っていた。


「部長。強行突入しましょう」
そう進言したのは捜査一課長の設楽であった。

「待ってください!もう少し説得の時間を下さい!!」
三上の脳裏に18年前の失敗を思い出す。
「三上さん。無駄ですよ。一刻も早く人質を救い出すのが最優先です」
「いや。二人ともこうなったのは理由があるはずです。全ては過去にあるんです」
「だからって延々と説教垂れて解放する保証なんかないでしょ?」
「それはそうだが…」
「だったら突入して解決するのが賢明な判断じゃないんすか?」
設楽の言うことは正論だ。
しかし、井上と中元にある根本の何かを解かなければ本当の解決にはならないのではないか。
三上は完全なる解決策を模索していた。


「そういえば中元君はしきりに妹さんのことを気にしていました」
俺はふと中元と仕事した日のことを思い出した。
416 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/15(土) 23:01:58.70 ID:hwXdVAKH0
「そうだったんですか。よし。若月すぐに妹さんをここに連れてこい!」
「あ〜いやぁ〜それが…」
「何だ?」
三上が尋ねた時、後方からサイレンを鳴らしたセドリックパトカーがやってきた。
停車したパトカーから降りてきたのは衛藤と中元すず香であった。

「おい!これはどういうことだ?」
「一歩先を読んで動け!そういつも警部が言ってるじゃないですか」
「チッ!本当にお前らは…」
「それより今は彼女の闇を消すのが大事なのでは?」
「分かっている!」

黙っていられない俺は思わず拡声器を手に取って叫ぶ。

「中元君!俺だ!一体こんなところで何をやっているんだ?」
周囲の警察官が俺を止めに入る。
だが妻の為、部下の為を思うと余計な力が入り制止を振り切り話し始める。

「とにかく妻は無事なのか?堀君もそこにいるんだろ?頼むから話だけでも聞いてくれ!」
「何やってるんだ!」
「さっさと車に乗せろ!」
現場は大混乱に陥っている。
俺はそれでも話し続けた。俺の思わぬ行動で突入準備をしていたSITは配置から外れた。


「まったくあなたは随分無茶をする人だ!」
三上がそう言って俺の肩に手を置く。
俺は拡声器を置いてパトカーに戻った。

「すず香さん。お願いします」
三上はすず香に拡声器を渡す。
拡声器を手に持ったすず香の右手は震えていた。
417 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/16(日) 00:05:54.20 ID:hwXdVAKH0
今日でいいところまでいきそうです
418名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/16(日) 00:14:08.56 ID:gwZwcc3g0
おお!
楽しみにしてます!!
419名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/16(日) 00:29:04.12 ID:XW0gynyB0
がんばってください!
420名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/16(日) 00:41:02.92 ID:AM27PcZP0
頑張ってやーヾ(@⌒ー⌒@)ノ
421名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/16(日) 01:29:57.84 ID:HcHdb3Xk0
わーい
422 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/16(日) 01:47:14.38 ID:PkixSXAX0
「お姉ちゃん!」
拡声器を通じて聞こえる妹の声に反応する姉。

「この声は…。何故?」
日芽香は窓を見る。
そこで見たのは紛れもなく心配そうにこちらを見つめる妹の姿であった。

「何しにきたのよ!邪魔しないで!」
思わず外に向けて声を出す日芽香。

「何でこんなことを…?」
「うるさい!全部あんたがいけないのよ。ことごとく私の邪魔ばかりして!」
「じゃ…邪魔…?」
「そう。所詮私とあんたは血が繋がっていない。そもそもあんたが姉が欲しいとかくだらないこと言ったせいで私の人生滅茶苦茶よ!」
声を荒げる日芽香。
下では泣き崩れるすず香に変わって三上が拡声器を持つ。

「それは違うぞ!」
そう言うと拡声器を陽子に渡す。

「院長!あんたまだそんな格好してんのかよ?私をあんな家に出しやがって!」
「そうですね。でも、あなたは望まれていたから私は中元さんにあなたを託したのです」
「そりゃそうよね。こいつが自分を優位に立たせたいからね。所詮捨て子と見下してるのよ」
「それは違います!」
陽子が声を荒げる。
日芽香は初めて見る陽子の怒った顔に思わず気が怯む。

「いいですか!よく聞いて下さい。中元さんのご両親も妹さんもあなたを望んでいたのです」
「はぁ?どういうこと…?」
「あなた広島にいた時に迷子の女の子を助けてあげませんでしたか?」
「迷子…?もしかして…」

中元は里子に出される少し前のことを思い出していた。
用があって陽子と共に広島に行った日芽香が広島駅前のデパートで迷子になった女の子を見つけて迷子センターへ連れて行った。
結局は二人とも迷子としてアナウンスされて無事に引き取られた。
そう、その時の女の子がすず香であった。
しかも驚くことにすず香は拉致されており、犯人が交渉の電話をしている時に日芽香が見つけたのだ。
そのおかげで犯人はデパート前で確保された。

意外な真実を知った日芽香の目から涙が止まらない。
423名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/16(日) 07:24:35.03 ID:qY/D3jUO0
想い出の青さに 涙が止まらない
424名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/16(日) 10:26:17.41 ID:G/dNB4E20
Age
425名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/16(日) 12:07:50.57 ID:HcHdb3Xk0
ひめたん
426 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/16(日) 13:11:12.59 ID:PkixSXAX0
「そして小百合ちゃん!」
陽子は井上の名前を口にした。
井上は思わず窓へ駆け寄る。

「院長先生…。覚えていらしたのですか?」
「小百合ちゃん。あなたがどういういきさつで来たのかどんな思いをしてきたのかも」
「でもあなたは救ってくれなかった!」
「それは本当に申し訳ないと思っています。でもこんなことをしてもご両親は喜びませんよ」
「黙れ!今更説教なんて聞きたくもない」
「小百合ちゃん。あなたが肌身離さず持っていた人形の中を見てみてください」
井上は先ほど投げつけたハリケンジャーのフィギュアを見る。
すると胸あたりから何か小さな紙を見つけた。

それは井上の父親が記したものであった。
井上は自らの命が狙われているのを察知していたようだ。
父は真相を記していた。

元々西野鉄鋼は取引を打ち切ろうとしていた。
当時の西野鉄鋼は大きな負債を抱えていた。
しかしそれが公になれば世界的に鉄鋼業への不安から経済悪化すると言われた。
西野鉄鋼は時の政府からの指示で何とか赤字隠しをした。
井上らもその犠牲になったとのことだ。

そしてその秘密を握る人間がどんどん消されていくことも記されていた。
様々なことが細かく書かれているが最後にはこう記されていた。

『例えどうなろうと小百合は小百合らしく生きろ。正義を守るヒーローになりなさい』と。

井上の目からどっと涙が溢れる。
同時に自分は一体何をやっているのだろうか。そう思うようになった。

「全ては誤解が生んだことだ。真実は思うこととは違うこともある。もうやめにしないか?」
三上の言葉が二人の胸に響いた。

二人は縛っていた4人を自由にした。
そして投降しようと向かう時だった。

カラン

何か缶みたいなのが落ちる音がした瞬間周囲は白い煙に覆われた。
427 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/16(日) 15:21:51.91 ID:PkixSXAX0
「警部!SATが突入してます!!」
「どういうことだ?」
白い煙が見えた瞬間黒い重装備をした男たちが次々に倉庫へ入っていく。
彼らは特殊急襲部隊SATだ。

「部長!まさか今までの時間はSAT突入までの時間稼ぎだったのですか!?」
三上は敏郎に突っかかる。それを止めようとする衛藤と若月。

「待てい。俺はそんな指示を出した覚えはない。これは総監の意向だろう」
「でもこれはあんまりだ!万が一人質の人命にかかわったら…」
「お前は相変わらずだな」
二人が揉めているなかでどんどん動いている。

まず倉庫から被疑者である井上と中元が姿を現した。
二人は警官に囲まれてそれぞれパトカーに乗せられた。

次に堀と北野、深川が出てきた。
すっかり憔悴しきっていた様子だ。
二人は救急車に乗る。


しかしながら待てどくらせど真夏は出てこない。
どういうことだ?
ここに絶対いたはずだ。
もう出てきてもいいのに。
俺は不安ばかりが増大していく。


「刑事さん!」
声を掛けてきたのは修道女の川後であった。
「どうしました?」
「院長がどこにもいないのです」
「え?」
それを聞いて俺は車を降りて一目散に堀らが乗った救急車へ駆けていく。

「深川さん!真夏はどこだ?どこへ行ったんだ!?」
俺は堀を問いただす。

「突然誰かが入ってきてそれから倉庫にあった車でおばあちゃんとどこかへ…」
どうやら真夏と西野は陽子に連れていかれたようだ。

一体どこへ。
何のために。
俺は更に不安が増す。
428 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/16(日) 15:24:54.62 ID:PkixSXAX0
>>427
二人は救急車に乗る。
のところですが三人の間違いです。
お詫びして訂正します
429名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/16(日) 17:12:33.13 ID:AM27PcZP0
頑張ってやー
430名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/16(日) 17:30:18.35 ID:9+6cabcp0
BADENDはやめてね
431名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/16(日) 18:20:35.30 ID:HcHdb3Xk0
神のまにまに
432名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/16(日) 19:35:12.48 ID:XW0gynyB0
保守
433名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/16(日) 19:50:02.45 ID:3STVvWH10
先週TBS未成年見直したばかりだから楽観的に読ませてもらってるぜ
俺氏はモテキなんだよね?!
434名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/16(日) 20:52:22.13 ID:HcHdb3XkI
真夏と七瀬
435 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/16(日) 21:21:38.49 ID:PkixSXAX0
「一体どこへ消えたんだ?」
警察でも姿を消した真夏、西野、陽子の3人の行方はまだ分かっていない。


