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辻っ子のお豆さん ◆No.NoSexe. :
【登場人物紹介】
高橋愛……主人公。高橋流柔術継承者。トーナメントで辻に敗れて闘うことに悩み中。
松浦亜弥……愛の親友にしてライバル。尊敬していた飯田に負けて消息を絶つ。
安倍なつみ……夏美会館空手の創始者。格闘議界最強!
辻希美……トーナメント優勝者。全登場人物中No1のパワーを持つ奇跡の少女。
紺野あさ美……高橋と激闘を繰り広げた努力の空手家。現在は後藤に破れ、修行中。
里田まい……藤本が入るまで夏美会館の全国王者だった怪物。
戸田りんね……夏美会館創立メンバーの一人。現在は東京本部の師範。
木村あさみ……夏美会館創立メンバーの一人。現在は北海道支部の支部長。
斉藤みうな……才能溢れる若き空手家。高橋流の記念すべき公式戦第一号犠牲者となる。
藤本美貴……最強の器を秘める安倍の右腕だったが…?
飯田圭織……ハロープロレス社長。安倍と並んで格闘議界の頂点に君臨する。
石黒彩……ハロープロレス副社長。現役を退いたが、亀井に襲われ入院中。
ソニン……ハロープロレスNo3。愛弟子の松浦がいなくなり心配する。
新垣里沙……かつて辻の教育係だったヒールレスラー。本当は強いらしいが?
中澤裕子……かつて女帝として最強を誇ったプロレスラー。飯田により再起不能に陥る。
稲葉・小湊・ルル・信田……中澤の配下にいたT&C四天王。現在は解散。
矢口真里……柔道界の国民的ヒロイン。必殺ヤグ嵐で格闘議界に旋風を起こす。
小川麻琴……天才小川五郎を祖父にもつ喧嘩柔道の使い手。現在は真面目に柔道修行中。
吉澤ひとみ……ボクシングヘビー級世界王者。闇のコロシアムで敗れ植物状態に…。
ミカ……ボクシングミニマム級世界王者。帰国前に襲われて入院中。
市井紗耶香……市井流柔術の長。弟子の後藤により片腕を失い、現役を退く。
後藤真希……ブラジルの総合トーナメント優勝。帰国して吉澤の仇を追う。
柴田あゆみ……つんくに育てられた娘の一人。現在はメロンの一員。
斉藤瞳……裏社会の摩天楼に居を構えるメロンのボス。寝技が得意。
大谷雅江……メロンのパワー担当。打撃が得意。
村田めぐみ……メロンの頭脳担当。マスクをかぶると何故か変身する。
加護亜依……辻とは生死を分け合った相棒。最強という夢を失って姿を消している。
福田明日香……安倍に勝ったことがある唯一の存在。果たして今は…?
保田圭……八極拳の達人。安倍への復讐に燃える。
田中れいな……保田の弟子。気の強い八極拳の天才児。
道重さゆみ……保田の弟子。体を硬質化できる異端児。自分がいちばんかわいい。
亀井絵里……保田の弟子。善も悪も感情すら無い未知の少女。
つんく(寺田)……闇のコロシアムマスター。最強の娘の育成に力を注ぐ。
アヤカ……つんくに育てられた娘の一人。現在は彼の右腕。
平家みちよ……???
石川梨華……神が生みし最強のコロシアム王者。愛する者を殺し地下の闇深きに堕ちる。
えっ?高橋主人公だったの?
第26話「最強チーム完成!」
夏美会館館長室に安倍なつみ、辻希美、矢口真里の3人が顔を揃えている。
「…と言う訳で5人集めることになったの」
ちょうど、なっちが矢口に昨晩の出来事を語り終えた所だ。
矢口は腕を組みながら、考え事をしている。
「…要は3勝すればいいんだろ。おいら達3人でも十分じゃん」
「そうなんだけどね。だからと言ってあとの2人が誰でもいいって訳にはいかないでしょ」
「生きて帰れる保障はないって言ってたのれす」
「フン。笑わせるじゃんか」
「本当にね」
「つーかあと2人って、普通に考えたら高橋と藤本しかいねーだろ」
もちろんなっちも、辻も、おそらく敵さんも、そのつもりである。
安倍、辻、矢口、高橋、藤本。
考えうる最強メンバーであり、負ける要素がまるでない。
「そうだね。じゃあののは高橋、矢口は藤本の説得をお願いね」
「逆の方がいいでしょ。負けた相手に直接言われたくないだろうし」
「うん。それじゃののはミキティれすね」
「高橋はおいらが引っ張ってくるよ。ところで、あんたはどうするんだ?」
「なっち?なっちは…もしもの保険に一人当たっておくよ」
強い風が吹いている。
福井の北部を流れる九頭竜川のほとりに、高橋愛は立っていた。
突き。
蹴り。
受け。
強風の中で身体を崩すことなく、一連の動作を繰り返す。
敗北して戦いに迷う様になってからも、トレーニングを怠った日はない。
体が勝手に高橋流を求めてしまうのである。
心だけが…おろおろ不安定に揺れさ迷っている。
本当は自分がどうしたいのかわかっている。
もう一度、戦いたい。
もう一度、地上最強の夢を追いかけたい。
それが不可能であるという苦い想いが本心を遮っているのだ。
石黒彩の姿。
吉澤ひとみの姿。
最強を追い、届かなかった者の末路。
あれが自分の将来の姿なのではないか!?
「ふぅ…」
息を吐いて、愛は身体の動きを止める。
こんな気持ちのままトレーニングを続けた所で、強くなるとは思えない。
足を止め額の汗をぬぐった。
(―――!)
そのときだ。愛は背後の草むらから強烈な気配を感じ取った。
まるで野生の狼のような気圧。
草むらの中をジワジワと近づいてくる。
愛は振り向かず、気配だけでそれを待った。
振り向いた瞬間に襲い掛かってくるように思えたのだ。
神経を張り詰める。
狼の気配は間合いのギリギリで動きを止めた。
もう一歩で、振り向きざまの蹴りがヒットする距離だ。
また、強い風が吹いた。
それに合わせて狼の気配が飛び出してきた。
愛は体を折りたたむと、後ろ回し蹴りを放つ。
狼の手と愛の蹴り足が交差して、そこだけ風に隙間ができる。
愛は地に手を付けるとそのまま体を捻って、もう一方の足も蹴り上げる。
すると狼は体勢を一瞬にして低く下げ蹴りをかわし、ぶつかってきた。
体当たりを受けた愛は、そのまま組み付かれない様に二三度バク転して距離をとる。
不思議と狼は追いかけてこない。
顔を上げて愛はそこに立つ狼の顔を見た。
そしてニィっと微笑んだ。
「タチの悪い挨拶やわ、矢口さん」
「とりあえず、トレーニングをさぼってはいないみたいね。安心したよ」
野生の狼の気を有する女――――矢口真里も微笑み返した。
「闇のチームと5vs5…」
「そうよ」
矢口と愛はそのまま再開した堤防の草むらの上に座った。
そして矢口の口から例の話を持ち出されたのだ。
「それに私が出場するんですか」
「嫌なの?」
「…選ばれたのは光栄やけど、私はそんな強くないですし…それに」
「それに?」
「今は闘うことに迷っているんです」
風が吹いた。
愛のポニーテルが揺れる。
矢口は唇を吊り上げて、頭をかき回した。
「迷うとか、おいらわかんないけどさ。まぁいいじゃん、来てよ」
「でも私は闘え…」
「大丈夫!大丈夫!闘いたくないなら闘わなくてもオッケー。
だっておいらと安倍なつみと辻がいるんだぜ。悪いけど出番回ってこないから」
「…見ているだけでもいいんですか?」
「むしろ、おいら的にはそっちの方がオッケー。出番とられずに済むしぃみたいな」
「それなら…わかりました」
「本当!じゃあ前日に夏美会館集合ね。キャハ!」
なんとなく矢口の勢いに押されて返事した気がした。
だけど見るだけなら、見てもいいと思っていた。
光と闇の最強を決する試合。
あるいは今迷っていることの答えが見つかるかもしれない。
「ところでさ、高橋。腹減らない?」
「は、はい」
それから矢口の提案でソースカツ丼とおろし蕎麦を食べにいった。
「一度食べてみたかったんだよねぇ。だから高橋を選んで…」
「はぁ?」
「ああ、こっちの話」
「じゃ、待ってるから」と満足気に矢口は帰路についた。
そして約束の日、愛も一路東京へと向かう。
「4人目、ご到着〜!」
陽気な矢口の台詞で愛は迎え入れられる。
深夜の空手道場。この広い空間にいるのは自分を含めてたったの4人だけ。
愛と矢口真里と辻希美、そして安倍なつみだ。
「悪かったね。こんな危険なことに巻き込んで」
愛は夏美会館とは少し前まで敵対していた関係だ。
何を言われるかと思ったが、安倍なつみは意外にも優しい声をかけてくれた。
「いえ、闘わなくてもいいって言われたから…」
「アハハ、おいらが言ったの。いいでしょ、なっち。高橋を5番目にすれば」
「ののはいいれすよ」
「そうね。なっちも大将でのんびりするつもりなかったし」
「決定!愛ちゃんが大将なのれす!」
大将。と言われて恥ずかしくなってきた。
これだけ凄いメンバーの中で自分が大将とは、何だか申し訳なくなってくる。
「ところでさ、藤本は?」
矢口が質問すると、途端に辻は肩を落として凹んだ。
「ごめんなしゃい。結局あえなかったのれす」
この一瞬間、辻は何度も藤本美貴を訪ねたらしい。
けれどずっと家に戻らず、電話も繋がらなかったそうだ。
「マジで〜。どーすんの?」
「ごめんなしゃい」
「いや別に辻ちゃんを責めてはないけどさ。ねぇ、なっち」
4人しかいないのでは、話にならない。
かと言って今更そんな強い人を探すのも無理だ。
「こんなときの為に保険を用意しておいて良かった」
「あ!そういや言ってたね、そんなこと。誰よ保険て?」
「…あんまり気は進まないけど」
なっちはチラッと壁の時計を見た。
約束の時間まであと30分弱。
時間が着たらコロシアムへの案内役がこの道場に来るらしい。
「そろそろ来ると思うんだけど…」
安倍なつみがそう口にしたとき、道場の扉がガンッと開いた。
辻と高橋と矢口は驚いてそちらを見る。
そこに5人目が立っていた。
>5人目
誰だろ
( ´ Д `) <んぁ?呼んだ?
飯田すぁん!
むむ!誰だろう・・・
どちらかな!気になるう
そこでニセなっちの登場ですよ
ナッチに変装した後藤がいいなあ
全身白装束の白仮面。背が高くて貧乳の人が出て来ます。
その場に来る必然性のないやつを
ご都合主義で仲間にするのだけはやめてほしいね
「動き出したぞ」
「うん」
夏美会館前に止まった黒塗りのベンツが、また数人の人間を乗せて動き出す。
その様子を一部始終見張っている者たちがいた。
後藤真希と市井紗耶香である。
「こんな深夜にあれだけのメンバーが…確かに怪しいな」
「追って」
助手席の後藤が運転席の市井に囁く。
市井も後藤もお互い別々に吉澤ひとみの仇を探していた。
やがて市井は、裏社会で行われるコロシアムの存在から…
後藤は、トーナメント選手が何者かに襲われる事件から…
今日の情報に辿り着いたのだ。
「今日集まる中に吉澤の仇がいるとは限らない…
それでも真希が言う日本中の最強クラスが一同に会してはいる」
「いざとなったら、全員皆殺しだよ」
「真希。頼むからムチャな真似はするなよ」
「……」
なるべく排気音を控えるように、市井の青いスポーツカーも動き出した。
表の格闘技チーム5人が降ろされたのは、ただっ広い地下駐車場であった。
愛と辻はキョロキョロ辺りを見渡している。
案内役のアヤカに従い、そこからエレベータに乗り込む。
彼女が緊急のボタンを押すと、カチッとマイクの繋がる音が聞こえた。
「アヤカです」
すると最下層のはずのエレベータが下降を始めた。
「へーそういう仕組み」
矢口が感心したように頷く。
アヤカと5人を乗せたエレベータは下る。
沈黙が続く中、矢口となっちだけがしゃべり続けていた。
「帰るときも同じようにやればいいのかな」
「覚える必要無いよ。帰りも堂々と送ってもらうんだからさ」
「まぁそうだけどさ。なんか暗号っておもしろいじゃん」
「うちらも作る?暗号」
「いいねー!…って敵さんがいる所で決めたって意味ないっしょ!」
ここで敵とはアヤカのことを指している。しかし彼女はまるで反応を示さない。
エレベータを降りると通路の先に鉄の扉と数字の並んだボタンがあった。
ピピピ…と10桁以上の操作を行うと扉が自動的に開く。
3ヶ月前、吉澤が進んだ道と同じ道を…今この5人も歩もうとしている。
扉の先には、中世ヨーロッパ王宮を彷彿とさせる景色が広がっていた。
「うわー!すごーい!」
「私、こんなの初めて見たわー」
辻や高橋が騒いでいると、何処からか下品な関西弁が聞こえてきた。
「ようこそコロシアムへ、待っとったで〜」
声はすれど、姿は見えない。
何処かにスピーカーやカメラでも隠してあるのだろう。
(こいつがコロシアムのマスター寺田…)
安倍はその声をしっかりと耳に止める。
「真ん中のクリクリしたのが夏美会館のトップ、安倍なつみか。
噂はよう聞いてるで。最強やてな。いや〜会いたかったわ〜」
「それから一番小さいのが国民的ヒロイン、講道館の矢口真里。
今日は自慢のヤグ嵐を見せてくれるんやろ。期待しとるで」
「その横が辻希美。そのナリでトーナメントの覇者かぁ、たまらんへんな。
あの大会はビデオで見たで。最高やったわ」
「その辻とごっつい試合したのが一番後ろの高橋愛やな。
実は前から高橋流柔術ちゅーのに興味あったんや。ククク…」
「そんで最後が……まさかあんたまで来てくれるとはのぅ。
安倍なつみと並んで最強の双璧。ハロープロレスの社長、飯田圭織」
5人目、飯田圭織!
なっちのかけた保険とは、なんとこの女のことであった!
夏美会館と並ぶ国内最大規模の格闘技団体ハロープロレスの総帥。
プロレスの神様と呼ばれる生きた伝説、飯田圭織その人。
なっちと敵対関係にあるこの女の参戦は、まさに夢の様な出来事である。
「能書きはいい。とっとと始めろ」
静かにしかし重く、飯田が言い放つ。
飯田は道場に姿を見せたときからブスッと口を閉ざしたまま、不機嫌そうにしている。
ここでも寺田の挑発に瞳をギラつかせている。
「ええで。ええ感じや。お前らの泣き叫ぶ顔が早う見たいわ」
「こっちはてめぇのツラなんざ、見たくねえけどな」
「アヤカ、早ぅこいつら案内したれ、地獄のコロシアムへ!」
「はい」
そこでようやく耳障りな関西弁は消えた。
なっちは声だけ聞いて思った。
協調はできない、この寺田という男は敵であると。
今日保田のついでに叩き潰そうと、密かに心の中で決めた。
「なちみに飯田さんに矢口さんもいるんじゃ、愛ちゃんの出番は完全に無いね」
コロシアムへ続く通路の途中、辻が隣の愛に話しかける。
確かに、と愛も思った。女子格闘議界の三強と呼んでよい三人がそろっている。
さらにトーナメント優勝者の辻希美もいるんだ。
こちらの勝利はまず揺るがない。
なのにどうしてだろう。
さっきから嫌な予感に胸がうずいてならない。
何かとてつもなく凶悪なものがこの空間に潜んでいるような、そんな感じがする。
(気のせいだと、いいんだけど……)
「着きました」
案内役のアヤカが立ち止まる。
その先に巨大な扉が立ちはだかっていた。コロシアムへの入口。
「対戦相手の5人はすでに中でお待ちですよ。さぁどうぞ」
矢口が手首をコキコキっと鳴らした。
辻はゴクッとつばを飲み込んだ。
飯田は腕を組んで黙っている。
愛の嫌な予感はピークに達している。
「いくよ」と呟いて、なっちが静かに扉を開いた。
円形の闘技場、その反対側に敵の5人が待ち構えている。保田圭とその弟子三人。
だが愛たちの目がいったのはそこではない。敵のもう一人だ!
「美貴…」
「ミキティ?」
「えっ!?藤本!!」
安倍と辻と矢口が同時に叫んだ。
保田圭の隣に藤本美貴が立っているのである。
「なんで藤本さんが向こうにいるんや?」
「知らないよぉ!ののが聞きたいのれす!!」
愛と辻が騒いでいると、矢口が前に出てどなりちらしてくれた。
「何考えてんだ藤本!!そいつらが何者かわかってんのか!?」
「……」
藤本は口を真一文字に結び返答しない。冷酷で美しい表情を保っている。
すると代わりに、隣の保田が口を開いた。
「なにか文句でも?どこにつくのも本人の自由でしょ」
「んだとー!!」
なっち!!!!ついでに叩き潰すなんて!すてきだ!
期待してます!
「矢口、やめるべさ」
なっちが冷静に止めた。だが方言がでている。
藤本美貴の顔を安倍なつみがにらみ付ける。
しかし藤本は決して目を合わそうとせず、無表情を造り続けていた。
「いいべさ美貴。だが敵となった以上、容赦はしない!」
それだけ告げて、なっちは口を閉じた。
これを見ていた飯田が口の端を静かに上げる。
「5vs5マッチの始まりやー!」
すると、何処からかまたあの下品な関西弁が聞こえてくる。
矢口などは明らさまに嫌な顔をしてみせた。
「先鋒・次鋒・中堅・副将・大将の総当たり戦。先に3勝したチームの勝ちや!ええな!
ほな両チームとも一旦下がって順番決めや!作戦たてて、よう考えるんやで!」
闘技場の両脇にそれぞれ小さな控えスペースがあった。
石川と吉澤が闘ったときには無かった。この5vs5マッチの為にわざわざ用意したものだ。
安倍チームの5人、保田チームの5人はそれぞれ控えスペースに移動する。
その間、ずっと保田はなっちを睨み続けていた。
みんな藤本に夢中で誰も自分に気付かないことで田中は少しひねくれた。
安倍なつみ
辻希美
矢口真里
高橋愛
飯田圭織
VS
保田圭
亀井絵里
田中れいな
道重さゆみ
藤本美貴
>>30 最後の一行を想像してちょっと笑った
いよいよですね、頑張ってください
やはり。この非常時に安倍が頼れて、なおかつOKしそうなのは飯田しかいないもんな。
石黒の仇を!
「ついでに叩き潰そう」が「全員食っちまうのもいいな・・」にならない事を祈るw
从;`,_っ´)ノシ <ココニイルバイ!
藤本が矢口に雪辱か?
出来れば違う対戦が見たい…
安倍の強いとこみたい!
>>37 流れ????まあおもろければそれでいいんだけど
最近は「デュオU&U」をヘビーローテしてる辻豆です。
てんてて〜ん♪
>>32 応援ありがとうございます。
田中は結構お気に入りキャラです。闇チームの中ではまだ人間味がある方で。
>>33 はい、ここは飯田さんしかいません。
松浦戦以来、ひさびさに本気の戦いが見れるか!?
>>35 藤本は誰と対戦しても、おもしろくなりそうですね。
>>36-38 なっちの戦いは……ノーコメントで。
「さて、順番だけど、どうしよっか」
なっちが切り出し、順番決め作戦タイムの開始。
「とりあえず高橋の5番手は決まりだよね〜」
「はい、私はそれで……」
「よーしまず、大将は高橋っと」
「飯田さんはろうしたいれすか」
「俺は何でもいい」
「じゃ、1番がいい人?」
「はい!」
「へい〜!」
「おおっ!なっちもぉ!」
矢口と辻と安倍が一番争いで揉め始める。
みんな早く闘いたくてウズウズしているのだ。
「じゃさ。圭織は4番目にして、あとはジャンケンするべさ」
「うん!飯田しゃん、それでいいれすか?」
「勝手にしろ」
「はいはい〜。ジョンソン飯田が副将ね〜。負っけねぇぞ〜!」
矢口はもうジャンケンに闘志むき出しである。
「ジャンケンぴょん!!」
「あいこでぴょん!」
「ぴょん!」
三人のジャンケンを愛は興味深そうに見つめ、飯田はうっとうしそうにため息をついた。
数回のあいこの末、ようやく決まる。
「おっしゃー!」
「ま、しょうがないべ」
「くっそー。ののがジャンケン弱いの知ってて」
ジャンケンの結果、1番に矢口、2番に安倍、3番に辻という順になった。
まとめるとこうなる。
先鋒 矢口真里
次鋒 安倍なつみ
中堅 辻希美
副将 飯田圭織
大将 高橋愛
一方の保田チームは…。
「あいこでしょ」「しょ」「しょ」「しょ」
こちらもジャンケンをしていた。
ジャンケンしているのは亀井・田中・道重の問題児トリオである。
保田と藤本は最初から順番が決まっていた。
3連勝して最後を決める、ということで保田は3番目の中堅に入っている。
そして藤本は5番手である。
今回の目的はあくまで保田圭とその弟子の力を確かめること。
だから彼女は一番最後の大将だ。
という訳で、問題児トリオは1,2,4番目をジャンケンで争っているのだ。
「あ、勝った!」
まず道重が勝った。
田中は不快を思いっきり顔に出す。
「一番かわいい私が、先鋒でいきま〜す」
「グヌヌ…。エリ!続きたい!」
「はいはい〜!負けないよ♪」
もし4番手になったら出番が回ってこないと思っていた。3連勝してしまうからだ。
だから田中はムキになって勝ちにいく。
自分を忘れてる奴らに目にもの見せてやりたいと思ったのだ。
ところが…。
亀井がパーで、田中がグー。
「わぁ、エリが勝ったよ〜」
「そんなのなか…」
こうして亀井が2番手。田中が4番手に決まった。
ガックリと肩を落として隅に引っ込む田中。
そんな田中に藤本が声をかける。
「お前、本気で3連勝できると思ってるのか。あっちには安倍と飯田がいるんだぜ」
「こっちはさゆとエリと師匠ばい。うちの出番は100%なかよ」
誇張でも冗談でもなく、田中は本気でそう言ってヘコんでいる。
ようやく本気で暴れられると思ったのに、おいしい所を道重と亀井にとられたから。
藤本は少しゾクゾクし、それ以上におもしろいと思った。
(そこまで言う力……見せてもらおうか)
先鋒 道重さゆみ
次鋒 亀井絵里
中堅 保田圭
副将 田中れいな
大将 藤本美貴
互いに順番は決まった。もう決めることはない。
順番に1対1。素手。ルールはこれだけだからだ。
『先鋒、前へ!!』
コロシアムに響くアナウンス。
大歓声に包まれる表の大会と異なり、沈黙に包まれた空間。
「な〜んかヤナ感じだねぇ」
表の格闘家チーム先鋒、矢口真里が立つと、他のメンバーが簡単な声援をおくる。
「矢口さん、がんばって!」「油断するなよ」
「ぶん投げてやるのれす!!」「……」
それぞれの声援に矢口は微笑を浮かべ、ついにコロシアムに入った。
あちら側からは道重さゆみが現れた。
「なぁんだガキかよ」
「お久しぶりですね〜」
「ん〜どっかで会ったっけ…?」
「私ってかわいい?」
その台詞に矢口の記憶が蘇る!
トーナメントの数日前、夜中に突然現れた奇妙な少女。
「あ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!あのときのガキか!!」
「ウフフ…世の中、かわいい子が勝つってこと、教えてあ・げ・る♪」
「それなら、やっぱりおいらの勝ちじゃん」
「ムカッ」
これが本当に闇の代表なのか、と矢口は思った。
(まったく緊張感のない子供じゃないかよ)
柔道着の帯をしめる。とはいえ、どんな相手だろうと油断はしない。
常に全力。それが矢口真里を矢口真里たらしめるものだ。
何を考えているのかわからない表情で、道重さゆみはその場に構えた。
さぁ、いよいよ光と闇の直接対決の時。
『矢口真里vs道重さゆみ!!!始め!!』
ドン!!
第26話「最強チーム完成!」終わり
次回予告
ついに5vs5マッチが始まった!
先鋒戦はヤグ嵐の矢口真里と、特殊な気孔の使い手道重さゆみ。
ともに全勝を語る両陣営の大事な初戦を飾るの果たして!?
そして究極の対決も…!?
「次鋒戦!!安倍なつみvs亀井絵里!!!」
To be continued
47 :
ただすん:04/06/05 02:00 ID:9ejyYtgL
もう、辻豆さんったらちょっどいいトコで終わっちゃうんだから♪
じらさないで(*´∀`)ポッ
更新おつっす!
なろほど、勝ちぬき戦ではなかったか・・・・。
勝ちぬけ戦ならなっちを大将にして全てラーニングという裏ワザも使えたのにw
ついに・・・ついに・・・ついになっちVS亀井が見れる――――――・゚・(ノД`)・゚・。
ってあれ????次鋒戦?究極の対決が次鋒?
エピローグに向かって一直線じゃないんだ?
?????????ぬお!クエスチョンだらけだ。
>>49 同感!ついに見れると思ったら次蜂戦って??
まぁ何はなくとも乙です。
早く続きみてぇ〜っす。ドキがムネムネな展開望みます(寒っ
先鋒 矢口 vs 道重
次鋒 安倍 vs 亀井
中堅 辻 vs 保田
副将 飯田 vs 田中
大将 高橋 vs 藤本
何で亀井が究極なの?
>>52 エピローグが亀井のシーンだったからみんなそう想像してたんじゃないかな
柔道と硬気孔の戦いって想像しづらいな、きたいしてますよ!
54 :
ねぇ、名乗って:04/06/06 03:59 ID:lhdG3isN
hokurobuta
>>53 なーるほど!!!ありがと
てことは・・・・!楽しみだ!
氏んだな矢口…
本気の藤本が見れると思ったけど・・・高橋じゃ無理そうだなあ。
高橋はまだ矢口藤本のレベルに達してないと思うし。
愛チュンには格闘センスと高橋流柔術の奥技があるのれす!
油断したらいけねーのれすよ
まあ五番手で出番が無いはず無いからな、無理やり強さをおっつけるしかないでしょう
>>59 ここで一度負けるのもありでは。
そうしたら完全に沈みそうだから無いと思うけど・・・。
むしろ逆に、ってことも・・・。期待してます。
>>47 またじらしちゃうぞ( ´∀`)σ)∀`)
>>48 勝ち抜き戦だと、ほとんど全員が負けなきゃいけない計算になるんですよ。
このメンバーでそれはもったいなさ過ぎるので。
>>49 そう簡単にエピローグにはいきませんよ。
>>50 これからもドキがムネムネの方向でがんがります。
>>52−53
多分、53さんの意見通りだと思います。あとは作者のレスの影響かな?
>>57−60
今の悩める高橋では藤本には到底かなわないでしょう。
けれど大将戦までに高橋を覚悟させるナニカが起きたとしたら…(しゃべり過ぎか)
第27話「恐るべき少女たち」
始まりの合図と共にノーガードで道重は襲い掛かってきた。
(バカか、こいつ?)
ミドルを蹴ってきた。特別すごい蹴りでもない。
矢口はトーナメントで藤本美貴のハイキックを経験している。
この程度の蹴りを避けることなど訳が無い。
蹴りをかわして、すぐにTシャツの裾を掴み取った。
(もらいっ!)
上半身を裸になれる男子格闘技と異なり、女子格闘技は必ず何かを着用する。
わざわざ語ることでもないが、それは柔道家にとって限りなく有利な条件だ。
ジャケットの有無で使える技の数が、大幅に違ってくるのだ。
道重さゆみはTシャツに短パンというラフなスタイルだった。
矢口はもちろん柔道着である。場合によっては柔道着を技に使用することもできる。
そんな柔道家の矢口真里に、道重はシャツを掴まれてしまったのである。
相手が立ち技を得意としていようが、寝技を得意としていようが、この技には関係ない。
掴まれてしまったらもうヤグ嵐を防ぐ術は無い。
足がまるで手のように道重の足首を掴みとる!
「キタァ!!」
辻と高橋と同時に叫んだ。電光石火!
「ヤグ嵐!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
ズドドォン!!
轟音を立てて投げ飛ばされる道重。受身をとる暇すら与えてもらえない。
畳と違って土で構成されるこのコロシアム上では、地が凶器と化す。
大の字でトラックに激突した様な衝撃だ。それはすなわち勝負ありということ。
ヤグ嵐を決めた矢口は高々と拳を舞い上げた。
「しゃああー!!」
保田の弟子というやつに、少し期待していた藤本はガッカリした。
(こんなもんかよ)
あの痛みは藤本もよく知っている。普通は立てない。あっさりと終わりだ。
(まぁ、あの矢口に勝てる奴が、そうそういる訳はねぇか…)
拍子抜けして、ため息をついた。しかし…!
藤本がもう一度顔を上げたそのとき、信じられない光景が目に入ってきた。
ムクリと、道重が起き上がったのだ。
何でもなかった様な顔をしている。そのまま「おはよう」とでも言いかねない顔だ。
鍛えている鍛えていないというレベルの話ではない。
矢口の顔色が変わった。
向こうの陣営にいる連中の顔も変わった。
変わってないのは保田と亀井と田中だけである。
もしかすると矢口たちは格闘技という常識の枠外に踏み込んだのかもしれない。
怖い笑みを浮かべながら道重が呟いた。
「かわいいシャツが汚れちゃったじゃない」
プスリ。
かわいい音がして、矢口はその方向を見た。
お腹に手が刺さっていた。
これは一体どういうことなのだろう?
矢口は落ち着いて考えてみることにした。
ヤグ嵐で相手を投げて勝利を確信した。うん、そこまではよい。
その後だ。相手が普通に起き上がってきた。こっからおかしいぞ。
指を伸ばしてまっすぐおいらのお腹に当ててきたんだ。
そしたら、かわいい音がした。
プスリって。
見ると手が突き刺さっていて、そこから紅い液体がドロドロ流れ出ている。
ああ痛そうだなぁ。
ん、待てよ。「痛そう」という表現は間違っている。
だって実際に痛いんだもん。
なぁんだお腹を刺されて「痛い」のはおいらじゃないか、アハハハハハ…
「なにぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!!!!!!!」
ズンッ!!
道重が手を抜くと、矢口の腹から赤い液体が噴水の様に巻き上がった。
刃物の感触。だけど凶器のようなものは何も手にしていない。
素手だ。
ルールはやぶっちゃいない。
出血多量に薄れゆく意識の中で、矢口は確かに見た。
紅く塗れた自分にうっとりと微笑み悪魔の姿を。
「矢口さぁぁぁぁぁぁん!!!!!」
愛は叫んだ。叫びながらコロシアムへ飛び出していた。
崩れ落ちて動かなくなった小さな体を抱え込む。
意識もないし、血も止まらない。
「ちょっとぉ。選手じゃない人が入ってこないでよぉ」
道重はまだこんなことを言っている。
愛は沸々と怒りが湧き上がってきた。
(こんな…こんなの…格闘技じゃない!)
だが今は怒っている場合じゃない。血を止めないと。
愛は自分の服の袖をやぶり包帯代わりに、矢口の体に巻き始めた。
しかし全然足りない。
「愛ちゃん!」
辻が空手着を脱いで、ランニング姿で駆けよってきた。
愛と二人で矢口のお腹の部分を巻き始める。
『道重の勝ちぃ』
そんなときに、のんきな寺田のアナウンスが入る。
ムカついてしょうがなかった。必死で矢口の傷を押さえながら愛は思う。
(許せない!こいつら許せない!)
「お医者さん!お医者さんを呼んでください!」
姿の見えない寺田に向かって、愛は叫んだ。
しかし返ってきたのは意にも介さぬ拡張器の声。
『何をいうとんねん。試合が終わるまでそこへは誰も入れんし、誰も出れへんで』
(!……やられた)
コロシアムの出入り口は全て分厚い鉄の扉で封鎖されている。
気が付けば監禁されたも同然の状況だったのだ。
ゴホッと矢口が吐血する。愛は歯軋りした。
(このままじゃ矢口さんが死んじゃう…)
『気付くのが遅いで。お前らが生きてそこから出るには、闘って勝つしかないんや』
寺田のこの台詞に、くすぶっていた高橋愛の魂に火がついた。
矢口真里の体を抱えながら全身が小刻みに震えだす。
純粋な怒り。許せないという想い。
そして、火がついたのは愛だけではない。
隣で一緒に矢口を抱きかかえる辻希美の瞳も、姿の見えない悪をギュッと睨んでいた。
そして……
ドゴォッ!!!
ズドォッ!!!
突如、物凄い轟音が二つ同時に鳴り響いた。
「秒殺すればいいべさ」
「奇遇だな…同感だ」
安倍なつみ!飯田圭織!
コロシアムの鋼鉄の壁が、なっちの拳と飯田の足跡形にへこんでいる。
奴らは火をつけてしまった…最強の二本柱に!!
「ウフフフフ……お怒りみたいねぇ」
一方の保田圭はそれを嬉しそうに眺めている。
そして、想像以上の展開に凍りつく藤本に声をかけてきた。
「どうかしら?藤本さん」
「……」
「あら、言葉も出ない。無理もないわね。あなたに勝った矢口真里がこうも……」
「何者だ……お前達」
「言ったでしょ。ただの復讐者とその弟子よ」
「あの道重ってガキが特別なのか?それとも……」
「彼女は私の弟子で一番才能が無かった子よ。ウフフ……」
藤本の脳裏に戦慄が走る。ずっとトップを走り続けてきた。
自分こそが頂点の器だと…信じてきた。それが粉々に砕かれるような想い。
ニヤ〜と強烈な笑みを浮かべ保田圭は笑った。
「お楽しみはここからよ。藤本さん」
亀井絵里はズズ〜とお茶を飲んでいた。
道重矢口戦後の殺伐とした空気の中で、一人だけほのぼのとしていたのだ。
「う〜ん。いいねぇ〜」
「よくなか!やる気ないならうちと代わるたい!!」
道重ばかり目だって腹を立てた田中が、八つ当たりしてお茶を奪い取る。
飲みかけの緑茶を奪われた亀井はバタバタと手を振って抵抗する。
「ある〜!あるもん!エリのお茶〜!」
「お茶なんか試合終わってからにすればよか!」
「れいな。もしかして出番ないからヤキモチですかぁ?」
「うるさか!!」
田中に怒鳴られてピョンと闘技場に飛び出す亀井。
ヘラヘラ笑ってクネクネしている。
(こんな奴が強いのか…?)
藤本はまだ信じられない。だが保田は余裕の笑みを浮かべたままだ。
「さゆ〜交代だよ〜」
「はーい」
道重とハイタッチして、ついに表の格闘家達の前に姿を見せる亀井絵里。
(さて、エリの相手は誰かな〜?)
そして、微笑む亀井絵里の前に「最強の女」が立ち上がった。
高橋と辻は二人がかりで、意識の無い矢口を控えスペースに運ぶ。
二人の服で強引に傷口を止めただけの状態である。
「大丈夫。そう間単にくたばる様な女じゃないよ。矢口真里ってのは」
なっちは二人の不安をなだめる様にそう言った。
しかし本当はかなり危険な状態だ。矢口だけでなく、チーム全体の雰囲気も。
あの矢口真里がこれほどあっさりやられるなど、誰が想像したであろうか?
(最低でも…秒殺ね)
次が自分の番でよかったと思う。この悪いムードを変えることができる。
自分の勝利だけでなくチーム全体の勝利をくんだ勝ち方をしなければいけない。
パンと両頬を叩いて気合を入れた。
「久々に…本気の本気だね」
満を持して、安倍なつみがコロシアムの地に踏み出す。
向こう側からはひ弱そうな少女が出てきた。
なっちの背中を見送る愛は、そっと辻に尋ねてみた。
「勝つよね。安倍さんは」
「当たり前れす!」
そうだ。当たり前だ。あの安倍なつみが負ける訳がない。なのに何だろう…この不安。
『次鋒戦!!安倍なつみvs亀井絵里!!!』
お疲れです!石川の時もそうでしたが血とかそういう生々しい描写がホントお上手で。
ええ、ホントに気持ち悪くなりかねないです。褒め言葉です。
ちょっと強さのバランスがおかしくなりすぎでないかい?
いままでの流れが・・・・まさかなっち一回負けるか引き分けるかして、再戦して勝つとか・・・
まあおもしろいからいいんですが・・・変なこと書いてすいません。なんか道重強すぎて・・
>>71 前スレの677で
>実際、なっち率いる表の格闘技界を潰すのなら田中と道重だけで十分だと思う。
>この二人はそれほどの怪物である。
>先のトーナメントを見て、敵の力は大体把握した。
>現時点で田中と道重に勝さる奴はいなかった、というのが感想だ。
て書いてるからおかしくはないんじゃない
>>72-73 71さんはあくまでもバランスを言っているんじゃない?いろんなキャラの描かれてきた強さ
が崩れていくというような。うまく説明できないな。とにかく押しキャラがあるとこういった意見も
でてくるのかな?
>>70 ありがとうございます。小説だと例えば格闘技漫画みたいな絵の表現がないから、
戦闘シーンの描写は特に気を使っています。
>>71 心配かけてすいません。でも強さのバランスはほぼ当初の設定からくるってはいません。
たぶん6期が強すぎて言っていると思うんですが、判断は5対5戦の終了までお待ちを。
あと、なっちに関しては1回負けて再戦するとかは考えていません。(番外編除く)
今のなっちは1回でも負けたらもう存在意義はないし、それだけの存在だと思ってます。
カメイエリ!!
拡張器からその名前が告げられて、反応した娘が二人いる。
高橋愛と飯田圭織である。
「闘いを続けるにしても、辞めるにしても、いいか。こいつにだけは手を出すな!」
病院の床に伏せた石黒が告げた、忠告に出たあの名前。
愛は活目してその少女を見た。これがさっきから感じていた不安の原因?
(あの女の子が?)
カメイエリ…。飯田はその名を復唱する。
「若手の一人に聞いたところ、犯人はまだ幼い小娘で…」
「亀井絵里と名乗ったそうです」
ハロープロレス本部道場に乗り込み、石黒を含めた若手数名を病院送りにした犯人!
こいつである。
飯田圭織が敵対する安倍なつみの誘いを受けて、わざわざここまで来た理由。
すべてはこいつである。
「代われ!!安倍ぇ!!!!」
あのジョンソン飯田が、物凄い形相で叫んでいた。
辻と高橋は思わずビクッと仰け反る。それほどに凄まじい怒気であった。
なっちが振り返る。
コロシアム全体が揺れ動いているのではないかという程の怒気。
そのすべてがヘラヘラ笑う一人の少女にむけられていた。
「まぁ約束だったし、なっちはいいけど。敵さんが納得すれば…」
「エリは誰が相手でもいいですよ♪」
これほどの怒気を全身に浴びながら、亀井絵里は平然と微笑んでいた。
やれやれと控えスペースに引き返すなっちに向け、亀井が手を振った。
「また今度、遊びましょうね〜」
なっちはチラと飯田を見て、答えた。
「悪いけど、今度は無いと思う」
「ん〜?」
ドン!!
