【AKB】小説スレ【48】

このエントリーをはてなブックマークに追加
252松本氏 ◆Gl3jYdoy9.
「で、話ってなに?」
バイト終り、俺は麻衣と二人でいつものファミレスに居た。
カラスミとアンチョビのパスタをフォークに絡めながら、麻衣は携帯をいじっている。
「ん…、あ、あのさ…」

大島優子って好きな人いるのかな?
大島優子ってどんな男がタイプなんだろ?
大島優子と俺の仲を取り持って欲しいんだけど。

聞きたいことは沢山あるのだが、どの一つも口にすることが出来ない。

口を開いたまま、黙っている俺を不思議そうな顔でのぞき込んで来た。
「どうしたの? なんか変だよ。もしかして麻衣に告白でもしようとしてた?」
ははは、冗談だよ。
そう笑いながら、麻衣は再びパスタを口に運び始めた。
惜しい。告白はしたいけど、大島違いだ。
このままだと、またいつものパターンだ。
「えっと…、優子ちゃん…」
「え?」
「ど、どう?げ、元気にしてる?」
突然、優子の名前が出たせいだろうか、麻衣の表情は間の抜けた顔をしていた。
「うん、元気だけど、どうして?」
「いや、実はさ…お願いがあって…」

優子が好きだと言うこと。
それを取り持って欲しいということ。
告白は自分でするから、好きだということは伝えないで欲しいということ。
一度口を開くと、次から次へとお願い事を並べてしまった。

麻衣はというと、えーめんどくさいよ。じゃあ、今度焼肉奢ってね。もし告白が成功したら、麻衣に一番に報告してよね。
そう言いながら、楽しそうにニコニコしていた。
「じゃあ、帰ったら優子に電話してみるよ」
そう言って立ち上がると、テーブルに千円札を一枚置いた。
「あ、お金はいいよ」
千円札を拾いあげ、麻衣に差し出すと、右手でそれを遮って小さく首を振った。
いつもなら「ラッキー」と言いながら、スキップ交じりに去って行くのに。
お店のドアに手を掛けたとき、一瞬だけこちらを振り返った。
そのときの顔が、とても淋しそうな表情をしていたように見えたのを、このときの俺は何も気に止めていなかった。

「こちらお下げしてもよろしいでしょうか?」
ウェイトレスが空いた皿を片付ける。
麻衣が食べていた皿には、パスタが半分以上残っていた。