1 :
ねぇ、名乗って:
http://news21.2ch.net/test/read.cgi/mnewsplus/1179437657/574 574 名前:名無しさん@恐縮です[] 投稿日:2007/05/20(日) 12:08:45 ID:u4v3X0sI0
>>550 漏れのイメージでは
長女 舞美(17歳 高2 母亡き後、妹達の母親代わりを務めるべく奮闘するがドジな一面も。妹達を叱るときもかみまくり。)
次女 えりか(16歳 高校中退 クールな現代っ子に見えて実はナイーブな一面も。なんだかんだ文句を言いながらいつも姉や妹をフォローしている。)
三女 早紀(15歳 中3 現実主義の優等生で姉や妹のことを誰よりも心配している。買い物上手で家計をやりくりするのが得意。)
四女 栞菜(14歳 中2 ちゃっかりした性格でイケメンに目がない。他人の色恋話にも目がない。家族のムードメーカー的存在。)
五女 愛理(13歳 中1 女の子らしく優しい性格。あがり症で普段は大人しいが、歌が大好きでマイクを持った途端に性格が豹変する。)
六女 千聖(12歳 小6 男勝りで気が強く、いつもクラスの男子とケンカしては必ず勝利して帰ってくる。家族のトラブルメーカー的存在。)
七女 舞(11歳 小5 奔放な性格で姉妹のマスコット的存在。最年少ながら鋭い指摘で家族のピンチを救うこともたびたびある。趣味はサングラス集め。)
2 :
ねぇ、名乗って:2007/05/23(水) 01:23:39 ID:poGAJFFc0
いつも賑やかな℃-ute七人姉妹が、今日はとっても真剣な表情。
一体何が始まるのかな?
『・・・最初はグー!じゃんけんポン!!』
えり「やったー、勝ったー!今日は私一番!!」
女のコはみんな決まって長風呂、七人姉妹の℃-ute家では
お風呂の順番はとっても大事な勝負事なのです。
千聖「えりか姉ちゃんは一番はダメだよ、だって一番長風呂なんだもん」
栞菜「そうだよ、八時間も入ってるような人は一番最後!」
えり「ブーブーブー!」
愛理「じゃあかわりに私が一番ね。ウッキッキッキ!」
舞美「愛理はお風呂で歌うの禁止だからね!この前も三時間くらい歌ってたでしょー!」
愛理「だってね、アンコールがいっぱいあったの」
えり「どこからだよ!」
舞美「そうそう、早貴と栞菜もお風呂長いんだから!
お風呂でマンガ読むの禁止だからね」
栞菜「マンガじゃないもん、ファッション雑誌だもん」
早貴「早貴もジュニア小説だもん」
舞美「あーもう、何でも一緒!本は本ーーー!」
千聖「千聖とマイはいつも一緒に入ってるからいーじゃん」
マイ「ねー」
舞美「あんた達はお風呂でオモチャ禁止!だいいち水鉄砲とかならわかるけど
何でお風呂場にサングラスが置いてあるのよ!?」
千聖「それはスチューバダイビングごっこだよ」
マイ「スキューバね、スキューバ」
3 :
ねぇ、名乗って:2007/05/23(水) 01:24:51 ID:poGAJFFc0
わいわいわいわい・・・
舞美「もーめんどくさい!今日はみんなで一緒に入るよ!!
そうすれば時間もかかんないし温かいしで一石二鳥じゃん」
えり「えー私はやだ〜、私はお風呂はゆっくり一人で入りたい主義なの」
舞美「なんでー、一緒に入ろうよ。気持ちいいよ」
えり「だって、たまにはせかされずにゆっくり長風呂したいじゃん。
いいじゃん、今日は私がじゃんけんで勝ったんだから全員私の言う事聞く!
みんなは一緒に入って私は二番!!
舞美「えりがそれでいいんならいいけどさあ・・・」
えり「文句は言わないから、さあ入った入った!」
かくしてえりかを除く六人が一緒にお風呂に入ることに。
愛理「せまいよー!!」
早貴「みんなで入るからって、湯船にも一緒に浸かることないじゃんない?」
栞菜「ねえ、順番でいいじゃん、体洗う人と浸かる人と・・・」
舞美「いーじゃん!みんなでガーッと入った方が温まっていいんだよ!!」
千聖「たしかに・・・せまいけど・・・」
マイ「気持ちいいネッ!」
『ね〜〜〜〜〜っ!!』
4 :
タイソン ◆CvnS8Qc1xo :2007/05/23(水) 01:25:46 ID:+FmwFY5W0
面白そうだな
がんばれよ
5 :
ねぇ、名乗って:2007/05/23(水) 01:26:00 ID:poGAJFFc0
マイ「やだマイのおっぱいさわるなー!!」
千聖「ごめーん、だって狭いんだもん」
舞美「マイさわられるほどおっぱい無いじゃん」
マイ「ひどーい!今に一番大きくなるんだからねー!!」
『あははははははは』
マイ「何で笑うのよーー!!」
お風呂場に、みんなの笑い声が弾ける
今日も明るい℃-ute家(−1)でありました。。。
舞美「えりー、上がったよー。次どうぞー!」
えり「はーい!・・・嬉しー、今日は堂々と一人で長風呂できるわ。
雑誌読んでぇ、CD聴いてぇ、と
・・・お、お湯が無いーーー!!」
六人が全員で浸かった湯船はほぼ空っぽに、
絶望的に大雑把な舞美姉さんに「お湯を足す」という細かい気配りができるはずもなく、
寒い思いをして一人お湯を足すえりかなのでした。
えり「文句言わないって言ったしなー、
・・・ハックショ!!」
6 :
ねぇ、名乗って:2007/05/23(水) 01:40:09 ID:poGAJFFc0
・・・作家募集中
今のところ基本設定は℃-uteの七人が姉妹だったら?
のみです
7 :
おでん ◆w3pBym3olE :2007/05/23(水) 06:29:55 ID:d8Ttt4pGO
湯舟に一人残ったマイは何やら底に小さな穴が開いてる事に気付いた。
マイ「これ、何の穴なんだろう?」
マイは思いっきって潜り込んで穴を覗きこんだ。
マイ「きゃあぁ!」
マイの小さな身体が穴に吸い込まれて行く!
これはえらい事ですよぅ……。
つづく
8 :
ねぇ、名乗って:2007/05/23(水) 07:17:18 ID:VJz9XjBH0
つづきに期待
9 :
ねぇ、名乗って:2007/05/23(水) 08:37:56 ID:s3qP+qCW0
めぐー
10 :
ねぇ、名乗って:2007/05/23(水) 09:46:32 ID:6vpM90/U0
空から謎の物体が!!!!
ー数ヵ月後ー
彼女たちの墓には一輪の花が添えられていた
完
11 :
ねえ、名乗って:2007/05/23(水) 10:49:53 ID:b7a5/Wq/0
期待してるよ
12 :
ねぇ、名乗って:2007/05/23(水) 11:53:35 ID:9rMPVPgBO
あなた達にはもう一人姉妹がいたの・・・的な感じで
あの人の登場をおねがいします
13 :
ねぇ、名乗って:2007/05/23(水) 12:01:06 ID:/JWtoE3x0
さてそれはどうかな
14 :
ねぇ、名乗って:2007/05/23(水) 18:17:06 ID:eifwMMsJO
騒がしいけど楽しい矢島家。今日も何か騒ぎが起きそう…。
おやおや、末っ子の舞ちゃんが小学校から帰っている途中みたい。鼻歌交じりで何だかご機嫌な舞ちゃん。今日は何をしでかすことやら…。
舞「ディスコ♪ディスコ♪ディディディディ…あれ、千聖じゃん。どうしたの?顔中ひっかき傷だらけだよ」
千「おっ、舞も今帰りなんだ。いや〜、実はクラスの男子とケンカしちゃってさ…」
舞「またケンカ?よく飽きないね…」
千「だってあいつらが寄ってたかってアタシのこと、男みたいだとか言ってうるさいんだよ。仕方ないから全員のキンタマ蹴りつぶしてやった。ざまあみろってんだ。」
舞「…。そんなことするから男みたいって言われるんだよ…。」
千「まあまあ、アタシのことはいいじゃん。それで、舞は5年生になってからどう?うまくやってる?」
舞「ど〜もこ〜もないっすよ〜!新しい担任の先生がさ、小学生はサングラスなんかかけてきちゃいけませんなんて言うんだよ!一体そんなこと誰が決めたんだよっ!私はそんな勝手な大人の都合に、しばられたくな〜いっ!」
千「お〜お〜、元気良いねぇ。ま、アタシは舞のそういうところ好きだけど。」
15 :
ねぇ、名乗って:2007/05/23(水) 18:51:27 ID:eifwMMsJO
舞「千聖もサングラスかけてみなよ。かけたら絶対世界が変わるよ。サングラスさえあれば私は元気!ほらほら、かけてみ。」
千「い、いや遠慮しとくよ…。あ、ねえ、あそこにいるのって舞美姉ちゃんじゃない?」
舞「ホントだ。誰かと電話してるみたいだね」
千「ねえねえ、電話終わった途端に後ろから抱きついて舞美姉ちゃんを驚かせよっか!」
舞「うん、面白そう!舞美姉ちゃん、絶対びっくりするよ!」
こそこそと舞美の近くに移動する2人
千「この自販機の陰に隠れてようよ。んで、電話が終わったら2人で一斉に飛び出すってわけ。」
舞「チェキラ〜!ここなら電話の声も聞こえるもんね!」
16 :
1:2007/05/23(水) 19:28:11 ID:s6vbZCUd0
ネタ途中にスマン、1に追記
もし℃-uteの七人が姉妹だったら『こんなシチュエーションは萌える』的なネタスレでもあります。
話になってなくとも、見たいシチュがある人はぜひネタを。
では続き期待
17 :
ねぇ、名乗って:2007/05/23(水) 23:43:17 ID:eifwMMsJO
自販機の陰に隠れて舞美姉さんの様子をうかがう2人
でも2人が隠れていることなど知らない舞美姉さんは電話に夢中みたい
舞「電話…なかなか終わんないね」
千「一体誰と電話してんだろうね?ひょっとして舞美姉ちゃんのカレシとか?」
舞「え……?」
千「だって舞美姉ちゃん、もうジョシコーセーなんだよ?実はカレシくらいいるんじゃないの〜?」
何だか楽しそうな千聖ちゃん
舞「でも…お姉ちゃん全然そんなこと言ってなかったし…。」
千「それにしても舞美姉ちゃん、なんか嬉しそ〜。すっごいニコニコしてるよ。あれはもうカレシで決まりっしょ〜!」
もうわくわくして仕方がないと言った表情を浮かべる千聖ちゃんとは対照的に、何だか浮かない表情の舞ちゃん
そりゃあ大好きな舞美姉さんに付き合ってる男の人がいるなんて知ったらちょっとショックだよね…
千「ねえ、もうちょっと近寄ってみよっか。」
舞「え…立ち聞きしちゃうの…?」
千「だって、気になるじゃん!舞だって舞美姉ちゃんにカレシがいるかどうか気になるでしょ?」
舞「でも…。」
千「舞、何弱気になってんの?いつもの元気はどうしたんだよ?」
18 :
ねぇ、名乗って:2007/05/23(水) 23:45:12 ID:eifwMMsJO
舞「だって…」
千「あ〜、もう!いいよ!舞が行かないなら千聖だけで行くから!」
舞「…待ってよ、舞も行く…。」
おやおや、大丈夫かな、舞ちゃん…
19 :
ねぇ、名乗って:2007/05/24(木) 15:24:21 ID:f4D2XO8N0
.∧,, ∧
. (`・ω・´) クソスレを立ててしまい申し訳ありませんでした。
. U θU
>>1 . / ̄ ̄T ̄ ̄\
. . .|二二二二二二二|
. | . .|
パシャ パシャ パシャ パシャ パシャ パシャ パシャ パシャ パシャ パシャ
パシャ パシャ パシャ パシャ パシャ パシャ パショ ボーンャ パシャ パシャ
∧_∧ ∧_∧ ∧_∧ ∧_∧ ∧_∧ ∧_∧
( )】 ( )】 ( )】 【( ) 【( ) 【( )
/ /┘ . / /┘. / /┘ └\ \ └\ \ └\ \
ノ ̄ゝ ノ ̄ゝ ノ ̄ゝ ノ ̄ゝ ノ ̄ゝ ノ ̄ゝ
タンタンタンタン……
朝のキッチン、
テーブルに向かい、赤ペン片手にその日の新聞チラシを眺め
一心不乱に電卓のボタンを叩く紅いべっこう眼鏡の少女が一人。
「…よーし、これで今日のチラシチェックは終わり、と。
さあて、お楽しみお楽しみ!」
お茶を入れ、戸棚の奥に隠しておいた信玄もちを取り出してテーブルに戻ると、
お気に入りのライトノベルの続きを開いてから、おもむろに信玄もちを一つ口に放りこむ。
「うーん、美味しい!幸せケロ♪」
嬉しいと何故か語尾に「ケロ♪」が付くのが口癖の不思議ちゃん、
ナッキーこと早貴はこの家の三女だ。
小さい頃から泣き虫で甘えん坊、
付いたあだ名が「泣き虫早貴」=「ナキムシサキ」縮めて「ナッキー」。
七人姉妹の大所帯℃-ute家は、みんな明るくて寂しくなる事はないけれど、
たまには独りでホッとする時間も重要。アニメや読書が大好きなナッキーにとって、
まだみんなが寝静まっている朝のこの時間はささやかな幸せタイム。
アニメ調イラストが記されたライトノベルを読みながら、大好物の信玄もちを食べお茶をすする。
あー、至福の時だ。。。
ジリリリリリリリリ…
遠くの方で目覚ましのベルが鳴り響く。
が、誰も起きてくる気配が無い。軽く溜め息をつき、本を閉じると口を真一文字に結び
この後訪れる喧騒に備え気合いを入れる。
「ふゎ…、おあようナッキー」
「おはよう舞美ちゃん、ねえ舞美ちゃんまた和室の電灯の紐ちぎっちゃったでしょう、
いつも引っ張る時は力入れすぎないでって言ってるのに」
「ごめーん、そんなに力入れてないんだけどなあ」
しばらくして眠そうな目をこすりながら起きてきたのが姉の舞美だ。
何事にも全力はいいが加減を知らない馬鹿力でもある。
「おっはよーナッキー!どう私今日もカワイイ?」
「おはようえりかちゃん、ねええりかちゃん昨日風呂場の電気つけっ放しだったよ」
「うそー!?ゴメンゴメン気をつけるわ。今朝御飯作ってあげるからね」
と言いながらもまた同じ失敗を繰り返すのは朝からハイテンションな姉えりかだ。
誰よりも明るく笑わせてくれるのはいいがマイペースで人の話を聞いていない。
両親不在の℃-ute家では、この姉二人が親代わりを務めている。
が、姉達はしっかりやってはいるもののどこか頼りなく、自然と三女の早貴が
しっかりしなければいけない羽目になる。
「…さあ、もうケロは終わり!今日も一日頑張んなきゃ!!」
つい腕まくりをして気合いを入れるナッキー。
そう、いつまでも甘えん坊の泣き虫ナッキーでいる訳にはいかない、
ドタドタドタドタドタ…
「寝坊したーーー!!」
「何で起こしてくれなかったのーーー!!」
残りの妹達が跳び起きてくる。
今から、普段は仲がいい℃-ute家の唯一の戦争タイムが始まるのだから。
ゴ〜〜〜ッ!!
「栞菜早くしてよ〜!」
「だってサイドが決まんないんだもーーん!!」
洗面所でドライヤーの奪いあいをしているのは栞菜と愛理だ。
鏡を独占する時間をナッキーと供に奪い合うベスト3である。
(もっともナッキーは自分が鏡に向かうのは身だしなみだからと言い訳する)
「ナッキー、ドライヤーもいっこ買ってって言ってるのに〜!」
「今月もピンチなの!我慢して順番に使いなよーー!」
「もー、癖毛伸ばさなきゃ学校行けない〜〜!!」
ドンドンドンドンッ!!
トイレの前を通ると、トイレのドアをノックするナッキー。
「ちょっと舞美ちゃん、またおトイレで寝ないでよー!!」
「グ〜〜ッ…、寝、寝てないよッ!!」
朝早く起きると、必ずトイレで座ったまま寝てしまう舞美姉さんを
起こすのもナッキーの日課だ。
「ナッキー御代わりちょーだい」
キッチンへ戻ると、千聖とマイがおかずの奪い合いをしている。
「千聖ご飯食べ過ぎ、もう三杯目でしょー!」
「あー!マイのおかず取るなー!!」
末妹のマイは、小食で偏食。好き嫌いが多くていつまでたっても大きくならない。
その癖、他人におかずを勝手に取られるのを嫌がる負けず嫌いだ。
「えりかちゃん、今日頭お団子にして〜!栞菜がね、ドライヤー代わってくれないの〜!!」
栞菜に洗面所を追い出された愛理がやってきた。
「あたしまだお弁当作ってるからダメ、舞美にやってもらいなー!」
「ギクッ!…あ、あたし今日このままでいいや」
「いいよ遠慮しないで愛理、あたしがやってあげるよ!」
後ずさる愛理を強引に捕まえブラシを入れる目を覚ました舞美。
「痛い痛い痛い痛い、舞美ちゃん髪引っ張りすぎ〜〜!!」
「な〜んで!?大して力入れてないじゃーん、ホラ」
「ヒ〜〜〜〜ッ!!」
かくしてこれも朝恒例の悲鳴が響き渡る。
力の加減を知らない舞美姉さんの今日の人的被害者第一号は愛理だ。
「ふー、千聖はショートカットで良かった〜」
「あー千聖はその寝グセ直さないと」
「イヤだイヤだ、引っ張らないで…、ヒィ〜〜〜ッ!!」
…二号が出た。
「あはははは、千聖のその顔!」
長いヘアブローを終えた栞菜がやってきて、その姿を見て笑い転げた。
ナッキーも思わず笑ってしまった。
その声に釣られて、他のみんなも笑いだした。
ついには舞美と千聖も一緒に笑いだした。
「あははははははは!!」
みんなの笑い声が重なって、やがて大きく弾けた。
「も〜う舞美ちゃんの馬鹿力ァ!!ハゲになるかと思ったヨ」
「な〜んで!?普通だって!!もぅ〜〜」
千聖が変な事をして、笑い上戸の栞菜が笑い、釣られてみんなが笑い出す。
これまで何十回、何百回と繰り返してきたいつもの事なのに、何でこんなに楽しいのだろう。
多分、みんなが一緒にいるからなんだろうか、とナッキーは思う。
そのうち、また【誰か】が欠けてしまうかもしれない。
みんな無意識にその事を感じとっているのかもしれない。
だからこそ、みんな一緒にいられるだけで今が楽しく、そして幸せなのかもしれない。
どんなに騒がしくても、喧嘩をしてても、もう甘えん坊でいられなくても、
いつも姉妹が七人全員一緒に笑っていられるこの幸せを噛み締めていようとナッキーは思う。
「ハイみんな、お弁当出来たよ!」
「いつもありがと、えりかちゃん!」
「ありがとう、行ってきまーーす!!」
「ありがとー、じゃ行ってくっカンナー!」
玄関から弾けたように跳び出していく妹達を見送り、ナッキーも登校の準備を始めた。
「いつもお弁当ありがとうえりかちゃん。 じゃ、あたしも行ってくるねー!」
「ちょっと待った、ナッキー頭のそれ付けたまま行く気?」
えりかがナッキーの頭に手をやると、洗顔の時に前髪を束ねていたヘアクリップを
外してくれた。
「あ〜〜〜っ!!」
「ほっぺに信玄もちの粉が付いてるぞ、ホラ」
舞美が優しくほっぺたの粉を払ってくれた。
「妹達の世話もいいけど、肝心の自分の身だしなみを忘れるなヨ」
「ナッキーは何があっても変わらずナッキーなんだから、鏡好きの甘えん坊ナッキーを
忘れちゃだめだよ」
そう言って舞美が手鏡をかざしてくれた。そこに写っているのはどんなナッキーだろうか。
もうそんな事はどうでもよかった。
ナッキーはいつもナッキーナリ!!
「えへへ…ありがとうお姉ちゃん達、
…じゃあ、行ってくるケロ〜〜♪」
そう言って明るく走っていくナッキーは、姉への感謝に心の中で、
(お姉ちゃん達がもっとしっかりしてればナッキーはもっと全然楽なんだけどね)
とこっそり舌を出して付け加えるのも忘れなかった。
「…ウチら遅刻じゃーん、舞美が朝からシャトルランの練習とかいって始めるから!!」
「…そういうえりだって洋服決まんないとか言ってずっと悩んでたじゃーん!!」
…そういう姉二人だった。
28 :
ねぇ、名乗って:2007/05/25(金) 03:23:05 ID:cx+/q2n70
書いたそばから直したいところがいっぱいある・・・
>>18 継続ネタ書く人はコテ付けるかタイトル付けるといいかも。
29 :
ねぇ、名乗って:2007/05/26(土) 01:08:54 ID:wvEMP4qBO
>>28 あんた、いい腕してるな
楽しく読ませていただきますた
次のネタにも期待してる
>>18 あんたも好きだね。ネタ盛り込みすぎている感があるが面白いので是非また続き書いてくれ!
30 :
ねぇ、名乗って:2007/05/26(土) 01:24:53 ID:Xnp/UjSj0
>>29 やっとお客が北ー!!
軌道に乗るまで地道に書いていこうと思います
ついでに、このスレ誕生のきっかけになった芸スポ愛理スレのコピペなども
こんな感じで「見てみたい萌えシーン」のみでも是非。
516 名無しさん@恐縮です 2007/05/19(土) 23:10:17 ID:YJRklwbw0
>>512 漏れも
℃-uteは舞美がリーダーのおかげで仲良し姉妹って感じ
ベリは女子中学生の仲良しグループって感じで内部で陰口とか
すごいんじゃないかと疑ってしまう
517 名無しさん@恐縮です 2007/05/19(土) 23:14:25 ID:0+zmcOMGO
>>516 姉妹に近い雰囲気があるのは同意
昔あややとかミキティがやってた美少女日記みたいに℃-ute7人でミニドラマやらないかな
母親が他界、父親が海外出張で残された7人姉妹が明るく毎日を暮らすベタな青春物語とか
518 名無しさん@恐縮です 2007/05/19(土) 23:16:45 ID:YJRklwbw0
>
>>517 >母親が他界、父親が海外出張で残された7人姉妹が明るく毎日を暮らすベタな青春物語
やべぇ、すっごい見てみたいwww
舞美が7人分の洗濯物干してる姿とかマイマイが家出する話とか想像してしまったw
31 :
ねぇ、名乗って:2007/05/26(土) 01:26:14 ID:Xnp/UjSj0
520 名無しさん@恐縮です 2007/05/19(土) 23:33:22 ID:YJRklwbw0
>>517 やべぇ、妄想がとまらないw
nkskが学校で勘違いからいじめにあって落ち込むのをみんなで慰めたり、
愛理が男の子に告白出来ずにいるのを姉妹で背中押したりするんだろ?
マジ見てみたい
521 名無しさん@恐縮です sage 2007/05/19(土) 23:46:45 ID:7o70uFDZ0
アニメ「てんとう虫の歌」の℃-ute版か
522 名無しさん@恐縮です 2007/05/19(土) 23:50:03 ID:0+zmcOMGO
>>520 いや、そこまでは考えてなかったw
でも7人ともキャラがバラバラだから脚本は確かに書きやすそうだな
どうせなら
興味半分で電話を立ち聞きしたことから舞美が年上の男と不倫してると誤解した妹たちが心配して探偵気取りで舞美を尾行・相手の男を叱責するも、お相手だと思っていた男は実は舞美のバイト先の店長だった。
みたいなベタベタな話がいいな
523 名無しさん@恐縮です 2007/05/19(土) 23:56:57 ID:0+zmcOMGO
>>522の続き
「迷惑かけちゃってごめんなさい、お姉ちゃん…」
落ち込んでひたすら謝る妹たち
「本当に迷惑だよ…もう恥ずかしくてバイト行けないよ!」
怒った様子の舞美
さらに落ち込む妹たち
「でも…みんな心配してくれてありがとね。うれしかったよ。」と優しく声をかける舞美
パッと笑顔になる妹たち
「よ〜し、それじゃあ早く帰ってご飯にしよっか!」
32 :
ねぇ、名乗って:2007/05/26(土) 01:30:29 ID:Xnp/UjSj0
525 名無しさん@恐縮です 2007/05/20(日) 00:00:27 ID:YJRklwbw0
>>522-523 オマイ天才・・
>>521 そういえば「てんとう虫の歌」も7人兄弟だっけ
「ひとつ屋根の下」もそうだが、ああいう系統の話って最近見かけないな
527 名無しさん@恐縮です 2007/05/20(日) 00:14:52 ID:/t3lPlt6O
>>521 そのアニメのことは知らなかったんだがさっきWikiで調べたら俺のイメージにぴったりだった
ただ貧乏暮らしの要素はなくても良いかな
海外出張中の父親から生活費は送られてきているということで
533 名無しさん@恐縮です 2007/05/20(日) 00:29:21 ID:u4v3X0sI0
>>517 最高だな、そのドラマ
キューティー探偵事務所よりも面白そうだ
イベント内でやってくれないかなぁ
534 名無しさん@恐縮です sage 2007/05/20(日) 00:31:58 ID:7SH/uNtO0
その昼ドラ 7姉妹物語 見たいお!
>>517 535 名無しさん@恐縮です 2007/05/20(日) 00:35:13 ID:u4v3X0sI0
美少女日記のドラマは正直微妙だったけど、
>>517のドラマはマジに面白そう
33 :
ねぇ、名乗って:2007/05/26(土) 08:04:43 ID:wvEMP4qBO
なるほど
なかなか面白そうだな
もっと人に来て盛り上げて欲しいし、他の板にも貼るかな
34 :
ねぇ、名乗って:2007/05/26(土) 10:39:43 ID:B0yjbA9b0
7姉妹物語メチャメチャいい!!
続編期待してます!
12chの深夜辺りでで放送して欲しいっすね
35 :
ねぇ、名乗って:2007/05/26(土) 16:23:53 ID:wvEMP4qBO
ところで元のスレってまだあるの?
出来ればそちらものぞいてみたいんだが
36 :
ねぇ、名乗って:2007/05/26(土) 17:58:17 ID:wvEMP4qBO
確かめてみたが消えてるみたいだな…
37 :
蕎麦:2007/05/26(土) 18:11:25 ID:b0R/p8ImO
(よく考えられていて、おもしろいなあ)
(感想だけです、すません)
38 :
ねぇ、名乗って:2007/05/26(土) 18:13:09 ID:k5SRrcgt0
39 :
ねぇ、名乗って:2007/05/26(土) 18:33:26 ID:1VymwvWj0
とりあえず見たい
マイマイの運動会の父兄参加競技にお父さん達男性に交じって参加し
空気を読まずにブッちぎり独走しゴールする舞美
40 :
ねえ、名乗って:2007/05/26(土) 23:31:06 ID:n5/ralFT0
41 :
ねぇ、名乗って:2007/05/26(土) 23:40:52 ID:wvEMP4qBO
しかし、栞菜がイケメン好きってなんか妙にしっくり来るなw
42 :
ねぇ、名乗って:2007/05/27(日) 00:22:04 ID:gV3Q6vIE0
>>1 俺のイメージは、実際の年齢順どおり上から並べて
長女=えりか(高二)
次女=舞美(高一)
だなあ
43 :
ねぇ、名乗って:2007/05/27(日) 02:09:03 ID:iYqtGqs4O
長女は舞美の方が展開しやすくて面白いと思うよ
でも、そうなると梅さんのポジションが確かに微妙なんだよな
難しいところだね
44 :
ねえ、名乗って:2007/05/27(日) 14:01:08 ID:tigrlwBp0
梅さんは舞美を支える姉思いの次女ってイメージ。
本当は舞美の愛妻であって欲しいけどw
45 :
ねぇ、名乗って:2007/05/27(日) 14:24:10 ID:xZj2x70QO
ウメサンを男にしないか!
46 :
ねぇ、名乗って:2007/05/27(日) 15:25:48 ID:iYqtGqs4O
マイマイの「EVERY DAY 片思い」と愛理の「通学ベクトル」のシチュエーションを小説化して欲しいです。
47 :
ねぇ、名乗って:2007/05/28(月) 06:52:44 ID:fFNRJMAyO
通学ベクトルやるならFIRST KISSが先だな
48 :
ねぇ、名乗って:2007/05/28(月) 11:24:27 ID:fFNRJMAyO
もっと言えば「行くZYX! FLY HIGH」を舞美か梅さん主人公でやって欲しい。
49 :
ねぇ、名乗って:2007/05/28(月) 12:42:24 ID:uqbHZBLJO
栞菜だけ血の繋がりがない姉妹ってのはどうですかね?
50 :
ねぇ、名乗って:2007/05/28(月) 18:24:16 ID:fFNRJMAyO
まあ、いくらなんでも姉妹大杉だしな
51 :
ねぇ、名乗って:2007/05/28(月) 18:43:18 ID:yIGD90YO0
もう1年半も一緒にやってきて栞菜だけ別は可哀想
一つ屋根の下に暮らして姉妹だと思わせておいて全員が血が繋がってないって手もあるべ
全員出自が不幸・だから結束力強い・栞菜だけ良家の出だったみたいな
あくまで妄想の一つね
52 :
ねぇ、名乗って:2007/05/29(火) 06:06:08 ID:/VaA9bINO
家出していた不良のメグねぇが帰ってくる話し希望
53 :
ねぇ、名乗って:2007/05/29(火) 08:08:58 ID:6aEprIG5O
54 :
ねぇ、名乗って:2007/05/29(火) 17:26:40 ID:6aEprIG5O
℃-ute NEWシングル「めーぐる恋の季節」
55 :
ねぇ、名乗って:2007/05/30(水) 15:23:03 ID:d5mAzYLZO
家出していたメグの死亡通知が届く
死の謎に迫る姉妹達
56 :
ねぇ、名乗って:2007/05/30(水) 20:11:18 ID:GqxctWkJO
57 :
ねぇ、名乗って:2007/05/30(水) 20:19:21 ID:zZkdkcHf0
>>56 それもう別の話になるべ
にしてもネタまとめるの思ったよりシンドい
明日中にはなんとか一篇書きあげて貼りたいす
58 :
ねぇ、名乗って:2007/05/30(水) 20:52:17 ID:RFRua2FH0
頑張れ 超頑張れ
描き上げてファンレターと共に送れるくらいの話にしてくれ
59 :
ねぇ、名乗って:2007/05/30(水) 21:15:14 ID:9VzWZpZVO
楽しみにしてるから頑張ってくり!(・∀・)
60 :
ねぇ、名乗って:2007/05/31(木) 10:27:51 ID:zEYb2Q2CO
今後の展開に超期待します。
61 :
ねぇ、名乗って:2007/05/31(木) 20:59:48 ID:g7ewAEW9O
みんなさえ良ければリレー形式も良いかなと思うんだがどうだろ?
62 :
ねぇ、名乗って:2007/05/31(木) 21:47:10 ID:uWCITAL40
>>61 有り
平行してネタが進んでいくのも面白いと思う
63 :
松輝夫:2007/06/01(金) 02:05:06 ID:KfX7yyuiO
他のスレで小説書いてるので参考まで、くらいのつもりで読み始めたんですけど、すごく面白いです。とても自分にはこんなに上手く書けないですよ。
続き期待してますので、これからも頑張って下さいね。
ゴクゴクゴク…。
土曜日の夜、バスタオルを肩から下げたお風呂上がりの愛理は、
キッチンで冷蔵庫から小さなペットボトルのジュースを取り出して飲んでいた。
大きく喉が鳴ったが、すごく喉が渇いていたので気にしない事にした。
お風呂でいっぱい歌った時はいつもこうだ。
そう、五女の愛理は歌が好き。
思えば昔から音楽が好きだった。一番古い記憶は幼稚園の頃、お婆ちゃんのお葬式で
お坊さんの叩く木魚のリズムにノッて自然と頭を振ってて後でエラク怒られた。
それから、みんなでアイドルステージごっこをよくやった。
姉妹が七人もいるのでいつもマイクの取り合いになったが、特に愛理がマイクを握ると
放さなかった。大人しい愛理だったが、この時だけは誰にも負けなかった。
やがて成長し、アイドルごっこをやるのは愛理と妹の千聖とマイだけになった。
それでも愛理は歌うのが楽しかった。
今ではお風呂がそんな愛理のショーの舞台になり、
歌っているうち自然と長いお風呂になりみんなに怒られてしまう。
でも歌う事は止められない。愛理は歌が好きだから。
そんな愛理なのに今日は何だかスッキリしない。
今日もいっぱい歌ったし、せっかくのお風呂上りなのに。
「ふー…」
軽く溜め息をつき、残ったペットボトルを冷蔵庫にしまうと、
扉の表にマグネット式で貼り付けられているホワイトボードが目に入った。
いつもは姉妹間の伝言や、千聖やマイの悪戯描きで埋められているホワイトボードに
今日は『卵は〇日まで』という冷蔵庫の中の卵の賞味期限が書かれていた。
「もう日付け過ぎてんじゃん」
几帳面な愛理は、冷蔵庫にまだ残っていた卵を捨て、
水性マーカーで書かれていた用済みメッセージをキレイに消していった。
…書いては消されるホワイトボードの伝言。
真っ白になったホワイトボードを見るうち、愛理はかつて
ここに書かれていたある人の言葉を思い出していた。
その人の言葉には、様々な用事や言い伝えに交じって、
『車には気をつけてね』『食べすぎちゃダメよ』
『体に悪いので夜更かしはしちゃダメですよ』
など、姉妹を思いやる優しい言葉がいつも並んでいた。
ある時、愛理ら姉妹がアイドルステージを披露した日の夜には
『今日は素敵なステージをありがとう。
お礼に、冷蔵庫にケーキが入っています』
と書かれていて、それを見つけた姉妹みんなで大喜びしたのを思い出した。
もう二度と書き込まれる事がない優しい言葉の数々。
そう考えると、消さずに全部とっておけばよかったな、と愛理は思った。
でもそんな訳にはいかないよな。これただのホワイトボードだもんね。
何で今日に限ってこんな事を思い出すんだろう、
きっとお風呂で最後に歌った【歌】がいけなかったんだな。
『 最後の笑顔だと 知っていたら
もっと頭ん中 焼きつけたのに…
あなた だけの LOVE SONG
もう一度 会いたい … 』
…なんて。
あんまり歌の世界に入り込むのも考えものだな。
好きな歌だけど当分歌うのは止めよう。
「あー、愛理、上がったの?」
ジュースでも取りに来たのだろうか、千聖がキッチンにやってきていた。
「うん、まだ暑いんだよぉ」
そう答えると愛理は、肩に掛けていたバスタオルで汗を拭くふりをして
気付かれないようにそっと涙をぬぐった。
「…おはよー」
翌朝、
中々寝つけなかった愛理はめずらしく遅く起きてキッチンにやってきた。
「誰もいないの〜?」
まだみんな寝てるのかな?みんな相変わらずお寝坊だな。
そんな事を考えながら牛乳でも飲もうと冷蔵庫の取っ手に手をかけ、
扉のホワイトボードに新しくメッセージが書かれているのに気付いた。
『愛理、千聖、マイへ、
ちょっとお買い物に行ってきます。
よく寝てたので置いていくねゴメンね。夕方までには帰るから、
お昼ごはんチンして食べておいてね。
えりか、舞美、早貴、かんな 』
何だ!?
みんな朝は弱いはずなのに、こんな時間からもうお買い物!?夕方まで!?
…っていう事は、きっとバーゲンだ!置いていかれた!
「チェッ、起こしてくれればいいじゃないかー!!」
愛理はいっぺんに目が覚めた。
「ふぁあ、ぉはよう愛理」
「あれ、愛理どうしたの!?」
眠そうな目をこすり、千聖とマイが起きてきた。
「ちょっと、千聖マイこれ見…」
そう言いかけた愛理の口が止まった。
今日はこの三人だけ、
「…ねえ、今日久しぶりにアレやろうよ!」
「アレって?」
「アレだよ…」
「アレって、アレぇ?」
「エヘへへへ…」
みんな理解したようだ。
チョキチョキチョキチョキ…、
三人で色紙を細かく切り刻み、色とりどりの紙吹雪を作り、物置からまだ季節には早い
扇風機を引っ張り出してくる。
そして、
千聖がおしゃれな姉えりかの部屋から、原色や豹柄の派手目な洋服を大量に運んできて、
マイが写真好きな舞美の部屋から、大事にしているコンパクトデジカメを持ち出してくる。
「ねえバレたら怒られちゃうよ愛理ィ」
「いいじゃん、今日はちょっと派手にやろうよ」
「そうだね、人を置いていく方が悪いんだよ」
残された悪戯っ子たちの瞳が輝いた。
「それーーーっ!!」
千聖が持ってきた服をダイニングからそのまま繋がった広いリビング一面にぶちまける。
すると、とたんに部屋がカラフルになり雰囲気がガラリと変わる。
愛理が大きなダイニングテーブルにお気に入りのカラフルなクロスを敷くと、
そこは豪華なステージになった。
「それじゃー、頼んだよDJマイマイ!」
「チェキラ!」
リビングのカラオケ機能付きのミニコンポにマイクを繋ぐと、
みんなのお気に入りのCDをありったけ集め、密閉型ヘッドフォンを首にかけ
パパのサングラスでDJ気分のマイが、何やらポーズをとりコンポのスイッチを操作する。
(パパが集めていたサングラスは、今ではそのままマイのコレクションになった)
音楽が始まる。
とっておきの洋服を衣装として選んだ愛理がコンポから伸びたマイクを片手に
ステージに見立てたテーブルに上がる。頭の中はもう拍手と歓声がいっぱいだ。
「♪電話もまだ来ない、
メールもまだ来ない YEAH
走り出せない恋のブギートレェーーン!」
「イエ〜〜〜〜イ!!」
お気に入りのナンバーを選んだ愛理の澄んだ歌声が綺麗に伸びて響き、
千聖とマイが歓声を上げる。
そう、今日のこの部屋は小さい頃みんなでよくやったアイドルステージだ。
愛理が曲に乗って軽快にステップを踏むが、四方がガッシリした脚で支えられた
ダイニングテーブルは、大きくなったとはいえ愛理一人が乗ったくらいではビクともしない。
千聖が掴んで投げた紙吹雪が上を向けた扇風機の風を受けてステージを舞い、
マイが片手にカメラ、片手で拳を振り上げ盛んに飛び跳ねフラッシュを光らせて盛り上げる。
カメラはフラッシュ機能が目的なのだ。画像は後で消去すればいい。
三人が考えた演出は小さい頃よりずっとグレードアップされている。
「♪ほったらかしだよ
泣いちゃう CRY…」
昨夜はちょっと切なくなった。今朝はちょっとムカついた。
でも、
「♪…みっともないって
みんな言うけれど
だって 仕方ないもん
だって 好きなんだもん」
そんな愛理を癒すのはやっぱり大好きな歌だ。
大人しい子に思われがち、
本当は明るい性格なんだけど、大勢の中では
どこにいるかわからなくなってしまうほど控え目。
「♪…連絡来るまで
じっと待つ身のブギートレイン
じっと待つ身のブギートレイン」
そんな愛理でも、歌っている時は別、
そう、その歌と笑顔で誰よりもキラキラ輝き目立つ女の子に!
「♪…明日は CHU CHU メルヘン街道、
走りたいわ AH デートがしたいの
BOOGIE WOOGIE CHU CHU
まだ泣かないぞう 通過の多い駅 ブギートレイン!」
そして今日はアッパーなナンバーばかりで思い切り弾けよう、
みんなで最高のコンサートにしよう!!
「♪ロマンティック
恋の花咲く 浮かれモード
史上最大の 恋が始まりそぉ〜」
千聖が得意のモノマネを活かして藤本美貴のナンバーを披露し、
「♪Yeah! めっちゃホリディ
ウキウキな夏希望、
Yeah! ズバッと サマータイム
ノリノリで恋したい!」
マイが幼さの残る声でキュートに歌い上げる。
愛理も負けじと歌い続け、今日は三人で交代に、
声が枯れるまで数時間の熱唱が続いた。
「最後は、ロックだーーー!!」
愛理がそう叫ぶと三人で声を揃えてシャウトする。
『Cutie Girls Rock 'n' Roll Yeah! Cutie Girls Rock 'n' Roll Yeah!…』
パパのCDラックにあり、偶然聴いていっぺんで気に入った英語のナンバーだ。
サビの『Cutie Girls 』が自分達を表してるようで気持ちいい。
もうマイクもステージも関係無い。ただ絶叫して部屋中走り廻るだけだ。
『 Cutie Girls Rock 'n' Roll … 』
『イエ〜〜〜〜〜〜イ!!』
ジャ―――ン!!
決まった!最高に気持ちいい瞬間だ!!
と、その時ふと壁時計が目に入った。
「…ヤバい、もうこんな時間だ!」
「みんな帰ってきちゃうよ」
「片付けないと怒られちゃう」
『…撤収〜〜〜!!』
愛理たちは一斉に叫んで片付けに入った。
洋服をキレイにたたみ、掃除機をかけ、カメラをこっそり戻しておく。
「いい?絶対バレないように片付けるんだからね」
「わぁ、もうこんな時間じゃん、急がなきゃ!」
「ギャ〜〜〜、千聖花瓶を倒すな〜〜〜!」
何か忘れているような気がするなあ…。
でももう細かい事を考えてる時間なんて無い!
追いつめられたドタバタの中、でも愛理の顔はスッキリしていた。
数日後、
「ただいまー、あー喉渇いたー」
日曜のステージの事などすっかり忘れ学校から帰った愛理は、
ジュースでも飲もうと冷蔵庫に向かい、ホワイトボードの真ん中にマグネットで
ある一枚の写真が留められているのに気付いた。
「あ〜〜〜〜〜〜っ!!」
それは日曜日にリビングのライブで熱唱する愛理の写真だった。
慌てていて使ったデジカメの画像消去し忘れてたんだ!!
写真には、散らかった部屋と錯乱したえりかの洋服もしっかり写っていた。
やばい!ばれてる!怒られる…。
「あ〜〜〜、どうしよどうしよどうしよ〜〜〜!!」
動転していた愛理は、ホワイトボードの写真の上に
姉、舞美のメッセージが書き込まれていたのに気づいた。
『愛理いい笑顔じゃん
今度のライブは私達にも観せなさい
約束だよ!』
それを読んだ愛理がよく写真を見直すと、
そこにはこれまで見た事が無い自信にあふれた笑顔の自分が写っていた。
「…あは〜〜、あたしこーんな顔して歌ってたんだ〜〜…」
ちょっと恥ずかしくなった。でも、その顔は嫌いじゃなかった。
(いつもこんな笑顔でいられるなら、私やっぱり歌手になりたいな)
あらためて芽生えた決意を、愛理は姉への感謝と供に
決して消えない心のホワイトボードに書き込んでみた。
ホワイトボード、
書いては消される無数のメッセージ。
でも構わない。
私を想ってくれてる人はまだいっぱいいる。
私が好きな人もまだいっぱいいる。
これからもいっぱいいっぱいいろんな事を書き込んでやろう。
そう考えると愛理は姉達への想いをこめて、
ホワイトボードの下にマーカーで一番好きな言葉を書き添えた。
キュッキュッ…
『 ありがとう 』
(天国のママにも届くといいな)
愛理はとびきりの笑顔になった。
76 :
ねぇ、名乗って:2007/06/01(金) 13:47:36 ID:M20WiC2gO
エクストリームリー乙!!
天国のママって辺りが泣けますた(;´д⊂)
次回作も楽しみにしてまつ(・∀・)
77 :
ねぇ、名乗って:2007/06/01(金) 20:52:34 ID:A7m+xmHH0
おお!素晴らしい感動したマジで!
愛理の歌への思いと、お互いを思う姉妹愛が素晴らしい。
ありがとう。
78 :
ねぇ、名乗って:2007/06/02(土) 13:26:44 ID:LekPwnCvO
楽しく読ませていただきました
次回作も楽しみにしているので頑張ってください!
ほんとに℃-uteが姉妹だったらこんな感じなんだろうなぁ。
79 :
ねぇ、名乗って:2007/06/02(土) 19:02:41 ID:LeYwmqUk0
よかったちょっとはウケてる
次は誰で書こうか思案中です
ちなみに
>>1の設定書いた芸スポ愛理スレ574氏と
今ネタ書いてる人は別人ス。
このスレの存在知ってるかなあ?降臨してくんないかな
80 :
松輝夫:2007/06/02(土) 23:10:07 ID:jenL4IOLO
>>79 一気に読ませていただきました。とても楽しかったです。なんか、文中の光景が容易に想像できますね。とても自分にはこんな風には書けないなぁ。
次回作も期待して楽しみに待ってます。頑張って下さい。
81 :
ねぇ、名乗って:2007/06/03(日) 02:13:33 ID:9Rk0TXYBO
すばらしい!
流れの中でさりげなく細かくネタを盛り込んでるところが泣かせる
℃-uteメンへの愛情を感じます
上の方にあるマイマイが主人公のネタは書きかけなのかな?
是非続きを読んでみたいんだが…
82 :
ねぇ、名乗って:2007/06/03(日) 10:32:54 ID:9Rk0TXYBO
次の主人公は栞菜か千聖がいいな〜
表現が難しいかもと思うけど
83 :
ねぇ、名乗って:2007/06/03(日) 11:34:16 ID:K5xg3VTJ0
今さらだが・・・
長女:えりか
次女:舞美
三女:愛(他界)
四女:早貴
五女:愛理
六女:千聖
七女:舞
養女:栞菜
だろうがw
84 :
ねぇ、名乗って:2007/06/03(日) 11:48:03 ID:snSyGsn50
>>82 次は栞菜か舞美で考え中
早く栞菜を本当の子にしてあげたい
>>83 >三女:愛(他界)
死んだらもう出せないじゃんw
設定上姉妹の中にいなくても出す方法はたぶんあるよ
85 :
ねぇ、名乗って:2007/06/03(日) 11:52:15 ID:K5xg3VTJ0
>>84 なら駆け落ちとかにするか?
>>1は℃-uteにめぐが居た事実を忘れてるのかと思って書いただけだ
一般人になってしまった彼女をネタにするのは許さんけどな
86 :
ねぇ、名乗って:2007/06/03(日) 12:06:13 ID:snSyGsn50
>>85 熱い人だ
一緒に暮らしていたけど、実は愛の方が本当の姉妹では無かった、とか
よく言われるじゃん「実はめぐはベリ向き、舞波は℃-uteだったら辞める事はなかったかも」って
だから再会シーンで一回だけ出す、とか。
直接めぐの名前は出さなくても
>>25みたいに「連想させる」って手もあるよ
87 :
ねぇ、名乗って:2007/06/03(日) 13:05:21 ID:9Rk0TXYBO
漏れも
>>1の設定の方がよいと思う
七姉妹で舞美が長女、マイマイが末っ子の方が展開も面白くなりそうだし
何らかの形でめぐの存在はあっても良いんじゃないかとも思うけど、とりあえずは7人全員の話が成立してからかな
88 :
ねぇ、名乗って:2007/06/05(火) 21:36:42 ID:NMOwkkWKO
早く続きが読みたいよぉ…
89 :
ねぇ、名乗って:2007/06/05(火) 21:39:25 ID:enjfbBMb0
www.
90 :
ねぇ、名乗って:2007/06/06(水) 00:36:20 ID:ycqQkmk50
練ってるので深く静かに待ってて。けっこうシンドいの。
にしても
【ネタ】もしも℃-uteの七人が〇〇だったら!?【小説】
みたいなスレタイの方がよかったかな!?
そしたらネタ雑談小説何でもできるし人が増えれば書き手も増えそう
万が一にも次スレいけるようならスレタイ工夫するので、それまで地道にネタで埋めていきます
91 :
ねぇ、名乗って:2007/06/06(水) 10:11:13 ID:gkA7+IJUO
>>90 1人で書かせてしまって本当ごめん
漏れも今の仕事が終わったら少しずつ書いていくつもりなんでもう少し頑張ってくれ〜。
92 :
ねぇ、名乗って:2007/06/06(水) 21:49:24 ID:GmhinP230
なんか気を使いながらの創作いいですね。
出来たらお互いにコテハンを作った方が他の人も書き込みやすいと思いますよ。
本気で書き込むつもりなら一本明確に終点を決めた方がいいですね、最終回ではないですが例えば誰かの目標が達せられるとかです。
マイマイの運動会とか愛理のオーデションとか、一つの結節を作るべきです。
てんとう虫の話は是非いいと思います。
練れば練る程に。
経験者として言えば、ゆっくりやるのがコツです、たとえ明日キュートが解散しても物語を愛せる心が必要です、アイドルとは群像、つまり心が作り出します、文章に愛があればいつまでも書くことが出来ます、本当です。
自分を信じて書いてみてください。
なんちゃって
93 :
松輝夫:2007/06/06(水) 23:13:56 ID:BEZoCLJzO
愛理の話続きがあるなら読みたいし、他の娘の話もぜひ読んでみたいですね。
自分が今書いてる文章にもすごく参考になるし、いい刺激を受けていて、おかげさまでだいぶはかどってます。
文章を書くのってとても大変なことですが、頑張ってください。
>>92 自分が知ってる人じゃないですか?違ったらすみません。
94 :
ねぇ、名乗って:2007/06/08(金) 01:35:27 ID:RJFDYYs10
明日には貼れそう、くだらない話だけど
>>91 待ってます
>>92 >愛理のオーデションとか、一つの結節を作るべきです。
せっかくさりげなく伏線張ったのにバラさないでw
95 :
ねぇ、名乗って:2007/06/08(金) 05:27:29 ID:J+FG22W10
>>94 ごめんなさい。
楽しみに待っていますよ。
ザワザワザワ…
多くの人で賑わう夕方の駅前に、ナッキーはポツンと一人で立っている女性を見つけた。
モデルのような長身に抜群のスタイル、ハーフにも見える大人びたルックスは
とても16歳には見えない、多くの人が行き交う駅前でもかなり目立つ存在だ。
遠くから見ていると、その女性の前を通りすぎた男の人達が必ずチラと
振り返って見ていくのがわかって可笑しかった。
(黙って立っていると抜群の美人なのにな)などと考えていると、
その女性がこちらに気付いて手を振った。
「ナッキー、こっちこっち!」
「お待たせ、えりかちゃん!」
大きく手を振る姉えりかに走り寄って答えるナッキー。
今日は学校帰りのナッキーとえりかが駅前で待ち合わせ。これから一緒に
ショッピングセンターに寄って夕ごはんのお買い物をするのだ。
両親がいない℃-ute家では、御飯の支度はえりか・舞美の姉二人の役目。
『えりかと舞美が交代で御飯を作り、その日用事が無い妹達が順番で手伝う』のが℃-ute家のルール。
今日は料理上手なえりかが御飯を作り、ナッキーがお手伝いをする日だ。
「美味しそ!ねえナッキーこれも買おうよ」
「えー、そんな高いものいらないよ」
ショッピングセンターで、料理上手だがついつい何でも買いすぎちゃう無駄遣いえりかと、
一家の会計係として計算して財布の紐を締めるナッキーは実は最適な組み合わせ。
あれこれ悩んで献立を決めるのは大変だけど、女の子には楽しい時間だ。
「…じゃあ、今日は久しぶりにオムレツでも作ろうか」
「わー、やったーー!嬉しいケロ!」
えりかが作る特製オムレツは自家製ソースの味付けが絶妙で美味しい、ナッキーの大好物だ。
オムレツに限らず、料理上手なえりかの料理は何でも美味しい。
そんなえりかとは対照的に、舞美姉さんの料理は『小さじ〇杯』とかいう微妙なサジ加減など
気にしない大雑把…、もとい大らかな性格で「大体こんな感じ」「調味料ザー!!」「ま、いっか」の
いつも適当目分量、味付けは極端に甘いか辛いかのどちらかに。
それで妹達の人気はいつも料理上手なえりかが御飯を作る日に集中してしまうのだ。
(ゴメンね舞美ちゃん)と心の中で思いながら、ナッキーは今日の晩御飯が楽しみになった。
「ねええりかちゃん、抽選券もらっちゃったから福引き一回できるよ」
買い物を終えると福引の抽選券がもらえた。
このショッピングセンターでは今福引セール中のようだ。出口の横に福引の抽選会場があった。
「どうせ当たらないよ」というえりかを余所に「せっかく引けるんだからやってみようよ」と
福引きに挑戦するナッキー。抽選券を渡し、勇んでガラガラを回してみる。
カランカランカランカラン!!
「おめでとうございまーす!!」
はっぴを着た店員さんが鐘を鳴らしてくれた。何か景品が当たったようだ。
「やったあ、えりかちゃん!!」
「すご〜〜いナッキー!!」
喜ぶえりかとナッキー。
(御飯は大好物のオムレツに福引きでは当たり!今日は何かツイてる!!)
そう浮かれるナッキーは、その福引きがナッキー達姉妹に
かつてない悲(喜?)劇をもたらすことにまだ気付いていなかった…。
「ただいまー」
「お帰りなさーい」「…ねえそれ何!?」
買い物を終えたえりかとナッキーが家へ帰ると、出迎えてくれたのは
もう帰ってきていた小学生の千聖とマイだけだった。
ナッキーが抱えていたそれを目ざとく見つけてマイが訊いた。
「これ福引きで当てたんだよ、ほら家庭用のたこ焼き器!!」
ナッキーが福引きで当てたそれを見せた。
家庭で作れる電気式のたこ焼きホットプレート器だ
「うわー、やったじゃん!!」「すごーいナッキー!!」
盛り上がる千聖とマイにナッキーはちょっと誇らしげだ。
が、そこからは思わぬ展開になってきた。千聖が言った。
「ねえ今からたこ焼き作ってみようよ」
「でも今からたこ焼きなんか食べたら夕ごはん食べられなくなっちゃうよ、
今日はせっかくの特製オムレツなのに」
えりかのオムレツが楽しみなナッキーは心配顔になったが、えりかが答える。
「そんなに量作らなきゃいいじゃん、それにみんなで食べればちょっとずつだよ」
「でもえりかちゃんたこ焼き作れるの?」
「大丈夫よ、ちゃんとたこも買ってきたし、あとは家にあるもので作れるから」
多分自分もたこ焼きが作ってみたかったのだろう、
えりかは帰りにわざわざもどってたこを買ってきたのだ。
「じゃあ、みんなで、たこ焼き作ろーーー!!」
「おーーー!!」
ああ何か盛り上がっちゃった。
でもいいか、たこ焼きも好きだし、作るのも初めてで楽しそうだ。
自分も楽しもう、とナッキーは思った。
えりかが溶いた卵と小麦粉を昆布のだし汁でとかして、
サラダ油を塗って温めておいたプレートの穴に流し込む。
ジュワワーー!!
熱した鉄板の上に音が響く。
「うわぁ、いい音!」「アチチ、はねたぁ!」「あ、溢れちゃうよ!」
「大丈夫 大丈夫!」
盛り上がる四人、やっぱりみんなで何かをするのは楽しい!
次に一口大に切っておいたたこと天カスを均等にバラまく。
粉がだんだん固まっていく。
「すごーい、ちゃんとクルンッてひっくり返す針のやつも付いてるよ」
「ねえ誰がひっくり返す?」
「千聖はダメー、不器用なんだもん」
千聖が問うと即座にえりかが否定した。千聖は姉妹一不器用なのだ。
「そうだナッキーやってみなよ」
「えーあたし出来るかなー!?」
自信無さげなナッキーだったが、えりかに言われピックを粉に引っ掛けると
器用な手付きでくるっとひっくり返す。
クルンッ!
するとほんのろ焼き色が付いた奇麗な半円が鉄板の上に顔を出す。
「オ〜〜〜〜!!」
「ナッキー上手い!!」
「プロだねナッキー!!」
「エヘへへへ、そうかなあ…」
照れながらもヒョイヒョイたこ焼きを裏返していくナッキー。
「ねえ千聖もやっぱりやってみたい」
「いいよ、やってみな」
「えへへ、いくよ…」
グチャ!
あまりにも簡単そうにナッキーがひっくり返すので自分も出来るのではないかと
思い挑戦した千聖だが、たこ焼きはひっくり返らずに形を崩しただけだった。
「あはははは」「千聖へたくそ〜〜」
えりかとマイに思い切りバカにされる千聖。
「いい千聖こうやるんだよ、見てな」
ピックを手に見本を見せようとするえりか。
だが、
…グジュ!
たこ焼きは千聖と同じく無残に崩れただけだった。
「…あ、あれ!?ちょっと待って、こんなはず無いんだから」
慌てたえりかが残りのたこ焼きにもピックを引っ掛け回すが、やはり成功しない。
結局残りのたこ焼きも全部崩れてしまった。
「ハフハフ、…あちち!」「形はちょっと悪いけど美味しいね」
「うん美味しい、さすがえりかちゃん!」「……うーん」
出来たたこ焼きを満足気に試食する四人。
だがえりかは何故か無口だ。自分のたこ焼き作りに納得いかないらしい。
「…ねえもう一回作ってみようよ、今度はうまく引っくり返すから」
えりかがそう提案する。
「だって舞美と愛理と栞菜の分も無いと可哀相じゃん」
「それもそうだね、あたし達だけ食べたんじゃ悪いもんね」
そう言って再びたこ焼き作りをするえりか達。
だが、ナッキーは悪い予感がしはじめた。
「いい?今度こそあたしがちゃんとひっくり返すんだから」
そう言ってえりかが再び焼けたたこ焼きにピックを入れるが、
今度も形が崩れるだけでうまく返らない。
結局全部失敗してしまった。
「………」
「何度かやってるうちに上手くなるよ」
「そうだよ、また今度やってみようよ」
えりかを慰める妹達だが、えりかはめげてはいなかった。
「もう一回作る!今度こそ絶対上手くいくんだから!!」
「え〜〜〜〜〜っ!?」
「大丈夫だって今度はうまくいくもん!!」
結果、形の崩れたたこ焼きの山ができただけだった。
だが、これで気が収まるえりかでは無い事をナッキーは知っている。
「…ねえもう一回作るう!!」
すっかりだだっ子になったえりかを諭すようにナッキーが言う。
「だってもうたこ無いよお」
「いいもん舞美に買ってきてもらうもん」
そう言って舞美のケータイへ電話をするえりか。
「あ、もしもし舞美?帰りにたこ買ってきて!
…え!?うん、たこ焼きするから、たこ焼き。じゃあね」
「でもこれ以上作ったら御飯食べられなくなっちゃうよー」
「大丈夫、大阪の人はたこ焼きを御飯にしてお好み焼きを食べるんだから」
「何かそれ微妙に違うし意味わかんないし…」
もうつっこむのも疲れてきた。が、最後にナッキーは聞いた。
「…でもオムレツはーー!?」
「もうオムレツする分の卵使っちゃったから無理!あとはたこ焼きに入れる分しか
残ってないもん」
「え〜〜〜!?」
…あああとうとう思ってた通りになってしまった。
ピースサインが大好きで、争い事が嫌いの平和主義、
なのに実は姉妹で一、二を争う負けず嫌い!
見た目は二十歳のモデル並、誰より綺麗で大人っぽい、
しかし中身は誰よりも子供!
昔からゲームをしたら勝つまでやめない、マイが相手でもムキになる。
それがえりかちゃんだから。
…ナッキーはいく所までいく覚悟をした。
「ただいまー、ごめんね遅くなってー」
「お腹空いちゃったー、今日のごはん何、な・に・・・!?」
やがて帰宅した栞菜と愛理をキッチンで出迎えたのは、
テーブルの中央、大皿いっぱいに高く盛られたたこ焼きの山だった。
「何このたこ焼きーーー!?」
「あ、これ今日の晩御飯だから。美味しいからいっぱい食べて!」
驚く愛理と栞菜に、ようやく形が綺麗に作れるようになったえりかがご機嫌で答えた。
「ま、いいや、美味しそうだし…」「いただきまーす…」
不気味に感じながらもたこ焼きを口に運ぶ栞菜と愛理。
でも舞美ちゃんがまだ帰ってこないのに何故まだたこ焼きが作れたんだろうか?
その答えを知っているナッキー達は手を出さないで栞菜と愛理の反応を見つめる。
「…すっぱ!!まっずーーーい!!何これ梅干しィ!?」
「いやーん温かいさくらんぼ!気持ち悪いーーー!!」
予想通りの反応だ、可哀相に。だってとりあえず赤くて小さい食べ物入れただけだもんな…。
だがえりかは平然と答える。
「途中でたこ足りなくなっちゃってさ。でもいいじゃん、ちゃんと食べられるモノ入れて
あるんだから!ちゃんとみんなの好物も入れたんだよー、はい栞菜コレ食べて!!」
そういって嫌がる栞菜の口にたこ焼きの一つを入れてあげるえりか。
…ガリッ!!
「ギャーー何か噛んだッ!!甘!!まず〜!!何これーーー!?」
「ごめんね栞菜、メロンは無かったから代わりにメロン味のキャンディーで」
「キャ、キャンディーーー!?」
栞菜ン、ゴメンね教えてあげられなくて。
でも今のリアクション面白かったよ!などともうすっかり他人事のように楽しんでいた
ナッキーだったが、やがて自分にも順番は廻ってきた。
「ナッキーも千聖もマイも食べてよお、まだこんなにあるんだよ」
「でももういっぱい食べたし食べられないよお…」
弱音を吐く妹達に、だがえりかは非情に答えた。
「いいもん、残したら明日のお弁当に入れるんだから!」
「え〜〜〜〜〜〜っ!?」
一斉に驚く姉妹達。
「嫌だお弁当にたこ焼きなんて恥ずかしいーー!!」
「絶対に嫌だーーー!!」
結局、無理やり食べるしかない事に。
「何これ、えだ豆ーー!?」
「痛ッ!これイチゴ味のキャンディーだーー!!」
「でも形は奇麗でしょ?プロみたいでしょ?」
口の周りを青のりとソースだらけにした妹達がたこ焼きと苦闘する中、
えりかは一人満足気だった。
「ただいまー!!」
みんながようやく大量のたこ焼きを食べ終わった頃、
やっと舞美が帰ってきた。
「ごめんね遅くなってー、だって急にたこ焼き買ってきてなんて言うんだもん。
はい、美味しいお店探してたこ焼きちゃんと七人分買ってきたわ、よ…、
え!何!?何!?」
みんなの視線が冷たい。
「ちょっと舞美ちゃん…」
「たこって言ったのに、何でたこ焼き…!?」
「ウソ〜〜、なんか電話でたこ焼きって言ってたじゃ〜〜ん!?」
嗚呼、とぼけた姉がもう一人。
誰かが叫んだ。
「もうたこ焼きいらな〜〜い!ゲプッ!」
108 :
ねぇ、名乗って:2007/06/09(土) 03:30:31 ID:s5fdTqls0
最後はageてきますね。
栞菜篇考えてたけどまとまんなかったので、こっちを先に。
作品のイメージ固定しないように、こういうくだらないのもアリという事で。
無駄に長いし誤字あるけどまあいいや・・・。
じゃあまた次のネタで。
乙です!!
楽しく読まさせて戴きました(・∀・)
七人が生き生きと描かれていてとても面白かったです!!(^^)
110 :
ねぇ、名乗って:2007/06/09(土) 07:52:30 ID:2cjY+DIaO
乙です!
読んでいてとても楽しい気持ちになりました!
7人のキャラクターが本当にうまく表現出来ていて素直にすごいと思いました
俺もこんな風に書くことが出来たらいいなぁ
111 :
ねぇ、名乗って:2007/06/09(土) 18:13:06 ID:jIJyvSZrO
『めぐかえる』
めぐが帰ってくる話し希望
もしかしてめぐ復帰待望論って多いのかね?
せめて話の上だけでもなのか現実でもなのか
心の中で舞美に謝るナッキー可愛いw
形が悪くても梅さんのたこ焼きを褒めるのも素敵です。
思いやり溢れる姉妹愛が最高でした。
個人的には7人で℃-uteとしてまとまっているので
めーぐるはめーぐるの道で幸せになれればいいなと思ってます。
114 :
ねぇ、名乗って:2007/06/10(日) 13:44:36 ID:D270GfQRO
ナッキーをとってもかわいく表現できてるね!
梅さんも愛すべきキャラに描いてくれて大満足!
