1 :
ねぇ、名乗って :
05/01/18 13:05:17 ID:HrQrGlSn なっち復活の日も近いわけだが
2 :
ねぇ、名乗って :05/01/18 13:06:36 ID:w3HACImx
2
3 :
ねぇ、名乗って :05/01/18 13:13:19 ID:GMmpkjy5
あべすれあほみたいにあがってる 一瞬鳩かとおもった
4 :
ねぇ、名乗って :05/01/18 14:11:04 ID:TIMwf3gi
4様
5 :
ねぇ、名乗って :05/01/24 21:09:00 ID:I8Aeu912
このスレは俺が頂いた!文句があればなっちに言え!
女子高生ってのはなんでしょうかね、なんであんなにエロいんでしょうか。 制服が汚してはいけない象徴だからだ!などと申す人もいらっしゃいますが、 そもそも制服を着用しておる現在の女子高生に、清純なイメージを持て、 ということは不可能に近い、いや、それは確実に不可能である。 で、あるから、清純なイメージ=制服として語るのは実に間違いであると、 俺は思うわけよ。それがだからどうした、というわけでもないんだけど、 それでも悲しくなるぐらい、女子高生、スクールガール、たまらんよね。 でも、スクールガールとはさらばしなければならない日も来るわけで。 明日も朝日が昇るわけで。そんなわけで「じゃあまたね」と「また明日」との、 そのコミュニケーションは永遠普遍に俺の心に刻み付けられた! 『すくーるがーる、ばいばい』
01.Band of the Night 夜はロックンロールの領土。EとA7とB7の領土。夜はエイト・ビートの領土。 スネアとハイハットとバスドラムの領土。ブギウギの領土。大津波のような音の壁の領土。 ミキシング・テーブルと酸欠の領土。バッド・チューニングとしゃがれ声の領土。 音をむさぼり喰うハイエナどもの領土。ハウリングとディスコードとステージ・ドリンクの領土。 切り裂く音と刻む音とうねる音の領土。そう、夜はロックンロールの領土。 そして、すべてはロックンロール。音楽はロックンロール。 ロックンロール以外に音楽はなく、あってもそれはロックンロールの影のようなもの。 そしてすべてはロックンロール。ロックンロールとはひとつの精神状態のことだ。 名づけられたことのない精神状態。 ―――『バンド・オブ・ザ・ナイト』中島らも
深夜三時、このフレイズを読みながら、私は震えていた。ワナナイていた。 続いていく、酔ったような文章。文学はロックンロールだ。セックスはロックンロールだ。恐怖はロックンロールだ。 政治もまたロックンロールだ。逃走はロックンロールだ。接吻はロックンロールだ。ドラッグはロックンロールだ。 そしてロックンロールはへし折る。そしてロックンロールは蹴飛ばす。またロックンロールは噛み切る。 ロックンロールは螺旋状に進化していく。ロックンロールは解き放つ。ロックンロールは夢の一種の在り様。 読み進めながら、私は電話に手を伸ばす。もはや暗記している電話番号をプッシュプッシュ。 プルルプルルと鳴り響く無機質な呼び出し音をしばらく聞いていると、あれ一体私は今何をしていたんだっけ、 という気分になって、思わず受話器を置いてしまうんだけど、置いてしまうと、 ああそうだった私は今誰かに電話をかけようとしていたんだという事実に気付いて、また電話を掛け直す。 番号プッシュプッシュ。プルルプルルあれ一体私は何を。受話器を置く。ああそうだ私は電話を掛けるんだ。 また振り出しに戻って番号プッシュプッシュ。という一連の循環を十二回ほど続けたところ、 相手はようやく電話を取った。
「もしもし美貴ちゃん?今いい?」 「……もしもしよっちゃん今何時だと思う?三時だよ?昼の三時じゃないよ、深夜三時」 「うん、そんなことは知ってるけど。今大丈夫?」 「大丈夫かだって?そりゃ大丈夫は大丈夫よ。なんたって家のベッドで気持ち良くオネンネしてましたから」 「おー、それは良かった。じゃあ用件なんだけどさ」 「もしもしよっちゃん?あなたは吉澤ひとみさんですよね?あのね、さっき美貴が言ったこと聞いてた? 美貴は寝てたんだ。それなのに、よっちゃんのこの電話で起こされたんだ。それだからね、 ごめんの一言ぐらいあっても良いんじゃないかなぁと美貴は思うんだけど、そこんことどうかな?」 「ああそーだね。めんごめんご。でさ、用件なんだけど」 「分かった。美貴が馬鹿だった。あんたにマトモなことを言ってもしょうがない、 ってことに気付かなかったワタクシが馬鹿でごさいました。よっちゃんが謝るよりも、 むしろ美貴が謝らなくてはなりませんでした。すいませんでした。まことに申し訳ありませんでした。 もう二度と吉澤さんにこのようなことは言いませんことをここに誓います」 「ねえ、なんで美貴ちゃん怒ってるのよ」
一瞬の沈黙の後、美貴ちゃんのフゥッというため息が聞こえた。フゥッというため息が聞こえたといっても、 実際に聞こえた感じというのはズゴゥォッというのカバの鼻息のような音なわけであって、フゥッというのは、 まあ私の予測でしかないのであるけれど、きっと多分そんな感じで美貴ちゃんはため息をついたのだろう。 「……あんた皮肉も分かんないんだね」 「えっ皮肉だったの!ていうか皮肉ってどういう意味?」 「……分かった。もう何も言わない。で、用件は何?」 「あのさー、美貴ちゃんって確かギターやってるよね」 「うんまあやってるっていうか、ギターを持っているだけというか」 「うんうん、でね、一緒にバンドやらないかな?と思って」 「バンド?バンドっていうとあのギターがいてボーカルがいてギギャーンって奴?」 「うんまあそんな感じ、ていうか美貴ちゃんのそのバンドの形容ってかなりアホっぽいよね」 「……ほっとけ」 「で、どう?バンドやってみない?」 「うーん、急だからなぁ、まあ明日までに考えとくよ。それより今日はもう寝かせて、疲れてるから」 「うん分かった。じゃあまた明日、ヨロピクね」 「ていうかさ、なんでいき」
美貴ちゃんの言葉を聞き終わらない内に、私は受話器を置いて、電話線を引き抜いた。 感動したあのページにオキニのしおりを挟むとベッドに寝転がる。ベッドの真上にある電灯が眩しい。 目を細めていると、正にトロトロという感じでいつの間にか眠っていた。
そしてこれまたトロトロという感じで、いつの間にか目が覚めた。もう朝が来ていた。 私はちゃちゃっと準備をすませると、今日の仕事へ向かった。もちろん今日の目的は仕事ではなくて、 美貴ちゃんの返事を聞くこと。そして、この本を美貴ちゃんへ貸すこと。この2つだ。 楽屋に着いて時計を見ると九時。今日は九時集合だからまあギリギリセーフってところなんだけど、 どういうわけだか楽屋には誰もいない。私は、なんだよみんな遅刻かよしょうがねぇな、待ってやらぁ、 とわざとらしく大声で言った。今日の私は普段には無い寛大さを持ち合わせている。 常ならば、他人に厳しく自分に甘くというセオリーの下、猛々しく暴れ狂ったりするわけだけど、 今日はまあ私がロックンロールの道に足を踏み入れるか踏み入れないかの瀬戸際であって、 それは詰まるところ、マイ・ロックンロール・記念日であって、今日のこの日ぐらいは、 平穏な思い出を残したいな、などと思っていたから、私は優しかった。実に寛大であった。
だから、そのまま衝動的に鏡を割ったりしながらも三十分ほど待った。 まだ誰も来ない。メンバーどころか、マネージャーやメイクさんなんかも全然来る気配が無い。 むしろ、この部屋には電気が無い。さっきから電気のスイッチをパチパチといじってはいるんだけど、 一向に部屋を明るくする気配を見せない。なんでやねん、とか関西弁を使いこなしつつ電灯本体を見ると、 蛍光灯が割れて床の上に散らばっていた。ほへっ?とか言いながら手元に視線を落とすと、 私の手には歪んだ折りたたみ椅子が握られていて、ああこれで私は色々と器物を損壊しているのだなぁと理解した。 またやっちゃった、テヘッ。と言いながら自分の頭を小突くと、なんだか許された気がした。 いやしかし、いかんいかん。こんなことでは、いかんいかん。ちょっとコーヒーでも飲もう。 ということで、下手な口笛をほとんどデタラメに吹きながら、震える両手で楽屋のノブをゆっくりと回した。 ドアを開けると正に、待ち構えてましたとでも言わんばかりに、モーニング娘。御一行様が居た。いらっしゃった。 ポカンとした鎮痛な面持ちで、「ご愁傷様です」とでも言いたそうな顔で、むしろ「死ねやお前」という顔で、 デタラメな口笛を吹きながら間違った楽屋から出てくる私をジットリと見つめていた。ご覧になっていた。
私はうなだれた。嗚呼今日もこんな一日か、と思うとメマイがした。マネージャーに殴られた。 メイクさんはガラスの破片やなんやかやでボロボロになった私のお手手を憎たらしそうに見つめて、 「あんたこんなことならアイドルやめなさい」とか説教を垂れながら、私の顔に唾を散らした。 そこにたまたま通りかかったつんく♂さんは「おお吉澤、お前は相変わらずロックやな」と言って、 笑いながらどこかへ去って行った。いつもなら、犬に食い殺されて死ね。とか思うのだが、 今日はその「ロックやな」という言葉が胸にひっかかって、ポワンとした。ムクムクと自信が沸いて来た。 私はロックだ。私はロックンロールだ。 メイクさんやマネージャーの顔を軽蔑した顔で見つめて、 「私はロックンロールだ、貴様らは私のケツを拭くトイレ紙以下だ」と言ってみたら、 グーでボディーをやられた。アイドルの顔は傷つけないというセオリーをきっちり守ってはいたが、 殺意の波動が滲み出ているようなボディーブローだった。効いたぜ。私のトイレットペーパーのくせに。
そんなこんなでメイクさんとマネージャーに精神と身体をズタボロにされて、 完全にへたっている私のもとに美貴ちゃんがやってきた。会いたかったよベイビーと言って、 抱き着こうとしたら迅速に交わされて、誤ってマネージャーに抱き着いてしまった。また殴られた。 マネージャーのボディーは効くっす。吉澤はもう立てないっす。と口の中でモゴモゴぼやいた。 「昨日の話なんだけど」 美貴ちゃんは私の苦しむ様子ほとんど無視している。更にその眼光は鋭く、思わず失禁。 だけどちょっとしか漏らさなかったから大丈夫。今日はパンパースボディースリムだ。全てをガード。 オルー・オア・ナッシング!タンポンには真似ができない芸当だ。それでこそパンパース。 ちょっと下痢気味の日でもこれで安心!と、一人で悦に入っていたら、美貴ちゃんにも殴られた。 マネージャーの深く突き刺さるようなボディーに比べて、美貴ちゃんのボディーは、 表面をザックリ斬りつける鋭利な刃物のような感じだった。どちらがどうとかいう比較の問題ではなく、 それぞれに一長一短があり、また優れている劣っているのレベルの差というものもあるのだが、 つまり私が何を言いたいのかと言うと、結局、どちらにせよ滅茶苦茶痛いということが言いたい。
「よっちゃんが電話切りやがって、訊けなかったことから訊くんだけど」 「はい、なんでしょうか美貴様」 「どうしていきなりバンドやろうとか言い始めたわけ?」 「いやまあなんていうか、私はロックンロールなんだぞと、そういうことです、はい」 「意味わかんないんだけど」 私はそうだそうだと呟きながら、中島らもの『バンド・オブ・ザ・ナイト』をカバンから取り出して、 しおりを挟んだページを開く。ミキティは訝しそうな顔をして、その本と私の顔を交互に見つめる。 「これが何?」 「読んでください」 「今?」 「ええ、できるなら今の方がありがたいかなと」 「美貴って一人じゃないと本読めないタイプだから」 「ああっ、そうでございますか、じゃあこれは一週間レンタルということでよろしいですから、 ご自宅に帰られましてからごゆっくりお読みください。あっ、帯は捨てないようにお願いします」 「ねえ、なんかその敬語ムカツクんだけど」 「ああっ、左様でございますか。ワタクシ共もこれから注意して参りますので、そのような、 ご批判、ご感想がありましたら、是非もっと遠慮無く申しつけくださいませ」 「……やめないとぶっ殺すよ」 「はい、ごめんなさい」
怖い。美貴ちゃんは本当に怖い。隣でこの様子を見ていた亀ちゃんが「きゃー藤本さんこわーい」と言った。 馬鹿め。後でどうなっても私は知らんぞと。案の定、美貴ちゃんは「亀ちゃん、おいでおいで」と言って、 亀ちゃんを近くに呼び寄せた後、耳元で何かボソッとささやいた。途端、亀ちゃんは真っ青になって、 どこかへ行ってしまった。ああ可哀想に。美貴ちゃんのいつもの手口だ。きっとそうだ。 「収録終わったら屋上に向かう階段で待っとけ」亀ちゃんもこの地獄のササヤキを聞いたのだろう。 ドラクエで言うならば、この言葉はザラキだ。FFで言うならばデスだ。スーパーマリオ3で言うならば、 丸腰でハンマーブロスに挑むマリオだ。いや、そんなことはどうでもいい、危機は今私に迫りつつある。 クライシス・イズ・カミング・トゥ・ミー。私はまた少し失禁した。さすがのパンパースも限界に近づきつつある。 「まあ、これは家で読んでみるとして、美貴もよっちゃんに貸す物があるんだ」 「何?」 「コレとコレとコレ」 そう言って美貴ちゃんが取り出したのは、ジミ・ヘンドリクス、クリーム、ザ・スリッツのCDだった。 私はどれも名前すら聞いたことのない人達だったので、誰コレ何コレと美貴ちゃんに尋ねた。
「全部知らないの?」 「うん」 「信じらんない。でも名前ぐらい聞いたことあるでしょ?」 「いや、全然」 美貴ちゃんはバカな女子高生みたいに、エーウッソー、マジデー、シンジランナーイと抑揚の無い声で、 延々と叫んだ。うるせえ、知らねーものは知らねーんだ。オラ青森さ帰るだ。と吉幾三の真似をしてみたところで、 美貴ちゃんは無反応。まだエーウッソーとか言ってやがる。ああうるせえ。くたばれ。くたばらないのなら、 俺の方が死ぬ。派手に糞尿を垂れ流してここで首吊ってやる。パンパース意味無し。ノー・ミーン・パンパース。 「じゃあ、一枚ずつ解説していくから」 「あっ、そうでございますか、どうぞふつつか者ですがお願いします」 「その敬語やめてね」 「はい、ごめんなさい」 美貴ちゃんはため息を一つつくと、三枚の内の一枚を手にとった。ジミ・ヘンドリクスとか言う人のCDだ。 ジャケットは黄色地にサイケな感じのネームが入ってる、黒人を真中にしたアフロ三人組が立ってる写真だ。
「これはね、ジミ・ヘンドリクスていう黒人ギタリストのバンドの1stアルバム。 で、タイトルは『Are You Experienced?』、多分ジミヘンって言ったら聞いたことあると思うんだけど、 まあ夭折しちゃったすごいギタリストなわけね、ジミ・ヘンドリクスって人は。夭折って意味分かる? 早死ってことよ?三島読んでね三島。夭折の美学。すごいんだから。いやごめん、ちょっと話が反れたね。 まあジャンル的にはサイケデリックというか、ブルースというか、ファンクというか、色々。 どっかのディスクレビューだと『全ての黒人音楽を統一しようとした!』みたいなことが言われてるけど、 美貴的にはあっそうそれで?って感じ。で、まあ、色々喋っても仕方ないからまず聴いてみよう」 美貴ちゃんは手際良くポータブルCDプレイヤーを取り出すと、CDをそれにセット、 そしてヘッドホンを私に手渡す。私はなんだか美貴ちゃんの勢いに圧倒されっぱなしで、 なんとなく「うん」とか「はぁ」とかしか言ってなかったんだけど、美貴ちゃんはそんなことはお構い無しに、 どんどんと先に進んで行く。そもそも私にはブルースだとかファンクだとか黒人音楽だとか言うものが、 全く分からない。なんだそれは、ブルースてなんや。ファンクってパンクとはちゃうんか。 と、思いつつもやはり口には出せない。そもそもジミヘンってなんだよ。キムタクみたいな略し方すんな。 むしろゴマキって言うな。ごっちんが可哀想だ。じゃあ私はヨシヒトか!男かよ!私が一番可哀想だ!
