1 :
中の人:2012/09/22(土) 22:08:00.10 ID:oO69MrAO0
この物語は、ある程度フィクションです。実在の人物・団体・事件などには、ある程度関係ありません。
2 :
中の人:2012/09/22(土) 22:10:47.52 ID:oO69MrAO0
1曲目 誰かのために 〜What can I do for someone?〜(A3rd)
01
AKB48のメンバーを乗せたバスは、一路、東北自動車道を北上していた。
空は青く晴れ渡り、五月の爽やかな風が車内を吹き抜けていった。
バス後方席の窓側に座るチームA指原莉乃は、風で髪が乱れるのも気にせず、浮かない表情で開け放った窓の外を凝視していた。
「私たちが行って、何になるんだろう……?」
誰に伝えるでもなく呟いた言葉は、走行音に掻き消され、吐きだした息と共に通過する景色に消えていった。
その時、隣に座るチームB柏木由紀は、指原が何か言ったことに気付き、ふと横を覗き込んだ。
終始虚ろな顔で外を眺める指原を見て、柏木は何か凶悪な事件の記事でも見たかのように、怪訝な表情で眉をひそめた。
窓の外は高速道路の高いフェンスが張り巡らされ、眺めるような景色は何処にもなかったからだ。
「さっしー、珍しく考え事?」
柏木がそう聞くと、指原は得意のヘタレ顔で振り返った。
「私たちなんかが被災地に行って、地元の人たちは受け入れてくれるのかなぁ?」
そう言われ、柏木は更に眉間の皺を寄せた。「えっ?」
「悲しみを乗り越えて、これから復興に尽力しようとしている人たちの元に、何もわからない私たちが行っても、冷やかしみたいに思われるんじゃないかな……」
しかし柏木は、ゆっくりと首を横に振った。
「それは違うよ。被災した人たちにどう思われるかじゃなくて、私たちが被災した人たちに喜んでもらえるように最善を尽くすんでしょ」
指原はそんなことはわかっているのだと言わんばかりに、頬を膨らませた。
3 :
中の人:2012/09/22(土) 22:13:20.88 ID:oO69MrAO0
>>2 02
時を遡ること二か月前の3月11日。太平洋三陸沖を震源とした未曾有の大地震が東日本を襲ったのだ。
地震の規模を示すマグニチュードは日本観測史上最大の9.0。そしてその後地震によって発生した津波は海岸近くにある幾つかの町を呑み込んでいった。
彼女たちがこれから向かう、岩手県大槌町も地震と津波によって壊滅的な被害を受けた町の一つだった。
「ゆきりんだって、あの時の映像観たでしょ。昨日まで普通に生活していた町が津波に流されて跡かたもなくなっちゃうんだよ。
私たちが行ったところで人が集まってくれるとは限らないし、むしろ不謹慎だって言って怒る人もいるかもしれない……」
指原が心の中に渦巻く、いびつな感情を口から吐き出すと、広い車内に沈黙が落ちた。
AKB48の選抜メンバーは、東北地方太平洋沖地震の当日、次に発売するCDシングルのプロモーションビデオの撮影で日本を離れていたため、
あの地震を経験していなかったのだ。
「おいっ! 指原っ!!」
その時、一つ前の席に座っていたチームKの大島優子が、背もたれを抱え込むように振り返り、険しい顔で睨みつけてきた。
怒られるのだと思った指原は、肩をすぼめて申し訳なさそうに目を細めた。
しかし優子はそんな指原の情けない顔を見ると、満足そうにニッと笑みを浮かべた。
「お前バカだなー。あたしたちは神さまじゃないんだから、自分たちで出来ることをすれば良いんだよ!」
指原は目の下に涙を溜めて、唇を上に向けた。
「私たちが出来ることって、何ですか?」
優子は何か考えるように窓の外に目を移すと、すぐに視線を戻した。「笑うことじゃないかな?」
「笑うこと?」
AKB48として出来ることは、むしろ歌うことや踊ることだと思っていたが、笑うこととは一体何だろうか?
疑問符が浮かんだ指原は、そのまま優子の顔をじっと見つめた。
「慰問に来たあたしらが辛気臭い顔してたら、被災している人たちだって元気になれないだろ。
震災で亡くなった人に祈りを捧げることも必要なことだと思う。だけど、本当に大切なのは、そこに生き残った人たちの今後の生活なんだ。
笑うことが何だか不謹慎で、笑顔を忘れちゃったって言うんなら、あたしらが東北の人たちに笑顔を届けに行けば良いんだよ!」
優子は自問自答するように軽く頷くと、ゆっくりと微笑を浮かべた。
「今のあたしたちに出来ることは、そのくらいしかないじゃない……」
指原は思った。被災地の復興支援はしていきたい。しかし、笑うことだけで本当に良いんだろうか?
