ジョジョみたいにスタンドが出てくる小説を誰か作ってください
愛ちゃんを主役希望w
2 :
ねぇ、名乗って:04/08/26 14:10 ID:F+bC3ceu
意味不明終了死ね
そのまんまやないですかぁ・・。
じゃあ書きます・・
4月1日。雨。
高橋愛は県立高校の入学式に参加する。
体育館には紅白の暖簾。新しいスタートという感じがする。
期待と不安が入り混じっていた。
果たして自分は高校の勉強についていけるだろうか、友達は出来るだろうか・・・
高橋は式典の間、ずっとそんなことをぐるぐると考えていた。
うわぁズレまくり!
↓お手本お願いします…
誰かが書いてくれると信じて期待age
11 :
ねぇ、名乗って:04/08/27 01:38 ID:srxR67uw
>>1 に賛成。
でもジョジョは好きだがスタンドは好きではないので、
ちょっとだけ変更してワムウとシュトロハイムが出てくる小説がいいだろう。
主役は、愛ちゃんもいいがちょっとだけ変更してりんねにしよう。
…それは全然別モンになってしまうやんか
まだ見ぬ作家に期待age
スタンド娘。とかいう小説がどっかにあったぞ。
15 :
ただすん:04/08/28 20:45 ID:3By9UBNH
それどっかで読んだ気がする!
確かハロプロバトルロワイアルスレにあったと思う。
記憶に残ってないということは、あまり面白くな…ひでぶッ!
という訳で誰か書いてくれる方降臨きぼんぬ。
16 :
ねぇ、名乗って:04/08/28 20:49 ID:WdayTogP
>>15 石川、吉沢辺りが主役な感じ、紺野が裏主役
作者はレクイエムさん
更新はおそめ
狩狩板にある
期待アゲ
一、覚醒
高橋愛はぼんやりと窓の外を眺めていた。
愛は図書館が好きだ。昼休みになるといつもここから外を眺めている。
特に見たい景色があるわけじゃない。
ただ、居心地のよくない教室よりは図書館のほうがマシだと思っている。
愛は周りの人とうち溶けるのが苦手だった。
今日もクラスメイトの誰とも話をしていない。
「…楽しい?」
後ろから話かけられ、ボーッとしていた愛が目を覚ます。
愛が振り返ると、同じクラスの生徒がそこに立っていた。
彼女は入学式のとき、足をブラブラだるそうにしてたので妙に高橋の印象に残っている。
携帯からだから凄く書きにくい。後日また書きます。
あげ
ほ
まだ?
24 :
19:04/09/13 12:54:21 ID:78POVJSO
27日まで待ってといってみるテスト
書いてくれるのなら…
26 :
ねぇ、名乗って :04/10/02 23:04:54 ID:IYI0utAm
やれやれだぜ
もうちょっと待って
もしや10月27日だったのかー
かきょーいん
あと九日、死ぬ気で保守
あと、1時間
代わりに書いてもいいですか?
ヽ(*´∀`)ノ期待あげっ
1 途中下車は許可しない
月のきれいな夜だった。
(油断していたわ…フ・カ・クだわ)
藤本美貴は今まさに死にたい気分だった。
シャワーを浴びているところを実の父親に見られたのだ、もう、全部。
この父親というのがろくでもない奴で、浮気を何十年と続けているし、
書斎には何十本ものアダルトビデオがあることも美貴は前から知っている。
とにかく、その心の底から軽蔑していた親父に裸を見られてしまったのだ。
(し、しにてぇー)
美貴は部屋に戻るとベットの上で頭を抱えた。
しばらくそのまま凹んでいると部屋の中に誰かがいることに気付いた。
(ま、まさか…欲情した親父じゃねえだろーな…)
美貴が恐る恐る振り向くと、一人の男が立っていた。
顔はよく見えないが何となく男であろうと美貴は判断した。
親父ではない、髪はセミロングだ。
いつからそこにいたのか?
泥棒か?
叫ぶか?
でも親父が駆けつけるのは絶対いやだ。
などと美貴の頭は高速で思考を始めた。
次の瞬間、その思考はさらに加速度を増す。
なぜなら−その男が弓矢を持っていたから。
弓矢は月明かりにぎらりと怪しい光を放っていた。
「ひっ!」
美貴は声にならない悲鳴を上げた。
殺される。逃げなきゃ殺されるぅ。
美貴は立ち上がろうとした……が足に力が入らない。
腰が抜けていた。
男が弓を構えている。私は死ぬんだ。
こんなことなら今日焼肉腹いっぱい食っておくべきだった!
しにてーなんて言ったけど、本当は死にたくないよーん!
ドツッ!と鈍い音が体内から聞こえた。
ううう・・・熱い!息が・・・出来ない・・
あやちゃん・・みんな・・・さようなら・・・・・・
「みきちゅわぁーん!みきちゅわぁーん!」
「ハッ!」
美貴が目を覚ますと、朝になっていた。
「みきちゅわんいつまで寝てんのー学校遅れるわよー」
「はいはい、分かったようるせーなぁ」
ボサボサの髪をてきとーに整え、鏡とにらめっこしたあと制服に着替える。
ついでに喉を見てみたが、射抜かれた跡はない。
いつもどうりの朝だ。
(やっぱ夢かぁ・・・でも妙にリアルな痛みだったなぁ)
美貴は自転車に乗ると学校へ向かった。
「くぉらあ藤本!また遅刻かちょっと来ぉい!」
案の定、遅刻した。
「んん?お前スカートの丈短いんとちゃうんかぁ?」
体育教師はしゃがんで美貴の太ももをいやらしい目で見始めた。
「別にふつーですよ。もう行っていいですか?」
「いーや、駄目だね。怪しいから持ち物検査だ」
「ハァ?」
「先生に向かってハァとは何だハァとは!怪しくないんなら別に見せてもいいんじゃないのか!?」
「…分かりました」
「よーし、見せろ……おい、携帯を学校に持ってきちゃー駄目だろ!これは預かっておく」
「……」
「これだけかな?もう行っていいぞ」
「……」
(あのクソ教師コロしてやる)
美貴の怒りは午前中ずっと収まらなかったが、昼御飯を食べたらすっかりどうでもよくなった。
授業もそうじも適当に流して放課後。
あとは、携帯を返してもらい帰るだけ。
心配だから友達と一緒に職員室に行った美貴は驚愕した。
体育教師が机にうつ伏せで死んでいたのだ。
校長先生をはじめ、周りの先生もおろおろしていた。
死因は心臓麻痺。
午前中からその体育教師は机で居眠りをしていたから、先ほど見かねた隣の生物の教師が起こそうとしたらしい。
しかし、何度呼びかけても体育教師は起きない。
変に思って脈を取ってみたが、脈はない。
ざわつく職員室の中、美貴は机の上にあった自分の携帯を取り足早に去った。
奇妙な事件はこの日から始まる。
TO BE CONTENED・・・
キテタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
44 :
ねぇ、名乗って:04/12/01 17:08:38 ID:ciYqb9kj
( ^▽^)<この程度のスレにはこの程度の保全がお似合いだ ハッハッハ
川 ’ー’)<再利用してもいいがしか?
( ^▽^)<ハッハッハ
アイの奇妙な冒険
つづきマダー?
奇妙な電車であった。
乗客は誰も乗っていない。
窓はすべて何かで覆われており、外の景色を見ることはかなわない。
(…いったいなんやよ、この電車、気味悪いわ)
高橋愛はここから逃げ出したい気持ちをグッと堪える。
追い詰められるほど、なぜか闘志がメラメラと沸いてくる。不思議な女の子であった。
奥に進むと、先に乗った新垣里沙が座席にもたれているのが見えた。
自分の心配をよそに、くつろいでいる新垣を見て愛は少々腹が立つ。
「ガキィ!何まったりモードってんのよ!早く降りるよ!」
…返事はない。
「ちょっと聞いてんの!…うっ!」
里沙に近づいた愛は絶句した。
新垣の喉には黄金に煌く矢が刺さっていた。
深々と。血は矢をしたたり、座席はどす黒い赤に染まっていた。
「し、死んでる…」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・・
『ご乗車有り難うございます。この列車の終点は恋の終着駅です。』
突然不気味なアナウンスが流れると、ドアがプシャー、と開いた。
愛が振り向くと車掌さんと女の子がこっちを見ている。
「あれ、もう一人いたんだ」
女の子は愛を見ていった。
「この電車止めて!友達が!」
愛は車掌さんに叫んだ。
ゆらり、と車掌がやってくる。
人間ではなかった。全身が銀色に光っている。
機械の光ではない、生物の輝きだ。よく分からないが愛はそう思った。
「あなたにははっきり見えるみたいね…私の“ブギートレイン”が」
車掌が愛の胸倉を掴んだ。物凄い力、息ができない。
(…里沙ちゃんはこいつらに…)
ガシィッ!
車掌の腕を掴むもう一つの腕が見えた。
その腕は愛の体から伸びている。
「…離せこいつッ!」
「離さない!このままボコボコにして交番につきだしてやるんだからっ!」
『オラオラオラオラオラオララァァァ!!!!』
腕は愛の意思通りに動いてくれる。
守護霊。私の守護霊様。
「ぐはっ」
車掌は数十発のパンチをもらい、後ろへ吹っ飛ぶ。
まるで映画みたいな飛び方に愛は気分爽快になった。
「うぐ…貴様…いいだろう…私も本気で相手にしよう…
ブギートレインO3ィ!!」
ドドドドドッドドドドドドドド・・・・・・
即興で書いてみました。
読み返したら53から意味不明ですね・・・
オモロイ!
続き書いてー
58 :
56:04/12/22 18:42:25 ID:xvMp2kBG
では推敲してからまた書きます。最初からw
.
lk
63 :
56:05/02/10 16:37:08 ID:4rBmRdTd
諸事情により遅れました。来週末にはひっそりと始めたいと思います。
まだぁあああああああああああああああああああああああ!?
65 :
ねぇ、名乗って:娘。暦08/04/01(金) 22:46:38 ID:vXrPqgf/
( ` ・ゝ´) 川‘〜‘)|| (〜^◇^) 川σ_σ|| ( ^▽^) 川o・-・) ( ‘д‘) ( ・e・)
66 :
ねぇ、名乗って:2005/04/02(土) 18:27:15 ID:pHDbF3tH
67 :
ねぇ、名乗って:2005/04/02(土) 18:51:34 ID:pHDbF3tH
68 :
ねぇ、名乗って:2005/04/07(木) 20:55:03 ID:ZDN/qph5
69 :
ねぇ、名乗って:2005/04/08(金) 11:25:37 ID:9oU4G5Az
70 :
ねぇ、名乗って:2005/04/12(火) 02:05:05 ID:+ObXDSoM
続かないのか。。
( ` ・ゝ´) 川‘〜‘)|| (〜^◇^) 川σ_σ|| ( ^▽^) 川o・-・) ( ‘д‘) ( ・e・)
72 :
ねぇ、名乗って:2005/04/15(金) 23:22:03 ID:4fBxmTWD
9月まで待って下さいと恐る恐る言ってみるテスト。
73 :
ねぇ、名乗って:2005/04/19(火) 18:09:58 ID:iT1p3bwj
ho
74 :
ねぇ、名乗って:2005/04/20(水) 12:42:18 ID:PeykUDRL
光瀬龍か誰だったか知らないが
「ねじれた町」という少年向けSFで各町の代表の中学生が深夜の町でスタンド合戦
75 :
ねぇ、名乗って:2005/04/20(水) 18:41:31 ID:PeykUDRL
眉村卓だったような気がする
76 :
ねぇ、名乗って:2005/04/21(木) 02:13:47 ID:1orkmfFA
とりあえずそれぞれのスタンド名と能力でも考えようぜ
77 :
ねぇ、名乗って:2005/04/23(土) 04:53:44 ID:q0jAF9t2
78 :
名無し募集中。。。:2005/04/30(土) 22:13:15 ID:4qHs5k9G BE:49282872-
( ` ・ゝ´) 川‘〜‘)|| (〜^◇^) 川σ_σ|| ( ^▽^) 川o・-・) ( ‘д‘) ( ・e・)
79 :
名無し募集中。。。:2005/05/06(金) 00:09:28 ID:JOd+K2Ar BE:21121632-
( ` ・ゝ´) 川‘〜‘)|| (〜^◇^) 川σ_σ|| ( ^▽^) 川o・-・) ( ‘д‘) ( ・e・)
80 :
ねぇ、名乗って:2005/05/13(金) 17:25:17 ID:Zhe7iECi
保守おつかれさまです
81 :
名無し募集中。。。:2005/05/16(月) 23:41:52 ID:KqYofnuY BE:49282872-
( ` ・ゝ´) 川‘〜‘)|| (〜^◇^) 川σ_σ|| ( ^▽^) 川o・-・) ( ‘д‘) ( ・e・)
82 :
ねぇ、名乗って:2005/05/23(月) 22:42:12 ID:LzQMI6nL
_, ,_
川*’ー’)┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨・・・
( ` ・ゝ´) 川‘〜‘)|| (〜^◇^) 川σ_σ|| ( ^▽^) 川o・-・) ( ‘д‘) ( ・e・)
84 :
ねぇ、名乗って:2005/06/11(土) 15:29:51 ID:rvvW90v1
ほしゅ
85 :
名無し募集中。。。:2005/06/16(木) 19:06:28 ID:lSpmTfCE BE:52803735-
( ` ・ゝ´) 川‘〜‘)|| (〜^◇^) 川σ_σ|| ( ^▽^) 川o・-・) ( ‘д‘) ( ・e・)
86 :
名無し募集中。。。:2005/06/22(水) 17:25:37 ID:eHk3szQQ BE:197131687-
( ` ・ゝ´) 川‘〜‘)|| (〜^◇^) 川σ_σ|| ( ^▽^) 川o・-・) ( ‘д‘) ( ・e・)
87 :
ねぇ、名乗って:2005/06/23(木) 15:54:47 ID:P45smqvz
素朴な疑問。↑のタンポポの並び意味あるの?