俺は本庁でただじっとしていることのもどかしさを感じている。
考えれば考えるほど不安だけが募る。

しかし同時に何故あの突入の最中に抜け出せたのか。
急襲を仕掛けたならなかなか抜け出すのは簡単じゃない。
だが、そうなることを予め分かっていたとしたら。
そう思っていたのは俺だけではなかったようだ。



「この警察内部に内通者がいる」
三上が衛藤と若月にそう呟く。
だが二人は驚くそぶりを見せない。

「警部!申し訳ありません」
「衛藤…」
「みさ先輩どうしたんだよ急に」
衛藤が突然立ち上がり頭を下げる。
二人は衛藤の突然の行動にただ戸惑う。

「衛藤。一体どうしたんだ?しっかり説明しろ」
「私。警部に知らせる前にあの倉庫を伝えたんです」
「何だって!?一体誰に…」
「…生田参事官です」
「そうか…でも一体何故なんだ!?どうして参事官が…」
「それは…直接お伺いした方がいいかもしれませんね。参事官!そこにいるのは分かってます!」
衛藤がそう言うと扉の向こうから生田が顔を出した。

「参事官。何故ですか?」
「一体何の話かしら?」
「とぼけないでください。あなたは一連の我々の行動に何かと絡んできていました」
「それが何です?」
「あなたは全てを知っていたんじゃないですか?こうなることも…」
「何を言うのですか三上警部。私を超能力者か何かだと思っているのですか?」
「いや。超能力なんかなくともあなたが西野七瀬と繋がっているのなら筋が通るんです」
「…確かにそうね」
生田は持っていた資料を渡す。
それを見た三上は目を見開いた。

「お分かりかしら…」
「何故あいつが…」
「内通者は参事官じゃなくて課長だったんですね」

そう、警察内部で情報を提供していたのは生田ではなく捜査一課長の設楽であった。
436名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/16(日) 21:52:52.95 ID:AM27PcZP0
きたか
437名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/16(日) 22:15:21.77 ID:gLiIoFxXi
カイザーがそんな
438 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/16(日) 22:20:28.62 ID:PkixSXAX0
「まなっちゃん。なーちゃん。着きましたよ…」
眠っていた真夏と西野。ドアの向こうには陽子が立っていた。


「こ、ここは…」
「ホンマに…」
二人が連れてこられたのは南三陸にあった養護施設の跡だ。
施設は津波にのまれてしまい今は何も残らない更地となっている。

「何もあらへんくなってまったんやな…」
「そうね」
「あなた達が育った場所はあの日一瞬で全てを流していきなくしてしまいました」
育った場所が影も形もなくなったということはどういうことか。俺には想像もつかないことだ。
二人は呆然と目の前に広がる更地を見る。

「でもさすがに津波はあなたたちのわだかまりまでは洗い去ってはくれません」
「院長。その話は…」
「いえ。せっかくの機会です。今ここで終わりにしましょう」
「全て私が悪いんです。私があの家を選んだばかりに…」
「いえ。まなっちゃんもなーちゃんも。誰が悪いとかそういう問題ではありません」
「じゃあ一体何なんや?」
「あなた達の為ではありません。周囲の人々の為です」
「周囲の…」
「そうです。なーちゃん。あなたはまなっちゃんの全てを奪おうとした。そうではありませんか?」
陽子の問いに西野は言葉も出ない。
真夏も黙って西野を見る。

「まなっちゃん。あなたはあなたなりに責任を取ろうとした。だからあなたは身を引こうとしたのではないですか?」
「院長。それは…」
「あなたのことは幼い頃から見ております。だからそんなことは大体想像がつきますよ」
院長は何もかも察していたようだ。

「全くあなたたち二人は幼い頃から何も変わっていないようですね」
院長はため息をつく。

「院長いつから分かっていたんですか?」
真夏が尋ねる。
「それウチも気になっていたんや」
西野も同様の疑問を抱いていたようだ。

「あなたたちが再会したあの夜からですよ」
院長がそう言うと真夏と西野はあの夜のことを思い出した。
439 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/16(日) 22:21:19.61 ID:PkixSXAX0
同窓会の後、矢田に連れてこられたビストローネ・ド・マイヤン。
そうあの同窓会の日の空白の夜の時間まで戻る。

「久しぶりねなーちゃん…」
「真夏も元気そうやな」

二人の会話を裏で聞いている白石ら。
その時その場には陽子もいたのだ。

「麻衣ちゃん。悪いわねこんなこと頼んでしまって…」
「いえ。院長の頼みですから」
「しかし麻衣ちゃんもこんなに立派になってねぇ…」
「それも全部院長のおかげです」
そう。白石も陽子が院長を務めた群馬の養護施設にいたのだ。
世の中どこで繋がっているか分かったものではない。


「それにしても何故こんなことを…?」
白石がシャンパンを飲みながら尋ねる。
「あの二人にはどうしても仲直りしてもらいたいと思いましてね」
「確かそう仰られて東北に戻られた。そう聞きました」
「私が児童養護に携わって一度だけですからとても気がかりでしてね」
「でもこうして会っている。その手助けが出来て嬉しいです」
「いえいえ。麻衣ちゃんにはまだお願いしなければいけないことがありますからね」
「院長の頼みごとなら何でも聞きますよ」

そう。あのパーティーを仕組んだのは陽子だった。
全ては真夏と西野をあの頃に戻すために。

では、何故真夏と西野はこのようになってしまったのか。
440 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/16(日) 22:22:10.92 ID:PkixSXAX0
話は18年ほど前に遡る。

幼い真夏が児童相談所から『聖ハウス修道院』にやってきた時から始まる。

「院長!新しい子を連れてきましたよ」
「これはこれは日村さん。わざわざご苦労様でした」
「えーっと確か真夏ちゃんだったわね」
「ええ。人見知りなところはありますが凄くいい子ですよ」
幼い真夏は日村の背に隠れている。
だが陽子が声を掛けるとすぐに陽子の傍に行く。

「じゃあ頼みましたよ」
「はい。承知しました」
こうして真夏は施設に入った。




それから数年後のある日だった。
すっかり施設では人気者になっていた真夏にある話が舞い込んだ。

「え?まなっちゃんをですか?」
驚く陽子に正面に座る日村はハンカチで汗を拭い用意された麦茶を一気に飲み干す。

「はい。先方が急に真夏ちゃんを希望してきましてね…」
「でも、あの御宅はなーちゃんを希望してもうお試しも終わって手続きに入るところだったのでは?」
「そうだったのですが、前回真夏ちゃんをお試しで過ごさせたら心変わりしたとのことで…」
「そうですか。でも何故急にそうなってしまったんでしょう?」
「さぁ。僕にもさっぱり分かりません。やはり真夏ちゃんの持っているモノかもしれません」
「えぇ。あの子は何でしょう。何気ない笑顔でも人を幸せな気持ちにしてしまうと言いましょうか…」
「とにかく先方はすぐにでも真夏ちゃんを里子にしたいと申しています。よろしいでしょうか?」
「ええ。なーちゃんは私がどうにかします。手続きを進めてください」
陽子はそう言うと必要な書類を書いて渡した。
日村は一礼して職員室を出て行った。

「大人の都合だけでなく子どもの声にも耳を傾けるべきだと思いませんか?」
陽子は目の前の聖母マリアの肖像画にそう疑問を投げかける。
441 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/16(日) 22:40:58.55 ID:PkixSXAX0
「え?何で?」
幼き西野が目を点にさせている。

「仕方ないわね。こればかりは…」
「そんな…」
泣きじゃくる西野を前に陽子は何も言えないままでいる。
しばらく静かに時が過ぎていき何とか落ち着いた。




そして真夏が引き取られる日がやってきた。
「まなったん元気でね!」
「頑張ってねー」
仲間たちから色々なものを貰う真夏は涙を流す。

「ありがとう。みんな忘れないからね」
「まなっちゃん。そろそろ…」
「院長も今までお世話になりました」
真夏は頭を下げて引き取られる里親夫婦の車に乗り込んだ。

みんなが手を振るなかで車が動き出す。
真夏も必死に手を振っている。
だが西野の姿がない。
真夏は少し心残りを感じて車窓を眺めていた。

その時西野の姿が見えた。
真夏はさっと下の方へ隠れてしまった。
真夏は知っていた。
元々西野が行くはずだったことも。
真夏は後ろめたく思い西野の顔を直視できなかった。


その後すぐに西野は西野家に養女として引き取られ大阪へ行った。
こうしてあの店で出会うまで十数年二人は出会うことなく今日まで至った。
442 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/16(日) 22:45:22.40 ID:PkixSXAX0
「あなただったのですか。設楽課長」
話は変わって現在の本庁に場面は映る。
三上は設楽のいる課長室で真相を問いただしていた。

「いきなり何ですか?」
「お前が西野鉄鋼社長や今回の事件についても噛んでいることは分かっている」
「ふん。何を証拠にそんなことを」
「衛藤!若月!」
三上が二人を呼ぶと衛藤と若月が一礼して部屋に入ってくる。
そして衛藤が持ってきたタブレット端末である画像を見せる。

「おい何だよコレ」
設楽が焦ったような顔をしている。

衛藤が見せた画像はパーティー会場で設楽が西野社長らと会っている写真だ。
そしてあの深川陽子とも話をする姿も捉えられていた。
しかもなかには関係があるとも取れる会話の録音まであった。
完璧なる証拠を突きつけられた設楽の顔は青ざめてソファに座りこんだ。

「しかし…何故こんなものが…」
「私よ」
そう言って現れたのは生田であった。


「一体何の騒ぎだぁ?」
そう言って現れたのは敏郎だった。

「刑事部長…」
「話は何となく察しはつく。西野鉄鋼の一件だろ?」

そう。実は敏郎は密かに生田に設楽の動きを探らせていた。
権力と地位に飢えた人間が常に足を引っ張り合う警察組織。
誰かの粗探しをする警官の性として動くのはごく自然なことなのだろう。

