悪役レスラー小川のデビュー、間近に迫る

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この極悪コンビは身長こそ日本人女性の平均程度であったが
横幅と厚みはレスラーを通り越して相撲取りに迫りつつあった。
二人の巨漢が細身の小春に「殴る、蹴る」の暴行を加えてるサマは
虐待としか見えず、あまりの惨状を見かねたレフリーが反則負けを
宣言しようとした、その時。
黒装束の影が疾風のように飛び込んで来たかと思うと、ビンタの音が
会場に響き渡り、極悪コンビの一人、マサ斉藤が崩れ落ちた。

小春同様の軽量級ながら「滝川の狂犬」との異名を持ち、UFB随一の
気性の激しさでチャンピョンの座まで登り詰めた美貴帝であった。

「小春−!こんな豚ども相手に何を手こずってる?
さっさと片付けて早くアタシの所まで上がって来な!」

いつかは挑戦したいと思っていたUFBチャンピョンから直々にタイトル
マッチの指名である。巨漢レスラー達の馬鹿力で殴られて戦意喪失
寸前になっていた小春の体に俄然、闘志が湧き上がって来た。
318ねぇ、名乗って:2008/08/30(土) 23:28:33 ID:QlIWeMU50
一方、悪役レスラー小川は 目の前で仲間の斉藤が崩れ落ちるのを見て
かつて自分が美貴帝と対戦した時の恐怖を思い出していた。

一時はUFBで最重量だった白熊を軽く抜き去り、体重では独走状態となった
小川は その日の対戦相手・美貴帝と向き合って薄笑いを浮かべた。
身長でも数cm上回り、体重は倍。この圧倒的な体格差なら一気に押し潰せる!

ところが、視線が合った瞬間、悪役レスラー小川は凍り付いた。 
「狂犬の目だ!」

これまで人相の悪い悪役レスラーは、自分も含めて大勢見て来た。
だが、そういう外見だけの威圧感とは異質な鋭い眼光であった。

「あの女は相当な修羅場をくぐって来ている」 
一応は格闘技のプロである悪役レスラー小川は、そう直感した。
319>>295,>>305-313の続き:2008/08/31(日) 03:29:22 ID:8y+oDa8f0
いつもなら試合開始のゴングと同時に突撃する小川の巨体が ジリジリと後退して行く。
観客席からは「逃げるな、白豚!」といった野次が飛ぶが、その日の悪役レスラー小川は
蛇に睨まれた蛙、いや蛇に睨まれた豚であった。
何の攻防も無いままコーナーまで追い詰められた悪役レスラー小川が、意を決して突撃
すると強烈なカウンターのビンタが小川の顔面に炸裂。 脳震盪を起こして前のめりに
ふらついた所へ、顔面膝蹴りが命中。

あとはリングに転がる肉塊を、美貴帝がサッカーボールのように蹴りまくってるうちに試合
終了のゴング。観客の嘲笑の中、担架に乗せられて退場した という苦い記憶である。

天敵である美貴帝の前から一刻も早く逃げ出したかった悪役レスラー小川は、「おい小春、
リングの中で続きをやろうぜ」と言うと、さっさとリングへ上がって行った。
320ねぇ、名乗って:2008/08/31(日) 19:48:27 ID:DlwmgoWz0
一方、小春にとってはもう、目の前の豚との試合など どうでも良かった。
「この世界に入る前から憧れの対象であった美貴帝と もうすぐ試合が出来る!」

小春は美貴帝の手を取ると「試合の相手に指名して頂いて有難うございます。
タイトルマッチに恥じぬよう、全力で戦いますから!」 と眼を輝かせながら言った。

美貴帝は「この小娘じゃ、まだまだ私と勝負にならんな」と思ったが、図体と馬鹿力
だけの重量級レスラーとの対戦は飽き飽きしていたので、相手してやる事にした。

「うむ」鷹揚に頷いて、美貴帝が小春に何か声を掛けようとした、その時・・・
321ねぇ、名乗って:2008/09/01(月) 22:00:33 ID:Og7ac7J70
美貴帝のビンタを食らって大の字に伸びていた越後豚2号の斉藤が
むっくりと立ち上がり、凶器の椅子を鷲づかみにすると襲って来た。

