48 :
L.O.D:
第二話 カナシイコト
憂鬱な寝起き。
携帯を開いてみると、前の夜、寝る直前まで
加護と送りあったメールが並んでいる。
こんなんだったら抜け出して、どっかの店で
甘いものでも食べながら
話を聞いてあげた方が良かったんじゃないか、と
思いつつ、鏡を覗き込むと
いつも以上に前髪にクセがついている。
「はぁー・・・・」
憂鬱な朝だ。
今日はあまり運勢がよくない気がする。
そして、そんな時はテレビの占いは見ないようにしてる。
これで本当に悪かった日にはいたたまれないから。
朝からリハーサル。
小川が心配。
いつも元気な小川が落ち込んでいると
さすがに控え室の雰囲気が違う。
誰も必要以上にしゃべらなかった。
今日は調子を取り戻しているか
いや、辻には連絡できていないはずだ。
あの子は大胆だけど、臆病だから。
49 :
L.O.D:04/11/19 21:40:06 ID:XLteSTCo
「はぁー・・・・ん?」
携帯がバイブしてるのに気付き、手に取る。
表示に映ってるのは、小川の名前だった。
「もしもしー?」
『こんちゃん・・・・・』
「ん?どしたー、まこっちゃん」
『リハの前に付き合ってくれる・・・・・?』
「い、いいよ・・・・・」
(・・・・病んでるなぁ)
予定よりも家を早く出て、小川が指名したリハ場所近くの喫茶店へ向かう。
よく関係者が利用するので、挙動不審な人間が入ってきても
誰も見向きもしない。
帽子を深くかぶった紺野は店の奥に小川の姿を見つけた。
「・・・・こんちゃーん」
「あ、えーっと・・・あの、アイスティで」
「・・・・・・」
「・・・・どうしたの?」
「え、あ、うん・・・・」
小川の目の下にはクマが出来てた。
寝れなかったのだろうか。
いつもの覇気はない。
やっぱりあの事が気になってるのだろうか。
ふ
51 :
L.O.D:04/11/19 21:43:41 ID:XLteSTCo
「ののちゃんに連絡とれた?」
「ううん・・・・」
「電話・・出てくれないの?」
「うん・・・・」
「メールも返ってこないんだ・・・・・」
「どうしたらいいだろう・・・・」
「実はね・・・・・」
紺野は携帯を取り出す。
昨日の辻と加護の騒動
飛び火してはいけないと、娘。サイドにはなにも教えられなかった。
加護からあの後、何が起きたのか聞いた紺野は顛末を知っている。
昨日のメールのやり取りを見せると
小川の表情はどんどん曇っていってしまう。
「・・・・・見せない方がよかった・・・・かな?」
「ごんぢゃーーーーんぅっ!」
「駄目だよ、まこっちゃん。そんな泣いちゃっ・・・・リハ始まるしっ」
「ダメだ、こりゃダメだ・・・・うちはもう・・・・・」
なにやらすっかりネガティブな小川に戻ってしまった。
紺野は眉間にしわを寄せる。
自分に出来ることはなにもない。
52 :
L.O.D:04/11/19 21:48:57 ID:XLteSTCo
加護が目を覚ましたのは9時過ぎ。
ボーッとしたまま、何分過ぎただろう。
昨日、もうちょっと早く起きておけばよかったと後悔する。
「あさ美ちゃんにメール送らなきゃ・・・」
長い時間付き合わせてしまった。
昨日のあの後のこと、今までの辻への思い
紺野との仲や小川のこと・・・・・
いつから、こうなったのかは分からないけど
なぜか紺野にはいろんなことが話せた。
あの子が聞き上手だからかもしれない。
しゃべるテンポは二人とも違って
だけども、会話はちゃんと進んでる。
なんとなく思うが、物事への感性が似てるのかもしれない。
紺野は他人の痛みが分かる子で
時折、感情任せに相手を傷つけてしまう自分には真似のできないことだ。
「ありがと・・・・」
53 :
L.O.D:04/11/19 21:55:37 ID:XLteSTCo
つぶやきながら、打つメール。
寝ぼけた頭のまま、ベッドに寝転ぶ。
頭の片隅で今日の仕事のことを考えてる。
今日も会わなきゃいけない。
喧嘩してても、仕事では一緒。
仲裁してくれる人もいない。
「やになるわー・・・・」
思わずついて出た本音。
向こうが謝らない限り、謝る気はない。
勝手なのは向こうだから
加護が謝る理由はない。
昨日の言い種は納得できない。
「よし、と・・・・・」
それでも、仕事はしなくちゃいけない。
54 :
L.O.D:04/11/19 22:05:45 ID:XLteSTCo
「はいー、今度はこっちねっ!」
遊園地での雑誌撮影。
キッズなんとかって奴で、確かミニモニ。の時にもやった。
二人で次々とポーズを取っていく。
笑顔、笑顔、そして笑顔。
慣れたものだ。
顔を近付ける。
頬がくっつく。
ふざけてキスのまね。
爆笑。
楽しそうな現場。
笑いが絶えない。
プロの仕事。
「休憩はいりまーす」
お互いが体をサッと離した。
辻はマネージャーの腕に手を絡めて話しかけてる。
手持ち無沙汰で、携帯を鞄から取り出すと
紺野からメールが入っていた。
「・・・・なんもだよー。
これからリハーサルです。
あいぼんもがんばってね。」
チラッと見ると、辻もこっちを見てた。
なんで自分の行動をいちいちチェックされてるのだろう。
すごく嫌。
55 :
L.O.D:04/11/19 22:11:28 ID:XLteSTCo
「1、2、3、4!ちょっと道重、立ち位置違う!」
分かってた。
自分がおかしいことに。
眠れなかったせい?
注意されてないのは偶然、ってぐらい。
フラフラする・・・・・・・
フラッ!
「まこっちゃん!!?」
小川が意識を失った瞬間、紺野は曲が鳴ってるのも構わず駆け寄った。
ダンスのパートナーを勤めていた吉澤が間一髪で抱きとめたものの
小川は目をつぶったままだ・・・・・・
「ま、ま、まこっちゃんっ!」
「あー・・・寝不足?ちゃんと自己管理しなさいよっ!
吉澤、一人で動ける?二番、誰だっけ?藤本か、大丈夫でしょ?」
スタッフによって、運び出される小川の姿を目で追ってるも
すぐに練習は再開される。
集中しなきゃいけないけど
そんなこと出来るわけがなかった。
ここに来る前に、見た小川の顔が深く胸の奥で疼いた・・・・