あいぼんと柴ちゃん変えた方が二期タンと三期タンが分けられてすっきりする気がするんだが
ヒント:年功序列
89 :
名無し募集中。。。:2005/06/27(月) 01:16:06 ID:pMR//rE1 BE:84485838-
( ` ・ゝ´) 川‘〜‘)|| (〜^◇^) 川σ_σ|| ( ^▽^) 川o・-・) ( ‘д‘) ( ・e・)
( ` ・ゝ´) 川‘〜‘)|| (〜^◇^) 川σ_σ|| ( ^▽^) 川o・-・) ( ‘д‘) ( ・e・)
( ` ・ゝ´) 川‘〜‘)|| (〜^◇^) 川σ_σ|| ( ^▽^) 川o・-・) ( ‘д‘) ( ・e・)
( ` ・ゝ´) 川‘〜‘)|| (〜^◇^) 川σ_σ|| ( ^▽^) 川o・-・) ( ‘д‘) ( ・e・)
( ` ・ゝ´) 川‘〜‘)|| (〜^◇^) 川σ_σ|| ( ^▽^) 川o・-・) ( ‘д‘) ( ・e・)
( ` ・ゝ´) 川‘〜‘)|| (〜^◇^) 川σ_σ|| ( ^▽^) 川o・-・) ( ‘д‘) ( ・e・)
( ` ・ゝ´) 川‘〜‘)|| (〜^◇^) 川σ_σ|| ( ^▽^) 川o・-・) ( ‘д‘) ( ・e・)
( ` ・ゝ´) 川‘〜‘)|| (〜^◇^) 川σ_σ|| ( ^▽^) 川o・-・) ( ‘д‘) ( ・e・)
( ` ・ゝ´) 川‘〜‘)|| (〜^◇^) 川σ_σ|| ( ^▽^) 川o・-・) ( ‘д‘) ( ・e・)
( ` ・ゝ´) 川‘〜‘)|| (〜^◇^) 川σ_σ|| ( ^▽^) 川o・-・) ( ‘д‘) ( ・e・)
100 :
ねぇ、名乗って:2005/09/16(金) 15:21:28 ID:m/Z1qJQl0
/⌒ヾ⌒ヽ.
/ 丿 ..ヾ
/ 。 人 )
(。...。_ .ノ 。ヾ。...丿
( _ . .. ノ )
/ /
/ ノ し /
三 ̄ ̄ ̄ ̄\ / ) と /
/ ____| . / /
/ > | / /
/ / ⌒ ⌒ | / /
|_/---(・)--(・) | / /
| (6 つ | / .. / / どうやら!!!!!!!!!!
| ___ |/ . / <俺は増殖するらしい!!!!!!!
\ \_/ / / / \_________
シコ \___/ / /
/ \ / . /
シコ ( ) ゚ ゚/\ゝ 丿.../
\ ヽ、 ( / ⊂//
\ ヽ / ⊂//
( \つ /
| |O○ノ \
| | \ \
| ) | )
/ / / /
/ / ∪
∪
( ` ・ゝ´) 川‘〜‘)|| (〜^◇^) 川σ_σ|| ( ^▽^) 川o・-・) ( ‘д‘) ( ・e・)
(´・ω・`)来ない…
練習のためGANTZモノ書いていいですか?
103 :
ねぇ、名乗って:2005/10/01(土) 08:15:13 ID:k3EibPX/0
良いですよ
ジョジョ小説なら狼ってか今は難民にあるけどね
てすと
GANTZ娘。
バックミラーを見るや、高橋愛はちっ、と舌打ちをした。
夜の県道、誰もいない静かな世界を買ったばかりの原付でゆったりと満喫している最中だった。
後ろから来た車はかなり急いでるのか、ぐんぐんライトが近づいてくる。
(うざ、こんな狭い道路で何キロ出してんだよ、頭おかし〜んじゃねーの?)
高橋はちらとメーターを見る、60キロ。
後ろの車にぶつけられないように、高橋はアクセルをそのまま、左に寄ろうとした。
−そのとき、ガァンという衝撃と共に、原付ごと高橋の体が真横に向いた。
ぶつけられた!瞬間、高橋はそう感じた。
すみません、テスト
アスファルトがゆっくりと目の前に近づいてくる。
次にゴキン、と体の中から音がして、高橋の目の前が真っ暗になった。瞬きしたが、何も映らない…
骨か何かが割れたような、嫌な響きが耳に残っている。
高橋を撥ねた車は猛スピードで走り去った。
(こ…の…クソ車ッ……!轢きやがったな!)
(カメラ、カメラ…車のナンバーを!)
(んだよ…目が…携帯…壊れて…)
(………………)
プツン
「また出てきたよ」
男の声に高橋は目を開いた。
その手にはしっかりと携帯が握り締められている。
(あ?車に轢かれて…え、何ココ?夢?)
状況を把握しようと周囲を見回す。
小さな部屋に、高橋はいた。
何人かの男女が高橋をじっと見ている。
混乱する頭を整理しようとするが、何が起こったのか高橋にはさっぱり分からなかった。
ただ一つ、なんだかもう帰れない場所のような……そんな気がした。
「ここは天国なんだよ。君は死んだんだ」
白髪交じりの痩せた男が高橋に優しく声をかける。
「天…国?」
答えながら高橋はプッと吹き出してしまった。
その態度に白髪の男はムッとし、口をヘの字に曲げる。
「こんな世俗的な天国なんかあるわけねーし」
別の男が白髪の男に向けて言い放つ。
「外見ろよ、あれさ、あれ東京タワーじゃね?ここ東京じゃん」
「それはな、生きてたときの記憶がそう我々に見せているだけだ」
「ハァ?じゃあこれはなんかどうだよ」
「いたたたたた!貴様何をするか!」
「痛いっつーことは、生きてる証拠だろーが!」
(漫才やってんなよ)
ツッコミを入れることで、いくぶん落ち着いた高橋は、自分が携帯を握り締めていることに気づく。
(あれ?携帯、直ってる…)
ジジジジジジジ
突然の耳慣れない音。
その音に顔を上げた高橋は信じられない光景を目にする。
部屋の端にある大きな黒い玉、そこからレーザーのようなものが発射され、
−何かが作られていた。
「また誰か転送されてくるぞ」
転送、高橋はその言葉にハッとした。
もしかしてここにいる全員がこうやって部屋に来た?
そして、自分も?
期待ほ
ほ
狼のジョジョスレ盛り上がってんな
ここ使っていいのかな?
いいなら明後日魔界街2うpします
【魔界街2】
プロローグ
小川山山頂から流れる朝娘市唯一の川…
その朝娘川は街の外周を囲む地割れに流れ落ちる…
落ちた水流は滝となり、底が見えない暗黒の地割れに消えていった…
奈落の底に落ちる感覚…
ゾワゾワと背筋が凍り付き、悪夢からハッと目覚めるように目が見開いた。
真っ暗だ。
何もかも黒い世界は、自分の視力が無くなったかのようだ。
風を感じる。
下から吹き上げる、どす黒い瘴気の冷風。
保田圭は、自分が生きている事に疑問を感じた。
…確か…吉澤に心臓を抜かれて絶命したはず…
気付けば、奈落の底に落下している最中だった。
光のリングが遙か上空に見える。
そのリングが何かは、最初は分からなかった。
リングは小さくなっていく。
自分が地の底に落ちていく証拠だ。
ベチャッと背中から落ちた。
同時に、衝撃で体中の骨が砕け折れたのが分かった。
また、死んだと思った。
これで3回目の死だ…
「……‥?」
それでも生きている。
激痛に苛まれながらも、何故か生きている。
「何処だ?ここは…?」
全てを飲み込むような暗黒の中で見えるのは、遙か上空に位置する光るリングのみ。
折れた骨は、動こうとする体の自由を許さない。
粘り気のある地面は、保田の体を半分ほど沈めていた。
「…ああ!」
気付いた。
リングは地割れだ。
魔界街を囲む、底の見えない、魔震によって引き裂かれた、地上と魔界とを繋ぐ地割れだ。
そして、自分は埋葬もされず、地割れに投げ捨てられたのだ。
だが、自分は何故甦った?
その答えは徐々に解る事になる。
ドスドスと音を立てて近付く、ポツンと光る二つの赤い眼光。
魔界の化け物と気付いたときには、食われていた。
グチャグチャと咀嚼され、体がバラバラになっていくのが分かる。
激痛と恐怖による悲鳴は、魔界の獣を歓喜させた。
奴等の好物はソレなのだ。
人の肉と恐怖心。
ただ、それだけを求める悪魔の生命体。
魔物に吸収された肉体は、そいつの体表に人面瘤として浮き出た。
そして、ボトリと落ちる。
保田は、恐怖に取り憑かれて逃げ回った。
だが、暗黒が支配する世界では、何処に逃げているのかも分からず、
ドスンと別の魔物に当たり、また食われる。
何度も食われながら分かり始めた。
いや、気付いた。
ここは地獄なのだと。
無限に食われ続ける無間地獄なのだと。
他の人間もいた。
恐怖に顔を歪め、絶叫を上げながら食われ続ける、地割れに落ちた人間達は
永遠にこの地獄のなかを生き続けるのだ。
思った事がある。
自分は何故、この現実を冷静に受け止めているのか。
何度も食われ、その度に恐怖しながら、どこかしら他人事のように感じている
自分に幾度と無く気付く。
ポツンと赤い二つの光り。
最初に自分を食った化け物だ。
保田に気付き、ドスドスと音を立てて近付いてくる。
保田は跳躍した。
かつての自分は魔人と呼ばれていた。
心臓を抜く技術は、この魔界でも通用する筈だ。
「狩ってやるぞ!キサマ等を!」
赤い光りを放つ魔物の目玉は保田の右手で、えぐり抜かれた。
返す刀で、もう一つの目玉。
魔物は地獄の咆哮を放ち、のたうち回る。
ドスドスと突き刺す保田の抜き手は、どのような顔をしているのかさえ分からない
魔界の怪物の顔を更に歪め、抜き取られた肉を食われる異様な逆転現象を引き起こした。
「食ってやるぞ!オマエを!ギャハハハ!怖いか?化け物め!」
ビタンビタンと巨躯をうねらせ、藻掻き苦しむ魔物の肉を食らう、
地獄に落ちた反逆者は、半身を魔物の体内に沈め、
脈打つ心臓らしき臓物を引き抜き、魔界に相応しい雄叫びをあげながら喰らった。
ブジュブジュと音を立てながら、溶けるように絶命する魔界の獣。
ハアハアと息をつきながら、真っ赤に染まった口を拭う
保田の眼は赤く光っていた。
「見える…」
暗黒に染まっていた魔界の景色が、ぼんやりとだが見える。
「ハハハ…見える…」
地平線も見えない広大な暗黒の世界は、蠢く魔物が所在なげに彷徨(うろつ)く、何も無い世界だった。
そして魔物達は上空を見上げている。
餌を待つ魚のように、蠢きながら光るリングを見上げている。
渇望しているのだ。
自分達が、あのリングの外に出る日が来る事を…
ズーンと近付く巨大な芋虫。
そいつは保田を無視して通り過ぎる。
そいつだけでは無い。
全ての魔物が保田を無視する。
ギラリと歯を見せた保田は、声を上げて笑った。
保田圭が魔界の魔物に身を落とした瞬間だった…
保田は狩りをする。
自分を食らい続けた魔物達に復讐するためだ。
だが、十数匹を喰らい殺した頃には空しさに気付く。
奴等には知能が無い。
本能だけで人間の肉と恐怖心を貪る、単なる生物なだけだった。
保田に攻撃されても、藻掻くだけの生き物は、人間にだけしか剥き出しの凶暴性を発揮しないのだ。
いつしか保田も、上空のリングだけを見上げる日々を送ることになる。
魔物達がざわめきだした。
保田も気付き、声にならない声を上げる。
リングが大きくなった。
少しづつだが、確実に大きくなってきている。
理由は分からないが、魔界の底が迫り上がってきていた。
そして…
一月後には無数のゾンビが落ちてきた。
死した保田が魔界に落ちると同時に人間として甦ったように、
死者たるゾンビも、魔界に落ちると元の人間として甦る。
魔物達は歓喜し、甦った人間達を貪り食った。
保田は落ちてくるゾンビや、魔物に追われ逃げ惑う人間達には見向きもしない。
ただただ、大きくなる光りの輪を見上げていた。
その光りの輪が三日月のように欠けた。
と同時に、そそり立つ壁が突然と現われた。
保田は、当然のように剥き出しの岩肌をよじ登り始める。
地上と魔界とが同じ次元で繋がった瞬間だった…
-------------------------------------------------------------
ハッと気付き、上体を起こした保田は辺りを呆けたように見回し、
ベッドの横の時計を見た。
午後の1時をまわっている。
「…夢か…」
地上に這い出てから、この世に敵はいなくなったと思った矢先に天敵が現われた。
魔界の魔物を殺す術(すべ)を知っている連中だ。
奴等は保田の目の前で、市井沙也加を殺し、後藤真希を奪った。
その後藤も今は、保田を追うハンターと化している。
奴等には勝てない。
魔界の血が、保田にそう囁く。
逃げ回り、着いた先がこの場所…
保田はコンクリートの壁で覆われた部屋を出て、
地上3階のベランダから階下を見下ろす。
ビューッと冷たい寒風が吹き荒らす、其処は戦車とミサイルが並ぶ軍事基地。
ロシアウラジオストクの外れに位置する極東の要塞だった。
保田が、この地に落ち着いて約3ヶ月。
長居をする理由が有る。
この基地には核ミサイルが眠っていた。
目標は保田を着け狙う後藤達、つまりハンターや新生魔界街では無い。
奴等より、邪魔で目障りな存在が有った。
「チッ、こんな所にまで現われやがった…」
全長30メートルもある巨大なナメクジが、基地の外れを横切る。
朝娘市の地割れから湧き出る魔界の化け物は、地上に出れば思い通りに
人間の肉を貪れると思っていたに違いない。
だが、魔界の当ては見事に外れた。
Zウィルスによる感染で人類は滅亡の危機に立たされ、
全人類の人口は99%以上がゾンビに変わった。
魔界では不死身の肉体を持つ魔物も、地上では現世の理(ことわり)に身を置く羽目になる。
つまり、人間を食わなければ飢え死ぬのだ。
死者(ゾンビ)は糧とはならないし、見向きもしない。
奴等は人間を渇望して魔界から這い出たのだ。
人間の血肉と恐怖心を糧とする魔界の化け物は、獲物の居なくなった地上で、
餓死に怯え、当て所無い空腹の旅をする事になったのだ。
その化け物共が次々と湧き出る元を絶つ。
魔界の魔物に身を落とした保田と言えど、元は人間で、思考も人間のソレに近い。
保田は自分以外の魔界の魔物が、地上に出る事を許さなかったのだ。
だが、戦術核を朝娘市の地割れに撃ち込んだだけでは、
魔界と地上との繋ぎを塞ぐ事が出来ないことは保田でも分かる。
策が有った。
策を練り上げるための3ヶ月だ。
保田の目の端には、まだナメクジが動いている。
30メートルの巨躯でもナメクジはナメクジだ。
動きは遅い。
「実験してみるか…」
保田は自分の隣の部屋に入り、3つ並んだ浴槽内のドロリとした謎の溶液に浸かり
眠っていた3人の子供を引き連れ外に出て、巨大なナメクジに近付いた。
前頭葉が異常に発達してるのが目で見ても分かる、
エイリアンのような奇怪な頭部を持つロシア人の子供ゾンビだ。
このゾンビを作るのに3ヶ月かかった。
「…やれ」
保田の命令で子供ゾンビ達は「ん〜!」とリキんだ。
異様に大きい頭部には見る間に血管が浮き出て、切れた血管から
プシューと血が噴き出すと、子供ゾンビの血走った眼が見開いた。
耳には聞こえぬ怪音…
キーンと頭の中が掻き回されるような不快な超音波と言った所か、
基地内をユラユラと巡回しているロシアゾンビ兵達がパタパタと倒れると、
同時にパンパンと外灯が割れ、保田の鼻から一筋の血が流れる。
子供ゾンビの標的となった巨大ナメクジは苦しそうに身悶え、バン!と派手に爆ぜ絶命した。
「よし、もういいぞ」
子供ゾンビ達の思念波に、自身も鼻血を出しながら頭に手を置き頭を振る保田。
生物(主にゾンビ)を自分の意のままに動く僕(しもべ)にし、
鉱物や機械等、無生物を自身の血肉で有機物に変える能力を身につけた保田は、
超思念子供ゾンビと核ミサイルを融合させ、朝娘市の地割れに戦術核を撃ち込み、
核爆発に子供ゾンビの思念波を乗せて、魔界のリングを閉じる作戦を実行するつもりだ。
…それを決行する日が来たのだ。
-------------------------------------------------------------------
