111 :
ナナシマン:
地獄が原へといたる一本道をひた走るカブトロー。その姿を双眼鏡
片手に見つめる影の存在に、なつみはまだ気づいてはいないようだった。
廃工場の給水塔から少女の姿を見下ろしながら、一人ほくそ笑むのは
もちろんゼティマの改造人間だ。稲妻走る顔面に、蝙蝠をかたどった
頭部の飾り。そして一見すると飛ぶにはいささか不向きとも思えなく
は無い、網状の格子が貼られた大きな翼。機械と蝙蝠の融合体とも
言うべき改造人間。彼の名は「コウモリ奇戒人」。無論タイタンの命を
受けてなつみが来るのを待ち受けていたのだ。
「馬鹿な小娘が、のこのこ一人で現れおったわ。タイタン様の手を
煩わせることも無い。俺様が地獄が原につく前に始末してやる」
そう言うなりコウモリ奇戒人はその身をかがめて跳躍の姿勢を取る。
と、その時彼の傍らから何者かの声がする。
「待て。タイタン様はあくまでもストロンガーを地獄が原に通せと
仰せだ。出すぎた真似をするんじゃない」
コウモリ奇戒人を咎めたのはもう一人の奇戒人。鋭いくちばしと鶏冠を
持つ鳥の奇戒人「奇戒人ハゲタカン」である。彼もまたタイタンの命令
で待機していた。
112 :
ナナシマン:05/01/10 02:18:00 ID:fx5qJRbb
「ハゲタカンよ。このチャンスを逃すつもりか?」
「我等の使命はストロンガーの様子を見張ってタイタン様に報告する
ことだ。それ以上の行動は必要ない」
手柄に飢えた仲間を嗜めるハゲタカン。だが次の瞬間、彼は先ほど
まで一本道を走っていたカブトローの姿が消えていることに気づいた。
見逃さぬよう目で追っていたはずだったが、コウモリ奇戒人との
やり取りの間に見失ってしまったというのだろうか。
「ぬう?いない!」
異変に気づき驚きの声を挙げるハゲタカンに、コウモリ奇戒人が言葉を
かける。
「いったいどうしたというのだ?!」
その言葉にいきり立ったハゲタカンは、コウモリ奇戒人に掴み掛かるなり
こう言い放った。
113 :
ナナシマン:05/01/10 02:28:21 ID:fx5qJRbb
「ストロンガーが、安倍なつみがいない!貴様のせいだぞ!!」
一方言われたコウモリ奇戒人もやり返す。ハゲタカンの両腕を振り払うと
お返しとばかりに突き飛ばす。
「何を言うか!きちんと見張っていなかったお前が悪い」
「何を?!貴様がつまらぬ事を言い出して俺の気を散らすからこうなった
のだ!」
「何だと?!」
両者激しく言い合いながら、互いに手を出して突き飛ばす。こうなって
しまってはストロンガーどころの話ではなくなってしまった。醜い仲間割れ
が続くかと思われた、その時だ。
114 :
ナナシマン:05/01/10 02:29:48 ID:fx5qJRbb
「仲間割れとはお粗末だべさ、ゼティマの奇戒人!!」
何者かの声が眼下から聞こえてきたのとほぼ同時に、声の方向から飛んできた
のはヘルメットだった。声の主が怪人どもに投げつけたのだ。それは勢いよく
ハゲタカンの頭部を直撃した。不意の一撃を食らって姿勢を崩した奇戒人は
給水等の柵際にいたのが災いし、そのまま真っ逆さまに墜落した。しかし
そこは奇戒人である。すぐさま立ち上がって体勢を整える。そして彼の視線の
先には、彼らが見張っていたはずの少女の姿があった。愛機カブトローに
またがるその姿は、紛れも無く仮面ライダーストロンガー、安倍なつみだ。
その姿を認め、奇戒人が身構える。
「きっ・・・貴様は!!」
「どうせこんな事だろうと思ったべさ。さぁ、タイタンのところに案内して
もらうよ!!」
なつみの凛とした瞳が改造人間を射るように見つめる。既に臨戦態勢のなつみ
に対し、一方のハゲタカンは少女の眼力に押されたか、じりじりと後ずさり
すると一目散に道の更に奥へと逃走した。この先に何が待つのか、それは
もちろんなつみも承知している。待ち受ける戦いに自ら身を投じんとなつみは
アクセル全開、逃げる奇戒人を追って砂塵を蹴立てて走り出した。
115 :
ナナシマン:05/01/10 02:33:46 ID:fx5qJRbb
今日の分は以上です。新年初めての更新となりましたが、遅れて
申し訳ありません。
>>101>>102>>104 正月早々風邪を引いてしまいまして、おかげさまでほぼ寝正月と
なってしまいました。こんな調子ですが、今年もよろしくお願い
いたします。
>>106 もしかして・・・例の津波ですか?ご無事で帰還されますようお祈り
申し上げます。
>>109>>110 詳細はこれから追いかけてみたいと思うのですが、該当なしという
のは史上初ではないでしょうか?そこからまた何か仕掛けがあるかも。