悪役レスラー小川のデビュー、間近に迫る

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317>>295,>>305-313の続き
この極悪コンビは身長こそ日本人女性の平均程度であったが
横幅と厚みはレスラーを通り越して相撲取りに迫りつつあった。
二人の巨漢が細身の小春に「殴る、蹴る」の暴行を加えてるサマは
虐待としか見えず、あまりの惨状を見かねたレフリーが反則負けを
宣言しようとした、その時。
黒装束の影が疾風のように飛び込んで来たかと思うと、ビンタの音が
会場に響き渡り、極悪コンビの一人、マサ斉藤が崩れ落ちた。

小春同様の軽量級ながら「滝川の狂犬」との異名を持ち、UFB随一の
気性の激しさでチャンピョンの座まで登り詰めた美貴帝であった。

「小春−!こんな豚ども相手に何を手こずってる?
さっさと片付けて早くアタシの所まで上がって来な!」

いつかは挑戦したいと思っていたUFBチャンピョンから直々にタイトル
マッチの指名である。巨漢レスラー達の馬鹿力で殴られて戦意喪失
寸前になっていた小春の体に俄然、闘志が湧き上がって来た。
318ねぇ、名乗って:2008/08/30(土) 23:28:33 ID:QlIWeMU50
一方、悪役レスラー小川は 目の前で仲間の斉藤が崩れ落ちるのを見て
かつて自分が美貴帝と対戦した時の恐怖を思い出していた。

一時はUFBで最重量だった白熊を軽く抜き去り、体重では独走状態となった
小川は その日の対戦相手・美貴帝と向き合って薄笑いを浮かべた。
身長でも数cm上回り、体重は倍。この圧倒的な体格差なら一気に押し潰せる!

ところが、視線が合った瞬間、悪役レスラー小川は凍り付いた。 
「狂犬の目だ!」

これまで人相の悪い悪役レスラーは、自分も含めて大勢見て来た。
だが、そういう外見だけの威圧感とは異質な鋭い眼光であった。

「あの女は相当な修羅場をくぐって来ている」 
一応は格闘技のプロである悪役レスラー小川は、そう直感した。
319>>295,>>305-313の続き:2008/08/31(日) 03:29:22 ID:8y+oDa8f0
いつもなら試合開始のゴングと同時に突撃する小川の巨体が ジリジリと後退して行く。
観客席からは「逃げるな、白豚!」といった野次が飛ぶが、その日の悪役レスラー小川は
蛇に睨まれた蛙、いや蛇に睨まれた豚であった。
何の攻防も無いままコーナーまで追い詰められた悪役レスラー小川が、意を決して突撃
すると強烈なカウンターのビンタが小川の顔面に炸裂。 脳震盪を起こして前のめりに
ふらついた所へ、顔面膝蹴りが命中。

あとはリングに転がる肉塊を、美貴帝がサッカーボールのように蹴りまくってるうちに試合
終了のゴング。観客の嘲笑の中、担架に乗せられて退場した という苦い記憶である。

天敵である美貴帝の前から一刻も早く逃げ出したかった悪役レスラー小川は、「おい小春、
リングの中で続きをやろうぜ」と言うと、さっさとリングへ上がって行った。
320ねぇ、名乗って:2008/08/31(日) 19:48:27 ID:DlwmgoWz0
一方、小春にとってはもう、目の前の豚との試合など どうでも良かった。
「この世界に入る前から憧れの対象であった美貴帝と もうすぐ試合が出来る!」

小春は美貴帝の手を取ると「試合の相手に指名して頂いて有難うございます。
タイトルマッチに恥じぬよう、全力で戦いますから!」 と眼を輝かせながら言った。

美貴帝は「この小娘じゃ、まだまだ私と勝負にならんな」と思ったが、図体と馬鹿力
だけの重量級レスラーとの対戦は飽き飽きしていたので、相手してやる事にした。

「うむ」鷹揚に頷いて、美貴帝が小春に何か声を掛けようとした、その時・・・
321ねぇ、名乗って:2008/09/01(月) 22:00:33 ID:Og7ac7J70
美貴帝のビンタを食らって大の字に伸びていた越後豚2号の斉藤が
むっくりと立ち上がり、凶器の椅子を鷲づかみにすると襲って来た。

野獣のような勘で殺気を感知した美貴帝は、豹のような身のこなしで
凶器を避けた。だが、美貴帝を目の前にして舞い上がっていた小春は
回避の動作が間に合わず、昏倒した。

激怒した美貴帝は凶器を奪い取ると、越後豚2号の斉藤を椅子で
めった打ちにしてKO。更にはリング上の越後豚1号の小川に向かって
「おら、降りて来いや、そこに居るウドの大木!」と怒鳴った。

リング上に逃げ込んでいた悪役レスラー小川は かつて自分が美貴帝に
一方的にボコられ、今度は仲間の斉藤が失神KOに追い込まれたのを見て
恐怖の余り、腰が抜けそうだった。 
だが悪役レスラーは、虚勢を張るのが仕事だ。負ける事は許されても
逃げる事は許されない。玉砕覚悟で美貴帝の挑発に応じざるを得なかった。

つづく