1 :
クリクリ:
なんで横浜の深夜はVIP系の宝庫なんだ?
ブルブル・・・鬱だ氏のう
2 :
sage:04/09/26 01:16:00 ID:gtFX6qVw
静粛にsageませう。
3 :
クリクリ:04/09/26 01:18:48 ID:oophb+DK
sageられちゃった・・・
4 :
ねぇ、名乗って:04/09/26 01:21:42 ID:TAFW4jcV
あ
5 :
クリクリ:04/09/26 01:21:56 ID:oophb+DK
愛し合う〜キミ〜の〜♪
6 :
デル:04/09/26 01:22:52 ID:TAFW4jcV
キターーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!
7 :
デル:04/09/26 01:23:52 ID:TAFW4jcV
sage進行でいきますか!
8 :
クリクリ:04/09/26 01:24:19 ID:oophb+DK
シゴトお疲れ様でつ
9 :
クリクリ:04/09/26 01:25:28 ID:oophb+DK
キターーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
sage逝きませう!では神板に逝きマツか?
10 :
デル:04/09/26 01:27:14 ID:TAFW4jcV
E-mail欄にsageっていれて!
11 :
名無し:04/09/26 01:27:28 ID:0WRi2mGA
猿猿猿猿猿猿猿猿
12 :
クリクリ:04/09/26 01:30:32 ID:oophb+DK
残念!!
ハタヨーク!
(・(・e・)e・)
| コソーリ
|ノハヽ
|o・-・) …
と ノ
|
/
sage
h
ほz
20 :
L.O.D:04/11/15 09:57:47 ID:SapHOYXr
『君と僕はO、彼女はAB、そしてあのコは・・・・』
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
会話のない楽屋。
しゃべる相手は一人しかいない以上
どちらかが話しかけない限り
会話は始まらない。
21 :
L.O.D:04/11/15 09:59:30 ID:SapHOYXr
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
だが、今はどちらも話しかける雰囲気ではなく
特に話しかける用事もない。
いや、そのように装ってるというのが正確か。
一足早く支度を終えた加護が扉を開けて出ていこうとした瞬間
辻が口を開く、タイミングを逃さぬよう・・・・・
「あいぼ・・・・・」
「うっさい、ボケ。もうしばらく黙っとけ、この能無しが」
こうなってしまった原因はもう一週間前のことだ・・・・・・
22 :
L.O.D:04/11/15 10:01:53 ID:SapHOYXr
第一話 ツマラヌコト
「あいぼん、あいぼん!」
「まーたまこっちゃんからメールかぁ?」
「それがさぁ・・・・」
辻は笑うのを堪えながら、加護に自分の携帯を渡す。
小川がくだらない動画を撮って送ってきたのだろうとは思ったが
携帯の小さな液晶にはぬいぐるみだらけの小川の部屋が映ってる。
『・・・・・・ヌーン』
「!?」
突如、左からアゴを突き出した変顔の小川が現れて
『ヌーン』などというわけの分からぬ声を発して
右へと去っていった、まったくくだらない。
「ブハハハハハハハッ!!」
「意味なーっ!」
「面白くない!?のの、すっごい笑ったんだけど!!」
「そんなんばっか送ってるんだろー、しょーもないわぁ」
23 :
L.O.D:04/11/15 10:02:51 ID:SapHOYXr
「あいぼんさぁ、こんこんとしないの?」
「するって・・・動画?」
「そう、新ネタとか。てかさ、こんこんって電話とかどうなの!?」
加護が自分の携帯を取り出し、辻へ渡す。
どこかの店のようで、こんこんは一人でいるようだ。
目の前にはおいしそうなスパゲティ。
『はい、というわけで、こないだ言ってたお店に来ましたぁ。
見てくださいっ!ほらっ!これ、おいしそうでしょー!
食べてみますねー・・・・んぅう〜〜〜』
その後は無言で食べている。
しかも、オチもなく終わった。
「・・・・終わり?」
「終わり」
「美味しそうでした。」
「美味しかったです」
「あ、行ったんだ」
「うん、こないだのオフに向こうも時間空いてて、ご飯だけ」
「へぇ・・・・・いいなぁ」
24 :
L.O.D:04/11/15 10:04:15 ID:SapHOYXr
「そういや、まこっちゃんとご飯食べにいくのはいいけどさー
必ず焼き肉屋なのはどうなのよっ?」
「なんかさぁ・・・・やっぱ食べたいったら肉じゃん!
で、結構、時間遅かったりしたらあれだし
ファミレスとかもあれだしさぁ・・・・・・・」
「分かる!」
「分かるべ!」
何気ない会話。
尽きぬ会話。
いつもの楽屋
いつもの辻と加護。
二人になったから変わったことなんてあまり無かった。
強いていえば、歌うパートと責任が増えたくらいだ。
ちゃんと仕事をするのは、もう言われなくたって当たり前。
それぐらい分かってる。
楽屋は・・・・二人しかいないから狭くなった。
だけど、寂しさはない。
娘。で一番にぎやかな二人がそのままだし
メンバーとは常に連絡を取ってる。
特に小川は毎日欠かさずどころか日に何度も
しょーもない動画を撮っては辻に送りつけてくるし
紺野は加護にその時のお仕事やメンバーの様子を送ってくれる。
ミニモニで本体とは別行動を取ることもあっただけに
そういう状況は別段、変化がなかったといえばなかった。
25 :
L.O.D:04/11/15 10:05:39 ID:SapHOYXr
「よーしっ、まことにメール返そうかなぁ!!」
「二人でなんかやろか!?」
「いいねっ!なにやるっ、なにやるっ!?」
「斬ってみっか!」
「じゃ、じゃ、ののがギター弾くからっ!」
「よーしっ、って、これじゃテツ&トモじゃねーかっ」
「そうだよ、コンビじゃないよ、あのネタ!」
「うはははははっ!」
「お」
「ん?」
小川の携帯から流れ出したのは辻が一人で歌うロボキッス。
カラオケに行った時に録音したのをそのまま指定着信にしてるらしい。
隣に座ってた紺野がそれに気付き、携帯を覗く。
「おもしろいの来た?」
「来た来た、動画」
辻と加護が交代に出てきては、バッタバッタとハロプロ関係者を斬っていく。
『どんなにかわいくても東南アジア人と間違えますから!残念っ!涙の美白斬りっ!』
『もはやどうやったって本性バレてますからっ!残念っ!独身貴族斬りぃっ!!』
「・・・・・・プッ」
「すごいなぁ・・・・うちもなんか考えっかなぁ」
「誰にするのっ?」
「誰がいいかなぁ・・・・・」
26 :
L.O.D:04/11/15 10:11:14 ID:SapHOYXr
楽屋を見渡す。
それぞれがそれぞれの事をしてる。
収録の合間。
「誰・・・うーん・・・・」
「・・・・ざんねーん・・・・・」
「ざんねーん・・・・・ざんねーん・・・・・」
「ざんねー・・・・・」
「拙者、まだまだやせそうもありませんからっ!切腹!!」
「まこっちゃん・・・・自虐?」
「あはははっ」
「ははは」
「やせないとマズいって・・・・・マジで」
「がんばろーね・・・・」
『痩せた途端にスカートは違和感ありますから!残念っ!お前は女なのか斬りぃっ!!』
あややのまんこなめほうだい
ぬ
29 :
L.O.D:04/11/16 00:26:12 ID:mwgB49Ha
11時過ぎ、収録が終わって、家に帰ってきてお風呂に入り
寝る準備が整った頃にはそんな時間だ。
「はぁ〜・・・・」
今日は二本録りだったから、なおさら疲れたのか
辻は早々にベッドに横になる。
ゴッ!!
「痛っ!」
とは言っても、まだ寝る気はないが
出かけぎわにベッドの上へ放り投げた
漫画の角に頭をぶつけて悶絶していると
携帯から聞こえてきたのは
小川自らが歌うオガワえもんのテーマ・・・・・・・
『のんちゃぁ〜ん!』
「キモい、キモいっ!まこと!近付き過ぎだから、マジで!!」
『キモいっていうなよぉー』
「アップはいいけど、鼻の穴とかダメだって」
『びょーん』
「いやぁー、バカでしょ、お前!」
『のんちゃんに言われたくないねー』
「あんたはバカだ、間違いない」
30 :
L.O.D:04/11/16 00:27:05 ID:mwgB49Ha
『そいやさー、昼間のメール、超ウケたんだけど!』
「面白かったしょっ!あの後、ずっとやってたんだよ、二人で」
『二人で?見る人もいないのに?』
「うん、ずーっと、楽屋で」
『そりゃバカだわー』
「いやいやいや、まことには負けますから、ほんと」
『ぬーん』
「だーからぁ、そういうわけのわかんないことするしょやー!」
小さな携帯の画面に映る小川の笑顔。
難しいことはよく分からないけど、いい時代になったものだ。
離れてても、友達の顔が見える。
小川はしょーもないが、それがまたいい。
辻にとって、この時間が嬉しかった。
『そいやさー、今度のオフは?』
「しばらくないなぁ」
『そっかぁ、うちもだなぁ』
「もー、年末じゃん!」
『そうだよ、年末だよ!』
「リハーサル始まるから会えるじゃんかよ〜」
『え〜・・・・・』
「なにその声〜、のんと会うの嫌なのかよ〜」
『うそ、うそ。すんまそん』
「すんまそん、ってなんだよ、もー、ほんとまことはバカだ」
31 :
L.O.D:04/11/16 00:29:16 ID:mwgB49Ha
『バカ、バカ言うけど、あたしはバカじゃないから
どっちかっていうと、バカなのはつじ』
「つじ呼ばわりかよっ」
『そう、もう今日からお前はつじだ!』
「いや、今日からもなにものんはつじだから」
『いや、つじ、じゃなくて、つでぃにしてやるっ』
「つでぃってなんだよー、しょうもないなー」
『ワハハハハハ!』
「あははははっ!」
くだらない会話でいい。
お互いに罵りあいながらも
その距離感を感じ取っている。
仕事で疲れてても、こうして電話をして
悩みを相談することもあるけど
いつも大概はこんな調子だった。
今思えば、なんてつまらぬこと、と思うし
自分の性格に飽き飽きする。
大事なものは無くしてようやく気付くっていうのも分かってるはずなのに
本当に、本当につまらぬことをしてしまった。
そんな時、素直に謝れたらいいのに
バツが悪くて、声もかけれずにいる間に
さらにタイミングを失っていき、泥沼になる。
もし出来るなら、この瞬間の自分にこう言いたい。
差し出された手を握り返して。
更新乙です。
いやァ、久しぶりにLODさんを見ましたよ。
懐かしさのあまり書き込んでしまいましたが。
俺のマイクさんの様に奇抜な展開待ってます。
ho
34 :
L.O.D:04/11/16 11:52:57 ID:mwgB49Ha
その日は昼から事務所で取材で、加護が街で買い物をして向かうと
30分近く早く着いてしまった・・・・・・
すれ違うスタッフに挨拶しながら、マネージャーを探すと
自分を見つけたマネージャーがすまなそうに手を合わせた。
「ごめんっ!急にキャンセルになった!」
「えぇ〜、ほんとですかぁ」
「その後の3時からのはやるんだけど」
「そかぁ、うちお昼食べてないんだよなー」
「なんか取る?」
「てんやものはいいわー・・・・」
「っと、ごめん。電話だっ、三時から取材だからねっ」
「あーい」
突然、用事がなくなったものの
買い物も済ませてしまって
また外へ出る理由もなく
廊下をブラブラしてると
目の前に石川を見つけた。
「梨華ちゃ〜ん!」
「あ、あいぼんだっ!元気〜?」
「なにしてんの、取材?」
「うん、私はこれから」
「あさ美ちゃんいる?」
「もう終わったかな?」
35 :
L.O.D:04/11/16 12:19:03 ID:mwgB49Ha
控え室を覗くと、ちょうど終わったらしく
少し疲れた顔の紺野が座っていたが
加護を見つけると立ち上がって
笑顔でぎゅぅっと抱きしめてきた。
「あいぼ〜ん」
「あさ美ちゃぁ〜ん」
「あいぼんはお仕事?」
「それがなー、キャンセルになって3時まで空いてんの」
「お昼は?食べた?」
「まだだけど」
「美味しい店見つけたの!」
「取材は?」
「私はもう終わったよ〜、この後はー・・・6時からリハ」
「じゃ、行っちゃおか!」
「行こう、行こう!」
そこへ別々に取材を受けてたメンバーも帰ってくる。
その中の小川を見て、紺野がなにかを思い出したようだ。
「あっ、ね、まこっちゃん!」
「ほぇぁ?」
「今からあいぼんとご飯行くんだけどね
そこのかぼちゃケーキがすっごいおいっしいの!
まこっちゃんに食べさせてあげたいと思ってたんだよー!!」
36 :
L.O.D:04/11/16 12:44:37 ID:mwgB49Ha
「いいな、いいなぁ!」
「まこっちゃんも行こうぜぃ!」
「いやっほー!!」
「キャァ〜〜〜〜!」
なにやらハイテンションになった3人が小躍りしながら
楽屋を出ていった後、吉澤がフッとテーブルを見ると
小川の携帯が置かれたまんまになっていた。
「あっちゃー、あいつら、もう行っちゃったよ・・・・」
「紺野がいるから大丈夫でしょ」
「そだねー・・・・」
と、そのまま携帯を戻した・・・・・
37 :
L.O.D:04/11/16 12:56:13 ID:mwgB49Ha
「えぇぇえ〜!キャンセルですかぁっ」
『ごめんなー』
「もうタクシー乗っちゃいましたよー」
『3時からの取材はそのままやるから』
「はい、分かりましたぁ・・・事務所行きますー」
『よろしく』
マネージャーからの電話を切った辻は深くため息をつく。
まったくついてない。
家を出る前に言ってくれれば
読みかけだった漫画を全部読めたのかもしれないのに。
携帯を見る、正午を少し回っている。
出かける前に食べてきたから、お腹は空いてない。
事務所に行ったら誰かいるかもしれないから
遊んでもらえばいい。
「そういや・・・娘。も取材だったような・・・・」
確認のために小川の携帯にメールをしてみる。
返信はない、取材中なのだろう。
行けば会えるだろうから
そのまま鞄に携帯を放り込んで
辻は外の風景を眺めていた。
38 :
L.O.D:04/11/17 22:22:04 ID:K0ScqbLx
午後2時を少し過ぎたくらいだったろうか。
加護は二人と食事を終えて、事務所に戻ってきた。
紺野が見つけたお店は本当に美味しくて
値段はそこそこだけど、ランチセットなら十分だ。
加護と紺野は美味しいものには目がない。
なにか見つけたら、お互いに情報交換し
時間が合う時にはこうやって一緒に食べにいく。
紺野が本人を目の前にして話す小川の最新列伝は
どれもこれも作られたように馬鹿馬鹿しく
面白い話ばかりで、すごく楽しかった。
これから取材用のメイクをしなければならず
まだまだ二人と一緒にいたかったけど
廊下の曲り角で別れようとした時だった。
「まことっ!」
「?」
廊下の向こうから一際大きく響いた辻の声。
加護も紺野も小川も何事かと振り向いた。
辻は走ってくると、小川の携帯を投げ付けてくる。
「なんで携帯持ってないのさっ!」
「そうそう、忘れちゃってさぁ・・・・」
「のの、取材キャンセルになってヒマだったのに!!」
「ごめんよぉ、3人でご飯食べに行ってたから・・・・」
39 :
L.O.D:04/11/17 22:23:48 ID:K0ScqbLx
その言葉に、今にも泣きそうに顔を歪めると
辻はバタバタッ!と走り去ってしまう・・・・
事の重大さに気付いた小川の顔は青ざめ
それよりも、紺野が気まずさを通り越してオロオロし
加護は自分のしたことを後悔してた。
だけど、いつものことだ。
数時間もしたら、機嫌は直る。
分かってる、あの子とは長い付き合いだ。
辻はああ見えて嫉妬深い。
負けず嫌いという以上に、そっちの方が強い気がする。
自分が吉澤や石川とかと話してると、近付いてくる。
最初はその理由も分からなかったが
それに気付いてからは、辻にゆずってあげたりもした。
いつものこと。
小川がいなかったこと、三人でご飯を食べにいったこと・・・・・
彼女にとって他の誰かじゃダメなのだ。
「あ、あ、あいぼん、どーしよ・・・・・」
「のんちゃん怒ってたよー・・・・」
「あー、もう、しゃーないなー・・・・・
放っておけば、どうせ直るけどなぁ・・・・・」
「わ、わたし、みんなにどんな風だったか聞いてくるっ!」
「あいぼん、ごめん!ほんとごめん!!」
「謝るなよー、勝手に怒ってるのはののなんだからさー」
「だって、この後、取材もあるしょやぁ・・・・」
「ちょっとそれが心配・・・・」
「うち・・・・行かない方がいいよね」
「そだね・・・機嫌直ったら連絡するよー」
「ほんとごめんっ!お願いするよぉ・・・・」
別れる時、小川まで泣きそうな顔していた。
40 :
L.O.D:04/11/17 22:34:59 ID:K0ScqbLx
「困った奴・・・・」
慣れてしまった。
自分がなにかしたがると、真似したがり
自分がほめられると、対抗しようとする。
そういう風に出来ているのだ。
Wの控え室に入ってみると
すっかり怒ってる辻がいた。
「なんで、のの置いてったの・・・・・」
「だって、来てなかったし・・・・」
「誘ってくれればよかったじゃん・・・・
仕事なくなったのは同じじゃん・・・・」
「そうだけど、急だったから・・・・」
「こんこんと二人で行けばいいのに・・・・・」
「いや、そこな、かぼちゃケーキが・・・・」
「いいもん!のの、仲間はずれにして・・・・」
「・・・・・はぁー」
あまりのいじけっぷりに腹が立ってきた。
さっきはあたかも自分が辻の考えを先読みして
引くところは引いているように言ったものの
こうなってくると話は違う。
加護の中で押さえきれぬものが溢れ出しそうになる。
41 :
L.O.D:04/11/17 22:48:41 ID:K0ScqbLx
「携帯置いてくとか、ほんとありえない・・・・
いっぱい連絡したのに・・・・」
「なぁ、のの、うちやあさ美ちゃんおったんやから
連絡してくれればよかったんやないのっ?」
「・・・・・・・・・・」
「みんな、うちらと一緒にいるって教えてくれたんやろ
それをまこっちゃんがいないのとか
うちらが勝手にご飯食べに行ったみたいに言うて
どっちがわがまま言うてるんか分かっとんのかっ」
「・・・・・だって」
「だってもクソもあるかいな!