「設楽。今まで頑張って来たな」
「ちょっちょっと待ってください部長。あなただって…」
「一体何を言っているんだお前は?」
「おかしいっすよ。あなたも三上は気に入らないとか言っていたでしょう!?」
「設楽。お前も何人も蹴落としてきた組織の人間なら分かるだろ?どうすべきかは」
敏郎はそう言い残して部屋を去っていった。

それは警視庁にいる人間ならどうなることかは想像がついた。
崩れ落ちるかつてのパートナーを見ながら三上は考え込む。

しかし、組織に生きる人間としてはこれ以上どうすることも出来ない。
三人は静かに部屋を去る。
443 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/16(日) 22:46:16.17 ID:PkixSXAX0
「まりっかまりっか…」
パソコンを持って俺がいるところにやってきた万理華。
俺はおかしな鑑識の人がいるもんだと思っていた。

「お前か。まだよく分からん自作の曲を唄っているのか」
「まぁまぁ警部さ。落ち着きなよ。いい情報持ってるんだからさぁ」
万理華はそう言うとパソコンを起動させた。

「一体何だ?」
「あのね。ずっと追いかけてたんだけど西野七瀬は常にGPSで発信するモノを持ってたらしいの」
「それで?捉えたのか?」
「あったりー。たまたまさっきつけたらここ。宮城県は南三陸町の海岸近くの基地局が捉えたんだよ」
「南三陸?確かあそこは施設があったところ…」
三上は地図を見る。
すると万理華は話を続ける。

「てことで高速道路のオービスのデータ見たら行方が分からなくなった車がバッチリ写ってたってわけ」
そこにははっきり真夏と西野が乗っている姿も見える。

決まりだ。

彼女らはそこにいる。

「衛藤!若月!南三陸に行くぞ!」
「え?」
二人は戸惑うが選択肢はない。


「あなたも行きましょう」
「分かりました」
俺は全てを聞いていたのですぐに返答した。

ようやく真夏に会える。
何もかも知った真実を受け入れる準備は出来ている。

俺は一路真夏が育った街へ出掛ける。
444 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/16(日) 22:50:16.86 ID:PkixSXAX0
今日はここまでにします。

一応予定では明日完結する予定です。
約半月ほどダラダラ妄想を書き続け一度は落ちてしまいながらもここまでやってこれました。
保守してくださったり色々書いてくださった皆様ありがとうございます。

今は新しい妄想を考えているところです。
どうなるかはまた改めて。

登場人物一覧は完結した後にしっかり出したいと思います。
では、おやすみなさい
445名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/16(日) 22:53:23.98 ID:AM27PcZP0
ラストやな
楽しかったでー
446名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/16(日) 23:18:47.22 ID:gwZwcc3g0
乙です!
まりっかの鑑識のキャラ好きだなw
ラスト&自作の妄想楽しみにしてます!
447名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/16(日) 23:40:56.60 ID:HcHdb3Xk0
お疲れ様です
448名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/16(日) 23:45:05.56 ID:XW0gynyB0
クライマックス期待しとるでヾ(@⌒ー⌒@)ノ
449名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/17(月) 01:20:14.71 ID:AIEp986E0
保守
450名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/17(月) 01:25:13.13 ID:cgW2YD+Z0
最後楽しみだ、応援してるぜ
451名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/17(月) 05:26:42.34 ID:2wD+cNXA0
保守
452名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/17(月) 10:14:39.81 ID:E8AXZDe6i
クイーンエリザベス号、横浜港に停泊中です。
453名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/17(月) 12:16:52.04 ID:WsY8IpTb0
待ってる
454名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/17(月) 14:51:23.82 ID:hDynYApw0
保守
455名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/17(月) 16:29:51.96 ID:HLSCmB5U0
捕手
456名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/17(月) 18:23:44.91 ID:t4Q5xfMY0
ドキドキが止まらない
457 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/17(月) 20:02:21.17 ID:Aqe3NcS20
あの騒ぎから早いもので2年の歳月が過ぎて行った。
2年間の月日はその後の人生を変えるに十分なものであった。



「お父様。警視総監就任おめでとうございます」
「パパ。おめでとう!」
「ありがとう。いやぁ長かったな。でもまだまだ通過点に過ぎん」
生駒家では里奈と絢音が父敏郎の警視総監就任を祝っている。
テーブルにはホテルからシェフを招き入れての豪華な料理が所狭しと並んでいる。

「ところで里奈。お前もご苦労だったな。まさか全員執行猶予を勝ち取るとは」
「初めての刑事裁判だったけど案外民事よりも簡単なもんだったよ」
「うっわ〜。さすがエース弁護士。言うこと違うなぁ」
里奈のビッグマウスに突っ込む絢音に笑みを浮かべる敏郎。

「ところで絢音もどうなんだ?航空ジャーナリストとして」
「今はボーイング787のバッテリー異常発火について追ってる。絶対怪しいよあのキクチモーター」
「ちょっと絢音さ。キクチモーターはウチのお得意様なんだからお手柔らかにしてよ」
「そんなの知らない。もし裁判で闘うなら堂々と証言台に立ってやるわよ」
「あんまりお姉ちゃんをバカにしてると痛い目見るぞぉ〜」
「そっちだってあんまり妹を苛めてるとしっぺ返しに遭うわよ〜」
「まったくお前らいい歳してつまらない喧嘩をするな」

豪華な食事と高級なリビングにはあまりマッチしない一家団欒の姿がそこにあった。
458 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/17(月) 20:42:46.78 ID:Aqe3NcS20
「ねぇねぇかりんちゃん。私ね!私ね!」
「ちょっと。どうかしたんですか高山さん。ヤケにテンション高いっすね」
笑顔が眩しい高山を見て戸惑うかりん。
これは何かあったに違いない。

「あのさ。ついにね。彼からプロポーズ受けたんだぁ〜!!」
「えぇ〜!マジですか!?って高山さん彼氏いたんすか?」
「実はうまくいくか分かんないから順調になるまで隠しておこうと思ってそのまま忘れちゃってさ〜」
普通忘れてしまうことかね。
やはりこの人はどこかネジが緩んでいるわ。
かりんは呆れながらもそんな高山が好きな自分がいると感じる。

「それよりも見せてくださいよ〜」
「へ?何を?」
「何を?って。決まってるじゃないっすか〜。高山さんの未来の旦那様の顔ですよ」
「いやぁ〜。そ、そんな。そんなに顔イケてないし〜」
「そんなの見なきゃ分かんないじゃないっすか〜?」
「いやでもその何というか恥ずかしいっていうか…」

「この人だろ?」
俺はかりんの前にスマホに入っている画像を見せる。
そこには先日再会した真夏と真夏や西野を『聖ハウス修道院』に入れた児童福祉司の日村の姿が写っている。

「ちょっ!こ、これどこで…?」
「あぁ。日村さんは妻と知り合いでね。結婚式は夫婦揃って出席させてもらうよ。それにしても世の中は狭いねぇ」
俺はそう言ってオフィスに入っていった。


「た、高山さん…」
「まさにアメイジング!!」
「ア…アメイジング!!」
高山一実と伊藤かりん。この不思議なコンビにはまだまだ頑張ってもらわねばならないな。
459 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/17(月) 21:25:59.27 ID:Aqe3NcS20
場面は変わってここはアメリカ・ロサンゼルス郊外の高級住宅街の一角。


紆余曲折はあったものの最終的に同性婚を果たした白石とサユリン。
白石は完全に日本の仕事からは手を引いてアメリカに拠点を移した。

「きゃあこのまいやんのドレス姿チョーカワイイやーん」
「そんなサユリンのこのウェディングドレスもス・テ・キ」
「もぉ〜そんなからかわんといてやぁ」
「からかってなんかないよ〜」
二人はディズニーランドで挙げた披露宴の写真を見てはしゃいでいる。
既に一年の月日が流れたにもかかわらず二人のラブラブぶりは変わっていない。

「あのサユリン様。そろそろ撮影のお時間です」
「えぇ〜!ろってぃーもうちょいええやん」
「そうだよ〜。まだ一緒にいたいー!!」
「まいやん!あなたも今夜にはニューヨークへ行かなきゃいけないでしょ!」
「あー!忘れてたぁ」
二人の姿に呆れるマネージャーの川村真洋と永島聖羅。
この二人のマネージャーの骨が折れる作業はここから始まる。

「さぁ早くしてください。リムジンが待ってますので」
「いややぁ〜!!まいや〜ん!」
「まいやん!さぁジェット待たせてるんだから行くわよ!」
「そんなぁ〜!!サユリ〜ン!!」
なかなか離そうとしない二人を別れさせてそれぞれの仕事場に向かわせる。
実に単純な作業がもはや針山の中から金を探すほど難解な作業になっている。

「まいやん!絶対スカイプしてやぁ!!」
「サユリン!絶対するからちゃんと出てよね!」
「そんなん出るに決まってるやんか!」
「絶対絶対絶対だよ!!」
二人の会話は車が動き出すまで続く。
走り出しても窓を開けて見えなくなるまで手を振る。

そんなこんなで世界的なビッグ同性カップルはまだまだ世間を騒がせるようだ。


「まいサユコンビ最高!!」
大きな木の上で写真を撮っているのはロサンゼルス支社に異動した中田だった。

「ロサンゼルス市警だ!お前そこで何をやっているんだ!?」
「やばっ!逃げなきゃ…」
「こら止まれ!!」

アイドルにのめり過ぎてしまうのは良くない。
460 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/17(月) 22:28:12.09 ID:Aqe3NcS20
「やはりあなたがこの椅子に座ることになったようですね」
「ええまあ」
本庁の刑事部長室。2年前まで敏郎が使用していた部屋だ。
今そのデスクにいるのは参事官だった生田であった。
生田の正面に立っているのは三上だ。