巨大な足音をたてて、ジョンソン飯田がコロシアムに踏み込む。
これはもう何者にも制御不能であろう。
では改めて…と寺田のアナウンスが聞こえる。
『次鋒戦!!飯田圭織vs亀井絵里!!!』
始め!の合図とともにジョンソン飯田が前に飛び出す!
その衝撃はさながら巨獣の様!
「わお」と言って嬉しそうに転がり避ける亀井。
ズザザザザ…と砂煙を立てて、飯田は止まらずさらに獲物を追う。
速く!強く!デカく!上手く!怖く!なにもかもが圧倒的!!
(こんな凄いの、はじめて♪)
クネッと逃げまわりながら、エリは心からのワクワクに笑みを咲かせる。
飯田が腕をひと振りする度コロシアムに風が舞う。
あんなものがまともに当たったら一発でお釈迦だろう。
(ちゃいこー!)
エリにとっては最高に楽しい遊びである。
師匠やれいな達以外で、自分をここまで追い詰める敵に出会ったことはない。
一瞬の判断ミスが命取りになる。
そしてこの飯田という人は何故か自分を殺す気で襲ってくる。
実に……楽し…。
「あ」
なんて考えていたら、足首を掴まれてしまった。
(これはマズイかも〜)
足首を掴んだまま、巨大な扇風機の様にジョンソン飯田が亀井を振り回す。
グルングルングルンと三回転。ジャイアントスイング!
(うわうわうわ〜遊園地みたいぃ〜〜〜)
そして遠心力をつけ一気に地面へ!!
ドグガガシャーン!!!
(殺した!!)
愛は思った。飯田のパワーに遠心力を加えて頭から地面に叩きつけたのだ。
普通は死ぬ。普通じゃなくても死ぬ。
「あぶない、あぶない」
ところがなんと亀井絵里は笑っていた!
地面にぶつかる寸前、体をクネクネして衝撃を吸収したのである。
そんなバカみたいなことが、できてしまう娘なのである。
「エヘヘ〜」
「うすら笑いもそこまでだ」
「ん〜?」
マウントポジション!!
気が付くとジョンソン飯田が亀井に馬乗りになっていたのだ。
すべて読んでいたのである。
軟体化も、衝撃吸収も…すべて。相棒の石黒彩から聞いていた。
振り回して地面に叩き付けただけで勝負がつく相手でないと、最初から知っていた。
あの技はカモフラージュ。本当の狙いはこれ。
地面に叩き落すと同時に最高のポジションを奪い取る。
両方の足で亀井の上半身をガッチリ固定し、絶対に逃がさない。
ただキレて暴れていたのではない。冷静に自分のペースへひきこんでいたのだ。
「ありゃりゃりゃ……」
「死ね」
自分の上にジョンソン飯田が馬乗り。
想像するだけでも恐ろしいシチュエーション。亀井絵里、絶体絶命!
ドドドッ!!
マウントポジションからジョンソン飯田の滝のようなラッシュ。
審判がいる普通の試合だったら、間違いなく止める様な状況だ。
だが亀井絵里という少女は、ここでまたとんでもないことをしでかす。
仰向けの体勢で、振ってくる打撃をクネクネと全てかわしているのである。
「当たりませんよーだ」
ふざけている。どんなに追い込んでも、どんな状況でも。
飯田の目つきがさらに凶暴化した。
「黙れ」
腕を大きく振り上げた。絶対に避けられないようなぎ払うつもりだ。
すると、その振り上げた腕に何かが絡みつく。
(…っ!)
クネッと伸びた亀井の両足である。
恐ろしいやわらかさで両足を飯田の右腕に巻き付けたのだ。
そのままグイッと後ろへ引っ張った。
(折っちゃいま〜す)
「させるかよ」
ジョンソン飯田はもう一方の左手でガシィと亀井の首を掴んだ。
その握力で一気に首を絞める。
ミリィミリィと肘間接が音を立てている。
根比べだ。
こっちは首を絞めてる。
俺とお前、どっちが先に根を上げるか、根比べといこうぜ。
それにしてもこいつ、この体勢でなんという足の力。
このジョンソン飯田が腕力を総動員して抵抗しているというのに、跳ね返せない。
華奢な体つきに見えて意外と…。
いや、違う。
この亀井絵里という女、上半身に比べて下半身が異常に強い。
よく見ると、ふとももの肉付きが半端じゃない。
幸の薄そうな顔とひ弱そうな上半身にだまされる所だった。
あのクネクネした不規則な動きは、すべてこの下半身が裏づけとなっているのだ。
マズイ。このままだと本気で腕をもっていかれる。
だがこっちは首を絞めているんだ。
呼吸もできない程苦しいはず。
フン、何を笑ってやがる。
やせ我慢もほどほどにしやがれ。
???
おかしいぞ。いくらなんでも、俺の首絞めにこれほど耐えられるはずがない。
弱まるどころかむしろ両足の力は増してきている。
どうなっている?
まさかこいつ、本当に笑っているのか?
肘が…クソッ!!!
マウントを解いてジョンソン飯田は立ち上がった。
このまま肘を折られるよりはマシと判断したのである。
同時に亀井も立ち上がった。
「あ〜気持ちよかったぁ」
素で喜んでいやがる。
変態かこいつ?
「あっ締められてるかな〜くらいが好きなんです」
どうやら真性の様だ。
あの首絞めはこいつを喜ばせる効果しかなかったらしい。
こんな奴に、石黒は……。
ぶち殺す。どんな化物だか変態だか知らねえけど、ぶち殺す。
「間接技しか脳のねぇ奴には負けねえよ」
「ムカッ」
と言って怒ったポーズをするが、目は笑っている。
本当に何なんだこいつは。
「エリだって、打撃くらいできるもん」
「やってみろよ」
「えっへっへ〜行っちゃうよ〜」」
すると亀井は飛び込んできた。
速い!スタートダッシュからいきなり最高速の飛び出し。
「えいっ」
あの立派な下半身から繰り出されるキックが、飯田の顔面を打ち抜く。
のほほんとした顔から想像もつかない程、もの凄いキックであった。
ジョンソン飯田が反応もできないくらいに…。
「いいらしゃーん!!」
辻は思わず叫んでいた。
信じられない、信じたくない現実がそこに巻き起こる。
あのジョンソン飯田の顔が赤い血に染まっていた。
亀井はもう一発キックを放つ。
速く、重い。
また飯田の頭部を激しく叩く。ガードの上からでも亀井のキックは効く。
常人ならその二発で死んでしまう程、破壊力に満ちたキックだった。
しかしプロレスで鍛えた飯田はなんとか耐える。
飯田は吼えた。吼えながら反撃にうって出た。巨獣の咆哮。
その攻撃を亀井はスルッと難なく避ける。
「そろそろ、遊びもおしまいですね」
ニコッと笑った亀井の足が、飯田の後頭部をクリティカルヒットした!
最強伝説。
高橋や辻がプロ格闘技界に入るずっと前から、飯田圭織は頂点にいた。
女子格闘技界にどんな新人が出てこようとあの二人だけは別格だったのだ。
安倍なつみと飯田圭織。
若き格闘家たちの憧れそのものである。
愛にとっては、親友が絶対的崇拝をしていたスーパースター。
辻にとっては、加護を失って途方にくれた自分を拾ってくれた恩人。
それがジョンソン飯田。
それが最強…
――――――――――――――――――――その伝説が崩れ落ちる。
ドォン!!
飯田が倒れた。うつ伏せのまま、動かない。
あの最強ジョンソン飯田が!!
「おもしろかったよ〜」
ニコッと亀井は笑った。まったくの無傷。
長きに渡り女子格闘技界最強の一角を誇っていたジョンソン飯田を相手に、完勝!
愛の脳裏に石黒から聞いたあの台詞が蘇る。
「闘いを続けるにしても、辞めるにしても、いいか。こいつにだけは手を出すな!」
その理由がわかった。この亀井絵里という娘は「強い」という次元を超えている。
これで道重、亀井と二連勝。
それも表の格闘技界のトップ矢口と飯田を相手に……。
(手を出してはいけなかったんだ)
『勝者、かめ…』
「待った!」
勝敗を告げるアナウンスの途中。
遊びが終わり、亀井が控えスペースに戻ろうとした途中。
愛が絶望に震えていた途中。
ずっと黙って試合を観戦していた一人の女が、口を挟んだのである。
「誰を相手にしてるつもりだい?亀井さん」
安倍なつみ!
この絶望的状況下でなんと、なっちが亀井に口を挟んだ!
「ええ〜?誰って。飯田さんですよ〜」
亀井がクネクネっと答える。
するとニィとなっちは微笑んだ。
「わかってるじゃない。ジョンソン飯田よ」
「はい」
「相手がジョンソン飯田ってことは……ここからが本番でしょう?」
亀井は首をかしげる。
そのとき、スゥ〜と音が……。
横たわるジョンソン飯田の腕だけが、天に向かって伸びた。
先鋒 矢口 vs 道重
次鋒 飯田 vs 亀井
中堅 辻 vs 保田
副将 安倍 vs 田中
大将 高橋 vs 藤本
更新乙です!
うーん・・複雑な展開ですね。飯田には負けて欲しくないし・・・でもなんとなく負けそうな・・
保田にはコテンパンににやられてほしいし、あぁ、感情移入しすぎですよ!
亀井がズタボロになるのは今回はお見送りって事みたいですね。あぁ、気になってしょうがない!辻豆さんすごいよ!
ちょっと一休みいれてよんだよー、緊迫緊迫
ここまででは亀井と松浦は互角って感じだな・・・
交信の事忘れてた・・・。
読んでて鳥肌立ちました、そういうものが書ければなぁ・・・。
91 :
名無し娘。:04/06/10 21:07 ID:cru3XVWU
更新おつかれさまです!
どっちの勝ちもありえるから、マジで予想できません。
>>86 こうじゃないの?
先鋒 矢口 vs 道重
次鋒 飯田 vs 亀井
中堅 安倍 vs 保田
副将 辻 vs 田中
大将 高橋 vs 藤本
3勝したほうが勝ち、5戦目までもっていきたい
つまりここで飯田が勝たないと、
3〜4戦目の結果が事前にわかってしまう(安部辻の勝ち)
まあ飯田が勝っても、
ここで安倍不敗神話を壊すとも思えないし
安倍勝ち辻負けが決まる
実は最終戦以外そんなに緊迫してないw
後は後藤市井&石川の乱入でこの団体戦自体を反故にしちゃうしか手がないね
締められて喜ぶ えりりんって、元ネタ何なの?
>>94 ここで高橋出さないのは・・・・。
沸き起こってくる気持ちだけで話を終わらせるのもいいけど。
やっぱり戦っているうちに目覚める方が話的に面白いんじゃ?
無粋って知ってる?
あえて高橋は戦わない。これで話がシマルヨ。なーんてね
>>87 ありがとうございます。どうぞ感情移入してやってください。
>>89 立場も状況も違うので一概に比べることはできませんが、
この二人が絡む日も来るのかなぁ…。
>>90 鳥肌ですか。ありがとうございます。どこかの作者さんですか?
>>92 それをいかに緊迫させるかが腕の見せ所です。ご期待ください。
>>93 狭い所で押されるのが好きなえりりんから。
(バカね。飯田圭織がこの程度で倒せる女なら、とっくになっちが倒している!)
交信!!
飯田圭織の肉体を淡い光が包み込むような幻想が起こる。
亀井はポ〜とその光景に見とれていた。
目を閉じたまま、飯田が静かに立ち上がった。
「これが交信ってやつ?」
愛も、その神々しい姿に目を奪われていた。
辻もポケ〜と口を明けて固まっている。
それは闇の陣営も同様である。
道重も田中も、保田でさえも何が起きたのかわからずに見とれている。
藤本も訳がわからず顔を歪める。
唯一、なっちだけが太陽の様な笑みを浮かべていた。
プロレスの神、光臨!!!
控えスペースに戻りかけていた亀井絵里は、困ったように眉をしかめた。
腕組みしてウ〜ンと考え、それから笑みを浮かべ、腕を上げた。
「はいは〜い。降参しまぁすぅ〜〜〜」
その瞬間、誰もがまず耳を疑った。予測不能の少女。
「えり!なんばゆうと!!」
「だってエリ。もう遊びは終わりって、さっき決めたんだもん♪」
「ハァ?」
「それにエリが負けた方が、れいなにも出番まわってくるでしょう」
「ああ、確かに」
この行為を叱責した田中であったが、そう言われると反論しようがない。
藤本はもちろん、保田と道重までもボーッとしていた。
もちろん表の格闘技陣営は、何が起きたのかさっぱり理解できない。
あれだけ圧倒的な強さを誇っていた者が、突然の降参。
これに納得のいかない者がいた。辻希美である。
「なんらよそれ!本気で勝負しろ!」
「本気?アハハ…ただの遊びじゃないですかぁ」
辻の言葉をおもしろそうに笑い飛ばす亀井。
矢口は意識不明の重体で、監禁状態で、こっちは本気の本気で望んでいるというのに。
彼女はただ『遊び』の一言でまとめてしまう。そんなのって…。
(遊びだ。愛ちゃんが悩む夢も志もない、ただの遊びだ)
愛は石黒の台詞を思い出していた。
そしてまた一つ、火がついた。
(やれやれ。まぁ仕方ないか。えりの予測不能は計算の範囲内だ…)
保田はため息をついて、事態をまとめることにした。
しかし、もうどうにも止まらない女がコロシアムに降臨してしまっている。
ドンッ!!
プロレスの神と化した飯田圭織が、闇の陣営に向かって踏み出す。
その目は虚ろで、焦点が定まっていない。
『あぁ…しゃあないな。飯田の勝ちだぁ』
いい加減な寺田のアナウンスがコロシアムに響いた。
しかしそんなもの、今の飯田に届いてなんかいやしない。
ドン!ドン!ドン!
まっすぐ闇の陣営へ、もうお茶を始めている亀井絵里へと向かっていく。
「ちょっと聞いたでしょ。うちの亀井は降参。あんたの勝ちよ。下がりなさい」
保田が言い放つ。しかし飯田は止まらない。
物凄いオーラを放ちながら近づいてくる。神をルールで縛れるはずがない!
「ちょっと!やる気!?」
「場外乱闘なられいなに任せてくれんね!」
「さゆも、また暴れていいの?」
待ってましたと田中道重が飛び出す。そっちがルール無用というなら、望むところ!
二人が立ちはだかると、プロレスの神は物凄い勢いで突進してきた。
田中と道重は左右に飛んで、それを避けようとした…が!
ガシィ!!
神の力は彼女たちの想像を凌駕していた。
なんと飯田の右手が道重の腕を、左手が田中の足首を……捕まえた!
軽い気持ちで飛び出した田中と道重の目つきが一気に全開モードへと変化する。
(こいつ……殺してよかね?)
(刺す!)
道重は金属の槍、田中は特大発勁を撃ちに入った。
その刹那!!
ヒュッという音をたてて、何かが間に割って入ってきた。
グラリと倒れこむ飯田。そのせいで二人の攻撃は不発に終わる。
「悪いね〜」
安倍なつみ!!
田中と道重の反撃が当たるよりも速く、後から現れたなっちが飯田を気絶させたのだ。
それも手刀一発で!!
「礼を言うよ。君たちが圭織の注意を引き付けてくれたおかげで、止めることができた」
「なっ!!」
「……」
「なっち一人じゃ相当きつかったべさ。さすがに神様相手じゃね〜」
あの田中と道重が、完全にいい様に扱われてしまった。
何も言い返せず、安倍を睨む二人。
なっちは太陽の様な笑みで受け流す。
「でも一勝は一勝。ありがたく頂いとくべさ」
ジョンソン飯田を抱えて戻ってくる安倍を、拍手で迎える辻と高橋。
気絶した飯田圭織なんて滅多にお目にかかれる者じゃない。
田中と道重と安倍の3人がかりだから、止めることができた様なもの。やはり怪物だ。
そしてもちろん、その怪物をケガのないよう一撃で気絶させたこの人も怪物。
「さぁて、次こそなっちだね」
安倍なつみ、出陣!!
「やれやれ。これで一勝一敗。まぁ逆に、お膳立てにはなったかしらね」
不満あり気な田中と道重。のん気に二杯目のお茶を注ぐ亀井。最後に藤本。
それぞれの顔を見渡して、ニヤリと笑む保田圭。
あちら側からはすでに、安倍なつみが入場している。
「しかも…最高の相手。嗚呼、待ちに待ったわ、この時を……」
「本当に勝てるつもりかい?」
「ウフフ……藤本さん。そこで見ていなさい」
蛇の様な目つきで、舌なめずりをする保田。
「安倍なつみの最期を…」
第27話「恐るべき少女たち」終わり
次回予告
5対5マッチも中盤にして最大の山場!安倍なつみvs保田圭!
幾年の刻を越えて、再び激突する怪物二人。
ついに明かされる保田圭の恐るべき力とは…!?
「自慢のパーフェクト・ピッチも、これじゃ意味がないわねぇ」
「やめてーーーー!!!死んじゃうよ!!なちみぃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」
To be continued
おぉ・・・どちらともとれる予告・・・
待ち遠しいっす!保田がぼこぼこなのか安倍なのか・・・
表側の活躍が不完全燃焼だったこともあるので、ここはなっちに・・・けど、
予告の辻の言葉の意味は・・・安倍がどうなっちゃうんだろう・・・まったく想像がつきません・・
あーー絶妙な予告ですね!展開がわかりそうでまったくわかんないですよ・・
展開が読めても読めなくても面白いよ
そこへたどりつく過程が楽しめるタイプのものは
きたきたーってかんじが良いのだ
107 :
90:04/06/14 21:53 ID:DDGSy+08
せっかく質問つきレスを頂けたので、
他の人にとったら迷惑以外の何物でもないでしょうが返事を。
はい、色々な場所で名前書いて書かせていただいております。
場所によって名前変えて、小説、ネタやらを。
でも当然遠く及びません。今回もその構成には驚かされました。
・・・なんか
リアルでアンチ亀井になりそうだ
もしかして
2勝2敗1ドローで代表戦?
しかもタッグマッチで決着つける…
だったら最高です。
亀井と安倍が戦うシチュエーションを考えたらこの結論に達しました。
>>109 同感です。その前に保田をコテンパンにしてほしいんですが・・
あっと驚くコテンパン?が見たいですね。コテンパンって今つかうのかな・・・
現時点でコテンパンにするかねぇ?
触れずに置こうと思ったが・・・
心臓を貫かれた吉澤が心臓マッサージで蘇生?
>>113 吉澤についてはみんな触れないでいるんだよ・・・たぶん・・・
このまま寝ててクレッテ思いが俺にはあるんだが・・松浦、吉澤、復活はしないでほしいものだ・・
心臓が傷ついていても止まった心臓を動かすために心臓マッサージはするよ
>>105 予告は毎回、作者も楽しんで作っているので、期待してもらえると嬉しいです。
>>106 禿同。わかっていても王道の展開で燃えるってのはよくありますので。
そういう所はなるべく押さえる様にしておきたいですね。
>>107 未来の大作家が昔、自分の小説を読んでいたと知ると嬉しいので、がんがってください。
たまにそういうことありますので。
>>108 まだまだ亀井はこれからどんどん変化していきますよ。
良い方向へか悪い方向へかは言えませんが。
>>109 タッグマッチかぁ?この後、高橋・辻vs藤本・田中とか?
それもおもしろそうだなぁ…。
>>113 石川の神の手が愛の奇跡を起こしたと、解釈。
もしくは貫いた様に見えただけで、実際は別の箇所だったとか。
「死んだ様に見えて実は生きていた!」というのは少年漫画の王道ですので。
第28話「天使は羽ばたく」
「あいつ、強いのか?」
中堅戦開始前、ふと気になった藤本が隣の田中に尋ねた。
道重、亀井と…確かにその弟子の強さが尋常でないことはわかった。
だが保田自身の実力はわからない。
なにより相手があの“最強”安倍なつみである。
「強いんじゃなかと?」
「お前達よりか?」
「さぁ?本気で試したことなか。……ていうか師匠とは闘いたくなか」
「へぇ、意外だな。お前達でも師匠は敬っているんだ」
「違う!」
「?」
「見ればわかるたい。勝つ自信があっても、あの人とは戦いたくなか理由……」
田中だけではない、道重もうんうんと同意している。
一人ノンキにお茶をすすっている亀井だけは何を考えているかわからないが。
保田という女に、それほど争いたくない理由でもあるのか!?
なっちが保田を見るのは実に6年ぶりである。
あの頃と異なる点がある。彼女の右腕が異様な形をしていることだ。
包帯でグルグル巻きになっている。
安倍の視線に気付いた保田が笑みを浮かべる。
「フフフ、これが気になる?」
「別に」
「やせ我慢はよしなさい。いいものを見せてあげるわ」
すると保田は控えスペースから持ち出した小さな箱を開く。
中には一匹のネズミが入っていた。
そして保田はスルスルと腕の包帯を解いてゆく。
「これがお前への復讐の為に作り出した、私の怨念!!」
奥で見ていた辻がウワッと悲鳴をあげた。
保田の右腕がどぎつい黒灰色に染まっていたのだ。
見ているだけで禍々しい姿である。
その黒灰色の手で、箱の中のネズミに触れる。
すると、保田の手に包まれたネズミは奇声をあげて走り回り、やがて息絶えた。
ニヤリと強烈な笑みを浮かべる保田圭。
「毒手!」
コロシアムに戦慄が走りぬける。
毒手――――自らの手を毒に染め、カスっただけで肉が腐り、死に至るという恐ろしい技。
そんなものは作り話の中でしか存在しないと誰もが思っていた。
たとえ実在したとしても、誰が実行にうつすものか。
これは日常生活のあらゆることの放棄を意味する。
その黒き手は、保田圭の怨念そのものを顕著に表している。
(それほど!それほどまでにこの人は!)
愛は言葉を発することもできなかった。
人生のすべてを復讐に注いだ女の覚悟が、あまりにも凄まじ過ぎた為。
(なるほど…)
クールな藤本でさえも、額に汗を浮かべている。
田中たちが絶対に闘いたくないと言った理由がようく分かった。
あまりにも邪悪すぎる。
どれだけ積み重ねた鍛錬も、鍛え上げた肉体も、あれの前では意味を失くす。
ただ触れただけで「死」に至るのだ。
もちろん、そんなものが表の世界で許される訳がない。
保田圭は二度と光の当たる世界に出ぬ覚悟で……
ただ安倍なつみへの復讐という一心で……
悪魔の腕を手にしたのだ。
「地獄の苦しみだったわよ。これを完成させるのはね」
ついに念願の叶った悪魔の笑み。
秘伝中の秘伝。毒手。
それも成功例は極めて稀。
大概の者はあまりに苦しい製作過程の半ばで、息絶えるか逃げ出す。
まず高温の炎で自らの腕を焼く。
皮膚の焼け爛れた腕を、そのまま毒液につっこむ。
この中にはありとあらゆる種類の毒が混ぜ合わされている。
気の遠くなる様な痛みに耐える。痛みを和らげる方法は無い。ただ耐えるしかない。
そして毒が腕から他へ回る前に腕を抜き、薬液に浸す。
これの繰り返し。
ヤケドと毒素に侵された腕を、また炎で焼く。
毒液につっこむ。
薬液に浸す。
正常な感覚の持ち主が耐えうる内容の過程ではない。
怨念だ。
保田圭の強烈すぎる怨念が、この偉業を克服させたのだ。
そして完成したこの毒手!
「それも全て…お前に捧げる為だよ!安倍なつみぃぃぃぃぃぃぃ!!!」
黒灰色の腕が怒りに打ち震える。
いや、ついに地獄から解き放たれた喜びに震えているのかもしれない。
死を送ろう。
絶対に逃れることのできぬ死を。
「なちみぃ……」
辻は泣きそうな顔になっていた。
なっちの為に何とかあの毒手の対策を考えようとするのだが、まるで浮かんでこない。
策が無い=死。
それくらいのことは辻にだって分かる。だから泣きそうになっている。
対照的に保田はこの上なく嬉しそうな笑み。
「自慢のパーフェクト・ピッチも、これじゃ意味がないわねぇ」
そう。かつて保田を破り、最強の座まで登らせたあの能力も……
あのパーフェクト・ピッチも役に立たない!!
毒手は真似てできる類の技ではない。
この毒手には、そういう意味も含まれていたのだ。
パーフェクト・ピッチを殺し、安倍なつみ本人をも殺す。完全なる勝利。
「ふぅ…」
ここで、沈黙を続けていた安倍なつみが息を吐く。
そして優しい顔でそっと後ろを振り返り、辻希美と高橋愛を見た。
「なちみ…」
「安倍さん……」
こんな状況でどうしてあんな天使の様な顔ができるんだ、と愛は思った。
確かに毒手は強力だが、安倍なつみならば倒すことはできるかもしれない。
触れられても毒が回る前にぶっとばせばいいのだ。
ただしその場合、勝利はしても命は助からない。
コロシアムに監禁されている状況。もちろん解毒の用意などどこにもない。
(まさか、なちみは……)
辻は思った。顔を上げると安倍なつみと目が合う。
ニコッと、なっちが笑った。
その笑顔がまるで……「後は任せたよ」と言っている様に聞こえた。
(まさか安倍さんは命を賭けて、私達に勝利を……!?)
愛も、辻と同様のことを感じた。
もう安倍なつみは敵の方を向いていた。
何故か見えない彼女の顔が微笑んでいる様な気がした。
『中堅戦!!安倍なつみvs保田圭!!!』
寺田のアナウンスと同時に辻希美が泣きながら叫ぶ。
「やめてーーーー!!!死んじゃうよ!!なちみぃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」
呆然とする高橋愛。
泣きじゃくる辻希美。
けっして忘れることのできないであろう……その後ろ姿。
未来を託された二人の前で、天使は羽ばたく。
辻希美さん( ´D`)お誕生日おめでとうございます。
この奇跡の日に更新間に合ってよかった。
17歳かぁ。気が付けばもう5年近くも彼女を好きでいるんだなぁ。
そしてこの先も好きじゃなくなる気がしない。
まぁとにかくオメ!
更新乙です。きっと今日という日に更新してくれると思ってましたよ。
話の方はとんでもない感じになってますけど、ま、楽しみにしてます。
そして( ´D`)さんオメデトウ!!
更新乙です。
毒手と言えば普通は影慶を思い出すのだが
俺はラーメンマンの蛾蛇虫を思い出したw
となるとなっちの百歩神拳or猛虎百歩拳が…
この先吉澤の右腕の骨が辻に埋まってるとか
覆面被った紺野のフライングレッグラリアート炸裂とか
神降臨の飯田が道重の硬気功ボディをむりやりへし折るとか…
結構好きです。
ところで保田の流派は内気功ですか?外気功ですか?
もし内気功なら田中や道重も気を使いすぎたら師匠のよう(ry
127 :
ねぇ、名乗って:04/06/19 07:18 ID:TLRX1HA1
なっちぃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!。・゚・(ノД`)・゚・。
なっちなっち!!!!!!神様
( `.∀´)<殺すわよ?
奇跡をおこして!なっち
131 :
ねぇ、名乗って:04/06/20 05:35 ID:v0guSxbv
神
132 :
辻っ子のお豆さん ◆No.NoSexe. :04/06/21 00:19 ID:05/fWYPl
やべー、プライドGPおもしろすぎる!
ヒョードル首から落ちて一瞬死んだかと思ったら、全然普通に冷静でやっぱり強すぎ。
ノゲイラvsヒーリングは今回ベストバウト。1R中ずっと興奮しっぱなしだった。
ハリトーノフの試合はもっと見たかったなぁ。あの短さでも怖さはかなり伝わったけど。
そして小川最高!日本人がこんな大舞台で当たり前の様に勝ち残っているってマジ凄い。
あーこの小説も娘全員集めてこんなトーナメントが書きたいなぁ。
でも誰をベスト4に残すかでめちゃくちゃ悩みそうだけど…。
小川は対戦相手に恵まれてるだけな気がする
K-1戦士とバスケ出身プロレスラー相手に総合やって小川クラスが負けるわけにはいかないでしょう
134 :
ただすん:04/06/21 20:43 ID:eSqk9QF8
ずっと気になってた第四話の一文。
>しかし藤本美貴は知らない。
>数年後、ここに残る四人の内の一人と血が血で争う死闘を繰り広げることになる未来を。
18歳以下トーナメント
↓2カ月後(227)
あややデビュー、摩天楼の闘い
↓1カ月後(325)
辻デビュー
↓1カ月後(330)
タッグマッチ
↓4カ月後(376)
本選トーナメント
↓3カ月後(517) ミカ襲われる
↓?
光と闇、チーム戦
まだ数年経ってないよう…死闘って今回のことじゃないのかな…
もしや松浦と死闘(゚∀゚)ドキドキ
後藤と高橋のくだりもあるし、そんなにすぐには終わらせられないだろうな。
ハッスルハッスルー
>>124 ののたん聖誕祭だけは外せません。
>>125 褒め言葉ですね。
>>126 正解!実は今回の保田毒手は蛾蛇虫を参考にしました。
まさかラーメンマンにこんな詳しい人がいるとは…。
あと内気功とか外気功とかわかりません。できれば教えてほすぃ。
>>133 小川がどのクラスにいるのかよく分からないので。とりあえずノゲイラ戦を希望。
てかヒョードルvsハリトーノフが見たい。今一番見たいカードかも。
>>134 作者すらあれから何年何ヶ月経過したのか把握してなかったのに…(適当)
時間経過のまとめ、ありがとうございます。
>>135 それ以外にも、数えたらキリがないくらいの伏線がありまして…。
では、ちょっと間が開いてしまったのですが、更新いきます。
「ふわぁ。……んだよ、うるせえな」
大声で辻が泣き叫んだ為、隣で気絶していた飯田が目を覚ました。
そんなアクビをして起きる飯田に、辻と高橋が反応した。
「飯田さん!!」
「止めてくらしゃい!いいらさん!なちみを助けて!!」
「ああ?話が見えねえよ。ちょっと落ち着けって」
号泣する辻に説明ができる訳もなく、愛が大雑把に説明する。
保田のこと。毒手のこと。安倍が死ぬ気であること。
話を聞き終えて、闘技場でにらみ合う安倍と保田に目を移す。
すると飯田は皮肉交じりの笑みを浮かべた。
「いっぺん死んだ方がいいかもな」
「え!」
「いいらしゃん!!なんれ!!」
「アホ、お前らまだ安倍なつみって女が分かってねえみたいだな」
頭上に?マークを浮かべる二人。
「それにしても毒手とは……ご苦労なことだが」
「だが?」
「安倍がパーフェクト・ピッチだけの女なら、とっくに俺が殺してるってこった」
「死ねぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
吼える保田。悪魔の毒手が迫るそのとき、天使が羽ばたいた。
(何…!?)
保田圭の視界から安倍なつみが消える。
――――――――「パーフェクト・ピッチとか、そういうのは関係ねえんだよ」
目標を見失った毒手が宙を切る。
保田の目の間にまぁるい拳があった。
なっちの拳だ。
理屈は無い。
ただ避けて、ただ殴る。安倍なつみにとってはただそれだけの行為。
――――――――「関係なくバカ強ぇんだ、安倍なつみってのは」
バゴォォン!!!!!!!!!!!!!!!
超速球の砲丸を真正面から投げつけられたような一撃。
保田がぶっ飛ぶ。ただ触れる、それすらもさせてもらえない程に圧倒的な。
あまりに単純で。あまりに強烈!正拳突き一撃!
(そんな!そんな!そんな馬鹿な!そんなはずはねぇ!)
気が狂いそうなほどの破壊力を前に、地面を転がりながら吼える保田。
(そんな為にあの地獄の苦しみを乗り越えた訳じゃねぇ!私は…)
爪で地面を掻き毟る。釣り上がった瞳が憎き敵を睨みつける。
(私こそが最強だ!!)
野獣の様な咆哮をあげ、保田圭は立ち上がった。
「へぇ」と飯田が感心の声を吐く。
なっちの正拳突きをまともにもらって立ち上がれる奴なんて、そうはいない。
血で顔が真っ紅に染まっていた。鼻がへし曲がっている。呼吸も荒い。
だがそれでも保田の視線はさらに凶暴さを増している。
「うがらああらああおらおおおあああああああ!!!!!!!」
何と叫んでいるか分からない声を発しながら、なっちに突進する保田。
ダメージなんて関係ない!毒手が触れればそこで決着なのだ!
試合に勝とうが負けようが知ったことではない。
重要なのは、安倍なつみの息の根を止めたのが保田圭であるという事実!
ドンッ!!
みぞおちに何かが突き刺さった。
安倍なつみのつまさきだ。いつの間に?
足が浮いた。そのまま真上に蹴り上げられた。信じられない激痛。
肉体のありとあらゆる内容物が逆流を始める。
口から何かが出てきた、堪える間もなく地面に叩き落された。
(安倍なつみぃ!!)
上を見た。足の裏があった。それが徐々に大きくなってきた。
メチィ!!
そんな音がした。
全てが暗闇になった…。
高橋愛は全身に鳥肌が立っていることに気付いた。
コロシアムは静寂に満ちていた。
安倍なつみの足が地面に落ちた保田圭の顔面を踏みつけたメチィという音がしてから、
誰も声を発する者はいなくなっていた。
衝撃であった。思えば安倍なつみの戦いを見るのは始めてだ。
ここまでするのか、と思った。圧倒的で、微塵のためらいもない。
一体どんな顔をしているのか、こちらに背中を向けているから見えない。
まさかこれほどのことをしても、いつもの笑みを浮かべているのだろうか?
安倍なつみは笑ってはいなかった。怒ってもいなかった。表情が無い訳でもない。
普通だ。普通の顔をしていた。普通の顔をしてある女を見ていた。
敵陣の中にその女はいた。
藤本美貴である。
彼女もまた安倍なつみを見ていた。
例えようの無い空気がその間を流れている。
ムクリ…と何かがその間を遮った。
まさかもう立ち上がることはないであろうと思われた怪物である。
「死ぬよ」
それを見た安倍が、そろりと言い放つ。
悪魔に魂を売った怪物の顔はもはや判断も付かぬ程、壊されていた。
しかし口元がニヤァと笑んだ。復讐への執念と狂気が限界を超えたのだ。
保田圭の黒い腕が安倍なつみの頬に向かって伸びた。すると安倍は前へ出た。
田中れいなは思わず目を見開いた。
道重さゆみは目を伏せた。
我が事以外にまるで興味を示そうとせず、マイペースにお茶し続ける娘、亀井絵里。
彼女までもがその視線を一人の女に向けた。
パァン!!!!!
完璧な体勢で成された発勁の音がコロシアムに響き、
黒き腕の悪魔は二階壁にまで弾き飛ばされ、壁に埋まりついに動かなくなった。
「あんたに教わった技だべさ」
なっちが言った。ふさわしいだろとでも言いた気に。
あの悪魔のように恐ろしい師匠の最期の姿に…三人の弟子はそれぞれの表情を浮かべる。
藤本美貴はまだじっと安倍なつみを見ていた。
すっかり泣き止んでいる辻も、口を明けてポ〜としている。
飯田はやれやれとでも言いたげにアクビを噛み潰す。
「コールはまだかしら?寺田さん?」
上で見ているはずのコロシアムマスターを挑発するなっち。
(保田ぁ……あの役立たずがぁ……)
寺田は歯軋りしながら、勝利宣告を言い放つ。
『あ、安倍の勝ち』
ワァッ!と辻と高橋が歓声をあげた。
ただ触れる。あの保田圭をして、それすらも叶わない。なんという最強!
一体どれだけ強いのか?まるで底が見えてこない。
ちょっとでも心配したこっちが恥ずかしくなる。
涙まで流した辻も恥ずかしそうにしている。
「さ、さすがなちみなのれす!」
辻が照れ隠しに声をかけると、戻ってきた安倍なつみは天使の笑みを浮かべ、言った。
「のの」
「へい!」
「次で決めて来い」
ドクンと辻の鼓動がひとつ高鳴った。
これで二勝一敗。あと一勝でこちらの勝利が決まるのだ。
その一勝を「決めて来い」と言われた。館長の命令は絶対。この際の返事は一つしかない。
「押忍!」
大きく声をはりあげ、副将辻希美が前に出る。
「がんばれ」と愛も声をかけると、確認する様に振り返る。
「愛ちゃんの出番はないれすよ」
「始めからそのつもりやよ」
「師匠……」
一方の保田チームには暗雲たるムードが漂っていた。
弟子三人で壁に突き刺さった保田を下ろす。
道重が心配そうに保田を揺り動かすも、まるで起きる気配がない。
禁断の毒手にまで手を染めたあの恐ろしい師匠が、こんなにも呆気なくやられるとは。
にわかに信じられる出来事ではない。
「さゆ、心配なか!うちと美貴さんで二連勝すればよか話たい!」
準備運動しながらそう言い放つ田中。しかしここで藤本から思わぬ返事が返ってくる。
「悪いけど、私は観戦に来ただけ……闘う気はない」
「ちょっと今さら何言っとー!」
「それにこれは元々保田圭と安倍なつみの喧嘩だ。たとえ私達がこのあと二連勝した所
で何の意味も無いさ。もう保田圭の負けで、安倍なつみの勝ちなんだよ」
「……ぐっ」
「それより早い所、医者に見せた方がいい。ほうっておいたら死ぬぞ、お前らの師匠」
「知らなか!」
「れいな…」
「あいつら皆殺しにすればよかたい!師匠もそれを望んでる!」
へそを曲げた田中に道重が声をかけるが、田中の腹の虫はもう収まらない。
なんだかんだ言っても、師匠は師匠である。
保田圭の八極拳をもっとも正当に受け継ぎし娘が、飛び出す。
対戦相手が飛び出して来て、初めて辻希美は気付く。
「あーーーお前!!トーナメントに出てた田中だぁ!!」
(今頃、気付いたと?このガキ)
れいなの顔がひきつる。
「ほんとだー!!えーどーしてぇ?敵やったんかぁ?」
「あっ、ほんとだべさ」
そう言われて高橋と安倍もやっと気付いた。
(やっぱ皆殺しばい、こいつら…)
れいなの顔がさらにひきつる。
「でも矢口さんに秒殺された子やろ。楽勝やわ」
「ののー、秒殺しろ」
「アーイ」
(100%……)
れいなのスイッチは完全に入ってしまった。
一体どうなるこの対戦?
