69 :
L.O.D:
第3話 チイサナコト
「・・・・・・・」
震える携帯電話。
それを手に取ったまま、辻は難しい顔をしていた。
午後11時。
かけてきてる相手は分かってる。
だけど、出ることが出来ずにいた。
今、出ると、ひどいことを言ってしまいそうな気がした。
・・・・ブブブブブ・・・・ブッ
切れた。おそるおそる開けると
やはりその電話は小川からの電話。
ゆっくりと下唇を噛み締めながら
携帯の電源を落とすと
机の上へ放り投げて、布団をかぶった。
70 :
L.O.D:04/11/22 22:19:46 ID:6ctyAiDz
「ダメだぁ・・・・・」
小川は今にも泣きそうな顔で携帯を見つめる。
もうあれから5日以上経ったのに
辻は電話も出てくれないし、メールも返してくれない。
「てか、なんでうちがこんな悩んでるんだろ・・・・」
思えば、辻の過剰な嫉妬のせい。
誰かとご飯を食べにいくのを辻に許可を取る必要はないし
辻は自分の親ではない。
そんなことが頭をよぎって、振り切るように頭をブンブンと振る。
自分の気持ちは分かってる。
辻がそうやって自分を大切に思ってくれることが嬉しいし
いつの間にか、もはや親友という以上の存在になってた。
気兼ねなくなんでも言える。
なにも不安に思うことも
構えることもなく、言葉を発しあえる人・・・だったはずだ。
あと、何日、こんな日が続くのだろう。
もはや日課となりつつある、仕事後の会議。
小川と紺野は紺野が見つけてきた隠れ家のようなカフェで
マンゴージュースやらクラブサンドやらで空腹を満たしながら、話をしていた。
71 :
L.O.D:04/11/22 22:28:46 ID:6ctyAiDz
「そっかぁ・・・・・」
「あ、あさ美ちゃん、携帯鳴ってるよ」
「ほんとだ・・・・ちょっと出ていい?」
「うん」
誰か友達からなのだろうと思い
小川は視線をはずして、壁に張られたアーリーアメリカンのようなポスターを
なにげなく見ていたのだが
紺野の第一声に驚いてしまう。
「あ、あいぼん。」
「あいぼん!?」
『ん、おー、ごめん。まこっちゃんと一緒だったんだ?』
「そう、ご飯食べてたの」
『今、よかった?』
「うん、だいじょぶだよー」
『あー・・・ごめん・・・まだののとうまくやれなさそう』
「うーん・・・怒ってるの?」
『うちがだめ・・・話せない』
「そっかぁ、昨日も言ったけど、私達は大丈夫だからね」
『ごめんなぁ・・・・・』
72 :
L.O.D:04/11/22 22:39:32 ID:6ctyAiDz
なんとなく話の内容から分かる。
加護は辻とうまくいってない。
辻がまだ怒ってるんだろうか
小川の胸の中を不安が埋め尽くす。
『まこっちゃんにごめん、って言っといて』
「うん、じゃぁね〜」
「あいぼん、なんて?」
「やっぱり、ののちゃんと話せないみたい」
「話せない・・・・・・かぁ」
「あいぼんは、今回ね、ののちゃんが勝手に怒ってるのもそうだけど
うちらのこと、こうやって振り回してるみたいのが
すっごく嫌なんだって・・・・・・・」
加護の思いが分かるし、嬉しい。
間に入ってくれる紺野には毎晩、毎晩、申し訳ない。
小川はため息を一つついて話し始めた。
「こんこん、ほんとありがとぉ・・・・あのね」
「うん?」
「うちもさ・・・ちょっと同じこと考えてた」
「え?」
「なんかうちが悩むことじゃないじゃん。
のんちゃんが勝手に言っててさ
悪いの、うちじゃないよ・・・・・・って」
「あー・・・・・」
73 :
L.O.D:04/11/22 22:50:33 ID:6ctyAiDz
「だって、そうっしょ。うち、のんちゃんの物じゃないし
誰とご飯食べに行ったっていいじゃん
今だってこんちゃんと一緒に来てるし
これさえもあいつはグチグチ言うの?
