「好きです」
言った後、物凄いスピードで心臓が鳴った。
身体中を駆け巡る血液が、顔に集まり、朱色に染めていたかもしれない。
だが、見添える目はジッと優子の瞳を捕らえていた。
その優子といえば、大きな瞳をさらに大きくして、飴玉だと思って食べたら、ビー玉だったときのようなそんな表情をしたまま固まっていた。
何も反応を見せない優子に、もしかしたら聞こえていなかったんじゃないかと思い、もう一度言おうと口を開くと、優子が大きな瞳を二、三度パチクリとした。
「ちょ、ちょっと待ってください。
好きな人って、私ですか?」
ようやく反応を見せた優子の口から出た言葉に、耳を疑った。
「えっ、気付いてたんじゃ…?」
「麻衣ちゃんのことが好きなのかと…」
「ええ!?」
優子は恥かしそうに下を向く。その顔は朱色に染まっているようにも見えた。
「なんでそこに麻衣が出て来るんですか?」
「だって、ゴニョゴニョ…」なんてことだ。優子は、俺が麻衣のことを好きなんだと思ってたのか。
優子はゴニョゴニョと小さな声で、「だって、麻衣ちゃんのは貴方のことが…」と言い、その後しまった!と言う顔をした。
またもや耳を疑った。
麻衣の好きな人が俺だと言うこと。
そんな素振り見せたことなんてないのに…。
もしかしたら俺は、大変なことをしてしまったんじゃないだろうか。
気付くと、俺は店内を飛び出し、走っていた。