横浜の中心でぁゃゃを叫ぶ!!

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60L.O.D
ゆっくりと目を開けると、蛍光灯の明かり。
ダルい体。
あの瞬間、意識を失った、と自分で分かった。
リハに出れないなんて最悪。
マネージャーに怒られる。

「・・・・・行かなきゃ」

半身起こしたところに、誰かが入ってくる。

「あら?起きたの?」

石川だった。
休憩中なのだろうか。
手には小川の携帯。

「ありがとうございます」
「寝てなきゃだめよー、まこっちゃん」
「休憩中なんですか?」
「ううん」
「えっ?」
「心配だから抜け出してきちゃった」
「そんな・・・・」
「サボりたかったわけじゃないんだよー?」
「なんて言ってきたんです?」
「んー、ま、アレでね」
「あー・・・アレ」

意味ありげに笑う石川の無邪気な笑顔。
お返しに笑ったけど、自分でも力なく笑ってるのが分かる。
61L.O.D:04/11/20 21:23:51 ID:PCg19dcV
「石川さん・・・・・」
「なぁに?」
「石川さんはメンバーのこと特別に思ったりしますか?」
「特別に?みんな、好きだけど・・・・そうね
 シゲさんには負けない!絶対負けないんだから!
 あとね、キャメイね、元祖としてゆずらないわよっ」
「いやー・・・・まぁ・・・・友達、というかぁ・・・・」
「あぁー、そういう特別ねっ!そうねー・・・・・
 よっちゃんかなぁ・・・・・・・
 やっぱりね、普段はそんなに話さないけど
 うちが本当にダメな時、支えてくれるのはよっちゃん」
「吉澤さんかぁ・・・・・」
「なぁによぅ、そんな質問しちゃって〜」

小川はうつむいて、言葉を探す。
だけど、うまい言葉は見つからない。
今の自分達を言い表す言葉なんてない。
友達でも、親友でもない・・・・・・

「のののこと、好き?」
「あ・・・・・そういうわけじゃないけど・・・・・」
「でも、あるよ。親友とも違うもの。」
「どうしたらいいか分からないっす。
 電話もメールもダメで・・・・・
 もうダメかも・・・・・・・・」
「そうかな」
「え?」
「私はー・・・・のののかぁちゃんだからね」
「石川さん・・・・・」
「あの子はね、時がくれば分かってくれるよ」
62名無し募集中。。。:04/11/21 11:55:44 ID:lMbnjqD4
ho
63L.O.D:04/11/21 19:19:55 ID:J1cCZhMT
「ね、あいぼ・・・・」
「・・・・・」

あからさまに無視をされて、辻は顔を歪めた。
自分だって好きで話しかけたわけじゃないのに
せっかくの撮影で和らいでたものがなくなった。
いつもの喧嘩なら今のタイミングで仲直りする。
どちらかが話しかけたら、ぶっきらぼうでも答える。
だけど、今回は違うし、今は違う。
辻もまだ納得してないし
加護も納得出来てない。
携帯電話を見ると、小川からのメールが一件入ってた。
辻はそれを読まずに、携帯を閉じた。

「ラスト撮影入りまーす!」
「よろしくお願いしまーす!」

浴びるライトの光。
プロの顔に戻る。
見てくれるのは何万という子供達。
そして、おっさん共。
メリーゴーラウンドは回る。
何を追いかけて走るのか分からない馬。
そして、それは一生抜かれることも抜くこともない。
追い付くことも捕まえることもできない。

(悲しいな・・・・・)

なんとなくそんなことを考えながら
笑顔を振りまく自分がピエロのような気がして
辻は精いっぱいの笑顔を作った。
64L.O.D:04/11/21 19:39:10 ID:J1cCZhMT
「そんなことないですよぉー」
「あはははは」

戻ってきた小川が練習に加わり
ようやくリハーサルが終わって
メンバーが小川を囲んで、談笑してる。
小川はすっかり調子を取り戻したのか
いつもの調子で元気を振りまいてる。
紺野はそれを遠めに見ながら、帰る支度をしていた。

(良かった・・・・)

