60 :
ナナシマン:
「初めてお目にかかるな・・・お前がタイタンか」
「何者だ、貴様・・・見かけぬ面だな」
姿を現したのは鋭い牙を持つライオンの改造人間。特徴的なその鬣は
どことなくスフィンクスのそれにも似た意匠にあしらわれている。装着した
ハサミ状の手を自慢げに摩りながら、タイタンの言葉に答えた。
「俺の名は『デットライオン』。貴様の尻拭いをするのははなはだ
不本意だが、ご命令とあらばやむを得まい」
彼の名はデットライオン。彼はゼティマ・ケニア支部の幹部として
アフリカ諸国の部族衝突や内紛を影であおってきた男である。未だ紛争の
絶えない同地域において武器・兵器の密売を仕切ってきた彼は組織の要求
に対して目に見える成果を挙げていた。しかし、現在組織の活動が日本に
主眼を置いている現状に不満を覚えたデットライオンは、自分の顔を
売り込むために来日を果たし、タイタンの後釜に座わろうと目論んだのだ。
「しかし北海道地区に貴様の椅子など空いてはおらんぞ」
自慢げに語るデットライオンに対してタイタンは言い放った。確かに、室蘭
の秘密基地はストロンガーの活躍によって壊滅し、また同地域に暗躍していた
サタン帝国もソニンとユウキの戦いによって著しくその組織力を削がれ、
遂にはゼティマによって引導を渡された。それにそもそも北海道の顔はなにも
タイタン一人ではないはずだ。
「まぁ何とでも言っているが良い。落ち目の貴様はもちろんだが、あの
ゼネラルシャドウも気に入らん。奴は首領もあまり良く思っておられぬ様子
だからな」
61 :
ナナシマン:04/12/03 13:27:24 ID:6CGKcszt
シャドウに対する首領の不信感。これはタイタンにとって聞き逃せない
言葉だった。更にデットライオンから言葉を引き出すべく、タイタンは
あえて彼の言葉に乗る。
「ほう・・・何故かな?」
「何を考えているか判らぬと仰せだ。そもそもあの男自体、何とか言う
化け物共の仲間ではないか。いつ手のひらを返すか知れぬわ」
首領の心にはシャドウに対する不信感がある、タイタンはその確信を得た
思いがした。そして一方のデットライオンは、歩みを速めてタイタンの
前から立ち去ろうとしていた。彼は去り際に一言、不敵な言葉を残す。
「貴様もシャドウも、このデットライオンが来たからには過去の男と
なるのだ。よく覚えておくがいい」
タイタンの前から去ったデットライオンに背を向けるようにタイタンは
きびすを返す。しかし、彼の胸には不遜な新参者に対する怒りはほとんど
無いと言ってよかった。有体に言えば、デットライオンなど問題では
なかったのだ。
(せいぜい今のうちに吠えておくことだな。いずれその椅子は返して
貰う。それまで綺麗に磨いておけ・・・この俺の為にな)
タイタンの体が小刻みに震える。しかし、それは恥辱によってではなく
己の野望が成就する予感によって打ち震えていた。やがて彼は通路中に
響かんばかりの高笑いとともに去っていった。
「思い知るがいい、首領のご意思に叶うのはこのタイタンただ一人と
言うことをな!フハハハハハハハ!!」