裸婦像の街 川口
暮れかかった空に飛び交う無数の黒い影
「蝙蝠か・・・」
不穏な喧騒の駅前と抜けた途端
口紅を下品に塗りたくった商売女が俺にスケッチブックをちらつかせる。
『チケット譲ってください』
さっさと失せろこの外道が。目障りだ。
今夜のチケットだけは流石の俺も譲れない。絶対に譲れない。
この腐りきった時代に現れた、新世代のセックスシンボル 後藤真希。
今夜この街で開かれるという彼女のギグのチケット。
だが、理由はそれだけではない。
俺はひとりの少女をさがしていた。
彼女の名は鈴木愛理。秘密の歌姫。
はじめて彼女と出会った新宿のあの夜から
俺はずっとその幻を追い求めていた。
闇夜に浮かぶ妖しい月のシルエット。
氷のように冷たい夜風が俺をせかす。
空に舞う無数の蝙蝠たちはいつしか列をなし
黒い摩天楼 川口リリアの頂上を目指す。まるでそこに
すべての答えがあるかのように・・・。
「探したぜ愛理。まったく手間取らせやがって」
ってか後藤を観に行ったんですよ、マジで!