それってさぁ・・・・なに?」
「まこっちゃん・・・・・」
「なんか違うよ・・・そうじゃないよ・・・・」
まるでなにかが溢れ出すように
せき止めていたものが欠壊するうように
次々と言葉をたて並べた小川はうつむき
その言葉を自ら噛み締める。
思っていたけど、口に出せなかったこと
自分の中で天秤にかけて
友達でありたいがために言わなかったこと
きっとこれを本人にぶつけたら
今、かろうじてつながってるものさえも切れてしまうかもしれない。
だから、小川が言えなかったことが溢れた。
「ひっく・・・・・うぅ・・・・・うっ」
「そだね・・・まこっちゃんの言う通りだよ
今まで我慢してたんだね・・・・・・
うちにはそういうの言っていいからね・・・・」
「ごんぢゃぁーん・・・・・・」
「とりあえず鼻水かもうね?」
「ヴァー・・・・・・」
74 :
L.O.D:04/11/23 20:37:33 ID:gF5L+6m7
頭が痛い・・・・
ここ、2、3日、ちゃんと寝れていない気がする。
早く寝てるが、夜中に目を覚ましているような
眠りが浅い感じ。
寝起きも悪いし、起きて、2時間経っても頭がボーッとしてる。
新曲のテレビ収録。
今日は早く終わってほしい。
何事もなく終わって、帰って眠りたい。
「リハ入りまーす!」
「3、2、1、キューッ!」
イントロが流れて、ダンスは完璧に覚えてる。
体は動く、間違ってない。
だけど、何か違和感がある。
曲中で見つめあう。
視線が重なる。
痛いくらいの視線。
それが答えだ。
75 :
L.O.D:04/11/23 20:42:40 ID:gF5L+6m7
『・・・シャバラランラランララン ロボロボ』
「OKでーす!お疲れ様でーす」
「ありがとうございましたぁ」
一足先に廊下を歩いていく背中。
振り向くことも話しかけることもない。
「ごめん、トイレ行ってくる・・・」
「楽屋、間違えないでね」
「うん」
加護が一瞬だけこっちを見た気がした。
76 :
L.O.D:04/11/23 20:47:34 ID:gF5L+6m7
加護は楽屋に入ってすぐ、辻の携帯がテーブルの上で鳴ってるのを見つけた。
(しばらく戻ってこないやろ・・・・)
誰からの着信かだけ見ようと覗き込むと
そこには、こんこんと・・・・・
「なんで、あさ美ちゃんとメールしてるん・・・」
口をついて出た言葉に思わず口を塞ぐ。
自分は辻とは違う。
紺野が誰かとメールしてたって関係のないことだ。
それに内容を見たわけじゃない。
小川のことを思って、連絡したのかもしれない。
それならなにも問題はな・・・・・・
77 :
L.O.D:04/11/23 21:04:33 ID:gF5L+6m7
「あいぼん・・・・・」
「え・・・・・」
「ののの携帯、いじったでしょ」
「いじってないよ」
「絶対見た!」
「見てないからっ」
これ以上、ゴタゴタしたくなくて、鏡を見た。
辻が飛びつくように携帯を手にする。
いじられてないのを確認するも
謝ることなく、楽屋を飛び出した。
(なんやの、あいつ・・・・・・)
頭の中で辻の声がリフレインする。
嫌になる。
あの嫉妬と思い込み
少し疲れる。
ゴロンと横になって、天井を見つめながらつぶやく。
「あさ美ちゃん、どんなメールしてたんやろ」
78 :
L.O.D:04/11/23 21:21:06 ID:gF5L+6m7
「紺野、ちょっと・・・」
「あ、はい」
楽しそうにしゃべる輪を抜けて、石川が雑誌を読んでた紺野を呼び出した。
楽屋を出て、廊下を曲がったところで、声を潜めてしゃべる。
「どうなった?」
「ののちゃんですか?」
「うん、まことは元気になったみたいだけど・・・・」
「だめ・・・ですね」
「あいぼんが怒ってるの?」
「はい、すごく・・・私達のことを気にしてて」
「そっか・・・」
「私、ののちゃんにもメールしてるんですけど
あいぼんが怒ってるし
また同じことやっちゃいそうで怖い・・・って」
「でも、W、二人しかいないからそのままじゃ駄目だよね」
「はい・・・・私もそう思います・・・」
79 :
L.O.D:04/11/23 21:27:35 ID:gF5L+6m7
現状を聞いた石川の顔は難しいままだ。
言葉通りだ。
あの二人がこのままでいていいわけがない。
だが、紺野にはどうすればいいかも分からずにいた。
三人それぞれの言いたいことは分かる。
けど、今の状況を打破するのには誰かが歩み寄らなきゃだめだった。
「私、あいぼんに会おうか?」
「あ、いいですね。お願いします」
「まずはあいぼんだよね・・・・」
「私、まだののちゃんと話してないんで・・・・」
「うん、そうしよっか・・・・
ほんと、手間のかかる連中だよねー。」
苦笑する石川に紺野も笑って返す。
それが本音ではないことは分かる。
この人は、いつも協調性を考える。
なにか問題が起きるのを嫌う。
今回のも見ていられないのだろう・・・・・
80 :
L.O.D:04/11/23 21:35:27 ID:gF5L+6m7
