21 :
名無しスター:
第58話 「選ばれし者たち」 あらすじ
スカイライダー ● 17分25秒 ○ ZX2号機
(右ストレート K.O)
タイガーロイド ○ 6分12秒 ● スカイライダー
(反則負け)
※ スカイライダーの無気力行為により試合没収
タイガーロイド ● 12分55秒 ○ スーパー1
(リングアウト)
ZX2号機 ○ 26分48秒 ● 仮面ライダーZX
(反則負け)
※ スカイライダー乱入により反則負け
では続きを。
・・・少しだけ遡ります
22 :
名無しスター:04/11/14 04:53:08 ID:3m2NSX8c
「くそっ!いない?」
スーパー1は林の中で倒れた樹木をかき分けていた。
樹木の下敷きになっているはずのタイガーロイドがいない。
「・・・逃がしたか。」
周りを見渡すがそれらしい人影は見当たらなかった。
闘いはほぼ互角だった。
山肌は半分以上が焼け落ち、闘いの激しさを物語っていた。
23 :
名無しスター:04/11/14 04:54:32 ID:3m2NSX8c
「ふん、麻琴のことが無ければ決着を付けてやったところだ・・」
タイガーロイドは少し強がりを言いながらZXたちのいる廃車置場を目指していた。
「ん?・・・」
突然正面に人の気配がして立ち止まった。
「・・・麻琴か。」
「信田さん?」
「その様子だと無事勝ったようだな。さすが麻琴だ・・・」
タイガーロイドとZX、そしてスカイライダーは少し距離をとって向かい合った。
24 :
名無しスター:04/11/14 04:55:30 ID:3m2NSX8c
「・・・麻琴。私と一緒に戻らないか?」
「何をバカなことを!」
タイガーロイドの言葉にZXは大声で反発した。
「ゼティマを倒したいのだろ?そのためには組織に戻った方が早道なんだよ。」
「一体何を・・・」
困惑するZXにタイガーロイドは話を続ける。
「お前の力はまだまだそんなものではない。私と力を合わせればゼティマどころか、何もかも、全てが手に入るんだぞ。」
「・・・・・・・信田さん。」
ZXはタイガーロイドの言葉を聞いて前に進みだした。
「まこっちゃん?・・・」
スカイライダーは不安そうに見守る。
25 :
名無しスター:04/11/14 04:56:38 ID:3m2NSX8c
ZXはタイガーロイドの目の前に立ち、千切れた「マイクロチェーン」の先端を掲げた。
「・・・これを見てください。」
「何だそれは?」
「奈津美ちゃんの形見です・・・」
「・・・・・」
「信田さんが何をしようとしているのかは知りません。でも、あなたのやったことは絶対に許しませんから・・・」
ZXはそれだけ言うとマイクロチェーンを大事に抱え、タイガーロイドの横をすり抜け、歩き出した。
スカイライダーもその後に続く。
「待て・・・許さないのなら、ここで私を倒してみたらどうだ?」
タイガーロイドはそう言って背後からZXを挑発した。
26 :
名無しスター:04/11/14 04:57:20 ID:3m2NSX8c
それを聞いてZXは振り向こうともせずに答える。
「信田さんには随分とお世話になりましたから、今回は見逃してあげます。・・・次に会ったら容赦しませんから。」
「何だと!・・・・ぐっ・・・」
カッとなり前に出たところで、タイガーロイドの脇腹に激痛が走った。
スーパー1との激闘で受けたダメージだ。
ZXはこのダメージを一瞬で見抜いていた。
「・・・ふん。その甘さがお前の最大の弱点だ。次に会った時は、逆に力づくで連れて帰るからな・・・」
タイガーロイドは脇腹を押さえ、負け惜しみを言いながらZXとスカイライダーを見送った。
27 :
名無しスター:04/11/14 05:00:10 ID:bnDCqt5J
「・・・・しかし、どうして奈津美の名前を?」
しばらくして浮かんだタイガーロイドの疑問は、研究員からの詳しい説明ですぐに解けた。
「そうか、甘さはもう捨てられたのだな・・・次に会った時に倒されるのはこちらかも知れん・・・」
タイガーロイドは2号機の惨状を眺めながらそうつぶやいた。
口元には微かに笑みが浮かんでいた。
その日の夜、研究員にZX計画の中止が伝えられた。
「量産化は中止・・・しかし予備の機体を1体だけ用意しろだなんて・・・」
研究員は上部からの命令に戸惑った。
そもそもZXは量産に向く設計ではなかった。
しかも並の人間の脳ではまともに動かせない。
本当に量産するつもりだったのか。そうでなければ、計画の本当の目的は何だったのか・・・
それは最後まで研究員に知らされることは無かった。
28 :
名無しスター:04/11/14 05:01:27 ID:bnDCqt5J