『副将戦!!辻希美vs田中れいな!!』
>>145 更新乙です。さすが安倍さんですね。
そして自分は辻豆さんの六期のキャラ描写が好きです。
田中のなめられっぷりとかなんかリアルで笑えます。本物もそうなんですが六期は濃いですよね。
最近の二人ゴトなんかも使えそうなのがたくさんあった気がします。まだまだ楽しみです。
なっちとかおりがあまりにも別格過ぎないか?。
でも背中ゾクゾクするくらいおもしろい物語ですね。
あれだけの強さを見せた安倍に見つめられて平気だった藤本が気になる。
レベルの違いにビックリするとばかり思ってたもので。
それとも藤本には何かまだ引き出しがあるのかな。
ちなみに田中、最高です。
殺伐としたこの団体戦でいい味出してますw
なっちイイ!!!
正直ここまでの展開になるとはおもいませんでした!
強いなっちはとても魅力的です!次回の田中と辻は?
どんな試合になるのか・・・楽しみです
安倍側はあんなノリでいいんですか?w
何気矢口グッタリなのに。
>>146 あまり見ていないので二人ゴトのネタは使えないです。
(ののさんのは完全録画しましたが…)
>>147 ありがとうございます。
それだけ安倍飯田が破れた時の反動は大きくなる…。問題は誰が倒すか?
>>148 藤本のシーンはかっこよくて好きなんですよね。作者も書いてておもしろい。
あと田中の評判が上がってきたのも嬉しいです。
>>149 なっちの戦い。実は何度か書き直したり加筆したり、かなり気を使いました。
そして気が付いたらああなってた。
>>150 ピンチのときも笑い飛ばせるイカシタ奴らです。
少なくともなっちは、矢口を気遣って辻に「秒殺しろ」と言っています。
辻希美の戦いは、いたってシンプル。
前に出て殴る。それに尽きる。
そして今回もそのつもりだった。
トン。
それが一歩遅れた。自分が出るよりも早く、田中れいなが前に出てきたのである。
八極拳使いと聞いていた。待ってカウンターを狙う武術と理解していた。
さらに以前、矢口真里にあっけなく負けた相手だという油断もあった。
その理解と油断が、希美の出足を一歩遅らせたのである。
いやそれ以上にれいなの飛び出しが優れていた。
慌てて突きを撃つも、間に合わない。
希美の拳がれいなに当たる前に、れいなの掌が希美に触れた。
パパァンッ!!
その瞬間、希美の小さな体が思いっきり吹っ飛んだ。
溜めも間合いも関係ない、いきなりの衝撃。
これを見た表格闘技チームの表情が一変する。
矢口戦でみせた動きとはまるで違う。いや、それ以上に…。
「毒手抜きなら、保田よりはるかに上だぜ」
飯田が安倍にそう感想を漏らした。安倍も無言で頷く。
保田よりも、そして自分よりも…八極拳が使える。なっちの目つきが変わった。
「ののが負けるかもって心配?飯田さん」
「アホ」
正直なところこの副将戦は、大将戦の意味も兼ねる。
安倍も飯田も、今の高橋ではまだどう転んでも藤本には勝てないと判断している。
つまり、もし辻が負けて2−2で大将戦に回った場合、こちらの負けということ。
逆にここで辻が勝てば3−1で大将戦に回らずしてこちらの勝利が決まる。
そういう意味を含んだ重要な試合なのである。
「あいつが負けると思ったら、こんなのんびり座ってるかよ」
「同感」
安倍と飯田がそんな重要な場を残して、前半で出たには理由がある。
それは後ろに控えているのが辻希美であるということだ。
飯田圭織が見い出した天武の娘である。
安倍なつみが認めた奇跡の娘である。
二つの最強が、絶大なる信頼を置いて後ろに置いた娘である!
たとえ敵がどんな化け物だろうが、どんな奥の手を秘めていようが…
負ける気がしない!
「イテテ…」
吹っ飛んだ辻は肩を押さえながら、すぐにコロッと立ち上がった。
間髪おかず、田中が次の攻撃に入る。
するどい回し蹴りが希美の側頭部を狙い、放たれた。
(ガード!)
とっさに辻は頭をかばう為に腕を上げる。
その腕に、蹴りの衝撃ともう一つ別の衝撃が加わった。発勁!
ババパァンッ!!!
辻が頭から吹き飛ぶ。ガードも意味がない。
蹴りの発勁!そんなの見たことも聞いたことも無い。
衝撃を受ける周りの者たちに聞こえるよう、道重さゆみはほくそ笑む。
「師匠が言ってたもん。れいなは天才だって」
「さゆ、少し間違ってると」
100%の力を完全発揮した田中れいなが、辻を見下ろしながら言った。
「天才であり努力家たい」
「うぐ……」
「奇跡なんて都合よかもんに頼っとー甘ちゃんとは違か」
地面にうずくまる辻に、さらにもう一発蹴りの発勁。
何の抵抗もできず転がる辻。
まさか!まさか!あの辻希美が!?化物みたいに強かったあの辻希美が!?
信じたくない光景に愛はかぶりを振る。
「辻さん!!」
動揺する愛に、なっちが声をかける。
「落ち着きなよ。高橋」
「どうして落ち着いてられるんですか?このままじゃ辻さんが…」
「お前は、奇跡だけの娘に負けたと思っているのか?」
「えっ…」
「ののは負けないさ。ましてお前の見ている前じゃ死んでも負けられないだろう」
愛の脳裏にあの激闘が蘇る。
(うん、そうだよね。あの辻希美の強さは…奇跡なんかじゃなかった!)
グググッと辻の体が起き上がる。それを見た田中が眉をピクリと動かす。
「…っ!」
発勁3回。常人なら死んでもおかしくない程のダメージのはずだ。
なのにまだ立ち上がろうとしている。
田中はさらに蹴った。起き上がりかけた辻がまた吹き飛ばされる。
これで4回…。
「まら…まらぁ…」
何なんだ?ただの馬鹿なのか?この力の差もわからないのか?
立ってもやられるだけだというのに…。
田中はムスッと唇を曲げ、さらに蹴った。
ガードもできず、辻はその蹴りを発勁ごともらう。しかし倒されず踏みとどまった。
誰よりも…努力した。
地上最強と呼ばれればいつか再会できると信じて……。
(ねぇ、あいぼ…)
辻希美が前に出た!それに合わせて田中は寸勁を撃つ。ガクンと辻の全身が揺れる。
しかし吹き飛ばされはしない。強靭な足腰と精神力で踏みとどまる。
グウゥゥンとついに辻の拳が田中目掛けて発射された。
ゾクリ。
何かが走った。それが何か田中はわからなかった。今まで感じたことのないものだ。
だがいけないと思った。このまま受けてはいけないと。
前蹴りを辻の腹に放ち、その反動で後ろに避ける。
ギリギリの所で辻の拳は鼻先を通り過ぎていった。
逆に倒されたのは蹴りを受けた辻のほうだ。
田中れいな。あの咄嗟で恐るべき格闘センスである。
「ふぅ…危なか危なか」
ポタ…と何か落ちた。
赤いしずくだ。それがポタポタと止まらない。
顔に手を当てて田中は始めて気付く。それが自分の鼻から落ちていることに。
(どーなっとるたい?)
当たってはいない。たしかに避けた。
当たっているとすれば拳の風圧くらいのものだ。
風圧?まさか…。
目を見開いた田中の視線にゆっくりと立ち上がる辻の姿が映った。
激闘のさなか、歯軋りを鳴らす男がいた。
コロシアムマスター寺田である。
「クソッ、俺に恥をかかせやがって保田の奴。このまま負けたらどうなるか…」
「マスター!」
突然寺田のVIPルームへ現れた側近のアヤカに、寺田は苛立ちの声で返す。
「なんや!やかましい!」
「侵入者です。二人組の」
「しんにゅうしゃぁ?なんやそれ!?そんなもんとっとと始末せいや!」
「はい、すでに待機中のコロシアム戦士を数人動かしたのですが…」
「何や聞こえへんで!」
「全滅…しました。それも相手したのは一人だけです」
「冗談よせや!一人でコロシアムの戦士を何人も倒せる奴なんて、いてたまるかい!!」
「残念ですが…いるようです」
そのとき……プシューと自動扉の開く音。
寺田達のVIPルームに一人の娘が、踏み込んだ。
寺田は驚愕の目つきで、その侵入者を見る。
(たった一人で怪物揃いのコロシアム戦士数人を……そんな奴人間やない…鬼神や)
氷の様な視線をむけて鬼神が立っていた。後藤真希、参上!
第28話「天使は羽ばたく」終わり
次回予告
白熱する辻と田中の激闘、その結末は果たして…?
そしてついにコロシアムへ舞い降りた後藤真希のターゲットは?
大将戦!高橋愛vs藤本美貴は実現するのか!?
「3対3…ちょうどいいんじゃねえの?」
新キャラ、そして招かれざる乱入者たち!急展開のコロシアム編!
(イシカワリカ……か)
To be continued
後藤キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!
次回予告の3対3が気になるのです。
新キャラがでるんですか?今まで出てない娘って誰だっけ・・・?
辻豆さんは次回予告もうまいなぁ。
もう手の上で踊らされっぱなしですよ。
予想通りの展開だな
161 :
ただすん:04/07/01 04:22 ID:5TU510ya
勝手に推測した俺的強さ早分かり表
AAA 安倍 後藤 プロレスの神様
AA 石川 吉澤 亀井 福田
A 藤本 矢口 辻 田中 道重 保田 裏あやや 加護
B 高橋 松浦 飯田
C 石黒 柴田 中澤 市井 紺野
D ソニン 里田
E 小川 新垣 みうな 斉藤 大谷 村田 ミカ りんね あさみ
F 谷 前田 稲葉
? アヤカ 五郎 しんや
ラスボスは亀井?石川?藤本の死闘相手とは加護か松浦?
新キャラって誰だろ?気になって夜も眠れない。ベリーズ工房なら一人も知らんw
闇コロシアム編は6期のおひろめ編って事かな。
これから藤本が名実共に6期を束ねていく展開キボン!
>>161 おおよそ同意。流れ上亀井と後藤が入れ替わるのもありかも・・・
後藤が壮絶に亀井にやられるとか・・
亀井って、そんなに強いかなぁ?
不敵なだけで、意外にもろそう。田中レベルと見る。
165 :
辻っ子のお豆さん ◆No.NoSexe. :04/07/03 08:02 ID:JnjnWmx8
>>165 すっかり大規模小説になってるなぁ…さすが辻豆さん。
登場人物紹介で
平家みちよ……???
だけまだだよね
そろそろ?
>>159 ありがとうございます。どんどん踊ってください。
>>161 作者より詳しく把握してるかも…。
これが正しいかどうかは、これからの展開でどんどん明らかに!
>>162 簡単にお披露目だけする予定が、意外と長くなってしまったという裏話。
>>163 後藤と亀井といえば今日のハロモニですね。
キャワイにらめっこ対決ではキャメイが勝った(?)けれど……
>>164 田中レベルと言いますが、実は田中も相当強いんです。
六期3人それぞれの怖さがあって、誰が一番強いとはまだ述べていないので。
>>166 あちらもよろしくお願いします。
>>167 そろそろ、です。
第29話「戦いは終わらない」
目の前で繰り広げられる激闘の数々に、高橋愛の闘争本能はずっとくすぶられていた。
これらが女子格闘技界の頂上に位置する者たちの戦いである。
(私は…私も…)
もし、万が一、あってほしくはないが、辻希美が負けたとしたら…
勝敗は2対2となり、この戦いは終わらない。
(その場合は私と…)
愛はチラリと向こう側に目を移す。藤本美貴。彼女が相手となる。
どうして彼女があちら側についているのか、その理由を愛は知らない。
だが理由は何であれ、戦いを避ける訳にはいかない。
(勝てるか?)
藤本美貴を相手にして果たして勝てるか?この疑問に答えがでない。
彼女はトーナメントで準決勝敗退している。そういう意味では愛と同じ位置だ。
だが彼女の負けと自分の負けは、決定的に違っていると思う。
自分と辻希美が再戦したとしても、まるで勝てるイメージが湧かない。そういう負けだ。
だが藤本美貴と矢口真里が再戦したとすれば、むしろ藤本が勝つ可能性が高い気がする。
たった一回しか使えないチャンスを矢口真里がもぎとった。そういう決着だった。
(勝てるか?)
そんな藤本美貴に勝つことができるのか?勝つと言いたい。だけどそう思えない。
彼女だけにではない、今ここにいる9人の誰を相手にしても「勝てる」と言い切れない。
(この中で一番弱いのは…)
ギュッと拳を握り締めて、愛は目の前の激闘に目を移した。
田中れいなという強敵に巡り合えた辻希美が、イキイキしている様に見えた。
自分と闘ったときよりも…。
苦境に立たされながらも辻希美はワクワクしていた。
(もうちょっとなんらけどな〜)
田中は鼻を押さえながら、もの凄い目つきでこちらを見ている。
(次は当てるから!)
ニコッと笑って、再び飛び出した。
正直なところ笑える状況ではない。あっちは無傷で、こっちはもうボロボロだ。
しかし負けるつもりはなかった。
自分はトーナメント優勝者である。
自分が負けたら他のトーナメント出場者に合わす顔がないと思っている。
「いくぞぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!」
思い出した。なっちに教わった武器、この拳だ。
どんなに追い込まれようと、この拳が一発でも相手に当たればひっくり返せる。
その拳を撃つ。
田中がカウンターで蹴ってきた。それが横っ腹を思いっきり叩いた。
あばらが何本かいったかもしれない。それ以上にそこから広がる気孔が厄介だった。
だが耐えた。防御を考えないでとにかくこの攻撃だけを当てる。もう一度吼えた。
目の前に掌があった。田中の小さな掌だ。鼻頭が熱くなる。
「死ね」
音がしなかった。脳が揺れる感触。意識が吹っ飛んだ。
何も考えられなくなった。だから考えないままに動いた。すると拳が何かに触れた。
ズドォォォォォォォォォォォォォォォォォォォンッ!!!!!!
道重さゆみは見た。田中れいなが殴り飛ばされるシーンを。
亀井絵里も見た。その瞬間スッと瞳孔が開く。
100%である。田中は本気の本気を出している。
そんな田中が倒された。にわかに信じがたい出来事に二人の顔つきが変わる。
(当たった!)
脳が揺れ、朦朧とした意識の中で、辻は確かにその感触を得た。
このまま一気に攻めたい所だが、さすがにダメージがたまり過ぎていた。
ダウンする田中を前に意識の回復を待つ。
「ハァ…ハッ…ゲホッ…ハ…」
すぐに辻が攻めてこれないことは、九死に一生を得たようなものだ。
かつて経験したことのない破壊力に田中はもがき苦しんだ。
コロシアムのルールに10カウントはない。
どちらかが敗北を認めるか戦闘不能に追い込むしかない。
そしてもちろん田中が敗北を認めるはずがない。だが体が言うことをきかない。
(冗談やろ?れいなはたった一発しかもらってなか!)
「立って!れいなぁー!」
道重が声をかけた。ダウンしたとはいえまだ一発もらっただけ。
ダメージは敵の方が多いと思っている。だがそれは傍で見ている者の意見である。
想像を絶する激痛の中で、田中は道重の応援に憎らしささえ覚えた。
唯一、愛だけには田中の苦しみが痛い程に理解できた。
(たとえ立てても…もう無理やよ…)
真の敗北。
田中れいなは生まれて初めて、その言葉に恐怖を感じた。
矢口戦での負けは負けと思っていない。あれは本気じゃなかったからだ。
しかし今は違う。本気だ。全力だ。100%だ。田中れいなの全部だ。
なのに地べたでもがき苦しんでいる。
ジャリ。
足音が耳に入ってきた。すぐ間近での足音、犯人は一人しか考えられない。辻希美。
背筋に氷の槍を突き込まれたような寒気を感じる。
(恐怖?これが恐怖やと?私があいつを恐れとーと?)
(冗談じゃなか!私は…私は…)
「…誰にも負けんたいっ!!」
まさに辻が攻撃を仕掛けようとした瞬間、田中がブワッと飛び起きた。
撃った。撃った。撃った。
死にもの狂いで発勁を連発する。攻めて、攻めて、攻める!
もの凄い連続攻撃に辻の体が揺れ動く。
「勝負あったな」
飯田の台詞に頷く安倍。愛も同じ感想をもった。
単純な打撃の打ち合いとなったとき、彼女に勝てる人間を思いつかない。
ふと辻希美の体が止まった。あまねく発勁連打の中でたった一発の拳が火を吹く。
ドンッッ!!!!!!!!!!!
ゴッガッガッドドオォォォォォン!!!!!!!
地面にバウンドして飛んで、もう一度バウンドして、そのままの勢いで壁に激突する。
そして田中はピクリとも動かなくなった。
この圧倒的な攻撃力を相手に打ち合いを選んだ時点で、こうなることは見えていたのだ。
「ちかれたぁ〜」
それを見てベタンと腰を下ろす辻希美。言葉とは裏腹に満足気な表情が見て取れる。
「勝ったぁ!!!」
愛が歓喜の声をあげる。完璧な勝利、そしてそれはチーム全体の勝利を意味する。
だが、見事な勝利を飾った辻を祝いに飛び出そうとした愛は、妙な不安に足を止める。
敵チームの亀井と道重が、まだ余裕の笑みを浮かべているのだ。
「あ〜あ。やっちゃった。もう…さゆ、知〜らないっと」
「れいなの本性見れるの久しぶりだね〜ワクワク」
あの二人は何を言っているんだ?
辻希美の正拳突きをこれほどまともにもらって、もう戦える訳がないだろう。
だが何故か不安が収まらない。愛はソーっと田中の方を見た。
ピクピクピクッとすごい速さで痙攣していた。そしてそこから奇妙な泣き声が響いた。
田中れいな本人も自覚の無い……彼女の本性。
「にゃ〜〜〜〜〜〜〜ん♪」
四足。
壁からムクッと現れた田中は手と足の四本で、地を踏んでいた。
瞳が大きく見開かれ爛々と輝いている。そしてもう一度鳴いた。
「にぃやぁ〜〜〜〜お」
一体何が起きているのだろう?
愛も、安倍や飯田すらもその顔に困惑を浮かべている。
誰より一番驚いているのは当の辻希美である。勝ったと思ったのだ。
そんな敵陣の驚きを見た道重がニタ〜と微笑んで言った。
「れいなは師匠に拾われるまで天涯孤独だったの。赤ちゃんの彼女を育てたのは…」
「ネコ…?」
辻がとまどいながら聞き返すと、道重はさらに嬉しそうに言った。
「そう、れいなの意識が飛んじゃうと、ああしてれいにゃが出ちゃうんだよね〜」
「あの子、かわいそう。れいにゃと遊ぶなんて…」
「でも悪いのはあの子だよ。れいなを殴ったんだから。殺されても仕方ない」
「うん、仕方ない。ウフフフフ…」
道重と亀井は笑いながら顔を合わせると、二人で辻にバイバイと手を振った。
ハッと辻は田中に視線を戻す。しかし元の場所に彼女の姿はもうなかった。
シャッ!鋭い痛み!爪で肩の皮膚がえぐられる。その動きにまるで反応できなかった。
もはや体力も残り少ない辻に、人間離れした動きでれいにゃが襲い掛かった!
(館長、まだ…)
地下コロシアムのちょうど真上にあるビル入口に、紺野あさ美は控えていた。
あらかじめ安倍なつみに命じられていたのだ。
昨夜、極秘に呼び出された紺野は、館長室で安倍と二人だけの会合をした。
「明日の晩、私達は敵の策を真っ向から受ける」
「押忍」
「地下コロシアムという地図にも無い場所に招待されるんだけど、どう思う?」
「はい。十中八九、罠と思われます。誘いに乗るのは得策と思えません」
「だけどなっちは地上最強を語っている以上、逃げる訳にはいかないんだよ。ねぇ」
「最強も色々と大変ですね。きつい様なら代わりましょうか?」
「エヘヘ。おもしろいこと言うな紺野。まぁそこでひとつ頼みがある訳よ」
「何でしょうか?」
「うちらが敵の車に乗ったら、お前気付かれない様に後をつけろ」
「……!」
「まずコロシアムの場所を割り出すこと。それからこの小型ポケベルを預けておく。
これなら圏外でも通じるだろ。これで合図するまで上で待機していてくれ」
「ポケベルが鳴ったら?」
「私達に何らかの危険が起きたということ。後の判断はお前に任せる。いい?」
「押忍」
「このことは他言無用。誰にも気付かれるなよ」
「辻さんにも、ですか?」
館長と共にコロシアムへ向かう夏美会館現王者について、紺野は尋ねた。
すると安倍はそれまでの真面目な顔を崩して、頭を指しながら答えた。
「ののは腕は立つがここが弱い。余計な策略まで語ると集中できなくなるかもしれん」
「なるほど」
「紺野。お前は頭がいいからな。これからもその知恵でなっちを助けて欲しい」
その台詞に、紺野は複雑な感情を得た。
「もちろん、そのつもりです。但し頭だけでなく、こちらでもですが…」
スッと紺野は拳を握り、館長の前に差し出した。
高橋愛・後藤真希と敗戦が続き、かつての伝説の娘も今や最強に程遠い位置付けに落ちた。
しかし紺野は高みへの挑戦を諦めた訳ではない。
その証拠を差し出された拳は語っている。
安倍は知っている。連夜、彼女が死に物狂いの特訓を続けていることを。
差し出された拳に…今や何かが宿ろうとするほど…。
「ああ、期待している」
太陽のような笑みでなっちは言った。
……ということが昨晩あったのだ。コロシアムの真上で待機する紺野。
ポケベルは未だ鳴っていない。このまま鳴らなければ、それが一番いいのだが…。
気になったのは自分以外にも尾行している車があったことである。
その車がどういった目的なのかは知らないが、不安は拭えない。
(誰かいる!?)
そのときであった。ビルの反対側で誰かが動く気配を感じた。
動揺して身を動かした為、こちらも気付かれたかもしれない。
(どうする?)
紺野は考えた。迷った訳ではない。覚悟はすでにできている。
たとえ館長の命令に背くことになれど、敵と会えば闘うつもりだった。
(闘るなら即効。敵が連絡を取る前に倒す!)
考えも決まった。決まったら迷う必要は無い。紺野は一気に飛び出した。
すると向こうの影も同時に飛び出した。ビルの入口中央で二人は重なる。
「えっ!」「おわっ!」
互いの顔を見て二人は同時に声を上げる。
闇の戦士ではない!彼女は見たことのある顔だ!
「お前、夏美館の紺野!」「あなたはハロープロレスのデビルお豆!何でここに!」
そう、そうはデビルお豆こと新垣里沙であったのだ。
保険をかけていたのは安倍だけではない、飯田もまた新垣に同じことを命じていたのだ。
「私は…社長の命令でここに!」
「わかりました。とりあえず声のトーンを落として、敵に気付かれてしま……」
「いよーーー!!!!お前らもいたのかよおおおおお!!!!!」
紺野の心配をよそに、後ろからとびきりの大声で現れたのは柔道の小川麻琴であった。
「何だあ?お前は矢口真里の保険かあ?」
「いやーハハハ!おもしろそーなんで勝手に来ちまったぜぇウヘヘヘヘヘへ」
新垣の問いに小川が豪快に答えると、紺野は頭痛で顔を歪めた。
Mステの猫耳れいなを思い出して勃起し、
「にゃ〜〜〜〜お」でボイトレの笠崎を思い出して萎えマシタ!(・∀・)
179 :
ねえ、名乗って:04/07/05 00:26 ID:5qnEbjt4
ボイトレの先公ににゃーーーーーーおと言われたときに
さゆみんの顔がどんどんと紅潮していったのはワラタ。
辻豆さん更新乙です!
猫拳ですかー!私的にはそう来たかーって感じで意表をつかれるましたよW
猫拳で思い出したのが、らんま1/2で乱馬が猫になってしまうのを思い出しましたよW
辻豆さんこれからも枠にとらわれない作品書いてくださいね!
181 :
ねぇ、名乗って:04/07/05 04:20 ID:DDYBRQsj
更新お疲れ様です
安倍と紺野のやりとりにじーんときました。
しかし、こんなところで5期メンが・・・。活躍楽しみです。
182 :
名無し募集中。。。:04/07/05 16:07 ID:a1SAYSl/
なにこれ
183 :
ねぇ、名乗って:04/07/05 16:08 ID:+1c8Ceg1
にゃーんって・・・・・・
185 :
名無し募集中。。。:04/07/05 22:07 ID:ZppmrV8Q
ネコがどうやって人間の赤ん坊育てられるのか知りたいもんだ
れ…れ…れいな…
ハァ━━━━━━ ;´Д` ━━━━━━ン!!!!
創作なんだから、猫に育てられたれいなもアリだと思う。
でも、そうすると猫に育てられて保田に拾われたれいなは
どこで博多弁を覚えたか…そっちの方が純粋に疑問w
本性見せたれいなも辻にはやっぱりかなわないんだろうか。
あー、辻に飼い犬の生霊とか降りてきて
犬猫大決戦〜的なのも見たいなぁ。
実際に狼に育てられてた少女が見つかったこともあったし、猫れいなもありだと思う
狼とネコじゃ全然違うだろ
赤ん坊の時点で大人のネコよりでかいし
ネコったって家ネコじゃないでしょ
ワイルドキャットだよ、きっと
サーバルキャットとかー
英語なら猫科の動物はみんなCatだしね。
深く考えたヤツの負けっちゅーことで
ニャンコ先生だって愛川欽也じゃないか
>>188 狼に育てられた姉妹の話は作り話だそうです
姉妹を拾った人物が、ただの孤児では世間からの同情を
得にくく寄付も集まらないと考えた結果、狼に育てられた
とゆう事にしたそうです。言葉を喋れなかったり四つん這いで
歩いたりしていたのは障害を持っていたからだそうです。
( ^▽^)つ〃∩ ヘェーヘェーヘェー
そもそも日本にワイルドキャットとかサーバルキャットとか
野生でいるのかよw
イリオモテヤマネコとかいるじゃん
狼少女の話、信じてたんだけどな
リアルとデタラメの中間だから面白いんじゃないか。
今更リアリテイ求めてもな
200
にぎやかになってきたな
犬が人生の目標である辻としては
猫ごときに負ける訳にもいくまいて。
アヴェロンの野生児っていたろ。
ネコ話で盛り上がってるとこ、すいません。更新します。
ところで昨日のK−1、ムエタイ強かったですね。
誰か立ち技最強キャラでも作ろうかな。
「誰だ!!ここで何をしている!!」
案の定、敵の警備がワラワラと集まってきた。言い訳する間もなく囲まれる三人組。
「どうします?」と投げやりな口調で二人に尋ねる紺野。
「あーめんどくせぇ」と自慢の眉をしかめる新垣。
「やるしかねぇじゃん」と何処か楽し気に答える小川。
三人の呼吸が合ったとき、彼女達は同時に三方へ飛び出した。
紺野は強烈な突きと蹴りで敵を粉砕し、新垣と小川の方を垣間見た。
てこずる様なら手を貸してあげようか…と思ったのだ。だがその考えは徒労に終わる。
小粋なプロレス技で敵を翻弄する新垣に、豪快な柔道で敵を投げ飛ばしてゆく小川。
(強い…)
紺野は思った。紺野だけではない。新垣も思った。小川も思った。
安倍や飯田や矢口といった怪物たちを間近で見ていた為に、気付きもしなかったのだ。
自分たちが今や、並の者では相手にならぬ程に強くなっていることを。
「何なんだ!このガキども!」
「一旦下がるんだ!あの人たちを呼べ!」
紺野達の強さに度肝を抜かれた敵のガード達は大慌てで逃げ出す。
追いかけ、エレベータルームにまで下りた所で、ちょうど下からエレベータが昇ってきた。
その中から筋骨隆々の男が三人出てくる。紺野は顔色を変えた。
(明らかに今までの奴らとは気質が違う……何なのこいつら?)
紺野の悪寒は当たる。彼らは死をも恐れぬ選ばれしコロシアム戦士だ。
「へっ」と強気に小川は笑みを浮かべる。
「3対3…ちょうどいいんじゃねえの?」
「吉澤ひとみをやったのは、お前か?」
マスタールームに、後藤真希の冷たすぎる声色が響いた。
倒してきたコロシアム戦士の返り血で彼女の体は紅く染まっている。
寺田にはその姿が本物の鬼神に見えた。
「お、お、俺やない!ちゃうで、ちゃうで!」
「じゃあ誰?」
「石川や!石川梨華!!吉澤を殺したんは石川梨華や!!!」
ピクッと後藤の顔が動く。
(イシカワリカ……)
頭の中でその名を何度も繰り返す。決して忘れぬ様に記憶にすりこむ。
「その石川梨華ってのは何処にいる?」
「し、知らん!俺は何も知らんのや!ほんまや!」
「あっそう。じゃあ殺す…」
情の欠片もない声で呟き、後藤が近づいてくる。
そのとき、寺田はズボンの後ろに隠しておいたピストルを取り出した!
「死ぬのはお前じゃボケェ!!」
パン!
見えない閃光がそのピストルを弾き飛ばした。後藤真希の光速のハイキック!
寺田は言葉も出ず、何故自分のピストルが手から落ちたのかも理解できない。
もはやかわいそうなくらい震え上がっていた。
「お前、才能ないんじゃない」
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!」
「もう一度聞くよ。イ・シ・カ・ワ・リ・カは何処だ?」」
「ち、地下や…ここのやないで。あの方の……」
その瞬間、銃弾がトンッと寺田のひたいを貫通した。
「あ、あ、あ…」と声にならぬ声を出して、そのままバタリと寺田は死んだ。
咄嗟に身を翻した後藤は銃の飛んできた方向を見抜く。
「しゃべり過ぎだ」
反対側の非常口に女が立っていた。美貌と怖さを兼ねた外見に、鋭い殺気を纏っている。
すると寺田の側近であったアヤカがその女の下へ飛ぶ。
「いいタイミングですわね。平家さん」
「本当のマスターがお呼びだ。アヤカ」
「誰だお前?」
後藤は、去ろうとする二人を追いかけようとした。
それを平家と呼ばれた女性が、銃口を突きつける形で遮る。
「心配するな。いずれ嫌でも闘うときが来るさ」
辻希美と田中れいなの激闘はまだ続いている。
まるで何か大きな流れが、その敗者の名を告げることを拒むかの如く。
「ニャンニャァ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ン♪」
れいにゃの四肢が一振りされる度、辻の体は爪で裂け鮮血が吹き上がる。
(ネコ、ネコ、ネコ、ネコ、ネコ、ネコ、ネコ、ネコ…)
辻は混乱していた。猫と闘った経験なんてある訳がない。
反撃しようとわずかな力を振り絞るも、当たるどころかカスリもしない。
(えーと、えーと、ネコに勝つには…えーと)
ピコーン!
辻の脳天に豆電球が点く。
(ネコに勝つにはイヌになればいいのれす!)
思いついたら即実行。辻は四つんばいになってれいにゃと向き合った。
まさか…!味方チームに悪寒が走る。
「ワンッ!」
辻希美は期待に応える娘である。悪寒的中。
挑発と勘違いし「にゃにゃにゃにゃにゃにゃーーん!!!」と余計に荒れるれいにゃ。
四つんばいでガードもできない辻は顔面を、思いっきり引っかき廻されダウンした。
頭を抱えたなっちは、愛に呟いた。
「なんとか藤本に勝ってくれ」
「……はい」
「アハハハハハハ!!あの子、おもしろ〜い♪」
めずらしく亀井が笑い転げている。
(あのバカ)
藤本は同門であることが恥ずかしくなり、顔を伏せる。
(なんで?なんで?なんでぇ〜?)
辻は顔を抑えながら逃げ回り、また必死に考える。
(なんでイヌなのにネコに負けるんれすか?)
(どーしよ?どーしよ?他に動物?えーと、えーと?)
すでに考える方向性が違っていることに気付かない所が、辻の辻たる所以でもある。
ピコーン!
そして辻の頭に再び豆電球が光る。さぁミラクルのはじまり。
(あれがあったぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!)
とどめをさそうと、れいにゃが辻に飛び掛るその瞬間、辻はバッと身構えた。
「コケ〜!!!ココココココケ〜!!!コケ〜!!!ココココココケ〜!!!!」
ビクッッッ!!!!!!!!!!
言うまでも無いが、その場の全員がびっくりした。にわとり!?
特に真正面のれいにゃの驚きは計り知れない。
「あれ?うち何しとー?」
なんと、あまりの驚きに意識がひっくり返ってしまったのだ。もはや誰もつっこめない。
奇跡だ。
>「お前、才能ないんじゃない」
爆笑した
更新乙です。
以前、外気孔と内気孔がどうのくだらないカキコしたものです。
ちなみに内気孔とは自分の体内の気を使って攻撃したり硬化させたりするもので(例:悟空のカメハメ波や黒龍の制空圏バリヤーやラーメンマンの百歩神拳)体力勝負のところもありますが
外気孔とは外の世界の気を使い体力いらずなお得な奴(例:元気玉かな?)主に達人が使ってるイメージがあります。
ってこんな説明でいいでしょうか?
ところで藤本って夏美会館に出会う前は
もしかして某国のテコンドーチャンプだったとか…
立ち技系で出てませんよね?(しいて言えばみうながネリチャギらしきのを出そうとして高橋に秒殺食らったくらいかな?)
長々とすいませんでした。これからも物語期待してます。
みっちゃんキタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!!
ののたんが「ピコーン!」のAA
↓
ぴコーン!
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄○ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
o
。
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|: ::|::::::::::::::`>-、, __ _ ,、-<:::::::::::::ノ
|: ::/ ̄ ̄ /:::/  ̄ ̄ /:::::::/⌒
こけー
ネコとイヌとニワトリ
あとロバがいればブレーメン・・・
ロバはエチオピアで訓練してる
本当のマスターってやっぱり山(r?
ののたんだから仕方ないなw
222 :
名無し募集中。。。:04/07/10 16:10 ID:OLfF+mJp
携帯で全部読む方法ない?
>>205 ナニ! タチ最強?
(0^〜^) < もう出てるYO!
>>222 俺はimonaで前スレのリンクから行けた
225 :
名無し募集中。。。:04/07/11 07:16 ID:slpzJkHg
226 :
名無し募集中。。。:04/07/11 09:04 ID:slpzJkHg
>>224 自分で見つけました!
ありがとー!!!
>>212 説明どうもです。
藤本は夏美会館の前はサンボやってた設定です。
そういえばテコンドーキャラはいないですね。
>>218 ネコとイヌとニワトリの戦いを見守るドンキーテールがいます。
>>223 ああ、タチ最強といえば吉澤ですね。
バァーン!!
田中と辻が再び見詰め合ったそのときだ。コロシアムの閉ざされた扉が突然開かれた。
そして屈強なコロシアム戦士が次々と流れ込んでゆく。
「なんれすか、これ?」「知らなか!」
「マスターの命により、貴様ら全員生きては返さん!」
コロシアム戦士の一人が叫ぶと、残る娘たちの顔色が変わる。
(やれやれ、先手を取られたか…だけど)
安倍なつみが立つ。ジョンソン飯田も立ち上がり、間近にいた敵をいきなりぶっ飛ばした。
「うちら全員を相手にしようなんて、間抜けにも程があるべさ」
「同感だ」
一方の藤本、亀井、道重にもコロシアム戦士が襲い掛かる。
「これもてめえらの師匠が絡んでることか?」
「違うと思いますよ、多分。負けた師匠をあっちが裏切ったんですよ」
「どっちでもいいじゃん。エリと遊んでくれるんなら」
クネッと近寄るとボキボキボキィと敵の背骨を瞬時に折りたたむ亀井。
真剣の如き鋭さと冷酷さで、敵を切り刻む道重。
敵はベンチで気絶する保田にもとどめを刺すため襲い掛かろうとした。
だが藤本が立ちふさがり、その視線に睨まれただけで近づけなくなってしまった。
「こいつには教えてもらうことが山ほどある。まだ死なれちゃ困るんだよ」
愛も矢口を守るため奮戦していたが、その騒々しさに矢口の意識が戻った。
「なに楽しそうに暴れてんだぁ……おいらの分も残しとけぇ」
「矢口さん!動いちゃダメですって。お腹刺されたんですよぉ」
「平気よ平気ぃ」
腹筋に力を込めて傷口を塞いでいると言い出した。
そのまま敵を投げ飛ばすのだから、恐れ入る。
(やっぱりこの人も怪物やわ…)
すでに体がボロボロの辻と田中はこれに参加せず、まだ中央でにらみ合っていた。
「残念たい…これじゃ決着つけられなか」
「また次だね。それまで誰にも負けちゃダメだかんね」
「おまえもなー」
ものの3分とかかりはしなかったであろう。なだれ込んできた敵を全滅させる時間だ。
娘たちは強すぎた。だが外の廊下にはまだ敵の騒ぎが聞こえる。
すると藤本が上着で保田の毒手を隠し、慎重に背負い出した。
「こいつは私が運んでやるから、お前らは先に行って敵を倒しとけ」
藤本の意見に亀井と道重は田中を連れてコロシアムを飛び出す。
反対側では飯田と安倍が囁き合っていた。
「どうやら終わりみたいだな」
「……そうね」
安倍の視線は、保田を抱えて反対側の入口に立つ藤本美貴に注がれていた。
藤本も安倍を見ていた。
「安倍なつみ対保田圭はあんたの勝ちだよ。なっちさん」
館長とは呼ばない。
なっちは静かに藤本の言葉を聞き入った。
「だけど、あいつら三人と……そして私は負けていない。決着はまだだ」
「そうね。お互い怪我人もいるし。残念だけど今回は早いとこ脱出するべきか」
安倍が何の感慨もなく、さらっと受け答えた。
その対応に藤本は小さく笑みを浮かべると、辻の方に視線を移す。
辻はあからさまに「行かないで」という顔をしていた。
感情を隠すということを知らない奴だ。バカめ。本当にバカで……かわいい奴だ。
「夏美会館を頼んだぜ」
ずっとなっちの右腕だった藤本美貴が、残る辻希美にそう告げた。
辻希美がいるからこそ、私は行ける。
お前なら、私の代わりになっちを守ることができる。
だから頼んだぞ。
私が再び戻るまで、安倍なつみを支えてやってくれ。
この藤本美貴が倒す日まで。
それから……もうお前はズッポンなんかじゃねえよ。
「…ミキティ」
「またな」
次に、藤本は高橋愛を見た。
順当にいけば今回の5vs5の大将戦でぶつかるはずだった。
「決着はまた先だな」
「藤本さん…」
「私は強くなる。お前も強くなっとけ」
ズンと胸にきた。愛は唇を噛み締めて、藤本のその言葉にうなずいた。
(言われんでも、強くなってやるわ!もっともっと!誰よりもの!)
愛の瞳にはもう迷いはない。最強への確固たる意思と覚悟がそこにはあった。
矢口が!道重が!飯田が!亀井が!安倍が!保田が!辻が!田中が!藤本が!
