海外のハロプロ関連記事

日本一有名な女性アイドル｢モーニング娘。｣の軽やかな14人の少女達がステージ上ですすり泣いている。
今夜で2人のメンバーが脱退するのだ。フリフリの赤い卒業用のドレスを身にまとい、花束にしがみついて
並び立つ。加護亜衣と辻希美の顔は涙にあふれ、悲しみの表情さえ見てとれる

二人の少女は12歳で加入した時から無邪気なキャラクターで絶大な人気を誇ってきた。感動を誘う音楽が
鳴り響き、涙する他のメンバーが一人一人去り行く。仲間に別れの言葉を告げていく。代々木体育館に集
まった13000人のファンの慟哭と共に・・。別れの儀式は終わり、その場の気持ちを表すにふさわしい曲
｢I　Wish｣が始まる頃には何千もの赤と青のペンライトが燃え上がっていた。感極まった息が詰るほどの
濃厚な空気がそこには流れていた。これらは妙な宗教行事でも茶番でもないらしい。そこにある涙も喜び
も全て本物なのだ。長年行動を共にし、数々のステージや仕事を疲れる暇もない環境で一緒にこなすこと
で少女達の間には真の絆が生まれていたのだ。幼い少女達の生き様は加入後から徹底的にカメラの前
に収められ、ファン達もそれに感情移入していく。とはいえファン層は普通ののティーンエージャーではな
い。同じ年頃の少女の父親でもおかしくような20台後半から30台後半の。日本人男性が主なファン層な
のだ

日本人の若さへ欲求は、くりくり眼の若いアイドル達を商品にした一大エンターテイメント産業というもの
を作り出した。部外者にとってはそれこそ気味の悪い世界かもしれないが、このシステム自体はさほど
珍しいものではない。よく考えれば、西洋のブリトニースピアーズやスパイスガールさえも日本の手法を
真似て売り出されたとさえ思えてくる。アイドルをセクシー路線へ転換しての再生産、ドキュメント方式
や公開オーディションでの才能の発掘。グループ間の先輩後輩の体系・・・全ては極東の国で何十年
もの間利用されている手法だ。世界第二位のマーケットを誇る日本のミュージックシーンはアジア全
体へと影響を及ぼしている。

モーニング娘。とは45名の様々な年齢層（7才から22才程度）からなる女性アイドル集団である｢ハロー
プロジェクト｣の中心的存在である。これらの女性はファンの飽くなき欲求に応えるため次から次へと新
しいユニットへとシャッフルされていく。個々のユニットには特徴があるようで、｢カントリー娘｣というの
は。地方出身のアイドルを集めたもので、他にハワイ出身のココナッツ娘。地球温暖化と戦う、水と木
をあしらったドレスをまとった｢エコモニ｣なる。ユニットもある。｢ミニモニ｣への参加条件は”身長が150
cm未満”らしく、お風呂の唄からケーキの作り方、ジャンケン遊びまで様々なテーマの曲を発表し幼
児や｢幼児が好きな大人｣まで多大な人気を誇った。ミニモニはオリジナルのアニメやおもちゃ等まで
関連して発売しおそらくハロプロのシャッフルユニットとしては一番の成功を収めただろう

数ヶ月ごとに新しいグループが生まれる中で真のファン以外は
誰が何をやっているのか性格には把握できまい。モーニング娘。自体も97年の誕生後、卒業や新加入
で6回以上メンバーの増減を繰り返してきた。メンバー数は5から一時は16まで膨れ上がり、今活躍す
る｢7期以降｣の10人のモーニング娘。には初期のメンバーは一人もいない。代々木体育館での感動
的なお別れは、この双子たちとの永遠の別れではなく”あいぼん”と”のの”は新デュオである｢W｣と
して既に活動を開始していた。卒業コンサートにおいても二人はその新曲を披露している。バックダ
ンサーは下部組織のハロプロキッズから7歳から10歳までの制服を着た子供だ。

ポピュラーミュージックのプロモーションにおいてラジオが伝統的に主要な役割を果たす西洋と異なり、
テレビがJ-POPの本来のメディアである。音楽は日本の（アイドルとかタレントとかさまざまに目される
）ポップスターのキャリアの一面に過ぎないのである。モーニング娘はレコードをぞくぞくと作るだけで
はなく（少なくとも4枚のシングルと一枚のアルバムを欠落なく年に一回はつくっている）彼女たちの
顔は毎週、連ドラ、ポップショー、彼女たち自身の日曜日のバラエティーショー「ハロー！モーニング」
で、テレビスクリーンの上を通り過ぎる。