どこか納得がいかず、眉を八の字にして考えていると、同行していたNHKのプロディーサー石原真が突然口を開いた。
「被災した人たちの笑顔を取り戻すことが、復興の第一歩なのかもしれないねぇ」
指原が石原に視線を送ると、石原は少年の様な笑みを浮かべどこか照れくさそうに後頭部を掻いた。
すると、その時一緒に視線に入った柏木が「だから私が言ったでしょ」と言わんばかりのドヤ顔で、指原の肩をポンポンと叩いてきた。
指原はイラッとする心を、禁じ得なかった。
4 :
中の人:2012/09/23(日) 02:13:41.67 ID:qNsHPWrs0
>>3 03
バスは細い小道を道なりにクネクネと進んでいくと、やがて大きな駐車場に辿り着いた。
「どうしたの? 着いたよ、さっしー」
指原が重い腰を上げずにいると、隣にいた柏木が先に立ち上がりそう言った。
「うん。わかったよ」
指原と柏木がバスの降車口を出た時、道路の方から作業着姿の中年男性がこちらにやってくるのが見えた。
「あんたらがAKBか?」
浅黒い顔をした男が、仏頂面でそう聞いてきた。
いかにも海の男といった風貌の強面の男にそう言われ、戸惑ってしまった指原と柏木はただ「はい……」としか言えなかった。
その男は、バスから降りたメンバーを一通り見回すとフンッと鼻を鳴らして、また道路の方に戻っていった。
涙目になった指原は、先に降りた優子に駆け寄り、「やっぱり、まだ受け入れて貰えないんじゃ……」と泣きついた。
「大丈夫。大丈夫」
優子はそう言って頷くと、両手で口を囲むようにして大声を出した。
「あのーっ! 私たち、今日ここでミニライブやるんです!!」
しかし漁師風のその男は、聞こえているのかいないのか、振り返りもしなかった。恐らく芸能人などには興味がない人種なのだろう。
指原は優子の社交力を見習い、自分も何か言わなくてはと考え、優子に続けて大声を出した。
「1時から始まりますんで、もしお子さんがいらっしゃるなら、一緒に観に来て……」「指原っ!」
指原の言葉を、優子はすぐに制した。
何かまずいことを言ってしまったのかと思い、前を見ると男が背中を向けたままその場で立ち止まっているのが見えた。
(ここは震災の被害にあっている場所なのよ。わかるでしょ)
優子にそう耳打ちされ、指原は顔が真っ青になった。
そうだ。ここにはどうすることも出来ずに、家族と引き裂かれた人たちがごまんといるのだ。
軽率に家族のことを聞くことが、どれだけ無神経なことなのか。それは考えればすぐにわかることだった。
「す、すみませんっ!!!」
指原は土下座でもする勢いで、深く頭を下げた。指原の身体は、寒くもないのにガタガタと震えていた。
立ち止まっていた男は、再びフンッと鼻を鳴らすと、そのまま来た道を帰って行ってしまった。
優子はその男が見えなくなるまで見送ると、フゥっと溜息をついた。
「まあ、ああいう人もいるよ」優子は未だ頭を下げている指原の肩に、そっと手を置いた。
「どうしよう。私、あの人に酷いこと言ってしまったかも……」
「今のは仕方ないよ。さっしーだって、悪気があって言ったわけじゃないでしょ」
指原は涙を零しながら、小さく頷いた。
「だったら、あの人だってわかってくれるよ」
優子は優しくそうフォローしてくれたが、指原は浅慮な自分自信を深く悔いていた。
5 :
名無しさん@実況は禁止です:2012/09/23(日) 02:15:55.41 ID:uW+iIj3u0
おもしれー(棒)
6 :
名無しさん@実況は禁止です:2012/09/23(日) 07:33:25.89 ID:OLQTi4Kh0
まだ読んでないけど、筆者はトリップ付けた方が良いかと
7 :
中の人 ◆jrNPfBYzgc :2012/09/23(日) 10:05:32.25 ID:qNsHPWrs0
トリップ付けてみる
8 :
中の人 ◆jrNPfBYzgc :2012/09/23(日) 11:28:54.19 ID:qNsHPWrs0
>>4 04
AKBメンバーがやってきたのは、大槌町役場の西に位置する大槌ふれあい運動公園。
その運動公園にある野球場前の開けた場所に、ウィングボディのトラックをステージにしてミニライブは行われた。
混乱を避けるため大した告知はしなかったのだが、小さな町にも関わらずそこには多くの町民たちが集まってくれているようだった。
ステージに立つ前に、彼女たちは大島優子を中心に円陣を組んだ。
「今日は『誰かのためにプロジェクト』としての第一回目の慰問ライブです。
避難所では日々の生活をしていくのもやっとだというのに、アイドルのライブなんて観に来てくれるのか?