戦いに人生を賭けた彼女たちのその姿が!
確かに愛の炎を燃え上がらせたのだ。
「それから、矢口真里」
「おう」
「あんたは最優先でぶっ倒すから、覚悟しとけ」
「へっ、望むところだよ」
そう、藤本が誰よりもまず倒さなければいけないのはこの人である。
めちゃめちゃ怪我人のくせに、矢口は笑みを返す。
最後に、藤本はまた安倍なつみを見た。
他人には分からない色んな想いが…そこにはあった。
―――――――――入門のときいきなり喧嘩をふっかけたこと。
―――――――――全国王者になった夜、心から喜んでくれたこと。
―――――――――共に酒を飲み明かしたこと。
―――――――――辞めるといった自分を本気で怒り止めてくれたこと。
初めて、他の誰かを尊敬した。そして、勝ちたいと思った。
例えそれが袂を分かつことになろうと。
「世話んなった」
一言。
そのたった一言で、藤本美貴は安倍なつみに背を向けた。
なっちは無言だった。無言で藤本美貴に背を向けた。
―――――――――夏美会館最強時代を築き上げた2人が…背を向け合った。
辻は藤本の背を泣きそうな目で見ていた。
しかし目をこすり泣きはしなかった。もう…泣いてはいられない。
クルッと向き直ると、なっちを追いかけて走っていった。
「仲間ごっこはここまでだな」
ただ一人、飯田だけは反対側へ歩んだ。目的はまだ果たされていない。亀井絵里だ。
コロシアム戦士の残党が、脱出しようとする愛たちを襲う。
しかしここでも愛の出番はなかった。
「なっち今、機嫌が悪いべさ」
なぜか機嫌の悪い安倍がほとんどぶっ飛ばしてしまったからだ。
出口には紺野、新垣、小川の三人が勝利の笑みで待っていた。
こっちで勝手に暴れていたことは内緒だ。
「悪いな紺野。出番つくってやれなくて」
「いえ…」
「あれえ?うちの社長がいないっすよ?」
「てか小川、お前なんでいんの?」
「そんなあああ。矢口さあああああああああん!!」
こうして光と闇の戦いはひとまず終結を迎えた。
マスターの寺田が死に、コロシアムは崩壊。
格闘技界はまた安倍と飯田を中心とした元の流れに戻る。
だけど、全てが終わった訳ではない。
保田は倒したが、その恐るべき弟子達はまだ健在。さらに藤本美貴もいる。
これからも気を抜くことは許されないであろう。
後藤はついに判明した吉澤の仇・石川梨華を探している。
何かを隠している市井に気付きながら、問い詰めはせずにいた。
「いずれ嫌でも闘うときがくる」という残された言葉があったから。
脱出の途中で分かれた飯田は、残党に邪魔されて結局亀井を捕まえることができなかった。
ハロープロレスの再建に力を注ぎながら、まだその首を狙っている。
そして高橋愛は……あの戦いのあとすぐ旅に出た。アテも無い流浪の旅。
(強くなるんやよ〜)
その先にあるのは最強の座かそれとも死か?
戦いは終わらない!
島がある。地図にも載らぬ小さな隠れ島だ。
平家とアヤカを乗せたヘリが、島の中央に立つ研究所に降りる。
二人を出迎える男がいた。
「影武者のはたけは無事始末できたか」
「はい。つんく様」
全ての黒幕・つんくがニヤリと笑う。
なんと!コロシアムマスター寺田は彼の影武者にしか過ぎなかったのである。
「安倍なつみ以下、主だった格闘技選手のデータ、採取完了致しました」
アヤカの声に、つんくはさらに深き闇の笑みを浮かべる。
全ては最強の娘を作り上げる為の行為。コロシアムもその一環に過ぎない。
「さっそく地下に監禁中の石川梨華に、このデータを…」
「アホ言えアヤカ。俺の本当の切り札は情緒不安定な石川なんかやないで。なぁ平家」
「はい。プロジェクトKは順調に遂行されております」
「生き残りは何人や?」
「14人。いずれ全員が石川クラスまで成長するであろう子供達です」
「ヒャヒャヒャ…!やはり忠実な14人の娘を従えたこの俺こそが、最強に相応しいのぅ!」
プロジェクトK。
真の戦いはまだ…始まってもいなかった。
第29話「戦いは終わらない」終わり
更新来たーーーーー。
辻豆さん乙です。
謎のプロジェクトKの正体は
キッズなのかなと思ったのですが
キッズは15人いたはずなのでどうなっていくのか楽しみです
キッズでられたらもう分かりません
あいぼんクルー!
かも
プロジェクト加護ちゃん
お疲れ様です。マジ面白いですね〜。
一気に全部読んでしまいましたよ。格闘漫画とか好きなんで。
自分は矢口好きなんで矢口がなっち、かおりんと並びトップクラスの実力なのは嬉しいです。
てっきり僕は矢口の扱いはどうせよくないんでトーナメントでもすぐ負けるんだろうなと思ってましたが
なんと準優勝?非常に良い扱いが良くて満足してます。「ヤグ嵐」連発ですね。
矢口は「バキ」の渋川あたりの実力者でしょうか?
格闘シーンも娘達が実際に格闘している様子がありありとイメージできます。
地下格闘編面白かったです。いきなり矢口が負けたのは残念ですが…
なっちと矢口は敵として対立するより共闘してくれた方が現実とマッチしてますね。
K=キッズでしょうか?
自分は矢口VSZYXってのも見てみたいですね。
矢口との対決後、講道館に入門させるという展開があれば嬉しいですね。
主要キャラに必殺技ありますよね。高橋、後藤、松浦、柴田、矢口、飯田など。
なっちは総合的に強いので必殺技は反則ですが、藤本あたりに入れてみても良いんじゃないでしょうか?
技名「ブギートレイン」とか…
これは、僕個人の意見なんであまり気にしないで下さい。
続編楽しみにしてます。
( ;`.∀´)<目立たなかったわ…
ヤスの扱いが最高です!アンチではありませんが、うまくはまりましたね!納得
ミキティ八極拳使いになるのか・・・
川VдV从ノシ=3
246 :
ねぇ、名乗って:04/07/14 19:40 ID:UxgMAbya
第27話の恐るべき少女たちって題はコクトーからの引用?
なっち
おおう
>>235‐238
プロジェクトKはキッズです。残念ながら加護はまったく関係ありません。
作者もキッズはわからず、キッズスレとかコソーリ見て少し勉強しました。
知らない人でも分かる様に書いていこうと思います。
>>239 一気読み乙。新規読者大歓迎です。
矢口好きですか。対ZYXの件、ちょっと考えておきます。
必殺技とかは結構その場の思いつきで書いたりしてるので適当です。
>>242>>243 保田は「強い」敵ではなく、「嫌な」敵として書きましたので。
ただ慰めをかけるとすれば「相手が悪かった」としか言えません。
でもまだ再登場しますよ!頂点を獲れる「器」に悪魔の「水」を注ぎ込んで。
>>244 保田の弟子が絶対に八極拳使いになる訳ではありません。
現に亀井と道重はそれぞれ独自の闘法で闘っていますし。
それに藤本は一つの格闘技という枠に縛れる存在ではないと思います。
他の誰でもない藤本美貴流(ソロ)こそ本来の姿でしょう。
>>246 コクトーって何ですか?
【コロシアム編あとがき】
お気づきの方もいるかと思いますが、コロシアム編終盤は更新間隔が伸びました。
これには原因がありまして、普段はストックを用意して定期的に更新しているんですが、
今回は直前で急遽1話追加することになったのです。
すでに書き上げているバージョンでは安倍vs保田戦で決着になっていました。
作者自身も読み返して、それじゃ少し物足りないかなぁと思っていた所に、
田中がネコになって辻がイヌで対抗というネタが浮かび、改稿を決意しました。
結構ネコネタで読者も盛り上がったので良かったかなと思っています。
さて、次回から物語は新展開を迎えます。
詳細は秘密ですが、これからもいい意味で予想を裏切る展開にしたいと思ってます。
という訳で応援や感想や御意見の方、よろしくお願いします。
*追伸 今週末に重大発表あり
採用ニックネームの発表?
辻豆さん、増えます
↑
(・e・)マメ
((・ee・))ブニュ
(・e}{e・)プリュ
(・e・))((・e・)プリュン
254 :
じょーじ:04/07/16 14:36 ID:3bzaTYjt
・辻豆さん、自身の小説サイトを制作。
・第三部始動。総合オープントーナメント開催
・リングネーム結果発表
・小説『ジブンのみち』宝島社より発売決定!価格1680円
・ジブンのみち、映画化へ!
・涙…辻豆さん引退
・衝撃!辻豆さん児童略取の疑いで逮捕!
・皆さんさようなら。辻豆さん告白「私は余命三ヶ月」
ヽ(冫、)ノ
児童略取ワロタ
確かに重大やなw
『辻豆さん衝撃告白!?1リーグ制反対の動きへ』
ここで!なっち皆殺し!だ!
辻豆さん、ラジオ生放送で「おまんこ」発言
これだ!
(辻豆)<キッズのことを勉強してたら、ヲタになりますた
いつから辻豆さんで一言ネタのコーナーにw
ってことで引き続き
「辻豆さんのこんな重大発表はいやだ」
↓
コクトーってのはジャン・コクトーのことでしょうね。
代表作の「恐るべき子供たち」ってのが有名で、
よくそれに引っ掛けた題名とか見ますよ。
あ、流れ止めてる。ごめん。
(辻豆)<国民年金、未納でした
>>264 いつにも増して筆が走ってるみたいだから、無いと思う。
俺も見つけて二日で読みました。
加護ちゃんファンの俺としては
「いきなりいなくなるのかよ!?」
と思いましたが、辻の回復力の説明読んで期待しております。
で、重大発表の予想・・・
実はおまめ皆殺し!!!
辻豆さんがタメと分かり、ショックを隠せない。
俺にも文才があれば・・・・(無い物ねだり)
もう週末じゃないよなあ
明日までは週末にしませう。期待。
まず、すいません。
本当は昨日の夜に発表しようと思ったんですけど、深夜帰ってすぐ爆睡してしまい、
結局できませんでした。日曜もギリギリ週末ということでナントカ…。
さて、気を取り直し重大発表の内容ですが、なんか色々ネタが書かれているなぁw
まったくここの読者のそういう所が本当にもう……大好きですw
という訳で個ツッコミ開始
>251 わざわざ予告するほど重要じゃない
>252 増えるかっ!
>253 増えたぁ!!
>254 余命三ヶ月だったら、こんなもん書いてません
>255 ああ児童略取ね……(゚Д゚)するかぁ!
>256 2リーグにして毎年抽選でセパのどっちに入るか決めたらどうでしょう?
>257 またそれかw
>258 いやその前にラジオ出てないから
>259 ロリコンじゃないんで。あ、でも2、3人かわいいと思った子は…Σ (゚Д゚;)マズー
>260 えっ!ここネタスレ?(((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル
>261 勉強になりますた。小説書いてるくせに文学に疎いもんで。
>263 正直、年金とか会社任せでよくわかんない。多分大丈夫だと思うんだけど。
>264 人間誰しも触れてほしくない過去が…
>265 もちろんラストまで突っ走りますよ(`・ω・´)
>266 新規読者歓迎!実は作者も早く加護が書きたくてウズウズしてます。
>267 狼の54年スレの人?
>268 _| ̄|○ 反省
>269 フォロー(・∀・)サンクス!
という訳で【重大発表】いきます!!
・辻っ子のお豆さん、ハロプロコンサート初参戦!
たいした内容でなく申し訳。でも自分にとってはかなり大きなことでして。
実は、もう何年もオタしてるくせに現場というものに参加したことなかったんですよ。
だから生娘。は初めてだし、生ののも初めてで、めちゃくちゃ興奮してます。
どうして今になってハロコンに行こうと思ったか、その理由は一つしかありません。
『今行かなきゃもう一生、辻希美のいるモーニング娘。を見れない』
そう思ったらもう衝動を抑えきれませんでした。そして見事チケットGET!
日程はもちろんあの日です。記念すべき初ハロコン。“あの日”以外考えられない。
8月1日
オタ芸は知らないし、振りも知らないし、掛け声みたいなのも知らない。
ただ…泣きにいきます。
モーニング娘。に舞い降りた奇跡の最後を、胸に焼き付けてきます!
以上、重大発表でした。
小説と全然関係なくてスマソ。
きむすめは初めてか・・・と思ったらナマ娘だったのね。
良いコンサになると良いですね。
辻豆さんにとっていいコンサになることを願ってます。
私は今回は迷ってます・・チケはなんとかなるんですが・・
>>272>>273 ありがとうございます。
良いコンサになること期待してます。
では、小説の方を更新。
新展開にいく前にまた一本、番外編を挟みます。
主人公は久々登場のあの人です。
番外編「戦場の女神」
この街は若者の涙でできている。
苦悩、葛藤、挫折、絶望、そして歓喜。
いろんな涙が混じって、日々はつくられている。
「覚悟はいい?」
信子の問いに、私はウンと答えた。
覚悟ならとっくにできているさ。―――――だからここにいる。
Ready!迷彩の服を着込んだ勇者達が廃墟の切れ間を駆け抜ける。
撃ち鳴らす機関銃のシャワーの中で、一人また一人とその身を崩していく。
遠くで聞こえる爆撃の音。近くで聞こえる仲間の悲鳴。
すべてを乗り越えて私は前へ進む。
――――――――知っているか?戦場には死神と女神が住んでいる?
――――――――お前はどっちを味方につけるんだい?
くそくらえ。
どっちもぶっ殺してやるよ。
私が欲しいのはね――――――――神をも殺せる力。
だから、ここにいる。
「ヘイ!アヤーヤ!」
「信子飲みすぎ」
「何言ってるのよ。勝利の美酒よ。飲まなきゃ女神に見放されるわ」
そんなもん、私はとっくに見放されてるよ。
あんたと違ってね。
風信子(かぜのぶこ)。こっちで知り合った女で唯一の生き残り。
日系の二世らしい。まだ英語も不慣れだった私はずいぶんと彼女の世話になった。
女だてらにどうしてこんな場所に身を置いているのかは知らない。
聞く気もないしこっちの事情を話す気もない。暗黙のルール。
「アヤーヤ!ノブコ!こっちに来いよーー!!」
威勢のいい日本語が聞こえる。
どうせナツオの奴だろう。あいつ、まだ生きてたのか。悪運だけは強い。
「はーい!いま行くわ!ほら、アヤーヤ」
「私はいいって」
「来なさいよ。紅二点がいないんじゃ男どもが寂しがるでしょ」
女性が二人も残っているだけで奇跡のようなものだ。
明日はどうなっているか分からない。
それでも、確かに、今日はまだ生きている。
「Toast is given to victory!(この勝利に乾杯!)」
世界は平和だなんて嘘っぱちだ。
今も何処かで人は人を殺しているし殺されている。
例えば私のいるここがそう。テロリストは無差別で人を殺し多国籍軍はそいつらを殺す。
私が所属するのは陸軍特殊部隊TWO。
えらく過酷な訓練を突破できたエリートだけで構成された部隊。
女性が選ばれるなんて奇跡に近い出来事らしい。
信子とは訓練生のときに出会った。彼女は腕も立つし頭もいい。
特に射撃の腕にかけては部隊でも一二を争う。
年齢は私より7つか8つ上だったが、唯一の女性ということもありよくしてくれた。
彼女が一緒じゃなかったら、私は生き残れなかったかもしれないし。その逆も言える。
「アヤーヤ。この戦いが終わったら、どうするんだ?」
そう言って私の肩に手を回してきたバカが夏男(なつお)。苗字は覚えてない。
部隊所属は私たちより長く、同じ日本人ということでよくちょっかいをかけてくる。
「さぁ」
「つれねえな。なんなら俺の女にでもなるか?」
「バーカ、信子に言っとくから」
「亜弥!じょ、冗談に決まってんだろ!頼む、それだけは」
夏男が信子に婚約を申し込んだのは、部隊の連中なら誰でも知ってる。
この戦いが終わったら一緒に暮らすそうだ。
夏男はバカだがいい奴だ。きっと信子を幸せにしてやれるだろう。
なんなら、式で歌でも歌ってやろうか。
みんな、何か目的をもってここにいる。
国を守ること。
大切な誰かを守ること。
私くらいだろう。そんなものと無縁なのは。
強くなる!それだけの為にここにいる。この命のやり取りの場に。
「補給部隊がやられた!」
そのとき、伝達を任務とする兵の一人が顔色を変えて現れた。
勝利の宴会は、その突然の報告によって幕を閉じる。
報告兵と部隊長が激を飛ばしあっている。
「バカな!あそこに敵軍が入り込む余地はなかったはずだ!」
「それが…たった一人なのです」
報告兵はこの世のものとは思えない取り乱し方をしていた。
確かに軍隊が近づけば気付かれるが、一人なら闇夜にまぎれて近づけるかもしれない。
しかし…。
「部隊がたった一人の人間にやられる訳がなかろう!」
「…し、死神です」
戦場には死神がいる。
後方の補給部隊を絶たれたということは、TWOは孤立無援になったということ。
勝利のムードはあっという間に消え去った。
夜間移動が始まった。
おちおち眠っていては、後ろの死神と前方の敵部隊に挟み撃ちにされ兼ねない。
隊長が選んだ結論はすぐにでも前方の敵部隊を制圧する強攻策であった。
「これが正解よ」
信子が私に教えてくれた。
後ろの死神一人を倒した所で戦争は終わらない。挟み撃ちの危険すら伴う。
戦争を終わらせるには敵の本陣を叩かなければならない。
それも挟みまれる前にだ。
夜明け、敵の拠点が見え始めた地点で隊長に呼ばれた。
「松浦。お前はしんがりを努めろ」
これまで大体私は前線にいた。だから理由を聞いた。
「死神がいつ現れるか分からん。そっちに兵を分散させる余裕は無い。
もし一対一で死神を抑えることができるとしたら、うちではお前くらいだ」
隊長の言葉で、気持ちが一気に高ぶった。
配属されたばかりの頃は、女であり、日本人であるということで存外な扱いを受けていた。
それが幾戦の死線を乗り越えて、ここまでの信頼を得ることができたのだ。
死神とサシの勝負。望む所!私は姿勢を正し敬礼する。
「ラジャ!」
「死ぬなよ」
「あんたこそ」
夏男と声をかわす。その後ろに信子もいた。
「女神対死神ね」
「だぁ〜れが女神よ」
「アヤーヤよ。貴女が来てからうちの部隊は負けなし。戦場の女神よ」
「よせよ」
「ありがとう。あなたがくれたすべてに…」
「よせって。まるでお別れみたいじゃん。お礼なら次勝ってからにしてよ」
「それもそうね」
夏男と信子は中盤の援護射撃担当だ。最前線よりは遥かに生存確率は高い。
もちろんうちが勝てばの話だ。
逃げ場の無い今、負ければ全員が死亡だ。
パラララララララララララ……
マシンガンの連射音が空に鳴った。戦いの始まり。
私は部隊の一番後ろで、もどかしく目を見晴らせていた。
補給部隊のない今、銃の数も弾薬の数も限られている。
それは砦に立てこもっている敵軍も同じこと。
限りある武器の中でどれだけ効率よく、相手を倒せるかが勝敗を分ける。
死神・・・
本命 加護亜依
対抗 福田明日香
と予想してみる
加護にはそこまで落ちぶれる理由がないからなあ。
この戦いで松浦を一気に安倍レベルまで押し上げるのなら、
相手は福田か、全くの新キャラじゃないかな。
大穴:チンペー
夏男と信子の関係は最後に露見した方が良かったんじゃないかなあ
バトロワ風でつね
286 :
犬:04/07/21 09:17 ID:QXrjC3EI
誰か各キャラの絵を描かないかな。師走の●に描いて貰えないかしらん。
つーか、漫画化依頼するのはどうでしょう?出来るかな?>豆辻どん。
>>282-283 みんな、だんだん読みがするどくなってきましたね
>>284 するどくない人もいて安心w
>>285 パララララララ=バトロワ
の方程式が成り立ってしまう現状
>>286 それじゃエロ漫画になってしまう。ある意味逆にピンポンだけど。
実現したらこちらも、亀井と加護あたりでネッチリした寝技バトルの脚本を用意…
…すいません。気を取り直して更新します。
松浦の番外編後編です。
何ともやりきれない時間は流れた。
死神が現れる気配は一向に無い。
前方では銃の音が鳴り響き、仲間達たちが次々に倒れていく。
それでも私がこの場を離れる訳にはいかない。
戦闘開始からどれだけの時間が経過しただろうか、連射銃の音が減ってきた。
増えてきたのは単発銃と人間の悲鳴だ。
この位置からは戦況が把握できない。果たしてどちらが有利なのか?
「松浦!前線支援だ!」
そのとき、隊長が私を呼んだ。
死神の危険を放棄してでも私を呼んだということは、それだけ劣勢ということだ。
私は歯を噛み締めながら、前線へ走り出した。
一つ丘を越え見晴らしがよくなると、そこには地獄絵図が広がっていた。
「敵陣に百撃ちのレファがいやがる!!」
誰かが叫んだ。百撃ちのレファ。この界隈では有名な名である。
狙った獲物は決して外さないという拳銃使いだ。
奴の存在は計算外だった。
互いに高速連射銃を使い切った今、単発拳銃でレファに勝てる者はいない。
TWOの仲間たちは次々にレファの餌食になっていったのだ。
前線へ向かう最中、夏男の姿が見えた。
声をかけようとした私は、思わず言葉に詰まる。
その腕の中で風信子が絶命していたのだ。
「信子ぉーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」
私は叫んだ。夏男が私に気付く。
彼は今までに無い怖い顔をしていた。ここは戦場だ。覚悟がなかった訳ではない。
「アヤーヤ。信子を…頼む」
夏男は信子をそっと私の腕に乗せ立ち上がった。仁王の様な顔だ。
その手には自分のと信子の二丁の銃が握られている。
レファに向かって駆け出した。玉砕する気か?
(私はどうすればいい?彼の姿を見ているか?一緒に玉砕するか?信子…)
――――――――知っているか?戦場には死神と女神が住んでいる?
――――――――お前はどっちを味方につけるんだい?
(ああ、そうか)
(わかったよ。信子)
私は信子を担いだまま立ち上がった。
(お礼なら……勝ったあとにするから)
私は信子を腕に抱いたまま、夏男の背中に続く。
「HYAAAAAAHAHAHAHAHAHA!!!!!」
百撃ちのレファは奇声を上げながら拳銃を撃ちまくっていた。
そして向かってくる夏男に気付いた。
二丁の拳銃を振りかざし、レファに真っ向から立ち向かう夏男。
私はそのちょうど真後ろについた。
仲間を壁にする為だ。
残り距離10mといった所で夏男の肉体が大きく揺れ落ちた。
パンパンパンッ!
無常に響く乾いた音。
彼の想いが届くことはなかった。
前のめりになった夏男の向こう側に、百撃ちのレファのツラが見えた。
レファは夏男の後ろに潜む私に気付くと、すぐに拳銃を構えた。
外す距離ではない。元からそんなこと期待してないし、避ける気も無い。
私は抱えていた信子の遺体を前に押し上げた。
「うおあああああああああああああああああああああああ!!!!」
親友の遺体を盾に、私は吼えた。
レファの弾丸に信子の遺体が潰されてゆく。
(怒るか、信子?怒ればいいさ。但し……)
勝って、生き延びてからね。
百撃ちのレファが悲鳴をあげた。恐怖しているのか?
信子の死体を叩き付けた。もうお前と私の距離は0mだ。
どんな武器を持っていようが、この距離で私に勝てる人間なんていやしねえよ!
信子の仇だとか。夏男の分だとか。そういうことは言わない。
ここは戦場だ。そんなことを気にしていたらキリがない。
思いっきり殴る。それだけだ。
手加減なんて一切しない。
お前が引き金を引くよりも早く、私はお前を殴ることができる。
その結果、お前が死ぬか生き残るなんて知らない。
はっきりすることは一つだ。
銃を持ったお前より素手の私のほうが強い!
ドンッ!
ひどい奴だと思うか?
仲間を盾にしてでも勝とうとする私をひどい奴だと。
思わないね。信子は。
少なくとも勝利に貢献ができた。たとえ死ぬことになっても。
私が逆の立場なら私もそれを望む。
レファを失った敵軍は一気に戦意を喪失した。
こうなってはもうエリート軍団TWOの敵ではない。
あとは残党を狩るばかりだ。
もうどうあっても勝利は揺るがない。
全員が銃弾を使い切った時点で、全員が素手に等しくなる。
そうなったらこの松浦亜弥がいるTWOが負ける訳がない。
例え敵に戦場の女神が微笑んでも、こちらに死神が微笑んでもだ。
私はもう神を越えたのだから。
戦いの終わりはいつも空虚が満ちている。
数え切れないくらいの仲間と敵の死体。もう悲しいとも思わない。
「信子…夏男…」
残党処理が終わり、私はまた二人の死体が放置された場所まで来た。
二人は約10m離れた位置で転がっている。
私はもうボロ雑巾の様になった信子の体を抱え上げると、夏男の横まで運んだ。
横に並べると、二人の手と手を重ね合わせた。
「勝ったよ」
返事はない。
「今なら、お礼でも文句でも、好きなだけ受け付けますぜ」
返事はない。
「ほんとに死ぬな、バーカ」
涙なんて流さないもんだと思っていた。
私はもう人間も神も越えたんだから、悲しくなんてないって思っていた。
けれどこんなに胸が痛むし、こんなに涙が止まらない。
私は歌を唄った。
ありきたりなウェディングソング。
戦場に…決して届くことは無いであろう……天使の歌声がいつまでもいつまでも響いた。
(グッバイ夏男)
(そして、ありがとう…信子)
この地の戦いは終わり、部隊は引き上げることになったが、私は残ることに決めた。
確かめたいことがある。
私は本当に神を越えたのか?
それともまだ、単純な涙を流す人間でしかないのか?
確かめる方法は一つしか思いつかない。
「死神…」
たった一人で部隊を全滅させた怪物。
奴は必ず来る。
その死神が本物ならば…必ずこの松浦亜弥という磁力に引き寄せられる。
必ず…。
日が沈んだ。
さっきまで戦場だった場所が漆黒の闇に包まれる。
地平線の彼方に、小さな影が一つ姿を見せた。
その影は隠れることもせず、まっすぐにこっちへ向かってきた。
ここに来るまでたっぷり10分はかかるだろう。
その間ずっと私は影を見つめる。
背が低い…。
女だ…。
日本人だ…。
徐々にその姿が見えてきた。
死神が私の前に立った。小さな日本人女性であった。
「松浦亜弥だ」
私は立ち上がって、名乗った。
「福田明日香だ」
死神が名乗った。
(嗚呼…こいつも同じだ)
(私と同じ種類だ)
私は構えた。
死神も構えた。
(お前もそうか…)
(闘う為に…最強の為に…ここにいるか)
(他に理由はいらないよな)
(だが、一人でいい…)
「ここを生きて出るのは、一人でいい」
いや、そのときはもう人でも、神でもない。
神を越えた……最強だ。
番外編「戦場の女神」終わり
松浦かっこいいですね
仲間を盾にしてでも
闘い強くなろうとする姿に感動しました
これって、どこに挟まる話なんでしょうか?
プロレスの神様と闘う前?
更新乙です
福田明日香が好きな者としては負けて欲しくないし、
物語的には松浦に負けて欲しくないし・・・引き分けでお願いします(w
>>296 病院からいなくなってからの話じゃないの?
松浦は一皮むけたね。
おそらくは高橋はおろか安倍飯田ですら経験してないと思われる殺人を経験した。
でも、まだ現状じゃ福田>松浦っぽいし、ここで終わりってのがウマいなあw
たぶん、試合は書かれずに勝った方のみが本編に出てくる展開だろうし。
>>296 俺もいなくなってからの話だと思うよ
松浦はもういいよ・・・ふぅ・・
300
301 :
:04/07/22 22:55 ID:IduXI4DD
>>286 それじゃエロ漫画になってしまう。ある意味逆にピンポンだけど。
実現したらこちらも、亀井と加護あたりでネッチリした寝技バトルの脚本を用意…
302 :
ねぇ、名乗って:04/07/24 11:06 ID:k+9X0iEV
新曲で辻ちゃんの合コンに行く歌詞、いまいち正確にはわかんなかったけど、
ネタになるかな?
生娘。初参戦おめでとう
俺は今年のミュージカルが初めてだったけど
登場する前に出ると思っただけで涙ぐんだ
思う存分泣いてきてくれー
>>295 仲間を盾にする残酷さと、仲間の死に涙する優しさをもった松浦。
彼女も書いてておもしろいです。
>>296 軍に入隊したのが病院出た後で、それから月日も流れたくらいのエピソードです。
29話と30話の間くらいと思って頂ければ、間違いないです。
>>297 福田と松浦の勝敗は意外とすぐ判明します。ちなみに引き分けは考えていません。
>>298 裏話ですが、百撃ちのレファはかろうじて生き延びたことに…。
架空のキャラ以外で死人は出したくないという想いがありまして。
>>302 「かしまし」がラストシングルってある意味、辻加護らしいのかな?
賛否両論あるみたいだけど、まぁ一回くらいこんなのもありかと思いました。
てか「ひょっこり」以来、どんなシングルがきてもたいして驚かなくなった。
>>303 ありがとー。あと一週間!でも辻加護が卒業しちゃう。
待ち遠しいような来て欲しくない様な気分です。
第30話「アイ」
河北省は中国東部に位置し、首都である北京市をグルリと囲む形をしている。
省都の石家荘は京広線や石徳線といった路線が交わる交通の要所となっており、
国内でも有数のハイテク産業開発区である。
「人がゴミの様や〜」
高橋愛は、昨夜宿泊した『銀泉酒家』というホテルの窓から下を眺めて呟いた。
日本の約十倍といわれる人口。見渡す限りが人、人、人である。
渋谷のスクランブル交差点の様な光景がどこまでも続いている。
「この中から、あの人を探すんかぁ…。ウォーリーよりきついわぁ」
うなだれていても仕方ない。探すしかないのだ。
もっともっと誰よりも強くなる為には…。
そう、まだ最強を目指す修行の旅の途中である。
コロシアムでの5対5戦より、9ヶ月が過ぎていた。
あの場所で、愛は本当に強い人達の姿を目に焼き付けた。
そして迷いは消えた。彼女達の誰よりも強くなりたいと思ったのだ。
その為にはこのままではいけない。今の高橋流柔術だけではいけないと思った。
それは高橋流を捨てるという訳ではない。
高橋流をさらに向上させる様な、新しい技術を得たいということだ。
考え抜いた末、愛は日本を発った。
両親は猛反対したが、愛は勘当されても曲げる気はなかった。
祖父が応援してくれて、敗北の悔しさを悟ってくれた父も了解してくれた。
最後まで反対した母も愛の頑固さについに折れた。
「心配いらんて。無事に帰って来るから」
こうして愛の一人旅は始まった。
友達の誰にも告げず。消息不明の亜弥はもちろん、紺野や小川にも言わなかった。
(めちゃくちゃ強くなって、皆を驚かせてやるわ〜)
そして目的地として選んだのが、近くて大きな中国である。
格闘技の世界において『中国拳法最強』という幻想がある。
もしかすると何処かにまだ達人と呼ばれる、物凄い人物がいるかもしれない。
そう思った愛は、各地の道場を巡った。
中国拳法と一口に言っても、実際は数百もの様々な流派が存在する。
まず大きく二つに分けることができる。内家拳と外家拳だ。
内家拳とは体内の気を操り、力に変える拳法。
外家拳とは肉体を物理的に鍛え上げる拳法。
ここからさらに多種多様な流派や門派に分類ができる。いくつか例を挙げてみる。
数ある中国武術の総称としても用いられる少林拳。
健康に良く、世界中でもっとも人気を誇る太極拳
保田や田中も会得している、超接近戦の一撃必殺、八極拳。
カマキリの様な独特な構えと素早さを併せ持つ蟷螂拳。
肉を潰して骨を絶つ。代表的な外家拳である洪家拳。
あのブルース・リーも学んだとされる素早い動きの詠春拳。
このように様々な流派を愛は巡った。
確かに強い人物はいた。だがそれは幻想に抱く神秘的な強さとは程遠いもの。
少なくとも安倍なつみより強いと思える人物はいなかった。
また、教えてもらえるのは型や防具を付けての組手ばかりである。
実戦でそのまま使えるとは思えないものばかり。
愛が求めているのとは違う。そういう所はすぐに離れた。
伝説となるような本当に強い中国拳法家は、それでも何処かにいると信じた。
各地でそういう噂を聞きつけ、はるばる探して回ったりもした。
大概は嘘だったり、誇張だったり、すでに亡くなっていたり、老いて動けない人物ばかり。
中国は広い。もしかすると何処かには実在するのかもしれない。
しかし愛は結局、会えなかった。
日本を発って半年。
途方にくれていた愛はたまたま立ち寄った香港の酒屋で「アミ」という日本人と知り合う。彼女はそこのバイトだった。
「何しに中国へ来たの?」という問いに愛は「強くなる為」と答えた。
すると驚いたことに、彼女は“そっち方面”の噂に詳しいという。話は盛り上がった。
もう何年も帰国していないというアミに、愛は現在の女子格闘技情勢を語った。
お返しにと彼女はもう古い格闘界の裏話などを聞かせてくれた。
そこで興味深い話を聞く。
「安倍なつみに勝った女がいる」
“最強”を越えた女?
ずっと無敗だと思っていたなっちが…。愛は思わず声を出して叫んでいた。
「福田明日香よ」
「その人が安倍なつみに勝った人ですか?」
「古い話だから公表はされてないけどね」
「何処にいるか、知っていますか?」
「さぁて、7年前の大会で途中欠場して以来、表社会にはいないみたいだし」
「お願いします!会いたいんです!」
「会ってどうする気?」
「弟子入りします!」
「プッ……あの福田に…?弟子入り?」
「なんで笑うんですか」
「無理よ」
「そんなもん会わんと分かんないじゃないですか!」
愛はまっすぐな瞳でアミに訴えた。
その瞳を見たアミはしばらく考え込む。そして口を開いた。
「殺されるかもしんないよ」
「…覚悟はできてます」
「バカだね」
「はい」
ため息をついたアミは酒場のカウンターから紙とペンを取りだし、何か書き始めた。
『河北省石家荘 杏銀』
「その店へ行きな。運がよけりゃ会えるかもよ」
こういう経緯で私は河北省石家荘へと足を運んだのだ。
まず『銀杏』という店を探さなければいけない。
それこそ途方も無い作業であった。
私はまだ拙い北京語に身振り手振りを織り交ぜ、この街を歩き回った。
「どこや〜」
必ず探し出す。ようやく見つけた手がかりである。
最強になる為の。
安倍なつみを越える為の。
「なっちに勝った女」
武術を学ぶ上で、これほどうってつけの人物はいない。
あの5vs5マッチから早9ヶ月。
あの場にいた怪物たちはさらに強さを増しているのであろうか。
安倍なつみ。飯田圭織。矢口真里。辻希美。
藤本美貴。田中れいな。道重さゆみ。亀井絵里。
誰よりも強く……なりたい。
その為に絶対に見つけ出す!愛はその名を強く胸に刻みつけた。
(福田明日香!)
その頃…。
高橋愛が石家荘の町を歩き回っていた頃だ。
別の「愛」の名をもつ娘が、この中国の地に降り立った。
時間は少し遡る。
「ムラカミアイ…」
「メグミです」
データに記された名前を読み上げたつんくに、遠慮なく訂正を申し出る少女。
御主人の前でも顔色一つ変えず、姿勢を正している。
いや彼女はたとえ誰の前であっても、無闇に表情を変えたりしないだろう。
そういう教育の元で育てられたのだから。
「まぁええやろ。今回は偽名っちゅうことで、アイで通せ」
「はい」
「アヤカ。お前も同行して、成果を俺に報告せい」
「了解しました。さぁ行きましょうアイ」
「はい」
アヤカは村上愛を連れてヘリポートへと向かう。
残った平家みちよにつんくは問う。
「あいつが14人の中で一番強いんか?プロジェクトKの教育担当殿」
「そういう訳ではありません。村上より力がある者もいますし、技が使える者もいます。
ただ…しいて言えば彼女が一番、バランスがとれていると言えるでしょう。
よって今回のテストには最も適していると判断し、選抜致しました。」
「なるほどな」
「では、私も参ります。中国河北省へ…」
今日はここまで。
では27時間TV見ます。濱口vs辻のドリームマッチは本気で楽しみ。
辻豆さん乙です。
高橋が福田に弟子入りをしようとしてますが
その流れで福田VS松浦の結果もわかりそうですね。
さらにキッズも絡んできて面白くなっていきそうで
すごく楽しみです。
松浦がすでに福田に弟子入りしてたら笑えるが
福田が廃人になってる可能性もある
ヲタ遍歴が福田からしばらくはなれてて辻に戻ってきたんで
自分はこの展開マジデ楽しみ
始めまして。 いつも辻豆さんの小説を楽しみにしているものです。 これからちょくちょく参加させてもらうつもりなのでよろしく!
タイトル見てあいちゃんズかとおもったんだけどな。
福田に会おうとしたら松浦に「死んだよ、あたしが殺した」的な事を言われちゃう
・・・だったらありふれすぎ
「銀杏!あったぁ!!」
薄汚い路地裏の、看板も傾いている様な酒場であった。
(これじゃ、なかなか見つからんはずやわ〜)
愛は金具が半分取れかかっている扉をそっと開けると、中を除いた。
「まだ準備中だよぉ」
カウンターでコップを磨いている店員のぶっきらぼうな声がした。
夕刻にはまだ早い。なるほどよく見れば扉の横に薄れた北京語で「準備中」とある。
「すいません。人を探しているんですけど…」
カタコトの北京語でそう告げると、五十前後の店員の男はようやく視線をこちらに向ける。
まだ若い女性が一人、しかも外国人ということもあってか、彼は珍し気な顔を浮かべた。
「あんた韓国人かい?それとも…」
「日本人やよ」
「へぇ…。するともしかして探し人ってぇのは銀杏のことかい?」
「ギンナ…?いいえ違います」
「おっとすまねぇ。確か、本名はなんつったかな…フク……フクイ?」
「そりゃ私の故郷や。もしかして福田じゃないですか?」
「おお、そうだった!あんた福田の知り合いかい」
「知り合いじゃないですけど、探しているのはその人やよ」
「へぇ…そいつぁ助かる」
店員の男は妙な笑みを浮かべ、愛を店の中に招き入れた。
カウンターの椅子に座ると、湯飲みに茶を入れて出してきた。
「知り合いじゃねぇのに、どうして探してるんだい?」
「弟子入りする為です」
愛ははっきりと答えた。
すると男は目を丸くして、やがて笑みを隠す様に顔を引きつらせた。
「弟子ねぇ。確かに銀杏の奴ぁは…えれぇ強えからなぁ」
「やっぱり強いんですか!よかったぁ」
「…ってことは、これから知り合いになるって訳だ」
「そうですね」
「ところであんた名前は?」
「高橋愛です」
「そうか高橋愛か。いやぁ銀杏の知り合いが来るのを待ってたぜ」
「あのぅ、ひとつ聞いていいです?」
「お、なんだい?」
「なんで福田さんが銀杏なんですか?それってこの店の名前じゃ?」
「そうだよ。あいつはぁ毎晩ここに入り浸っているからな。それでいつからか皆が、
福田は店の主だってんで、銀杏銀杏って呼ぶようになったんだよ」
「毎晩…飲んでるんですか?」
「酒場で他に何をするってんだい?」
「福田さんって…普段は何をしているか知ってますか」
「さぁ?昼間は寝てるんじゃねえのかい?」
どうも話がおかしくなってきた。
何処かの道場で武術でも教えているのを想像していたからだ。
「働いてないんですか」
「まさか。あの銀杏が」
「えぇ?それじゃお金はどうしてるんやろ。ここの酒代とかも」
「そこよ。それであんたを待っていたって訳さ」
「ハァ〜?」
愛は口を大きく開けて聞き返した。
すると男はカウンターの奥から紙の束を取り出してきた。
「銀杏のツケだ。ざっと十万元ある」
「…はぁ」
「弟子のあんたが払ってくれるんだろ」
「え〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」
「師匠のツケは弟子が払うのがスジってもんだろう」
「ま、ま、ま、待ってください」
必死で頭をまわす。
(一元が14円くらいだから…えーと、えーと…140万円!!)