彼女たちはアイスティーからアクネクリーム、プリンターまであらゆるものを売るコマーシャルにも登場
する。ジングルは後にアルバムのトラックとし発売される。しかしそこでは終わらない。モーニング娘。
は彼女たち自身の映画やミュージカルのスターであり、またフットサルチーム、スポーツフェスティバ
ルもあるのだ。あらゆるものがＣＤやＤＶＤの継続的なリリースのために撮影されている。ハロプロは
平均週に一本リリースしている。

これはレコードの売り上げだけで年に5千万ポンド以上売り上げる無慈悲な金のなる木である。その
有効性について検証が必要なら、モーニング娘。の男性ファンを見るだけでよい。つまりオタクである
。そのフェティッシュな献身は、彼らが通常の音楽ファンのみならず、日本社会のメインストリームか
らもかけ離れた種族であることをよく示している。（ポップグループから漫画、ア二メあらゆるものを含
む）日本のオタクマーケットに対する商品の売り上げは２９００億円になると推定される。

前述のように、代々木公園の外のコンコースはオタクでいっぱいである。彼らは夏のうだる暑さからの
一時の安らぎを与えてくれるミニキャンプで、何時間もの間をモームスメンバーの微笑んだ顔の印刷
された扇子で涼みながらのんびりすごす。あるものはここにくるために何時間も旅行してきている。あ
る少年のグループは５００ｋｍ近くを神戸（日本の西南部）から来ていた。彼らの前の地面に置かれた
ミニステレオはモーニング娘。のシングル「女子かしまし物語」をやすっぽいく鳴らしたている。そして
三人組があたかも秘密の腕木信号での交信のように、空に向かってずっと振りマネをしている。彼ら
はグループがビデオで演ずる複雑なダンスステップや手のスイングを真似ているのである。

大きい天幕の露店はコンコースでもっとも人気がある。最も売れるのは、大きなセロファンでラップされ
たつやのあるそれぞれのメンバーの写真である。それはトレーディングカードのようにパックされてお
り、福袋のように売られている。抜け目ないファンは写真のコレクションを地面に並べている。彼らの
コレクションをコンプリートするためにレアな写真を交換する、あるいは単により人気のメンバーのと交
換するような人々をひきつけているのだ。

ハードコアなオタクは集団で明るい色のロングコート（ハッピ）とヘッドバンド（ハチマキ）をつけている
。それは日本の野球ゲームの観覧席を、がさつなシュプレヒコールで支配している「応援団」と呼ば
れる組織化された応援集団に由来するユニフォームである。モーニング娘。オタクはまったく同じ目
的のために奉仕しているのである。彼らのヘッドバンドは好きなメンバーの名前でカスタマイズされ
ている。プラスティックのスリーブで守られている少女たちの６Ｘ４の写真が彼らのコートにメダルの
ようにピンでとめられている。

人懐っこい丸顔のある男性は「あいりさクラブリーダー」とよめる名詞を渡してきた。それは彼の唯
一の使命がモームスの加護亜依と新垣理沙の魅力をプロモートすることにあることを示している。
彼の黒いハッピは彼の太った体をあたかもガウンのように包んでいる。背中に縫い付けられている
ものは、彼の背中を横切り、コートの縫い目の下を走る弧にいくつかの手製の布のひまわりである。
真ん中には二列にならぶ巨大な丸いあいぼんのバッジがあって、それは彼女がグループに入った
ときから現在に至るまでの肉体的な成長を年齢順に示している。

タケダは38000円（約２００ポンド）を今夜のショーのために支払った。最もよい席は二倍の値段で売ら
れる。というのもチケットは入手困難だからだ。コンサートはほとんどオフィシャルファンクラブからの申
し込みを通じて売切れてしまう。一般の人が加わる機会を得る前にである。ヒラノは彼のチケットのた
めに、携帯電話でオークションに入札しなくてはならなかった。今では彼の首にラミネートホルダーの
なかで賞品のバックステージパスのようにかけられている。

彼は毎年卒紺に出席しているが、それらをよく思い出せない。なぜなら彼はいつも感情で打ちのめさ
れるからである。「わたしは大変さけび、泣く。私は心を失い、そしてそれは死ぬような感覚なのだ。」
彼は私に語った。「しかしこれは私がはめをはずす唯一の機会なのだ。」これがなぜ人々がここにき
て、彼らの好きな少女たちに狂い、叫び、そして感激するかということの理由なのである。

