「うーん、確かに前列の方にはわが社の社員もおりましたが、まぁ社員ですので若いといっても
二十二歳以上かと…」
「そうですか…」
希美がため息をつく。あさ美はさらに質問する。
「他に…御社の社員の方の他に誰がいたか分かりませんか?」
事務所の受付の女性も困った顔をする。
「うーん…じゃぁちょっと待っててくれる?その日にいた人に聞いてみるから」
女性が奥に入っていった後、希美が大きく伸びをする。
「…なんか私たちのこと、情報伝わってないみたいだね」
「不思議だよね、もうイベント何もないから、グリコ関係なくなったのかな?」
「たぶん、あいぼんの事だけしか聞いてないんじゃない?一気に三人も消えたなんて言ったら
現地の担当はリストラだよ」
「あ、そっか。ののちゃん頭イイ」
奥から先ほどの女性とスーツのCMに出てきそうな男性が出てきた。
「そうですね、おそらくハーモニーの関係者である可能性が高いかと思われます。
確かマネージャーの方と若い男性が二、三人いらっしゃいました」
「ハーモニー?」
二人はカウンターに身を乗り出す。
「ええ、ハーモニープロモーションと言って、昨年までポッキーの宣伝ガールの日本での
広報活動をバックアップしていた芸能プロダクションです」
「それはどこですか?」
男性は上着から財布を取り出し、一枚の名刺を取り出した。
「この方ですね。和田薫さん」
名刺には「代表取締役 和田 薫」と、事務所の住所と電話番号があった。
「もしよかったら、電話をお貸ししましょうか?」
メモをとっていたあさ美が慌てて首を振る。こんなところで聞かれて、話が漏れてはコトだ。
「いえ、直接出向いてお話を。あ、どうもありがとうございました!とても助かりました」
帰り際に、エレベーターホールに隠しておいたバットを拾って建物を出る二人。
先ほどの公園に戻り、バットを元の位置に戻した。
ベンチに座って一息つく。
和田に会うためには、また電車に乗らなくてはならない。もう二時半だった。