あんたのワガママで一気に冷めたわ!!
ほんま腹立つわ、こいつ!!」
「うっさーーーい!!なんだよっ、その言い方!
ののも腹立ったんだよっ!!」
ガタァアアアアンッ!!
立ち上がって、椅子を蹴り飛ばした辻が加護を押し倒して、上から殴りつける
加護もこのあとの仕事のことなんか忘れて、辻の顔を殴り飛ばした。
マネージャーがこの騒動を聞き付けて、飛び込んできた時には
控え室どころか、二人がひどいことになっていた・・・・・・
42 :
L.O.D:04/11/17 22:51:54 ID:K0ScqbLx
数時間に渡り、マネージャーに説教された辻が家に帰ってきたのは9時過ぎ。
それでも、気持ちが収まらず、まず母親に一言言われた。
遅い夕ご飯を食べるも、食事を取るという行為に
自分の怒りの元をオーバーラップさせてしまい
早々にやめて、部屋に閉じこもった。
居間のテレビの音が漏れ聞こえてくる。
落ち着かず、音楽をかけてみるも気分に合わない。
やり場のない怒り。
いや、怒りなのかどうか分からない。
だけど、辻の心を裏切られたという気持ちでいっぱいだった。
「一緒に遊びたかったのに」
加護の顔が浮かぶ。
ああなったらダメだ。
どうしてもぶつかってしまう。
その度に後悔するのも分かってる。
だけど、止められない。
まるで、ビリヤードの最初のショットのように
考えや理性が吹き飛んで、言い合いが始まる。
だけど、こんな喧嘩は久しぶりだった。
へぇ
へぇ へぇ
へー
へ
ほ
48 :
L.O.D:04/11/19 21:35:43 ID:XLteSTCo
第二話 カナシイコト
憂鬱な寝起き。
携帯を開いてみると、前の夜、寝る直前まで
加護と送りあったメールが並んでいる。
こんなんだったら抜け出して、どっかの店で
甘いものでも食べながら
話を聞いてあげた方が良かったんじゃないか、と
思いつつ、鏡を覗き込むと
いつも以上に前髪にクセがついている。
「はぁー・・・・」
憂鬱な朝だ。
今日はあまり運勢がよくない気がする。
そして、そんな時はテレビの占いは見ないようにしてる。
これで本当に悪かった日にはいたたまれないから。
朝からリハーサル。
小川が心配。
いつも元気な小川が落ち込んでいると
さすがに控え室の雰囲気が違う。
誰も必要以上にしゃべらなかった。
今日は調子を取り戻しているか
いや、辻には連絡できていないはずだ。
あの子は大胆だけど、臆病だから。
49 :
L.O.D:04/11/19 21:40:06 ID:XLteSTCo
「はぁー・・・・ん?」
携帯がバイブしてるのに気付き、手に取る。
表示に映ってるのは、小川の名前だった。
「もしもしー?」
『こんちゃん・・・・・』
「ん?どしたー、まこっちゃん」
『リハの前に付き合ってくれる・・・・・?』
「い、いいよ・・・・・」
(・・・・病んでるなぁ)
予定よりも家を早く出て、小川が指名したリハ場所近くの喫茶店へ向かう。
よく関係者が利用するので、挙動不審な人間が入ってきても
誰も見向きもしない。
帽子を深くかぶった紺野は店の奥に小川の姿を見つけた。
「・・・・こんちゃーん」
「あ、えーっと・・・あの、アイスティで」
「・・・・・・」
「・・・・どうしたの?」
「え、あ、うん・・・・」
小川の目の下にはクマが出来てた。
寝れなかったのだろうか。
いつもの覇気はない。
やっぱりあの事が気になってるのだろうか。
ふ
51 :
L.O.D:04/11/19 21:43:41 ID:XLteSTCo
「ののちゃんに連絡とれた?」
「ううん・・・・」
「電話・・出てくれないの?」
「うん・・・・」
「メールも返ってこないんだ・・・・・」
「どうしたらいいだろう・・・・」
「実はね・・・・・」
紺野は携帯を取り出す。
昨日の辻と加護の騒動
飛び火してはいけないと、娘。サイドにはなにも教えられなかった。
加護からあの後、何が起きたのか聞いた紺野は顛末を知っている。
昨日のメールのやり取りを見せると
小川の表情はどんどん曇っていってしまう。
「・・・・・見せない方がよかった・・・・かな?」
「ごんぢゃーーーーんぅっ!」
「駄目だよ、まこっちゃん。そんな泣いちゃっ・・・・リハ始まるしっ」
「ダメだ、こりゃダメだ・・・・うちはもう・・・・・」
なにやらすっかりネガティブな小川に戻ってしまった。
紺野は眉間にしわを寄せる。
自分に出来ることはなにもない。
52 :
L.O.D:04/11/19 21:48:57 ID:XLteSTCo
加護が目を覚ましたのは9時過ぎ。
ボーッとしたまま、何分過ぎただろう。
昨日、もうちょっと早く起きておけばよかったと後悔する。
「あさ美ちゃんにメール送らなきゃ・・・」
長い時間付き合わせてしまった。
昨日のあの後のこと、今までの辻への思い
紺野との仲や小川のこと・・・・・
いつから、こうなったのかは分からないけど
なぜか紺野にはいろんなことが話せた。
あの子が聞き上手だからかもしれない。
しゃべるテンポは二人とも違って
だけども、会話はちゃんと進んでる。
なんとなく思うが、物事への感性が似てるのかもしれない。
紺野は他人の痛みが分かる子で
時折、感情任せに相手を傷つけてしまう自分には真似のできないことだ。
「ありがと・・・・」
53 :
L.O.D:04/11/19 21:55:37 ID:XLteSTCo
つぶやきながら、打つメール。
寝ぼけた頭のまま、ベッドに寝転ぶ。
頭の片隅で今日の仕事のことを考えてる。
今日も会わなきゃいけない。
喧嘩してても、仕事では一緒。
仲裁してくれる人もいない。
「やになるわー・・・・」
思わずついて出た本音。
向こうが謝らない限り、謝る気はない。
勝手なのは向こうだから
加護が謝る理由はない。
昨日の言い種は納得できない。
「よし、と・・・・・」
それでも、仕事はしなくちゃいけない。
54 :
L.O.D:04/11/19 22:05:45 ID:XLteSTCo
「はいー、今度はこっちねっ!」
遊園地での雑誌撮影。
キッズなんとかって奴で、確かミニモニ。の時にもやった。
二人で次々とポーズを取っていく。
笑顔、笑顔、そして笑顔。
慣れたものだ。
顔を近付ける。
頬がくっつく。
ふざけてキスのまね。
爆笑。
楽しそうな現場。
笑いが絶えない。
プロの仕事。
「休憩はいりまーす」
お互いが体をサッと離した。
辻はマネージャーの腕に手を絡めて話しかけてる。
手持ち無沙汰で、携帯を鞄から取り出すと
紺野からメールが入っていた。
「・・・・なんもだよー。
これからリハーサルです。
あいぼんもがんばってね。」
チラッと見ると、辻もこっちを見てた。
なんで自分の行動をいちいちチェックされてるのだろう。
すごく嫌。
55 :
L.O.D:04/11/19 22:11:28 ID:XLteSTCo
「1、2、3、4!ちょっと道重、立ち位置違う!」
分かってた。
自分がおかしいことに。
眠れなかったせい?
注意されてないのは偶然、ってぐらい。
フラフラする・・・・・・・
フラッ!
「まこっちゃん!!?」
小川が意識を失った瞬間、紺野は曲が鳴ってるのも構わず駆け寄った。
ダンスのパートナーを勤めていた吉澤が間一髪で抱きとめたものの
小川は目をつぶったままだ・・・・・・
「ま、ま、まこっちゃんっ!」
「あー・・・寝不足?ちゃんと自己管理しなさいよっ!
吉澤、一人で動ける?二番、誰だっけ?藤本か、大丈夫でしょ?」
スタッフによって、運び出される小川の姿を目で追ってるも
すぐに練習は再開される。
集中しなきゃいけないけど
そんなこと出来るわけがなかった。
ここに来る前に、見た小川の顔が深く胸の奥で疼いた・・・・
56 :
L.O.D:04/11/19 22:45:09 ID:XLteSTCo
[更新レス]
あー、どうも、作者のL.O.Dです。
久しぶりに羊で書かせてもらってますが
読んでもらえてるのでしょうか(w
うん
みてますよぉ(w
がんばってー
60 :
L.O.D:04/11/20 20:31:54 ID:PCg19dcV
ゆっくりと目を開けると、蛍光灯の明かり。
ダルい体。
あの瞬間、意識を失った、と自分で分かった。
リハに出れないなんて最悪。
マネージャーに怒られる。
「・・・・・行かなきゃ」
半身起こしたところに、誰かが入ってくる。
「あら?起きたの?」
石川だった。
休憩中なのだろうか。
手には小川の携帯。
「ありがとうございます」
「寝てなきゃだめよー、まこっちゃん」
「休憩中なんですか?」
「ううん」
「えっ?」
「心配だから抜け出してきちゃった」
「そんな・・・・」
「サボりたかったわけじゃないんだよー?」
「なんて言ってきたんです?」
「んー、ま、アレでね」
「あー・・・アレ」
意味ありげに笑う石川の無邪気な笑顔。
お返しに笑ったけど、自分でも力なく笑ってるのが分かる。
61 :
L.O.D:04/11/20 21:23:51 ID:PCg19dcV
「石川さん・・・・・」
「なぁに?」
「石川さんはメンバーのこと特別に思ったりしますか?」
「特別に?みんな、好きだけど・・・・そうね
シゲさんには負けない!絶対負けないんだから!
あとね、キャメイね、元祖としてゆずらないわよっ」
「いやー・・・・まぁ・・・・友達、というかぁ・・・・」
「あぁー、そういう特別ねっ!そうねー・・・・・
よっちゃんかなぁ・・・・・・・
やっぱりね、普段はそんなに話さないけど
うちが本当にダメな時、支えてくれるのはよっちゃん」
「吉澤さんかぁ・・・・・」
「なぁによぅ、そんな質問しちゃって〜」
小川はうつむいて、言葉を探す。
だけど、うまい言葉は見つからない。
今の自分達を言い表す言葉なんてない。
友達でも、親友でもない・・・・・・
「のののこと、好き?」
「あ・・・・・そういうわけじゃないけど・・・・・」
「でも、あるよ。親友とも違うもの。」
「どうしたらいいか分からないっす。
電話もメールもダメで・・・・・
もうダメかも・・・・・・・・」
「そうかな」
「え?」
「私はー・・・・のののかぁちゃんだからね」
「石川さん・・・・・」
「あの子はね、時がくれば分かってくれるよ」
62 :
名無し募集中。。。:04/11/21 11:55:44 ID:lMbnjqD4
ho
63 :
L.O.D:04/11/21 19:19:55 ID:J1cCZhMT
「ね、あいぼ・・・・」
「・・・・・」
あからさまに無視をされて、辻は顔を歪めた。
自分だって好きで話しかけたわけじゃないのに
せっかくの撮影で和らいでたものがなくなった。
いつもの喧嘩なら今のタイミングで仲直りする。
どちらかが話しかけたら、ぶっきらぼうでも答える。
だけど、今回は違うし、今は違う。
辻もまだ納得してないし
加護も納得出来てない。
携帯電話を見ると、小川からのメールが一件入ってた。
辻はそれを読まずに、携帯を閉じた。
「ラスト撮影入りまーす!」
「よろしくお願いしまーす!」
浴びるライトの光。
プロの顔に戻る。
見てくれるのは何万という子供達。
そして、おっさん共。
メリーゴーラウンドは回る。
何を追いかけて走るのか分からない馬。
そして、それは一生抜かれることも抜くこともない。
追い付くことも捕まえることもできない。
(悲しいな・・・・・)
なんとなくそんなことを考えながら
笑顔を振りまく自分がピエロのような気がして
辻は精いっぱいの笑顔を作った。
64 :
L.O.D:04/11/21 19:39:10 ID:J1cCZhMT
「そんなことないですよぉー」
「あはははは」
戻ってきた小川が練習に加わり
ようやくリハーサルが終わって
メンバーが小川を囲んで、談笑してる。
小川はすっかり調子を取り戻したのか
いつもの調子で元気を振りまいてる。
紺野はそれを遠めに見ながら、帰る支度をしていた。
(良かった・・・・)
ひとまず小川が調子を取り戻してくれたのが嬉しい。
帰ろうとしたところを小川に呼び止められた。
「こんちゃん!」
「えっ?」
「待ってよ、一緒に帰ろう」
「う、うん」
「荷物まとめるから!」
ロビーのベンチで通りかかるスタッフやダンサーの人に挨拶をしながら待つ。
あの後、紺野が話しかけないから
心配していることを察してくれたのだろうか。
そこへ矢口と石川が通りかかる。
65 :
L.O.D:04/11/21 19:53:11 ID:J1cCZhMT
「キャハハハ、お、紺野」
「あ、お疲れさまでーす」
「矢口さん、先に行ってタクシー探しておいてくださいっ」
「なんだよー、おいらパシリかよー」
「そう言わないで、ビビンバおごってあげますからぁ」
「よっしゃ、忘れんなよっ!」
矢口がいなくなると、石川は紺野の隣に腰掛ける。
あまり二人になる機会はないから、緊張する。
タンポポで一緒だったとはいえ
先輩とこういう状況は慣れるものではない。
「あのね」
「は、は、はいっ」
「や・・・・そんな緊張しなくてもいいけど
えっと、小川のことなんだけどさ」
「はい?」
「紺野、ちゃんと見ててあげてね?」
「あ、はいっ」
「なにかあったら、私とかよっちゃんとか
相談してもいいんだからね」
「はいっ」
「これからご飯でもいくの?」
「たぶん・・・・・・」
「あんまり遅くなる前に帰りなさいよ・・・っと、じゃぁね」
まるでそれを分かってたかのように
石川が自動ドアの向こうへ消えたのと同時に
小川が廊下の向こうからバタバタと歩いてきた。
66 :
L.O.D:04/11/21 20:07:17 ID:J1cCZhMT
「ごめんよぉ・・・・・」
「ううん」
「行こっか」
「うん」
タクシーに乗り込んだ二人。
すっかり夜の顔をしている東京。
過ぎ去るネオンを見つめながら、話し出したのは小川からだった。
「・・・ごめんね」
「えっ、なにが?」
「倒れたりして」
「や、そんなこと、全然・・・・」
「一瞬、あさ美ちゃんが私のこと呼んでくれたのは覚えてるよ」
「・・・・・・・」
倒れた瞬間は本当に驚いたし、心配だった。
だから、必死になっていた自分を思い出してしまった。
「ありがとうね・・・・」
「いえいえ・・・・」
「だめだねー、やっぱ強くはなれないよ」
「・・・・・」
「元気、元気、って言われるけどさ
私はなーんも変わってないよ。
デビューする前のまんま・・・・・・」
「そんなこと・・・」
「ううん・・・こういう時、ほんとだめなんだよね
すぐダウンしちゃう、昔からそう・・・・
娘。入って、頑張ってるけどさ」
67 :
L.O.D:04/11/21 21:33:58 ID:J1cCZhMT
小川は噛み締めるように言葉をつぶやく。
まるで、自分に言い聞かせるように。
紺野はデビューした頃のことを思い出す。
電車に乗りながら、レッスンでの悔しさを思い出して
泣く小川の頭を撫でてあげたことがある。
なぜか、そういう時に自分だけが泣けずにいた。
「あいぼんとののちゃんだったら仲直りしてくれるからさ
それが終わったら、きっとまこっちゃんも許してもらえるよ」
「そかなぁ」
「大丈夫、ね、今日はさ、遊ぼうよ!」
「うーん・・・・・」
「何時までだって付き合うよっ」
「・・・・ありがと、よーしっ!プリクラ撮るか!」
「撮ろう、撮ろうー!」
小川の笑顔。
ニカーッと笑う。
やっぱり人の良さは笑顔に出る。
その前にまず腹ごしらえだ。
68 :
L.O.D:04/11/21 21:56:11 ID:J1cCZhMT
チャポン・・・・
お風呂の中で、天井を見つめながら
今日一日のことを思い返してた。
