東京に続く高速道路は案の定、何十台もの事故車で道が塞がっている。
吉澤のバイクは機動力を活かし、先回りをして道路の状態をローラー車に乗り込む福田に伝えた。
それを想定して用意したローラー車を始めとする重機は、改造車両という事もあり、
抜群の機動力を発揮して壊れた車を次々と路肩に押し込んだ。
そして、ゾンビの数も数えるほどしか居ず、放って置いても事故車撤去には問題が無かった。
時速20キロ程度で高速道を上る先遣隊。
ここまでは予定通りの展開だった。
「……‥」
最後列のコルベットに乗り込む飯田が、黙って静かにブレーキを踏んで車を停車させた。
「どうしたんです?」
麻琴が聞いたが、飯田は
「ちょっと…」
と、言い残し外に出た。
嫌な気配を背中に感じた飯田は、外に出て「それ」をはっきりと感じ
「アンタ達、車の中で待ってな、絶対出てはダメだよ」
と真琴達に念を押して、高速道を走り始めた。
押し寄せる邪悪な念に向かって…
はたして、奴等は来た。
何処からか拾ったパトカーに乗り込む、市井、後藤、保田の魔界衆3人組は、
飯田を認めるとニヤニヤと笑いながらパトカーを加速させた。
それに対し飯田は、足元に落ちてるコンクリート片を掴みあげると、パトカーのボンネット目掛けて
剛速球投手のように振りかぶりコンクリを投げつけた。
ボンネットを突き破り、エンジンを破壊する飯田のコンクリート塊は
パトカーの軌道を狂わせ路肩の壁に激突させる。
大破したパトカーからノソノソと出てきた3匹の獣。
後藤が血だらけになってる市井を指をさしてゲラゲラ笑う。
「…アンタだって腕の骨折れてるよ」
保田に言われて初めて自分の腕がプラプラと揺れてるのに気付いた後藤は
「ありゃ!ホントだ」
と、またしても爆笑しながら自分の腕を治そうと、骨の位置を確かめるように繋ぐ仕種をした。
「ハハハ、簡単にくっ付いちゃった」
腕をグルグルと回して、腕が治った事を確認した後藤は
「どうよ、凄いでしょ」と自慢気に市井を見た。
そんな後藤を無視しながら、小馬鹿にした表情で薄ら笑いを浮かべながら飯田を見詰める市井。
「オマエ…知ってるぞ」
飯田に気付いた保田が、記憶を辿るように声を漏らした。
「私の心臓を潰した刑事だ…」
保田の瞳に、憎悪の炎が燃え始める。
「ハハハ…私も知ってる。確か魔人ハンターだよ」
後藤も、生前時の憧れだった魔界刑事を指さす。
「…知らない人は、いないみたいだねぇ」
元警察官の市井も飯田の事は知っている。
「私が警官だった頃は、魔人ハンターは天上人と同じだったなぁ」
薄ら笑いを止めない市井は、前に出ようとする保田を制し、静かに飯田の前に立つ。
「でも、今は余裕で勝てそうな気がしてならないよ」
両手を広げて、おどけてみせる仕草が憎々しい。
実際、飯田はカチンときた。
その時…
テケテケと飯田に近付く、小さな影。
その影に向けて、市井は半笑いのまま 右手人差し指から吸血血管を伸ばす。
小さな影は飯田の様子を見に来た辻だった。
しかし、その顔面に伸びた悪魔の血管は、寸前で止められた。
止められたと言うより、咄嗟に辻を庇った飯田の左手に吸い付いたと言った方が正確だろう。
兎に角、飯田の左手に張り付いた市井の血管は、根を張るように飯田の体内に潜り込んだのだ。
http://blanch-web.hp.infoseek.co.jp/cgi-bin/data/IMG_000098.jpg 「フン…大したこと無いねぇ。どうしようか?