時を同じくして夢を見た者がいた…
気付いたら真っ暗な中、食われた。
食われても何故か生きていた。
自分を食った生き物の背中に瘤が出来た。
それが自分だった。
人面瘤となり、その生物の背中で漂っていた。
突然、光りの窓が目の前に現われた。
その窓から手が伸び、自分を掴んで言った。
「見つけた…」
懐かしい市井紗耶香の声だった…
「どうした?うなされてたぞ」
パチパチと火の粉が舞う焚き火の明かりに照らされた顔がニッと笑いかけた。
「夢を見た…」
寝袋から起きあがった後藤真希は、一緒に旅をする飯田圭織の
少しロングになった髪を掻き上げる動作をぼんやりと眺めた。
「夢?…ほう、人間っぽくなってきたんじゃね?どんな夢だった?」
「…う〜ん。忘れた」
意地悪っぽく聞く飯田に、寝惚けながら答えた後藤は
どんな夢だったのか本当に忘れていた。
「はやっ!今見てた夢だろ」
「ハハ…」
テントを張るキャンプ地は北海道の北端、宗谷岬に程近い海岸沿いの防波堤だ。
海を眺めながら3日経つ。
ロシアに向かったと思われる保田を追い、この地まで来たのだが、
船は危険と判断し、あれこれ迷いながら時間だけが過ぎた。
「また来た…」
やれやれと言った具合に飯田が立ち上がる。
海面からヌーッと現われ、ズルズルと体をうねらせて此方に向かって来るのは、
アンコウとアザラシを足したような、シロナガスクジラ程もある巨大な化け物だ。
ズカズカと巨大アンコウに歩を進める飯田の右拳には鬼の気が宿っている。
巨大な口を開け、飯田を飲み込もうとするアンコウの口の中に飯田は自ら飛び込んだ。
バクンと口を閉じた途端に、アンコウはバタバタと体をくねらせ、
急に大人しくなったと思った瞬間にボコボコと内部が破裂し、
アンコウの体は溶け出した。
残ったのは漫然と立ち尽くす飯田だけだ。
「あー、汚い!もう、風呂風呂!」
アンコウの体液だらけになった飯田は、服を脱ぎながらテントの横に置いてある
ドラム缶風呂にザバーッと入り、頭の先まで身を沈めた。
「口の中なんかに入らなきゃいいのに」
呆れ顔の後藤は、薪をドラム缶に放りながら、飯田が脱ぎ捨てた
革のジャケットを拾って、持ってきたポリ袋に入れた。
アンコウの体液は酷い悪臭がする。
「で、どうすんの?」
鼻を摘みながら後藤は聞いた。
「服か?捨てていいぞ」
「いや…この先どうすんの?って聞いたの」
洗っても革ジャンは縮み上がって使い物にはならない。
後藤は、ポリ袋を投げ捨てた。
「…いったん戻ろうぜ」
シャンプーで頭を洗いながら、飯田は船での渡航を諦めた。
陸上なら、いくらでも殺す事はできる。
だが、船上、最悪の場合海にでも投げ出されたら、魔界の化け物共に勝てる気がしない。
飯田は泳ぎが不得意なのだ。
「風邪…ひくかもな…」
持ってる着替えが全て魔物達の返り血や体液で使い物にならなくなった飯田は、
髪も乾かさず素っ裸のままで、ドカティに跨る。
「温泉あっただろ。取りあえずアソコまで戻ろう。一回ゆっくりと休みたいよ」
キュルルルとスターターを回しエンジンをかける。
「ハハハ、見てるこっちが風邪ひきそうだよ」
テントを片づけ、荷包みをしている後藤が寒風吹く夜空を見上げた。
夜が白々と明けつつある…
「…あ!」
「なんだありゃ!?」
二人同時に声をあげた。
空気を引き裂くジェット音が3機の流線型の機体を伴って、飯田と後藤の上空を通過する。
「ミサイル?」
「…のようだな」
聞いた後藤に呆然と答えた飯田。
見間違いなのか、視力が良い飯田の目には、ミサイルに子供が乗っているように見えたのだ…
---------------------------------------------------------------------
新宿を拠点とした新生魔界街。
復興は着々と進み、人口は朝娘市からの脱出組30万人と、
ラジオ等で呼び掛けた全国からの生き残りの国民と合わせ、約100万人弱となっていた。
新宿区をフェンスで囲み、徐々に範囲を広げている最中だ。
高速道の他の道を閉鎖し、福島まで道路を確保し、原発を押さえ電気を確保したのもいい。
横浜に備蓄してある政府米を確保し、周辺の食料倉庫街を押さえたのも大きいし、
石油コンビナートを押さえたのも良い。
問題もあった。
食料はいつか尽きる。
今現在は広大な農地の確保が急務だった。
だがそれは、新政府の政治家達の役目だ。
最初は復興に躍起になって一丸となっていた新国民達も、
一応生活が安定してくると、治安に緩みも生じる。
魔界街を遅う巨大な化け物共の襲撃は昼夜を問わず、
迎え撃つ、小川流拳法を会得した鬼拳使いの防衛拳法隊の数は
旧人造舎の魔神達も含め200人弱と、まだ少ない。
その内約100人は、福島原発と横浜に派遣されている。
外敵に対する守りで手一杯の政府は、魔界街の治安にまで手が回せないのが現状なのだ。
「おい、温水(ぬるみず)!今日はもうあがっていいぞ!」
フェンス拡張の工事現場の監督が腕時計を見て、
フラフラになって働いてるハゲの中年男に声をかけた。
手拭いで額の汗を拭った温水と呼ばれた男は、ごつい現場監督に頭を下げて
グッタリとしながらタイムカードを押して、支給されるオニギリ弁当を手に帰路についた。
帰る家と言っても、政府が用意したボロアパートの一室だ。
時計を見ると夜の9時を過ぎていた。
明日も朝の8時からの仕事が待っている。
一日12時間以上も働いて、貰う日当は1万円以下だ。
この街で働く人間の半分以上は自分と同じ境遇で、
いくら復興の為とは言っても、こう辛くては気力も萎える。
温水洋一は、魔界街からの脱出組だ。
元々は朝娘市の市役所に勤めていたのだが、仕事ができない
ダメ公務員の典型的な男は、新生魔界街での再雇用試験で
あっさりと却下され、今の日雇いの仕事で何とかその日を暮らしていた。
その温水の今の楽しみは、仕事の帰り道にある一軒のスナック。
ハゲた独身中年男はそのスナックのママに恋をしていたのだ。
オニギリを頬張りながら いつもの銭湯に入り、溜まった一日の垢を落とし、
汚い作業着をボロのバッグに押し込み緑色のジャージに着替え、そのスナックに向かった。
道すがらカップ酒を買って一気飲みするのも忘れない。
素面(しらふ)では、その綺麗なママに声を掛ける勇気も無いからだ。
店に近付くにつれて、温水の頬が自然にほころぶ。
カランカラン…
『スナック梨華』のドアを開く温水はオズオズと店内に入り、
カウンターの端にチョコンと座った。
「あらヌルちゃん、こんばんわぁ、今日もいつものでいい?」
「うん」
天真爛漫な笑顔を見せて温水の肩をポンと叩いたママは、
カウンターのバーテンにビールを注文し、温水に「ゆっくりしてってね」と言って、
テーブルに座る数人の客の接客に当たった。
「…はい、どうぞ」
美青年のバーテンは瓶ビールを温水のコップに注ぎ、
カウンターの真ん中の席にドンと座る、高貴な雰囲気が漂う麗人と談笑を始めた。
いつもいる その美女は最初に会った日に、温水に汚物でも見るかのような視線を投げただけで、
その日以来、目線さえ合わせようとしない。
場違いな場所とは分かっている。
バーテンも、温水を迷惑そうな顔で接している事も知っている。
だが、ママの梨華だけは違っていた。
いつも明るい笑顔を絶やさず、深酒して愚痴をこぼす温水にも最後まで付き合ってくれる。
彼女の瞳に見詰められるだけで、彼女の吐息が鼻腔をくすぐるだけで、
その日の疲れが一気に癒える気がした。
だから梨華の接客が終わるまで、何時間でも居心地が悪いカウンターで粘るつもりだ。
だが、その日のテーブル客は最後まで居座り、帰ったのは閉店時間の午前1時を回った頃だった。
温水は泥酔し、カウンターに突っ伏し愚痴をこぼすにも、ろれつが回らない状態だ。
ついにはガタガタと椅子から転げ落ち、バーテンを呆れさせる。
「…大丈夫?」
「うるへー!」
心配するママの手を振り払う。
梨華はバーテンと顔を見合わせ「ダメだこりゃ」と首を振った。
「あれ?藤本は?」
「ああ、ヌルちゃんの泥酔っぷりを見て、嫌になったんだろ?帰ったぜ」
「本当?ラッキー♪」
「何がラッキーなんだよ?」
「だって、いつも最後まで店にいて私とよっすぃの仲を監視してるんだもん。
久しぶりに二人っきりになれるね。ねぇ飲み直そうよ」
「はぁ?俺はもう帰るぜ」
「じゃあ、私のマンションに寄ってかない?」
「いやだ」
「もう、連れないんだから!」
「痛てて、つねるなよ…」
「…じゃあチューだけでいいよ…‥」
「…なんだよチューって……‥」
「…いいじゃん…‥」
「…もう‥」
床に倒れた状態で、温水は二人の会話を、衣擦れの音を、粘膜が触れ合う音を、
目をギュッと閉じ、身動(みじろ)ぎもしないまま聞き耳を立てていた。
なんとなく分かってはいたけど、これは効いた。
この現実は本当に堪(こた)えた。
酔いも一気に醒め、どうやってこの場から逃げ出すか、タイミングを探った。
http://blanch-web.hp.infoseek.co.jp/cgi-bin/data/IMG_000136.jpg
「う、う〜ん…」
自分でも わざとらしい声だと思う。
ノロノロと立ち上がり、ポケットから五千円を出してカウンターに置き、
「じゃ、じゃあまた来るから、へへへ…」
と下卑た笑いで誤魔化し、ふらつく足で店を出る。
いつもは店の外に出て見送るママは、出てこなかった。
「ちくしょう…ちくしょう!」
涙と酔いと千鳥足で視界は悪い。
どこをどのように歩いたのかも分からない。
ジャージは半分ずれパンツと尻を少し出しながら、
温水は怒りに任せて路上に止めてあったベンツを蹴った。
「なにすんじゃ!われ!」
ベンツにはヤバそうな男が乗っている。
だが、自棄になっている温水は、その男に睨み返す。
「殺すぞ!ぼけ!」
ベンツから出てきた男は怒声を浴びせながら温水をボコボコに蹴った。
それでも必死に男にしがみついた。
「怒ってるのは俺のほうだ!」
男のポケットにはナイフが入っていた。
温水はソレを手にした。
縺れ合い…
「うわっ、うわっ、うわっ、うわっぁぁあああ!」
男のシャツが真っ赤に染まった。
男のベンツに乗り込み、急発進させる。
どこをどう走ったのか分からない。
何人か撥ねた気もする。
逃げるのに無我夢中だった。
気付けば警備員の制止を振り切り、魔界街のフェンスを突破し、市外の道路を走っていたのだ。
ゾンビを跳ね飛ばし、乗り捨てられた車で塞がった道路を無理矢理ベンツのパワーで切り抜け、
路肩を走行し、轍(わだち)を走破し、魔界の化け物から逃げ、ガソリンが切れるまで、
外灯もない真っ暗な夜道を迷走しながら、奇跡的にベンツは最後まで走り続けた。
白々と夜が明けてくる…
燃料切れで止まったベンツの目の前に、見覚えのある景色…
「ぁぁぁああ…ぁぁああああ…そんな…」
愕然とする温水の目に飛び込んできたのは、奇跡か偶然か、
又は、元朝娘市民の帰巣本能の為す業か…
そこには、朝娘市の中央に そびえるハロー製薬本社ビルの塔影が、
地割れから上る妖気の陽炎に揺らめいていた。
ベンツ内にいる温水に気付き、近寄ってくるゾンビの群れ。
地割れから這い出したムカデのような形の巨大な怪物。
何故、こんな事になったのか…
逃げ出したのだ、全てから…
何もかも嫌になり、人生を投げ出した結果がコレだった…
今、温水の人生は終わりを遂げようとしている。
手を合わせ神にも縋りたい気持ちで、ハロー製薬のビルを望む。
その時、温水は見た。
地割れに吸い込まれるように墜ちていく3個の機影を…
http://blanch-web.hp.infoseek.co.jp/cgi-bin/data/IMG_000135.jpg 凄まじい衝撃波だった。
周りのゾンビと怪物は一瞬で消滅した。
爆風に乗せた何者かの思念波が、魔物だけを消滅させたのだ。
現に、何故かは分からないが温水は生きている。
だが…
「…目、目がぁ…俺の目がぁぁあああ!!」
叫んだ自分の声が聞こえない。
「うわぁぁぁぁ」
顔を覆った手の感触が無い。
「ひぃぃぃぃぃ」
気が遠くなっていくのを感じた…
------地割れは残ったままだが、保田圭の計画は成功した。
魔界の化け物を次々と生み出す、魔界と地上とを繋ぐ扉は閉じたのだ。--------
ベンツからズルリと落ちた温水は、五感の全てを失った。
「…ふ、復讐してやる。
魔界街と、俺を振ったあの女に復讐してやる!」
代わりに第六の感覚を授かった温水は、別の人間になっていた。
「うぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
叫んだ温水の声に呼応するかのように、周りの廃墟と化したビルの壁面に
無数のヒビが走り抜け、ガラガラと音を立てて崩れ落ちた…
ズルズルと足を引きずるように、新生魔界街に向かって歩き出した温水が、
魔界爆発の瞬間に見逃した物がある。
保田が造った子供ゾンビが魔界を閉じる超思念波を放出した刹那、
魔界の地割れから産み落とされた一つの卵が地上に放出されたのだ。
卵と言っても、それは卵の形をしている訳ではない。
ポヨンポヨンとバウンドしながら路肩の端に収まった
サッカーボール大の半透明の膜に包まれたソレの中心には、
胎児が丸まって目を瞑っている。
まるで、塞がる事を察した魔界が、慌てて人間界に放出したように見える未熟な胎児は、
触れば破裂しそうな羊水に包まれながらも、神の如く金色に輝いていた。
----------------------------------------------------------------------
それぞれドカティに跨る飯田と後藤は、真っ直ぐ伸びた国道を南下していた。
飯田はダウンジャケットを着、ジーンズを穿いている。
格好つけて素っ裸でバイクを発進させたのは良いが、ものの5分で根を上げ、
震えながら近くの民家に飛び込んで勝手に拝借した物だ。
地平線が見える北海道の広大な土地に伸びる一本道。
二人の後方からプロペラ音が聞こえてきた。
「また何か飛んできた!」
「今度は武装ヘリかよ!」
二人のバイクの頭上を追い越して旋回し、此方に向き直った軍用ヘリには
ロシアの国旗が貼り付いてある。
「飯田さん!あれっ!」
「ああ…」
操縦桿を握っているロシアのゾンビ兵の隣で指示しているのは、
二人の美しきハンターが狙っている獲物だ。
保田圭は、魔界が閉じた事を確認する為にヘリコプターを飛ばした。
途中、疾走する2台のバイクを見付けた。
近付いてみれば見たことのある顔。
保田は挨拶代わりに一発お見舞いするつもりだ。
「わぁあああああ!」
「飛べっ!後藤!」
ヘリの両脇に装着されている小型ミサイルが、二人のバイクめがけて発射される。
ドカティから飛び降りた二人は、爆風に押されて転がり、
破壊されたバイクの破片を受け、更に飛ばされる。
半腰の飯田に、火の着いた大型バイクのエンジンが猛烈な勢いで襲う。
「ぐあ!」
まともに受けた。
十字ブロックで防御はしたが、右腕の上腕部が完全に折れ、ゴロゴロと転がり突っ伏した。
「にゃろう!」
後藤は革のジャケットの懐からマグナムを取り出し、銃口をゾンビ兵に向けた。
ヘリの真下に装着されたバルカン砲が後藤を襲う。
ドドドドドと襲うバルカンは、後藤の左足を撃ち抜いたが、
千切れたように見える後藤の左足は、辛うじて繋がっている。
「なめんなぁあ!」
魔人ハンター、銃人こと次元大介の師事を仰いだ後藤のマグナム弾の軌道は正確だった。
片足を失いながらも、発射された銃弾はゾンビ兵の頭を潰す。
慌てふためく保田の顔が見えて、ちょっと気分が良かった。
ドドドドーーーン!!
