千葉県の市原市にある、小湊鉄道五井駅。JR内房線の快速停車駅でもある。
普段はこの昼下がりの時間帯は空いているのだが、今日は気動車(非電化路線!)もホームも人で一杯だ。
「旅のお供にぃ、ポキポキポッキー、旅のお供にー、ポキポキポッキー!」
「ポッキーガールズ★一日駅長。」の大きな看板の下で、なつみが叫ぶ。
被っている制帽の上には拡声器のスピーカーが取り付けてある。
すかさず残りのメンバーが立ち上がり「ポー!」と奇声を上げる。汽笛のイメージらしい。
里沙のすぐ後ろに立っているあさ美はさっきからまたもごもごとつぶやいている。
「…絶対おかしい。ぜえったい何か間違ってる。ポー!おかしい。明らかに違う」
「もう、何!?」
里沙がこっそり訊く。
「…大体何なの?この乗り物は?」
九人は商店街の店先によくある、十円で前後に動く動物や乗り物の形をした遊具に立っている。
しかもあさ美と里沙、圭と麻琴は二人で一台だ。
「楽しいじゃん!」
里沙は本当に楽しそうに言う。姉妹でもこんなに違うのはウチくらいのものだろうとため息をつくあさ美。
「…駅長なのになんでポッキーの売り子してんの?」
「小湊は人件費を節約したいんでしょ!」
「…なるほど。さすが里沙。」
ボケているのは姉妹の共通点である。あさ美はすっかり機嫌を直した。
ひとしきり叫び終わって、そのシーンの撮影も終わると、小さな駅の中でメンバーは一日駅
長のたすきを貰って自由行動となった。
自分のポッキーでの演奏をBGMに流してもらうなつみ。「キハ200…」とつぶやきながら
運転席を覗き込む梨華。ホームの端から端まで歩き回って風景を楽しむ亜依。
あとはみなギャラリーと握手していたりする。希美とあさ美は反対側の内房線の電車に手を振っている。
島から出たことのない娘たちは初めて電車というものに接して興味を示している。
希美とあさ美の横に、梨華がやってきた。
「う〜んE217…そっかJR五井は快速停車駅か…」
それが目の前の銀色の電車の名前だと勘付いたあさ美が訊いた。
「梨華さんは電車に詳しいんですか?」
「ううん全然。ちょっと興味がある程度だよ。」
「梨華さん電車の乗り方を教えてください!」
希美が目を輝かせる。
「う〜ん、電車ってのはね、まず行き先の駅までのきっぷを買うの。でも最近はこの辺り
だとSuicaって言うカードを買うと、きっぷを買わなくても乗れるの。買うときにたくさんお
金を払うとたくさん乗れるようにできてるの。んできっぷかそれを持って、改札を通るの」
「かいさつって、さっき通ったあの狭い隙間?」
「そうその狭い隙間、そこの機械にきっぷを入れたり、Suicaをかざしたりすると、その隙間
を通り過ぎることができるの。そうしたら行きたいところに向かう方向のホームに行くと、
しばらくしたら電車がくるから乗るの。降りるときも同じようにすると改札を出られるの。わかった?」
「うぅ〜ん…きっぷ買うの難しそう…」
「初めてじゃ難しいかもね、でもSuicaなら簡単だよ……ようしお姉さんに電車のことを訊いて
くれたごほうびに二人にSuicaを買ってあげよう!」
「やったぁ!」
いいみやげができたと大喜びする二人。すかさず釘を刺す梨華。
「でも勝手にどっか行っちゃだめだよ!」
三人はJRの券売機でSuicaイオカードを買い、改札機の前でそれを使う人を観察した。
そのせいで改札はその三人を見るギャラリーで塞がれてしまった。
駅員に怒られて小湊のホームに戻ると、全員が集合して最後の挨拶をするところだった。
「…ということで今日はとても楽しかったです!ありがとうございました!それでは皆さん!
ポッキーをよろしく!SEE YOU!!」
希美とあさ美は新しい世界を手に入れた気分ではしゃぎながらホテルに戻った。
その後三日間はオフの日と称して皆で各地を見物して回った。
最後の大仕事は、1800人のファンの前でライブを行い、11月11日の「ポッキー&プリッツの日」
に向けてのキャンペーンを行うことだった。
イベント前日の夜、亜依の新しいケータイに麻衣から写真メールが届いた。
「はい、今はこんな感じだよ。外見は、すごいファッションとかに気をつかう人。どう?」
女の子といっぱい遊んでそうな顔の男の子。亜依はこういうカッコイイ系に弱い。
思わずため息をもらす。
「五年前はちっちゃくてかわいい男の子だったのに、すごい!モテそうだぁ…」
「パッと見カッコイイから釣られる女の子も多いよ。」
「二人で街を歩いたらカップルに見えるかな?(笑)」
「亜依cカワイイからきっとお似合いだよ、でもホントに付き合わないよ〜に!」
「わかってるって、そりゃまずいよ(笑)」
「本人も亜依cに会いたがってるみたいだけど、いつ会えそう?」
「そうだねぇ、明日ホールでイベントするから、お姉ちゃんと見に来たら?って伝えてくれる?」
「あ、そうか!もうヴィーナスムースやめちゃったんだったね…わかった!伝えとくよ。」
「ありがとう!よろしく!」
ケータイを放り、ジュースのボトルを空にすると、亜依は布団にもぐりこんだ。
しばらくして、またケータイが震えた。
「今伝えたら、お友達連れて行くって!誰だかは聞いてないけど、きっと亜依cの好み
なんじゃないかなぁ?お楽しみに!んじゃ♪」
眠そうな顔に笑みが浮かぶ。電源を切って、亜依は短い睡眠に入った。
川c・-・)<
>>58さん、ありがとうございます。といっても、もう活動終了なんですね〜すみません。
さてここからどうやって500レス近くまで持っていくのか…というか届くのか?
あ、ちなみに目処はちゃんとついてますのできちんと物語を完成させられる事はお約束します。
以上、紺野写真集の表紙に「非常にテツヤらしいがもうちょっとなんとかならんのか」
との思いを抱いた作者でした。なまず買いましたよ。