昨年モームスメンバーの石川梨華（彼女の揺るがない祝福された表面的な顔つきからチャーミーとい
うあだ名がついている。）による無防備なバックステージでのコメントについてテープがリークされたと
き、ファンサークル少女たち自身が彼女たちの喜んでいるファンたちについて考えていることが話題に
なった。「彼らを見て」彼女は前列のファンを指して悲鳴を上げた。「大の大人があんなふうに叫んで
る。信じられない。馬鹿っぽくて。」

　しかし、どちらかといえば、モームスがこのような奴隷的な偶像崇拝を引き起こしているという事実
はそのクリエイターである３７歳の大阪出身の歌手から転進したスターメイカー、つんくという名でしら
れている男の責任である。彼は最初からこのように企画していた。

出回っている写真では、つんくは虚飾にみちた男に見える。彼は少年のように装い、そのオレンジ
に染められた髪はつんつんにたてられ、年齢や性別はメイクであいまいにされている。彼は漫画の
マイケル・ジャクソンのように見える。彼は自身の名前を♂マークー彼の男らしさを肯定するささい
なひけらかしーとともにサインする。

モーニング娘。は１９９７年、つんくと彼のバンド、シャランＱが「アサヤン」というテレビ番組で新しい女
性歌手をさがすオーディションを開いたときに結成された。５人の敗者への恩恵として、つんくはある
挑戦を課した。もし彼女たちが彼によってプロデュースされた曲を５万枚、彼女たち自身の工夫で４
日以内に手売りすれば、彼は彼女たちの専属のプロデューサーになることを認めると。

５人はレコードストアや野球場でパフォーマンスを演じているところや、ＣＤを街角や学校で家族や友
人に売り歩くところを撮影された。そしてなぜか彼女たちはゴールに到達したのである。彼女たちの
デビューシングル「モーニングコーヒー」は初々しい顔の少女たちのグループを突然のセンセーション
へと向けたのである。この歌は快活な６０年代スタイルのハーモニーで特徴付けられており、おちゃめ
な歌詞は−ほぼその問題の飲み物が性交の後のものであるということを暗示している。　ー省略
（モーコーの歌詞の英訳）ー。後に続くシングルは（そのために３人の少女が加えられた）彼女たちの
アピールを確かなものにし、そしてわずかの間にモーニング娘。は日本でもっとも売れる女性グループとなった。

「それはちょうど（経済的な）バブル崩壊の後だった。」つんくはグループのデビューを取り巻く事情
についての最近のインタビューで言った。「人々はもはやお互いのためにお金を使うことに興味を失っ
た。以前、男はお金を女のために使っていた（逆もまた然り）。しかしその後人々はお金をただ自身
のためにのみ使うようになったのである。入れ込むこともないし、がむしゃらにつきすすむものもない
。私はマーケットにギャップを見つけた。私はただマーケットにギャップを見つけ、そこにボールを正
しく投げただけなのである。モーニング娘。は観衆にお金を彼女たちに使わせたくなるようにしたの
である。」

　つんくは別の種類のバブルを育てた。モーニング娘。によって現れ出たある種の楽しいサービス業
である。しかし彼の本当の得意なところは日本人男性の心情に入っていくことができることであると
感じられる。モーニング娘がグループ写真に並んでいる様子は、彼女たちを歌舞伎町（東京の歓楽
街）のホステスクラブの外においてある電光の広告板の上で宣伝されている女性たちの輝く笑顔と
交換できるようなものである。

Svengaliのようにマネージャーあるいは父親像として活動することで、つんくのグループに対する影
響力はあらゆるレベルで明らかである。スタジオの外でも「プロデューサー」（彼はしばしばそう目さ
れる）は彼の預かった子たちとコンタクトをe-mailやビデオメッセージでとりつづけている。セッション
ミュージシャンやアレンジャーたちとともに働きながら、つんくは事実上すべてのハロープロジェクト
（彼の一団）の曲を書き、プロデュースしている（信じがたいほどに年間１００曲から２００曲）。そし
て個人的に彼の預かっている若い子にスタジオで彼の望むパフォーマンスをさせるためにコーチを
したりする。あらゆるリリースが「つんくプロデュース」という伝説を広めるのである。またたいてい、
彼はバックコーラスを提供している。彼のざらざらしたバリトンが少女たちのシマリスのようなコーラ
スの対照として働くのだ。