ゆっくりでよいので、この調子で良いネタをどんどん書いて下さい。
楽しみに待っています。
115 :
ねぇ、名乗って:2007/06/14(木) 12:46:45 ID:1k1SYWeeO
確かに漏れも℃-uteって姉妹みたいだなと妄想したことはあったが、まさかこんなスレがあったとは…
しかも面白いな
漏れも応援するよ
地味に人が増えるのは嬉しいス
地道に作品積み重ねようって気になります
でも次のネタまだ上がらないので
狼の鈴木家ネタのコピペだけど面白かったので貼ったり
>長女:愛理 ℃-uteメンバー。頭は良いけどちょっと挙動不審で腐女子風味。
>「ケッケッケッ」と笑う。歌はハロプロでもうまい方。
こういうキャラ分析ってキャラ造詣に役立ったりするので、
「この子はこういう性格・キャラ」みたいなこだわりがある人は何か書いてって下せえ。
ちなみにネタの人は判明済みのエピから
・ナッキー=普段は眼鏡っ子・アニメ好き→ちょっとヲタ入ってる女子?
・えりか=DSマリオカートで対戦・勝てないと悔しい・電源切るぞと脅して一位ゴール→負けず嫌いの子供
ってキャラ付けしてみました。
連投スマン・改めて再確認
誰でもいつでも『自分の持ってる℃-uteのイメージで読める・書ける』ように
基本設定は今のところ 『℃-uteの七人が姉妹だったら』 のみです。
その他作品を縛る設定は無いので、誰でも何でも書いてって欲しいス。
118 :
松輝夫:2007/06/14(木) 22:58:31 ID:rhzicRbCO
自分が書いてるスレと違って、ここは自由度が高いですからね、書きやすいのではないでしょうか。
まあ、逆に設定がある程度固まってる方が、縛られる反面、書きやすかったりする部分もあるので一概にどちらがいいとも言えないかもしれません。
自分は℃-uteはあまり詳しくないし文才もないのでここではROM専ですが、書かれる方頑張って下さい。
このスレの趣旨と違ってスマソなんだが、愛理と舞美とマイマイの声って特徴あるから聞いたらすぐ分かるよね
>>119 かんなと千聖の声も特徴的でかなりわかりやすいぞ
ナッキーは声低いまま固定しちゃったね(´・ω・`)
121 :
ねぇ、名乗って:2007/06/15(金) 21:34:46 ID:2y7fpriLO
梅さんの歌声は見た目とのギャップがあり過ぎ
最近わかったんだが漏れが今まで梅さんの歌声だと思っていたのは岡井ちゃんの声だったみたいだ
っていうか岡井ちゃんは歌うまいよな
漏れはニワカなんだが正直、実は愛理より岡井ちゃんの方が歌がうまいんじゃないかと思っている。
>>120 かんなも確かに特徴あるよね
ところで朝某アニメの予告で下手くそな‥じゃなくて初々しい声優が声当ててたんだがこれってもしかしてマイマイかな?
なんか月島きらりとユニット組むって聞いたからさ
俺はCDで聴くまっさらブルージーンズのめぐと愛理パートがたまにわからない
本スジネタの方も何とかまとまりそうなので
土日で何とか仕上げて貼りたいス
それまで脱線雑談でも何でもしてよう
124 :
松輝夫:2007/06/15(金) 23:27:32 ID:oFDZMLdKO
>>122 それ、マイマイでしょ。ということは、次回きら☆ぴかが登場ってことか。
125 :
ねぇ、名乗って:2007/06/16(土) 17:47:35 ID:cMUXd/g9O
>>123 おっ、いよいよか!楽しみにしてるよ!最近このスレがどうなっていくのかがすごく楽しみなんだ。
期待してます。
俺は梅さん舞美のラブラブ話しか思いつかないから
ほのぼの姉妹ものを書ける才能が羨ましいす。
>梅さん舞美のラブラブ話し
激しくキボンヌ(・∀・)
>梅さん舞美のラブラブ話し
おいらもキボンヌ
このスレ的にはお話になってなくても
シチュエーション描写だけでもアリだと思う
萌えシチュ妄想して楽しむスレだと思ってるので
あえて姉妹という設定を活かして梅さん舞美ラブをやると
みんなの親代わりとして頑張っている舞美。
両親がいない事で妹達が寂しく思ったり、
よその家庭に引け目を感じたりしないように一生懸命。
だから舞美自身の寂しさや不安を抱え込んでしまう。
そんな舞美が甘えられる唯1人の存在が梅さんだった。
そんなイメージで想像しています。
ただちょっと少しだけHな事もあるので
ほのぼのとしたスレには合わないかなぁと思いまして。
とにかくアットホームなこのスレに期待しています。
130 :
ねぇ、名乗って:2007/06/18(月) 21:40:13 ID:cQahwQNE0
奇をてらってHネタをやったらもう最後だな。(純愛なら良いと思う、しかし奇をてらわないのは難しい)
出来れば彼女達を通して日々の日常、自分の感性をメッセージとして書き込んでみて欲しい。
なんちゃって
ある秋の日の話。
「千聖、髪伸びたねえ」
「エヘへへへ」
えりかが前掛けを掛けた千聖の肩より伸びた髪にブラシを入れながら言うと、
千聖は照れながら笑った。
秋晴れの日曜日の午後、
マイを除く姉妹五人が色とりどりの前掛けをして庭に面した縁側に座り、
えりかがみんなの髪の毛を切ってくれる今日は『縁側美容室の日』だ。
側には飽きないようにお菓子やジュースや雑誌も用意して、
えりかはその後ろでみんなの髪をブラシでとかしてくれている。
「ねえマイの前かけが無いよお〜」
その時、白くて大きいシーツを被り、頭だけを出したマイがやってきた。
小さく華奢な体が白いシーツにスッポリ隠れ、頭だけが出た姿は
大きなてるてる坊主のようだ。
「マイてるてる坊主みたい〜!!」
「かわいい〜!!」
「あはははは!!」
「笑うなぁ!!」
千聖が言うと、みんなが笑った。
マイは怒ってみせたが、もちろん本気ではない。
それにしても、こんな格好をしていてもマイは可愛いなあと千聖は思う。
パチッとした瞳はまるでお人形さんのようだ。
パパはどうしても男の子が欲しかったらしくて、女の子が生まれる度に「次こそは」と
思うらしいのだが、七人目に生まれたお人形のような女の子を見てとうとう諦めたようだ。
それで女の子ばかり七人の姉妹になってしまった。
子供が七人もいると美容院代も馬鹿にはならない。
それで、小さい頃はママがいつも縁側に姉妹を七人座らせて髪の毛を切ってくれていた。
それをお洒落で器用なえりか姉ちゃんが受け継いでくれたのだ。
みんな「ちゃんと美容院へ行きたいよお」などと言い、
実際、本格的に切りたい時はちゃんと美容室に行くが、ちょっと前髪を切りたい時、
毛先を揃える時だけの場合は家でえりかのカットにまかせている。
そして今日もえりかの縁側美容室には姉妹が全員揃っていた。
「じゃあマイが最初ね、だってマイちゃん後にすると
待ってる間にいっつも寝ちゃうんだもん」
「そうそう、いつの間にかコロンって赤ちゃんみたいなんだよ」
「ひどーい、今日は寝ないよ!」
えりかと千聖がそう言うと、マイがムキになって答えた。だが、
「いいよお、じゃあマイちゃん寝てる間に勝手に切っちゃっていいのね?
寝ながら切ったら変になっちゃうかもしれないけどいいのね?」
「じゃあ、マイが最初で!!」
「あはははは!!」
意地悪く言うえりかにマイが即答し、みんなが笑った。
そう、みんなでいろいろお喋りしながら、この場所で髪の毛を切るのは
結局、姉妹にとって楽しい時間なのだ。
チョキチョキチョキチョキ…、
「はい、マイこんな感じでいい?」
「うん、ありがとうえりかちゃん」
「次は栞菜ね、やっぱり前髪は伸ばすの?」
「うん、栞菜でこ出しが好きなの」
「そう?栞菜は前髪下ろした方が可愛いと思うのになあ」
栞菜の毛先を揃えながらえりかが言い、
「ねええりかちゃん、このサイドのクセ毛何とかならないかな?」
「それはストレートパーマじゃないと無理かなあ!?
洗ったらかならずヘアアイロンで伸ばしてみなよ」
ナッキーは髪の悩みをえりかに相談していた。
そして、千聖の順番になった。
「千聖は、このまま伸ばしなよ。女の子っぽく見えるよ」
「うん、可愛い可愛い」
「そぉお?」
えりかが言うと、舞美も褒めてくれた。
千聖は喜んでみせたが、やっぱり恥ずかしかった。
何しろ小さい頃からずっとショートカットで色が黒くて、
いつも走り回っていた千聖はずっと男の子みたいだって言われてきて、
これまで女の子っぽいなんて言われた事が無かったのだから。
「…でも千聖、この顎の傷どうしたの?」
顔に出来たばかりの傷を見つけてえりかが訊いた。
「うん、昨日ね、七丁目のフットサル場に女の人のフットサルチームが練習に来てたの。
愛理とマイと一緒にずっと見てたら『やってみる?』って言われてさあ、
入れてもらって一緒に走ってたら転んじゃって…」
千聖は昨日の事を思い出した。
学校でいつも男子相手に校庭でボールを蹴って遊んでいた千聖は、
フットサルにもちょっとは自信があったのだが、まるで相手にされなかった。
ろくにボールも奪えずに走り回ったあげく、転んで顎に怪我をしてしまった。
やっぱり本当の大人のチームは違うな、と思った。
たしか今日も練習に来てるって言ってたな、後でまた行ってみようと考えていた。
「もう、千聖は女の子なんだから顔には気をつけないと!」
舞美が心配気に言ったが、怪我を怖がってたら相手に勝てないじゃないかと千聖は思った。
すると、えりかが千聖の頬を撫でて言った。
「…この頬の傷も残っちゃったね」
「…ごめんね千聖」
愛理が千聖の顔を覗きこむと申し訳なさそうに謝った。
これで謝られるのは何回目だろう、
千聖はちょっとムッときて答えた。
「もう、いいって言ってるじゃんかーー!」
愛理の顔がちょっと沈んで見えた。しまったと千聖は思った。
思ったまんますぐ口に出してしまうのが自分の悪いトコだ
でもしょうがないじゃないか、悪いのは愛理だ。
そういえば小さい頃も愛理を泣かせた事があったな、と千聖は思い出した。
ゴムでできたトカゲのオモチャを見せただけなのに、普段学校の男の子とやってるような
他愛も無い悪戯だと思ってたのに、愛理は簡単に泣いてしまった。
ママに怒られた。
「愛理は千聖とは違うの」と言われた。
今にして思えば「愛理は気が小さいんだから」という意味なんだろうが、
当時は「愛理はあなたとは違って特別なの」と言われてるみたいで面白くなかった。
千聖が勝手にそう思い込んでただけなのに、以来、愛理がちょっと苦手になった。
実際、愛理は妹の自分から見ても同じ姉妹とは思えない、
いつも言う事も大人っぽくて、むずかしい言葉を知っていて、かわいくて、歌も上手くて…、
お姫さまみたいだった。自分と違うと思っていた。
愛理と話していると、いつも自分がひどく幼く思えて嫌だった。
そして、そんな事を考えてる自分もちょっと嫌だった。
「じゃ、次、舞美はどうする!?」
「あたしももうちょっと伸ばしたいから前髪と毛先だけ揃えてね」
「わかった!」
舞美が言うとえりかが舞美の長く伸びた綺麗な黒髪をブラシで伸ばした。
すると姉妹達から感嘆の声があがった。
「舞美ちゃん髪の毛綺麗」
「キレ〜〜イ!!」
舞美のストレートロングの綺麗な黒髪は、姉妹みんなの憧れだ。
「でもねえ舞美ちゃんはトリートメント使いすぎなんだよ、
いつも舞美ちゃんの後にお風呂入るといつも容器空だもん」
「ウソー、そんな事ないわよ!」
千聖がからかうとムキになって答える。年上だけど可愛い、と千聖は思った。
そう、髪の毛だけじゃない。
舞美姉ちゃんは綺麗で、スポーツ万能で、それでいてちっとも飾った所が無くて
でもちょっと天然で、存在そのものがみんなの憧れだった。
昔は千聖と同じくらい黒くてお転婆だったのに、いつの間にか人一倍
大人っぽくて綺麗になってしまった舞美ちゃん。
いつかは千聖も舞美ちゃんみたく大人っぽく綺麗になれるのかな。
そしたら愛理に負けないぐらい大人になれるかな。
千聖はそう考えて、まず舞美ちゃんみたいに髪の毛を伸ばしてみようと思った。
そして、髪の毛だけはは伸びたが、千聖は果たして
自分が大人に近づいているのか疑問だった。
「ねええりかちゃん、あたし前髪はねえ、眉毛の下0.2cmでねえ…」
「こーまーかーいー!愛理あんた美容院では絶対嫌われる客だよ」
愛理の番になり、愛理はえりかに細かく注文をつけている。
それを見ていた千聖は、せっかく伸ばした髪にろくにブラシも入れない自分に比べ、
愛理はいつもお洒落で、綺麗で、やっぱりお姫さまみたいだな、と思った。
「終わったよ〜〜〜!!」
「えり、ごくろうさん!!」
「ありがとうえりかちゃん!!」
ようやく全員の髪の毛を切り終わったえりかが叫び、みんながえりかの労をねぎらった。
千聖も前掛けを外そうとすると、愛理がやってきて言った。
「待って千聖、もうポニーテールできるでしょ?あたしが髪の毛といてやってあげる」
「いいよ愛理ィ、それぐらい自分でできるから」
「いいからいいから」
愛理はそう言って千聖の髪にブラシを入れ、髪を後ろで丁寧に一本に束ね始めた。
「…ねえ千聖、いくらあたしのためだからって、もうあんな事しちゃ嫌だよ」
またその事か、と千聖は思った。
でも、あれくらい当たり前の事じゃないか、
愛理が男の子に意地悪されて泣いてたのに、千聖が黙ってられる訳なんかないじゃないか。
それで自分よりずっと体の大きいその男の子にとびかかっていき、
掴み合いの喧嘩になってしまった。いっぱい殴られたけど、いっぱい殴り返した。
顔がボコボコになり、傷まで残ってしまったけど、でもいいんだ。
そいつは泣いて帰ったから。そして千聖は、
「今度ウチの愛理に意地悪したら承知しねえぞ!!」
って言ってやれたから。
だって許せる訳ないじゃないか、千聖の大事なお姫さまの愛理を泣かせるなんて。
そんな事より許せないのは愛理だ、だって愛理は悪くないのに、悪いのはあの男の子なのに、
千聖に謝ってばかりいるんだから。
愛理は悪くないのに、愛理は悪くないのにィ…、
「はい、千聖ポニーテールにしてこれで髪の毛結んだら可愛いなあと思って買ってきたの。
どう!?」
愛理はそう言うと、ポケットから可愛いリボンの飾りが付いたヘアゴムを出して
千聖の束ねた髪の毛をそれで結んでくれた。
何で千聖が本当はリボンが好きなの知ってるんだよ。
やっぱり愛理にはかなわないと思った。
ちょっとつらく当たっても、いつも優しくて、人の気持ちを思いやって…、
「やだ千聖、何で泣いてんのォ!?」
「愛理が謝るからいけないんだよ」
自然と涙がこぼれていた。
「何で何で!?意味わかんない!!」
困惑する愛理を余所に、千聖は涙を拭って
愛理に後ろで束ねてもらった髪を掴んで言った。
「…ねええりかちゃん、やっぱりこの髪の毛切って。
千聖やっぱりショートカットがいい!」
「え〜〜〜〜〜っ!?」
「何で〜〜〜〜〜!?」
えりかは驚き、愛理が一瞬悲しい顔になった。
だが千聖は笑顔で答えた。
「あのね、後ろで結んじゃったらせっかくのリボンが自分で見えないでしょ?
だからいっつも見えるように前髪のここで結ぶの」
そう言うと、千聖は前髪をちょこんとつまんでニッコリ笑ってみせた。
誰もが惹かれる最高の笑顔だ。
つられて愛理も笑顔になった。
「はい、千聖、久しぶりにさっぱりしたでしょ」
えりかが髪の毛を短く切ってくれた。
久しぶりのショートカットだ。
「うん、千聖はやっぱりそっちの方が似合ってるかな」
「元気元気って感じ」
みんなが誉めてくれた。さっきまで長い方が可愛いとか言ってたくせに。
でも、千聖も何だか気持ちが軽くなった気がした。
「じゃあ、ちょっと昨日のフットサル場行ってくる!
リベンジリベンジ!!」
「あー、ちょっとお掃除手伝っていきなさいよー!」
えりかが止めるのも聞かず、ショートカットにリボンを結んだ千聖は
走って家を飛び出していった。
「待ってよ千聖、あたしも行くーーー!!」
そう言ってマイも飛び出していった。
先を走る千聖は路地に差し掛かった。
七丁目のフットサル場へはこっちを曲がった方が近道だな、
だでも千聖はあえて遠回りの道を選んだ。今日は気分がいいから、いっぱい走っていきたかった。
それにしても昨日は悔しかったな、
今日もどうせ子供扱いされて歯が立たないんだろうな。
でも、いいんだ。ボールを追っかけて走ってるだけで楽しい、そう千聖は思った。
もう髪なんか伸ばして、無理に大人ぶる必要はない。
愛理は愛理で、千聖は千聖だ。
愛理が大人なら、まだまだそれに甘えてよう。
そして愛理が必要なら、これからもいっぱい守ってやろう。
走る千聖の頭の上で、リボンが跳ねていた。
「じゃあ、あたしも行ってくる!」
「何、愛理も行くのー?」
掃除と後片付けの手伝いを終えた愛理が言った。
えりかがあきれて聞くと、愛理は興奮して答えた。
「だって昨日の千聖すごかったんだよ!
大人の人相手に何人もドリブルで抜いていくの!!
チームの人が驚いて明日も来なよって言ってくれたんだから!!」
だから見ないわけにはいかない、と愛理は思った。
千聖は面白くって、スポーツができて、強くて、自分に無いところをいっぱい持っている、
自分にとってのヒーローが活躍するところを。
そう【近道】なんて探さなくていい、
輝ける場所は誰にでもかならず来るのだから。
その事に千聖が気付くのはもうちょっと先の話だった。
時期的には去年の『9月10日は℃-uteの日』あたりの千聖の長い髪型が
年末には短くなっていたあたりの話だと思ってもらえれば。
あとクサい、ベタなのはドラマの仕様ですw
次はバランス的にコメディ一本やってから舞美か栞菜を。
では次回で。
144 :
ねぇ、名乗って:2007/06/19(火) 05:33:06 ID:UxjoQQkX0
更新お疲れです。
感情の描写がとても多くて書くのが大変だったと思います。
しかし書き込んだだけあって℃-uteが好きな感情が一杯表れましたね。
次も期待していますよ。
145 :
ねぇ、名乗って:2007/06/19(火) 07:29:34 ID:xD3IjMG8O
ゲキハロ見てきたけどこのスレの舞美とかぶったw
このスレほんまええスレやわ(・∀・)
ライターさんいつも乙です!( ^-^)⊃旦~
147 :
ねぇ、名乗って:2007/06/19(火) 16:26:54 ID:j1K020UiO
作者さん乙です!
近年まれにみる良スレだな
℃-uteへの愛情に満ちあふれているよ
メンバーにも是非見て欲しいね
>>145 いいなあゲキハロ
音源だけでもなんて思って落として聴かない方がいいよね?
DVD出るまで待った方がいいよね?
DVDマガジンだけ見れたけど
キュートの姉妹力はやっぱ半端じゃなかったw
149 :
ねぇ、名乗って:2007/06/20(水) 01:17:53 ID:6l56wXts0
DVDマガジンはHello! Project内の中でも℃-uteは全て上出来。
次回はBerryz工房のVol.6みたいな学園ものをやって欲しい。
萩原が中学進学の来年には℃-uteイン・ハワイファンクラブツアー
をやりそうだ。
千聖ヲタとしてあえて言おう
乙であると・・・
ハァ━━━━━*´Д`━━━━━ン!!!!
151 :
ねぇ、名乗って:2007/06/20(水) 02:13:49 ID:K7A2gLpfO
漏れは芸スポ板の愛理スレから見ているんだが、まさかあの妄想のやりとりの中からこんな良スレが生まれるとはな
今は作家さんが1人しかいないみたいで残念だが、もっと作家さんが増えたら最高のスレになるぞ
このほのぼのさを出すのは他の人には難しいかも?
とくに姉妹全員まんべんなくキャラを掴んでるのは素晴らしい。
書こうにもプレッシャーを感じてしまうぜい。
153 :
松輝夫:2007/06/20(水) 11:55:37 ID:AuMNoxumO
>>152に同意ですね。余人にはなかなか難しいかと。
>このほのぼのさを出すのは
それこそ各作家の個性で、作風は何でもアリでいいと思う
それに2ちゃん人口は広いはず
いつかは本物のプロまがいの人が参戦してくれるかもと期待するス
にしても『愛理の素のテンション』は本人以外は再現不可能だw
くねくねしててクルクル回ってケッケッケッと笑うって
このスレならマジで本人達に読んで欲しいなぁ
絶対喜んでくれるよ
156 :
ねぇ、名乗って:2007/06/21(木) 10:22:18 ID:GxM3VBfDO
ある程度たまったら誰かの誕生日にプレゼントとして送るってのはどうでしょう。
まぁ作家さんのお許しがあれば…ですが(^_^;)
157 :
ねぇ、名乗って:2007/06/21(木) 11:16:20 ID:lFWemZYxO
メンバーがひとりまたひとりと惨殺されていくホラー希望
今更ZYXのWhite Tokyo初めて聞いたんだが、いい歌だな
‥にしてもめぐ可愛い…
(;´д⊂)
>>156 恥ずいです
今まで出たネタは、矛盾も多いしまだまだ直せる脚本でいう所の第一稿みたいなものだと思ってるので、
この話こうしたらもっと面白い、ここはおかしい、ここはいらないみたいに皆で考えて直せば可能かも
>>158 自分もZYXは後から聴いてクオリティにブッたまげたス
ZYXの舞美と今の舞美が結びつかない
ああの愛理は「小っちゃい愛理だ!!」ってすぐ思えるのにw
>>159 自分は舞美は結び付くけど、愛理が結び付かないスw
なんか急激に可愛くなった感があってまるで別人に見えてしまうw
‥℃-uteのファンになったのはめぐが辞めた後だけど、ようつべとかでめぐがMC務めてる動画やZYXのPV見てたら泣けてきますた(;´д⊂)
161 :
ねぇ、名乗って:2007/06/22(金) 08:04:20 ID:7FQ+U5+RO
>>160 めぐ好きなら「たからもの」や「リトルホスピタル」も見ておいて損はないぞ
あの子は女優としても良い雰囲気を持ってた
まあ、めぐのスレではないのでこれくらいにしておくか
それにしても℃-ute7姉妹は良いな
作者さんの腕も神だが
>>1の設定が良すぎる
来たるべき日のためにネタ保存しておくか
芸スポにハロプロスレが立つと画像貼りや工作に集まるのは狼住人のイメージがあるので
>>1の設定を書いたのは狼住人と予想、そのうち話作りに参加して欲しいなあ
>>161 >来たるべき日のためにネタ保存しておくか
そのうち読みたいです。
このスレを見てたら‥って訳じゃないけど、ゲキハロ見に行きたくなってきた…
幸い都内で遠くないしな‥
明日が最終日らしいけど今からでもチケット取れるんかな‥(´・ω・`)
こういった類のイベント行った事無いからよく分かんないや(´・ω・`)
夜にでも調べてみよう
(´・ω・`)
>>163 ガンガレ!!としか言えん
地方人のオイラ
165 :
ねぇ、名乗って:2007/06/24(日) 03:26:34 ID:lMIcgZKZO
>>163 漏れも地方在住なんで羨ましい…
早くDVDで見たいよ
166 :
ねぇ、名乗って:2007/06/24(日) 04:06:28 ID:HWeLl7gxO
ハギテイがサイクロプッスみたいにサングラスはずしたら目から破壊光線出るドラマがみたい
>>163 夜は最終公演だからな・・・確か当日券販売はないそうだよ
行くなら昼公演にしとけ
168 :
163:2007/06/24(日) 12:30:43 ID:FlFoO94CO
当日券抽選漏れしたお(つд`)
しかも雨降ってるのに傘持ってきてないお(つд`)
スレ汚してごめんだお(つд`)
>>168 その心意気に乾杯
風邪引かない様にな
ムギムギデイズの舞美はまるで一家の大黒柱のようだ
マイマイと千聖を抱っこする舞美はまるでお父さん
>>169 あれいいよね!!
一連の写真は正に自分が考える℃-ute七姉妹のイメージそのものだ
ムギムギデイズは良いよね
あの写真はそのままこのスレの挿絵になりそう
>℃-uteは、いっつも誰かが誰かを(さりげなく)思いやってて
はたから見ててサイコーです
塩田さんも℃-uteの良さを理解してくれててありがたいよ
172 :
163:2007/06/25(月) 05:50:10 ID:22AH1Y1nO
寝る子はキュートってDVD化されるよね?
‥手ぶらで帰るのはあまりにも虚しかったから、パンフ,DVDマガジン,直筆メッセ入り写真,給料袋を買いました(´・ω・`)
(正確に言うと抽選の前に買ったんだけど)
173 :
ねぇ、名乗って:2007/06/25(月) 11:50:04 ID:HIxrnrTfO
ベリのゲキハロもDVD出たから確実かと。
174 :
ねぇ、名乗って:2007/06/25(月) 20:55:45 ID:wy+Xpi2f0
名探偵℃-uteの(気まぐれな殺意?)ページ01
<6:45ジリリリーン>目ざまし時計が鳴り響く部屋それを手探りで探す手
ガバッっと起き上がるがまだ眠そうな矢島舞美(長女)<・・・・>
横に寝ているエリカをゆすって起こそうとする舞美エリカ(次女)<んん・・・>舞美<先に行くよ・・・
起きる気配がないエリカをおいて先に部屋を出る舞美リビングに降りると早貴(三女)がみかん片手に新聞を読んでいる
早貴<おはよーおねえちゃん!>舞美<おはよ〜!ナッキーは本っ当〜に朝早いね>
早貴<あれ?エリカちゃんは?ダイエットのため今日から一緒にって・・・>
舞美<早朝トレーニングの話?・・エリカ朝は苦手だから(笑)>
早貴<あのねおねえちゃん・・・さっきお父さんから電話があって・・・><二、三日帰れないかもって・・・>
舞美<ええっ〜また!!今月に入って三回目だよ?><あの〜あれ!なんたら関連の$&%!0・・>
早貴<言えてないし・・!><同一犯強迫性自殺関連事件!>
舞美<そうそう、それ!>早貴<新聞の一覧も最近この事件の事ばかりだし・・・>
エリカ<なぁにぃ〜朝からヘビィーな会話して>やっと二階からエリカが降りてきた
早貴<エリカちゃんおはよ>エリカ<おふぁよ〜ナッキー>まだ眠たそうなエリカ
舞美<お父さん二、三日帰れないんだって・・・>エリカ<パパって刑事課の課長なのに未だに現場主義って・・・>
舞美<そんな事言わないの!それはそうと早朝トレーニングは?>エリカ<あっそうだった!シャワー浴びてから・・・(笑)>
舞美<それより朝ごはんの用意した方が・・>時計に視線を促す舞美、
エリカ<やっば〜い!!もうこんな時間?>時計は7:14を表示していた、舞美<私もあの子達が起きてくる前に・・・>
エリカはエプロンを纏い舞美はシャワーを浴びに早貴は愛理(四女)、栞菜(五女)、千聖(六女)、舞(七女)を起こしに、
十分後四人が慌ただしく降りてきた、栞菜<あたしが先に使うんだから!>
愛理<しょうがないエリカちゃんの手伝いでも>千聖、舞<エリカちゃんおなかすいた〜>
矢島家恒例の早朝戦争のはじまりです・・・・そのころ自殺事件の現場では・・・
次回は・・様子を見てから・・・(弱気)
>>174 もちろん楽しみに続き待ちます!
時間かかっても是非完結まで!!
>>173 生で見れなかったのでDVD出るのはありがたいっす(;´д⊂)
>>174 次回も期待してまつ(・∀・)
177 :
ねぇ、名乗って:2007/06/26(火) 00:04:28 ID:Y335PhIV0
175さん176さんありがとうございます
がんばります!!
6月17日に℃-uteのゲキハロの舞台を見て
触発されてしまいました、しかしこの内容じゃ
舞台は無理だが・・勿論このレスにもかなり影響されてます!!
これまでROMってましたが、触発されて書き始めました。
単発モノのホームコメディ風ですが、ちょっとアンケート、というか、
みなさんの意見を聞きたいです。
大筋は、日曜日に特製料理を作って、みんなで夕食を囲むって
感じです。
梅さんのお手伝いに千聖。なかさきは部屋にこもって読書。
マイマイはひとり外で遊んでる。舞美、愛理、栞菜は別の用で外出。
夕方に全員が集合します…という設定で…
Q1:なかさきは姉妹からなんて呼ばれてる?「さっきー」でよい?
Q2:舞美が買い物、遊び以外で休日に外出する理由とは?
Q3:現代っ子は「ガスコンロ」をなんという?「ガス台」なんていう?
ここらへんを埋めていただけると助かるです。
179 :
ねぇ、名乗って:2007/06/26(火) 02:50:42 ID:LA55HoTaO
>>178 頑張って!応援してます!
Q1. 名字は中島じゃないのにナッキーは確かにおかしいかもね。
ふつうに「早貴」、「早貴ちゃん」かな。
もしくは舞美、えりかに続く「7兄弟のまん“中”のお姉ちゃんみたいな早貴ちゃん」ということで「ナッキー」と呼ばれているというこじつけも一つの手かもw
Q2. 陸上部の練習かな。
もしくは家計を助けるためにバイト(もちろん肉体労働系)とか。
Q3. ガス台とは言わないと思う。
ふつうに「ガスコンロ」じゃないかな。
もしくはマイマイあたりは名前がわからずに「カチャッとするガスのやつ」などと呼んでるとか。
180 :
ねぇ、名乗って:2007/06/26(火) 02:55:39 ID:LA55HoTaO
>>177さんも応援してます!
新しい切り口で面白そうだね
期待してます!
181 :
ねぇ、名乗って:2007/06/26(火) 18:52:34 ID:Y335PhIV0
178さん初めまして私は174で名探偵℃-uteの・・・をレスしたものですが
わたくしの場合このスレの初めのナッキー説?にもとずいて書いてます
もしかすると色々と広げずに的を絞った方が描きやすいと思います
期待してます!!℃-uteの場合ホームコメディが合うような・・・
私の次項は℃-uteのメンバーが全然出てきません・・・
サスペンスには布石が必要なんで・・・・・・
182 :
ねぇ、名乗って:2007/06/26(火) 19:07:04 ID:Y335PhIV0
名探偵℃-uteの(気まぐれな殺意?)ページ02
殺人課の通称(同一犯強迫性自殺関連事件)を担当している矢島捜査一課課長と若手の吉良義和が
苦々しい思いで現場を見つめていた・・・矢島<例のカインか?>吉良<ええっ間違いないでしょう!>
新宿区のとある中学校の理科実験室だが・・・
ガラスや残骸がちらばり理科実験室と言われなければここが何の教室なのか
分らないほど・・・そう爆破され粉々に・・・
矢島<爆破とは・・・>吉良<RDX爆薬です!>矢島<RD・・・?>
吉良<RDX!要するにこの実験室にあるもので作れちゃう爆薬です!>
矢島<被害者の中坊は・・・>吉良<運ばれる途中で・・・>
矢島<クソッ!!>吉良<アベルとカインの行が入った例のカードもありました>
カードの一文
カインはアベルを襲い殺害した・・・そして主はカインに聞いた(弟アベルは何処に?)
カインは答えた(知りません、私は弟の番人なのでしょうか?)
(私の罪は重すぎて負いきれません、私に会うものは私を殺すでしょう)
矢島<遺書ともとれるこのカード・・・ふざけてやがる!!>
吉良<普通自殺するのに爆死や拳銃自殺、ましてや免許もない中坊が車でレインボー
ブリッジから飛び込むとか・・するわけがないし・・・>
そう!最初の事件の発表は自殺であったにも関わらず二回目以降はそのカードの
存在が殺人の可能性有りとの判断に踏み切ったのである・・・・
矢島<しかしやつらは人間のクズだが・・・馬鹿じゃない!だろ?>
吉良<そうです!このカード以外何一つ物的証拠が無いのですから>
<それに僕の予想では後七人犠牲者が・・・>
矢島<例の行からの予想か?カインを殺した者は七倍の復讐を受けるという・・・>
<だがな〜吉良あまりそれに執着すると・・>
吉良<ええっ!分かっていますよ、それ自体捜査撹乱の疑いがあるんでしょ?>
矢島<しかし、やりきれんなっ!娘たちと同世代のガキがこんな死に方をするとは・・>
その二週間後矢島らの必死の捜査をあざ笑うかの様に四人目の犠牲者が、
無惨にも教会の十字架に自ら首を吊ったかの様に晒されて・・・・
ネタの人一号です。書き手が増えたみたいで嬉しいス
このスレの基本は『℃-uteが七姉妹役やるドラマが観たい!!でもテレ東がやってくれないから
自分達で描く!!』だと思ってるので、自由に何でもありで描いていきましょう。
あと、小説系のスレって雰囲気が閉鎖的になりがちなので、お話進行時以外は
℃-ute関連なら多少のスレ違いでもおkって事で今まで通り名無しでウダウダ雑談してましょうよ。
では、続きが楽しみです。自分のネタも明日〜明後日には。
184 :
ねぇ、名乗って:2007/06/26(火) 21:38:40 ID:Y335PhIV0
ネタ一号さん!!お心遣い有難う御座います、(少し不安だった)
名探偵℃-uteの(気まぐれな殺意?)を載せてもらってる
ネタ四号?です、いつの日かテレ東でドラマ化される日を
期待しつつ良い話が描ければ・・・
頑張ります!!!
ども、いきなりトリ変えてますが…
>>179 どもです。
やっぱ陸上部ってことでいきますかね。「肉体労働」のバイトっていうと、
ちょい、よからぬ方向に行ってしまいそうでw。
>>181 >>20 に「ナッキー」の由来ありましたね。これで行きます。
>>183 いろんな書き手がいると、知らず知らずのうちに縛りって出てきちゃうん
ですよね。今の自由なうちにいろいろと書いてしまうっていうのも手かも
しれないけどw。
んでわ、次から導入部、行きます。。。
●日曜日
今日は久しぶりに夕食の時間に全員揃うことが分かっていたので、えりかちゃんは特製
カレーを作ることを宣言。いつもならスーパーで買ってきたカレールーを使うんだけど、
「えりかちゃん特製」となると、そのルーから作るのだ。このメニュー自体もまた久しぶ
りで、しかもそのおいしさだって保証済みだから、みんな夕食を楽しみにしていたりもす
る。
舞美ちゃんは県大会を控えた陸上の練習で駒沢へ、栞菜と愛理はお買い物に渋谷へ、そ
れぞれ朝からお出かけ。千聖はカレーを作るえりかちゃんのお手伝いを名乗り出た。舞ち
ゃんは、お昼は友達の家にお呼ばれしてるんだって。私はというと、昨日友達に借りた本
を読む予定。今日は読書三昧な一日にするつもり。
●キッチン
「ん〜っ!サイっっっ…コウっ!コレ!!この味!!!」
「あー、どれどれ、私も味見した〜い!」
「だーめ!、夕飯までのお・た・の・し・み!」
「そりゃないよー!」
お昼前から始まったキッチンでの1対1の講習会は、今やっとできあがろうとしている
ところ…らしい。千聖は自ら助手を買って出て、下ごしらえからずっとお手伝い。最近お
料理とかお裁縫とか、自分から進んで勉強しだしたのは、なにか心境の変化でもあったの
かな。
「よっしゃ、ここで火を止めます。と…、千聖、でっかいボール出して氷いれて」
「アイアイサー!」
「誰のマネよ、それぇ?」
「テレビで兵隊さんがやってた」
千聖は『えりか隊長』に敬礼したあと、踏み台を持ってきてそれにのり、天井そばの棚
から手際よく「でっかいボール」を取り出した。そして踏み台にのったまま身をよじって、
冷蔵庫のドアをあけた。身のこなしに自信のある千聖だからできる芸当。ウチの冷蔵庫は、
ちょっと旧式だけど大きくて、フリーザーには自動製氷機もついている。さすがの大家族
用。そしてフリーザーのドアは冷蔵庫の上の部分にある。
「ちょっと!危ないよー。ちゃんと降りてからやんなさい。別に急いでないんだから」
「アイアイサー!」
千聖は返事だけして、そのままの体勢で作業を続行した。ボールに氷を入れていくと、
案の定、踏み台の上の重量バランスがおかしくなっていく。
「おっとっとお〜」
「ほらぁ、危ないっての〜!」
大きなボールを抱えてよろめきながら、なんとか氷をその半分程度まで入れると、千聖
はドアを勢いよく閉め、踏み台から飛び降りた。いうことを聞かない妹をじっと睨む姉を
横目に(そしてちょっと得意げに)しながら、ボールをシンクに置き、ちょうど氷と同じ
くらいに水を入れる。
「ハイ!準備オッケー!であります」
「な〜にが『であります』よお。もう…」
ふてくされながら、えりかちゃんはカレーの入った、これもまた大きな鍋をボールに入
れた。
「しっかし、これでホントに、おいしくなるんですかねえ?」
「『後藤家の食卓』でやってたの。信じましょう!」
もちろん、普段から料理担当のえりかちゃんが作るんだから、おいしくないはずはない。
でも、それでも手を抜かずに、あの手この手で「さらなるおいしさ」を追求するえりかち
ゃんって、やっぱりすごいな…って思う。
ライターさんが増えて下さって楽しみがまた増えました(o^_^o)
ところでこのスレ覗いてる方々にお聞きしたいんですけど、
Q1,℃メンの中でも特にお気になメンバーは?
Q2,℃以外でお気になハロメン(グループ)いますか?
自分は
Q1 かんな,愛理
Q2 月島きらり
って感じです(^^;
「これで十分に冷ましたら、もっかい火を入れて、最後にハチミツを入れるの。これで
ぐんとおいしくなること確実よ〜」
「ハチミツ?!」
「そ!、いわゆる『隠し味』ってやつ」
「甘くなっちゃうよ?!」
「ならない、ならない。そんなに入れない(笑)。逆にすご〜くおいしくなるんだから」
「さっすが『隠し味』ってやつですね〜えへへへ」
千聖はえりかちゃんのひじを小突きながら妙な笑顔を作ってみせた。
「なんかそんな言いかたしたら、ヘンなもの入れるみたいじゃない!。違うの、コレは
愛情よ。あ・い・じょ・う!」
そういいながらえりかちゃんは千聖のおでこを小突き返そうとした。
「お、電話だ!」
こういうときの千聖の反射神経と瞬発力ってものすごく早くって、サッと身を翻してキ
ッチンを出て行ってしまった。えりかちゃんの行き先を失った指は空を突き、えりかちゃ
んはバランスを崩しそうになった。
「もうっ!」
「あははっ、えりかちゃん牛になってるぅ!」
電話のほうに駆けていった千聖と入れ替わりに私がキッチンへ入ると、ちょうど角を生
やしたえりかちゃんが「もうっ!」と吼えているところだった。
「見たなあ…、見られた以上は生きて返すわけにはいかん!」
えりかちゃんは氷水に浸けているカレーの鍋を持ちながら、私にすごんでみせた。
「お水もらいに来ただけだケロ。許してケロ」
私は身動きの取れそうにないえりかちゃんを見ながら、食器棚からコップを、冷蔵庫か
ら水の入ったペットボトルを取り出し、そそくさとその場を退散する勢いで水を注いだ。
「えりかちゃーん!電話ー!!、舞ちゃんが『代わって』ってー!」
遠くから千聖が叫んでいる。
「あー、手が離せないー。ナッキー!ちょっと代わって!!」
「ありゃりゃりゃりゃりゃ?」
有無をいわさぬ勢いで交代を迫られた私は、えりかちゃんの代わりに大きいカレー鍋を
持たされることになった。氷水に浮かんでいるとはいえ、育ち盛りの家族7人分のカレー
が入った鍋はやっぱり大きいし、重い。えりかちゃんと違って、私の体格では両手できち
んと支えないとふらふらしてしまう。パタパタとスリッパの音を立てて電話のほうにかけ
ていくえりかちゃん。また入れ替わりに、千聖がやってきた。
「エーと、ハチミツ、ハ・チ・ミ・ツ…っと」
調味料の入っている棚を開き、覗き込みながら千聖がひとりごとを言っている。
「ハチミツ?、どうすんの?」
「あとでカレーに入れるんだって〜」
「ふーん、じゃあ『隠し味』かなあ?」
「そーそー『隠し味』だって。食べたあとになんかすると甘くなるのかなあ?」
「そうじゃなくって、『隠し味』っていうのは、入れると風味とかコクが出てくるんだ
って」
「『フーミと過酷』?」
「じゃなくって、『風味』と、『コク』。よりおいしくなるってことよ」
「そーかー、すごいなあ」
首をかしげながらこういう返事をするときの千聖って、なんか分かってんだか分かって
ないんだか分からなそうで、ちょっと面白い。私はというと、さっきのえりかちゃんと同
じ状態で、大きくて重たいカレーの鍋を支えるのがやっとで、千聖がガサゴソやっている
のを横目で見ているしかない。
おいしそうなカレーの香りがあふれ出てきて、思わずノドが鳴りそう。でも、部屋で本
を読みながらお菓子を食べてたから、お腹はあんまり減ってないんだな。よし、あとは食
べるのをやめて、夕方までにしっかりお腹を減らしておこう。
「あった!、よいしょっと!」
千聖は見つけたハチミツのビンを、両手で持ち上げてガスコンロの横に置いた。やっぱ
りウチは大家族だから、ハチミツだってサイズが大きい。ビンの半分くらい使ってあるけ
ど、それでも千聖にとってはまだまだ重い。
「千聖ー。まいちゃんがまた『代わって』ってさー」
「はいよー」
えりかちゃんがキッチンに戻ってきた。それとまた入れ替わりに、千聖がキッチンを出
ていった。私はというと、すでに結構必死になってて、鍋を支えながら、首から上だけえ
りかちゃんの方を向いて
「えりかちゃーん、結構重いよ?コレー」
「あーゴメンゴメン、助かった助かった。ありがと」
めでたく選手交代。鍋は再びえりかちゃんに支えられて、氷水の上に浮いている。
「そういえば、ナッキー今日は部屋に閉じこもりっきりだね。なにしてんの?」
「友達に本借りたの、『バリー・ヒッター』。すんごい面白くってね、今日中に全部読
んじゃうかも!」
「そーなのー。どんな本?」
読書にあんまり興味のないえりかちゃんは、私の熱中している本について、棒読みで質
問してくれる。
「アメリカ大リーグの選手がね、実は魔法使いの家系に生まれた人で、魔法を使って大
活躍していくお話なの!」
「それってズルじゃん」
「それがズルじゃないの!、他の選手たちが裏取引とかドーピングとかでズルばっかり
するのを、バリーはバレないように魔法で阻止していくのよ。だからバリーは正義の味方
なの」
「へー、なんかシュールな内容だね」
「それが面白いんじゃない?!、えりかちゃんもあとで読んでみる?」
「あ、いいですいいです」
えりかちゃんは料理とかファッションの雑誌以外、あんまり本とか読まないことを知っ
ているから、あえて聞いてみたけど、やっぱり返事は予想通りだった。
「っていうかー、せっかく晴れた日曜日なんだから、ひきこもってないで、外で遊んだ
りしたらいいんじゃない?」
「ぎく。だって面白いんだもーん。許してケロー!」
逆に返り討ちにあいそうになった私は、ペットボトルを冷蔵庫に戻すと、やっぱりそそ
くさとキッチンをあとにした。
#なんなんださるさん規制って… orz
とりあえずここまでで導入部って感じです。全体の4分の1くらいかな。
昔テレビかなにかで聞いた物語を元ネタにしているので、鋭い人は
分かるかもしれません。
終盤でまだ固まってないとこがあるんで、また皆さんの意見を聞き
たいのですが…。
Q1:姉妹のなかで甘いもの好き、辛いもの好きって誰?
逆に甘いもの苦手、辛いもの苦手って誰?
Q2:みんな揃って食事をするのはどんな感じで?
ダイニングにテーブルとイス?、それとも床置き?
それともお座敷にちゃぶ台?
Q3:席順は決まってる?、決まってない?
よろしくです。。。
#いきなりミス発見。県大会で駒沢はないだろと… orz
‥orzorzorz
作Bさんいきなりくだらんレスで割ってしまって申し訳ないっす‥
197 :
ねぇ、名乗って:2007/06/27(水) 19:54:49 ID:vuGASLSg0
作Bさんネタ四号です(勝手に名乗ってる?)
文章表現為になります!私はいつも良くて脚本?悪くて台本?
みたいな文書表現で会話部分と補間部分?のバランスがいまいちかな?
私の主観ですが・・・参考になるか?!
Q1、辛い派、舞美、舞、愛理甘い派、えりか、栞菜、早貴、千聖かな?
Q2、℃-uteは床置きぽっいがここはテーブルで、
Q3、決ってはいなが舞、千聖は舞美の隣に座りたがる?
●丘の上の公園
「ガタンッ!、プシューーーーッ!」
「あ…、やっちゃった」
勢いよく段差に乗り上げた舞ちゃんの自転車は、前タイヤが派手な音を出しながらパン
クした。もう1年以上乗りつづけているタイヤだから、ちょっと勢いをつけてジャンプと
かするとパンクしてしまう。それは分かってはいるんだけど、ついついやってしまうのが
…
「乙女の運命(サガ)なのよねー」
わけのわからない独り言をつぶやきながら、舞ちゃんはいつもの自転車屋さんに向かっ
て自転車を押し始める。途中の公衆電話から家に電話して、パンクの修理代を持ってきて
くれるようにえりかちゃんにお願いした。
「何回目…だっけ?」
ウチではよく自転車をパンクさせちゃうから、自転車屋のおじさんとはすっかり顔なじ
み。中でも栞菜、千聖、舞ちゃんは「我が家のパンクTOP3」なのだ。去年までは舞美
ちゃんがダントツの1位だったんだけど、トレーニングを兼ねて駅まで走るようになって
からは、めったに自転車に乗らなくなっちゃった。だから繰り上がりで舞ちゃんがTOP
3の一員になった。
●早貴の部屋
私が『バリー・ヒッター』のスペクタクルな展開に熱中していると、ドアをノックして
えりかちゃんが入ってきた。
「千聖ー!、いるー?」
「なんで私の部屋なん?」
「いや、千聖の部屋にいないし…、こっちにいるかなと思ってさ」
「来てないよー?」
「そっか、どこにいるんだアヤツは…。じゃあ、ナッキーにお願いしとくかな、キッチ
ンのカレーがさ、今火を止めたとこなんだけど、10分くらいしたら、ハチミツを入
れて、よくかきまぜておいてほしいの」
「えー…、私、忙しい」
「忙しくないじゃん(笑)!。私これから舞ちゃん迎えに行かなきゃなんなくなったか
らさあ。お願いしますよ」
「じゃ、10分したら行くよー」
「頼んだよっ」
そういってえりかちゃんはまたパタパタとスリッパの音を響かせながらキッチンの方へ
向かっていった。私は再びバリーのシュールな世界に没頭していった。
●再びキッチン
「あれ?、ないぞ、ハチミツ…」
調味料の入った棚を覗き込みながら、えりかちゃんは必死になってハチミツのビンを探
している。いつもここに入ってるはずなのに。前に一度、千聖が冷蔵庫にしまっちゃって、
カチンカチンに固まってしまい、みんなからブーイングを受けたという事件があって以来、
「ハチミツは棚にしまう」って決まってたのに…。
「まさかコッチじゃないよなあ…」
そういって、冷蔵庫や食器棚を探してみたけど、ハチミツのビンはとうとう見つからな
かった。まさに灯台元暗し。それはガスコンロの横、ちょうどえりかちゃんの腰のあたり
の位置に置いてあったのだから。
「まだ半分以上あったはずなのになあ…。しょうがない。ついでに買ってくるか」
えりかちゃんはそういって、舞ちゃんを迎えにいく支度をした。
●家の前
えりかちゃんが玄関を出て自転車に乗り、表の通りに出ようとしたちょうどそのとき、
千聖が帰ってきた。
「あー千聖ー!、どこ行ってたんよアンタはぁ?!」
「ゴメンゴメン!、舞ちゃんに頼まれて、お使いしてた」
「なにそれー?!、あたしこれから舞ちゃん迎えに行くんだからあ」
「それは知ってるけどぉ、それとは別のこと」
「なによそれぇ?」
「えへへぇ、ナ・イ・ショ!」
「隠し事ぉ?、またなんかヘンなこと考えてんでしょ?!」
「まーねー!」
「あそうだ、ナッキーに伝えてほしいんだけど『ついでにハチミツ買ってくる』って言
っておいてくれる?」
「え、ハチミツ買ってくるの?!」
「そ!、あとは頼んだよ。じゃあねぇ!」
そういってえりかちゃんは、颯爽と町に向かって自転車をこぎだした。千聖はポカーン
と口をあけたまま、えりかちゃんの背中を見送っていた。
●雑貨屋さん
「ねーねー愛理ー、見てコレー」
「なあにー?」
「お茶っぽい」
「『ぽい』って、お茶じゃん(笑)」
栞菜と愛理は一緒に買い物に出かけていた。買い物自体も久しぶりだけど、二人だけで
出かけるっていうのももっと久しぶりなので、すっかり「うきうきモード」で電車に乗っ
た。友達から聞いた話を頼りに、新しくオープンしたショップに服を買いに行ったのだけ
ど、どうやらお目当てのものは見つからなかったらしい。最初のお店でいきなり目的を失
ってしまった二人は「しょんぼりモード」になっちゃった。
でも、せっかく出かけてきたのだから、いろんなショップを巡ってみようということに
なった。アクセサリーショップとか、アイドルグッズのショップとか、クレープ屋さんと
か…、すっかり「ブラブラモード」を満喫する二人。それで今は、いろいろと面白いもの
が置いてある雑貨屋さんにいる。たいていこの二人が出かけると、家族にヘンなおみやげ
を買ってくるのだけど、このお店は「そういうもの」を仕入れるときの定番ショップ。
「ほら!『UB茶』だって」
「なに?『UB』って」
「『ULTRA BITTER』、超苦いってこと!」
「う・わ!、ナッキーとか好きそう」
「『冷たくしてもおいしい』って書いてある…」
「ふーん。でも苦いんでしょ(笑)」
「そうそう、今日カレーじゃん?!、これ作って、みんなに飲ませちゃおうよ!」
「あ、それいいかも!面白そう!」
いたずらを思いついた二人は、急に「早く家に帰りたいモード」になっちゃったらしい。
「おみやげ」を買って、駅に向かって歩き出した。
●自転車屋さんの前
「やっほー!、舞ちゃん!」
「えりかちゃんきたーっ!!」
「ってかさー、君ねぇ。これで何回目〜?」
「ん〜と、3回目かな?、今年に入って…」
「多くね?、ね?」
「もうタイヤ古いからだってさ。次パンクしたら、タイヤ交換しないとダメだよって、
おじさんが言ってた」
「いやいや、きっとタイヤのせいじゃないから。それ違うから(笑)」
「だってちょっとスピード出してただけだよ〜、あそこに段差があったのが悪いんだ
!」
「わ〜かったわ〜かった。早く千聖みたいにうまく乗れるようになろう!」
「おーーっす!」
千聖は2ヶ月くらい前から、急に自転車の乗り方がうまくなった。どんなにスピードを
出しても、どんなでこぼこ道を走っても、なかなかパンクしなくなったのだ。どうしてな
のかは、千聖自身にも説明できないのだけど、やっぱりなにかコツがあるんだろうってこ
とで、みんな納得している。だから舞ちゃんも、千聖と同じ年くらいになったら、きっと
パンクしなくなるだろうって、みんながそう励ましている。だけどそれじゃ、舞美ちゃん
や栞菜の説明がつかないんだけどね。
「1200円になります」
「あれ?、え?、1200円?!」
「パンク3箇所もあったのでね〜」
「えー?!、3箇所もー!、舞ちゃん、どこ走ってたん〜?」
「普通の道…」
「ぜったいそれ『普通の道』じゃないっしょ〜(笑)」
えりかちゃんは自転車屋のおじさんに支払を済ませると、舞ちゃんと二人して、自転車
を押しながら並んで歩きはじめる。家に向かう途中には、大きなスーパーがあるので、そ
こで買い物をしていくつもり…。
●家の中
「あれっ!、10分過ぎた?!」
すっかり「バリー・ヒッター」のサスペンスフルな世界に熱中してしまっていた私は、
部屋を飛び出してキッチンに向かった。と同時に、いったいどれくらいの分量でハチミツ
を入れたらいいのか、聞くのを忘れたことに気づいていた。で、あわててキッチンに行く
と、カレーの鍋とハチミツを目の前にして、千聖が首をかしげていた。
「あれ?、千聖いたんだ?」
「うん、今ちょっと出かけてた」
「えりかちゃん、行っちゃった?」
「うん、舞ちゃん迎えにいったんだけどぉ、あのね?、『ついでにハチミツ買ってくる
って、ナッキーに伝えて』って、言われたの…」
「え?!、ハチミツ?」
「うん」
「ここにあんのに?」
「うん」
「こんなにあんのに?」
「うん」
千聖のとなりで、カレーの鍋とハチミツのビンを見つめながら、私も一緒に首をかしげ
てしまった。
「どれくらい入れるか、聞いてる?、ハチミツ…」
「聞いてない…」
「足りない…ってこと?」
「分かんない…」
「でも…、きっと足りないから…、『買ってくる』って言ったんだよね?、えりかちゃ
ん」
「うん…、きっと…」
再び、しばしの沈黙…
「「そうかっ!」」
二人はほとんど同時に、頭の上に電球を光らせて、左の手のひらを、右手のグーでたた
いた。
「えりかちゃんが『買ってくる』って言ったのは、きっとなくなっちゃうから、その次
のためってことじゃない?」
「っていうことは、コレ全部使っちゃうってことなんだ!」
「じゃ、入れよう!」
私は千聖と共同で、ビンに残っていたハチミツをすべて、カレーの鍋に入れた。大き目
のスプーンで、何回も何回もすくっては入れ、すくっては入れ…。ビンは重いし、スプー
ンからはタレるし、二人で交代しながらやってたけど、途中でめんどくさくなっちゃって、
最後はお湯を入れてぐるぐるかき回して、ビンごとあけちゃった。
●スーパーの前
「あっ!、お金ないじゃんっ!!」
「えっ?!どうしたの?、盗まれた?!」
「いや、そうじゃなくて。パンク代とハチミツ代と思って、ギリギリしかポケットに入
れてこなかったから…」
「ハチミツ?!…」
「そう、カレーの隠し味に入れるの」
「別に、なくてもいいんじゃないの?」
「そりゃそうだけどさぁ、やっぱ少しでもおいしいほうがいいじゃん?!、たった大さ
じ1杯でも、入れるのと入れないのでは違うんだから!」
こういうときのえりかちゃんは、なにがなんでも意見を曲げない。たとえ末っ子の舞ち
ゃんだって、そこらへんはちゃんと心得ていて…
「じゃあ舞美ちゃんに、買ってきてもらうようにお願いしてみれば?、もう少しで帰っ
てくる時間でしょ?」
「あ、そっか!、舞美の帰ってくる時間だわ」
言うが早いか、えりかちゃんは携帯を取り出して舞美ちゃんに電話をする。こういうと
き、姉妹が多いっていいなって思う。舞美ちゃんはちょうど地元の駅に着いたところで、
家まで走って帰ろうか、歩いて帰ろうか迷っているところだった。
「もしもしー、なんー?」
「舞美ー?、今日もカワイイかあーい?」
「汗かいたよー。早くシャワー浴びたいー」
「今どこー?」
「駅ー。着いたとこー」
「途中でさー、ハチミツ買ってきてくれるー?」
「ハチミツぅ?、家にいっぱいあったじゃん?」
「それがさー、ないんだよねー。見つからないだけなのかもしれないけど。ちっちゃい
のでいいからさー、買ってきてくれるー?」
「今日カレーだったよね。隠し味?」
「そーそーそー。隠し味。だから大さじ1杯分でいいんだけどねー」
「わかったー。買って帰るー」
「よろしくねー」
二人の会話はあいかわらず独特なテンション。舞ちゃんは苦笑いを隠すようにちょっと
顔を下に向けて、えりかちゃんと並んで歩いてる。そろそろ夕方。街の景色が、オレンジ
色からピンクに染まっていく。
「舞ちゃん、夕焼け見ていこうか?」
「おーーっす!」
二人は丘の上の公園に向けて自転車をこぎだした。
●夕方の家の中
「ただーいまー。おーい!、だれもおらんのかー?」
スポーツバッグを玄関にどかっと落とし、舞美ちゃんはぶっきらぼーに靴を脱ぎ捨て、
やっぱりぶっきらぼーにキッチンに入ってきた。
「お、居眠り注意」
ちょうどカレーの鍋を眺める位置で、千聖がテーブルにつっぷして眠っている。えりか
ちゃんのお手伝いで疲れたのかな。毛布をかけてあげたのは誰だろう。そんなことを考え
ながら、舞美ちゃんは千聖を起こさないように、そっと買ってきたハチミツのビンを、テ
ーブルに置いた。
「(これが特製カレーですね)」
ガスコンロに近づき、大きな鍋のふたを開けると、カレーのいい香りが漂ってくる。ち
ょっとその香りを味わっていたい気分…、なんだけど、自分の汗ばんだ身体も気になって
きた。
「(まずはシャワーだな)」
舞美ちゃんはそうつぶやいて、キッチンを出ていった。
「ただーいまー」
「ただーいまー」
「おかーえりー」
「おかーえりー」
栞菜と愛理がお互いにあいさつを言い合いながら、玄関にあがってきた。珍しいことに
家の中はシーンとしていて、だれも迎えにくる者がいない。
「舞美ちゃん発見!」
「舞美ちゃん発見!」
テキトーに脱ぎ捨てられた靴と、玄関に放置されたスポーツバッグの存在で、舞美ちゃ
んが帰ってきていることはすぐに分かる。こういうの、妹たちにはお手本にならないんだ
けど、その「ちょっと抜けているところ」が、逆に舞美ちゃんの魅力でもあるんだな。聞
き耳を立てると、風呂場のほうからシャワーの音が聞こえてきた。
「よし!、作戦開始だっ!」
「作戦開始だっ!」
二人はそろりそろりとキッチンに向かう。そこにはあいかわらず千聖が眠っているんだ
けど、起こすことのないように、そして気づかれることのないように、お湯を沸かし、濃
い目のお茶をいれ、氷で薄めてガラス製のボトルに移し、冷蔵庫に入れた。
「お、コレは、ハチミツでわ、あ〜りませんか〜」
「しかも新しいハチミツですわね〜え」
千聖がつっぷしているテーブルの上にある、舞美ちゃんがさっき買ってきたハチミツを
見つけて、二人は人差し指を口に当てながら、ヒソヒソ話を始めた。
「コレ、なんに使うか、ご存知で、ありんすか〜?、愛理さん」
「さ〜て、なんでしょうねえ、栞菜さん」
「実はコレ、カレーに入れるでざまんすよ〜、オホホホ」
「カレーに入れるざまんすか〜、オホホホ」
そういいながら栞菜は、新しいハチミツのパッケージを開いた。もうずいぶん前のこと
だけど、前回の「えりかちゃん特製カレー」を作った時にお手伝いをしたのは栞菜だった。
だからそのときのレシピを、ちゃんと覚えていたんだね。栞菜はハチミツのビンのフタを
開けて、ちょうど大さじ一杯分をすくった。
「こうして大さじ一杯、入れるだけで、カレーがひとあじ違ってくるざまんす〜、オホ
ホホ」
「ほほー、すばらし〜いざまんすねぇ〜、オホホホ」
「入れたら、よ〜くかきまぜるざまんす〜」
まだ温かさが残っているカレーの鍋をかき混ぜると、いい香りが漂ってくる。すると愛
理が思いついたように、でもやっぱりヒソヒソ話で、栞菜に話しかけた。
「ね、ね、ね、ね、もう一杯。入れてみませんことのよ?」
「『ことのよ』?、もう一杯でざまんすか〜?」
「こんなに大きい鍋でござんますし〜、ちょっと甘めのほうが舞ちゃんだって食べやす
いかもですわ〜、オホホホ」
「そうでござんますね〜、オホホホ」
二人はヒソヒソ話とヒソヒソ笑いを繰り返しながら、ハチミツを大さじでもう一杯、入
れた。
「よしっ!、作戦完了。てっしゅー!」
「てっしゅー!」
栞菜と愛理は、カレーの鍋と、ハチミツのビンのフタを元に戻し、そそくさとキッチン
を出ようとした。すると、シャワーを終えてタオルを頭にのせた舞美ちゃんが入ってきた。
「お、栞菜、愛理、おかえり」
「舞美ちゃんもおかえり!」
「なにしてたん?」
「いや、なんにも!、あ、あの、みんなにね、おみやげ買ってきたの。
あとで飲もうね」
「あとで『飲もうね』?」
「そう、おたのしみっ!」
「おたのしみっ!」
そう言いながら二人はまた、オホホホと笑いながら、自分たちの部屋へいってしまった。
舞美ちゃんは眠っている千聖の横を通り抜け、冷蔵庫から水の入ったペットボトルを取
り出した。ボトルをかざしてみると残り3分の1くらいになっている。
「これくらいなら、飲みきれちゃうな」
そういって舞美ちゃんは、「ラッパ飲み」で一気に飲み干してしまった。
「ふう、生き返る。あそうだ、ハチミツ入れておかなきゃ」
空になったペットボトルをつぶしてゴミ箱に捨て、食器棚から大きめのスプーンを取り
出し、ハチミツをすくってカレーの鍋に入れる。ハチミツのパッケージが開けられていた
ことに気づかないところとか、大さじじゃなくスプーンで代用しちゃうところとか、ハチ
ミツを入れたあとかき混ぜないところとか、ホント舞美ちゃんって、舞美ちゃんらしい。
とりあえず今日はここまでです。次回で完結するでしょう。たぶんw。
さるさん規制と連投規制に交互にひっかかってしまい、大変です。
>>195 へのご意見引き続き募集中です。
215 :
ねぇ、名乗って:2007/06/27(水) 22:29:18 ID:i+J4Iq1+0
芸スポ見てたらこんなのあったw
789 :名無しさん@恐縮です:2007/06/27(水) 21:58:55 ID:y9fmxIAg0
マイマイは天使だと思っている。
5年ほど前のキッズオーデション頃、舞美とえりかと一緒に群馬県のマイマイの実家(もんじゃ焼き屋)に
食べに行った時の話。
愛理と栞菜と3人でnkskの作った信玄餅を堪能しているといきなりマイマイが
玄関から入ってきた。
幼い顔立ちに似合わないサングラスをかけたいでたちで。
マイマイが「マイ、いつもの〜」と言って二階へ上がろうとすると、
店内にいたヲタとおぼしき集団が「マイマイさん!」「ハギティかっけー!」などと
騒ぎ出し、マイマイが戻ってきてくれて即席サイン会になった。
店内に13、4人ほど居合わせた客全員に店内にあった色紙を使い
サインをしてくれた。
ヲタ達がマイマイの好きな「小さな子どもが好きな男の人」だとわかったマイマイは
いい笑顔で会話を交わしていた。
そしてマイマイは「どうもこうもないっすよ〜」と二階に上がっていき、店内は静かになった。
私と岡井ちゃんはマイマイの気さくさとかっこよさに興奮しつつ
食事を終え、会計を済ませようとレジに向かうと、店員さん(つんく♂妹)が
階段の上を指差しながら
「今日のヲタ達はいっぱい金を落としてくれましたから。また来てくださいね」と。
あれには本当にびっくりした。
村上のサインは捨てた。
●その後のキッチン
「ただーいまー」
「ただーいまー」
「なんだ、みんな帰ってきてんじゃん」
「ほんとだー」
えりかちゃんと舞ちゃんが帰ってきた。玄関にずらっと並んだ靴を見れば一目瞭然、み
んな帰ってきていることが分かる。二人はそのままキッチンへと直行した。
「あれま、千聖寝てるしー」
「千聖ー、もうすぐ夕飯だよー、起きろー!」
舞ちゃんはそういいながら、千聖の肩を軽くゆすってみる。こういうときの千聖は絶対
に起きないことを知ってて、わざとやっているのだ。
「ってか舞美、大きいの買ってきてるしー!」
「さっすが舞美ちゃん(笑)。サービス精神ありあり!」
「まあ腐るものじゃないからいいけどさー、もう一個の出てきたら、いつ使い切るかわ
かんないじゃ〜ん」
「封があいてるね。入れておいてくれたみたい」
「でもね、今回はいつもよりたくさん作ったから、もう一杯入れましょう」
「甘口にならない?」
「大丈夫。大さじの一杯や二杯ぐらいでは、ホントに『隠し味』程度なんだから」
そういってえりかちゃんは、再びハチミツを大さじ一杯、入れた。
「おっと、そうだ!。ご飯を炊かなきゃ」
「え?!、炊いてなかったの?」
「炊いてなかったのよー。しまったー、舞美に頼んでおくんだったー」
そういいながらえりかちゃんは、またカレーを温めるために火をつけ、お米を洗う準備
にとりかかる。
「舞ちゃん、宿題は大丈夫?」
「うん、ゆうべ半分終わらせた」
「じゃあご飯炊けるまでの間に終わらせちゃいなよ」
「そだね。ナッキーいるかな」
「いるはずだよ。今日は『ひきこもり少女』だから」
その後、えりかちゃんはキッチンで夕飯の支度。舞ちゃんは私の部屋で宿題の続き。栞
菜と愛理は舞美ちゃんの部屋でなぜかトランプで遊んでいる。そんなふうにそれぞれに、
夕食の時間を待っていた。そうそう、千聖はあいかわらず夢の中。
●ダイニング
「スプーンと、フォークと、お箸と…、サラダはココとココね」
「アイアイサー!」
いつの間にか目を覚ましていた千聖は、再びえりかちゃんのお手伝いに元気いっぱいで
復帰。全員そろっての夕食って、何日ぶりだろう。たいていは、えりかちゃんと舞美ちゃ
んのどっちかが抜けてて、その他のときは舞ちゃんが別のおうちにお呼ばれしてたり、愛
理がピアノの先生のところに行ってたりして、なかなかみんなそろわないんだよね。だか
らホント、全員いるってだけで、なんだか嬉しい。
「みんなー、準備できたよー!」
「はーい!」
みんな待ちかねていただけあって、テーブルには全員の顔がいっせいにそろった。
「でわでわー、本日のメインディッシュー!、じゃなくてナベー」
「待ってましたー!」
「特製カレー!」
「きたきたきたーーーっ!」
「いえーぃっ!」
「っていうか、お腹ペコペコー」
「私もー!」
「みんな、つまみ食い、フライングなしだかんね〜」
「ほーい」
千聖がお皿にご飯をよそおって、えりかちゃんがそれにカレーをかける。舞ちゃんがそ
れぞれの席にできあがったお皿を運ぶ。舞美ちゃん、私、栞菜、そして愛理は席に座って、
ひざの上に手を置いて、それをじっと見守っている。
「ぐ〜〜〜」
「きゅるるる〜」
「おー、さっすがみんな育ち盛り!」
「ってか舞美ちゃんの音がいちばん大きくない?」
「そーかなー?」
舞ちゃんが全部のお皿を運び終わったころ、栞菜と愛理が目配せをして、席を立った。
「ちょい待ち!、ちょい待ち!、ちょ〜っと待ってね」
カレーのお皿が並んだテーブルに、それぞれの水の入ったグラスの横にもうひとつ、栞
菜と愛理が例のお茶の入ったグラスを並べていった。
「はいこれー、本日のおみやげ〜」
「何コレ?オレンジジュースみたい」
「いや、りんごジュース?」
「お茶だよ。キレイでしょう?」
二人が配ったグラスには、透明で鮮やかなオレンジ色の「お茶」が入っていた。ぱっと
見には、これがとっても苦いお茶だなんて分からないくらいにキレイな色。みんなはグラ
スをかざしてみたり、くんくん匂いをかいでみたり…。
「なんか、クスリっぽいニオイがするう」
「『UB茶』っていうんだよ」
「『UB茶』?」
栞菜がお茶のパッケージをみんなに見えるようにかざした。そこには確かに「UB茶」
と大きなロゴで書いてある。でも、よくよく見ると、そのロゴの下には小さく
「ULTRA BITTER TEA」って書いてあるんだけど、それを気づかれないように、栞菜は
そのパッケージを隠してしまった。
「これね『ULTRA BEAUTY』っていう意味なんだよ」
「『ULTRA BEAUTY』?」
「そう、ちょ〜〜美人になれるお茶!、お肌にいいんだって」
「「「「「ほほーぅ」」」」」
なんてだまされやすい家族なんだ。私もその一人なんだけどさ。
「じゃあ!みんなでいっせいに飲んでみよう!」
「飲んでみよう!」
「「「「「「「かんぱぁ〜い!」」」」」」」
「…」
「…」
「?」
「…」
「…」
「…」
「…」
「ブッ!!!!!」
「ニガッ!、超ニガッ!!」
「?!」
「にっがーい!!」
「うわっ、すごいコレッ!」
「にがっ!にがっ!にがっ!」
「ひえ〜っ!!」
実は栞菜も愛理もまだ飲んだことがなかったから、おそるおそる、ちょこっとだけ飲ん
でみたんだけど、それだけでも予想をはるかに超えた苦さだったみたいで、結局みんなも
のすごい表情になってせき込んでしまった。
「「「「「「「ゴホッ!ゴホッ!」」」」」」」
「水!、水!」
「っていうかサラダ!」
「はいサラダ!」
「なんか甘いもの!イチゴ!」
「私もイチゴ!」
「イチゴ!」
「イチゴ!」
カレーを食べる前にみんな、水とかサラダとか、サラダにのっかっていたイチゴとか食
べ始めちゃった。そうして「お口直し」をしないと、とてもじゃないけど「辛いカレー」
なんて食べられそうになかったから。おかげでイチゴが全部なくなっちゃった。
「栞菜ー、愛理ー。ちょっとそれ見せてみ!」
舞美ちゃんがにがーい口を手で抑えながら、栞菜が隠したパッケージをとりあげた。
「わっ!『ULTRA BITTER』だって!、BEAUTY じゃないやん!」
「『ビター』って?」
「『苦い』って意味」
「じゃ、『ちょ〜〜苦い』ってこと?!」
「美人じゃないじゃ〜ん!」
「苦いだけなの?!、やられたー」
「栞菜ー、愛理ー。やったなー」
「まあ、まあ、『良薬口に苦し』っていうじゃない。気を取り直して、カレーを食べま
しょう!」
思いがけず二人のフォローをしたのは、えりかちゃんだった。いたずらのヌシ、栞菜と
愛理は、あまりにもお茶が苦かったので、いたずらを楽しむどころか、ちょっと反省して
るみたい。でもね、実は私はこれくらい苦いの、好みだったりして。
「なにしろ今回のカレーは、か・な・り、気合が入ってますからねー」
「ほほーぅ」
「千聖にも手伝ってもらったし、ね」
「えへへ〜、野菜とか切るの結構大変だった」
「『後藤家』のウラワザも使ってるし、絶対おいしいぞお〜」
「それじゃあ、食べましょう!」
「「「「「「「いただきま〜す!」」」」」」」
「…」
「…」
「…」
「…」
「…」
「…」
「…」
「甘い…」
「なにコレ?…」
「あま〜い!」
「甘っ!…」
「甘いね…」
「すごくね?…」
「ひえ〜っ!!」
みんなスプーンを口に運んだ状態のまま、動作が止まってしまった。それはカレーなん
かじゃなくて、なにか別の食べ物、いやお菓子みたいに甘かったから。
「ちょ、ちょっと!、なんでこんなに甘いの?!、舞美、どんくらいハチミツ入れた
のさ?!」
「どんくらいって、スプーン1杯だけだ…よ?」
「うそー。それだけでこんなに甘くなるわけないよ〜」
思わず私と千聖は目を合わせてしまった。でも、そのときに目を合わせたのは、私たち
だけじゃなかった。
「あのー…」
「ん、栞菜?」
「私たちも、入れたんですけど〜」
栞菜と愛理がおそるおそる、そろって手をあげた。
「あんたたちもー?!、って、どれくらい入れたのよ〜?」
「大さじ一杯。いや、二杯」
「えー、なんでー?」
「だってまだ開いてないハチミツが置いてあったから…」
「あー、あたしが買ってきたやつだ〜」
え?、買ってきたハチミツも入れちゃったの?、っていうかそれは予備のハチミツじゃ
なかったの?、「大さじ一杯」って…。私と千聖は目を合わせながら、お互いの顔色が青
ざめていくのを見ていた。こういうときって、ホントに顔の色が青くなってくるんだね。
「あのー…」
「え?、ナッキーも?!」
「私たちも、入れたんですけど〜」
「ナッキーと千聖?!、えー、だってさぁ、ナッキーに頼んだときには、なかったんだ
よ?、ハチミツ」
「あったよ、私が出したんだもん」
「え?!、千聖が?、出したの?、どこから?」
「いつもの棚」
「どこに置いたの?」
「ガスコンロの横」
「え?、え?、なんでなんでなんで〜?」
なにがなんだか、ワケがわからなくなってしまったえりかちゃんは、オーバーアクショ
ンぎみに腕を組んで、首を左右にブンブン傾げている。みんなもどう話していいんだか分
からなくて、黙ってしまった。
「えりかちゃん、あんまり近くにあったから見つけられなかったんじゃない?、それで
『ない』って勘違いして…」
「え?…」
するどい推理を披露したのは、「名探偵マイマイ」だった。みんなの視線がいっせいに
えりかちゃんに集中した。
−−えりかちゃんが電話に出ている間に千聖が出しておいたハチミツを、えりかちゃん
が見つけられなくて、なくなったモノと勘違い(実際には私と千聖がカレーに入れたんだ
けど)。それで舞美ちゃんに買ってきてもらうように頼んで、届いたハチミツを今度はみ
んなが別々のタイミングでカレーに入れちゃった。−−
事件の全容が、みんなの頭の中でだいだい固まってきた。でも、核心となる衝撃的な
事実が明かされるのは、このあとだった。気を取り直して、えりかちゃんが再び口を開いた。
「で、どれくらい…、入れたの?」
「…半分…」
「半分…って?…」
「ビンの…残ってた半分…」
「「「「「ええぇ〜っ!」」」」」
どうやらカレーの隠し味のハチミツが、大さじ一杯だけでいいということを知らなかっ
たのは、この時点では私と千聖だけだったらしい。
合計で大さじ4杯と大きなスプーン1杯、そしてビンの半分の量のハチミツを入れれば、
それはそれはカレーがカレーじゃない食べ物になったって不思議じゃない。
「…ってことは、全員が、入れたんだ…、ハチミツ…」
「ありえな〜い!」
「すげぇ〜!!」
「ひえ〜っ!!」
「まさに『特製カレー』じゃない?」
さすが能天気な舞美ちゃん、こういうときの機転の良さというか、天然パワーには、ホ
ント救われる。
「ねーねー、さっきの『苦いお茶』を飲みながら食べたら、どうなるかな?」
「え゛っ!」
「やってみ…る?」
「ちょっとこわいんですけど…」
舞美ちゃんはもういちどカレーを口に放り込み、続けて苦いお茶を口に含んだ。千聖も
負けじとチャレンジ精神を発揮して、舞美ちゃんと同じように両方を口に入れた。
「あ、なんかね、微妙…。っていうか絶妙!」
「なんだか味が戦ってる!、口の中で!」
「ちょっと面白い味かも〜!」
二人の反応が悪くないので、他のみんなもまねして食べ始めた。
「あ、確かにへん〜!」
「なんか、おいしいかもよ?」
「すんごい絶妙すぎる!(笑)」
「あー、戦ってるう。分かるう!」
「ひえ〜っ!」
おいしいんだか、おいしくないんだか、よく分からないんだけど、とにかく「すごい味」
を堪能して、結局みんなが完食してしまった。さすがにおかわりをした人はいなかったけ
どね。このときだけ、ドレッシングをかけないプレーンなサラダが、すこぶる評判が良か
ったっていうのも、無理はない。
この日、我が家は新しい「味のコラボレーション」と、二度と作られないであろう奇跡
の「特製カレー」を味わった記念日となったのであった。
おしまい
ひとこと
なげーよ。
作Bさんお疲れ様です( ^-^)⊃旦~
とても楽しく読まさせてもらいました。
それぞれのキャラの描写が最高です(*´д`*)
気が早いですが次回作も楽しみにしてます(^^)
229 :
ねぇ、名乗って:2007/06/29(金) 19:50:27 ID:MNR0xks90
名探偵℃-uteの(気まぐれな殺意?)ページ03
舞美、早貴<おとーさん!>一週間も帰らない父を心配して
手作り弁当を警視庁に届けにきた舞美と早貴だった・・・
矢島<あぁー早貴と舞美か・・>42歳とわ思えないやつれ様だった、
早貴<何か手伝える事無いかな〜と思って>舞美<お弁当持ってきた>
吉良<久し振り〜(笑)舞美ちゃーんと、、早貴ちゃん!>突然割って入る吉良、
この男密かに舞美に惚れてるらしい・・・?