結局、辻とは一言も話さなかった。
マネージャーからいい加減にしろと怒られた。
それでも、引けるわけがない。
自分だけじゃなく、友達の紺野や小川のことまで振り回す
その態度が気に食わないのだから。
「はぁ・・・・しばらくは許さん・・・・・」
ぼそっとつぶやき、そのまま顔を水中の中へ潜り込ませた。
もうしばらく二人の喧嘩は長引くようだ。
[第二話 終了]
69 :
L.O.D:04/11/22 21:54:07 ID:6ctyAiDz
第3話 チイサナコト
「・・・・・・・」
震える携帯電話。
それを手に取ったまま、辻は難しい顔をしていた。
午後11時。
かけてきてる相手は分かってる。
だけど、出ることが出来ずにいた。
今、出ると、ひどいことを言ってしまいそうな気がした。
・・・・ブブブブブ・・・・ブッ
切れた。おそるおそる開けると
やはりその電話は小川からの電話。
ゆっくりと下唇を噛み締めながら
携帯の電源を落とすと
机の上へ放り投げて、布団をかぶった。
70 :
L.O.D:04/11/22 22:19:46 ID:6ctyAiDz
「ダメだぁ・・・・・」
小川は今にも泣きそうな顔で携帯を見つめる。
もうあれから5日以上経ったのに
辻は電話も出てくれないし、メールも返してくれない。
「てか、なんでうちがこんな悩んでるんだろ・・・・」
思えば、辻の過剰な嫉妬のせい。
誰かとご飯を食べにいくのを辻に許可を取る必要はないし
辻は自分の親ではない。
そんなことが頭をよぎって、振り切るように頭をブンブンと振る。
自分の気持ちは分かってる。
辻がそうやって自分を大切に思ってくれることが嬉しいし
いつの間にか、もはや親友という以上の存在になってた。
気兼ねなくなんでも言える。
なにも不安に思うことも
構えることもなく、言葉を発しあえる人・・・だったはずだ。
あと、何日、こんな日が続くのだろう。
もはや日課となりつつある、仕事後の会議。
小川と紺野は紺野が見つけてきた隠れ家のようなカフェで
マンゴージュースやらクラブサンドやらで空腹を満たしながら、話をしていた。
71 :
L.O.D:04/11/22 22:28:46 ID:6ctyAiDz
「そっかぁ・・・・・」
「あ、あさ美ちゃん、携帯鳴ってるよ」
「ほんとだ・・・・ちょっと出ていい?」
「うん」
誰か友達からなのだろうと思い
小川は視線をはずして、壁に張られたアーリーアメリカンのようなポスターを
なにげなく見ていたのだが
紺野の第一声に驚いてしまう。
「あ、あいぼん。」
「あいぼん!?」
『ん、おー、ごめん。まこっちゃんと一緒だったんだ?』
「そう、ご飯食べてたの」
『今、よかった?』
「うん、だいじょぶだよー」
『あー・・・ごめん・・・まだののとうまくやれなさそう』
「うーん・・・怒ってるの?」
『うちがだめ・・・話せない』
「そっかぁ、昨日も言ったけど、私達は大丈夫だからね」
『ごめんなぁ・・・・・』
72 :
L.O.D:04/11/22 22:39:32 ID:6ctyAiDz
なんとなく話の内容から分かる。
加護は辻とうまくいってない。
辻がまだ怒ってるんだろうか
小川の胸の中を不安が埋め尽くす。
『まこっちゃんにごめん、って言っといて』
「うん、じゃぁね〜」
「あいぼん、なんて?」
「やっぱり、ののちゃんと話せないみたい」
「話せない・・・・・・かぁ」
「あいぼんは、今回ね、ののちゃんが勝手に怒ってるのもそうだけど
うちらのこと、こうやって振り回してるみたいのが
すっごく嫌なんだって・・・・・・・」
加護の思いが分かるし、嬉しい。
間に入ってくれる紺野には毎晩、毎晩、申し訳ない。
小川はため息を一つついて話し始めた。
「こんこん、ほんとありがとぉ・・・・あのね」
「うん?」
「うちもさ・・・ちょっと同じこと考えてた」
「え?」
「なんかうちが悩むことじゃないじゃん。
のんちゃんが勝手に言っててさ
悪いの、うちじゃないよ・・・・・・って」
「あー・・・・・」
73 :
L.O.D:04/11/22 22:50:33 ID:6ctyAiDz
「だって、そうっしょ。うち、のんちゃんの物じゃないし
誰とご飯食べに行ったっていいじゃん
今だってこんちゃんと一緒に来てるし
これさえもあいつはグチグチ言うの?
それってさぁ・・・・なに?」
「まこっちゃん・・・・・」
「なんか違うよ・・・そうじゃないよ・・・・」
まるでなにかが溢れ出すように
せき止めていたものが欠壊するうように
次々と言葉をたて並べた小川はうつむき
その言葉を自ら噛み締める。
思っていたけど、口に出せなかったこと
自分の中で天秤にかけて
友達でありたいがために言わなかったこと
きっとこれを本人にぶつけたら
今、かろうじてつながってるものさえも切れてしまうかもしれない。
だから、小川が言えなかったことが溢れた。
「ひっく・・・・・うぅ・・・・・うっ」
「そだね・・・まこっちゃんの言う通りだよ
今まで我慢してたんだね・・・・・・
うちにはそういうの言っていいからね・・・・」
「ごんぢゃぁーん・・・・・・」
「とりあえず鼻水かもうね?」
「ヴァー・・・・・・」
74 :
L.O.D:04/11/23 20:37:33 ID:gF5L+6m7
頭が痛い・・・・
ここ、2、3日、ちゃんと寝れていない気がする。
早く寝てるが、夜中に目を覚ましているような
眠りが浅い感じ。
寝起きも悪いし、起きて、2時間経っても頭がボーッとしてる。
新曲のテレビ収録。
今日は早く終わってほしい。
何事もなく終わって、帰って眠りたい。
「リハ入りまーす!」
「3、2、1、キューッ!」
イントロが流れて、ダンスは完璧に覚えてる。
体は動く、間違ってない。
だけど、何か違和感がある。
曲中で見つめあう。
視線が重なる。
痛いくらいの視線。
それが答えだ。
75 :
L.O.D:04/11/23 20:42:40 ID:gF5L+6m7
『・・・シャバラランラランララン ロボロボ』
「OKでーす!お疲れ様でーす」
「ありがとうございましたぁ」
一足先に廊下を歩いていく背中。
振り向くことも話しかけることもない。
「ごめん、トイレ行ってくる・・・」
「楽屋、間違えないでね」
「うん」
加護が一瞬だけこっちを見た気がした。
76 :
L.O.D:04/11/23 20:47:34 ID:gF5L+6m7
加護は楽屋に入ってすぐ、辻の携帯がテーブルの上で鳴ってるのを見つけた。
(しばらく戻ってこないやろ・・・・)
誰からの着信かだけ見ようと覗き込むと
そこには、こんこんと・・・・・
「なんで、あさ美ちゃんとメールしてるん・・・」
口をついて出た言葉に思わず口を塞ぐ。
自分は辻とは違う。
紺野が誰かとメールしてたって関係のないことだ。
それに内容を見たわけじゃない。
小川のことを思って、連絡したのかもしれない。
それならなにも問題はな・・・・・・
77 :
L.O.D:04/11/23 21:04:33 ID:gF5L+6m7
「あいぼん・・・・・」
「え・・・・・」
「ののの携帯、いじったでしょ」
「いじってないよ」
「絶対見た!」
「見てないからっ」
これ以上、ゴタゴタしたくなくて、鏡を見た。
辻が飛びつくように携帯を手にする。
いじられてないのを確認するも
謝ることなく、楽屋を飛び出した。
(なんやの、あいつ・・・・・・)
頭の中で辻の声がリフレインする。
嫌になる。
あの嫉妬と思い込み
少し疲れる。
ゴロンと横になって、天井を見つめながらつぶやく。
「あさ美ちゃん、どんなメールしてたんやろ」
78 :
L.O.D:04/11/23 21:21:06 ID:gF5L+6m7
「紺野、ちょっと・・・」
「あ、はい」
楽しそうにしゃべる輪を抜けて、石川が雑誌を読んでた紺野を呼び出した。
楽屋を出て、廊下を曲がったところで、声を潜めてしゃべる。
「どうなった?」
「ののちゃんですか?」
「うん、まことは元気になったみたいだけど・・・・」
「だめ・・・ですね」
「あいぼんが怒ってるの?」
「はい、すごく・・・私達のことを気にしてて」
「そっか・・・」
「私、ののちゃんにもメールしてるんですけど
あいぼんが怒ってるし
また同じことやっちゃいそうで怖い・・・って」
「でも、W、二人しかいないからそのままじゃ駄目だよね」
「はい・・・・私もそう思います・・・」
79 :
L.O.D:04/11/23 21:27:35 ID:gF5L+6m7
現状を聞いた石川の顔は難しいままだ。
言葉通りだ。
あの二人がこのままでいていいわけがない。
だが、紺野にはどうすればいいかも分からずにいた。
三人それぞれの言いたいことは分かる。
けど、今の状況を打破するのには誰かが歩み寄らなきゃだめだった。
「私、あいぼんに会おうか?」
「あ、いいですね。お願いします」
「まずはあいぼんだよね・・・・」
「私、まだののちゃんと話してないんで・・・・」
「うん、そうしよっか・・・・
ほんと、手間のかかる連中だよねー。」
苦笑する石川に紺野も笑って返す。
それが本音ではないことは分かる。
この人は、いつも協調性を考える。
なにか問題が起きるのを嫌う。
今回のも見ていられないのだろう・・・・・
80 :
L.O.D:04/11/23 21:35:27 ID:gF5L+6m7
加護は石川に呼ばれ、彼女の家へ着いた。
一人暮らしはこういう時に便利だが
寂しがりの加護にはまだまだ無理だなと思う。
自分の年の時には石川は娘。と自立を両立してた。
「お邪魔しま・・・・」
「散らかってるけど、ごめんね・・・・」
「梨華ちゃん、散らかり過ぎだから!」
自立と両立は言い過ぎた。
かわいいもの好きだが、整理整頓が苦手なのか
それとも、実はずぼらでおおざっぱな性格が出てるのか
出したところに戻す、いらないものは捨てるが出来ないのかもしれない。
「もー・・・・・」
「あいぼん、片づけとかしなくても・・・・」
「しなきゃ座るとこもないでしょ!」
「・・・・ごめんなさい」
「あーもう、綿棒、こんなしてー」
「なんか使ったあと、まだ使えるかなーと思って置いちゃわない?」
「置きません!捨てなさい、まったくもー」
「ふふふっ、お母さんみたい」
「お母さんじゃないよぉー、誰だよ、自分でかぁちゃんって言ってるのー」
「私じゃないもーん、トメ子さんだもーん」
81 :
L.O.D:04/11/24 16:48:16 ID:s2XgIISW
石川のことだ。
紺野から話は聞いてるのだろう。
交わす言葉の端から分かる。
「紅茶でいいでしょ?」
「うん」
「薄味?」
「4回目のパックとかやめてなー」
「ダメ?」
「・・・・梨華ちゃん、その貧乏性直しなよ」
「だってさ、もったないでしょ」
基本的にケチである。
他人になにかをしてあげることに関しては
暇を惜しまないが、物に関してはケチなのだ。
石川は堅実でしっかりしているというが
端から見てると、なにもそこまでという時もある。
生活の知恵といえばそうなのかもしれないが
ご飯を食べに行って、つまようじを集めて持って帰るのだけはやめてほしい。
「あ、そのネイルかわいい」
「自分でやったんだよー」
「あいぼん、手ちっちゃいねー」
「指プクプクしてるし、梨華ちゃんの手の方がきれいだよ」
「ののとさ・・・うまくいってないって?」
構えてはいたものの、思ってたよりはやく来た。
顔を上げると、石川は優しく笑う。
82 :
L.O.D:04/11/24 17:04:50 ID:s2XgIISW
「話、聞いてるよ」
「そか」
「二人しかいないWでしょー」
「分かってる・・・分かってるの・・・・・」
「あいぼんの気持ちも分かるよ、優しいね・・・・」
「・・・・ののには優しくなれない」
「どうしたいの?」
「もう嫌だ・・・・・」
「そんな・・・・」
「Wがじゃない・・・ののの性格・・・・・
今日もさ・・・・・・・・・・・」
83 :
L.O.D:04/11/24 17:08:56 ID:s2XgIISW
「ごめん、遅れちゃった。待った?」
辻は紺野と約束してた時間に少し遅れてきた。
「ううん、全然だよ」
「ここ・・・スパゲティがおいしいとこ?」
「うん、そう。あのね、これとこれはおいしかった!」
「そかぁ・・・食べちゃうかなぁ・・・・」
「絶対、オススメだよー。」
落ち着いた店内。
あまりこういうところに出入りしない辻は落ち着かない。
紺野もスパゲティを頼んで、その間は何気ない話をしてた。
「あさ美ちゃんと二人っきりって初めてだね」
「そだね」
「二人ゴトだ」
「アハハハハ」
「・・・・娘。の新曲聞いたよ、てかメインじゃん!」
「いっぱいいっぱいだよ」
「のの、結局、娘。で一回もメインないよー」
「もう収録の度にドキドキしちゃって・・・・・」
84 :
L.O.D:04/11/24 17:13:23 ID:s2XgIISW
美味しいスパゲティも食べ終わるか、といったところ
話始めたのは紺野から。
「ののちゃん・・・・話があるんだけど」
「んぅ?」
「あいぼんと仲直り出来ない?」
「うー・・・・・」
「まこっちゃんの電話に出てあげるだけでもいいから」
「怖い・・・・・」
「こわい?」
「なんかよけいなこと言いそう・・・・
今日もね、楽屋であいぼんが座ってて
のん、テーブルの上に携帯置いてたの
で、トイレから帰ってきた時、携帯見られた、と思って
ちょうど、こんこんからメールが来てて・・・・」
「なんか・・・・言っちゃったの?」
「あいぼんに怒鳴っちゃった。
帰り際に話しかけようとしたら
反対に怒鳴られて、黙ってろ・・・・って」
話がややこしくなってきた。
小さなことのように見えて、それは閉じぬ穴を作ってしまった気がした。
同じようなことが続くと、人間は普段の何倍もの意味で考えてしまう。
加護にとって普段ならなにげない小競り合いも
今は喧嘩の火種でしかない。
ましてや、辻の勘違いや嫉妬なんてものは原因にしかならない。
加護は今日のことをひどく怒ってるだろう。
あとはもう石川がなんとか言ってくれるのを願うしかない。
85 :
L.O.D:04/11/24 17:17:37 ID:s2XgIISW
「ののちゃんは、みんなと仲直りしたいの?」
「した・・・いけど、出来ない」
「なんで?」
「あいぼんにひどいこと言っちゃったし
まことだって怒ってる・・・・・・」
紺野は思い出した。
小川は今、怒っている。
早く謝らないがために、糸はどんどん絡まりはじめていた。
後悔する、あと一日でも早ければこんなことにはなってなかった。
怒ってないとはいえない。
辻自身が気をつけなきゃ、また同じことだ。
繰り返したら、もっと深いところからやり直すはめになる。
「ののが悪いって分かってるけど・・・・」
「そんな・・・・・」
「分かってるんだよ・・・・だけど・・・・
素直になんかなれないよ・・・・・
だって、ののも傷付いたもん・・・・・
すっごく寂しくて・・・・・・」
86 :
L.O.D:04/11/24 17:32:52 ID:s2XgIISW
「ののちゃんは、みんなと仲直りしたいの?」
「した・・・いけど、出来ない」
「なんで?」
「あいぼんにひどいこと言っちゃったし
まことだって怒ってる・・・・・・」
紺野は思い出した。
小川は今、怒っている。
早く謝らないがために、糸はどんどん絡まりはじめていた。
後悔する、あと一日でも早ければこんなことにはなってなかった。
怒ってないとはいえない。
辻自身が気をつけなきゃ、また同じことだ。
繰り返したら、もっと深いところからやり直すはめになる。