軍用ヘリが墜落し、爆発する瞬前に保田は脱出し、国道に着地した。
重傷の二人の前に立つ保田の唇は、笑いの形を作っている。
銃口を保田に向けながら、後藤は千切れかかっている自身の脚を繋げていた。
「ハハハ、流石に魔界の血が混ざっているな。どうだ?もう一度こちら側に来るか?」
「嫌なこった」
保田を見据える半妖の後藤の脚は、くっつき始めている。
「…何故、私を追う?」
半壊した後藤のドカティに手を掛けた保田が、飯田に向かって聞く。
「…オマエの命を狙っている訳では無い」
折れた腕を押さえ、よろめきながら飯田は立ち上がる。
「答えになってないわね」
機械さえも自分の意志どうりに動かす能力で、ドカティを有機体に変えた保田は、
血管らしき物が浮き出て息づかいさえ聞こえてきそうな、変質したバイクに跨り、
髪を掻き上げながら、飯田の答えを更に待つ。
「後藤を人間に戻す方法を知りたい」
保田の唇の端がキューッと上がる。
「知ってるのか?!」
保田は答えず、バイクの向きを変え、エンジンを掛けると、
意志を持ったかのようにドカティは咆哮し、エンジンはグルルルルと唸った。
「待て!どこに行くつもりだ!」
ゆっくりと振り向いた保田は、「ひとつ教えてやる」と言った。
「オマエ等にも朗報だぞ。魔界街の地割れは閉じた。
忌まわしい化け物共は、もう出てこない。
私は今から、それを確認しに行くところだ」
「なっ…!」
低いエンジン音を轟かせながら地平の向こうに消えていく、
保田に奪われたドカティを見送りながら、飯田と後藤は顔を見合わせた。
「オマエ、歩けるか?」
「なんとか…、それより飯田さん、腕は大丈夫?」
「…一週間も有ればくっつくだろ」
「さすが鬼の子…で、…どうすんの?」
「…ははは」
飯田の乾いた笑い。
ハァァァと長い溜息をつく二人の目の前には、真っ直ぐ伸びた国道と、
遙か彼方に見える地平線以外、何も見えなかった…
------------------------------------------------------------------
保田が朝娘市に到着したのは、それから三日後の事である。
魔界が閉じたと感じたのは、ゾンビの行動で分かった。
光りに集まる虫のように魔界に誘われ、地割れに落ちていた死者の群れは、
その行動を停止していたのだ。
ゾンビは三々五々に散らばったらしく、その数も まばらだった。
核の放射能も、魔界に吸いこまれたようだ。
保田は地割れの縁に近付き、底の見えなかった地割れを覗き込む。
サワサワと水の流れる音。
光に反射して揺らめく水面。
地下約200メートル程の所から微かに覗く地底の姿は、
保田の計画の正しさを証明した。
「さて、これからどうしようか…」
この先の計画は、まだ立てていない。
もう、ロシアに帰るのも面倒だ。
腕を組み、思案し始めた保田の目の端に奇異な物が映った。
信号機の下、路肩の隅に丸いゼリー状の物体。
直径1メートル程のプヨプヨした その物体は金色に輝き、
相当目立っているのだがゾンビ達は見向きもしていない。
不思議に思い、保田は その光る物体に近付き、ゼリー状の中身を見た。
「これは…」
目を見張る保田の目に写ったのは、金色に光る人間?だ。
半透明の膜に包まれた羊水に浸って、膝を組んで丸まっているのは、
年の項は13歳ほどの少女。
まるで母の体内にいるかのように安心しきった顔で眠っている少女は、
誰かに起こされるのを待ちわびているかのようだ。
「眠れる美女を起こすのは王子様のキスと相場は決まっているのだが、
あいにく私にはコレしかない…」
そう言った保田の右手は、ビキビキと音を立てて禍々しく尖がり、
刃のようになった指が、躊躇なく少女を包んでいるゼリー状の皮膜を切り裂いた。
この世の空気に初めて触れた金色に光る少女は、ビクンと動いた。
そして、子猫のように伸びをすると、ぼんやりと潤んだ瞳を開き
「ふぁぁぁぁ」と大きなアクビをして、目をゴシゴシと手の甲でしごいた。
更に気怠そうに路肩に座り込んで、ボーッとすること5分、
ようやく保田の存在に気付いたのか、
保田の足下から ゆっくりと舐めるように見上げる。
「…どうだ気分は?…てか、喋るれるのか?」
保田に聞かれ、少女はキョトンとしていたが、
自分の体を見て、段々と表情が強ばってきた。
全裸の少女は、神々しいほど美しく、
神が造った造形美と言っても嘘にはならないだろう。
だが、少女の顔は、それを満足としていなかった。
「完全体じゃない…なんで子供の体なの…?」
少女が最初に発した言葉。
「…?」
保田は腕を組んだまま黙って見ている。
「これじゃあ、一つしか使えない…」
キッと保田を睨む。
「貴女なの?私を起こしたのは!」
「そうだ…」
「なんて事を…私はまだ途中だったのよ!
私はまだ成長するの!それを貴女が…!」
「大人になっていないという事か?」
「そうよ!これじゃダメなの!」
「意味が分からんが…?」
溜息混じりに保田が聞いた。
「いいわ!見せてあげる」
微動だにしない保田を睨みながら立ち上がった少女は、
道路の中央に歩き出し、うろつくゾンビ達の真ん中に立った。
パァァーッと音がした。
少女の体の何かが弾けた。
それは、美しい体を覆っていた金色の光り。
少女を中心に金色の光りは輪を描き、
文字通り光りの速度で、その輪は広がる。
余りの眩しさに、保田は目を閉じた。
数秒後、静かに目を開いた保田は、暫し言葉を失う。
「…どういう事だ…?」
信じられないといった表情の保田の目に映るのは、
キョトンとしているゾンビ達…いや、人間達だ。
たった今まで土色で腐敗臭を漂わせていたゾンビの群れは、
生前の、人の色を取り戻していた。
ゾンビは人間に戻ったのだ。
ざわめき出す人間達…
無理もない。
あの日から2年も過ぎようとしていた。
田畑は荒れ、町は廃墟と化している。
2年もの間、何一つ生産性のない世界を記憶もなく蠢いていただけの人間達は、
突然目の前に現われた、2年後の世界にタイムスリップしたようなものだ。
パニックになるのは当たり前。
自分が何故ここに居るのかさえ分からない人々は、
何かを口走りながら、身近の人間に情報収集するが、
分かるはずもなく、パニックは広がり始める。
いや、それよりも驚くのは、ゾンビの群れを一瞬にして人間に戻した奇跡の力か…
慌ただしく動き出す人間達。
その中で全裸で佇む少女。
自分を包んでいた金色の光りを放出した少女の体は、人の色を為していた。
「…オマエ、何者だ?」
保田は、少女の正体を聞かずにはいられない。
「私に与えられた能力は二つ。…一つは今使った。
そして、もう一つは貴女のせいで使えなくなった」
パニックで走り回る人間達でさえも、その美しさに目を奪われ
言葉を失わせる少女は、怒った顔のまま保田に歩み寄った。
「世界中のゾンビが人間に戻ったのか?」
「そうよ」
得意気な少女。
保田は、その少女の能力を目の当たりにして、もう一つの能力の正体を朧気ながらに気付いた。
「もう一つの能力…魔界をもう一度開くつもりだった…そうだろ?」
ニヤリと笑い返す少女。
「オマエ…魔界から送り出された使者か?」
「貴女、なかなか鋭いわね…正解と言いたいけど少し違うわ。
私は使者なんかじゃない。私は魔界の意志そのものよ」
「意志…ハハハ、そう言う事か」
少し考えれば答えは直ぐ出る。
保田にとって、魔界の意志は手に取るように解かった。
「どういう事?」
訝しげな少女。
「人間界に出た魔界の化け物共は、この世の法則に縛られる。
不死身の肉体はそのままだが、それを保つエネルギーが必要だ。
つまり、人間を食い続けなければ、いずれ飢え死ぬ。
魔界の意志とやらが、ゾンビを人間に戻したのは、
この世に這い出た魔物の餓えを防ぐためだろう?
ふん、魔界もそれなりに慌ててたって事か。
…そして、もう一つの能力で、魔界を再び繋ぐ理由は、言わなくても察しがつく」
「…貴女、何者?」
知りすぎる保田に驚き、今度は少女が聞く側にまわった。
「感じないか?」
ニヤニヤと笑う保田。
「なにを…?」
「私は、魔界の魔物だ」
「嘘だ!」
空かさず返す少女。
「何故そう思う?」
「貴女は言葉を話すし、姿形も人間じゃないか!」
「…オマエもな」
「私は魔界の意志なの!」
「じゃあ、私もそうなんだろ」
「…なっ!」
「オマエは知らないだろうが、魔界を閉じたのは私だ。
そして、オマエの二つめ の能力…
つまり、成長途中のオマエを無理矢理目覚めさせる事によって、
魔界と地上とを再び繋げるという目的を阻止したのも私だ」
「な、何者なの?!」
「だから言ったろ、魔物だって…」
ドスンと、ふて腐れたように座り込む少女。
「決めたよ」
そんな少女を見ながら保田。
「なにを…?」
少女は、ぶっきらぼうに聞く。
「オマエといると面白そうだ。暫くの間、付き合ってやるぜ」
「勝手に決めないでよ」
「なにも知らないんだろ?人間界の事をさ。…私が色々と教えてやるよ」
「ぶー!」
少女は、ほっぺを膨らませる。
「取り合えず、服を着る事を教えてやるか…」
魔界の少女と同じくらいの少女がパニックになりながら、
保田の前を駆け抜ける。
瞬間、首筋に俊速の手刀。
と、少女はパタリと倒れた。
「せっかく人間に戻ったんだ、殺しはしない」
そう言うと、気絶した少女のジャージを脱がし、保田はソレを魔界の少女に手渡す。
「なにこの服?変な臭いがする」
渡されたジャージを着た少女は、クンクンと鼻を鳴らす。
「そりゃそうだ、2年も同じジャージを着ていたゾンビの物だからな。
腐った世界から来たオマエにはお似合いだろ」
ただただパニックになり走り回る人間達は、
二人の会話など、気に留めるはずもない。
「腐ってるのは、この世界もでしょ?」
「…確かに」
彼方此方で始まる人間達の喧嘩を横目に、
保田は苦笑を浮かべて、同意するしかなかった。
世界中のゾンビを、金色の光りで人間に甦らせた奇跡の少女…
その少女が着ているジャージの名札…
名前は『久住小春』と書いてあった…
----------------------------------------------------------------
朝娘市と日本を繋げる朝娘橋。
その朝娘市側のゲートは分厚い門によって硬く閉ざされている。
住民が魔界街を脱出する際に、閉じていったものだろう。
彼等、朝娘市民は、いずれこの街に戻ってくるつもりだったに違いない。
そうでなければ、わざわざ重い門を時間を掛けて閉ざす理由がないのだ。
当ても無い保田と少女が、その朝娘橋のゲート前に座り込んで数時間後。
「おい小春、見てみろ。さっそく来やがったぞ」
保田が、顎をしゃくって上空を見るように促す。
「小春…?、何それ?」
「オマエの名前だよ。ジャージに書いてるだろ」
「…久住小春…私の名前なの?」
「そうだ。…嫌か?」
「…別に嫌ではないけど」
「だったら、決定だ。いいから見てみろって」
小春が促されるままに空を見て、「あっ」と声を漏らす。
「つんくの命令で偵察に来たんだろ」
「つんく…?誰それ?」
「この朝娘市の市長だった男だよ。…先見の明がある切れ者だ」
保田達の上空50メートル辺りを旋回する、ホウキに跨った二人の少女。
「ふーん…で、あいつ等なに?空飛んでるよ。人間なの?」
「魔界街には色んな連中がいる」
「あっ、でも食い殺されちゃうね。あれ見て」
小春が指差す方向から、飛行少女達に気付いた、空飛ぶ魔物が近付く。
バサバサと羽音を轟かせて、餌のホウキ少女達に向かっていくのは、
広げた羽が50メートルを超える怪鳥だ。
と、少女達が怪鳥に向かって銃を撃った。
断末魔の叫びを上げ、ドロドロと溶けながら落下する化け鳥は
地上に激突する前に溶解して、グジャグジャの肉塊に成り果てる。
人間達はその光景を見て、泣き叫ぶ者、呆然と佇む者、逃げ惑う者、様々だ。
「殺した…魔界の魔物を殺した…何なの?あいつ等!信じられない!」
立ち上がって興奮気味に話す小春は、魔物を殺せる人間がいる事に驚きを隠せない。
「魔界街には、私達魔物を殺せる人間が複数存在する」
「マジで?」
「ああ」
目的の物を確認したのか、空飛ぶ少女達はそのまま来た方向に帰って行く。
「さて、待つ事にするか」
保田はそう言うと、ゴロリと横になり眠る体勢だ。
「待つ?」
「世界中の人間が復活したんだ。あいつ等の居場所なんか直ぐ無くなる。
奴等、魔界街の住民達は、この朝娘市に戻ってくるぜ」
保田には確信に近いものがあった。
「それを待つの?」
「ああ、私も元々はココの人間だからな。来たら合流する」
「魔物は殺されるんじゃないの?」
「何十万人もいるんだ。紛れても分からないよ。
それに奴等には、私を殺せない理由もある」
「私は殺されるのはゴメンだわ。今は何の能力も無いもの」
そう言って立ち去ろうとする小春の背中に、保田が声をかける。
「オマエにもメリットはあるぜ。魔界街には、この地割れを造った人間がいる」
ピクリと小春の耳が動いた。
「そいつを利用して もう一度魔界を開くって手も有るんじゃねえ?」
こちらに向き直った小春は、保田の隣に来て、またペタリと座り込む。
「なぁ小春。スリリングな人生になりそうじゃねえか。楽しいと思わないか?