そんな私の内部の葛藤を完全に無視して、美貴ちゃんはCDを再生、良くわからないけどギターの音がする。 美貴ちゃんが私のヘッドホンの片耳の部分を外して、これが有名なpurple hazeだよと教えてくれる。 有名なパープルヘイズと言われても、私には何がなんだか分からないわけで、ぼんやりとそれを聴く。 美貴ちゃんは「いいでしょう?これ」という顔をして私の顔を見つめる。いや、良く分からん。 良く分からないけどジミヘン?がパポヘー!と叫ぶ歌の出だしのところで、なんとなくウズウズする。 ギターソロの部分まで来ると、私は完全にその曲の世界にのめり込んでいた。すごい。これはすごい。 なんだか良く分からんけど。滅茶苦茶すごい気がする。ジミヘン?がヘルプミーヘルプミーと叫んでいる。 うわあ、俺もヘルプミー。どうやらヘルプミーと本当に叫んでしまったらしく、マネージャーが私の方を睨む。 うっせ、睨むなドアホ、お前は俺のケツ拭いとけと思ったら、どうやらそれも言ってしまったらしく、 マネージャーに再びボディーブローをかまされる。痛いっす。 一曲目が終わって、二曲目のイントロが始まったところで丁度良く、美貴ちゃんが私の頭からヘッドホンを外す。 「どう?いいでしょう?」 勝ち誇った笑みでそう訊かれると悔しいが、よく分からんけどなんかすごいと応えた。 美貴ちゃんは嬉しそうに笑って、そうでしょうそうでしょうと言った。美貴ちゃんは本当に嬉しそうに笑う。
「まあとりあえずヘンドリクスはこんなもんで、次はクリームね」 そう言って美貴ちゃんはクリームのCDを手に取る。クリームというと私は申し訳ないことに、 お菓子系を想像してしまって、金沢文子は今何やってんだろうとか、感慨に耽ったりしてしまう。 「クリームっていうのはね、エリック・クラプトンの若い頃のバンドでね。 クラプトンって、今はただギターの上手いブールスおじさんみたいなイメージだけど、 クリームの頃はトンガッてたね。かっこいいのよこれが。これはベスト盤なんだけど、 やっぱりこれもとりあえず聴いてみそ」 聴いてみそ、とか美貴ちゃんがまさかそんなことを言うとは思っていなかったので、 私は内心ビックリしつつ、大人しくヘッドホンを受け取ると、それを装着。 美貴ちゃんが再生ボタンを押すと、ピピピピと何曲か早送り、なんとも言えないイントロが始まる。 なんじゃこりゃと思いつつも美貴ちゃんがまたニヤニヤしながら「これもいいでしょう?」的な顔で、 私を見つめてくるので、なんとなく愛想笑い。これは特に良いとも思わず、曲が終わる。
ヘッドホンを取ると、美貴ちゃんはこれが有名なwhite roomだよと教えてくれるが、そんなの知らない。 白い部屋?あっそ、てな感じで、どうだったと聴かれても、うーん普通と無難に応えた。 美貴ちゃんはどうもそれが不満らしく、マネージャーにやつ当たり。さすがのマネージャーも、 美貴ちゃんには手も足も出ずに、美貴ちゃん一人に袋叩きに合う。私も思わず参戦するも、 マネージャーと美貴ちゃんからダブルに報復を食らう。結局一番辛いのはいつも私だ。 それでやる気をそがれたのかどうだか知らないが、美貴ちゃんはめんどくさそうに最後の一枚の手に取ると、 解説を始める。私は神妙な面持ちでそれを聴く。もはやその互いのコミュニケーションの間には義務感しか無い。 「これはザ・スリッツってバンドで、メンバーが全員女なんだけど、まあこれもすごいよ。 女で、しかも今から二十年以上も前にこんなんやってたの!?っていうすごさ。 バンドやるんだったらこんなバンドやりたいよねー。せっかくなら。今までに無いような物を、 クリエイトするってぇのかな?まあそういうわけで、これは家でじっくり聴いてみてよ。 ああ、ちなみにこのアルバムはライブ盤だから、そのことをまず頭に置いて聴いてみると、 すごさがより良く分かると思うよ」
そういってその三枚のCDを私に寄越す。いくらCDといえども三枚となると、それなりにかさばるし、 適当に扱ってケースが割れてしまっても、私は美貴ちゃんの毒牙に掛かって、死んでしまうわけだし、 どうしたもんかなと思っていたら、丁度良くこんこんが生理ポーチを持ってトイレから帰って来た。 「こんこん。ちょっとお願いがあるんだけど」 「なんですか?吉澤さん」 「ちょっとソレ、貸して?」 「コレですか?別にいいですけど何でまた?」 「うんちょっとね、今日一日借りてていい?」 「いや、それはちょっと困るんですけど」 「まあまあ、固いこと言わずに、貸してよん」 ほとんど無理矢理な形でこんこんから奪い取った生理ポーチにCDを突っ込む。しかし悲しいかな入らない。 サイズピッタリだと思ったんだけどなと思いつつ、今更こんこんにポーチを返すのもシャクなので、 無理矢理突っ込む。ちょっとファスナーが壊れる。 まあ仕方ねえべや、紺野の野郎がこんなちっちぇポーチ持ってるから悪い。 と思うことにして、そのままコンビニのビニール袋に放り込んだ。
つと美貴ちゃんの顔を見ると、随分と呆れた顔をしていたけど、私がまあ仕方ねえべや、と言うと、 まあ仕方ないね、と言って笑った。なんだか心が通じあった気がした。愛してるぜ美貴。 私はちょっと得意になって美貴ちゃんに提案した。 「でさ、まあ、もうバンドを組むんだと仮定しよう」 「うん」 「そうした場合、まずバンド名が必要だわな」 「うん」 「でね、もうバンド名考えてあるのよ」 「へー」 「候補は2つあって、一つがレッド・ウォリアーズで、もう一つがピンク・サタンなんだけど、 美貴ちゃんはどっちがいい?私は美貴ちゃんの最終決定に従うつもりでいるんだけど」 「……それは本気で言ってる?」 「うん、大マジ、マジで本気で冗談じゃなくて」 美貴ちゃんは大げさにため息をついた。なんだってんだ。
「レッド・ウォリアーズは過去にあったバンド名だし、ピンク・サタンなんてバンド名、美貴は嫌だよ」 「じゃあ、どうすんのよ、昨日寝ずに考えたのにさ」 「そんな地味な嘘付かなくていいよ、とにかくその二つは絶対に嫌だから」 美貴ちゃんは黙り込む。私もつられて黙り込む。しばしの沈黙、居心地が悪い。 マネージャーがそろそろ収録ウチらの番だよ、とか言ってくるが、私達は二人とも無反応。 視界の端で亀ちゃんがマネージャーに「収録が終わったら私は死ぬんですきっと死ぬんです」と泣きついている。 こんこんは白いピッタリとしたパンツの股間部分を経血で真っ赤に染めてスタイリストさんに怒られている。 「だって吉澤さんが」と泣いて言い訳をするこんこんが可愛い。超可愛い。抱きしめてやりたい。 美貴ちゃんはそんな周りの様子は気にも留めずに、ただ黙りこくっていた。 机の上に忘れられたように置かれていた、中島らも著『バンド・オブ・ザ・ナイト』の表紙が、 どういう調子だか知らないが、ペラペラと何枚か捲れた。そしてそこに現れた文字列に、 私と美貴ちゃんは、おそらくほとんど同時に目を留めた。
歌詞なんて聞き取れる必要はないんだよ。 ロックの場合はね。 ―――ルー・リード
美貴ちゃんは本に手を伸ばしてパラパラ。私は固唾を飲んで見守る。 そしてパタンと本を閉じると、美貴ちゃんは言った。 「あのさ、私たちのバンドさ、活動するとしたら、仕事とか全部終わった夜じゃん?」 「うん、そうなるよね」 「だからさ、バンド名は、コレにしない?」 美貴ちゃんの指差す先、それはこの本のタイトル。バンド・オブ・ザ・ナイト。夜のバンド。 クールだ。最高にクールだ。と私は思った。このシンプルさが私たちのロックだと思った。 私は右の親指を威勢良く立てると言った。 「最高。ベリークール。それにしよう」 「じゃあ決まりだね」 美貴ちゃんと私はお互いに笑い合った。また心が通じ合ったなと思った。愛してるぜ美貴。
美貴ちゃんの笑顔を捉えるこの視界の端で、 こんこんは止まらない経血をポタポタと床に垂らしながら泣いていた。 亀ちゃんは真っ青な顔をして未来に絶望していた。二人を慰めてあげる人は誰も居なかった。 全く本当に空気の読めない奴らだと思って、私は少し憤慨したのであったが、 それを顔には出さず、美貴ちゃんにとんでもないぐらい飛び切りの笑顔を返したのだった。
01.Band of the Night 了 スクールガールは涙目でいつも俺に語りかけた。生理が来ないの。 そんなこと知るかボケ。そうは言ってもスクールガールはただただ涙目で、 生理が来ないのと言い続けるのだった。そうですか、じゃあなんですか結婚しますか、 と言うとスクールガールは、はぁ?と言う。そして、「セリがこないのよ」と、 どうにも意味の分からないダジャレを言うのが常なのである。 そんな糞ったれた女子高生共に神の正義の鉄拳を食らわしてやりたい。 そしてそこから俺はエロスを感じたい。清純や純潔と言った言葉からは、 真反対に位置する制服という事象を、貴様らは脳天に叩き込んで、そして、見ろ。 スクールガールは永遠普遍にエロくって、且つ猥雑なのだ。 そして、そんな彼女が透明少女なわけよ。
02.In the beginning In the begininning there was rhythm! Is god is space is earth is climbing is trying is sounds is patterns is animals is true is patterns is fucking is rhythm! はじめにリズムありき! 神が宇宙であり、宇宙は大地であり、大地は沸きあがり、音が試され、音は様々なパターンであり、 動物は様々な行動パターンをとり、動物は心理を体現し、真理は様々な形をとり、 ファックには様々なやり方があり、ファックすること、それがリズム! ―――『IN THE BEGINNING』THE SLITS
しかしなんだ、美貴ちゃんが実はロックマニアだったとは知らなかった。しかもオールドロックの。 バンド・オブ・ザ・ナイトが立ち上がってから、未だに何の活動もしないまま三週間が過ぎたのだが、 仕事で美貴ちゃんと会う度に、美貴ちゃんは「はいコレとコレとコレ、コレは誰々の何々で云々」と、 大量のCDを私に貸し付け、そのアーチストについての薀蓄をだらだらと垂れる。しかもそれが長い。 私の楽屋での時間はそっくりそのまま美貴ちゃんの薀蓄を聴く事に費やされる。浪費だ。 これは人生の浪費というものだ。とは思うものの、私からバンドやろうぜ!と言い出した手前、 なんとなく「もういいよ美貴ちゃん」とは言いづらい雰囲気があって、いやしかし、そもそも私は、 そんな雰囲気なんかを気にする人間ではないはずなんだが、美貴ちゃんのロックについての薀蓄は、 恐ろしいほどの絶対零度と鋭利な殺意をまとっているので、下手につっぱねると命に関わるのであるから、 いやまあやっぱり仕方ないことなんだなぁと思い、私は結局それを許容しているのだった。 そんなわけで私の部屋にはいつしかCDが山のように積み重なって、私がこの部屋に暮らしているのか、 それともCDがこの部屋に暮らしていて、私はそれの召使いとして生きているのか、よく分からなくなって来た。 とりあえず適当に流し聴きして返してやるべと思って、適当に聞いたCDを美貴ちゃんに返却しようとすると、 「よっちゃんあんたこれ全部ちゃんと聴いてないでしょう?」 「いや、ちゃんと聴いたよ」 「じゃあこれの3曲目の出だしの印象的なリフを口ずさみなさい」 「……るるる〜♪」 「却下、罰としてこれらのCDの感想を四百字詰原稿用紙で最低で三枚書いて出しなさい」 「……」 「何?文句あるの?ん?ム・ゴ・ン?色っぽい?そんなワケあるか!分かりましたと言え!」 「無茶っす、勘弁して欲しいっす」
冷ややかな流し目で私を睨む美貴ちゃん。そっと私の耳に口を近づけて、口づけてキュッと抱きしめて。 いやいやそれは歌の世界だけの話なんだ。現実は「収録終わったら屋上に向かう階段で待っとれボケナス」。 嗚呼私は死ぬんだ、収録が終わったら私は死んでしまうんだ。その日、私は全てに絶望した。 それならいっそのこと、アイ・ウィル・スィサイド!首を吊って自殺してやる!とも思ったが、 亀ちゃんと一緒に美貴ちゃんの悪口を言いまくったら気持ちが晴れた。本日は晴天ナリ。明日も晴天。 アスモセイテン。アス!キスマイアス!フジモトミキ!キスマイアス!サックマイディック! ノッて来た私に、亀ちゃんもつられて暴走。藤本!俺のちんぽをしゃぶれ!と亀ちゃんが暴言を発した瞬間、 マネージャーに見つかる。私と亀ちゃんは泣いて美貴ちゃんには黙っていてくれと頼む。マネージャー了承。 口止め金二万五千円を我らに請求。泣く泣く今月のパンパース代を削る私と、お金が足りなくて、 泣く泣くゾウガメのしずかちゃん(♀2歳)を質に入れる亀ちゃん。三十分間二万五千円の過ち。 私と亀ちゃんは手を取り合って誓う。ノー・モア・フジモト、ノー・モア・マネージャー。 結局、私は感想文最低三枚の枠を大幅に超えて、十枚の熱烈な感想文を提出したことで事無きを得た。 亀ちゃんは全身打撲とムチウチ、全治2ヶ月の両手両足の骨折で済んだ。そこに血は、流れなかった。 とまあ、そういうわけでウカツにCDを返却するわけにもいかず、枚数はどんどんとネズミのように増えて行く。 それに伴い日々膨らんでいくプレッシャー。CDのケースをもし割ってしまったら……。傷つけてしまったら……。 そう考えるだけで私の頭は暴走して、ついつい近所の自動販売機に中澤裕子直伝の三段蹴りをかます。 ウーロン茶とコカコーラがガランゴロンと派手な音を立てて出てくる。アイムラッキガール、HAHA! それを飲みつつ部屋に帰るとCDの山。その現実を直視することを私は拒むのだが、直視せぬわけにもいかず、 とりあえず最初に借りたCDから消化していくべとスリッツのCDをプレーヤーにかける。ウキャキャキャという、 変な音を立ててディスクが回る。コンパクトディスクが回転している。回転する!俺の脳髄!!