野獣のような勘で殺気を感知した美貴帝は、豹のような身のこなしで
凶器を避けた。だが、美貴帝を目の前にして舞い上がっていた小春は
回避の動作が間に合わず、昏倒した。

激怒した美貴帝は凶器を奪い取ると、越後豚2号の斉藤を椅子で
めった打ちにしてKO。更にはリング上の越後豚1号の小川に向かって
「おら、降りて来いや、そこに居るウドの大木!」と怒鳴った。

リング上に逃げ込んでいた悪役レスラー小川は かつて自分が美貴帝に
一方的にボコられ、今度は仲間の斉藤が失神KOに追い込まれたのを見て
恐怖の余り、腰が抜けそうだった。 
だが悪役レスラーは、虚勢を張るのが仕事だ。負ける事は許されても
逃げる事は許されない。玉砕覚悟で美貴帝の挑発に応じざるを得なかった。

つづく
322ねぇ、名乗って:2008/09/02(火) 22:22:38 ID:9/9j1I0e0
悪役レスラー小川が 顔面蒼白になりながらも 逃げるに逃げられず、天敵の
美貴帝の方へ向かう姿は、まるで屠殺場に連れて行かれる家畜であった。

もはや観客の関心は、どちらが勝つか ではない。 図体のデカい(横幅のみ)
悪役レスラー小川が、軽量級の美貴帝に どんなブザマな負け方をするか?
その一点に絞られていた。
323ねぇ、名乗って:2008/09/04(木) 23:43:00 ID:a+fGjNom0
多くの悪役レスラーは、わざと憎たらしい表情を作ったり
暴言を吐いたりして、何とか観客の反感を煽ろうと努力する。
悪役レスラーは嫌われてナンボの職業なのである。

ところが悪役レスラー小川は何の努力もする必要が無かった。
小川が居るだけで見てる者すべてが不快な気分になり、小川が
無意識のうちに やる事なす事 すべてが観客を苛立たせた。

そう。小川はまさに 悪役レスラーになるために生まれて来た
のではないかと思えるほど、天性の才能に恵まれた悪役だった
のである。

悪役レスラー小川と対戦する選手には常に大声援が送られた。
対戦相手が小川に痛めつけられると会場は悲鳴に包まれ、
小川がボコられると会場は大いに盛り上がった。
そして最後に小川が失神KO負けしたところで観客は満足して
帰って行くのである。
324ねぇ、名乗って:2008/09/06(土) 01:45:20 ID:p3FDLp5F0
悪役レスラー小川が先日、同じく悪役レスラーの光井と対戦した時も
例外ではなかった。 人気が無い事では互角かと思われた二人は
顔だけ見ると確かに甲乙付け難い不細工である。

だがこの二人がリング上で向き合うと、あまりの体格差に観客は呆れた。
パンパンに膨れ上がった顔、丸太のような手足、樽のような胴体・・・
重量級レスラーの小川と並ぶと、ごく普通の体型をした光井は 気の毒な
ほど頼りなく華奢な体格に見えた。

観客席は光井の声援一色に包まれ、久しぶりに気分良く戦えると期待して
いた悪役レスラー小川はさすがに落胆した。本来なら楽勝の相手に粘られた
挙句、顔面に光井の頭突きを食らって倒れたところにチョークスリーパーを
決められて又もや失神KO負け という結果に終わったのである。
325ねぇ、名乗って:2008/09/07(日) 03:33:08 ID:OSrSFfbw0
「今日 美貴帝と対戦したら、これで10試合連続失神KO負けか・・・」
日頃のふてぶてしいツラ構えとは打って変わって沈鬱な表情で
悪役レスラー小川はつぶやいた。

と その時。突然、試合終了のゴングが鳴ったかと思うと、乱入した
越後豚2号の斉藤に反則攻撃を食らって伸びてる小春にリングアウト
負け、そして越後豚1号の悪役レスラー小川には 勝利が宣告された。

「棚からボタ餅」とは、まさにこういう事を言うのだろう。
美貴帝に怯えてリング上に逃げ込んでいたおかげで、悪役レスラー小川は
実に久々の勝ち星を手にした。
326ねぇ、名乗って:2008/09/07(日) 21:56:21 ID:Y60hF2Nj0
悪役レスラー小川が失神KO負けすれば観客が喜ぶのは
わかってるのに、何故このタイミングで試合を止めるのか?