まぁ、何日後になるか分からないが、それまで寝てるわ。何か有ったら起こしてくれ」
「ぶーっ!」
ふくれっ面の小春は、膝を抱えて唇を尖らせた。
-----------------------------------------------------------------
ピクリと保田の体が動く。
「…来たか」
ムクリと起きあがった保田は隣に座っている小春に向かって
「私が眠ってから何日経った?」と聞いた。
「…まだ一日も経ってないよ」
「そうか、さすがはつんく、動きは早いな…ってオマエ何食ってるんだ?」
小春に目を向けると、何やらモグモグと食べている。
見ると、小春の前には缶詰が数個並んでいた。
「暇だったから、そこいらをブラブラしてたんだよ。
コレは誰もいない家から取ってきたの」
「オマエも腹は空くのか?」
「うん、この世界の法則ってやつ?貴女はお腹は減らないの?」
「私はゾンビのエキスを吸い取ってたからな。
…でも、オマエが食べてるの見たら減ってきた」
「はい、どうぞ…えっと…そう言えば名前聞いてなかったね」
差し出された桃缶の中身を一切れ食べながら
「そっか、まだ名乗ってなかったな」
と、保田は自分の名前を教えた。
こちらに向かってくるのは、一台の武装装甲車。
装甲車は群がる人間達を無視しながら朝娘橋を渡ってきた。
ゲート前に陣取る保田達の前に停車し、降りてきたのは二人の魔神。
「セイ?…オマエは確か…」
「…こいつKEIだよ。生きてたのか?」
「よう、レイザーラモンと小力、久しぶりだな。元気だったか?」
保田は、旧人造舎の魔人仲間だったハードゲイとプロレスラーみたいな
格好の二人に、軽く手を挙げて挨拶をした。
「オッケーイ、元気ですよフォ〜〜〜〜〜〜!!」
「と、ところで、ここに何しに来た?教えてくれ」
コイツこんな奴だったっけ?と、少し唖然としながら、
保田がHGの格好をしている魔人に近付く。
「セイ!」
手を挙げて保田を制するレイザーラモン。
「時間がないんだ。作業しながらでもいいですかぁ?」
ジャラジャラと音のする鍵の束を持ちながらレイザーラモンは、
ゲートの端にある管理室に入っていく。
「いいよ。なんなら手伝ってやるか?」
レイザーラモンの後を着けながら保田。
「オッケーイ!じゃあ教えてやるフォ〜〜〜〜〜!!」
今では電気が通っていない重い門は、管理室にある複数のクランクを手動で回して開ける必要がある。
武装装甲車が群がる人間を威嚇し、近付けないようにして、その間に手動で重い扉を開けるのだ。
「一時間後には、次々とやってくる。その間までにゲートを開けるんだ、オッケーイ?」
「オ、オッケーだ」
「ところで、そのお嬢ちゃんは?」
HG魔人は、保田の後ろに隠れている小春に笑いかける。
「し、親戚みたいなものだよ」
手近なクランクに手を掛けながら保田は、苦笑いしながら答えた。
「親戚フォ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」
いちいち うるさいレイザーラモンの行動に切れかかっているのか、
一緒に来た小力は終始無言だ。
「あの人、キレてるの?」
保田の背中をチョンチョンと叩きながら小春。
「キレてないですよ」
小力は即答する。
「……そうですか」
「…そうっす…」
「…」
つんくの決断は早かった。
新生魔界街のフェンスの外でウロウロしていたゾンビ達が、
不思議な光りと共に人間に戻った。
彼等は最初は状況が分からず呆然としていたが、
巨大な魔界の化け物が現われて、彼等を貪り食い始めてから状況は変わった。
パニックになり逃げ惑う人間達はフェンスに群がり、倒そうとする。
銃で威嚇するが、フェンスを壊されるのは時間の問題だった。
そうなれば、新生魔界街もパニックの渦に巻き込まれ、崩壊する事は想像に難くない。
地方の各ラジオ局が放送を始め、ゾンビ達が人間に戻った現象が全国規模と分かり、
つんくは急遽、臨時閣議を開き、朝娘市の状況を魔女に調べさせた。
魔界が塞がり瘴気も消え、人が住める状況になってるとの報告を受け、
住民を朝娘市に戻す事を決断したのだ。
食料等必要な物資を数十台のトラックでピストン移動し、
住民が朝娘市に移動するのに一週間は掛かる筈。
その間、フェンスを守り道路を確保し続けなければならない。
計画を実行するのは早ければ早いほど良い。
この先、人類に待ち受ける物は、農作物の不作による恐慌と
何千匹と這い出た巨大な怪物との戦い…
2年前の世界に戻るには10年は掛かるだろう。
その間を地割れで囲まれた、要塞都市と化している朝娘市で生き延びる。
ゲートで閉ざされた朝娘市は、瘴気が消えた今、
以前と変わらない生活が出来るはずなのだ。
だが、電気水道等のパイプラインは、新しく出来るであろう
日本の新政府に握られる可能性が高い。
つんくには計算があった。
重火器では殺せない魔界の化け物。
奴等を殺せるのは魔界街でも一握りの人間達だけだ。
魔物を殺す魔人を貸し出し、交換条件としてパイプラインを確保する。
ここまでは、良い。
しかし…
約100万人に膨らんだ新生魔界街の人間を
受け入れるキャパシティは朝娘市には無い。
詰め込んでも60万人が限界だろう。
「…と言う訳で、旧朝娘市民30万人がゲートを潜った時点で、門を閉ざす計画らしい」
レイザーラモンの口調は変わっていた。
「食料等を運び終わったら住民達が来る予定だ。
最初に、この街の市民権を持っている旧朝娘市民が優先的にやってくる。
…その人達が通過したしたら扉は閉ざされる」
補足する小力の声も暗い。
「オマエ達…人殺しを生業にしてた魔人のくせに、センチになってどうする…
まぁいいや、門が開いたら、私達は勝手に入るぜ」
保田は、丸くなった旧人造舎の魔人を冷ややかに見下した。
ゴゴゴゴゴゴゴゴ……
2年ぶりに開く魔界街の扉…
静寂に包まれた街並みは、これから起こるであろう
不可思議な物語を綴るに、少しも色褪せてはいなかった…
--------------------------------------------------------------------
モワタ、後はぼちぼち更新します
ハナゲ乙
魔界街2がくるとは嬉しい誤算だったけど
これから楽しみだ
ハナゲタンおつ
ミラクルエース登場で6期の動向も気になるな
さてこれからが楽しだ
猛夢警察の1話って今読むとリアルすぎて笑えるな
被害者は気の毒だと思うが
猛夢警察の続きも読みたいってのは贅沢な悩みかなハナゲタン
エエエェェ(´д`)ェェエエエ
2つ同時進行はキツいよ。。。でも、猛夢警察は一応完結まで考えてたけどね。
魔界街のほうが、この先考えてない。。。
では魔界街はこの辺で・・・
私も猛夢警察の続きが読みたいんですけどぉ
じゃあ一話づつ同時進行で
わがまま聞いてくれてサンクスハナゲタン
どっちも好きだから同時進行はまさに理想ですな
マイペースでがんばってくれ
ハナゲタソ待ってたよハナゲタソ
170 :
名無し募集中。。。:2006/02/02(木) 01:09:31 ID:m7e/hR60O
ハナゲさん乙〜
早く続き読みたいなー
172 :
ねぇ、名乗って:2006/02/09(木) 02:21:22 ID:zUaYuj310
/\ /!
/ヽ-一^ーへ-┐ _/\/ \/\/ |_
┌/ ⌒ 'ー┐ \ /
_r:/ u' ヽ ∪ /⌒'ぐ! > 理 解 不 能! /_
>ノ { v'T7X′ {ヽ〈 }<`⌒/ /
'Yィ!lヽ) { ・ / ∪ u' Y }! j| \ 理 解 不 能! く
l L',/_ ,.)`'゙ '"´´ {__ノ | / \
ヽ'"゙「rェUテ-、 J v i / く .理 解 不 能! /
| } _r'フ^\. U ! / \ \
| l し'‐,'二ニ´ ' / ,′ / 理 解 不 能! __\
. \`ー'´ u _,,. / / / \
`丶.__,,/´ ____,,/_∠  ̄ ̄| /\/\ / ̄ ̄
`丁lT"´\ |/ \/
更新待保
保全
保守
保全
まだまだ待ちますよ
保全
179 :
名無し募集中。。。:2006/03/18(土) 12:15:21 ID:GUbMEYXI0
あげ
180 :
名無し募集中。。。:2006/03/28(火) 18:16:56 ID:1klNY7Bu0
保全
【猛夢警察】
---第十一話---ヤニの暗殺者
野党第一党主民党衆院議員、永田康久は目の前に差し出された
数枚の写真を手に取り、初めて騙された事に気付いた。
写真には自分と愛人とのベッドシーンが写っている。
密会場所の都心のシティホテルのツインルームで
その写真を渡したのは、永田が信頼していた愛人その人だった。
震える手で写真を凝視する永田に向かって、愛人は
「情報提供者を発表したら、この写真をばらまきます」
と、無表情に言ってのけた。
「…ど、どうしてこんな事を?」
永田は、こう聞くのがやっとだ。
それには答えず
「もう、終わりにしましょう。私達」
愛人はそう言って部屋を出ようとする。
「待ってくれ!俺はお前を…!」
一瞬立ち止まった愛人は、醒めた侮蔑の視線をくれただけで部屋を出ていった。
-----「金で魂を売ったのは自分じゃないですか!!」-----
永田の頭に自分の声が幾度となく木霊する。
何故こうなった?
騙されたのは今解かった。
誰が何のために自分を貶めた?
愛人と思っていた情報提供者が消えた今、その答えは
いくら考えても憶測の域を出ることがなく、謎のまま議員人生を終えることになったのだ。
今は亡き、LD製薬社長堀江紋に影のように寄り添っていた
美人秘書、乙部音子と知り合ったのは3ヶ月程前のことだ。
行き付けのバーで一人で飲んでいると
「国会議員の永田さんですか?」
と乙部が声を掛けてきたのだ。
テレビでたまに見る永田のファンだと言う乙部に
永田も満更(まんざら)ではなかった。
知的な乙部との会話は楽しく、たちまち意気投合した二人が
大人の関係になるのは時間の問題だった。
当時、謎の死を遂げた堀江と、与党民自党幹事長との関係は
疑惑の目を持って週刊誌等に書かれたりしたが、
確たる証拠も無く、疑惑は疑惑のままに終わっている。
ベッドの中で乙部は囁いた。
「堀江が億単位の政治献金を竹部幹事長に渡してたの知ってる?