In the begininning there was rhythm!fucking is rhythm!と未だかつてないほどのナイスな発音でワメいていると、 ドアをコンコンとノックする音。なんだよこんこんかよ、ファスナー壊したことまだ根に持ってんのかよ、 めんどくせぇ奴だ。と思ってしばらく無視していたら、次第にコンコンという音からドンドン、ドンガドンガ、 と言う音に変化していく。そこで私はあらこれはオカシイ、こんこんじゃないのか、ドンガドンガか、 するってぇとなんだ、恐竜音頭か?なっち?いやいやなっちは今は謹慎中だしー。じゃあののか? のの私の愛するのの、かわいいかわいい。と思い直してガチャリと扉を開けた。 と、ごっちんが立ってた。泣いていた。ごっちんは泣いていた。ポロポロと大粒の涙を転がしながら、 それはキラキラとキラメイて床の上、手の上に弾けた。パシャンッと弾ける音がハッキリと聞こえた気がした。 キレイだなと思う。だけど心の内でかなり動揺している私。なんでごっちん泣いてるんだよ。 ごっちんが泣いてたらなんか悲しいじゃん。それってなんかクライム?いや、シン。罪を感じる。 「やややごっちん、久しぶり。なんで泣いてるの?」 「だってさ、だって、よしこがドア開けてくれないんだもん」 「ああ、ごめんごめん、紺野かと思って」 ごっちんの泣き顔が一瞬真顔に変わる。と、思ったらまたちょっと泣き顔になる。 「紺野?紺野良くココに来るの?」 「いや、別に来ないけど」 「じゃあなんで紺野だと思うわけ?」 「いやまあそれを話すと長くなるわけで」 ごっちんは涙をぐわしと腕で拭うと、いつもみたいに何も考えとらんよな顔をして、しれっと言う。
「ふーん、まあいいや、入ってもいい?」 「ああうんまあ、いいけど、ちょっと気をつけてね」 「気をつけるって、何に?」 「入ってみたら分かる」 ああそうと言いながらごっちんは靴を脱ぐ。靴はブーツで随分と脱ぎにくそうにしていたから、 ちょっと手伝ってあげる。ああありがとうとごっちんは言うけれども、私の視線の先は、ごっちんの太腿、 及び、ミニのスカートから除くパステルカラーの三角地帯。俺が男なら勃起しとりますわなとか思いながら、 鼻息が荒くなる。ごっちんは怪訝そうな顔をして大丈夫?などと気を遣ってくれる。ノープログレム! むしろ君が靴を脱ぎ終わってしまうことがプログレム!悩ましい!切ない!腹立たしい!もっと見たい! 今度来る時は、もっとややこしい靴ともっと短いスカートを履いてこい!と言いたい気持ちをぐっと堪えて、 ごっちんを部屋に導く。部屋に辿り着くとごっちんが唖然としているのが分かる。 「どしたのこのCD」 「なんかね、美貴ちゃんが大量に貸してくれてね、ちょっと困ってるんだけど」 「へー、最近はミキティーとも仲が良いんだ」 「いやまあ仲が良いっつーか、娘。だから致し方ないというか」 「ふーん、娘。だったら誰だっていいんだ。ふーん」 私はまあねちょっとね色々ねと別にやましいことはないのに言い訳をしながら、冷蔵庫を漁る。 しかしロクな物が無い。ビールビールビール、たまにウィンナー、サラミ、キュウリ、ナス、こんにゃく。 こんなもんでどないせえっちゅーねん、と、もはや癖になってしまった大阪弁でブツブツ言いながら、 腹立ち紛れに冷凍庫の氷をガリガリ食べる。振り向くと、ごっちんはソファーに座って何かモゾモゾしている。 そのモゾモゾはなんだかとても不吉なモゾモゾで、いわゆるマジで小便漏らす五秒前みたいなモゾモゾだった。
「ごっちん?どーかした?」 「んー」 「んー?」 ごっちんは何やら赤い顔をして私を見つめる。色っぽい。何故か色っぽい。ム・ゴ・ン、色っぽい。 私は冷蔵庫で見つけたウィンナーとサラミとキュウリとナスとコンニャクを持って、ごっちんに近づく。 ごっちんの顔が何故か更に赤くなる。 「どしたの?大丈夫?風邪でも引いた?」 「んー」 「んー?」 なんだよはっきりしねーな、でもかわいいからいいやと思って、とりあえず食材を机に下ろす。 まあこんなもんを生で出されても困るだろうが、何も出さないよりはマシってことで、許して欲しい。 「何にもないけど、これ適当に使っちゃっていいから」 ごっちんはやはり無言。なんだよなんだよなんなんだよ、一体ごっちんは何しに来たんだよ。 ワケがわかんねー。でもこんなごっちんもかわいいからいいか、ってんでニコニコとごっちんを見つめる。 ごっちんの目がトロンとしている。なんだ眠いのかこの人は。心配して損したじゃん。でも、かわいいからいいか、 って、もうこの思考を私は何回繰り返したことだろうか。いい加減自分のシンプルな思考回路に腹が立ってくる。 と、同時に、トロンとしたごっちんに、いやらしいピンク色の感情がムラムラと込み上げてくる。 いやいや待て待て、ここでごっちんを襲ったりしたら、もう本当に関係が修復不可能になってしまう。 せっかくごっちんの方から出向いてくれたんだから、今日はとりあえず今までのことは水に流して、 仲直り記念日、ということで何とぞ一つこれはよろしく、うーん、マンダム。
「……あのさぁ、ごっちんさぁ、今日何しに来たの?」 「んー」 「んー?っていうか、喋ってよ」 ごっちんはまた不吉にモゾモゾと動くと、なんだかなーという感じで頭をワシワシと掻く。 「んー、あのねー、後藤はねー、ちょっとジェラシーを抱いているんです」 「ジェラシーって、何に?」 「よしこの交友関係に」 ああなるほど、それでこんこんとか美貴ちゃんとかの話題に突っかかったわけね、納得納得。 しかしそれに納得してもイマイチ核心が掴めない。 「えーと、それと私の家に訪ねて来たこととがどのように関連するんでしょうか」 「……相変わらずニブいんだね、よしこって」 「うんまあ良く言われるけど」 ごっちんはまたまた不吉にモゾモゾと腰を動かすと、なんだかなーという感じで今度は鼻を掻く。 「だからね、私はね、まだよしこのことが好きなんだって、それが言いたかったの」
私はしばし硬直する。ごっちんがまだ私のことを好き、というとつまりそれはフラれた私からしてみると、 願ったり叶ったりな状況なわけで、むしろ何故あの時ごっちんは「本当に好きな人が出来たから」などという 妄言を吐いて下らん男なんぞと付き合ったのか、という過去の局面にまで私の思考は及び、更にその当時の私の、 どうにもはっきりしない態度や、「なんでだよ俺のどこが悪いんだよ」という腐った武田シンジのようなセリフの、 なんとも言えない浅はかさに対して、私は酷く憂鬱になったりしつつも、結局は現在においてはハッピーなわけで、 今日はハッピーマンデー、雨の日はポイントが二倍だよ♪みたいなお得感を持って私に迫ってくる事実はただ一つ。 じゃあヤってもOKってことじゃん。 とまあそういうことで、私はごっちんを押し倒す。そしてむんずと両足首を掴んで恥ずかし固め。 ここで私はビックリする。あの可愛らしいパステルカラーのパンティーはいずこへ?と、 周りを見渡すと、机の下にぽつりとそれは落ちていた。ロンリネス。寂しそうだね。という感慨はさておき、 なんだ、それじゃあてめぇはヤル気マンマンでしたということですか、そうですか、僕もギンギンですと、 有りもしない股間のイチモツに血液を集中させるフリをして、机の上に絶妙なタイミングで置いてあった、 ウィンナーとキュウリをピック・アウト。それをごっちんにトッピング。OH!ザッツ・THE・卑猥! これこそマンパワーだよキミィ。とウソブキながら、ピストン運動は軽やかに、そして美しく。 やがてごっちんの発する超卑猥な液体音や呼吸音に耐えきれなくなって、私も服を脱ぐ。
美しい私の黒乳首が白い肌と蛍光灯の下に映え渡る。ディス・イズ・運命。私の乳首はスーパーフリー。 アンド、超エレクト。コラコラ後藤さん乳首を舐めなさいとごっちんに申し渡し、ここからはくんずほぐれつ、 攻めたり攻められたり、はたまた花弁大回転の様相を醸し出しつつも、一大波瀾の末、互いの温度を高め合い、 異物を抜き差し、舐めたり舐められたり、罵り罵られ罵り合い、互いの血管を充足させるのは酸素であり、 また二酸化炭素でもあり、最終的には愛が血管を流れて行くわけなのであるが、私はそのような肉体的な快楽、 感覚以上に、「イン・ザ・ビギニング・ゼア・ワズ・リズム」と「ファッキング・イズ・リズム」との共謀、 脈動するリズム、腰におけるピストン運動や、指、舌、足の先の扇動運動は、また微細に詳細なるリズムを紡ぎ出す。 バックに流れるザ・スリッツのミュージックは、私に様々なリズムを刻ませる。ゼア・ワズ・リズム。 ファッキング・イズ・リズム。私の快楽は増幅する。共に高まって行く呼吸感、粘着度、互いの体温、汗の臭い。 悲しむべきことにギシギシと軋むベッドの上では無く、我々はソファーの上でコトを行っていた。 そのためソファは軋まないが、代わりに美貴ちゃんのCDはガラガラと自らのその存在感をひたすらに称えた。 そしてそのCDの存在感は取りも直さず、私とごっちんの愛の交わりをひたすらに称えていた。 突如、ごっちんは白目を剥いた。私も大いなる腹式呼吸を用いて、イク!と盛大に勝利宣言を発した。 一方でザ・スリッツは未だドコスコバカスカとブサイクでファッキングなリズムを叩き出していた。 私は荒い呼吸を整えつつ「よかったよごっちん」という腐った加藤鷹のようなセリフを吐いた。 ごっちんは「うんあたしもよかった」という芯まで腐りきった大塚愛のようなセリフを吐いた。 身体を離すと急に体温が冷めていくのが分かる。それが心細くて、手を繋ぎ、仰向けになる。
美貴ちゃんのCDはグチャグチャになってしまった。飛び散る汗、ほとばしる愛液の土壇場。 何て言い訳をすればいいのかちょっと考えた後、寝ぼけておしっこをもらしてしまったことにしようと思った。 自分の思いつきが素晴らしすぎて笑いが出た。HAHA!アイム・ジーニアス! 寝ぼけていれば責任は問われない、更におしっこ漏らしてしまった、というウソは実にプリティー。 これで許されなかったら、やっぱり私は楽屋で首を吊って盛大に糞尿をぶちまけてやるしか、 もう方法が無いように思えた。そう思うと実に恐ろしい気もしてきた。でも、アイム・ジーニアス。 なるようになるさ、どうにでもなるさ、HAHA!俺は天才だ!リズムの神だ!ファックの神だ! 「ねえ、よしこ、今何考えてる?」 唐突にそう訊かれて思わず焦る。しかしミスは犯さない。 最高のスマイルで「ごっちんサイコーってね、思ってた」しみじみとそう言う。完璧。 「ウソだね。本当は、ミキティーのこと考えてたでしょ」 「ちがうってー、そんなことないってば、ごっちんサイコー」 「ううん、分かってるんだから」