そんなふうに思っているメンバーもいるようですが、実際にはあたしたちのためにこれだけの人が集まってくれました。
大人も子供も、そして普段の客層にはいないお年を召した方もいらっしゃってます。ありがたいことです。
だけどここに来てくれた人たちは普段、あたしたちの公演に来てくれるお客さんとは異なる人たちなので、もしかするとAKBのライブを観るのは
これが最初で最後の機会になる人もいるかもしれません。その人にとっては、これが人生唯一のAKBのライブということになります。
もしもそのライブが手を抜いたものだったら、あたしはその人たちに申し訳ないです。人数は少ないけど、全力でいきましょう。
AKBってアイドルだけど、なんかカッコイイねって言われるように、圧倒的なパフォーマンスで元気を、そして笑顔を大槌町に届けましょう!」
優子が全員に目線を送り左手を伸ばすと、他のメンバーも小さく頷いて手を合わせた。
「よしっ! 大槌町、いくぞーっっっ!!!」「おーっっっ!!!」
9 :
中の人 ◆jrNPfBYzgc :2012/09/23(日) 11:49:35.54 ID:qNsHPWrs0
>>8 05
AKB48の代表曲でメジャーデビュー曲でもある『会いたかった』のイントロと共に、彼女たちはステージの上に駆け上がった。
集まった女の子たちから甲高い声が上がると、それに釣られるように周りの観客からも一斉に歓声が上がった。
会いたかった 会いたかった 会いたかった Yes! 会いたかった 会いたかった 会いたかった Yes! 君に―――
幾度となく歌ってきた曲だったが、優子はその時とても高揚した気持ちで歌っていた。
それは環境のせいもあるだろうが、それ以上に自身から溢れる歌を聞いてほしいという思いが、強く優子の心を支配していた。
この曲を歌ってこんな気持ちになるなんて、あたしもまだまだ伸び代があるのかもね……。優子の顔に、自然と笑みが零れた。
横で踊っていた指原にも、その優子の笑顔が映っていた。そうだ優子ちゃんは言ってた。笑顔だ。大槌町の人たちに笑顔を届けるんだ!
指原が狭いステージの中、笑顔を振りまきながら踊っていると、後方の観客の中に駐車場で会った漁師風の男が立っているのが見えた。
(あっ、あの人は……)
その男は、小さな女の子を肩車してステージをじっと見つめていた。
指原は思わず優子に目線を送った。優子もその男がいることに気付いたのか、指原を見て小さくコクリと頷いた。
よかった。来てくれたんだ。指原は安堵の表情を浮かべると、気合いが入ったのか更に力強く踊りだした。
それからシングル曲である『言い訳Maybe』『ポニーテールとシュシュ』を歌うと、AKB48を代表して大島優子が集まった人たちに挨拶をした。
「東日本大震災、そして津波によって被災された皆さまに、心よりお見舞い申し上げると共に、一日も早い復興を願っています。
まだまだ若輩者で未熟なあたしたちは、こうして被災された方々に対して何をしたらよいのか皆目見当がつきませんでした。
AKB48のプロデューサーである秋元康は言いました。誰かのために人は生きているのだと。それでは、私に何ができるのでしょう?
あたしたちに出来ることは、僅かしかありません。歌って踊って、人々に笑顔を届けることだけです。
そんな想いを込めて、最後にこの曲を歌います。聞いてください。『誰かのために』……」
神様は人々のその背中 いつでも見てると聞かされた そうどこの誰にでも平等に 愛を与える――
先ほどまでのアップテンポな曲とは一転して、観客たちはただ静かにその曲を聞いていた。野暮な声援などいらないのだ。
誰かのために 人は生きてる 私に何が できるのでしょう? 誰かのために 誰かのために 人は生まれて しあわせになるんだ
世界からすべての 争いが消えて ひとつになる日まで 私は歌おう 愚かな戦争をニュースで観るより 声が届くように 私は歌おう――
あたしたちの声、日本中のみんなに届けっ!!