「何でそんなに!」
「酒代だけじゃねぇんだ。たまに暴れて店を壊すからよ。その修理代も含んでだ」
「暴れるぅ!?」
イメージとどんどん違ってきた。
もしかすると、とんでもない人に弟子入りしようとしているのかもしれない。
しかし今更引き返すわけにもいかないので、愛は待たせてもらうことにした。
ギィィ…
店の開店とほぼ同時、古めかしい音を立てて扉が開き、一人の女性が現れる。
「来たぜ」と店の男が言った。まさかと愛は目を疑う。
「あんたに客だぜ。銀杏さん」
「ちょっと待ってください!この人が福田さん?嘘やろ!?」
最初の印象…ミイラだ。
片腕にギブス、足にもギブス。もう一方で松葉杖をついている。
体のほとんどの部分を包帯で包み、左目に眼帯、頬には鋭い傷が残っている。
残る右目でギロリと愛を見出すと冷たく口を開いた。
「何だ?こいつ」
「あんたに弟子入りに来たんだとよ。たまったツケも払ってくれるそうだ」
「へぇ」
「ちょ、ちょ、ちょ、ちょっとぉ!払うなんてまだ…そんなお金もないですし!」
言いかけて、愛はもう一度福田明日香を見た。
『最強』と呼ぶにはそのボロボロの姿は、あまりにもかけ離れていた。
だがしかし…この空気。彼女が現れたことにより店内の空気は明らかに変化した。
こういう風に空気を変える女が、そうそういるとも思えない。
「あなたが安倍さんに勝ったって…本当ですか?」
一番奥のテーブルに腰を下ろした福田の元まで向かい、率直に尋ねた。
福田は鋭い視線で愛に一瞥をくれると、また冷たく口を開く。
「誰に聞いた?」
「香港で、アミっていう人からです」
「北上の奴かぁ…。余計な真似を」
「私、強くなりたいんです。だから、その話を聞いて弟子入りしたいって思ったんです」
「クックックック…」
「何がおかしいんですか!?」
「見りゃわかるだろ、こんな体だぜ。それにそういうの興味ねえんだ」
「なっちに勝った程の人が誰にやられたんですか?」
「フン、見ず知らずのてめぇに話す義理もねえな」
「弟子になれば、見ず知らずじゃないです」
「金もねえんだろ。ここのツケでも払ってくれるってんなら考えてもよかったが」
「今はないですけど…すぐに貯めて払います!」
「じゃあ貯めてから来いよ」
まっすぐに想いを伝える愛に、福田はにべもなく突っ返す。
仕事もなく、お金を貯める術をもたぬ愛は、途方にくれた。
(すぐにでも強くなりたいのに…なんなんやこの人)
唇を噛み締めて立ち上がった愛。壁のポスターがその視界に入る・
「擂台賽…?」
武術家の男達が組み合っているポスターだ。
重要なのはその下にある文字である。『優勝賞金十万元』
すると店の男が間に入ってきた。
「ああ、それは衝水で年に一度開かれる武術大会だよ。たしか優勝すれば十万元…」
そこで男は愛のニタ〜とした笑みに気付く。
「あんた、まさか出場する気じゃないだろうね」
「だってぴったりじゃないですか〜」
「やめときな!各門派の達人が出場する大会だ。女のあんたじゃケガするぞ」
「心配いらんて。負けたら諦めますから。いいですよね福田さん」
「勝手にしろよ」
「んじゃ勝手に出場するわ!決まり!」
衝水という都市は石家荘の東に位置する。ここで河北省衝水擂台賽が開催される。
擂台というのは昔の武術家同士の試合場の台を意味している。
現在は各流派の交流腕試しの場と相成っている。
(トーナメントなんて久しぶりやわぁ…)
銀杏で福田と出会った翌週、ここ衝水に愛の姿はあった。
半ば強引に連れて来た福田も隣にいる。
「勘違いするなよ。お前を見に来た訳じゃない。中国武術の程度を見に来ただけだ」
「フフフ〜期待してええわぁ」
「今回のテストは、中国のマイナー大会での実践経験だ」
「プロジェクトKがどこまで通用するか、確認するのですね」
「もちろん優勝だ」
プロジェクトKの教育担当である平家みちよが、アヤカに説明する。
二人の横では今回の実施テストに選ばれたKの一人、村上愛が黙々と準備体操をしている。
その姿、傍目にはまだ子供にしか見えない。
「さて、そろそろ一回戦が始まるぞメグミ…おっと今はアイだったな」
村上は無言で頷くと、静かに歩み始めた。
彼女の一回戦の相手は酔拳の男。村上の姿を見るといやらしい笑みを浮かべる。
「おやおや、お譲ちゃん。ここは小学校じゃねえ。どうなっても知らねえぜ」
下品な笑い声で罵倒する。すると彼の連れも同様に下品な笑い声を発する。
瓢箪に入った酒を一気に飲み干すと、男は酒臭い息を村上に吐きつけた。
村上は表情一つ変えることなく一点を見続けていた。そして試合開始の合図!
「いくぞーギャヒャヒャヒャヒャ!!!」
下品な笑い声で体をふら付かせる酔拳の男。少しも構うことなく村上は近づく。
大げさに組み付こうとしてきた男のみぞおちに、そのまままっすぐ手刀を差し込む。
ビクッと男の動きが止まった。村上が手刀を抜くと男はそのまま前のめりに崩れ落ちた。
「…ムダな動きが多い人ですね」
高橋愛の一回戦には、かなりの注目が集まった。
「うわー知らんかった。私いつの間にこんな人気者になったんや〜」
「お前じゃねえよ。対戦相手の男の方だ」
「へ?」
福田に言われてようやく気付いた。観客は皆、相手の方ばかり見ている。
『昨年優勝者!』『今年も優勝候補筆頭!』『少林拳最強の男』『金剛の足』
様々な呼称で呼ばれるシンという男であった。彼は試合開始前、愛に声をかけてきた。
「女性といえど神聖なこの場に立つ以上、私は手加減しない。よろしいかな?」
「望むところです」
ドン!と鐘が鳴った。これが試合開始の合図。
それまで笑みものぞかせていたシンの表情が一変した。
金剛の足と称される蹴りが、いきなりの愛の頭上を襲い掛かった。
それを避けると続けざまに金剛の足が襲い掛かってくる。この連続攻撃に観客は沸いた。
「さすがシン!!」
「いいぞーやっちまえ!」
この連続攻撃に、愛は驚きを隠せずにいた。
(遅い!)
どうしてこの程度の動きで観客が騒いでいるのかが分からない。
(いや違う。もしかして…)
蹴りの嵐をことごとくかわしながら、愛は気付いた。
コロシアムで目にしたあのレベル。愛はいつの間にかあれが当たり前と思っていたのだ。
きっとこの人も凄いレベルなのだろう。だが愛が目指す場所はさらに高み。
怪物たちがゴロゴロしているあの場所なのだ!
フッと愛が消えた。いや違う。シンや観客達には消えた様に見えただけだ。
傍らで見ていた福田だけが静かに目を細めた。
これが今の愛の本気の速さ。スピードだけならどんな怪物達にも負けない自信がある。
何も知らない者達には消えた様に写っても仕方が無い速さ。
ラブ・クロス!
音速の十字蹴りが昨年王者の顔面を打ち捕らえる。
そのまま止まらず、ガクンと膝を突く相手の後ろへ回り込み首を絞める。
男と女だ。単純な力の差では勝てないが、打撃で意識が朦朧としている瞬間は別。
抵抗する前に一気に締め落とす。敵が素早くタップした。勝った。力を緩めようとした…。
「外すな!」
声が聞こえた。福田さんの声だ。咄嗟にそれに従った。すると審判が止めた。
北京語で「お前の勝ちだ」と言われた。観客席からの大ブーイング。
観客席から物を投げつけられる空間を逃げる様に降りていく。下で福田さんが待っていた。
「ここは日本じゃねぇんだぜ。審判も敵と思え」
あんな分かりにくいタップ、審判は見て見ぬ振りするってこと。
福田さんに声を掛けられなければ、反撃されていたかもしれないということ。
少し背筋がゾクリとした。
だがそれ以上に、福田明日香がアドバイスしてくれたことを、愛は嬉しく思った。
がっくし
おっ、こうきましたか。それはそうと福田がだれにやられたか気になりますね。番外編とのつながりがあるのかな?何はともあれ先ずは高橋対村上。楽しみにして待ってます。
久しぶりの高橋のバトルだね。
なんかホノボノだ。
ほ
ジブンのみちをおいどんのホムペで紹介してもよかですか?
いえいえ決して怪しいホムペではなかとよ。
335 :
ねぇ、名乗って:04/07/30 23:18 ID:VXf2hVzW
336 :
ねぇ、名乗って:04/07/31 08:44 ID:yDaD1zra
質問:辻豆の人は何を目指しているんですか?構成作家になりたいんですか?
てまえら、雑談はほどほどにな。
>>331 こうきました。本編の福田と番外編の繋がりもまたそのうち書きます。
>>332 主人公なのにずっと影がうすくて、久しぶりのバトルになっていましましたね。
>>334 怪しくないなら紹介してもいいですよ。
どんな風に紹介されるのか気になりますけど。
>>336 構成作家のなり方を教えてください。働きながらじゃ無理?
最終目標は辻主演の脚本を書くことです。
「遅いですよ〜老師!ちこく!ちこ〜く!」
「ちょっと待たんかい!ゼィゼィゼィ…」
擂台賽の受付に、白髭の老人とあどけない顔の娘が駆け込んできた。
「はいはいは〜い!ライタイサイ!参加しま〜す!」
「あのぅ、もう間に合いませんが」
「そこをなんとか!この為にわざわざチベットから出てきたんですぅ」
「と言われましても、もう決勝戦前ですので」
「えー!決勝!!」
「なんじゃ?どうしたんじゃ?」
ようやく追いついた老師を、平手で突き飛ばす弟子の娘。
「おそ〜い!老師がお酒飲みすぎて、寝坊したからや〜!」
「師を突き飛ばす奴があるかぁ!」
そこへ決勝戦開始のアナウンスが流れる。
ガックリと頭を垂れる弟子の背中を、老師が叩く。
「しょうがない。見学だけでもしよう」
「乱入してもいいですかぁ?」
「いい訳なかろう」
老師と呼ばれた人物は、弟子のお団子頭をポカリと小突いた。
準決勝まで会場が南北の二つに分かれていた為、決勝に来て初めて互いの相手を知る。
なんと南ブロックと北ブロック、共に勝ち上がってきたのは日本の少女であった。
これは擂台始まって以来の珍事であった。
国の面子がどうと言う次元を超える事だが、もはや文句も出ぬ程この二人、強かった。
なにはともあれ決勝戦!
『高橋愛 対 村上愛』
村上のセコンドにいたアヤカが思わず目をむく。
「高橋愛!どうしてこんな所に!?平家さん、これは…」
「ああ、たしかトーナメント選手にいたなぁ。強いのか?」
「飛びぬけて強いということはないですが…弱い訳でもない。ベスト4ですし」
「テストの最終調整にはちょうどいい相手じゃない。おい村上」
平家に声を掛けられた村上愛は、顔色一つ変えず振り返った。
「はい」
「本気でいけ」
「いいんですか?」
「構わんさ。殺してもいいぞ。責任は私がとる」
やはり表情を変えず、村上は頷いた。
教育係の平家がそう言うという事は目の前にいるのは“敵”だ。
「愛」という同じ名を持つこの女は“敵”だ。村上の瞳に敵の顔が焼きついた。
「へぇ〜小っちゃいのに、すごいんやのぉ」
試合開始前、勝ちあがってきた同じ国の少女に興味をもつ高橋愛。
だが村上からの返事はなかった。無表情で感情が読めない。
(変な子ぉ)
彼女がつんくの野望を担うプロジェクトKの一翼であるとは、知る由も無い。
(まぁええわ。ビシッと勝って福田さんに弟子入りするんやよ!)
ゴーン!!
鐘が鳴る。擂台賽決勝戦の幕開け。
そしてそれは表の格闘技対プロジェクトKの第1戦でもあったのだ。
円を描くように周る二人の愛。回りながらジワジワ距離を詰める。
先に仕掛けたのは高橋。目にも止まらぬ速さのミドルキック。
観客が一斉に息を飲んだ。しかしこれに村上は軽々と対応してみせる。
タイミングを計り飛び込むと、カウンターの手刀を放つ。
シュッ!
「…っ!」
このカウンターを高橋はかわしきれず首筋に赤い線が走る。
もう一歩遅ければ頚動脈がいっていたかもしれない。
思わず相手の顔を見上げる。村上愛は…まるで感情を示さず無表情を保っていた。
その佇まいは、高橋にある影を思い出させていた。
(…似てる)
この無感情な戦いぶり。そう、あの子達に似ているのだ。
ためらうことなく矢口を刺した道重さゆみ…
笑いながらジョンソン飯田を翻弄した亀井絵里…
人ならざるものと化し劣勢を吹き飛ばした田中れいな…
あの怪物たちの様な怖さと…同じものを目の前の少女から感じる。
その感情無き視線に見つめられ愛の背筋がゾクリと冷たさを感じた。
「やりますね。あの高橋のスピードについていくとは」
「村上はプロジェクトKで一番の俊足、矢島舞美とよく模擬戦をしている」
「なるほど。速さには慣れっこという訳ですか」
「さぁ、どうする高橋愛?自慢の翼は通じないぞ」
アヤカと平家が語る以上に、高橋は動揺していた。
自慢の蹴りを放ってもスルリと避けられる。
こんな小さな子供を相手に、得意のスピードもテクニックも通用しない。
(なんなんや…一体)
中国拳法家を相手に快勝し、どこかで強くなったと自負する気持ちがあった。
そんな自負心がボロボロと崩れ落ちてゆく。
(こんな子供に負ける訳にはいかんのやって)
(私はもっと強くなりたいんや!その為に福田さんに教わるんやから!)
高橋は飛びつく。タックルで倒して関節技に持ち込もうとする。
しかし村上はそれを表情一つ変えることなく、ジャンプしてタックルを捌いた。
鳥みたいに!空中から高橋の脳天へ爪先を打ち下ろす。
タックルの勢いがついたまま愛は前のめりにダウンした。
回避不可能な空中殺法。これがプロジェクトK村上愛の必殺技!
FLY HIGH!
ダウンした高橋愛の脳裏にとんでもない恐怖が襲い掛かってきた。
肌に伝わる地面の感触が…嫌でもあのシーンを蘇らせる。
初めての敗北を喫したあの戦い。
もう二度と戦いの場に戻れないとまで思ったあの…。
(私は…私は…やっぱり…もう…)
ドクン!
夢か…幻か…そのとき高橋愛の視界に入った姿…
いる訳がない。こんな場所にいる訳がない。
あいつは今頃日本で栄光という光の中輝いているはずだ。
地べたに這いつくしている自分とは違い、最強へと確実に登っているはずだ。
こんなところで…お前が!
(…辻希美!)
高橋愛は音もなく立ち上がった。目が泳いでいる。
まるで観客の騒ぎも対戦相手ですらも彼女の思考には届いていない様な。
審判が「やれるか?」と尋ねると、ニィと笑みを浮かべた。
「…思い出したよ」
村上は相変わらず無表情で高橋を見ている。試合再開!
高橋はそんな村上を見て、またニィと笑った。
「あの怖さに比べたら全然……子供騙し」
高橋愛と村上愛の決勝戦真っ最中。
遅れてやってきた老師とその弟子も、決勝戦会場に姿を見せた。
ちょうどそのとき一方の選手がダウンした。けれどダウンしてすぐにまた立ち上がった。
立ち上がる直前に、彼女はこちらを見ていた様な気がする。
「こいつは驚いたのぅ。決勝は両方とも日本の娘じゃと」
「鼻の下が伸びてますよ老師」
弟子は老師に突っ込むと、試合会場に眼を移した。
突っ込みはしたものの同じ国の少女たちの戦い。気になる。
それに今ダウンした方の選手。どこかで見たことある気がする。
席が遠すぎてはっきり見えないので確証はないが。
そう思っていたとき、隣の老師が大会パンフを見ながらはしゃぎだした。
「お〜奇遇じゃのう。二人ともお前と同じ名前じゃぞい!アイ対アイじゃ!」
「!」
小さな記憶の糸が繋がった。
そういえば…いた。同じ名を持ち最強を志していた娘。
(へぇ〜こないとこで…)
「アイ」の名を持つこの弟子は、大きな黒目にたっぷりと笑みを浮かべる。
そう、彼女は…約1年半前、夢を奪われ失踪したあの少女!
加護亜依。
第30話「アイ」終わり
次回予告
最強の夢ふたたび!加護、ついに復活!
「ののに会いにいくんや」
「辻はお前のことなんて、とっくに忘れとる」
そして闇もまた…動き出す。巡る激動。
果たして二人の夢の行方は…!?
「方法はたった一つ…辻希美を倒すこと」
To be continued
という訳でこの記念日に加護復活です。(ちょっと狙ってましたw)
次回はおそらく加護メインの話になります。
とんでもない技を引っさげて最強戦線に踊り出る予定なのでご期待下さい。
さて、作者は本日いよいよ初ハロコンでテンション上がってます。
サッカーの奇跡で興奮したまま、明日はののたんの生奇跡を味わってきます。
それでは。
リアルタイム更新&あいぼんさんキタ━━━━━━( ゜∀゜)ノシ━━━━━━!!!!
辻豆氏 コンサがんばってね!
漏レノブンマデ…orz
更新乙です。
生ののたん楽しんできてください(・∀・)
ついに、アイヴォォーン!
二人の雄姿をしっかり見届けて来てください
俺もいくよーーーーーーーーーお互い楽しみましょう
最初で最後の娘。でのののたん
見れて良かったね・・・
これからもののたんだけど娘。では最後だからなあ
part1見れないよー
辻豆さんは今興奮冷め遣らぬころでしょうか?
おー!やっとあいぼん出てきた〜!!!
30話のタイトル見て、期待して裏切られたと思ったら出てきて嬉しいよ〜。
ののとの再会が楽しみです。
初めてのハロコンいってきました。
なんか言いたいことがありすぎて文章になりません。
不満に思ったことも結構あったけど(席とか曲とか)
でも感動しました。
たぶん一生忘れない。
ののも同じこの日を一生忘れないと思うと、なんか嬉しい。
辻豆さんが文章に出来ないなんて、よっぽど複雑な感情が入り混じってるんですね。
つーか呼び捨てかよッ!
感動もあり、もう娘としての辻加護は見れないと言う事もあって気持ちとしては複雑でしょう。ただ、コンサ-トに関しては満足いったようで何よりです。何はともあれ、これからの2人の活躍に期待しましょう。
話は変わりまして、待望の加護の復活、謎の老師の登場とスト-リ-の方も益々、目が離せなくなりましたね。それにしても老師の正体が気になる。中澤か保田かそれとも・・・まさか!
↑こういう人、真剣10代しゃべり場にいそうだな。
とりあえず改行しる。
携帯からやっているもんで改行が出来るかどうかも分からないもんで・・・。すみません。
362 :
犬:04/08/04 09:30 ID:DnobEn/r
>>336 構成作家になっちゃえばいいじゃない。でも本業の仕事あるならだめかな。
好きかわかんないけどナイナイのANNでよくそういう話しているよ。
はがき職人とかもあるよ。
目指すべきは構成作家じゃなくて脚本家じゃないのか
脚本家になるんならパクリはやめないとな
てーか辻豆さんよりまず辻が主演できるレベルまで成長しないと
近すぎて見えないこともあるんだね、と。
>361:始めはしていたのですが、BBSで見て見たらスペ-スが出来ていただけであまり意味がなかったため、携帯へのメ-ル以外はやってないです。もう少し勉強してきますので。
やり方、分かりました。
大変、ご迷惑おかけしました。
いたらない所は色々とあると思いますがこれからもよろしくお願いします。
さてさて物語も終盤に差し掛かってきましたね。やはり空中戦などがいっぱい見れるのでしょうか。
私のくだらないレスで本編の雰囲気壊すのもいやなのでこの辺で消えますね。
371、372はおれじゃないよ。
って言うか、物凄く短期間で嫌われてしまったな。
ま、荒しの原因になるからしばらく372の言う通り消えるよ。
374 :
24人のビリ-G:04/08/05 22:39 ID:dfESZODS
偽物ばっかやめてくださいよ。
消えなくてもいいから名無しに戻れば
第31話「二人の夢はいつまでも」
「この試合、あっちのアイちゃんが勝ちますよ、老師」
「なんじゃいきなり」
すると加護が指した方の愛が動き出す。
一見、先ほどまでの動きから何ら変化はない。だが、分かる者には分かる。
この会場に限れば、福田明日香、加護亜依とその老師、平家みちよとアヤカの5人のみ。
ほんの少しずつではあるが高橋のスピードが増してきているのである。
一見、村上は反応している様に見える。しかし…
ガクッン
突然、村上の膝が崩れた。
(……っ!)
知らぬ間に自分の限界を超えた速度に付き合わされていたことを知る。
それでも高橋愛のスピードはさらに加速を続ける。
ついに見え隠れした彼女の真価。戦いが進むにつれ増してゆくそのスピード。
舞台袖にいる福田の目つきが変わる。
数々の修羅場をくぐってきた福田をして、未だ体験したことのない未知の速度。
(今はまだ未熟だが、あのスピードに牙を与えれば…)
(バカな…何を考えている私は…)
自覚はないが、深い絶望に包まれた福田の感情に今、一点の小さな光が生じた。
「もう止めた方がいい」
勝機が無いことを悟ったアヤカが平家に述べる。しかし平家は首を振った。
「いや。この敗北がいずれ財産になる。最後までやらせよう」
「平家さん」
「プロジェクトKはまだ途上の段階。現時点では及第点だよ」
村上の顔はさきほどまでの無表情とはうって変わり、明らかに怯えを見せていた。
無理もない。彼女の知る世界は同じ14人の子供と平家とマスターつんくだけ。
それがいきなり彼女の想像を超える“速さ”という脅威に出会ったのだ。
アヤカは見ていられず、舞台から目をそらした。
そのそらした先に一人の娘を見つける。
(あれは…)
マスターつんくからの命令で、アヤカは表の格闘家達の調査に携わっていた。
なっちが開催したトーナメントなどはもちろんチェックしている。
そこに姿を消した気になる娘がいたのを思い出す。
「それにしても、あの高橋愛という娘、これほどの才を秘めていたとは」
「平家さん。それよりももっとおもしろい子を見つけたかもしれません」
「どうしたアヤカ?」
そのとき会場にワッという歓声があがった。
ついに高橋が村上のバックをとって、その首に腕を回したのだ。
一気に締め上げるも村上はタップをしようしない。
いや、しないのではない。ギブアップのやり方を教わっていないのである。
村上は泣きそうな顔で平家の方を見た。しかし平家は何の動きも見せない。
「平家さん、もういいでしょう」
「教育係は私だよアヤカ。プロジェクトKにギブアップはない」
あくまで冷酷に平家はそう告げた。
高橋もその異変に気付いた。しかしこれは勝負である。力を緩める訳にはいかない。
やがて村上は落ちた。ギブアップをできないまま意識を失い動かなくなった。
『優勝!高橋愛!!』
決着の合図。河北省衝水擂台賽、優勝は日本人の高橋愛。
そして閉会式から賞金の授与が行われる。十万元。
高橋愛は諸手を振って喜んだ。舞台下で待つ福田明日香に声を掛ける。
「これで弟子として認めてもらえますね」
「無事に銀杏にたどり着ければ、な」
「は?」
「行くぞ」
福田と高橋が足早に会場を去るのを加護は見ていた。
そして老師に声をかける。
「ちょっと遊んでくる」
「やれやれ、仕方が無い奴じゃ」
「ちょっと行ってくる」
気絶した村上愛をアヤカに託した平家みちよは、高橋を追う加護の後を追った。
「裏口をどうぞ」
大会関係者に気を使ってもらい、一般と別の出口を用意してもらった。
賞金とトロフィーを抱えた愛はスキップしながら外に出る。
ところが、細い路地を抜け角を曲がると、数十人の中国拳法家が待っていた。
隣で松葉杖をつく福田がため息をこぼした。
「…図られたか」
「どうゆうことすか?」
「大会関係者もグルだよ。日本人に優勝もってかれてそのまま帰す訳にいかねえだろ」
「ええっ!?」
愛は後ろを振り返った。すると後ろにもすでに数十人の中国拳法家がいる。
逃げ場はない。囲まれてしまっていた。
頼る様な目つきで愛は福田を見たが、その姿を見て考え直す。
(福田さんは歩くのがやっとの怪我人や。私一人でこれだけの人数を…)
絶望的な状況であった。彼らの目つきはすでに出来上がっている。
謝って許してもらえる雰囲気ではない。
賞金とトロフィーをリュックに投げ入れて背負い、構える。
(やるしかない!)
「やるしかあらへんでぇ」
そのときだ。一人の少女が愛の真後ろに飛び降りてきた。
お団子頭に黒目の大きな、まだあどけない顔の娘であった。
「手ぇ貸したろか」
「誰?」
「か・ご・ちゃん・です♪」
(加護?)
愛は首を傾ける。どこかで見た顔に、どこかで聞いた名前。
だがそれを思い出す前に福田が口を開いた。
「じゃあな。先に銀杏で待ってるぜ」
「へ?福田さん、ちょっと…」
「言ったろ。弟子になりたきゃ金持って銀杏に来いってよ」
それだけ言い放つと福田は、松葉杖をついたまま中国武術集団の方へ歩き出した。
当然彼らが黙って通すはずはない。福田に対し身構える。
しかし福田は歩みを止めようとしない。
むしろ下がりだしたのは数十人の中国拳法家達の方だ。
相手は松葉杖にギブスを巻いた怪我人である。しかし誰一人彼女に向かう者はいない。
やがて道が開いた。モーゼの様に福田の前で人並みが割れたのである。
それは信じがたい光景であった。
数十人の中国拳法家の顔色が変わっている。本能が恐怖しているのである。
怪我をしているとかそういうのは関係が無いこと。それは空気。
刃向かえば『死』を連想させる様な尋常ならぬ空気を帯びた人物なのだ。
彼女がその場を去るまで、誰一人動く者も言葉を発する者もいなかった。
ただ一人を除いて。
「なんやけったいな人やな〜」
福田明日香が去ると、集団は我に帰ったように再び高橋を囲む。
愛も自分の状況が少しも改善されていないことを思い出す。
いや、ひとつ変わったのは目の前にいるこの少女。
「ほな、後ろはうちに任しときぃ」
「え!ちょっと!」
しかし彼女の正体を確認している暇は無い。
福田というダムに関止められていた武術家の波が、高橋と加護に押し寄せる。
愛は頭を切り替える。どちらにしろここを抜け出さなければならない。
そしてそれは愛一人ではとうてい叶わぬ所業である。この娘を信じるしかない。
前の敵だけに集中した。
前後から攻められては動きがチグハグになるが、前だけならば負けない。
一人、また一人、休むことなく攻めてくる中国武術家を倒していく。
しかし後ろから攻めてくる敵はまだいない。
ということはあの加護という少女が抑えているということだ。
(加護…?)
(やっぱりどっかで聞いたことあるような…)
(そうや!あのときの!亜弥と引き分けたっていう子!)
戦いながら愛は思い出した。
二年前の18歳以下トーナメントで圧倒的強さを誇る松浦亜弥と引き分けた娘。
愛は自分の試合で負傷していた為、それを見たのは後日の録画でだけだ。
しかし亜弥の狂気に一歩も譲らぬその力、強く印象に残った。
(こんな所で会えるなんて、すっごい偶然)
加護亜依の戦い、見たくて仕方なくなってきた。
しかし数の多い敵を相手に、後ろを振り返る余裕は与えてもらえない。
(あ〜も〜!すぐ後ろやってのにぃ)
どれほど倒しただろうか。敵の集団が急に引き始めた。
肩で息をしながらようやく後ろを振り返れると、後ろの敵も引いている。
愛は背中を向ける加護に声をかけた。さすがに加護も疲れている様だ。
「逃げるんかな?」
「どうやら、ちゃうみたいやで〜」
なんと、敵の集団は長い棒を取り出して来た。
少林拳などに代表される棍である。それを二人のアイに向ける。
「手段は選ばへんてか」
「加護さんは逃げていいよ。元々あいつらの狙いは私やし」
「アホぬかせ」
加護はくいっと唇を吊り上げた笑みを見せる。それに愛も笑みで返す。
しかし絶体絶命である。
愛はすでに体力も尽きかけている。その上に敵は複数の武器を所持。
どうなるかわからない。しかしただでやられるつもりは無い。
愛は覚悟を決めた。すると加護がポツリと呟いた。
「しゃ〜ないわ。アレ、使うかぁ」
アレ?加護は何か秘策をもっているのであろうか?
愛は思わず加護の方を振り返った。
しかしここで加護のその秘密を見ることは叶わなかった。
中国武術集団のさらに後方から、物凄い戦気がやってきたからだ。
「なんや?なんや?」
「この気…嘘でしょ…」
愛は一瞬、そこへ安倍なつみかジョンソン飯田が現れたのかと思った。
それほどの気を有している者が近づいてきたのである。
しかし、それはそのどちらでもなかった。
恐れをなした中国武術家集団が棍を向ける。
旋風の様な打撃がそれらを瞬く間に一蹴してゆく。
そしてその圧倒的な気を有した者は、二人の元へ姿を見せた。
「お前達が高橋愛と加護亜依だな」
「はい」
「誰やお前」
その圧倒的な気を有する女は、大人の色気を加えた穏やかな笑みを浮かべる。
それはかつて、あの石川が現れるまで闇のコロシアムの王者だった者の顔。
地上で女子格闘技界が芽生えようとしていたあの時代。
もし彼女が表にいたならば…
頂点に立ったのは安倍でも、飯田と石黒でも、福田でも、中澤でも無い!
「平家みちよだ」
なんか糸が繋がったような気分
辻豆さん乙
うめぇ。素直にそう思ってしまったw
老師って誰だろ
まさか本当にメカあいぼんになってたり…(゚д゚)ブルガク
あいぼんの性格が変わったような…
まあ、実際のあいぼんもだいぶ変わったしいいか
何せ3ば…‥〃…|оаТЭкйЬЫヴヰゑゐΗ∬
スーパーどどん波に100ペソ
>>385 繋がって良かったw
>>386 ありがとうございます。
>>387 老師は架空のオリキャラです。
>>388 メカあいぼん。なつかしいネタですね。でもメカにはなってませんのでご安心を。
>>389 性格変わってました?まぁ設定上、一年半ぶりの登場になりますし。
成長して少し大人になったと思ってもらえれば。体の方も3ば…v%I卯s#+O
>>390 一応現実的格闘技でいくつもりなので、ビーム系は×
あやしい特技を持った人がチラホラ出てきてはいますがそこは寛大な気持ちでw
平家みちよと名乗る女は、視線で二人のアイに語る。
「話はこいつらを片付けてからにしましょう」
「手伝ってくれるんですか?」
「そのつもりよ」
「ラッキー!ええ子やん」
「いや子供じゃないやろ」
(いい子か…フッ)
高橋と加護の背中に向けて、平家は闇の笑みを浮かべる。
彼女の登場に中国武術家たちの戦意は喪失気味になっていた。
高橋愛・加護亜依・平家みちよ。
立場も境遇もまったく異なる三人の闘士が手を組み、次々と敵を倒してゆく。
気がつくともう半数以上が倒れ、残りは逃げ出してしまった。
完全勝利である。
「やったー!ありがとうね、加護ちゃん」
「まぁ、うちにかかればこんなもんや」
「平家さんもありがとう。助かりました」
「気にするな。君たちの様な有能な格闘家を失いたくなかっただけだよ」
「なんやおばちゃんも格闘家かぁ?」
ビックウ!!
突如仁王の様な睨み顔に変化した平家に、加護はガクガクブルブル震えて言い直す。
「お姉さまも格闘家でございましょうかぁ!」
とりあえず安全な場所まで移動した三人は、日本の女子格闘話で盛り上がる。
もちろん平家は自らの正体を隠しながら。
「実は私、強い娘を育てることを仕事にしているの」
「へぇ〜そんなんあんねんなぁ」
「初耳やよ」
「もしよければ、お二人にも一度そこを紹介したいんだけど」
「なんかおもろそう…うん、試しに見てみよかなぁ」
「高橋さんは?」
あっさり即答した加護と異なり、高橋は言葉を詰まらせる。
助けてもらった恩もあり、無下に断るのも気が引けるが…しかし。
「ごめんなさい。私、これから弟子入りするって約束があるんです。だから…」
「そう、そういうことならいいわ。また機会があったらよろしくね」
「はい」
「じゃあ行きましょうか、加護ちゃん」
「えっ!今すぐかぁ?」
「そうよ。大丈夫。日本行きのチケットはこちらで用意するわ」
「ほんま!飛行機代出してくれんの!う〜ん、よっしゃ、ほなちょっとだけ待っててや!」
すると加護は「老師〜!」と叫びながらどこかへ走っていってしまった。
思わず二人きりになった平家と高橋。
一息つくと平家は高橋にあることを告げた。その声色はさっきまでと違う。
「高橋さん」
「はい」
「半年後、来年の春までには日本に帰ってきなさい」
「へ?なんでや?」
「日本中の女子戦士を一同に集めた大規模なイベントが開かれる」
「えっ!何それ?そんなの初めて聞いた」
「ええ。まだ何処にも公にはしていないからね」
「どうしてそんなこと知ってるんですか?」
「それは言えない。詳しい話もまだ決まっていないからな。ただ言えることは…」
「言えることは?」
「そこで真の“最強”が決まるということよ」
最強。
その二文字を追い続けてきた大勢の娘たち。
もちろん愛もその一人である。たちまち興奮が肌を包み込む。
「あの5vs5戦にいた連中。そしてその場にいなかったまだ見ぬ猛者たち。
全員を集結させる。参加しなければ武道家として一生後悔することになるわよ」
どうして平家さんがあの5vs5を知っているのか?
もはや聞く気もおきない程、愛の体は熱を帯びてきていた。
安倍。飯田。矢口。辻。藤本。田中。道重。亀井。そしてまだ見ぬ強敵。
これらの名前が一同に…考えただけでも興奮が止まらない。
熱を吐き出すように愛は言葉を残す。
「半年やの…。わかったわ。この半年で絶対に誰よりも強くなってやるわ!」
愛と平家の元から飛び出した加護は大急ぎで擂台賽会場に戻る。
もう後片付けの始まっているその脇に、持参の酒をすすっている白髪の老人がいた。
「老師!今までお世話になりました!ほな、いってきます!」
「うむ…って、ちょっと待たんかい!なんじゃいきなり!」
「いい人がいて日本にタダで連れてってくれるゆうんです」
「そうか…最後まで慌しい奴じゃのう」
老師がグイッと酒を飲み干す。加護の目が少し潤んだ。
修行中は何度もこのエロジジイの元から去りたいと思っていたが、
いざ別れるとなるとやはり寂しさがこみ上げてくる。
「本当に、お世話になりました。この腕が元に戻ったのも、
また夢を追うことができるのも、全部老師のおかげです」
「なんじゃ急にかしこまりおって気持ち悪い」
「気持ち悪いってなんですかぁ!人がせっかく感動的にしようと…」
「似合わんことせんでよい。とっとと行ってこい」
「イ〜だ!もーありがとうも言いませんよ〜だ」
「そんなもんいらんわ!行け行けぃ!」
本当は、ありがとうを言いたいのは自分だった。
老いて見ることもなくなった夢をくれたのは、この小さな娘である。
折れた腕の治療に訪れた和の国の少女は奇跡の体質を備えていた。
そして完成した誰も成し得ることのなかった中国拳法の極地。
(礼がしたいのならば、本当に最強になった姿を見せてくれ)
大きく成長した弟子の背中を見ながら、白髪の老人はまた酒をあおった。
老師に別れを告げた加護は、再び平家と愛のいる場所まで駆け足で戻る。
「お待たせお待たせ〜!あいぼんはいつでも出発できますよ〜」
「それは良かった。じゃあ行こうか」
「加護ちゃん。せっかく会えたけど、ここでお別れやね」
「やっぱり行かへんのか。でもまたすぐ会えるよ」
加護はニッコリ笑って、同じ名をもつ娘に手を差し出す。
高橋愛はそれを見ると笑い返す。
「最強を志すならば、必ず、ね」
次に会うときは、どんな形になるかは分からない。
いや、味方であるより対戦相手として出会う可能性の方が遥かに高い世界だ。
それはお互いに理解っている。
だからこそ、せめて今このときは、同じ夢を持つ仲間として手を握りかわす。
「ほな元気でな〜」
「うん、加護ちゃんも元気で」
二人のアイの握手を見ながら、背後で闇は笑んでいた。
(お前達が思っているような…甘っちょろい再会は無い)
(せいぜい今の内に楽しんでおきなさい。夢とか仲間とかくだらない戯言を)
(お前達を待つのは……血と恐怖の殺し合いだ)
(クククククク…)
闇に足を踏み込んだことを、屈託の無い笑みを浮かべる加護は知る由も無い。
島がある。地図にも載らぬ小さな隠れ島だ。
平家と加護を乗せたヘリが、島の中央に立つ研究所に降りる。
「起きなさい、到着よ」
「ほわぁ?ここ日本かぁ?」
寝ぼけ眼をこすりながらヘリを降りる加護。見たことも無い景色であった。
「何処やここ?」
「言ったでしょ。強い娘を育てる機関よ」
「ああ、そっか。そっか」
言われてようやく思い出した。
すると少女が二人近寄ってきた。どちらも加護より一回り程小さい。
まさかこんな小さい子供が格闘技を学んでいるとは思わず、加護は少し驚く。
それ以上に驚いたのは、子供達の表情にまるで感情が見て取れないこと。
加護はもっと楽しくワイワイ騒いでのトレーニングを想像していたのだ。
「下がりなさい。桃子、佐紀。彼女はお客さんよ」
平家にそう言われると、二人の子供は無表情のまま離れていく。
加護は何処か不気味な印象をもった。
(なんや思ったのとちゃうな〜)
「さぁ、こっちよ。マスターがあなたに会いたがっているわ」
(派手なおっさん)
それがマスターつんくを見た加護の第一印象だった。
平家に案内された豪華な部屋は、中世ヨーロッパの玉座の間をイメージさせる。
ただっ広い空間の奥に真っ赤な玉座。そこに座る派手なおっさん。
「話は先に戻ったアヤカから聞いとる。ようこそ加護君」
「どうも」
「君が強くなる為の設備は何でもある。ゆっくりしてもらって構わんで」
「いえ結構です。うち見学来ただけやし」
「まぁそう言わんと…」
「ののに会いに行くんや」
「のの?」
「辻希美。うちの親友や!黙っていなくなったこと謝りたいし、ゆっくりなんか…」
「辻…まさかあの辻か?」
「えっ、知ってはるんですかぁ?」
「知ってるも何も。今この国の格闘技界で彼女を知らん奴はえんやろ」
「嘘ぉーーー!!!」
「平家、あれを持ってきてあげなさい」
つんくに命じられた平家は一旦退室すると、数冊の格闘技雑誌を持ってきた。
『辻希美!奇跡のトーナメント制覇!』『夏美会館空手、新王者はやはり辻!』
そこにはありとあらゆる雑誌の表紙を飾る成長した親友の姿があった。
加護は目を丸くしてページをめくる。
「新時代の女王」「なっちとジョンソン飯田の後継者」「最強にもっとも近き存在」
どんな批評も辻希美を絶賛している。
ずっとチベット奥地に篭って修行していた加護にとって、寝耳に水の衝撃。
「君と辻がどんな関係かは知らへんが」
「…親友や」
「辻はお前のことなんて、とっくに忘れとる」
加護は大きな黒目を開いて、つんくを見た。
黒い笑みを浮かべながらつんくは続ける。
「辻は今や夏美会館のチャンピオン。自分が一番になることに夢中や。」
「…」
「まったく無名の加護君には手が届かない存在になってしまったんだよ」
加護はもう一度雑誌に目を落とす。
久しぶりに見た相棒の顔は、輝いてキラキラしていた。
「加護君。もし君がそれでも最強を目指すというのならば…」
「…」
「方法はたった一つ…辻希美を倒すこと」
闇の誘い。しかし…。
口端が上がると、やがて加護は大声で笑い出した。
「アハハ!なんやそれ。そない言うてうちとののが喧嘩する思たん?