思わず、返事が出来なくなる。ごっちんはたまにものすごく鋭いことがある。それがいつも私には脅威だったし、 その鋭さのせいで、ごっちんは私のことをフッたのだとも思う。ようするにロクなもんじゃないんだが、 そうやって勘ぐるのを辞めろというのも、ごっちんそのものを否定してしまうような感じがして言えないでいた。 結局今も言えない、それに、言い訳をしたとしてもごっちんには透けて見えてしまうのだから意味がない。 私はごっちんと繋いでいた手を黙って離すと、CDをガチャガチャと除けて、タバコを探す。あった。 マルボロライト。でも今度はライターが見つからない。またもやCDをガチャガチャ。 ボッといってライターの火が差し出される。ごっちんがボヤッとした顔で差し出していた。 ちょっと気まずいながらも、ありがとうと言って火をもらう。思いきり吸い込んで、じっと溜めた後、吐く。 ブワーッと煙が口から出て行く様を見つめて、私は一体何やってんだ、と頭を抱える。 「よしこさー、もうハッパはやめたの?」 「ハッパ?そんなの元から吸ってないし」 「それもウソだね。知ってるんだから、ごとーはなんだってお見通しなんだから」 敵わないな、と思ってマルボロライトの箱から一本抜いて差し出す。ごっちんは嬉しそうにそれに火をつける。 そして思いっきり吸って、じっと溜めた後、吐く。ごっちんの口からブワーッと煙が吐き出される。 私の煙とごっちんの煙とで、いわゆる大麻の甘い臭いが部屋に充満する。親が今この部屋を見たら何ていうかな、 とか考えて、自嘲的に笑ってみた。ハハッ。乾いた笑いだ。つまらない。ハッパを吸ってる時の方が、 私は理性的な気がする。馬鹿みたいな話だ。ハイになりたくて、馬鹿になりたいからハッパ吸ってるのに、 吸った時の方がつまらないってのはどうかしてる。こんなもんさっさとやめちまえばいい。
「よしこさー、いつも一人で寂しくこんなの吸ってるわけー?」 ごっちんはハッパを吸い慣れてるのか吸い慣れていないのか知らないが、トロンとした目付きで、 実に楽しそうな顔をしている。羨ましいなと思うけれど、口には出さない、馬鹿を演じる。 「そーよそーよ、吉澤さんはいつもこんなの吸って馬鹿やってるわけよ」 「へーえ、寂しいよねー、それってさ、最高に寂しいよね、だから何ってわけじゃないけど」 ごっちんの寂しいよねという言葉は胸に響く、そうさ俺は寂しいさ、だからどうした、俺は一人なんだ、 いつだって一人なんだ、だから寂しさを紛らわすためにハッパを吸うんだ。でもそれが更に寂しくなるんだ。 矛盾だ。矛盾してる。馬鹿げてる。私は一体何をやってるんだ。俺は一体何がしたいんだ。 「寂しいんだ。私は寂しいんだ。本当は寂しいんだ。だから馬鹿やってんだ」 「うん」 「ごっちんさ、ごっちんだって寂しいだろ。私も寂しいんだ。美貴ちゃんだって寂しいんだ」 「うん」 「こんこんだって寂しいし、みんなみんな寂しいんだ」 「うん」 「だからさ、だから……」
私は何が言いたいんだ。分からない。自分で自分が何を言っているのか、分からない。 ザ・スリッツのCDは未だ叫ぶ。イン・ザ・ビギニング・ゼア・ワズ・リズム。リピート再生にしちまったのか。 せめてこのミュージックが止んでくれたら私は少しはマトモに考えることが出来るのに、少しぐらいは、 マジメに生きていけることができるのに、まったくなんて奴だ。ザ・スリッツ。THE・割れ目ちゃん。 トロンとした目付きで私の次の言葉を待つごっちん。裸。私の右脳を直に刺激する。血液は過剰に巡る。 愛、愛、愛、愛、愛が欲しい。愛が足り無い。私の血液には愛が足りない。自分の愛ではなく、他人の愛が。 それを得るためには何をする?何をすることによって愛を得ることができる? 「……もう一回しよう」 「うん」 私はリズムの神。私はファックの神。ごっちんの体温を感じて、寂しさを紛らわす。俺は最低だ。 俺は最低だ。そうコダマする理性の声はもはや本当に理性の超えなのかどうか疑わしい。 私の理性はハッパの煙に巻かれてどこかへ行ってしまった。私はどうすればいい。本当はどうすればいい。 考えろ。ハッパの煙に惑わされることなく考えろ。ごっちんの目はトロンとして、全てを受け入れそうで、 それでいて悲しい色を称えている。ごっちん、私はどうすればいいんだ。 「いや、やっぱり止めた」 「うん」 「ごっちん、これから朝まで一緒に添い寝してくれない?」 「うん、いいよ」 「手は離さないで欲しい」 「うん、分かった」
私達は手を繋いでベッドに横になった。ごっちんの暖かい体温を感じる。ドックンドックンという心拍音。 ああ、リズムだ。ここにもリズムがある。ファックとは違う。生暖かい、安心できるリズムがある。 私は思わず泣き出していた。そして、ごっちんに今までのことを詫びた。ごっちんはニカッと笑って、 「いいよ全然」と言った。心に響いた。私はまた一段と大きな声で泣いた。そしていつのまにか眠っていた。 朝になって目を覚ますと、ごっちんはまだ寝ていた。かわいらしい寝顔だった。 そのかわいらしい寝顔を見つめながら、私はごっちんが起きたら何と言おうか考えた。 ただ単に「おはよう」?それとも「ありがとう」?それとも「ごめんね」? いやいやそれは何か違うな、ネガティブシンキングという奴だ。一切を清算した今、私は何を言うべきか? カーテンのスキマから朝日が差す。その光は丁度ごっちんのマブタの上にのしかかって、 嫌がおうにもごっちんの目を覚まさせる。「うぅん」というかわいらしいごっちんの吐息と共に、 私はごっちの耳元でこれからの全てを詰めた言葉を放つ。 「おはよ、ごっちん、一緒にバンドやろ?」
02.In the beginning 了 対向して走ってくる女子高生のふとももは眩しい。過剰なまでのふとももの露出と、 過剰なまでの下着を見られることへの恥じらいから、短いスカートなのにも関わらず、 一生懸命に足を閉じ、内股で自転車をこぐスクールガールの、その擦れる内モモは、 華麗なる腐臭を放つ。はたまた、スクールガールは自ら下着を見せ付けておきながら、 自己を正当化、合理化、その果てに他人への罪のなすり付け。猥褻物陳列罪の合理化。 「オッサン見てんじゃねーよ」と「見せてるんじゃねーよ」の論争の終着点、それは、 「ごめんなさい、結局僕のイチモツは君達の思いのままだ」そうあって然るべき。 スクールガールはイノセントとギルティーの矛盾を孕んだまま、何の疑問を持たずに、 ただその瞬間瞬間を刹那的に生きている。刹那、その一瞬は実に重い。 知能を持った人間は、瞬間に命を掛けることはできなくなっている。未来への投機と、 過去への後悔がうずまくなかで、現在この一瞬を刹那的に生きるのは不可能だ。 それを可能にするのがスクールガールであり、それを象徴する制服であり、 我々が憧れる、純潔、潔白、処女。そんな鼻に抜けるような下品であり高潔である概念だ。 自家撞着に耐えられない少女は3階の屋根から飛び降りる。そして砕け散った。 我々もまたその少女の後を追わねばならない、例えそれが半透明少女関係だったとしても!
自己保全という名の、自己顕示欲の発現。 女子高生は言う「あたしってー超バカだからー」 その友達は応える「そうだよねー、アンタって超バカすぎるよねー」 自らバカであることを自慢げに言い放った女子高生はむっつりと押し黙る。 その友達はなんも知らんような顔をして心の底でほくそ笑む。 スクールガールはバカだ。そして人間の本性は全てスクールガールの中に。
あ
03.I can't explain Got a feeling inside, Can't explain, It's certain kind, Can't explain, I feel hot and cold, Can't explain, Yeah, down in my soul, yeah, Can't explain, I said, can't explain, I'm feelin' good now, yeah, But can't explain. 俺の中から湧き出る感情、説明できないよ、なんかグッとくるものなんだ、でも説明できないよ、 熱くなったり冷たくなったり、うまく言えない、そうさ、俺の魂の奥深く、説明できないな、 言っただろ、うまく説明できないって、今気分いいんだ、YEAH、だけど説明できないよ。 ―――『I can't explain』THE WHO
アイ・キャント・エクスプレイン。この衝動は説明できない。込み上げてくる衝動。 それは一言で言うと「ロックがしたい」この一言に凝縮され、それを楽屋で口走ると、 梨華ちゃんがクソがしたい♪と音痴音痴音痴、実にノータリンな合いの手を返すのであるが、 私はそれが人間の煩悩と言い放ち、華麗にその発言を一蹴にする。こんな馴れ合いは低俗だ。 私はもっと高次に文化的で尚且つプリミティブな交わりをお前、石川梨華と持ちたい。 お前ともっともっと関係して行きたい。か、か、か、か、関係していきたい。 「あのさー、よっちゃんさー」 まず梨華ちゃんの足を払う、無警戒な梨華ちゃんはヒャッと行ってコロリンと転げる。かわいい。超かわいい。 そして倒れた梨華ちゃんを蹴って殴って、髪を引っ張り引き起こして、顔面に三発ニイキックを致します。 もうやめてくらひゃいと笑顔で嬉しい悲鳴をあげる梨華ちゃんの鼻の穴に右手親指と人差し指の全力を込めて、 まるでもうそれは一介のマタギのように、荒々しく猛々しく勇猛果敢に鼻毛をむしりとると、その先に広がるのは、 あんまりにも矮小化されたファンタジーであり、なぁんだつまらないと言って梨華ちゃんのヌケガラを捨てた。 「美貴はギターやるからいいんだけどさ、ごっちんとよっちゃんは何やるの?」 私は梨華ちゃんのヌケガラをヒョイと拾い上げると、よしよしいい子でちゅねーと言って服を脱がせる。 イヤイヤをする梨華ちゃんの両頬を体温計を振る要領でバシバシと力いっぱいはたく。これでもかこれでもか。 そのうち頬は腫れ、よっすーおうひゃめてと嬉しい悲鳴を官能的に叫び続ける梨華ちゃんは痴女のようであり、 また幼女のようでもあり、ペドフェリアの気は全く無いとも言いきれない私は乳首を固くしたりする。 ドス黒い乳首は自らのポテンシャルを遥かに凌駕する背伸びを見せ、その首長はおよそ2cmにも及ぶのだろうか。 一方で、梨華ちゃんのピンクピンクピンク私ってピンクなんだ!すごいでしょ!ピンクサタンになりたい! 的なケバケバしい下着の股間は濡れに濡れていた。このドスケベ女め。叩かれて感じるのか。 この野郎もっともっと叩いてやる。もっともっともっと。モアモアモアモア。トマス・モア!