加護は石川に呼ばれ、彼女の家へ着いた。
一人暮らしはこういう時に便利だが
寂しがりの加護にはまだまだ無理だなと思う。
自分の年の時には石川は娘。と自立を両立してた。
「お邪魔しま・・・・」
「散らかってるけど、ごめんね・・・・」
「梨華ちゃん、散らかり過ぎだから!」
自立と両立は言い過ぎた。
かわいいもの好きだが、整理整頓が苦手なのか
それとも、実はずぼらでおおざっぱな性格が出てるのか
出したところに戻す、いらないものは捨てるが出来ないのかもしれない。
「もー・・・・・」
「あいぼん、片づけとかしなくても・・・・」
「しなきゃ座るとこもないでしょ!」
「・・・・ごめんなさい」
「あーもう、綿棒、こんなしてー」
「なんか使ったあと、まだ使えるかなーと思って置いちゃわない?」
「置きません!捨てなさい、まったくもー」
「ふふふっ、お母さんみたい」
「お母さんじゃないよぉー、誰だよ、自分でかぁちゃんって言ってるのー」
「私じゃないもーん、トメ子さんだもーん」
81 :
L.O.D:04/11/24 16:48:16 ID:s2XgIISW
石川のことだ。
紺野から話は聞いてるのだろう。
交わす言葉の端から分かる。
「紅茶でいいでしょ?」
「うん」
「薄味?」
「4回目のパックとかやめてなー」
「ダメ?」
「・・・・梨華ちゃん、その貧乏性直しなよ」
「だってさ、もったないでしょ」
基本的にケチである。
他人になにかをしてあげることに関しては
暇を惜しまないが、物に関してはケチなのだ。
石川は堅実でしっかりしているというが
端から見てると、なにもそこまでという時もある。
生活の知恵といえばそうなのかもしれないが
ご飯を食べに行って、つまようじを集めて持って帰るのだけはやめてほしい。
「あ、そのネイルかわいい」
「自分でやったんだよー」
「あいぼん、手ちっちゃいねー」
「指プクプクしてるし、梨華ちゃんの手の方がきれいだよ」
「ののとさ・・・うまくいってないって?」
構えてはいたものの、思ってたよりはやく来た。
顔を上げると、石川は優しく笑う。
82 :
L.O.D:04/11/24 17:04:50 ID:s2XgIISW
「話、聞いてるよ」
「そか」
「二人しかいないWでしょー」
「分かってる・・・分かってるの・・・・・」
「あいぼんの気持ちも分かるよ、優しいね・・・・」
「・・・・ののには優しくなれない」
「どうしたいの?」
「もう嫌だ・・・・・」
「そんな・・・・」
「Wがじゃない・・・ののの性格・・・・・
今日もさ・・・・・・・・・・・」
83 :
L.O.D:04/11/24 17:08:56 ID:s2XgIISW
「ごめん、遅れちゃった。待った?」
辻は紺野と約束してた時間に少し遅れてきた。
「ううん、全然だよ」
「ここ・・・スパゲティがおいしいとこ?」
「うん、そう。あのね、これとこれはおいしかった!」
「そかぁ・・・食べちゃうかなぁ・・・・」
「絶対、オススメだよー。」
落ち着いた店内。
あまりこういうところに出入りしない辻は落ち着かない。
紺野もスパゲティを頼んで、その間は何気ない話をしてた。
「あさ美ちゃんと二人っきりって初めてだね」
「そだね」
「二人ゴトだ」
「アハハハハ」
「・・・・娘。の新曲聞いたよ、てかメインじゃん!」
「いっぱいいっぱいだよ」
「のの、結局、娘。で一回もメインないよー」
「もう収録の度にドキドキしちゃって・・・・・」
84 :
L.O.D:04/11/24 17:13:23 ID:s2XgIISW
美味しいスパゲティも食べ終わるか、といったところ
話始めたのは紺野から。
「ののちゃん・・・・話があるんだけど」
「んぅ?」
「あいぼんと仲直り出来ない?」
「うー・・・・・」
「まこっちゃんの電話に出てあげるだけでもいいから」
「怖い・・・・・」
「こわい?」
「なんかよけいなこと言いそう・・・・
今日もね、楽屋であいぼんが座ってて
のん、テーブルの上に携帯置いてたの
で、トイレから帰ってきた時、携帯見られた、と思って
ちょうど、こんこんからメールが来てて・・・・」
「なんか・・・・言っちゃったの?」
「あいぼんに怒鳴っちゃった。
帰り際に話しかけようとしたら
反対に怒鳴られて、黙ってろ・・・・って」
話がややこしくなってきた。
小さなことのように見えて、それは閉じぬ穴を作ってしまった気がした。
同じようなことが続くと、人間は普段の何倍もの意味で考えてしまう。
加護にとって普段ならなにげない小競り合いも
今は喧嘩の火種でしかない。
ましてや、辻の勘違いや嫉妬なんてものは原因にしかならない。
加護は今日のことをひどく怒ってるだろう。
あとはもう石川がなんとか言ってくれるのを願うしかない。
85 :
L.O.D:04/11/24 17:17:37 ID:s2XgIISW
「ののちゃんは、みんなと仲直りしたいの?」
「した・・・いけど、出来ない」
「なんで?」
「あいぼんにひどいこと言っちゃったし