「ののが悪いって分かってるけど・・・・」
「そんな・・・・・」
「分かってるんだよ・・・・だけど・・・・
素直になんかなれないよ・・・・・
だって、ののも傷付いたもん・・・・・
すっごく寂しくて・・・・・・」
[第三話終了]
87 :
L.O.D:04/11/25 21:34:32 ID:tAp3oXsh
第4話 キズツイタコト
あれからまた一週間が過ぎた。
未だに辻と加護は仲直りしてないし
小川は辻に電話するのをやめた。
全てがよくない状態のまま、止まってしまっていた。
「・・・・・なにやってんだか」
吉澤ひとみは高みの見物を決め込んでいた。
石川もなにやら動き回ってるから
早々に片付くと思ってたのに
どうも誰もが意固地になっているのか
話は進んでないようだ。
楽屋の隅で横になりながら、みんなを見てると
それに気付いたの小川が走り寄ってきた。
「吉澤さぁ〜ん、品定めはダメですよぉ」
「してねーって」
「一緒に遊びましょー」
「・・・・遊んでる場合かっての」
「?」
「麻琴、ちょっと座れ」
「ほぁ?」
「いいから」
88 :
L.O.D:04/11/25 21:43:54 ID:tAp3oXsh
自分の横に座らせて、一呼吸置く。
みんな自分達を気にしていない。
「なんか考えてるでしょ」
「・・・・・・・」
「水くせぇよ、相談すりゃいいのに」
「いやぁ・・・・」
「なんとなく分かってるけどさ。
梨華ちゃんだけじゃダメみたいでさ。」
「うちは・・・・ちょっともう・・・・えぇ」
「よけいなお世話かもしれねーけど
そうだな・・・・今、こうやってさ、みんないるだろ?」
「うん」
「部屋の隅から見てみるんだよ」
「?」
「気持ちを落ち着けて、体の力を抜いて
スゥーッと見てみるんだ。
そしたら、誰がなにをしてるかだけじゃなくて
誰がなにを考えてるかが分かってくるし
今、なにをしようとしてるかまで見えてくる。」
「どういうことですかね?」
89 :
L.O.D:04/11/25 21:55:48 ID:tAp3oXsh
「物事は感情だけじゃなくて、違う見方も必要ってこと」
「あー・・・・」
「分かるか?」
「分かったような・・・・」
「今の麻琴はさ、ののへの気持ちとかでしか見れてないんだよ。
そうじゃなくてさ、もっと大きな視点から考えるんだ。」
「・・・・・・」
ニマっと笑ってみせた吉澤。
たまに見せるこの人の大きさが羨ましくなる。
冷静で、温厚。
他人と違う視界を望み、他人に影響されずに生きる。
それは時におかしく、時に奇怪に見えても
全てが彼女の持つ時計の中で動いてる気がする。
「ありがとうございます」
「大事なのはさ、自分だよ。
嘘つきたくねぇじゃん」
「はいっ」
ペコリと頭を下げて、小川が離れてく。
吉澤はまたゴロッと横になって
楽屋の隅から、その世界を見てる。
「・・・・飯田さんのパンツ見えそう」
「よっすぃ!?」
「うそー・・・・・・」
90 :
L.O.D:04/11/25 22:09:53 ID:tAp3oXsh
「て、言われたんだけど・・・・・」
真夜中のコーヒーショップ。
小川は昼間、吉澤に言われたことを紺野にそのまま伝えた。
違う視点。
分かりそうで、分からない。
今、自分が見てるものとは違う視点がどこにあるのか
小川の頭の中で理解できなかった。
「うーん・・・・・そだなぁ」
「なんかの哲学なのかなぁ」
「きっと吉澤さんなりに答えを出す方法を考えてくれたんだよ。
だから、ちゃんと考えないと・・・・・・」
「別な視点ってなんだぁ・・・・・」
「あ」
紺野がなにか気付いたらしく、声を上げた。
小川はポカーンとしながら、次の言葉を待つ。
91 :
L.O.D:04/11/25 22:19:22 ID:tAp3oXsh
「今、まこっちゃんはさ、ののちゃんのことネガティブに捉えてるんじゃないかな」
「ネガ・・・ティブ?」
「うん、それまでは、気にならなかったことが
今は目について見えちゃうことってない?」
「・・・・・・うー」
「相手のことが悪く見える時って
自分も感情的になっちゃって、悪く見ちゃってるんじゃないかな」
「自分も・・・・・」
「そう、あんなこともいやだ、こんなこともいやだ、って
仲良かった時には気にしなかったことも
それがすごく嫌な点に思えてしまうの。」
言われてみると、確かにそうで
辻のしたことに対して、感情的になってる自分がいた。
一瞬、表情を曇らせた小川がつぶやく。
「だけど・・・許せないよ」
「うーん、それを許せる日が来なきゃ・・・・・」
「分かってる・・・・・」
92 :
L.O.D:04/11/25 22:25:13 ID:tAp3oXsh
部屋で漫画を読んでた辻希美は飛び起きた。
携帯が鳴っているが、鞄がどこか分からない。
ようやく見つけると、それは石川からの電話だった。
『のの〜♪』
「梨華ちゃぁ〜ん」
『のの、ケーキ食べたくない?』
「食べたい!」
『ケーキバイキングのお店見つけたんだけど・・・・』
「えっとねー、うちは・・・夜、大丈夫」
『私も、9時過ぎくらいには大丈夫かな』
「いっぱいあるの?」
『25種類とか』
「やったぁ」
『やっぱり、こういうのはののだよねー』
「久しぶりだねっ」
『そだね、じゃ、明日、仕事終わったら連絡するよ』
「分かったぁ」
電話が切れる。
笑顔がこぼれてる。
こんな風に笑うのは、久しぶりかもしれない。
もしかしたら、石川は誰かから聞いたのかもしれない。
だとしたら、ちょっとした気遣いだけど嬉かった。
携帯を開いて、履歴を見る。
ある時から小川の名前がなくなった。
本当にプツリとかかってこなくなった。
93 :
L.O.D:04/11/25 22:30:41 ID:tAp3oXsh
「メール・・・・・・」
開いたまま、読んでなかったメールもいくつもある。
受信ボックスから、そのメールまで開いたが
最後のボタンを押せない。
怒りにまかせ、読まずにいたもの。
胸がドキドキしてくる。
本当に読んでいいのだろうか。
辻は自分の気持ちが分からなくなっていた。
自分のしたことの過ちも
それでみんなが傷付いたことも分かってる。
だけど、あの数時間、自分が味わった寂しさを忘れられない。
ピッ
「のんちゃん、ごめん。
電話出てくれないと寂しいよ……
いっぱい謝りたいから
電話出て下さい」
「まだ怒ってるのかなぁ。
のんちゃん傷つけちゃって
すごく苦しいよ………
また一緒に遊びたいよ。
だから、許してください」
94 :
L.O.D:04/11/25 22:37:29 ID:tAp3oXsh
「まこと・・・・・・」
涙が溢れていた。
一生懸命、自分に気持ちを伝えるために
何度も、何度もメールを送ってくれた。
それを自分は読まずにいた。
こんなに許しを請うてるのに
見ることもせず、許すことなど出来ずにいた。
自分が傷付いたことだけを考えていた。
今、小川に電話をしたら出てくれるだろうか。
「だめ・・・・怖い・・・」
電話は来なくなった。
辻が電話に出てくれないから
反対に小川は怒ってしまったのかもしれない。
自分が犯した過ちに気付く。
携帯電話を持った手が震えていた。
小川に電話など出来ない。
誰に相談すればいいだろう。
考えがまとまらない。
「あ、梨華ちゃん・・・・」
辻は履歴から石川の電話へかけ直した・・・
95 :
L.O.D:04/11/26 20:27:46 ID:ZF494a2r
震える携帯電話。
加護はヘッドホンを外して、手に取る。
紺野からの着信、通話ボタンを押した。
『起きてた?』
「おー、起きてたよー」
『まこっちゃんと一緒なんだけどさ』
部屋の時計を見た。
もう午前1時を過ぎてる。
「夜遊びはあかんでー」
『あのね・・・・あいぼんはさ
のんちゃんと仲直り出来ない?』
「あー・・・・」
『このままじゃダメだよ・・・・・
みんながみんな出来ないって思ってちゃ
いつまで経っても仲直りなんてできないよ』
「まこっちゃんはどうなの?」
加護が知りたいのは小川の気持ちだ。
辻の勝手な嫉妬や言葉にも腹が立ったが
なにより、他人を傷つけたことに腹が立ってた。
小川がもう許すなら、自分の気持ちを抑えるくらい出来た。
96 :
L.O.D:04/11/26 20:33:31 ID:ZF494a2r
『代わるね・・・・・』
『あ、ども』
「な、まこっちゃんはののの事・・・・・・」
『うーん・・・まだちょっとアレだけど・・・・・・
でも、こんちゃんの言う通りだとうちも思う』
「そか・・・・」
『あいぼん、ごめんね、こんこん借りてて』
「そんなー、きみら、同期じゃんかー」
『そうだよね、あはははは』
「じゃ、分かった・・・ちょっとだけ時間ちょうだい。頑張るから」
『うん、ありがとねー、あさ美ちゃんに代わるよぉ』
『こんな時間にごめんね』
「いいよー」
『じゃぁ、おやすみなさい』
「おやすみなぁー。」
電話を切って、フッと自分の言葉を思い出した。
「同期・・・・か」
辻と会って、もう4年になる。
ただの4年じゃない。
学校の友達よりも、家族よりも側にいた。
喧嘩もしたし、バカなこともした。
修羅場みたいな現場も体験したし
いつだって一緒にいた。
今は違う。
二人しかいないのに
二人はそこにはいない。
会話もなく、笑いあうこともない。
今まで過ごしてきた時間さえも無視していた。
97 :
L.O.D:04/11/26 20:50:17 ID:ZF494a2r
ベッドに寝転がり、壁の方へ寝返りを打つ。
加護は今、それが正しいことなのか悩み始めている。
「のの・・・・・・」
もうしゃべらなくなって、二週間が過ぎた。
仕事で毎日会うのに。
収録の合間は笑顔を見せて
楽屋ではそれぞれがそれぞれのことをして
笑いあうこともなく過ごす。
仕事はそれでいいのかもしれないが
これまでの自分とこれからの自分にとって
良くないことのような気がする。
辻希美は自分にとって、ただの仕事の相棒か。
「違うよなぁ・・・・・」
分かってる。
頭では分かってても、まだ・・・・・・
うなづけない自分がそこにはいた。
98 :
L.O.D:04/11/26 20:57:28 ID:ZF494a2r
翌日、午後10時過ぎ。
ケーキは取り止めて、よく行く焼肉屋で待ち合わせた。
気持ちを紛らわすためにユッケの一つでも食べたかったのだ。
こっちに向かうと電話をもらって、30分。
のんびりと自由気ままに食べて待ってると
襖が開き、石川が姿を見せた。
「あ、のの、先に食べてたのーっ、ずるーい」
「梨華ちゃん・・・」
「ご飯粒ついてるよー、んしょっと・・・・
なにしよっかなぁ・・・・・・」
石川が追加でいくつか注文した後
ようやく落ち着いて向かい合った。
石川は黙ったままの辻に優しく話しかける。
「今日はどうだった?」
「ううん・・・・」
「話せなかったかぁ」
「うん・・・・」
「まことにはまだ電話出来なさそう?」
「怖い・・・・」
「でも、ののがごめんなさいしないと」
「うん・・・・」
「こげるよ。さ、私も食べよっと。」
99 :
L.O.D:04/11/26 21:02:27 ID:ZF494a2r
手頃な肉が焼けると辻の皿に入れてくれたりして
石川がますますかぁちゃんのように振舞う。
交わすのは何気ない会話。
石川にだから話せる話はいっぱいある。
一つずつ言葉を吐き出す度に
昼間感じる重苦しい雰囲気や
心の奥にある不安が解けていく気がする。
小一時間、しゃべりぱなしでお腹もいっぱいになり
勘定は石川がもってくれた。
「ごちそうさまでしたぁ」
「ま、たまにはいいとこも見せないとね〜」
「梨華ちゃん、もう帰る?」
「んー、まだ大丈夫だけど」
「覚えてる、この近くの公園・・・・・?」
「あぁ、一回行ったね。これぐらいの時間にっ」
「ののがあいぼんと喧嘩しちゃってさぁ」
「そうそう、慰めてたら私まで泣いちゃって・・・・」
「もう一回行かない?」
「じゃぁ、約束して」
「?」
「公園でまことに電話すること」
「そんなぁ・・・・」
「フフッ」
100 :
L.O.D:04/11/26 21:05:10 ID:ZF494a2r
微笑んだ石川は一足先に走り始める。
出遅れた辻がそれを追いかけると
公園はもう目の前で、心の準備なんてできぬままたどり着いてしまった。
小川への電話、昨日も、昼間も出来なかった。
アドレスまでは開いてるのに、最後のボタンが押せなかった。
「約束だよ」
「ズルいよ」
「チャンスでしょ」
「?」
「まことに電話する理由を作ってあげたの」
「むぅー・・・・・」
「ほら、ブランコこいであげるから」
石川の言われるまま、ブランコへ座り、携帯電話を開いた。
小川の番号・・・・・
ここからボタン一つで電話はかかる。
「えい」
「あっ!」
後ろから伸びてきた手が押してしまった。
電話はすでにコールを始めてる。
101 :
L.O.D:04/11/26 21:09:36 ID:ZF494a2r
「あっ・・・・まこと・・・ごめんね・・・・ごめんなさいっ
のの、ほんとバカだ・・・自分のことばっかで
みんな振り回しちゃって・・・・あいぼんやこんこんまで
・・・・恥ずかしくて、どうしたらいいか分からなくて
ずっと電話もメールも見れなかった・・・・・・
まことから送られてたメール見れなかったよ・・・・・
・・でもね、昨日見たの・・・・そしたらね・・・・
ののバカだなぁ・・・って・・・・ひっぐ・・・・・・
まことに謝んなきゃ・・・・・って・・・・・・うぅ・・・
思ったけど・・・・・けど・・・・怖くって・・・・
ごめんなさい・・・・わがまま言ってごめんなさいっ・・・・」
『のんちゃん・・・・』
「ごめんなさいぃ・・・・・うぅっ・・・・ふっ・・・・」
そのまま泣き崩れ、砂の上に落ちる携帯。
石川はそれを拾った。
「んー・・・」
『バッカだなぁ、つじは・・・・・・』
「ほーんとバカだね」
『あっ・・・石川さんですか』
「もー、泣いちゃって電話もできないよ、この子」
『ひぐっ・・・・ずずっ・・・・・』
「まこともか・・・・ね、ののの気持ち分かったよね」
『はいぃ・・・・分かがりまじたぁ・・・・・』
「まだののはしばらくかかりそうかな。
今日はそういうことでさ、後から電話するかもしれないけど
また明日ね・・・・・・・・・・」
『はぁい・・・ひっく・・・・・・・・』
102 :
L.O.D:04/11/26 21:13:19 ID:ZF494a2r
電話を切り、辻のバッグの中へ滑り込ませると
石川の首筋へ飛びつくように抱きついてきた。
いつまで経っても変わらない。
泣き虫で弱い。
「もー・・・」
「うぅー・・・・ひっく・・・ひっく・・・・・」
「良かったね、まこと怒ってなかったよ」
「梨華ぢゃーん」
「あー、もう、すっごい顔になっちゃって・・・・・」
ぎゅっと抱きしめる。
いつだってこうしてきたし
いつまでもこういう関係でいたい。
なにがあったって、壊れぬものを
辻と石川は築いてきたと思っている。
103 :
L.O.D:04/11/26 21:14:43 ID:ZF494a2r
無償の愛。
求められるままに与えることの出来る優しさを感じている。
辻にだけじゃない、加護や小川だって同じ。
石川にとってはかわいい妹であり、仲間。
その気持ちを少しずつでも理解してほしかった。
「のの・・・・・・」
「ん」
「あいぼんと仲直りできる?」
「んぅ・・・・・」
「できるよね?」
「うん・・・・・・」
「約束だよ?」
「んっ・・・・・」
辻が胸の中で小さくうなづいた。
104 :