勿論、届け出のない闇献金よ」
「ほ、本当か?」
「証拠のメールも有るわ…国会で追及してみる?」
「是非頼む!」
目の色を変えた永田に、乙部は微笑んで唇を寄せた。
「金で魂を売ったのは自分じゃないですか!!」
通常国会予算委員会で、メールのコピーを手にし、
勇んで疑惑を断定調で追求した永田はヒーロー気取りで興奮していた。
だが…
竹部幹事長は基より、小泉総理からも指摘された「ガセメール」という言葉。
ブーメランのように返ってくる立証責任。
永田は情報提供者乙部を庇いつつ、メールの真贋を確かめるため奔走する。
証拠が無い…
何日経ってもメールが本物だという事が、何一つ立証できないのだ。
その後の主民党党首の対応にも問題があり、
今やメール問題は野党第一党の解党問題になりつつある。
ツインルームのドアが空しく閉まる。
永田は乙部が出て行った、そのドアを呆然と眺めながら
今後の身の処しようを、ぼんやりと考え始めた…
--------------------------------------------------------------
歌舞伎町の雑居ビルの3階にある一軒のカクテルバー。
そのカウンターに座りスコッチのロックを口にする、
内閣調査室の末席に籍を置く高橋克典は、
自分にしなだれ掛かる女性の頭を撫でながらタバコをふかしていた。
「只野さん…言われた通りにしてきたわよ」
目をトロンとさせる女性に微笑み返す高橋は、只野仁という偽名を使っていた。
「良くやったな、音子」
音子とは勿論、乙部音子の事である。
乙部は先程永田議員と別れ、その足でこの店に来たのだ。
高橋の苦み走った声に、腰をモジモジさせる乙部。
疼いている証拠だ。
さて、どうしたものかなと、考える高橋。
自分の工作活動は、これで終わった。
後はこの女を捨てるだけだ。
ニヒルな反面、愛嬌のある笑顔、渋い声に品のある身のこなし、
高橋が女にもてない訳がない。
だが、それだけで全ての女が高橋を好きになる筈もない。
ましてや、乙部のようなプライドの高い女が、
高橋の言うがまま、永田の愛人になり工作活動に手を染める筈がない。
高橋克典は、ある能力を使い、女を奴隷の如く扱う事ができるのだ。
今国会はLD製薬と民自党の癒着が問題視されそうな雰囲気があった。
堀江紋の謎の死も未だに解決されず、
花毛長官の責任問題にも発展しそうな勢いである。
そこで内閣調査室で密かに工作活動をする事になった。
もちろん公務ではない。
命令が下った高橋は、ソレ専門の工作活動員なのだ。
乙部を落とした高橋の工作活動は見事に当たり、
主民党は崩壊の危機が迫っている。
しなだれ掛かる乙部に辟易しつつ、高橋は別れを何時切り出そうかと思案していた。
そこに、何気なく横目に映る女性の影。
高橋の表情が一瞬固まった。
乙部の顔を見る振りをして、椅子3ヶ分空けて座るその女性を確認する。
間違い無かった。
絶対忘れられない顔だった。
---------約半年前----------
内閣調査室に情報が入った。
川崎市にある三菱重工軍産工場で事故が起こったと言うのだ。
密かに開発をしていた思考性多脚戦車の暴走事故である。
重装備をしての発砲実験最中に戦車は暴走した。
他に二台の多脚戦車も実験中だったが、
その二台の戦車が、無人の思考性戦車に砲弾を撃ち込まれ破壊され、
今も小規模な戦闘が繰り返されていると言うものである。
高橋は現場に行き、事の詳細を調べる命令を受けたのだ。
後で分かった事だが、事故は仕組まれたものだった。
戦車の整備士に共産主義の活動家が紛れ込んでいた。
工場内で銃撃戦を繰り返し、政権批判の世論を誘導しようと画策したのだ。
戦車を走らせるのだから、その工場の敷地は広大だ。
高橋が現場に到着した時には、軍によって厳重に閉鎖されていた。
仕方なく身分を明かし、敷地内に入ると顔見知りの公安当局の活動家がいた。
「なんだ?内調が何しに来たんだ?」
「公安3課だって、関係ねえだろ」
「そりゃそうだ」
「まぁ、自衛軍が事件をどう揉み消すかを見届けるだけだな。
で、どうだ?終わりそうか?」
「…硬直状態ってところだ。
高価な戦車をぶっ壊す訳にもいかねえからな」
戦車は半径100メートルに近付いた物を両腕のバルカンで破壊した。
陸自も、それを分かって近付かない。
戦車は忙しなく首を振っている。
どうやら敷地を出る気はなさそうだ。
停滞の時間は2時間も経ったか…
ポツポツと降り出した雨は、やがて大降りになった。
「おい、あれ…」
公安3課の刑事が顎をしゃくる。
「なんだ…女?」
高橋も訝しげに、それを見た。
黒いコートを羽織った、二十歳ぐらいのショートカットの女が、
戦車の真正面100メートル近くまで徒歩で近付いていた。
双眼鏡を覗く高橋は、女の後ろにバタバタと倒れている陸自の隊員を確認する。
「何者か知らんが、死ぬぞ…」
ウイーン…
多脚戦車の両腕が女に狙いを定めた。
タタタタタタ…
発射されたバルカン砲は、女の手前で角度を変え、弾が女の後ろに流れていく。
雨に打たれ、ひっそりと進む女の歩みは止まらず、戦車の手前50メートルまで来た。
主砲が女に向く。
ドン!
発射された砲弾は、女の手前の空中で止まる。
女の上げた右手が止めたように見えた。
ゴトリと地面に落ちる砲弾…
高橋は見た。
女の左目が赤く光ると同時に、思考性多脚戦車が崩れ落ちるように
その活動を停止した事を…
「おい、公安の他の課に あんな奴いたのか?」
高橋は公安の人間じゃないのかと思い、聞いてみた。
「バカ言え、あんな化け物いる訳ねえ…」
公安3課の刑事も呆然としている。
「と、言う事は陸自のサイボーグか…」
「有り得る話しだが…見ろ、連行されていくぞ」
女は、陸自隊員に取り囲まれ、銃を突き付けられ連行されていった。
後で陸自に問い合わせてみたが、そんな事実さえ無かった事にされていたのだ。
高橋は今でも、その出来事、女の事を思うと
動悸が激しくなるのを抑えることが出来ない。
無表情だが、凛とした瞳が忘れられない。
雨に濡れ、ひっそりと佇むその姿を思うと
胸の奥がチリチリと痛くさえなる…
女を道具としか思っていない高橋には、
それが恋だと気付く筈もなかったのだ。
-------------------------------------------------------
愕然としながらも、高橋は自然を装い乙部との会話を演出した。
俺を尾行しているのか?
いや、それは考えにくい。
やはり、乙部か…
兎に角、偶然というのは有り得ない。
どうする…
様子を伺う限り、女に不自然な感じはしない。
ただし、高橋の勘が そうは言っていない。
何者かも分からない女に尾行されるのは初めてだ。
しかも相手は相当な使い手。
「くそっ!」
苛立ちが、つい言葉に出てしまう。
「どうしたの?只野さん」
急に言われてキョトンとする乙部。
「あ、いやゴメン…そろそろ出ようか。
マスター、おあいそ」
寄り添う乙部の肩を抱いて店を出る高橋は、
今日で乙部と別れる事を心に決めた。
「マスター、今の二人、ちょくちょく来るの?」
バーボンのロックグラスをカラカラ回しながら、
高橋が恐れる女、藤本美貴は二人が出て行ったドアを暫く見詰めていた…
ヽ(`Д´)ノ今日はここまでだ!
193 :
名無し募集中。。。:2006/04/07(金) 22:24:55 ID:aPlGsZDF0
キテターー
ハナゲタンおつです
猛夢警察の続き見れてうれしー
タイムリーな内容がまた良いですな
ハナゲ!ハナゲ!
保全
保全
ほぜん
保全
なんかここ寂しいな
ハナゲタンの小説は面白いと思うんだが
昨夜のうちに乙部音子のマンションは突き止めていた。
案の定、バーを出た乙部と只野と言う男は、そのマンションに消えた。
そして直ぐ、その場で乙部と恋人只野との別れ話が持ち上がったらしい。
乙部のマンションの室内での喧噪に嫌気が差した藤本は、
左目での盗聴を止め、帰宅したのだ。
翌日、愛車の三菱社製オンボロミニカで杉並区内の乙部のマンションに向かった藤本は、
マンション近くの路上の一画に人集りが出来ているのに気付き、
何事かと、車を止めて身を乗り出して見た。
パトカーが数台と救急車が一台止まり、現場検証を始めようと
ロープを張りだしている最中だ。
藤本の左目が無線を傍受する。
被害者は乙部音子。
藤本は車を下りて、足早に現場に向かった。
人垣をかき分けロープの前に立つ藤本が見た物は
タンカで救急車に運ばれる乙部の死体だ。
毛布にくるまれた遺体の一部、右足がダランと露出している。
その色は人の色では無い。
黄色に変色した肌、そしてふくらはぎ部分には更に濃い茶色い黄疸が刻まれていた。
刑事達の唇を左目が読む。
死因は分からないが、どうやら毒殺のようだ。
コンビニでの買い物の帰りに倒れ、そのまま藻掻くように死亡したらしい。
人垣に紛れ、こちらを見詰める視線…
一瞬目が合った。
間違いない、昨夜、乙部のマンションで、別れ話で言い争いをしていた只野という男だ。
視線を外した只野は、人混みに紛れるように姿を消す。
藤本は人垣を縫って、只野が消えた歩道に出た。
「…あいつ、ただ者ではないな」
人混みから抜けて10秒程しか経っていない。
だが、只野の姿は100メートル程向こうに見える。
走ってる訳ではない。
物凄いスピードで歩いている。
そして、その異様な徒歩のスピードに、周りの誰しもが気付いていない。
只野は、目の前にいる人間にさえ視認させない程、
自身の気配を消すことが出来る人間なのだ。
「だが、逃がしはしないわ」
藤本は愛車のミニカに乗り込み、軽く目を閉じて、逃走した只野の追跡を始めた。
数十メートル置きに設置されている監視カメラ。
公共、民間、個人、全て合わせると数メートル置きと言ってもよい。
その監視カメラを藤本の左目が操作する。
電脳都市東京で、藤本の左目から逃れる術はないのだ。
「いったい、どういう足をしてるんだ?」
ハンドルを握る藤本は呆れたように独り言をつぶやく。
只野はスピードを落とさず路地を抜け、車道を渡り、迂回を繰り返し新宿駅に着いた。
コインロッカーからバッグを取り出し、駅構内のトイレに入り数分。
それまでのラフなスタイルから一変、髪型を整えグレーのスーツに着替えた只野は、
藤本を完璧に振り切ったと確信したのだろう、余裕の表情でトイレから出てきた。
その表情が愕然と変わる。
「逃げ切れると思ったの?只野さん」
目の前に立ちはだかる藤本に、驚きの表情を隠さない。
藤本が右手を上げ、五指を開く。
「…待て、分かったよ、降参だ」
只野こと、高橋克典は両手をだらしなく上げて負けを認めた。
「私は右手を上げただけよ。それだけで降参?
…貴方、私が誰か知ってるの?」
「…以前、見たことがある。一度だけだがな」
「どこで?」
「何ヶ月か前に、多脚戦車の暴走を止めたろう。それを目撃した」
「…そう」
そう答えただけの藤本が妙に寂しそうに見えるのが、高橋は気になる。
「じゃあ、答えてちょうだい。さっき、何故あの場から逃げたのか」
「そりゃ、戦車の砲弾を素手で止めるアンタと目が合えば、…普通は逃げるわな」
「ハハ…それだけ?」
「…いいだろう、だが、ここじゃ話にならん。
俺のアジトが近くにある。そこで話そう」
人が行き来する駅構内を見渡した高橋は、着いて来いと顎をしゃくった。
「アジト?」
「ああ、俺は仕事柄、マンションやらアパートやらを都内7カ所で借りている」
「…貴方、公安?」
「いや、内調だ。…アンタこそ何者だ?」
「似たようなもんよ」
初めて藤本が白い歯を見せて、薄く笑った。
-------------------------------------------------------
「ここだ」
案内された場所は、駅から徒歩で20分程のボロアパートだ。
「内調って予算無いの?」
ギシギシと音がする鉄製の階段を上がった205号室が高橋の部屋だ。
「安給料の自腹だよ」
自嘲気味に答える高橋は、部屋に藤本を通して、散らかっている
ゴミとも判別できない物々を足でかたした。
「適当に座ってくれ」
「…座れって言われても」
6畳一間の部屋には季節に相応しくないコタツが一脚と
万年布団と脱ぎ捨てられた服やゴミらしき物体…
缶コーヒーを手渡された藤本は、壁にもたれるだけにした。
「さて、何を話すかな?」
「全てよ」
「俺の経歴もか?」
「…お好きにどうぞ」
「…ふん」
一人コタツで胡座をかく高橋は、タバコをふかしながら鼻で笑った。
高橋は国会で問題になってる永田議員のメール疑惑の真相を
隠すことなく話した。
「…つまり、与党の疑惑を隠蔽するために、裏で貴方が色々と画策したって事?」
「そう言う事だ。…後、俺の名前は只野ではない、本名は高橋克典って名前だ」
藤本がメール問題に首を突っ込んだのは、気まぐれからだ。
マスコミで連日取り上げる疑惑に興味が沸き、真相を知りたかっただけ…
それを知ったからと言って、公表するつもりも無い。
久しく花曲署が扱うような事件が無かったので、
自分の調査能力を試すためのリハビリみたいなものだ。
高橋の話しを聞いてメール疑惑の真相を知って納得はした。
だが…
「…何故?」
「うん?」
「何故、喋らなくてもいい貴方の本名まで私に話すの?」
こんなにペラペラ喋る内閣調査室の職員がいるのか、少し疑問に思った。
「ハハ、アンタ俺が本当に内調の人間だって信じてるのか?」
「え?」
「俺は、身分を示す証拠を何一つ見せてないぜ」
「違うの?」
「…いや、本当なんだけどさ」
何故か はにかむ高橋を少し可愛いと思う。
「なら、いいじゃん」
薄く笑う藤本の左目は、高橋の名前を内調のサーバーに侵入して調べた。
高橋克典の名前は確かに在る。
それで充分だった。
今の短い会話で少し分かった。
悪い奴ではなさそうだ。
「あのさ…ちょっと聞いていいか?」
「なに?私の身分は明かさないわよ」
「いや、それは調べれば、いずれ分かるよ」
「…分からないと思うけど」
内調がいくら調べても、花曲署の署員の身元は分からない筈だ。
「それより、気になる事がある。
…アンタ、さっき少し悲しげだったな。
…俺が目撃した、多脚戦車をアンタが破壊した事を告げた時だ」
「……」
藤本は、そっと視線を外す。
「訳を聞かせてくれ、俺は全部話したぞ、それぐらい話してくれても罰は当たらない」
「…あれは思考性戦車よ」
一分程の沈黙の後、溜息をつきつつ藤本は静かに話し出した。
「いくら思考性戦車でも、あれはロボットだ。感情は無いぜ」
「そう、アレは戦略的に最も上手くいく作戦を状況に合わせて思考するだけの機械よ。
でもね、任務によっては抵抗するのよ」
「抵抗?」
「そうよ、抗えない抵抗。あの戦車は陸自を攻撃できないよう設定されてるの。
戦車にプログラムを組み込んだのが反政府系共産主義者なのは知ってるわね、
犯人は、その設定を無視して無理矢理プログラムを組み込んだ」
「…どうなるんだい?」
「まぁ、人間に例えれば、自分の意志に反して体が勝手に動く感じ?
そんな状態が続けば、人だったら いずれ心が壊れるわ。
あの戦車もそう、アレは あと数分でバグが発生して暴走を起こす所だったの」
「機械に心なんて有るかよ」
「無いでしょうね。でもね、その僅かな抵抗が私には分かったの…」
「……」
「私ね、以前に思考性戦車のプログラムを書き換えて動かした事があるのよ。
…陸自の戦車と対峙して分かったの。
あの時の戦車達も、私の命令に抵抗していたんだろうなってね…」
「…だから、あの時、悲しそうな顔をしてたのか」
「あの時?」
「ずぶ濡れのアンタは美しかった」
高橋は、雨に濡れそぼる藤本の物憂げな顔を美しいと思った。
そして、その時の心根を知り、今の藤本の顔を愛おしいと感じる。
藤本を見た時からの、モヤモヤした心が何だったのか今初めて分かった。
これが恋というやつなのだと。
フラリと立ち上がった高橋は、藤本に近付き両肩に手を置いた。
「ちょ…な、なに?」
「アンタもペラペラ自分の事を喋ってたぜ」
「あれ?…なんでかな?」
言われればそうだ、何故こんな事を話したのだろう…
藤本は、目の前にいる高橋の鋭い眼差しの奥に潜む哀色に
自分と同じ色を感じた。
と、おもむろに奪われる唇。
「なななななななななにすんのよ!!!」
突然の展開に驚き、藤本は高橋を突き放した。
「うん?いきなりキスはダメなのか?」
ドンと尻餅を突きながらも、キョトンと聞く高橋。
「はぁぁああ??」
呆れる藤本は、キスと同時に胸も揉まれていたのだ。
「いや、すまん。女と付き合った事が無いんでね」
「はぁぁぁぁああああ????」
昨日まで乙部と付き合ってたのは何なのだ?
