翌日の昼すぎ、東京は五反田のゆうぽうと簡易保険ホール。
客席はエキストラで出演するファンたちで埋まっている。全員黄色のTシャツでそろえている。
ステージ近くの席には真希の抜けたヴィーナスムースも座っている。CMで一瞬出演するためだ。
その前の通路は打ち合わせに忙しいグリコの社員などでごった返している。
しばらくすると照明も落ち、社員たちも持ち場につく。
そして、ステージにポッキーガールズと亜弥が現れた。
東京は五反田のゆうぽうと簡易保険ホール。
楽屋代わりの大部屋では、ポッキーガールズと亜弥が初めて顔を合わせていた。
同い年の愛は、まさに「完璧な」亜弥にあこがれていたのではしゃいでいる。
希美やあさ美や亜依は、亜弥が年上であるため、というか凄く年が離れているような印象を
亜弥から受けていて、おとなしい。美術品を見ているかのように遠くから眺めるだけである。
梨華は、チョコレートコーティングの研究をしているだけあって、生粋のプレッツェル人間である
亜弥とよりよい商品作りについて語ろうと待ち構えている。
麻琴は、昔自分の店でバイトしていたMikiteaが気になっていた。
「亜弥さん、Mikiteaさんはお元気ですか?むかし、私の家の店で働いていたんですよ〜」
「あ、そうなの?うん!みきたんは元気だよー!なんていうか、プリッツアイランドに来た頃は
凄くおとなしい子だったのに、今はすごく明るい子になって、多分今も新しいプリッツ創ってると思うよ!」
「そうですか!それはよかった〜、あ、亜弥さんもうMikiteaさんの料理食べられました?」
「食べた食べた!おいしいよねぇ!」
「そう!うちカフェで軽食も出してるんですけど、Mikiteaさんの料理とってもおいしくて!
亜弥さんも幸せ者だなぁ…あいぼんもすっごくお気に入りだったんですよ、ね!あいぼん!……あれ?いない…」
そういえば、と気づいた顔をする希美。部屋を見回しても亜依は見当たらない。
「まぁトイレにでも行ったんでしょ、んでね亜弥さん、Mikiteaさんの後に来た、あそこの圭さんって
言うんですけど、あの人の料理もすっごくおいしいんですよ!今度食べてみてください!」
「そうなんだ!じゃぁ今度ぜひ!お願いします!」
圭のほうを向いて礼をする亜弥。プリンセスも年頃の娘。食べ物には目がない。
「じゃそろそろ本番でーす!よろしくお願いします!」
スタッフの声が響く。一同はステージに向かった。
亜依はトイレに座ったまま、ケータイをぼんやりと眺めていた。
時折、「切」ボタンを押す。バックライトが消えないように。
薄暗い個室の中、明るく輝く液晶。
その待ち受け画面には、真希とそっくりな若い男の甘いFACEが映っていた。
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『ポッキーガールズでーす!』
―――どこにいるんだろう…
『アヤッツでぇーす!』
―――前の方しか見えないよ…コンタクトの度が弱すぎる…
『11月11日はー、』
―――せめて真希ちゃんだけでも見つけないと…
『ポッキーアンドー、』
―――…私に手を振っている男がいる…
『プリッツの日ぃ!』
―――…!!やっぱりそうだ!本物だ!
『ポッキーアンドー、』
―――隣にいるのは…友達?
『プリッツの日!』
―――カ、カッコいい…
『ポッキー、ポポポ!』
―――早く、早く終われ!
『プリッツ、プププ!』
―――すぐ、行くから、待ってて!
『みんなありがとう、ポッキーガールズと、アヤッツでしたぁー!』
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