L.O.D:04/11/26 21:16:46 ID:ZF494a2r
「仲直り・・・・したんだ」
朝起きて、メールが入ってたことに気付いた加護は
寝ぼけ眼でつぶやく。
紺野と小川の両方から辻と仲直りできたというメールが来てた。
「よかった・・・・・」
携帯を閉じて、噛み締める。
もはや意地の張り合いのような無言の反抗に
幕引きが訪れる。
小川の喜びっぷりに思わず安堵の表情を浮かべてしまった。
しかし、そこでフと気付く。
自分は笑えるだろうか。
今までと変わらないように
いや、何もなかったように笑えるだろうか。
こんなに会話をしなかったことなどない。
どうやって話しかけよう。
こっちから謝ろうか
楽屋に入るのはどっちが早いだろうか。
入って、先にいたらどうしよう。
105 :
L.O.D:04/11/26 21:19:58 ID:ZF494a2r
落ち着かない気持ちは移動中も変わらず
手持ち無沙汰に紺野へのメールを返す。
スタジオについて、クロークを抜け
Wの張り紙をされた楽屋のノブを回す。
ゆっくりとドアが開き
視界に誰かの影が映る。
先にいた。
開いたドアに向けられたその視線は
どこか脅えたような、緊張した視線で
加護の方が驚き、身構えた。
辻がずっと考えてた言葉をなんとか出してくる。
「・・・・・おはよぅ」
「・・・・・おはよ」
初めて交わした言葉はただの挨拶だった。
106 :
L.O.D:04/11/26 21:21:45 ID:ZF494a2r
第五話 イイコト
石川が自動販売機で紅茶を買おうと小銭を入れていると
横からスッと伸びてきた手が缶コーヒーのボタンを押してしまった。
「!?」
「おつかれ」
そこにいたのは、吉澤ひとみ。
ニマッと笑うと、何事もなかったようにコーヒーを飲み始める。
「・・・・いる?」
「もうっ」
「随分と頑張ってたみたいじゃん」
「まぁねー」
「うちには出来ねぇや」
ドカッとベンチに腰を下ろしながら
紅茶を買い直す石川の姿を見てる。
石川もそれに付き合うように横に腰を下ろした。
「あらぁ、そんなことないでしょぉー」
「梨華ちゃんには頭下がるよ」
「・・・・私だってずっといるわけじゃないよ」
「・・・・・・分かってる」
「やだっ、こんな話するなんて」
自分から切り出したのに、話を止めるように立ち上がる石川。
走り去ろうとしたその瞬間、吉澤がその手首を掴む。
107 :
L.O.D:04/11/26 21:23:55 ID:ZF494a2r
「よっちゃん・・・・」
「ずっと一緒だから」
「・・・・・」
「娘。卒業したって、変わらないから・・・・・ね」
「・・・・・うん」
不器用な人だ、決して器用じゃない。
恥ずかしがり屋で繊細な人。
指をそっとはずすと、その顔に微笑みを浮かべる。
石川はその指を握り返す。
「だーいじょうぶですよ、とーちゃん」
「・・・・・ははっ」
「頑張ろうね」
「あぁ・・・・・」
そこへバタバタッと走ってくる足音。
「まこっちゃん、待って!」
「アハハハハハ、あさ美ちゃん、遅いからっ!」
「焼き肉逃げないからっ!!」
「あっ!」
二人の姿を見つけて、小川は足を止める。
後から来た紺野も誰がいるのかとひょこっと覗き込む。
108 :
L.O.D:04/11/26 21:29:02 ID:ZF494a2r
「飯行くの?」
「そーなんですよぉー」
「食べ過ぎないようにね・・・・・」
「もぉー、やだなぁー、石川さんはぁっ!」
「痛っ、痛いから、まこと!」
「吉澤さぁん、今度、デートしてくださいよぉ〜」
「やだよ」
「なーんでですかぁ、一緒に遊園地とか行きましょーよぉ」
「二人はやだ」
「二人っきりでいいじゃないですかぁ〜」
「なんで、そんなに二人っきりにこだわるんだっつーの」
「私は二人で行きたいんですぅ」
そのやり取りに石川が苦笑してると
紺野がそっと会釈をして、小川を置いて走っていく。
「ほら、お前、こんこん行っちゃったぞ!」
「マジで!あさ美ちゃぁーんっ!」
109 :
L.O.D:04/11/26 21:31:34 ID:ZF494a2r
去ろうとして、小川は振り返る。
「ありがとうございましたぁ!」
「気にすんな、って」
「楽しんでおいで〜」
「はぁ〜い、おつかれさまでしたぁ!!」
石川と吉澤は顔を見合わせた。
例え離れたって、誰かを思う気持ちは変わらないから
その気持ちは忘れたくないから
差し出された手をそっと握り返して・・・・・
ジュゥーッ
「焦げるからっ!!」
「うぉっ!あちぃっ!」
「なにしとんねんっ、もーっ!」
「あぁぁっ、ダメですよぉ・・・・」
小部屋で四人。
焼けた側から肉の奪い合い。
特に会話もなく、食べている。
加護が丹念に焼いてた牛タンを
ひょいっと辻が横取っていく。
110 :
L.O.D:04/11/26 21:34:12 ID:ZF494a2r
「あぁーっ!」
「んまーい」
「のんちゃん、カクテキ一個ちょーだい」
「はい、まこと」
「ののーっ、うちの牛タン返せーっ!」
「焼けばいいじゃんかよー」
「ムカつく、お前ムカつくっ!!」
加護が辻の首を絞めると、さすがに紺野がピシャリ。
「こらっ!喧嘩しちゃダメッ!」
「・・・・へぃ」
「・・・・ごめん」
「アハハハハ、怒られてやんのー」
「ハッ!まこと、のののカルビ食った!?」
「てか、焼いてたの全部ないから!」
「私のギョウジャニンニク・・・・・・・」
「・・・・・ほぁえ?」
「とぼけるなぁーっ!」
「ビビンバでも食べてなさいっ!」
「まこっちゃん、お肉禁止ですっ!」
「なんだよぉ、みんなしてよぉ〜〜っ」
「「あんたが悪いっ!!」」
111 :
L.O.D:04/11/26 21:35:33 ID:ZF494a2r
帰りのタクシーの中
携帯が鳴っているのに気付いて
辻は開いてみた。
「まことからだ・・・・・」
添付ファイルがある。
ダウンロードを終えると
携帯の小さな画面に表示される。
4人が顔を寄せあって撮った写真。
そして、一言。
『大好き!』
頬を緩ませた。
素直にこの言葉がうれしいし
受け止めれる、今なら。
ギュッと携帯を抱きしめる。
「・・・・・・ありがと」
112 :
L.O.D:04/11/26 21:38:16 ID:ZF494a2r
辻は携帯のボタンを押して、一つ前のメールを開いた。
加護からのメール。
あの後、二人は喧嘩のことには触れず
少しずつ、少しずつ何気ない会話を繰り返してたが
ある日、眠る前に送られてきた。
「双子のようで双子じゃないのがWだよね。
うちら、それ忘れちゃダメだよ。
まだまだ一緒に走っていこーな♪」
「んっ・・・・・」
二人は同じじゃない。
違うからこそWである。
違うからこそがんばれるし
違うからこそ競争する。
だから、一緒にいる。
だから、手をつなぐ。
どこまでも走るために。
そんな思いを噛み締める。
113 :
L.O.D:04/11/26 21:40:50 ID:ZF494a2r
「あ・・・・・」
娘の新曲がいきなり流れ出し
紺野からの電話。
めずらしくテレビ電話だ。
向こうはもう家へ着いたようだ。
『ののちゃんっ』
「こんこん〜」
『言えなかったねぇ』
「だぁって、あいぼん連れてってくれないんだもーん」
『またチャンスはあるよっ』
「そだねぇー・・・はぁぁあ・・・・
なんかすっごい照れる、マジで!」
『でも、今、言っておかないと』
「・・・・・あぁ、なんでこんな好きなんだろ」
『いいコトですっ』
114 :
L.O.D:04/11/26 21:43:07 ID:ZF494a2r
「こんこんに相談してよかった・・・・」
『私はなんにもしてないよぉ』
「そだ、知ってる?」
『なになに?』
「B型ってね、O型ともAB型とも相性がいいんだよ。
だからね、こんこんがうちらの間に入ってくれると
うまくいくんだよ、きっと!」
『あぁ〜・・・・そだねぇ・・・・』
「また、よろしくね?」
辻の言葉に紺野はクスッと笑った。
『また喧嘩して、仲裁に入るのは嫌だよっ』
「うぁ〜、ごめんよぉ」
『遊びにいくのはいいよっ、またご飯食べに行こ
おいしいお店、探しておくから!』
「うんっ!!」
fin.
115 :
L.O.D:04/11/26 21:49:34 ID:ZF494a2r
とてもすばらしい作品でした
感動のあまり涙が溢れて止まりません
御脱稿おめでとうございます
次回作に期待しております
十分にご休養なさってください
( ^▽^)<この程度のスレにはこの程度の保全がお似合いだ ハッハッハ
118 :
名無し募集中。。。:04/12/05 21:34:50 ID:bNsKApU4
( ^▽^)<この程度の内容の小説にはこの程度の保全がお似合いだ ハッハッハ
>>118 真似するな、それからageるなヴォケ>( ^▽^)=○);´▽`;∬≡( ^▽^)
自演乙w
121 :
L.O.D:04/12/07 15:52:10 ID:3Ui3PsK2
この程度の内容の小説を連載させてもらってる作家です。
数日内に新作始めます。
122 :
L.O.D:04/12/10 01:35:56 ID:rR8vk172
『steal 〜 song for you 〜』
「わたしが・・・・・のこと・・・・・・
・・・・・ないよと・・・・・・ほしい・・・・・」
それは歌にもならない小さな呟き。
自分の中で噛み砕くように、何度も何度も繰り返す言葉。
バッグの中に荷物を詰め終わり、忘れ物はないか確認する。
「・・・・・おわれば・・・・ように・・・・
どんどん・・・・・・・・っと、消さなきゃ」
無意識に口づさんでいたメロディで
かけっぱなしだったCDを止めるのを忘れてたのを思い出した。
履きかけた靴を脱ぎ、かわいらしい青の小さなCDデッキのスイッチを押す。
一人暮らしの部屋。
比較的、きれいな方であり、自分のための空間である。
「今日もがんばりますか。」
123 :
L.O.D:04/12/10 01:38:22 ID:rR8vk172
自分で自分に言い聞かせる。
いつの間にかクセになっていた。
どんなに良い楽器でもメンテナンスされていなければ
良い音を鳴らしてはくれない。
自分の心の弦を張るのは自分の仕事で
今はもう、なにかあったからってフォローしてくれる人はいない。
だから、自分で元気を出すために言葉をかける。
側にいるみんなが声をかけてくれる気がして。
ガチャ・・・・・・
安倍なつみがモーニング娘。を卒業して、半年が過ぎた。
アルバムを出した、ミュージカルをやった、ツアーもやった。
毎日が緊張の中で、新たなことを教わった。
自分の考えや、自分の思いを伝えたいという気持ちが
どんどんと溢れ出してくるのが分かる。
それは日一日と強くなっていく。
今の自分を突き動かしてるものを強く感じている。
また新しい日が始まる。
124 :
L.O.D:04/12/10 01:41:18 ID:rR8vk172
「安倍、新曲のレコーディングスケジュール出たから」
「あ、はい」
マネージャーから手渡された紙には
スケジュールが並んでいる。
また新しい歌を届けれる、そう思うと、笑みがこぼれた。
しかし、フッと気付き、顔を上げる。
「あれ?MDは?」
「まだ届いてないんだよ。今日中に持ってきてもらえると思うけど」
「そっか・・・・・・・」
最近、気掛かりなことがある。
つんく♂のことだ。
昔ならいつだってレコーディングには立ち会った。
時にはブースの中へ入ってきて
歌い方を指導してくれて
一つ一つ、ヴォーカリストとしての在り方を
その場で教わってきたような気がしていた。
だけど、この頃、誰のレコーディングにも立ち会っていないらしい。
125 :
L.O.D:04/12/10 01:51:12 ID:rR8vk172
それは、一人のアーティストとして認めてくれて
立ち会うことなくとも、安倍は安倍の考えで歌えばよい
ということなのかもしれない、と
ポジティブに考えるようにし続けていた。
だけど、心の中で引っかかる何かを払拭することは出来ず
かといって、誰かに聞くわけにもいかずにいた。
スケジュール表をそっとしまい
バッグからiPodのリモコンを引っ張り出す。
いらない考えが浮かぶ時は
何も考えないように歌うだけだ。
どんな時だって歌えればいい。
気持ちを落ち着けるのも、高揚させるのも
自分には音楽がいい薬になるのは分かってる。
車はゆっくりと混雑した街を通り抜けていく。
エンジン音の隙間隙間に、聞こえてくる音。
窓の向こうに見える歩いている人。
手をつなぐカップル
子供とお母さん・・・・・・・
126 :
L.O.D:04/12/10 01:57:29 ID:rR8vk172
窓の外を見ると、まだ窓の外はさんさんと太陽が降り注いでいる。
自分が生まれた季節だからだろうか。
時折、太陽を浴びたくて、散歩する。
ショッピングがてら街を歩く時もあるし
普通に川岸の道を歩いてみる時もある。
逆に、外に出たくなくて、家でゆっくりDVD観てる時もある。
今日は代官山の辺りでもプラプラと歩くには
良さげな天気だと思っていた。
マネージャーが置いていったMDをしまい
局の玄関からタクシーに乗る。
昔なら、ワゴンやミニバスが止まっていて
みんなガヤガヤと乗り込んだものだ。
大きな橋から見える街の風景はいつもと変わらぬ姿で
夜に見るよりかは寂しげには見えなかった。
今はこの大きな街にいるどれだけの人に
自分の姿を見てもらえているかを
純粋に楽しめている気がする。
昔はどこか顔の見えぬ誰か、例えそれがファンを名乗る人でも
怖い、と感じてしまった時代もあった。
心ない言葉や風評に揺さぶられ、自分の中のバランスを保てずにいた。
今は大丈夫、前を見てられる。
127 :
名無し募集中。。。:04/12/11 01:39:26 ID:bNxL/xSj
プゲラ
ラッパ
129 :
名無し募集中。。。:04/12/12 20:30:05 ID:3pXGCLmg
パット
トンマ
マント
トマト
トケイ
インド
新作乙です♪
136 :
L.O.D:04/12/23 10:08:37 ID:lZAsvy4p
正直スマン、年末忙し過ぎて、書くヒマが無くなってしまった・・・・
スレが落ちなければ、いずれ復活します(苦笑
○○○
期待保全しておこうかな
○○○
○○○
保
全
す
る
145 :
ねぇ、名乗って:05/01/27 14:16:43 ID:4eel6ZS1
ぁゃゃ
146 :
ねぇ、名乗って:05/01/27 14:36:48 ID:ZKHKjgPz
インリン!
.
オブ
ジョイポリス
分かるかなぁ、分かんねぇだろうなぁ
その言い方で締める芸人なら知ってる
ho
ayaya
君の為に
,へ-∞ヘ ,へ-∞ヘ ∧,,,∧
ミ*‘ 。‘ ミ ミ*´ Д `ミ ミVvV彡 にゃにゃっにょう
c(,_uuノ c(,_uuノ ミ,,uu,@
ずれてるね
ho
159 :
ねぇ、名乗って:05/03/19 23:06:27 ID:/5LcEBMn
ぁゃゃ
160 :
ねぇ、名乗って:2005/03/21(月) 11:15:14 ID:FWn+QZIQ
保
すごくリアルですね。小説なんてほとんど読まないんですが
完全にはまってしまいました。実話であって欲しいとまで思って......感激....。
PDF保存です!!
"君とぼくは〜"
Wオタなんですが、加護のアンチ的描写に震えがきますョ.....
これマジ?って感じで。でもたぶんこんなもんなんだろうな、加護は.....
p.s.
辻はマジかわいい性格なんだろうな....