ポップミュージックとして、ハロプロはアヴァンギャルドの境界線上にある。観衆を興奮させるように
デザインされていながら、つんくの次々と撃ちだされる作品は、５０年間の音楽の歴史の不調和な
かたまりのように響く。ひとつの曲が奇妙なことに、パワーロック、ディスコ、そして東欧のフォーク
ソングを通して疾走する。リフは恥知らずにも西洋と日本のポップ両方からリサイクルされているの
である。

つんくの音楽は（そしてJ-POP一般は）長い伝統を引き継いでいる。過去の世紀の間日本におけ
る歌謡曲という優れた形態は童謡であり、そして演歌という固有のフォークブルースであった。後
者は音楽に乗せた抗議のスピーチとして始まったが、今ではむしろフランスのシャンソンと比較さ
れている。西洋音階がはじめて日本に紹介されたのは１９世紀のころであり、それは子供たちの
教育のツールとして用いられた。第二次世界大戦後にはなによりもアメリカの若者文化の洪水
が日本の音楽の主眼点のもうひとつの激しい変化の原因となった。

J-POPの歴史ははっきりとした時代区分で記し付けられる。５０、６０年代は絶え間なくロカビリや
エレキ、そしてグループサウンズによって支配されていた。ビートルズによって直接インスパイヤ
されたモップトップヘアに、テイラードスーツ着た美しいさえずりの波、地方色あふれるビートの楽
団である。７０年、８０年代はアイドルの黎明期である。そして９０年代から現在までが「プロデュ
ーサー」によるのである。

日本の芸能界においてジャニー喜多川ほど不気味な存在はない。彼は日本の大物芸能人たち
のマネージメントを行っている、Johnny's & Associates という芸能事務所の創立者である。「彼
は日本の芸能ビジネスの草分け的存在です。」人気歌手宇多田ヒカルの父親兼マネージャーの
宇多田照實は語る。「しかし彼が扱うのは少年だけであるというのが非常に特殊です。」

喜多川は日本で４３年間にわたって独占的に男性アイドルグループを生み出してきた。日本のテ
レビ局に対する彼からの（スケジュールからうちのタレントを引き上げますよと脅す）電話は、競
合する芸能事務所の野心を押しつぶすのに十分である。所属タレントたちは「ジャニーズ」という
総称で呼ばれるほど広く浸透している。彼らの肖像は写真が公式サイトにさえも載らないほど厳
重に管理されている。この機密区域は喜多川自身にまで及んでいる。

彼がインタビューに応じたり所属タレントたちと一緒に公の場に姿を現すことは決してない。ほ
んの一握りの写真によって彼の存在が知られているだけである。彼は７０歳代前半であると言
われているが、その生い立ちに関する詳細はほとんど得られない。彼の公式な履歴はまるで
神話のようである

喜多川“Johnny”ヒロス（原文ママ）はアメリカで生まれ、カリフォルニアで教育を受けた後、５０
年代の終わりに来日した。東京のアメリカ大使館で働いてるとき、代々木公園で野球をしている
少年たちを見て、自分がマネージャーをやるからアイドルグループを結成しないかと持ちかけ、
彼自身の名にちなんでジャニーズと命名した。（異説によると彼らはすでにミュージシャンとして
別の事務所と契約していたが喜多川に引き抜かれたとも言われている。）

１９６２年、東京の日劇で一週間の長きに渡ってポマードにオールバックな人々が最新スタイルの
音楽を演奏する毎年恒例の音楽祭「ウエスタン・カーニバル」においてジャニーズはデビューした。
当局はロカビリーやエレキが与える影響を憂慮するあまり十代の若者の公演への参加を禁じよう
とした。

しかしジャニーズが若者を堕落させるような恐れはなかった。喜多川がモデルとしたのはロックンロ
ールではなくてウエストサイドストーリーのようなブロードウェイミュージカルだった。彼の天才的特質
は若者向けの音楽を俗受けするダンスと融合させて大量販売可能な商品にしたことだった。彼が男
性ポップス歌手グループを作った日本で最初の興行主であることは確かだが、ひょっとすると男性バ
ンドを作って売り出す欧米流の手法に影響を受けたのかもしれない。彼が本格的に成功を収めたの
は１９６８年のフォーリーブスによるものだった。フォーリーブスは大人になる直前のティーンエイジャ
ーで構成されたグループであり、そのさわやかな容姿とサウンドで大衆の心を捉え、のちのジャニタ
レの方向性を決定づけた。