「やはり違うものですね」
「あなたはやはり違いますね。この若さで刑事部長とは」
「おかげで敵だらけですけどね。まああなたほどではないですが…」
「まさか私もこのような立場になるとは思いませんでしたよ」
「それにしても出世コースに無縁だったあなたが何故この話を受けたのですか?」
「守りたいものがあったからです」
「守りたいもの…。あぁなるほどね」
三上の守りたいもの。それを聞いた生田はすぐに察しがついた。

「でもいいんですか?あなたは現場主義の人間。管理職は向かないのでは?」
「えぇ。でも新しく挑戦してみるのもいいかと思いましてね」
「挑戦?」
「ええ。管理職も現場に出て現場を重視した捜査体制を構築したいと思いまして…」
「相変わらず上を怒らせるようなことを…。まぁ三上さんらしいです」
「上を怒らせるのはもう慣れていますから…」
そんな会話をしていると三上のスマホから着信音が鳴る。

「もしもし。場所は?分かったすぐ行く!」
スマホの画面をタッチしてズボンのポケットにスマホを入れる。

「参事…いや生田刑事部長。事件なのでこれで失礼します!」
「ちょっと!これから刑事部の定例会議ですよ三上一課長!まったく…」
生田は笑みを浮かべて資料を持ち部屋を出た。
461 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/17(月) 22:36:15.79 ID:Aqe3NcS20
今フィナーレに向けて妄想しています
少し疲れが出たので少しお待ちください
462名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/17(月) 22:40:46.44 ID:DHBhRQrc0
>>461
頑張れ!
見てるぞ
463名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/17(月) 23:00:44.46 ID:E8AXZDe6i
主人公の俺は出世したのかな?
464名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/17(月) 23:06:02.29 ID:hDynYApw0
かずみんw
465 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/18(火) 00:46:06.68 ID:jBeP/bSa0
「もしもしお父さん?うん。大丈夫だよ。もう心配性だなぁ〜」
コーヒーカップを持っている日奈。
身に纏っているのは真新しい警視庁の制服である。
日奈は京都府警を蹴って改めて警視庁の採用試験に合格。警察学校を経ていよいよ警官デビューを果たす。

「日奈ぁ…。何で起こしてくれないの〜」
「お姉ちゃん。あんな爆音で起きられないとかおかしいよ」
「う〜ん…。うるさいなぁ…」
「それよりお姉ちゃん。レッスンに遅れちゃうよ!いいの?」
「え?もうそんな時間!?ヤバイ!!」
橋本は少し慌てる形で出かける準備をしている。

橋本は夢であった女優を目指し現在はユッタンプロモーションが手掛ける俳優養成所に通っている。
養成所にいてはアルバイトも出来ないし収入も期待できない。
色々話し合いをした結果三上と日奈と暮らすことで同意した。
2年の月日は親子関係を雪解けするのに十分な時間であった。
十年以上も疎遠だったのが嘘みたいだ。
それを証明する写真がリビングの棚の上の写真立てにある。

そう。三上が昇進を受けた理由はこれだ。
娘たちの夢を叶えるため。娘の幸せのため。
その為には資金も必要だ。


こうして三上親子は新たな一歩を踏み出したのだ。
466 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/18(火) 01:13:51.96 ID:jBeP/bSa0
「ちょっとななみん遅刻だよ〜!」
「いやいや1分前。ギリギリセーフでしょ?」
「そんなんどうでもいいじゃ〜ん」
「いやだからみなみはダメなんだよ」
「ホント面白いなみんな」

橋本の養成所仲間はほとんどが年下だ。
女優の夢を叶えるのに年齢差は気にならない。

橋本と共に汗を流すのは齋藤飛鳥、星野みなみ、斎藤ちはる、渡辺みり愛の4人。
全員子役上がりで経験も豊富だ。
その経験話を聞くのも橋本には糧になる。
逆に波乱万丈な経験を持つ橋本も彼女たちには良き人生の教科書となっている。
お互いの経験や知識は夢に近づく糧となっているのだ。


「さぁさぁみなさん今日もガンガン勉強してデビューしましょう!!」
優里はさらに野望を描いている。
まいサユコンビの登場で今では世界的にプロモーション展開している。
もはや日本の芸能界で向かうところ敵なしだ。

「あなたいいお尻持ってるわねぇ」
優里の変わった趣味は相変わらずのようだ。

「あなたとあなたならいいドラマが出来そう…」
こんな変わったトップだが橋本にとっては夢を叶える第一歩だ。
彼女の最終目標は憧れたブロードウェイの舞台。
その挑戦が今始まったのである。
467 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/18(火) 01:18:04.71 ID:jBeP/bSa0
「新内!寺田!米徳!琴子!お前らどこで油売ってたんだよ!」
「すいません若月係長!」
「あの…。何故私だけ下の名前なんですか?」
「チッ!そんなくだらない疑問を持つならこの現場を見ろ!」
すっかり上司口調をして部下を指揮する若月。
三上の昇進によって班を引き継いだのだ。
新たに4名の部下を持ち、三上が築き上げた捜査一課一の検挙率を維持している。

「若月ィ!」
「か、課長!」
「お前。一課長の俺より遅いとは随分偉くなったものだな!」
「あの…。それはですね…。えーと…」
「チッ!くだらない言い訳を考える頭があるなら少しはあの遺留品に目を向けろ!」

若月の誤算は三上が一課長になったことだろう。
現場主義の三上はことあるごとに現場にやってくる。
おかげで班長である若月の上司としての面目は丸潰れだ。
しかも三上は飛び越えて仲間を指導する。

「新内。いいところに目を付けたな。早速メトロに事情を聞いてくれ」
「米徳。これを至急科捜研へ回してくれ」
「寺田。じゃあその店の防犯カメラを調べろ」
「琴子。その仮説はいい筋いってるぞ。もっと自信を持て」

つまり若月の班が優秀なのは三上のおかげと言っても過言ではないだろう。
こうやって三上の刑事魂は脈々と受け継がれていく。


「お前らボサッとしてる暇があるなら証拠を見つけてこい!」
「はいっ!」
三上に一喝され一気に散りゆく姿はいくつもの歳月が過ぎても変わらない。

「…まりっかまりっかりっかりまりっか」
「お前はいつまでそれを唄い続けるんだ?」
「どうだろうね?まぁ継続は力なりって言うしねぇ」

歳月が流れてもスタイルを変えない者もいるようだ。
468 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/18(火) 01:19:40.18 ID:jBeP/bSa0
ごめんなさいここまでです

もうラストは描けていますがまだ文にしていません。
行き当たりばったりで書いてるので思った以上の妄想が膨らんじゃってるんです
でも明日いや今日には終わると思います

ではおやすみなさい
469名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/18(火) 01:43:58.21 ID:H82Ddiwv0
乙です!
まりっかw
470名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/18(火) 01:46:16.00 ID:/g+1s4SmI
お疲れ様です
471名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/18(火) 01:48:41.17 ID:rQ9Y+lAb0
おつかれ!ほんとおもしろいよ
472名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/18(火) 03:58:40.89 ID:LTLhrNSt0
up
473 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/18(火) 07:15:06.26 ID:jBeP/bSa0
おはようございます
夕方以降のうpに向けて鋭意妄想中です
474名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/18(火) 09:39:13.45 ID:zevdmE4N0
頑張れ〜ヽ(・∀・)ノ
475 忍法帖【Lv=3,xxxP】(-1+0:8) @転載禁止:2014/03/18(火) 09:48:24.56 ID:D+tAP2800
世界をまたにかける俺氏の
現地妻としてなーちゃんを
お手配願います
476名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/18(火) 10:59:33.38 ID:lH93POhM0
ファイツ
477名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/18(火) 11:52:10.89 ID:9Up0bEfc0
保守
478名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/18(火) 13:14:38.64 ID:oOIxyc5N0
保守
479名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/18(火) 15:02:28.83 ID:r8UJvYFh0
480名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/18(火) 17:12:02.23 ID:x4MqJ1Ii0
481名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/18(火) 17:51:11.85 ID:r8UJvYFh0
482名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/18(火) 17:59:11.84 ID:5TFDGCFv0
483 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/18(火) 18:26:14.43 ID:jBeP/bSa0
こんばんは
少し出かけたりしてたのでまだ出来上がってはないですが今から書き溜めたものをうpします
484 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/18(火) 18:29:39.50 ID:jBeP/bSa0
ところかわってここはとある麓の村。
ここにハイエースベースのキャンピングカーが止まる。
そこから降りてきたのは執行猶予中の堀と北野。それに見知らぬ女性だ。

「純奈までまさかついてきてくれるなんて」
「いいよ別に。でも急にどうしたの?」
「自分を見直したいって思ってね」
「それでキャンピングカーで日本のあちこち回るわけ?」
「色々何かを見たら変われるかもしれない」
「よく分からないけど人生をやり直すにはいいかも」

生駒の弁護により執行猶予となった堀と北野。
彼女らは矢田、それから伊藤純奈という堀と親友関係にある子と共にキャンピングカーで全国を回る。
いわゆる自分を見つめ直す旅である。
犯した過ちを反省しつつも前に進んでいこう。
共に変えていこう。
堀の誘いに乗って始まったのだ。


「ホント何もないところだよね」
「一応あそこに老人ホームがあるだけで家も集落もないよ」
老人ホームの前を通りかかると何やらサックスの音が聞こえる。
ふと目をやるとそこには同じく執行猶予になった井上の姿だった。