舞美<久し振りヨシヨシ!>このあだ名の命名者は勿論七女の舞である、
早貴<こんにちは吉良さん>矢島<吉良!報告書書いてる途中だろ?>
吉良<課長私只今からランチタイムであります!>
矢島<報告書書いてからな!>舞美<ヨシヨシの分も有るからね!>
吉良<おっし!!五分で書く嫌!二分だ!!>矢島<たくっ!>
ここで補足!何故舞美が吉良の事をあだ名で呼ぶのか?
警視庁特殊戦闘術(基本的にSASの流れを汲む)で舞美に20戦連敗中である・・・
ついでに説明しておくと矢島総一郎は16年前突然SAS入りを希望、
その五年後に警視庁に戻り若くしていまの地位に就くことに、
その父の影響で最も才能を開花させたのが舞美であった?
しかし大学出のエリートじゃない矢島総一郎が警視庁捜査一課(殺人課)の
課長まで登りつめたのには他の理由がありそうだがそれは後ほど・・・・
早貴<お父さん今度の事件の事で私思うんだけど・・>矢島<駄目だ!!>
父親のやさしい顔から突然厳しい表情になる矢島・・
舞美<お、と、うさん?>早貴<・・・・>
矢島<今回の事件は危険だ!特に同世代のお前たちを巻き込む訳にはいかない!>
<早貴、舞美、そして愛理は特にな、ここに何度か顔を出してるお前たちは・・・>
何かを感じたように矢島は会話を中断してこう切り出した、
矢島<そう言うことだ・・今回の事には首を突っ込むな!!>
<当分ここには来るな!愛理にもそう伝えておけ>娘たちに背を向ける矢島、
吉良<矢島さん書きました!>・・空気の読めない男であった・・(苦笑)
矢島<何が二分だ!十分はたってんぞ?>吉良<・・・・>舞美、早貴(笑)、
どもです。
>>227 空気読めなくて申し訳。勢いで書いてしまったぶん、ダラダラと
長くなってしまいました。
>>228 どもです。おほめいただきありがとうございます。
キャラは主観入りまくりなんですけどね。まあしょうがない。
ノリで書く人なので、今回は土台のストーリーがあったから
だだだっと書けちゃったんですけど、次はいつになるか分か
りませんw。
次回作はマイマイのファンタジーものか、梅さんのラブコメ、
なんてのを構想してますけど、まったく別のものが出てくる
かもしれません。期待しないで待っててください。
名探偵℃-uteシリーズも楽しんで見てますんで頑張って下さい(^^)
232 :
ねぇ、名乗って:2007/06/30(土) 15:26:25 ID:9UwRg1jd0
このスレ、すっごく面白いな!
作者さん達みんなレベル高くてすげーよ!!
応援しているのでこれからも頑張って書いてくれ!
233 :
ねぇ、名乗って:2007/07/01(日) 02:27:58 ID:xVWJlUnL0
名探偵℃-uteの作者です、
231さんありがとうございます!頑張ります!!
勢いで描いてしまいすでに説明出来ないネタが・・・
最終的には放置プレイで完結後あと説で?
234 :
ねぇ、名乗って:2007/07/01(日) 17:55:09 ID:iKN2hqmn0
235 :
ねぇ、名乗って:2007/07/01(日) 18:21:07 ID:xVWJlUnL0
名探偵℃-uteの(気まぐれな殺意?)ページ04
早貴がこの事件に関連していると思われるケータイのサイトを見つめていた・・・
愛理<何を見てるの?>あまりケータイを見つめる事のない早貴に
興味津々な愛理だがケータイの画面を見て普通でない事に気ずく、
早貴<愛理〜このサイト突然送られてきたんだけど・・・>
愛理<なになにぃ〜Sons of Liberty?自由の子供たち?>、
サイトの冒頭にこんな行が、あなたはいつから死ぬことを意識したの?
投稿型の自殺サイトであった、愛理<ありえない・・・>
メニューが掲示板しかないシンプルな作りが冷めた暗闇を色濃く表していた!
エリカ<早貴、愛理お父さんに止められているんだから!やめなよ>
言葉とは裏腹にエリカ以下姉妹みんな興味津々で、
いつのまにか矢島家七人姉妹がリビングに集まっていた
サイトの中身は生きる事に疲れた優鬱で力なき叫びばかりであった、
その中に早貴が気になる書き込みが・・・
拳銃で頭を打ち抜きたいとか粉々になりたいだとか・・・
早貴<んん〜明らかにこれは罠だな〜、お父さんもああ言ってるし、>
<ここは放置しとくか!>やけに大人しい姉妹に恐る恐る振り返ると
舞美以下六人これから始まる冒険に爛々と目を輝かせていた!!
早貴<駄目駄目!絶対ダメ!!>エリカ<なぁ〜も〜いいじゃん!貸して>
本文長すぎで切断することに・・・、
236 :
ねぇ、名乗って:2007/07/01(日) 18:24:01 ID:xVWJlUnL0
235の次項です、
早貴の手から素早くケータイを奪うと踵を返しエリカが言った、
エリカ<これはうちらに対する挑戦だよね!いい〜んじゃないい!!>
<cuteでcool!そしてstylishな私達に挑もうなんて根性あるよね〜>
舞<エリカちゃん事件解決にはどれも関係ないし!>・・・
舞美<まあまあーいいんじゃない!でどうやって接触する?>
エリカ<それは舞美が・・ねー>舞美<えぇ〜無理無理!>
早貴<じゃあ私が、>愛理<じゃあ私が、>・・栞菜<じゃあ私が、>
千聖<それなら千聖も>舞<じゃあ舞も>・・・舞美<じゃあ・・・>
渋々手を挙げる舞美、全員<どうぞ、どうぞ>舞美<ダチョウ倶楽部か!!>
舞美<もお〜わかったわかった!その代り事件解決後の金一封は私が・・>
エリカ<いいよ!!でっ何買うの?>舞美<ビリーズブートキャンプのDVD・・・>
舞<もういいって・・>姉の舞美が何所に向かっているのか疑問に思う妹である、
237 :
ねぇ、名乗って:2007/07/01(日) 22:10:30 ID:o1+rJ5yZO
六月のある日、土曜日の午後。
屋根の端から、千聖がピョコと屋根の上に顔を出した。
「…落ちないように気を付けてよーー」
舞美が下から心配気に叫んだ。
二階の窓から出られる物干し台に出て、そこでマイが押さえる椅子の上に立って
屋根の上を覗いていた千聖は平気そうに答えた。
「大丈夫、大丈夫。あ、あったよーーー!!」
「で、どうーーー?」
舞美が再び下から叫ぶと、屋根の上に落ちている片方だけのサンダルを見つけて
千聖が答えた。
「うん、裏返ってる!!」
(あらら、やっぱりか)と舞美はちょっとガックリきた。
「じゃあ、落ちないように気を付けて降りてきてよーー!!」
「わかった!」千聖が答えた。
同じく下にいたナッキーが言った。
「舞美ちゃん力入れすぎ!『明日天気になあれ』で屋根の上まで跳ばす事ないじゃん」
たしかにそうだと舞美は思った。
スポーツが得意で脚力が自慢の舞美だったが、自分の脚力に我ながらあきれた。
ほんのちょっと力を入れたら、サンダルは見事に屋根の上まで飛んでいってしまったのだ。
「でもすごいよね舞美ちゃん」「うんうん」「あははは」
いっしょにいた愛理と栞菜に感心され、えりかには笑われてしまった。
(でも仕方ないじゃないか、明日はどうしても晴れて欲しかったんだから)
と舞美は心の中で言い訳した。
先週も先々週も週末は雨だった。
女の子が七人もいると、洗濯物の量が半端じゃなく多い。
でも平日はみんな学校で忙しく、お洗濯はどうしても週末に一週間分の物をまとめて洗う事になる。
乾燥機など無い我が家では、雨だと洗った七人分もの洗濯物を干す場所が無くけっこう大変なのだ。
だから週末は、外に気持ちよく洗濯物を干したくていつも晴れて欲しかった。
そして、明日はそんなお洗濯よりもっと大事なイベントがある。
千聖とマイの小学校の運動会の日、正確に言うと、三回目の運動会【予定日】だ。
千聖とマイが楽しみにしている運動会。
そしてみんなが、応援に行きお弁当を食べるのを楽しみにしている運動会。
それが、舞美が「父兄参加競技に出る」と決めた途端に雨が続いて二度も中止になってしまった。
もう梅雨も近い六月、明日が雨で中止になれば次は未定なんだそうだ。
なのに明日の天気予報は「降水確率50%」などというどっちつかずの数字。
晴れて欲しくて「明日天気になあれ」で遊んでいたら、何度やっても雨予報になるので
ついムキになって力を入れ、サンダルを屋根の上まで飛ばしてしまった。
みんなが「やっぱり舞美ちゃんがやると雨だね」って言うのも悔しかったんだ、きっと。
そう、舞美は自他共に認める雨女。
舞美が外に出ると雨が降り、中へ入ると雨が止むという理不尽な目に何度もあった。
それに何度も付きあわされてる姉妹達も舞美を雨女と呼ぶようになった。
やがて『急に雨が降ってきたんだけど、舞美今外に居る?』なんてメールまで
送られてくるようになってしまった。それでも否定できないところがまた悲しかった。
『自分が参加する大事なイベントの降水率』は半端じゃなく高いのを自分で知っていたから。
「でも大丈夫だよ、ウチには強力な晴れ女の愛理がいるから」
「うふ、うふふふふ」
舞美がそんな事を考えていると、えりかがそう言い愛理が自信ありげに笑った。
そうだ、愛理は舞美と正反対の晴れ女なのだ。
雨が降ってても、愛理が表へ出た瞬間にカラッと晴れる奇跡のような瞬間がよくあった。
そうだ、私がいくら雨女でも、愛理がいるから大丈夫だ。
舞美がそう考えて安心しようとすると栞菜が言った。
「じゃあさ、舞美ちゃんと愛理とで明日の天気占ってみようよ」
「でも、どうやって?」
「あのさあ…」
「あはは、面白そう!」
栞菜が説明し、みんなが賛成した。
まったく、栞菜は頭がいいのに時々こんな変な事を考えつく。
それでも、舞美もやってみようと思った。
庭に繋がる縁側横の和室で、舞美と愛理が向かい合って座り、
それを他のみんなが見守っている。
『最初はキュート、じゃんけんポン!!』
舞美と愛理のじゃんけん勝負だ。
雨女と晴れ女が勝負をすれば、明日は勝った方の天気になるかもというのだ。
くだらないなあ、幼稚だな、と舞美は思ったが、例え遊びでも、もしかして自分が負けることで
明日晴れてくれるならいいなと思った。だが、
「…あいこでショ!あいこでショ!
あいこでショ!やったーーー!…あ、あ、」
じゃんけんに勝った瞬間ついつい喜んでしまい、舞美は(しまった!)と思った。
あいこが続く間につい勝負に夢中になってしまったのだ。
もう、昔からだよ!何かに夢中になると前に考えていた事をつい忘れてしまう…。
「…じゃあ、さ、もう一回やってみよ、ね?」
舞美が言った。勝った方から「もう一回」と言うなんて変わった勝負だが
今度はきっちり負けよう、と思った。
『さぁいしょはキュート、じゃんけん…』
(まず可愛いポーズを取ってからジャンケンをする、という我が家のジャンケンは
えりかが考えて皆に広まった。舞美は最初は恥ずかしかったが、皆楽しそうなので
慣れてしまった。この家の変な風習や流行は大概えりから始まる)
『…ポン!!』
だが再び舞美が勝ってしまった。
みんなが落胆してる気がした。千聖が「明日は雨だな」と小声で言った。
私だって負けたいのに何で負けないのよ!?と舞美は思った。
普段から「空気が読めないタイプ」とかよく言われる。決して認めたくないけど
こういう時は自分でも認めざるをえない。
「…じゃあさ、10回勝負でやってみよ、ね!?」
舞美は言ったが、結局じゃんけんは舞美の10連勝で終わってしまった。
「いいじゃん別に。じゃあさ、明日晴れるように皆でてるてるぼうず作ろうよ」
その雰囲気を見かねたかのようにマイがそう提案してくれた。
マイは最年少なのに時々大人な対応をしてみんなを助けたてくれたりする。
(ありがとうマイ)と舞美は心の中で感謝した。
そうだよ、みんなでてるてるぼうず作って願えばきっと晴れるよ。
せっかく作るのだから精一杯願いを込めて作ろう、と舞美は思った。
えりかが七人分の白い布とハサミを用意してくれた。
みんなで白い布を丸く切り取り、余った布屑をその布でくるんで丸めて首のところを紐で結び、
出来た丸にそれぞれが自分の似顔絵を描いていく。
「あ、それカワイイ!」「愛理の顔似てる!」「千聖のヘタクソ!」
大騒ぎしながら、可愛い七つのてるてるぼうずが出来上がった。
「じゃあさ、さっそくこれ吊るしてみようよ」
舞美が言った。
七人分の願いがこもってるんだもん、きっと明日は晴れるよ、と舞美は思った。
くるんッ!
庭に面した縁側の軒下にみんなでてるてるぼうずを吊るしてみたが、
舞美のてるてるぼうずだけがバランスを崩し頭を下に向け逆さまになってしまった。
「やだ、何でよ〜!?」
舞美は思わず声が出てしまった。
「舞美ちゃんのバランスが悪いんだよ」
「紐のところ上手く結べばほら…」
…くるんッ!
愛理や栞菜が手伝ってくれたが、(ナッキーてるてるぼうず)と(えりかてるてるぼうず)の
間に吊るされた(舞美のてるてるぼうず)だけが何度やってもすぐに
逆さまにひっくり返ってしまう。
「これじゃ『てるてるぼうず』じゃなくて『るてるてずうぼ』になっちゃうね」
千聖が遠慮なく言った。
でもたしかにその通りだ。自分の雨女パワーにもあらためて呆れた。
こんなの吊るしておいて明日雨が降ったら大変だ。
「いいよ、これもう。私のだけ外して置いておこうよ」
そう言うと舞美は自分のてるてるぼうずだけを外して床に置いた。
「いいよ気にしないで!みんなのてるてるぼうずできっと明日は晴れるわよ。
ごはんにしよう、ごはん。さ、いこ」
舞美はみんなの肩を叩いてそう明るく言った。
(そうだよ、みんなは気にしなくていいから)と舞美は心の中で自分に言った。
その日の夜、いつものようにごはんを食べ、TVを観る時、
舞美はみんなに気を使わせないように、そしてみんなに気付かれないように
明るくいつも通りに振舞った。いや、振舞おうと努めた。
だから、この時は自分を見つめるえりかとナッキーの視線に気付かなかった。
深夜になった。
みんながそろそろ寝静まったと思う頃、一人パジャマ姿で庭に降りてきた舞美は、
何かを考えるように夜空を見上げた。
(持久走が得意な千聖が、今年も一番を目指して毎日走りこんで練習していたのを
私は知っています。父兄参加競技で去年寂しい想いをしたマイが、
今年は私が出てあげる、と言った時のとっても嬉しそうな顔を私は忘れません。
だから……)
舞美は両手の拳を握って胸の前で合わせ、やがて深く目をつぶった。
「あれ、えりかちゃん!?」
「しーーーっ!」
庭に出る縁側の向こう端から、反対の端にいたこちらを見つけたナッキーに
えりか人差し指を口に当て合図をしたあと、舞美がいる庭の方を指差した。
舞美はこちらに気付いていない。ナッキーがえりかにそっと近づいて言った。
「舞美ちゃんやっぱりここにいたね」
「雨女なんてみんなシャレで言ってるのに決まってるのにさあ、
一人で思いこんじゃって、どたばたして、でテンパって…」
「で、いつも最後は神様にお願いするんだよね」
二人は小さく笑い合った。
やがて庭で祈る舞美を見つめてえりかが言った。
「…責任感が強いんだよ。でもいいじゃん舞美らしくて」
「だよね」
「でもナッキー、何でこんな時間に起きてきたの?」
「そういうえりかちゃんこそ」
その時えりかとナッキーはお互いが両手に持っている「それ」に気付いた。
やっぱり姉妹だ、考える事は同じらしい。二人は静かに笑い、
両手の指先に持った小さくて可愛い「それ」をお互い振り合ってみせた。
「舞美が行くまで隠れてて、それからやろうよ」
「うん」
舞美は何も知らずに祈り続けていた。
翌朝。
窓から射す光で目を覚ました舞美は、窓の外を見て叫んだ。
「晴れたーーーー!!」
快晴だった。舞美は喜びリビングへ駆け降りていった。
「みんなおはよー!ねえねえ今日は晴れたよーー!!」
「知ってるよ舞美ちゃん」
みんなはすでに起きていた。
千聖とマイなどはすでに着替えを終え、登校の準備まで終えているようだった。
普段はお寝坊なのに、イベントの日だけみんな早起きなんだから現金だな、と思った。
でもみんなそれだけ楽しみにしてたんだよな、晴れてよかったな、
だから私は……。
「行ってきまーす!!」「後で観にきてねー!!」
体操服姿の千聖とマイが勇んで家を出ていった。
「じゃ、あたしたちも行ってくるね」「いい場所取っておくからね」
愛理と栞菜も応援席の場所を取るために早めに家を出ていった。
舞美とえりかとナッキーには、まず一週間分のお洗濯を終わらせるという仕事が待っている。
洗濯機を回しながらえりかとナッキーが言った。
「ふー、一週間分のお洗濯物ってやっぱ多いね」
「でも早く終わらせて私達も観に行こうよ」
ピー、ピー、ピー、
洗濯機が仕事を終えた合図を送った。だが大量の洗濯物は一度で洗いきれる量ではない。
二度目の洗濯物を洗濯機に放りこむと、三人で洗い終えた方の洗濯物を抱えて庭に行き、
それを協力して干していった。だが舞美が言った。
「なかなか終わらないから、えりかとナッキー先に行ってて、
後は私がやっておくから」
「いいよ手伝うから、全部終わらせてからみんなで行こうよ」
そう答えるえりかに、舞美は意を決して言った。
「いいよ、今日はえりとナッキー二人で行ってきて。私は家にいるから」
「えーーーっ!?」「どうして!?」
驚く二人に舞美は答えた。
「…私、昨日の夜、神様にお願いしちゃったんだ。私は明日行きませんから
どうか晴れさせて下さいって。だから今日晴れたんだよ。
えり、私の代わりにマイの競技に出てあげて」
そうだよ、雨女の私が行かなければきっと神様も晴れさせてくれるよ、と舞美は思った。
そして今日は神様が晴れさせてくれたんだから私は行く訳にはいかない。
だがえりかはそんな舞美の答えを想像していたかのように言った。
「神様じゃないよ。舞美、昨日てるてるぼうず作ったでしょ?晴れたのはそのおかげだよ」
「…でも私てるてるぼうず吊るしてないもん」
ふてくされたように舞美が言うとえりかが答えた。
「あれ見てみなよ」
えりかが庭から軒下を指差した。
軒下を見ると、七つ並んだてるてるぼうずが見える。
って七つ!?しかも七つ全部普通にぶら下がってる!!何で!?
驚いた舞美が側に寄って見てみると、(舞美てるてるぼうず)の両隣にある
(えりかてるてるぼうず)と(早貴てるてるぼうず)が2本の小さい手を伸ばし、
(舞美てるてるぼうず)がひっくり返らないように体を支えてくれている。
「あはは〜、何だこれ、可愛い〜〜!!」
何だこれ、綿棒で作ってあるのかな?先に画用紙で作った手が付いててとっても可愛い。
それが舞美のてるてるぼうずをしっかり支えてくれている。
涙が出そうになったが、それより嬉しい気持ちが先に立って舞美は笑ってしまった。
「ね、だから一緒に行こ!」
「でも神様が…」
「いいよ、神様には後であたしが謝っておくから」
えりかが言ってくれた。ナッキーもうなずいている。
てるてるぼうずだけじゃない、私はいつもこうやってみんなに支えられている気がするな。
でも、いいんだ。今日は二人に甘えよう。
ピー、ピー、ピー、
向こうで洗濯機が二度目の音を立てた。えりかが言った。
「さあ、残りの洗濯物干しちゃったらみんなで行こうよ」
「…うん、そうだね!」と舞美は元気に答えた。
洗ったばかりの洗濯物を、干すために力を入れピンッと伸ばしてみた。
顔に飛沫が飛んだ。洗濯したてのいい香りがした。
今日も気持ちのいい一日になりそうだな、と舞美は思った。
「ただいまー!!」
大声で舞美は言った。
他のみんなも続けて「ただいま」と言って帰ってくる。
家に誰もいないとわかっていても、帰る時はそう言うのが癖になっているのだ。
だって「ただいま」というだけで気分が晴れた気がして気持ちがいい。
特に今日は気分が良くて声が弾んだ。だって持久走で千聖が1位になり、
父兄参加競技に出場しマイと二人三脚を走った舞美も見事1位になれたのだから!!
「やったねーーー!!」
「イエーーーイ!!」
舞美と千聖は互いに賞状を見せ合いハイタッチをしてみせた。
昨日まで悩んでたのが嘘のようだ。
そうだ、てるてるぼうずにもお礼を言わなきゃ、と舞美は思った。
「ありがとー、てるてるぼうず!!」
舞美は軒先へいくと、てるてるぼうずに礼を言い、軽く指先で触れてみた。すると、
…くるんッ!
(舞美てるてるぼうず)は両手で体を支えてくれているえりかとナッキーの
てるてるぼうずごとひっくり返って(るてるてずうぼ)が三体になった。
その瞬間…、
ポツポツポツ…
ザーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!
いきなり大雨が降ってきた。
「ウソーーー!?」
「なに急にこの大雨!!」
「早く早く洗濯物しまわなきゃ!!」
「もう、舞美ちゃんはてるてるぼうずまで怪力なんだから!!」
「そうだよ、舞美ちゃんの(るてるてずうぼ)のせいだよ!!」
「う〜〜〜〜〜…」
庭に大慌てで洗濯物を取り込むみんなの怒声がとびかい、
反論できない舞美が唸った。
その時、リビングのTVでニュースを観たマイが、姉達に知らせるように叫んだ。
「ねえ、今日『梅雨入り』したんだって、もう梅雨なんだよー。
よかったね舞美ちゃん、もう雨降っても舞美ちゃんのせいじゃないよーー!!」
そんな舞美にとっての救いの言葉も、大雨の音とみんなの絶叫にかき消され、
肝心の舞美に届いていたかどうかわからなかった…。
最後に舞美が叫んだ。
「雨のバカ〜〜〜〜〜〜!!」
書き手が増えたので、ネタの時だけささやかな自己主張してみる事にしました。
体壊して2週間もかかっちゃったよ。次はもっと早く書けるといいス。でも多分マイペースで。
では次回で。
252 :
ねぇ、名乗って:2007/07/02(月) 01:51:43 ID:KI89aucJ0
作者さん、乙です!
相変わらず状況設定が上手だなぁ。
毎回メインになるキャラをしっかり決めて書いているのが興味深いです。
細かいネタも盛り込んでいて、しかもそれを不自然じゃないように
ちゃんと説明しているあたりにメンバー達への愛情を感じます。
個人的には作者さんが描くいつもさわやかで象徴的なラストが好きなんだけど、
誰かモデルにしている作家さんなどはいるんですか?
よかったら聞いてみたいです。
(もちろん言いたくなければかまいませんよ)
次も力作期待してます!
頑張って下さい!
>>252 恥ずかしい程ものすごい一般的なものしか読まないス。
野沢尚が好きだったんだけど、死んじゃってもう読めない・・・。
TVの脚本上がりの人なんで、絵にしてみたい場面とか次へのヒキとか上手いのがいいス。
自分が書く上で参考にしてるのはTVのホームドラマでしょうね。
多分それしか書けません・・・
254 :
ねぇ、名乗って:2007/07/02(月) 03:25:35 ID:jMg3X0dUO
>>253 横レスすんません。
作品を読ませていただいたんですが最高でした!
今の時代、ドラマも奇をてらったものが多い中、こういう和やかでほのぼのとした作品にはとても癒されますね。
これからも℃-ute7姉妹で良いホームドラマを書いていって欲しいです。
255 :
ねぇ、名乗って:2007/07/02(月) 20:46:20 ID:4QRqBxlR0
(るてるてずうぼ)いいっすね!!
日常会話的な描き方参考になります!
ひねった作品しか見ない私には勉強になるし
私の場合ワードに書いてからコピー&貼り付けで・・・
ページも気にせずに分けて掲載したいと思います、
読みやすくなるかと・・・
256 :
ねぇ、名乗って:2007/07/02(月) 20:58:46 ID:uYO6HiY+O
まいまいのおねしょが直らないストーリー希望します
作家1号さん、乙です。
「るてるてずうぼ」のタイトルで舞美の「雨女」につなげるアイデアは
浮かばなかったです。さすが。
さりげなく
>>39のネタが浮かんでくるのが面白い。
最後の「雨のバカー!」って、なんかネタ元があったような気がする
んですけど、なんでしたっけ?
>>257 やっぱり元ネタわかる人がいた!
「キューティーぐだぐだクリスマス」で突如舞美が叫んだ台詞
そのあと他のみんなから「雨女舞ちゃんじゃん」と総ツッコミされてたw
×舞ちゃんじゃん
〇舞美ちゃんじゃん
スマン
260 :
ねぇ、名乗って:2007/07/03(火) 10:34:09 ID:CJdKvjUNO
作者1号さんの描く舞美のかわいらしさは異常
261 :
ねぇ、名乗って:2007/07/03(火) 17:43:44 ID:iUiaT3bMO
感動しました!(>_<)
ども。再びアイデア募集です。
梅さんのラブコメ書いてるんですが、すでに長編確定ですw。
どうも自分の場合、ほのぼのしたのはラクなんですけど、感動
系を描写するのは難しいですね。。。
Q1:℃-ute家の苗字はどうしよう?
やっぱ「℃-ute」が苗字になるんかな…。今回は名前が
ポイントになっている関係で、できれば日本人の型にはまった
苗字を付けたいんだけど…。
Q2:梅さんの彼氏の名前募集。
設定は「30代はじめの内科医師」、まじめ人間です。
ちなみに同僚に「寺田先生」がいますw。
Q3:梅さんがその彼にほれるきっかけ(シチュエーション)。
「そこが一番肝心やん!」というツッコミはなしでw。
以上、みなさんのご意見・妄想を聞かせてください。。。
>>258,259
2006年を振り返って、イクスピアリのイベント
が流れた件だったな。あれはいかにも℃-uteらしくて萌えた。
265 :
ねぇ、名乗って:2007/07/04(水) 22:09:58 ID:D6bXIpqpO
>>262 Q1. 矢島家、もしくは九都(きゅうと)家かな?
Q2. 塩田泰造先生…いや、真面目人間で思い浮かんだだけですがw
よければ容貌などの特徴をもうちょい教えて
Q3. 梅さんが幼い頃、小児科病棟に入院していた頃に当時研修医だった塩田先生が優しくしてくれた。(夜一人で眠れないときにもお話をしてくれた、など)
ここら辺はなんとなく「リトルホスピタル」のイメージ。
大人びた容姿になった今でも梅さんの中の子どもっぽい部分を理解してくれていてかわいがってくれている。
モデル顔負けの外見にひかれて近づいてくる男の多い梅さんにとってはそれが嬉しかった、みたいなシチュエーション希望。
それでは、頑張って下さい!!
>>264 リリースされること自体に疑いはなかったけど、こうして実際に情報に
触れるとうれしいですね。楽しみです。内容が30代のリアルおっさん
向けなだけに、ねw。。。
>>265 ありがとございます。「矢島家」は「名探偵℃-uteシリーズ」でも出て
きてましたね。とりあえずこれで行こうかと思います。
塩田さんは頭の中にありませんでしたが、なるほどそんな感じもしま
すね。容貌ははっきりと決めているわけではありませんが、梅さんが
惚れちゃいそうな人物像を思い浮かべていただければよろしいかと…。
267 :
ねぇ、名乗って:2007/07/05(木) 01:51:24 ID:/s277/aQO
梅さんには、若いイケメンよりも父親みたいな男の人が似合う気がする…っていうか、個人的にそうであって欲しいw
ども。来週はいよいよ新曲発売ですね。
梅さんのラブコメ、7割がた固まりました。1行80文字換算で
すでに800行以上あります。先に謝っておきます。すいません。
とりあえずこのあと導入部を投稿していきます。
>>265 「塩田先生」、採用させていただきました。ただ、雰囲気として
はゲキハロ第1弾の寺子屋の先生をイメージしています。容姿は
もっとスマートなつもりです。なにしろ梅さんですからw。
>>267 なんとなくそんな感じのシチュエイションになってるかな、と
思っていますが、ご希望にかなっているかどうか…w。
●総合病院−内科受付
これは、いつかの2月のころから始まるおはなし。
「あれ?、同姓同名?」
「そう、しかも、かたや86歳の大正生まれ、こっちは16歳の平成生まれ」
「その差70歳か〜。昭和をすっ飛ばした同姓同名ねぇ」
看護師さんたちのあいだでちょっと話題になった人物のひとりは、壁を一枚隔てた待合
室で、ときどきゴホゴホとセキをしている。
●総合病院−待合室
2週間くらい前から風邪をひいていたえりかちゃん。なかなか風邪が治らなくって、市
販の薬もいくつか買って飲んでたんだけど、ゆうべはついにセキをすると背中が痛くなる
ようになっちゃって、観念して病院に来た。えりかちゃんって、なぜか病院嫌いなんだよ
ね。
「『恋する乙女の歴史絵巻』…か」
どうせ待ち時間が長いだろうと思って、病院に来る途中に本屋さんで買ってきたファッ
ション雑誌。その特集記事は、平安時代から現代までの「恋文」、いわゆるラブレターの
様々な形態や文面を紹介している。昔は2mもある巻物だったり、木の板だったりってい
うのもあったんだね。恋心を伝えるのに「紙とペン」の役割ってホント重要だったんだな
…って思ってみたり。現代は携帯メールで済ませちゃう人だっているのにね。でも、その
内容はっていうと、「『好き』っていう気持ちを伝えること」…つまり本質は変わってい
ないんだよね。なんかすごい。
そんなふうに待ち時間を過ごして、大方の記事に目を通し終えたころ…。
「矢島さん、矢島えりかさん」
やっとこさ、えりかちゃんの順番が来たらしい。えりかちゃんは雑誌をバッグにしまう
と、診察室のほうへ向かった。
●総合病院−内科の診察室
カルテを受け取った先生が看護師さんにたずねる。
「これ、ホント?!」
「はい、珍しいですよね。まったくの同姓同名さんです」
「びっくりだね。さて、あと3人、患者さんを診たら寺田先生に交代します。先生に伝
えておいてください」
「分かりました」
「次の方、どうぞ」
「(5番、『北国の春』、歌います)」などというギャグを思いつきながら、診察室の
丸い椅子におずおずと座ったえりかちゃん。だけど、さっきより背中の痛みが強くなった
気がするので、いつもの陽気な表情にはなれないでいた。まあ、病院に来ているんだから、
陽気な表情をする必要はないんだけどね。
目の前に座っているお医者さんは、えりかちゃんがイメージしてた「お医者さん像」よ
りもずっと若くて、なかなかガッシリした体格の7:3分け。カルテを見ながら、なにや
らノートに書き込んでいる。そのカルテを持つ左手の薬指には、指輪がはめられていた。
「矢島さんですね、風邪ですか?」
「はい、セキがなかなかとまらなくて…」
「もうどれくらいセキしてます?」
「2週間…くらいかな?、あ、いえ、だと思います」
そういった会話をしながら、のどの具合をみたり、聴診器を当てたりといった、型どお
りの診察を受けた。
お医者さんとはいえ、男性と面と向かってやりとりをするのは苦手だと思っていたんだ
けど、先生の話し方や、ひとつひとつの作業が「流れるように」スムーズで自然だったの
で、それほど緊張せずに済んだのは良かったのかも。襟元の広いTシャツを着ていったの
で、聴診器を胸に当てるときはどうってことなかったけど、背中に当てるときには、たく
し上げなきゃいけなかったから、ちょっと恥ずかしかったくらい。
「肺炎の疑いもありますので、レントゲンを撮りましょう。それと、採血もしておきま
しょう」
「はい」
「あちらの看護師さんが案内しますので、ついていってください。お大事に」
「はい、ありがとうございました」
先生は聴診器での診察が終わったあとは、カルテにいろいろと書き込んでいて、そのま
まほとんどえりかちゃんと目を合わせることなく、診察が終わってしまった。けっして先
生や看護師さんの応対は悪くないんだけど、なんとなく釈然としない気分のまま、案内に
ついていった。
●総合病院−ふたたび待合室
えりかちゃんはベンチに座って、口をとがらせて天井を見つめている。そのとき、カウ
ンターからの呼び出しの声は耳に入らなかったみたい。
「矢島さん、矢島えりかさん」
レントゲンの撮影も、採血の注射も、すべてが手際よく、ホント「型どおり」にスムー
ズに進んで、なんだかあっという間に終わってしまった。待ち時間の割に、実際の診察時
間はとっても短い。さすがは総合病院というかなんというか…。でも、なんだか自分が見
えないベルトコンベアで運ばれる「モノ扱い」されているみたいな気分になっちゃって、
釈然としない気持ちがフツフツとこみ上げてきて「もうちょっと優しさとかユーモアがあ
ってもいいんじゃない?!」なんて考えていた。
さっきみてもらった診察室のほうをぼーっと眺めると、背中が90度近く曲がった、で
もちょっとオシャレなおばあさんが、杖をつきながらそこに入っていくところだった。
「あれ?、あたし…、さっき呼ばれた?!」
えりかちゃんはあわてて受付のところに駆け寄って、カウンターにいる看護師さんにた
ずねた。
「矢島ですけど、今、呼ばれました?」
「あ、すいません、今呼ばれたのは、同姓同名のおばあさんのほうです」
「あばあさん?!」
今診察室に入っていった人だ。あのおばあさんが同姓同名?、えりかちゃんは内心びっ
くりして、また診察室のほうをじっと見つめた。
もう一度待合室のベンチに戻り、ファッション雑誌を開く。さっき見ていた特集記事の
続きは「かっこいい出会いのシーン」。ありがちな出会いのパターンをインタビューした
統計が載っている。記者オススメの出会いスポットや、流行のお店がいろいろと紹介され
ている。
「病院…ってのは、ないよね。さすがに」
結婚式のスピーチで「お二人の出会いは、病院でした」なんて紹介されるのも、なかな
か恥ずかしいものがあるなあ、なんて空想を広げながら、えりかちゃんはページをめくっ
ていった。
「矢島さん、矢島えりかさん」
「はい!」
今度はちゃんと自分が呼ばれたんだろうか?、思えば同姓同名さんがいると、いちいち
確かめに行かなきゃならないような気がして、面倒くさくなってきた。いっそのこと「矢
島えりかBさん」とか「平成生まれの矢島えりかさん」って呼んでもらったほうがいいの
に…、とか考えながら、えりかちゃんは席を立った。
「採血の結果は明日の午後に出ますが、明日の午後以降では、いつ来られますか?」
「はい、明日の午後来れます」
「では、明日の14:00前後に受付をしておいてください」
「はい」
「お薬は中に説明書が入っていますので、用法・用量をきちんと守ってくださいね」
「はい」
看護師さんのセリフ(?)の最後の部分が、市販の薬のCMとまったく同じようなこと
を言われたので、ちょっとびっくりしたついでに、くすっと笑ってしまった。えりかちゃ
んは会計を済ませ、病院を出た。
●総合病院−自転車置き場
病院の裏手にある自転車置き場に向かっていると、後ろから走ってくる足音が、コンク
リートに響いて聞こえてくる。
「矢島さんっ!、すいません!」
ふりかえると、さっき診察してくれた先生が追いかけてきたみたい。その手には薬の袋
を持って、えりかちゃんのそばまで駆け寄ってきた。さっきは見えなかったんだけど、先
生は白衣にIDカードをぶら下げていて、そこには先生の顔写真と「塩田」という名前が
書かれていた。
「申し訳ありません。お渡しする薬を間違えてしまったようなのです」
「ええっ?!」
「ちょっと見せていただけますか?」
促されて、えりかちゃんはバッグからさっき受け取った薬の袋を取り出し、先生に渡し
た。
「やっぱり、『注意しろ』と言っておいたのに…」
「なにか違うんですか?」
「いえ、矢島さんと同姓同名の方がいらっしゃるんですよ、そちらの方と間違えてお薬
をお渡ししてしまいまして…、ほら、ここ」
「え?」
先生が指差したところには、確かにえりかちゃんの名前と年齢が書いてあるんだけど、
よく見ると「87歳」と書いてある数字の「8」が細長くつぶれていて「17歳」と書い
てあるように見えるのだ。
「なんつうアナログな間違い…」
「ホントだ(笑)」
「間に合ってよかった。大変申し訳ありませんでした。本物はこちらです。会計は間違
っておりませんので大丈夫です」
「あ、すいません、届けてもらって」
「いいえ、当然のことです。こちらこそ大変失礼しました。お気をつけてお帰りくださ
い」
「ありがとうございました」
「あ、マスクは着けないんですか?」
「ええ、着けるのを忘れてきたので」
「では、これを差し上げますから、どうぞ使ってください」
そういって先生は、白衣のポケットから新品のマスクを取り出して、えりかちゃんに渡
した。
「ありがとうございます」
「まだまだ寒いですから、外を出歩くときはマスクを着用したほうがいいですよ。次に
いらっしゃるのは、いつですか?」
「明日です」
「では、お大事に。お気をつけて」
「(なんだ、いいところあるじゃん)」なんて思いながら、えりかちゃんは自転車に乗
って病院をあとにした。「(塩田先生か…)」仕事中はクールでテキパキとしていて、そ
うでないときは丁寧な話し方で優しい…。うーん、なんかカッコいいオジサンだなあ。
ども。とりあえず今日はここまでです。
みなさんの突っ込みお待ちしております。
いやー続きが楽しみっす(^^)
279 :
ねぇ、名乗って:2007/07/07(土) 03:16:35 ID:vJ7Nd7fQO
かなり良い感じですね!
続きがメチャメチャ楽しみです!
●総合病院−翌日の売店
お昼ご飯を食べてから、自転車でゆっくりと来たつもりだったけど、受付をするはずの
午後2時にはまだ早い時間。暇つぶしついでに病院の売店でいろいろと品物を見ているえ
りかちゃん。
「(そういえば昨日、あの先生にマスクもらっちゃったんだっけ。新しいの買っておこ
うかな)」なんて、上のほうにぶら下がっているマスクを眺めてみる。時代というかなん
というか、今は様々な目的や形のマスクが売られているんだね。そうやって右から左へと
ずらっと並んでいるマスクを見比べているうち、昨日の先生にもらったのと同じマスクを
発見!、それを手にとろうとしたら…
「(ゴツンッ!)」
「いった!」
「す、すいません!」
マスクを買おうとして手を伸ばしたついでに、隣で買い物していた人の頭に、きれいに
肘打ちをお見舞いしてしまったえりかちゃん。偶然とはいえ災難にあった被害者は、なん
と昨日の塩田先生だった。
「おや?」
「あ、き、昨日はどうもありがとうございました。ごめんなさい。大丈夫ですか?」
先生は白衣ではなく、ずいぶんとカジュアルに砕けた服を着ていて、うっすらとアゴに
ひげを生やしている。
「あ、大丈夫です大丈夫です。いやはは、宿直明けでね。これから帰るところなんです
よ」
たしかに先生の「砕けた」服装はちょっとヨレヨレで、しっかりと「お疲れモード」を
演出していた。クールでテキパキなお医者さんも、夜通し働くとこんな姿になっちゃうの
か…なんて思った。
「そうなんですか。昨日はマスクありがとうございました。助かりました」
「お気になさらず。矢島さんの結果、出てましたよ。大丈夫そうです」
「そうですか。ありがとうございます」
「でも、用心はしてくださいね。風に当たるときはマスクを忘れずに」
「はい」
えりかちゃんがなんとなく恥ずかしい気分になったのは、白衣を着ていない先生の姿を
見て、プライベートを覗いてしまったような気がしたから。昨日と今日ではずいぶんと違
った雰囲気の「お医者さん」に、幻滅した…というわけではないんだけど、「見てはいけ
ないものを見てしまった」−−そんな感じがした。なので、えりかちゃんは買い物もせず、
その場をそそくさと退散してしまい、待合室に向かった。
受付をしに行くと、その場ですぐに昨日の検査結果を知らされた。肺炎にはなっていな
かったということで、ひと安心。でも風邪の症状が完治するまで、外を出歩くときはマス
クを着用するようにといわれた。まあコレは当然のことなんだよね。ということで、病院
での用事はもう終了。
「(なんだ、これだけだったら電話でもいいんじゃない?)」声にならないツッコミを
入れつつ、えりかちゃんは病院をあとにした。
●本屋さん
「(まあ、ただの風邪ですんだのはよかったかな。とりあえず)」
えりかちゃんは自転車をこぎながら、そんなことを考えていた。そして昨日買いそびれ
たファッション雑誌を買いに、通り道にある本屋さんにやってきた。病院で読んでいた雑
誌は、薄くて軽い雑誌。これから買う雑誌は、厚くて重い雑誌。こうして家に帰る途中で
買えば、無駄な体力を使わなくて済む。えりかちゃんなりに合理的なアイデア。
お目当ての買い物を終えて、本屋さんから出てきて、ふたたび自転車に乗ろうとしてい
ると、なにやら大きなエンジン音の、青いスポーツカーが本屋さんのわきの駐車場に入っ
てきた。
「目立つ車だなあ。あれ?、あの車のマークって…」
えりかちゃんは病院で読んでいた雑誌をバッグから取り出し、特集のページを開いて、
そこからさらに何ページかパラパラとめくってみた。
「あった!、『フェラーリ』じゃん!」
その記事には「かっこいい出会いのシーン」が、なかなかクサイ演出でとりあげられて
おり、そのなかの1ページで紹介されている車がフェラーリだった。車の形こそちょっと
違うけど、ボンネットについている馬のマークは、たしかに『フェラーリ』のそれだった。
そして、なんとその車から出てきたのが塩田先生だったから、さらに驚いた。えりかちゃ
んは思わず雑誌で顔を隠し、うっすらとヒゲヅラの先生が自分の横を通り過ぎて行くのを、
じっと待った。
「すっごーい。あの先生、超お金持ちなんだ〜」
さっき売店で会ったときには、ちょっと親近感も湧いたりしたけど、またまた別世界の、
いや、遠い世界の人になってしまったような気がする。
「うーん、やっぱ『医者さま』っつうのは、もうかる仕事なんだべな〜。シモジモの者
にゃあ、わからねえべさ」
ひがみというか皮肉というか幻滅というか…、そんなひとりごとを言いながら、えりか
ちゃんはウチに向かって自転車をこぎだした。
●ウチの近所
そろそろウチに近づいてきたころ、背後から聞き覚えのあるエンジンの音が聞こえてき
た。さっきの「青いスポーツカー」が、えりかちゃんを追い抜いていき、その先の交差点
を左に曲がっていった。
「あれ?、あの先生、ウチの近所なんだ?」
ウチはその交差点を右に曲がった先なんだけど、なぜかえりかちゃんは左に曲がった。
するとはるか前方に、「青いスポーツカー」が、ハザードランプを点滅させて止まってい
る。あそこは確か、クリーニング屋さんの前だ。
「いきなり生活感あふれるシチュエーションね(笑)」
そうひとりごとをいいながら、えりかちゃんは自転車のペダルをこいだ。もう少しで車
にたどりつきそうになったとき、クリーニング屋さんから洗濯物を受け取った先生が出て
きて乗り込み、また走り出していった。
「なによ?!、これじゃあ私、ストーカーじゃない?!」
自分にツッコミを入れながらも、なんだか茶目っ気のわいてきたえりかちゃんは、マス
クをとって、ペダルをこぐ足に力を入れた。車はさらに先にある酒屋さんの前でまた、ハ
ザードランプを点滅して止まった。
「なにそれぇ。私に『ついてこい』って言ってるのぉ?!」
道はなだらかにアップダウンを繰り返していて、車ならどうってことないけど、自転車
で走るにはちょっと疲れる。えりかちゃんはうっすらと汗をかいているのを感じていた。
「うーん、あんまりさわやかじゃない汗だわ」
えりかちゃんはまた自分にツッコミを入れながらペダルをこいだ。「青いスポーツカ
ー」はその先も、花屋さん、惣菜屋さんと、それぞれの店の前で停車して、なにやら品物
を受け取り、また走り出し…を繰り返して、先生の家にたどりついた。
「なんであたし、こんなことしてんのー?」
えりかちゃんはすっかり汗だくになりながら、「青いスポーツカー」が吸い込まれてい
ったガレージのある家の前にたどり着いた。表札はたしかに「塩田」だけど、なんだか掃
除が行き届いていない、薄汚れた感じのする家だった。
「ふーん…」
車が入っていったあとは、なんだか人の気配がしない、明かりもついている様子がない、
さびしいたたずまいに包まれている家だった。さすがに大きい家なんだけど、なんだか人
が住んでいるような感じはしなかった。
「(ポツリ)」
なにかが額に当たった…、と思ったら、とたんに雨が降り出してきた。曇りがちの空だ
ったけど、まさか降ってくるとは思っていなかった。
「やばっ!」
えりかちゃんはあわてて引き返した。なんだかんだ、結構な距離を走ってきてしまって
いた。雨はどんどん強くなり、上空で雷も鳴り出してきた。アップダウンの道の低いとこ
ろでは、大きな水たまりができるほどになった。
「どっかで雨宿りしよう」
えりかちゃんは途中の花屋さんの軒先を借りることにした。親切なお店のおばさんがタ
オルを貸してくれて、それで濡れた髪や服やバッグをふかせてもらった。
なんと、そのおばさんは舞ちゃんのことをよく知っていて、ときどきここに遊びにくる
のだという。こんなところも舞ちゃんの「ナワバリ」なのかと、えりかちゃんはちょっと
驚いた。
「あーあ、買ったばかりの本がだいなしじゃん」
10分ほど雨宿りしたけど、雨はいっこうに弱まる気配がしない。このまま待っていて
もいいけど、今度は家族の夕食の時間が遅れることになってしまう。仕方がないので、お
店のおばさんにカサを借りて、また家に向かってこぎだした。
●ウチ
「ただいまー。もー、悲惨っ!!」
「おかえりー。あーあ、ずぶ濡れだあ!タオル持ってくるね」
「えりかちゃん大丈夫ぅ?、お医者さん行ってきたんでしょう?」
「ああ、検査の結果は大丈夫だったよ。そこは安心」
玄関では千聖と舞ちゃんが出迎えて、タオルを持ってきてあげたり、荷物をふいてあげ
たりしていた。
「でも濡れちゃったねー。お風呂、先に入っちゃいなよ」
「そうしよっかな。全部濡れちゃったもんな、今日は舞美遅いんだよね?」
「うん!、クラブの先生の送別会っていってた」
「送別会って、もうそんな時期だっけ?、ちょっと早くない?、まあいいけどさ。そし
たらナッキーいるかな?」
「いるよ。ナッキー!」
私も呼び出されて、お風呂に入るえりかちゃんの代わりに、夕食の支度をすることに
なった。みんなで夕食を食べ終わった頃には、舞美ちゃんも帰ってきてみんなが揃い、
いつもと変わらない夜になり、いつもと変わらない「おやすみ」を言った。
●舞美ちゃんの部屋
「もー…、いい・か・い?」
舞美ちゃんは小さな声でつぶやいて、舞美ちゃんの右腕を枕にして眠っている舞ちゃん
の頭を、そっとずらした。寝返りを打った舞ちゃんの肩に毛布をかけなおすと、自分も仰
向けになって毛布をかぶり、天井を見つめた。となりの部屋からはときどき「ゴホッ、ゴ
ホッ」と、えりかちゃんの咳き込む声が聞こえてくる。
「大丈夫かな…。『治った』っていってたけど…」
そうつぶやいて、目を閉じた。昼間はとても騒がしい家だけど、こうしてみんなが寝静
まると、かえって静けさが寂しいくらいに思えてくる。本当に心地よい家なんだな…なん
て思ってみたり。
「…」
「(ゴホッ、ゴホッ)」
「…」
「(ゴホッ…、ゴホッ、ゴホッ!)」
「…」
「(ゴホッ、ゴホッ!ゴホッ!ゴホッ!ゴホッ!ゴホッ!ゴホッ!)」
「ちょっと!大丈夫なんかじゃないじゃない!!」
舞美ちゃんは飛び起きてえりかちゃんの部屋へ行った。私も、その物音と舞美ちゃんの
叫び声に気づいて、すぐにえりかちゃんの部屋へ行った。
●えりかちゃんの部屋
えりかちゃんはベッドで毛布にくるまったまま、セキが止まらなくて呼吸ができないく
らい苦しんでいた。舞美ちゃんはえりかちゃんを抱きしめ、背中をさすった。その額に手
を当てると、ものすごい熱が出ていた。
「えりか!、大丈夫?!、すごい熱!、ナッキー!、救急車呼んで!」
「は、はいっ!」
私は初めて119番に電話した。今思うと、あのとき冷静にえりかちゃんの状況やウチ
の住所なんかを、消防署の人に伝えることができたのは、信じられないくらい、とっても
不思議なことだった。
●内科病棟−860号室
「えり…、気が付いた?」
そう、気が付いたら、病院のベッドの上…。
「(うう、よくあるドラマのシチュエーションと同じだわ)」。えりかちゃんは自分の
置かれた状況に、冷静にツッコミを入れつつ、目を覚ました。左の手首には、点滴のチュ
ーブがつけられていた。舞美ちゃんは、ベッドの脇でずっとえりかちゃんを見守っていた
らしく、髪はボサボサ、目の下にはクマを作っていた。
「みんな…、元気?」
「人のこと心配してる立場じゃないでしょ(笑)。ホントゆうべはビックリしたよ」
「ごめん…」
「別に謝ることはないよ。救急車呼んだら、さすがにみんな起きてきちゃってね。たぶ
ん興奮して眠れなかったかもしれないけど、うちのことはナッキーに任せてきた。
今日は私、ずっとここにいるから」
「ごめん…」
「だから謝ることないって、気にすんな〜(笑)」
舞美ちゃんがナースセンターにえりかちゃんのことを知らせにいくと、看護師さんが様
子を見に来た。えりかちゃんの脈をみたり、体温を測ったり、点滴を交換したりしたあと、
食欲があるか聞かれた。えりかちゃんが「少し」と答えると、朝食のおかゆを運んできて
くれた。ベッドの背もたれを起こして、舞美ちゃんがスプーンで口に運んでくれた。
「自分で食べれますってば」
「いいのいいの、1回やってみたかったんだから」
「キミ、楽しんでるでしょ?」
「まあね〜。『病院食』って、初めてじゃない?、うちの家族って、あんまり病院に縁
がないものね」
「まあ、一回ぐらい体験しといていいとは思うけどね」
そんなにお腹はすいてないつもりだったけど、食べ始めると実はペコペコだったみたい
で、えりかちゃんはあっというまに全部食べてしまった。
「ふはあ!、食った食ったぁ」
「そんじゃあコレ、片付けてくるね」
「舞美、ちょっと…」
「ん?、どした?」
「ちょっとこっち来て」
「なんだなんだ?」
「あのさ、ちょっとだけ…、泣かせて」
舞美ちゃんは小さくうなずき、えりかちゃんを抱きしめた。
「ゆうべ、咳がとまらなくなっちゃって、苦しくて、気が遠くなってっきて、すごい怖
かった。自分でどうにもできなくって、ホントに死んじゃうんじゃないかなんて
思った。舞美が来て、抱きしめてくれて、すごい安心したの。咳がとまらないまんま
だったけど、なんだかすごい安心したの…」
えりかちゃんは小さく肩をふるわせながら泣いていた。舞美ちゃんは何も言わないまま、
えりかちゃんの頭を優しく、何度もなでていた。
「ありがとう…」
食べ終わった食器をのせたトレイが、もとの場所に返されたのは、それから30分ほど
たってからだった。
ども。とりあえず今日はここまでです。
>>278 >>279 楽しみにしてくれちゃって、ありがとうございます。
引き続きみなさんのツッコミお待ちしております。
>ツッコミお待ちしております。
って言ってくれてるんで正直に
作品はナッキー視点の一人称語りって理解しておk?