「ねぇ、ちょっとよっちゃん、石川なんかどーでもいいから話聞いてよ」 梨華ちゃんは完全に燃え尽きてしまった。濡れに濡れていた股間から生じる不可思議な液体は、 結局のところ、潮などと言う非科学的な物質では無くて、体内の老廃物がコされて黄色くしょっぱくなった小便だ。 そうしてこの、ここにゴロンと寝転がっている真っ黒な肉塊は小便を撒き散らしながら、自らの快感を叫び、 そうすることによって自己を主張し、「私ってウザくないよね?」「うんウザくない」そのような自己欺瞞を、 欺瞞とも思わずそのまま受け入れる。アクセプト過剰。脳内アクセプト過剰状態。それは形而下の形としては、 つまりこのように失禁、という形であらわれる。それはとても気持ちがいいらしい。 失禁の果てに見える快楽とは一体なんだ。 私はここで自問自答、つまり因果応報永劫回帰の瞑想へと突入する。座禅を組む。観想観想。 そうしてつまりそれはテオーリアなのだ!自らの人差し指をピンと伸ばして「そうなのだ!」と叫ぶ。 と、ここまで来て無視し続けていた美貴ちゃんにグーで思いきり殴られた。 鼻がつぶけた。ぺちゃっと。痛い痛い痛い。 「ごっちんとよっすぃーは何やるのかって訊いてんの!」 美貴ちゃんはあまりにも恐ろしい顔で私に向かってそう怒鳴る。手は固くニギリコブシを為している。 私はいちゃいいちゃいと、一見幼児に退行したかのような言葉を発したりなんかしたりするが、 実はそれはただの戯れでしかない!つぶれた鼻の軟骨を右手五本左手五本、つまり合計十本の指を駆使して、 鼻筋をピシーッと整える。まるでトロイの木馬のようにピシーッと整える。それはまるでやはり、 トロイの木馬のようでもあり、ロトの紋章のようでもあり、はたまたズラズラと並んだサメの歯並び、 なんて物のような雰囲気までも醸し出していた。勢いづいた私は美貴ちゃんの目を見据えると叫んだ。
「SEX!」 馬鹿野郎と美貴ちゃんにものすごい勢いで罵倒され、楽屋の壁に激しく頭を打ちつけられた。 ペロンと頭の皮が剥げて床に落ちた。オウベイベこれが本当のハゲだなとジョークを言ったら、 美貴ちゃんは一層激しく怒った、かと思うと笑った。私の頭はツルッぱげ。骨がツルツル。 メイクさんはそれ見て爆笑。かと思いきややはり激怒。ラップの調子でカモナベイベ。 メイクさんはあんたやっぱりアイドル辞めなさいといつになく説教臭い口調で言う。 じゃあ君がメイクさんを辞めなさいと言ったら、彼女は押し黙った。そして楽屋を出て行った。 田中れいなが私のやや右ナナメ後ろで、激しく透き通る声でもって、メイクの野郎に叫んだ。 「しゃぼん玉!」 するとシゲさんと田中ちゃんは、こちらはこちらでまた一大惨事を予感させるようなアイコンタクトを始めた。 「それはさゆのネタよ」と「うっさい、使ったもん勝ち」福岡弁は妙に腰に響くビートを孕むが、 それはかつてない大惨事を引き起こすカギ刺激的であり衝撃的、大惨事的、先輩!もう俺イキそうっす! おおそうか!まだもうちょっと我慢しろ!ああたまんねぇなぁ!的な何か、初期衝動。セックス。 そう、セックス!!
田中ちゃんとシゲさんは互いの服を破りあい、圧し合い、押し合い、入れ合い、加護亜衣。 と、ここで私は一人で爆笑するような雰囲気を醸し出しつつも、場の空気を読む、という先天的な、 更に言えば神が私に与えたもうたハイクオリティーを発揮するフリをして、やはり爆笑する。 もうダメだ。こんなのもうダメだ。笑い死ぬし、美貴ちゃんには殺されるし、シゲさんと田中ちゃんは、 なんだか激しくも激しいセックスというプリミティブな営みに腰をグラインドさせる日々であるし、 かと思えば亀ちゃんは未だに全治2ヶ月の骨折から何も回復しないまま、また再び怪我を増やすし、 こんこんは経血でまだらに色づけされたホワイト・アンド・レッドのあからさまに股間中心主義的、 ピチーッとした白パンツの虜になってしまっているし、矢口さんはこないだ死んだ。笑い死んだ。 そして私も今日、この日付をもって、美貴ちゃんに殺されつつ笑い死ぬんだと思ったら、 軽く感動して涙がちょちょぎれた。と思ったら涎だった。ザッツオールライ!と叫んで、 親指を立てて美貴ちゃんの方を向いたら、美貴ちゃんもグッと親指を立てた。ロックはここにありき。 アイ・キャント・エクスプレイン。アイ・チャント・ィクスプレイン。愛ちゃんと行くスプリング。 飛躍!論理のあからさまな飛躍!ダジャレ・イズ・イン・マイ・マインド!今こそ私は死ねる!
と、いうところで目が覚めた。晴れ晴れとしてスガスガしく、良い朝だった。 倹約家の私であるが、今日はいつもより多くパンパースを使おうと思った。ボディスリム。 パンパースボディスリム、という言葉の響きと、サラサーティーコットン100という言葉の響きとが、 実に素晴らしいなぁ、なんつうかゼア・ワズ・リズム。体内から発せられるリズムに素晴らしく合う。 恐ろしいぐらいにフィットする。すんげーすんげーリズムってすんげー。などと考えていたら仕事に遅れた。 マネージャーとメイクの野郎は何かお小言を言ってたが、良く分からなかった。モヤモヤっとする。 明晰な思考が出来ないのはいつものことなんだが、なんだかいつもよりモヤモヤっとする。 「ねぇ、私思ってたんだけどさ、よっちゃんとごっちんてどういう関係なわけ?」 いきなりな美貴ちゃんのその問い掛けの意味も良く分からないので、夢で見た通り「SEX!」と応えた。 美貴ちゃんはナンダコイツバカジャネエノという恐ろしく冷たい顔をしたと思ったら、どこかに消えた。 「吉澤さん、こないだの生理ポーチの件なんですけど、謝罪と賠償を要求します」 こんこんがそう問い掛けてくる意味もイマイチよくわからないので、これまた夢で見た通り、 「しゃぼん玉!」と応えた。紺野は「はぁ?」と言うと「もういいです」と言ってどこかに消えた。 ふいっと周りを見渡すとシゲさんと田中ちゃんが猛烈なセックス!それはそれは猛烈に激烈なセックス! と、思ったら、ものすごい早さでスピードをやっていた。トランプゲームのスピード。 極めればシーザ並に、あれを極めた人の手の動きというものはなかなかに尋常ではない。
パシッ、それっ、バシッバシッ、ペッペッペッ、うわーくそー、スピーッド! パシッ、バシッバシッバシッ、ペッペッ。あーもう負け決まりじゃんこれー。ワハハハ!スピーッド! なんだかとっても楽しそうなので、露骨に指を咥えてその光景を目の当たりに見ていた。 具体的に言うと、親指の第二間接までズッポリ咥え込んで、じゅぽじゅぽしっぽりと見つめていた。 しかし二人は私の意思を汲み取ってくれなかった。少しプライドを捨てながら頼む。 「シゲさんと田中ちゃんさー、私もまぜてくんない?」 「いいですよー」 そして私とシゲさんと田中ちゃんで回れ回れメリーゴーランド状態に陥りつつも、トランプゲームを開始した。 3人で出来るトランプゲームというのはなかなかに限られている。とりあえずブラックジャックで、 などという中年サラリーマン居酒屋にてとりあえず人数分生で発言のような安易な発想を、そしてそれは、 換言すると恐るべき過ちを、私は犯してしまった。とりあえずブラック・ジャックで。ピノコー! 「やーまた吉澤さんビリッケツですねー、ていうか10にも行ってないじゃないですか」 「うん、実はブラック・ジャックのルールよく知らないんだ」 テヘテヘと言って頭を掻いたらなんだか分からないけど許された気分になった。リスペクトのの。 田中ちゃんとシゲさんはそんな私を置いてどこかへ消えた。OH!ロンリネス!寂しい色やね。 そこへ美貴ちゃんが帰って来た。ややお帰りと言って美貴ちゃんに向けて手を掲げると無視された。 そんなんひどいんちゃいますーとやはり関西弁を駆使しながら苦笑すると、深刻にならなくて済む。 ねぇ美貴ちゃん美貴ちゃんなんで無視するのとウザッたく絡むべきか、それとも美貴ちゃんの方から、 ね〜ぇ?よっちゃん、ごっちんと美貴どっちが好きなの?みたいなジェラシー渦巻く展開を期待するべきか。 うーんと悩んだ末に、とりあえずタバコでも吸うべと思って屋上に上がった。
手すりに体重を預け、ポケットからマルボロライトとライターを取り出すと火を付けた。 思いきり吸い込んで、じっと溜めた後、吐く。甘いよな青臭い薫りが漂う。頭がクリアーになっていく。 なるほど、私の頭がモヤモヤしていたのはコイツが足りなかったんだな、やっぱりダメだな、 なんだかんだ言ってハッパが無いと私はダメだ。そうやってハッパの必要性を肯定しながらも、 どこかで罪悪感を感じる。それでもどうするという確かな手段も有るはずも無く、 私はただただ吸って吐いての基本運動をくり返した。手淫を覚えた猿のようにそれを繰り返した。 繰り返される諸行無常。蘇る性的衝動。CDの中に押し込められた向井秀徳はその言葉を繰り返していた。 私もそれと同じように、ただ吸う吐くという単純な行為をし続けた。そこに自ずからリズムは生まれる。 スッスッハッハッ、スッスッハッハッというジャギングにおける基本的な息遣いのように、スゥーハァー、 スゥーハァーという、二分音符と僅かな休符の果てにあるリズムに向けて、私は行為するのだ。 理由は無い。そこにリズムがある。説明は要らない。いや、説明は不可能。アイ・キャント・エクスプレイン。 私はリズムであり、セックスであり、神であり、そしてロックだ。ロックロックロック。ロックがしたい。 決心は固まった。煙を最後に一息スウーッと吸い込むと、先端の火を指先でグリグリともみ消して、 またマルボロの箱にしまった。ブワーッと吐いた煙は薫りも気高く、ふわふわふわふーと空に拡散した。 空に舞い上がれ。真心ブラザーズの真心をほんの少しだけ分けてもらって、私は屋上を後にした。
楽屋に戻ると美貴ちゃんは熱心に週間少年ジャンプを読んでいた。 私はおいおいおいと思いながらも美貴ちゃんの肩をトントンと叩いて言う。 「ボーカルやるから」 そう言うと美貴ちゃんはジャンプから顔を上げ変な顔をした。 「誰が?」 「私が」 「え」 「ん?」 「いや、別にいいけど大丈夫なの?」 「何が?」 「いやいや、よっちゃんって歌そんなにアレじゃん」 「そんなにアレ?」 「えっと、はっきり言って上手くないじゃん」 「そう?」 「断然そう」 「なんか断然とか言われると凹むんだけど」 「凹めばいいんじゃない?」 「じゃあそうする」
シューンと言いながら楽屋の隅で凹んだフリをする。同情を誘う作戦。 こうしていれば「ごめん言いすぎた」とか「ジョークジョーク」とか「ホントは上手いって」とか、 そんなフォローが返って来るはずだ。というのを私は経験的に知っていた。そのとってつけたような、 言い訳というか励ましというか慰めの言葉は反対に私の心を傷つけたりもするが、やはり、 そのフォローというか優しさが無いことには、人間やっていけまへんで、と私はそう思っているわけで、 今現在、現代日本の社会に何が足りないのか、と言えばそのような共同体的な互いの許容というか、 やっぱり優しさ?のような物が足りないのだ。と私は信じている次第であって、バファリンの半分が優しさ、 という科学では解明不可能な共同体的前近代的な概念によって構築されているという事実は、 私の内に潜めている、近代になって共同体を離れた自我を持つことによって不可避になった寂しさ、 とかそんな寂寥とした概念を多いに満たすものであって、要するに、私はバファリンの存在のその半分に、 大変満足している。ザ・ハーフ・オブ・バファリン・イズ・ベリー・グッド・ドラッグ。HAHA。 おい読みにくいななんだこの下手糞な文章はと思いつつも、私はハッと気付く。 違う、今は現代社会の寂しさとかそんなことを言ってる場合じゃないんだ、と気付く。 そしてチラチラと美貴ちゃんの様子を窺う。美貴ちゃんは何事も無かったかのように、 ジャンプに視線を戻して、時折ニヤついたりする。これだ。これこそ現代社会の問題なのだ。 現代日本の社会の問題点はこの美貴ちゃんのニヤツキの中に全て凝縮されている。 無責任、不寛容、優しさの欠如、個人主義、アメリカナイズド、欧化主義、 「先生日本人はどうあがいても西洋人になれません」と「何、今に日本人も西洋人になるよ」 その二つの主張発信者の間における概念の相違、日本人であるという意識の欠如、 ナショナリズムの衰退、左翼化傾向にある現代社会、かと思えば右翼的にも転ぶ現代社会、 私はこれらの概念の揺らぎの中で美貴ちゃんに対して怒りを覚え、その怒りを表出させる。