「へぇ今はサックスで慰問をやってるんですか」
「子どもの頃からサックスはやってたの。施設に入っても続けてたんだけどね」
井上はまだ裕福な家庭な時父の趣味の影響からサックスを使うようになった。
しかしあの事件が起き、しばらく手は付けなかったが学校の吹奏楽部に入って再び始める。
だが、つまらないいじめに遭ったことで吹奏楽部を辞めて以来サックスには触れてもいなかったという。

しかし執行猶予つきの判決を言い渡された日。久々に自宅へ戻って整理をして偶然見つけたサックスを見てもう一度やろうと決心したという。
今は老人ホームや場末のクラブなどに顔を出してはサックスを披露している。
井上いわく自分が吹くことで笑顔になる人を見るのが今は何より楽しいのだという。


「…ジャズかぁ」
「え?」
堀が呟くと北野が耳を疑うかのような表情で堀の方を向く。

「やりたいことが見つかった気がするんだ」
「それがジャズ?」
「そう。ジャズバンド。見たでしょ?あのおじいちゃんおばあちゃんの笑顔」
「確かに凄く笑顔だったよね」
「私たちにも出来ないことはない。だからチャレンジしてみない?」
堀の決意は固いようだ。
その固い決意を見た北野、純奈、矢田の3人も同調する。

「じゃあこんなところでグズグズやってる場合じゃないでしょ?行くわよ案内する」
井上はそう言うと知り合いのジャズに詳しい人間を紹介するという。
全員がキャンピングカーに乗り込むと走り出した。

一度堕ちた者たちの自分探しの旅は終わり新たな夢への挑戦が始まった。
485名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/18(火) 19:11:48.67 ID:oOIxyc5N0
きたか
486名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/18(火) 21:08:31.08 ID:zevdmE4N0
wktk
487 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/18(火) 21:25:49.02 ID:jBeP/bSa0
一方で別の形で新たなスタートを切る者もいる。

井上、堀らと共に執行猶予判決を受けた中元。
中元は広島に戻った。

罪を犯した中元であったが両親は温かく迎え入れてくれた。
全く血も繋がっていない。
普通なら縁を切られてもおかしくない。

だが里親の両親は決して見捨てなかった。
それだけでも自分の犯した罪の愚かさを痛感した。



全てを失った中元だがやりたいことがあった。
そう。自分だけのリボンを作って売ることだ。

しかし、既に罪を犯して信頼を失った自分に何が出来るのであろう。
そんな夢は叶いそうにはない。
そんな不安を抱えているが、救う者は常に身近にいるのだ。

「お姉ちゃん。手伝うよ私」
「すぅ。あんたいいの…?」
「大丈夫だよ。私だって一応トップセールスマンだったんだし」
「いいの?私あんたを恨んであんなことしたのに…」
「だって私はあなたの妹だよ。そんな済んだことはもう気にしてない」
「じゃあいいの…」
「そんな辛気臭い話はダメダメ。一応見つけたのよ。本通のこの物件なんてどう?」
「…ありがとう」
日芽香はすず香の行動に涙が止まらなかった。
血は繋がってはいないがそこには確かに姉妹愛がある。


やがてその姉妹の始めた事業は広島から日本、そして世界へと飛躍することとなる。
それはまだ先の話である。
488名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/18(火) 22:06:57.80 ID:/g+1s4Sm0
さゆにゃんだけ懲役刑くらってほしかったしかも長めの
489名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/18(火) 23:11:29.60 ID:z4B33PTf0
おもしろいんだけどさぁ

なーちゃん愛人になってなくねw
490名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/18(火) 23:48:13.75 ID:H82Ddiwv0
>>489
これからなんじゃない?
491 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/18(火) 23:50:50.25 ID:jBeP/bSa0
ところ変わってここはマンションの前。
前には引越業者のトラックが止まっていて作業員が家財道具を次々に積んでいく。

「本当に行かれるのですか?」
「ええ。もう決めたのです」
俺と話すのは深川だ。
そう。深川は会社を辞めて祖母が院長をしていた長崎の修道院に行くことにした。
深川は祖母が行った一件で考えるようになり、その答えを求め修道女になることを決めたという。

深川はまさに本当の聖母となるのだ。


「あなたが神の道に行くとはね」
「2年前までは想像もつかなかった話ですね」
「だが君が決めた道だ。俺は応援するよ」
「ええ…。でもここをいざ離れると思うと何だか寂しくて…」
「まあな。俺も上京する日には寂しかったよ。行く前はあんなに出たかった街なのに」
「やはりそういうもんですか」



「深川さん!全て運び終わりましたのでそろそろ向かいます」
「はい。お願いします」
「いよいよ行くんですか」
「ええ…」
「じゃあ体に気を付けて」
そう言うと深川は待っていたタクシーに乗り込んだ。


「あの…」
「どうしました?」
急にウィンドウを開けた深川。
一体何を言おうとしているんだ?
俺は気になった。


「もう少し早くあなたと会えていたら良かった…」
「え?」
深川はそう呟くとタクシーはゆっくりと発進した。
俺はぼーっとしていて気が付くとタクシーと引越業者のトラックは既に消えていた。



「まったく鈍感な人だわ…」
タクシー車内でそう呟いた深川の目からは涙が溢れていた。

「お客さん長崎へ行くんですってね。私は大分の出なんですけど…」
急に話しかけてきた運転手の女性。
乗務員証には『畠中清羅』とある。

「長崎はいいとこっすよ。住むには快適」
「へぇ〜」
深川は東京駅に着くまでの間ずっと話し込んでしまった。




「こちら畠中。マルタイは無事東京駅入りました」
一体彼女は何者なのか。
それはいつか明らかになるであろう。
492 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/18(火) 23:52:21.18 ID:jBeP/bSa0
「ママ早く早く〜!!」

外の桜並木は満開で空は雲一つなき青空。
何年振りかさえ思い出せぬほど久々の小春日和。

小さかった春真はいよいよ小学生として義務教育の場に足を踏み入れる。
あれから頑張り念願かなって名門乃木坂学院初等科に合格した。

あの事件以降俺と真夏はお受験対策に奮闘した。
最初は講師から罵詈雑言言われて散々恥をかかされた。
だが逆にそれを機に必死にいい父親を作り上げようとした。

でも本番はリハーサル通りにはいかない。
俺はありのままのことを面接で話した。
絶対不合格だ。
俺も真夏も春真も後悔もなくその日は仲良く回転寿司を食べた。

しかし数日後の合格発表では春真の受験番号は合格者としてボードに記されていた。
後に知ったが西野家に繋がりがありその働きかけがあったそうだ。
全くこういう手法が好きな奴だ。



「そういえば紗々ちゃんも同じ学校で良かったわね」
「ええ。塾じゃ絶望的って言われてたのに…」
伊藤寧々の娘紗々も合格。
これも西野の働きかけがあったからなのだがそのことは墓場まで持って行くことにする。
考えられない奇跡が起きたと思う方が幸せだ。
何もかも真実を知ることが良いことでもない。


桜の花びらが風で舞い散り、桜吹雪となっている乃木坂学院初等科の校門前。
ここで家族そろって笑顔で記念撮影を行う。

その屈託のない真夏の笑顔。
あの時崩れ去った夫婦関係、家族関係は修復されたと言っていい。
いや更なる新たな関係も生まれたのである。
493 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/18(火) 23:53:13.18 ID:jBeP/bSa0
「へぇ〜めっちゃカワイイやん」
「そうかな?でもまぁ確かに今までで一番の出来だとは思うけど」


高級レストランのテーブルでワインを飲み交わす俺と西野。
西野は先日撮影した春真の入学式の写真を見て笑みを浮かべている。

「やっぱええもんやな家族って…」
「ん?」
「ウチは施設で育って西野家に引き取られても親と食事できるのはパーティーぐらいであとはシェフの作ったもんしか食べてへんかったし」
「そうだったな…」

西野は実の親から捨てられてデパートの遊戯コーナーで保護されて児童相談所を経て聖ハウス修道院に預けられた。
後に日村から明かされたのは社長夫妻が西野を養女に引き取りたいが故に真夏の里親に圧力をかけていたそうだ。
持っている財力と権力を活かして自分の望みを叶える体質は昔も今も変わらないようだ。
もし、西野が真夏の里親に引き取られたら今頃俺とささやかで幸せな家庭を持っていたのかもしれない。


「もう2年か。時が過ぎるのは早いもんだ」
「ホンマやな。まさかこうなるなんて思わへんかった」
「お前は金と家柄で周囲を引っ掻き回してくれたよな」
「幸せになった者もいればウチのせいで罪を犯した者もおる」
「でも不幸のどん底に堕ちて腐った人間はいない。だから今もこうして情報を得ることができている」
「何やろ。やっぱあの南三陸の時にあったときやな」
494名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/18(火) 23:53:41.40 ID:NdHlStwx0
え?これ今日明日でおわんの?w
495 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/18(火) 23:59:44.35 ID:jBeP/bSa0
話は2年前のあの日に戻る。

南三陸の聖ハウス修道院の跡地で座っている西野と真夏。
お互いの言いたいことをぶつけ合って疲れ切っている。
まるで川の土手で殴り合いをして寝そべって友情が生まれた番長同士のようだ。


「…迎えがきたようですね」
陽子がそう呟くとかすかにパトカーのサイレン音が聞こえた。
真夏と西野もその音に気付いて立ち上がる。
そのうちにパトカーに乗っている俺も車窓から真夏と西野の姿を捉えることができた。
そしてパトカーは丁度修道院の門があった目の前に止まる。


「真夏…」
「あなた…」

二人は自然に抱擁する。
わずかな時間なのにとても長かった。
まるで長期出張から帰って来たみたいだ。
いや、宇宙でのミッションを終えて地球に帰還した宇宙飛行士の心境と同じかもしれない。


