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ナナシマン:
第59話 「ストロンガー危うし!タイタンの大逆襲」
蠍谷での戦いより数刻。ヨロイ元帥敗れるの報はすぐさまゼティマ幹部達の
知るところとなった。もとより敵の多かった男故に、その死を惜しむ者など
いるはずもなかったが、組織の肝いりで進められていたはずのZ計画が阻止
されたことは彼らに少なからず衝撃を与えた。
日本支部の秘密基地、司令室へと通路を急ぐ一人の男。彼もまた、Z計画
阻止の報を聞き駆けつけた一人であった。黒いスーツという飾り気のない
出で立ちに、まるで砲丸のようにのっぺりとした顔面には異様に巨大な目玉
が一つ。その姿から"一つ目"とのあだ名を冠される男、その名はタイタン。
彼が蠍谷での一件を知るや日本支部へとはせ参じたのには理由があった。
(今度こそ・・・今度こそ俺は仮面ライダーストロンガー、安倍なつみを
倒すのだ。)
巨大な目がぎょろりと動き、ゼティマの紋章を見上げる。彼はかつて
仮面ライダーストロンガーこと安倍なつみに煮え湯を飲まされて以来、今日
まで不遇を託っていた。そんな中にあっても彼は常に汚名をそそぐ機会を
求めていたが、彼が雪辱に燃える理由はストロンガーへの恨みだけでは
なかった。ふと何者かの気配に気づいたタイタンは、その気配の方向へと
素早く向き直る。と、次の瞬間彼の眼前に巨大なトランプが出現した。
47 :
ナナシマン:04/11/25 01:01:31 ID:HWhmjLnR
「・・・シャドウか!!」
「フハハハハハハ・・・・」
その声に呼応するかのごとく、不敵な笑い声が通路中に響く。そしてタイタン
の目の前に、白い全身スーツに身を包んだ男が現れた。その顔はまるでカプセル
か何かのような仮面ともヘルメットともつかぬ物で覆われているが、その
向こうには不気味な青筋と邪悪な瞳が透けて見える。彼は改造人間とは異なる
世界の住人、闇の眷属『改造魔人』デルザー軍団の一員である。
「タイタン、元気そうで何よりではないか」
「ゼネラルシャドウ、貴様まだ生きていたのか」
タイタンとこの男、ゼネラルシャドウは互いに反目しあう間柄であった。
もともとシャドウがストロンガーによって失脚した彼のポストに収まったと
いう事情があり、またシャドウ一派のドクター・ケイトが電波人間タックルこと
木村あさみとの戦いの末に同士討ちとなることで、曲がりなりにもライダーの
仲間を倒す功績を残すに至った。このことが二人の差を広げる結果となった
のである。
「今更どの面を下げて戻ってきた、とでも言いたいのか?」
タイタンの巨大な目が怒りに血走り、シャドウを睨みつける。しかし一方の
シャドウはそんな彼の態度も意に介さない。
48 :
ナナシマン:04/11/25 01:02:26 ID:HWhmjLnR
「お前の事などハナから眼中にはない。ストロンガーの事ならば俺に
任せてもらおうか」
「断る。あの小娘は俺の獲物だ。貴様の出る幕などないわ」
シャドウの言葉を手で制して言い放つタイタン。彼の言葉に、仮面の奥で
邪悪な瞳をいっそう輝かせてシャドウは切り返す。
「出る幕がないのは果たしてどっちかな・・・まぁいい。どうしてもと
言うのなら安倍なつみ、ストロンガーは譲ってやらんでもないが」
「何だと貴様!!」
あまりに不遜、あまりに屈辱的な言葉。タイタンの肩が震える。
「お前が今までライダーとの戦いから外されていた意味を考えてみよ。
首領より死を賜らぬだけでもありがたいと思うがいい」
激昂して血走る一つ目を剥くタイタンを尻目に、シャドウはだめ押しの一言
を残して去っていった。
49 :
ナナシマン:04/11/25 01:04:43 ID:HWhmjLnR
「おのれシャドウ!!」
怒りにまかせて叫びとともに壁を殴りつけるタイタン。鈍い打撃音が人気の
ない通路に響く。やがてタイタンは辛うじて正気を取り戻し、再び司令室へと
向かう。
しばらく歩みを進めるタイタン。だが、何か様子がおかしい。ゼネラルシャドウ
はもう姿を消したはずだが、先ほどから何者かが自分の後をついてきているような
気がしてならないのだ。
(シャドウではない・・・誰だ?)
気配はなおも消えることはなくつきまとう。タイタンはその正体を見極めようと
立ち止まるや振り向きざまに言い放った。
「何者だ!姿を見せろ!!」
しかし、タイタンの言葉に答える者は誰もいない。それどころか先ほどまで強く
伝わってきていた何者かの気配が、不意にかき消えたのだ。
50 :
ナナシマン:04/11/25 01:05:26 ID:HWhmjLnR
「気のせい・・・か?」
周囲を見回しても、通路にいるのは自分一人だけ。本当に気のせいかもしれない、
タイタンはそう考えるときびすを返す。と、そのとき彼の眼前に真っ白いローブ
を纏った何者かが姿を現した。相手はタイタンが自分の気配に気づいたとみるや
一度その気配を絶ち、再び彼の背後を取るように瞬時に回り込んでいたのだ。
これが敵ならばタイタンは致命的な隙を作った事になるが、狼狽するタイタンに
対してローブを纏った人物は語りかける。
「タイタンよ、力が欲しくはないか」
「何だと?!」
声色からするに相手は女。しかもその気配からして自分とは比較にならない力
を持っている事をタイタンは瞬時に察した。今やり合っては全く歯が立たない、
そう判断したタイタンは女の言葉を待った。一方のローブの女〜大神官ビシュム
はタイタンが自分の言葉に興味を持ったと知るやローブの奥でうっすら笑みを
浮かべて言葉を続ける。
51 :
ナナシマン:04/11/25 01:06:12 ID:HWhmjLnR
「ゼネラルシャドウと仮面ライダーに雪辱を果たすための力が欲しいか、と
言っているのだ」
「そんな事ができるのか?」
目の前にいるローブの女が自分に力を与えるという、そんな彼女の言葉が俄には
信じられない。と、その時タイタンは新たな気配を感じて振り返る。そこには
女と同じように白いローブを纏った者が二人立っていた。
「我々がそれを可能にするのだ、タイタンよ」
フードから覗く青白い顔。三神官の一人、ダロムはタイタンにそう告げた。