喜多川は１０歳ほどの年齢の少年たちを募集しジャニーズJr.として知られるタレント集団に補充する。
ジュニアたちは既存のグループのバックダンサーとしてデビューすることによって、自らのグループが
始動する前にファンに顔を売る。彼らは事務所が経営する特殊な学校に隔離されて、歌やダンスや演
技やアクロバットの厳しいトレーニングを受ける。また喜多川が少年たちを指導することに強い個人的
関心を抱いていることもほのめかされている。

1998年、元フォーリーブスの歌手キタコウジが12巻の日記(親愛なる光GENJIというタイトル)を出版した。
それは、当時最も人気のあったｼﾞｬニーズグループ、ローラースケートの少年バンドに当てられた公開手
紙という形をとっている。その中で、彼は喜多川にレイプされ長期間にわたって性的関係を強いられた
ことを主張した。その少年バンドの上司は性的な行為の見返りによってアイドルの仕事を推し進めるこ
とにより贔屓のシステムを操作しているといわれている。

１９６５年、元ジャニーズジュニアのハルモトジュンヤが他の過去の他のアイドルたちの経験を集めて分
析したall about Johnnysを出版したときに噂は再来した。彼の本の中で、ジュンヤはジャニーの行いは
すべて東京の真ん中で彼らのために借りてあった公共アパートで行あったといっている。彼はキタガ
ワが彼らの生活空間をシェアし、風呂で彼の背中を洗うように要求し、そして大きい共同寝室で彼らと
一生に寝たと主張している。

２００１年、スキャンダルとまじめなレポートを混ぜている週刊文春は、キタガワをショービズ界のモンス
ターとして描くセンセーショナルな記事のシリーズを掲載した。問題は国会でも児童保護のための委
員会でも論じられた。つまり、キタガワは実際に彼のタレント事務所を若い少年を彼自身の道具として
仕込むために使っているのか否か・・・。彼に対するいかなる結論もなかったが、この話は世界中にヘ
ッドラインとしてひろまった。

キタガワは、後に名誉棄損でShukan Bunshunを訴え、2002年の判決で損害賠償として880万円を
勝ち取った。その法律の違反のわずかな見込みも厳しく取り締まる警察活動はキタガワやその事務
所に対してはなされなかった。警察。現在最も有名なキタガワのグループのひとつであるＮＥＷＳの１
８歳のメンバーが先月仙台で飲酒と乱行で警察に捕まったとき、彼はただちに事務所によっていか
なる公共の露出からも締め出された。すでに撮影されたテレビでの露出は撮りなおされた。

つんくはあらゆる種類のスキャンダルに巻き込まれるのを逃れていたが、モーニング娘。はそれほど
幸運ではなかった。彼女たちの事務所が犯罪組織によるゆすりに協力するのを拒絶したときに、プロ
ダクションオフィスのトイレで隠しカメラによって撮られた彼女たちのフィルムがＤＶＤとして売られてし
まったのである。次のシングル、ザ☆ピースのＰＶでは彼女たちは小便器の並ぶ壁のあるクルーズ
シップの下層甲板で踊り、個室でポーズをとっているのだが・・・

日本では年頃のポップスターとポルノスターとのマーケティングの裏にある理論的根拠が明確に類似
している。つんくと日本のポルノ製作者高橋がなりは本を出版し、その中で彼らは、それぞれの分野
でいかに最もよく少女たちの才能をプロモートするかということの要点について比較している。つんくは
彼が彼の預かった子と寝ることに何の興味も抱いていないことを表明する機会を使ったのである。

すべての日本の女性アイドルにとっての通過儀礼はその写真集の中であれわれているだろう。そこ
では例外なくハワイのビーチで撮られたビキニショットがフューチャーされているのだ（ハワイは日本人
のお気に入りのリゾート地である）。写真集の売り上げがふるうからこそ、彼女たちは自身のチャート
を得るのである。最も売れているビキニモデルである小倉優子（２２歳）ですら写真集の成功の裏で歌
手としてのキャリアをはじめているのだ。