「刑事さん…。行きますかね?」
陽子が目の前に立つ三上らの前で一礼する。
「ええ。とりあえず仙台の県警本部まで…」
「その前に少しだけお時間をいただけませんか?」
「分かりました」

陽子は再び一礼すると真夏と西野の前に立った。

「まなっちゃん。なーちゃん。あなたたちは私の愛人です」
陽子が放った言葉に誰もが唖然とした。

「いきなり何ですか?」
「あぁ。みんな愛人なんて言えば妻帯者と恋愛関係にある女性を想像しますよね。でも違うのです」
「違う?」
「愛人ってどう書くか分かりますよね?愛する人。そう人を愛する、愛する人のことを指します」
「愛する人?」
「そうです。愛する人。奥さん、旦那さん、お子さん、お父さん、お母さん、上司の方、部下の方誰でもいいんです。
愛おしい。放っておけない。守りたい。何とかしてあげたい。そう思う人こそが愛人なのです。
なので今の愛人の定義は間違っているのです」

陽子の言葉に俺は何かを感じた。
俺はもしかしたら愛人に恵まれているのかもしれない。
寧ろ多くの愛人に支えられたからこそ出来る男になったのかもしれない。
そう感じるようになった。
496 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/19(水) 00:01:14.86 ID:jBeP/bSa0
そして陽子がパトカーに乗り込む。
俺はじっとその様子を見ていると目が合い陽子が呼んでいるように思えた。
俺は導かれるようにパトカーの前に立つ。


「お願いがあります。なーちゃんの愛人になってあげてください」
「は?い、いきなり何を…?」
「あの子は愛情が足りません。でも、あの日思ったんです。あなたならあの子に愛を与えられると」
「俺がですか…」
「ええ。頼みましたよ。刑事さんお願いします」
陽子はそう言い残してパトカーはゆっくりと発進していった。


「衛藤、若月。みなさんを本部まで頼む」
三上はそう言うと一人でクラウンに乗り込んで走り去っていった。


「俺が…愛人ね」
「あなたどうしたの?院長に何を言われたの?」
「あ、いやちょっとね…」

このことを真夏に打ち明けたのはそれから2か月の歳月が過ぎた時であった。
497 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/19(水) 00:02:07.70 ID:jBeP/bSa0
「パパお待たせー!!」
そこへ真夏と春真がやってきた。

そう。今日は西野が春真の入学祝いにと一席設けてもらったのだ。
さすがに二人で待つ時間は疲れた。

「遅いぞ。何やってたんだ?」
「ごめん。パートが長引いちゃって…」

真夏は現在週3日に近所に出来たケーキ店でパートタイマーで働いている。
パートなのにオリジナルのケーキを作り、売れ行きもいい。
店長からは正式なパティシエにならないかと誘われているほどだ。

「さてそれじゃあ始めるとするか?」
「そうやね。ほな例のアレ頼むで」
西野は給仕にそう言うと給仕は一礼して照明を暗くする。

そして薄暗い店内から微かな明るさが見える。
よく見たら真夏が作ったお手製のホールケーキであった。

「まったくお前たちは相変わらずこういうことが好きなんだな」
俺はまたもサプライズに驚いた。
春真の入学で頭がいっぱいで自分でも忘れていたが実は俺も昇進していたのだ。
新たな肩書は営業第一部副部長。エリートのナンバー2だ。
特に二人とも何も言わなかったが密かにこんなことを企てていたとはね。


「まぁいい。宴を始めよう」
俺はこうして三人の愛人と共に食事をする。
愛する妻に息子、そして愛人。
何とも分からない構図だがそれでも俺は幸せだ。

色々なことがあったが今ではその経験があったことは良かったと思える。
だってそれがあったからこそ感じられる幸せなのだから。


俺は生涯彼女たちを愛し続けるだろう。
そう嫁の真夏。そして愛人のなーちゃんを。







「あれ?君どこかで…?」
「いえ。分かりません」


「こちら衛藤。マルタイの様子は変わりありません」
レストランのウェイトレス姿でいたのは刑事の衛藤。
衛藤は俺らを見ている。

一体何故こんなことをしているのかそれはまたいつか話すこととしよう。


Fin

このお話はただの妄想話であり、このお話に出てきていることは全て妄想上のフィクションです。
498名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/19(水) 00:04:19.91 ID:xae7GUDS0
なんだここ、やっぱ乃木ヲタは頭おかしいな
499名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/19(水) 00:06:07.64 ID:zevdmE4N0
お疲れーヽ(・∀・)ノ
今まで楽しく読ませてもらってたよ
500 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/19(水) 00:10:17.92 ID:YtIduejk0
「嫁の真夏さんと愛人のなーちゃん」は以上で終わりです。
長いようで短い間でしたが最後まで読んでくださった皆様には心から感謝します。

思えば「幸福のさゆりんご母娘物語」に刺激され、自分でもやってみるかと軽い感じで始めたわけで当初は色々思われたかと思います。
書く前に考えていた形もまったく異なり気が付けばこんな感じのお話になっていました。
ただ、全メンバーを出せたことは良かったと思います。
「何で推しがこんな扱いなんだよ」とか「もっと○○を出せよ」って思われたかもしれません。
それについては次回作以降に参考にさせていただきます。

とりあえず今は読んでくださった皆様に心からお礼を申し上げます。
こんなくだらない妄想に付き合っていただけて自分は幸せだと思います。

今後は何か質問したいことや次回こういう話を書いてほしいみたいなリクエストがあったら遠慮なく書いてください。
全て叶えられるかは分かりませんが参考にしたいと思います。

では、またお会いしましょう(。・ω・)ノ゙
501名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/19(水) 00:12:42.73 ID:f0Hn5yYk0
楽しく読ませてもらったよー
続編匂わせてるけどそれは書くつもりなの?
502名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/19(水) 00:12:44.01 ID:W55sLLc90
>>500
次回作期待してるぜ
503名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/19(水) 00:16:58.17 ID:yfWC2Wnv0
お疲れ様
そういえばさゆりん妄想なんてあったな
504名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/19(水) 00:17:57.43 ID:fSGgeBJ50
なーちゃんちゃんと愛人になってた
505名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/19(水) 00:20:12.96 ID:n2E7LSeM0
思ったより綺麗な終わり方でよかった
506 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/19(水) 00:41:04.12 ID:YtIduejk0
ありがとうございます

このお話ですが本当はブログか何かに残せればいいですが転載禁止になったのでそうなると面倒なことになりそうですよね
まあこんなことになると想像してもいなかったので仕方ないですけど

ちなみに今は色々妄想をしています
ふたつお話を絞ったのですがどれにしようかは悩んでます
507名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/19(水) 00:47:02.30 ID:mD/ch+GT0
すごくおもしろかったです!
良い表現も多く読んでいて、妄想の世界に引き込まれました。
続編&新作も楽しみにしています!!
508 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/19(水) 00:52:06.50 ID:YtIduejk0
ありがとうございます
自分でたまに読むと意外にツッコミどころ満載なんですけどね
でも書いてて本当に楽しかったです
やはり自分が楽しんで書くことが大事なんだと思いました


さゆりんご母娘の完結はいつになるのでしょうね
まあ気長に待ってます
509名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/19(水) 01:00:48.84 ID:fSGgeBJ50
続編か新作すぐにでも書ける感じですか?
510名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/19(水) 01:08:09.93 ID:RtoPdnpx0
>>506
転載禁止っていうのは第三者が勝手に使うなってことでしょ。
本人が(それと証明できるなら)まとめる分には何ら問題はない。
それまで禁止するなら、逆に2ちゃんが訴えられるレベル。
511 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/19(水) 01:08:13.90 ID:YtIduejk0
>>509
まぁこのお話も行き当たりばったりで書いてたんで書き始めたら何とか
ただ先ほど終えたばかりなんで今はまだ頭が働きませんね
512 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/19(水) 01:15:17.04 ID:YtIduejk0
>>510
そこなんですよねずっと引っ掛かってたのは
自分はまとめサイトの管理人でもないしこれを使ってブログで小遣い稼ぎする気もありません

ただスレじゃ読みにくいという方もいると思うので見やすくしたいというだけです
513名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/19(水) 02:11:27.72 ID:fSGgeBJ5I
作者様今はゆっくりお休みください
また妄想がたまったら是非読ましてください
514名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/19(水) 02:20:10.21 ID:gekrl/cL0
お疲れ様
515名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/19(水) 05:32:19.39 ID:0Et1Jded0
「春を愛する人」がエンディングのBGMとしてしっくりきます。
516名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/19(水) 08:09:15.63 ID:RtoPdnpx0
著作権者は作者で、2ちゃんにあるとしたら
著作編集権くらいじゃね。
ぶっちゃけ、これで金稼いだって文句は言えないよ。
トリつけてるなら著作の証明できるだろうし、
訴えられても100%勝てるよ。
517 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/19(水) 11:00:08.85 ID:YtIduejk0
>>516
おはようございます
じっくり考えてまたお知らせします
518名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/19(水) 11:02:29.95 ID:s47NCm6w0
おもしろかったよ!お疲れ
519 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/19(水) 13:12:51.93 ID:YtIduejk0
>>518
ありがとうございます
520名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/19(水) 16:32:23.48 ID:fSGgeBJ50
作者さんの推しメンは誰ですか?
521名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/19(水) 18:08:31.84 ID:Z59sOiL00
日本語ではなく中国語の愛人でしたか
先生の次回作を楽しみにしております
522名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/19(水) 20:22:48.86 ID:fSGgeBJ5I
さみしい
523名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/19(水) 22:25:27.21 ID:iIO/05oi0
自分用
524名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/20(木) 00:38:33.68 ID:TftN9Fy00
いやだー
525 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/20(木) 01:31:45.93 ID:eanbNCRj0
>>520
完全なるクソDDです