まことだって怒ってる・・・・・・」
紺野は思い出した。
小川は今、怒っている。
早く謝らないがために、糸はどんどん絡まりはじめていた。
後悔する、あと一日でも早ければこんなことにはなってなかった。
怒ってないとはいえない。
辻自身が気をつけなきゃ、また同じことだ。
繰り返したら、もっと深いところからやり直すはめになる。
「ののが悪いって分かってるけど・・・・」
「そんな・・・・・」
「分かってるんだよ・・・・だけど・・・・
素直になんかなれないよ・・・・・
だって、ののも傷付いたもん・・・・・
すっごく寂しくて・・・・・・」
86 :
L.O.D:04/11/24 17:32:52 ID:s2XgIISW
「ののちゃんは、みんなと仲直りしたいの?」
「した・・・いけど、出来ない」
「なんで?」
「あいぼんにひどいこと言っちゃったし
まことだって怒ってる・・・・・・」
紺野は思い出した。
小川は今、怒っている。
早く謝らないがために、糸はどんどん絡まりはじめていた。
後悔する、あと一日でも早ければこんなことにはなってなかった。
怒ってないとはいえない。
辻自身が気をつけなきゃ、また同じことだ。
繰り返したら、もっと深いところからやり直すはめになる。
「ののが悪いって分かってるけど・・・・」
「そんな・・・・・」
「分かってるんだよ・・・・だけど・・・・
素直になんかなれないよ・・・・・
だって、ののも傷付いたもん・・・・・
すっごく寂しくて・・・・・・」
[第三話終了]
87 :
L.O.D:04/11/25 21:34:32 ID:tAp3oXsh
第4話 キズツイタコト
あれからまた一週間が過ぎた。
未だに辻と加護は仲直りしてないし
小川は辻に電話するのをやめた。
全てがよくない状態のまま、止まってしまっていた。
「・・・・・なにやってんだか」
吉澤ひとみは高みの見物を決め込んでいた。
石川もなにやら動き回ってるから
早々に片付くと思ってたのに
どうも誰もが意固地になっているのか
話は進んでないようだ。
楽屋の隅で横になりながら、みんなを見てると
それに気付いたの小川が走り寄ってきた。
「吉澤さぁ〜ん、品定めはダメですよぉ」
「してねーって」
「一緒に遊びましょー」
「・・・・遊んでる場合かっての」
「?」
「麻琴、ちょっと座れ」
「ほぁ?」
「いいから」
88 :
L.O.D:04/11/25 21:43:54 ID:tAp3oXsh
自分の横に座らせて、一呼吸置く。
みんな自分達を気にしていない。
「なんか考えてるでしょ」
「・・・・・・・」
「水くせぇよ、相談すりゃいいのに」
「いやぁ・・・・」
「なんとなく分かってるけどさ。
梨華ちゃんだけじゃダメみたいでさ。」
「うちは・・・・ちょっともう・・・・えぇ」
「よけいなお世話かもしれねーけど
そうだな・・・・今、こうやってさ、みんないるだろ?」
「うん」
「部屋の隅から見てみるんだよ」
「?」
「気持ちを落ち着けて、体の力を抜いて
スゥーッと見てみるんだ。
そしたら、誰がなにをしてるかだけじゃなくて
誰がなにを考えてるかが分かってくるし
今、なにをしようとしてるかまで見えてくる。」
「どういうことですかね?」
89 :
L.O.D:04/11/25 21:55:48 ID:tAp3oXsh
「物事は感情だけじゃなくて、違う見方も必要ってこと」
「あー・・・・」
「分かるか?」
「分かったような・・・・」
「今の麻琴はさ、ののへの気持ちとかでしか見れてないんだよ。
そうじゃなくてさ、もっと大きな視点から考えるんだ。」
「・・・・・・」
ニマっと笑ってみせた吉澤。
たまに見せるこの人の大きさが羨ましくなる。
冷静で、温厚。
他人と違う視界を望み、他人に影響されずに生きる。
それは時におかしく、時に奇怪に見えても
全てが彼女の持つ時計の中で動いてる気がする。
「ありがとうございます」
「大事なのはさ、自分だよ。
嘘つきたくねぇじゃん」
「はいっ」
ペコリと頭を下げて、小川が離れてく。
吉澤はまたゴロッと横になって
楽屋の隅から、その世界を見てる。
「・・・・飯田さんのパンツ見えそう」
「よっすぃ!?」
「うそー・・・・・・」
90 :
L.O.D:04/11/25 22:09:53 ID:tAp3oXsh
「て、言われたんだけど・・・・・」
真夜中のコーヒーショップ。
小川は昼間、吉澤に言われたことを紺野にそのまま伝えた。
違う視点。
分かりそうで、分からない。
今、自分が見てるものとは違う視点がどこにあるのか
小川の頭の中で理解できなかった。
「うーん・・・・・そだなぁ」
「なんかの哲学なのかなぁ」
「きっと吉澤さんなりに答えを出す方法を考えてくれたんだよ。
だから、ちゃんと考えないと・・・・・・」
「別な視点ってなんだぁ・・・・・」
「あ」
紺野がなにか気付いたらしく、声を上げた。
小川はポカーンとしながら、次の言葉を待つ。
91 :
L.O.D:04/11/25 22:19:22 ID:tAp3oXsh