「伝えて参りました。」
信田は研究所の最深部の部屋に入り、暗い部屋の奥に座る最高幹部の一人にそう報告した。
「これでZX計画も終了か・・・」
その最高幹部、悪魔元帥は表情を変えずにそうつぶやいた。
「しかしZXを奪い返すことができれば・・・」
「・・・無駄だ。キングストーンはもう存在しない。既に世紀王は誕生したのだぞ。」
「そうでしょうか?あれが本当に世紀王だと・・・」
「控えよ、タイガーロイド!貴様であろうと世紀王を侮辱することは許さんぞ!」
悪魔元帥は大声を出し、信田を睨みつけた。
29 :
名無しスター:04/11/14 05:02:51 ID:bnDCqt5J
「・・・失礼しました。」
信田は表情を変えず謝罪した。
「そもそもZX計画はあれの『保険』に過ぎん。今となっては無用の長物だ。
・・・滑稽だとは思わんか?『神』を創造しようなどと本気で考えていたとは・・・」
悪魔元帥はそう言って不敵に笑い出した。
信田はその様子を黙って見ていた。
「しかし・・貴様と、あの小川とかいう娘ならあるいは・・・」
悪魔元帥はそう言いかけ、慌てて言葉を飲み込んだ。
「・・・ところでタイガーロイド。貴様なぜ戻ってきた?」
「・・・所詮改造人間は人間社会では生きられません。それが外に出て身に染みてわかっただけです。」
「ふん・・・一体何を考えている?」
30 :
名無しスター:04/11/14 05:06:40 ID:bnDCqt5J
「私はゼティマに忠誠を誓っています。お疑いでしたら洗脳でも自爆装置でも思いのままに。」
信田にも小川にも自爆装置はつけられていない。
それに関しては、むしろ悪魔元帥の方こそ何を考えているのか分からない。
「お前に洗脳は効かんからな・・・もういい。下がれ・・・」
「はい。」
信田は部屋を出ると振り返って大きな扉の前に立ち、しばらくそれを眺めていた。
「麻琴・・・私にはお前が必要なんだ・・・」
小さくそうつぶやき、無言で長い通路を歩いていった。
31 :
名無しスター:04/11/14 05:08:03 ID:bnDCqt5J
数日後の中澤家。
「まこっちゃん、そろそろパトロールに行こ。」
紺野が2階の部屋に小川を呼びに来た。
「うん。今行くよ・・・」
「またそれを見てたの?」
「うん・・・」
小川の手にはマイクロチェーンの先端が握られていた。
あの日以来、小川は少し元気が無かった。
32 :
名無しスター:04/11/14 05:09:14 ID:bnDCqt5J
「そういえば、2人でパトロールって初めてだね。」
地下室のバイクの前に立ち、紺野はわざと明るく小川に話しかけた。
あの事件の後、少しだけローテーションが変わった。
小川・紺野のコンビは「危なっかしい」と反対もあったが、中澤の一言で押し切られた。
「じゃ、行こっか。」
「・・・あさ美ちゃん。」
バイクにまたがった紺野に、小川が話しかけた。
「何?」
「あさ美ちゃんは、闘うのって・・・好き?」
紺野は突然の問いに一瞬戸惑ったが、すぐに首を大きく横に振った。
「・・・そうだよね。」
「・・・でも闘わなきゃいけないんだよね。奈津美ちゃんのためにも。」
小川はその名前を聞き黙って頷いた。
あの日以来、2人がこの話題を口に出すのは初めてだった。
33 :
名無しスター:04/11/14 05:11:50 ID:bnDCqt5J
紺野は今まで口ではあれこれ言いつつも、結局復讐のためだけに闘ってきたような気がする。
小川もそうだ。自分と、仲間だけのために闘ってきた。
2人の脳裏に西田の最期の言葉が蘇る。
『・・・私も、あなたたちの仲間になりたかった。・・・一緒に闘いたかった・・・』
志を果たせず、散って行った者がいる。
闘いたくとも牙を持たない人たちがいる。
自分達はその人たちの無念と希望を背負って闘っているのだ。
負けることは許されない。
34 :
名無しスター:04/11/14 05:13:51 ID:bnDCqt5J
紺野と小川は今回の闘いで戦士として一皮剥けた。
「甘さ」とか「迷い」といったものを捨てられたような気がする。
手段だの、闘う意義だの、そんなものはどうでもいい。
目的はゼティマを倒すこと。それだけだ。
「・・・さ、行こうか。」
「・・・うん!」
2人は並んでバイクで走り出した。
時々談笑しながらパトロールを続ける2人。
傍から見ると、ただのバイク好きの普通の少女だ。
しかし新潟で、札幌で、無邪気に笑っていた少女はここにはいない。
・・・ニ度とあの頃には戻れない。
少女たちの闘いは続く。
ゼティマを倒し、平和が訪れるその日まで。
第58話 「選ばれし者たち」 完