トラックの荷台に造られた小さなステージの上で、優子はその歌声がみんなに届くことを、強く強く願った。
10 :
中の人 ◆jrNPfBYzgc :2012/09/23(日) 14:33:35.39 ID:qNsHPWrs0
>>9 06
「優子さん、私、今日のことを一生忘れません」集まってくれた中学生くらいの女の子が言った。
「あたしも忘れない。絶対にまた来るからね」優子は女の子の手を握ると、瞳を見つめそう返した。
ミニライブ終了後、同じ場所でミニ握手会が始まっていた。
「あっ……」
指原の目の前には、あの時の漁師風の男が五歳くらいの小さな女の子を連れて、居心地悪そうに立っていた。
「む、娘さんですか?」
「いや、この子は俺の姪っ子だ。うちの娘は今年で14歳になるんだが、津波に流されちまって未だに行方がわかんねぇんだ」
指原は絶句した。また自分の発言が裏目に出たのだ。
頭を下げて謝罪の言葉を言おうとする指原を、男は右手を出して制した。
「あんたぁ、指原さんだろ?」
顔を上げた指原は、目を真っ赤にしながら黙って頷いた。
「うちの娘は恵梨子っつうんだけど、恵梨子の部屋にあんたのポスターが貼ってあったんだ」
「えっ?」指原は最初、何を言われたのか全くわからなかった。
「恵梨子のやつ、さっしーみたいになりたいっつって、部屋の中でいつも踊っててよぅ。床が抜けるから止めろっつぅのに全然止めねぇし。
東京さ行ってオーディション受けてみたいなんて、夢みてぇなこと言ってっから、馬鹿なこと言ってんじゃねぇっつって、喧嘩になったりしてなぁ」
ふと目線を上げると、いかつい身体をした大の大人が、中空を見つめながら大粒の涙を流していた。
「田舎もんの娘が、上京してアイドルになりてぇだなんて、あんたらも笑っちまうだろ?」
指原は首を横に振った。
「私も……、私も、同じだったから……」しかし喉がつかえて、それだけ言うのがやっとだった。
その時、男の隣にいた少女が元気良く声を上げた。
「さっしーもAKBに入るのに、大分から東京に出て来たんだよ!」
それを聞いた男は、驚いたように真っ赤な目を見開いた。
「……そうか、だから恵梨子はあんたに憧れてたんだな」
男は大きく鼻をすすり、晴れた空を見上げた。
「こんなことなら、オーディションぐれぇ、受けさしてやりゃあ良かったなぁ……」
何かを思い出すように静かな口調でそう言うと、少女が男の作業ズボンの裾を二、三度引っ張った。
「恵梨ちゃんも、パパもママも、きっと見つかるよ」
男は目に涙を湛えながらも、笑顔を作って、少女の頭を優しく撫でた。
11 :
中の人 ◆jrNPfBYzgc :2012/09/23(日) 16:27:38.70 ID:qNsHPWrs0
>>10 07
「この子はぁ、両親とも行方不明になっちまって、今は俺が面倒見てんだ」
「そうなんですか……」
報道を通じて、どれだけの被害があり、どれだけの人の行方がわからない状態だというのは、十分わかっていたつもりだが
実際にこうして被災者の生の声を聞くと、これが同じ国で起こっていることなのだと改めて痛感することができた。
「けど、美緒にはおじちゃんもいるし、おばあちゃんもいるからっ!」
その少女の健気さな言葉に、指原は目の奥が熱くなった。
私が泣いてちゃ駄目なんだ。私たちが被災地に笑顔を届けなきゃ……。
指原は息を呑み込むと、無理やり口角を上げて口を開いた。「お、おばあちゃんは、今日は避難所ですか?」
「ばあさんは足を怪我しちまって歩けねえから、今は診療所で世話になってるんだ」
すると少女が何かを思い出したように「あっ!!」と声を上げた。
「そうだっ! 美緒、恵梨ちゃんと一緒に、おばあちゃんに約束したことがあるのっ」
「恵梨子と? どんな約束だ?」何のことだろうと、男は少女の言葉に耳を傾けた。
「大きくなった東京に行ってオーディション受けて、二人でAKBに入るんだって!」