ののがうちのこと忘れる訳あらへんやろ!そんな脆い関係やないで。
何も知らんのに勝手なこと言わんといてもらえます?」
「ほう…」
得意の関西弁で一気にまくしたてると、加護はプイッと回れ右した。
「帰らせてもらいます。気分悪い!」
「今、君が戻り最強を目指すと言って、果たして辻はそれを受け入れるやろか?」
「……っ!」
「もうお前の引き立て役やった辻希美やないで。勝利の味を知ってもた」
「いい加減にせんと怒りますよ」
「それ以前に加護君。君ではもう辻希美には勝てへんよ」
「…あんた」
「勘違いせんで欲しい。俺は君に辻を越える力をあげたいと思とるんや」
「それが余計なお節介いうんや。あんたの力なんか借りひんでも、うちは負けん」
「いや負ける」
「うちはもう誰にも負けん!最強やから」
「軽々しく最強を語ったらあかんよ」
「なんやったら試してみましょか?」
加護亜依の目つきが変わる。冷静さを失っていた。
仕方が無い。辻とのことをこれだけ言われたら平静でいれるはずが無い。
一方、挑発の誘いに成功したつんくは笑みを抑えるのに必死だった。
「平家。彼女に最強という言葉の重みを教えてさしあげろ」
「わかりました」
なんと!ここでつんくが指名したのはあの平家みちよであった。
沈黙を保っていた平家が、その膨大な戦気を開放し加護亜依に向ける。
思わぬ展開!加護亜依vs平家みちよ
( ^▽^)< ドキドキ
期待保
黒あいぼんになっちゃったりするんかな〜。
このつんくの提案に、加護はあまり気乗りしない素振りを見せる。
「平家さんはうちらを助けてくれた。そんな人と戦いたくない」
「言い訳は止めなさい。私には勝てないことが分かっているんでしょ」
加護は物憂げな瞳で平家を見る。
二人は中国でお互いの戦いぶりを見ている。
そのときの実力差は、素人目に見ても平家が上であった。
「確かに平家さんはうちより強かったで。でも…うちには勝てへんよ」
「しばらく日本を離れていたせいで、日本語の使い方を忘れたの?矛盾してるわ」
裏格闘界の現役は退いたとはいえ、平家みちよに勝てる者が果たして何人いるか?
全盛期に表にいれば、安倍飯田石黒福田中澤にも勝ったであろうと言われる怪物である。
そしてプロジェクトKの教育係になった現在でも、まだその力は衰えていない。
つんくも絶大な信頼を寄せる闇の最強戦士だ。
「口では何とでも言える。やればわかるやろ。ほないくで」
痺れを切らしたつんくの言葉に、二人は口を閉じて見詰め合う。
研ぎ澄まされる空気。高まる緊張感。
ついに明かされる平家みちよの実力!
ついに明かされる新生加護亜依の実力!
「はじめっ!」
負けたことがない。
それが平家みちよである。
ずっと闇の頂点にいた。石川梨華が台頭してきたのは平家引退のずっと後だ。
一度も負けることなく、チャンピオンのまま現役を去った。
それからずっとマスターつんくの右腕として動いている。
もう一人の側近であるアヤカよりは戦闘系の働きをこなしてきた。
逆らったコロシアム戦士や闇勢力の始末などだ。
そこでも、負けたことは一度もない。
どんな相手であろうが自分が負けることは無い。
――――――――――――――この瞬間まで、そう信じていた。
「はじめ」の合図と共に前へ出る加護亜依。
平家は右のジャブでまず牽制する。……すると加護が変化した。
変化といっても姿形が変わる訳でもない。だが他に形容のしようが無い。
とにかく、加護亜依は変わったのだ。
これまで体験したこともない程のスピードで動き、
これまで体験したこともない程のパワーで押し、
これまで体験したこともない程のテクニックで翻弄する。
人間としての能力の限界がある。その限界に最も近づける者が最強だと信じてきた。
だが目の間にいるこの娘は、間違いなくその限界を超えていた。
ドンッ!!!!!
時間にして数秒。
その数秒で平家みちよの人生観は一変することになる。
中国拳法の極地。
その老人との出会いが加護の運命を変えた。
松浦亜弥に折られた腕、医師には完治不可能と言われ夢を失った。
そして逃げる様に辻の元を去った。怖かったのだ。
夢を失った自分に相棒は興味を失い、離れていってしまうのではないかと。
それくらいなら…自分の方から。そう思った加護は無言で消息を絶った。
絶対に見つからない所。加護は海を越えた、神秘の大国へ。
不思議な気で怪我を治す仙人がチベット奥地に住んでいるという噂を耳にする。
普通の人ならばそんな馬鹿げた話を真に受けて、険しい山脈を越えたりしない。
しかし加護は違った。藁にでもすがりたい。
(この腕が元に戻るんやったら!)
たった一人で地元住民も近寄らぬ険しき山脈を登った。
道と呼べる道も無くなり、食料も尽き、三日三晩が過ぎた。
それでも加護は進み続けた。そして四日目の朝、ついに彼女は見つける。
「お前は運がいいのぅ。通常ならば怒鳴って追い返す所じゃ」
「うちは通常ちがいますん?」
「ああ、胸が大きいからのぅ」
仙人なんてトンデモナイ。気孔最強説を唱え中国拳法界を追われたただのエロジジイだ。
しかしこのヘンテコ気孔ジジイとの出会いが運命を変える。
完治不可能といわれた腕が、気孔治療で治ってしまったのだ。
これに一番驚いたのは加護でもなく、あろうことかこのジジイである。
「なんで治るんじゃ?」
ジジイ曰く「治るはずがない怪我」だそうだ。
それがどういう訳か完治してしまったのだから、驚くのも無理はない。
これが原因で加護亜依の特異体質に気付いたのであった。
幼少時、飛行機墜落からの死を乗り越えた限界体験が、その体質をもたらした。
世界で二人だけが持つ「奇跡」の体質。
それを知った老人は中国拳法界を追われた長年の夢を、加護に語る。
実現不可能とバカにされて諦めた究極の気孔奥義が…彼女ならばそれができる!
加護にとってもそれは望んでやまない話。
(また最強を追えるんや)
人間というのは通常使用できる能力は決まっている。
しかし気孔の発散によりそれらの全開放ができることを老師は発見する。
「火事場のクソ力」という、時に無我夢中で信じられない力を出すことだ。
但し運動神経の全開放は肉体に多大な影響を与える、偶然に一瞬だけ許される奇跡。
その力は維持できる類のものではない。
だが加護の有する奇跡の体質ならば、あるいは…その負荷に耐えうるのでは?
こうして老師と加護は共に夢へと進んだ。
一年半後、老師の仮説は現実のものとなる。
過酷な修行の末、加護亜依は見事手にしたのだ。
三倍のパワー、三倍のスピード、三倍のテクニック、三倍のディフェンス…
気孔の開放により、あらゆる能力が一時的に通常時の三倍になる奥義。
中国拳法の究極『三倍拳』
平家みちよは仰向けに倒れ、天上を見上げていた。
起き上がろうとした所へ加護の拳が目の前に出現する。反応もできない。
目と鼻先で拳は止まった。完敗だ。
「まいった」
その台詞を自分が吐いているのが信じられなかった。
プロジェクトKの子供達には、あれほどギブアップするなと教えてきたにも関わらず。
腕が震えていた。足も震えていた。体中が震えているのだ。
今までどんな奴と戦ってもこんなことはなかった。本能が敗北を宣言した。
平家は震えながら、加護亜依を見た。
加護は通常時でも高橋や松浦と互角に戦える実力者である。
それが三倍になったらどうなるか?人間の限界を遥かに超えた存在だ。
つまりそれはイコール“最強”
「…みつけた」
震えたのは平家だけではない。マスターつんくも震えに立ち上がっていた。
(まさかこないとこで。ついに見つけたで…最強の娘)
最強の娘を作り上げる。それがつんくの野望。
そしてそれを実現できる娘が、ついにつんくの目の前に出現したのである。
(加護亜依…)
(手に入れたる)
(表の格闘界には渡さん!どない手を使ってでもこいつは俺が手に入れたる!)
「勝負ありやね。ほな、さいなら」
震えに身動きもとれぬ平家とつんくを尻目に、加護は歩みだした。
加護が部屋を出ると、つんくは我に返り急いでもう一人の片腕アヤカに連絡する。
(どない手を使ってでも!)
建物を出ると、加護は島に来たヘリポートに向かった。
ヘリの前にはアヤカが待っていた。
「きれいなお姉さん。乗せてってもらえますぅ?」
「お帰りですね。どうぞ」
「おお、良かった。どうやって帰ろか困ってたねん」
加護は駆け足でヘリに乗り込む。しかし中にパイロットが乗っていない。
すると操縦席にはアヤカが乗り込む。
「へ〜お姉さん、操縦できるんや」
「行き先は…」
「あ、えーと、そやなぁ。とりあえず東京の…」
「…地獄でよろしいでしょうか?」
アヤカは優しい笑みを浮かべたまま、そう告げた。
放たれる殺気の渦に加護は思わずヘリの外を見渡す。
十数人の小さな子供達が、いつのまにか加護の乗ったヘリを囲んでいる。
「…やってくれるやんか、このアマ」
フロントミラー越しにアヤカが加護を見る。
口元に笑みを残しているが、視線は笑っていない。
「五体満足でこの島に残りますか?それともまた…」
「…お前ら、最低やな」
「そうですね。ですがつんく様の命令は絶対ですから」
「ぶっ潰したるわ!」
加護はヘリを飛び出した。
感情を持たぬ14の顔が一斉に加護を捉える。
中国で負傷した村上愛以外のプロジェクトK全員がそろっている。
「覚悟はできとんのやろな、クソガキども」
「やってしまいなさい」
アヤカの言葉で14人の子供達が加護亜依に襲い掛かる。
前から。右から。左から。斜めから。上から。下から。後ろから。
(冗談やない!ようやくまた夢を追えるんや!)
あらゆる方向から感情を持たぬ攻撃の津波。
(こない所でやられて…やられてたまるか!)
三倍拳!しかし圧倒的な数の差は“最強”を容赦なく撃ちつける。
(うちはまだ…!黙っていなくなったこと…まだののに謝ってへんねん!)
止まること無き攻撃の渦に反撃も届かない。一方的な殺戮。
加護は吼えた。
「ののーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!」
東京。夏美会館本部道場。
安倍なつみと組手をしていた辻希美は、突然その動きを止めた。
「ちょっとーどうしたの?いきなりボケーっとしてさ」
「えっと、今。誰か、ののを呼ばなかったれすか?」
「ボケるのは顔だけにしてよね。ここには今なっちとあんたの二人しかいないでしょ」
「あー、うん」
「まったく館長直々の組手最中に…辻さんも大物になったもんだ」
「なちみーごめん!ごめん!続きお願いします!」
「…ったく、しょーがないなぁ」
「ん、待って。今ののの顔がボケてるって言いませんれした?」
「あ、聞こえてた」
「なちみ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!」
(…のの、頑張っとるかぁ)
(夢は忘れてへんやろな。もちろんうちも忘れてへんで)
(二人の夢はいつまでもいつまでも一緒やもんな)
(けど、うちはやっぱりダメみたいや。頑張ったけど…ごめんな)
(代わりにののが最強になって。大丈夫。あいぼんさんが保証したるわぁ)
薄れゆく意識の中で、加護は夢を見た。
(出来るならもう一回だけ…会いたかったなぁ…)
(のの…)
それは、世界一の場所で、辻希美と二人、手をつないで、夢を叶える夢だった。
第31話「二人の夢はいつまでも」終わり
次回予告
そして運命の歯車は、すべての道の終着点へと回り続ける…
「石川梨華。加護亜依。そして三つ目の駒は…」
To be continued
3倍(w
>413
3倍ってそれか!!今気付いた…orz
3倍・・・何のことだ?
サンバイ剣はアルベガスの必殺技
石川、加護、松浦?
三人祭りナノカ━(゚∀゚)━(∀゚ )━━(゚ )━( )━( ゚)━( ゚∀)━(゚∀゚)━!!?
い〜ぃ展開になってきたんじゃないですか〜?
420 :
ねぇ、名乗って:04/08/16 23:53 ID:fMLRAdOd
アイヴォォォン( TДT)
421 :
ねぇ、名乗って:04/08/17 02:35 ID:37EbvkOJ
お豆さん乙です。
ROMですががんばってください。
川o´-`).oO(ageてしまいました)
第32話「プロジェクトKの子供達」
「生きとるか」
「かろうじて。救急ボックス内で眠らせています」
「そいつは良かった」
つんくへの報告を済ますと、アヤカはもう一人の側近に問う。
「平家さん。何ですか、あの子達は」
「何とは?」
「やめろと言っても攻撃を止めない。危うく殺す所でした。」
「教育どおりだよ」
話にならない。アヤカはこれ以上問い詰めるのを無駄と悟る。
プロジェクトKの実践は初めて見た。想像以上だ。
加護亜依でなければ間違いなく絶命していた。あまりに危険な子供たち。
「それで?戦果はどうだったアヤカ」
「はい。14人の内、怪我を負った者が5名、軽い傷が6名、無傷は4名です」
「ほーあの加護を相手に無傷が4人もおるか。誰と誰や?」
「夏目雅、嗣永桃子、矢島舞美、熊井友理奈の4人です」
「現時点ではそいつらがAクラスゆうことか」
「そうですね。プロジェクトKの中でも最近は優劣の差が見えてきました」
「よっしゃ平家。教育係が一人じゃ大変やろ。アヤカにも紹介したれ」
「…わかりました」
別館にプロジェクトK15人の宿舎兼トレーニング施設がある。
その一室に夏焼雅と菅谷梨沙子、そして鈴木愛理の3人がいた。
雅が加護戦で大怪我を負った梨沙子の手当てをしている所だ。
それを愛理が小馬鹿にしている。
「情けないわねぇ。そんな大怪我するなんて」
「えへへぇ…」
「ちょっとよしなさい愛理。貴女だってほっぺに傷があるわよ」
「こんなのかすり傷よ。他の子が足を引っ張らなければ私だって無傷だったわ」
この様に鈴木愛理は同い年の菅谷梨沙子をライバル視しており、いつも挑発的態度をとる。
しかしアホか天才か分からない梨沙子はポワ〜っと毎回これを受け流す。
代わって、姉のように梨沙子を庇うのが夏焼雅である。
プロジェクトK内でも自他共にトップクラスの実力とされる娘だ。
「大変!大変!ケンカだよー!」
そこへ一人の大柄な娘が駆け込んできた。雅と同い年で仲が良い須藤茉麻だ。
ケンカという言葉に雅はその大人びた顔を崩す。
「ほうっておきなさい。どうせまた桃子達でしょう」
「当たり。さすが雅」
「ほんとに野蛮な人達ね」
「おもしろいじゃん。私は見に行くよ。行こう茉麻」
結局、鈴木愛理だけが須藤茉麻と共に野次馬に加わることとなった。
ホールにはプロジェクトKの子供達が集まり、大きな輪ができている。
その輪の中心にいるのが梅田えりかと、そして嗣永桃子である。
梅田えりかはKで最も背が高く、その長いリーチを活かした攻撃が持ち味だ。
対する嗣永桃子は比較的小柄な体格をしている。
しかし怯えた表情を浮かべているのは梅田えりかの方であった。
「わざとじゃないって言ってるでしょ!桃子」
「知ってるよ。あんたがわざと私にケンカ売る訳ないもんね」
「だったら…」
「下の子に示しがつかないでしょ。あっさりと許しちゃさ」
嗣永桃子は淡々と語る。
送れてギャラリーに加わった鈴木愛理は、近くにいた岡井千聖にケンカの原因を訊ねた。
「うんとね。えりかちゃんが桃子ちゃんのスープをこぼしたんだって」
くだらない。実にくだらないが、その相手がまずかった。
現在プロジェクトK最大の派閥を束ねる娘、嗣永桃子であるからだ。
桃子に意見を言える者なんて数の多いKの中でも二人しかいない。
一人は夏焼雅。そして残るもう一人の娘が、ホールに現れた。
「ちょっと何してるの?やめなよ桃子、えりか!」
清水佐紀。嗣永一派の実質的副リーダーだ。
独裁的な桃子を最大派閥の長にまで押し上げたのは、彼女のサポートによる所が大きい。
そんな清水佐紀がケンカの仲裁に入った。
梅田えりかはすがる想いで清水佐紀を見た。
二人は仲が良い。梅田が嗣永派に加わったのも清水がいたからである。
決して嗣永桃子を上と認めたからではない。しかし桃子はそんな佐紀を遮る。
「心配するな。私は怒っている訳じゃないよ佐紀」
「でも桃子…」
「ギャラリーも増えてきたし、そろそろ始めようかな」
佐紀を遮ると、桃子はグンとえりかに近寄った。
もうやるしかない!覚悟を決めた梅田えりかは咄嗟に構える。
プロジェクトK最長身が本気になったら強い。パワーもリーチもある。
先手をとったのは梅田えりかであった。嗣永桃子の顔面を殴りつける。
桃子は少しも避ける素振りを見せはしなかった。まともにこれを受ける。
顔面に拳が当たりながら、しかし桃子は前進をやめはしなかった。
肩を掴むと物凄い勢いでみぞおちに膝を叩き込んだ。
嗣永桃子は立ち技最強の格闘技ムエタイの使い手である。
その膝蹴りをもらった梅田えりかは、たまらずダウンする。
ダウンさせると桃子はそのまま馬乗りになりマウントポジションをとる。
桃子を相手にこの体勢をとられては、もう勝負あったも同じだ。
「二度と逆らわないと誓う?」
「…は、はい」
「いいパンチだった。これからは私の下で存分に振るえ」
初めから逆らうつもりの無い相手を完全服従させる桃子。
ギャラリーの年下の子供たちは息を飲み込んで、その姿を見つめた。
(気にくわねえが…強い)
鈴木愛理は唇を噛み締めながら、今のケンカを見守っていた。
このケンカによって嗣永桃子には逆らえないというイメージが植えつけられる。
初めからそれが狙いだ。あざとい女である。
「すごいな〜雅とどっちが強いだろ〜」
隣で須藤茉麻が怖い台詞を吐いていた。この女は平気でとんでもない事を言える奴だ。
プロジェクトKの二大派閥。それが桃子の嗣永一派と雅の夏焼一派である。
その頂上である桃子と雅は決して争っている訳ではない。ある意味、同盟関係にある。
二人が争えばプロジェクトK自体が真っ二つ、いやバラバラになるだろう。
だから茉麻の台詞は禁句なのだ。
(今はこの微妙な均衡を保っていればいいんだよ)
(あと半年で、私がトップに立つまでね)
そして二大派閥外にも虎視眈々と上を狙う者はいる。この天才児、鈴木愛理の様に。
「あいつはああいうことさせたら、本当に上手いよな」
「…」
「それに打たれ強い。他の子だったっらえりかの一発で終わってるよ」
「鈍感なだけでしょ」
「言えてるハハハ」
ギャラリーの輪に加わらず、廊下の影から様子をうかがっていた二人がいる。
笑みを浮かべる矢島舞美。そして無表情の村上愛。中国で高橋愛と闘ったあの村上だ。
この二人は嗣永派、夏焼派のどちらにも属していない。
彼女たちもまた上を狙う者である。
「大丈夫?えりか!」
興奮冷めぬホールでは、倒された梅田えりかに清水佐紀が駆け寄っていた。
立ち上がった嗣永桃子はそんな彼女と視線を交わす。
「後はたのんだぞ」
「桃子…」
それだけ言い残すと嗣永桃子はホールを出て行った。
梅田えりかはグッタリしていた。強烈な膝蹴りと、精神的恐怖が大きいのだろう。
「誰か手を貸して!保健室に運ぶから」
「はい」
ここで清水佐紀を手伝ったのが嗣永派に属する娘、徳永千奈美である。
いつも笑顔を絶やさない彼女も、今の戦いを見て顔が引きつっていた。
(やっぱり、あの人は危険だよ…舞波)
千奈美が嗣永派に属したのは、親友の石村舞波が嗣永桃子に惚れ込んだ為だ。
その石村舞波本人は嗣永桃子を追ってホールを出て行ってしまった。
桃子にやられた梅田えりかを見ながら千奈美はまた決意を固める。
(舞波は騙されてる。絶対、私が守るから)
佐紀と千奈美がえりかを運び出すと、ホールに集まっていた他のギャラリーも散る。
後には、腕を組み冷静な顔で様子を見ていた熊井友理奈が一人残った。
ケンカは終わったというのに立ったまま動かない。
(グーー)
どうやら寝てしまっていたようだ。
「桃ちゃん、強かったのでしゅ」
「膝蹴りもかっけーなー。おらも練習しよっかなー」
プロジェクトK最年少の荻原舞と、能天気な岡井千聖がさっきのケンカ話で
盛り上がっていると、通りかかった鈴木愛理が嫌味をこぼす。
「子供はお気楽でいいわね」
「なに言ってんの。愛理ちゃんも私と同い年じゃん」
「そうでしゅよ」
「精神年齢のことよ。それじゃ失礼」
セレブのように手を振りながら去っていく愛理。
その後ろ姿を見てこぼす二人。
「十分子供っぽいれしゅね」
「うん」
一方、ホールを出た嗣永桃子は悠々と廊下を歩いている。
その傍らにはネズミみたいにチョコチョコと石村舞波がくっついていた。
「さすが桃子さん。やっぱり強いですね〜」
「まあな」
「私も桃子さんには追いつけなくても、少しでも強くなれる様がんばります」
なんて取り留めない会話をしていた時だ。
矢島舞美・村上愛の二人とバッタリ鉢合わせてしまったのは。
15人もいるプロジェクトKの中で唯一、嗣永桃子と犬猿の仲といえるのがこの村上愛。
実力者である村上愛を自分の派閥に誘ったが「興味ない」の一言で一蹴された過去がある。
その微妙な空気を悟った矢島舞美が、適当に会話を交わす。
「さっきの、見てたよ。いい膝だった」
「当たり前だろー!この人を誰だと思ってるんだー!」
すかさず舞波がつっこむ。尊敬する桃子にタメ口聞く奴は許せない。
矢島はうっとおしそうに顔をしかめる。
空気を和まそうとしたのに舞波のせいで余計殺伐としてしまった。
そんな空気の中、村上愛は視線を合わそうともせず横を向いている。
すると嗣永桃子がいきなり口を開いた。
「聞いたぜ。中国でボコボコにやられたんだって?」
無表情だった村上愛の目つきが変わる。
嫌な点をつかれたのだ。桃子はニィと笑った。
「その程度だよお前は。大人しく私の下についとけよ」
「…っ」
この挑発でキレそうになった村上愛の前に、矢島舞美が体を割り込む。
「桃子。愛は私の親友だ。親友をバカにしたら私も敵に回すことになるよ」
「フフ…冗談だよ舞美。お前まで本気にするなよ」
「そうか。じゃあこれからは冗談もほどほどにしてよね」
『プロジェクトK!全員集合!!』
そのとき号令の合図がかかる。教育係の平家みちよの声だ。
この合図には誰も逆らうことはできない。全員が駆け足で指定の場所に集う。
「今日から教育係が増える。お前らも知ってるだろうが一応紹介する」
「アヤカよ。よろしくね」
「次はお前達の紹介をしよう」
梅田えりか。中3。キックボクシング。Kで一番身長が高くリーチが長い。
清水佐紀。中3。古武道。温厚で頭もよくまとめ役をこなす。
嗣永桃子。中3。ムエタイ。二大派閥の一つ嗣永派のトップ。
矢島舞美。中3。テコンドー。K最速のスピードを誇る。
石村舞波。中2。ムエタイ。いつも嗣永にくっついている。
須藤茉麻。中2。相撲。体格がよいパワーファイター。言動は少し抜けてる。
徳永千奈美。中2。サンボ。いつも笑顔の癒し系ファイター。
夏焼雅。中2。合気道。二大派閥の一つ夏焼派のトップ。
村上愛。中2。日本拳法。Kでもっともバランスの取れたファイター。
熊井友理奈。中1。柔道。孤高の娘。
岡井千聖。小6。アマレス。誰とでも仲良くなれる能天気娘。
菅谷梨沙子。小6。総合格闘技。夏焼雅の妹分。果たしてアフォか天才か?
鈴木愛理。小6。キックボクシング。梨沙子とはタイプの違うもう一人の天才児。
萩原舞。小5。空手。最年少。
以上14名。
「あのぉ〜」
「ん?」
隅っこの方からボソボソッと声がする。
平家がよく目を凝らすと、陰になってもう一人座っているのが見える。
「15人なんですけど…」
「うおっ!すまん。また忘れてた」
あまりの影の薄さに教育係の平家ですらたまに存在を忘れてしまう娘がいた。
中島早貴。中1。格闘スタイル不明。めだたない。
「全部で15人ですね」
「ああ、今度は間違いない」
すみっこで中島早貴はいじけてしまった。
気を取り直して平家はプロジェクトK全員に告げる。
「ようし。では各自いつもどおりトレーニングを開始しろ」
「はい!」
訓練が行き届いているのか、15人は一斉にちらばる。
だがよく見ると派閥で固まっているのがわかる。
最大勢力の嗣永派は、嗣永桃子と清水佐紀を中心に成り立っている。
ここに佐紀が誘った梅田えりかと、桃子を尊敬する石村舞波が加わる。
さらに舞波の親友の徳永千奈美も嗣永派だ。
もう一つの派閥、夏焼派は姉妹関係の夏焼雅と菅谷梨沙子が柱である。
雅と仲がよい須藤茉麻もこのグループに所属している。
鈴木愛理は過去に雅と争ったことがある。愛理が梨沙子をバカにしたことが原因だ。
勝敗はついていないがそれ以来互いの力を認め合っている。
厳密には夏焼派とはいえないが、嗣永派とどちらにつくかといえば間違いなく夏焼派だ。
この二大勢力以外では村上愛と矢島舞美のペアが力をもっている。
どちらもKトップクラスの実力をもちながら派閥争いには興味がない様子だ。
また荻原舞や岡島千聖らお子ちゃま組は、派閥など関係なく皆と仲良くしている。
逆に誰にも媚びず孤高を貫く女もいる。熊井友理奈である。実力は未知数。
そして忘れられた娘、中島早貴は…どの位置に属するのかわからない。
この15人が闇の秘密兵器プロジェクトKの全貌である。
「平家、アヤカ、ちょっとええか」
プロジェクトK教育の最中、つんくが二人を呼び出す。
二人は各自練習を続ける様に指示を出して、謁見室へと向かう。
マスターつんくはまた何かとんでもない思いつきが浮かんだ様でニヤニヤしていた。
「加護亜依を手中に収め、表の格闘界を潰す力が揃いつつある」
「はい」
「それでな。もう一人、どうしても手に入れたい奴を思い出したんや」
「もう一人?プロジェクトKでは不足ということしょうか?」
「そういう訳やないが、念には念をや。
今、表の三強といえば安倍。飯田。そんで総合トーナメント覇者の辻や。
安倍には石川をぶつける。辻にはもちろん加護や。となると飯田が残る。
流石にジョンソン飯田となるとプロジェクトKでも苦戦するかもしれん。
できればKはその他大勢の始末に温存しておきたい」
「つんく様は、あの飯田を倒せる奴にアテがあるのですか?」
「まぁな。それで平家よ。しばらくKの教育をアヤカに任せて、そいつを連れてきてくれ」
「構いませんが。その者の名は?」
平家が訊ねると、マスターつんくは笑みを深くし答えた。
その名を聞いたアヤカと平家は顔色を変える。
また一人“最強”の名が闇に集まるのか。
「石川梨華。加護亜依。そして三つ目の駒は…」
〜作者近況〜
緊急事態発生。もしかしたら作者はもうモーオタでは無いかもしれない。
明らかに優先順位がダブルユー>モーニング娘。になっているのが分かる。
先週の堂本兄弟もかなりおもしろかったし。
辻加護卒業があまりにも大きすぎたこと、ようやく感じてきました。
もともと後藤と4期が娘好きになった原因だし、当然といえば当然ですね。
ああ、あの頃の娘がもう一度見れたらいいなぁ〜。(いいなぁ〜)
愚痴っぽくなってすいません。
娘に飽きたからこの小説やめるって事はしないんで御心配無く。
辻豆さん乙です
徐々に裏の方の戦力も明らかになってきましたね
Kの派閥争いも一筋縄ではいきそうにないですし
楽しみにしてます
ぁゃゃクル━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!
コツコツと学校で印刷し続けて、ついに印刷枚数が500を突破致しました。
俺みたいな馬鹿は他にもいますか?(゚∀。)アヒャー
アンデッドよし子と推測
加 藤 紀 子 だ 。 間 違 い な い 。
飯田にぶつける・・・
やはりあゃゃですか
それにしてもキッズがわかんねえ・・・ orz
>>441 そういえば加藤紀子は昔、キッズと5分ドラマやってたな。
あんがい間違ってないかもよw
相田翔子でしょう
キッズのキャラなんて知らないから辻豆さんの描くキッズがそのまま俺のキッズ像になります
でも顔が浮かばないのよねェ
キッズワカンネェから話に付いていけましぇん…_| ̄|〇
キッズ何ぞ皆殺しだなっち
その前に石川になっちやプロレスの神と同等の力があるのかな?
後藤≒吉澤≦石川ぐらいなもんでしょ?
それに加護≒高橋≒あやや≦田中100%≦辻なのに三倍加護ってなっちより強いんじゃ…
それが高橋にボコボコにされるようなキッズに負けるなんて…
うわ〜んワケワカメ
とにかく6期大好き人間としては亀井さんの真価が早くみたいわけで
とにかく今後の展開に期待大
よし私が代わりに答えてやろう
>キッズワカンネェから話に付いていけましぇん…
勉強しろ
>石川になっちやプロレスの神と同等の力があるのかな?
不死身だから無問題
>三倍加護ってなっちより強いんじゃ…
瞬間的なだけ
>高橋にボコボコにされるようなキッズに負けるなんて…
高橋を100、三倍加護を300、キッズを1人約30とする。
キッズは15人だから30×15=450 よってキッズが強し
>>446 そこでモーヲタ得意の妄想ですよ!
無から有を生み出せ、写真などいらぬ。
>>446ってちゃんと読んでないんだな。
でも瞬間的としても3倍加護はなっちにも勝てそうに思えちゃうよな。
まあ、全盛期の平家>当時のなっち
で、平家の能力がやや落ち、なっちが強くなってるんだろうけど。平家秒殺だったもんな。
>辻まめさん、じゃあ次回作はW小節期待してていいですか?
いや!ここでなっち皆殺しを!!!
正直加護は復活しなくてよかった・・・
そうか?加護の復活はお約束の流れだろう?
お約束ってのは陳腐になり易いが、それを避けるともっと陳腐になりやすい。
こう言うお約束をどう面白く処理するのかが作者の腕の見せ所でしょ?
俺は王道のキタキタ感が好きだな
それだって面白くはできるさー
455 :
452:04/08/25 14:11 ID:ce6aBsi0
>>453 いや、確かにそうなんだけど、夢を諦めて去っていく加護の後姿が好きだったんだよ。
夢やぶれた者の現実や、敗者は去るだけという厳しさとか、そんなものを一人だけ感じさせてくれたから。
でも、本スレで言う事じゃなかったね。失礼しました。
人は一度負けて強くなるものだ。
加護の強くなりたいという思いがどんな困難も乗り越えたのだ。
大事故を経験した加護が手が動かないだけでで去るわけがない。
負けて強くなるってのは錯覚だと思うけど、
負けた後、立ち上がって来る加護はいいなぁ。
>>446 キッズは無理に覚えなくても、ストーリー本筋が分からない事はないのでご安心を。
(ただ知っている方が、より少し楽しめるという程度です)
石川の強さは…ちょっと他の強いと呼ばれる人とはタイプが異って、不等号で明確に表さ
れるものではないです。例えるなら絶対に勝つ娘ではなく絶対に負けない娘。
三倍加護は…本当に最強の可能性もあり。但し体への負担もその分大きいのですが…。
キッズに負けた理由は大体447さんの答えで合っています。
最後に亀井さん…ある事件で感情が芽生えます。クライマックスの鍵を握る…かも?
>>452 加護は最初から復活させる予定でしたので申し訳ありません。
おそらくこの先、夢破れるよりも辛い展開が待っています。
大きく道を違えた運命の二人の再会。
作者自身は早く書きたくてウズウズしてますがw
【注】
先のストーリーについて色々レスしてますが、物語とは生き物で、ときに作者すらも
想像していなかった展開に向かうことも多々あります。今書いていることと後でくい
違っても文句はつけないで暖かく見守って下さい。
中国河北省。
擂台賽を制し武術家集団の罠を乗り越えた高橋愛は、無事にここ銀杏へと到着した。
賞金で福田のツケを返すことが、弟子入りOKの約束だった。
「これで認めてもらえますよね」
「ああ」
「やった!よろしくお願いします!じゃあ早速始めましょう、時間もありませんし」
「ちょっと待て。時間がないってどういうことだ?」
「半年後に“最強”を決める大会があるらしいんです」
福田明日香の顔色が変わる。
「最強」という単語に反応した…表情の険しさが増す。
「それで?お前はどの程度を目指しているんだ?」
「決まってるじゃないですかぁ!優勝やよ」
「それは最強ってことか」
「ええ」
「無理だ」
福田は冷たく言い切った。
これから師になる人とは思えない言い方に、思わず反論する愛。
「無理かどーかはやってみんと分からん!」
「分かるんだよ。お前ではあいつには勝てん」
「あいつ…?」
「いやお前だけじゃない。あの女には誰も勝てん。あれこそが最強…」
福田明日香の心は深い闇に包まれていた。
決して開かれることなき絶望という闇。
最強を目指すことだけが福田明日香にとっての希望…光だったのだ。
その光は、ある人物の手によって永久に奪い取られる。
「誰ですか…それ?」
おそるおそる尋ねる愛。
福田明日香をここまで追い込んだその人物とは一体?
「三ヶ月ほど前、俺は戦場にいた。そこで出会った…」
緊張感から愛は唾を飲み込む。福田の腕が震えている。
思い出すのも恐ろしい程の相手ということなのか?
「あの頃の俺は死神と呼ばれていた。自分こそが唯一の存在であると…」
「…死神」
「だが違った。死神はもう一人いた。いや死神じゃない。あれはそんなもんじゃない。
人と呼ぶにはあまりにも完全で、神と呼ぶにはあまりにリアルな。うまく例えられん。
ただ、すべてを超越していた。人も神も越えた存在…たしか名前は」
ついに福田明日香の口から語られるその名。
まさか、こんな所で聞くとは想像さえしていなかったあの名が…愛の前に今。
その名を聞いたときの衝撃……どれほどのものか想像がつくか?
「…松浦亜弥」
「ここを生きて出るのは、一人でいい」
死闘。
この言葉があまりにも相応しき戦場であった。
この言葉があまりにも相応しき二人であった。
福田明日香と松浦亜弥。
地平線の臨める広大な大地の上にこの二人。
合図も無く始まった戦い。この戦いの終わりにも合図は無い。
栄光も無く、名誉も無く、記録にも残らぬ戦い。
だが他のどんな試合よりも勝者と敗者を明確に分ける戦いである。
すべてを得るか?
すべてを失うか?