>>293 一応ナッキーに語ってもらってますが、かならずしもナッキー視点
というわけではなく…w。
情景描写を、あかの他人口調で書くよりは、いくらか親近感ある
かな、といった目論見があります。
了解しました
いやナッキー不在場面の語り部がナッキーだったら不自然だなと思えたので
では続きを期待してます。
296 :
ねぇ、名乗って:2007/07/08(日) 03:22:27 ID:hOD6Jk2qO
最高!続きに期待してます!
●内科病棟−860号室(検診の時間)
「肺炎ですが、症状はそれほど重くありません、しばらく点滴での治療になりますが、
1週間ほどで退院できるでしょう」
検診に来た塩田先生は、聴診器をたたみながら、そう話した。そして看護師さんに薬や
点滴の指示のようなことをひととおり言ってから、えりかちゃん、そして舞美ちゃんのほ
うに向き直って話しかけた。
「昨日の雨に濡れたんですって?。すぐ家に帰らなかったのですか?」
「ええ、ちょっと寄り道が長引いてしまって…」
えりかちゃんはかなりバツの悪い感じで言葉を濁した。まさか先生を自宅まで追いかけ
ていた…、なんて言えるわけがないもんね。
「あんまりムチャなことをしてはいけませんよ。入院中はいいとして、退院後もしばら
くは用心するくらいの気持ちでいなくちゃ」
「はい」
診察しているときとはうってかわって、そうでないときに話す先生の言葉遣いは優しく、
なんだか家族に話しかけているような気分にさせてくれる。もしかしたら、それもまたひ
とつの「医者の技術」なのかもしれないけど、でもそんなふうには思えないくらい、先生
の笑顔は自然だった。
●内科病棟−860号室(面会時間)
えりかちゃんが入院した病室は内科病棟の8階。そこの窓から見下ろす絶好の景色と眺
めは、家族が入れ替わり立ち代わり見舞いに訪れるのに好都合な理由にもなった。
舞ちゃんはえりかちゃんが花屋のおばさんに借りた傘を返しにいき、代わりにお見舞い
の花束を預かってきた。
千聖は大きい折り紙で鶴を3羽折って、それを糸でつなげたものを持ってきた。いわく
「千羽鶴」ならぬ「三羽鶴」だそうである。
愛理は学校で得意のコルネットの演奏をMDに録音してきた。愛理のレパートリーのほ
とんどが収録されているそうで、これはまさに「愛理全曲集」だ。
栞菜は雨にぬれてダメになってしまったえりかちゃんのファッション雑誌の代わりを買
ってきてくれた。
私はというと、いつもみんなが食べているよりも、ちょっとだけグレードアップしたお
弁当を作って持っていった。
舞美ちゃんは、理由がよくわからないんだけど、軟式のテニスボールを3個買ってきた。
「みんなちょっと大げさすぎなくない?、あたしそんなに重病人じゃないんだよぉ?」
「いーじゃんいーじゃん、こういうときだからこそ、みんなも結構楽しんでお見舞いに
来てるんだからさ。えりかちゃんが重病だったら、こんなに楽しくお見舞いに来れな
いじゃん!」
「だ〜か〜ら〜、お見舞いなんか楽しまなくてもいいっつの(笑)」
●内科病棟−その後の数日間
面会時間のあいだは、入れ替わり立ち代りにやってくる「見舞い客」ならぬ「見舞い家
族」のおかげで、我が家のメンバーは病院の関係者の間では、すっかり有名になってし
まった。
うちの家族は、もともとみんな人なつっこいんだけど、千聖と舞ちゃんのその「得意技」
は、とにかく群を抜いている。老若男女、動植物の区別なく、誰とでも友達になってしま
うのだ。そんな二人は、ナースセンターを皮切りにして次々と「友達の輪」を広げていき、
内科病棟に入院している同じくらいの年代の子はもちろん、おじいちゃん、おばあちゃん
世代の人からも大人気の「アイドル」になってしまった。
病院もすっかり自分の「ナワバリ」にしてしまった二人だから、いろいろな情報も入手
してくるようになる。師長さんは両手で同時に字が書けることとか、長年入院しているお
ばあちゃんが屋上でイチゴを栽培していることとか、塩田先生はカッコいいスーパーカー
に乗って通勤していることとか…。
えりかちゃんも、斎藤さん、村田さん、大谷さんという看護師さんが特に仲の良い友達
になってくれて、仕事の合間をぬっては、えりかちゃんの部屋でおしゃべりをしていくよ
うになった。
えりかちゃんの検診、というよりも普段の内科病棟の検診には、必ず塩田先生が来る。
先生はめったに休みをとることはなく、宿直明けの日でも、午前の検診まで済ませてから
帰宅するそうだ。これも、千聖と舞ちゃんの「チビッココンビ」が仕入れてきた情報。
●内科病棟−ナースセンター
面会時間が終わって、家族も帰って、あとは消灯を待つばかりの病棟。看護師さんたち
も一日の状況を報告しあって、仕事場の整理や掃除を終わったところ。
今日はえりかちゃんと仲の良い看護師さん、斎藤さん、村田さん、大谷さんの3人が
揃ってナースセンターに詰めている。そこへ珍しくえりかちゃんが病室を抜けてやって
きた。
「あらあ、えりかちゃん。どうしたの?」
「ベットの上だけだとあきるから。体もなまりすぎって感じだし」
「それはしょうがないでしょう。立派な病人なんだから」
「まあそうなんですけどね。…入ってもいいですか?」
「大丈夫よ、今はもう私たち3人だけだから」
入院患者とナース3人の、深夜の座談会、っていうか世間話。
「どう?、そろそろホームシックになってきた?」
「もうとっくにですよ。ウチはいっつも騒がしいから。病棟の静けさは別世界みたいで
す。たまにはこういうのもいいと思ったけど、やっぱり1日で飽きちゃいました」
「んー、贅沢な悩みね。私なんか家に帰ったほうが静かだし」
「千聖ちゃん舞ちゃんが毎日来てくれてるじゃない?」
「アヤツらは、私の見舞いを口実に『ナワバリ』を広げに来てるだけですから」
「『ナワバリ』ね。たしかにそうだ(笑)。少なくとも内科病棟はあの『チビッココンビ』の
支配下になっちゃったもんね」
そんな話が延々と続き、テーマはこういうときのお約束「恋バナ」へと移っていく。芸
能人では誰が好きとか、どんなタイプが好きだとか、どんな恋をしてみたいとか…、もち
ろん「ナース3人」対「入院患者1人」という状況では、えりかちゃんばかりが集中攻撃
を受けるんだけどね。えりかちゃんは苦しまぎれに、なんとかして「ナース3人」の恋バ
ナを聞き出そうと反撃を試みるんだけど…。
「うちの病院は、なぜか独身のドクター多いのよねえ」
「やっぱり『モテ系』なら寺田先生が一番ね。ちょっとフケ顔だけど」
「でも私は塩田先生のほうがタイプかな。なんたって真面目だし」
「あら、私も誰かっていうと塩田先生がいいかな。なんて思ってたりして…」
「でも先生は、結婚しているんでしょう?」
えりかちゃんがそれとなく聞き返すと、「看護師トリオ」は、そろって静かになってし
まった。
「え?、いんや…」
「だって、左の薬指にリングはめてましたよね?」
「先生ね…。去年奥さんを亡くしたの」
「え…?」
「奥さんは、乳がんの治療で、ずっとここに入院してたんだけどね…。ずっと抗がん剤
治療を続けていたんだけど、転移が見つかって…、それから半月持たなかったかな。
去年の春頃、亡くなったの」
「…そうなんだ」
塩田先生の話を聞いて、なんだか気持ちが沈んでしまったえりかちゃんは、そのまま言
葉少なく、病室に帰って行った。
「あら、私たち、なんか良くない事話したかな…」
「えりかちゃん、塩田先生のこと、気になってたのかねえ」
「まあその気持ちも分からなくはない…けどね」
「そういえば、先生の奥さんも『えりか』って名前だったわねぇ、たしか」
ナースセンターに集う3人の「白衣の天使」の会話は、その後も続いたけど、えりかち
ゃんは病室に戻って、自分でもなんだかわけのわからない気持ちを抱えて、ベッドに横に
なった。
「塩田先生が、私たち(患者)のために一生懸命に働いているのは、『医者』だから?」
「あんなさびしい家に帰って、またすぐに出勤してきて、先生は楽しいの?」
「あの、先生の優しい笑顔は、本心なの?、それとも…」
いろいろな疑問が頭の中をよぎっては消え、そしてまた浮かんできて…。えりかちゃん
は、悩みとも心配ともとれない複雑な気持ちを抱えたまま、いつの間にか眠ってしまった。
えりかちゃん自身のなかで、塩田先生の存在がだんだんと大きくなっってきていることに
は、まだ気づかないまま。
ども。とりあえず今日はここまでです。
投稿のペースが推敲のペースを追い上げてきてしまいましたw。
平日はあんまり時間がとれないため、続きは多分また来週末に
なると思います。
それまで他の作家の皆さんの投稿とか歓迎です。途中ですけど、
私がスレの流れを止めるようなことはしたくないですw。
また、私の投稿に関してのツッコミとかも大歓迎です。
304 :
松輝夫:2007/07/10(火) 15:45:45 ID:5goi0zhiO
>>303 お疲れさまです。一気に読ませていただきました。
ほのぼのしてていい感じです。とてもマネできないなぁ。
続きも期待してます。頑張ってください。
梅の花の咲く頃に
私は必要無いんじゃないか
そんなことばかり考えていたあの頃
年末や新年の喧騒を終えた世間
我が家では未だ喧騒が続く
「千聖早く起きないと遅刻するよ」
舞美の声が響き渡る。最早恒例と化した朝の儀式
「舞。どうせ掛けていけないんだから、サングラスは置いときな」
「早貴、お弁当ちゃんと持った?」
「かんな、朝ご飯なんてガーッと流し込んじゃいな」
儀式は続く…
妹たちを送り出し一息つく舞美に声をかける
「舞美はすごいね。私なんかあの子達に何にもしてあげてないよ」
本心から出た言葉
「そんなことないよ私はえりに助けてもらってるよ」
その言葉に何か後ろめたい感情が浮き上がる私
「でも嘘なんだよ」
様々な感情が混ざり合い思わずそんな言葉を発する
「えり…」
困惑した舞美の声
「いってきます」
捨て台詞の用に呟き私は家を飛び出した
306 :
名無し募集中。。。:2007/07/11(水) 01:31:22 ID:LZlzIXmuO
「あぁ〜あ。うちってなんて子供なんだろ」
思わず口走ったそんな言葉に過去の思い出が乗りかかる
妹たち相手にゲームでむきになり泣かせた事
千聖との勝負でみんなが千聖を勝たせようとして悔しくて泣いた事
「お姉ちゃんなのにね」
誰に聞かせるでもなくそう呟いた
いつもそうだった。
舞美は両親のいない私達を一生懸命ささえてくれる
不器用だけど大きな愛でもてなしてくれる
「ほら、いいじゃないか」とよく分からない言葉でみんなを励ましてくれる
私は何が出来てるんだろう。
分からない
分からない…
高校で舞美と顔を会わせるのが何だか辛い
今は笑って「ごめんね」って言えそうにないよ
気が付くと私はお気に入りの公園に足を向けていた
通学路とはまるで反対にある公園
私の大好きな梅の木が沢山植えられている公園
私はベンチに腰をかけ、時間のたつのも忘れずっと梅の木をみていた
「もうすぐ花が咲きそうだね」
青々と枝々に芽吹くつぼみたちに声をかけた
「えりかちゃん やっぱりここにいたね」
どの位梅の木を見つめていただろう
不意にかけられた声に我にかえる
「栞菜。どうしたの」
我ながら間抜けな返事
「どうしたのじゃないよ。舞美ちゃんに聞いたんだ」
「えりかちゃん」
「うん」
「舞美ちゃんは舞美ちゃん、えりかちゃんはえりかちゃんだよ」
「うん」
「私達みんなえりかちゃんの事大好きなんだよ」
「……。」
私はなにも答えられなかった
「一緒に帰ろ」って言ってくれた栞菜に素直に「うん」って言えなかった
「あぁ〜あ、ホント子供だな」
涙が一筋こぼれ出た
結局は私は家に帰れなかった
友人の家を渡り歩き数日を過ごした
携帯は妹たちのメールで溢れかえる
そこから伝わる優しい感情
嬉しかった
本当に嬉しかった
「ホント、だめなお姉ちゃんだね」
そんな言葉がこぼれ出た
舞美になんて言えばいいのか分からず、ただ無意味に日々を費やす
そんなとき舞美からメールが届いた
「えり元気?明日えりの大好きな公園に来てほしいな
ずっと待ってるからね とか言って(笑 」
310 :
ねぇ、名乗って:2007/07/11(水) 02:05:02 ID:LZlzIXmuO
翌日、私は戸惑いながらも公園へと足を向けた
いつも私が座るベンチには舞美が1人腰掛けていた
「……。」
かける言葉が見つからず無言のまま隣に腰を掛ける
しばしの沈黙
「綺麗だね」
不意に舞美の口から漏れた言葉に「えっ?」と返す
「梅の花だよ」
あたりを見回せばそこには満開の梅の花
「きれー」
思わずそう口ばしる
「ねぇ、えり知ってる」
舞美はえりかに優しく語りかける
「梅って、すごい強いんだよ。多少切られたぐらいじゃびくともしない」
「また、新しい枝をつけて綺麗な花を咲かせるんだよ」
「舞美…」
言葉が見つからない
「えりだって同じだよ。大好きな梅の様に強くて
いつも笑顔でみんなに元気をくれる」
「みんなえりの事大好きなんだよ」
「そうだかんな」
「うん」
「キュフフ」
いつからいたのか背後から聴こえる妹たちの肯定の声
「ほら、いいじゃないか」
お決まりになった舞美の言葉に涙混じりに
「うん」
と答えた
いつかきっと梅の木のように強くて綺麗で
みんなに笑顔をあげるそんな存在になりたい
満開の梅の花と姉妹の笑顔に包まれて
私はそう願った
酔った勢いで書き込みました。
名無し募集中。。。でageてしまいごめんなさい
>梅の花の咲く頃に
面白かったよ!!
文章も上手いし台詞も「いかにもキュート」で完璧だと思う
次作も読みたいです!!
にしてもみんな作風が違うのが面白いなあ。
314 :
ねぇ、名乗って:2007/07/11(水) 16:56:50 ID:8vMIu3q40
>>312 sage推奨スレでも無いみたいなので気にしなくていいかと
で良かったのでageてきます
315 :
ねぇ、名乗って:2007/07/11(水) 18:26:28 ID:cKeUrbY60
ショートドラマで使えそう!
歌ドキの枠を活用すればいいと思います。
●内科病棟−ふたたび860号室
えりかちゃんが入院して5日が過ぎた。経過は順調で、見た目にはもう、入院患者には
見えない感じ。でも塩田先生からは「おとなしくしていなさい」と、割とキツく言い聞か
せられているそうだ。一日中パジャマで、しかも病院内で過ごさなければならないのが、
とっても窮屈そう。
洗濯物の交換と、その朝作った「えりかちゃん用のお弁当」を届けるために、私と舞美
ちゃんは1日交代で、病院に寄ってから学校に行くというスケジュールをこなしている。
両親不在の我が家だから、学校の先生も特例として、私たちが授業の1時間目をパスする
のを許可してくれた。
放課後になると、お見舞いに最初に駆けつけるのが千聖と舞ちゃん。舞ちゃんはいつも
花屋のおばさんから、「私のお見舞い代わりに」と渡してくれる花を1本もらってきては、
ベッドの横に置いた花瓶にさしてくれる。
それから、愛理、栞菜、私と、順番に家族がやってくると、病室内は大勢になってしま
うから、千聖と舞ちゃんは押し出されるようにして家に帰る…、のではなく、病院内の冒
険、というか「ナワバリ」のパトロールにでかける。今ではこれが日課になってしまった
ようで、二人が病院の人たちに迷惑をかけていないかと、えりかちゃんと舞美ちゃんはち
ょっと心配している。
夕方も遅くなって、最後の「見舞い家族」である舞美ちゃんが来ると、私はバトンタッ
チして家に帰り、妹たちと夕食の準備をする。
薄暗くなった街の景色を見下ろしながら、病室で舞美ちゃんとえりかちゃんが話してい
ると、看護師さんが来て、二人は会議室のようなところに案内された。塩田先生が「話が
ある」とのことだ。
●内科病棟−面談室
「なになに?、呼び出し?」
「えりか、何かした?」
「いんや、もしかして『あの二人』じゃない?」
「うそ?!、それちょっと困る…」
二人は妙にイヤ〜な予感がしていた。ドアをノックして塩田先生が入ってきたとき、二
人とも思わず肩が硬直してしまった。先生はニコニコ顔で、テーブルを挟んで二人の向か
い側の椅子に座った。
「(うわー、この笑顔はなんだろう?)」
あんまりいい話のネタが思い浮かばないだけに、先生の笑顔がかえって不気味に感じら
れるえりかちゃんと舞美ちゃんなのであった。先生はカルテを広げて、なにかメモを書き
込みながら話し始めた。
「お二人に伝えたいことが、二つあります。まずひとつは、えりかちゃん」
「(なに?アタシ?!、アタシなんかしたっけ?)」
えりかちゃんはパッと顔を上げて先生のほうを向き、それから舞美ちゃんと目を合わせ
た。舞美ちゃんもほとんど同じタイミングで、まったく同じ動作をした。先生はそんな二
人の反応を見て、わざとじらすようにして、ちょっとの間を置き、次の言葉を続けた。
「…あさってに退院が決定しました。おめでとう!」
「「あ…、え?!、あ、ありがとうございます!」」
「およそ一週間」と聞いてはいたものの、そのときに限って二人とも予想外、の嬉しい
知らせだった。それだけに、先生の顔と、お互いの顔とを交互に見ながらの、たどたどし
い返事になってしまった。塩田先生は、そんな二人の、鏡に映したような同時のリアクシ
ョンが面白くて、思わず笑ってしまった。
「えりかちゃんが、きちんと私たちの指示に従ってくれたので、経過が順調に回復した
んですよ。よく頑張ってくれたと思います」
「ありがとうございます」
「それと、毎日ご家族の皆さんが勤勉にお見舞いに来てくださったこと。これはえりか
ちゃん自身にとっても励みになっただろうけど、私たちや、他の入院患者さんたちに
とっても、とても良い影響を及ぼしてくれたと思っています」
「ありがとうございます」
「いや、こちらこそ、ありがとうと言いたいですよ」
先生はカルテを閉じると、両手をテーブルの上において、改めて二人に向き直るように
して、また話し始める。
「そして、もうひとつお伝えしたいことなんですが、これはお二人の妹さん、千聖ちゃ
んと舞ちゃんについてなんです…」
「(うわ…、やっぱりなんかやったんだアイツら…)」
「(ってか本題はコッチかぁ?!)」
つい今までの嬉しそうな反応から一転して、二人ともガクンと肩を落とし、悲壮感漂う
表情で先生を見つめた。これまた二人のリアクションが鏡写しみたいに同時だったので、
先生は苦笑しながら言葉を続けた。
「実は今日、内科病棟から外科病棟に移った、若い女性の患者さんがいらっしゃるんで
す。彼女は乳がんを患っていて、抗がん剤での治療を続けていました。しかし、乳房
の切除手術を受けなければ、完治の見込みがないばかりか、転移する危険性もあった。
でも、やはり女性にとって『乳房を切るということ』には、大きな抵抗があります。
彼女もその手術を受けることを、決断できずにいました」
急に話の内容が読めなくなって、えりかちゃんと舞美ちゃんはきょとんとして、先生を
見上げた。
「でも、休憩室で知り合った千聖ちゃんと舞ちゃんに励まされてね。彼女は手術を受け
ることを決断したんですよ。『チビッココンビ』が、彼女に、生きることの大切さを
教えてくれたんです。もちろん、あの二人にそんな意識はなかったでしょうけどね。
二人が自然に、ありのままに『生きていることの楽しさや喜び』を実感させてくれた
からこそ、彼女の抱えていた悩みや心配が解けていったんだと思います」
「二人の活躍、というか、実際はただ遊んでいるだけだったんでしょうけど、それでひ
とりの患者さんを救うことができた。もしかしたら、彼女たちはこの数日間でもっと
多くの患者さんたちを救っているのかもしれない。なにしろここは二人の『ナワバリ』
ですからね」
えりかちゃんと舞美ちゃんは、あいた口が塞がらず、どう反応していいのかわからない
まま、ただボーっと先生の顔を見つめていた。
「改めて、お二人のお姉さんであるあなたがたに、感謝したいな。とね」
先生は深々とおじぎをした。
「ありがとうございます」
「あ、いえ、そんな、こちらこそありがとうございます。じゃなくてどういたしまして
…じゃなくてやっぱり、ありがとうございます」
二人は多少の混乱を交えつつ恐縮するばかりだった。そして思い返したように、舞美ち
ゃんが恐る恐るたずねる。
「てっきり二人が、皆さんにご迷惑をおかけしていたのではないかと…」
「とんでもない。まあ多少のトラブルはあったみたいですが、にも増して、彼女たちは
病院内にプラスの、ポジティブな雰囲気を撒き散らしてくれてましたよ」
「やっぱりトラブル起こしてたんだ、アイツら…」
「…まあそこらへんは気にしないであげてください。私たちはあの二人に感謝したい気
持ちのほうが大きいのですから」
「ありがとうございます」
「こちらこそ、ありがとうございます」
この日の夜、舞美ちゃんは、家族にとっておきの「おみやげ話」をふたつ、持ち帰って
きた。
●総合病院−玄関前
それから2日が過ぎて、えりかちゃんの退院の日。
「ちょっとしたウエイトトレーニングだね」
「別にあたしにも持たせたっていいじゃん」
「だいじょぶだいじょぶ。これくらい全然平気(笑)」
「二人とも、もうちょっと近くによって歩いて〜」
「ってかナッキーまで、はしゃぎすぎ〜!」
背中と両手に荷物を持った舞美ちゃんと、退院祝いの花束を持ったえりかちゃんが玄関
から出てくる。私はその様子をドキュメンタリータッチに記録するべく、ビデオカメラを
構えて、二人の前に回ったり、後ろから追いかけたりしていた。
お見送りには塩田先生と斎藤さん、大谷さんが出てきてくれた。村田さんは今日はお休
みだそうだ。
「退院、おめでとう」
「先生、みなさん、ほんとにありがとうございました。お世話になりました」
「んー、オチビちゃんたちとも、もう会えないとなると、さびしいねえ」
「なに?、あたしじゃなくて?!」
「んー、もちろんえりかちゃんとだって、…そうだよ(笑)」
「その微妙な『間』はなんなのよー?!」
「うそうそ、もちろんえりかちゃんと会えないのも、寂しいっさあ」
「まあ、そうそう病気にもなってられないからね。仕方ない」
「大谷さんがお休みの時には、ウチに遊びにくればいいじゃない。いつだって歓迎しま
すわよ!」
「うわあ、そういってくれると嬉しい!、ってか助かる」
「なにそれ〜!」
タクシーが到着すると、舞美ちゃんはトランクに荷物をのせ、えりかちゃんは後部座席
に乗り込んだ。運転手のおじさんが降りてきて、舞美ちゃんの手伝いをしようしたけど、
おじさんは結局トランクを閉めただけだった。
私は急いで助手席に座り、後ろを振り向いてえりかちゃんと舞美ちゃんをファインダー
越しに捕らえた。カメラマンはなにかと忙しい。塩田先生が、えりかちゃんの座っている
側にまわり、あけたドアの窓越しに小さなメモを渡した。
「来週末、私が非番なので、よかったら退院祝いを兼ねてドライブでも行きませんか?。
千聖ちゃん、舞ちゃんにもお願いされていることだし。都合がよければ、ここに連絡
ください」
「あ…、はい…、わかりました」
タクシーがウチに向かって出発し、病院の入口を出ようとすると、看護師さんたちがず
っと手を振ってくれているのが見えた。えりかちゃんは、ちらっとそっちを見たけど、あ
とは顔を真っ赤にしながら、うつむいたままだった。すると舞美ちゃんが満面の笑顔で話
しかける。
「えりか、良かったじゃなあい!。あのカッコいいスポーツカーに乗せてもらえるんだ
よ。うらやましいなあ」
…舞美ちゃん、ツッコミどころが違うよ。
●家の中
えりかちゃんが無事に帰ってきたのはいいのだけど、家の中はキッチンを中心にして、
結構なちらかりようだった。
「なにこれえ〜?!」
「結構みんな忙しくってね。やっぱしえりがいないと大変だわ」
舞美ちゃんが他人事のように言うので、えりかちゃんはガックリと肩を落とした。その
後、えりかちゃんの大号令が発動し、家族全員で季節はずれの大掃除が始まった。
大掃除も夕方には終わり、みんなそろって夕食の時間を迎えた。えりかちゃんの退院の
お祝いパーティーも兼ねて…ということで、舞美ちゃんがケーキを買ってきてくれた。
「なんでロウソク立ってんの?」
「まあ、いいじゃん!、ナリで行きましょ。ナリで!」
「ナリって…」
「えりかちゃん、早いとこ吹き消して〜」
「はいはい、それじゃあ…(フゥ〜ッ!)」
「「「「「「退院おめでとー!!」」」」」」
こうして、久々にみんな揃って夕食を食べ、おしゃべりをして、いつもと変わらない夜
になり、いつもと変わらない「おやすみ」を言った。
塩田先生が病院をやめて、九州の大学病院に移ることが決まったのは、翌日のことだっ
た。大谷さんからのメールで、えりかちゃんがそれを知ったのは、さらにその翌日のこと
だった。
ども。今日は「めぐる恋の季節」発売日です。
とりあえず今日はここまでです。
ほぼ完成しつつあるので、順次あげていこうと思います。
勢いで書いてる分、ついついダラダラと長くなってしまいがち
で、それを縮めるのもまた大変…そうこう熱中してしまうと、
時間を忘れてしまいますね。ということで若干寝不足だったり…w。
引き続き、みなさんのツッコミ歓迎です。
325 :
ねぇ、名乗って:2007/07/12(木) 21:54:37 ID:jFGpXeAK0
名探偵℃-uteの(気まぐれな殺意?>05
何度かサイトに書き込みしたものの何の進展もないまま二週間が過ぎようとしていた・・
ある雨の日図書館に来ていた早貴の隣に座り話しかけてきた少女が、
謎の女の子<可愛い女の子が読むにしては変わってるよね?>、
早貴の読む本を覗きこんできた、因みに早貴が読んでいるのは
スティーブンキングの(チルドレン・オブ・ザ・コーン)である、
早貴<メールを送ってきたのは貴方達?>
謎の女の子<達って・・私一人ですけど?お待ちかねだったみたいね>
早貴が唐突に振り向き三つ後ろの席の二人を見つめる、
謎の女の子<あ〜あれ!エンジェル!唯の監視役・・何でわかったの?>
早貴<初めて来たにしては気持ち悪いくらい溶け込んでるから・・・>
謎の女の子<でも変ね・・三回目が合えば交代するように訓練されてるはずだけど?>
早貴<一度見ただけだから・・>謎の女の子<瞬間視が優れているのね>
早貴<それより要件は?>謎の女の子<そうね・・簡単に言えばスカウトよ!>
早貴<スカウト?>謎の女の子<私たち組織に矢島早貴さんをスカウトしに来ました>
<因みに組織には階級があって私はドミニオンズまぁー統括的な役割をしてるわ>、
早貴<人に階級を点けたり監視をつけたり・・・まるでフリーメーソンみたいだね・・>
謎の女の子<人の世に階級は必要よ!ルシファーの目の様な監視体制もね!>、
326 :
ねぇ、名乗って:2007/07/12(木) 21:56:53 ID:jFGpXeAK0
名探偵℃-uteの(気まぐれな殺意?>06
早貴<無理!>謎の女の子<えっ?>早貴<私は組織には入らない!>
謎の女の子<・・・返事は今すぐにとは言わない、三日後にまた>
<それはそうとさっきの何故気が付いたかの説明が・・・>
早貴<貴方達以外は皆毎日ここに来ている人達なの!>
謎の女の子<なるほど!要するに待ち伏せしていたはずが逆に誘い込まれた訳ね?>
早貴<この場所接触してくるだろうと?予想はしていたは・・・>
<サイト自体は隠れ蓑で心に闇と劣等感を抱えてる人物を探すためのもの・・・>
<プロファイルで貴方達の性質を導き出した、その結果>
謎の女の子<んっ〜70%かな?はっきりとした答えになってない!>
早貴<絆よ!言葉こそ交わさないけどここに来てる人達は皆がんばっているの!>
<お互い受験を控えてる・・戦士達だから、戦友みたいなものね!
謎の女の子<私達組織にも絆は・・>早貴がその言葉を遮る様に言った、
早貴<それは絆じゃなく服従よ!貴方達の様な人達には理解不能だろうけど!>
謎の女の子<ちっ・・・>舌打ちし睨みつける少女に早貴は言った、
早貴<まだ名前!聞いてないけど?>謎の女の子<佐紀!!あなたと同じサキ!>、
佐紀となのる女の子はピースサインとウィンクを残して立ち去った・・・
327 :
ねぇ、名乗って:2007/07/12(木) 22:12:07 ID:jFGpXeAK0
名探偵℃-uteを書いてます、
本当はあの人を・・考えていたのですが・・色々考えた結果、
℃-ute対Berryzを面白可笑しく?な設定に変えました!
Berryzの面々も嫌いじゃないので!
後々良くなる方向で・・・
●家の前
「えりかちゃ〜ん!、先生が来たよ〜!」
「スーパーカー!」
「フェラーリだあっ!!」
一応我が家は「閑静な住宅街」の中にあるから、先生の車のエンジンの大きな音は目立
つ目立つ。千聖と舞ちゃんはそれを聞いてすぐ飛び出していったけど、えりかちゃんはま
だ部屋から出てこない。きっとまだ鏡の前なんだろうな。
「ちょっとおー、栞菜いるー?」
ことファッションセンスに関しては、家族でも絶対の知識量と経験を持つえりかちゃん。
だけど、なんとなく不安なんだろうね。自称「我が家の二番手」の栞菜に、臨時のファッ
ションアドバイザーとしてお呼びがかかった。
「このリップ、ちょっと派手かなあ?」
「えりかちゃん、勝負かかってんねえ〜」
「う、うるさい。どうなのよ?!」
「えりかちゃん助手席でしょう?、距離が近いから、も少し薄い色でいいんじゃない?」
「そおかぁ、そうだよねえ…、じゃこっちにしよ!」
えりかちゃんは再び鏡の前に座り、急いでリップをふき取り、明るめのリップに塗りな
おした。「真剣作業」が終わるのを見計らって、栞菜はえりかちゃんの頬をつまんで…。
「はい、笑顔の練習!イッチニ〜、イッチニ〜!」
「ほら(こら)、ほっへはひはふは〜(ほっぺた引っ張るな〜)」
「はい、『笑顔ピ〜チ〜ピ〜チ〜』でしょ?」
「だからって人の顔で遊ぶな〜!」
●車の中
先生の「青いスポーツカー」の後部座席に、千聖と舞ちゃんが乗り込み、助手席にはえ
りかちゃんが座った。
「お、起きれない〜!」
「前が見れない〜!」
「ちょっと、クッションもってくる〜!」
「出して出して〜!」
「あ〜うるさい!、早く行ってきなさいよ」
「えりかちゃんが遅かったんじゃん〜」
「わ〜かったわ〜かった」
後部座席のシートは深く、背もたれも寝いていて、体の小さい二人ではまったく前を見
ることができなくなってしまうのであった。千聖が居間のソファからクッションをふたつ
持ってきて、二人はそれを敷いて座った。即席の「チャイルドシート」だ。先生はそれを
見て苦笑しながら言った。
「江ノ島においしいカレー屋さんがあるんだ、そこに食べに行きましょう」
「わーい!、江ノ島だー!!」
「海だー!!」
「カレーだー!!」
「フェラーリだー!!」
「じゃあ、行きますよ。ちょっとうるさいけど、勘弁してね」
そういって先生がキーをまわすと、車全体が大きく振動して、エンジンがかかった、そ
の大きな音に最初はビックリした二人だけど、すぐにその音に負けないくらいの大声で騒
ぎ始めた。それこそぎゃあぎゃあと…。
「ちょっと、あんたたちうるさすぎ!」
「だってエンジンがうるさいんだもん」
「負けてられないっしょ!」
「何を勝負してんのよっ!」
「いやはは、楽しいなあ」
「すいません…」
「「いってきまあーす!!」」
完全に「チビッココンビ」のペースで、大騒ぎのうちに出発。えりかちゃんは先が思い
やられるまま、先生に平謝りするしかなかった。さてさて、この先どうなることやら…。
車はいくつかの有料道路と国道を通り、鎌倉の神社の前を抜けて、海岸沿いの道にたど
りついた。途中、砂浜の見える駐車場に車を停めて、外の空気を吸うため、散歩すること
にした。
●砂浜の見える駐車場
3月の海は、まだ風が冷たいけど、千聖と舞ちゃんは車を降りるやいなや、靴と靴下を
脱ぎ捨てて走り出した。
「あいつら、やる気ありすぎ」
「いやはは、ホントかわいいなあ、あの二人は」
すっかり野生の血を発揮している二人を、あきれた顔で見送るえりかちゃん。その横で、
塩田先生は苦笑しながらゆっくりと歩き出した。千聖と舞ちゃんは、子犬がじゃれあうか
のように、波打ち際で走り回っていた。
「久しぶりだなあ、ここ」
「前にも来たことあるんですか?」
「よく来ましたねえ。奥さんと一緒に…」
「亡くなった奥さん…ですか」
「そうです。車が好きで…、海も好きでね。私が休みの日は、必ずドライブして海に
出かけてました。ここもそのひとつです。『チビッココンビ』にお願いされなければ、
ここに来るなんて、思いつかなかったなあ」
「思い出しますか?」
「そりゃあもちろん…。でも、いい思い出ばかりです」
●砂浜
波打ち際からちょっと離れたところを、塩田先生とえりかちゃんは並んで歩きながら、
遠くで手を振る「チビッココンビ」を見ていた。先生はときどき、落ちている貝殻をひと
つふたつ、拾ったり、比べてみたりしていた。
「お、コレきれいだ。はい、プレゼント」
「ホントだ、きれい」
手渡されたのは、波に洗われてすべすべした、濃いピンク色の貝殻だった、それはちょ
うど桜の花びらのような形をしていた。なにげなく渡された「プレゼント」だけど、えり
かちゃんはそれをそっとハンカチに包んで、ポケットにしまった。
「先生のこと、大谷さんから聞きました。九州に行くって…」
「いやはは、ちょっと『医者修行』に行こうかな、なんて思ってね」
「今の病院には、いられないんですか?、奥さんのこと…」
「いや、たしかに奥さんのことは、あの病院にいる限り、思い出してしまうこともある
けど…。今回のことは、そんなにネガティブな感情ではないよ。」
先生はわざとらしく腕を組み、しばらく言葉を考えてから、ゆっくりと話し始めた。
「えりかちゃんが退院する数日前に、乳がんの患者さんのことを話したでしょ?」
「はい」
「その人ね、ちょうどえりかちゃんが退院した日に手術をして、成功したんだ」
「わあ、そうなんだ」
「人間って不思議でね。『病は気から』っていうとおりに、病気に『負けない!』って
いう気持ちが、本当によく作用するんだよ。その患者さんも、手術に対して、いや、
ガンと闘うことに対して前向きになってくれたからこそ、うまくいったんだと思う」
「そしてね、そういう気持ちを引き出してくれたあの二人には、ホント感謝している。
それと同時に、自分はまだまだ、医者として未熟だな…って、痛感させられてね、
ハハハ!」
「そんな…」
「ボクはね、医者として患者さんと接することはできても、友人として接することは、
ずっと難しいと感じていたんだ。でも、自分が医者だとか、患者だとか、そんな立場
とは全然関係なく、『生きる』ってことは、みんなに共通する大切なことなんだ…
って、考えてみれば当たり前のことを、あの二人に教えてもらった気がしてね」
先生は歩きながら、えりかちゃんの方に向き直って話を続けた。
「えりかちゃんにも教えてもらったことがある。最初、ご両親がいない家族だと聞いて、
すごく心配したんだよ。『この子ひとりで病気と闘うなんて、大丈夫かな』ってね。
でも、えりかちゃんは全然弱音をはかなかったし、ボクらのいうこともきちんと聞い
てくれた『りっぱな患者さん』だった。そして姉妹みんなが助け合って、みんなが笑
って過ごしている様子も見ることができた。普通の家族よりも、ずっとすばらしい
『りっぱな家族』がいるんだってことを、教えてくれた」
「そんな、すばらしい…なんて」
えりかちゃんはどう答えていいんだか分からず、なんとなくあいまいに、笑って恐縮す
るしかなかった。そうして、またしばらく歩いてから、先生が話し始めた。
「…去年、彼女、えーと、自分の奥さんがガンで亡くなっちゃったとき、やっぱりかな
り落ち込んでね…。自分は医者なのに、一番大切な人を守れなかった…っていうのは、
ショックが大きかった」
「医者を辞めようか…とも思った。でもボクはものすごい不器用な人間でね。医者以外
でなにかできそうな自信もなく、ここまでズルズルと、惰性で仕事をしてきたんだ。
さすがに『死のう』とまでは思わなかったけど、かといって、生きる理由も見つけら
れずにいた。でも、『大正のえりかちゃん』に生きる意味を教えてもらってね」
「『大正のえりかちゃん』?」
「ボクが勝手にそう呼んでるんだけどね。同姓同名のおばあさんがいたでしょ?」
「あ、あのおばあちゃん?」
「そう、もう長い間、通院で治療を続けているんだけどね。『大正のえりかちゃん』
はすごい人で、戦争でご両親を亡くして以来、ずっとひとりで生きてきたんだ。えり
かちゃん、『モガ』って知ってる?」
「いえ…、なんですか?」
「『モガ』っていうのは、『モダンガール』の略でね、男性だと『モダンボーイ』を略
して『モボ』って呼ばれてた。大正の当時、西洋から入ってくる流行の最先端を取り
入れることに一生懸命だった世代の若者たちを、そう呼んでいたんだね」
「『大正のえりかちゃん』も、その『モガ』と呼ばれた世代の人でね。もう90歳近い
というのに、お茶目で、どんなものごとに対しても、前向きな見方を持っている人な
んだ。病気のことを告知したときにも『病気には負けないから』って笑ってたくらい」
「お子さんやお孫さんもいるけど、ご主人を亡くしてからは、またひとりで生活してい
るんだって。ボクはなぜ、そんなに強く、前向きに生きられるのか、不思議だったか
ら、思い切って聞いてみたんだ。そうしたらあっさりと答えてくれた。えりかちゃん、
人はなんのために生きているんだと思う?」
「なんだろう?、私にはまだ、わからないんじゃないかなあ」
「おばあさんはね、ひとこと『名前のため』って答えたんだ」
「名前のため?」
「そう、名前のため。人の名前っていうのは、その人がいなくなっても、つまり死んで
からも、ずっとその人のためだけに残るもの。その名前が『いい名前』になるか『悪
い名前』になるかは、その人の生き方次第で決まる。だから、自分で納得の行く『名
前』になるように生きるんだって…。難しい話になっちゃったかな?」
「ちょっと難しいけど、…なんとなく分かるような気がします」
「その話を聞いてね、考えてみたんだ。ぼくには『塩田良平』という名前がある。『塩
田良平』は果たしてどんな人だろうか、ただの医者?、まあそれでもいいかもしれな
い。奥さんを愛していた人?、それはどうだろうか…。たしかに奥さんが生きていた
当時は愛していた。でも、奥さんを亡くして、その悲しみに負けてしまっては、ただ
単に『塩田良平』はよわっちいヤツの名前になってしまうかもしれない。そうやって
自分のことを、名前を通して考えると、『生きる』ってことの意味が違って見えてき
たんだ」
「だから今回、九州に行くって決めたのも、とりあえず『りっぱな医者』になろうと
思ってね。…別に偉くなろうとか、そういうのじゃないよ。えりかちゃんや、乳がん
の手術をした患者さんのように、病気と闘う気持ちのある『りっぱな患者さん』に、
きちんと応えることのできる『りっぱな医者』に…ね。それが、今自分にできること
のひとつだと思ってね」
「名前って不思議でね。まったく同じ名前の人がいたとしても、それぞれが違う人なん
だってことを主張しているんだ。例えば…」
そういって先生はえりかちゃんを指差した。
「私?、私は…『平成のえりか』?」
「そう!、『平成の矢島えりか』!。偶然ってすごいよね。実はボクの奥さんも、名前
は『えりか』…。しかも旧姓が『矢島』だったんだ。だから『昭和の矢島えりか』な
んだよ」
「ええっ!、うそ?!」
「ホントに、どんな運命のいたずらだろうって驚いたよ。ボクは3人の『矢島えりか』
に出会ったんだ。『昭和の矢島えりか』と結婚し、『大正の矢島えりか』に教えられ、
今また『平成の矢島えりかちゃん』に出会った。それぞれの『えりかちゃん』は、ボ
クに、生きる楽しさ、生きる意味、そして生きる大切さを教えてくれたんだ。だから
今は、生きるってことが楽しくてしょうがない。ぼくは多分、幸せなんだろう」
先生は多少オーバーなアクションで両手を広げて、海に向かってなにか叫ぶようなポー
ズをしてみせた。えりかちゃんは、なんだかよく分からないんだけど、涙目になっている
自分に気がついていた。
「わたし…」
えりかちゃんは言葉を続けようとしたけど、出てこなかった。
「あれ?、あの二人、どこ行った…?」
●ふたたび駐車場
砂浜で遊んでいたはずの二人の姿が見えなくなってしまったので、えりかちゃんと先生
は駐車場に引き返して待つことにした。車のところまで戻ってくると、なんと二人は先回
りしてビデオカメラを構えていた。
「センセーセンセー!、映画のワンシーンみたいなのが撮れたよ!」
「ほらほら!、砂浜を歩くカップル!!」
「おぉ!、こりゃ撮られちゃったな〜」
「あんたら、いつの間にカメラなんか持ってきてんのよー!」
その後、塩田先生オススメのカレー屋さんで食事をし、満腹になった「チビッココンビ」
は、後ろの座席で夢の中を冒険して、家にたどり着いた。
●空港
2週間後、九州の大学病院に移るため、飛行機に乗ろうとしていた先生を見送りに、舞
美ちゃんとえりかちゃんと私は空港に来ていた。学校は春休みに入っていて、千聖や舞ち
ゃんも来たいと言っていたけど、「おみやげをもって帰るから」と言い聞かせて、お留守
番させた。ただでさえ不慣れな場所に、トラブルメーカーを連れて行くのは、リスクが大
きすぎるからだ。
家族から預かってきたいろいろな『おみやげ』を先生に渡すと、先生はそれを丁寧にス
ーツケースにしまった。たくさんお世話になたお礼を言ったり、先生の新しい住所を聞い
たり、九州の病院のことを話していたりするうちに、出発の時間が近づいてきて、搭乗口
のゲートの前まで来た。
「えり、最後にひとこと、言ってきたら?」
「うぅ、プ…、プレッシャー…」
「負けるな。えりかちゃん!頑張って!!」
「私たちは聞いてないからさ!!」
そういって舞美ちゃんと私は、両方の耳を手でふさぎ、目配せをした。えりかちゃんは
小さくうなずくと、先生のそばに走りよった。
「先生!、あたし、病院は嫌いだけど!、先生は好きです!」
「え?」
「先生が好きです!」
えりかちゃんはそういって抱きついたけど、先生はあっけにとられて、スーツケースの
取っ手を持ったまま棒立ちになって固まってしまった。でも、ほんのちょっとの時間で気
を取り直したように、えりかちゃんの肩を持って向き合った。
「ありがとう。なんか…、どう答えたらいいのか分からないや。ボクは本当に不器用で
ね。今はたぶん、えりかちゃんの気持ちに応えてあげることができないんだと思う」
先生はやさしい笑顔で、えりかちゃんを見つめた。えりかちゃんは、自分でも笑ってい
るのか、泣いているのか分からないような、グジャグジャな表情しかできなかった。
「でも、『出会い』をくれた君には本当に感謝しているよ。向こうに着いて、そして落
ち着いたら手紙を書く。もちろんメールだってかまわない。いつでも話し相手になれ
るし、逆になってほしいかな。距離は離れているけど、気持ちは近いままでいたいね」
「わたし、どうしたら…」
「えりかちゃんには、ぜひとも『平成のえりかちゃん』でいてほしいな。その名前はま
だまだ未完成なんだから…。だから、すばらしい名前にしてほしい」
先生はそっとえりかちゃんの両手を握り、その手の甲にキスした。そうして、どこか外
国の紳士を気取ったように、軽く会釈をしてから、再びスーツケースの取っ手を持って、
歩き出した。
「じゃあ、明日にでも、メールちょうだい!」
先生は振りかえって、大きく手を振った。えりかちゃんもそれに応えて、手を振った。
私たちもえりかちゃんの後ろで、手を振った。ゲートの向こうに先生の姿が消えると、え
りかちゃんは深呼吸をしてから、私たちのほうに向き直った。
「ねえねえ、ちょっと肩貸してくれる?」
「なになに?、どしたの?」
「あのさ、ちょっとだけ…、泣かせて」
「うん、いいよ」
3人で肩を組んで、円陣のように輪になって、その中でえりかちゃんは、小さく肩を震
わせながら泣いた。私たちも、なんだかもらい泣きしちゃって、立ったままその場を動け
なかった。他の人から見たら、「何やってんだろう?」って思われただろうな。
しばらくそうやって泣いていたけど、えりかちゃんが私のトートバッグに入っているビ
デオカメラの存在に気がついて…
「ちょっと!、あんたらねえ、いくら耳ふさいでたって、しっかりビデオにとってん
じゃん!!」
「だって、千聖たちにおみやげもって帰るって言った手前…」
「『おみやげ』って、あのねえ…」
そのあとは屋上に上がって、先生の乗った飛行機が飛び立つのを見送った。先生から見
えていたかどうかは分からないけど、私たち3人は思いっきり笑顔で、思いっきり力いっ
ぱい、手を振った。
おしまい
●エンドロール
「負けないで」
−− テーマソング・イメージ −−
わっきゃない(Z) ℃-ute
(作詞:つんく/作曲:つんく)
−− キャスト・イメージ −−
矢島 舞美 矢島 舞美
矢島えりか 梅田えりか
矢島 早貴 中島 早貴
矢島 栞菜 有原 栞菜
矢島 愛理 鈴木 愛理
矢島 千聖 岡井 千聖
矢島 舞. 萩原 舞
看護師・斎藤 斎藤 瞳
看護師・村田 村田めぐみ
看護師・大谷 大谷 雅恵
花屋のおばさん 長澤 素子
塩田良平 内田 健介
矢島えりか 保田 圭
(大正のえりか)
●後日談
舞ちゃんが、えりかちゃんの部屋のドアをノックした。
「どうぞー。あれ、舞ちゃん、どした?」
「ねーねー、えりかちゃん。今度さあ、じゃなくて夏休みにさあ」
「夏休み?、うん」
「『りょーへーちゃん』とこに、遊びに行かない?」
「『りょーへーちゃん』?、誰?」
「まいのメル友。『りょーへーちゃん』」
「し、知らないんですけど…」
「何いってんのぉ?、塩田先生だよっ!」
「えっ?!。舞ちゃん、いつの間に塩田先生と『メル友』になってんの?!」
「えりかちゃんが入院した次の日からだよ?」
「うそっ?!、そんな前?、ってか、舞ちゃん携帯持ってんの?!」
「ナッキーの借りてメールしてんの!」
「うそ…うそっ?!、そんなのあり?」
「うちの家族、みんな『りょーへーちゃん』とメル友だよ?。えりかちゃん、知らなか
ったの?」
「し、知らなかった…、っていうか、それってすんごい迷惑かけてない?」
「センセーねえ、お仕事終わったあとに、ちゃんとみんなに返信してくれるんだよ」
「あー、ホントに『不器用な人』だぁ…」
「でさ!、でさ!、『みんなで遊びにおいで』ってメールくれたんだよ?」
「そんな…。みんなの予定とか合わないかもしれないし、だいいち旅費がすごくない?。
まあどっちにしろ、あとでみんなで相談してみよう…」
「わーい!」
「こらー、まだ決まってないっつうの!」
ドアを開けっ放しで出て行ってしまった舞ちゃんにあきれながら、えりかちゃんは机に
向き直り、そっと引き出しを開けた。そこには、ハンカチに包まれたピンク色の貝殻が、
ほんの少しだけ顔を出していた。
ども。やっとこさ終わりました。
長々とスレを使ってしまい。申し訳ないです。
小説自体書きなれていないし、特に恋愛モノとか、超苦手なので、
心理描写や展開に苦労…、っていうかやっぱし無駄に長いですね。
スイマセン。
また、何人かの方には好評いただいているようで、ありがとうござ
います。
なにか間違っているとことか、改善の余地あり的なとことかありま
したら、ぜひツッコミいただきたいと思っております。
でわでわ、
引き続き他の作家さんたちの作品も楽しみにしております。
344 :
松輝夫:2007/07/13(金) 06:42:44 ID:O7SltkmdO
>>343 更新お疲れさまです。
終始ほのぼのとした感じで自分は好きですね、こういう話。恋愛ものは苦手と言われるが、どこが?って感じですよ。
これだけの内容だと、長くなるのは仕方ないと思います。自分も、いつもなるべく短くしようとして苦労していますが、こればかりは自分で書いてみないとわからないと思います。
また次回作も期待して待ってます。素晴らしい作品をありがとうございました。
345 :
ねぇ、名乗って:2007/07/13(金) 07:49:00 ID:q1OTLupQO
なんとエンドロールまでついてるとは!
次回作も期待してますよ。
346 :
ねぇ、名乗って:2007/07/13(金) 10:05:39 ID:FueFoEiFO
「まいまいが行く」
まいまいが歩き出した
それを追う愛理
まいまいはまったく気付かずに歩いて行く
愛理も隠れながら尾行をつづける
彼女たちに何があったのか?
……つづく
Mother Tells
妹たちも寝静まり平穏を取り戻す矢島家
年長の二人は思い出話に花を咲かせる
「えり、この写真見て」
「なにー」
「ほら、舞が全然サイズ会わないのに
母さんの服着て」
「あぁ、裾擦りながら歩いて」
『早貴にお掃除ご苦労様ってからかわれた』
2人同時に発した言葉に当時の光景が蘇り
顔を見合わせ苦笑する
「フフ、でもあの後大変だったよね。
えりが必死で千聖なだめて」
「お母さんの服汚すなーって
ホントに舞に飛びかかりそうだったよね」
「舞も千聖も母さん大好きだったからね…」
「学校の屋上から鳥居が見えるでしょ」
「あの山のてっぺんにあるやつ?」
「そうそう」
「でね、その鳥居にお供え物持って行くと」
「行くと?」
「会いたい人に会わせてくれるんだって」
「ウソー」
少女達の他愛もない噂話
でもそれは千聖を突き動かすには十分過ぎた
「お母さんに会える」
嬉しくなって何度も何度も繰り返し呟いた
通い慣れた通学路を一気に駆け抜ける
「早くみんなに教えてあげなきゃ」
「あ〜あ、つまんなーい」
舞はお気に入りのサングラスをいじりながら
とぼとぼ家路につく
お母さんが死んでから灰色の日常が続く
楽しかったはずのクラスメイトとの会話も
今はなんだか外国の言葉みたいに聴こえる
舞美ちゃんやえりかちゃんはお母さんなんて
いなかったみたいに普通にしてるし
ナッキーや栞菜ちゃん、愛理ちゃんも毎日楽しそうにヘラヘラして……
「みんな、嫌い」
そう言った直後、背中に何かがぶつかった
「いたーい」
振り返ると千聖がいた
思わず睨みつける
「ごめん。急に止まれなくて。」
「千聖、ちゃんと前みて走れー」
「それどころじゃないよ舞ちゃん、実はね……」
千聖の話に舞はすっかり魅了された
興奮覚めやらぬ舞は
「今すぐ行くー」とまるで駄々っ子のように
手をぶーんと振り回す
「駄目だよ。お姉ちゃん達も誘わなきゃ」
「やだ、やだ、やだー。今すぐ行く」
「それに今日はもう遅いし、暗くなっちゃうよ」
千聖は渋り続ける舞の手を引いて我が家へ急ぐ
深夜の矢島家
2人の会話は続く
「えり、そういえば千聖と舞がお母さんに会えるんだって
言い張った時あんじゃん」
「うんうん、千聖が変な噂聴いてきてね
うちらも一緒に行こうって」
「まさか、あそこまで真剣だったなんて思わなかったよ」
興奮で顔を真っ赤にしながら千聖が
一生懸命語る姿が目に浮かぶ
「舞なんて怒りっぱなしで」
「やっぱりみんなお母さんの事なんて
どうでもいいんだとか言って」
「うちちょっと後悔したよ
もっと真面目に聞いてあげればよかったって」
2人の記憶はその後に起こる小さな2人の冒険にたどり着く
仕事が入ったので続きは夜にでも
梅の花
読んでレスくれた方有難うございました
>>344 ありがとうございます。今回ので体力脳力ともけっこう消費したんで、
しばらくはネタを考える余裕がなさそうですw。
>>345 ネタを書いてる(キーを叩いてる)最中はずっと脳内で稚内がエンド
レスリピートしていて、場面のところどころが歌詞をモチーフにしてあ
ります。
それをどうにか紹介したくて、エンドロール付けました。久々に
AAEditor を使いましたw。まあ結局最後にオチもつけましたけど。
>>352 続き、楽しみにしております。
354 :
作家1号:2007/07/14(土) 19:01:24 ID:B46ohH7n0
>>353 話が長くなると思ったら頭の数字振らなきゃいいんですよ
どうしても分割して貼る事になるんだから、6日の分をまとめて(1)、7日の分を(2)とかして
章立て風にして誤魔化しちゃえば長さは感じなくなるはず?
どっちにしても短編書く人あり、長編書く人あり、サスペンス書く人ありの
枠に捕らわれないバラエティさがこのスレの魅力だと思ってやってきましょう。
>「あのさ、ちょっとだけ…、泣かせて」
ここ、泣けるス。ちょっと休んだらぜひ次作を!
>>352 是非メイン作家の一人に!
とりあえず続き楽しみです
コテで馴れ合うと新規に人が入ってきずらくなるかな、と思って
基本名無しでいるつもりだったんだけど、良作連発されてついレスを。
自分も切磋琢磨していいモノ書いていきたいので、読んで面白いと思った話にはどんどんレス下さいな。
作家の方も募集中です。設定は『℃-ute七人が姉妹だったら』のみです。ユルいです。
355 :
ねぇ、名乗って:2007/07/14(土) 22:23:04 ID:tykqLf+Y0
しばらくこのスレ見てなかったけど盛り上がってきてますね!
最高です!
>>347-351 「ほら、昨日あのまま2人で行けば良かったじゃん」
姉達に鳥居の話をした翌日
舞は不機嫌そうに千聖を責めた
「だってさぁ、みんなで行った方がお母さん喜ぶと思って」
俯きがちに千聖が答える
「もぉいい、2人でいくから」
舞はカバンから自らカワイイと公言してはばからない
ドクロ型の貯金箱を取り出し、徐に地面に叩きつけた
「いくらあるかなぁ」
舞がお手伝いしてこつこつ貯めた硬貨
「えーと、910円だね」
散らばった硬貨を拾い上げる千聖
「舞ちゃん。これじゃお供え物買ったらおしまいだね」
「いいもん。歩いて行くし」
矢島家では2人の会話がなお続く
「鳥居につく迄も大変だったみたいだね」
枝豆をつまみながらえりかが語りかけた
「うん。ほら舞って猫が苦手じゃん」
「ほぅらっけ」
「フフフ、食べてから喋りなよ」
舞美に指摘されえりかは照れながらも口の中の枝豆を飲み込んだ
「そうだっけ」
「そうだよ。それでね、鳥居に行くにはどうしても
通らなきゃいけない小道があるんだけど」
「あー思いだした」
「ネコきらーい」
細い一本道に我が物顔で寝転がったドラ猫
それを一目見るなり立ち止まり舞は同じ台詞を繰り返した
「舞ちゃん。大丈夫だって
私が見本見せるから付いてきて」
そう言うと千聖はあっさりネコを飛び越えた
「ほら、動かないよ。こっちおいでよ」
「聞こえなーい」
舞は耳を自分の手で塞ぎだだをこねた
「お母さんに会いたいんでしょ
早くしないとおいていくよ」
舞は「お母さん」と言う言葉に反応し微かに歩を進める
「そうだよ。舞ちゃんがんばれー」
千聖の声に後押しされ舞は高く飛んだ
国道を一本入った静かな場所にその山はあった
「あとちょっとだ。頑張ろうね、舞ちゃん」
「言われなくても頑張るし」
先程の件で何となく千聖に子供扱いされた気がして
膨れっ面で答える舞
「どっから登るんだろうね」
キョロキョロ辺りを見回しながら千聖が言う
「あったー。千聖ここだよ」
舞は手招きしながら嬉しそうに千聖をよんだ
『うわぁー。長い』2人は鳥居まで続く長い長い階段を見つめ息を飲んだ
2人は「お母さんに会える」その一心だけで階段を登り続けた
空が夕焼けで真っ赤に染まる頃2人は鳥居へたどり着いた
「ここだね」
「あっ、千聖。鳥居の横に台があるよ」「ホントだ。其処にお供え物置こうよ」舞はポケットから大事そうにそれを取り出す
2人で選んだお母さんが好きだった桜の花のブローチ
安っぽい玩具だけど2人の気持ちの籠もったそれを台に置く
「お母さんに合わせ下さい」
「お母さんに合わせ下さい」
2人は心から願った
いくら待っても変化は無かった
「何でお母さん来ないのー。舞の事きらいなのかなぁ」
舞は大粒の涙をこぼしながら地面にへたり込んだ
「お母さん…」
千聖も今までの疲れがどっと押し寄せ舞の隣に座る
夜の訪れを知らせる虫の声
2人はただただそこに座り続けた
「ちさとー、まいー」
微かに聞こえるその声に2人は立ち上がり周囲を見渡す
「舞ちゃん、なんか聞こえるよ」
「ほんとだ」
声は段々近ずく
「千聖ー、舞ー」
階段を駆け上がる複数の人影が2人の目にとまる
「やっぱり、此処にいたんだね」
真っ先に鳥居にたどり着いた影が語りかける
「舞美ちゃん…。」
「すごい心配したんだからね」
そう言って舞美は2人を抱きしめた
舞美の背中ごしに姉妹達の姿が見える
「見て、桜が咲いてる」
鳥居の先には狂い咲きの桜が
(いつも一緒だよ)
舞い散る桜の花と共に母の声が姉妹達に届いた気がした
2人の会話は続く
「あの時の声、何だったんだろうね」
舞美は散々姉妹で議論しつくされた話題を持ち出す
「わかんない。わかんないけど
千聖と舞の願いが母さんに届いた
それでいいじゃん」
「うん。そうだね」
ジリリリリ
妹達の目覚ましが一斉に朝の訪れを告げる
「えり、みんな起こしてきて」
あの日以来あの鳥居に行くのが矢島家の恒例行事となった
母の声が聞こえる事はもう無い
だけど姉妹達のそばには大好きな母さんがいた
「ほら、いくよー」
舞美のかけ声に
『おー』
千聖と舞のは満面の笑みで答えた
昨日続きを書き込むつもりでしたが
台風で軽く死にかけました
皆さんも飛来物?には気をつけて下さい
イメージ先行の為か構成が甘く後半がぐだぐだになりました
>>353 本当にほのぼのした雰囲気でまさに℃-ete
作品楽しく読ませていただいてます
>>354 私の駄文で宜しければ参加させていただきたいです
364 :
ねぇ、名乗って:2007/07/16(月) 05:01:17 ID:JNmBBn0yO
>>363 乙です。
回想と交互に展開していくスタイルが斬新ですね。
ラストも印象的ですばらしいです!
欲を言えばナッキー・栞菜・愛理を何らかの形で絡ませてみるともっと面白いかなと思いましたが。
っていうか、みんなうまいなぁ…正直、軽く嫉妬しちゃいます。
365 :
ねぇ、名乗って:2007/07/16(月) 16:53:37 ID:THJTbqew0
>舞はカバンから自らカワイイと公言してはばからない
>ドクロ型の貯金箱を取り出し、
>「えーと、910円だね」
こういう細かいディテールとか小ネタも本当にその人のセンスだよね。
俺も上手いなあ、と思う。
「(雨はユウウツ…)」
窓の外にシトシトと降る雨を横目に、愛理は髪にブラシをあてている。愛理はクセ
ッ毛の持ち主だから、湿気の多いこんな日は、いつもよりドライヤーを使う時間が長
くなってしまう。
「舞美ちゃんの季節だねえ…」
朝食のテーブルにつくとき、それとなく毒づいてみる。愛理にしては珍しい「黒愛
理モード」だ。舞美ちゃんはちょっとビックリして、えりかちゃんと目を合わせた。
「なにそれヒニクー?!、好きで『雨女』やってませんってばー!」
「さすがの『晴れ女』も、梅雨の時期には勝てませんかな?」
過剰に反応してみせる舞美ちゃんと、それとなくフォローするえりかちゃん。私は
トーストにマーガリンを塗りながら、クスッと笑ってしまった。だけど愛理の沈んだ
表情は、晴れないままだった。
「今日さあ、テストなんだよねえ…」
「あれ?、勉強が得意な愛理様のセリフとは思えないですわ」
「ゆうべテスト勉強したらさあ、全然違うとこやってたんだよねえ。今朝になって
気づいた」
「だいじょぶだいじょぶ。愛理はテスト勉強しなくたって、いっつも上位じゃん?」
「実は珍しくテスト勉強なんかしたから、雨降ったんじゃない?(笑)」
「愛理、トーストは?、ミルクだけ?」
「ショックで食欲ない〜」
「朝食ちゃんと採らないと。せめて頭だけでもしっかり働かせなきゃ〜」
「うーん…」
朝食を終えたら、いつもより少し早く家を出て、バス停に向かう。雨の日はバスが
混雑するし、駅までの道も渋滞して、時間がかかってしまうから。バス停に着くと、
すでに何人かの人が並んでいて、その一番最後に愛理も並ぶ。それほど時間もたたな
いうちに、愛理の後ろにも次々と人が並んでくる。
到着したバスは、案の定、ほとんど満員。愛理は並んでいる人の流れにさからえな
いまま、その中に、さらに押し込められるようにして乗りこんだ。長い時間ムシムシ
したバスの車内で揺られていると、せっかく伸ばしたクセ毛も、またクルクルになっ
てしまうような気がして、愛理はますます「ユウウツ」になってしまう。
「(みんな黒に見える…)」
スーツ、ブレザー、学ラン、そして傘。ダークカラーの服やアイテムは、雨に濡れ
るとますます色濃くなってしまう。そんな、通勤・通学の男の人たちに混じって、な
ぜか愛理の周辺だけ、女の子は愛理一人だけになってしまった。別にはじめてのこと
ではないけれど、愛理の「ユウウツ」はどんどん加速していく。
途中のバス停で何人かの人が降りて、座席が空いた。そしたら、その席の前に立っ
ていた人が愛理を手招きして、そこに座るようにと促した。
「す、すいません」
愛理は軽く会釈をして、その席にすわった。正直「助かった」と思った。そして座
らせてくれた人をチラッと見上げると、同じ学校の制服を来た人だった。
「(誰だろう、先輩?)」
バスの中はギュウギュウ詰めなので、その人の顔をまじまじと見上げることまでは
できなかった。でも、その人がカバンと一緒に持っているスポーツバッグには、マジ
ックで大きく名前が書かれている。その名前を見た瞬間、愛理の顔が真っ赤になった。
「(うそ!、あのセンパイ?!)」
同級生の女子の間でもたびたび話題になる、憧れのあの先輩が、自分のすぐとなり
に立っている…。
「(このまま駅までずっと一緒?!、イヤイヤ、それよりも、その人に席を譲って
もらっちゃった?!、うわー、なんか話しかけたいけど、そんなことできない
よ〜、絶対!!)」
愛理はじっと前を見たまま、カバンを抱きしめて固まってしまった。バスは終点の
駅に到着し、次々と人が降りていく。先輩も、その人の流れに混じって降りていく。
愛理はもういちど会釈をしたつもりだったけど、先輩に伝わったかどうか…。バスの
中ががらんどうになってきて、ようやく愛理も席を立ち、駅に向かった。
「(多分先輩は、ひとつ前の電車に乗っちゃったかな…)」
そんなことを考えながら改札を抜けたとき、愛理は棒立ちになった。
「あ、傘忘れた…」
振り向いても、もうバスは折り返して行ってしまっている。しょうがない、別に高
い傘ではないから、届けるのも面倒くさいし…。
−−夕方−−
愛理は駅で、改札を抜けてくる人をひとりひとりチェックしていた。待ち合わせを
しているフリをしてみたり、看板のかげに隠れたり、そんなことをもう1時間も繰り
返していただろうか。人の流れの中に舞美を見つけると、小走りに駆け寄っていった。
「舞美ちゃんおかえり!」
「おぅ、愛理じゃん。どした?」
「うーん、舞美ちゃんが先に来ちゃったか〜。まあいいや」
「なにそれ?!」
「なんでもない(笑)。傘忘れちゃったの。一緒にかえろ!」
「いいよん。でもあたし、バスの定期ない…」
「一緒に歩いて帰ろ、『アイアイ傘』で!」
「いいの愛理?、結構歩くよ?」
「いいのいいの!。ねえ舞美ちゃん、明日も雨かな?」
「そうだなあ、梅雨だからねえ…」
女の子二人の『アイアイ傘』は、夕方の、小雨が降るどんよりとした曇り空の下、
消えていった。
おしまい
ども。
しばらく投稿しない(できない)つもりでいましたが、どうやら
はまっております。w
「通学ベクトル」を題材に、なんかできないかなあ…とか漠然と
考えてたら、舞美の定期ネタをきっかけにして、ポンポンとアイ
デアが出てきてしまいました。せっかくだから、梅雨明けしない
うちに投稿してしまおうかな、と。
今回はできるだけ短くなるように意図して書きました。なので
かなり説明的な文章を端折ってるかもしれません。それでも
まだ長いかな、とか思いますけど…w。
>>354 番号振らないと、途中で(意図してなくても)割り込みレスが
入った時にどうかな…、と思っちゃいまして。まあどっちにしろ、
「負けないで」ほどの長編はもう書けそうにないですw。
>>363 お体お大事に。
作品は展開の動と静が面白いですね。ネコのエピソードが
冒険になってしまうのも二人らしいというか。
>>「お母さんに合わせ下さい」
これは狙ったセリフ?、タイプミス?