「今、まこっちゃんはさ、ののちゃんのことネガティブに捉えてるんじゃないかな」
「ネガ・・・ティブ?」
「うん、それまでは、気にならなかったことが
今は目について見えちゃうことってない?」
「・・・・・・うー」
「相手のことが悪く見える時って
自分も感情的になっちゃって、悪く見ちゃってるんじゃないかな」
「自分も・・・・・」
「そう、あんなこともいやだ、こんなこともいやだ、って
仲良かった時には気にしなかったことも
それがすごく嫌な点に思えてしまうの。」
言われてみると、確かにそうで
辻のしたことに対して、感情的になってる自分がいた。
一瞬、表情を曇らせた小川がつぶやく。
「だけど・・・許せないよ」
「うーん、それを許せる日が来なきゃ・・・・・」
「分かってる・・・・・」
92 :
L.O.D:04/11/25 22:25:13 ID:tAp3oXsh
部屋で漫画を読んでた辻希美は飛び起きた。
携帯が鳴っているが、鞄がどこか分からない。
ようやく見つけると、それは石川からの電話だった。
『のの〜♪』
「梨華ちゃぁ〜ん」
『のの、ケーキ食べたくない?』
「食べたい!」
『ケーキバイキングのお店見つけたんだけど・・・・』
「えっとねー、うちは・・・夜、大丈夫」
『私も、9時過ぎくらいには大丈夫かな』
「いっぱいあるの?」
『25種類とか』
「やったぁ」
『やっぱり、こういうのはののだよねー』
「久しぶりだねっ」
『そだね、じゃ、明日、仕事終わったら連絡するよ』
「分かったぁ」
電話が切れる。
笑顔がこぼれてる。
こんな風に笑うのは、久しぶりかもしれない。
もしかしたら、石川は誰かから聞いたのかもしれない。
だとしたら、ちょっとした気遣いだけど嬉かった。
携帯を開いて、履歴を見る。
ある時から小川の名前がなくなった。
本当にプツリとかかってこなくなった。
93 :
L.O.D:04/11/25 22:30:41 ID:tAp3oXsh
「メール・・・・・・」
開いたまま、読んでなかったメールもいくつもある。
受信ボックスから、そのメールまで開いたが
最後のボタンを押せない。
怒りにまかせ、読まずにいたもの。
胸がドキドキしてくる。
本当に読んでいいのだろうか。
辻は自分の気持ちが分からなくなっていた。
自分のしたことの過ちも
それでみんなが傷付いたことも分かってる。
だけど、あの数時間、自分が味わった寂しさを忘れられない。
ピッ
「のんちゃん、ごめん。
電話出てくれないと寂しいよ……
いっぱい謝りたいから
電話出て下さい」
「まだ怒ってるのかなぁ。
のんちゃん傷つけちゃって
すごく苦しいよ………
また一緒に遊びたいよ。
だから、許してください」
94 :
L.O.D:04/11/25 22:37:29 ID:tAp3oXsh
「まこと・・・・・・」
涙が溢れていた。
一生懸命、自分に気持ちを伝えるために
何度も、何度もメールを送ってくれた。
それを自分は読まずにいた。
こんなに許しを請うてるのに
見ることもせず、許すことなど出来ずにいた。
自分が傷付いたことだけを考えていた。
今、小川に電話をしたら出てくれるだろうか。
「だめ・・・・怖い・・・」
電話は来なくなった。
辻が電話に出てくれないから
反対に小川は怒ってしまったのかもしれない。
自分が犯した過ちに気付く。
携帯電話を持った手が震えていた。
小川に電話など出来ない。
誰に相談すればいいだろう。
考えがまとまらない。
「あ、梨華ちゃん・・・・」
辻は履歴から石川の電話へかけ直した・・・
95 :
L.O.D:04/11/26 20:27:46 ID:ZF494a2r
震える携帯電話。
加護はヘッドホンを外して、手に取る。
紺野からの着信、通話ボタンを押した。
『起きてた?』
「おー、起きてたよー」
『まこっちゃんと一緒なんだけどさ』
部屋の時計を見た。
もう午前1時を過ぎてる。
「夜遊びはあかんでー」
『あのね・・・・あいぼんはさ
のんちゃんと仲直り出来ない?』
「あー・・・・」
『このままじゃダメだよ・・・・・
みんながみんな出来ないって思ってちゃ
いつまで経っても仲直りなんてできないよ』
「まこっちゃんはどうなの?」
加護が知りたいのは小川の気持ちだ。
辻の勝手な嫉妬や言葉にも腹が立ったが
なにより、他人を傷つけたことに腹が立ってた。
小川がもう許すなら、自分の気持ちを抑えるくらい出来た。
96 :
L.O.D:04/11/26 20:33:31 ID:ZF494a2r
『代わるね・・・・・』
『あ、ども』
「な、まこっちゃんはののの事・・・・・・」
『うーん・・・まだちょっとアレだけど・・・・・・
でも、こんちゃんの言う通りだとうちも思う』
「そか・・・・」
『あいぼん、ごめんね、こんこん借りてて』
「そんなー、きみら、同期じゃんかー」
『そうだよね、あはははは』
「じゃ、分かった・・・ちょっとだけ時間ちょうだい。頑張るから」
『うん、ありがとねー、あさ美ちゃんに代わるよぉ』