「この馬鹿野郎!貞操観念の喪失――」とそこまで言ったところで突然バターンと楽屋の戸が開いた。 私は驚いてそちらに顔を向ける。もちろん美貴ちゃんもそっちの方に顔を向ける。 向けるとそちらには、肩で息をしながら突っ立っているつんく♂さんの姿があった。 「吉澤!藤本!お前らバンドやっとるんか!」 つんく♂さんは血走った目で早口にそう言うとツカツカツカと私の方へ近寄ってくる。 美貴ちゃんは他人のフリを決め込むつもりか知らないが、またジャンプへ顔を戻す。 私はそれを見て、やはり優しさが足りないのだと現代社会に対する問題意識を改めて深いものにする。 「ええ、まあ、一応は、形だけ」 「して、バンド名は何と申すか」 「一応ですけど、バンド・オブ・ザ・ナイト、という名前で」 「ふーん、ええ名や、グッドネーミングや。して、活動はどうしておるのか?」 「いや、まだ一回もやってないんすけどね」 「うんうん、まあ仕方無いわ、モーニング娘。の活動で忙しいからな」 つんく♂さんはそう言うと何か考え込むような素振りで、腕を組んでうんうんと唸り始めた。 目が血走っている。よくよく気をつけてみれば、ほのかにアルコールの香りもする。 コイツ、酔っていやがる。
「で、なんか問題でもあるんすか?」 「問題やと?大有りや!アイドルがバンドやと?ふざけるのも大概にするんや!」 「なんでそこまで言うんですか、そこはもうプライベートでしょう?」 「いいや、アカン、それは絶対的にアカン、お前ら、アイドルやで、よー考えてみ、アイドルや」 「そんなこと言われても私は知りませんよ、決心は固いですから」 「いや、俺はな、何もバンドがいかんゆーとるんやないんよ、そう喧嘩腰にならんといて欲しいんやけど」 「喧嘩腰なのはそっちでしょうが」 「いや、すまんかった。でな、モノは相談なんやけど」 「相談?」 「うん、お前らよ、藤本吉澤後藤でバンドやっとるんやろ?」 「ええ、まあ一応そういう形で」 「そこにな、つんく♂、が加わるだけで丸くおさまるねん」 「は?」 「いやいや、だからな、アイドルだけのバンドっちゅーのはいかんのよ、やっぱり」 「なんでですか?」 「理由なんかあらへんのよ、これはな業界の常識っちゅーやつでな」 「じゃあZONEは?」 「あれはな、アーティストやねん、アイドルやないねん、よー見てみ、全員パッとせん微妙なフェイスちゃんや」 「じゃあ、うちらだってアーティストですよ、安倍さんはいないですから、バンドとしては」 「いやいや、そういう問題ちゃうねん、色々とな、複雑な事情があるねん」 「納得いきません」 「俺が入るだけで丸くおさまるんやって」 「嫌です」 「そんなことを言わず」 「絶対嫌です」 「そこをなんとか」 「絶対絶対嫌です」 「いや、そこをどうにか」 「絶対絶対絶対嫌です」
押し問答は延々と続いたが、最終的にはつんく♂が「お願いします、僕をバンドに入れて下さい」と、 泣いて土下座をし始めたので、「バンドに関する雑務、出費などはすべてつんく♂が請け負う」という条件で、 つんく♂の加入を認めることにした。つんく♂は更に泣いて喜んだ。美貴ちゃんはいつの間にか会話に参加して、 つんく♂に靴の裏を舐めさせたり、色々していた。ごっちんもいつの間にか居た。 ロウソクを十本ぐらい持っていた。ごっちんは笑いながら「これね、チョーキモチイイの」と言いながら、 つんく♂の背中にタラタラとそのロウを垂らしていた。和ロウソクではないので、さぞかし熱いことだろう。 そんな状況の中で、つんく♂は泣きはらした目で「お前ら、ロックやな」と言った。私は尋ねた。 「どうしてそこまでするんですか?」 「それはな、理由は無いんや、ロックやからや、説明はできんのや」 不覚にも私は少し胸が熱くなった。つんく♂は美貴ちゃんの靴の裏を舐めながら、 ごっちんの垂らすロウソクを背中に受けながら、「ロックや!これがロックや!」と絶叫していた。 これがロックだ。アイ・キャント・エクスプレイン。いいや、ウィー・キャント・エクスプレイン。 ロックは概念ではない。感情だ。 その夜、初めてバンドの練習をした。
03.I can't explain 了 「ゲルマン民族!絶対出るよ!これ!ゲルマン民族!ほら!赤線引いてある!赤線!」 定期テストなのだろうか、電車の中でちょっと太った金髪の、イングウェイ・マルムスティーに、 やや似ているかな、似ていないかな、いやこれは酷似している!というスクールガールが、 大声で友達のスクールガールに叫んでいた。友達のスクールガールは美少女だった。 周りの大人はやはり大人だ。「ゲルマン民族のなんたるかも知らん小娘が、テストに出るか、 出ないか、そのようなことでゲルマン民族!などと口にすることが、許されてよいのか、 いや、それは許されない、女子高生は死すべきである。でもパンチラみたいなー、女子高生かわいいなー」 そのように思っていたとしても、口にも出さなければ、態度にも出さない、大人はやはり大人なのだ。 スクールガールはそれでも「ゲルマン民族」という音が気に入ったのか叫び続ける。 「絶対出るって!ゲルマン民族!」美少女名スクールガールはマルムスティーンな友達を、 次の瞬間冷めた目で見ていた。俺はそれを見て。「かっ、かわいい……」と思った。
てすと
65 :
ねぇ、名乗って :2005/03/26(土) 00:06:57 ID:orV7xdsi
てst
66 :
ののたん :2005/03/27(日) 00:52:43 ID:QNwpYNpr
ヽ=@==ノ (D` ) ノハヽヽ ( ) (;´D`; ) Y 人----【〇〇】;ヽ (__)__) ( )ヽ )))
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04.Power of Soul With the power of soul, Anything is possible. With the power of soul, Anything is possible. With the power of you, Anything you wanna do. 魂の力、なんでも出来るぜ。ソウルの力、何だってやれるぜ。 お前の力!何だってやれるぜ! ―――『Power of Soul』Jimi Hendrix
バンドの練習はぐちゃぐちゃと進行した。美貴ちゃんはしきりと「ジミヘンをやろう」と主張していたが、 つんく♂の「アイドルがジミヘンなんてやったらアカン!」という怒号によって、 結局プリプリをやることになった。プリンセスプリンセスのM。私はどちらかと言うとプリンスが歌いたい。 しかし、つんく♂は何も知らんとおもむろにマイクを持ち出して、意味ありげな含み笑いをしながら、 サングラスをくいっと上げた。 「じゃあオレがワンツースリーフォーって言ったら、次で入るんやで」 「え、私がボーカルなんですけど」 そう言うとつんく♂は「かまへんかまへん、早い者勝ちや!」と言って、顔をクシャクシャにして笑った。 私はふてくされながら、ボーカルが出来ないんだったらドラムやる!ジョン・ボーナム! 私はジョン・ボーナム!且つ、キース・ムーン!などと思っていたら、 ごっちんがすでにドラムセットの前に座っていた。 「私ね、実はドラム6年ぐらいやってるんだ」 ごっちんはそう言うと華麗にタム回し、ズドココズトココ、スココココン、バシャーン。 そしてにっこりふにゃっと私に笑いかける。私はボーゼンとしながらそれを見て「そうですか」と言った。 美貴ちゃんは私の後ろで「うおっこのアンプすげー、メサブギーだよメサブギー!」と興奮していた。 つんく♂は「ワン、ツー、スリー、フォー」とカウントの練習をしていた。
結局、私はベースをやることになった。なんだかんだでちょっと腹を立てながら、ベースを構える。 そもそもボーカルをやるつもりだったのでベースの構え方からして分からないのだが、 モタモタする私を見る視線は痛い。「早く構えろよ」「ストラップの付け方も分からねーのかよ」 そんな視線をヒシヒシと感じながらも、不気味に親切なつんく♂の指導の下、ベースを構える。 つんく♂からのアドバイス「わからへんところは4弦の開放を適当に弾いとけばOKや!」 4弦てどの弦?と訊きたいところをグッと堪えて、私は頷く。 あっ、この感じ。 この感じがバンドなんだ。ロックンロールなんだ。そう思った。 しかしプリプリ、しかもM。つんく♂が言う「ワン、ツー、スリー、フォー」 「あ、ちょっといいですか」ごっちんがそれを遮る。 「なんやねん、もう気持ちは入っとるのに」 「いや、それってちょっとダサいな、って思って、私がハイハットで4回刻むんで、 それから皆が入る方が良くないですか?」 つんく♂は「ダサい」という言葉に眉毛がピクピクと反応したものの、 「ほうやなぁ、それもそうやなぁ、じゃあそれで!」と意外にもすんなりそれを受け入れた。 そして「いつも一緒にいたかった♪」という出だしを練習し始めた。 私はなんとなく、コイツ野良犬に噛まれて死ねばいいのに、と思った。 美貴ちゃんの方をチラリと見ると、美貴ちゃんはまだ「メサブギーすげー」と言っていた。 何がすごいのか、私には良く分からなかった。
ごっちんがハイハットで刻む。シャンシャンシャンシャン。 私と美貴ちゃんが入る。もうすでにぐちゃぐちゃだ。当たり前だ。私はこの曲を知らない。 美貴ちゃんも知らないのか、「メサブギー!」と喚きながら、ツマミをぐにゃぐにゃいじっている。 時々ピギャー!とかキーン!とかいう音がする。ごっちんは淡々とリズムを刻む。つんく♂が歌い始める。 いつも一緒にいたかった 隣で笑ってたかった 季節はまた変わるのに 心だけ立ち止まったまま あなたのいない右側に 少しは慣れたつもりでいたのに どうしてこんなに涙が出るの もう叶わない想いなら あなたを忘れる勇気だけ欲しいよ 私はなんとなくケッと思った。美貴ちゃんもなんだかつまらなさそうに唾を吐いた。 つんく♂は自分の歌声に酔いしれていた。ごっちんは未だに淡々とリズムを刻み続けている。 私は音を出すのを止めた。すると、美貴ちゃんも止めた。つんく♂は歌いつづける。 ごっちんもドラムを叩きつづける。ごっちんが演奏を止めないことにムカムカして、 私はベースのヘッドをアンプに向かって突き立てる。ピギョーー!という音がした。 つんく♂は歌を止めると、少し焦りがちに私に向かって言った。 「こらっ!なにしてんねん吉澤!いくらロックやからって物は大切にせんとアカンがな!」 「うっさい馬鹿!お前がいるからダメなんだよ!」 「おっ、お前、それ本気で言うてんのか、オレはお前らのプロヂューサーやねんで?」 「それがどうしたってんだよ!」 「ええか、世の中にはな、言ってええことと悪いことがあんねん、そしてお前はな、お前はロックや!」
つんく♂は唐突にロケンロール!!と叫ぶと、 美貴ちゃんのギターを奪ってガシャガシャと弾き始めた。 ごっちんはすぐさまそれに反応して、早いビートを刻み始める。 美貴ちゃんも目の色を変えてマイクに飛びつく。そして叫ぶ。 「アクセル全開環七フィーバー!!」 ギターウルフは止まらない。私は興奮してベースの弦をワヤクソにカキムシる、叩く、ハジく、舐める、 歯でガシガシ、アンプを蹴りまわす。美貴ちゃんはそれを見ながらケバケバしい笑顔を振り撒く、 その一方で彼女はドスの効いた声を撒き散らす。ロックンロール。 つんく♂は恍惚とした表情でギターを弾いていた。 ごっちんは髪の毛を振り乱してエイトビートを刻んでいた。 私はその一帯の状況を興奮した目で見ながら、どことなく覚めていた。 何故だろうと思ってみても良く分からなかった。ハッパが足りないのかな、 そう思ってまた自嘲的に笑ってみた。美貴ちゃんが不思議そうな顔をして私に言う。 「なんで笑ってるの?」私はハハッと笑いながらそれに応える「なんでなんだろう?」