371 :
ねぇ、名乗って:2007/07/17(火) 22:42:35 ID:Zu6Z7CPY0
乙ッス!!
こういうさりげない日常の描写ってすごく好きです
作Bさんけっこう作風が豊かですごいなと思う。
今自分が書いてる話が長くなってしまって大変で
作Bさんの執筆量はあらためて脅威的だと思う今日この頃ス
…パタン!
待ち合わせ場所の駅前で、時間を確認したケータイをちょっと乱暴に閉じて
愛理はつぶやいた。
「遅いなあ、もぅ!」
…まったく、初デートの約束に遅れるなんて信じられない。
一人待ちぼうけをくらった愛理は心の中で憤っていた。
その時、正面からやってきたデートの相手が愛理を見つけ、手を振りながら駆けて来た。
「ごめーん、待ったーー?」
「遅いよ、栞菜ー!早く早く、もう電車が出ちゃう!!」
駅から目的地に向かう電車に乗ると、ギリギリ二人並んで座れる空席があった。
二人は背負っていたリュックを膝の上に乗せ、体を密着させて横並びに座った。
「まったく、せっかくの初デートに遅刻ってのはどういうことだ!
さっそく減点1だよ、減点1」
『初デートの心得』に違反した栞菜に愛理が言った。
「だってお洋服選ぶの時間かかったんだもん。ねえ、今日のファッションおかしくない?」
「大丈夫、かわいいかわいい」
「本当?」
「本当だって」
「そう?よかったーー!!」
嬉しそうに答える栞菜を見て、愛理の憤りも簡単に萎んでしまった。
そして(栞菜はデートを本当に楽しみにしてるんだな)とあらためて思った。
373 :
ねぇ、名乗って:2007/07/19(木) 02:00:44 ID:IF8gfTXxO
通学ベクトルのモチーフ良いですね
読んでいて思わずクネクネしちゃいますw
「でも同じ所に住んでるんだから、別々に家を出て待ち合わせる必要ないんじゃないの?」
「だって一緒に家を出るとデートの感じがしないでしょ?ドキドキしながら
待ち合わせるからデートなんじゃん」
「ふーん、そんなものなのかな?」
「そうだよ、そんなものだよ」
栞菜はそう言うと、正面を向いて窓から流れる景色を眺め鼻歌を歌いはじめた。
(…栞菜はキレイな顔をしているなあ)と、愛理はその横顔を眺めて思った。
(性格はえりかちゃんに似たんだな、黙ってさえいれば美人できっとモテるのに)
愛理がそんな事を考え、栞菜の普段のお喋りぶりを思い出してニヤニヤしていると、
隣に座る栞菜がふいに腕を組んできた。
「…ちょ、ちょっと栞菜何してんの!?」
「これくらい密着してたら腕を組んでも自然でしょ?」
「で、でもホントに腕なんか組んじゃうの!?だってこれが初デートだよ!?」
「いいじゃん、ホントに好きだったらこれくらい当たり前ジャン!」
「好きだったらって、当たり前って、えっ、え〜〜!?」
「あはは愛理、顔真っ赤だよ〜!」
顔が熱くなっていくのを感じた愛理は、
今日のデートはどうなることやら、とちょっと不安になった。
電車を降りて10分ほど歩くと、今日のデートの目的地である遊園地に着いた。
遊園地に動物園とプールまで併合された、人気のレジャースポットだ。
入り口からすでに、遠くに巨大な白い山のようなものが見える。
あれが『世界初の水上木製コースター』が売りの、この園のアトラクションでも
一番人気の巨大ジェットコースターだ。
愛理の今日一番の楽しみはこのジェットコースターに乗ることだった。
「ねえ栞菜、あのジェットコースターに乗ろうよ!」
「ちょっと待って愛理、ここ読んでみて」
栞菜は、ポケットから可愛いメモ帳を取り出して開いて言った。
それは、ナッキーが『初デートの心得』として調べて書いてくれた『ナッキーメモ』だった。
栞菜が開いたナッキーメモの頁にはこう書かれていた。
『 ※ナッキーメモ
〇ジェットコースター
遊園地で初デートをすると別れるってジンクスが意外と多いの知ってる?
それは実は人気のアトラクションに並ぶと、待ち時間が長くて間が持たないから。
だから、初デートでは長い時間並ばなければいけない絶叫マシーンのような
人気アトラクションは避けること!「怖くて乗れない」と可愛く言って逃げちゃえ 』
「…だって。だからジェットコースターは無しね」
そう言って栞菜は両手で大きく×印を作ってみせた。
だが愛理はもちろん納得がいかない。
「でも今日はウチら二人なんだからいいじゃないかー!!」
「乗り物券だって高いんだし、私は来週も来なきゃいけないんだからダーメ!」
「えー!?それじゃあたし今日何のために来たのかわからないよー!
それに栞菜なんて人一倍オシャベリで、間が持たないってタイプでもないじゃないか!!」
「…何か言った!?」
「…ううん、何にも!!」
栞菜に睨まれて愛理は黙ってしまった。
…ううう悔しい、こうなったら思ってた事全部言ってやる。
「もぅ、第一デートのリハーサルなんて聞いたことがないよー!!」
「だって、相手はあの佐藤君なんだよ!?ライバルだっていーっぱいいるのに
栞菜を選んでくれたんだよ!?だから初デートは絶対失敗したくないじゃない!?」
栞菜が興奮しながら捲くし立てた。
相変わらず佐藤君の事になるとすぐ熱くなる、と愛理は思った。
佐藤君とは、栞菜の一学年上の先輩で、なんでも超イケメンで学校の有名人らしい。
愛理が「そんな人知らない」と言ったら「愛理もマンガばかり読んでないで
現実の男の子に少しは目を向けなよ」とバカにされた。
「イケメンの子を見たらすぐ好きになる栞菜よりはマシだー」と言い返したかったが
栞菜の真剣な目を見て、喧嘩になりそうだったので我慢した。(大人だなあたし、と思った)
とにかく、佐藤君の事を語る栞菜はいつもそれぐらい熱かった。
そんな栞菜が佐藤君に、ついに「つきあって」と告白をしたのが一昨日の金曜日。
何と「OK」の返事をもらい、お互いのメルアドを交換して、来週の日曜日の
デートの約束までして帰ってきた。
天にも上らんばかりの気持ちで浮かれていた栞菜だったが、やがて冷静になり、
静かになり、そして段々ふさぎこんでいってしまた。
明るく見えて、実は心配性でいつも物事を深く考えすぎてすぐに悩んでしまう栞菜。
「デートで何か失敗しちゃったらどうしよう」「嫌われちゃったらどうしよう」と
不安で落ち込む栞菜に、ナッキーが初デートを成功させるマニュアル『ナッキーメモ』
を作ってくれたのが土曜日。
栞菜はそれでも安心できず、「せっかくナッキーがこんなメモまで作ってくれたのに、
本番になったら開いて読んでる余裕なんて無いじゃん!?」と、デートの前週の日曜日に
「デートが成功するようにリハーサルやろうよ」なんて言い出したのだ。
そして今日、その初デートのリハーサルに付き合わされてるのが愛理だった。
「それにしても何でデートの練習相手があたしなのよ?
えりかちゃんだって舞美ちゃんだっているじゃん」
「だって、えりかちゃんは遊園地じゃ絶叫系とかお化け屋敷とか怖いのは一切駄目だし、
舞美ちゃんだと逆にデートそっちのけで絶対自分だけ楽しんじゃうじゃん?」
うん、たしかにその通りだと愛理も思った。
「それに千聖とマイじゃデートじゃなくて保護者になっちゃうし、
ナッキーはいかにも女の子って感じで男の子役でデートは無理でしょ?」
「う…、じゃああたしは何なのよー!?」
「そんな細かいこと気にしないでいいじゃん、それにジェットコースターはダメでも、
ちゃんとおすすめのアトラクションもあるよ。ほら、ナッキーメモ見てみて」
『※ナッキーメモ
〇お化け屋敷
吊り橋効果っていって、人は怖い時にいっしょにいる人に好意を持つんだって。
だから怖いアトラクションは〇。お化けが怖いふりして相手に抱きついちゃえ!
〇観覧車
てっぺんが近づいたら「ここ、そっちから見た方が景色がいいんだって」って
言って男の子の隣に座ってさらに新密度UP!てっぺんでは抱き合うなり何なり
何をするかはご自由に。 』
「…だって」
「……ナッキー、何考えてんだーー!!」
愛理はまた赤くなってしまった。
ともかく、こうして二人の初デート(リハーサル)は始まった。
「…それ、ア〜ニマルア〜ニマル♪」
「か、栞菜、変な歌唄わないでよ、デートでそれ減点1だよ」
「違うの、だって、これ何かしてないと酔いそうなんだもん!」
巨大なダックスフンドの背中に乗ってクルクル周る乗り物は
かわいい見た目と裏腹に思いのほか左右に揺れて気持ち悪かった。
「これは来週は乗らない方がいいね」
「…うん」
「あ、愛理が男の子役なんだから先に歩いてよ」
「嫌だよ!栞菜が先に行ってよ…」
ヒュゥゥ〜〜〜…、
「キャーー!!ヤダーー!!」「今の何ーー!?」
不気味な洋館を模したお化け屋敷では、お互い抱き合いながら進んだ。
「…こ、こんな怖いの来週も入るのヤダ〜!」
「そんなこと言ってたら入るとこ無くなるじゃん」
「でも、こんなグシャグシャな顔見られたら嫌われちゃうよお」
「く、暗いからそんなの見えないって」
「でもサ、でもサ、もし佐藤君がお化け怖がったら幻滅しちゃうじゃん」
「そ、そんな訳ないじゃ…」
ヒュゥゥゥゥ〜、ガタンッ!!
『キャーーー!!キャーーー!!』
こうして二人は、初デートのリハーサルを満喫していった。
「あー、お腹すいたー」
「こんな所にベンチがあるんだー、憶えておかなきゃ」
夢中になって遊んだ二人は、とっくに正午を過ぎた頃
やっと園内のベンチに腰を下ろした。
『※ナッキーメモ
〇お昼ごはん
お店に入ってごはんを食べると値段が高くつくよ。それより、
やっぱり初デートは女の子の手作り弁当でポイントUP!でしょう 』
「…だって、それくらいわかってるよナッキー」
栞菜はそう言うとリュックからお弁当を出して膝の上に広げた。
「はいお弁当、実はねえ、これ栞菜が作ったの!」
「知ってるヨ、だってあたしも手伝ったじゃん」
「…もう、そういうしらける事言わない!」
栞菜が作ったお弁当は、ツナと卵とハムのサンドイッチに
から揚げや卵焼き、ウインナーなどのお弁当定番メニューだった。
「栞菜が食べさせてあげるね、はい、アーン」
「…やっぱりそれやるんだ、アーン」
愛理は照れながらも大きく口を開け、栞菜が箸でおかずを食べさせてくれた。
モグモグモグ……、
「どう、おいしい?」
何でだろう!?今朝自分も作るのを手伝って、その時つまみ食いだってしたはずなのに
何だか味が違った。
「うん、おいしいよ栞菜」
「…佐藤君もおいしいって言ってくれるかなあ!?」
栞菜が心配気な顔をして訊いた。その瞳を見て愛理は気付いた気がした。
心配いらないよ、きっとおいしいって言ってくれるよ。
きっと、これが(愛の味)なのかな?と愛理は思った。
「……なんッツて、なんッツて、あたし何言ってんだ!?あはーーーー!!」
「こら愛理、また一人で何か妄想してる!」
一人で想像して照れて自分でつっこむ愛理の癖に、そんな愛理をよく知る栞菜があきれる、
キャーキャー騒ぎながら楽しいお昼ごはんの時間が過ぎた。
ゆっくりとごはんを食べ終えた二人は、そのままベンチに並んで
愛理がリュックに入れて持ってきた水筒のお茶をすすった。
慌ただしい遊園地の中で、自分達の周りだけ時間の流れがゆっくりになったような気がした。
「佐藤君今ごろ頑張ってるかな?今日塾の大事な試験なんだって」
栞菜が遠くを眺めるような視線で言った。
「栞菜が告白したらねえ、佐藤君、栞菜のこと知ってて『前から可愛いって思ってたんだ』
って、『僕も好きだったよ』って言ってくれたんだ、キャー!!」
「あーあ、もう別の意味でご馳走様!だよ」
ちょっと羨ましいような、悔しいような、一人置いていかれたような気になった愛理は、
ベンチに置かれたナッキーメモを手に取りパラパラと開いてみた。
『※ナッキーメモ
〇もしデート中に不良にからまれたら?
自分を守ってくれるかどうか男の子の態度をよく観察する。
自分を置いて逃げちゃうような男の子ならこっちからバイバイしちゃえ 』
「…ナッキーもホントに何考えてんだろ!?こんなマンガみたいなシチュエーション
そうそうある訳ないじゃん、ねえ…」
そう栞菜に同意を求めようと横を向き、ベンチの後ろに人の気配を感じて愛理は身構えた。
「よお、そこのカップルよお!可愛い子連れてんじゃん!」
「そっちのお姉ちゃん、オイラたちと遊びに行かないかい?」
後ろから二人の低い声がした。
(ひぇ!ウソ!ウソ!本物の不良!?そんなバカな!?ヤダヤダ!!)
軽くパニクッた愛理と、同じく驚いた栞菜が振り向くと、
そこにいたのはサングラスをかけて顔をつくった千聖とマイだった。
「千聖〜〜〜!?」「マイ〜〜〜!?」二人は同時に叫んだ。
「エヘへへへ、どうだいお姉ちゃん?」
バレた千聖がそれでも構わずに声を作って笑顔で話しかけてくる。
ビックリしたのと怖かったのと、いろいろな感情を思い出し愛理はだんだん腹が立ってきた。
「もー、何だよ千聖ーー!!」
「マイちゃんも、何でいるのよー?」
「ごめんね、ナッキーメモ作ってたら千聖とマイに見つかっちゃってさ、
自分達もデートに協力したいからどうしてもそれ書けって」
『ナッキーも!!』
千聖とマイの後ろにいたナッキーを見て、愛理と栞菜はまた同時に叫んだ。
「待って、って事は絶対……」
勘のいい栞菜が辺りを見回すと、後方の木の陰に隠れてこちらを覗いている
サングラスと帽子姿の二人を見つけた。
「えりかちゃんと舞美ちゃん!!」
栞菜が指を指すと、「バレた!?」と言う顔で帽子とサングラスを取り、
二人の姉が近づいてきた。
「もう、何でみんないるのよーー!!」栞菜が言った。
「だって栞菜はウチらの大事な妹だよ!?そんな栞菜の初デートだっていうのに
保護者代理として相手の男の子の顔はちゃんと見ておかないといけないじゃん」
「そうだよ、それにもし危ない目に遭いそうになったら助けてあげなきゃいけないじゃん」
えりかと舞美ももっともらしい理屈をつけたが、でもみんなの魂胆はわかっていた。
「もう、みんな何だかんだ言って遊園地に来たかっただけでしょ!!」
「ピンポーン!」
「あははは、バレた?」
「だって栞菜と愛理だけ遊園地なんてズルいじゃん」
栞菜の問いに、みんなはあっけらかんと明るく答えた。
「そう怒んないでよ栞菜、あんた達どうせ今日は自分のおこずかいで来てるんでしょ?
ウチらも来たんだし、今日はみんなの分私が出してあげるよ。
そのかわり、来週のデートはちゃんと自分のおこずかいで来るんだよ」
「わあー、ありがとうえりかちゃん!!」
「私が出すって言っても生活費からだよ」「明日からきっとおかずが減るから」
千聖とマイが横からツッコミを入れた。
喜んでいる栞菜から少し離れて、ナッキーが愛理に言った。
「えへへ、来週のデート本番についていくよりはいいカナ!?と思って」
それもそうだな、と愛理は思った。
…いや、わかんないぞ。この人たちは面白いと思ったらデート本番でも
ついてきちゃうタイプじゃないか!?いつかあたしのデートの時にもこっそり
ついてこられたらどうしよう!?
愛理がそんなくだらない事を考えていると、ナッキーは言った。
「あたしたち愛理の一本遅い電車で来たの。でも電車の中でねえ…」
そこで栞菜の横顔をチラリと見て口が止まった。
その時ナッキーは、愛理が手にナッキーメモを持っているのに気付いた。
「…愛理ちょっとそれ貸して」
ナッキーは自分の手帳に挟んであったペンを取り出し、ナッキーメモを開くと、
空いている頁に何かを書き足し始めた。
「はい愛理、もし栞菜がこれに気付かなかったら、それでいいから」
ナッキーは何を書いたんだろう?気になった愛理は確認しようとしたが、
そこに二人分のおこずかいを貰った栞菜が嬉しそうに愛理に跳びついてきた。
「ねえ愛理やったよ!おこずかい貰っちゃった!
これで今日もまだいっぱいアトラクション乗れるよ!」
「ホントに!?やったーーー!!」
それを聞いて浮かれた愛理はナッキーメモの事を忘れてしまった。
「じゃあ私達は別々に遊んで帰るから」「デートがんばってね」
「ありがとうみんな」「バイバーイ」
手を振ってみんなと別れた愛理と栞菜は、
さらにいろんなゲームやアトラクションを楽しんだ。
『ふれあい動物村』では、小っちゃくて可愛い動物たちをいっぱい抱っこした。
うさぎが連れて帰りたいほど可愛くて二人共夢中になった。
ジェットコースターには結局乗れなかったけど、いいんだ。
『メルヘン系のファンタジックなアトラクション』の誘い文句に釣られて乗った
空飛ぶカーペット型の乗り物が、急上昇と急降下を繰り返し思いのほか怖かったから。
そして時間はあっというまに過ぎていった。
「あー、今日は疲れちゃったね」
園内を二人並んで歩きながら愛理が言った。
「でもまだ大観覧車に乗ってないよ」
「あー、あのナッキーメモに『てっぺんで抱き合え』って書いてあったやつね。
そんな事できる訳ないじゃん、ねえ」
そう言って愛理は照れくさそうに笑った。だが栞菜は笑わなかった。
「…ねえ愛理、今日はありがとうね」
ふいに栞菜があらたまって言った。
「こんなバカな事に付き合ってくれるの優しい愛理だけだと思ってる。
ホントに感謝してる。ありがとう」
ギュッと手を握られた。だが今度は恥ずかしくなかった。
栞菜の気持ちがしっかり伝わったからだな、と思った。
二人は軽食やデザートを扱う、駅の売店を模した横長の店の前を通りかかった。
「愛理、お礼にソフトクリームでも奢ってあげるよ!」
栞菜が言った。だが売店前の丸テーブルと椅子が置かれたテラスは、
すでに家族連れやカップルでいっぱいだった。
「ありがと!じゃあ向こうの芝生で座って食べようよ」
少し離れた所に芝生があり、そこは同じようにテラスから溢れた家族連れや
カップルがポツポツと座っていた。
「わかった、愛理はあっちで座って待ってて。栞菜が買ってきてあげる」
「うん、待ってるよ」
栞菜が売店の軽い列に並んだ。
(栞菜も優しいよ、来週のデート本番も成功するといいね)
その後ろ姿を見て愛理は思った。
愛理は芝生に腰を降ろした。
芝生は、アイスやソフトクリームなどを手にした多くの家族連れやカップルに
点々と陣取られていた。
お互い近くなりすぎないように、場所を考えて座ったつもりだったけど、
目の前にちょうどカップルがきちゃったのは失敗だった、と思った。
目の前のカップルは、ちょうど愛理と同じ年くらいなんだろうか?
お互いが手に持ったソフトクリームを食べさせあい、文字通り甘い時間を過ごしていた。
「すごいなあ、もしあたしがデートしてもあんな事はできないな」
目の前のカップルのラブラブぶりにあてられた愛理がそう呟いていると、
愛理が座る横にソフトクリームが二つ落ちてきた。
「あー、もったいない!」
愛理がそう思って横を見上げると、棒立ちになって立っていた栞菜がいた。
栞菜はやがて振り向き、向こうへダッと走り去ってしまった。
「栞菜ッ!!」
愛理が慌てて後を追いかけていった。
芝生から遠く離れて、走り疲れた栞菜がトボトボ歩き始めた。
やっと追いついた愛理が横に並ぶが、栞菜は口を開こうとしない。
理由はわからないが、愛理も同じく話し掛けられずにいた。
栞菜の瞳の涙が、決壊寸前なのがわかったからだ。
(どこか二人きりになれる場所…)
愛理は考えて言った。
「栞菜、観覧車にまだ乗ってなかったじゃない、観覧車に乗ろうよ!」
少し並んで、栞菜と愛理は観覧車に乗った。
観覧車の中で向かい合って座ったが、待っている間も、そして観覧車の中でも、
栞菜は下を向いたまま一言も口を利こうとしない。
(う〜ん、どうしよう!?……あ!!)
考えあぐねた愛理だが、ふと触れたポケットにナッキーメモの感触を感じて
あることを思いついた。
「ピロリ〜〜ン!!」
「……キャッ!!どうしたの愛理いきなり!?」
いきなり何かを叫んで、隣の席にドッカと座ってきた愛理に
栞菜は思わず驚いて声をあげてしまった。
「ナッキーメモの教え!観覧車では隣に座って新密度アップー!!
さあ栞菜、あたしに元気が無い理由を言いなさい」
「…それ新密度アップの音なの?ピロリ〜ンって?ダッサ!」
「うるさいなあ、音なんて別に何でもいいじゃないか!!」
思わぬ所でバカにされたが、愛理は怒らなかった。
栞菜の顔が確実にほころんだのがわかったから。
やがて栞菜がポツリポツリと口を開き始めた。
「……さっき芝生のところにいたカップルねえ、あれ佐藤君なの」
あ、あのカップルかあ、と愛理は思い出していた。
「今日は塾の試験があるからって言ってたのに、
だからデートは来週の日曜日にねって言ったのに…」
栞菜の大きな瞳が潤み始めた。
「でも嘘じゃん、違う女の子と、あんなイチャイチャして……」
「栞菜…」
「嘘じゃん、好きって言ったのも、全部嘘じゃん、ワーーーーーッ!!」
栞菜はそこまで言うと、とうとう我慢しきれずに泣き崩れてしまった。
愛理は黙ってそんな栞菜の頭を、胸にギュッと抱いてあげた。
(泣きたいだけ泣けばいいよ)自分も涙を滲ませながら、愛理はそう思った。
観覧車はもうてっぺん辺りまできていた。
(…ナッキーメモはすごいなあ、結局あたし、観覧車のてっぺんで抱き合ってるよ)
愛理はふと思い出し、こんな状況なのに感心して可笑しくなってしまった。
てっぺんから、少し下りはじめた観覧車から外を見ると、遠くに小山のように連なる
ジェットコースターの白いレールが見えた。
愛理がどうしても乗りたかったジェットコースターだ。
愛理はまだグズっている栞菜に言った。
「ねえ栞菜、最後にあのジェットコースターに乗ろうよ!」
「……でも、もうそんな楽しむ気分じゃないもん」
「いいじゃん、今日はつきあってあげたんだから最後くらいあたしの言う事きく!
お姉ちゃんたちもきっとまだ遊園地にいるよね!?」
愛理はそう言ってケータイを開いた。
愛理がケータイで姉妹みんなを呼び出すと、
絶叫マシーンが苦手なえりかとナッキーを除く五人がジェットコースターの列に並んだ。
栞菜は相変わらず元気が無かったが、一人が喋らないくらいで静かになる姉妹ではない。
みんなで並ぶ待ち時間はあっという間に過ぎ、五人が乗る順番がやってきた。
コースターの前の席に舞美が座り、その後列に栞菜と愛理、その後ろに千聖とマイが座った。
プーーーーー!!…ガタン!!
発車を知らせるブザーが鳴り、ジェットコースターが動き出した。
カタン、カタン、カタン、カタン…
みんなを乗せた列車がだんだんと上昇していく。
やっぱりやめておけばよかったかな!?何だかとっても怖そうだ!!
そんな不安を押し殺し、愛理はみんなに聞こえるように叫んだ。
「ねえ、せっかく絶叫マシーンに乗るんだから、落ちる時にみんなで何か
好きなこと叫んでみようよ!!」
「面白そうじゃん、いいよー!!」
舞美が答えた。千聖が後ろで「何言おうかな!?」と考えてる。
カタン、カタン、カタン…
列車がだんだんとレールの最上段へ近づいていく。
「ね!?栞菜」
愛理はそう言うと、隣に座る栞菜に目配せしてみせた。
その時、栞菜は愛理の意図を理解し、力のある瞳でキッと正面を見据えてみせた。
よかった、と愛理は思った。あとは自分だ、もう人の事に構っている余裕は無い。
…ちょっと待って!?何だコレ!?メチャメチャ高いじゃん!?
カタン、カタン…
ヤダヤダ!怖い怖い!!
カタン……
「ひっ!!」
ゴーーーーーーーーーーーッ!!
最上段まで達した列車が、一瞬止まったかと思う間を空けて轟音を立て急降下し始めた。
その瞬間、
「最高ーーー!!」と前で舞美ちゃんが叫び、「美白ーーー!!」千聖が願望を叫び、
「基本的に世界いちーーー!!」とマイがよくわからない事を叫んだ。
そして一瞬遅れて…、
「……バッカヤロ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」
と栞菜が誰よりも力強く、大きく、そして思い切り叫んだ。
愛理も追随して大きく「そうだそうだ〜〜〜〜!!」と叫んでやった。
後はもう、何を叫んだかなんて憶えてない。愛理にはもうそんな余裕は無かった。
このジェットコースター、超怖いいいい!!
「キャ〜〜〜〜!!」「ヤ〜〜〜〜!!」
みんなの悲鳴が絶叫となって響く中、憶えているのは前に座る舞美ちゃんがずっと
「楽しいーー!!」って叫んでいた事だけだった。
「栞菜ぁ、だから言ったじゃん怖いってー」
「ヒック、ヒック…」
ジェットコースターの出口で、みんなを出迎えてくれたえりかが、
泣きべそをかいて降りてきた栞菜を見て心配気に言ってくれた。
栞菜の初デートリハーサルは、こうして絶叫と涙で終わった。
夕焼けの中、駅までの帰り道を愛理と栞菜は並んで歩いた。
その少し後ろを、姉妹たちが離れて歩いていた。
愛理は肩を落として横を歩く栞菜に、今度は自分の方から腕を回し、
栞菜は素直に愛理の肩に頭を預けた。
前を歩く二人の、その重なった影が後ろを歩く姉妹たちまで伸びていた。
「なんかさあ、ホントのカップルみたいだね」
後ろで、その寄り添い歩くシルエットを見て舞美が言った。
(カップルかあ…、栞菜には悪いけど今日はけっこう楽しかったな)
愛理は今日の感想をそんな風に思うと、栞菜の横顔を見下ろした。
愛理は知っている。
栞菜はもう大丈夫だ、
思いきり泣いて、あとは思いきり食べて、思いきり眠れば
すぐに思いきり笑う栞菜になるのを知っている。だから……。
「もう泣くな。あたしでよかったら、またデートしてあげるよ」
「…うん」
栞菜と愛理の顔が紅く染まって見えるのは、多分夕陽のせいなのだろう。
「また遅刻だよ、もう」
翌週の日曜日、
待ち合わせ場所の駅前で、ケータイで時間を確認した愛理はそうつぶやいた。
(…でも、今日は許してやるか)
愛理はそう考えてケータイをポケットに仕舞おうとして、ポケットの奥に
ナッキーメモが入ってるのに気づいた。
「あ、先週このポケットに入れっぱなしにしてたんだ」
愛理はナッキーメモを取り出し、パラパラと頁を開き、
先週ナッキーが遊園地で書き足した部分を見つけた。
『さっき電車で佐藤君が女の子といっしょにいるの見ちゃった。
多分、今日この遊園地に来てると思う…。 』
あ、ナッキーは知ってたんだ、と愛理は驚いた。
「ごめん、待ったーー?」
その時、正面から栞菜が手を振り駆けて来た。だが愛理は下を向き
ナッキーメモを眺めたままだ。
愛理の隣に立っていた男の子が、愛理の代わりに栞菜に手を振り返した。
『※ナッキーメモ:追加
〇もしも彼氏の浮気を発見したら? 』
男の子の前まで来た栞菜が、振っていた手をそのまま一際大きく振り上げたと思った瞬間、
バチーーーーン!!
男の子が頬を張られる音が大きく駅前に響いた。
『…そんな奴は思いっきり張り倒しちゃえ!!』
すごいな栞菜は、読んでないのにナッキーメモの通りだ、
もう今日のデートにこんなマニュアルはいらないな、と思い
愛理はナッキーメモを再びポケットにしまった。
衆人の目前で女の子にビンタされる、という恥をかかされた佐藤君は
ただただうろたえている。注目を浴び、訳がわからず狼狽している様はみっともなかった。
(いくらイケメンかもしれないけど、いい気味だ)と愛理は思った。
「ごめん愛理待った?今日はどこへ行こう?」
栞菜はもうそんな佐藤君の事など気にせず、愛理の方を向いて言った。
「先週はお金使っちゃったから、今日はお金のかからないとこへ行こうよ」
「じゃあ、図書館とかは?」
「いいね、行こう行こう!」
栞菜と愛理は手を繋ぎ、駅前から駆けていった。
いつか本当の彼氏ができるまで、いや、お互い彼氏ができても
ずっと変わらずこうやってデートがしたいね、と愛理は思っていた。
面白かったー
本当にありそうな感じ
>作家1
乙。楽しませてもらいました。
かんにゃに…ヽ(*`Д´)ノ
↓
かんにゃ○○○落として落ち込むなんて(*´д`*)
↓
実は…で、かんにゃ…(;´д⊂)
作家1号さんホントに乙です。最後の方涙腺きました(笑)
作品ラストの投稿時間見てもらえばわかるように
体力的限界がきましてあとがきも書けなかったので、今日あらためて。
何の審査も経てない素人の文は、実は読んでもらえるだけでもありがたい話ス。
なので読んでくれた方にはこの場をかりてお礼を。ありがとうございます。
素人なりにドラマを紡ぐのが楽しくなってきたので、今後ともおつきあいを。
ええ今回は栞菜と愛理のデートが書きたかっただけです。
そのうちやじうめコンビでも何か書きたいと思ってます。
ではまた次回で。
作家さん乙!!
>>397 足掛け3時間に及ぶ投稿、乙です。
まあ書いてる&考えている時間はもっと長かったのでしょうけどw。
ナッキーメモの内容の熟練度を考えると、
ナッキーならどんなデートするんだオイ!。
…とツッコミたくなりますねw。
「吊橋効果」ナツカシス。熊さんだっけ…。
400 :
松輝夫:2007/07/20(金) 18:41:01 ID:hliUW2HXO
>>363 >>370 >>393 作家の皆さま、更新乙でした。一気に読ませていただきました。
お三方ともそれぞれ作風が違ってて面白いですね。
しかし、皆さんレベル高すぎ……ぜひ自分が書いてるスレでも書いてほしいなぁ、なんて思ったり。
これからも頑張ってください。素晴らしい作品をありがとうございました。
七姉妹ご近所図鑑
・ヤマちゃん(山寺宏一)
七姉妹の近所に住む専業主夫にして町内会長。
毎朝、竹ボウキで近所を掃除し、いつも登校する姉妹たちに明るく「オハー!」を声をかける。
両親のいない七姉妹のために、「おかずをいっぱい作ったから」と言っておすそ分けしてくれる
優しいオジサンだが、千聖とマイにいつもチリチリ頭を悪戯されるのが悩みの種。
>>387 まーた誤字あるよ。
×新密度
〇親密度
だ…orz 次こそはミスの無いように。
>>400 ベリも好きだけど、設定が入り組んでてちょっと途中参加は難しいス。
ども。イタイ妄想がとまりませ〜ん。
(*・一・) ` v ´)o・D・) < なんとかして〜え!
現在、舞美のラブコメ(っぽいもの)を書いています。
そこでまたアイデア募集などなど…。
今回、主な登場人物は舞美と舞だけで、二人はセレブな家に
生まれた姉妹という設定です。ゲキハロ第2弾の設定にも近い
ですが、もっと「セレブなお嬢様」してます(どうしてそうなった
かは見てのお楽しみw)。
Q1:舞美の幼なじみの彼氏の名前は?
彼氏は中流家庭の育ちで、ワイルドかつマイペースという設定です。
Q2:舞の彼氏、元カレの名前は?
舞は悪い意味じゃなくて「学校イチのプレイガール」です。
彼氏、元カレは名前が出てくるだけで、特にキャラ設定はありません。
Q3:舞美がオシャレなカフェでオーダーするトロピカルドリンクの名前は?
実在の名前でなくてもかまいませんが、いかにもセレブっぽいの
がいいですw。
ここらへんを埋めていただけると助かるです。
>>402 Q3:
『ミラクルビラブリクラブリ』
ちなみにブラジル人が発明しました。
…すいません。わかる人にだけわかって欲しいギャグです。使わないでw
404 :
ねぇ、名乗って:2007/07/21(土) 23:33:14 ID:WwbBSoXU0
この七人で回転寿司屋に行ったら
それだけでもうコメディになりそう!!
405 :
ねぇ、名乗って:2007/07/22(日) 12:15:25 ID:V6jhsp6T0
>>403 発明したのはマイマイでは?w
>>404 (o・D・) < ギョクください
从*・一・) < イクラください
州*・ v ・) < カッパください
ノk|‘−‘) <カレーください
ノソ*^ o゚) < ウニください
リl|*´∀`l| < 枝豆ください
ノノl*・ゥ・) < なんでもいいのでください
舞美のラブコメ楽しみです
作Bさんの文章は読んでて明るくなると言うか楽しくなる文章で大好きです
ども。昨日から風邪を引いて引きこもってましたw。
>>402 にあんまり反応いただけなくてちょっと残念。
まあどれくらいの人がこのスレ見ているかなんて、わからな
いですもんねw。
あんまりネーミングセンスとか、ないほうなんで(すぐネタに
走ってしまう)、みなさんのご意見とかいただけたら、うれし
かったんですが…。もしかしたら、舞美の彼氏に自分の名前
を…、とか考える人いたかなあ、とか期待してましたが(←な
いないw)。
あ、
>>403 ありがとうございました。不採用ですw。
ってことで、テキトウな名前で埋めて投稿します。
さて、今回のは、℃-uteでは私のイチオシである舞美が主人
公であるだけに、それなりに力はいってます(他は手抜きか?
っていうと、そうでもないw)。
また、私の大好きな曲のひとつである、ハローのとある曲を
モチーフとしています。例によってエンドロールで紹介しますけど、
読みながら当ててみてくださいw。そんでもって読み終わったら、
今度はその曲をBGMにして読み直していただくと、
「2℃おいしい」
…とか言ってw。
んでも音源持ってる人は、もしかしたら少ないかも…。
●水色のノート
「(だ・れ・に・し・よ・う・か・な?)」
−−コロロンッ−−
「お、『1』と『6』だ」
「(そうだなあ、思いっきり、夏っぽいのがいいな…)」
●夜
「舞美、お電話よ。長谷沼くんから。珍しいわね」
「は〜い!、今行きま〜す」
「(まったく、なんで『家電』してくるかな〜アイツ…)」
舞美はらせんの階段を駆けおりて、ホールにある電話の受話器をとった。舞美のあ
とを追うようにして、開け放たれていた窓のレースのカーテンが、ふわっと踊った。
「長谷沼くん?、なんで家に電話かけてくるの?」
「<ゴメン、携帯のバッテリー切れちゃって。家の番号しか覚えてなかったんよ>」
「ふーん。で?、今日はどこにいるの?、またバイト?」
「<ほんとゴメン!、店の先輩に突然『つきあえ!』って言われちゃってさあ、ホ
ント申しわけない!。埋め合わせは必ずするから!>」
「これで2回目よ?、あたし別に、長谷沼くんがいなくたって、買い物できるんだ
けど…」
「<ほんとにほんとにゴメン!、もう一度だけチャンスを!!マイミサマ〜!>」
「許さない…。今晩じゅうに2000文字以上の反省メールを提出しなさい」
「<そ、それはちょっと…>」
「つべこべ言わない!、でないとお別れよ!!」
−−ガチャンッ!−−
舞美はわざと乱暴に電話を切った。時計は夜の9時をまわっており、その音は屋敷
の広いホールに響き渡った。
●水色のティーカップ
「お姉ちゃん、厳しいなあ」
振りかえると、妹の舞が立っていた。
「なに?、聞いてたの?」
「ううん、たまたま通りかかっただけ。長谷沼くん?」
「そうよ。まったくアイツ…。約束やぶってばっかり!」
二人は手をつないでらせん階段をのぼり、舞美の寝室に向かった。部屋に入ると、
インターホンで家政婦に「カモミールティ」をいれてくれるようにお願いし、二人で
ベッドに座った。
「長谷沼くん、けっこうカッコいいじゃん。わりと正直だし」
「どこが正直よ?!、ドタキャンばっかりで…、せっかくOK出してあげた意味な
いじゃん!、待たされるほうの身になってみろっての」
「今までずっと待たせてたの、お姉ちゃんじゃん(笑)。何年?、長谷沼くんがお姉
ちゃんのこと『好きだ』って、みんなの前で宣言してから…」
「あれは小二だったっけ…、10年か…、あ、そうか10年もたってるんだ。あは
は、そりゃ長いやあ」
「あははって…、『S』だなあ、お姉ちゃんは」
「たまたまよ〜。長谷沼くんなんて、まるっきり『幼なじみ』みたいなもんだから、
恋人気分になれなかっただけの話しぃ」
家政婦がドアをノックして、二人分のお茶を運んできてくれた。それを飲みながら、
二人の「恋バナ」は続く。
「来週こそデートしなくちゃね。バーゲンも終わっちゃうし」
「どうせ長谷沼くんは『荷物持ち』にするつもりなんでしょ?」
「そうよ。それ以外に役に立つこと、なさそうだしぃ」
「強がり言っちゃってぇ。お姉ちゃん今日、会えなくて泣いてたくせに〜」
「泣いてなんかないってば!。ちょっと心配してただけ」
舞はティーカップを持ったまま、ゆっくりとベッドに仰向けになった。
「でもなあ…、長谷沼くんって、なんか『いいひと』って感じするもんねぇ。畠山
くんなんて、ホントに信用できないオトコだもん」
「畠山くんって、今の彼氏ぃ?、経塚くんはどうしたの?」
「アイツは『お友達』に格下げ、頼りにならないんだもん」
「『信用できない』とか『頼りにならない』とか、小学生のセリフかっての。舞は
オトコを見る目がないね」
「だって、やっぱり『見た目』から入っちゃうじゃない?、実際にどうかは、付き
合ってみないと分からないしね」
「あんたホントに小学生〜?!」
夏はもうすぐそこまで来ている。姉妹二人の「恋バナ」は、夜遅くまで続いた。
●朝
一週間後、待ち合わせの駅の改札口に、長谷沼くんは約束の時間の5分前に到着し
ていた。実はその30分も前から待ち伏せていた舞美は、彼がちゃんと約束を守るか
どうか、遠くから見守っていたのだった。ちょっと安心した舞美は、時間ギリギリに
到着したフリをして、彼の背後から声をかけた。
「お・ま・た・せっ」
「よぉっ!、ああ、こないだはゴメン」
「なかなかいい『作文』だったよ」
「あれはきつい宿題だったよ。もうカンベンな」
「あれで許してもらえるんだから安いもんでしょ?!、ありがたいと思いなさい。
そもそも約束破らなきゃいいだけの話なんだからね!」
なんだか眠たそうな長谷沼くんは、アゴにうっすらと無精ひげを生やしていた。な
んとなくカジュアルにキメているつもりなんだろうけど、ジーンズとはちぐはぐな色
使いのシャツが「アカヌケナイヤツ」を演出していた。ファッションセンスでは数段
上の舞美だから、そういうところはすぐに見抜いてしまう。
「さあ〜て、今日はしっかり『おつきあい』してもらうからね〜」
「ハイハイ、マ・イ・ミ・サ・マ」
街はバーゲンのシーズンも終盤。どの店も大半の商品が売れてしまっていて、舞美
の「おメガネ」にかなうようなモノは、なかなか見つからなかった。十数件の店を巡
って、長谷沼くんの両手には紙袋が二つ。普段の舞美の買い物の量からは、考えられ
ないようなスローペースだった。太陽はいちばん高いところまでのぼり、ギラギラと
アスファルトに照り返している。風の少ない都会の真ん中、人ごみの中で汗を拭くの
が、急に不快なことに思えてきた。
「ああ、もう疲れた。ちょっと休みましょう」
「その言葉を待ってたよ。クタクタだぁ!」
「あら、疲れてたんなら、ちゃんと言ってよ」
「『マイミサマ』の手前、そんな弱音は吐けません」
「なにそれ?!、それじゃまるで私がいじわるしているみたいじゃない?!」
「いじわるじゃないよ。召し使いが『あるじ』に注文なんてできるわけない
じゃん」
「ちょっとぉ、なぁに『あるじ』ってぇ?!」
「そうだよ。知らなかった?、今日はキミは『女王様』なんだよ」
「『女王様』なんて聞こえが悪いわ。せめて『お姫様』にしてよ」
「ハイハイ、お・ひ・め・さ・ま。少々お待ちくださいませ」
そういって長谷沼くんは通りに飛び出し、タクシーを拾って舞美を手招きした。
●水色の時間
タクシーに乗り、5分ほど走ったところで降りて、舞美の目に入ってきたのは、大
きくて真っ黒なビルだった。
「なにここ?」
「ちょっと物騒に見えるけど、まあ入って。休憩するにはうってつけのところ」
入口の黒いドアの横には「AQUA TIME」と書かれた小さなロゴが見える。どうやら
喫茶店のようだ。長谷沼くんはドアを開け、舞美を先に行かせた。
「暗いから、足もと気をつけて」
外の明るさに比べると、店内は真っ暗闇に思えるほど暗くて、最初の数歩は、手探
りして進む感じだった。ようやく目が慣れてきて、奥のほうに入っていくと、中には
ライトアップされた大きな水槽があって、たくさんの熱帯魚やクラゲが泳いでいる。
その水槽に囲まれるようにして、いくつかのテーブルが置かれていた。
「うわあ、きれい…」
「いい感じでしょ?」
ウェイトレスに案内されて、テーブルのひとつにつく。深海をイメージしたような
壁面の装飾と、間接照明の暗さも手伝ってか、店内はいちだんと涼しく思える。汗が
額からスウッとひいていくのを感じていた。
「何か食べる?」
「あ、でも今朝、けっこう食べてきたから、まだお腹すいてないや。飲み物だけお
願いするわ…」
「へえ、まさかダイエット中?」
「そんなわけないでしょ!」
長谷沼くんはランチメニューから「ハンバーガーランチ」を、舞美はドリンクメニ
ューから「ベリーミックススペシャル」をオーダーした。
「けっこういいお店知ってるのね」
「ネットで調べたんだ。『マイミサマ』にお似合いの店はこんなとこだろうな、と
思ってね」
「へー、私の好みがおわかりですかぁ?」
「だって、小学校のとき、ずっと『きんぎょ係』やってたじゃん」
「そ、そこ〜お?!、ずいぶんと古い話を持ち出してくれるわねえ」
水色にライトアップされた水槽には、ネオンテトラやグッピー、エンゼルフィッシ
ュなど、大小さまざまな熱帯魚が泳いでいる。クラゲは仕切られた別の水槽で、優雅
にゆっくりと漂っている。どこからか水の流れる音も聞こえてきて、ぼんやりと眺め
ているだけで、時間がたつのを忘れてしまいそうになる。
オーダーしたものがテーブルに届き、舞美は長谷沼くんがハンバーガーを黙々とほ
おばる姿を見ていた。お店はとってもオシャレなのに、目の前の「恋人」は、なんだ
かワイルドでマイペース。そんなシチュエーションがおかしくて、舞美はクスッと笑
ってしまった。
「なに?、なんかついてる?」
「いや、よっぽどお腹がすいてるんだな、と思ってね」
「そりゃそうさ、ゆうべバイトで疲れきって、そのまま寝ちゃってさ。今朝はあわ
てて起きて、シャワーだけ浴びて飛び出してきたからね」
「どうしてあんたはそう毎日のように忙しいのよっ」
舞美は棒読みのセリフでしかりつけた。そして、半分ほど飲み終わったグラスを顔
の前に持ち上げて、中の氷を踊らすように軽く振ってみせ、長谷沼くんに目配せした。
「で?」
「『で?』って?」
「『でって?』じゃないでしょう?!、夏休みはどうするの?」
「え?、あ、まだ考えてなかったや…」
舞美はあきれて、ため息をついた。
「あのさぁ…、いったいなんのためにバイトしてんのよ〜ぉ。せっかく『彼女』に
なってあげたんだからさぁ、もう少し彼女らしい扱いしてよぉ」
「えっと、ゴメン。結構バイトの予定が入っちゃってるんだよなあ…」
「あんた、私よりバイトが優先なのぉ?」
「あ、いや、ホント申し訳ない。『マイミサマ』」
「…」
舞美はしばらく押し黙って、今度は腕を組み、目を見開きながら話し出した。
「ねえ、その『マイミサマ』っての、やめてよ」
「え?、だって、いいじゃない、お姫様なんだから」
「よくない。普通に『舞美』でいいじゃん。今までだってそう呼んでたんだし」
「…」
今度は長谷沼くんの方が押し黙ってしまった。
「どしたの?」
食べ終わったランチのプレートが下げられ、長谷沼くんはテーブルにひじをつきな
がら話し始める。
「なんかさ、こないだまで友達だったのに、急に『恋人』になっちゃって、あせっ
てんだよね、オレ…」
「なんで?」
「だってさ、よくよく考えたら、やっぱり立場の違いって、あるじゃん?。君はお
金に不自由しないお嬢様だけど、オレはバイトしなくちゃ、学生生活もまともに
過ごせないパンピーだし…」
「なにそれ…。そんなの、気にしなきゃいいじゃん!」
「気にしていないつもりだったけど、なんかさ…、やっぱり難しいんだ。友達なら
それでいいけど、いざ『恋人』って関係になったとたん、『やっぱ、釣り合わな
いよな』って、妙に意識しちゃってさ…。ホラ、小学生や中学生のノリとは違う
じゃん、やっぱし」
「バカじゃないの?」
「いや、ホント、バカだと思うよ、自分でも。でもさ、オレって…、いや、オレじ
ゃなくても、男って、カッコつけたがりなんだよね、どうしてもさ。舞美ちゃん
の恋人になれた以上は、胸を張って歩きたいじゃん?、どんなときでも『舞美は
オレの恋人だあ!』って、守ってあげたいじゃん」
話しの流れ的に、長谷沼くんはなぜかガッツポーズになっていたんだけど、舞美は
その姿を、ちょっと上目遣いに、じっと見つめている。そしてほんの少し、沈黙の時
間が流れた。
「…ねえ、今まで私が付き合った人、何人か知ってる?」
「ああ、2人…かな?」
「ブー!、残念。正確には3人」
「あれ?、他に誰かいたっけ?」
「去年の夏、アメリカにステイしてたときに付き合った人がいるの、1ヶ月で終わ
ったけどね」
「そうかぁ、それで知らなかったんだ…」
「その人にね…。プロポーズされちゃったんだ。それで気づいたの」
「なにが?」
「あたしもね、立場ってものに縛られてたんだって、ね。自分に釣り合うような男
の人って、どんな人だろうって、そういうところばっかり気にしてた。お父さん
やお母さんのために結婚するわけじゃないのに、相手の家族とか、学校とか、そ
んなとこばかり見てたの。それで実際にプロポーズ受けちゃったら、結婚式の日
に自分のとなりに立っている人を想像しちゃってさ。この人と永遠の誓いを交わ
すんだって…。でもね、想像の中の、その人の顔は、違う人だったの」
「え?、誰?」
「…」
「あんたねえ…。い・わ・せ・る・気ぃ?」
そういって舞美は、長谷沼くんの足を思いっきり踏んづけた。
「いてっ!」
「コレ、おごりねっ!」
低いうめき声とともに痛がる長谷沼くんをよそに、舞美はレシートをテーブルにた
たきつけ、そのままツカツカと店を出て行ってしまった。外に出ると、あいかわらず
太陽の光がさんさんと照りつけている。クーラーですっかり冷やされた体が、外の熱
気に包まれて、なんだかフワリとした気分になる。
やがて、会計を済ませた長谷沼くんが、オーバーに片足をひきずりながら店を出て
きた。急に明るいところに出たせいか、振り向いてこっちを見る瞬間の舞美の姿が、
キラキラと輝いて見えた。
「ねえっ!、映画見に行かない?!」
「映画?!」
「今、私の見たい映画!、わかる?!」
「んーと、『バンディッツ・オブ・カナディアン』」
「うっそぉ?!、なんで分かったの?、なんで即答?!」
「そりゃあ…、主演のダグラスは、オレそっくりなんだもん」
「オーマーエー!、調子にのってんじゃなーいっ!!」
「ひえっ!、お許しくださーい!、『マ・イ・ミ・サ・マ』あぁ!」
ショルダーバッグを高く振りかざした舞美を見て、長谷沼くんは両手に紙袋をぶら
下げたまま、一目散に映画館のほうへ向けて駆け出していた。走りながら、中学生の
ころは、短距離でも長距離でも、一度も舞美のタイムに勝ったことがなかったことを
思い出していた。
街路樹の下を走り抜ける二人。木漏れ日から差す、太陽の光がまぶしかった。
●夜明け前
「『お・し・ま・い』っと…」
(コンコン…)
ドアがゆっくりと開き、愛理がそっと顔だけのぞかせた。
「ナッキー、まだ起きてたのぉ?」
「あれ?、愛理?、トイレ?」
「うん、ゆうべスイカいっぱい食べちゃったからね。また小説書いてんの?」
「あー、もーこんな時間か…。ついつい熱中しちゃうんだよねえ。今ちょうど書き
終わったとこ」
「今回の主人公はだ〜れ?」
「サイコロの『1』と『6』、舞美ちゃんと舞ちゃん。けっこうケッサクになった
よ〜お」
「また見せてね。おやすみぃ〜」
「おやすみ」
愛理は眠い目をこすりながら、そっとドアを閉めた。私は水色のノートを閉じて、
机の照明を消した。
おしまい
●エンドロール
「みずいろの物語」
−−テーマソング・イメージ−−
愛と太陽に包まれて モーニング娘。
(作詞:つんく/作曲:つんく)
−−キャスト・イメージ−−
矢島早貴 中島早貴
矢島愛理 鈴木愛理
舞美 矢島舞美
舞 萩原 舞
長谷沼 ????
家政婦 渡辺えり子
ウェイトレス 亀井絵里
423 :
ねぇ、名乗って:2007/07/23(月) 10:25:00 ID:UsngVV7mO
あぁ…キッズヲタな俺には娘。の曲が分からない(´・ω・`)
424 :
松輝夫:2007/07/23(月) 19:32:43 ID:z5JnQ6gUO
作B氏、更新お疲れさまです。楽しく読ませていただきました。
しかし、そうきましたか。冒頭部分は一体どういう意図があるのかわからなかったですが、全く予想もしない結末でした。やられたー、という感じです。
いつもながらさりげない描写もまたいい感じで参考になります。作B氏の引出しの広さに脱帽です。
千奈美に、BGMは「色じれ」のC/Wじゃないですか?
425 :
ねぇ、名乗って:2007/07/24(火) 01:11:53 ID:MaJyBlvfO
ここの作家さん達、レベル高いですね…いつも楽しく読ませていただいています
426 :
ねぇ、名乗って:2007/07/24(火) 02:36:25 ID:QfthWValO
ボーノってどうなん?
427 :
ねぇ、名乗って:2007/07/24(火) 04:38:34 ID:obHKoO2tO
めーぐるε=ε=ε=ε=ε=┏(゜ロ゜;)┛
びっくりしたー、いきなりお金持ちになってたんだもん
物語の中の物語、意表をついて楽しかったです
いつもと違う設定も新鮮だし
作者さんお疲れ様でした
ども。各位、好評いただけて素直にうれしいです。
>>423 やはり音源持ってる方少ないかもしれませんね。ということで、
ちょっと音質悪いですけど…
ttp://www8.axfc.net/uploader/15/so/N15_29966.xxx.html フインキだけでも味わっていただければ…、と思います。
パスはこのレスから探してくださいw。
>>424,428
ありがとうございます。どうしても「舞美お嬢様」を作りたかったので、
とってつけたような手法を使いました。
>>千奈美に、BGMは「色じれ」のC/Wじゃないですか?
正解です!、これは初聞きしたときから好きな曲で、久住のシャウト気味
の声が初々しくてポイントになってます。こうして小説のベースにできたのは
結構うれしいですね。しかも舞美でw。
ご存知の方も多いと思いますが「舞美お嬢様」はゲキハロ2に由来します。
役では「来夏(ライカ)お嬢様」ですけど、ご覧になった方で…
「舞美様にしかられたい or 踏まれたい」
と思った方は、私だけではないはず…(あ、もしかして私だけ?w)。んで、
それを具現化してしまったのが今回の「みずいろの物語」なわけですw。
(あ、行数足りなくなったので続きます。。。)
(すいません。ヨタ話の続きです)
実際の舞美は「ほとんど怒ったことがない」そうで、怒りんぼのお嬢様
キャラは、ほぼ外見のイメージからインスピレーションされたものかと
思います(そいえば「仔犬ダン」でも舞美はイジワルな子の役だったん
ですよ)が、演じてみると、なかなかどうしてコレが「はまり役」なん
ですよねえw。
もちろん作家1号さんの「るてるてずうぼ」の舞美のキャラクターも、
舞美の「イメージの王道」をいってて好きです。ってか、舞美にはいろ
んなキャラを「着せてみたい」ですね(それをいうなら℃-uteメン全員
か…)。
ナッキーが小説を書くという「劇中劇」にすることで、「七姉妹」の
設定の縛りをなくせるので、ナッキーのキャラ設定には結果的に感謝で
したね。これで思う存分いろんなことができそうですw。
さてさて、次回以降のネタは、まだほとんど考えてません。1本だけ
ものすごく巨大でいいかげんなネタがあるのですが、これをどういう
形で、いつ披露することになるか、悩んでいます。激しくスレ違いにな
る可能性ありなので、ネタフリだけして逃げるかもしれませんw。期待
しないでお待ちください。
ではでは。
431 :
ねぇ、名乗って:2007/07/26(木) 21:13:20 ID:huVOT0xx0
とうぶんお話は上がりそうにないので
多少スレチだけどあえて訊いたり
>仔犬ダン
って(作品的にはこの際置いといて)キッズオタ的には観る価値あります?
誰推しかにもよるけどありますよ!
ダンは茉麻りしゃこ愛理マイマイはでてません念のため
>>432-433 即レスありがd
当方舞美好き・ようつべでメイキングみたいの観て、みんな小っちゃくて可愛かったので
すごい気になってたのです。借りてみる事にします。
愛理ってミニモ二の方に出てたんでしたっけ?
そっちも気になる
435 :
ねぇ、名乗って:2007/07/27(金) 10:01:05 ID:nkx/Nj0cO
なんつーか推しがいるなら全部見ておけとw
まぁどっちもあんまり出てないから…
436 :
ねぇ、名乗って:2007/07/31(火) 07:47:54 ID:Sa4x6XHPO
ナッキーの小説ってのはいいアイデアですね!
これなら何でもおkかな?w
だれか怪談書いてみない?w
じゃなきゃネタとかシチュエーションとかでも。
>>438 元画像ナニ?って思ったらゲキハロなのね
驚かせがいがあるのはダントツで栞菜だと思うw
チラ裏・書きたいけど暇が無いいいい
タイトルだけで誰のどんなお話か想像して下さい
『かっぱスイミングスクール』
441 :
ねぇ、名乗って:2007/08/03(金) 12:20:20 ID:TKHFVi39O
先生(つんく♂)の視点から見た
田舎の小さな分校の生徒達(℃-ute)
のドタバタ劇がみたいなぁ
それこそ「仔犬ダン」とか「ほたるの星」に近いイメージ
>>441 ↓こんな感じだね。
ちなみにこれもこのスレの元になった愛理スレコピペ。っていうか書いたの自分ス。
いつか書きたいなあって思ってるんですよね。四月に栞菜が転校してきて、十月にめぐが引越していく
一年間の物語をひと月ずつ。暇欲しいなあ…。
544 名無しさん@恐縮です sage 2007/05/20(日) 01:05:31 ID:/t4o6vRl0
これもよく言われるイメージだけど、全校生徒が小中学校合わせてたった七人の
のどかな田舎の分校を舞台にした学園物も見たいなあ
放課後、夕焼けの山をバックにグラウンドを黙々と走る舞美
田んぼのあぜ道をモデルウォークする変わり者梅さん
とか
545 名無しさん@恐縮です 2007/05/20(日) 01:11:11 ID:/t3lPlt6O
>>544 それもおもしろそうだけど教師役が問題だな
546 名無しさん@恐縮です sage 2007/05/20(日) 01:26:58 ID:/t4o6vRl0
>>545 ℃-uteに縁がある人物って事で
矢口・まことあたりは?
都会のド真中から田舎の分校にとばされてふてくされていたが、そのうち純な気持ちを取り戻す矢口先生
密かに舞を師と仰ぎ、萩原ティーチャー略して『ハギティー』と呼ぶ頼りないまこと先生
547 名無しさん@恐縮です 2007/05/20(日) 01:37:13 ID:u4v3X0sI0
>>546 >密かに舞を師と仰ぎ、萩原ティーチャー略して『ハギティー』と呼ぶ頼りないまこと先生
まことバロスwwwww
548 名無しさん@恐縮です 2007/05/20(日) 01:40:59 ID:/t3lPlt6O
>>546 確かにまことは合ってるかもw
ベリが出てた映画「Promise Land クローバーズの大冒険」でも確かそんな頼りなくてゴマキにあこがれてる先生役だったな
549 名無しさん@恐縮です 2007/05/20(日) 01:42:59 ID:u4v3X0sI0
梨沙子が出てた映画「ほたるの星」みたいな感じだね
キャラのイメージはこんな感じ。
・田んぼのあぜ道で、いつもお洒落をしてモデルウォークの練習をして、
農作業中のばあちゃん達に変わり者扱いされるが気にしない、モデル志望のマイペース梅さん。
・都会の陸上強豪校からの誘いも断り、放課後、夕陽に染まる山々に囲まれた分校の
グラウンドを一人黙々と走り続ける一人陸上部の舞美。
・生徒会など存在しない分校で、自称生徒会長の負けず嫌い、
面倒見はいいがちょっと勝気な仕切り屋めぐ。
・教室の隅で、いつも机に向かってマンガを描いてる空想好きのメガネっ子ナッキ―。
・東京からの転校生、田舎を馬鹿にして中々みんなと仲良くなれない栞菜(実は訳あり)。
・お昼休みに校内放送でDJをするのが大好き、音楽も大好きな音樂部員。
だが音楽部では合奏ができないのが悩みの種の愛理(主人公)。
・鬼ごっこが大好き、ボールを蹴るのも大好き、
とにかく休み時間にはグラウンドを走りまわっている分校一元気な千聖。
・最年少ながら大人びた発言と貫禄で、この分校のもう一人の先生ハギティー
(萩原ティーチャーの略)の異名を取るマイマイ。
七姉妹の方は水曜を目途に考え中、こっちも連作じゃなく読みきりって考えたら書けるかも。
その時はこのスレで貼らせてくださいな。
445 :
名探偵℃-ute 07:2007/08/03(金) 23:49:50 ID:2Xx3EBMB0
それから二日後の夕方の晩御飯の買い物の帰り道舞美とエリカの前に、
現れる二人の女の子が、、、
友理奈<意外と強そうな感じだね茉麻?>
茉麻<とりあえずこの二人を潰しておけば問題ないとゆいたいです、、、>
エリカ<早速!もぉ〜今日はカレーの日なのに〜>舞美<そうだよー早くない!>、
舞美<私から行くね!!>エリカ<待って!>舞美<・・・・?>
エリカ<あの茉麻って娘、パワータイプだからあれは私に任せて!>
舞美<いいんじゃない!冴えてるねエリカ!>エリカ<舞美はリーチある方!!>
舞美<まずは私から!>弾かれたように飛び出す舞美・・・
この攻防戦はもはや女の子とか中学生とか高校生とかのレベルを
遙かに超えた処に位置していた・・・二分程の激しい攻防が繰り返されたあと、
あまりの攻撃の力強さと速度にバランスを崩す友理奈!!?
舞美<もらった!!>エリカ<くるよ舞美ラッシュ!!>
友理奈<やっ・・ばっ!>30秒間だけの全てが全速!全力の連打、(舞美ラッシュ!!)
お久しぶりです!
今回はアクション満載?で行きます、
つたない文章ですが・・頑張ります!
