【AKB】小説スレ【48】

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259松本氏 ◆Gl3jYdoy9.


歌うと死ぬ。
都市伝説を元に作られたホラー映画。
どこまで続いているのだろうトンネルを、主演の女の子がひたすらと走るシーンは印象的だった。
どことなく優子に似ている気がして、上映中は何度か優子の横顔を眺めていた。
その度に、その隣りの麻衣と視線があった。

映画が終り、近くのカフェでお茶をしようと提案したのは麻衣だった。
ついでだからと、少し遅い昼食も済ませることにした。
店内に入ると、ポケットから携帯のバイブ音が鳴った。
どうやら、麻衣がメールを送ったらしく、本文には、『お昼食べたら消えるから』とだけ入力されていた。
いよいよかと思うと、緊張で心臓が高鳴る。
「ちょっと、トイレ」
それだけ言った後、俺は店内の入口付近にあったトイレへと急いだ。
昨夜必死に練習した告白を何度も確認する。




「ねえ、麻衣ちゃん」
ティーカップに角砂糖を一つ入れた優子が、何気なく麻衣に声を掛ける。
「ん、なに?」
トイレへと視線を送っていた目を、すぐに優子へと戻した。
「麻衣ちゃん、彼のこと好きなんでしょ?」
「ええっ!ゴホッゴホッ…」
口に含んだコーヒーを噴き出してしまい、慌てておしぼりを口に当てた。
「な、なんで?」
「判るよ。今日さ、ずっと彼のこと見てたでしょ?」
優子がテーブルを拭きながら笑う。
友人の予期せぬ言葉に、思考が停止した。
この後自分は、その「彼」のために、この場から消えなくてはいけないのだ。
それなのに、なんでこの友人はいきなり核心を突く様なことを言うのだろうか。
「えっと、あー…えっとー…そのこと、彼には言わないでね」
「否定しなかったね」
優子は意地悪そうに微笑んだ。
「あ…」
そっか、否定すればよかったんだ。
今更そのことに気付いて、下を向いて固まってしまった。
「麻衣ちゃん、可愛いなぁ」
微笑んだ後、ティーカップに口を付け、紅茶を一口飲んだ。