ちょいと小ネタを
「こちらゼティマ情報部」
某地某所のゼティマ本部。
敷地内のはずれに会議室ほどの大きさの部屋があった。
部屋の中では10人ほどが忙しそうに走り回り、熱気に溢れていた。
部屋の表札の文字は「情報本部」
悪名高きゼティマ情報部の中枢部である。
敵からはもちろん、いい加減な情報で味方からも忌み嫌われる情報本部。
しかし当の本部長は情報収集と分析能力に優れた有能な改造人間である。
そして彼の部下たちも優秀な者が多い。
「そうか、タイタンが敗れたか・・・」
書類が高く積まれた机の前で本部長は報告書に目を通しながらつぶやいた。
「タイタンならあの程度でしょう。」
本部長に報告書を持ってきた職員が声を掛けた。
「いや、昨日出撃前の奴を見た。何があったかは知らないが相当パワーアップした様子だった。」
「そうですか・・・」
この本部長、人を見る目も確かである。というか、一目で戦闘能力を見分けられる特殊能力があるらしい。
それに、報告書も本当のことが書いてあるわけではない。むしろ嘘ばかりだ。
その報告書の裏を読み、正確な情報を読み取ることができる。ゼティマには珍しくバランスの取れた思考を持つ。
その彼が言うのだから間違いない。職員の男は黙り込んだ。
「倒したのはあのストロンガーとか言う小娘か・・・驚いたな。」
本部長はそう言いながら手帳を取り出し、何か書き込み始めた。
「ランキングは3ランクほどアップですか?スーパー1と並ぶくらいですかね?」
職員の男がそれを見ながらおどけて声を掛けた。
「・・・まあそんなところかな?」
本部長は笑いながら手帳を閉じた。
手帳にはかなり正確なライダーたちの戦闘力が書いてあるらしい。
これは最高幹部だけに報告する機密事項だ。下っ端の幹部や改造人間には公表していない。
「一度その手帳を拝見してみたいものです。」
「君の身が危なくなるよ。」
本部長は苦笑いをしながら、冗談とも本気とも分からない台詞を言った。
実は本部長が新任の頃、一度だけ公表したことがある。
結果は散々だった。
ライダーの戦闘力を10段階で評価したのだが、分かりやすく比較するため、
サンプルとして数十人のゼティマの改造人間の戦闘力も評価した。
評価した改造人間の中には幹部に近い者も何人か入っていた。これがまずかった。
改造人間たちの怒りを買った。
危うく消されそうになったところで本部長の能力を知る最高幹部に助けられ、事なきを得た。
それ以来、ランキングは2種類作成している。最高幹部用と一般向けだ。
一般向けは単に「戦績」だけでランク付けしている。
要は下っ端だろうが幹部だろうが、とにかく改造人間をたくさん倒した者が上位に来る。
高橋、紺野、小川、そしてソニンあたりが上位に名を連ねる。
幹部向けは僅差だが、飯田、安倍、そして何故か新垣あたりが要注意人物になっている。
そしてもうひとつ、ランキングが公表できない理由がある。
想像以上にライダーの力が強い。
北信越支部壊滅のあたりから顕著になってきたのだが、現状で幹部以外の改造人間ではまったく歯が立たない。
これが公表されてしまうとパニックが起きる恐れがある。
「ZX計画が順調に進んでいれば・・・」
本部長は質より量を望むゼティマの体質に危機感を抱いていた。
「しかし世紀王がいる・・・」
「本部長!」
ぼんやり考え込む本部長の前にもう一人別の職員が現れた。
「どうした?」
「3人行方不明です。おそらく・・・」
「見せてみろ。」
本部長は職員からFAXを受け取り、しばらく見入っていた。
「『奴』だな・・・」
「やはり・・・」
3人は黙り込み、苦虫を噛み潰したような顔でお互いを見た。
「これでまた『奴』が1位に返り咲きですね。『一般向け』とは言え・・」
「仕方ないだろう、それがルールだ。それに『奴』の罠が危険なのは確かだ・・・」
「しかし・・・」
職員はぶつぶつ言いながらランキングの書き換えに向かった。
数十分後、情報部から各部署にFAXが流れた。
**************************************
2月24日
情報本部 速報
敵危険度(ランキング)更新
1位 モグラ獣人
2位 Xライダー
3位 ゼクロス
・
・
・
・
**************************************
おしまい