では次のページを、
446 :
名探偵℃-ute 08:2007/08/03(金) 23:53:03 ID:2Xx3EBMB0
成す術も無く膝をつき倒れこむ友理奈・・・その一方エリカと茉麻は、
対峙したまま動かない二人・・・エリカ<相棒〜やられちゃったけど、どうする?>
茉麻<熊井ちゃん・・・>倒れこむ友理奈を抱える茉麻、
茉麻<今日の処は完敗ね・・流石は矢島家の最高戦力、申し分ないわ・・・>
茉麻<私達はパワーズ、階級は下がるけど弱いと思わないでね、>
エリカ<わかってる!舞美が開始早々ラッシュを使う程だからね・・>
複雑な表情で立ち去る茉麻、舞美<あれで、二つ下の階級?>
息を切らしながらエリカに近つき厳しい表情で二人を見つめる舞美、
エリカ<弱いわけじゃない・・要するに粛清係なんじゃない?>
舞美<粛清係?>エリカ<服従を誓わない者に対する恐怖を植え付ける役>
エリカ<最悪あれ以上の戦力が控えてる事に・・・>舞美<マジ!?>、
舞美<でも対象が私達に絞られてるみたいで少し安心かな?>
エリカ<私達って私も入るの?>舞美<うんっ!>エリカ<えっ〜>
エリカ<若干嬉しそうに見えるけど・・・>
舞美<誰かに見られてる気がしたけど、使わなければやばかった!!>
エリカ<誰かにって?>舞美<見られてるってゆうか、遠くから殺気を感じたの>
舞美<その時あの娘の隙ができて・・・>エリカ<私も感じた〜>
舞美<使っちゃいけないって思ったけど、あそこで決めなければヤバかったし!>
エリカ<気を引き締めないと今度はヤバいかも!>
舞美<妹たちが心配・・・>エリカ<あっ・・!晩御飯の材料は?>
舞美<・・・セーフっ!>エリカ<今日はエリカ特製カレーで決まり!!>
舞美<いいんじゃない!!笑>
次項はまた明日、
スタンス開き過ぎてすいません・・・
447 :
はろぷろマックス:2007/08/04(土) 00:18:27 ID:EThAG86RO
緊急速報!鈴木愛理ちゃんパパ、鈴木 亭さんが、北海道小樽CC・暫定首位! 通算6アンダー。頑張って亭さん!はろぷろファンでゴルフファンの好きな人詳しくお願いします!
亨ちゃん首位キープしてるらしいね
亨ちゃん最後に負けちゃった
もう芸スポの結果スレタイまで愛理パパなんだねw
ども、お久しぶりです。
厳密には怪談ではないんですが、なんとなくそれっぽいものを、
ただいま書いております。今日は書き出しの部分だけ投稿して、
以降は小出しにしていこうかなと思います。
七姉妹が夏の一夜、それこそ一晩中、ある「敵」と格闘するハメ
になる物語。いまのところ半分くらいしか書けてませんが、すでに
ミステリーあり、グロあり、ちょっとだけエロもあり…の夏向けエン
ターテイメント作品になる予定です(←と、風呂敷だけは拡げて
おくw)。
期待しないでお待ちください。。。
●AM05:00
「とうとう朝になっちゃったね…」
頭にタオルを巻き、サングラスで「武装」した舞ちゃんが、すっかり明るくなった
外を見つめながらそういった。
「疲れたね…」
両手に「武器」を持った千聖が、ソファに身を投げ出し、天井を見上げながらそう
いった。
「まだまだ、本当の戦いはこれからよ…」
えりかちゃんもやはりタオルを頭に巻き、「武器」をしっかりと手に構えながらそ
ういった。でも、その目はまだギラギラと緊張していて、部屋の中をじっくりと見回
しているのであった。
戦いに疲れた「戦士」、舞美ちゃんと栞菜は、部屋の真ん中にぐったりと横になっ
て眠っている。私と愛理は、その二人を守るようにして、やはり部屋の真ん中で、周
囲を警戒しながらおびえているのであった。
今思えばその戦いは、さかのぼること12時間前、昨日の夕方から始まって
いたんだ…。
453 :
ねぇ、名乗って:2007/08/06(月) 22:59:07 ID:gGPWg3D80
作Bさんキタ━━━(゚∀゚)━━━!!!!!
20分過ぎてるしもう今日の投稿は無いかなと思ってレス入れました。
やっぱ何かお話が進んでないと寂しいス!! 無理せずマイペースで頑張って下さい。
お話としての感想はまたある程度進んだところで。
夏休み、現実の℃-uteは休み無しで全国回り、大変なんでしょうね・・・
せめて作中ではいっぱい休んで遊んで楽しんで欲しいですねえ。
454 :
ねぇ、名乗って:2007/08/06(月) 23:17:06 ID:gGPWg3D80
>名探偵℃-ute
台詞はオーソドックスに「」を使って
一人しゃべる分ごとに改行すると読みやすさが全然違ってくると思いますよ。
せっかく書かれてるのに形式の読みにくさで敬遠されてるんだったら勿体無いですよ。
>444,455
夏帆主演の(もう公開されてるんだっけ?)「天然コケッコー」に、なんとなく似てるのかな?
原作も本編もまだ見ていないけど、夏帆はけっこう好きな人なんで、見ておきたいな。
>>456 >「天然コケッコー」に、なんとなく似てるのかな?
なんとなくどころか、あの原作読んでてモロあのイメージと世界観です。
東京からの転校生とか、マンガを描いてる女の子とかは天然コケッコーと被ってるし…
原作ほののぼしてて大好きで、映画も楽しみだったりします。
それと「℃-uteのちょっと一曲聴いてください」ってDVDで、山の中へ行ってジャージとTシャツで
畑仕事の手伝いしたり、川へ入って手づかみで魚を捕ったりする自然の中の℃-uteも似合ってて大好きなんス。
で、牧歌的な℃-uteのイメージと、田舎の分校のお話って「天然コケッコー」の世界観がピッタリ合ってる気がして
前から書いてみたかったんですよ。
唯一の難点は学年。現実の℃-uteメンと年齢を合わせようとすると
梅さんと舞美は中学卒業しちゃったんで進行形で話が進められない事。
だから書くとしたら、まだめぐがいる2006年夏〜秋あたりのお話を、一話読みきりみたいな形で
書ければいいなあと思ってます。
あと、こういう田舎ネタだと「ほたるの星」の話もよく出ますよね。観た方がいいかな?
●PM05:00
「ただいま〜。なにあのゴミ袋?」
「表のヤツ?。あれね〜、おとなりさんも知らないんだってさあ。『不法投棄』
だよ『不法投棄』」
千聖が家に帰ってくるときに目撃したのは、前の通りに面したところに「不法投棄」
されていた、3つの白いゴミ袋だった。いったい誰が捨てたのか分からないのだけど、
緑色の垣根のところにドンと置かれた白い物体は、周囲に溶け込むことがなくて、目
立つ目立つ。
「『訃報と、ウキ』?」
「『フ・ホ・ウ・ト・ウ・キ』、ルールを守らずにゴミを捨てるってこと。まった
く、昼間っからヒトの家の前にドカンと3袋も捨ててくなんて、ヒドイよね。世
の中すさんでるよ」
キッチンに駆け込んできた千聖に、えりかちゃんは夕食の支度をしながらそう答え
た。
「なんだろね?。あれ」
「分かんない。中身が見えないし、開ける勇気もないし」
「開けてもいい?」
「ダ〜メ。やめようよ。生ゴミだったら、それに腐ってたりしたら、ものすごく
クサそうじゃん?」
「そうだね〜。今日も暑いしね」
千聖は汚れた靴下を脱ぎながら、キッチンを見回した。えりかちゃんは手際よく料
理を盛り付けている。
「なにかお手伝いする?」
「そろそろできあがるから、食器運んでくれる?」
「アイアイサー!」
「おっと、その前にちゃんと手は洗ってね」
「それは分かってますってばぁ、奥さん」
「『奥さん』いうな!」
どこでどう仕入れてくるのかは分からないけど(いや、ほとんどはテレビかな)、
最近の千聖は会話の中にいろいろと小ネタを挟んでくる。うかつに聞き流したりす
ると、それをまたネタにされてしまったりするから、まったく油断がならないんだ
な。
●PM06:00
「「「「「「「いっただっきま〜す!」」」」」」」
今日は久しぶりに全員集合で夕食を囲むことになった我が家。えりかちゃん特製の
オリジナルメニューは「うなぎ入りゴーヤチャンプルー丼」。なんとも夏本番のイメ
ージにぴったりの料理。そしてこれがまたおいしい。
「お〜いし〜い!。な〜んでこんなにおいしいんだろうね?」
「舞美に『おいしい』って言わせるために作ってるからだよ」
「そっ?!、う〜れし〜い!」
なんでこの「姉2人」は、こういう場面でノロケるかなあ、毎度のことだけど。
舞美ちゃんの天然とえりかちゃんのギャグの、タイミングというか「かみ合わせの絶
妙さ」には、いっつも感心してしまう。ただ、季節的にそういう会話は、そろそろ
「暑苦しくなってきている」のも事実。
「表のゴミ袋、どうするの?」
「いきなりゴミの話かいな(笑)」
千聖はどうやら「不法投棄」のことが気になって仕方ないらしい。
「明日、おとなりさんがゴミ捨て場に捨ててくれるってさ」
「おとなりって、山寺さん?」
「さっすがやまちゃん!」
「『やまちゃん』とか言わない。ちゃんと『山寺さん』って言わなきゃ」
「いいじゃん『やまちゃん』なんだから」
「舞ちゃん、誰でも友達ペースだからなあ」
舞ちゃんは、老若男女、動植物の種類を問わず、誰とでも友達になれてしまうとい
う「特技」の持ち主。だから誰に対しても、基本的には「タメ口」で話してしまう。
本人とその人の間だけならいいんだけど、家族が居合わせているときなんかは、妙に
気を使ってしまうということが結構あるので、ちょっとばかり「こまったちゃん」で
もあるのだ。
●PM07:00
夕食が終わり、みんなが一段落しているころ…。
<ピンポーン>
「あれ?、だれだろ?」
「はーい!、どちら様でしょう?」
「山寺で〜す」
「あ!、やまちゃんだ〜!」
おとなりの山寺さんが訪ねてきた。舞美ちゃんが応対に出ようとしたけど、玄関の
ドアをあけたのは、「やまちゃん」の声を聞きつけて駆け込んできた舞ちゃんだった。
「よっ、舞ちゃん、こんばんわ」
「こんばんわ〜、やまちゃんど〜したの〜?」
「こんばんわ、山寺さん。いつも舞がお世話になってます」
「いえいえ、いつも舞ちゃんには『遊んでもらって』ますから。こちらこそお世話
になってますよ。今日は親戚からスイカが送られてきたんでね、片付けるのを手
伝ってもらおうかと思って。ほらコレ、お・す・そ・わ・け」
「うわっ!、でっかい!、コレ、まるまる1個?」
「そう、ウチにはまだこれとおんなじのが3個もあるからね。とうていウチだけで
は片付けられないよ」
「すごーい、でっか〜い、重〜い」
「いつもありがとうございます」
「あ、そうそう、表のゴミは、明日の朝片付けておくからね」
「すみません、よろしくお願いします」
「ぐあ〜、重い〜」
舞美ちゃんはスイカを抱えている舞ちゃんの頭をおさえて、一緒にお礼をした。
強制的にお礼をさせられた舞ちゃんはバランスを崩してしまい、玄関から落ちそうに
なった。
「おっとっと…」
「舞ちゃんあぶないよっ…と!」
すかさず舞美ちゃんは、舞ちゃんをスイカごとひょいと抱えあげて、もう一度山寺
さんにペコリと頭を下げた。
「ありがとうございます、みんなでおいしくいただきます」
「おっ、すごいな。舞美ちゃんはすごい力持ちだなあ。それじゃ、またね」
「ばいば〜い!」
「ありがとうございました」
舞ちゃんは舞美ちゃんに抱き上げられたままで手を振った。山寺さんは苦笑いしな
がらドアを閉めた。
「みんな〜、山寺さんからスイカもらったよ〜」
舞美ちゃんが舞ちゃんを、舞ちゃんが大きなスイカを抱きかかえてリビングに
帰ってきた。
「うわ〜、すっご〜い、でっかいね〜」
「こんなでっかいの、初めてじゃない?」
「おいしそ〜。でもさっきデザート食べたばっかだもんね〜」
「冷蔵庫で冷やして、もう少ししてから食べようか」
「そうだね、そうしよう。冷蔵庫に入るかなあ」
「半分に切っちゃおうか」
「わたし切りた〜い」
「わたしも〜!」
「はいはい、ちょいまちちょいまち」
スイカはリビングからキッチンへと、みんなの手で運ばれて、そこで半分になり、
無事、冷蔵庫に収まった。
ども、なぜか「なんちゃら指数」をリピートして聞いてます。
今日のところは投稿ここまでです。以降、多少自画自賛なコメントに
なるかもしれませんが、ご容赦ください。
℃-uteで小説を書くと、あるシチュエーションさえ用意すれば、あとは
キャラクターが勝手にセリフや動きを決めてくれるっていうのが、ものす
ごいラクなところですね。
もちろん書き手の思い入れによるところも大きいのでしょうけど、
℃-uteはメンバーそれぞれのキャラクターや役割がわかりやすく、
明確になっているのが重要なポイントだと思います。
さて、本編「夏の夜の怪」ですが、エピローグから12時間さかのぼって
刻々とストーリーが展開していきます。今のところ結論はできているん
ですが、そのあいだの展開を埋めていく…という作業の仕方をしてい
ます。
例によってバックボーンとなる曲があって、これは PM11:00 の章の
ころに判明していくと思いますが…、当ててみてください。90年代
某アイドルのアルバム曲です(←そんなの分かるか!)。
さて、これから出てくる「敵」とは、なんでしょう?、これは「女の子に
とって、とっても怖いもの」を連想していただければ、分かるかなと思い
ます。ヒントは「季節と時刻」です。
引き続き、みなさんのツッコミをお待ちしております。。。
敵は多分アレのことですよね?w
>>452のときから薄々そうではないかと思っていましたw
すぐにわかったのは作Bさんの文章力のおかげだと思います!
姉妹の細かい描写でそうではないかとw(それと自分の経験が少しw)
続き楽しみに待っています!!
467 :
松輝夫:2007/08/09(木) 16:55:47 ID:XpZYzS6QO
>>465 作B氏乙です。
>>466氏と違ってまだ全然わからないんです(すいません)が、楽しみに読ませていただきます。
「なんちゃら」いいですよね。収録曲もいいですが、自分はジャケ写がお気にです。
自分は今まで書いていたものがようやく終わりまして、次の作品に取りかかっていますが、早速苦しんでます。素晴らしい話を次々生み出す作B氏がうらやましいです。
というか、「なんちゃら」繋がりでぜひこっちでも書いてほしいなぁ、なんて。スレ主さんには同じお願いしてふられちゃいましたがね。
468 :
ねぇ、名乗って:2007/08/09(木) 18:00:51 ID:xMVXiB610
自分も敵の正体は何となく予想できました!
予想できたんですけどあれだったらどうなるかと思うと続きが更に楽しみになりました!!
●PM08:00
「ね、ね、花火しようよ花火!」
「あれ?、今年まだ買ってないよ花火」
「去年のヤツ残ってなかったっけ?」
「天井裏に入れといたような気がする」
「探してくる!」
ウチは天井裏が倉庫になっていて、季節ものの遊び道具とか、めったに使わないも
のを、みんなそこに置いてある。そこから、千聖が「花火」と書かれたダンボール箱
を持ってきた。
「あったあった!…って、線香花火しかないや…」
「ははは、あるだけいいじゃん!、明日ちゃんとしたの買ってくるから、今日はコ
レでいいんじゃない?」
「何本あるう?」
「んーとね。ありゃ、ずいぶんいっぱいあるわ」
「よーし!、豪勢に線香花火だ」
「『豪勢に線香花火』って、なんかヘン(笑)」
みんなで庭に出て、今年初の「我が家の花火大会」は、線香花火オンリーという、
ささやかな幕開け。
「がんばれがんばれ、落ちるな〜!」
「両手持ち〜。なっきー、火つけてぇ」
「ホラ、ホラ、グラサンかけると火しか見えないよ!」
「あ、消えちゃった…」
「火がつかないよ〜。あれ?、コレさかさま?」
「お、おちる〜おちる〜!、落ちた…」
「イエーイ!、わたしの勝ち〜!」
「愛理くっつけないで!、あーほら落ちた〜」
「こうやっていっぺんにつけると『豪勢』だよ」
「でも線香花火なんだよ(笑)」
「こうやって、歩いてみる」
「おー、すごい舞美ちゃん。私もやってみる!」
千聖が線香花火を持ちながら、ソロリソロリと表の通りの方へ向かって歩いていく
と、突然「ガサガサッ!」という物音がした。
「うわっ!」
「なに?」
「どした?」
「だれ?、だれかいるん?」
音がしたのは、さっきの「不法投棄」されたゴミ袋の置かれているあたりだった。
千聖がそこを覗き込むと、一匹のネコが、振り向いてこっちをじっと見ている。
「んーとね、ネコみたい」
「あー、さっきのゴミ、あさってたんじゃない?」
「ゴミ袋、やぶかれちゃったかなあ?、ふさいどく?」
「あれ、何が入ってんだろうねえ」
「ちょっと気持ち悪くない?、なんか中身とか見たくないなあ」
「どうせ明日捨てるんだから『やまちゃん』に任せておけばいいんじゃない?」
「まあそうなんだけどね」
舞ちゃんはゴミよりもネコのほうに興味があったようだ。
「ねーねー、ネコって何色だったぁ?」
「んーとね、白と黒」
「ブチ?」
「そう、背中としっぽが黒だった」
「毛が短い?」
「うん」
「首輪してなかった?」
「うん、してなかったよ」
「それねえ、ついこの前から住み着いたノラだよ。近所のネコとあんまり仲が良く
ないの。昨日は福田さんちのネコにいじめられてた。おなかすいてんのかな」
さすが舞ちゃん。ご近所の動物事情にも詳しい。
「みんな〜、スイカ切ったよ〜」
えりかちゃんが、切ったスイカをお盆にのせて運んできてくれた。
「やったー!、スイカだスイカだ〜!」
「塩もってくる〜!」
「あたし『アジシオ』〜」
「種飛ばししよ〜!」
「しよ〜!」
みんな花火とスイカですっかり夏の気分を満喫している感じ。それっき
り、「不法投棄」のゴミのことは、みんな忘れてしまっていたらしい。
●PM09:00
「あ!、停電?!」
部屋でひとり「創作活動」に熱中していた私は、強制的に思考を中断され、とっさ
にカーテンを開けた。外を見ると、ご近所さんの家の明かりもみんな消えている、と
いうことは、停電はウチだけではないようだ。
私の部屋のコンセントには、停電したときにだけ明かりがつく仕掛けの「非常用ル
ームランプ」がささっているから、こんなとき慌てずに済む。ちょっとした優越感に
浸ることができて嬉しい…、なんちゃって。でも、こういう珍しいことが起きると、
決まって大騒ぎするのがウチの恒例でもあるんだな。
「助けて〜っ!」
早速お風呂場から悲鳴が聞こえてきた。愛理だ。家族でいちばんの「さびしがり
屋」は、よりによってこんなタイミングでお風呂に入っていた。
「ちょっと待って〜!、今懐中電灯持っていくから〜」
「なっきー!、早く〜!」
真っ暗闇の中、コンセントから抜き取った「ルームランプ」を頼りにして、風呂場
へと急ぐ。リビングでは他のみんながテレビを見ていたらしく、これもまた大騒ぎに
なっていた。
「なに停電?!、ウチだけぇ?!」
「いんや、ご近所もみんな消えてるよ」
「ホントだ、みんな真っ暗〜。ロウソクどこだっけ?」
「懐中電灯あったよ〜、ってか、電池ないんだけど〜」
「意味ないじゃ〜ん!」
「電池はどこ〜」
「暗くてわかんな〜い」
「じゃ懐中電灯は〜?」
「あるよ〜、けど電池がな〜い」
「意味ないじゃ〜ん!」
まあこっちは放っておいていいかな。とりあえずパニックになっている愛理を救出
しに行かなくては。
「はい、愛理、懐中電灯。濡らさないように気をつけてね」
「ありがと。なっきー、いっしょに入ろ?」
「なにを突然(笑)。でもいいや、ちょっと待ってて、着替え持ってくるから」
お風呂の中で、愛理は半ベソになっていた。私は玄関に置いてあった防犯用の懐中
電灯を愛理に渡すと、自分の部屋に着替えをとりに行った。
「た〜た〜り〜じゃ〜!」
千聖は鉢巻で2本のロウソクを額の横にくくりつけ、どこかで見た映画のマネをし
ている。
「ちょっと千聖、あぶないよ〜」
「た〜た〜り〜じゃ〜!」
「ロウが髪についたら、とりにくいんだからね」
「た〜た〜り〜じゃ〜!。アチッ!」
「ほら〜、いわんこっちゃない」
リビングをのぞくと、懐中電灯を使った変顔対決が始まっている。停電には停電の
楽しみ方があるようで、なんともウチの家族は平和だ。
「愛理、おまたせ〜」
「なっき〜、さびしかったよぉ〜」
「はいはい、抱きつくな」
お風呂に入って、しばらく愛理と二人でじっとしていたけど、「まっくらやみ」は
依然として回復しないままだった。最近は停電自体も珍しいのに、こんなに長い時間
停電したままというのも、ホントに珍しいことなんじゃないだろうか。
小さいころ、お父さんが買ってきてくれた「みんなのうた」のCDで覚えた1曲を、
二人で歌った。
♪「ひかりのなかで みえないものが
やみのなかに うかんでみえる
まっくら森の やみのなかでは
きのうはあした まっくらくらいくらい」
明るいときに歌うとなんだか寂しい歌なんだけど、真っ暗闇のなかで歌うと、逆に
心が落ち着くような気がしてくるから不思議。
ども、
>>470 の投稿、ハンドル欄失敗しました。orz
>>466 たぶん正解でしょう。うーん、
>>452 でバレてしまっては、ちょっと
残念w。もう少しひねりを勉強しないとですねえ。
>>467 替えジャケを雅に固定しっぱなしですw。
スレはどちらですか?しばらくはこのスレだけで手一杯だと思うん
ですけど、ROMしてみたいかもです。
>>469 自分でいうのもなんですが、けっこうおぞましいですよ?w。
でわでわ、PM11:00 の章をお楽しみにw。
引き続きみなさんのツッコミをお待ちしております。。。
478 :
松輝夫:2007/08/10(金) 06:34:16 ID:KtYlfQ6zO
不謹慎ながらも風呂場を妄想してしまいましたorz
続き楽しみにしてます
●PM09:30
結局停電は30分近く続いた。
「あ!、ついた!」
「やっとついた〜!」
「長かったね〜」
「暗いよ?」
「舞ちゃんグラサンかけてんじゃん。いつのまに持ってきてたのさ(笑)」
「た〜た〜り〜じゃ〜!」
「まだやってんのか千聖は」
リビングにはどうやら本当の平和が戻ったらしい。一方、私と愛理はお風呂で
すっかりのぼせてしまい、二人してフラフラとしながら出てきた。
「あ〜づ〜い〜」
「愛理おかえり〜!、大丈夫だった?」
「のぼせちゃったよ〜。ホラ、酔っ払いみたい(笑)」
「なっきーもご苦労さん、おつかんな〜」
「あれえ?、クーラーついてないの?」
「あれ?、つかないよ?」
「なんで?、リモコンの電池切れた?」
「いや、リモコンついてるよ?、本体のスイッチは?」
「やっぱつかないねぇ。なんでだ?」
キッチンのクーラーも、えりかちゃんの部屋のクーラーも、やっぱりつかなかった。
どうやらウチは、クーラーだけ停電のままらしい。
「うそー、クーラーないと寝れなくない?」
「あ〜づ〜い〜よ〜」
「どうする?、電気屋さん呼ぶ?」
「電気屋さんは…、今夜はもう遅いでしょ、明日の朝イチで呼ぼう。今晩は扇風機
でガマンだね」
「扇風機なんて、リビングと舞美ちゃんのの2台しかないじゃん。どうすんの?」
「しょうがないから、今日はリビングでみんなで寝ようか」
「えー、みんなで〜?、…楽しいじゃん(笑)」
「わーい、みんなで寝ましょー!」
●PM10:00
リビングに置いてあるソファや家具をはじっこに寄せて、部屋全体におふとんを隙
間なく敷き、みんなでゴロ寝する。窓を開け(もちろん網戸がついているから、虫は
入ってこない)、扇風機2台を、部屋の対角線上に向き合うようにして置き、首フリ
状態にしておく。ちょっとだけ涼しい風が入ってきて、クーラーなしでも十分眠れそ
うだ。
「「「「「「「おやすみなさ〜い!」」」」」」」
家の中は再び暗闇に包まれた。さっきみたいに突然じゃない暗闇。安心して眠るた
めの暗闇…。だけど、この7人が揃っていて、素直にちゃんと寝付けるワケがない。
「…」
「プッ」
「だ〜れ〜?」
「だれだ〜?」
「千聖でしょ〜」
「私じゃないよ〜ムニャムニャ」
「『ムニャムニャ』って!、マンガじゃないんだから(笑)」
「じゃ、栞菜だ」
「栞菜は寝てま〜す!」
「寝てないじゃん(笑)」
「みんな早く寝なさ〜い。千聖と舞ちゃんはラジオ体操あるでしょ〜」
「は〜いムニャムニャ」
「だから『ムニャムニャ』って…」
「…」
「キュフフ、くすぐったいってばぁ、愛理ぃ」
「くすぐってないよ?」
「じゃこの手はぁ?、…キャッ!」
「なっきー、うるさいよ〜」
「千聖が孫の手使ってくすぐってる〜」
「『孫の手』とか(笑)、どっから見つけてきたんだ」
「千聖は寝てま〜す!」
「寝てないじゃんっての(笑)」
「こらあ、寝なさいっての〜」
「…」
「…もう、食べれない…」
「なに?、舞ちゃん?」
「舞ちゃん寝てるよ?」
「寝言」
「きゃー、舞ちゃんかわいい!」
「起きるから、静かに!」
「舞ちゃん、なに食べてるの?」
「話し掛けちゃダメ」
「…ムニャムニャ…」
「『ムニャムニャ』って言った!」
「言った!、ホントに言った!ウケる〜」
「シーッ!、う・る・さ・い。次うるさくしたら、部屋で寝かすよ?」
「はーい」
「…」
しばらくの静寂が続き、庭で鳴く虫の声だけが、心地よく響いていた。ゆっくりと
首を振る扇風機は、そよ風のように外の風を送り込んでくれる。
ども、娘。イベントに落選してちょっと悲しいです。
>>478 ちょっとだけ読んでみましたけど、うん、やっぱし敷居が高いですわw。
しばらくはROMで、空気読めるようになったら、少しづつカキコしていこう
かと思います。
>>479 楽しみ方は人それぞれ…なんつってw。
お風呂のシーン(?)は、このあともう一回あります。お楽しみに。
さて、次回はいよいよ PM11:00 の章に突入です。みなさんの
ご期待に沿えるかどうか分かりませんが、期待せずにお待ちくだ
さい(なんじゃそりゃ)。
ってか、今書いている勢いだと「負けないで」を越える分量になり
そうです…(^^;
引き続きみなさんのツッコミをお待ちしております。。。
書けるかな?
乙です
書けた!!
やっとアクセス規制解除されたス!!
自分はGと予想中
ヤマちゃんいいなあ
朝からウザいくらいのハイテンションで登校する姉妹に
「おはー!!おはー!!みんな忘れ物ない?ナワトビ持った?じゃあいってらっしゃい!!」
って声かけて欲しいw
487 :
松輝夫:2007/08/11(土) 11:13:57 ID:kQgH7/kpO
>>484 作B氏、更新乙です。
しかし、作B氏にも敷居高いですか……そんなに高いつもりないんですが、仕方ないですね。もし書けそうだったらぜひぜひお願いします。
娘。のイベントなんて、申し込み自体忘れてたおorzまあ、たぶん当たらなかったとは思いますがね。
今日は10年隊とベリのツアー開幕ですね。
自分は、今から中野に行ってきます。まあ、来週も中野出撃予定ですが。
●PM11:00
突然えりかちゃんが立ち上がり、部屋の明かりをつけた。
「どしたの?」
まぶしさに手をかざしたのは、舞美ちゃんと私、そして愛理だった。栞菜、千聖、
舞ちゃんはもうぐっすりと眠りについていた。えりかちゃんは、おふとんの上に仁王
立ちで、睨みつけるように部屋を見回している。
「今、あたしの手の上を、何かが通った…」
「えっ?、ウソ!」
えりかちゃんの言葉に、起き上がった3人の頭に共通の「ある言葉」がよぎった。
でも、だれもその言葉を口に出そうとはしなかった。
「そんな…」
「ウソでしょ…」
ウチは毎年、大掃除のシーズンの最初の日に、専門の業者さんにお願いして、家
1軒分まるごと「害虫駆除処理」をしてもらっている。これは、この家に住むよう
になってからの恒例行事で、それくらい、一家揃って「アイツ」が大嫌いだからだ。
おかげでここ何年かは、その姿すら見ていなかったのに、なぜ…。
「そこっ!」
「きゃっ!」
えりかちゃんは舞美ちゃんの足元を指さした。舞美ちゃんが足を引っ込めると、そ
の動きに反応した「アイツ」は、小さいけれど黒光りする影を残して走り去り、はじ
に寄せてあったソファの下に隠れた。
舞美ちゃんは不意を突かれて声をあげてしまったけれど、ウチのメンバーでは、千
聖に次いで「耐性」のある、「頼れるお姉ちゃん」なのだ。
「えり、スプレーどこだっけ?、覚えてる?」
「うん、分かる。持ってくる。うん、手洗ってくるから、ちょっと待ってて」
えりかちゃんは叫びたくなる衝動を押し殺しながら、キッチンへと向かった。私だ
ったら、寝ている間にあんなものに手の上を「通られた」なんて考えただけで、パニ
ックになるだろうなと思う。
「なっきー、愛理、寝てる子に毛布をかぶせて」
「「はい」」
「アイツ」が姿を隠した方向をじっと睨みながら、舞美ちゃんは落ち着きを取り戻
して、的確な指示を出す。えりかちゃんがスプレーを持ってきて、舞美ちゃんに手渡
した。えりかちゃんはスリッパもいっしょに持ってきて、私と愛理にもそれを渡した。
「いい?、どっから出てくるか分かんないから、気をつけてね」
「「「うん」」」
緊張の一瞬。舞美ちゃんは、ソファの下にめがけて殺虫スプレーを噴射した。
<プシューーッ!>
即座に「アイツ」はソファの背後から壁をのぼって出てきた。
「いたっ!、このっ!!」
<プシューーッ!>
<プシューーッ!>
壁をのぼる「アイツ」に向けて、舞美ちゃんはすかさず第2、第3の攻撃を加える。
「アイツ」はもがくようにして壁をのぼり続け、天井にまでのぼりつめた。真上に噴
射すると薬が降ってくるから、これ以上の攻撃はできない。
「大丈夫!当たってる!見てて…」
舞美ちゃん、えりかちゃん、私、そして愛理は、天井で動きを止め、ユラユラと長
い触角を揺らしている「アイツ」を、じっと見つめている。その体長は2cmもない
「ザコクラス」だ。
気持ち悪いけど、ちょっとでも目を離したら、またどこかへ隠れてしまいそうな気
がして、目を離すことができない。こんなときは、たった数秒の時間が、ものすごく
長く感じてしまう。
突然、「アイツ」がまた動き出し、天井を部屋の隅に向かって走り出した。私たち
は身構えたけど、「アイツ」は天井の角に到達する手前で、力尽きたように落ちた。
しかし、その落ちた先は、ちょうど首を振って横向きになった扇風機の上だったの
だ。「アイツ」の体は扇風機の金属製のカバーをすり抜けて落ち、「ボンッ!」とい
う鈍い音とともに、回転している羽根に当たって分解された。その破片が、じっと固
まっていた私たちに向かって跳ね飛ばされてきた。
「「「「きゃああーーーっ!!!!」」」」
「「「「いやああーーーっ!!!!」」」」
私たちは「アイツ」の分解された残骸を頭から浴びてパニックになった。まさに
「スプラッターホラー」だった。泣き叫び、パジャマを脱いで、それを放り投げ、
いっせいにシャワーを浴びに風呂場へ走った。いっぺんに4人も入ると狭いけど、
そんなこと考えていられない状態だった。
とにかく、一刻も早く、全身を、頭から洗い流したかった。シャンプーを互いに頭
からふりかけ、泣きながら互いの体を洗いあった。はたから見ていたら、とっても
「こっけいな姿」だったのだろうけど、そのときは4人とも必死だった。
「なに?」
「ん…、どしたの?」
「朝?…」
寝ていた3人(栞菜、千聖、舞ちゃん)も、さすがにこの騒ぎに目を覚ました。目
をあけると頭から毛布をかぶせられていて、4人の姉たちはシャワーを浴びていて、
部屋の真ん中に殺虫剤のスプレーが落ちている。
いったい何が起きたのか、状況を悟るために、それほどの時間はかからなかった。
そして部屋の隅には、バラバラになった「アイツ」の残骸が…。
「「「きゃああーーーっ!!!!」」」
2次災害が起きてしまった。3人はほとんど同時に悲鳴をあげ、ソファの上に避難
した。
「ちょいまち、ちょいまち。片付けるから」
我が家で一番の「耐性」を持つ千聖は、最初こそびっくりして悲鳴をあげたものの、
怖がって震えている栞菜と舞ちゃんを守るように、「アイツ」の残骸をティッシュで
集め、見えないように包んでトイレに流した。そして姉たちを心配して風呂場へ向
かった。
「舞美ちゃん、えりかちゃん、大丈夫?」
「大丈夫じゃない〜。も〜」
「気持ちわるうい!」
「えーん、こわいよ〜」
愛理は言葉もなく無心に体を洗っている。相当のショックだったのだろう。えりか
ちゃんは気を取り直して、千聖に声をかけた。
「千聖〜、お願いなんだけど〜」
「なあに〜?」
「扇風機を止めて、リビング全体を掃除機かけてくんない?」
「こんな夜中に?」
「ワケはあとで話すからさあ、お願い」
「分かった〜」
「あ、あと私たちの着替えも」
「は〜い」
姉たち4人が、いっぺんにシャワーを浴びている光景なんて、よっぽどのことがあ
ったのだろうと感じていた千聖は、えりかちゃんのお願いに素直に返事をした。そし
て栞菜と舞ちゃんと協力して、おふとんをたたみ、掃除機をかけた。それが終わるこ
ろ、4人は風呂場からあがってきた。
●PM11:30
「あー、びっくりした」
「こわかったよ〜」
「愛理〜、もう泣かないで」
「こんな怖い思いしたの、初めて」
「まさかあんなことになるなんて、ゴメンね」
「舞美ちゃんのせいじゃないよ、アイツのせいだよ」
「ねえ、どうしたの?、何があったの?」
えりかちゃんは、さっき起こった「恐怖体験」を、3人に聞かせた。耐性の強い千
聖は平気で聞いていられたけど、おっかなびっくり聞いていた栞菜は、最後には怖く
て固まってしまった。舞ちゃんは、怖さよりも眠さに耐えられず、聞いている途中で
寝てしまった。
「こわっ!、じゃあこの扇風機、もう使えないじゃん!」
「だよねえ、いくらなんでも使えないよねえ」
「明日、漂白剤につけて洗うか…、まあクーラーが直れば使わなくてもいいんだけ
どね」
●PM11:45
とりあえず「敵」は退治し、その残骸の掃除も済んだ、しかしそれは、新たな問題
の幕開けに過ぎなかった。
「ねえ、やっぱ『一匹いる』っていうことは…」
「うん、『百匹いる』ってことだと思う」
「なんでいきなり出てきたんだろう…」
「なんかすんごいイヤな予感がするんだすけど…」
「だすけど?」
なんとなく壁を見ていた栞菜が、「第2の敵」を見つけてしまった。
「きゃーーっ!」
栞菜はいきなり悲鳴をあげ、壁を指さした。
「どこどこ?!」
「あっち!、あっち!、キッチンのほうへ行った!!」
「でっかい?!」
「でっかい!、すっごいでっかい!!」
舞美ちゃんと千聖がスリッパを構えてキッチンへいった。キッチンでは、うかつに
スプレーを使えないから、スリッパや新聞紙なんかで叩くしかない。
「千聖、そっち側見てて」
「はいよ」
「いい?、叩くよ」
<バシッ!、バシッ!>
「そいつ」は空気の流れに敏感だから、スリッパで壁や床を叩けば、それに反応し
て逃げ出してくるはずだ。二人は姿を隠した「敵」がどこから出てくるのか、集中し
て周囲を見回している。
「いたっ!、そこっ!」
現れたのは体長5cmはあろうかという「ボスクラス」だった。「そいつ」は食器
棚の隙間からはい出してきて、テーブルの下を通過しようとしたが、ちょうどそこに
千聖が待ち構えていた。
<バシッ!、バシッ!>
「当たった?!」
「やばっ!、ドア閉めて!」
「あっ!」
千聖の攻撃はクリーンヒットにはならず、相当のダメージを与えはしたものの、致
命傷には至らなかったようだ。そのため「パニックモード」になった「そいつ」は、
逃走手段を「走行」から「飛行」に切替え、薄暗いキッチンから、再び明るいリビン
グへ向かって飛んでいった。
舞美ちゃんはリビングへ通じるドアを閉めようとしたけど、間一髪間に合わず、「そ
いつ」をリビングへ逃がしてしまった。
「「「「きゃああーーーっ!!!!」」」」
「「「「いやああーーーっ!!!!」」」」
またもやリビングはパニックに陥った。「そいつ」はリビングの照明の下をぐるぐ
ると飛びつづけ、みんなはしゃがみこんで、頭を抱えて悲鳴をあげている。キッチン
から追ってきた舞美ちゃんは、「武器」をハエタタキに持ち替えて、狙いを定めた。
「千聖!、網戸開けて!!」
「はい!」
<ビシィーーーッ!>
舞美ちゃんは飛んでいる「そいつ」を、ハエタタキで外へと打ち返した。それはそ
れは見事なホームランだった。「そいつ」はきれいな弧を描いて庭に落ちた。
「やったーーーっ!」
「舞美ちゃんすごーーい!」
「やったね」
舞美ちゃんと千聖がハイタッチをして庭を見下ろすと、一匹のネコがやってきて
「第2の敵」の死骸をつかまえた。
「あ、さっきのネコだ」
「ノラ?」
「なにやってんの?」
「あ…」
「あ…」
「愛理!、見ちゃダメ!!」
私は慌てて愛理の目をふさいだ。さっきゴミ袋をあさっていたネコが、舞美ちゃん
が打ち落とした「そいつ」を捕まえて、食べ始めたのだ。
「く、食ってる…」
「グ、グロイ…」
かろうじて愛理は免れたけど、寝ている舞ちゃんを除いて他の姉妹はみんな、この
衝撃的なシーンを目に焼き付けてしまった。でも私は、もう一人「見ちゃいけない人」
を思い出して「しまった!」と思った。
「うっ!」
栞菜が口をふさいでキッチンに走った。あーあ、これできっと「ネコ嫌い」になった
かもしれないな。
ども、今回の更新はここまでです。
>>452 で分かりますけど、これからまだまだ「長い夜」は続きますw。
ここまでで役者は揃ったので、ちょいとヨタ話を失礼…。
>>438 に触発されて、「七姉妹を恐怖のどん底におとしいれるには…」
なんてことを考えていたら、最近でっかいゴ○ブリの死骸が部屋に
転がってて驚いた体験を思い出しまして、「これでいこう」と思い立った
ワケですw。
で、某アイドルのアルバム曲がバックボーンにぴったりハマるので、
これをベースにストーリーを組み立てています(これもご存知の方は
結構少ないかな…)。
本編はまだ完成してませんが、今回までのでほぼ半分ですので、
あらかじめゴメンナサイします。長いです。
>>486 他のみなさま
おおかたの皆さん正解ですね。ただ、女の子視点で「ヤツ」と
対峙すると、どうなのかなあって疑問はありまして、かなり想像で
補完している部分があります。
>>487 私は明日(今晩)の座間と、来週金曜夜の中野に参戦予定です。
並びと待ちが苦手なので、CCは軒並み回避です。
ということで、
引き続きみなさんのツッコミをお待ちしております。。。
乙っす!!
しかしグロいww昔粘着式のネズミ捕りに引っ掛かって暴れて皮膚が剥がれてピクピクしてたネズミを見た以来のグロさですよww
500 :
七姉妹サブキャラ図鑑:2007/08/12(日) 13:33:19 ID:BM6UEN9B0
・藤本先生(藤本美貴)
『女帝』の異名を取るマイの小学校の担任教師、気分屋で強面だが自分の生徒には優しい面があり人気。
生徒たちからの呼び名はミキティ。
(美貴先生だからミキ・ティーチャ―=ミキティ、美貴帝だからミキティの二種類の説があり)
職員室での飲酒を、学校新聞にスクープされるという前代未聞の事件を起こし、現在謹慎中。
放課後に公園のベンチやアパート自室でマイに愚痴を言い慰めてもらう日々。
…いや本編出演するかどうかはともかく、こういうネタだけでも世界観の構築や
スレの賑やかしにはなるかな、と思ってw
>>498 乙です
アクティブでうらやましい
501 :
名探偵℃-ute 09:2007/08/12(日) 22:10:49 ID:kXicW1if0
一方捜査一課では何の手がかりも掴めないまま一週間が過ぎようとしていた、
矢島<まるで深海に潜り込んだサメだな、いきなり何の情報も示さなくなったな?>
吉良<変ですよね?あのサイトにもそれらしき返答も無いし、>
<まさか!何かしらの収穫が見込めたので打ち切ったのでは?>
矢島<それは無いな!頭のイカレタエリートは自分の発言には自意識過剰な所がある!>
<もし目的が完遂していても必ず七人の殺害を無理にでも果たそうとするから!>
吉良<もしかして・・・外部から何かしらの妨害を受けてるのでは?>
矢島<妨害?>吉良<そう!たとえば、、舞美ちゃん達とか・・・>
矢島<いくら家の娘たちが優秀だからって・・・あいつら!>
急に思い出したように捜査室を飛び出していく矢島総一郎、数日前・・・
早貴<パパ捜査の方は進んでる?>晩酌のビールを注ぎながら話しかける早貴、
矢島<早貴、この事件にお前達を巻き込むつもりはないよ、、>
早貴<うんっ、ちょっと気になって・・・>
リビングの向こうで早貴に手招きをしているエリカ以下矢島姉妹、
エリカ<ナッキー、パパに気ずかれるでしょ!>
スタンス開き過ぎてすいません・・・・
色々ネタを継ぎ足しながらなんでまとめ作業が、
502 :
名探偵℃-ute 10:2007/08/12(日) 22:16:28 ID:kXicW1if0
舞<そうそうパパにばれたら台無しだって、>栞菜<早貴、何かあるんでしょ!>
早貴<ちょっと気になってるんだけど・・・>矢島姉妹一同<うんっうんっ・・・>
早貴がプロファイルした組織の性格と状況によって導き出された全貌を聞く姉妹、
舞美<んっ〜なんだろ、少しだけ辻褄が合ってきてない?>エリカ<だね!>
愛理<でも早貴の言うことが合っていれば、面白そうじゃな?>
千聖<よっしゃ〜燃えてきた〜>舞<もおっ〜千聖唾飛んでるから!>
舞美<でもね・・みんな気をつけて私達狙われてるから!>
<私やエリカだけならいいけど・・・>エリカ<やっぱ入ってるんだ、私も・・・>
エリカ<千聖、舞、帰りは一緒に帰るんだよ、早貴、愛理、栞菜も一緒に行動!>
千聖<どんな奴が来るんだろ〜楽しみ〜!!>舞<千聖、まかせた!!!>
舞美<とにかく皆気をつけるように!>舞美以下<ハーイ!!>、
矢島<何を盛り上がってる?おまえらが七人揃って盛り上がると碌な事が・・・>
エリカ<それよりパパ、ビール注いであげるね>舞美<おつまいのえらまめ・・>
矢島<やっぱり怪しい・・・?>舞美<そっそんな事ないって!(笑)>
事件捜査ではするどい切り口が売りの矢島総一郎も娘達には甘甘であった、
時は戻って放課後の帰り道七人姉妹の背後に近ずく影が・・・
事項は近いうちに・・
●AM00:00
リビングには、一応おふとんを敷きなおしたけど、すでに寝ている舞ちゃん以外は、
横になる気がしなくて…。あ、でも愛理はちょっと眠そうかな。
「ねえ、どう思う?」
「どうって…、おかしいよね、明らかに…」
「停電したり、クーラーがつかなかったり、『アレ』が2回も出てくるなんて…」
「たぶんねえ、『2度あることは3度ある』と思うよ…」
「それ、私も思った…」
「「「「「「は〜あ…」」」」」」
私たちはリビングのソファにくっついて座りながら、一緒になってため息をついた。
暑いんだけど、なんとなくくっついていたい…。たぶんみんな同じ思いだったんだろ
う。互いの汗が触れ合って、扇風機の風が当たると、なんとなくひんやりもする。
舞ちゃんはあいかわらず静かに寝息を立てている。さっきの騒ぎで起きなかったの
は、よっぽど疲れているのか、神経が太いからなのか…。
「ちょっとトイレ行ってくる」
栞菜はまだ調子が悪いらしい、顔色が青いままだ。
次にいつ「アイツ」が出てくるか分からない。これからそれぞれの部屋で寝ること
もできるけど、やっぱりクーラーがつかないままだと暑くて眠れるわけがない。リビ
ングで動いている扇風機は1台だけ、今はコレだけが「涼しさ」を提供してくれる唯
一の方法だ。
「まあ今となっては、目もさめちゃったけどね…」
「たしかに…、オチオチ寝てられないってのもあるし…」
「ふわぁ〜あ…」
「愛理は寝ててもいいよ?」
「ダイジョブ、起きてる…」
「無理することもないからね」
「千聖は?」
「全然平気(笑)」
「さてさて、どうしたものか…」
「うーん…」
ほんの少しの静寂のあと…。
「きゃあーっ!」
「「「「栞菜だっ!」」」」
舞美ちゃんと千聖は急いでトイレに向かった。
●AM00:15
栞菜がトイレから出てくると、なんと廊下のど真ん中、栞菜の目の前に「第3の敵」
が、ユラユラと触覚を揺らしながらこっちを見ているではないか。またも体長5cm
はあろうかという「ボスクラス」が、まるで栞菜を挑発しているかのように対面して
いる。栞菜は思わず悲鳴をあげた。
「ダメダメダメダメこんなの!なんでこんなとこにいんのよ?!舞美ちゃん助けて
千聖助けて助けて!!気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い!!イヤ!こっち見ない
で見ないで見ないで!!!なんで私のこと見てんのよ!!いい加減にして気持ち
悪い気持ち悪い気持ち悪いコワイコワイ!!コワイコワイコワイコワイ!!!…」
「(ぷちっ…)」
<バシバシバシィッッ!!>
何かが栞菜の中で切れた。そして反射的に、履いていたスリッパを手に持ち替え、
それで「敵」を1発、2発、3発と叩いた。まるで「窮鼠(きゅうそ)ネコを噛む」
のねずみのような、予想外、そして瞬時の反撃に、「敵」は逃げることも、身動き
することもなく絶命した。
「栞菜っ!」
舞美ちゃんと千聖がトイレに駆けつけたとき、栞菜は床にへたりこみ、その目の前
には、ペチャンコにつぶれ、変わり果てた「敵」の姿があった。
「もう…、怒った…」
ゆっくりと立ち上がった栞菜の両目には、うっすらと涙が、そしてその奥にはメラ
メラと炎が燃え盛っていた。今始末したばかりの「敵」の残骸をトイレットペーパー
で包んでつかみ、そのままトイレに流した。
「栞菜、大丈夫?」
「かんな〜?」
「大丈夫。ちょっとコンビニ行ってくる」
そういうと栞菜は自分の部屋へ行き、服を着替えて出て行ってしまった。なにかを
思いつめたような強い視線に圧倒されて、舞美ちゃんも千聖も、ただ呆然と栞菜の姿
を見送るしかできなかった。そして二人はリビングに帰ってきた。
「栞菜、どうしたの?」
「わかんない。『もう怒った』って…」
「コンビニに行っちゃった」
●AM00:30
栞菜がリビングに帰ってきた。
「これを手分けして仕掛けよう」
栞菜がコンビニで買ってきたのは、殺虫スプレーが3本と、ホイホイハウス(3個
入り)が3セットだった。
「こんなに買ってきたの?」
「っていうか、コンビニにはこれしか置いてなかったの。ホントはバ○サンも買って
こようと思ってたんだけど、売ってなかった」
「まあバ○サンは昼間やればいいんだし、とりあえずは今晩をしのげればOKよね」
「よし、じゃ、仕掛けを仕掛けよう(笑)」
みんなで手分けしてホイホイハウスを組み立て、キッチンを中心にして配置してい
くことにした。えりかちゃんはシンクと冷蔵庫の周辺に3個、舞美ちゃんはキッチン
のそのほかの場所に3個、私はリビングの周辺に3個、「ヤツら」が通りそうな場所
を選んで置いていく。
愛理が適当な場所を探しながら、テレビの裏をのぞいていたら、小さな黒い豆のよ
うなものがポトリと落ちていた。
「???…、なっきー、なんだろこれ?」
「んー、な〜に〜」
「ほら、このマメみたいの」
「わっ!、さわっちゃダメッ!!」
愛理は「ヤツら」の卵を知らなかった。確かに小豆(アズキ)に似ていて間違えや
すいのだけど、こんな場所に小豆なんて落ちているはずがない。私は図鑑の写真で見
たことはある(見れば見るほどグロテスクだったのはハッキリと覚えている)けれど、
実物を見たのは初めてだった。ということは、ここも「ヤツら」の通り道になってい
たということか。
愛理は「それ」が卵だということを知ってしまったこと、「それ」を見てしまった
こと、そして「それ」をあと少しのところで触ろうとしていたことにショックを受け、
固まってしまった。
私は千聖にお願いして、「それ」をティッシュに包んでトイレに捨ててもらった。
そしてテレビの裏側にホイホイハウスを置いた。
栞菜の気持ちがよくわかる!
奴を見かけると周辺にホイホイの結界を作らないと安心出来ないんだよ
乙です!栞菜はキレたらとことんやりそうw
しかし黒糖パンを食べながら見るもんじゃなかったな・・・_| ̄|○
●AM01:00
「とりあえずこれでリビングは安心でしょう」
「やっと眠れる…かな」
「まあ眠れる気もしないけどね」
「まあね、たしかに」
「あたし、結構眠い…」
「愛理、寝ていいよ。舞ちゃんのとなりに寝な」
「うん、おやすみ」
「ねえ、あれ…」
栞菜が庭のほうを指さした。みんなの視線が庭に向くと、そこにはさっきのネコが、
両方の前足を揃えて座り、じっとこっちを見ていた。そしてゆっくりと歩き出し、ど
こかへ行ってしまった。
「なんだろ…」
「なんだかすごく気味悪いね」
●AM01:30
舞ちゃんと愛理をのぞいて、眠気が覚めてしまったわたしたちは、やっぱりソファ
に固まって座りながら、テレビの深夜番組をぼーっと眺めていた。寝ている子たちに
は悪いけど、部屋は明るいままにしている。次にまた「ヤツら」が現れないかどうか、
分からなかったから…。
テレビからは陽気な、そして騒々しい音がしているけれど、見ている私たちの周囲
には、空虚でシラケた、微妙な空気が流れていた。
「ねえ、聞こえた?」
「え?、なに?」
「あー、空耳であってほしいんだけど…」
「なんのこと?」
<カサカサ…>
「あ…」
「…聞こえた」
「わたしも…」
「もうイヤ…、こんなの…」
「千聖、行くよ」
なにかが、もがいているような、その乾いた音は、キッチンのほうから聞こえてく
る。きっと「ヤツ」だ。「第4の敵」だ。舞美ちゃんと千聖がすっと立ち上がり、
スリッパとハエタタキを持って、そろりそろりとキッチンへ向かう。
「私も行く…」
「栞菜?、大丈夫なの?」
「うん、もうアイツらには負けない。もう全然怖くないから」
栞菜はトイレの前で「ヤツ」とのタイマン勝負に勝ってから、恐怖感を克服したよ
うだ。なにかの決意にみなぎったような目が、それを物語っていた。
「栞菜、かっこいい!」
「まあね。今まで舞美ちゃんや千聖にずいぶん頼ってたけど、もう大丈夫だよ」
栞菜も丸めた新聞紙を手にして、二人のあとに続いた。
キッチンの明かりをつける瞬間、3人は身構えたけど、何も起こらなかった。そし
てあいかわらず「音」は、シンクの方から聞こえてくる。「特攻隊」メンバーでいち
ばん背の高い舞美ちゃんが、おそるおそるシンクの中をのぞく…。
「音」はなおも聞こえている。すると、舞美ちゃんはシンクから目を離すことなく
二人にVサインをしてみせた。
「?」
「舞美ちゃん、なに?」
千聖が小声でたずねた。
「2匹いる。栞菜、スプレー持ってきて」
「はい」
「第4の敵」は、なぜかシンクの中で2匹がもがきあっているようだ。狭いから、
叩いても確実に当たる可能性が低いし、どちらかに逃げられてしまうかもしれない。
シンクの中に向けてなら、スプレーしてもあとで洗い流せる。舞美ちゃんの判断は冷
静だった。
栞菜はリビングから殺虫スプレーを持ってきて、舞美ちゃんに手渡した。
「千聖、ドア閉めといて」
「うん」
さっきのようにリビングに飛び込まれては、またパニックになってしまうから、
あらかじめドアを閉めておく。そして舞美ちゃんはスプレーを高い位置から噴射する
ように構えた。
「いい?、いくよ?。逃げたらすぐに叩いてね」
「はい」
「おーけー」
スプレーを構える舞美ちゃんの両脇で、栞菜と千聖がそれぞれの「武器」を構えた。
一瞬の静寂のあと、舞美ちゃんはスプレーを噴射した。
<プシューーッ!>
<ガサガサガサガサッ!>
さっきよりも激しい「音」がしだした。栞菜と千聖は「ヤツら」が飛び出してくる
のを警戒していたけど、どうやらシンクの中をひたすら走り回っているようだ。やが
てその「音」は小さくなり、動きも完全に止まった。「敵」2匹はシンクの中で絶命
した。
「ほっ」
「よかったあ、ここだけで済んで」
「しかしこれは『ザコ』だね」
シンクの中に横たわっている死骸は、それぞれ体長2cmほどの「ザコクラス」で
あった。舞美ちゃんはそれらをティッシュペーパーで包み、トイレに流した。
「今日、あと何回トイレ流すんだろ…」
どう考えてもありえない異常な状況に、さすがの舞美ちゃんも怖さがこみ上げてく
るような気がした。
「ねえ、なっきー、コレ…」
「なに?、ネコの、毛?」
それは、白い毛と黒い毛の混じった、ネコの毛の小さな固まりだった。えりかちゃ
んはリビングにいるみんなに聞こえるようにたずねた。
「だれか、あのネコに触った人いる?」
「え?、さっきの〜?」
「触ってないよ〜」
「だれも触ってないでしょ?、たぶん舞ちゃんも…」
「じゃあ、なんであのネコの毛がここに落ちてんの?」
「うそ?!」
「キッチンに?!」
「(あのネコ、ここに入ってきたってこと?)」
えりかちゃんは、なにかイヤな予感がしたけど、それ以上考えたくはなかった。
この毛があのネコのものだとハッキリしているわけではないし、ただの勘違いかもし
れない。もし本当だとしても、もっと怖いほうにしか考えがいきそうになかったから。
想像していると鳥肌が…
●AM02:00
ふたたびみんなソファの上に集合。舞美ちゃん、えりかちゃん、私、栞菜、そして
千聖は、やっぱり「ひとかたまり」になって、深夜番組をぼーっと眺めている。
「なんか…、おなか減ってきちゃったね」
「あ、そうかも」
「でも、夜中に食べると太るよ?」
「そ、それも、そうだ…ね」
「でもさ、みんな体力と神経、けっこう使ったんじゃない?」
「うん、それもそうだ」
「けっこう声も出したし(笑)」
「甘い麦茶でも作ろうか?」
「あ、それいい。賛成!」
えりかちゃんが砂糖入りの「甘い麦茶」を作ってくれて、みんなでそれを飲んだ。
涼しくなるし、なんだかなつかしい味。
「おはよ」
「あれ?、舞ちゃん、まだ朝じゃないよ?」
「まだ寝てていいんだよ?」
「んー、…起きた」
「舞ちゃん明日ラジオ体操でしょ、寝てたほうがいいよ」
「なんかね、起きちゃった」
「そう?、あんまり無理しちゃダメだよ」
今は「非常事態」だから、誰も舞ちゃんを無理に寝かせようとは思わなかった。そ
れで舞ちゃんにも「甘い麦茶」を飲ませたら、すっかり目がさめたようだ。
●AM02:15
<ガラガラガシャン!>
「今度はなに?」
「天井裏だ…」
「荷物が崩れたんじゃない?」
「千聖、花火とりに行ったとき、なんかした?」
「いや、なんにもしてないよ?」
「とりあえず見に行かないと、安心できないよなあ…」
「イヤだなあ、行きたくないなあ」
「しょうがないじゃん、行くしかない。荷物が崩れただけなら、それはそれで安心
でしょ?、ね」
「『ね。』って、舞美ちゃんはポジティブだなあ」
舞美ちゃんはタオルを頭に巻き、マスクをして戦闘準備を整えた。栞菜と千聖も同
じようにして、舞美ちゃんと同じ格好になった。
「あづい…」
「これは夏の格好じゃないね」
「ガマン大会イエーイ!」
「えり、これ終わったら、また麦茶飲みたいかも」
「分かった、作っておくよ」
「いってらっしゃい」
天井裏には入口のフタを開けて、そこにハシゴを吊るすように取り付けてのぼる。
舞美ちゃんがフタを開けると、コロコロと小さな豆のようなものと、パラパラとした
砂のようなものが落ちてきた。
「うわ!、なにこれ?!」
「信じたくない…」
「卵?」
「と、フン?」
「たぶんね。もう巣になってるのかも」
「花火をとりに来たときには、全然わかんなかったよ?」
「なんでだろうね?、ちょっとヘンだよ…。昨日の停電からなのかな。千聖、床を
掃除してくれる?」
「私がやるよ。千聖は舞美ちゃんを手伝って」
栞菜はホウキとチリトリを持ってきて、散らばった「卵」と「フン」を片付けた。
「ねえ、なんか『おしょうゆ』のニオイがしない?」
「え?、どれどれ?」
「ほんとだ、なんか『おしょうゆ』のニオイだ。天井裏?」
「上に『おしょうゆ』なんて置いてあったっけ?」
「ないない」
舞美ちゃんと千聖はハシゴをとりつけ、舞美ちゃんが懐中電灯を持って、ゆっくり
とのぼる。
<カサカサ…>
やはりなにか(たぶん「ヤツら」、それも一匹ではなさそう)が動いているような
音がする。舞美ちゃんはおそるおそる、慎重に中をのぞいた。
「いるかな〜。あ、いるわ。あ〜いたいた。ってか…うわっ!!」
「どうしたの?!、大丈夫?!」
舞美ちゃんは慌ててハシゴを降りた。というよりは、向き直って飛び降りた。
「やばい!、ずいぶんいっぱいいる!、信じらんない!、なんであんなにたくさん
いるの?!」
「どんなんなってた?!」
「あのね、中に『おせんべい』の缶があって、あれ、確かお正月に置いたまま忘れ
てたヤツだね。それが倒れてた。で、こぼれた『おせんべい』に、アイツらが群
がってんの!、20匹くらいいたかも。ちょっと怖すぎ!」
「見ていい?」
「いいけど、見ないほうがいいと思うよ」
好奇心のかたまりの千聖は、舞美ちゃんから懐中電灯を受け取り、ハシゴをのぼっ
てのぞき込んだ。
「うわっ!!、これすごいわ。こんなの愛理が見たら死んじゃうかも…」
千聖は「おせんべい」の缶の中に、なにか別の黒いものがうごめいているのを見つ
けた。
「舞美ちゃん…」
「なに?」
「信じられないくらいでっかいのがいる…」
「え?」
千聖は舞美ちゃんを手招きした。もう一度舞美ちゃんは交代して、懐中電灯で天井
裏をのぞいた。『おせんべい』の缶の中から出てきたのは、体長12cmはあろうか
という、今までに見たこともないような「大ボスクラス」だった。
「うわ、これは私でも死にそうだわ…」
「なんか感動するね。あれだけ大きいと…」
「とりあえず、いったん撤退して、作戦を立て直そう」
舞美ちゃんたちはハシゴをはずして入口のフタを閉じ、リビングに戻ってきた。
●AM02:30
さっきまで寝ていた愛理も起きてきて、リビングは全員参加の作戦会議となった。
えりか:「もうさあ、天井裏は明日、バ○サンすればいいじゃん?」
舞美:「でも、昨日まで全然いなかったのが、突然あんなに増えてんだよ?、
おかしいと思わない?、今夜じゅうに退治したほうがいいと思う」
えりか:「そんなこといったって、たくさんいるのを、全部叩き潰すつもり?」
舞美:「そりゃあ…」
えりか:「根性で?」
舞美:「うん…」
栞菜:「大変だよ。天井裏は狭いから、舞美ちゃんひとりだけ頑張ることになる
かもしれない」
舞美:「それは…、仕方ないじゃん」
千聖:「ダメだよそんなの!、舞美ちゃん死んじゃうかもしれない!」
舞美:「それはない。ってか殺すな」
早貴:「ねえ、天井裏だったら、スプレーまいても大丈夫でしょ?」
舞美:「大丈夫だけど、まいたとたんにパニックになるよ?」
栞菜:「それは叩いたって同じだよね」
舞:「うん、同じだ」
早貴:「遠隔操作すればいいじゃん」
「「「「「「遠隔操作?」」」」」」
ここで、なっきーの工作教室〜♪
「こうやってスプレー缶を、それぞれ外を向くように3つ束ねて…」
「ガムテープでぐるぐる巻いて…」
「次にソフトボールにひもを巻いて…」
「ひもが外れないようにガムテープをはって…」
「ひもを缶の真ん中のすきまにたらしながらボールをのせる…」
「こうやって、下からひもを引っ張れば…」
<<<プシューーッ!>>>
3本の缶から同時にスプレーが噴射された。
「すっごーい!」
「なっきー天才!!」
「なんでこんなの作れんの?、頭よすぎぃ!」
「ちょっと安定性がないから、下にダンボール付けて固定したほうがいいかな。
これを天井裏に置いて、フタを閉めてから噴射すればオッケーでしょ?」
「「「「「「すごーい!」」」」」」
私たちは、さっそく作戦を実行に移すことにした。
「ちょっと待って!」
「ん?、どしたの?、なっきー」
早貴:「問題はスプレーを噴射したあとでしょ。天井裏にはたくさんの死骸が残
ることになるし、もしかしたら、どこかのスキマから逃げ出してくるか
もしれないじゃない?」
舞美:「そうだね。どこから入ってきたかも分からないんだから、どこから出て
くるかも分からないね」
栞菜:「じゃあスプレー発射と同時に、みんな『戦闘準備』ができていないとダ
メなんだね」
えりか:「私となっきーと愛理と舞ちゃんは、とりあえずココが一番安全なのかな?」
千聖:「でも頭にタオル巻いておいたほうがいいよ。『敵』は上にいるから」
舞美:「よし、それじゃあ、身支度も整えよう!」
「「「「「「オーーーッ!」」」」」」
ども、今回の更新はここまでです。
ベリの座間公演を見てきました。℃-uteの活動が本格化してきて、ベリは
どういう方向に進んでいくんだろうと考えたりもしていましたが、ある意味正常
進化の、そして充実したパフォーマンスでしたね。個々の個性はいくぶん分散
平滑化したような気もしますが、逆に全員攻撃で攻めてくる感じです。
まだまだベリは負けてないw。
さて、本編ですが、いよいよ戦況もハイライトが近づいてきました。汗と涙と
悲鳴の大乱戦をご期待ください(ウソです)。
>>499 実は自分もコイツは大の苦手でして、自分で書いてて「うわー、イヤだな
これぇ〜」とか思ってたり…w。
>>500 このキャラはちょっと難しいですね。「女帝」(ある意味策士w)が、飲酒を
見つかって謹慎というのは、ちょっと情けないかなw。
>>501,502
スタンス(スパン?)とか気にせずに、マイペースで行きましょうw。人に
よっていろいろな「書き方」がありますから。ただ、あんまり欲張りすぎると、
自分でも飽きてしまうかもしれないので、気をつけてくださいね。
>>508,509
実は栞菜って、自分的に感情移入がしづらくて、物語がなかなか浮かばな
かったんです。ただ「負けず嫌い」ってキーワードをたよりにしたら、うまく
ストーリーに絡んでくれました。
引き続きみなさんのツッコミをお待ちしております。。。
リロードしまくりで追っかけてました!!乙です!!
