小説「ジブンのみち」part3

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99辻っ子のお豆さん ◆No.NoSexe.
(バカね。飯田圭織がこの程度で倒せる女なら、とっくになっちが倒している!)
交信!!
飯田圭織の肉体を淡い光が包み込むような幻想が起こる。
亀井はポ〜とその光景に見とれていた。
目を閉じたまま、飯田が静かに立ち上がった。

「これが交信ってやつ?」

愛も、その神々しい姿に目を奪われていた。
辻もポケ〜と口を明けて固まっている。
それは闇の陣営も同様である。
道重も田中も、保田でさえも何が起きたのかわからずに見とれている。
藤本も訳がわからず顔を歪める。
唯一、なっちだけが太陽の様な笑みを浮かべていた。

プロレスの神、光臨!!!

控えスペースに戻りかけていた亀井絵里は、困ったように眉をしかめた。
腕組みしてウ〜ンと考え、それから笑みを浮かべ、腕を上げた。

「はいは〜い。降参しまぁすぅ〜〜〜」

その瞬間、誰もがまず耳を疑った。予測不能の少女。
100辻っ子のお豆さん ◆No.NoSexe. :04/06/14 00:18 ID:yHmxW4zG
「えり!なんばゆうと!!」
「だってエリ。もう遊びは終わりって、さっき決めたんだもん♪」
「ハァ?」
「それにエリが負けた方が、れいなにも出番まわってくるでしょう」
「ああ、確かに」

この行為を叱責した田中であったが、そう言われると反論しようがない。
藤本はもちろん、保田と道重までもボーッとしていた。
もちろん表の格闘技陣営は、何が起きたのかさっぱり理解できない。
あれだけ圧倒的な強さを誇っていた者が、突然の降参。
これに納得のいかない者がいた。辻希美である。

「なんらよそれ!本気で勝負しろ!」
「本気?アハハ…ただの遊びじゃないですかぁ」

辻の言葉をおもしろそうに笑い飛ばす亀井。
矢口は意識不明の重体で、監禁状態で、こっちは本気の本気で望んでいるというのに。
彼女はただ『遊び』の一言でまとめてしまう。そんなのって…。
(遊びだ。愛ちゃんが悩む夢も志もない、ただの遊びだ)
愛は石黒の台詞を思い出していた。
そしてまた一つ、火がついた。

(やれやれ。まぁ仕方ないか。えりの予測不能は計算の範囲内だ…)
保田はため息をついて、事態をまとめることにした。
しかし、もうどうにも止まらない女がコロシアムに降臨してしまっている。
101辻っ子のお豆さん ◆No.NoSexe. :04/06/14 00:19 ID:yHmxW4zG
ドンッ!!
プロレスの神と化した飯田圭織が、闇の陣営に向かって踏み出す。
その目は虚ろで、焦点が定まっていない。

『あぁ…しゃあないな。飯田の勝ちだぁ』

いい加減な寺田のアナウンスがコロシアムに響いた。
しかしそんなもの、今の飯田に届いてなんかいやしない。
ドン!ドン!ドン!
まっすぐ闇の陣営へ、もうお茶を始めている亀井絵里へと向かっていく。

「ちょっと聞いたでしょ。うちの亀井は降参。あんたの勝ちよ。下がりなさい」

保田が言い放つ。しかし飯田は止まらない。
物凄いオーラを放ちながら近づいてくる。神をルールで縛れるはずがない!

「ちょっと!やる気!?」
「場外乱闘なられいなに任せてくれんね!」
「さゆも、また暴れていいの?」

待ってましたと田中道重が飛び出す。そっちがルール無用というなら、望むところ!
二人が立ちはだかると、プロレスの神は物凄い勢いで突進してきた。
田中と道重は左右に飛んで、それを避けようとした…が!
ガシィ!!
神の力は彼女たちの想像を凌駕していた。
102辻っ子のお豆さん ◆No.NoSexe. :04/06/14 00:20 ID:yHmxW4zG
なんと飯田の右手が道重の腕を、左手が田中の足首を……捕まえた!
軽い気持ちで飛び出した田中と道重の目つきが一気に全開モードへと変化する。
(こいつ……殺してよかね?)
(刺す!)
道重は金属の槍、田中は特大発勁を撃ちに入った。
その刹那!!
ヒュッという音をたてて、何かが間に割って入ってきた。
グラリと倒れこむ飯田。そのせいで二人の攻撃は不発に終わる。

「悪いね〜」

安倍なつみ!!
田中と道重の反撃が当たるよりも速く、後から現れたなっちが飯田を気絶させたのだ。
それも手刀一発で!!

「礼を言うよ。君たちが圭織の注意を引き付けてくれたおかげで、止めることができた」
「なっ!!」
「……」
「なっち一人じゃ相当きつかったべさ。さすがに神様相手じゃね〜」

あの田中と道重が、完全にいい様に扱われてしまった。
何も言い返せず、安倍を睨む二人。
なっちは太陽の様な笑みで受け流す。

「でも一勝は一勝。ありがたく頂いとくべさ」
103辻っ子のお豆さん ◆No.NoSexe. :04/06/14 00:21 ID:yHmxW4zG
ジョンソン飯田を抱えて戻ってくる安倍を、拍手で迎える辻と高橋。
気絶した飯田圭織なんて滅多にお目にかかれる者じゃない。
田中と道重と安倍の3人がかりだから、止めることができた様なもの。やはり怪物だ。
そしてもちろん、その怪物をケガのないよう一撃で気絶させたこの人も怪物。

「さぁて、次こそなっちだね」

安倍なつみ、出陣!!

「やれやれ。これで一勝一敗。まぁ逆に、お膳立てにはなったかしらね」

不満あり気な田中と道重。のん気に二杯目のお茶を注ぐ亀井。最後に藤本。
それぞれの顔を見渡して、ニヤリと笑む保田圭。
あちら側からはすでに、安倍なつみが入場している。

「しかも…最高の相手。嗚呼、待ちに待ったわ、この時を……」
「本当に勝てるつもりかい?」
「ウフフ……藤本さん。そこで見ていなさい」

蛇の様な目つきで、舌なめずりをする保田。

「安倍なつみの最期を…」

第27話「恐るべき少女たち」終わり
104辻っ子のお豆さん ◆No.NoSexe. :04/06/14 00:22 ID:yHmxW4zG
次回予告

5対5マッチも中盤にして最大の山場!安倍なつみvs保田圭!
幾年の刻を越えて、再び激突する怪物二人。
ついに明かされる保田圭の恐るべき力とは…!?

「自慢のパーフェクト・ピッチも、これじゃ意味がないわねぇ」
「やめてーーーー!!!死んじゃうよ!!なちみぃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」

To be continued