84 :
ナナシマン:
「なっち!タイタンが!!」
あわただしく玄関口から聞こえてくる声。せわしなく靴を脱ぐ
履物を脱ぐ音と共に聞こえる、どたどたという足音。商店街で
タイタンと一戦交えた圭織達だった。リビングではすき焼きの
準備もほとんど整っていたが、少女たちは彼女たちが肉を買って
くるのを待っていたのだ。
「なっち?まだ帰ってきてないよ」
「どうしたの?タイタンって?」
キッチンから覗く白いエプロン姿の女性。りりしい目元が印象的な、
鼻にピアスをした女性の傍らには、同じ色のエプロンをした小柄な
少女の姿があった。石黒 彩と矢口真里、二人が並んでキッチンに
立つのは久々のことだった。少女たちが集う夕餉のひと時は笑顔に
彩られたものになるはずだったが、思いがけない敵の挑戦が団欒の
ひと時に緊迫感を与える。
「そうなんだ・・・まだあさみのお墓なのかなぁ・・・」
不安そうに腕を組み、周囲に視線を投げかける圭織。その後ろでは
あさ美と希美が、やはり不安の色をにじませながら仲間の少女たち
に目で訴えかける。
85 :
ナナシマン:04/12/16 21:41:55 ID:YNGCCxZZ
「圭織、何があったの?大丈夫だった?」
「辻、紺野、どうしたの?」
キッチンから彩と真里がリビングへとやってくる。仲間の少女
たちも彼女らの言葉を待つ。少女たちの視線が集中したその直後。
「実はね・・・」
口を開いた圭織の言葉に、神妙な顔つきで耳を傾ける少女たち。
雪辱に燃える悪の手先が仲間の命を狙っていることを知り、夕餉を
前にした食卓に緊張感が走る。
「北海道の仇を取るために、安倍さんと決闘するって・・・敵も
執念深いんやの」
「それくらいやりかねないよ・・・私には判るもん」
高橋 愛と小川麻琴はそう言って顔を見合わせる。特に、ゼティマ
の野望の為に辛い戦いを強いられた麻琴にはそれが良く判るのだ。
一様に戦いの予感を抱き唇をかみ締める少女たち。同じかみ締める
ならば、圭織たちが買ってきた特選すき焼き肉の方がどれだけ
良かったことか知れない。と、その時。
「ただいまぁー!」
圭織達がとっちらかした玄関先に、耳慣れた声が響く。なつみが
墓参りを終えて帰ってきたのだ。
86 :
ナナシマン:04/12/16 21:44:25 ID:YNGCCxZZ
「なっち、あのね・・・」
なつみが何も知らず帰ってきたと思った圭織は、宿敵タイタンの
挑戦を彼女に伝えようと口を開く。そんな彼女になつみは一つ
頷くと、圭織に言った。
「うん。何の話か判ってる。あいつの事だよね。タイタンが
なっちに挑戦するって話だよね」
「えっ・・・まさかもうゼティマが?!」
なつみはすべてを知っていたと話すと、岬で出会った謎の敵の話を
少女たちに聞かせた。
「けど、どうしてそのシャドウって奴はそんな事を教えたのかな」
「うぅん、なっちはよく判らないけど、シャドウって奴はタイタン
のこと嫌いって言ってたし」
幹部同士の確執を思わせるなつみの言葉に一同しばし視線を落として
考え込む。ともあれ期限は三日後である。