>>521
ありがとうございます
近いうちに出そうと思ってますのでお待ちいただければ幸いです
526名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/20(木) 05:15:50.39 ID:TftN9Fy0I
まいまい小悪魔説
527 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/20(木) 09:30:00.77 ID:eanbNCRj0
おはようございます
今新しいお話を鋭意妄想中です
できれば今晩プロローグ部分でもお見せできればと思うのでよろしくお願いします
528名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/20(木) 12:08:56.53 ID:TftN9Fy00
楽しみにしています
529名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/20(木) 13:57:21.81 ID:A241RdFK0
>>527
おお!
楽しみにしてます!
530名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/20(木) 17:13:06.60 ID:A241RdFK0
保守
531名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/20(木) 17:13:12.48 ID:TftN9Fy00
待ちあせい
532名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/20(木) 17:18:56.81 ID:QGhkwMi80
ここに書くの?
533 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/20(木) 19:23:10.49 ID:eanbNCRj0
こんばんは
534 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/20(木) 19:25:34.76 ID:eanbNCRj0
>>533
序章はここに書いてあとは別にやろうと思っております
535 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/20(木) 20:26:33.25 ID:eanbNCRj0
あっ安価間違えてましたね
>>532です

もう少しお待ちくださいね
536名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/20(木) 21:15:19.32 ID:NgDB46Q50
>>534
楽しみにしてるよ
537 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/20(木) 22:06:42.49 ID:eanbNCRj0
ありがとうございます

では
538 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/20(木) 22:56:20.12 ID:eanbNCRj0
すみませんもう少しお待ちください
539名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/20(木) 23:10:10.06 ID:QGhkwMi80
待ってるよ
540 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/20(木) 23:34:04.89 ID:eanbNCRj0
「随分田舎だね…」
「ちょっとここ電波入らないよ〜」


山肌がむき出し、反対側を見れば奥深き谷底。
そんな峠道を颯爽と走る一台の大型観光バス。

そこに乗っている42人の少女たち。
全員が同じ制服を身に纏っているが年齢層が異なっている。
つまり彼女たちは同じ学校の生徒たちというわけではなさそうだ。

制服には『乃木坂46』という刺繍が施されている。
そう。彼女たちはアイドルグループなのである。



今や全国的に人気を集め始めている彼女たちが何故このような峠道を走るバスに乗っているのだろう。
その理由は彼女たちの会話を聞けば分かるだろう。


「ていうか何だろ?全員で撮影って…」
「さぁね。いきなり集めてバスに乗れって言われてもう4時間も揺られてる」
「うぅ〜…」
「いくちゃんバス苦手だし峠道でクネクネ走ってるから酔っちゃってるよ」
「早く着かないと体がおかしくなりそう…」


どうやらこの会話だけでは分からない。
当然だ。彼女らですら目的が分かってはいないのだから。


そんなことを言っているうちにバスは目的地に着いた。
541名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/20(木) 23:38:20.16 ID:QGhkwMi80
キタ
542 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/21(金) 00:02:43.28 ID:FHVtsq6n0
ここは関鳥居地区という市街地から1時間以上も離れた山の麓の集落。
バスは地区の公民館の前で停車する。

「いやいや乃木坂46の皆様。遠いところわざわざありがとうございます」
現れたのは『旅館 市村』と書かれた法被を着た白髪交じりの男性だった。

「あ、あの…」
「あぁ失敬。私はすぐそこで旅館を営む市村と申します。皆様のお世話をさせていただきます」
「それは失礼しました。乃木坂46です。よろしくお願いします」
「よろしくお願いします!!」
キャプテン桜井玲香が挨拶をすると全員が口を揃えて挨拶して一礼する。

「いやぁ噂には伺っておりましたが素晴らしいお嬢様方だ。どうぞこちらへ…」
市村は公民館の正面に見える年季が入った白いビルへ案内する。
お世辞にも立派な旅館とは言い難い。
いかにも経営難で繁盛していない潰れかけの旅館という感じだ。

「うわぁお化けが出そう…」
「ちょっとそんなこと言っちゃ失礼だよ」
建物に入った渡辺みり愛がつい発した言葉を耳にした堀未央奈が注意する。

「アハハハハ。いいんですよ。実際インターネットには心霊スポットみたいな扱いを受けているそうですからな」
「え?まさか…。で、出るんですか…?」
「いえいえ。旅館を始めて100年余りですが死者は一人も出してはおりません」
「よかった…。いい迷惑ですよね」
「まぁこんな雰囲気じゃ噂されても仕方ないですし実際それで来るお客様のおかげでやっていけてますからねぇ」
心霊スポットの噂でやってくる心霊好きの連中のおかげで生活している。
確かにそういうのでもなければ時間をかけてまでこんなところには来ない。
誰もがそう感じた。


「ではこちらが皆様の宿泊するお部屋になります。では何かあればそちらの内線電話で…」
旅館の主人市村はそう言うと一礼してフロントの方へ戻っていった。



「あ〜もう疲れたぁ」
「わっもう布団があるぅ!!」

こうして長い道のりで疲れた少女たちはそのまま眠りについた。
543名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/21(金) 00:05:14.53 ID:cOLBzh7W0
みなさんにはちょっと○○し合いをしてもらいます系?
544 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/21(金) 00:51:49.58 ID:FHVtsq6n0
ガタガタガタガタガタ…

「え!?何?」
「地震!?」

それぞれの場所にいるメンバーは突然の揺れに動揺している。

抱擁して身を守ろうとする者がいる。
机の下に潜る典型的な避難訓練でのことを実践する者もいる。
ただ呆然と立っている者もいる。


「きゃあ助けてぇ!!」
誰かが叫んでいる。

「ぐぅえへへへへへ!!!!」
狂気に満ちた表情をした男が彼女の後を追っている。
大地が揺れているなか必死に走る女とそれを追う男。

やがて大地の揺れが収まる。

「あれ…?」
彼女が足を止める。

「みいいぃぃぃつけたぁぁぁ!!!」
「きゃあああああああああああああ!!!!」

彼女が叫んで尻もちをついた瞬間男が手を伸ばす。


ドオオオオオオオンンン!!!


再び大きな揺れが起きた。

「うぐぅ…」

彼女が目を開けると男は首と右腕のみが切れて落ちていた。
目の前には真っ赤な血の塊と血しぶきがある。
しかし、何故か血しぶきは彼女についていない。
何故か目の前で血が滴り落ちる。
不思議に思った彼女はその血の方に右手を差し出す。

「きゃっ!!」
突然静電気のような衝撃が彼女の右手に走る。

「何なのコレ…」
血がついた掌がすっと消えていく。
透明な壁のようだ。

何故このようなことが起きたのか。
これは一体何なのか。
そして彼女たちがここへ連れてこられた真の目的とは。


このお話は謎のモノに閉じ込められた43人の少女たちが運命と謎との闘いの日々を描いたお話である。

『乃木坂46アンダー・ザ・ドーム』
545 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/21(金) 00:56:02.26 ID:FHVtsq6n0
てことで新しい妄想話はじめました

『乃木坂46アンダー・ザ・ドーム』

前に本スレでこんなのやったらみたいなのが書かれてたのを思い出してこの妄想を書いてる時から構想は練ってました
早速無視した話をしてますけどね
このお話。元ネタがあって今某BSチャンネルで放送されている海外ドラマのパクリです
妄想なのでパクリと言うのが正しいかどうかはアレですけど

今回はこの妄想話とは違って乃木坂46のメンバーとして書きます
一体どんな話にするか正直自分でも分かんないですがお付き合いいただけたらありがたいです
546名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/21(金) 01:02:29.71 ID:f4bxfE5k0
他オタやけど楽しく読ましてもらってたし次も楽しみにしてます

で、気になるのが数ヶ所

・同窓会の夜に真夏となーちゃんが会った時にどんな会話があったのか?
・最終的にうやむやになったなーちゃんの計画の全容

もし差し支えなければ…
547 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/21(金) 01:08:29.85 ID:FHVtsq6n0
>>546
ありがとうございます
質問をいただいたのでお答えします

>・同窓会の夜に真夏となーちゃんが会った時にどんな会話があったのか?
これに関しては新たに加筆して出そうと思いますのですみませんがそれまでお待ちいただけると幸いです

>・最終的にうやむやになったなーちゃんの計画の全容
これは真実を知らず引き取られる予定であったところへ里子になった真夏さんを恨んで全てを奪おうと考えていたのです
結局他の人間があれこれやったことで真実を知り和解となりました

もしこれでも疑問があるならいつでもお願いします
548 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/21(金) 01:14:35.90 ID:FHVtsq6n0
ちなみに次のお話は違うところでやります
事情によりこちらにリンクを貼っていますのでお手数ですがこちらに貼ったリンクからお願いします
お手数をおかけして申し訳ございません

http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/music/27306/1394634289/350
549名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/21(金) 01:15:06.89 ID:f4bxfE5k0
>>547
こちらこそ有難うございます

会話部の加筆楽しみにしてます
550 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/21(金) 01:16:07.34 ID:FHVtsq6n0
ということで今日は寝ます

まだ明日の夕方までに残っていたらスピンオフ妄想でも書こうかなって思ってます
では、おやすみなさい
551名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/21(金) 02:04:15.70 ID:s2JB6EmsI
スピンオフ見たいです
552名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/21(金) 09:48:23.75 ID:ITasUng+0
「鑑識 伊藤万理華の事件簿」が読みたい
553名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/21(金) 09:56:20.67 ID:ITasUng+0
ハンチョウ〜警視庁若月班〜
なんてのも面白そう
勝手なリクエストなんで無視して(笑)
554名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/21(金) 11:52:53.17 ID:s2JB6Ems0
たまらん
555名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/21(金) 14:52:19.69 ID:s2JB6Ems0
待ちたい
556名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/21(金) 17:47:15.86 ID:s2JB6Ems0
ひなちまってる
557名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/21(金) 19:55:36.55 ID:s2JB6Ems0
孤独兄弟
558名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/21(金) 20:44:20.06 ID:Db63u3sa0
地獄兄弟
559名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/21(金) 21:43:46.14 ID:1fRYzntsi
名護さん
560 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/21(金) 22:20:55.58 ID:FHVtsq6n0
こんばんは
保守してくださってありがとうございます