体型のみならず知能も豚レベルの悪役レスラー小川には
UFB側の意図が読めなかった。 
ただ、悪役レスラー小川は以前から強運の持ち主だった。
美形レスラーが多いUFBに不細工な小川が加入できたのは
ひとえに強運ゆえである。
今回もまた、自分の強運が勝利に結び付いたのだと考えた。

だが、美貌と運動神経のみならず頭脳も明晰であった美貴帝は
すぐさまUFBの意図を理解した。  「遺恨試合だ!」

そう。ここで美貴帝が悪役レスラー小川を半殺しにすれば
観客は狂喜するが、UFBにとっては1銭にもならない。
無料サービスは越後豚2号の斉藤だけで十分だった。
それよりは対立を煽って次の試合に期待させた方が盛り上がる。
いかにも商売上手なUFBが考えそうな事だった。
327ねぇ、名乗って:2008/09/08(月) 01:29:19 ID:mI1LFETS0
いつの間にか 小春vs小川 から 美貴帝vs小川 になってるな。
でも面白い
328ねぇ、名乗って:2008/09/08(月) 18:23:05 ID:FDohRHka0
>>326
>美形レスラーが多いUFBに不細工な小川が加入できたのは
>ひとえに強運ゆえである。

・「美形の多いUFBなのに不細工」という意外性が逆に受けて 先輩悪役レスラーの
保田がプチブレイクした。その後継者を探していた というタイミングの良さ。
・審査員の寺田が、気分次第で時に周囲が驚くような人選をしてしまうキャラであること。
・小川が通っていた新潟のレスラー養成所が UFBと太いコネを持っていたこと。
・他のオーディション受験生が素人だったのに対し、小川だけレスラー養成所で訓練を
受けていたため、技術面では有利だったこと。
・オーデの時点ではまだ怠慢豚に成り下がっておらず、やる気がありそうに見えたこと。
・オーデ風景の撮影班に知人が居て、小川に有利な編集をしてくれたこと。

こういった何重もの強運が重なって、小川はこの世界に潜り込む事に成功したのであった。
329ねぇ、名乗って:2008/09/09(火) 00:37:58 ID:aINDTaKu0
>>295,>>305-313>>317-326の続き

美貴帝は放送席のマイクを引っつかむと、トップロープを軽々と飛び越えて
リングに舞い降りた。 
リング上で執拗に勝利をアピールして 観客からブーイングを浴びていた
悪役レスラー小川は、美貴帝が自分を殴りに来たのかと思い、凍り付いた。

美貴帝は、顔面蒼白の豚を軽蔑の眼差しで一瞥すると、観客に語りかけた。
「皆さん、本日はこの豚を退治する前に試合が終わってしまい、残念です。
今回の決着は、次の試合で必ず付けますから。皆さん見に来て下さいね!」

観客は割れんばかりの拍手で、会場に美貴帝コールが響き渡った。
リング上の美貴帝は満面の笑みで観客に手を振りながら、放送席の寺田
の方をチラりと見た。UFBの意図をいち早く察して観客を盛り上げてくれた
美貴帝に、寺田は満足げに頷いた。
330ねぇ、名乗って:2008/09/10(水) 01:15:16 ID:+Vmg8IL+0
続いて寺田はリング外で仲良く伸びてる小春と斉藤を指差し、両手の指を2本ずつ立てた。
この短時間のジェスチャーで、UFB幹部の意図を理解した美貴帝は再びマイクを握った。

「でも良く考えたら、私とのシングルマッチだと この豚は仮病を使って逃げる可能性大ですね」
会場はどっと沸いた。図星を突かれた悪役レスラー小川は、一段と顔面蒼白になった。

「そこで、今回そこに伸びてるもう一匹の豚と、この豚に乱入されて試合をブチ壊された小春
も参戦って事でどうでしょう?すなわち、2対2のタッグマッチ」

会場は更にヒートアップした。UFBのエース美貴帝と 次期エース候補の小春が組んで
UFBきっての嫌われ者、越後豚シスターズを成敗するのである。