『こんな時間にごめんね』
「いいよー」
『じゃぁ、おやすみなさい』
「おやすみなぁー。」
電話を切って、フッと自分の言葉を思い出した。
「同期・・・・か」
辻と会って、もう4年になる。
ただの4年じゃない。
学校の友達よりも、家族よりも側にいた。
喧嘩もしたし、バカなこともした。
修羅場みたいな現場も体験したし
いつだって一緒にいた。
今は違う。
二人しかいないのに
二人はそこにはいない。
会話もなく、笑いあうこともない。
今まで過ごしてきた時間さえも無視していた。
97 :
L.O.D:04/11/26 20:50:17 ID:ZF494a2r
ベッドに寝転がり、壁の方へ寝返りを打つ。
加護は今、それが正しいことなのか悩み始めている。
「のの・・・・・・」
もうしゃべらなくなって、二週間が過ぎた。
仕事で毎日会うのに。
収録の合間は笑顔を見せて
楽屋ではそれぞれがそれぞれのことをして
笑いあうこともなく過ごす。
仕事はそれでいいのかもしれないが
これまでの自分とこれからの自分にとって
良くないことのような気がする。
辻希美は自分にとって、ただの仕事の相棒か。
「違うよなぁ・・・・・」
分かってる。
頭では分かってても、まだ・・・・・・
うなづけない自分がそこにはいた。
98 :
L.O.D:04/11/26 20:57:28 ID:ZF494a2r
翌日、午後10時過ぎ。
ケーキは取り止めて、よく行く焼肉屋で待ち合わせた。
気持ちを紛らわすためにユッケの一つでも食べたかったのだ。
こっちに向かうと電話をもらって、30分。
のんびりと自由気ままに食べて待ってると
襖が開き、石川が姿を見せた。
「あ、のの、先に食べてたのーっ、ずるーい」
「梨華ちゃん・・・」
「ご飯粒ついてるよー、んしょっと・・・・
なにしよっかなぁ・・・・・・」
石川が追加でいくつか注文した後
ようやく落ち着いて向かい合った。
石川は黙ったままの辻に優しく話しかける。
「今日はどうだった?」
「ううん・・・・」
「話せなかったかぁ」
「うん・・・・」
「まことにはまだ電話出来なさそう?」
「怖い・・・・」
「でも、ののがごめんなさいしないと」
「うん・・・・」
「こげるよ。さ、私も食べよっと。」
99 :
L.O.D:04/11/26 21:02:27 ID:ZF494a2r
手頃な肉が焼けると辻の皿に入れてくれたりして
石川がますますかぁちゃんのように振舞う。
交わすのは何気ない会話。
石川にだから話せる話はいっぱいある。
一つずつ言葉を吐き出す度に
昼間感じる重苦しい雰囲気や
心の奥にある不安が解けていく気がする。
小一時間、しゃべりぱなしでお腹もいっぱいになり
勘定は石川がもってくれた。
「ごちそうさまでしたぁ」
「ま、たまにはいいとこも見せないとね〜」
「梨華ちゃん、もう帰る?」
「んー、まだ大丈夫だけど」
「覚えてる、この近くの公園・・・・・?」
「あぁ、一回行ったね。これぐらいの時間にっ」
「ののがあいぼんと喧嘩しちゃってさぁ」
「そうそう、慰めてたら私まで泣いちゃって・・・・」
「もう一回行かない?」
「じゃぁ、約束して」
「?」
「公園でまことに電話すること」
「そんなぁ・・・・」
「フフッ」
100 :
L.O.D:04/11/26 21:05:10 ID:ZF494a2r
微笑んだ石川は一足先に走り始める。
出遅れた辻がそれを追いかけると
公園はもう目の前で、心の準備なんてできぬままたどり着いてしまった。
小川への電話、昨日も、昼間も出来なかった。
アドレスまでは開いてるのに、最後のボタンが押せなかった。
「約束だよ」
「ズルいよ」
「チャンスでしょ」
「?」
「まことに電話する理由を作ってあげたの」
「むぅー・・・・・」
「ほら、ブランコこいであげるから」
石川の言われるまま、ブランコへ座り、携帯電話を開いた。
小川の番号・・・・・
ここからボタン一つで電話はかかる。
「えい」
「あっ!」
後ろから伸びてきた手が押してしまった。
電話はすでにコールを始めてる。
101 :
L.O.D:04/11/26 21:09:36 ID:ZF494a2r
「あっ・・・・まこと・・・ごめんね・・・・ごめんなさいっ
のの、ほんとバカだ・・・自分のことばっかで
みんな振り回しちゃって・・・・あいぼんやこんこんまで
・・・・恥ずかしくて、どうしたらいいか分からなくて
ずっと電話もメールも見れなかった・・・・・・
まことから送られてたメール見れなかったよ・・・・・
・・でもね、昨日見たの・・・・そしたらね・・・・
ののバカだなぁ・・・って・・・・ひっぐ・・・・・・
まことに謝んなきゃ・・・・・って・・・・・・うぅ・・・
思ったけど・・・・・けど・・・・怖くって・・・・
ごめんなさい・・・・わがまま言ってごめんなさいっ・・・・」
『のんちゃん・・・・』
「ごめんなさいぃ・・・・・うぅっ・・・・ふっ・・・・」
そのまま泣き崩れ、砂の上に落ちる携帯。
石川はそれを拾った。