藤本は信じられないというふうに首を振りながらドアの方に向かった。
「ま、待ってくれ!」
ドアノブに手を掛けた藤本の背中に高橋の声がぶつかる。
「俺はアンタが好きだ!いや、愛してる」
ドアノブを握る手が止まる。
「俺と結婚してくれ」
「ふ、ふざけないで!!」
そう言って振り返る藤本の顔は真っ赤になっていた。
バタンと大きな音でドアが閉まり、カンカンと階段を下りる音が聞こえる。
ふぅううっと長い溜息をつく高橋は、これが失恋なのかと
尻餅をついたままの体勢で項垂れた。
と、物凄い勢いで階段を上がってくる音。
ドーンとドアが開く。
「な、なに?」
舞い戻ってきた藤本に、慌てて立ち上がる高橋。
「肝心な事を聞いてないわよ!」
藤本は土足のまま部屋に入り込み、高橋の肩を捕まえる。
もつれる足。
倒れ込む二人。
あっと言う間に藤本がマウントポジションを取った。
「何故、乙部が死んだのか聞いてない!」
腹に当たるジーンズ越しの尻の感触が心地良い。
「俺だって知らないよ…」
そう答えながら馬乗りになる藤本を見上げる高橋は、もつれて倒れ込んだときに、
しこたま打った後頭部の痛みさえ忘れていた。
--------------------------------------------------------------
新大久保は人種の坩堝(るつぼ)だ。
住民の半分は在日朝鮮中国人で占められる。
その他を日本南米東南アジアアラブ諸国と各国の言葉が飛び交い
雑多な街を形成していた。
警察でさえ大きな事件がないと手が出せない、治外法権地域として悪名を轟かせている。
当然、犯罪者が身を隠すのにはうってつけの街で、
一般の日本人は忌み嫌い立ち寄ることもない。
その街の中心部に老朽化が激しい5階建てのマンションがあった。
マンションの5階窓から火事かと思われるほどの白い煙が漏れている。
部屋の中はどうか?
テレビの画面が煙で白くぼやけるくらい充満している。
原因は何か?
壁に寄掛り白い素足を投げ出す少女は15歳ぐらいに見える。
その少女の口から長く濃い紫煙が吐き出されていた。
少女はタバコを吸っている。
ただ吸うのではない。
スゥと飲み込むタバコの煙は、一吸いで10センチ程の紙巻きを全て灰にした。
一口で一本、それを20本たて続けに吸う。
普通の人間が一本吸う間に、この少女は一箱吸いきる。
銘柄はセブンスター。
少女は一日60箱を全て灰にするのだ。
痰が詰まり、テッシュにベッと吐き出すソレは、ヤニそのものの色をしていた。
リモコンを片手に次々とチャンネルを変える表情は気怠い。
テレビの上には写真立てに飾られた二人の少女の写真。
笑顔で写る写真には「のの あいぼん」とピンクのマジックで書かれていた。
何回もつく溜息と共に、見るともなしにバラエティ番組を眺めていると、携帯の着信音。
少女は慌てて、投げ出されている携帯を取った。
「もしもし のの?」
番号を確かめずに携帯を耳に当てる声は、
ずぅっと連絡が来るのを待ち望んでいた声だ。
「…って、松浦さんか…」
明るくはずんた声は、電話の人物を覚り、急にトーンが落ち込む。
「また殺しですか…?」
物騒な事を言う少女の首が項垂れていく。
「…はい」
携帯に向かって相槌をうつ、少女は物憂げに答えていた。
----------------------------------------------------------
あれから何時間経ったのだろう…
夕闇が辺りを包みだし、6畳の室内も朱色に染まりつつある。
何故、こうなってしまったのかは分からない…
好き嫌いの下らない言い争いをしているうちに、
自分からキスをしてしまった事は憶えている。
万年床に、シーツにくるまれた裸の二人。
藤本は高橋の胸を枕に、胸板に のの字を書いていた。
「嘘吐き…」
「本当だって」
肉体関係から始まる恋愛が有ったっていい。
実際、藤本は余りこだわらないし、今はこの男を好きになっている。
数回にも及ぶ愛の交換は、思考を鈍らせ、藤本をまどろみの世界にいざなう。
事実、高橋の性のテクニックに藤本は翻弄されたのだ。
SEXに相性というものが有る事には納得した。
だが、好きになった男は納得出来ない事を言う。
高橋は、初めての恋愛だと言い張る。
初恋だとも言った。
絶対嘘だと思っても、何故か嬉しかった。
「ねぇ、貴方の言う技は使ったの?」
「…仕事以外には使わない」
「嘘…」
「本当だ…」
何度と無く交わされる、短い会話…
女を手玉に取る高橋克典だが、彼の言ったことは嘘ではなかった。
女を自由に操る彼の技は、使ってはいない。
そして、使わない事に理由はない。
使いたくないから使わないだけだ。
女を道具としてしか見ない高橋は、
今まで仕事以外で女と寝た事は無かったし、寝る気も無かった。
育った環境のせいで、恋愛感情という物が分からなかったので仕方がなかったのかもしれない。
高橋は幼い頃から、自分の家に伝わる古式武術の辛い修行の毎日を送った。
恋愛は元より、友達との遊びさえ許されなかったし、
実際修行の厳しさで肉体は極限まで酷使され、それどころではなかった。
学校から帰ってから寝るまで修行に明け暮れた日々は地獄と言ってもよい。
修業途中だったが、高校を卒業すると同時に家を飛び出た。
当て所無く東京をさまよったが、途方に暮れた頃、花毛長官に拾われた。
後で分かった事だが、花毛長官と旧知の仲の高橋の祖父が手を回してくれたらしい。
気に掛かる事もあった。
一人残した妹の事だ。
妹一人に修業を押し付ける形での家出は心残りだった。
だから、妹の高校卒業と同時に東京で働けるように花毛長官に相談した。
その妹は今、花曲署という曰わく付きの警察署で警官をしていると言う。
そう、高橋愛は彼の妹。
そして、彼の武術は高橋流念法。
高橋克典の念技は、女の自由を奪い姓奴にする念法なのだ。
まどろみの中、突然…
「あっ、死因が分かったわ」と、藤本が高橋の胸に顔を埋めながら言う。
「へ?なに?」と、高橋。
「乙部の死因よ」
「え?」
「うふふ」
藤本の左目が赤く光っていた。
「私の左目はコンピューターの端末になってるの。これで情報を得るのよ」
「オマエ、ナニしてる最中に そんな事してたのか?」
「なに言ってるのよ、もう!」
藤本はキュッと高橋の腕をつねった。
乙部音子の死因は急性ニコチン中毒による心不全による心停止。
足にニコチンの凝縮した唾液らしき物が付着していた事から、
そこから体内に毒性の強いニコチンが吸収されたらしい。
タバコを吸っている乙部でも、致死量を超える猛毒ニコチンには耐えられなかったのだ。
「ニコチンで人が死ぬのか?」
タバコをくわえる高橋が、上り立つ紫煙を不思議そうに見上げる。
「過去に4件、同じ事例があるわ。毒殺ね、警察では犯人をヤニの暗殺者と呼んでるらしいわ」
その高橋のタバコを取り上げ、紫煙を吸い込んだ藤本は、
灰皿にタバコを揉み消して起きあがった。
「…行くわ」
そう言って着替え始めた藤本のジャケットから警察手帳がポトリと落ちる。
「こ、これは…」
拾い上げた高橋の声が詰まる。
藤本が慌てて取り返したが後の祭りだ。
「殺人許可証じゃねえか。オマエ、猛夢警察か?」
「エヘヘ、バレたか」
「エヘヘじゃねえ!」
「なに慌ててるのよ?」
「いや、あの…あ、あのさ、…高橋愛って娘知ってるか?」
「…え?知り合い?」
「…お、俺の…妹だ」
「えええぇぇぇええええええ!!!!い、妹????」
「は…はは……あははは」
乾いた笑いを二人同時にだすと、藤本はペタリとその場に座り込んだ。
ヽ(`Д´)ノ今日はここまでだ!
>>193-199なかなか更新せずに正直すまんと思ってるYO−(;´Д`)-
でわでわ
更新キテタ♪いいね
ハナゲたん乙です
この作中でミキティがはじめて女っぽく見えた
ほとんど男だったからな
あいぼん タバコは程々に
おっと保守
保
保全
224 :
名無し募集中。。。:2006/06/21(水) 01:30:47 ID:SSU1i/4gO
保全
ほぜん
a
ほぜ
a
ho
まだまだ待つ
ほ
保全
ほ
保全
a
hozening
aa
ho
荘厳な雰囲気に包まれた大理石の廊下を数人の記者に囲まれながら歩くのは
内閣官房長官の畑毛(ハタケ)と言う男だ。
彼は時期総理の有力候補として、新聞の世論調査でいつも名が上がっている。
その畑毛が国会議事堂のエレベーターに乗り込む花毛を見つけ、
記者を振り切り花毛と同じエレベーターに乗り込んだ。
「今国会はライブドア製薬等の疑惑で、どうなる事かと思ってましたが、
さすが花毛長官、うまい手回しで野党の追求も尻つぼみになりましたな」
「…何の事です?」
メール疑惑の背後に花毛率いる内閣調査室が動いていた事に対しての言葉だが、
花毛は、そっけなく答えるにとどまる。
「ハハ、まぁいいでしょう。ですが良かったですな。
疑惑の真犯人が表沙汰になる前に殺されて」
「……」
エレベーター内には花毛の私設秘書と、畑毛の秘書が同乗しているが、
物騒な畑毛の言葉に、一瞬空気が固まったような緊張が走った。
「あっ…」
その空気に気圧されたように、花毛の秘書が持っていた書類の束を落とす。
慌てて拾い上げる秘書の手に、そっと畑毛の手が触れた。
「大丈夫かね?」
ノートを数冊拾い上げた畑毛が、秘書に手渡しながら優しく聞く。
「は…はい、すみませんでした」
若い美人の秘書に心奪われて、このような態度を取った訳ではない。
幾分かの恐怖におののいて、花毛の機嫌を伺ったというのが正直な所だろう。
その証拠に、
「でわ、私はこれで…」
そう言ってエレベーターを出るハタケの声は、いささか震えていた。
花毛に対して、このような挑戦的な態度を取った事の意味を畑毛自身理解している証だった。
花毛は今の警察庁長官の地位についてから10年以上の歳月が過ぎる。
その間に、総理大臣は4回変り、内閣改造は十数回にも及ぶ。
歴代内閣は十数年もの間、花毛を移動させる動きは勿論の事、意志さえ示した事は無い。
何故か、それは花毛を恐れての事だ。
花毛が初めて警察の実権を握った頃、
多発する犯罪に頭を悩ませていた、当時の総理官邸は
花毛が非公式に創り出した攻勢の組織、猛夢警察を黙認する事にした。
花毛は、その内閣の事なかれ主義の姿勢を利用し、次々と立件できない事件を
容疑者を殺すという手段で秘密裏に解決をしていく。
花毛が行なってきた国家権力による殺人を内閣が公式に認めれば、与野党問わず、
いや、日本の政治制度、議院内閣制さえ崩壊しかねない。
非公式とはいえ、内閣が事実上容認しているという証拠を積み立てて行き、
それを利用して、ついには内閣調査室室長を兼任する地位まで手に入れた花毛に対し、
内閣は花毛を切り捨てる事が出来なくなってしまっていた。
絶対に表には出せない、歴代内閣が容認する殺人組織。
花毛は、例え総理でも刃向かう事の出来ない、絶対の権力を手に入れたのだった。
その花毛に対し、ハタケが発した言葉。
彼なりの挑戦なのだろうが、露骨すぎる。
花毛は乙部音子殺害の裏に、ハタケの影を読み取った。
「なつみ君、盗んだか?」
エレベーターを降りて、長官室に向かう途中、
花毛に寄り添うように歩く私設秘書、安倍なつみは「はい」とだけ返事をした。
元猛夢警察刑事にて、現私設秘書の安倍なつみは触れた人間の記憶を盗む。
花毛の今の地位は、歴代内閣閣僚及び野党党首等、重要人物全てのスキャンダルを
盗んだ『心盗人』安倍なつみの功績も大きかったのだ。
--------------------------------------------------------
「畑毛官房長官は、花毛先生を恐れています。
次期首相候補の彼は、次の総裁選に立候補するつもりですが、
マスコミ等により、花毛先生の総裁立候補も取り出されている昨今、
総裁選出馬を表明すれば確実に次期総裁に当選し、内閣総理大臣になれる
花毛先生に立候補されては困るのでしょう。
畑毛官房長官は、次の総裁選がラストチャンスと考えていらっしゃいます」
「…バカな男だ。そんなに総裁の椅子が欲しければ、くれてやるものを…」
安倍の話を聞く花毛は、警察庁長官室の重厚な椅子に座りながら、
その椅子には似合わない安物のタバコを吸っている。
銘柄はセブンスターだ。
その花毛、総理総裁の地位に何の魅力も感じていない。
今の立場が、自分の正義を行使するには最高と感じているからだ。
故に、畑毛の勘違いに哀れみさえ憶える。
「そして、先程の挑発的な発言には裏があります」
「なんだね?」
「畑毛官房長官は、あの松浦亜弥と組みました」
「…なに」
「畑毛官房長官は松浦の大凶運を手に入れました、それがあの発言になったのです。
そして、その見返りに、松浦は畑毛総理大臣という国家権力をバックに持つ事になります。
つまり、お互い理に適ったギブアンドテイクな関係です」
松浦亜弥に敵対する者はその大凶運により破滅する。
当初、松浦の捜査に当たった大富豪刑事こと石川梨華は、
松浦に、その存在を知られたために破滅の道をたどった。
石川財閥のグループ企業の株価操作が明るみになり、
石川モータースのリコール隠しも発覚、株価の大暴落により
石川の父親、つまり石川グループ総裁の会長職辞任につながった。
松浦の大凶運を恐れた石川梨華が捜査から手を引き、
大凶運は離れたが、大富豪から小富豪になりさがったままだ。
「乙部女史殺害の件は?」
「はい、花毛先生の動きを牽制しようと、畑毛官房長官が松浦に殺しを依頼したようです。
ただ、殺し屋の素性までは畑毛官房長官は知りません。
そこまではタッチしていないようです」
エレベーター内で少し手が触れただけなのに、そこまでの記憶を盗む
安倍なつみの盗心能力の高さは他の追随を許さない。
「うむ、確かその殺し屋は『ヤニの暗殺者』と呼ばれる正体不明の殺し屋との報告を受けている。
…松浦と殺し屋、その辺の繋がりから当たってみるか…
なつみ君、ご苦労だった。あとは花曲署で引き継がせる。
君は通常勤務に戻ってくれたまえ」
一礼して、秘書の椅子に戻る安倍なつみと入れ替わるように立ち上がった花毛は、
鋭い眼光そのままに、長官室を後にした。
------------------------------------------------------------
松浦邸…
広大な土地に建つ白い豪邸は、結婚後急死した堤グループ会長の遺産を