もうちょっと待っててくださいね
561名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/21(金) 23:19:19.02 ID:ITasUng+0
期待age
562名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/21(金) 23:25:36.47 ID:VzSxJfAW0
>>558

まいやんとななみんがcast offするのか・・・
563名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/22(土) 00:36:09.17 ID:RKsuSIuO0
待ち続ける
564名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/22(土) 07:14:30.45 ID:fvskG4E4i
保守
565 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/22(土) 11:21:15.01 ID:sIfT/KU80
こんにちは
ごめんなさい妄想中に眠ってしまいました
566名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/22(土) 13:03:05.99 ID:gwZZGf2H0
>>565
寝落ちかwww

まぁ気長に待ってるんで、ゆっくりやってください。
567 忍法帖【Lv=22,xxxPT】(-1+0:8) @転載禁止:2014/03/22(土) 13:31:59.85 ID:LGZ+cgTa0
>>565
むしろ爆睡して、 昼想夜夢にして、
妄想ではセーブされてしまう部分を
解放した過激なセッティングの作品読みたい
568名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/22(土) 15:58:36.16 ID:RKsuSIuO0
アンダーザドーム
569名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/22(土) 17:36:50.92 ID:CMlSta4o0
乃木坂UDは>>548の先でやるわけでしょ
このスレはどうするつもりなの?
570名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/22(土) 18:07:18.34 ID:RKsuSIuO0
スピンオフ作品を待っている
571 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/22(土) 20:38:32.74 ID:sIfT/KU80
もうちょっとお待ちください
572 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/22(土) 22:21:33.84 ID:sIfT/KU80
「まりっかまりっかまりっかりっかりっ…」
「チッ!何だそのわけが分からない歌は?」
一人の女性鑑識官に呆れる三上。だが、彼女はぶつぶつと歌い続ける。

「おい!」
三上が声を荒げるとその女性は驚いた表情をして立ち上がる。
名札には『警視庁鑑識課 伊藤万理華』とある。

「何か分かったのか?」
「あっ…。えーとまぁ結論から言っちゃうとコレは事故じゃなくて事件ね」
「それは分かる。このワイヤが人為的に切られていたのも。俺が知りたいのは他のことだ」
「あ〜。ワイヤやライトから指紋は残念ながら出なかったから計画的ね。でもいくら計画しても本番はミスしちゃうよね」
万理華はそう言うと小さい粉が付着した袋を見せる。

「何だこれは?」
「さぁね。後で詳しく分析するけど多分犯人がやらかしたものだと思う」



これがこれからのお話の主役が最初に出てきた場面である。
573 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/23(日) 00:12:13.31 ID:3HLEDLI80
今日は1つだけお見せしてまた明日夕方以降にします
574 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/23(日) 00:14:00.05 ID:3HLEDLI80
「警視庁から入電中。管内港区台場…」


制服警官は白と黒のパトカーに。
刑事は覆面パトカーに。

しかし、彼女は上に赤色灯がついた白いバンに乗り込む。
紺色に襟元が黄色く『MPD』と記された帽子。
持っているのは銀色のジュラルミンケース。

そう。彼女は鑑識官。
事件の捜査を陰でバックアップするのが役目だ。


刑事ドラマじゃ刑事が証拠を見つけて令状とって犯人逮捕って描かれているけど実際は違う。
鑑識が現場などから証拠を集めて分析してその結果で令状が出て犯人を捕まえる。
つまり、鑑識がいなければ犯人逮捕は不可能なのだ。




現場に到着した。
場所はお台場の放送局に近い高級ホテルだ。
ここは芸能人なども多く宿泊するので有名である。

どうやら有名人が絡んでいるの事件のようだ。

「まりっかまりっかまりっか…」
彼女はこの歌を口ずさんでから作業を始める。
575名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/23(日) 00:30:51.69 ID:QC4r/GYM0
出たwww
576 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/23(日) 00:37:44.53 ID:3HLEDLI80
「警視庁から入電中。管内港区台場…」


制服警官は白と黒のパトカーに。
刑事は覆面パトカーに。

しかし、彼女は上に赤色灯がついた白いバンに乗り込む。
紺色に襟元が黄色く『MPD』と記された帽子。
持っているのは銀色のジュラルミンケース。

そう。彼女は鑑識官。
事件の捜査を陰でバックアップするのが役目だ。


刑事ドラマじゃ刑事が証拠を見つけて令状とって犯人逮捕って描かれているけど実際は違う。
鑑識が現場などから証拠を集めて分析してその結果で令状が出て犯人を捕まえる。
つまり、鑑識がいなければ犯人逮捕は不可能なのだ。
577 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/23(日) 00:48:54.66 ID:3HLEDLI80
現場に到着した。
場所はお台場の放送局に近い高級ホテルだ。
ここは芸能人なども多く宿泊するので有名である。

どうやら有名人が絡んでいるの事件のようだ。

「まりっかまりっかまりっか…」
彼女はこの歌を口ずさんでから作業を始める。




「相変わらず自作の歌を唄ってるの?」
現れたのは捜査一課の刑事若月佑美。
凶悪事件を幾つも解決してきた三上班を引き継いだ班長だ。

「そんなところに目をつけてるならもっと現場を見ろぉ」
「ちょっと何よ!?」
「あんたの前のボスのモノマネ。似てたっしょ?」
「全然似てないし心臓に悪いから」
「まぁそれはいいんだけどさぁ。随分血まみれねこれ」
「それだけあの俳優がボコボコにしたってことなんじゃないの?」

若月は警官に取り調べを受けているイケメンな男性を見る。
「わぉ。俳優の烏賊須美男じゃん!」

烏賊須美男。モデル出身の俳優で子供に人気の戦隊モノシリーズに主演して人気に火がついた。
それから映画にドラマに舞台にと活躍の場を広げて勢いのある俳優だ。
しかし、その男も今では立派な第一発見者であり容疑者だ。

「烏賊須さん。警視庁捜査一課の若月ですが、手を見せてもらえます?」
「手?何そんなに僕の手が美しいっていうの?結構高いよ?」
「違います。それとも見せられない事情がおありで?」
若月が睨みつけると烏賊須は手を見せた。

「何この赤いやつ?ちょっと失礼します」
万理華は綿棒で爪の一部にあったあかいものを取る。
そして、綿棒にスプレーをかける。

「あーこれ人の血だね」
「爪までしっかりキレイにしておくんでしたね」
こうして烏賊須は逮捕された。

しかし、ここからが万理華にとっての戦いの火蓋が切られた瞬間だった。
578 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/23(日) 00:51:03.57 ID:3HLEDLI80
というわけでここまでです
ではまた気が向いたらあげますね

おやすみなさい
579名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/23(日) 01:17:18.04 ID:ePIo2EBp0
期待
580名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/23(日) 02:36:38.10 ID:DYvvnhPo0
なるほどね
つーか名字がいかすさんとか現実にいたらやべえw
581名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/23(日) 09:15:29.01 ID:M6bHFFqy0
まりか推しとしてはたまらんぜ
582名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/23(日) 10:29:36.24 ID:PC52dl+S0
>>552
ですリクエストに答えていただきありがとうございます
583名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/23(日) 15:08:02.53 ID:6bZxY3Qt0
乃木坂のダースベーダーまりっか
584 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/23(日) 17:45:36.30 ID:3HLEDLI80
こんばんは
585名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/23(日) 19:41:23.34 ID:6bZxY3Qt0
こんばんは
586名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/23(日) 21:00:29.78 ID:o2Qgs6Xq0
アンダー・ザ・ドームは何処でやってるの?
上のリンクにないけど?
587名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/23(日) 21:40:33.59 ID:p9zSFiEA0
588 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/23(日) 22:31:05.02 ID:3HLEDLI80
>>586
すみません
ここでは直リンが不可能なので>>548のリンク先に記載してあるのでそちらからお願いします
589名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/23(日) 22:37:10.32 ID:bZHq/zS50
>>588
未熟者ですみません。雑談スレからアクセスしたんですがアンダーザドームのスレッド開けないのですが…
590 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/23(日) 23:11:26.81 ID:3HLEDLI80
>>589
ちなみに専ブラでアクセスしていますか?
私はjane style使っていますがおーぷん2chを閲覧、書き込みするには登録が必要です
私が参考にしたサイトを見て登録してみてください
何かわからなければまたご質問ください

http://hamusoku.com/archives/7191600.html
591名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/23(日) 23:26:12.04 ID:bZHq/zS50
>>590
すみません。スマホからではなくパソコンからアクセスしたら見れました。前回の妄想も全て拝見して、とても面白かったので今回も期待しております。頑張ってください。
592 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/23(日) 23:31:07.91 ID:3HLEDLI80
>>591
ありがとうございます
593 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止:2014/03/23(日) 23:54:23.68 ID:3HLEDLI80
すみませんが今日はなしです
明日にでも出来ればいいですがね

では乃木どこ見て寝ます
594名無しさん@実況は禁止です@転載禁止:2014/03/24(月) 00:40:45.91 ID:dGuollzH0
>>593

乃木坂UDもやってるんだろ?無理すんな
でも頑張ってくれ
俺も買い物行きたいよ
595 ◆lnkYxlAbaw @転載禁止
>>594
ありがとうございます
また近いうちには