ひとまず小川が調子を取り戻してくれたのが嬉しい。
帰ろうとしたところを小川に呼び止められた。

「こんちゃん!」
「えっ?」
「待ってよ、一緒に帰ろう」
「う、うん」
「荷物まとめるから!」

ロビーのベンチで通りかかるスタッフやダンサーの人に挨拶をしながら待つ。
あの後、紺野が話しかけないから
心配していることを察してくれたのだろうか。
そこへ矢口と石川が通りかかる。
65L.O.D:04/11/21 19:53:11 ID:J1cCZhMT
「キャハハハ、お、紺野」
「あ、お疲れさまでーす」
「矢口さん、先に行ってタクシー探しておいてくださいっ」
「なんだよー、おいらパシリかよー」
「そう言わないで、ビビンバおごってあげますからぁ」
「よっしゃ、忘れんなよっ!」

矢口がいなくなると、石川は紺野の隣に腰掛ける。
あまり二人になる機会はないから、緊張する。
タンポポで一緒だったとはいえ
先輩とこういう状況は慣れるものではない。

「あのね」
「は、は、はいっ」
「や・・・・そんな緊張しなくてもいいけど
 えっと、小川のことなんだけどさ」
「はい?」
「紺野、ちゃんと見ててあげてね?」
「あ、はいっ」
「なにかあったら、私とかよっちゃんとか
 相談してもいいんだからね」
「はいっ」
「これからご飯でもいくの?」
「たぶん・・・・・・」
「あんまり遅くなる前に帰りなさいよ・・・っと、じゃぁね」

まるでそれを分かってたかのように
石川が自動ドアの向こうへ消えたのと同時に
小川が廊下の向こうからバタバタと歩いてきた。
66L.O.D:04/11/21 20:07:17 ID:J1cCZhMT
「ごめんよぉ・・・・・」
「ううん」
「行こっか」
「うん」

タクシーに乗り込んだ二人。
すっかり夜の顔をしている東京。
過ぎ去るネオンを見つめながら、話し出したのは小川からだった。

「・・・ごめんね」
「えっ、なにが?」
「倒れたりして」
「や、そんなこと、全然・・・・」
「一瞬、あさ美ちゃんが私のこと呼んでくれたのは覚えてるよ」
「・・・・・・・」

倒れた瞬間は本当に驚いたし、心配だった。
だから、必死になっていた自分を思い出してしまった。

「ありがとうね・・・・」
「いえいえ・・・・」
「だめだねー、やっぱ強くはなれないよ」
「・・・・・」
「元気、元気、って言われるけどさ
 私はなーんも変わってないよ。
 デビューする前のまんま・・・・・・」
「そんなこと・・・」
「ううん・・・こういう時、ほんとだめなんだよね
 すぐダウンしちゃう、昔からそう・・・・
 娘。入って、頑張ってるけどさ」
67L.O.D:04/11/21 21:33:58 ID:J1cCZhMT
小川は噛み締めるように言葉をつぶやく。
まるで、自分に言い聞かせるように。
紺野はデビューした頃のことを思い出す。
電車に乗りながら、レッスンでの悔しさを思い出して
泣く小川の頭を撫でてあげたことがある。
なぜか、そういう時に自分だけが泣けずにいた。

「あいぼんとののちゃんだったら仲直りしてくれるからさ
 それが終わったら、きっとまこっちゃんも許してもらえるよ」
「そかなぁ」
「大丈夫、ね、今日はさ、遊ぼうよ!」
「うーん・・・・・」
「何時までだって付き合うよっ」
「・・・・ありがと、よーしっ!プリクラ撮るか!」
「撮ろう、撮ろうー!」

小川の笑顔。
ニカーッと笑う。
やっぱり人の良さは笑顔に出る。
その前にまず腹ごしらえだ。
68L.O.D:04/11/21 21:56:11 ID:J1cCZhMT
チャポン・・・・

お風呂の中で、天井を見つめながら
今日一日のことを思い返してた。
結局、辻とは一言も話さなかった。
マネージャーからいい加減にしろと怒られた。
それでも、引けるわけがない。
自分だけじゃなく、友達の紺野や小川のことまで振り回す
その態度が気に食わないのだから。

「はぁ・・・・しばらくは許さん・・・・・」

ぼそっとつぶやき、そのまま顔を水中の中へ潜り込ませた。
もうしばらく二人の喧嘩は長引くようだ。

[第二話 終了]