乗り換えてばっか.....orz
保
166 :
L.O.D:2005/04/07(木) 14:08:17 ID:1TH/nQ7c
五か月近く経っても落ちないスレに羊作家としては驚くんだけども
steal書き終わったので更新します。
小説とは言えないような内容かもしれませんが、お付き合い下さい。
167 :
L.O.D:2005/04/07(木) 14:11:19 ID:1TH/nQ7c
「なに・・・・・これ?」
ヘッドフォンから流れる曲に思わず耳を疑ってしまい
部屋の中には誰もいないのに目をキョロキョロとさせてしまう。
ポップな前奏とはねるようなメロディ。
それまでソロでやってきたイメージとはまったく違う姿。
あまりセールスが良くなかったことは分かってる。
やっぱりそれに対して、新たな方向性を考えたい、ということなんだろうか、などと
余計なことが頭をグルグルと回り始める。
「テレフォン・・・・・ゴール」
ボソッとつぶやく。
手にしている歌詞が書かれた紙に書かれたタイトル。
仮となっているが、おそらくこのまま行くのだろう。
予想もしてなかったような曲調に驚きを隠せないし
どう歌っていいのかさえ思い付かない。
明るくて、楽しげで、恋愛への期待や甘さがはじけるような・・・・・
頭の中で、そんな言葉を自分で立て並べてみても
とまどいが溢れてくる。
それこそが慢心か。
意味のない歌などない。
自分がこれを歌うことの意味を探す。
見つけなければ、この歌に気持ちを込めて歌えない。
そんなことを考えていると、あっという間に窓の外が明るくなっていた。
168 :
L.O.D:2005/04/07(木) 14:13:34 ID:1TH/nQ7c
「あ・・・・・・」
徹夜してしまった。
今日はテレビの撮影なのに。
クマが出てる。
ひどい顔、疲れてる。
悪いクセだ。
仕事中はうまく切り替えができるが、一人になると考え過ぎてしまう。
ため息を一つつき、立ち上がろうとした瞬間、体がフラッとした。
今の自分の状況によく似てる気がして、笑いが零れる。
自分では精いっぱい走ってきたつもりでも
何かがついてきていない気がした。
隠しているつもりでも、どこかその不安を隠せずにいたのか。
ソロになることに対する重責や周りの期待に応えようとしてる自分がいる。
だけど、それに対して、結果が伴ってないような気がしてならない。
ちゃんと伝えられているだろうか。
アーティストとして、ちゃんと活動できているか。
その自問自答がそのままこの曲への不安につながる。
自分はこの曲でなにを伝えたらいいのだろうか。
手探りで探しても、見つからない。
モーニング娘。として様々な楽曲と向き合い
デモの段階で、うまいこと噛み砕き、自分の表現をレコーディングで出す
という作業に関しては、慣れてきたし、鍛えられたつもりだった。
だけど、この曲は自分の中でそれが機能していなかった。
「ベサメムーチョってなにさぁ・・・・・・・」
169 :
L.O.D:2005/04/07(木) 14:15:56 ID:1TH/nQ7c
途方に暮れた声が誰もいない部屋に響く。
レコーディングはもう数日後に予定されている。
曲を覚えることには問題のある日程ではないが
このままの状態では、レコーディングそのものに影響があった。
ヘッドフォンをはずし、鞄をたぐり寄せ、携帯電話を手にする。
一瞬ためらうも、メールを打つ。
誰でもない、つんく♂へのメールだ。
「・・・・・・よしっ」
小さな画面がメールの送信を終えたことを告げる。
返してくれるだろう、という一抹の期待だけだった。
目を閉じる。
眠気と共に、混雑した意識の中に落ちていく。
常々、口にする。
歌でなにかを伝えたい、と。
その気持ちに揺るぎはない。
だからこそ、歌ってきたし、どんな時も立ち上がった。
ソロになったことで、より自由に、より繊細に
安倍なつみという存在を、安倍なつみが言いたいことを
みんなに伝えていきたいと考えていた。
だが、今回の新曲でなにを伝えればいいのか分からない。
つんく♂と自分が作ってきた信頼関係に変わりはない。
ただ、少しずつ、少しずつ、自分のやりたいことが膨らむことで
直接的な意見の交換もないまま、ズレてきてしまってるのかと思ってしまう。
その一方で、そんなことを考える自分がおこがましくも思え
惨めな気分になってきてしまう。
170 :
L.O.D:2005/04/07(木) 14:18:11 ID:1TH/nQ7c
「はぁ・・・・・・・・」
無意味な思考を断ち切ろうと机の上のノートを広げる。
そこにはもう数百という歌詞の断片が書かれている。
自分の好きな歌詞、歌詞とも呼べない言葉
まさしく安倍なつみが言いたいこと、伝えたいことを詰め込んだノート。
最初は日記のつもりだった。
実際、数ページは日記を書いている。
だけど、どうもそれでは長続きしなくて、気付いた時になにかを書き込むことにした。
普段使ってる手帳とは別に、まとめておくためのもの。
勉強でもこんなことをしたことないのに
これだけは苦がなく出来た。
いつか、自分の書いた歌詞で歌えたらと思う。
本当は曲だって作ってみたい。
だけど、それはまだ自分には早い気がしている。
「ラ・・・・・ララ・・・ララッ・・・・・・」
鳥の鳴き声が聞こえる。
窓から差し込む朝の明かり。
まぶしく感じる。
寝てる時間はない。
シャワーを浴びて、目を覚まそう。
また新しい日がやってきた。
171 :
L.O.D:2005/04/07(木) 14:23:50 ID:1TH/nQ7c
収録が終わって、楽屋に戻ってくると、真っ先に携帯を見た。
着信を知らせるランプ。
あわてて開くと、つんく♂からメールが来ていた。
「収録ご苦労さん、あの曲は安倍の元気な部分を出して
フレッシュな感じでやってほしいと思う・・・・・か」
一つのイメージに捕われるのではなく
自分の中にある様々な面を求める
娘。でもやってきたことだ。
出来ないことじゃない。
ネガティブに考えるのはやめよう。
これは、安倍なつみだから出来る曲。
明るく、元気に、はじける感じ
みんなが元気になって、踊りたくなるような気持ちになるように歌おう
心の中でつぶやく・・・・・・・
「頑張らなきゃ・・・・・」
数週間後、レコーディング、ダンスレッスン、テレビ出演をバタバタと終え
すぐに始まったツアーのリハーサル。
「ピロリン!ピロリンッ!」
「けーちゃぁーん、やめてよぉ・・・・・・」
「圭ちゃん、あんた、笑われてるで」
「なーんで、笑うんですかぁ〜」
172 :
L.O.D:2005/04/07(木) 14:25:51 ID:1TH/nQ7c
調子に乗った保田が安倍の代わりに新曲の振り付けを踊ってみせたのだが
あまりのはしゃぎっぷりにスタッフも笑ってしまってる。
なぜ笑われてるのか分からない保田は頬を膨らませてるが
その顔が安倍と中澤のツボに入ってしまった
「やめて!だめっ、近付かないでっ!」
「なになにっ!?私、なんか悪いことした?」
「ひぃーっ!はぁはぁ・・・・あかん・・・・あぁもう!」
「けーちゃん、ほんとごめんっ!」
「感じ悪いなぁ、もう。」
懐かしい雰囲気
みんなと笑うコト
しばらくソロでいて、この空気を忘れてた。
ハロプロコンやハロモニで会えるけど
コンサートのリハーサル最中の張りつめた空気とその間の緩んだ空気
この一瞬一瞬は他の仕事とは違う。
「中澤、リハ」
「はーい、よろしくお願いします」
鏡の前に立ち、自分の曲を歌う姿を後ろから見る。
それぞれが娘。を卒業して、ソロになって
こうして、一人一人の歌を歌ってる。
不思議な感覚。
ボーッとそんなことを考えてると、保田が膝の上の手を重ねてきた。
173 :
L.O.D:2005/04/07(木) 14:29:14 ID:1TH/nQ7c
「どしたの?」
「んー、ソロなんだなぁ、って」
「そうだね」
「圭ちゃんは卒業して良かった?」
「うーん、まぁまぁ?」
「そか」
「ソロツアーやれる人がなに言ってんのよ」
「私は私なのかな」
「?」
保田は安倍の顔を見る。
少し寂しげな表情。
その言葉の裏にある気持ちを探ってしまう。
「一生懸命伝えなきゃって思ってるよ
だけどね、ちゃんと伝わってるか不安になる」
「大丈夫、今までだって伝えてきたでしょ」
「だけど、それって私が伝えたかったことなのかな」
「なーに言ってるの、なっちが出来てないんだったら
私とかどうするの?いつだって一生懸命だよ?」
「あんね、けーちゃんはがんばり過ぎ」
「・・・・・そう?」
「ふふっ・・・・・・」
ごまかすような笑い。
スタッフから保田に声がかかる。
離れ際、手を握りしめる。
「あんたがしっかりしてなきゃ、私達、支えれないでしょ」
174 :
L.O.D:2005/04/07(木) 14:33:05 ID:1TH/nQ7c
その言葉にうなづく。
中澤と保田、どんな時も二人が支えてくれてた。
自分は決して強い人間じゃない。
分かってる、あまりにも弱い人間だ。
それでも、モーニング娘。のメインとしていれたのは
メンバーがそこにいてくれたからだ。
保田と入れ違いに戻ってきた中澤は、安倍の顔を見るなり、頭を引っ叩く。
「甘えたってしゃーないやろ」
「裕ちゃん・・・・」
「なっちは分かりやすいなぁ」
「それは付き合いが長っ・・・・」
「いーや、お姫さまのことはうちはなんでも分かるよ。」
「・・・・・・・・」
「自信がないの顔に出てる、歌うしかないんやから、なに迷ってんの」
心に刺さるような言葉。
とまどいを切り裂くような鋭さ。
今、自分に出来ることは、しなければならないことは
彼女が言うように歌うことだけなのかもしれない。
「ありがと」
うまく歌うよりも、大事に歌う大切さを感じる。
当たり前のことに時々とまどう。
だけど、それさえも含めて、受け止めてくれる人がいる。
フゥッと一息ついて、気持ちを落ち着けた。
175 :
L.O.D:2005/04/07(木) 14:36:15 ID:1TH/nQ7c
家に帰ると、疲れた体が鉛のように重く感じる。
ベッドに倒れ込みながら、このまま寝ちゃダメだと頭の中で思っていても
体は動かすのが億劫になってしまう。
この仕事をして、楽しかったり、嬉しいと思うことはいっぱいある。
その分、裏では努力や気合いを必要とされることもある。
完成形を思い描きながら、一つ一つ積み上げていくリハーサルの作業は
とにかく集中力を必要とし、すごく疲れてしまう。
だけど、計算されたその舞台こそ自分や観客を楽しませてくれるものだ。
「そだ・・・ラジオの準備しなきゃ」
明日は別の仕事が入ってる。
ラジオという仕事も長いことやらせてもらっている。
娘。という形を離れ、初めてソロで仕事をしたのはラジオだった。
そう考えると、かなり早い段階から経験はしていたのかもしれない。
声と言葉で伝わっていくメディア。
歌に近いな、と思ったのはいつのことだろう。
最初は慣れず、なにをどうしゃべっていいかも分からず
怒られながら、学んでいった気がする。
重たい体を起こすと、シャワールームへ向かう。
今日一日の思いや、疲れを流してしまうために。
176 :
L.O.D:2005/04/07(木) 14:40:00 ID:1TH/nQ7c
眠る前にノートを開いた。
何かを書きたいと思ったのだが、言葉が出てこない。
ここ2、3日、自分の気持ちを整理できずにいたから
書くことですっきりさせようと思ったが、うまくいかない。
なんとなく数ページ前をめくってみる。
「やっぱり、ここ違うかも」
書いていた一部を消して、思い付いた言葉を書き加える。
自分なりの表現方法というのが欲しくて
自分が感動した言葉や歌詞を自分の言葉に置き換えるという作業を
前々からやっていて、かなりの数になっていた。
比べてみると、言葉ひとつひとつの意味が分かってくるし
自分が使ってる言葉がどう伝わるのかが見えてきた。
娘。の楽曲もほとんどやったし、シャ乱Qも
自分が好きなジュディマリも気になるものはみんな試した。
いつか、自分の歌詞で伝えていけるための勉強だった。
卒業を控え、大人メンバーでご飯を食べに行った時に
飯田に絵を描くってどんな気持ちか聞いてみたことがある。
彼女は「なんとなく思ってることを描いてるだけだよ」、と答えた。
その時、自分が詩を描くように、絵を描いてるんだ、と納得したことがある。
恥ずかしくて口にしなかったが、飯田の絵を見てると気持ちが伝わってくる。
お互いに意地っ張りで、負けず嫌いな性格だから素直にはなれず
話せぬ胸の内が絵の中から伝わってきている気がした。
自分の書く歌詞もそんな力を持ちたいと願ったのを覚えている。
177 :
L.O.D:2005/04/07(木) 14:42:54 ID:1TH/nQ7c
「月のない夜 道のない場所
さかさまに空を眺めた
カーテンが揺れてる・・・・・・・・」
鼻歌まじりにフレーズを考える。
この歌詞に曲をつけたら、どうなるだろうか。
思い付くままに刻むメロディ。
この曲は誰かに伝わるんだろうか。
楽器を使って、作曲できるわけじゃない。
楽譜は読めるが、書けるわけじゃない。
曲を作る人はどうやって曲を作っているんだろうか。
飯田が絵を描いて、それを仕事として見せていけたように
自分にもこの歌詞や、なにげなく浮かぶ音を形にして
見せることが出来る日が来るんだろうか。
心のどこかでそれを願っている。
178 :
L.O.D:2005/04/07(木) 14:44:22 ID:1TH/nQ7c
華やかな照明、衣装、大きなステージ、そして、目の前の客席を埋め尽くすファン。
その舞台の上に立つだけで、笑みが溢れてきそうになる。
ツアーが始まると、日々はあっという間に通り過ぎる。
中澤や保田が一緒にいてくれるのは心強い。
ある日の娘。に戻ったような、そんな気持ち。
そんな日々の終盤に差し掛かろうとしていた中
後藤、松浦とユニットを組んでの新曲のリリースが迫っていた。
「フゥッ・・・・・・」
「ね、なっち」
動きが止まったところで、後藤が振り返り声をかけてくる。
「ここさ、ピタッと止まった方が良くない?」
「ごめん、私が流れてたかもっ」
松浦が両手を合わせて、ごめんっというポーズ。
「そだね、ここ注意していこうか」
ハロプロの中でもアーティストとしてお互いに認めあえる存在。
それぞれがそれぞれの道を歩み、それぞれの表現を突き詰めている。
指の一つ一つにまで神経を集中させる感覚は
ただダンスを踊っているだけでは分からない
その一つ上のステップを登ったところで少しずつ分かり初めてきた。
松浦の人を引き付けてならない存在感
後藤の孤高とも言うべき努力と研究には率直に敬意を示す。
この二人の間に入った時に、モーニング娘。の安倍なつみではなく
一人のアーティストとして負けたくないという気持ちが
心のどこかで燃えてきたのを感じた。
179 :
L.O.D:2005/04/07(木) 14:45:55 ID:1TH/nQ7c
ダンスレッスンが終わったのは、午後10時。
他の仕事で松浦はいち早く帰ったため
後藤と安倍が同時にスタジオから出てきた。
「どっかご飯食べに行かない?」
「なに、ごっちんのおごり?」
「え、マジで?」
「なっち、中華がいいなぁ」
「ほんとにうちのおごり?」
「あ、タクシー来た」
「ねぇ、おごらなきゃダメ?」
「嘘に決まってるしょや〜」
二人で笑いながら、タクシーに乗る。
本当はよく笑う子だ。
仕事に情熱を傾ける一方で、力を抜くところも知っている。
安倍は自分が確認してないとペースを保てない人間だと分かってるから
腰の据わった後藤の態度や姿勢を頼もしく感じることもある。
「そういえば、こないだコンサート見に来てくれてありがと」
「あぁ、なっちらしいなと思った」
「どんな風に?」
「お客さんとの距離が近いっていうのかな。
みんな、なっちを見にきてるんだなぁ、って思ったよ」
「なっちのコンサートだからねっ」
「私は、まだ手探りだな」
「なんで?かっこいいっしょや」