なっきーの工作教室笑いましたよww
今日も乙です
>えりか:「もうさあ、天井裏は明日、バ○サンすればいいじゃん?」
> 舞美:「でも、昨日まで全然いなかったのが、突然あんなに増えてんだよ?、
> おかしいと思わない?、今夜じゅうに退治したほうがいいと思う」
>えりか:「そんなこといったって、たくさんいるのを、全部叩き潰すつもり?」
> 舞美:「そりゃあ…」
この会話形式(〇〇:「 」って表示の仕方)見やすいし読みやすくていいなあ
そのうち真似しようかな。
七人全員が会話しだすと小説形式じゃ描写しきれないんですよね…
栞菜:「ただいまー、ねえそこでスーパーに行く途中のえりかちゃんにあっちゃった。
今日の御飯は特製カレーだってさ!」
早貴:「今日こそは失敗しないようにって言ってたよお、
……ってみんな何してるの?」
ある日の夕方、栞菜とナッキ―が帰宅すると、キッチンでは愛理と千聖とマイが
スプーンを睨んで真剣に何かをやっていた。
愛理:「えへへへへ、スプーン曲げ」
マイ:「あのねえ、誰が最初にスプーン曲げられるか競争してるの」
早貴:「……ちょっと、そんなことできる訳ないじゃん」
千聖:「でもさあ、でもさあ、うちの中に誰か超にょう力者がいるんだよ」
マイ:「超【能】力!!」
千聖:「そう、その超にょう力者がいるんだって、ほら、このスプーン見てよ。
これさっきキッチンで見つけたんだよ!!」
千聖はグニャリとほぼ真っ二つに折れ曲がったスプーンを取り出して見せた。
栞菜:「あ、それさあ、超能力じゃないよ。
舞美ちゃんが手で曲げたの、こーやって力入れて」
……カラン!
あ然とした表情の愛理、千聖、マイに、床に落ちたスプーンの音が響いた。
愛理:「……でもさ、あたし給食の時間にやったら曲がったことあったよ!?
あの時はビックリしちゃったよ!!」
カッパの存在を信じている、超常現象大好きの愛理が言った。
千聖:「アピってますアピってます」
愛理:「だって本当だもん!」
早貴:「もう、何でそんなに真剣なのよ」
マイ:「だってねえ、先にスプーン曲げられた人がこの先一週間
みんなのおやつ独り占めできるって決めたんだもん」
栞菜:「アタシもやるッ!!」
早貴:「……ちょっと、もう栞菜まで!」
『曲がれ曲がれ曲がれ……』
スプーンを持ち、思い思いの方法でスプーンに呪文をかけ始めた四人に
あきれてナッキ―が言った。
早貴:「だいいちそんなやり方じゃ曲がらないよ。スプーン曲げってのは
本来は手を使わずに、意識を曲げたい所に集中させて『曲がれ!!』って
念じるのよ、こうやって……」
千聖:「できる訳ないじゃんって言ってたくせに」
愛理:「そうだよ、何でそんなやり方とか知ってるのヨ」
早貴:「別にいいジャン!もう、こうなったらアタシがおやつ一週間分
横取りしてやるんだから」
こうして実は姉妹一の負けず嫌いナッキ―の闘志に火がつき、
おバカな五人の念がキッチンに響きわたった。
『曲がれ曲がれ曲がれ曲がれ曲がれ曲がれ……』
えり:「ただいまー、ごめんね遅くなって。すぐ御飯の用意するからねー」
帰宅したえりかの声に、手にしっかりとスプーンを握り、眉間に皺を寄せた真剣な表情の
五人が振り返った。
えり:「うっそ!あんた達そんなにアタシのカレーが待ちきれなかったの?
うっれしー!!」
おわり
さっそく作Bさんの真似して即席になんか書いてみました。…やってみたかったんですスイマセン。
しかもくだらないけネタだけど。
昔、他所で書いたオチのまんま焼き直しなんだけどいいよね、素人だし…。
ちゃんとした話もそのうち書きますので。プロット苦戦中なんス…。
530 :
松輝夫:2007/08/15(水) 04:00:26 ID:dk33FH6zO
>>523 乙です。
自分も、何日か前にヤツに遭遇しまして、五時間くらいバトルしてようやく撃破しました。ホントウザいですね。
とにかく落とすことしか考えてなかったので、窓も開けずに殺虫剤撒いたおかげでしばらく鼻がヒリヒリ……。
ベリ紺乙です。自分は翌日参戦予定です。
セットリスト見たんですけど、少し不満もありかも……個人的には、キャプテンとみやの「スプリンター!」を早くライブで聴いてみたいです。
自分は10年隊の開幕昼夜参戦してきました。懐かしい曲が多く、歴史を感じちゃいましたね。
夜はなっちとかおりんの誕生日を会場全体でお祝いしました。また、だからというわけではないでしょうが、現娘。たちがきてましたね。
531 :
ねぇ、名乗って:2007/08/15(水) 11:53:58 ID:/LZzC20h0
>グニャリとほぼ真っ二つに折れ曲がったスプーン
って変だよなあと自己ツッコミ
まるでリアル鬼ごっこの人みたいだorz
文章力の無い人間は書いたあと絶対読み返さないとあかんスね…
>『梅の花の咲く頃に』
の人はもう来ないのかなあ?作品好きなんでまた読みたいなあ
ども、帰ってくると、部屋が暑くて死にそうですw。
えーと、本日更新を予定していたテキストデータを、某所に置き忘れて
きてしまいまして、今晩はアップできなくなってしまいました。もしかして
楽しみにしていた方がいらっしゃいましたら、申し訳ありません。
で、といってはなんですが、本編終了後にアップしようと思っていた
ヨタ話を何本か、このレス以降に投稿しようかと思います。
まあヨタ話なんで、「ふーん、こんなバカなこと考えながら書いてんだ」
ぐらいに思いながら読んでいただければ幸いです。
>>524 ♪「でっ、きるっ、かなで、っきるっ、かな…ハテハテムム〜」
なんて脳内BGMをかけながら、なんてね。
>>529 さっそく採用していただき、光栄です。ってか仕事が早い!
さりげなくネタも拾っていただいちゃったりして、こうして広がって
いくのも、面白いですね。
>>530 CDでもそうですけど、「いちについて!」の部分はあっという間
なので、お見逃しなきようw。私はゆりちなまぁずのフリが面白
かったですね。
でわでわ、引き続きみなさんのツッコミをお待ちしております。
●ヨタ話 −−「ヤツら」について−−
実は本編の執筆にあたり、「ヤツら」の生態に関しては、テーマイメージソングの
歌詞と、筆者が蓄積していたパブリックイメージのみを拠り所としていたため、とこ
ろどころおかしな記述があることが判明しました。ちゃんと Wikipedia で調べてから
書けばよかったかな…とも後悔していますが、ストーリーの展開上、事実と多少違っ
ていても、まあしょうがないかなとも思ったり。だってねえ…w。
例えば本編では体長12cmの「大ボス」が登場しますが、この大きさは日本では、
ペットとして輸入されたものを除き、ありえないようです。最大でも5cmほどとの
こと。
また、
>>496 ではグルグルと部屋の中を飛び回っていますが、ヤツらの羽は構造的
に貧弱で、直線的に、しかも短距離しか飛べないとのことです。ジャンプして滑空す
るイメージでしょうか。まあたしかに、夜の街灯のまわりをブンブンとヤツらが飛び
回っていたりしたら、そっちのほうがイヤですもんね。
世界的には、「ヤツら」を害虫として見る国は、実は少ないという話は、結構意外
でしたね。
●ヨタ話 −−イメージソングについて−−
私のこれまでの投稿作品のおおかたがそうなんですが、テーマとなるイメージソン
グを決めて、それをバックボーンにしながらストーリーを作っていってます。
自画自賛で恐縮ですけど、「負けないで」のラストシーン
>>340 で、3人が手を
振っているところをカメラが俯瞰しているのをイメージしてみてください。ここで
「わっきゃない(Z)」のイントロがかぶさってくると、最高にカッコいいと思いません?
(思わない?、こりゃまた失礼しました)。
そんなふうに、曲のイメージとストーリーの一部分を重ねてみたり、歌詞の一部を
引用してシーンを作ってみたりと、イメージソングを使うと結構ラクに創作活動がで
きちゃいます。まあ私の場合、書いているあいだじゅう、延々と脳内にその曲が流れ
てたりするんですけどね。
また、ほとんどの℃-uteの楽曲は、℃-uteのメンバーや、ユニットとしての彼女た
ちからインスパイアされて作られたもの(だと信じてますw)なので、フィット率も
抜群です。その点はつんく♂に感謝ですね。
つんく♂の楽曲も1000曲を越えていますから、これらから適当にピックアップ
して、℃-uteメンバーに当てはめてみるのも、面白いかもしれません。
こんな感じですかね。これらは、あくまでも私が使っている手法を参考例として
紹介しただけであって、決して他の皆さんに「こうしろ」と強制するつもりのもの
ではありませんので、ご了承ください。
●ヨタ話 −−設定について−−
七姉妹の設定がゆるいというのは、これはもう自由に色がつけられるぶん、感謝!
感謝!というしかありません。で、私としては、このゆるい設定を、できるだけゆる
い、つまり自由度の高いまま維持して、作品を重ねていくことができれば…、と思い
つつ書いたりしています。
どういうことかというと、姉妹の家の具体的な住所を限定しないとか、家のトイレ
やリビングの位置関係を明らかにしないとか…ですね。つまんないことですけどw。
とりあえず今まで私が書いた中では、七姉妹の家が2階建てなのか、平屋なのかは
明示していません。姉妹それぞれの部屋が出てきますが、1人にひとつの部屋なのか、
それとも何人かでひとつの部屋を共有しているのかは明らかにしていません。
やはりストーリーの展開によっては、そういう設定の縛りが増えていくのは仕方の
ないことなので、それはそれで、他は最小限にしよう…とか考えながら書いていたり
します。
「みずいろの物語」では、どうしても「舞美お嬢様」を実現したかったので、どう
しようかいろいろと考えました。学芸会のシナリオだとか、舞美だけどっかにステイ
したときの話とか…、でも、舞美の性格ごと変える必要があったので、なっきーの小
説という手段を使ったのは、我ながら会心の一撃だったと思っていますw。
こんな感じですかね。これらは、あくまでも私が使っている手法を参考例として
紹介しただけであって、決して他の皆さんに「こうしろ」と強制するつもりのもの
ではありませんので、ご了承ください。
●ヨタ話 −−セリフについて−−
特に七姉妹小説では、必然的に「誰が、どうした」の説明が頻繁に出てきやすく
なり、読む側はそれだけで煩雑さを感じることがあるかもしれません。二人しか会話
していない場面なら、語り出しが誰かだけを説明して、あとは交互にしゃべらせること
で回避できますが、七姉妹は団らんなど、同時に3人以上が話す場面も多く、ツッコミ
もけっこう激しいので、やはり工夫が必要になります。
そのひとつが
>>520 でやったようなシナリオ形式の書き方ですが、全編にわたっ
てコレをやると、やはり「シナリオ的」になってしまうんですね。情景や心情の描写
がしづらいんです。なので私は場面を選び、アクセント的に使うようにしています。
セリフ中に「誰が」のヒントとなるキーワードを含める、というのも、ファン小説
ならではの手法かもしれません。以下は、過去に使ったこともあるセリフの一例です。
舞美:「とか言って」「いいんじゃない?」
えりか:「ですわ」「〜じゃん?」
早貴:「キュフフ」「ケロ」「ちょっと待って」
栞菜:「〜祭」「〜魂」「だすけど」
愛理:「ケッケッケッ」
千聖:「ジャジャーン」
舞:「ぱこーっ」「う゛〜っ」「あのね」「ねえねえ」
もうひとつ、これは私は結構意図的に使っていますが、誰が話しているのかを「あ
えて限定せず」、読者の判断に任せてしまう、という手法があります。いくぶん汎用
的な言葉遣いで、読者が感じ取る雰囲気から、しゃべらせたいキャラクターを自由に
あてがってもらう、というやり方は、ファン小説ならではの手法といえるかもしれません。
こんな感じですかね。これらは、あくまでも私が使っている手法を参考例として
紹介しただけであって、決して他の皆さんに「こうしろ」と強制するつもりのもの
ではありませんので、ご了承ください。
●ヨタ話 −−記号と空行について−−
小説は文字だけで情報を伝達する以上、記号の使い方も、工夫次第で効果的な情報
伝達手段となります。下記は私の使っている、あくまでも一例ですが…。
「ふつうのセリフ『セリフ中の固有名詞など』」
「…」 ←沈黙
「「「「同じセリフを複数人が発するとき」」」」
「(心の中のセリフ)」
「<電話の向こうのセリフ>」
♪「歌や歌詞」
<物音や効果音>
−−場面や展開の説明−−
また、(笑)や「w」などの笑い表現、そして顔文字(^^;なども、表現の補助として
使えます。私はまだ使ってませんけど、一行AAなども、2chならではの表現手段と
して有効ですよね。
一方、文字や記号とは反対に空白や空行も、場面の転換や、時間の経過を表現する
のに重要なアイテムとなります。2chでは1回の投稿に字数、行数の制限があります
から、あまり一度に多くを使うのは気が引けてしまいますけどね。
あと、情景描写や、一連のセリフの固まりで、行数が多くなってしまった場合に、
見やすさ(読みやすさ)を確保するために入れるというのも、結構効果的だと思いま
す。私はだいたい10行くらい連続して文字が埋まっていると、やはり空行を入れた
くなりますね。
こんな感じですかね。これらは、あくまでも私が使っている手法を参考例として
紹介しただけであって、決して他の皆さんに「こうしろ」と強制するつもりのもの
ではありませんので、ご了承ください。
●ヨタ話 −−書式について−−
自分を含めて、素人投稿作家の方たちは、「執筆者」であると同時に「編集者」で
もあります。投稿した文章のそのままの書式が、ほとんどの読者の「見る書式」とな
るわけですから(まれにテキストデータだけ抽出して自分好みの書式に整形してから
読むっていうツワモノもいるかもしれませんけどね)。
ですからやはり、文章の内容と同時に、書式にも気を配ることは重要だと思います。
見方を変えれば、そういう部分でも個性を発揮できる、と考えることもできますね。
私自身はもちろん、編集やら印刷やらの勉強などしたこともありませんから、これ
まで見たり読んだりしてきた経験を基にして、自分用の書式やスタイルを使っていま
す。一応、参考例として紹介しますね。
段落の最初の文字は空白1個分字下げしています。TTY時代の名残というか、
1行76文字(全角だと38文字)くらいで改行を入れています。禁則は自前で
やっているので、時々忘れてたり変になったり…。2chの表示はプロポーショナルフォ
ントが標準ですから、字数をそろえてもあんまり見やすくはならないんですけどね。
「セリフは空白1個分字下げして、カッコを置いています。
複数行にわたるセリフは空白2個分字下げしています。
あと、セリフと本文のあいだには空行を入れてますね」
「複数のセリフが連続する場合は、基本的に空行を入れていません。
行数が多くなったり、意味が転換する場合には空行を入れています」
こんな感じですかね。これらは、あくまでも私が使っている手法を参考例として
紹介しただけであって、決して他の皆さんに「こうしろ」と強制するつもりのもの
ではありませんので、ご了承ください。
●ヨタ話 −−投稿について−−
このスレに初めて作品を投稿したとき「さるさん規制」というモノに引っかかって
しまい。思うように投稿できなくて難儀しました。これはx分以内にy回連続して投
稿すると、次の投稿は一定時間が経過するまで規制されてしまう…というものです
(板ごとに設定が異なり、羊ではx=60、y=10のようですが、自信はありません)。
羊にはさらに、連投規制なんてのもありますんで、これと複合でひっかかると、も
うその日は寝ろって宣告されたのと同じ状態になってしまいますw。
で、これらを回避するため、何度か実験をしたんですが、私の場合は、今以下のよ
うにしています。
1)一度投稿したら、次の投稿まで5分以上あける
2)10連投以上する場合は、途中で毎時0分を挟むようにする
必ずしもこれが最適解ではないとは思いますが、いまのところこれで回避できてい
ますね。
こんな感じですかね。これらは、あくまでも私が使っている手法を参考例として
紹介しただけであって、決して他の皆さんに「こうしろ」と強制するつもりのもの
ではありませんので、ご了承ください。
以上で、「ヨタ話」を終わります。ご静聴ありがとうございました。
540 :
名探偵℃-uteから〜:2007/08/16(木) 00:30:19 ID:dYrkIUaq0
ヨタ話さんへ〜ありやと〜ございやした〜!!
んまぁ〜自分は十連投出来ないので・・・
基本的に気の向くまま描いてるので〜
スタンス開いても大丈夫なように題名に名探偵℃-uteと付けてます
これからも長い目でお願いします。
541 :
作家1号:2007/08/16(木) 02:54:48 ID:h88NHIyC0
>七姉妹の設定がゆるいというのは、これはもう自由に色がつけられるぶん、感謝!
いや「℃-uteって姉妹みたいだな」ってのは多くの人の共通認識だと思ってるので、
自分ひとりの創作物みたいに勝手に設定決められないなってのがあったんス。
それともう一つ理由があって、とにかくご新規さんを大事にしよう、と。
スレタイに惹かれてスレ開いてみる→何か小説みたいな事をやってる→とりあえず手近に表示されてる話をひとつ読んでみる→
割と面白いじゃん!?→スレ住人増加!!って展開が理想だなと思って。
そのためには「最初から読まないと意味わかんない」「膨大な設定把握してないと訳わかんない」じゃなく、
「なんか℃-uteの七人が姉妹役みたい」だけ頭に入ってれば楽しめる読みきり感覚のシリーズがいいなと。
だったら基本縛りは「この七人が姉妹だったら」のみ、
必要によっては設定追加も自由・ただし他の書き手がその設定に従うか従わないかも自由、
それぐらい自由にして、常に書き手も読み手もご新規さんウェルカム!!にしようと思いまして。
幸い現在の書き手さん達はそれを理解されて書かれてる方ばかりなので嬉しいです。
あとはスレ雰囲気が閉鎖的にならないように、誰かがネタ振りゃ名無しで脱線・雑談してたいス。
自分も作品以外の時は名無しでヤイヤイ言ってますので。
ではでは、書き手が何代代わろうとも、以降も良作が続きますように。
●AM03:00
私たちはおふとんを片付け、ソファをリビングのまんなかに移動し、そこにえりか
ちゃん、私、愛理と舞ちゃんが座った。
さっき作った「スプレー噴射装置」を栞菜が持ち、スリッパと「回収用」のトイ
レットペーパーを持った舞美ちゃんと千聖がいる。そして、それ以外のメンバーを
含めた全員がタオルを頭に巻き、マスクを着けているという格好で、「夜中に大掃除」
みたいな、かなり異様な光景。
「みんな、準備はいい?」
「「「「「「うっす!」」」」」」
「私と栞菜で、天井裏にスプレーをまく。えりか、なっきー、愛理、舞ちゃんは
ここから動かないこと。千聖はここで待機して、『敵』がこないか見張ってて」
「アイアイサー!」
「スプレーをまいたあとは、出てきたヤツは私と栞菜で退治するからね」
「まかせて!」
「多分、家じゅうが大騒ぎになるかもしれないけど、みんなできるだけ落ち着いて
いてね。えりたちも、スリッパ持っていたほうがいいかもしんない」
「そうだね。自分の身は、自分で守らなきゃ」
「えりかちゃんかっこいい!」
「よし、ここはえりかちゃんに任せた!」
「あんたらもちゃんと持ちなさい」
「だってぇ〜、怖いんだも〜ん」
「スリッパ怖い〜」
「怖いのはスリッパじゃないでしょ!」
千聖は「やれやれ」のポーズをして、ソファの上(えりかちゃんと私と愛理と舞
ちゃん)でのやりとりを見守っていた。舞美ちゃんと栞菜も目を見合わせて、クスッ
と笑った。
「よし、栞菜、いくよ!」
「はい!」
「いってらっしゃーい、気をつけてね〜」
舞美ちゃんと栞菜は、天井裏の入口のフタの下にイスをふたつ並べ、それぞれにの
り、立ち上がった。
「いい?、私がフタを開けたらすぐに『それ』を置いてね」
「うん」
「いくよ?」
舞美ちゃんがフタを開けると、さっきと同じように「卵」と「フン」がパラパラと
落ちてきた。その量も、さっきより増えているのが分かる。栞菜はすばやく「スプレ
ー噴射装置」を天井裏に置き、ひもをたぐりよせた。
「できた!」
「よし!」
舞美ちゃんはすぐにフタを閉めた。フタからは「噴射スイッチ」のひもだけがぶら
下がっている。舞美ちゃんはイスから飛び降り、ハエタタキとスリッパを両手に持っ
て、栞菜のほうに向き直った。
「いい?、合図をしたら、スプレーの音がしなくなるまでずっと、引っぱり続ける
んだよ。もしも『ヤツら』が出てきたら、私が仕留めるから」
「うん!」
舞美ちゃんは、リビングにいるみんなにも聞こえるような大きな声で呼びかける。
「みんなー!、いくよー!」
「「「「「はーーい!」」」」」
「3・2・1・発射!!」
<<<プシューーッ!>>>
<バサバサバサバサッ!!!>
栞菜がひもを引っぱると、中でスプレーの噴射する音…、と同時に「ヤツら」が暴
れまわり、もがいている音がする。なにか大きな鳥が羽根をひろげて暴れているかの
ようだ。栞菜は、その「音」の大きさにも驚いたけど、ひもを引っぱる力を緩めるこ
とはしなかった。
天井と壁のあいだにできているわずかな隙間から、スプレーの薬剤が漏れ出してい
る。そしてそこから「ザコクラスの敵」が1匹、這い出してきた。
「舞美ちゃん!、うしろ!、上!!」
じっと栞菜のほうを見ていた舞美ちゃんは、振り向くと「敵」の姿を確認した。
「敵」は舞美ちゃんめがけてまっすぐ飛んできた!
「きたっ!!」
<スパーン!、バシッ!>
舞美ちゃんはすかさずハエタタキで「敵」を叩き落し、そしてスリッパでとどめを
さした。すると今度は、別の場所から、「ザコクラス」が舞美ちゃんめがけて廊下を
突進してきた。
「もう一匹!」
<バシッ>
スリッパ1発で仕留められた「こいつ」もまた、舞美ちゃんの敵ではなかった。
「舞美ちゃん!、こっち!!」
<パシンッ!>
「OK!」
<バシッ!>
栞菜はひもを引っぱる手を左手に持ち替え、自分に向かって飛んできた「ボスクラ
スの敵」をスリッパで打ち落とした。すかさず舞美ちゃんが、床に落ちた「そいつ」
にスリッパでとどめをさした。廊下の床の上には、あっというまに3匹の死骸が転
がった。
「こいつら!、こっちに向かってくる!!」
「なんで?!、私たちが分かるの?!」
「そんなばかな…」
すると、ひっぱり続けていた「噴射装置」のひもが、突然切れた。
「あっ!」
「あぶないっ!」
<ガタンッ!、ドスンッ!>
栞菜はバランスを崩してイスから落ち、床に尻餅をついた。
「いった〜い!」
「栞菜!、大丈夫」
「大丈夫。舞美ちゃん、これ見て…」
「うそ…」
栞菜は切れたひもの先を舞美ちゃんに見えるように持ち上げた。その先は、なにか
にかじられたようにちぎれていた。
「あいつらが切ったの?」
「信じられない」
「よし!、ここはもういいから、リビングに戻ろう」
二人は床に転がっている死骸の片付けを後回しにして、いったんリビングに戻った。
「千聖、どう?」
「大丈夫みたい。まだこっちには現れてない」
「このまま天井裏で全滅してくれればいいんだけど…」
●AM03:30
ヤツらの「暴れまわる音」は天井を伝わって、ほんの少しだけど、リビングにいる
みんなの耳にも聞こえてきていた。みんなはその音が早くおさまることを、必死に
なって祈っていた。
舞美ちゃん、栞菜、千聖はしっかりと目を見開き、リビングへの「敵」の侵入がな
いかどうかを見張っている。「ヤツら」にとって天井裏からの抜け道があれば、きっ
とこのリビングから見える場所に降りてくるはずだ。
そしてやはり、逃げ出した1匹と思われる「敵」が、トイレに向かう廊下を走り抜
けていくのが見えた。
「やっぱ出てきたか…」
「とにかく、確実に潰していこう」
「私がいってくる」
栞菜は「そいつ」を退治するために、トイレのほうに向かっていった。「そいつ」
は、どうやらスプレーを浴びて弱っているらしく、動きは鈍かった。栞菜はクールな
視線で見下ろし、丸めた新聞紙を構えた。
「あばよ…」
振り下ろされた「鉄槌」は確実にとどめをさし、その死骸はトイレットペーパーで
包まれてトイレに流された。栞菜がリビングに戻ろうと振り返ると、向こうになにか
白い影が見えたような気がした。
「えっ?!、なに?」
「(なんなの?…)」
栞菜はおそるおそる、影の消えた場所に近づいていった。誰かがいるような気配は
しない。もしかしたら、何かの見間違いだったのかもしれない。廊下の角に立って見
回してみたけど、やっぱり誰もいなかった。
「栞菜!、こっち来て!」
舞美ちゃんが叫んでいる。キッチンからだ。栞菜は急いで向かった。
「これ見て」
「うわっ!、こっちに逃げ出してきたんだ!」
「換気扇からみたい…。さすがの私も、これは見てらんないな…」
どうやら天井裏から壁の隙間をつたわって、換気扇のところに「ヤツら」の道が通
じているようだ。列をなすようにして、ぞろぞろとキッチンのシンクに降りてくる。
しかしみなスプレーの薬剤を浴びて弱っているらしく、その動きはノロノロとしてい
る。シンクはまるで「ホイホイハウス」の状態で、中にはすでに十数匹の、うごめく
「固まり」ができている。
舞美ちゃんは戸棚をあけて、奥のほうにしまってあったものを取り出した。
「あったあった、これを使いますか…」
「ええーっ?!」
「どうせもう使わないモノだし、ちょうどいいサイズじゃん?」
舞美ちゃんが手に持っているのは、昔よく使っていた「虫よけネット」。テーブル
のうえに置いてある食べ物に虫が飛んでこないように、上からかぶせる傘のようなも
ので、ちょうどシンクの深み全体を覆うくらいの大きさなのだ。
「こいつらがみんなここに降りてきたら、これをかぶせてもう一回スプレーしよう。
栞菜、ガムテープ持って来てくれる?」
「はいよ」
舞美ちゃんはシンクに次々と入ってくる「ヤツら」をしばらく眺めていた。やがて
逃げ出してきた「黒い列」が途切れると、シンクの中には数十匹の「ヤツら」がガサ
ガサとうごめいている状態になった。
「よし、栞菜、ガムテープ貼って」
「はいよ、それにしても、やっぱり気持ち悪いね」
「しょうがない。これで全部だったらいいんだけど…」
舞美ちゃんがシンクにネットをかぶせて、栞菜がそれをガムテープで固定した。ス
キマから逃げ出さないようにするためだ。
「準備オッケー!」
「ようし、いっくぞぉ〜!」
すると突然、キッチンの照明がチカチカと点滅しだした。
「なに?」
「なに?、どうしたの?!」
<ガシャアン!>
「「きゃああーーーっ!!!!」」
「舞美ちゃん!、栞菜!、大丈夫?!」
千聖がリビングから入ってくると、キッチンは真っ暗で、舞美と栞菜の悲鳴だけが
聞こえる。千聖は振り返ってえりかちゃんに声をかけた。
「えりかちゃん!、懐中電灯!」
「はいこれ!、どうしたの?!」
「わかんない!、舞美ちゃん、栞菜!、大丈夫?!」
「大丈夫!、電灯つけて!」
千聖はえりかちゃんから懐中電灯を受け取り、それでシンクの横にしゃがみこんで
いる舞美ちゃんと栞菜を発見した。
なんとキッチンの照明がテーブルの上に落下している。千聖は舞美ちゃんのそばに
かけよった。
「どうしたの?」
「わかんない。でもね、すごいイヤな予感。ちょっと電灯貸して」
「はい」
「二人とも、このまましゃがんだままでリビングに行って」
「どうして?」
「舞美ちゃんは?」
「いいから早く、栞菜、新聞紙貸してね」
「はい」
栞菜は丸めた新聞紙を舞美ちゃんに渡すと、千聖と二人でしゃがんだ姿勢のまま、
キッチンを出た。それを確認した舞美ちゃんは、新聞紙を右手にしっかりと持ち、左
手の懐中電灯でゆっくりと、照明のぶら下がっていたあたりの天井を照らした。
「大ボスの登場ね…」
ども、今回の更新はここまでです。
明日からベリ中野参戦と、その後のオフに参加などするため、
多分更新できないかな…と思います。もしかしたら土曜日も
ムリっぽいので、日曜日の夜になるかも…。ご容赦ください。
>>540 でわ、ながい目で見てますよ〜♪
>>541 いい意気込みですね。ナイスです。
さて、本編もいよいよクライマックスが見えてきました。よく
考えたらすでに「負けないで」を超える量になってしまいました。
よくもまあこんなくだらない内容で、ここまで引っぱってしまって
申し訳ないです。あと少しですので、ご辛抱ください。
でわでわ、
引き続きみなさんのツッコミをお待ちしております。
扇風機でバラバラになるとこ声出して笑ったw
553 :
タイトル未定(1):2007/08/20(月) 01:41:00 ID:RQqPcdqi0
春・・・新しい季節の訪れを告げる時期
満開の桜はまるで私達の新学期を祝福するように咲き誇る
「なっきぃ、急がないと遅刻するよ」
栞菜が私の袖を引っ張りながら急かす
「もぉ、栞菜そんなに急がなくても大丈夫だよ」
通学路に咲く桜に感慨を巡らしながら私は答えた
(栞菜ももう中学生かぁ・・・)
一つ年下だけど自分より幾分大人びた少女を見つめる
「そうだ、栞菜どっちが先に彼氏が出来るか競争しよっか?」
冗談半分に出た言葉
「負けないかんな」
そんな言葉にむきになって答える栞菜が可愛かった
校門前につく頃には始業時刻の数分前になっていた
「ほら、なっきぃ、ギリギリだったじゃない」
栞菜は駆け足で校門を駆け抜けた
「そんな、急がなくても」
口をついて出かかっかた言葉を飲み込む
通学用のバッグにいつもつけているストラップがなかった
舞美ちゃんから貰った少し大きめのストラップ。
「どっかで落としたのかなぁ、舞美ちゃんに何て謝ろう」
キーンコンカーンコン
始業時刻を告げるベルにうながされ私は教室に駆け込んだ
554 :
タイトル未定(2):2007/08/20(月) 01:49:57 ID:RQqPcdqi0
その日の授業にはまったく身が入らなかった
と言っても歴史以外の五教科はもともと苦手だけど・・・
「ハイ。本日はここまで。みんな気を付けて帰るように」
担任の先生の声をかわきりに教室に一気に喧騒が訪れた
私はストラップの事が気になり急いで教室を飛び出した
ドンッ
「痛いっ」
慌て過ぎたせいか何かにぶつかりしりもちをつく
「なかさきちゃん大丈夫?」
幼馴染みの熊井君だった
熊井君だけが私の事をなかさきちゃんと呼ぶ
泣き虫だった私をいつも慰めてくれた「泣かないで早貴ちゃん」と言う言葉
何百回と繰り返された言葉はいつしか短くなり「今日からなかさきちゃんって呼ぶね。
早貴ちゃんが泣かないように」そういって熊井君は無邪気に笑っていた
「もぅ、恥ずかしいケロ」
照れながらもなんか嬉しかった
「なかさきちゃん?」
私がそんな回想をしている間、反応がない事を心配したのか熊井君が
体を屈め私の顔を覗きこんだ
はっと気が付いた時にはすぐ目の前に熊井君の顔があった
「だ・大丈夫ケロ」
すぐに目をそらし立ち上がる
「あんなに急いでたら危ないよ」
熊井君が諭すように語りかける
「ごめんね、大事なストラップ無くしちゃって今から探そうと・・・」
私の言葉も終わらないうちに熊井君はポケットから何かを取り出した
「これの事?校門前に落ちてたよ」
「それだー、ありがとう」
ストラップが見つかった嬉しさに今にも踊りだしたい気分だった
555 :
タイトル未定(3):2007/08/20(月) 01:52:25 ID:RQqPcdqi0
「なっきぃ、ここに居たんだ。一緒に帰ろうよ」
栞菜が勢いよく駆け込んでくる
「熊井君も居たんだ、どう、熊井君も一緒に帰る?」
栞菜は熊井君の姿を認めるとそう問いかけた
「ごめん。部活があるし今日は無理だよ」
彼はその身長を活かしバスケ部で活躍していた。噂では取り巻きの女の子達もいるらしい
「いいじゃん、今日ぐらいさぼっても。ねぇ、なっきぃ」
そう言って私に笑いかける栞菜
「もう、熊井君困らせちゃだめだよ。ほら、帰ろうよ、栞菜」
栞菜の手を引いて、廊下を歩く
(バイバイ言うの忘れちゃったな)
そう思い振り返ると苦笑いしながら手を振る熊井君がいた
556 :
タイトル未定(4):2007/08/20(月) 01:54:26 ID:RQqPcdqi0
帰り道、妙にはしゃいだ栞菜がしゃべり続ける
「熊井君っていいよね。かっこいいし、やさしいし背も高い
完璧じゃん。うん、完璧」
自分の言葉を何度も頷きながら自ら肯定する栞菜
「そうかなぁ、別に普通だよ」
「なっきぃは仲良過ぎて分らないんだよ。完璧だよ、理想」
何が嬉しいのか嬉々として話し続ける栞菜にあいまいな相槌を打ちながら
家路を急ぐ
(熊井君か、確かに良い人だけど・・・)
自分の本心を掴めないままに、私の思考はそこで強制的にストップした
「なっきぃ、栞菜手伝ってよー」
遠くから私達を呼ぶ声
「あー、えりかちゃんだよ。」
そう言って、栞菜の指差す先には両手いっぱいにスーパーの袋を抱えた
えりかちゃんが居た
「キュフフ、えりかちゃん、何買ったらそんな量になるの」
幾ら七人分とはいえ想像を絶するその量にもはや笑うしかなかった
「だってー、冷凍枝豆がすごい安かったんだよ。買わなきゃ損じゃん」
「物には限度があるでしょ。どうするのその大量の枝豆」
「どうするって、食べるよ普通に」
「普通に食べれる量じゃないでしょ」
頭が痛い。えりかちゃんは中身はほんと子供でたまに疲れる
「いいじゃん、とにかく三人で手分けして運ぼう」
栞菜の言葉に促されそれぞれ荷物を抱える
(あーあ、これじゃ当分食事のメインは枝豆だな)
そんな言葉が喉まででかかった
「やっぱ枝豆だね、枝豆さいこー」
「そうだかんなー」
「おつかんなー」
えりかちゃんと栞菜はよく分らないテンションで何時までもはしゃいでいた
557 :
タイトル未定(5):2007/08/20(月) 02:00:21 ID:RQqPcdqi0
ジリリリリ……
矢島家で最も早起きな目覚ましが鳴り響く
「う〜ん」
私は枕元においてある眼鏡に手を伸ばす
ジリリリリ…尚も自己の勤めを果たそうとする
目覚ましに本日の勤務終了を知らせる
「ごくろうさま」
私は目覚ましに優しく手を置いた
「さあ、みんなの朝食作らなきゃ」
まだ眠気の残る頭に気合いを入れる
矢島家では調理関係は全て私の担当だった
舞美ちゃんは大ざっぱ過ぎてダメダメだし
えりかちゃんに至っては、包丁で間違って指を切ったぐらいで
「舞美、死んじゃうよ、舞美」って泣きながら大騒ぎ
栞菜は興味無い事にはまったく無関心だし
かろうじて愛理が戦力になる程度
下の2人はまぁねぇ…
かくして矢島家の台所は私が預かる事に
満場一致で決定したのである
トントントントントン
包丁は今日も軽快なリズムで野菜を刻んで行く
558 :
ねぇ、名乗って:2007/08/20(月) 03:13:47 ID:BjckUdhA0
久々に書き込ませていただきます
ハロプロやねん公開録音の
ほんとに好きなの、だから許して
このセリフに触発され書いてみました
内容とは関係ないですが
お話はもうちょっと続きます
今日は遅いのでこの辺で
>>558 乙です!!続きも期待してます!!
できればサブタイトルも…
いやタイトル含めて世界観に浸りたいなあと思って
熊井ちゃんは学ラン似合いそうだね
>えりかちゃんに至っては、包丁で間違って指を切ったぐらいで
>「舞美、死んじゃうよ、舞美」って泣きながら大騒ぎ
面白いスw
>>1の設定書いた人は結局このスレに来なかったみたいだし
もし次スレにいくようなら1>>の基本キャラ設定表みんなで考えて直していきましょうよ。
自分の中ではえりかも高校生(舞美と同じ高校)だし、ぜひ『舞美好き』ってのを付け加えたいw
漏れのイメージでは
長女 舞美 高二 母親代わりを自認し頼れる力持ちだがドジ。陸上部。
次女 えりか 高一 何事もユーモアで切り抜ける現代っ子だがナイーブな一面も。
三女 早貴 中三 優等生でしっかり者。フォローにまわる損な性格。趣味は小説を書くこと。
四女 栞菜 中二 ちゃっかりした性格でイケメン・恋バナに目がない。感受性が強い。
五女 愛理 中一 女の子らしく優しい。あがり症で大人しいが、マイクを持つと性格が豹変。
六女 千聖 小六 男勝りで正義感が強く、やんちゃ。ときにトラブルメーカーにも。
七女 舞 小五 自由奔放でマスコット的存在。ツッコミが鋭い。趣味はサングラス集め。
歌・音楽は姉妹を結びつけるキーワード(親の影響か?)。
家事は…得意:えりか、早貴、栞菜/普通:愛理、舞/苦手:舞美、千聖。
運動は…得意:舞美、千聖/普通:えりか、栞菜、舞/苦手:早貴、愛理。
勉強は…得意:早貴、愛理/普通:栞菜、舞/苦手:舞美、えりか、千聖。
流行は…敏感:えりか、栞菜/普通:早貴、愛理、舞/疎い:舞美、千聖。
偏食は…ない:舞美、早貴/少し:千聖/多い:えりか、栞菜、愛理、舞。
…一例ね。たぶん要修正。
562 :
タイトル未定改め季節がめぐるように(6):2007/08/21(火) 02:27:34 ID:xJzSUpJo0
「おはよー、なっきぃ」
普段早起きなんてしない声の主に幾分驚き
「おはよー、栞菜。今日は早いね。どうしたの」
そう問いかける
「何言ってんの。今日はバスケ部の春季大会の日だよ。熊井君の
応援だよ。お・う・え・ん」
「そう言えば、今日だったね。」
「なっきぃ行かないの?」
「うーん、辞めとく。栞菜、私の分も応援しといて」
「ふーん。そうなんだー」
栞菜との会話もそこそこに私は朝食の準備を進めていく
563 :
季節がめぐるように・・・(7):2007/08/21(火) 02:31:48 ID:xJzSUpJo0
その日栞菜はとても悲しそうな顔で帰ってきた
「熊井君達負けちゃったよ。みんなあんなに頑張ってたのに」
今にもこぼれそうな涙を堪えながら栞菜が言う
「しょうがないよ。相手だって頑張ってるんだから」
えりかちゃんがやさしく栞菜を諭す
「なっきぃ、熊井君泣いてたんだよ。すごい悔しそうな顔して」
その言葉にはっとする私
いつも私を慰めてくれた熊井君。今度は私が、そんな気持ちが込み上げる
「泣いてたんだ・・・。」
だれに聞かせるでもなくそんな言葉がこぼれ出た
「ただいまー、って何か空気重ーぃ」
「ほら、みんなどうした。おなか空いてるの?とか言って」
「どーして、こんなに空気重いの。ねぇどーして」
「舞美ちゃん、愛理浮いてるよ」
「よかった、みんなお帰り。遅かったね」
場の空気に耐えられず、オロオロとおやつの枝豆をぱくついていたえりかちゃんが
ここぞとばかりに口を開く
「ほんと楽しかったよ、舞なんてさー」
舞美ちゃんの言葉をかわきりに矢島家にいつもの明るさが舞戻る
姉妹の賑やかな笑い声が部屋中にこだました
564 :
季節がめぐるように・・・(8):2007/08/21(火) 02:34:24 ID:xJzSUpJo0
その日栞菜はとても悲しそうな顔で帰ってきた
「熊井君達負けちゃったよ。みんなあんなに頑張ってたのに」
今にもこぼれそうな涙を堪えながら栞菜が言う
「しょうがないよ。相手だって頑張ってるんだから」
えりかちゃんがやさしく栞菜を諭す
「なっきぃ、熊井君泣いてたんだよ。すごい悔しそうな顔して」
その言葉にはっとする私
いつも私を慰めてくれた熊井君。今度は私が、そんな気持ちが込み上げる
「泣いてたんだ・・・。」
だれに聞かせるでもなくそんな言葉がこぼれ出た
「ただいまー、って何か空気重ーぃ」
「ほら、みんなどうした。おなか空いてるの?とか言って」
「どーして、こんなに空気重いの。ねぇどーして」
「舞美ちゃん、愛理浮いてるよ」
「よかった、みんなお帰り。遅かったね」
場の空気に耐えられず、オロオロとおやつの枝豆をぱくついていたえりかちゃんが
ここぞとばかりに口を開く
「ほんと楽しかったよ、舞なんてさー」
舞美ちゃんの言葉をかわきりに矢島家にいつもの明るさが舞戻る
姉妹の賑やかな笑い声が部屋中にこだました
565 :
めぐる季節のように・・・(8):2007/08/21(火) 02:37:36 ID:xJzSUpJo0
それから何日か過ぎた放課後の帰り道
栞菜は何時もと変わらず普通に接してくる
私はなぜか気後れしてしまい、相槌を打つのみだった
「なっきぃ、聞いてる。それで今日の宿題がね」
「宿題。あっ、プリント教室に忘れちゃった」
私は学校に戻るため来た道をかけ戻る
「栞菜、先に帰ってて」
教室の扉を開く。窓から指す夕日で教室は赤く染まっていた
自分の机に向かい素早くプリントを取り出す
「なかさきちゃん」
不意にかけられた声に慌てて振り返る
「熊井君どうしたの」
放課後の教室に二人だけ。その状況に夕日が照らす以上に
頬が赤くなっているのを感じる
「さっき、教室に入っていくのが見えて・・・。ちょうどなかさきちゃんに
話したい事もあったし」
「話したい事?」
「うん。僕ほんとはね、ずっとなかさきちゃんの事」
ガタッ
扉の方から何かが落ちる音が聞こえる
「栞菜、もしかして聞いてた」
入り口に立ちつくす栞菜を認め慌ててかけ寄る
「何にも聞いてないよ。聞いてなんか…」
そう言って走り去る栞菜
「なかさきちゃん・・・」
「ごめん、今のは聞かなかったことにする。今の私じゃ何も応えられないよ」
そう、後悔はない。私は走り去った栞菜の後を追いかけた
566 :
めぐる季節のように・・・(9):2007/08/21(火) 02:40:54 ID:xJzSUpJo0
私は通学路を駆け抜ける
栞菜の姿を見落とさないよう周囲に視線を巡らせながら
呼吸が苦しい
でもそれ以上に胸が苦しい
(熊井君の事?栞菜の事?)
そんな疑問が去来する
ポツポツ
さっきまで雲一つなかった空から小さな滴が落ちてきた
私にはそれがまるで栞菜の涙のようで辛かった
「栞菜、大丈夫かな」
えりかちゃんが心配そうに玄関を見つめる
「大丈夫だよ、えり。もう少ししたらケロっとして帰ってくるよ」
舞美ちゃんもそう言いながら落ち着きなく窓と玄関を見渡す
降りだした雨はまるで春の終わりを告げるように何時までも降り続いける
私は一人探し続けた。いつ栞菜が帰ってきてもいいように皆を家において
もうどのくらい歩いただろう。心当たりの場所をすべて探し終え私はその場に座り込む
服は十分すぎるほど雨を吸い込み体が重い
「栞菜、どこに居るの」
少しこぼれた涙を雨が洗い流す
ふと目をやった時計の針はちょうど新しい1日の訪れを告げようとしていた
567 :
名無し募集中。。。:2007/08/21(火) 02:57:11 ID:aJQiq4ZDO
途中貼り付けるやつ間違えました
すみません
>>559 一応タイトルつけました
かなり長い間考えたんですがしっくり来るタイトルが
思い浮かびませんでしたなので安易なタイトルに走りました
>>560 同級生って設定は私も賛成したいです
母親が亡くなった時に色々あって一年休学とか
なんとか出来る気が
568 :
ねぇ、名乗って:2007/08/21(火) 03:47:53 ID:urYkZQROO
ここで四十路なかばのオサーンがなにウロウロしてやがる?
569 :
ねぇ、名乗って:2007/08/21(火) 17:25:56 ID:eTIrv/W8O
テスト
>>561 いいですね。
個人的に舞美の「陸上部」だけナシかな!?と
いや「両親不在の七人姉妹」って家庭で親代わりを努めてると「部活動などやってる暇が無い」と思うのと、
陸上部のエースだし走るのも大好きだったのに、姉妹の世話のために部活動を辞めざるをえなかった舞美に、
本人は「気にしないで」って言ってるが「自分たちのせいだ」と思った姉妹達は…みたいなネタのストックがあるの。
あと同じ人物の捉え方でも自分のイメージと同じだったり違ったりが面白いです。
>歌・音楽は姉妹を結びつけるキーワード(親の影響か?)。
これ自分とイメージ共通です。
「著名な音楽家だったパパの遺産と印税収入で生活できてる」が自分のイメージでした。
で、もう一つネタ振り
この七人が一緒に住んでると絶対!!犬を飼ってると思うんですよ。
で、何か℃-uteに縁がある名前がないかなあ、と。
…ってか、誰かが飼ってる犬の名前流用しようと思っても犬多すぎッス!
>>567 乙です
栞菜の家出、先にやられた!!って感じで悔しかったりします…
とりあえず続き期待
>母親が亡くなった時に色々あって一年休学とか
>なんとか出来る気が
この辺は、テンプレの設定にこだわらなくても実際にお話を作る人の自由でいいと思う。
実際、「お父さんが刑事」っていう設定の「名探偵℃-ute」も同居してる訳だし、最低限の共通設定で
作者によって違う世界観の話を書いてるって思えばいいわけですし。
おお、気付いてみると500レス越えてる。
芸スポからここまで発展しているとは!
すんません、ブランク空き過ぎました。
最初の方から拝読させてもらいます。
書き手の皆さんに感謝。
573 :
名探偵℃-uteより・・・:2007/08/22(水) 00:46:15 ID:j09m27CR0
いや〜皆さんレベル高過ぎ・・・
オイラノ稚拙な文章より読みやすいので焦り気味・・・
こうなればアクション&Berryzとのコラボで押し切ります、
●AM04:00
天井に貼り付いている大きな黒いかたまり。「大ボス」は、さっき舞ちゃんが天
井裏で見たときよりも、さらにひとまわり大きくなっているように見えた。
「ここまで大きいと『お化け』だね…」
舞美ちゃんは自分を落ち着かせるようにしてひとりごとを言った。言葉がわかるの
か「大ボス」は長い触角を揺らしながら、天井に貼り付いたままゆっくりと舞美ちゃ
んのほうに向き直った。
「『歯が強い』って、アピッてるんでしょ?」
キッチンの照明がテーブルに落ちたのは、おそらくコイツの仕業だろう。照明をつ
るしているコードを食いちぎったのだ。
「(どうしようかな…)」
シンクにはネットをかぶせられた状態で、まだたくさんの「ヤツら」がうごめいて
いる。あとは殺虫スプレーをかけて始末するだけだけど…、多分この「大ボス」は、
それを阻止するために出てきたのだろう。だとすれば、こちらが次になにか動こうと
すれば、なんらかの攻撃を仕掛けてくるかもしれない。でも、ヤツらの「攻撃」って、
どんなものなのか…。
夜明けが近づいているのか、キッチンの窓と、その外の景色とは、真っ黒から、
深い青へと、色を変えようとしていた。
舞美ちゃんは左手の懐中電灯で天井の「敵」を照らし、右手に丸めた新聞紙を持った
まま、ジリジリと、リビングへ抜けるドアに向かって移動した。今、考えられる「ヤ
ツの攻撃」は体当たりくらいしかない。ただし「ヤツ」の大きさと、飛んでくるスピ
ードを考えると、その衝撃も相当なものになりそうだ。なので、ドアを背にすること
で、周りへの被害を最小限にできるはず…。といっても、実際に突っ込んできたら、
よける自信もあまりなかった。ドアの外では、さっきから栞菜と千聖が心配しながら、
キッチンの中の様子をうかがっている。
「栞菜〜、そこにいる〜?」
「いるよ、舞美ちゃん大丈夫?」
「大丈夫。ここ絶対にドアあけちゃダメだかんね〜」
そういって舞美ちゃんは、ドアのノブにそっと手をかけた。その瞬間、「敵」は舞
美ちゃんめがけて飛び降り、突っ込んできた。
「やっぱし!」
<バシッ!>
天井から直線的に飛んできた「敵」を、舞美ちゃんは新聞紙で迎え撃つ。ジャスト
ミートしたつもりだったが、その体の大きさとスピードに新聞紙が負けてしまい、ぐ
にゃりと折れ曲がった。その反撃は、「ヤツ」の飛んできた軌道を変える程度にしか
ならなかった。それで直撃は免れたものの、舞美ちゃんは「敵」を見失い、あわてて
懐中電灯を振り回した。
「どっ、どこよっ!?」
<ビシッ!>
「いたっ!」
右の頬に痛みが走った。やはり「ヤツ」の攻撃は体当たりだけのようだ。マスクを
していたから直撃は避けられたけど、やっぱり触れたくない相手だけに、暗がりから
飛んでこられると怖い。
「(目を…狙ってる?…)」
舞美ちゃんは再び懐中電灯を振り回した。とにかく「敵」の居場所がわからなけれ
ば、対処のしようがない。舞美ちゃんはドアを背にしたまましゃがみこんだ。
窓の外は、うっすらと明るさを取り戻そうとしている。家具の配置がなんとなく分
かるようになってきたから、自分が動き回る分には問題ないが、「敵」はいったいど
こにいるのか…。
「(しょうがない、アレを使うか…)」
舞美ちゃんは一呼吸置いてから、一気にシンクに向かって走り出した。すると
「大ボス」が戸棚の上から飛び出してきて、再び舞美ちゃんの目を狙って突っ込んで
きた。
「単純なんだよっ!」
舞美ちゃんは両目をつぶった。左目に体当たりの直撃を受けたが、そのままシンク
の下の扉を手探りで開け、なかから「武器」を取り出した。
「よし、来いっ!」
舞美ちゃんは今度はシンクを背にしてしゃがみ、頭の上に「武器」を構えた、キッ
チンの中に少しづつ外の明るさが差し込んできた。気がつくと、左目の下のまぶたか
ら血が出ている。体当たりされたのと同時にかじられたらしい。
「(最悪…)」
これは傷のダメージというより、精神的なダメージのほうが大きかった。麗しの乙
女の顔を傷つけられるなんて、しかも「あんなヤツ」に…、ありえないほどの屈辱。
しかし、そんなことを考える間もなく、次の瞬間には、テーブルの反対側から姿を現
した「ヤツ」が、再び舞美ちゃんめがけて飛び出してきた。
<ガアァンッ!>
「やったっ!!」
頭上から大根切りに「武器(フライパン)」を振り下ろすと、「ヤツ」の正面から
見事にヒットし、そのまま床の上にねじ伏せた。
「やった…、やった…、はぁ…」
「「舞美ちゃん!」」
栞菜と千聖がドアを開けて飛び込んできた。舞美ちゃんは一気に緊張が抜けたせい
で、そのまま腰が砕けたようにへたり込んでしまった。それでも気を取り直すと、し
ぼり出すような声で話し始めた。
「栞菜…、こいつらに…、スプレーかけて!」
「舞美ちゃん!、大変!、血が出てる!」
「分かってる…。すぐに…、消毒しよう」
「なっきー!、薬箱!」
栞菜はリビングに向かって叫んだ。そして舞美ちゃんは栞菜と千聖の肩を借りて、
リビングへと「避難」してきた。私と愛理とで、すぐに傷口の消毒を始めた。
栞菜がキッチンのシンクの中に向かってスプレーをかけると、中の「ヤツら」は暴
れまわり、スプレーの薬剤がキッチンに充満してしまった。たいした生命力だ。それ
で仕方なく、栞菜も千聖もリビングに「避難」してきた。
「あいたっ!、ちょいしみるんですけど…」
「ごめんね。動かないで」
汗だくの舞美ちゃんの頭を膝枕に抱き、消毒薬を脱脂綿につけて傷口と、流れ出た
血をぬぐった。みんな心配そうに舞美ちゃんの顔をのぞき込んでいる。
「舞美、大丈夫?」
「舞美ちゃん…」
「大丈夫大丈夫!。へへ、なっきーの膝枕なんて、久しぶり〜」
「そだね。久しぶりだね。舞美ちゃん、ご苦労様」
「あー、これで全滅だったらいいんだけど〜」
「分からないね。でも、ほとんど始末できたんじゃない?」
「そうであってほしい。ちょっと疲れたわ〜」
「舞美、ずっと『戦って』たもんね。ちょっと寝たら?」
「うん、ちょっと寝るわ…」
そう言ったきり、舞美ちゃんは眠ってしまった。私の膝の上に頭をのせたままで。
ども。更新あいちゃってすいません。
週末ベリのライブに行ってオフとか遊び三昧していたら、昨日は
体調を崩してしまって、仕事に影響してしまったというお粗末ぶり。
なんともかんともでした。
【訂正】
>>574 3行めは「×舞ちゃん → ○舞美ちゃん」に訂正です。
>>560 考え直してっていうか、お約束というよりもイメージを膨らますた
めの土台として使ってもらうのがいいかもしれませんね。私も考え
てみよっかなw。
>>561 いい感じですね。そういえば全員年子なんだw。
>>567 このスレすでにいろんな主人公が出てきて面白いです。
続きを楽しみにしてます。
580 :
季節がめぐるように・・・(10):2007/08/22(水) 03:32:35 ID:bA+zlC1/0
愛理は窓の外を見つめていた
雨のせいでくせの出始めた髪をなでながら
窓の外、幾分弱まり始めた雨のなか寄り添い歩く見覚えのある人影を見つけ
部屋を飛び出し、階段を駆け降りる
「二人が帰ってきたよ。みんな、早く」
今までの不安が嘘のように消えてゆく
ほかの姉妹にも笑顔が戻る
ガチャ
玄関のドアを開ける
「ごめんなさい・・・。」
うつむきがちに栞菜が口を開く
「もー、心配かけて。後でお仕置きだよ。とか言って」
「舞美怖ーい」
舞美ちゃんの一言に両手を口の前で合せ怖がる仕草をするえりかちゃん
そんな二人のやりとりに誰からでもなく笑い声が発せられる
『フフフフフ』
「怖ーい」
「えりかちゃん、何かオバさんっぽい」
「えー、なんでー」
膨れっ面をするえりかちゃんにまた笑いを誘われる
雨があがる
幾つかのわだかまりを洗い流して・・・
「もうすぐ、夏だね」
舞ちゃんの言葉が耳に残った
取りあえずここで一区切りです
昨日のうちに書き込むつもりでしたが
寝てしまいました
お話はもう少し続きます
続き貼るつもりでしたが馬鹿みたいな齟齬を見つけましたので
後日書き込ませていただきたいです
すみません
季節がめぐるように8と9の間のエピソードが抜けてました
一応貼らせてただきます
グダグダですみません
「なっきぃ、起きてる?」
ドア越しに聞こえる声にそっと身を起こす
「起きてるよ。栞菜どうしたの、もう遅いし早く寝ないと」
「うん、わかってる。でもなっきぃに話したい事があるんだ」
「なに?」
「入ってもいいかな」
「うん、いいよ。」
そう答えると静かにドアが開き、何かを決意したような栞菜の顔が
月光に照らされた
「・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・」
沈黙、かすかに聞こえる虫の声が夏がもう近いのを知らせる
「あのさ、私・・・」
「うん」
ためらいがちに発せられた栞菜の言葉に相槌を打つ
「私、熊井君の事好きみたい」
一瞬栞菜の言葉が理解できず、息が止まる
「なんで、私にそんなこと言うの」
なぜか、語気が強まる
「なっきぃ、熊井君と仲いいし。熊井君も多分なっきぃの事…」
「そんな事」
私の言葉を栞菜が遮る
「ごめんね。こんな話して。でも、なっきぃにはちゃんと話しときたかったんだ」
そう言うと「お休み」の言葉だけ残して部屋を去る栞菜
「そんな事、わざわざ言われても私は」
私の熊井君への想い。それは・・・
栞菜が居た辺りを見つめ虚空にそう返した
●AM04:30
スプレーの薬剤が充満しているキッチンにはしばらく入れそうもないから、栞菜と
千聖は、再び「重装備」に身を包み、家の中を「パトロール」に出かけた。
もう室内の灯りをつけなくても歩けるほどに、外からの光は明るくなっていた。天
井裏への入口のところに来ると、さっき舞美ちゃんと栞菜が「噴射装置」でスプレー
をまいたときのまま、イスがふたつ並んでいる。
「あれ?」
「どしたの?」
栞菜が首をかしげた。あのとき退治したはずの「ヤツら」の死骸が消えている。
「さっき、3匹退治したはずなのに…、その死骸がない!」
「えっ?!」
「千聖、片付けた?」
「いんや。片付けてないよ。ここにも来てないし…」
「誰も来て…いないよねぇ?」
「舞美ちゃん?」
「舞美ちゃんも来てないでしょ」
「じゃあ誰が?…」
「だってあのとき、ちゃんと『潰した』はず…」
二人は目を見合わせた。
「まさか…、生き返った?!」
「そんなバカな!?」
「どうしよう…、天井裏…、あけてみる?」
もしも、退治したはずの3匹が生き返って逃げたのだとしたら、天井裏でスプレー
で「退治」したはずの、たくさんの「ヤツら」は、今どうなっているんだろう?。
ほんの少しの沈黙のあと、栞菜が意を決するように言った。
「確かめよう…」
「えー、舞美ちゃんが起きてからでもいいじゃ〜ん」
「だって、もし死んでなかったら、まだたくさんの『ヤツら』が生きているってこ
とでしょ?、そしたらまた襲ってくるかもしれないんだよ?」
「そんなこといったってぇ〜。たくさん死んでるかもしんないんでしょう?」
「死んでたら死んでたで、それでいいじゃん。片付けは朝になってからでいいんだ
し。今は確かめるだけ…」
「でもなぁ…」
「そうだ、舞ちゃんのサングラスを借りよう!」
頭にタオルを巻き、サングラスをかけ、マスクをしたその姿は、二人が知るはずも
ないけど、まるで「月光仮面」のようであった。暑いけど、もうそんなことどうでも
良くなってきた「ノリのいい」二人だった。
「よし、いくぞ〜!」
「ウッス!」
ふたたびさっきの場所に戻ってきて、栞菜は入口のフタの取っ手に手をかけた。理
由もなく二人は息を止めてみた。フタをあけると、さっきのようにフンや卵は落ちて
こなかった。入口の近くにひもの切れた「スプレー噴射装置」が置かれていたが、死
骸は見当たらない。
千聖が懐中電灯をつけて、入口から顔をのぞかせた。
「ない…、死骸が、一匹もいない」
電灯で照らされた先には、「おせんべいの缶」が倒れていたが、やはりその周辺に
も、奥のほうにも、「ヤツら」の死骸は一匹も落ちていなかった。
「うそ…、信じられない…」
「なんで?…」
「どうしよう…、アイツら死んでないの?!…」
「そんな…」
「ちょっと私にも見せて!」
千聖は唖然としてイスから降りた。入れ替わりに栞菜も懐中電灯を受け取って天井
裏をのぞいた。天井裏はどこを見渡しても、やはり「アイツら」の死骸は一匹も落ち
ていなかった。
二人は呆然としたままリビングへ戻ってきた。
「「「「そんな…」」」」
えりかちゃん、私、愛理、舞ちゃんも、やはり二人と同じ反応だった。こんなとき
に栞菜と千聖がウソをついているとも思えない。でも二人の言っていることは、どう
考えても信じられない状況だ。
ずっとリビングにいた私たちと違って、栞菜と千聖は天井裏やキッチンで「激闘」
を重ねたはず。実際に舞美ちゃんはケガまでしているのに…。
「ねえ…、キッチンは?…」
舞ちゃんが口を開いた。みんなの目が、いっせいに舞ちゃんを見て、それからキッ
チンの入口のドアへと流れた。栞菜と千聖がそのドアに近づく。
「まだ薬残ってるかもしれないからね」
「気をつけてね」
私たちは、二人の背後から声をかけた。さすがにキッチンの中を一緒に見る勇気は
なかったけど、二人を応援する気持ちだけは伝えたかった。栞菜がドアノブに手をか
け、千聖が右手にスリッパを、左手にスプレーを構える。
「いくよ?」
「OK」
勢いよくドアを開けると、ほんの少し薬剤の匂いが流れてきた。
「どう?…」
「いや、ここからじゃ…」
二人はそろりそろりと足を踏み入れていった。シンクにかぶせてあったネットが、
シンクの下に落ちている。シンクの中を、おそるおそるのぞいてみる。
「いない…」
「いない!」
「なんで?!、ねえなんで?!」
シンクの中は「からっぽ」だった。あれだけたくさんの「ヤツら」を囲い込んで、
ネットをかぶせてスプレーをかけたのに。その死骸の一匹すらいなくなっていた。
栞菜が振り向こうとしたとき、足に当たったフライパンのところにも、舞美ちゃん
が退治したはずの「大ボス」の姿はなかった。
「「いやあぁーーーっ!」」
二人はわけもわからずに叫んでいた。キッチンを飛び出し、リビングに駆け込み、
ぴたりと立ち止まって、リビングの中を見渡した。
「キッチンも、死骸がない…」
「アイツら、死んでない…」
二人は宙を見つめたまま、私たちにそれだけ伝えた。
●AM05:00
「とうとう朝になっちゃったね…」
頭にタオルを巻き、サングラスで「武装」した舞ちゃんが、すっかり明るくなった
外を見つめながらそういった。
「疲れたね…」
両手に「武器」を持った千聖が、ソファに身を投げ出し、天井を見上げながらそう
いった。
「まだまだ、本当の戦いはこれからよ…」
えりかちゃんもやはりタオルを頭に巻き、「武器」をしっかりと手に構えながらそ
ういった。でも、その目はまだギラギラと緊張していて、部屋の中をじっくりと見回
しているのであった。
戦いに疲れた「戦士」、舞美ちゃんと栞菜は、部屋の真ん中にぐったりと横になっ
て眠っている。私と愛理は、その二人を守るようにして、やはり部屋の真ん中で、周
囲を警戒しながらおびえているのであった。
「ねえ…、ノラだ」
舞ちゃんが庭を指さした。みんなの視線がいっせいにそっちを向く。そこには、ゆ
うべ「アイツ」を食べてしまったネコが、同じ場所で、こちらを見て座っていた。
「あのネコ…」
「…」
●AM05:30
「あ、あれ?…」
「なに?、どうしたの?…」
「んっ?、あれ?、眠ってた?私たち?…」
さっき庭にいたネコを見てから、何分かの記憶が飛んでいる。みんなそろって眠って
しまっていたようだ。ネコはもう、庭から姿を消していた。私はいったい何が起きたの
か分からなくて、飛んでしまった記憶の部分を取り戻そうと、必死に思い返していたの
だけど…。
「ねえ、さっきのネコ…」
「ノラ?」
「あそこで、私たちを見てたよね?」
「うん、見てた」
「ネコ見たら、眠くなった?」
「眠らされた?」
「え?、ネコに?!」
「あのネコが?!」
「それにさ、あのネコ、おなか膨らんでたよね?」
「あ、私もそれ見た!、なんだかすごい膨らんでた」
「…」
それっきり、わたしたちは言葉を失ってしまった。お互いに顔を見合わせ、起きた
ことが理解できない…、というよりも、理解したくないような雰囲気だったから。
話しの流れを変えようと思ったけど、いい話題がなさそう…。
「あ、愛理!。ホイホイハウスは?」
「あ、そうだ!、かかってるかも!」
リビングには、ホイホイハウスを3つ仕掛けていたはず。私はそれらを置いた場所
をチェックしてみた。
「あっ!、でも…、どうして?!」
「やっぱり…」
ホイホイハウスには、3つとも、「ヤツら」が捕まった形跡が残っていた。でも、
触角や足が残っているだけで、「ヤツら」の死骸とか、本体とかはひとつも見つから
なかった。
私は庭に飛び出して、さっきのネコが座っていたあたりを見回した。なにかヒント
になりそうなものがないかと思ったけど…。
「毛…?」
「えりかちゃん、この毛、キッチンで見たのとおんなじ?!」
えりかちゃんも私に続いて庭に下りてきていた。
「どれどれ?、あ、そう。そうだ。やっぱりあのネコ…」
「キッチンにいたんだ…」
「じゃあ、おのお腹は…」
私もえりかちゃんも、同じことを想像して震え上がった。
とはいえ、家の中には「ヤツら」の死骸が見当たらず、生き残った「ヤツ」もいな
いだろうということになって、リビングとキッチンの空気を入れ替えようと、窓を全
部開け放った。舞美ちゃんと栞菜はまだ寝ているけど、全然起きそうにないし。
「今日はお昼寝しなきゃね」
「っていうか、朝から寝るでしょ(笑)」
「でも、やることもたくさんあるんだなあ」
「あるねえ、お掃除とか修理とか…」
「まずシャワー浴びたいかな」
「私もそう!」
「いったいなんだったんだろね。ゆうべは…」
「わかんない。でも疲れた」
朝日がさんさんと降り注ぐリビングで、わたしたちは昨日の夜の大騒ぎを、なんだ
かもうなつかしい出来事のように思い返していた。
●AM06:00
昨日の「不法投棄」されたゴミを片付けるために、おとなりの山寺さんがやって来
た。垣根越しに、庭で深呼吸をしているえりかちゃんと舞ちゃんの姿が見えた。
「『おは〜!』、えりかちゃん、早起きだねえ。なんだ?、朝から大掃除?」
「おはようございます。ええ、似たようなもんです」
「やまちゃん『おは〜!』、舞も手伝ってんだよ〜」
「『おは〜!』、舞ちゃんも早起きだねえ」
「あ、ゴミですね?、ありがとうございます」
えりかちゃんと舞ちゃんは、山寺さんのほうに駆け寄った。
「いえいえ、どうってことないですよ。あれ?、あれえ?…」
「どうしたんですか?」
山寺さんは3つのゴミ袋を持ち上げて、不思議そうな顔をしている。
「中身がカラッポみたいだねえ、コレ」
「あっ、ゆうべネコがあさってました!」
「そう?、でもね、どっこも穴が空いてないみたいなんだけど…」
「あれえ?、ホントだ…」
中身こそ見ていないものの、昨日は確かにパンパンに膨れていたゴミ袋だったのに、
山寺さんが持ち上げている「それ」は、まったく何も入っていないかのようにしぼん
でいた。
「どういうこと?」
●AM09:00
朝一番で電気屋さんに来てもらい、クーラーがつかなくなった原因を調べてもらった。
裏にある配電盤に、黒焦げになった「ヤツら」の一匹が落ちていたということだ、ど
うやら「そいつ」がクーラーの配線だけをショートさせたらしい。キッチンの照明も
修理してもらった。
やっと起きだして、ボーッとしていた舞美ちゃんに、舞ちゃんが話しかけてきた。
「舞美ちゃん、昨日のネコいたじゃん?、ノラ」
「うん、いたねえ」
舞ちゃんは、あのネコが「アイツ」を食べたシーンを目撃していない。
「あのネコねえ、実は宇宙人だったんだって」
「宇宙人?、なんだそれ?!」
「遠い星からねえ、敵の宇宙人を追いかけてきたんだって。敵の宇宙人はね、地球
を侵略しに来たんだけど、あのネコの宇宙人はそれを止めるために来たんだって」
「うっそ〜?!」
舞美ちゃんには「舞ちゃんの作ったおとぎばなし」くらいにしか思えなかった。
「だってそう言ってたんだもん。それでね、敵の宇宙人を全部退治できたんだって、
だから帰っちゃうって。『みなさんのご協力に感謝します』って、言ってたよ」
「マジ?…」
舞美ちゃんはじっと庭のほうを、あのネコがいた場所を見つめていた。
おしまい
●エンドロール
「夏の夜の怪」
−− テーマソング・イメージ −−
ザ・バスターズ・ブルース 森高千聖
(作詞:森高千里/作曲:斉藤英夫)
−− 挿入歌・イメージ −−
まっくら森の歌 谷山浩子
(作詞:谷山浩子/作曲:谷山浩子)
せんこう花火 モーニング娘。
(作詞:つんく/作曲:つんく)
−− キャスト・イメージ −−
矢島 舞美 矢島 舞美
矢島えりか 梅田えりか
矢島 早貴 中島 早貴
矢島 栞菜 有原 栞菜
矢島 愛理 鈴木 愛理
矢島 千聖 岡井 千聖
矢島 舞. 萩原 舞
やまちゃん 山寺宏一
ノラ ???