「うわあああああああああああああああああああああ!!!!!!」
松浦亜弥は吼えた。
恐れを捨てる為に声を張り上げたのだ。
だがそれでも、この震えが止まることは無かった。
怖かった。
あまりにも怖かった。
福田明日香の瞳は笑っていない。
(コロサレル)
一瞬よぎった感情が、脳天から爪先までを振るいあがらせる。
もう一度、亜弥は吼えた。
泣き出したかった。
力の差は歴然だった。
松浦亜弥は強い。
元々秘められていた驚異的な身体能力に、この軍隊経験で死も恐れぬ精神力を得た。
神をも越えたと…思っていた。
だが福田明日香のレベルはその遥か上にいた。
プロレスの神様に破れ、亜弥がこの死線に辿り着き、まだ一年足らず。
その何倍もの時間を福田明日香は生き抜いている。
亜弥が本格的に格闘技を始める前から、この女は神を知っているのだ。
拳の重みが違う。
気が遠くなる程の打撃をもらった。
まともな格闘技の試合ならば十は終わるだろうという時間。
それでもこの戦いは終わらない。
(ボロボロじゃん私…)
私が一殴ったら、三は殴り返されている。
(死神!)
(どうしてこんな化け物に戦いを挑んだんだ…)
空が見えた。なぜ突然空が見えたのだろうか?いつのまにか殴られていた?
…と思ってすぐに後頭部へ強い衝撃、生暖かい地面の感触。
(倒され…!)
考える暇は無い。みぞおちをまっすぐ踏み潰された。
(うぐっ!!)
苦しんでいる暇は無い。次は足の裏が目の前にあった。
(危っ!)
必死で足の裏を掴みとった。顔面が踏み潰されない様に必死で支える。
すると胸や腹をメチャクチャに踏み殴られる。
両手を頭部のガードに奪われているから、まったくガードができない。
ちょっとでも腕の力を抜くと、足で顔面が潰される。
信じられない死神の攻撃の嵐。
死んだ方がマシだと思うほどの激痛の上にさらに激痛。
(反撃を…)
一瞬、あいつの攻撃の手が止まる。
しかしそれはチャンスでも何でもない。
頭を守る腕の隙間を、あいつの指がすり抜けて来た。
(耳っ!)
胴への打撃で苦しんでいる隙に、耳の穴に指を突っ込もうという攻撃。
間一髪、頭を斜めにずらし、指は私の頬をすべっていった。
けれどそれで終わる訳じゃない。
再び始まる、無抵抗の臓器を狙った踏み潰し。
その隙をついて頭部の急所を狙った一撃必殺の恐怖。
片足は絶え間なく、仰向けになった私の頭部の上で両腕の自由を奪っている。
地獄の時間。
継続的に続く恐怖と一瞬を突く恐怖。
反撃を考える暇を与えない。
死神と呼ばれる理由が死にたくなるほど分かった。
(もう……)
そのとき!亜弥の目が覚める!
今、一瞬、自分が何を思おうとしたのか?
もう負けてもいい……と思おうとしなかったか?
諦めようとしなかったか?
私が!?
もし神を知らない状態だったならば。
飯田圭織という神クラスの圧倒的な強さを我が身で知っていなければ…
多分、亜弥はこの場で諦めていただろう。
だが亜弥は知っている。
(これだろ!)
亜弥の全身が脈打ち出す。
(私が望んでいたものは!この圧倒的な強さ!圧倒的な恐怖!)
(諦めている暇があったら、喜べ!)
地獄の時間は続いている。
その地獄の中で亜弥は強烈な笑みを浮かべた。
(これを越える為に…こんなところにまで来たんだろ!)
(最高の時間だ)
地獄の業火は…
死神の遊戯は…
気の遠くなる時間続いた。
(なぜ?)
先に動揺をした者――死神――福田明日香。
(なぜ、笑っている?)
彼女はこれまで何百何千という敵と戦ってきた。
誰一人として死神の攻撃を生き抜いた者はいない。
全員が死を選ぶ程の苦しみを与え続けてきた。
しかし今―――足元にいるこの女。
(なんだ、こいつは?)
死神の脳裏に突き抜ける初めての動揺。
その動揺で生まれた初めての隙!
松浦亜弥は見逃さなかった。
ガードしていた両手を素早く足首に回して、一気にひねる。
少しでも遅れたりミスをすれば、たちまち顔面を踏みつけられる刹那の隙だった。
ブチブチブチィ…!!!
死神のアキレス腱が破壊される音。
悲鳴…あげる暇も与えない。
破壊したアキレス腱をさらに回転し、次は膝をひねる。
グビュン!!
骨と骨の外れた音。
悲鳴…あげる暇も与えない。
起き上がり、すぐさま呼吸器のある胸を踏みつける。
そして顔面―――――両腕でガードされる。
代わりに破壊した左足をもう一度蹴り潰す。
痛みで体がのけぞる。
空いた腕をすぐに掴んで決める。簡単なこと。
ポキン。
(死神のくせにかわいい音で折れるんだな)
これでガードもできない。顔面を思い切り踏みつけた。
二度三度。胴体がピクピク痙攣している。
心臓の辺り――全体重を乗せて踏み潰す。
動かなくなった。
数時間にも及ぶ死闘の幕切れは、30秒にも満たぬ地獄の返礼。
(あんたが教えてくれた。礼を言う)
ラスト。左目の辺りをかかとで踏み潰す。グチュという破壊の音。
そして松浦亜弥は…神を越えた。
再び中国河北省。
福田明日香の口から吐き出た重い言葉が、愛の体を振るえ上がらせていた。
彼女には左目が無い。破壊された左足と右手はもう元には戻らない。
今こうして生きていることが信じられない程の敗北。
そしてその原因となった娘が…。
親友でライバルの松浦亜弥。もう1年以上も顔をあわせていない。
今もきっと何処かで夢を追い続けていると思っていたがまさか…!
「これは忠告だ。最強を目指すなんてやめろ」
「福田さん。私はやめません」
「おい」
「私が倒しますよ。その松浦亜弥って人」
決意。
揺るぐことなき最強を目指す決意。
高橋愛のまっすぐな瞳があまりにまぶしくて福田は顔をしかめた。
「何を考えてやがる。言っただろ無理だって」
「今は無理でも!無理じゃなくなる為に福田さんに弟子入りしたんやが!」
「俺なんかに弟子入りしたってな!最強にはなれねえ!」
「そんなことないわ!だって福田さんはなっちに勝ったって…!」
「逃げたんだ!」
「え?」
「俺はな…安倍なつみが怖くて逃げたんだよ!」
告白。誰にも言えなかった重い告白が福田の口を割って出た。
「1番になることが、全てではない」
かつて福田明日香はマスコミにそうコメントしたのを最後に、格闘技界から姿を消した。
一部潜在的格闘技マニアの間では未だに伝説として語られている。
あれから長い年月が流れた今、福田明日香がついに真相を告白したのである。
「確かに俺は安倍なつみに勝った。だがそれは格闘技を初めてわずか半年の安倍なつみだ」
「…!」
「それから3年後のトーナメントで再び安倍なつみを見た。
自分が天才という呼称で呼ばれることが恥ずかしくなったさ。奴は本物だった」
「そんな…」
「だから逃げた。俺はこの選択を間違いとは思っていない。保田圭を見れば分かるだろ?」
なっちに完全敗北し、人生のすべてを復讐へと捧げた悲痛な女を思い出す。
あまりにも悲惨で鮮烈なその後の人生を。
「ただ…俺は逃げたといっても諦めた訳じゃない。あの後すぐに戦場へ飛んだ。
そこで生死の境を越えた戦闘を繰り返した。すべては最強を目指す為だ!!」
「その夢も…」
「ああ、費えた!松浦という女にすべて潰された!なにもかも無駄に終わったんだよ!」
「まだ終わってえんよ福田さん!その夢は私が引き継ぐから!」
「何度言えば分かる。お前だって逃げ出すさ。安倍なつみから逃げた俺のように!」
「私は逃げん!!安倍なつみも松浦亜弥も……私が倒す!!」
愛は吼えた。
決意の咆哮。逃げない!
絶望の暗闇に堕ちた福田明日香の心に……その決意が小さな光を灯す。
「うぁ…ううぁ…ううぁううううぅぅ……」
夜の帳にうめき声があがる。
かつては栄華を誇ったこの豪邸も、今は静かに潜まりかえっている。
主の女はもう何年間も寝たきりの状態で、現在も毎晩苦しみ続けている。
悪夢に出るその姿―――――――――――――――――――――プロレスの神!
「女帝・中澤裕子。惨めな姿だな」
何者が彼女のベッド脇に立っていた。家族にも従者にも誰一人気付かれず。
闇よりの使者・平家みちよである。つんくの命令…3番目の駒を求めて訪れた。
しかし起き上がることもできない中澤に反応は無い。
「力が欲しいか。中澤裕子よ。」
「ううぅ……」
「我々ならば貴女に与える事が可能だ。飯田圭織を滅ぼす力を!!」
飯田圭織!!
その名を耳にした瞬間、虚ろだった中澤裕子のまぶたが一気に開眼する。物凄い眼力。
(つんく様のおっしゃる通りだ。やはりこの女は最強の殺戮マシーンと成りうる!)
すべてを失った女帝は、目の前に差し出された手をなりふり構わず掴み取った。
この瞬間、かつて最強にして最恐と呼ばれた伝説の女帝・中澤裕子!復活!!
第32話「プロジェクトKの子供達」終わり
次回予告
「生存確率?そんなもんは知らねえ」
愛の説得より目覚めた福田明日香は、とんでもない試練を言い渡す。
最強への道を決意した愛はこの試練を突破できるのか!?
一方その頃、安倍なつみは招かれざる客と相対していた!
「へぇ…生きてたんだ、あんた」
To be continued
いやあ、おもしろいっすね。飯田にぶつける人間俺もあややだと思ってたんでいがいです。
そう言えばエピローグで・・・いやネタバレになるかもなんでやめとこ。
とりあえず辻豆さんのコメントからラストが楽しみでしょうがないっす。
なっち登場!まってましたよ
姐さん、待ってました!でしょ(w
つんくは安倍VS石川って言っていたが個人的には後藤VS石川に期待!
そうなると安倍の相手も変わるねって誰にだろう!?
とりあえず妄想は置いておいて、あいかわらずおもしろです!
作者さんがんばってください。
474 :
ねぇ、名乗って:04/08/30 23:21 ID:grLBz1u/
更新乙です。
姐さん復活てーことはあややは闇にはつかないのかな。
でもやっぱり群れない方があややらしいかも。
∧((())∧
(((〃・∀・)))
= ))) (((
〜((( × )))
= (__/"(__)
( ´D`)oO(さいきん辻豆しゃんかおださないけろ、らいじょううぶかな)
たぶん夏休みの宿題がまだ残ってるんだよ
( T∇T)<‥‥‥
479 :
辻っ子のお豆さん ◆No.NoSexe. :04/09/04 02:08 ID:8U8vSbGR
すいません。アク禁でしばらく書き込みできませんでした。
今日中には更新するつもりです。
ちょっと予定を変更して史上最強ユニット「後浦なつみ」記念番外編を。
わーい、更新予告だー。
>>470 応援ありがとうございます。自分もラストを書くのが楽しみだけど、
この小説は書き終わりたくないという気持ちもあって複雑です。
>>473 安倍・石川・後藤あたりは現時点でも間違いなく最強を争う位置にいるので、
最終的に必ず誰かと誰かは激突することになるはずです。
誰と誰を戦わせるか?
そのマッチメークをあれこれ思案する時間が作者的に一番楽しい時間ですw
それでは予告通り…ハロプロ史上最強ユニット『後松なつみ』記念番外編。
という訳で安倍・松浦に続く番外編第3弾はこの人に決定!後藤真希!
『太陽王』なっち・『死神殺し』あややにも劣らぬ『黄金の娘』ごっちん伝説。いきます!
番外編「黄金時間」
あの頃はよく笑っていた。
振り返るといつでもそばに誰かがいて、頼みもしないのにバカやって。
すべての瞬間が輝いていた気がする。きっと輝いていたんだろう。
いつからかな?あまり笑わなくなったのは。
私は独りになっていた。
私に道を教えてくれたあの人もいない。
一緒にその道を駆け抜けたあいつもいない。
誰もいない。
それでもまだ道は、私の前に何処までも続いている。
「たった一人になっても歩き続けろ」
まるでそう責められているみたいだ。
一体どうしてこの道を歩み始めたのか?
この道の先に何が待っているのか?
とっくに忘れちゃっている。初めから知らなかったのかも。
それでも私が『後藤真希』であり続ける限り、歩み続けなければならない。
「大丈夫。きっと大丈夫」
呪文のように私はくり返す。
この道の先にはきっとまた、あの黄金の時間が待っているはずだから。
また…笑えるはずだから。
13歳、中学1年生。
「よくアクビするね」ってクラスメイトに笑われた。
だって毎日が退屈なんだもん。
プリクラとって、カラオケ行って、メールして、勉強しないで、よく食べてよく寝る。
友達はみんな楽しそうに笑っている。
うらやましいよ。
これが青春時代?なんか私だけ…違うみたい。
「イテテテテ…ギブ!ギブ!ギブだって言ってんじゃん姉貴!!」
……なんてことを弟とプロレスごっこしながら考えてた。
四の字固めを解いて、弟の自由解放宣言に応じる。
「なんちゅう馬鹿力だよ。おーイテ。これでも俺、学校に敵無しだぜ」
「小学校の話でしょ」
「あ、馬鹿にしたぁ!うちの学校ジャイアンみたいな奴がゴロゴロいんだぞ!」
「へ〜そりゃあのび太君も大変だ」
「姉貴は格闘技やるべきだね。絶対トップとれる!俺が保証する!」
「格闘技って…あんたねぇ私も一応女の子なの。興味ないし」
「知らねえのかよ姉貴。今は女子でも凄い人いるんだぞ…えーと」
そういうと弟は昨日の新聞を取ってくるとスポーツ欄を広げてみせた。
『柔道世界選手権!優勝!若干16歳の天才娘!!最年少記録更新』の見出しと写真。
「知?変な名前」
「……姉貴。本当に知らねえんだな」
格闘技の世界で成功する人なんて、子供の頃からすごい練習してきた人だけだよ。
だから今までダラダラ生きてきた私が頂点になんて立てるはずがない。
興味ないし。
そんな風に思っていた。これからもダラダラと生きていくんだろうって。
「姉貴!オーディション応募しておいたから」
「ハァァァ!?」
「雑誌で調べたんだ。女子格闘技では今この市井流ってのが一番流行ってるらしいぜ」
「あんた何勝手に!」
「いいじゃんいいじゃん。試しに一回だけ!ダメならそれで終わりで」
最初は絶対嫌だと断ったが、弟のしつこさに降参。
「一回だけだかんね。どうせ私なんかダメに決まってるし」
「OKOK。がんばれ姉貴!」
他人事だと思ってノンキな奴。
オーディション当日の日曜日、私は電車に揺られ市井流柔術の道場まで行くことに…。
(だいたい柔術って何よ?)
到着してびっくり。意外なほどの多くの女性が応募者として集まっていた。
(ふえ〜本当に流行ってんだ。知らなかった)
(これじゃやっぱり私なんかの出る幕ないね…)
ところが一次審査の体力テストを通過。二次審査の模擬戦テストまでも通過。
あっさりと最終審査にまで進んでしまう。
(…てか楽すぎなんだけど。他の子が手ぇ抜いてんじゃないの?)
最終審査は泊り込み合宿だった。
行く前はめんどくさい〜って思ってた。
でもそこで初めて、市井流の道場主さんが登場し、私の心は揺れる。
(若っ。どうせおっさんかと思ってたのに。私とそんなに変わんなくない?)
市井紗耶香。このとき15歳だったそうだ。
そんな年齢で道場を設立する程のエリート……私とはまるで違う。
特別にその技を披露してくれた。
格闘技なんて野蛮なだけのもんだと思っていた私はショックを受けた。
「きれい…」
洗練された技の数々が「美」と呼ばれる領域にまで磨き抜かれていた。
そしてそれはただ美しいだけでなく、力強さに満ち溢れている!
(これが市井流。これが柔術。これが格闘技…)
多分このとき、めんどくさいと思っていた私は少し本気になったと思う。
「合格者を発表する」
泊り込み合宿の後日。再び呼び出された候補者たち。
市井さんの口から発表された内容は、想像もしていなかった内容だった。
「本当は2,3人とろうと思っていたんだけど。1人だけ飛びぬけてレベルが高い子がいた。
だから今回の合格者は1人。後藤真希」
名前を呼ばれて、すぐに返事もできなかった。
私のことを言っているなんて信じられなかったからだ。
「な、俺の言った通りだろ!」
「別にまだ入門しただけだし」
弟は我がことの様に喜んだ。他の家族もみんな応援してくれた。
合格祝いのささやかなパーティー。
そういえば、私が家族を喜ばせるなんて何時以来だろう?
幼稚園のとき相撲大会で優勝したときくらいか?
(もうちょっとだけ本気、出してみようかな)
久しぶりの焼肉をほおばりながら、私は決めた。
そして入門日前日、美容院で髪の毛を染めてもらう。本気の証。
「金髪!」
家族も、市井流道場の先輩も、みんな驚いていた。
市井さんだけは「おっ気合入ってんじゃん」と褒めてくれた。
何故かそれだけで私はこの髪型が気に入った。
金髪の13歳。格闘技デビュー。
きっとこれが私の黄金時間の始まりだったんだと思う。
「後藤。この技は、ここをこう回すんだ」
「はいっ」
グルンと稽古相手を回して、関節技を教えてくれる市井さん。
私も真似してみる。でもやっぱり上手くいかず二回転もさせてしまう。
なかなか教わった通りにできなくて落ち込んだりもした。
(やっぱり難しいもんだね〜)
この時期、市井流道場に通っていた門下生の一人へのインタビュー記事がある。
そこで彼女は後藤真希について下記の様に評していた。
「私は格闘技の世界に天才なんて存在しないと思っていたんですよ。
そりゃあ多少の向き不向きはありますけど、重要なのは努力。
誰よりも練習した人が強くなれるものだって信じていました。
市井師範も若くして大成したが彼女は影で誰よりも努力していましたし。
子供の頃から10年間、一日も休まず柔術に打ち込んでいたそうですから。
私もあの頃はそれを信じて…強くなりたいと思って柔術に打ち込んだものです。
だけど後藤真希。あの子だけは…思い出すだけで未だに鳥肌が立ちますね。
確か入門して三日でしたっけ。市井師範が関節技への入り方を直々に指導したんですよ。
テコの要領で相手を回して倒す技なのですけどね。これが素人にはなかなかできない。
ところが彼女は一回で会得した、それも誰もできない二回転のおまけ付きで。
その日から師範は彼女に次々と技を教え込んだ。ほとんど付きっきりでね。
通常、市井流の免許皆伝には十年はかかると言われています。
後藤さんはそれをたったの二ヶ月足らずで成してしまったんです。
天才と呼ぶ以外に表現の仕様がないでしょう。
あの当時は才能の違いに嫉妬したりもしましたけどね、今となってはむしろ誇りですよ。
彼女と同じ空間で柔術を学んでいたことがですね。
今の女子格闘技界。夏美会館やハロープロレスが最強を語っているそうですが、
私からしたら、後藤真希も知らずにのん気なもんだと笑っちゃいますね。
選ばれし者…天才という人は間違いなく存在します。
もし今、後藤さんが本気になったら、簡単に頂点をとれると思いますよ。
ええ、できればもう一度見たいですね。あの頃の、輝いていた後藤さんを…」
真希は中学二年生になった。
ある日学校でボクシング部の男子生徒が、真希に頼みごとをしてきた。
「後藤!お前強いんだってな!今度の試合出てくんないか?頼む」
「なによいきなり。嫌に決まってんじゃん」
「そんな事言わないでさぁ。埼玉の学校がなぜか女子を代表にしてきやがったんだ。
そいつが女のくせに半端なく強くてさ。女に負けたら俺らも男の面子が…だから後藤に」
「大丈夫。女の私に頼んでる時点であんた達の面子なんて無いから。それじゃ」
「ピスタチオおごるよ」
「しかたないね(即答)」
決してピスタチオで買収された訳ではなく、強い女子に興味があったんだ。間違いない。
こうして優しい私はボクシング部の埼玉遠征につきあってあげた。
噂の強い女子ってのは一目見てわかった。
天才的美少女。それも女々しいものじゃなく中性的魅力をそなえた美少女だ。
(へぇ〜思ったより楽しめるかも)
まずは軽く練習。
得意の蹴りを使えないという事を差し引いても、同じ中学生相手に負ける気はしなかった。
事実、うちの男子ボクシング部の連中のパンチなんか軽々と見切れる。
(伊達に毎日市井ちゃんと組手してないよ)
体が温まったところで、いよいよ本番の対抗戦。
向こうの学校からは例の天才的美少女がリングに上がった。
それを見て私もリングに上がる。
(なんだか…ちょこっとワクワクしてきたぞ)
1Rのゴングが鳴った。
目の前を風が走った。意識は反応できていなかった。体が勝手に避けていてくれた。
(えっ?何?)
パンッ!!
グラブに快音が走り、思わず腕がのけぞる。ビリビリィときた。
(今のがジャブ?重っ!)
(それに速い…)
天才的美少女のジャブは並みの男子のストレートを越える重さだった。
なめていた真希は完全に面をくらう。
(この子、強い!)
もともとボクシングは素人の真希は、逃げ続けるだけで精一杯だった。
1Rの3分がとても長く感じた。
(いくら蹴れないからって、一発も返せないなんて!)
コーナーで悔しさに唇を噛む。周りで男子が何か言っているがまるで耳に入らなかった。
だが悔しさを感じていたのは真希だけではなかった。
「あの後藤って奴、ボクシングは今日初めてなんだってよ」
天才的美少女が試合前、部活仲間から聞いていた噂。
(そんな初心者相手に…3分も逃げられるなんて)
プライドを大きく傷つけられた。次のラウンドは絶対に倒す!
そう意気込んで天才的美少女はコーナーを立つ。
合わせて真希も立ち上がる。
二人とも顔つきが、試合前とはまるで異なっていた。
闘士と闘士の顔である。
そして第2Rに事件は起こった。
天才的美少女が本気になったのだ。目にも止まらぬコンビネーション。
真希の反射神経をしてもギリギリのラインの攻防。
体中の全神経を最大限に発揮しなければ、一発で決まってしまう。
(負けたくない!)
ヒュッ!
そのとき、鼻先を何かが通過した。
死角を突いた左フック。僅かにかすった程度。それでも脳がグラリと揺れた。
天才的美少女の顔がダブって見えた。真希は恐怖した。
恐怖しただけであって、そうしようと思った訳ではない。体が勝手に動いたのだ。
無意識に右足が天才的美少女の頭を蹴っていた。
当然反則。
相手校の生徒が怒ってリングに上がってきた。
対抗する様にうちの生徒もリングに上がり、もうメチャクチャ。
口が濡れている。私はロープにもたれて腕で顔をぬぐった。紅かった。
(鼻血…)
反対側のコーナーを見た。天才的美少女がロープに腕をかけて私を睨んでいた。
どうやら意識はしっかりしているみたいである。
(私の蹴りで…倒れないのか)
あらためて思った。強い。
試合は私の反則負け。だけど勝負で勝ったという訳でもない。
キックは無いというルールで当たった蹴りだ。
最初からノールールなら当たっていなかったかもしれない。いや彼女なら避ける。
同学年にこれほどの娘がいるなんて…思ってもいなかった。
予感がした。彼女の名前はこれから幾度となく私の前に立ち塞がるであろう。
最強の天才的美少女・吉澤ひとみ。
せっかくの遠征をめちゃくちゃにしたこと、ボクシング部の人達に謝った。
だけど彼らは誰も怒りはしなかった。むしろ喜んで興奮していたようだ。
「あんな凄ぇキックみたことねぇよ!」
「当たり前だ。俺達ボクシング部だぜ」
「後藤!将来お前がチャンピオンになったら俺達応援するから」
愛想笑いを浮かべてその場は切り抜けた。
ほんとうは、笑える気分じゃなかったんだ。
夕暮れの帰り道。
川沿いの堤防を一人歩く。真っ赤な空を見上げると自然に涙がこぼれ落ちる。
(負けちゃった…)
反則負けとはいえ、負けは負け。
負けることがこんなにも悔しいなんて知らなかった。
泣きながら堤防を歩く金髪の女子中学生は、傍から見たらどんな風に映るのだろう。
私の足は自然と市井流道場へと向かっていた。
「いぢいぢゃん!」
市井ちゃんは泣きながら帰ってきた妹弟子の話を、何も言わずに聞いてくれた。
こんなにも彼女に出会えてよかったと思った日はない。
私が泣き止むまで抱きしめてくれて「大丈夫。きっと大丈夫」と繰り返す。
強くなろうと思った。強くなりたいと思った。市井ちゃんは強くなれると言ってくれた。
「今日の敗北を、後藤真希の人生…最初で最後の敗北にしな」
その夜から私は市井ちゃんに対ボクサー用の戦闘方法を教えてもらう。
二週間後、私は吉澤ひとみに「果たし状」を送りつけた。
相手にされないかと思ったら、吉澤は律儀にも時間通りに現れた。
後で聞いた話だが、実はヨッシィーも決着をつけたいと特訓していたらしい。
場所は二人の家のちょうど中間地点に位置する淵公園。
辺鄙な場所にあって、ほとんど誰も使わないから決闘にはうってつけの場所。
うちらの間では通称「プッチ公園」で通っている。
数々の激闘の歴史を造る思い出の場所…プッチ。
「今日はボクシングじゃないからね。こないだみたいに行かないよ」
「悪いけど…ボクシングより喧嘩の方が得意なんだよね」
私、後藤真希と吉澤ひとみはこのプッチ公園で何度も勝負しあった。
いつ闘りあっても、どちらも倒れないし負けを認めないから勝負が終わらない。
「ああ、くっそ。終電だから帰らなきゃ」
「あっ私もだ!よぅし続きは来週の土曜日またここで!」
「望むところだ!逃げんなよ後藤」
「あんたこそね吉澤」
毎回そんな感じ。いつの間にか毎週土曜のプッチ公園は恒例行事と化していた。
その勝負でみつけた自分の弱点や吉澤の技の対策を、市井ちゃんに話し一週間で克服する。
だけど一週間後には吉澤もまた強くなっていて、結局また引き分け。
ヨッスィーとの決闘と、市井ちゃんとの特訓の繰り返し。
そんな毎日だけど私は楽しくてしかたなかった。
やっとみつけた私の青春時代。
「その吉澤ひとみって子、一回会ってみたいね」
市井ちゃんも一回だけプッチ公園に来たことがある。
保護者同伴みたいで恥ずかしかったが、断りきる事ができなかった。
市井ちゃんが来てもヨッスィーは特に文句も言わずいつも通りだった。
手を貸してもらうつもりは無いし、市井ちゃんも手を出すつもりはないだろう。
審判という訳でもなく、ただ二人の喧嘩を遠くで眺めていただけだった。
(最強という字を〜ふたりで書くぞ〜ひとりよりも楽しいぞ〜♪…か)
(真希。いい奴に出会えたな)
市井紗耶香は確認しておきたかったのだ。
話に聞いていた吉澤ひとみという娘が、もし自分が消えた後、真希を任せられる者かを。
そしてその期待は想像を遥かに上回っていた。
天才二人が出会う。あるいはこれも運命の歯車の一部であったのだろうか。
市井紗耶香はその日、吉澤ひとみを自分の道場に誘った。
吉澤はあくまでボクシングが本業、その空いた時間だけならとOKの返事をした。
そしてこの出来事が市井紗耶香にある決意をもたらす。
私とヨッスィーの決闘はその後もプッチ公園で続いた。
ここは相変わらずヒト気がなくて、気兼ねすることがない。
自分たち二人以外では、たまに変な体操をする年配のおばちゃんしか見た事が無い。
あの体操は八極拳だったのかな。変なおばちゃんだ。
だからプッチ公園を使ったのは後藤真希と吉澤ひとみとそのおばちゃんに市井ちゃん。
計4人しかいない。
今はどうなっているのか私は知らない。
帰国してから一度も行っていない。なんとなくあの頃の思い出を汚したくないんだ。
あの黄金時代は……もう遠い昔のことだから。
495 :
ねぇ、名乗って:04/09/04 22:22 ID:clK3Ibpl
age ちゃっていいのかな?
良い話だな〜と重いながら読んでたのにも関わらず、
「変な体操をするおばちゃん」
が一番つぼに嵌まった自分って・・・。○っ○ーファンなのかも知れない。。。
「知?変な名前」
ここが一番受けた俺・・・
即興で書いたっぽいこの外伝の完成度の高さは凄いな・・・
私は15歳になった。
市井流柔術は門下生も増え、全盛期を迎えていた。
入門審査の内容を緩めたこともあるが、市井ちゃんの名が売れたことが大きな原因。
あのプッチ公園の件以来、市井ちゃんは他流派との試合をよく行う様になった。
そしてその全てに勝利を収めた。入門希望者が増えないはずがない。
「私の闘いをよーく見ておけよ」
ことあるごとに市井ちゃんは私にそう言った。
出会った頃とはまるで別人の様に戦い続ける市井ちゃん。
「負けるまで闘うつもりかもな。市井さん」
ヨッスィーが何気なく呟いた一言。
その意味がわかったのは、それが現実となる時だった。
当時『最強』の文字を独占していた女帝・中澤裕子プロデュースの女子格闘技大会。
市井ちゃんは当然のように出場する。私もヨッスィーと一緒に観戦にいった。
最強を目指す女、総勢26名の潰しあい。
市井ちゃんは優勝候補に挙げられていた。
私も優勝すると思っていた。
あの頃の私はまだ市井紗耶香以上に強い人物を見た事がなかったからだ。
だから驚いた。
眩しいくらいに輝きを放つあの太陽の様な女を見た瞬間。
すべてはまるで彼女を中心に回っている様な気がした。
安倍なつみ。
ベスト4はあっさりと決まった。
明らかにこの4人だけ他とレベルが違っていた。
市井紗耶香。安倍なつみ。保田圭。福田明日香。
「ごっちん。あれって体操のおばちゃんじゃね?」
市井と安倍ばかり注目していた真希に、隣の席の吉澤はのんびりと告げた。
見ると確かにプッチ公園で八極拳の体操をしている変なおばちゃんがいた。
「ほんとだ!」
「あの人、保田圭って言うんだ。つーか二十歳かよ」
「嘘でしょ!子供の2,3人いるかと思ったよ〜」
と笑っていたのだが、おばちゃんの闘いぶりにその笑いも何処かへ飛んでいく。
年齢以上にびっくりする強さだったのだ。
(人は見かけによらないね〜)
最後の一人、福田明日香の強さはよく分からなかった。
力を隠しているふしがあり、それがどれくらい隠しているものか真希には読めなかった。
間違いなく言えるのは4人ともメチャクチャ強いということ。
その中でも安倍なつみだけはさらに別格であると真希は感じ取っていた。
準決勝。市井の相手はその安倍だった。
(勝てない)
口には出さなかったが、始まる前から真希は確信していた。
(今日…市井ちゃんは負ける)
「私の闘いをよーく見ておけよ」
市井紗耶香がよく言っていた言葉を思い出す。
真希は見た。
立ち技の攻防。グラウンドの攻防。その手足の動きの一つ一つ。
『最強』を目指すことがどういうことなのか?
市井紗耶香は身をもって真希に教えようとしていたのだ。
安倍なつみの拳で沈みゆく市井紗耶香を見ながら、真希はその想いにようやく気付く。
『勝者!安倍なつみ!!』
結果はわかっていた。だから真希は動揺しなかった。
輝く『勝者』安倍なつみと、惨めな『敗者』市井紗耶香を、ただじっと見つめていた。
「恐い目ぇしてるぜ。ごっちん」
隣で吉澤が呟いた。
怒号の様な歓声に真希の金色の髪が揺れてなびく。
決勝戦は、安倍が保田の八極拳を咄嗟に真似るという仰天の荒技で勝利を収めた。
最強の称号を得た安倍なつみは、太陽の笑みでキラキラ輝いていた。
「最強か…」
その光景を見ながら、珍しくヨッスィーがたそがれていた。
(遠いね。だけど、いつか…)
遥か高みに立つあの女の所まで、私達もいつかきっと!
本当の最強を知ったその日、黄金時代の終焉も近づきだしたのかもしれない。
日々は流れる。
優勝した安倍なつみの夏美会館空手は、瞬く間に勢力を拡大していった。
反対に、圧倒的な敗北を喫した市井紗耶香の市井流柔術はどんどん規模が縮小していく。
また一人、また一人、昔の仲間が去っていくのを見送る。
女子格闘界のニュースは夏美会館やジョンソン飯田のハロープロレスがほぼ独占、
市井流の名を出す者などどこにもいなくなってしまった。
真希は髪型を変えた。
あれだけ好きだった金髪を辞めて黒髪に戻したのだ。
真希特有の決意の表れでもあった。
(市井流の名が再び認められるその日まで、髪は染めない)
「ごっちん。ちょっと話があるんだけど」
そんな中学卒業を間近に控えたある日、吉澤が真希を呼び出した。
いつものプッチ公園。
だけど今日は決闘じゃなく並んでベンチに座る。なんか変な感じ。
「で、話ってなに?ヨッスィー」
「あぁ…結局うちらの決着、まだついてないよな」
「まぁね。でもまだ時間はあるし、同じ高校に入ればもっと会えるし…」
「私さ。高校には行かない」
「またまたぁヨッスィーのジョークはもう聞き飽き…」
「中学出たら、アメリカに行くことに決めたんだ」
「!!……本気?」
「うん」
ヨッスィーは珍しく真面目な顔をしていた。
私は間近でその横顔を見つめた。真面目な顔してればやっぱり天才的美少女。
彼女がこんな顔するってことは、もう止めれないくらい決心してるってことだ。
「私はアメリカでプロボクサーになる!そして世界チャンピオンになる!」
「……ヨッスィー」
「市井さんと安倍なつみのあの闘いを見て、やっぱり最強を目指したいって思ったんだ。
本気で夢を叶えようと思ったら、動くのは早い方がいいし…だから」
「わかるよ。後藤も同じ」
「ほんと!あーよかった!反対されたらどーしよーって思ってたんだぁ!」
いつもの笑顔に戻るヨッスィー。
本当は嫌だった。離れ離れになんてなりたくなかった。止めたかった。
だけど…本気で夢を追う人を止める資格なんて無い。
「よっすぃーはボクシングで、後藤は柔術で、一番になろう!」
「おお」
「そしたらさ、次は日本一賭けて決着つけようね」
「あぁ約束だ」
子供の約束。
一番てっぺんの決勝戦。
チャンピオンになったヨッスィーとチャンピオンになった私が、長い長い決着をつける!
またあの黄金の時間が戻ってくる!
―――――――――この願いは決して叶わないなんて、そのときは知る由も無かった。
中学卒業後、ヨッスィーはすぐに渡米してしまった。
私は普通に地元の高校に通う予定。
またあの退屈な日々に逆戻りするのかと思うと、泣きたくなってきた。
「真希、私とブラジルに行かないか?」
だから市井ちゃんのその誘いは、驚きよりも喜びが大きかったくらいだ。
「今や柔術の本場はブラジルにある。私はブラジルでさらに柔術を学ぼうと思うんだ。
あそこはバーリ・トゥードも盛んで闘いの場所に困ることは無い」
「行くっ!」
私は即答した。あまりの迷いの無さに市井ちゃんが戸惑った程だ。
だってヨッスィーがアメリカに行ったのに、負けてられないって気持ちがあったんだもん。
話が決まったら行動は早い。まず家族に了解を得る。
私の家族は私が市井流に合格したあの日から、いつだって応援してくれる。
本当に感謝してるよ。絶対に一番になってみせるからね。
次に決まってた高校をキャンセル。パスポートもGET!準備万端。
「市井ちゃん。私はブラジルで一番になるまで帰らないよ」
「そりゃあ一生無理かも」
「できるもん!」
「冗談。真希ならなれるさ」
こうして私は市井ちゃんと共に日本を発った。
一路、格闘技最強国ブラジルへ。
当時、ブラジルではロムコーファミリーという有名な一族が幅をきかせていた。
生まれたときから全員がその身に柔術を叩き込まれるという恐ろしい血族である。
真希と市井が最初に訪れた道場にアミーゴという女がいた。
「やるかい?日本人」
彼女達は誰の挑戦も拒まないという。
真希はやりたかったが、市井がそれを遮り代わって自分が挑戦を申し込んだ。
1分もたなかった。組み付いて寝技に持ち込んでマウントを取り関節を決める。
そこには勝利する為の完璧なシステムが完成されていたのだ。
レベルが違いすぎる現実を市井は知る。
「市井ちゃん。次は私が…」
「ダメだ!今のお前では勝てない。昔言っただろう。最初で最後の敗北と…」
初めて吉澤ひとみと闘い反則負けを喫したあの日のことだ。
市井は日本でなっちに負け、そして今ブラジルで負けた。しかしまだ腐ってはいない。
真希という希望がいるからである。真希を最強にする為ならば何度敗北してもいい!
ロムコーファミリーにはこのアミーゴを凌ぐ実力者がまだ何人もいるという。
ブラジルで頂点に立つという話が、どれだけ雲の上のことか身に染みる。
それでも真希ならば…。
「お願いがあります」
市井はアミーゴに頭を下げた。たった今敗北した相手に入門を申し込んだのだ。
敵を倒すにはまず敵の技・ブラジリアン柔術を知らねばならない。
(それでも真希ならば、必ずこいつら全員を越える!)
3年間。
市井と真希はロムコー柔術を学んだ。
その間にロムコーファミリーの恐ろしさもとくと知った。
―――バーリ・トゥード大会3連覇のムロア。
―――海外の異種格闘技大会を荒らしまわるラハカート。
―――400戦無敗のブログー。
その他にも数多くの最強戦士がこの血族から生まれ出ている。
市井と真希はじっと耐えた。ひたすら耐えて、ひたすらにその技を盗んだ。
そして真希が18歳の誕生日……事件は起きた。
「プレゼントがある。今夜6時に○○港三番倉庫に来てくれ」
市井にそう告げられた。
何の疑いもなく喜んで出かけた真希を待ち受けていたものは…。
「んあ〜真っ暗」
「真希」
「市井ちゃん!どこ〜?」
暗闇から市井の声がする。しかし姿は見えない。
「この3年間。よく頑張った。お前は強くなったよ…」
「エヘヘ…褒めるのは出てきてからにしてよ」
「…だけどまだなにか足りない。真希が最強になるには」
「なんか足んない?」
ズザザザザザァ…………
暗闇を蠢く複数の気配を感じ取る。そこに潜むは冷たき殺意。
「市井ちゃんっ!!」
「真希に足りないもの。これが私からの最後のプレゼントだ」
その言葉が終わると共に暗闇の殺意が、一斉に真希に向かって襲い掛かる。
真希は音と気配だけを頼りに逃走を試みるが、敵にはこちらの動きが見えている様だ。
金で雇われたプロの暗殺集団。全員がブラジリアン柔術達人クラスの実力。
先回りをして蹴り倒される。
真希は助けを求めた。しかしその声は届かない。市井は鬼と化していた。
(真希。ただの天才格闘家で終わるか?それとも真の最強へと目覚めるか?)