「うーん・・・まだちゃんと出来てないかも」
「なっちは、ごっちんのコンサート憧れるよ。ロック!っていう感じ」
「そっか。なんかさぁ、もっとお客さんを盛り上げれるんじゃないかな、って
歌とかダンスも含めて、会場の一体感とか出せないかなって思うんだ」
180 :
L.O.D:2005/04/07(木) 14:49:15 ID:1TH/nQ7c
後藤の横顔、年の割には大人びて見える。
クール。
彼女を形容する時には常に出てくる言葉。
さっき見せた笑顔とはまるで別人。
娘。で一緒の時にも感じることがあった。
少女と大人の両面を持ち合わせた魅力は初めて会ったあの瞬間から変わらない。
「あぁ、それかも、なっちがロックって思ったの。
会場の煽り方とかさ、すっごい研究してるなと思ったから」
「松浦とは違うことしたいからさ」
「ライバル意識?」
「なっちだってライバルだかんね」
ニィッと笑ってみせる。
また表情が変わってみえる。
彼女という存在そのものが変化する。
万華鏡を覗くようなワクワクとした気持ちに似てるかもしれない。
いつだって、二人はライバルだった。
出会ったその瞬間から比較されてきた。
しかし、お互いに分かっている。
お互いに持っていない何かを持っていて
それを磨き続けることで、互いが成長してきた。
「ごっちんはさ、ソロ楽しそうだね」
「なっちは?」
「迷ってる」
「なんで?」
「私がやりたいことを出来てるか不安になるんだよね、最近」
「あぁー・・・・・」
181 :
L.O.D:2005/04/07(木) 14:53:04 ID:1TH/nQ7c
中空を見たまま、ボーッとしてる。
彼女は言葉を選ぶ。
言うべきではないと思った事は言わない。
藤本は逆に思ったことは言わないと気が済まない人間だ。
相手にとって何が有益かしっかりと考えて、出された言葉。
「私もあったかな、最初は。だけど、時間がもったいないな、って思って
自分のやりたいことで出来ることは全部やろうと思った。
だってさ、ソロなんだから、自分の責任なわけだし
他の誰かの意見や都合だけで動くべきじゃないよ。
スタッフさんにはスタッフさんの考えがあって
つんく♂さんにはつんく♂さんの考えがあるし
みんなプロだから、みんなの立場で考えてくれてるけど
だけど、私には私の考えがあるから、ちゃんと言うことにした」
「そっかぁ・・・・・・」
「もう、娘。とは違うから」
「もー、ごっちんはかっこいいなぁ」
「そんなことないよ」
照れて、口元に笑みを浮かべる。
きちっとステージの上に立って、観客を煽り、会場を縦横無尽に盛り上げる。
そんな姿が横に座る彼女に重なる。
自分の考えを言うことで、後藤は後藤の場所を作ってる。
182 :
L.O.D:2005/04/07(木) 14:59:42 ID:1TH/nQ7c
「なっちはさ、やっぱ今まで引っ張らなきゃいけなかったじゃん」
「うん?」
「自分の意見を言うよりも、周りの意見や考えを形にするっていうかさ
モーニング娘。っていうものがあったとしたら
それはイコールなっちだったと思うんだよね。
なっちはなっちなりに解釈したりして、歌ってきたと思うけど
でも、ソロってさ、なっちイコールなっちだからさ
誰かに色をつけられるんじゃなくて
自分が自分の色を考えてもいいんじゃない?」
「色、かぁ・・・・・・・」
183 :
L.O.D:2005/04/07(木) 15:02:01 ID:1TH/nQ7c
後藤とご飯を食べて帰ってきたら、時計は1時を示していた。
くだらない会話から最近聞いたCD、見たDVDまで色んな話をした。
あと2か月もすれば、年末特番のリハーサルや正月のコンサートのリハーサルが始まる。
その前に、後藤と意見交換を出来たのは、自分の中で考えを整理できた。
柔らかく、そして、力強い言葉が自分を励ましてくれた。
ノートを開いて、一言『ありがとう』とつづってみた。
文字にすることで、言葉の響きが染みてくる。
なんとなく、ペンが進むままに書き綴っているうちに1時間以上が過ぎていた。
「寝なきゃ・・・・・」
パタンと閉じて、その上へペンを置いた。
安倍なつみが安倍なつみを一番素直に表現する場所がそこにある・・・・・・
184 :
L.O.D:2005/04/07(木) 15:03:46 ID:1TH/nQ7c
「お疲れ様でしたー」
「おつかれさんー」
ラジオの収録を終えて、事務所が用意した車に乗り込む。
11月も後半に入り、毎日、仕事のない時間には
コンサートのリハが入っている。
時には深夜を回ることも少なくなく、まだ学生の子達はつらそうにしている。
だけど、自分も、他のみんなもこれを乗り越え
1年づつ、積み上げて大きくなってきたことを最近、実感する。
ハロプロというものそのものが大きくなっていくのも感じるし
メンバー一人一人が成長していると感じるのだ。
娘。のリハーサルで4期や5期を見てると、なおさらだ。
自分達がやってきたところへポーンと入れられ
右も左も分からないまま、色んなことを経験していく中で
アーティストとしてどうあるべきかを考えはじめたのを感じることが出来た。
車は都内のダンススタジオの前に止まる。
「おはようございまーす」
「なちみっ!」
スタジオに足を踏み入れた瞬間、飛びついてきたのは辻。
押し倒さんばかりの勢いに驚きつつ、頭を撫でてあげると満面の笑みを浮かべる。
「やーっ、あいぼん、ちゅー」
「ちゅー」
スキンシップ代わりのキスの真似。
実の妹よりも年の離れたかわいい妹達。
スタジオには他のグループもいて、朝からリハーサルが重ねられてたようだ。
185 :
L.O.D:2005/04/07(木) 15:05:14 ID:1TH/nQ7c
「なっち、なっち」
「なーにさぁ?」
「あんね、お弁当がマジうまいの!」
「のの、2個とか食べてないだろーね?」
「迷ってたもんなー?」
「そ、そんなことないもん!我慢したもん!フルーツにしといたしっ。」
「キャハハハハ、えらい、えらい」
二人がいるだけで、現場は明るくなる。
二人にはきっと人を楽しくさせる才能がある。
そんな二人が成長する姿を側で見ていた。
娘。の時も、Wとして活動し始めた後も
立ち止まることなく、全てのベクトルはプラスに向いている。
ありとあらゆることが彼女達の糧になっていた。
「なちみ?」
「ん?」
「まーた、なんか考えてたー」
「なんもだよー」
「そう?」
覗き込んでくる辻。
勘がするどい子。
隠してるつもりでも、気付かれる。
そっと重ねられた手の温もり。
言葉ではなく、その目が訴えかける。
186 :
L.O.D:2005/04/07(木) 15:06:35 ID:1TH/nQ7c
「大丈夫だよ」
「んっ・・・・・そか」
ぴょんっと膝から降りると隣の椅子に腰掛ける。
バタバタと慌ただしげに走るスタッフ
監督さんたちはなにやら話し込んでいる。
モーニング娘。として初めての舞台に立って
少しずつ大きくなってきたファミリー。
もう自分も隣にいる辻も娘。にはいないけど
モーニング娘。はいまだにこのファミリーの真ん中にいる。
それが心強くもあり、また、頑張ろうという気持ちにさせてくれる。
「そだっ!あんね、のの、こないだグラタン作ったの!」
「えー、ホワイトソースも?」
「そう、それがさぁ、すっごいマズくてさー」
「あー・・・焦したんでしょ」
「いっつも火加減で失敗しちゃうんだよね」
「馴れだよ、馴れ」
「好きなのになぁ、料理」
困ったような笑顔を浮かべてる辻
安倍もつられて笑みを浮かべる。
フッと思いついた言葉が口から滑り出す。
187 :
L.O.D:2005/04/07(木) 15:07:16 ID:1TH/nQ7c
「歌も上手になったんだから」
「?」
「ねっ、歌もダンスも好きでしょ?」
「うん」
「ちゃんと頑張って覚えたから、上手になったしょやー」
「そっか」
「料理も頑張れば上手になるよ」
「なるほどねー、なっち、頭いいね」
「うん、ののよりかは」
「自分で言うなよー」
二人で爆笑。
なんとなく口にした言葉だけど、自分の中で唱え直す。
好きだから頑張れる。
時々、自分がどこに立っているか不安になる。
だけど、大好きだから立っていられる。
たぶん、そんな感じなんだと強く思った。
辻が安倍の手を強く握った・・・・
188 :
L.O.D:2005/04/07(木) 15:08:17 ID:1TH/nQ7c
「・・・・・・・・?」
カーテンの隙間から溢れる光に目をつぶる。
眠りを覚ましたのは、それではなく
カバンの中に放り込んだままの携帯電話だった。
ベッドから体を起こし、電話を手にすると
マネージャーからの電話だった。
「・・・・・・はい?」
「今すぐ事務所に来てくれないか」
「え?」
「今すぐだ」
「は・・・・はいっ・・・・・」
切羽詰まった声。
リハーサルが9時から予定されている。
時計を見た、午前6時。
なにかやらかした?
いや、怒られるなら、リハーサル前だっていいはずだし
終わってからだっていいはずだ。
今日は仕事がない。
3時間前に電話をかけてきた意味は?
わけもわからずにリハーサル道具を詰め込むと
化粧もせずに帽子をかぶって、飛び出した。
大きな通りにいけばタクシーが捕まる。
飛び乗り、事務所の位置を伝えると、窓の外を見た。
街を人が行き交うのが見えた。
189 :
L.O.D:2005/04/07(木) 15:11:31 ID:1TH/nQ7c
「あれ?なっちいなくない?」
午前9時半、リハーサルスタジオ。
ジャージ姿のモーニング娘。
リハーサルを始める前のストレッチをしながら、矢口がつぶやく。
「また遅刻〜?」
飯田がいたずらっぽい声で野次ると
石川が調子に乗る。
「いやー、びっくりしたぁ。道ででっかい熊にあったべさー」
「梨華ちゃん全然似てないから」
「つか、寒い」
自信満々にやった安倍のモノマネを藤本、吉澤にこてんぱんにけなされ
しょげたような顔を見せている。
「でも、30分でしょ?ありえなくない?」
「確かにね」
「安倍なら今日は来ないぞ」
ちょうどそこへ入ってきたマネージャーがそう告げると、皆が目を丸くした。
「なんで?」
「具合が悪いそうだ」
「そっかぁ」
「じゃぁ、今日のリハは順番変わったり?」
「だろうねー」
「・・・・・・・・・」
190 :
L.O.D:2005/04/07(木) 15:13:43 ID:1TH/nQ7c
矢口は手を止め、周りのスタッフを見る。
いつもと変わらないような動きに見える。
いや、違う。
何か違う緊迫感が漂ってる気がした。
飯田が騒然としている他のメンバーを叱ってる。
携帯電話が鳴ってるのに気付き、廊下に出ていくマネージャー
チラッとこちらを伺ったような気がする。
明らかに自分達の様子をチェックしていた。
「やな感じ・・・・・・」
ぼそりとつぶやいて、ストレッチを再開した。
「あぁ・・・どうだ、そっちは?そうか・・・・・」
チーフマネージャーが電話しているのは、リハーサルの方にいるスタッフなのだろう。
だけど、なにを話してるのか、その意味すら今は聞こえない。
ぎゅっと身を固くし、下を見ていることしか出来ない。
事務所の一室。
机の上には今まで安倍が出したエッセイなどが上がっている。
「安倍、もう手の打ちようがない。」
「・・・・はい」
「今更、どうのこうの言うつもりもない」
191 :
L.O.D:2005/04/07(木) 15:14:38 ID:1TH/nQ7c
体が震えてる。
テーブルの上に置かれた本が目に入る。
自分がしてしまったことの意味がのしかかる。
急いで事務所に来ると、チーフマネージャーだけでなく幹部の人も何人かいて
緊迫した空気に何が起こってるのかも分からぬまま座らされた。
沈黙を破った後の言葉、数日前のラジオで読んだ詩が
盗作と言われてることを聞かされても、実感はなく
ひどくきょとんとしていたと思う。
そして、それをマスコミが記事にしようとしてることも知らされた。
頭の中がパニックになり、言葉も紡げずにいたが
自分の書いたエッセイの中の詩を事細かに説明され
自分がやっていたことが盗作なんだと気付いた瞬間
全身の体温が奪われた気がした。
192 :
L.O.D:2005/04/07(木) 15:15:23 ID:1TH/nQ7c
立ち上がろうとして、フラっとした瞬間
自分の体が言うことを聞かず、バランスを崩して、壁に激突した。
慌てて、スタッフが抱え起こしてくれたが
ありがとうも言えなかった。
震える唇に気付いた女性マネージャーの目を見た途端
張りつめてた気持ちが解けてしまってその場で泣き出した。
自分のしたことに対して、してしまった自分に対して
情けなくて仕方なくて声をあげて泣くことしか出来ずにいた。
そんな状態が3時間以上続いただろうか
流れる涙さえも途切れてしまったように呼吸を取り戻した。
「・・・・・・はぁ・・・・・・」
「これから、それぞれの方のところに行くけど大丈夫?」
「はい・・・・・大丈夫、行かなきゃ」
「安倍の今の気持ちは分かるけど」
「・・・・はい」
頭が痛かった。
泣いたからだろうか。
胸が痛い。
精神的なものだろう。
弱い自分が嫌だ。
消えてしまいたいと願った。
193 :
L.O.D:2005/04/07(木) 15:19:37 ID:1TH/nQ7c
みんながお弁当を食べ始めたのを見計らって
矢口はリハーサル室を出て、携帯を開いた。
通話ボタンを押すと、聞こえてきたのは不通の時のコール。
「電源切ってるのかなぁ」
病院に行ってるのか、それとも寝ているのか
もう1度鳴らしてみたがつながらなかった。
「矢口さん?」
リハーサル室から石川が顔を出している。
姿がなかったから探してたのだろうか。
矢口はニコッと笑ってみせた。
「なに?」
「・・・・・・・」
「?」
「誰に電話してたんですか?」
「え?」
194 :
L.O.D:2005/04/07(木) 15:20:17 ID:1TH/nQ7c
石川がすごく女らしいなと思う時がある。
写真集で見せるような美しさ
そして、女ならではの勘。
普段は話の空気一つも読めない人なのに
なぜだかこんな時だけは勘がいい。
「やだぁ、彼氏ですかぁ?」
言いよどんだ自分を気遣ったつもりなのだろうか
石川はニヤッと笑って、ドアを閉める。
なぜ、安倍に電話をしたと素直に言えなかったのだろう。
その瞬間、リハーサルが始まる前のマネージャーの顔が浮かんだ。
矢口の足がリハーサル室を横切る。
中を覗いた瞬間、石川と目が合った。
スタジオの中を歩き回る。
マネージャーの姿がない。
スタッフに声をかけても見ていないと言う。
電話をかけても出ない、ずっと通話中になっている。
立ち止まったドアの向こう
話し声が聞こえた。
マネージャーの声
電話をしている。
ドアノブに触れた。
ゆっくりと回す。
「安倍の件に関しては、まだメンバーには・・・・・」
195 :
L.O.D:2005/04/07(木) 15:23:04 ID:1TH/nQ7c
ガチャッ・・・・・・
見開いたマネージャーの目
しっかりと矢口を見ていた。
安倍の件。
メンバーには知られてはいけないコト?
それとも、これから言うつもりだったのか。
電話口の向こうから声が聞こえる。
チーフマネージャーの声だ。
彼等は何を話していたのか。
『どうした?』
「・・・・・矢口です」
マネージャーが電話を切った。
矢口はゆっくりと後手でドアを閉めると鍵をかけた。
「隠し事ですか、それともスタッフ間の話ですか」
「・・・・・・・」
「安倍の件ってなんですか」
「・・・・私達の話だから」
「メンバーになにか影響のある話なら、話してください。
今後のスケジュールの事を考えたら時間がないですよ」
「・・・・・・・」
196 :
L.O.D:2005/04/07(木) 15:25:01 ID:1TH/nQ7c
今、自分がどんな目をしてるか分かる。
手が震えてる。
怖いかもしれない。
いや、自分の胸にうずまく気持ちがどういうものか説明できない。
裏切られた?