「んー・・・」
『バッカだなぁ、つじは・・・・・・』
「ほーんとバカだね」
『あっ・・・石川さんですか』
「もー、泣いちゃって電話もできないよ、この子」
『ひぐっ・・・・ずずっ・・・・・』
「まこともか・・・・ね、ののの気持ち分かったよね」
『はいぃ・・・・分かがりまじたぁ・・・・・』
「まだののはしばらくかかりそうかな。
今日はそういうことでさ、後から電話するかもしれないけど
また明日ね・・・・・・・・・・」
『はぁい・・・ひっく・・・・・・・・』
102 :
L.O.D:04/11/26 21:13:19 ID:ZF494a2r
電話を切り、辻のバッグの中へ滑り込ませると
石川の首筋へ飛びつくように抱きついてきた。
いつまで経っても変わらない。
泣き虫で弱い。
「もー・・・」
「うぅー・・・・ひっく・・・ひっく・・・・・」
「良かったね、まこと怒ってなかったよ」
「梨華ぢゃーん」
「あー、もう、すっごい顔になっちゃって・・・・・」
ぎゅっと抱きしめる。
いつだってこうしてきたし
いつまでもこういう関係でいたい。
なにがあったって、壊れぬものを
辻と石川は築いてきたと思っている。
103 :
L.O.D:04/11/26 21:14:43 ID:ZF494a2r
無償の愛。
求められるままに与えることの出来る優しさを感じている。
辻にだけじゃない、加護や小川だって同じ。
石川にとってはかわいい妹であり、仲間。
その気持ちを少しずつでも理解してほしかった。
「のの・・・・・・」
「ん」
「あいぼんと仲直りできる?」
「んぅ・・・・・」
「できるよね?」
「うん・・・・・・」
「約束だよ?」
「んっ・・・・・」
辻が胸の中で小さくうなづいた。
104 :
L.O.D:04/11/26 21:16:46 ID:ZF494a2r
「仲直り・・・・したんだ」
朝起きて、メールが入ってたことに気付いた加護は
寝ぼけ眼でつぶやく。
紺野と小川の両方から辻と仲直りできたというメールが来てた。
「よかった・・・・・」
携帯を閉じて、噛み締める。
もはや意地の張り合いのような無言の反抗に
幕引きが訪れる。
小川の喜びっぷりに思わず安堵の表情を浮かべてしまった。
しかし、そこでフと気付く。
自分は笑えるだろうか。
今までと変わらないように
いや、何もなかったように笑えるだろうか。
こんなに会話をしなかったことなどない。
どうやって話しかけよう。
こっちから謝ろうか
楽屋に入るのはどっちが早いだろうか。
入って、先にいたらどうしよう。
105 :
L.O.D:04/11/26 21:19:58 ID:ZF494a2r
落ち着かない気持ちは移動中も変わらず
手持ち無沙汰に紺野へのメールを返す。
スタジオについて、クロークを抜け
Wの張り紙をされた楽屋のノブを回す。
ゆっくりとドアが開き
視界に誰かの影が映る。
先にいた。
開いたドアに向けられたその視線は
どこか脅えたような、緊張した視線で
加護の方が驚き、身構えた。
辻がずっと考えてた言葉をなんとか出してくる。
「・・・・・おはよぅ」
「・・・・・おはよ」
初めて交わした言葉はただの挨拶だった。
106 :
L.O.D:04/11/26 21:21:45 ID:ZF494a2r
第五話 イイコト
石川が自動販売機で紅茶を買おうと小銭を入れていると
横からスッと伸びてきた手が缶コーヒーのボタンを押してしまった。
「!?」
「おつかれ」
そこにいたのは、吉澤ひとみ。
ニマッと笑うと、何事もなかったようにコーヒーを飲み始める。
「・・・・いる?」
「もうっ」
「随分と頑張ってたみたいじゃん」
「まぁねー」
「うちには出来ねぇや」
ドカッとベンチに腰を下ろしながら
紅茶を買い直す石川の姿を見てる。
石川もそれに付き合うように横に腰を下ろした。
「あらぁ、そんなことないでしょぉー」
「梨華ちゃんには頭下がるよ」
「・・・・私だってずっといるわけじゃないよ」
「・・・・・・分かってる」
「やだっ、こんな話するなんて」
自分から切り出したのに、話を止めるように立ち上がる石川。
走り去ろうとしたその瞬間、吉澤がその手首を掴む。
107 :
L.O.D:04/11/26 21:23:55 ID:ZF494a2r
「よっちゃん・・・・」
「ずっと一緒だから」
「・・・・・」
「娘。卒業したって、変わらないから・・・・・ね」
「・・・・・うん」
不器用な人だ、決して器用じゃない。
恥ずかしがり屋で繊細な人。
指をそっとはずすと、その顔に微笑みを浮かべる。
石川はその指を握り返す。
「だーいじょうぶですよ、とーちゃん」
「・・・・・ははっ」
「頑張ろうね」
「あぁ・・・・・」
そこへバタバタッと走ってくる足音。
「まこっちゃん、待って!」
「アハハハハハ、あさ美ちゃん、遅いからっ!」
「焼き肉逃げないからっ!!」
「あっ!」
二人の姿を見つけて、小川は足を止める。
後から来た紺野も誰がいるのかとひょこっと覗き込む。
108 :