それを横で聞いていた優子はその場で屈み、美緒と視線を合わせた。
「もしかして、美緒ちゃんもさっしー推しなの?」
そう聞かれると、美緒は全力で首を横に振った。
「ううん。美緒は優子ちゃんみたいになりたいっ! 美緒が中学生になったらAKBのオーディション受けに行ってもいいですか!!」
優子は勝ち誇った表情で、指原に視線を向けた。
(くっ、つくづく嫌な先輩だ!)指原は心の中で、わりと強めに舌打ちをした。
「期待の新人が現れたね。これでAKBはしばらく安泰だわ」
優子がそう言うと、美緒は笑顔で大きく頷いた。
「うんっ!! 美緒がオーディション受けに行くまで、ずっと日本一のアイドルでいてね! 約束だよっ!!」
優子は美緒の小さな手をぎゅっと握りしめた。
「約束する。日本のトップアイドルとして美緒ちゃんのこと待ってるからね」
12 :
中の人 ◆jrNPfBYzgc :2012/09/23(日) 18:08:23.50 ID:qNsHPWrs0
>>11 08
「それじゃ、撮りますよー!」石原真の大きな声が公園内に響いた。
ふとその時、指原は大島がおかしなことをしていることに気付いてしまった。
「ちょっと、優子ちゃん! 折角みんなで記念撮影するんだから変顔はやめてくださいよーっ!!」
「あー、いいじゃん別にー! っていうか人のこと言うなら、さっしーも変顔やめなよ!」
「私は変顔なんてしてないですよっ! 元からこういう顔なんだからっ!!」
指原がふくれっ面で抗議すると、周りの皆から一斉に笑い声が上がった。
「もー、さっしー、笑わせないでよー」
「何で笑うのっ?! 笑わせるつもりとか、全然ないからっ!」
柏木に笑われ、そう言い返した指原だったが、自分も気付かないうちにいつの間にか笑ってしまっていた。
その時、指原は行きのバスの中で優子に言われたことが、少しだけ理解出来たような気がした。
笑顔って良いな。笑いで人を幸せにすることだって出来るんだな。
(ほら、美緒ちゃん。あたしとさっしーと三人で、カメラに向かって変顔しよっ)優子は少女の耳元でそっと囁いた。
(えーっ。へんがおー?)美緒は笑顔で優子を見上げた。
(優子ちゃん、何で私まで巻き込むんですかっ!)指原はヘタレ顔で文句を言った。
石原が持ってきた自前のカメラのシャッターに指を掛けた。
「はいっ、チーズッ!!」
そこには五月の晴れ渡る青空を背景に、思い思いのポーズをとるAKBメンバーと地元の人の姿があった。
その後、写真はライブを行った大槌ふれあい運動公園の横にある、大槌勤労青少年体育センターに飾られることになった。
「おばあちゃん、来て来てーっ! これだよっ! AKBのみんなと撮った写真っ!」
五歳の孫娘に連れてこられた、腰の曲がった老女は頭に巻いた手ぬぐいを解きゆっくり近づくと、額に飾られた一枚の写真を眩しそうに見上げた。
「これがエーケービーの子たちかい? みんな、めんこい子だなぁ」
「美緒の横にいるのが、優子ちゃんとさっしーだよ」
それを見た老女は、顔をくしゃくしゃにして微笑んだ。
「はぁー、白目剥いてるのに、こんだけめんこいんだから、実物はよっぽどめんこいんだべなぁ」
そこに写った一枚の集合写真には、集まってくれたみんなの笑顔と、三人の変顔が色鮮やかに写し出されていた。
了
13 :
僕は美優紀さんの息子になりたい ◆ofD4v3c.QcCp :2012/09/23(日) 18:10:55.75 ID:b0ZF9GAtO
オオシワいらね
じゅりたん主役にしろカスつまんねーボケ
14 :
名無しさん@実況は禁止です:2012/09/23(日) 18:12:23.58 ID:UAnwzmxN0
15 :
中の人 ◆jrNPfBYzgc :2012/09/23(日) 18:57:28.59 ID:qNsHPWrs0
珠理奈さんが主役なら曲はGlory daysとかか
需要あるかな?
>>13 つーかお前の推しはみるきーじゃねぇのか?