ども、やっとこさ終わりました。
はじめはストレートに「コックローチホラー」を目指していたんですが、
栞菜ややまちゃんのエピソードを追加していくうちに、どんどん肥大
化していってしまいました。これでもまだかなり削ったんですよw。
例によって本編にはテーマソングがあります。森高千聖の曲ですが、
ストーリーはほぼこれをヒントに流用しています。また、挿入歌も2曲
入れてみました。それぞれのシーンをイメージするのによろしいかな、
なんて思いまして。
音源ない方は、音質あんまりよくないですけど下記からどうぞ。
(パスは例によってこのレスから…)
ttp://www4.axfc.net/uploader/14/so/Li_32633.lzh.html 「まっくら森の歌」は、手元に音源なかったため、ぐぐったらFLASH
を見つけましたんで(無断リンクですけど)、フインキだけでも。
ttp://www.geocities.jp/route_219/flash/makkura.html 私が投稿しているあいだにも、いろんな方が作品をあげてくださり、
スレがにぎやかになっててうれしい限りですね。それぞれの皆さんの
℃-uteメンバーへの情熱が感じられて頼もしいです。
またしばらくおとなしくしていようかな、と思いますが、なにかに
釣られてダダッと書き出すかもしれません。
でわでわ、
引き続きみなさんのツッコミお待ちしております。
>>596 作Bさん乙です
楽しく読ませて頂きましたっ
ちょいと気持ち悪くていい感じにぞくぞくしましたよw
次回作期待してますんで´ω`
>>570 >この七人が一緒に住んでると絶対!!犬を飼ってると思うんですよ。
>で、何か℃-uteに縁がある名前がないかなあ、と。
調べてみた。
〇えりか・ラム・ミュー・ルナ
〇舞美・コロン・ルーキー(+子犬)
〇早貴・レモン
〇愛理・メリー・ラッキー・パピちゃん・リズム・クリア・ウィン
〇千聖・リップ・パイン
〇舞・マロン・チャッピー(うさぎ)
〇栞菜・無し
たしかに犬多いね。てか飼ってないの栞菜だけじゃん
名前候補もいくつか考えてみた
・メグ(自分で書いててあんまりなので却下)
・ガッタス(仔犬の場合はリトルガッタス)
・ボーノ(デブそうw)
・スタフィー(これけっこうお気に入り)
お話書く人は気にいったのがあったら使ってくださいませ
作Bさん乙!!
オカルトかと思ったらSFとは・・・面白かったですよ!!
>>561 ちょっと直してみました。
みんなでこだわりのある所やキャラをどんどん改変していき、このスレで最終的に貼られたものを
次スレのテンプレとして使いましょうよ。
長女 舞美 高二 母親代わりを自認し頼れる力持ちだがドジ。基本的に大雑把。
次女 えりか 高一 何事もユーモアで切り抜ける現代っ子だがナイーブな一面も。舞美好き。
三女 早貴 中三 優等生でしっかり者。フォローにまわる損な性格。あだ名は泣き虫さき=なっきぃ。
四女 栞菜 中二 ちゃっかりした性格でイケメン・恋バナに目がない。感受性が強く、センスが変。
五女 愛理 中一 女の子らしく優しい。あがり症で大人しいが、マイクを持つと性格が豹変。
六女 千聖 小六 男勝りで正義感が強く、やんちゃ。実はリボンや花柄が好きな女の子らしい面も。
七女 舞 小五 自由奔放でマスコット的存在。ツッコミが鋭い。趣味はサングラス集め。
リ ・一・リ<はい。今日も都会の片隅からお届けする
リ ・一・リ (o・ ・)<矢島家れでぃお
リ ・一・リ<略して
リ ・一・リ (o・ ・)<やじらじ
(o・ ・)<パーソナリティは私たち二人
リ ・一・リ<芝生があったら走りたい。いつも元気なMCチッサーと
(o・ ・)<誰も私を止められない。 DJマイマイでお届けします
〜ジングル〜
(o・ ・)<いつも超カワイイって言われたいねん
リ ・一・リ (o・ ・)<マイマイとチッサーの『やじらじ』
(o・ ・)<チェケラッ!
リ ・一・リ<ハイ
(o・ ・)<ハイ
(o・ ・) リ ・一・リ<フフフ
リ ・一・リ<最初のコーナー行きたいと思います
(o・ ・)<思いましゅ
リ ・一・リ<フフフ、思いましゅ
(o・ ・)<もー、それぐらい流せー
リ ・一・リ<毎回、矢島家のメンバーを迎えてバトルトーク
(o・ ・)<流すとこちがーう
リ ・一・リ<フフフ、しちゃうこのコーナー
リ ・一・リ (o・ ・)<『style Y』
リ ・一・リ<今回は特別にメンバーを2人も呼んじゃいました
リl|*´∀`l|<こんばんは。矢島家のクールビューティー次女のえりかです
从・ゥ・从<こんばんは。矢島家が何時までも幸せであることを
夢見ている長女の舞美です
リ ・一・リ リl|*´∀`l| (o・ ・)<パチパチパチ
从・ゥ・从<この拍手はなにー
(o・ ・)<だって噛まなかったじゃん
リl|*´∀`l|<舞美すごいよ舞美
从・ゥ・从<なんか嬉しく無い
(みんな)<フフフ
リ ・一・リ<今夜はこの4人で栞菜ちゃんと早貴ちゃんの
お話の結末についてバトルトークしちゃいます
リl|*´∀`l|<イエーイ
从・ゥ・从<ガーって行くよ。ガーって
(o・ ・)<変なテンションの二人は置き去りで
リ ・一・リ<お話を振り返ってみたいと思います
大粒の雨は粗末な作りのバス停の屋根を激しく打ちつける
人通りもまばらになり雨音だけがこだまする
「栞菜、やっと見つけた」
独りベンチに腰かける栞菜の姿を認め安堵が広がる
「なっきぃ・・・。」
「ほら、帰ろう。みんな心配してるよ」
栞菜の隣に腰かけ語りかける
「栞菜らしくないよ。そうやって、うつむいて下ばかりみて」
「だって、それは」
「どんなときも、負けず嫌いで前向きなのが栞菜でしょ」
「そんな、そんな勝手な事言わないで。なっきぃにはわからないよ。私がどれだけ・・・」
「うん。わかんないよ。だけど、こんなの違うよ」
しっかり栞菜の瞳を見据える
「約束したよね、どっちが先に彼氏できるか競争するって。まだ決着ついてないよ」
「・・・・・」
「終わってもないのに負けを認めるの?」
「終わってない?」
「そうだよ、ほら立って。もう遅いし帰ろ」
栞菜の手を引き家路を急ぐ
あんなに激しかった雨は何時しか雨脚を弱めた
「栞菜おなか空いてない?」
「うん」
私は黙ってポケットの中のものを差し出す
「なっきぃ、ミカン好きだね。ってか、ポケットから出すのおかしくない?」
「キュフフ」
ミーンミーンミーン
セミの声がけたたましく響き渡る
「なっきぃ、ちょっと派手じゃない?」
鏡に向かいいつもより派手目にメイクする私を栞菜が茶化す
「せっかくの花火だし今日ぐらい良いじゃん」
舞ちゃんがすかさずフォローを入れた
その後の「でもちょっと派手すぎ」は聞かなかったことにした
「ほらー、みんな行くよー」
舞美ちゃんが慌ただしくみんなを急かす
「おいてくよー」
甚平姿のえりかちゃんも隣で声を挙げた
『はーい』
私たちは声をそろえ二人に答えた
色とりどりの花火が空を明るく染める
「きれー」
「すごーい」
姉妹たちは口々に感嘆の声を漏らす
私はみんなの輪を離れ独り歩き出す
小さい頃からのお気に入りの場所
花火のよく見えるその場所を目指し歩みを進める
「なかさきちゃん、やっぱり来たね」
「熊井君」
花火を打ち上げるけたたましい音が胸を揺さぶる
「僕ね、転校する事になったんだ」
聞こえない。違う、聞きたくない
「えっ」
動揺のあまり言葉が出ない
「急に、親の転勤が決まって。それについて行く事にしたんだ」
「うん」
「それで、どうしてもなかさきちゃんだけには伝えたくて」
「そんなこと、言われたって何も」
「わかってるよ。何も言わなくていい。話せて良かった」
熊井君は最後に微笑むと手を振りながら去っていった
私はこぼれ出そうになる涙を必至で堪えた
熊井君に心配をかけないように
それでも溢れる涙に思わず空を見上げる
涙でにじんだ空に打ちあがる花火はまるで万境鏡を覗いた様で
綺麗だった
最後の花火の火花が消える
祭りの後・・・
さみしさにも似た感情が込み上げる
「やっぱりここにいた」
「捜したんだかんな」
栞菜、舞ちゃん、千聖、愛理、えりかちゃん、舞美ちゃん。大切な家族
季節がめぐるように私たちは数々の出会いと別れをを繰り返す
でも、もう私は泣かない。みんながいるから
そして、どこかで私を励ましてくれる「なかさきちゃん」の声が聞こえるから
リl|*´∀`l|<ほんと、なっきぃ泣かなくなったよね
(o・ ・)<一つ大人への階段を
リ ・一・リ<登った訳です
从・ゥ・从<なんか二人が言うと説得力ない
(o・ ・) リ ・一・リ<ひどーい
リl|*´∀`l|<フフフ
リ ・一・リ<そんな訳で残り時間も少なくなって来ました
(o・ ・)<最後にお送りする曲は
リl|*´∀`l| 从・ゥ・从 リ ・一・リ (o・ ・)<YES!しあわせ
>>601−607
季節がめぐるように・・・の続きです
タイトル入れ忘れました
>>596 乙です。改めてはじめから通読させていただきました
文章が柔らかく楽しく読ませていただきました
私も次作楽しみに待たせていただきます
七姉妹ご近所図鑑
〇マスクド・K・タロー
JOQRプロレス所属・試合よりマイクの時間の方が長く、何故か対戦相手を褒めまくるという
意味不明のマイクアピールが人気の謎のマスクマン。
その奇抜なマスクとスタイルが、たまたま深夜の試験勉強の合間にプロレス中継を見てしまった
栞菜の(ちょっと他人とズレてる)琴線に触れ、千聖とマイを巻き込んでのプチ・プロレスブームが起きる。
三人の間では今日もオリジナル新技の開発と命名に余念がない。
実は意外と近所に住んでいて、スーパーの惣菜売り場あたりですれ違ったりしているが
素顔はただの中年オジサンなので誰も気付かない。
…いや栞菜ってちょっと変なところがあるよね!?って思って。
初デートのイメージで「祭り」連呼したり、新技「クロスロード」命名とか、
スポーツは?って訊かれて「廊下を走るくらいかな」って平然と答えたり…。
愛理と気があうのもわかる気がする。
連投スイマセン
作家のみなさん乙であります。
顔文字形式ってのもけっこう楽しいね。気軽に書けるし。
チッペの顔w
設定マワリの話でご相談。。。
七姉妹それぞれのクラスメイトというか、同級生を Berryz、
もしくはハローのメンバーから当てはめるとすると、どうなり
ますかね?
>>1 だと7人の実年齢とは微妙に組み替えてたりするんで、
イメージとして、どんなんがいいかな…と。
千奈美に私のイメージではこんな感じ。。。
高二:舞美 →(なし)
高一:えりか →清水、嗣永
中三:早貴 →須藤、夏焼
中二:栞菜 →徳永、熊井
中一:愛理 →久住、光井
小六:千聖 →菅谷
小五:舞 →(なし)
個人的意見だけどなっきーの同級生は熊井ちゃんが・・・
てことで
高二:舞美 →清水、嗣永
高一:えりか →、夏焼、徳永
中三:早貴 →熊井、須藤
中二:栞菜 →久住、光井
中一:愛理 →菅谷
小六:千聖 →エッグから適当に
小五:舞 →エッグから適当に
>>613 レスありがとん。
>>なっきーの同級生は熊井ちゃんが・・・
これってなにかエピソードとかありましたっけ?
まったく知らないので教えていただけると助かります。
で、ネタ的に舞美と清水は同級生にしたくないんだけど、
清水と嗣永は同級生にしたいんですよねえ…私としては。w
徳永と熊井は同級生のほうが面白いと思うんだけど、いかが?
須藤は中三でOKだと思いますね。夏焼が微妙w。
くっすみはね、愛理と同級にすると面白いと思うんですよ。対照的で。
まあ勝手なことばっかり言ってますが、他の方からもご意見募集w。
>>614 なっきぃと熊井ちゃんは同い年ということも知らないということですか?
>>615 あくまでも設定の話っしょ?
>>612は
>>1を引用してんだから、実年齢の話はさておいて…だと思う。
オレはゆりちなは同級生じゃないほうが面白いと思う。思うだけだけどな〜。
>>609 >…いや栞菜ってちょっと変なところがあるよね!?
ようつべでDVDマガ3観れたけど栞菜の言語感覚やっぱ変だね
気合入れの掛け声で『もし!!』ってw
あと愛理と千聖が非常に仲良さそうで萌えたス(;´Д`)
>>615 >>616 さんがフォローしてくださってますけど、あくまでもネタとしての
設定を意識しています。梅さんとまいみぃは同級生だけど、「七姉妹」
というからには、同い年にするのはつらいわけで…(まあ双子ってのも
アリかもしんないけどw)。
それで、七姉妹のクラスメイトやら同級生やらを登場させるとしたら、
やっぱしベリーズのメンバーも登場させてみたいわけで、そのときに
どんな対応にしたらいいかな…、というのが、
>>612 の主旨です。
なっきぃとくまさんを同級生にすると、その凸凹ぶりでネタにできそうな
気もして面白いかもですね。。。
>>616 さん、Thanks!
>>618 失礼いたしました
ちなみに双子じゃなくても同い年の兄弟って聞いたことありますよ!
620 :
テンプレ案:2007/08/31(金) 01:05:47 ID:VSiThC5A0
(気がつくとこのスレも453KBなんですね。なのでテンプレ作ってみました)
℃-ute七姉妹物語
基本設定:「℃-uteの七人が姉妹だったら?」のみです。
・℃-uteが七姉妹役やるドラマが観たい!!
・でもテレ東がやってくれないから自分達で描く!!
・自由に何でもありで描いていきましょう。
基本仕様:
・ほのぼのアットホーム。クサくてもベタでも可。Hは控えめに。
・「こんなシチュエーションは萌える」的なネタ投稿も歓迎!
・お話進行時以外は ℃-ute関連なら多少のスレ違いでもOK。
基本イメージ:(土台として…。必ずしもこの通りにする必要ないです)
・歌と音楽は姉妹を結びつけるキーワード(親の影響か?)
長女 舞美 高二 陸上部(幽霊部員)
母親代わりを自認し頼れる力持ちだがドジ。基本的に大雑把。
次女 えりか 高一 帰宅部
何事もユーモアで切り抜ける現代っ子だがナイーブな一面も。舞美好き。
三女 早貴 中三 文芸部
優等生でしっかり者。フォローにまわる損な性格。あだ名は泣き虫さき=なっきぃ。
四女 栞菜 中二 新体操部
ちゃっかりした性格でイケメン・恋バナに目がない。感受性が強く、センスが変。
五女 愛理 中一 吹奏楽部
女の子らしく優しい。あがり症で大人しいが、マイクを持つと性格が豹変。
六女 千聖 小六
男勝りで正義感が強く、やんちゃ。実はリボンや花柄が好きな女の子らしい面も。
七女 舞 小五
自由奔放でマスコット的存在。ツッコミが鋭い。趣味はサングラス集め。
>>620 いいですね
ハッ! しかも気がつけば部活動まで!!
キャラの基本イメージの部分は各作者・読者さんのこだわり、または現実の℃-uteメンのキャラ変化にあわせて
いつでも自由に改変していきましょう
ここ考えたりイジってるだけでも楽しいかもしれないですw
「天コケ」見てきました。素直にいい映画です。
全編夏帆、というか主人公「そよ」のイメージビデオみたいです。
自然はなにも語らないけどものすごい説得力があるね…みたいな。
忙しさに追われている日本人でも、だれもが心に持っているような。
今やそっちのほうが「憧れの世界」にも見えてきそうな気がします。
で、
℃-ute見ててもそんな気がするのは、決して気のせいじゃないかなと。
>>620 栞菜のキャラ
>イケメン・恋バナに目がない。
は今なら逆に「男嫌い」に変更になりそうな気がw
作品世界的には
>>372のエピ「ゴールデン初デート」 で男の子に裏切られたためという理由もつけられる。
賛否求みますw
>>623 これも意見のひとつとして聞いてね。
「男嫌い」っていうと、どこか潔癖症なイメージがあるんだけど、
栞菜はそんな感じしないなあ。
>>372で「男嫌い」になったかって
いうと、それほどめげてもいないんじゃなかなあ、とか思ったり。
最近変態℃が上昇してるらしいけど、逆に「女好き」かっていうと
そうでもなさそうだし…。まあ
>>620も「必ずしもこの通りにする
必要ないです」って書いてあるし、書く人の都合に合わせて一時
的に性格変更するのは全然OKだと思う。「栞菜=男嫌い」での
エピソードなんかも、結構書けそうな気もするし…(オレ?、ちょっと
ムリw)。
いまからでもパパはニュースキャスターの設定をパクってみるのもありw
一応姉妹にはなります。苗字・学年等も特にいじることもなくできるけど
愛情の愛と書いてめぐ・・・・・・いやあああああああああああああ
>>624 さすがに狼みたいに「ガチレズ」とは書けないんで(あそこはあそこでネタとして楽しんでるんだろうけど)
「男の子がちょっと苦手」程度でいいのかな
>>625 それ面白そうだけどむずかしそうよ
何で一堂に会して住む事になったのか?とか父親のキャラとか『決め事』が多くて、
最初に世界観と設定を構築して、それを説明しつつ読ませるエピソードを作る人は大変だと思う
逆を言えば誰かができるんなら読んでみたいス。
既存の話とは別ラインで平行して進めればいい訳ですし。
>>625 全員違う生い立ちを持つとなると7人分のエピソードとママが必要になるわな。
まあ、うち何人かは実際の姉妹にしてもいいけど。とかく芸術家は女好きが多い
というしw。いや、実はパパは007ばりのスパイで、各地で協力したパートナーとの
「愛の成果」だったり?。そうするとそれぞれのママはある種のエキスパートぞろい
なわけで、その娘たちが集結したらそれはそれで面白いことになるわけで…。
以上勝手な妄想ねw。
ようやく「これでいけそうかな!?」というヤマとオチが思いついたので書きはじめました。遅筆です。
いや宣言でもしとかないと進まなくて・・・・・・。近いうち貼りたいス。
多作の人は凄いなあと思う今日この頃。
>>628 自分が七姉妹のテーマとして考えた・書きたいのは『家族の絆と姉妹愛』
今書いてる話もストックしてあるネタもテーマとして『それ』があったり。
家族の絆ってのは、長い時間を共に過ごし、笑ったり泣いたり色んな思い出を共有してきて生まれるものだと思ってるので
ある日突然「実はみんな姉妹だよ」で集まる「パパはニュースキャスター」式の家族設定は自分はむずかしいです。
ただ上記の理由で、自分はベリメン他ハロメン出す気は無いけど、
ハロメン絡めて楽しいのも面白そうなので別設定で進めるシリーズもありかも。
基本設定があがれば自分もコメディはそっちで書けそう。
>>625 パパはニュースキャスター風七姉妹序章を考えてみました。
例えばこんな感じって考えてみただけだからすんごいベタです。
・2004年春
大荷物を抱えて都会の雑踏の中を歩く愛理、どうやら迷子になった模様。
ふと聴こえてくるピアノの音色、量販店のTV画面の中でピアノを弾いている優しそうな人物、
画面を見つめる愛理。
同時刻、いろんな場所で同じTV画面に目を奪われる少女たち、いっせいに呟く。
「パパ!」
・竜太郎(仮名)は世界的に知られた音楽家。
一見真面目風の二枚目だが、実は女性をくどくのが趣味のかなりの遊び人。
・ある日、自宅で作曲中の竜太郎の元に、娘だと名乗る少女たち春休みを利用して
次々と訪ねてくる。
・ある少女は歌手になりたいけど母親に反対された・音楽家のパパの下で修行して
手デビューしたいという(愛理)
・ある少女はパパお金持ちなんでしょ?バッグとかアクセとかいっぱい買ってもらおうと
思って(えりか)
・ある少女はあ「パパは独りで愛情に飢えてるはず、私がそばにいてあげないと」という
激しい思い込みで(舞美)
・ある少女は「お母さんが亡くなって親戚中たらいまわしにされて虐められて、
耐えられなくなって(早貴)
※など、やってきた理由でキャラの個性を出す。
・突然の娘の訪問に驚く竜太郎、多くの姉妹がいた事に驚く少女たち。互いに軋轢。
だが自分達を娘だと認めようとしない、TVの優しいイメージとは違う冷たくて最低な態度の
パパ竜太郎に少女たちは結束、春休みの間全員で竜太郎の家に居座る事にする。
・突然の娘の訪問に驚く竜太郎、多くの姉妹がいた事に驚く少女たち。互いに軋轢。
だが自分達を娘だと認めようとしない、TVの優しいイメージとは違う冷たくて最低な態度の
パパ竜太郎に少女たちは結束、春休みの間全員で竜太郎の家に居座る事にする。
・絶対に自分達を認めない竜太郎だが、ほんのしばらくいっしょに暮らすうち、少しずつ
少女たちに理解を示すようになる。口調は変わらず冷たいが、少女たちを思いやり
優しい態度も見せるようになる。
※いつつかのエピソードが必要
・「やっぱりパパはいい人なんだね」と娘たちが思い始めた束の間、急に怒り出す竜太郎。
「俺はお前らのパパなんかじゃない!もう春休みも終わりなんだろ、家に帰れ!」
と怒鳴って少女たちを追い出してしまう。
バラバラになる少女たち。ひとりピアノに向かいあせって楽譜を書く竜太郎。
・そして竜太郎あっさり病気で死亡。
葬式のあと、竜太郎の家に再び集まる少女たち。
竜太郎は不治の病で、自分の寿命があとわずかだと知っていた事、
そのためにパパだよと優しくするとみんなをつらくするから突き放していた事を知る。
・パパが最後に書き上げた楽譜を見つける。愛理がそれをピアノで弾く。
優しい調べ、楽譜に書きなぐられたタイトルは「マイガール」
涙する七人。
・「春休みも終わっちゃったね」「これからどうする?」
気が抜けたまま相談する七人。
そこに謎の女性が登場。
「とうとう死んじゃったの、それならもう少し早く帰ってきてやればよかったかしら」
女性、竜太郎の妻だと名乗る。驚く七人。
しかし亡くなった竜太郎への哀しみと愛情を感じないその態度に怒る七人。
「あんたなんかにパパの遺産は渡さない、この家は私達が守る!」
と宣言する七人。
・こうして異母七姉妹の奇妙な共同生活が始まった。
(つづく)
こんな感じ
何故2004春かっていうとベリが結成された年に自然と℃-uteの絆が生まれたって事で。
これだと、℃-uteメン実年齢実学年そのままでドラマにできるし、
名前(苗字)もそのままで学校に通い、で家に帰れば姉妹としていっしょに住んでいる、という
理想的な萌えシチュエーションができあがる。ベリメンとの競演も楽にできる。
どっちの初期設定が面白いと思うかは読み手さん次第ですね…。
>>631一部ネタ被ってますね、スイマセン
>>630 な、なんかいい感じだ…w。
作家1号さんの思い描いている家族像を出すには難しいけど、
パラレルに進行させる(といっても時系列は異なるよね)には、
結構面白いかもしれない。
635 :
ねぇ、名乗って:2007/09/04(火) 23:44:42 ID:7mEdAFG80
>>633 いえ、時系列は既存のシリーズ同様現在でいいと思うんです。
で、テンプレに下のような一文を加えて
↓
ある出来事をきっかけに一つ屋根の下で暮らすことになった異母姉妹七人の物語。
長女 舞美 高一 陸上部(幽霊部員)
母親代わりを自認し頼れる力持ちだがドジ。基本的に大雑把。
次女 えりか 高一 帰宅部
何事もユーモアで切り抜ける現代っ子だがナイーブな一面も。舞美好き。
三女 早貴 中二 文芸部
優等生でしっかり者。フォローにまわる損な性格。あだ名は泣き虫さき=なっきぃ。
四女 栞菜 中二 新体操部
ちゃっかりした性格でイケメン・恋バナに目がない。感受性が強く、センスが変。
五女 愛理 中一 吹奏楽部
女の子らしく優しい。あがり症で大人しいが、マイクを持つと性格が豹変。
六女 千聖 中一
男勝りで正義感が強く、やんちゃ。実はリボンや花柄が好きな女の子らしい面も。
七女 舞 小六
自由奔放でマスコット的存在。ツッコミが鋭い。趣味はサングラス集め。
で「℃-uteメンは実年齢と同じがいい!」ってこだわりがある読み手・書き手が多ければ
こっちをメイン設定にしてもいいのかなあ、と。
あとは同じ、今まで同様『この七人がいっしょに住んでる姉妹』だけが縛りの七姉妹物語が続く、と。
それで「何でいっしょに住んでんだ?ある出来事って何だ?」ってツッコミ用に
「実は
>>630-632みたいな物語があったんだよ」程度の裏設定があればいいかなと思って。
だから2004春・序章はお話として書かなくてもいいんじゃないかな、と。大変そうだしw
●テーブルトーク(1)
えりか:「この中にひとり、点心をつまみ食いしたヤツがいる…」
一同:「(な、なんだってぇ〜!)」
えりか:「お前だっ!(指さす)」
栞菜:「えっ!?、私じゃないよ?!」
えりか:「じゃあ、九九の『2の段』を言ってみろ」
栞菜:「ニイチが2、ニニンが4、ニサンが6、ニシが8、
ニゴ10、ニロク12、ニシチ14、ニハ16、
肉汁たっぷり…」
えりか:「お前だあーーっ!!」
●テーブルトーク(2)
えりか:「この中にひとり、なっきぃに買い物を頼まれたヤツがいる…」
一同:「(パ、パシリなのかぁ〜!)」
えりか:「お前だっ!(指さす)」
舞美:「えっ!?、なんで私が?!」
えりか:「じゃあ、『五十音』を言ってみろ」
舞美:「あ、い、う、え、お、
か、き、の、た、ね…」
えりか:「お前だあーーっ!!」
●テーブルトーク(3)
えりか:「この中にひとり、『アル中』がいる」
一同:「(そ、そんなバカなぁ〜!)」
えりか:「お前だっ!(指さす)」
早貴:「えっ!?、私違うよ?!」
えりか:「じゃあ、『三鷹』って10回言ってみろ」
早貴:「三鷹〜、三鷹〜、みたか〜、みたか〜、ミタカ〜、
タカミー大好き」
えりか:「お前だあーっ!!」
●テーブルトーク(4)
えりか:「この中にもうひとり、『アル中』がいる」
一同:「(またまた、そんなバカなぁ〜!)」
えりか:「お前だっ!(指さす)」
愛理:「えっ!?、またまた私違うよ?!」
えりか:「じゃあ、『十二支』を順番に言ってみろ」
愛理:「ねー、うし、とら、うー、
タカミー大好き」
えりか:「お前だあーっ!!」
●テーブルトーク(5)
えりか:「この中にひとり、プロがいる」
一同:「(だ、だれなんだ〜っ!)」
えりか:「お前だっ!(指さす)」
千聖:「えっ!?、そ、そうなの?!」
えりか:「じゃあ、『五十音』を横に言ってみろ」
千聖:「あ、か、さ、た、な、
は、ま、やぁですよも〜!」
えりか:「お前だあーっ!!」
●テーブルトーク(6)
えりか:「この中にひとり、タシーロがいる」
一同:「(タシーロキターーッ!)」
えりか:「お前だっ!(指さす)」
舞:「えっ!?、なんで私?!」
えりか:「じゃあ、『ディスコクイーン』を歌ってみろ」
舞:「♪Disco, Disco, Di, Di, Di, Disco!
Disco, Disco, Di, Di, Di, Disco!
C'mon! C'mon! C'mon! C'mon!
ぃいやっほぉ〜う!」
えりか:「お前だあーっ!!」
●テーブルトーク(7)
えりか:「この中にひとり、枝豆好きがいる」
一同:「お前だあーっ!!(えりかを指さす)」
おしまい
639 :
ねぇ、名乗って:2007/09/08(土) 18:46:08 ID:0+RupYQN0
それなりに面白いんだけどネタがいまいちわからん
あとリクエストなんだがこんな設定で話ができないかな
ハロプロ学校法人が財政的な理由からグループ内のベリーズ女学院とキューティ女学園が合併することになる
しかし両校は長年のライバル関係で簡単にはいきそうにない
続きは1にお願いします
640 :
ねぇ、名乗って:2007/09/08(土) 20:51:34 ID:22NvYbGh0
>>639 1はあいにくベリメンには詳しくないので書けないよ
ただベリキュー競演はどんな方法があるかなと考えた事はある
やっぱり学園物でしょうね
自分だったらベタにエリート校「ベリスクール」と貧乏校「キュー学園」の確執と和解そして友情みたいな
味付けにするかな
>>639 やっぱネタが分からないかあ〜。これも世代の差なんだろうなぁ…orz
642 :
ねぇ、名乗って:2007/09/09(日) 11:43:41 ID:4c4gAmXp0
世代と言うよりヲタと一般的アイドル好きぐらいの差だろ
単に知ってるか知らないかぐらいの
643 :
ねぇ、名乗って:2007/09/09(日) 13:08:37 ID:XKU8Qiql0
犬の名前の話が出てて思ったんだけど犬の名前はキュートでいいんじゃね?
苗字も大方矢島だしまだ名前として出てきてないし
644 :
ねぇ、名乗って:2007/09/09(日) 13:46:06 ID:lR4zFQut0
>>643 >犬の名前はキュートでいいんじゃね?
ハッ!!何でそれに気がつかなかったんだろ?
苗字でキュートは使いづらいからそれいいと思う
苗字はの今んとこ矢島が暫定っぽいけど
犬の名前以上に決めづらい上、みんなが納得する共通の苗字ってむずかしそうだ
>>645 …………真剣に考えてみる
村上 舞美
村上 えりか
村上 早貴
村上 栞菜
村上 愛理
村上 千聖
村上 舞
…ちょっと字面が地味な気がする
647 :
ねぇ、名乗って:2007/09/09(日) 16:59:35 ID:HyVzR2p/0
ハローの誰かを母親役にする?(故人にするのもアリで
648 :
ねぇ、名乗って:2007/09/09(日) 17:43:26 ID:hiXYYT7h0
犬の名前は当然ラブでしょう、『愛』と書いてw
>>648 いいスね
・9月10日に拾った(貰った・買った)から単純に命名「キュート」
・人になつかない孤高の性格・だけど愛情に飢えているからあえて愛と書いて「ラブ」と命名
の二匹の愛犬あり…とか
>>647 故人ってとこで人選がむずかしくなるよ
ついでに自己レス
>>646 字面もそうだけど、苗字は「ムラカミ」より濁音入りの方がハマる気がする
お母さんを故中澤にして苗字中澤にしちゃえば?
お母さんは優しいイメージの人がいいな…
母親役は下から選んでくれ。
吉永小百合
宮崎美子
西村知美
鶴田真由
佐野量子
はしのえみ
654 :
ねぇ、名乗って:2007/09/10(月) 22:49:39 ID:wWREukrk0
>>648は村上愛(めぐみ)のことを掛けたんだろうなきっと
直接メグミってのはアレれだからラブにしたとか、だったらメグでも良いかw
本当に姉妹みたく仲が良いし家族愛に満ちてる感じ
655 :
℃-uteの日記念age:2007/09/10(月) 23:02:40 ID:re8Kcuws0
>>654 いや
>>598も犬ネタで書いてるけど犬の名前に「メグ」とつけるのは反発ないかな?
本来なら姉妹の一員であったはずの子が「犬扱い」かよって
656 :
ねぇ、名乗って:2007/09/10(月) 23:11:10 ID:oeZ9eh2e0
そのへんは微妙だよね
全然出ないよりなんらかの形で出して欲しいと言うファン心理もあるだろうし、扱いが平等じゃと言うなら故人なら良いのかともなるし、、、
ただメグファンはヘビーでマニアックなコアな層だから個人的に反発は少ない気がするけどどうかな
657 :
ねぇ、名乗って:2007/09/10(月) 23:14:02 ID:oeZ9eh2e0
逆にペットの犬も家族の一員で平等だというベタな展開もアリカンな?w
658 :
ねぇ、名乗って:2007/09/10(月) 23:27:03 ID:re8Kcuws0
>>656-657 自分は犬扱いするなら本編ゲストで出した方がいいと思うな。
方法はあると思うし。
今は遠くに引っ越していった、いつも姉妹みたいに一緒に遊んでた隣の女の子、みたいな。
現実には℃-uteメンとメグの再会は(ファンの前では)叶わない夢だけど、
ドラマとしてなら可能、「メグとの再会」なんてそれだけで一本濃い話が作れるおいしいネタだと思う。
659 :
ねぇ、名乗って:2007/09/10(月) 23:42:43 ID:kfPs7SD30
出演できるならメグは以前近くに住んでいた従姉妹で引っ越しで長く会ってないとか、夢がある設定なら外国に留学してて一時帰国するとかもありかも
自分は娘。→ベリ&キュート移行組だけど最近はキュートにはまってる。べリの舞波卒業コンのDVDにラストの舞台裏に会いに来たのがメグらしいけどホントかな。確かにメグって呼んでるように聞こえるんだが
>>659 >従姉妹
はいいね。「住んでる所が現在遠くてなかなか会えない」設定も同意ス
しょっちゅう出られてもありがたみが薄れるし、現在は一般人な訳ですし…。
自分はいわゆる黄金厨→(ブランク)→キュートでハロ復帰
メンバーが七人もいて、しかも見た目も年齢もバラバラなのに全員が仲よさそうでまとまってるって
奇跡みたいなグループだよね。リターンするなって方が無理だよ
661 :
(^_^)bこっちもよろしく:2007/09/11(火) 23:25:13 ID:vFLpt24/0
>>662 栞菜の設定公認キタ━━━━━━━━━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━━━━━━━━━!!!!!!
それにしてもこれは嬉しい発言!!
文字に起こして次スレのテンプレに入れたいくらいス(。´Д⊂)
自分で文字に起こしてみました。
最後の栞菜の顔は特に気にしないで下さいw
从・ゥ・从:舞美「あたしたちが一緒のクラスになることないけどさあ、ドラマとかでやってみたいよね」
ノk|‘−‘): 栞菜「姉妹やりたい!!」
从・ゥ・从:舞美「ちょっと、それ夢」
ノk|‘−‘) :栞菜「姉妹でおんなじ学校がいい!!」
ノソ*^ o゚):早貴「楽しそうヤバーイ!!」
ノk|*‘ρ‘) :栞菜「七人全員が姉妹で、学校が一緒で、七人しか住んでないの家に…」
栞菜も舞美も2ちゃん見てるなw
舞美もマイケルジャクソン大好きとか言ってたし
「はあ〜あ……」
みんなが集まる居間の、壁に掛けられた八月のカレンダーの、
赤丸がつけられた日付けを眺めながら、マイはひとり大きな溜め息をついた。
印の上に、誰かがカラフルなペンで書き加えた『花火大会!』という文字の浮かれ方が
今日はみんなにとって特別な、楽しみな日であることを表していた。
それでもマイは、
大人ぶってはいるけれど、まだ小さいマイは機嫌の悪いときにそれを隠す事などできない。
ふくれっ面のマイは、せめて何か楽しいことでも思い出して気を紛らわせよう、と考えた。
まだ弱冠10歳とちょっとのマイだけど、生きていればそれなりの思い出がある。
特に夏は、マイの人生観を変えた大事な出来事があった季節だ。
――最初にマイの人生を変えたのは、夜店の縁日の関西弁のおじさんだった。
小学一年生の時に、みんなと行った夏祭りの縁日。
ママがいて、お姉ちゃんたちがいて、手を繋いで、何の不安も感じることが無かった。
夕闇の中の夜店の明かりがキレイで、多くの人の賑わいと祭り囃子に無条件に心が弾んだ。
そこでマイは夜店の可愛い金魚に惹かれ、姉たちと金魚すくいに挑戦した。
だけどマイの紙だけがすぐに破けてしまった。
「ねえマイもう一回やりたい」
「またマイの『もう一回』がでたよ」
姉のえりかにそう言ってからかわれた。
普段はみんなで一緒に遊ぶことが多い姉妹七人だが、いちばん年下で、
体も特に小さかったマイは、ゲームをしても何でも姉たちにかなわなかった。
年下だから、小さいからといって勝負をしても手加減してくれる姉たちではない、
むしろマイも含めて、みんな人一倍の負けず嫌いが揃っていた。
だから勝負に負けるたびに「ねえもう一回やろうよ」といって再勝負をねだるのが
マイの口癖であり、それをいつも姉たちにからかわれていた。
その時もマイだけもう一度挑戦したが、今度ももう少しのところで
紙が破れてしまって、金魚はすくえなかった。
「ねえもっかい〜!!」
「もういいよマイ、ウチらはすくえたんだから家に帰ったらこれみんなで飼おうよ」
「でもお……」
優しく姉の舞美が言ってくれたが、納得できないマイが夜店の軒先で駄々をこねていると
縁日のおじさんが、網で水槽の中の金魚をひょいと一匹すくってくれた。
「ええよお嬢ちゃん、可愛いからこれあげるわ。特別やで、特別」
そう言っておじさんが水槽の中でも特別に大きい黒い出目金をくれた。
「いいんですか?」とママが恐縮そうに訊ねていたが、マイは何のためらいも無く
ビニール袋に入れてもらったそれを受け取り元気に答えた。
「おおきに!」
マイの手に下げられた黒くて大きい出目金は、姉たちのどの金魚よりも立派に見えて
とっても誇らしかった。
そしてマイはこの時(女の子は可愛いと得なんだなあ)としみじみ思った。
『女の子は小っちゃく、可愛く、そしてお得に生きていくものだ』
という、マイの最初の人生哲学が誕生した瞬間だった。
……あの金魚をもらった時は本当に嬉しかったな。
思い出し、マイは塞ぎ込みがちな気分が少し和らいだ気がした。
そして再び壁の、カレンダーの横に掛けられている六つの空のハンガーと、
小さな赤い柄の浴衣に目をやり思った。
今年は赤い浴衣なんだ、マイのお気に入りの、あの年の夏と同じ……。
――次にマイの人生を変えたのは、出目金をもらってから何年後かの夏、
マイが小学校の中学年くらいになった年だ。
「うわー、すごい綺麗」「どれがいいかな!?」「あの赤い柄カワイイ!!」
自宅の居間で広げた七種類の浴衣の生地を前に、姉妹たちの瞳が輝いていた。
成長期の女の子が七人、一年経てば去年と同じ浴衣を着られる子はいなかった。
なのでママは、毎年夏前に浴衣生地を買ってきて、七人分の浴衣を手作りで新調してくれた。
下の子が成長したら、上の子が小さくて着られなくなったのを着せればいいのだが
普段着ではいつもそうやって下の子にお下がりを着せているので、年に一度の浴衣だけは
みんなに新しいのを着せてあげたい、というママの親心だった。
誰がどの柄の浴衣を着るかはじゃんけんで決めたが、マイは一番に負けてしまった。
マイは赤い地に花柄の可愛い生地が気にいってどうしてもそれが着たかったが、
「もう一回」という再勝負の願いはこの時あっさり却下された。
(お洒落に関する女の子の勝負は特にシビアなのだ)
「やったあ、じゃああたしこれ!」
じゃんけんで勝って赤い柄の浴衣生地を手に入れたのは舞美だったが、
マイはまだそれを諦めきれずにしばらく見つめていた。
「……いいよマイ、この赤いのがいいんでしょ?これマイにあげる」
マイの視線に気付いたらしい舞美が、そう言ってマイに赤い浴衣生地を手渡した。
「本当!?」
「うん、あたしもうお姉さんだから、本当はもうちょっと渋い柄がよかったんだ」
「ありがとう舞美ちゃん!!」
(いつも優しい舞美お姉ちゃん大好き!!)
恥ずかしくて口に出しては言えない言葉は、心の中だけで付け加え、
マイは満面の笑みで舞美に答えた。
そして、その夏はみんなで楽しみにしていた花火大会に出かけた。
ママと姉たちと、新しく作った浴衣を着て、ゆっくり歩いて夕方前には花火大会の会場がある
大きな川の川下に着いた。
「今から歩いていけばちょうどいい時間だね」
「今年は近くまで行って大きい花火を見ようね」
愛理と栞菜がわくわくした口調で言った。
二人だけじゃない、「今年は近くで花火を見ようね」とみんな張り切り、
川上にある花火大会の打ち上げ会場まで、河原を歩いていく事にした。
やがて浴衣を着ていてもやんちゃな癖が抜けない千聖が、歩きながら河原の石を一個拾うと
川面に向かってピュッと勢いをつけて投げ、石はピシッピシッと水面の上を二度跳ねて沈んだ。
石を水面で跳ねさせる「水切り」という遊びだ。
「おー、やった!」
千聖が浴衣だというのにガッツポーズをして飛び跳ねていた。
みんなもそれを見て石を拾って川面に投げ始めた。
「やったー、できたー!」「あー、失敗だ」「今の惜しかったのにー!」
マイも挑戦してみたが、マイと愛理とナッキーが投げた石だけがポチョンと軽い音を立てて
そのまま沈んでいってしまった。
「よーし」「今度こそ!」
姉妹たちみんなが「もう一回」となり、歩くのが止まってしまった。
面白そうなことを見つけると真似せずにはいられない、そして何かに夢中になると
他を忘れてしまう、まだまだみんな子供だった。
ママはそれを後ろで静かに見守っていてくれた。
そして誰かが投げた石が、水面の上を滑るように、低くてするどいスピードで、
川の向こう岸まで届くような勢いで跳ね続けていった。
「すごーい舞美ちゃん!!」「ちょっと、今何回跳ねたのー!?」
「へっへっへ〜」
舞美がちょっと照れながら、でも自慢気に笑っていた。
小学校に入学してからすぐにソフトボールを始め、三年間ソフトボールをやったあと
男の子に交じって軟式野球まで始めてしまった体力自慢の舞美は、肩も抜群だった。
そして、そのままみんなでしばらく石投げを続け、愛理とナッキーの石は跳ねるようになったが、
マイだけが何度投げても成功できなかった。
「わぁ、もうそろそろ行こうか、遅くなっちゃう」
ようやく舞美が時間に気をやり、みんなをうながしたが、マイは一人納得がいかなかった。
「やだ、マイまだやる!」
「でも、今年は近くで花火を見るんでしょ?早く行かないと場所が無くなっちゃうよ」
「でもお!」
「じゃあ、もう一回だけだよ」
「うん!」
マイは(これが最後!)と掴んだ石を力いっぱいに川に投げたが、
一度沈んだ石はそのまま水面に姿を現すことはなかった。
「さ、もいいいでしょ?行こ」
「……もう一回やる!!」
「マ〜イ……」
返事も聞かずにただ掴んで放り投げた石は、乱暴な音をたてて沈んだだけだった。
……もう、なんでマイだけできないんだ?
悔しくて、悲しくて、腹立だしくて、よくわからない感情にかられたマイは
何かに当たらずにはいられないように、浴衣の右袖を乱暴に振り回した。
「もう、この袖が邪魔なんだよ!」
「マイ、せっかくママが作ってくれた浴衣なのに!」
いつも優しい舞美のいつにない強い口調に気おされたマイは、
それでも意地になって答えるしかなかった。
「違うもん、この浴衣のせいだもん!こんな浴衣着てるからいけないんだもん!!」
「マイ!!」
「だってえ!!」
そう言って再びしゃがんで河原の石を手に取ったマイを、
舞美はしばらく無言で見つめていたが、やがてプイと向こうを向いてしまった。
「ママ、えり、行こ!」
そして舞美はママとえりかの手をとると、
そのまま花火大会の会場の方へスタスタと歩いていってしまった。
ママが困った表情でマイを振り返っていたのが見えた。
歩いていくママと舞美とえりかを見て、愛理と栞菜とナッキーが迷っていたようだったが、
やがて舞美とママの方について行ってしまった。
「千聖も行けばいいよ、マイはここでひとりで石投げやるもん!」
「でもお……」
「いいじゃん、みんないっちゃえばいいじゃん!!」
ただひとり残ってくれた千聖にも、マイは怒鳴ってしまった。
千聖はそれを聞いて悲しそうにみんなの方に走って行ってしまった。
「……いいもん、マイはここで石投げやるもん!」
そう言ってマイは、日も暮れてきた河原で、ひとりで石投げを続けた。
だけどももう「水切り」を成功させることなど考えていなかった。
頭の中は別のこと、さっき別れた姉たちのことでいっぱいだった。
ふん、なんだよ舞美ちゃんも千聖も。
元はといえば千聖が石投げなんかするからいけないんじゃないか。
……そして、さっきの、悲しそうな千聖の顔が頭に浮かんだ。
いっつも一緒に遊んでくれる優しい千聖、
マイのために浴衣の赤い柄を譲ってくれた優しい舞美ちゃん、
ママが作ってくれた可愛い浴衣、
みんなが楽しみにしていた花火大会、
それなのにつまらない意地を張って、全部を台無しにしてしまって……。
暗くなった河原に寂しく石が落ちる音が響いた。
涙でにじんだ視界に、ぼんやりと川の流れが映っていた。
マイは、このとき、何度「もう一回」と願っても、返ってこない時間があることを知った。
……すいません後半は明日の夜貼ります。
長い話は一晩で貼るのはキツイす。
いつか本当に栞菜に読ませられるようないいお話が書きたいなあ。
乙です!!楽しみに待ってます
>>665 そう思いたくもあり、思いたくなくもあり…。
もし見てたら、めったな文章あげらんなくなってしまいそう(^^;
>>674 だだっこマイマイいい感じです。
気長に気楽にいきましょう。w
……なんだよ、楽しいことを思い出すはずなのに、何で悲しいことを思い出すんだ!?
おかげでますます気が滅入ってきちゃったじゃないか、
もう起きてるのもシンドくなったマイは、掛けてある浴衣の前で横になった。
何か夏の楽しい思い出、嬉しい思い出……、
ゴホッゴホッ!
居間に敷かれた布団に横になり、本当は今日着るはずだった壁の浴衣を眺めていたら
それまで我慢していた咳が急に出てきた。
「あーあ、マイもいっしょに花火が見たかったな……」
そしてマイの口から、咳と一緒にずっと我慢していた言葉が漏れた。
そりゃ夏風邪なんてひいちゃう自分が悪いんだけどさ、今頃みんなは花火大会を
楽しんでるんだろうなと思うと、不機嫌を通り越してなんだか悲しくなってきてしまった。
せっかく弱音を吐かないように気張ってきたのに、何だか気が抜けてしまった。
そしたら急に体がつらくなってきた気がした。どうしよう、熱も上がってきたみたいだ。
だんだん不安になってきて、とうとう声が出てしまった。
「……舞美ちゃあん」
「どうしたマイ、体ひどくなってきた?」
そう言って、舞美が布団の上に横たわるマイの顔を上から覗きこんだ。
ああ、舞美ちゃんだ。
マイはその顔を見て、声を聴いただけでホッと安心できた。
「ううん、大丈夫。いるかなと思って言ってみただけ」
「なあにそれ、ちゃんといるから」
よかった、ちゃんと側にいてくれたという安心感を感じると、
心の余裕とともに舞美に申し訳ない気持ちが芽生えた。
「……ねえ舞美ちゃん。ゴメンね、マイのせいで舞美ちゃんも花火見にいけなくて」
「何言ってんの、マイひとりで置いていける訳ないじゃん」
舞美が優しい笑顔で答えた。
その言葉を聞いてマイは思い出していた。
ああ、あの時といっしょだ、と。
――ひとりで石投げを続けると意地を張り、暗くなった河原に残ったあの日。
もはや「水切り」の成功なんてどうでもよく、かと言って今さら姉たちを
追いかけていく訳にもいかず、ただ途方に暮れながら川面に石を投げ続けたあの時。
ひとりぼっちの時間はやたらと長く感じた。
やけになり、手に持った石を、川に叩きつけてやろうと
腕を大きく振りかぶった瞬間、遠くから大きな声が聴こえた。
「だめだよマイ、そんなに上から投げてちゃ!」
「……舞美ちゃん!?」
マイが声の方を向くと、舞美がこちらに向かって歩いてきていた。
「マイさあ、そうやって上から投げるからできないんだよ。
もっと腕を横にして、勢いよく投げなきゃダメだよ」
そう言ってマイの横まできた舞美が、自分の右腕を横からブンブン振ってみせた。
「舞美ちゃん、花火のとこ行ったんじゃないの?」
「向こうの土手のとこから道路に上がって、どこかお店探してたんだよ」
舞美の左手には布の紐が握られていた。
「舞美ちゃん、その紐……?」
「マイ袖が邪魔だって言ってたでしょ、だからこれで袖を縛れば邪魔にならないと思ってさ」
それは帯の下で、浴衣の胴の部分を巻いて締めるための布の紐だった。
「もう、おトイレで浴衣脱ぐのすごい大変だったんだからね」
「……舞美ちゃん、もう怒って行っちゃったかと思った」
「何言ってんの、マイひとりで置いていける訳ないじゃん」
「舞美ちゃん!!」
跳びつき抱きついてきたマイの頭を軽く撫でたあと、舞美は言った。
「さ、やるよ!」
「うん!」
「ちゃんとママに教わってきたんだから。袖のここのところに紐を当てて、と」
舞美は持っていた紐にマイの浴衣の袖を巻きつけると、それをマイの体に回しはじめた。
マイはその時、舞美に謝らなきゃいけないと思い口を開いた。
「ねえ舞美ちゃん、マイさあ……」
「ただのわがままじゃないって知ってるよ。
マイはさあ、みんなができる事は自分もできないと嫌なんでしょ?」
「……」
「それでみんなの足手まといになるのが嫌なんでしょ?」
「…………」
小さい頃から七人全員で遊ぶことが多かった。
みんなでいろんな遊びをした。
まだ小さいからできない、と言われるのが嫌だった。
マイがいる方が負ける、と言われるのが嫌だった。
足手まといが嫌だった。邪魔になるのが嫌だった。だから必死にみんなに追いつきたかった。
だからつねに「もう一回」って言い続けて……。
「舞美ちゃん……」
マイは泣きたくなったが、自分の体を見たらそれどころではなかった。
「たしか、こうして、こうするんだよ……、あれ!?」
マイの体は、舞美の不器用な手付きで巻かれる紐でグルグル巻きにされていた。
もう、ここは泣かす場面じゃないのかよ!?
そしてマイの感動も憤りも、いつもの舞美のアバウトな一言で締めくくられた。
「おっかしいなあ……。ま、いっか!」
きっと「たすきがけ」ってのをしたいんだろうな、とマイは思っていたが
出来上がった形は、とてもそうは呼べない不恰好なものだった。
それでも、浴衣の袖ごとマイの体に、舞美の力で強引に締められた紐で、
体だけは窮屈だがマイの右腕は全然楽に動くようになった。
「さ、これで袖は邪魔にならないよ。
これで、さっき言ったみたいにもっと横から投げてみな」
「うん!」
「もうちょっとじゃん!マイさあ、腕に筋肉ないから力で投げようとしてもダメなのよ。
もっと力を抜いて腕をしならせるみたいに投げてみな」
「うん!」
「おしーい!そしたら今度はもっと腰からひねるように投げてみな」
「……よーし!!」
一投ごとに段々上達していく感触を感じたマイが気合を込めて投げた次の石は、
ヒュッという今までとは違う手ごたえとスピードで、水面を見事三回跳ねてから姿を消した。
「やったあー!!」「できたじゃんマイー!!」
マイと舞美が飛び上がって喜ぶと同時に、二人の後方から歓声が上がった。
「おめでとー!!」「さっすが!!」「やったじゃんマイ!!」
マイが驚いて振り返ると、河原の後ろの土手のところにママと姉たちが立っていた。
千聖がガッツポーズをしていてくれた。ママが微笑んでいるのが見えた。
そのとき、まばゆい光とともにドーンという大音響が河原に鳴り響いた。
川上で花火が打ち上げられる時間だった。
「うわー」「きれーい」
みんなが花火に目を奪われた。
今ならさっき言えなかったことが言える気がする。
マイは隣で花火を見上げる舞美の顔を見て言った。
「……舞美ちゃん、さっきはごめんね」
「ううん、何てことないよ。それよりさあ、花火ここからでも充分綺麗だね!」
「うん!」
……後悔は、過ぎた時間は、返ってこないかもしれない。
けれどもマイは、この日「失敗をやり直す時間なら必ずやってくるんだ」ということを知った。
後ろに温かい家族を感じて、大好きな舞美と手を繋いで見上げた綺麗な花火。
忘れられない夏になった。
「ちょっとマイ、何で寝てんの!」
舞美の大声に慌ててとび起きたマイは、寝ぼけ眼であたりを見回した。
浴衣を着たお姉ちゃんたち、赤い浴衣、カレンダー、花火大会……、
「ああ、そうだ、今日は花火大会!!」
思い出した。みんなが浴衣の着付けをしてもらってる間に、あんまり退屈なんで
昔のことを思い出してて、そのうち寝ちゃったんだ。
「そんなとこで居眠りしてて、去年みたいに夏風邪ひいてもしらないからね」
「そうだよ、今年こそみんなで花火大会に行くんでしょ?」
えりかと舞美があきれて言った。
「だってマイの番、遅いんだもん!!」
「マイが自分で浴衣は窮屈だから一番最後でいいって言ったんじゃん!」
「はい、はい、機嫌直して。浴衣着せてあげるからそれ持ってきな」
「……うん!」
悔しい、ずっとむかついてたのにあっさり言い返された。
……でも、何か大事なことを思い出せた気がするからいいや。
おととしの夏、マイに河原で石投げを教えてくれた舞美ちゃん。
去年の夏、風邪をひいて寝ていたマイとずっと一緒にいてくれた舞美ちゃん。
今年も大好きな赤い柄の浴衣だ。
マイは着付けをしてくれる舞美の顔をじっと見つめていた。
「何笑ってるのよマイ、もう機嫌直ったの!?」
「ふーん、別に!」
「こっのー!」
口ではそう言ったが二人とも笑っていた。
「みんな浴衣着たね?忘れ物ないね?じゃ、行くよー」
「おー!」「屋台も見ようね!」「楽しみ楽しみー」
舞美の号令でみんなで家を出た。
「ねえ、そこまでみんなで手繋いでいこうよ」
「いいよ」
マイの提案で、大通りに出るまでみんなで手を繋いで歩くことにした。
……今年はママがいないけれど、マイを包んでくれる大きな愛は変わらない。
遠くから、かすかに祭り囃子が聴こえてきた。
マイの心は、あの時のように弾んでいた。
……けっきょくまとめきれずにgdgdで終わった印象
しかもまたこんな時間だorz
頭切り替えて次のネタで頑張るス
>栞菜「七人全員が姉妹で、学校が一緒で、七人しか住んでないの家に…」
ドラマとしての話とはいえ、これって栞菜の「朝から夜まで一日中ずっと七人でいたい」って
願望の表れのような気がする
後入りの、あの大人しかった栞菜が今やすっかり地を出し、これだけ「みんなといるのが楽しい」って思える
℃-uteっていいグループなんだなと思ったよ
>>684 作家1号さん、乙でした。
今回はいつものツッコミ役から、末っ子モード全開の舞ちゃん。w
舞美は早いうちから、いい母親役だったんですね。
「水切り」のもうひとつのコツは、
平らでスベスベした石を選ぶこと。
いやーなーつかしぃなーぁw。
687 :
ねぇ、名乗って:2007/09/15(土) 10:43:33 ID:+asmVysm0
千聖が「トランペットが欲しい黒人の子供」状態になってペットショップのショーウインドウに
へばりついてる絵を思いついた。
犬初登場回のサブタイトルは『キュートガヤッテキタ』にしよう。
688 :
ねぇ、名乗って:2007/09/15(土) 20:16:07 ID:+asmVysm0
いつの間にかこのスレも496KB
たしかスレの容量って512KBまででしたよね?もっと区切って貼ればよかったと今さら反省
しばらく次スレ用のテンプレの話とかウダウダしていていいですかね?
もうしばらく続きがやりたいス
℃-ute七姉妹物語
もしも℃-uteの七人が姉妹だったら?を妄想するドラマ小説スレ。
長女 舞美 高二 陸上部(幽霊部員)
母親代わりを自認し頼れる力持ちだがドジ。基本的に大雑把。
次女 えりか 高一 帰宅部
何事もユーモアで切り抜ける現代っ子だがナイーブな一面も。舞美好き。
三女 早貴 中三 文芸部
優等生でしっかり者。フォローにまわる損な性格。あだ名は泣き虫さき=なっきぃ。
四女 栞菜 中二 新体操部
潔癖症で男のコが苦手の女のコ好き?感受性が強く、どこかセンスが変。
五女 愛理 中一 吹奏楽部
女の子らしく優しい。あがり症で大人しいが、マイクを持つと性格が豹変。
六女 千聖 小六
男勝りで正義感が強く、やんちゃ。実はリボンや花柄が好きな女の子らしい面も。
七女 舞 小五
自由奔放でマスコット的存在。ツッコミが鋭い。趣味はサングラス集め。
690 :
ねぇ、名乗って:2007/09/15(土) 20:38:30 ID:ORfHgO4v0
オレ的もうひとつの七姉妹物語を考えてる
村上愛を従姉妹にした設定があったがそれを膨らませて母親同士が二卵性双生児、矢島と村上が同じ双子だが大人の事情(跡継ぎがいないが子供に恵まれなかった等)で養子に出される
その後村上家にも待望の子宝が誕生(えりか、愛理、舞の計三人)
また矢島家にもナッキー&カンナの双子(二卵性)と千聖(計五人)
その後両家族の不慮の事故で従姉妹七姉妹が一緒の家に住むことになる
とりあえずこんな感じ
実際問題として七人も産むとなるとリアリティが厳しいと思うし(確かに大家族のテレビドキュメントはあるが)従姉妹同士の方がある程度顔が似てなくても融通が効く
感想があればよろしくです
・芸スポ板に立った「鈴木愛理写真集スレ」の、何故か「こんなドラマが見たい」という妄想から派生
・基本設定は「℃-uteの七人が姉妹だったら?」のみ
あとの設定は書き手次第で自由に。何でもありで描いていきましょう。
・「こんなシチュエーションは萌える」的なネタ投稿も歓迎!
・お話進行時以外は ℃-ute関連なら多少のスレ違いでもOK。
>>690 ちょうどテンプレ案2に
>・基本設定は「℃-uteの七人が姉妹だったら?」のみ
> あとの設定は書き手次第で自由に。何でもありで描いていきましょう。
って加えたとこです。
読み手が混乱しないような配慮(最初に自作の設定を明示するとか)さえあれば、
基本設定違いの話(シリーズ)が進むのも大歓迎す、是非!!
次スレはドラマっぽく、「Part2」とかでなく
お話収録を模したDVDっぽく「「℃-ute七姉妹物語Vol.2」か、
ドラマっぽく「℃-ute七姉妹物語・シーズン2」のどっちかがいいな。
>>688 レスが620→688で453KB→496KBてことは、68レスで43KB増加。おおざっぱに
見積もって723レスくらいで満杯になりそうですね。
>>689くらいシンプルでもよさそう
です。
>>690 以前出てきた「父親は音楽家」というネタを拾って、「芸術家≒女好き」という妄想を
当てはめ、父親が音楽家として大成したあとに、正式に結婚した良家出身の奥さんと、
長い下積み時代に彼を支えた庶民派の恋人、プラス「夜の女」的な愛人が存在して
いて、それぞれのあいだに子供が生まれた…っていうのを考えたりしてましたw。
>>693 「℃-ute七姉妹物語 第2巻」てのはどうでしょう。
>>694 テンプレと数えナンバーは、実際スレ立てる事になる人に任せちゃいましょうよ。
正直何でもいいです。場があるだけで有り難いです。