つんくのハロプロはＴ＆Ａを売るというより、無邪気さの魅力とそれが花開いたもの証明を売ることに
よってある。容赦のない商品の投下はファンにアイドルの内面の鏡像をあたえ、親密さの幻想を育成
する。彼らは、彼女たちが年に一度のテレビで放送されるオーディションでグループに加入するように
選ばれ、ピグマリオンプロセスに入るようになる瞬間から、彼女たちとの感情的な結びつきを発達さ
せる。テレビ番組「ふたりごと」では、少女たちは生きたタマゴッチになる。ファンは彼女たちがくつろ
いだ瞬間の家庭の日常の仕事を演じたり、内面の思想をシェアしたりするような明らかに飾り気の
ないフィルムをみるのだ。しかしそれはセットで撮影されているのだが。

ハロプロの少女たちの現実の人生の孤立と彼女たちがそのアイドルとしての幻想的な人生に投影
する世俗性の間には興味深い緊張関係がある。つんくはその理由を以下のように述べている。彼
女たちの人生はあまりにてんやわんやなので、彼女たちは片思いをしたり恋におちたり失恋したり
といった普通の１０台の少女の感情的な混乱を経験するチャンスがないからであると。だから彼は
それを彼女たちに歌詞の中で与えているのである。その歌詞とは平凡なことから重要なことへと移
りかわる会話の流れであり、１０代の少女の内面のモノローグを再現するよう意図されている。・・・
それは俗っぽい中年の日本人男性によって書かれているにもかかわらず。

つんくの才能は西洋において認められると感じられる。西洋ではPhil Spector, Joe Meek そしてSerge
Gainsbourgのような偏執的なプロヂューサーミュージシャンに対する暗黙の賞賛がある。ハロプロの少
女たちの絶え間ないおしゃべりや甲高いpositivityは、彼女たちの音楽の増殖をを騒音の汚染としてみ
たり、その才能を無視しうるものとして見る多くの人にとって嫌悪されるものである。しかしこれは重要
な点であるように思われる。

つんくはオーディションからわざとぎこちない、不安定な少女たちを選び出す。その少女たちは変わった
ルックスである。かわいい子は音がとれないし、そのリズムがすこしずれている。そして彼のはげまし
を通じて、彼女たちの欠点は次第に彼女たちにキャラクターをあたえるものとなるのである。彼女たち
の本来のパーソナリティーの様相が誇張されるのである。元モームスの矢口−めまいがするような赤
い頭をしている−は、セクシービーム（乳首からレーザービームをうつ真似をふくむ振り付け）で知られ
ている。彼女は今年の初め、彼女の新しいボーイフレンドとなった若い人気俳優とコンビにから現れる
のを写真に撮られた後、突然モームスのリーダーを退くよう強いられた。彼女たちがすむファンタジー
の世界では、モーニング娘。のメンバーが現実の関係をもつという余地はないのである。彼女たちは
いつでも穢れなく、純潔であるように見えなくてはならないのである。

CD売り上げの衰退していく中で(ヨーロッパでは、不法なダウンロードが非難されているが・・・)、モー
ニング娘。は、一見無害ともみえるスキャンダルに巻き込まれて輝きを失いつつある。 そういったスキ
ャンダルは注意深く構築されたイメージを曇らせることになる。何人かのコメンテーターは、これを、グ
ループの魅力が なくなっていくサイクルの最終段階のサインととらえた。恐らく、緊急措置として、つん
く♂は、今年予定されたすべてのオーディションを先行実施することを決定し、 そして、12歳の久住小
春を新メンバーとしてモーニング娘。へ投入することにした。

驚くべきことではないが、ジャーニーズ＆アソシエートの報道に対する態度もまた、よくても矛盾し
たものである。もしジャニーズのフロントがかれらについての記事について関与しないと決めたなら、
いかなる宣伝材料もまた利用できないだろうということも非常に明らかである。

彼らのグループに対する接触の交渉を試みること数ヶ月、キタガワの個人的助手シラセ氏は、ジャニ
ーズの出し物をフューチャーしたショーに出席するよう彼の上司からの個人的な招待をオファーしてき
た。彼はキタガワがきっとそのショーに現れるだろうが、いかなる状況でもその写真を撮ることには同
意しないだろうと断言した。