瘴気を送って即死させるか…それとも…」
飯田の体内で根を張る吸血血管は、体液を吸い取る事を選択した。
飯田の左手が急激にミイラのように細くなっていく…
…しかし、それ以上の進展は無かった。
むしろ、腕が太くなっていくようにさえ見える…
実際に飯田の右腕は革のジャケットを破り、筋肉の塊が露出した。
更に信じられない事に、吸い取りきれない程の「何か」が、市井の吸血血管を埋め尽くし始めた。
「相手の攻撃を受け止めてから、反撃する…分の悪い戦法じゃのぅ。
ふん、オニ子らしい闘い方じゃわい」
「飯田さんのお爺ちゃん!」
いつの間にか現われた小川龍拳が、飯田の額に手を置く。
「僅かだが、瘴気を送り込まれたか…ふむ、一週間は動けんじゃろう」
「姉さま!」
麻琴と加護も飯田を囲む。
「心配せんとも、オニ子は死にはせんよ」
飯田を辻達にまかせて、龍拳はフラフラと立っている、首が取れかかっている市井に近付いた。
「待ちんしゃい」
そう言って龍拳を止めながら、市井に近付くのは中澤裕子だ。
紙に五芒星を描きながら市井の前に立った中澤は、市井の胸にペタリと魔紙を貼り付けた。
「バカ者、式神の分際で何が魔界からの使者じゃ。
…コヤツは確か紺野の使い魔だった筈…何やっとんじゃ、あの馬鹿娘は」
ブツブツ言いながら、市井を式神に戻した中澤は、今度は後藤を見詰めて、
「ほう、オマエ…人じゃな。どうやって此の世に舞い戻った?」
と、興味津々の顔付きだ。
ットン!と後藤の前に出た龍拳の拳には鬼の梵字が浮いている。
「人か魔物か試してしんぜよう」
言うなり、小川流鬼拳を呆然としている後藤の胸に叩き込んだ。
「うぎゃぁぁああ!!」
絶叫を上げながら転げまわる後藤。
「オマエが魔物なら死ぬ。そうでなければ助けてやろう」
血反吐を撒き散らす後藤を冷ややかに見詰める龍拳は、
暫くしてピクリとも動かなくなった後藤の胸に手を当て、
「ふむ、僅かながら心の臓は動いておる…」
そう言うと、麻琴を手招きして呼び寄せ、自分の霊柩車に運ぶよう指示を出した。
「あの…お爺様」
後藤を担ぎながら麻琴が心配気に龍拳を見た。
「ソヤツは半分魔物じゃが、もう半分は人間じゃ、鬼拳を耐えた事に免じてワシが面倒をみよう」
ホッホッホと笑う龍拳は、自慢の白い顎鬚を撫でながら、残りの一匹、保田を見た。
ジリジリと後ずさりする保田は、ユラリと現われた美しき人影を認める。
「キ、キサマ…」
余裕のモデル立ちで冷笑を浮かべる藤本の右手には、白い薔薇が握られていた。
「貴女、生きていたのですね」
シュルシュルと茎が伸び始める白い薔薇。
「さて、オニ子の車を運転できる者は居るのかのぅ?」
飯田のコルベットには中学生しか乗っていないのだ。
顔を見合わせる辻達と、リムジンから不満気に出てきた石川。
「梨華ちゃん、運転できるかぁ?」
加護が石川に聞いてみる。
この中で免許を持っていそうなのは石川しか いなそうだった。
「う…うん」
と、言ってみたものの、実は石川は教習所に通い始めたばかりだった。
だが、これ以上藤本と顔をつき合わせてリムジンに乗るのは勘弁だし、
免許証なんて、もう必要ないだろう。
石川は数秒の間を持って、「アハハ、も、勿論よ!」と得意気に威張って見せた…
http://blanch-web.hp.infoseek.co.jp/cgi-bin/data/IMG_000108.jpg
今日はココまででやんす。一ヶ月以上開けてしまって申し訳ない。(;´Д`)
で、次回で完結し(・∀・)マース!!
>>341なにワロとんじゃ!
>>342まぁね。
>>345そんなのが有るんだNE(´∀`)。
>>346(;´Д`)ん?
>>347お待たせ(´ー`)。
でわでわ。