L.O.D:04/11/26 21:29:02 ID:ZF494a2r
「飯行くの?」
「そーなんですよぉー」
「食べ過ぎないようにね・・・・・」
「もぉー、やだなぁー、石川さんはぁっ!」
「痛っ、痛いから、まこと!」
「吉澤さぁん、今度、デートしてくださいよぉ〜」
「やだよ」
「なーんでですかぁ、一緒に遊園地とか行きましょーよぉ」
「二人はやだ」
「二人っきりでいいじゃないですかぁ〜」
「なんで、そんなに二人っきりにこだわるんだっつーの」
「私は二人で行きたいんですぅ」
そのやり取りに石川が苦笑してると
紺野がそっと会釈をして、小川を置いて走っていく。
「ほら、お前、こんこん行っちゃったぞ!」
「マジで!あさ美ちゃぁーんっ!」
109 :
L.O.D:04/11/26 21:31:34 ID:ZF494a2r
去ろうとして、小川は振り返る。
「ありがとうございましたぁ!」
「気にすんな、って」
「楽しんでおいで〜」
「はぁ〜い、おつかれさまでしたぁ!!」
石川と吉澤は顔を見合わせた。
例え離れたって、誰かを思う気持ちは変わらないから
その気持ちは忘れたくないから
差し出された手をそっと握り返して・・・・・
ジュゥーッ
「焦げるからっ!!」
「うぉっ!あちぃっ!」
「なにしとんねんっ、もーっ!」
「あぁぁっ、ダメですよぉ・・・・」
小部屋で四人。
焼けた側から肉の奪い合い。
特に会話もなく、食べている。
加護が丹念に焼いてた牛タンを
ひょいっと辻が横取っていく。
110 :
L.O.D:04/11/26 21:34:12 ID:ZF494a2r
「あぁーっ!」
「んまーい」
「のんちゃん、カクテキ一個ちょーだい」
「はい、まこと」
「ののーっ、うちの牛タン返せーっ!」
「焼けばいいじゃんかよー」
「ムカつく、お前ムカつくっ!!」
加護が辻の首を絞めると、さすがに紺野がピシャリ。
「こらっ!喧嘩しちゃダメッ!」
「・・・・へぃ」
「・・・・ごめん」
「アハハハハ、怒られてやんのー」
「ハッ!まこと、のののカルビ食った!?」
「てか、焼いてたの全部ないから!」
「私のギョウジャニンニク・・・・・・・」
「・・・・・ほぁえ?」
「とぼけるなぁーっ!」
「ビビンバでも食べてなさいっ!」
「まこっちゃん、お肉禁止ですっ!」
「なんだよぉ、みんなしてよぉ〜〜っ」
「「あんたが悪いっ!!」」
111 :
L.O.D:04/11/26 21:35:33 ID:ZF494a2r
帰りのタクシーの中
携帯が鳴っているのに気付いて
辻は開いてみた。
「まことからだ・・・・・」
添付ファイルがある。
ダウンロードを終えると
携帯の小さな画面に表示される。
4人が顔を寄せあって撮った写真。
そして、一言。
『大好き!』
頬を緩ませた。
素直にこの言葉がうれしいし
受け止めれる、今なら。
ギュッと携帯を抱きしめる。
「・・・・・・ありがと」
112 :
L.O.D:04/11/26 21:38:16 ID:ZF494a2r
辻は携帯のボタンを押して、一つ前のメールを開いた。
加護からのメール。
あの後、二人は喧嘩のことには触れず
少しずつ、少しずつ何気ない会話を繰り返してたが
ある日、眠る前に送られてきた。
「双子のようで双子じゃないのがWだよね。
うちら、それ忘れちゃダメだよ。
まだまだ一緒に走っていこーな♪」
「んっ・・・・・」
二人は同じじゃない。
違うからこそWである。
違うからこそがんばれるし
違うからこそ競争する。
だから、一緒にいる。
だから、手をつなぐ。
どこまでも走るために。
そんな思いを噛み締める。
113 :
L.O.D:04/11/26 21:40:50 ID:ZF494a2r
「あ・・・・・」
娘の新曲がいきなり流れ出し
紺野からの電話。
めずらしくテレビ電話だ。
向こうはもう家へ着いたようだ。
『ののちゃんっ』
「こんこん〜」
『言えなかったねぇ』
「だぁって、あいぼん連れてってくれないんだもーん」
『またチャンスはあるよっ』
「そだねぇー・・・はぁぁあ・・・・
なんかすっごい照れる、マジで!」
『でも、今、言っておかないと』
「・・・・・あぁ、なんでこんな好きなんだろ」
『いいコトですっ』
114 :
L.O.D:04/11/26 21:43:07 ID:ZF494a2r
「こんこんに相談してよかった・・・・」
『私はなんにもしてないよぉ』
「そだ、知ってる?」
『なになに?』
「B型ってね、O型ともAB型とも相性がいいんだよ。
だからね、こんこんがうちらの間に入ってくれると
うまくいくんだよ、きっと!」
『あぁ〜・・・・そだねぇ・・・・』
「また、よろしくね?」
辻の言葉に紺野はクスッと笑った。
『また喧嘩して、仲裁に入るのは嫌だよっ』
「うぁ〜、ごめんよぉ」
『遊びにいくのはいいよっ、またご飯食べに行こ
おいしいお店、探しておくから!』
「うんっ!!」
fin.
115 :
L.O.D:04/11/26 21:49:34 ID:ZF494a2r