違う、彼等は私達を守ろうとした。
だけど、分かる。
安倍は具合が悪いからいないんじゃない。
なにかが起こっていた。
「・・・・・・・ック」
座席の反対側でチーフマネージャーが憎々しげな声を上げる。
ビクッと体を振るわせて、また涙がこぼれそうになった。
いやなイメージが頭を覆う。
カバンの中にペンが入ってる。
その金属の先を左手の手首に突き刺してしまえば
自分の存在はおそらくこの世から消えるだろう。
スタッフのみんなを困らせる自分はいなくなる。
今、この車に誰かが運転する車が追突してしまったらどうなるだろう。
この体が粉々になってしまうだろうか。
ギュッと手首をつかむ。
頭の中をよぎる、イメージから逃れる。
逃げようとしている自分がいる。
自分のしたことはどうすれば償えるのだろうか。
謝っても許されるものではない。
この業界から消えたって行く場所などない。
うつむきながら、唇を噛み締める。
197 :
L.O.D:2005/04/07(木) 15:26:46 ID:1TH/nQ7c
「安倍」
「・・・・・・はい」
「一応、メンバーには具合が悪いと話してるが今後もずっとそれで通すわけにはいかない。
記事が出たら、どうせ知れることだ。、下のメンバーの動揺を軽減したい。
上のメンバーには今日の段階で教えることにするからな」
「・・・分かりました」
まだみんな知らない。
自分がなにをしてしまったかを
中澤や保田、飯田、矢口はどう思うだろう。
そう思うと、怖くなってきた。
チーフがマネージャー達に連絡を取り始めた。
付き添いできてくれた女性マネージャーが手を握ってくれた。
安倍の不安を感じてくれたのだろうか。
小さな気持ちでも、今の自分は強く揺さぶられる。
198 :
ねぇ、名乗って:2005/04/07(木) 15:35:59 ID:1TH/nQ7c
矢口に呼ばれ、全てのことを聞き終わった飯田は押し黙っていた。
近頃はあまり見せない不粋な表情だった。
このことで今後、どうなるかは予測できる。
近いうちに事務所は決断を下すだろうが
最悪の結果になれば、皆で作ろうとしているものが崩れるだろう。
そして、それが自分の娘。としての最後のコンサートなだけに
飯田には特別な思いがあるはずだ。
「圭織・・・・・・」
矢口はそんな飯田の気持ちを思い、声をかけようとするが
それ以上の言葉が見つからず、口をつぐんだ。
一人うなづき、何かを決心したかのように立ち上がった飯田が言う。
「分かりました、うちらはうちらのやれることをするだけです。」
「・・・・そうか」
「行くよ、矢口」
「えっ・・・・あっ・・・・」
思わぬリアクションに矢口はとまどう。
何かを割り切ったような言葉。
しかし、飯田に求められていたのはまさしくそれだったかもしれない。
動揺して、慌てていただけの自分に気付く。
飯田の歩きがいつもより早く感じる。
小走りでそれについていくと、飯田の方からしゃべり出した。
199 :
L.O.D:2005/04/07(木) 15:37:22 ID:1TH/nQ7c
「これでいいんだよね」
「・・・・うん」
「ほんっと、なっちだったら手間かかるね」
「・・・ほんとだよね」
「あたしの卒コン出れなかったら、なんて言ってやろうかな」
「ははっ・・・・・・」
「なーにしてんだか」
「ね。」
「分かった?なんもなかったようにね」
「うん」
「気合い入れていこ」
「おぅっ」
リハーサル室のドアを開けた瞬間、皆の視線が二人に集まる。
「さぁ、練習始めるよっ!」
中澤は指で携帯を弄んでた。
話は聞いた。
だけど、電話をかけれずにいた。
最近、一人で仕事をしていて思う。
これからハロプロとしてどうあるべきか
その上で、自分はどういう位置にいるべきか。
ヘタをすれば、自分の子供のような年の子まで入ってきている。
そんな中で、どうすればいいのか。
思えば、娘。のリーダーになったのも
別になったわけではなく、ただの年長者だっただけだ。
一人のアーティストとして見た時、自分はどうだろうか。
反対に、他のみんなはどうなんだろうか。
「・・・・・・困らすなっちゅーねん」
200 :
L.O.D:2005/04/07(木) 15:39:16 ID:1TH/nQ7c
嫌いになったわけじゃない。
面倒臭いわけじゃない。
電話をすべきかどうか悩んでいる。
これは安倍が乗り越えなきゃいけない壁だ。
誰かが手を貸してあげるべきではないかもしれないし
その手は自分が差し伸べるべきではないかもしれない。
一人のアーティストとして、安倍なつみがしっかり立つために
必要な壁なのだとしたら、もうあの頃のように手を握るべきではない。
「・・・・・大丈夫だよな」
まるで自分に問うようにつぶやいた。
あの子は弱い子だ。
自分を強いと見せたがる。
長いこと一緒にいるから、そんなところはいくらでも見てきた。
だけど、手を差し伸べれずにいる自分がいた。
『一人のプロとして』なんていう言い訳をしながら
見て見ぬふりをしてきた自分はなんて残酷なのだろうか。
彼女があと半歩踏み出せば、全てを失う瞬間も
手を差し伸べたのはいつも自分ではなかった。
自分の判断が正しいのか胸に刺さる。
「中澤さん、リハ入ります」
「あっ・・・・よろしくお願いします」
携帯の電源は入れたまま、そっとテーブルの上へ置いた・・・・・
201 :
L.O.D:2005/04/07(木) 15:41:03 ID:1TH/nQ7c
「のん?」
「・・・・・・・・」
「ののっ!」
「え、あ、うわ」
目の前に迫ってた加護の顔に驚いて、辻は椅子から転げ落ちそうになる。
「なに、考えてんだぁ?」
「な・い・しょ」
「えー、うわぁ、気持ち悪ぃ〜」
身震いしてみせる加護に苦笑してみせたが、フッと真顔に戻ってしまう。
なんか朝から嫌な予感がしている。
胸の辺りが気持ち悪かった。
安倍のことを思い浮かべていた。
大丈夫とは言ってたけど、なにか考えてたような気がする。
ただの気のせいかもしれない。
「メールしよかな・・・・・」
バックから携帯を取り出すが、書き出そうとすると言葉が出ない。
安倍は今、なにをしてるのだろうか。
コンサートのリハーサル中だろうか。
年下の自分が心配してる状況が少し笑えてしまった。
なぜだろう、たまにしっかりと手をつないでないと
彼女がどこかへ行ってしまいそうな気分になる。
もう手をつなげないどこかへ。
202 :
L.O.D:2005/04/07(木) 15:49:03 ID:1TH/nQ7c
午後11時、誰もいない部屋。
ギィッという音を立てて開く扉。
泣き過ぎて、残る頭痛を抱えたまま、ソファに体を沈める。
灯りもつけずに、ゆっくりと目が暗闇に慣れてきて、部屋の輪郭が見え始める。
だけど、それを拒否するように目をつぶった。
「・・・・・・・・ハァ」
深く息を吐く。
意識しないと、ちゃんと呼吸が出来ない。
自分という存在がフワフワと浮ついてる。
立っていた足場がもろくも崩れてしまったのか
それとも、自分が消えてしまったのか
両手いっぱいに貯めてた水が零れ落ちるかのように全てを失った感覚。
今、自分が何者なのかさえ分からない。
そこにあるのは、漠然とした、しかし、とても強い不安だけだった。
「・・・・・・・・・」
203 :
L.O.D:2005/04/07(木) 15:49:48 ID:1TH/nQ7c
目をつぶったまま、消えてしまえば楽だと思う。
このままスゥッと体が消えてしまえば・・・・・
自分という存在がなかったことになってしまえば、どれだけ楽だろうか。
体に力が入らない。
朝から何も食べていない
なのに、吐き気を催してはトイレに籠り、何も出ないのにえづいた。
かっこ悪い。
誰にも見られたくない。
携帯電話は切ったままだった。
これから自分はどんな目で見られるのだろうか。
誰かがあざ笑う。
脳裏に浮かぶのは、あの日のことだ。
教科書を地面にぶちまけられたあの日。
布団にくるまり、震えていた。
あの日と同じ不安が今、自分を壊してる。
だけど、あの日のように救われることはない。
音楽で自らを滅ぼしたのだから。
204 :
L.O.D:2005/04/07(木) 15:54:13 ID:1TH/nQ7c
「・・・・フゥ」
壁を向いて、息をつくと、隣に座ってた中澤が視界に入る。
一瞬合った視線。
分かっている、自然体でいればいい。
無理に話すこともない。
話さなければいけない時が来るかもしれない。
その時だった・・・・・
ガチャ
チーフマネージャーが扉を開けた。
厳しい顔を崩さず、みんなの中心に立つ。
「今日付けで安倍は二か月の謹慎処分となる。
今日の収録にも参加出来ないし、飯田の卒業コンサートにも出さない・・・」
「そんなっ・・・・・」
その言葉に反応したのは保田だった。
皆の視線が集まっている。
一瞬のためらいの後、口を開く。
「事務所はそれでいいんですか」
「決定だ」
「なっちがしたことは当然、反省しなければいけないと思います。
だけど、みんな、なっちがいない圭織のコンサートなんて望んでませんよ」
「仕方ない」
「・・・・・私達がやってきたことはなんだったんですか」
「・・・・・・・・・」
205 :
L.O.D:2005/04/07(木) 15:57:13 ID:1TH/nQ7c
チーフはそのまま無言で扉を閉める。
残ったのは重苦しい雰囲気だった。
誰も口を開かず、視線を合わせない。
安倍を見ると、口を真一文字に結んで、うつむいてた。
「・・・・・なっち、みんな分かってるとは思うけど言うことあるんちゃう?」
静寂を破ったのは、中澤だった。
安倍は顔を上げ、みんなを見る。
辻がそっと手を伸ばして、安倍の小指を掴んだ。
「ありがとう、のの・・・・・みんな・・・・その・・・・・・・・
ごめんなさいとしか言えないです・・・・ごめんなさい・・・・」
涙は出なかった。
泣くのが嫌だったのかもしれない。
頭を下げ続けた。
上げることなど出来なかった。
肩に置かれた手に気付き、体を起こした瞬間
強く強く抱きすくめられた。
206 :
L.O.D:2005/04/07(木) 16:00:24 ID:1TH/nQ7c
「バーカ・・・・・・・」
「かお・・・り・・・・」
骨がきしむ感触、だけど、それほどまでに強い思いを感じる。
その後はただ無言で抱きしめられ続けた。
二人が一緒に歩んできた分、二人にしか分からぬ感情がある。
中澤も、矢口も、保田も、ただそれを見ていることしか出来ない。
「・・・・私の卒業、一緒に出来ないのはショック、っていうか
ふざけんな、って感じだけど・・・・見てくれるよね?」
「・・・・・・うん」
答えた瞬間、涙が溢れてしまった。
事態が分かってから、ずっと胸を締め付けるような不安があった。
このまま消えてしまいたいと願う気持ちが飯田の一言でかき消される。
自分の存在を必要としてくれる誰かがいてくれることが
こんなにも暖かいものだと気付く。
飯田の胸の中で安倍は声を上げて泣いた・・・・
207 :
L.O.D:2005/04/07(木) 16:02:36 ID:1TH/nQ7c
二か月後・・・・・・・
「わっ・・・・」
目の前に広がる黄色い世界に驚いた。
ファンのみんなが一緒になって、卒業を祝ってくれてると強く感じる瞬間。
自分の時は真っ白に染まった会場を見て、胸が熱くなった。
まるで北海道の銀世界を思わせるような情景だった。
ステージの上で真っ白なドレスを着ている飯田を通して
あの瞬間を思い出してしまう。
「そだよね・・・・・」
ファンのみんなが応援してくれる。
だから、自分はあの舞台の上に立てる。
たくさんの手紙をもらい、全部読んだ。
謹慎中はツアーに応募してくれてた人への謝罪を書いたり
事務所の仕事を手伝ったりしながら、葛藤していた。
気持ちが揺らいで引退を口にしたこともあった。
208 :
L.O.D:2005/04/07(木) 16:04:33 ID:1TH/nQ7c
だけど、飯田の卒業を目の前にして気付く。
自分がこうやって歌手になれたのは
一人ずつにありがとうの気持ちを込めて必死だったから
一枚ずつCDを手売りしたあの瞬間があったからだ。
涙が溢れ出したのに気付いて、ハンカチで押さえた。
『今年1月28日にモーニング娘。は7周年を迎えました。
そして今日、1月30日に、私、飯田圭織はモーニング娘。を無事卒業できそうです。
7年間を振り返って、本当にいろんな思い出を残し
たくさんの人に支えられ愛されて、こんな素敵なモーニング娘。になりました。
1998年、デビュー曲“モーニングコーヒー”を、この横浜アリーナで歌いました。
7年たって、今日同じ横浜アリーナで、皆さんと会って
歌えるなんて、当時は思ってもいませんでした。かけがえのない仲間です。
皆さんのおかげだと思っています。心から感謝しています。
そして、今日という日を、私の中で最高の1日となりました。
本当にどうもありがとう・・・・・・・・・・・・・』
End・・・・・
209 :
L.O.D:2005/04/07(木) 16:09:44 ID:1TH/nQ7c
『steal 〜 song for you 〜』終了。
最初に考えてたものとはまるで違うものになりました。
5か月の間、羊のいろんなところを見ていて
みんな、娘。という存在を後ろ向きに捉えてるな、と感じました。
なので、この小説でリセットします。
誰が悪いとか豚だとかやめて、前向きに応援しましょうよ。
210 :
名無し募集中。。。:2005/04/07(木) 20:44:12 ID:h4xY6GU5
いや
残念ながら豚は豚だよ
犯罪を妄想で奇麗事にしてしまいたい気持ちは分からんでもないがそれで良いのか?
心の底から応援できるのか?
そうかな?
直接描かれることは無かったけど、十分リセットされるにたる何かを持った作品だと感じたよ
奇麗事うんぬんに感じる部分は、読者がそれそれの考えを持って補完すればいいんじゃないかな?
それとも何ですか?犯罪者は社会復帰しちゃいけないし、社会復帰しようとしてるやつは、
お前は犯罪者なんだから、と突き落とすことだけがあなたの中の正義ですか?
L.O.Dさん、作品の完成おめでとうございます。保全していた一人として感無量でした。
安倍は嘘の会見しただけでちゃんと謝っても居ないからな
更生以前の問題だろ
まずはちゃんと謝るべき
もう遅いけど
多分一生安倍のこと許せないと思ってる奴はそのへんが引っかかってると思うよ
それを嘘だと思い込んで安倍を責めるなら、そういう人もいるだろう
ちゃんと謝っていないと感じる人がいるなら、そういう人もいるだろう
ただそれを小説の感想としてぶつけるのは筋違いだと思わないか?
そして安倍を許したり、安倍はきちんと謝ったと感じる人がいるということも認められないですか?
214 :
ねぇ、名乗って:2005/04/08(金) 11:01:41 ID:8k45mXw+
小説なんてifでしかない。
ましてや、娘。小説というものは現実から派生した妄想。
それに対してマジレスとは少々、恥ずかしい。
カップリングや内容が合わないなら読まなければいいだけのことだろ。
215 :
ねぇ、名乗って:2005/04/08(金) 11:05:45 ID:YbVEH1sP
妄想してマジレスかましたのはLODだわな
完結乙、いつのまにか完結してたんだね。
企画中のアレどうするんすか?
218 :
名無し募集中。。。:2005/04/20(水) 22:09:16 ID:kfFc66fL BE:197131687-
( ` ・ゝ´) 川‘〜‘)|| (〜^◇^) 川σ_σ|| ( ^▽^) 川o・-・) ( ‘д‘) ( ・e・)
ほ
220 :
名無し募集中。。。:2005/04/30(土) 22:25:14 ID:4qHs5k9G BE:285136799-
( ` ・ゝ´) 川‘〜‘)|| (〜^◇^) 川σ_σ|| ( ^▽^) 川o・-・) ( ‘д‘) ( ・e・)
221 :
名無し募集中。。。:2005/05/06(金) 00:19:10 ID:JOd+K2Ar BE:70404454-
( ` ・ゝ´) 川‘〜‘)|| (〜^◇^) 川σ_σ|| ( ^▽^) 川o・-・) ( ‘д‘) ( ・e・)
222 :
名無し募集中。。。:2005/05/12(木) 22:38:00 ID:JP9t9CV2 BE:88005555-
(l|l´ ・ゝ`) 川l|l´〜`)|| (〜´◇`) 川l|lσ_σ|| (l|lT▽T) 川l|l´д`) (l|l´д`) (l|l´e`)
223 :
名無し募集中。。。:2005/05/16(月) 23:50:35 ID:KqYofnuY BE:28161942-
( ` ・ゝ´) 川‘〜‘)|| (〜^◇^) 川σ_σ|| ( ^▽^) 川o・-・) ( ‘д‘) ( ・e・)
( ` ・ゝ´) 川‘〜‘)|| (〜^◇^) 川σ_σ|| ( ^▽^) 川o・-・) ( ‘д‘) ( ・e・)
( ` ・ゝ´) 川‘〜‘)|| (〜^◇^) 川σ_σ|| ( ^▽^) 川o・-・) ( ‘д‘) ( ・e・)
226 :
名無し募集中。。。:2005/06/16(木) 16:53:33 ID:lSpmTfCE BE:63363492-
( ` ・ゝ´) 川‘〜‘)|| (〜^◇^) 川σ_σ|| ( ^▽^) 川o・-・) ( ‘д‘) ( ・e・)
227 :
名無し募集中。。。:2005/06/22(水) 17:01:18 ID:eHk3szQQ BE:126727294-
( ` ・ゝ´) 川‘〜‘)|| (〜^◇^) 川σ_σ|| ( ^▽^) 川o・-・) ( ‘д‘) ( ・e・)
228 :
ねぇ、名乗って:2005/06/26(日) 22:16:42 ID:XC4XGGId
あげ
( ` ・ゝ´) 川‘〜‘)|| (〜^◇^) 川σ_σ|| ( ^▽^) 川o・-・) ( ‘д‘) ( ・e・)
( ` ・ゝ´) 川‘〜‘)|| (〜^◇^) 川σ_σ|| ( ^▽^) 川o・-・) ( ‘д‘) ( ・e・)
( ` ・ゝ´) 川‘〜‘)|| (〜^◇^) 川σ_σ|| ( ^▽^) 川o・-・) ( ‘д‘) ( ・e・)
232 :
ねぇ、名乗って:2005/08/04(木) 17:29:08 ID:mtWGWvRf0
アレセイア湘南
233 :
ねぇ、名乗って:2005/08/04(木) 17:37:45 ID:CiLNC+llO
携帯でこの板見た折れは負け犬orz
( ` ・ゝ´) 川‘〜‘)|| (〜^◇^) 川σ_σ|| ( ^▽^) 川o・-・) ( ‘д‘) ( ・e・)
( ` ・ゝ´) 川‘〜‘)|| (〜^◇^) 川σ_σ|| ( ^▽^) 川o・-・) ( ‘д‘) ( ・e・)
236 :
名無し募集中。。。:2005/09/09(金) 14:09:59 ID:6wG238Ap0
( ` ・ゝ´) 川‘〜‘)|| (〜^◇^) 川σ_σ|| ( ^▽^) 川o・-・) ( ‘д‘) ( ・e・)