と、そのような感じで、バンドオブザナイト、略してBOTN、ボトン、はビシバシと活動を始めたわけだが、 実際にはそのような略称は使わない。私達は自分のバンドのことを「夜のバンド」と呼ぶ。 つんく♂は「night」と「knight」を掛けてバンドの呼称を「夜の騎士」にしようと主張したが、 それはあまりにもあんまりな気がしたので私と美貴ちゃんでどうにか阻止した。 つんく♂は不満そうな顔をしていたが「ギター上手いですよね」とおだてると「そうやろ?」 と言ってすぐに機嫌を直した。私はその日に20万円のベースを買って貰った。 「安いもんや」そう言ってつんく♂は眉毛をピクピクさせていた。 「吉澤、お前これ持って先に帰れ」 「なんでですか?」 「なんでもや、アイドルはオレの言うことに一々口出すんもんやない」 「はぁ」 私は店を出るフリをして、物陰からそっとつんく♂の方を伺った。 つんく♂は情けない声で「安くなりまへんか」と訊いていた。 私は少し寂しくなってそっとその場を後にした。 去り際に「じゃあ15回払いで!」という明るい声が聞こえた。
仕事が終わると私と美貴ちゃんは目配せをする。そして美貴ちゃんがごっちんへメールを送る。 タイトルは「69」本文は「864」これはつんく♂が決めたのだが、要するに「ロック」「やろうよ」 ということらしい。こればかりは私と美貴ちゃんが「そんなのどうだっていいじゃないか」と、 どんなに反対しても譲らなかった。「男っちゅうのはな、どうしても譲れん一線があるねん」 ごっちんはどうだか良く分からないが、少なくとも私と美貴ちゃんはそのつんく♂の押し付けを、 あまり良くは感じていなかった。美貴ちゃんの携帯にごっちんから返事が届く。 タイトルは「Re:69」本文は一文字「あ」了解という意味だ。ごっちんはめんどくさがり屋さんなのだ。 私と美貴ちゃんはタクシーでごっちんを拾うとつんく♂の待つスタジオへ向かった。 今日は一曲ちゃんとしたコピーをしてみようということで、何をコピーするのか決めるつもりだ。 今までは結局スタジオに入って、何をやるかうやむやに「プリプリ!」とか「ジミヘン!」とか、 そんな言い争いになってしまって、でも結局はギターウルフを適当に合わせて、なんとなく満足して、 あー今日も良い運動だったみたいな雰囲気で終わりを迎えてしまうので、私は飽きてしまったのだ。 だから私はつんく♂及びその他二人に「ちゃんと音楽をやろう、音楽としてのロックンロールをやってみよう」 と提案し「それもそうやな」「そういやそうだね」「メサブギー」などと、そのような賛成意見を頂戴し、 今に至っているのだが、結局今日もうやむやな雰囲気になってしまっていた。
まずつんく♂が「お前ら、どんなもんがやりたいねん」と尋ねる。 美貴ちゃんは生気の無い眼で「ジミヘン」と応える。つんく♂は歯軋りすると机を叩く。 「だから、アイドルがジミヘンなんてやったらアカン!」 「じゃあクリームでもいい」 「やらしいな藤本は」 「そっちじゃない」 「アカンがな!かわいいお前らをそんな雑誌に出すなんて、オレの良心が許さへん」 「人の話聞けよ」 結局この二人はこういう言い合いにしかならないのかと落胆して、この二人は無視することにした。 私はごっちんに「ごっちんは何がやりたい?」と尋ねる。ごっちんは眠そうに「なんでもいいよ」と言った。 「何でもいいってのが一番困るんだよね」 「じゃあよしこは何がやりたいの?」 そう問い返されてふと気がついた。私は何をやりたいんだろうか、今まではただなんとなく、 ロックンロールがやりたいロックンロールがやりたいなどと言っていたものの、 そもそもロックンロールをやりたいと思ったきっかけは中島らもの小説であって、 音楽に関して私は徹底的に無知であり、無教養であり、楽器も弾けず、正しく弾こうとすら思わず、 音を出して頷いて、あっこれってロックと思って、つんく♂からお前はロックやなと言われて、 ロックンロールを体現しているつもりではありつつも、実際ロックとはなんたるものか、 全く分からない。ロックは衝動。ロックは感情。ロックとは一種の精神状態のことだ。 口先ではそのようなことを言っているが私は本当にそう感じて、その説を口にしているのか。 私の今やっていることは所詮ポーズに過ぎない。アホか、いや、私は大馬鹿だ。 しかし、ごっちんは先程の問いかけを発したまま私をじっと見つめているので、 私はこれまたなんとなく漠然とした答え方をする他無い。
「ロックンロールがやりたい」 「いやそりゃまあ分かってるけど、具体的にどのバンドのコピーするのか、って話じゃん」 「うーん、ロックならなんでもいいんだけど」 「人に何でもいいってのが一番困るとか言っといてそれ?」 「うん、ごめん、私何にも分かってない」 「ま、いいけどね」 なんとなく気まずくなって私とごっちんは押し黙ってしまう。 美貴ちゃんとつんく♂はどこから取り出したものか、いいちこを二人して酌み交わしていた。 その「絶対鈴木えみや、これは断固譲れへん」と「違う、絶対にAKINA」の論争の発端。 それは何だか分からないが、ロックとは全く関係ないことは明らかだ。 私は気が重くなる。こんなはずじゃなかったのに。気が重くなる。 「何の話か知んないけどさ、今はコピー曲決めた方が良くない?」 ごっちんは私の様子を察したのか二人に向かってそう言う。いい子だ。ごっちんはいい子だ。 しかしつんく♂は聞いちゃいない。「AKINAてお前、それはおっぱいにシンパシーを感じとるだけやろ」 そういえば今日のごっちんの服装はかわいい。まだ肌寒いというのに下はホットパンツ、上はニット。 こういうファッションを、私はどっちつかずでテレビ的なクレイジーなファッションだと思うのだが、 ごっちんがするのであれば全く問題が無いと感じる。太ももが美しい。つと視線を上げると目が合う。 また、なんとなく気まずくなって目を逸らす。ごっちんは股を広げる。わざとか、と思う。 私はやっぱりそのパカッと開かれた股座に視線を動かしてしまう。つややかな太もも。 その先にはピチッとしたホットパンツに包まれたごっちんの腰があり、それはビーナスのようであり、 またホメロスのようであり、私は体内でふつふつと燃え始めたエロスの炎を感じつつも、 それは一方でホメオスタシスを保つ作用を起こし、興奮とはまた別種のかけ離れた集中力をもたらす。 私のパッキンパッキンに集中された視覚、それを主として、その他にも嗅覚、触覚、味覚、聴覚、第六感、 愛の第六感、嘘、嘘ばっか、嘘だらけ、嘘だらけ、USODARAKE、私の五感を総動員して、見つめる先、 その先でごっちんの脚はなまめいてうごめく。
バンッ。 銃声のような音がしてハッと顔を上げると、美貴ちゃんが机に手をついていた。プルプルしておる。 つんく♂は真っ青な顔をして「すまん……」と言った。ごっちんも青い顔して固まっていた。 美貴ちゃんはゆっくりとこっちに振り向くと言った。 「よっちゃん」 「はい、なんでしょうか」 「敬語やめてね」 「はい」 「ものは相談なんだけどさ」 「はい」 「コイツ脱退ね」 美貴ちゃんはつんく♂を指差すとニッコリと笑う。つんく♂は引きつった笑いを浮かべる。 私は驚きと喜びで飛び上がらんばかりだったのだが努めて冷静を装って言った。 「よござんす」 「おいおい、お前らちょっと待て、誰が金出しとると思てんねん」 「なるほどねー、ごとーもなんか違うなーと思ってたんだ」 ごっちんはニコニコしながらそう言うとつんく♂を指差して「脱退決定」と宣言した。 つんく♂は何か大声で喚きたてる。やんややんや。猿のようにやんややんや。 なんか違うって何。それは私も思っていたことなのだが、それが何なのかがわからない。 分からないから茶化してごまかす。やんややんや。狂った梨華ちゃんのようにやんややんや。
「お前ら知らへんからな!どうなっても知らへんからな!」 つんく♂は子どもの喧嘩のようなことを言う。そして私達の顔をぐるりと見回す。 ヤニ臭い顔をしていた。私はつんく♂の顔を久しぶりにじっくり見たような気がした。 つんく♂はキシキシとした金髪に、生気の無い、焦点の定まらない眼をしている。 私が娘。に入った頃から、つんく♂はこんな眼をしていただろうか。 私はまたやいのやいのと騒ぎ立てようとしたが思わず黙ってしまう。 さっきまでなんだかんだと言っていた美貴ちゃんも、気付けば黙っていた。 「今日はもう帰れ、また今度きっちり話つけたる」 つんく♂は目頭を押さえながら上を向くと、ため息を吐くようにしてそう言った。 どことなく沈んだ雰囲気でスタジオから出ると、私達三人はしばらく無言で夜道を歩いた。 夜道を歩いてたら 小便小僧と目があった 知らんぷりして通りすぎたら 小便したまんまついて来た
そんな歌があった。そんなことがあったら楽しい。少しは心を癒すことができる。夜道は寂しすぎる。 いや、実際には夜道が寂しいというわけではない。いつでもどこでも音は溢れていて、 その状況はいかに夜といえども変わらない。カークラクション。都会の喧騒。都会は眠らない。 冷凍都市東京。ガヤガヤガヤとした喧騒は時として「動」だが、私にとっては圧倒的に「静」だ。 たとえば滝が在る。滝を間近で見ると、最初人は圧倒的な「動」を感じ、又そこに「生」を見出す。 それが滝に打たれるという行為の原初的な動機であるし、事実私もその圧倒的な生の概念を前にして、 滝に打たれてみたいなどということを言ったこともあったが、銭湯の打たせ湯を体験してそれは不可能 であることを悟った。いずれにせよ滝はプリミティブには「動」だ。しかしそれをじっと凝視していると やがて「静」に変わる。その「静」は決してマイナスイオンなどという科学の妄言から来るのではなくて、 その圧倒的な「動」の存在感ゆえに「動」という概念が希薄になって行くからだ。 しかし、それは切ないことだ。「動」の氾濫。我々人間、特に日本人は、蛙が池に飛び込んだ、 その僅かな音に耳を打たれ、「俺は今静寂に居る」と感じることの可能な感性を持っていたはずだ。 「動」の氾濫から来る「静」と、一瞬の「動」をきっかけにして感じる深々とした「静」の違い。 それは寂しいか、寂しくないかの違い。そして今、この夜道は寂しすぎる。 美貴ちゃんはこの寂しさに耐えきれなくなったのか、ぽんっと言葉を宙に投げる。 一瞬生じる、生々しい「動」それは私とごっちんの鼓膜を打つ。
「なんかさー、なんか、違う気がするんだけど、でも、これでいいような気がする」 先程のつんく♂の様子とその言葉によって、私の中でも何かが終わった気がしたが、 しかしそれと同時に始まるものもあると思う。生の衝動。生きるということ。永劫回帰ということ。 「俺達、もう終わっちまったのかな」と「バカヤロウ、まだ始まってねぇよ」のやりとり。 又は「あれ?先輩もう帰るんですか?」と「帰るんじゃない、辞めるんだよ」そのやりとりが指し示す、 終わりでは無くて始まりのベクトル。ん?本当に線路はどこまでも続くの?嘘をつくな、続かない。 続かないけれども、終わらないと思うことは出来る。ここから始まり、ここから始まりと、 再生を繰り返せば良い。ずっと終わらないということはない。ただただ繰り返される諸行無常。 蘇る性的衝動。生の実感だけは持っとこう。死して尚、は美辞麗句、生きていてなんぼなんです。 私は言う「生きててなんぼだからね」美貴ちゃんは私の方を向くと「それ美貴に言ってるの?」 と言って、困ったような呆れたような顔をして愛想笑いをした。平たく言えば「何言ってんだコイツ」 という顔をして私を見て笑っていた。そんな私と美貴ちゃんのやりとりをよそに、 ごっちんは腕組みをしてうんうんと唸っていた、と思ったら、突然喋った。 「だねー、なんか違うんだよね」 「そうそう、何がっていうわけじゃないんだけどね、なんかね」 二人は「なんかねなんかね」と呟きながら俯いて歩く。私は二人が何について「なんか違う」 と言っているのかが良く分からないので「難しい、難しいとこよ」と言ってごまかす。 二人は何について「なんか違う」と言っているのだろう。 つんく♂をバンドから辞めさせたことか?それとも、この夜道の寂しさのことか?
