黒装束の影が疾風のように飛び込んで来たかと思うと、ビンタの音が
会場に響き渡り、極悪コンビの一人、マサ斉藤が崩れ落ちた。
小春同様の軽量級ながら「滝川の狂犬」との異名を持ち、UFB随一の
気性の激しさでチャンピョンの座まで登り詰めた美貴帝であった。
「小春−!こんな豚ども相手に何を手こずってる?
さっさと片付けて早くアタシの所まで上がって来な!」
いつかは挑戦したいと思っていたUFBチャンピョンから直々にタイトル
マッチの指名である。巨漢レスラー達の馬鹿力で殴られて戦意喪失
寸前になっていた小春の体に俄然、闘志が湧き上がって来た。
一方、悪役レスラー小川
>>1は 目の前で仲間の斉藤が崩れ落ちるのを見て
かつて自分が美貴帝と対戦した時の恐怖を思い出していた。
一時はUFBで最重量だった白熊を軽く抜き去り、体重では独走状態となった
小川
>>1は その日の対戦相手・美貴帝と向き合って薄笑いを浮かべた。
身長でも数cm上回り、体重は倍。この圧倒的な体格差なら一気に押し潰せる!
ところが、視線が合った瞬間、悪役レスラー小川
>>1は凍り付いた。
「狂犬の目だ!」
これまで人相の悪い悪役レスラーは、自分も含めて大勢見て来た。
だが、そういう外見だけの威圧感とは異質な鋭い眼光であった。
「あの女は相当な修羅場をくぐって来ている」
一応は格闘技のプロである悪役レスラー小川
>>1は、そう直感した。