全て受け継いだ物の内のひとつだ。
他人の運を喰らい、自分の物にする強運は、まさに大凶運そのもの。
松浦の今の地位は、人の不幸の上に成り立っている。
犯罪を犯さなくとも、自分に敵対する人間は、ことごとく不幸に見舞われ、悪ければ死ぬ。
松浦はその事に気付いていながら、いや、いるからこそ、
その大凶運を最大限に利用し、今の松浦財閥総帥という立場を手に入れていた。
「約束の物よ」
豪華な家具に彩られた、30畳もある応接室で、
松浦が手にしている物は、安っぽい紙巻きタバコ、セブンスターのボックスだ。
そのセブンスターの箱を一個、放るようにテーブルに投げ出す。
慌てるように、タバコの箱を拾い上げる手が震えているのは、
妙に顔が青ざめた加護亜衣だった。
乙部女史殺害の報酬が、このタバコ一箱だとは、
知らぬ人間が見たら、首を傾げるに違いない。
「す、吸ってもいい?」
言いながら、松浦の返事も聞かず、一本取り出す加護は
震える手で、キティちゃんのシールが貼ってある百円ライターで火を点けて、
思いっきり紫煙を吸い込んだ。
「はぁぁぁあああ」
溜息とも吐息ともつかぬ至福の声を上げながら弛緩する体は
深々と重厚なソファーに沈む。
血色が見る見る甦る、加護亜依の顔に冷たい視線を送りながら
「ゴールドセブンスター…そんなに美味しいの?」
そう聞く、松浦の唇の端は歪んだ笑みを作っていた。
加護が手にしたタバコは普通のセブンスターでは無かった。
ゴールドセブンスター。
何万枚の葉から一枚しか取れない、黄金に輝くタバコの葉は、
奇跡の偶然が生み出した天からの贈り物だ。
年に十数箱しか生産されない、そのタバコは勿論市販される訳なく、
手に出来る人間も限られている。
松浦は、そのタバコを入手できる数少ないVIPの内の一人なのだ。
----------------------------------------------------------
一年前…
財界人達が集う、松浦邸でのパーティに、元アイドルだった松浦の事務所の後輩の
加護亜衣と辻希美がペアを組んだダブルユーというアイドルユニットが招待された。
余興に歌を歌う予定だったが、余りにも場違いだったため、
座の端っこでジュースを飲んでいた加護と辻希美。
居たたまれなくなった加護が、一服するために座を外し、
トイレに行った事から、人の道を外す事になる。
「あかん…もう帰りたいわ」
便座に座ってバージニアスリムをフカした加護は、トイレの個室から出て驚いた。
「貴女、タバコ吸うの?」
そう言いながらニヤニヤ笑う松浦が、腕を組んで大理石の壁に寄り掛かって
加護が出てくるのを待っていたからだ。
「じ、事務所には黙ってて…」
哀願する加護に松浦は
「これ、吸ってみる?」
そう言ってセブンスターの箱から一本取り出して、加護に手渡した。
「普通のセブンスターじゃないわ。
一本百万円以上で取引されてる最高級品よ」
「い、一本、百万円!?」
「私はタバコは吸わないから、持っててもしょうがないし…」
「じ、じゃあ…」
松浦に促されるようにして、火を点けた。
そこから、加護亜依の人生は変わってしまったのだ。
濃密で濃厚、それでいて芳醇。
体に染み渡る幸福感…
人生の至福とは、この一服の為にあると感じた。
翌日から、タバコの銘柄はセブンスターに変えた。
だが、何本吸っても、何箱吸いきっても、ゴールドセブンスターの一本には到底及ばない。
あの至福感を求めてチェーンスモーカーになった。
ニコチンは体に染みつき、一日数箱が、半年後には数十箱になる。
ニコチンで血色が悪くなり、顔は蒼白、手は震えが止まらず、
目は幾つかの色を失い、舌は味を失う。
やがて、唾さえも茶色に染まる。
そんな人間はアイドルではない。
そんなアイドルは必要ない。
仕事をサボるようになった加護を事務所は別の意味で歓迎した。
体よく追い出せるからだ。
事務所を追放された加護。
数日後、期せず、人を殺すことになる。
幾分反省した加護は、事務所の元マネージャーに復帰の事を相談するつもりで、
マネージャーのマンションの前で帰りを待っていた。
帰ってきたマネージャーを掴まえたのは良いが、
邪険にあしらわれた事に腹を立てた加護は、
顔に唾を吐きかけて逃げたのだ。
翌日、辻から電話がかかってきた。
元マネージャーが、ニコチン中毒で突然死したとの事だ。
「のの…ごめんな…」
辻は、加護のことを何時も心配してくれていた。
辻は、何時も加護のことを庇ってくれていた。
加護は、その全てを裏切ってきた。
たかが、タバコの為に…
されど、忘れる事が出来ないタバコだった…
携帯を切った加護は、それ以来、辻と連絡は取っていない。
連絡を取ったのは、松浦だった。
泣きついてきた加護の話しを聞いて、松浦は加護の唾液を調べた。
結果、マネージャーを殺したのは加護の唾だと証明される。
以来、堕ちた暗殺者として生きる以外方法が無くなってしまったのだ。
---------------------------------------------------------------------
「さてと、呼び出したのは、もう一つ用事が有ったからなの」
ゴールドセブンスターを一本吸い終わり、
弛緩した体をソファーに預けている加護に向かって、
松浦は、有無を言わせない口調になる。
「もう一人、殺してもらいたい人間がいるわ。
成功したら、今年収穫分のゴールドセブンスター全てをあげる。
それだけの大物と思って仕事をして」
政治家の顔名前など、一人も知らない加護だ。
その加護の前に一枚の写真。
「貴女は興味ないと思うけど…次期総理の有力候補の一人よ」
写真の人物は花毛長官だった。
ヽ(`Д´)ノ超お久しぶりです、今日はここまでだ!
う〜ん…なんだか胸にくるなぁ…
おもしろいけど
お〜、更新乙ハナゲたん。
すごいことになってるな、あいぼん…
a
hozen
a
保全
hozen
保全と
保全
ho
ho
あけおめー
264 :
ねぇ、名乗って :2007/01/02(火) 00:39:36 ID:vzGUE1q00
kaos
ome
266 :
ねぇ、名乗って:2007/01/10(水) 00:13:31 ID:t7bUjbRJ0
ko
hozening
268 :
ねぇ、名乗って :2007/01/25(木) 10:41:33 ID:KYBVMvoV0
もう書かないのかな?
ハナゲさん…
保全
ほぜん
ho
a
ハナゲタン…
保全
保全
ハナゲ氏へ
もう書かないのなのなら、その旨レス頼む
こちらもキッパリあきらめるから
よろしく
加護を殺したのは、マスコミだった。
加護が抜け、一人活動をしていた辻希美が、フヅテレビ春の特番でレポートしたのが
『政治家の一日秘書体験』であった。
花毛長官の秘書を体験している辻。
カメラは花毛に無邪気に寄り添い、トコトコと花毛にマイクを向けながら歩く辻の後ろ姿を追う。
花毛が外出しようと外に出た時にソレは起こった。
目深に被ったキャップとサングラスとマスク。
顔は分からない。
背格好から少女と分かる女が近付き、マスクを外し花毛に向かって唾を吐きかけた。
花毛は咄嗟に手の平を向け、その真っ茶色の唾を受け止める。
手の平に広がるドロリとした唾を中指で確認した花毛は
「オマエか…」
とだけ言って、おもむろに懐に手を入れ一本の紙巻きタバコを取り出し、
ライターで火を点け、紫煙を少女に向けて吐き出した。
安物に見える、その紙巻きタバコ。
銘柄はセブンスターである。
ただし、ただのセブンスターでは無かった。
吹き掛けられた紫煙を吸い込み、少女はヘナヘナと腰を落としたのである。
「オマエの事は調べてある。残念だったな、私の心臓は機体化してある。
猛毒ニコチンで、私を心臓麻痺で殺そうしても無駄だ」
花毛は吸いかけのゴールドセブンスターを少女の足下に放った。
「そのタバコのせいで人生を棒に振るつもりか?」
花毛は全てを調べ尽くしていた。
少女の正体が『ヤニの暗殺者、加護亜依』であることを、
今日、この時をもって暗殺に出る事を…
全てを知っていて、普段はテレビ取材を受けない花毛は、自ら取材を受けたのだ。
辻希美に密着レポートをさせる条件で。
「あいぼん!」
さすがに辻も気付かない訳はなかった。
「のの!」
目深に被った帽子が、裏目に出た。
加護は辻とカメラの存在に気付かなかったのだ。
加護は逃げた。
辻の哀願するような叫びを背中に受けながら。
取材はそこで終わった。
フヅテレビの会長と懇意な花毛は、VTRを全て破棄させた。
だが、取材班の口までは止めなかった。
証拠能力のない情報が、週刊誌を賑わすことになり、
加護は完全に芸能界から追放されたが、花毛は意に介さなかった。
週刊誌がガセネタで有名なゲンダイという事情もあるが、
そんな事でガタ付く、権力を有していないからだった。
加護の行方は、それっきりになった。
数ヶ月後、花毛の長官室に後藤真希が現われた。
暗殺失敗直後に松浦からも縁を切られた加護は、傷心のまま樹海に入ったとの報告だ。
「…そうか」
そう言って花毛は、目を閉じて沈黙した。
18歳という年齢を考慮し、人殺しには甘い制裁のつもりで辻希美と対面させたが、
結果的には、自ら命を絶つほどの衝撃を加護は受けていたのだ。
その後の追跡調査に藤本を当てていたら、加護の樹海入りを止めてたかもしれない。
だが、藤本に調査をさせる訳にはいかなかった。
藤本には、別の調査をさせている。
それは、重要な捜査だった。
高橋愛を場合によっては抹殺する。
それが、藤本に与えられた任務。
いつの間にか高橋愛の思考は、常軌を逸脱していたのだ。
始まりは、松浦亜弥殺害であった。
花毛は何の指示もしていない。
自由に行動できる猛夢警察である。
しかし、重要案件には、必ず花毛の許可を必要とする。
松浦が加護を切り捨てたと知った高橋は、その一時間後に松浦を殺した。
敵対する人間は必ず不幸になる凶運の持ち主も、高橋には通用しなかった。
何故か?
それは、高橋の決断の早さにある。
悪即斬。
高橋は、殺すと決めたその足で、松浦邸に向かい、そして殺したのだ。
高橋には、高橋なりの正義があるのだろう。
だが、その稚拙な思考は、猛夢警察には必要ない。
法で裁けない、もしくは抹殺する必要がある場合だけ殺す。
それが猛夢警察の存在意義だからだ。
確かに松浦は、加護を操り殺人を指示していた。
いずれは猛夢警察の手が下るだろう。
だが、高橋のそれは違っていた。
彼女は、気分で殺すのだ。
そして、それは現実の物となる。
殺す必要のない軽微な犯罪まで、高橋は許さない。
ネットや新聞、週刊誌等の情報で、勝手に事件の内容を思いこみ、
情報収集もしないまま殺した人数は20人を超えた。
殺した人間は、紺野に報告しなければならない義務があるが、
高橋はそれさえ怠るようになり、紺野が気付いた時には手遅れな状態になっていたのだ。
咎められ、反省しているようでいて、実はしていない。
高橋は、思想調査の対象となった。
次に無益な殺人を犯したら、自らの手で殺す。
義理の妹になるかもしれない高橋を捜査すると言い出したのは藤本だ。
藤本には、彼女なりの計算があるのだろう。
花毛は、藤本に任せる選択をした。
「藤本に張り付け」
長官室で、花毛は後藤に命じた。
「どういう意味?場合によっては二人とも殺せと?」
「嫌か?」
「…いいえ」
後藤はゆっくりと首を振った。
その表情は、氷よりも冷たかった。
続きを書かなきゃって、いつも心の何処かに引っかかっていた。
だらだら時間が過ぎても落ちないスレに申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
でも、最初の一行を書く気力が湧かなかった。
今日
>>276のスレを見て、直ぐに書き出した。
二時間で書いた稚拙な物だけど、きっかけってあるんだなぁと思った。感謝です。
次回で最終話になります。でわ。
ハナゲ・・・
285 :
ねえ、笑って:2007/04/12(木) 12:36:48 ID:fHlpMEbhO
更新おつハナゲタン
最終回楽しみにするよ
ほ
ho
a
a
皆さん、申し訳ございません。
ここのところの一連のスキャンダルで、本当に萎えた。
一欠片の気力も無くなりました。
さて、書いてみるかと思った矢先、辻のデキ婚で工エエェェ(´д`)ェェエエ工となり、
今回の藤本で、もうどうでもよくなってしまいました。
あまり居ないと思いますが、楽しみにしていてくださった方々にお詫びいたします。
保守してくれた方にも済まない気持ちでいっぱいです。
でも、本当に書く気力が無くなりました。
申し訳ありませんでした。
また、いつかどこかでお会いできれば嬉しいです。
ハナゲ…
一応、どんな最終回を考えていたか書きます。
夕日に染まる海岸で高橋と藤本が話しをしています。
内容は、ありきたりな日常会話です。
会話が途切れがちになり、高橋が藤本を見ると口から血を流し藤本は絶命しています。
誰が殺したかは書きません。
日が沈み、落ち込んでいる高橋の元に、気だるそうな後藤が何処からか現れ、
藤本の死体を引きずるように持ち去っていきます。
場面は変わり、新たな刑事候補が何処かの手術台の上で目を覚まします。
彼女の右目と左手には、藤本の置き土産の機械の目と重力指が備わっています。
何も知らない彼女に最初に下される命令は、猛夢警察の壊滅です。
花毛は自らの手で、自分が造り上げた組織の破壊と新たな組織の創造に着手する。
命令を下された女は花毛に言います。
「ゴールドセブンスターある?」と…
とまぁ、こんな話しで終わらせるつもりでした。
それでは、今までありがとうございました。
ハナゲ・・・
またどこかでな
test
test
test
.
tast
tost
taste
tesuto
最下層 よしかごがデカ顔石川ヲタによってageられてしまった。
304 :
ねぇ、名乗って:2007/09/29(土) 00:13:27 ID:ZKA714zp0
age
testis
306 :
ねぇ、名乗って:2008/01/14(月) 22:42:31 ID:sqUSlO6J0
てす
sage
てs
テス
311 :
ねぇ、名乗って:2008/10/14(火) 18:33:36 ID:xyOWspwQ0
age
上の見解はあくまで俺の勘だから保障は出来ない
だな
それと娘になんの関係が?