「これからどうする?」 「そーだねー、ご飯でも食べに行こうか」 「いや、そういうことじゃなくって、バンドどうする?ってこと」 「ああそう、でもとりあえずご飯食べに行きたくない?」 「まあ確かにお腹は空いてるけど、特にこれといった店もないし」 「えー、ほらほら、あそことかいいじゃん」 ごっちんは「あそこあそこ」と言いながら薄汚れたラーメン屋を指差した。 美貴ちゃんは露骨にしかめっ面をして「やだ、汚い」と言って、嘘っぽく笑った。 ごっちんは「じゃあどこだったらいいのさ」と言って、ほっぺたをぷっくりと膨らませる。 超かわいい。美貴ちゃんは「別にどこだっていいけどさー」ごっちんは「ほらまたそうやって優柔不断」 二人はそうやって、楽しそうにじゃれあっている。二人にはバンドに対する何の危機感も、 一種の新しい始まりにかける闘志も無い。イライラしてくる。 「スタジオ行こうよ」 私がそう言うと二人は少し驚いた顔をして振り向く。美貴ちゃんは不審げに、 「どこ?まさかつんく♂のとこに戻るの?」 「まさか、冗談はよしこさん」 私はそう言うと肩に掛けていたベースを外す。そしてケースごと、脇に流れていた川に投げ捨てる。 ドボンという音がすると、もうすぐにベースはどこに行ったのだか分からなくなった。
「ちょっと!何してんの!早くどうにかしなきゃ!」 「いいんだって」 「良くないよ!」 もったいないとか信じられないとかブツブツ言う美貴ちゃんに対して、ごっちんは冷静だった。 ごっちんはニンマリ笑うと私に向かって親指をグッと付き立てて言う「なるほどね」 「何がなるほどねよ!」美貴ちゃんはそう言ってごっちんにも食ってかかる。 いい加減に鈍い美貴ちゃんのために、私は微笑みながら言ってやる。 「一からやり直すんだよ、私達のバンド」 美貴ちゃんは「だからって、20万のベースを……」そう言って肩をがっくり落とす。 ごっちんはその肩をポンポンと叩いて言う「気にしない気にしない」 私は八の字眉毛をした美貴ちゃんにもう一度ニッコリと微笑みかけると言う。 「With the power of soul, Anything is possible.でしょ?」
04.Power of Soul 了 日本の音楽業界は最近になって二つのものを失った。一つはもちろんギターウルフ。 そしてもう一つは『モーニング娘。の』矢口真里という存在だ。これは重大な損失であった。 それはスクールガールも良くわかっている。The last morningのスクールガールの会話。 「ねえ、なんか矢口辞めるらしいよ」 「矢口?」 「ほら、モー娘。の」 「へぇ」 小栗旬との交際が発覚したからだとか、昨日発売のFRYDAYにその写真が載ってるんだとか、 熱心に語る女子高生Aに対して「ふーん」「へぇ」「あっそう」とまるで興味無さそうに、 その話を受け流す女子高生B。女子高生Aは少し中森明菜似の聡明そうな女の子で、 女子高生Bはどちらかというと成績の悪そうな、ややあびる優似の女の子だった。 つれない女子高生Bの態度に、女子高生Aは腹を立てて「もういいっ」とそっぽを向いた。 女子高生Aがそっぽを向いたその時、その一瞬、女子高生Bは寂しそうな顔をした。 俺は知っている。その寂しさは俺と同じ、矢口とギターウルフを失った悲しみから来るものだ。 次の電車を下りた俺はそっと目頭を押さえた。スクールガールには底知れない深みがある。
87 :
ねぇ、名乗って :2005/04/23(土) 03:35:02 ID:bAinr8Y8
88 :
名無し募集中。。。 :2005/04/30(土) 18:31:09 ID:d+E3Vq+9
89 :
名無し募集中。。。 :2005/05/05(木) 23:59:18 ID:/sqqeczo BE:70404454-
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90 :
名無し募集中。。。 :2005/05/16(月) 23:31:23 ID:KqYofnuY BE:21121632-
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二本足で直立するレッサーパンダ、風太君!今大人気です!きゃーかわいー。 まったくどうでもいい上に、ただ「そんなんどうでもいいや」で済めばいいものの、 楽屋では亀ちゃんとシゲさんに代表される一派による「風太君チョーかわいいよね」「うんうんかわいいよね」 みたいな会話が氾濫していて、「吉澤さんもかわいいと思いますよね?」とか言われて、私は「どうでもいい」 って応えたいんだけど、そうするとシゲさんなんかは「どうでもいいって何?それってかわいいの?」 とかなんとか単語というか日本語というか本来ならば4歳ぐらいまでに自ずと分かっているはずであろう、 単語の音と概念との相同性というか、端的に言ってしまえば常識なんだけど、シゲさんの常識は狂っていやがるから、 というかそもそもその「どうでもいいって何?」というのは私に対する怒りの現れなのかとか、 それとも「どうでもいい=かわいい」というワヤクソな論理の飛躍を私に対して見せ付けて、 「ああ私ってばやっぱりかわいい」という豊川悦司になってしまいたいのか、あ、今気付いたけど あの人もう43ぐらいだろ?何43にもなって「私ってかわいいですか?」とか訊いてんの?馬鹿? 馬鹿っていうか豊川悦司って男じゃないですか。男がかわいいですか?とか、失笑。失禁。尿漏れユニバース。 え?何?シゲさんって豊川悦司好きなの?へー。私は竹中直人さんが好きだよ。
でまあ、その直立するレッサーパンダ風太君はかわいいのか否か、という問い掛けに対しては、 「まあかわいいんじゃないですか?」という風に、私の大嫌いな半疑問系かつ敬語で逆に問い掛けたりしてみて、 シゲさんは「私とどっちがかわいいですか?」とか真剣な目で更に問い返してきたりして、 私は「シゲさんと動物のかわいさを比べちゃっていいの?」とか心から慈しむような感じて訊くフリをしつつ、 「さゆみんかわいいよさゆみん、宇宙のどんな物質よりもかわいい」と思ってるんだけど、 それを言うと梨華ちゃんが嫉妬するから言わない。梨華ちゃんってばさ、卒業したじゃんこないだ。 そしたら毎日電話してくるの「これからよっすぃーと会えなくなると思うと寂しい」 別に私は寂しくないんだけど「私も寂しいよ梨華ちゃん」とか心にも無いことを言ってみたりしてさ、 でも梨華ちゃんってばこないだののと飲みに行ったらしいよ。ふざけてね?なんで未成年のののと行くわけ? パパラッチされたらどうすんの?ののは矢口さんみたいに「じゃあ卒業っていうか脱退しときましょうか」 みたいに簡単にダブルユー脱退!ってわけにはいかないんだよ。あいぼんだけでどうやってダブルユーなんだよ。 ちょっとは責任感持てよ梨華。おい、梨華ってば。貴様の肌の色と見分けのつかない乳首吸うぞこら。 かと思えば麻琴は麻琴で「ですよねー、かわいいですよねー」とか言ってハッピータン食ってやがる。 お前俺の話全然聞いてないな。俺は今梨華の話をしているんだよ。ああむかつくな梨華は。犯すぞコラ。 はっ、と気付いたんだけど、私は今梨華ちゃんに嫉妬してた。梨華ちゃんに嫉妬するなんて超悔しい。 やっぱりここはシゲさんに「全宇宙でさゆみんが一番かわいい」って言ってあげた方がいいのかも、 って気がしてきた。けど今更言うに言えない。照れくさい。麻琴がハッピータン食ってる音がうるさい。
今更指先を塩辛くしながらハッピータンをボリボリ食ってる17歳ってのも素朴といえば素朴そうだけど、 お前なんか貧乏くせーよ。「これがおいしーんですよね」とか言って指先についた塩舐めてんじゃねーぞ。 拭け。横でシゲさんの太ももに頭を乗っけて「さゆの太ももキモチイー」とかほざいてる亀ちゃんの スカートで拭け。スカートで拭いたら亀ちゃんは多分「もー、やめてくださいよー、汚らしい!」 って言うと思うけど、多分その「汚らしい!」っていう部分はこれ以上ないぐらいの感情が篭ってるから、 泣いたりしたらダメだよ。って、そう言ってるそばからまたお前は塩のついた指先を舐める。 分かった。舐めるのは否定しないから、せめてそれを田中ちゃんに舐めさせてあげなさい。 ガキさんは「もーマコトったら貧乏性っ!」とか言って突っ込んでるけど、カメラも回ってないのに、 そんなに常にサービス精神旺盛でいられるガキさんをリスペクトしたい。 それはそれはものすごくリスペクトしたい。おいこら亀井、シゲさんの太ももでオナニーしてんじゃねーぞ。 ガキさんが困ってるじゃん。「これがセックスって奴ですか?私にはまだ早いですね」 うひょー、愛しいなガキさん。私が本当の性というものを教えてあげたい。梨華ちゃんに怒られるけど。
で、そんなガキさんの様子を見てたらそりゃ美貴ちゃんもガキさんには気を許すわな、 って思ったけど最近美貴ちゃんのおっぱいが変だ。 私はよく美貴ちゃんのおっぱいをモミモミすることがあるわけなんだけど、そうすると 美貴ちゃんは顔を赤らめて「よっちゃん、やめて」って切ないやらドギツイやらよく分からない声だすんです。 眉間にシワが寄ってるんだけど、それは私の愛撫による快感から来るものなのか、それとも 不快感から来るものなのか、私はちょっとドキマギしつつ、その怒らせるかヨガらせるかの 絶妙なラインで美貴ちゃんのおっぱいを楽しんでいたわけなんだけど、最近触ると妙にブリブリして 「いやだー、ちっちゃいからはずかしー」とか以前は言わなかった文言を言うようになって、 しかも心なしか、心なしというか実は思いっきりおっぱいが大きくなっていて、「どうしたの?」 って訊くと「内緒」って応えるんだ。だから私は「シリコンは発ガン性物質らしいよ」と言っておいた。 美貴ちゃんは「それがどうかしたの?」とか涼しい顔して言ってたけど、脇の下にこれでもかと汗をかいていた。 「吉澤さん、私、こないだ誕生日だったんですけど」 誰からか声をかけられたな、と思って後ろを振り向くと田中ちゃんが寂しそうにシゲさんと亀ちゃんの いちゃいちゃっぷりを見つめていた。「やだ〜、エリってばそんなとこ触らないでよ〜、あっ、もぅっ、んっ」 いくらなんでも田中ちゃんがかわいそすぎるなと思っていたら、今度は肩をトントンと叩かれた。 誰だよ。うわっ、こんこんだ。トントンとコンコンってギャグかよ、つまんねーな。ごめん。 私がつまらなかった。しかも使いまわし。すいませんでした。
「何?」 「いや、私こないだ誕生日だったんですけど」 「だから何?」 「え、何っていうか、誕生日だったな、って思って」 「誰が?」 「いや、私が」 「何で?」 「何でって言われても、誕生日なんですもん」 「ああ、そうか、こんこん誕生日か、18だっけ?」 「はい」 「何日だっけ?13日?そういえば今月の13日って金曜日だったね、大変だねこんこん、ジェイソンじゃん」 「いや、私の誕生日は7日です」 「あっそう、知ってるよそんぐらい」 なんだかどう受け答えしてもつまんないので、こんこんの言うことには今後 「ふーん」or「へー」or「そう」で受け答えすることにした。それは同様に確からしい。
そうすると「催促するわけじゃないんですけど、こないだのんちゃんには指輪を貰いました」とか 「田中ちゃんからはコアラのマーチ貰いました」とか「石川さんから『ハッピー♪』てメールが」とか 「矢口さんには『これから頑張れよ』という激励の言葉を」とか、際限無く自分の誕生日プレゼンツ、 を発表し始めたわけなんだけど、私がずっと「へー」とか言ってるもんだから、悲しいのを通り越して、 どうやら腹が立って来たらしく「私がモーニング娘。に入りたかったのは自分を変えたかったから! 私がモーニング娘。に入りたかったのはもっと積極的な生き方がしてみたかったから!だから! だから!大好きだったのんちゃんともお友達になれたし!メールもするし!石川さんにかわいがられるし! 田中ちゃんも私を慕ってくれるし!実は保田さんとも交友があるし!つんく♂さんには愛撫されるし! 吉澤さんが!吉澤さんが!吉澤さんのバカヤロー!」とか叫ぶと楽屋から出て行ってしまった。 私は悪いことをしたつもりもなければ、だからどうしたの?と思うんだけど、 こんこんがあれだけの大声を挙げて、自らの内面を赤裸々に語ったのにも関わらず、 周りはのほほんとしたもので、やっぱり「風太君かわいいよねー」「うんうんかわいい」 の会話は繰り返されていて、私はそれが「どうでもいい」と思うんだけど、シゲさんは 「私と風太君どっちがかわいいですか?」とか訊いてきて、なんとなく「慶太」と応えてみるんだけど、 なんというかちょっと虚しくて、なんで虚しいんだろうと思ったときに、田中ちゃんと目が合う。
田中ちゃんはちょっとやつれた顔でシゲさんと亀ちゃんのいちゃいちゃを見ながら、 「れいなはこれでよかとです」とまるでヒロシみたいな口調で言うので私は笑ってしまったんだけど、 「これでよかとです」という諦めというか、達観しているそれはモーニング娘。に不可欠なものであり、 不可欠といえばこんこんもモーニング娘。には不可欠な存在なのであるからにして、 先程私がこんこんを怒らせ、そのような気はなかったとは言え、私が楽屋から立ち去らせてしまった、 というような事実には変わりはなく、その事実は私の胸をなんだか圧迫して、圧迫するとそれはすなわち つぶれてしまうわけだから、まあ胸にポッカリ真空状態の空間があくわな。そしたらそれは真空なわけだから、 外部の圧力に負けてますますギュッギュッとなってしまうんだけど、そこの空間にはまるで密閉した部屋の中に いつのまにか蚊が侵入しているかのごとくどうしても埋めきれない隙間というのが必ずあるわけで、 隙間、スリッツ、若干にして膨大なる隙間。その隙間が虚しさなんだろう。 その隙間をどうにかして埋めたいのだろう。
だから、私はドドドドと走って行ってガバッと楽屋の扉を開けるとどこにいるか分からないこんこんに向けて、 大声で「誕生日おめでとう!」と叫んだ。たまたま通り掛かったのか、故意に私たちの周りをうろついていたのか、 どういうわけだかそこにはニヤニヤした顔のつんく♂さんが居て、 「おお吉澤、祝ってくれるのはええねんけど、俺の誕生日は10月29日やで」 と、この場にはおよそ不適当、要するに極度に不快な笑みを浮かべて勘違い極まる発言していたのだが、 私はそれを蔑むように見つめて、でも考え直して「コイツがいるからモーニング娘。なんだよな」 という気持ちを新たにしつつ、もう一度「誕生日おめでとう!」と叫んだ。 前者はこんこんに向けて。後者はののに向けて。誕生日おめでとう。 そういう私の心を知ってから知らずか、つんく♂さんはくるりと後ろを振り返ると廊下に叫ぶ。 「俺って愛されてる!」馬鹿野郎。確かに愛されてはいるかも知れないが、それはこれとは話が別だ。 私はつんく♂のこちらに向けられている尻に狙いをつけると、両手をとある形に握り締め、全力で駆け出した。
00.人差し指のピストル 了 2人組の女子高生に声を掛けられた「あいつキモくね?」 私は必死に笑顔を取り繕って「キモいよね〜」と返答した。 「うわっ、マジでキモい」そういって2人組のスクールガールは私の視界から消えた。 限界だと思った。
フムフム
103 :
名無し募集中。。。 :2005/06/16(木) 16:58:12 ID:lSpmTfCE BE:105606656-
( ` ・ゝ´) 川‘〜‘)|| (〜^◇^) 川σ_σ|| ( ^▽^) 川o・-・) ( ‘д‘) ( ・e・)
104 :
名無し募集中。。。 :2005/06/22(水) 17:04:32 ID:eHk3szQQ BE:42242843-
( ` ・ゝ´) 川‘〜‘)|| (〜^◇^) 川σ_σ|| ( ^▽^) 川o・-・) ( ‘д‘) ( ・e・)
105 :
名無し募集中。。。 :2005/06/25(土) 18:42:43 ID:2zIGmVra BE:35202252-
( ` ・ゝ´) 川‘〜‘)|| (〜^◇^) 川σ_σ|| ( ^▽^) 川o・-・) ( ‘д‘) ( ・e・)
106 :
名無し募集中。。。 :2005/06/28(火) 01:49:05 ID:h+TxfE410 BE:123207757-
( ` ・ゝ´) 川‘〜‘)|| (〜^◇^) 川σ_σ|| ( ^▽^) 川o・-・) ( ‘д‘) ( ・e・)
しません
109 :
ねぇ、名乗って :2005/07/08(金) 08:20:16 ID:vkuzLf9S0
キム・ヨンジャ
110 :
ねぇ、名乗って :2005/07/08(金) 09:43:00 ID:eQM85aTtO
キム・カッファンあちゃー!!!!!
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メチャワロス
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116 :
名無し募集中。。。 :2005/09/06(火) 10:00:46 ID:IUHyDO4f0
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