ジャニーズサマーは年に一度の、ジャニーズジュニアのグループを披露する一連のコンサートである
。これは代々木スポーツアリーナのとなりの丸いパビリオンで行なわれる。その二時間のショーは、
どこかしらミュージカルやらサーカスやらマジックショーなどの中間のようなもので、一日に二回公演
、一ヶ月間続くのである。そのステージングは約3百万ポンド近くかかっているとうわさされている。水
理学的な仕切り壁（そこから火や煙、水などが勝手に噴出する）そしてクレーンの上の大きなコモド
ドラゴンなどをふくむ特殊効果の配列をつめこみ、それはどんな基準からみても、びっくりするような
スペクタクルである。非常に広いＬＣＤのスクリーンとして二倍になっているテントの壁に、コンピュタ
ーグラフィックスが渦巻いていいるのである。

ショーは三つの部分に分かれており、オープニングは二つの人気グループ、ＮＥＷＳとＫａｔｕｎが一連
の歴史的なセットで永遠のライバルを演ずるパントマイムではじまる。彼らは座席の通路を殺陣をし
ながら走っていく。彼らのにおいをかぐことができるほど近づいてくるのだ。彼らが通り過ぎようとする
と、少女たちは彼らをつかもうと席からつんのめるのだ。男の子たちの単なるはじっこと少女ファンの
指先との軽い接触が、呼吸が激しくなったり涙が勝手に出てくることの原因となるのだ。

アメリカをテーマとした一連の曲の一部で、完全装備の年頃の少年たちが空想上のコスチュームを
着て、ラスベガスのショーガールのようにステージ上を国旗を描きながらパレードしてくる。彼らはワ
イヤの上から観客のほうに舞い降りて、ブランコの上でアクロバティックな芸当を演ずる。あるところ
では、彼らはやせた小さいからだをぴったりと包む短パンをはいた半裸の姿で、ステージのへりか
ら吹き上がる噴水の下はしゃいでいる。。ショーは42年間のジャニーズのヒットメドレーで終わる。
オリジナルのグループのビンテージフィルムとともにである。

ショーのあと、シラセはこっそりと寄ってきた。すり減ったドレープスーツを着た古臭いバーの常連客、
彼はあたかもかれが60年代から組織とともにあったように見えた。「キタガワにお会いしたいですか
？」薄い笑みとともにオファーされたこの招待は突然やってきた。「ついてきてください」と彼は合図
した。

タバコを持ちながら頭を下げ、シラセはキビキビとしたペースでステージ裏の道を導いていった。彼
の注意は、眠っている毒蛇のようにテントの下から這っている黒いて太い電気ケーブルを敏捷に
またぐ時ですら、ずっと彼の耳にあてられている電話にむかっていた。かれはプロダクションエリア
へと角を曲がると、突然電話での会話をやめた。

「ジャニーさん！」彼は呼んだ。しばらくするとKatTunのメンバーと話していた老人が曲がってきて
こちらに来た。「やあ、ごきげんいかがですか」彼はいって手を伸ばした。「ジャニーキタガワです。
私たちのショーを楽しんでいただけましたか？」彼は流暢な英語をアメリカ発音で話した。

キタガワは若いころはボーイバンドのようなルックスを持っていたといわれている。しかし今かれは
だれかの年老いた祖父のようである。彼はウールのポロシャツを着て、こぎれいにプレスされたス
ーツのズボンをおなかのところまで引き上げていた。真っ黒の髪はうすくなっていた。彼は見たとこ
ろ彼自身の業績を詳述するよりもいかに彼の客が日本を好きかに興味を持っているようで、数分間
話し込んだ。

「それではごきげんよう」と彼は突然いった。「私はいかなくてはならない。私たちは横浜で明日行
なうキンキキッズの別のショーを開くのです。次に東京に着たら私に連絡してください。」彼は彼の
名前が木片のイミテーションに印刷された名刺を差し出した。

この短い遭遇でのキタガワの愛想のいい態度について、かれが日本の芸能界で最も力を持ち、
あるいはその「モンスター」であるということを仄めかすようなことはなにもなかった。それはまるで
オズの魔法使いの出会いのようであった。

電波を支配し続ける彼に向けられた不正容疑は彼の出し物に付きまとっているようには思われな
い。ファンタジーにとらわれている若い母親たちは彼女たちの息子をキタガワへといまだに提供し
ている。もし彼らが受け入れられたら、彼らが、彼らが成長してなるアイドルたちにより近づくだろう
という望みをもってだ。そうするなかで、彼らは永遠の若さの夢を世代から世代へと維持しているのだ。