16 :
中の人 ◆jrNPfBYzgc :2012/09/23(日) 23:59:11.14 ID:qNsHPWrs0
間奏曲 重力シンパシー(チームサプライズ)
その日、だるまとチームホルモンの面々は、蒲田のパチンコ屋に集合していた。
だるま「遂に来たで! ぱちんこAKB48や!! ワテらがこれを、どれだけ待ちわびたことかっ!」
ヲタ「すげー、画面がでかい! これでオレたちのパフォーマンスが大迫力で楽しめるってわけだな!」
ウナギ「つまりこの小さな台が、一つの劇場になってるってことか!」
アキチャ「能書きはいいから、早く打とうよ!」
ムクチ「ん―――っ」(打とう!)
17 :
中の人 ◆jrNPfBYzgc :2012/09/24(月) 00:04:29.28 ID:JQJHFTii0
だるま「そういえば、バンジーの奴はどないしたんや?」
ウナギ「ああ、バンジーは趣味で作ってた消しゴムハンコがネットでバカ売れで生産が間に合わないって言ってたから、たぶん家で消しゴム削ってんじゃね?」
だるま「あいつ地道に稼ぎやがって、ヤンキーならギャンブルで一発逆転するのがロマンやろがいっ!!」
ヲタ「おいっ! そんなことより、推しメン選択はどうすんだよ?!」
だるま「そら、ワイはあつ姐に決まってるわっ! お前らもあつ姐一択やろ!」
ウナギ「馬鹿なことを……。ここはりっちゃんに決まってる!」
アキチャ「まあ、そこは自分を選ぶよねー♪」
ムクチ「ん―――っ!!」
18 :
中の人 ◆jrNPfBYzgc :2012/09/24(月) 00:08:57.41 ID:JQJHFTii0
だるま「なんや、ムクチ? あんたチームサプライズに選ばれへんかったんか?」
ムクチ「ん―――っ!!」(私もティームサプライズに入りたいっ!!)
だるま「まぁ、今さらそんなこと言ってもしゃーないからな。それに、選ばれたメンバーも福岡やら愛知やらインドネシアやらに飛ばされて散々やでーwww」
ヲタ、ウナギ、アキチャ「ん―――――っっ!!!」
19 :
中の人 ◆jrNPfBYzgc :2012/09/24(月) 00:20:23.70 ID:JQJHFTii0
だるま「それじゃ、いくでーっ!!」
ヲタ「推しメン呼びかけ予告だーっ!!」ネエネエ アイタカッター
ウナギ「推しメンプレゼント予告だーっ!!」ハイ プレゼントッ
アキチャ「ドラムが回ってる時、重力シンパシーが流れるんだねー」
だるま「ワイ、この曲好きやーっ!! きみに、じゅーりょーくシンパシ〜♪」
ヲタ「だるまっ! でかい図体して踊るんじゃねーよ! 肘が当たるんだよ! 肘がっ!」
だるま「つい踊っちまうんだ。すまねぇ、すまねぇ」
20 :
中の人 ◆jrNPfBYzgc :2012/09/24(月) 00:30:24.36 ID:JQJHFTii0
ウナギ「これじゃ、二分後の重力シンパシー公演が始まったら大変だぜ」
だるま「おお、二分後に遂に始まるんやな! 高まってきたでーっ!!」
周りの客「ヘイッ! ヘイッ! ヘイッ! ヘイッ!」
だるま「なんやっ?! パチ屋の中なのに、まるでMIXでも始まりそうな雰囲気やでっ!!」
ヲタ「うお―――っ!! よっしゃいくぞーっっ!!!」
だるま「ナヌーッ?! MIXの中心がすぐ横にっ?!( ̄□ ̄;)」
21 :
中の人 ◆jrNPfBYzgc :2012/09/24(月) 00:41:25.20 ID:JQJHFTii0
ウナギ「やばいっ、ヲタが釣られた! 恥ずかしいから、みんな他人の振りするぞ!!」
アキチャ「けど、全員背中にチーム捕琉喪運参上って書いてあるけど大丈夫?」
ウナギ「な、なんだってー!!(AA略)」
ムクチ「ん―――っ!」(集中できなーいっ!)
……一時間後
だるま、ヲタ、ウナギ、アキチャ「(´▽`)きみに、じゅーりょーくシンパシ〜♪」
ムクチ「ん〜〜〜っ!!!」(うるさーいっ!!)><
――おわり――
22 :
名無しさん@実況は禁止です:
リフレクソロジー