この3年で、ロムコー一族の下にいて奴らを越えることは不可能と悟った。
だから市井は最後の選択を選んだ。
柔術では勝てない。格闘技の常識はロムコーが完成させてしまっている。
奴らを越えるには常識の枠を外れた方法しかない!
「市井ちゃぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」
恐怖と悲しみに満ちた真希の咆哮が市井の胸を締め付ける。
「生きろ!真希!最強になりたければ生き残れっ!!」
それが最愛の弟子に贈れる精一杯の言葉。
市井の拳が血で滲んでいた。
「姉貴は格闘技やるべきだね。絶対トップとれる!俺が保証する!」
「後藤!将来お前がチャンピオンになったら俺達応援するから」
「今日の敗北を、後藤真希の人生…最初で最後の敗北にしな」
―――――――巡りめく絶望と恐怖の暗闇の中で、思い出す道と言葉たち。
「よっすぃーはボクシングで、後藤は柔術で、一番になろう!」
「おお」
「そしたらさ、次は日本一賭けて決着つけようね」
「あぁ約束だ」
―――――――真希は泣いていた。悲しみがすべてを包んだ。
「生きろ!真希!最強になりたければ生き残れっ!!」
すべてを包んだ。
「大丈夫。きっと大丈夫」
呪文のように私はくり返す。
この道の先にはきっとまた、あの黄金の時間が待っているはずだから。
光が溢れる。
真希の髪の色が鮮やかな金に変色しだした。
暗闇に、突如として出現した光。
ナイトスコープを装着していたプロの暗殺集団は思わず目を背ける。
金髪の後藤真希。その姿はまるであの頃の…黄金の娘。
「……っ!?!?!!」
騒ぎ立てる男達をあざ笑う様にゆっくりと立ち上がる真希。
口元は笑みの形を作っていたが、瞳にはこれまでにない超越した感じが認められる。
…ュッ!
音にもなっていない。
音が鳴るよりも早く、一人の男の手首から先が飛んでいた。
その速さは光。光速の閃光。
常識を逸脱した娘の変化にプロの暗殺集団が、我先と逃げ出す。
すべてが遅い。
金髪の娘が一振りする度、男達の血飛沫と絶叫が響く。
市井は震えながら、ただその光景を見入っていた。
あっという間に自分と金髪の娘以外の全員が、地べたに這いつくばされた。
震える全身を堪えながら、ようやく発した言葉。
「本当に…真希なのか?」
次の瞬間、市井紗耶香の左腕が飛んだ。
ブラジル最強を決めるバーリ・トゥード・トーナメント後。
ロムコーファミリーの一人アミーゴが、海外修行の旅からひさしぶりに帰国した。
今や自分こそが一族最強であるという自身に満ちた顔つき。
だが空港に流れるニュースを見て、彼女の顔つきは一変する。
『ムロア・ラハカート・ブログー敗れる!』
『ロムコーファミリー壊滅!』
『バーリ・トゥード・トーナメント優勝は金髪の日本人』
「なんじゃこりゃぁぁぁ!!!!!」
アミーゴは激怒した。
今度こそ最強の姉達を越えてやろうと、勇んで帰ってきた矢先の事。
「一体、誰がやりやがった!」
ニュースの画面に怒鳴りつける。
そこに映し出されたのは、金色の髪を輝かせた日本人の娘。
(こ、こいつは確かあのときの!)
アミーゴは思い出す。
3年前、自分に秒殺された日本人の横にいた小娘。
信じられない事が起きた。すぐさまアミーゴは今来た空港をUターンする。
「挑戦者の立場が逆になったという訳か。いいだろう!覚悟しておけゴトウマキ!」
最強血族の生き残り・アミーゴ・ロムコー。日本へ!
市井の博打は結果的に成功した。
極限にまで追い込まれた真希は想像以上の覚醒を果たす。
髪が黄金色に変化し光の速度を得る超技を会得。
まるで時間を支配している様な感覚の為「黄金時間」と呼ばれる。
かろうじて一命をとりとめた市井は治療の為、先に日本へと帰国。
ブラジルで最強になるまで帰らないと誓っていた真希は、一人残る。
そしてバーリ・トゥード・トーナメントに出場した真希は驚異的強さで大会を制覇。
「黄金の娘」後藤真希の名はブラジル全土を揺るがす大ニュースとして駆け巡った。
そして真希は日本に帰ってきたのである。
一つの約束と共に。
しかし…運命は彼女に残酷な結末を与える。
植物状態の吉澤ひとみと…その仇・石川梨華の名前。
「いちーちゃん。そいつ、ごとーが殺してもいいよね」
甘えん坊のマイペース少女は、いつしか氷の鬼神と呼ばれる様になっていた。
それでも道は続いている。あの黄金の時代が帰ってくると信じ、進み続ける。
邪魔する者はすべて切り裂いて――――――――――――――――。
「さぁ、派手にいくべ」
私は独りになっていた。
最近はあまり笑っていない。
番外編「黄金時間」終わり
【番外編あとがき】
ごっちんストーリー。
いざ書き始めると予想以上に長くなり、無駄な部分をかなり省略しました。
ブラジル編はとりあえず覚醒とアミーゴだけ描ければいいや、と。
この「黄金時間」。ご存知の通りまだ日本では披露していません。
一番の原因はやはりなっちの「パーフェクト・ピッチ」の存在ですね。
抑制の効かない「黄金時間」を使うときは、ごっちんもそれだけの覚悟を決めた時です。
さて、この番外編を読み終えたあと第6話の吉澤と市井の再会シーンや、第23話の後藤
帰国後のストーリーを読み返すと、また違った視点で楽しめるかもしれません。
このごっちんも本編ではまだあまり活躍していませんが、後半は色々と出番も増える予定
ですので、ご期待ください。
安室→ホイス
華原→ホイラー
grobe→ヒクソン
鈴木→…?
Σ(゚Д゚;)エーッ鈴木亜美これからも出るの?
モームス最大トーナメント第二部みたいでイヤじゃん
父さんはハロプロオンリーの大会がいいよぅ
まさにバーリトゥード。いんじゃね?
3倍ボンや黄金時間は、もうちょっと縛りが厳しい方がインパクトが残ると思いました。
3倍強くなりました、でも速度は3分の1ですとか。
光の速度がでます、でもその間ダメージをうけると3倍とか。
近い将来フリージアでない「あゆみ」が出てきてもいい感じだな。
いろいろな意見、参考にさせてもらいます。
ハロプロ以外の人はこれ以上、自分としても出すつもりはありません。
あ、でも、あと一人だけハロプロに縁の深い人が登場するかも…。
現実世界では7期募集らしいですが…また登場人物を増やさせる気かw
3倍拳には、体への負担が大きく長時間使用が困難という縛りはあります。
対策として時間切れまで逃げ回るとか。ただスピードも3倍の加護から逃げ切るのは難しい。
果たして誰が加護に勝てるのか?それとも誰も勝てないのか?
同じことは後藤にも言えます。黄金時間に関しては弱点らしい弱点がなくほぼ完璧。
誰がこれを破れるのか!?誰も破れず後藤が最強か?今後の見所の一つです。
私事ですが今月来月と忙しく、更新が少し滞るかもしれません。
慌てて中途半端に書くより、質を落とさない様にじっくり書きたいと思います。
(けど最低でも週に1回は維持したい)
完結は絶対にさせますので気長にお待ちください。
更新おつかれさまでした。
このスレも、そろそろi Monaで見るにはキツくなってきますたが…
>>515 テレビゲームじゃないんだから…
520 :
ねえ、名乗った?:04/09/12 18:46:30 ID:vnBM0PFw
辻豆さん、乙です!
ごっつぁんの髪の毛が金色に光った変色していくのには驚きましたw
なんせドラゴンボール世代なもんでw
これからもはらはらドキドキさせてくれるやつお願いします!
いやあ、作者の思惑に嵌まって予定がなかった今日、最初から全部読み直してしまいました。
こうやって読むと最初から細部まで設定決まってたんだな〜って分かりますね。
なんかなっちはもちろん強いんだろうけど、読んでると
神が降りてきた飯田、三倍拳加護、黄金時間後藤が、3強って感じがしますね。
飯田はどうかなあ。
道重にも勝てないと思う・・・いや、ケチをつけるわけじゃなくて、
神が降りてくる前に致命傷を与えればいいわけだから、道重ならブスリ、と。
もちろん降りてきた後は最強クラスだけど、普段は覚醒前の松浦にも劣るってのがなあ・・・。
不意打ちとはいえプロレスの神を手刀一撃で気絶させたなっちが現時点では最強な気がする。
一人だけ未だに底を見せてない感じだし・・・
524 :
516:04/09/13 18:59:19 ID:PTNtlSom
辻豆さん乙です。
煽るつもりも荒らすつもりもありませんが、
最近ちょっと必殺技に魅力が褪せて来てる様に思えて・・・
柴田あゆみの足技フリージア
対藤本戦の、矢口の渾身のヤグ嵐
対安倍戦の、保田のパーフェクトピッチ対策の毒手
などこれまで魅力ある必殺技にドキドキしてきただけに
単純に何倍強くなるとか、突然最強になるとかいうのは
ちょっと拍子抜けでした。
>>524 その最強変化を既存のメンバーがどう攻略していくかが見ものなんじゃん。
とりあえず最強と言っておけば
ソレを攻略した時にその凄さが一層引き立つってもんよ
いずれにしても途中でやいのやいの言うなってとこか。
528 :
516:04/09/14 17:27:57 ID:9efcDTTK
ごめん。もうやめます。
何だろう…急に面白みが減ったような。
例えるならベルセルクの16巻以降…
ベルセルクが今後どうなるかまだ分からないように、
この小説もまだわからんよ。
ま、戦いが始まったらまた盛り上がるっしょ。
いまは登場人物そろえてるところだからね。
最強議論については、作者は口を挟まない様にします。
>>529 530さんの言うとおり、今は大規模なラストバトルへの準備段階です。
戦闘が少ない分面白みには欠けるかもしれませんが、
娘総出演の最終決戦への期待が膨らむ様にがんばります。
あと、ベルセルクは全巻揃えている大好きな漫画です。
第33話「野生」
時計の針は10を回っていた。
六本木の高層ホテル最上階にあるバーは適度に客も入っている。
他の客からは見えない様囲いのあるテーブルに、女は一人で座っていた。
片側の壁全体がガラス張りの窓になっており一面に都会の夜景が広がっている。
ウイスキーの入ったグラスを、女は両手でクルクル回している。
「遅いなぁ」
夜景に目を落としながら女は呟いた。
彼氏の到着を待つ女という雰囲気ではない。どこか異質な空気を秘めた女であった。
だがそれは恐さではない、むしろ女からは暖かい空気が醸し出されている。
ではその異質さの正体は何かと問われても、簡単に答えることはできない。
ただそこに座っているだけで何故か彼女がその場の中心になってしまう様なイメージだ。
女の名は安倍なつみであった。
人を待っている。
誘いは向こうからあった。場所を指定したのはなっちの方だ。
向こうが指定した場所では会いたくない相手だった。
たとえ罠があって襲われてもそれを跳ね除ける自信はあった。
けれど油断はしない。これから会う相手はそれほどの執念を秘めた女だからだ。
約束の時間から15分が過ぎた頃、一人の女がなっちのテーブルに近寄ってきた。
「お待たせ」
「へぇ…生きてたんだ、あんた」
遅れてきた相手は保田圭であった。
かつて安倍に完全敗北を喫し、格闘技界を追われ復讐の為だけに生きてきた。
そして昨年のトーナメントの後、なっちを中心とした女子格闘技界に挑んできた。
毒手という脅威をもってなっちと直接対戦するも、以前以上の差をもって半殺しにあう。
本当に死んでもおかしくない程コテンパンに叩きのめされた。
だから安倍は「生きていたんだ」と皮肉を込めて言ったのだ。
「おかげさまで」
「それで今日は何の用?また新しい復讐のネタでも披露してくれるの?」
まるでスキのない目つきで安倍は保田をにらめ付ける。
保田は卑屈な笑みを浮かべながら、テーブルの向かいの席に腰を下ろした。
「まさか。私がお前に勝てないことはよーく分かったわよ」
微妙な言い回しであった。
自分以外の…自分の意思を継ぐ者ならば…お前を倒せると。
店員が保田の分のグラスを置きウイスキーを注ぐ。
その間、二人は無言であった。空気だけが重い会話を交わしている。
店員が去ったあと保田は注がれたウイスキーを持ち上げた。
「とりあえず、乾杯しましょうか」
「あんたの右手と乾杯する気なんかねえよ」
強い口調でなっちは応えた。
保田圭の右手…触れただけで死に至る毒手。
蛇のような笑みを浮かべると、保田はウイスキーを一気に喉へ流し込んだ。
氷をカランと鳴らし空いたグラスをテーブルに置く。
「いい酒だ。たまにはこういう所で飲むのも悪くないわねぇ」
「とっとと用件を言え」
「まぁそうカリカリしないで。今日は忠告に来ただけよ」
「忠告?」
店員が新しいグラスとウイスキーを持って、保田の空いたグラスと交換する。
やはりその間、二人の間には張り詰めた沈黙が流れる。
「そうよ。寺田は覚えているかしら。闇のコロシアムを仕切っていた男」
「ああ、殴り損ねた」
「あの寺田はただの影武者。真の闇の支配者つんくは未だ健在なの」
「影武者だか何だか知らないけど、なっちには関係ない」
「そうはいかない。どうやら最近つんくがまた影で動き出しているらしいのよ。
ターゲットはもちろんあなた、安倍なつみを中心とした表の女子格闘界」
「ふーん」
「最強の座を手にする為、色んな奴を手駒に集めているって噂よ」
つんくと闇の軍団。
興味がない訳ではなかったが、とりたてて騒ぐことでも無いとなっちは思った。
敵がどんなことをしようが負ける気はこれっぽっちも無いからだ。
それより驚くのは、あの保田圭が自分にそんな情報を流すということ。
相手が相手だけに気持ち悪い。
「わざわざのご忠告ありがと。で、何を企んでいるの?」
「企むなんて心外ねぇ。私はつんくなんかに安倍なつみを獲られたくないだけよ」
保田は決して復讐を忘れた訳ではない。
その強烈な目つきが、それを如実に表していた。
「安倍なつみを倒すのは、私の意志を継ぐ者達ということ」
保田の弟子。
コロシアムでの5vs5戦で鮮烈な印象を残した者達。
田中れいな。道重さゆみ。そして亀井絵里。
いずれもが最強の可能性を秘めた恐るべき少女達であった。
だがなっちにとって、その3人以上に気になる存在が保田の元にいる。
「美貴は…元気?」
藤本美貴。かつて夏美会館でなっちの右腕として共に戦った仲間だ。
だが彼女はなっちと共にいることより、なっちを倒す道を選択し保田の元へと去った。
安倍なつみが会いたくも無い保田の誘いを受けたのは、この藤本が原因である。
自分の元を去った藤本の様子を気にならないはずがなかった。
すると保田は表情を変えた。
その無表情には怯えすら伺える。保田が初めて見せる顔だった。
「あれは修羅だ」
「天才がプライドを捨てた。年下の田中や道重たちにボロボロになるまでやられ、
血反吐を吐いて、泥にまみれてでも、ただ強くなろうとしている」
夏美会館にいた頃の藤本からは、想像もできない内容を保田は語る。
持って生まれた才能だけであれほどの実力を持った女が―――――極限までの努力を!
ゾクリ。
なっちは自分の背筋に冷たい感覚が走るのを感じる。
これはずいぶんと長い間忘れていた感覚だ。人が恐怖と呼ぶもの。
ほんの一瞬だが、なっちは自分がその感情をもったことに驚く。
―――藤本美貴はもしかしたら自分より格闘技の才能があるかもしれない。
―――その藤本美貴がもしかしたら自分よりも耐え難い努力をしているかもしれない。
この二点がなっちに恐怖という感情を思い出させたのだ。
負けるつもりはない。
だが恐い。そして「恐い」という感覚と同時にもう一つ浮かび上がってきた感情がある。
自分を越えるかもしれない程の敵とギリギリの戦いができるかもしれないという「喜び」
「恐怖」と「歓喜」という相反する感情が、なっちの体を震わせていた。
ピシィ…!
なっちの掴んでいたグラスが真っ二つに割れる。
乱暴な力で粉々に割った訳ではない。
グラスはその形を保ったまま、上下水平に引き剥がしたのだ。神業の領域。
「美貴に伝えておけ。殺しても恨むなって」
なっちの瞳孔が開いていた。保田は引きつった笑みで応える。
「それはきっと喜ぶわね」
……
暗闇の中に高橋愛はいた。
(ここは何処だろう?)
上下左右を見渡しても視界に移るのは一面の暗闇。
そのまま立ち尽くしていると前方に明かりが見えた。
(安倍さん!)
出現した光は安倍なつみであった。
その周りにさらに複数の光が生まれ出る。
(飯田さん。矢口さん。藤本さん。それに…辻ちゃん)
格闘技において最強と呼ばれる面々が顔を並べている。
すると今度は後ろから新しい三つの光が自分を追い抜いて、光の集団に加わる。
(あの3人は…!亀井!田中!道重!)
最強に相応しきその面々は、愛を置いてさらに遠くへ進みだそうとしている。
「待って!」
愛は叫んだ。しかし誰も自分に気付かない。
追いかけてもちっとも近づけない。何かにつまづいて愛は転んだ。
最強達の光は遥か遠くへ行ってしまった。自分だけを残して。
すると隣から声が聞こえてきた。あいつの声…。
「いつまでそうしてるつもり?」
「…亜弥?」
「私は行くぜ。あいつら全員ぶったおす」
それだけ言い残すと、巨大な光は物凄いスピードで闇の奥へと消え去った。
「待って!亜弥っ!!」
バラバラバラバラバラバラバラバラバラバラバラバラ!!!!
(っ!!)
跳ね起きた愛は耳を裂く轟音に我を忘れる。
体にかかった毛布。自分が眠っていたことを悟る。
(今のは夢?ここは何処?)
「やっと起きたか」
前方の座席から見覚えのある顔が現れた。
福田明日香。今は自分の師匠である。
その顔を見てようやく意識が戻り始めた。
修行のために中国を出たのだ。飛行機で何処かへ移動して、空港からバスに乗って…
そこから記憶がない。どうやらバスで眠ってしまった様だ。
だけど今自分が座っている場所は、どう見てもバスではない。
何か乗り物ではあるみたいだが明らかに狭い。それにさっきから響き続けるこの轟音。
ハッと気付いた愛は窓の外を覗き込む。
一面に空が見えた。遥か下に大森林が見えた。
「ヘリコプター!?」
愛が大声をあげると、福田はいつものムッツリとした顔で応えた。
「ああ。アフリカ大陸の真ん中らへん。上空3000mだ」
窓の外には見渡す限りの熱帯雨林(ジャングル)が広がっている。
初めて目にする途方も無い景色に、愛はしばしの間疑問を忘れ見とれてしまっていた。
「ソロソロデス」
「OK」
地元民らしきヘリの運転手が告げると、福田はまた愛の方を見る。
「この辺りは人間も踏み込めないジャングルの秘境だ」
「へぇ〜〜〜」
「滅多にお目にかかれない野生の獣がゴロゴロしてるだろうよ」
福田さんが何故こんな話をしているのか分からなかった。
どうしてわざわざこんな場所に連れてきたのかも分からない。
すると福田さんはおもむろに何かを取り出し、私にくれた。
「これって…もしかして」
「パラシュートだ」
全身から嫌な汗が流れ出してきた。
(まさか…まさか…まさか?)
「お前、ここから降りろ」
福田さんは表情一つ変えず、そう告げた。
辻 ― 加護
飯田 ― 中澤
後藤 ― 石川
高橋 ― 松浦
安倍 ― 藤本
って感じですかね?
バキか
>>541 今更、探せばモチーフはいくらでも見つけられよう
格闘モノの王道に奇策や妙案を練り込んでく感じ
>>540 因縁の対決を素直に行くか、
あえてそれをしない面白さをだすか。
どちらにしても楽しみだな。
トーナメントだけはイヤだな
いろいろわがまま押し付けるのもどうだろうね。
でも最初のエピローグ(なんか変な感じだな)からするとトーナメントの可能性は高いよね。
いや、この戦いの後にまだ他の戦いもあるかもしれんのだけど。
まあ、黙ってまとうやないの?
全員が新たなステージに集まったって感じだね。
あとは主人公が昇りつめるのを待つのみ。
若干、エピローグからすると亀井の能力に不安をおぼえるけど…
その辺も考えてあるのかな?
森の賢人キター
賢人てorz
賢者だよ
「じょ、冗談やろ?」
「半年で地上最強になろうと思ったら、こういう方法しかねえんだよ」
何の武器も無い。
己の手足だけを武器にこのジャングルに飛び込めと……正気の沙汰ではない。
「この修行の生存確率は?」
「生存確率?そんなもんは知らねえ」
「当たり前や!死ぬに決まってるが!」
叫んでいた。体が震えていた。無茶苦茶だ。
待つのは間違いなき…死。
こんなこと普通の人が考える内容じゃない。
やっぱり間違いだった。こんな頭のイカレタ人に弟子入りしたのは…。
福田がヘリの扉を開く。
もの凄い突風がヘリの内部に吹き荒れる。
愛は子供の様に涙を流して後ずさった。
「どうした?行かねえのか?地上最強になりてぇんだろ」
「い、いや…」
「何を言ってやがる。絶対に諦めないんじゃなかったのか?」
「だっ…だって、こんな…」
真っ暗だった。もう何も考えられなかった。そのとき…声が聞こえた。
(私は行くぜ)
怯えきった愛を見て、福田明日香は内心ほくそ笑む。
これは初めから高橋愛に地上最強の夢を諦めさせる為の狂言でしかなかったのだ。
(絶対的な死、不可能な内容を突きつければ諦めざるをえない)
(高橋の武術家としての才は、必ずこれからの格闘技界の糧となる)
(それを人間離れした怪物達との争いで潰すのはあまりに惜しい)
(地上最強なんてくだらない幻想にとらわれず、自分に相応しい道を選ぶべきなんだ)
(ジブンのみちを…)
ヒュン!
風が吹いた。
福田がヘリの扉を閉めようとしたそのときだ。中から外へと向けて…
一陣の風が飛び出した。
「なっ!!!!!」
福田が目を見開く。信じられない出来事。
「バカヤロオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!」
小さな粒が広大すぎる熱帯雨林へと落ちてゆく。
福田の叫びはもはや風に届かない。
(私は行くぜ)
愛の耳にはその声だけが響き続けていた。
パラシュートが開いたのは地上ギリギリの高度。
3000mの勢いはそう簡単に緩むものではなく、木々の枝がクッションとなった。
身軽な愛でなければここで死んでいたかもしれない。
「プハーッ!!あー怖!!」
人類未踏のジャングルに高橋愛はたった一人で到達した。
まず最初に思った感想。
(暗い)
巨大な枝葉が完全に太陽を遮っており、昼間だというのに闇夜の様な空間。
そして次に思った感想。
(臭い)
腐った肉の匂い。濃い原始植物の匂い。血の匂い。色んな匂いが混ざり合っている。
呼吸を落ち着かせると、ゆっくり辺りを伺いながら愛は立ち上がる。
(囲まれている……!一匹、二匹、もっとたくさん…)
そしてすでに自分が何かに囲まれていることを悟る。
八方から流れてくる獣の呼吸音。
「嘘やろ。いきなり!?」
愛はいつでも戦闘態勢に入れる様、神経を張り巡らせる。
木々と茂みの隙間に一瞬、獣の姿が見える。
(あれって…ハイエナってやつ?)
初めて目にする野生動物の姿に愛の緊張は高まる。
迷う必要は無い。この空間に味方はいない。向かい来るすべてが敵だ!
いつ飛び掛ってきてもいいように構えるが、一向にその気配がない。
(もしかして…待ってる気?)
自らは危険を冒さず。別の動物が愛を襲ったスキに確実に捕らえる。
なんてハイエナらしいんだと愛は思った。
同時にそんな奴らの相手なんてしてられるか!とも思った。
(逃げる)
考えが決まったら行動は早い方がいい。
トンと勢いをつけて愛は走りだした。すかさず周りの気配も付いてくる。
スピードに自信がある愛だったが足では勝てないとすぐにわかった。
人間とは根本的な造りが違っているらしい。
(足は負けても人間には知恵があるんやよ〜)
ピョンとフェイントを掛けた。
そのまま木の枝を掴み、器用に大木の上へと登ってゆく。
「へっへ〜。登ってこれんやろ〜」
ヌルッ。
悔しがるハイエナを見てやろうと下を向いたときだった。
掴んでいた枝が突然ヌルルと動き出した。まるでヘビのように……。
(ヘビのよう…)
「うっぎぃゃああああああああああああああああああああああああ!!!!!」
今までの人生でおそらく最高最大の悲鳴だったろう。
体長5mはあるような巨大なヘビが愛を見て笑っていたのだ。
お尻から地面に落ちた。
痛みとかもう関係なかった。とにかく逃げる。何にも考えられない。
逃げる愛を大蛇が追う。少し離れてハイエナ達が追う。
「もーやだやだやだやだやだやだやだやだ!!!!!」
やがて知る。
逃げたって逃げ場なんて何処にも無いこと。
動けば動くほど…新しい獣のテリトリーに踏み込むだけだってこと。
「わっぁ!!」
黒い塊にぶつかって、愛は前方へ転がった。
「うぅ〜なんや!!」
黒い塊に鋭い牙が生えていた。
牙は美味そうな獲物を見つけた喜びに猛っているようであった。
(ふぇ?ちょ…ちょっとぉ〜冗談やめてや)
肉食獣・クロヒョウ。
嘘偽り無い、待つなんて悠長なことは無い、目の前の獲物を噛み喰らう本物の野獣。
「ガウルルルルウルルルルルルル…」
恐怖という次元を超えた目の前の映像が、愛にはまるで映画のように写った。
だけどそれは映画じゃない。生身の野生・生身の恐怖・生身の死である。
すると、追ってきた大蛇が目の前のクロヒョウに巻き付いた。
スキを付かれたクロヒョウは爪と牙で大蛇に反撃する。
ハイエナどもはシメシメと遠巻きでこれを眺めている。
これが本物の野生動物同士の激突。想像を絶するパワーと迫力。
あまりの恐怖で完全に腰の抜けた愛は、逃げることすら忘れ見入っていた。
どちらが自分を食べるかで争っているのである。
ルールも栄光も何も無い。
『食うか食われるか?』
ただそれだけの戦闘。あまりに原始的で。あまりに野性的で。あまりに…
「…すごい」
声に出して、愛は気付いた。
(何言ってるんや!逃げるなら今しかないが!)
起き上がると愛は迷わず上に跳んだ。
木の上ならばクロヒョウもハイエナを届かないと思ったからだ。
愛が枝に登ったときであった。地面が真っ赤に染まった。
ギュチュグチュグュ…!!!
クロヒョウの牙が大蛇を噛み千切った音だ。
勝者は決まった。クロヒョウが大蛇を喰う。情け容赦があるはずない。
「ガグルウルルルルッルウッル…」
味が御気に召さないのか、すぐにクロヒョウは愛に視線を移した。
筋肉が引き締まっている割にプリンとした愛の体が、たまらなく美味そうに見えるらしい。
ハイエナどもはさっそくクロヒョウの残した大蛇の肉を漁っていた。
あれが数分後の自分の姿かもしれない…。
そんな不吉な考えを吹き飛ばすように愛は首を振る。
(やっぱりあいつら登ってこれん!下に落ちなきゃええんや!)
身軽さには自信がある。さっきのヘビみたいな失敗が無い限り落ちはしない。
ドドォォン!
「うわああっ!!」
大木が揺れて落ちそうになった。
両腕で幹にしがみ付いてなんとか事なきを得る。
下を見るとクロヒョウが木に体当たりをしていた。何が何でも愛を喰う気らしい。
(冗談じゃないわ!喰われてたまるかぁ!)
愛はバッと隣の木に飛び移った。さらに次の木へ、また次へ。
下からでは回り道になる様に考えながら逃げる。もうヘマはしない。
そして体当たりなんかじゃビクともしそうにない巨大な木を見つけ、愛はそこで止まった。
物凄く大きい木なので枝と幹の隙間に休めるスペースがある。
「ここなら大丈夫やろ」
木の下でクロヒョウは悔しそうに唸っていた。
根競べになると思っていたが、クロヒョウは意外にもあっさり視線を変える。
(あれ?)
しかしそこで愛は嫌なものを見てしまう。
クロヒョウのすぐそばでサルの赤ちゃんが啼いていたのだ。
赤ちゃんザルに逃げ場は無い。愛の身代わりとなりクロヒョウに喰われるしかなかった。
(……何を考えてるんや、愛)
(これはチャンスやろ。せっかく自分の身代わりが現れたんやよ)
(今のうちにもっと遠くへ逃げなあかんて)
喰うか喰われるかの世界。
利用できるものはすべて利用しなければ…生き残ることなんできない。
どうして迷う必要がある。当たり前だ。これが当たり前なんだ。
(逃げ…)
「キキィーーーーーーー!!!」
踏み出そうとしたそのとき、赤ちゃんザルの鳴き声が耳を通過した。
クロヒョウが獰猛な牙を剥き出していた。
「うわああーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」
自分でもわからない。吼えた。
気がついたらクロヒョウの首根っこ目掛けて蹴り込んでいた。
感触がヒトのそれと違う。巨大な筋肉の塊。
クロヒョウは何のダメージも無さ気に、またこちらへ獰猛な牙を剥き出した。
自ら降りてくるなんて馬鹿な奴だとでも思っているに違いない。
愛は赤ちゃんザルが逃げ出すのを視界の隅に確認する。
自分にもう逃げ場は無い。
本物の肉食野生獣とわずか3mの距離で向き合っている。愛は覚悟した。
やるしかない!
クロヒョウは木に登れますよ。
映画で高橋は黒豹やってたなぁ〜
そこにさりげなくからめるなんてエクセレント!
ガイア出ないですよねw
何で猛獣が恐いんだろう…
人間を何十メートルも吹っ飛ばす吉澤や辻に比べたら豹なんて子猫やん…
560 :
ねぇ、名乗って:04/09/20 16:37:58 ID:ylaq7Xyy
>>559 吉澤や辻に負けても死にはしない
猛獣に負けたら死ぬ
>>557 カレーの苦手なインド人。木登りの苦手なクロヒョウ。
確かに辻たちは殺しはしないもんね。
ところで黒豹って木登りできるっても、人間(特にここでの高橋)ほど上れないんじゃないの?
>>562 確かに人間ほどじゃないと思うが
獲物をくわえて木に登ると聞いたことがある。
>>560 高橋は猛獣に負けるレベルじゃない。
例えるなら亀仙人にびびるナッパ。
豹は木の上で暮らすよ
ハイエナが居るのはジャングルじゃなく草原じゃね
【クロヒョウの件】
未知のジャングルに生息し、愛と戦うことになるこのクロヒョウは、
通常知られているクロヒョウの生態とは異なり、その体格は一回り大きい。
木に登るといった身軽さよりも、パワー重視に進化した種である。
……という設定でお願いします。
では、更新いきます。
クロヒョウが飛び掛ってきた。
その牙、その爪、一刺しが致命傷になる。
勝機があるとすれば最初の交わりしかなかった。
愛はこっそり掴んでいた土の塊を、クロヒョウの顔目掛けて投げつけた。
ほんの一瞬ではあるが獣がひるむ…と同時に愛は側転の要領で前方へ飛び込んだ。
馬乗りの要領。両足でクロヒョウの胴体を挟み込み、両腕を首に回す。
そのまま一気に締め落とす!
失敗は許されない。
この腕と足が解かれたとき…それは愛が食い殺されるときである。
クロヒョウは大声で吼えながら暴れだした。
体を上下左右に揺らして愛を振り落とそうとする。
(絶対に離すもんかぁ!!)
愛は全身の力をこれ以上にないくらい振り絞った。
そもそもこの動物に首絞めが効くのかどうかが分からなかった。
頭と胴を繋ぐ首と思われる部分の太さが、人間のそれとは根本的に異なっているのだ。
ゴツイ丸太を締めている様な感覚である。
それでも愛には他に術が無い。
効こうが効くまいが、締め続けるしかないのである。
ドドンッ!!
愛は気を失いそうになった。背中にとんでもない衝撃が走る。
なんだと思って振り向くと太い幹が見えた。
クロヒョウが背中を自分から木にぶつけていったのだ。
間で挟まれた愛のダメージは半端じゃない。
(うぅ、ヤバ…)
二度目の体当たり。胸と背中をズドンと潰す衝撃。
あばらが何本かいってしまったかもしれない。吐き気がする。
次(三回目)はもう無理…。
愛は感じた。このまま締め続けていても先に音を上げるのは自分だと。
ならば試すか?試すしかない。
クロヒョウが木に体当たりした瞬間、足をバッと離して体をひねった。
獣は直接体当たりのダメージを己に受ける。
コオォと呼吸を吐いた瞬間に腕と足を移行させる。
足の力で首を絞めて、手でクロヒョウの後ろ足を横にズラしてひっくり返した。
『裏獅花』
闇の武術として受け継がれてきた高橋流柔術が今、初めて野生の獣に披露される。
愛が下となり、クロヒョウが上で仰向けにもがいている。
物凄い力で四足を振って暴れているが、この体勢では愛に牙も爪も届きはしない。
「グガゴオオオオオオォォォォォコオオオオオオオオオオォォォォ…」
おかしな吼え方。効いている。
腕の力では締め切れなかったが、足の力ならばクロヒョウの首を決められる。
小さな希望が愛に勇気と力が湧きおこす。
ビクビクッと痙攣を始める獣。
さらに全力の力を込める愛。
やがて甲高い悲鳴の様な咆哮が天に上がる。
そいつを最後にクロヒョウは動かなくなった。
高橋流柔術が野生動物に通用した。
クロヒョウとの死闘を制した人間・高橋愛はすぐにその場を離れた。
予想どおり気絶したクロヒョウに数匹のハイエナが群がりだす。
本当に恐いのはあいつらかもしれない、と愛は思った。
「ガハッ」
木の根元に吐血する。
やはりあの体当たりが効いていたらしい。
戦闘中は気付く余裕もなかったが、わき腹がかなり痛む。
あのトーナメント…辻希美との戦いで傷めたのと同じ場所だ。
怪我は一度するとクセになるという。
「まいったわぁ…本気で泣きそや」
このジャングルに舞い降りて、まだ一時間も経っていない。
それでこの有様である。
上空から見た光景では東西南北どちらにもジャングルの果てが見えなかった。
アフリカのジャングルが一体どれだけ広いのか見当もつかない。
抜け出すには何十日かかることだろう?
いや、それ以前に今日一日を生き延びられるかどうかが問題だ。
痛む脇腹を押さえながら愛は歯を噛み締め涙ぐんだ。
今更ながらあのクロヒョウの恐怖が全身を襲ってきたのだ。
いくら強いといっても愛は女の子である。
無数の凶暴な猛獣が生息するこのジャングルにたった一人で…怖くないはずがない。
しかし真の恐怖はこれからが本番。
ジャングルに、一筋の明かりも存在しない夜が訪れる。
不思議な感覚とともに中澤裕子は目を覚ました。
自分の手足が自分じゃないような、感じたことの無い力が溢れ出ている。
(うちはどないしたんや?)
灰色の室内で…記憶をさぐる。
すると一人の女性が入ってきた。その顔にかすかな見覚えがある。
「目が覚めたか」
女は平家みちよと名乗った。
そうだ、この平家という女の誘いに自分は乗ったのだ。
「ここどこ?」
「我がマスターつんく様の所有する太平洋の孤島。通称MM島と呼ばれている」
「…怪我ぁ治っとるなぁ」
「ええ。我々は公にされていない法外な治療の術を有している。
再起不能と呼ばれた貴女でも、もう一度戦場へ送ることが可能なんだ」
「何が目的や?」
「それはこれから、直接つんく様に聞いてくれ。さぁこっちだ」
平家は中澤を部屋の外に呼ぶ。
ふと中澤は自分が眠っていた機械が隣にもう一台あることに気付く。
緑のガラス内に、まだあどけなさの残る娘が眠っていた。
「ちょっと誰この子?」
「加護亜依。貴女と同じ特別な者だ」
特別な者?
それがどういう意味なのか中澤は分からなかった。考えたくもなかった。
さっきからズキズキと頭痛が続いていて、あまり深い考えは避けたいと思った。
エレベータをかなり昇り、ガラス張りの廊下にさしかかった所で奇妙な光景を見た。
まだ小学生か中学生か?
年端もいかない少女たちが物凄い格闘技トレーニングを取り組んでいる光景だ。
「ちょっと…なんやこれは?」
「プロジェクトKだ。つんく様の目的・最強の娘を造る計画の一つ。」
確かに…本当に頂点を目指す者ならば幼い頃から打ち込む方が良い。
だがこのレベルは、中澤の常識の範疇をはるかに凌駕している。
将来の最強ではなく。子供である今すぐにでも最強を獲ろうかというレベル。
「さぁ、行くぞ。つんく様がお待ちだ」
平家に言われるがまま着いて行く中澤。
けして怯えて従っている訳ではない。ただ今はまだ逆らう理由が無いだけのこと。
そして女帝・中澤裕子がついに闇の主・つんくと対面する。
「よう来たのぅ中澤裕子。歓迎するで」
陽気な関西の兄ちゃんという感想を中澤はもった。
のん気な挨拶を交わす気はなかった彼女はすぐにさっきの質問を繰り返す。
「何が目的や?」
「平家が言うてなかったか?最強の娘を造ることや」
「その為にあんな小さな子供らをこんな島に閉じ込めとるん?」
「ああ」
「…気に食わないね」
さっきからタメ口の中澤に平家は切れかけたが、当のつんくが黙ってそれを制す。
むしろ何処か嬉しそうにしている。
「気に食わないが……戦える体へと治療してくれたことは感謝しとる」
「照れるで。気にせんでええよ。俺は別にあんたを部下にしたいとか思てへん」
「ふぅん」
「初めから女帝を従えられるなんて思とらん。あんたは自分のやりたい様にすればええ。
それがこっちのタメにもなるゆうこっちゃ」
「…なるほど。うちに飯田圭織を倒させようってこと」
「察しがええな」
飯田圭織。
その名を口にした中澤裕子の体温が、数度上がった気がする。
「心配せんでも…あの女はうちがぶっ潰す」
「頼もしいが、今の中澤裕子じゃあプロレスの神様には勝てへん。自分が一番わかるやろ」
プロレスの神様の恐ろしさは誰より一番中澤がよく知っている。
認めたくは無いが勝てない。
つんくはそれを察したか、ニヤニヤと笑いながら妙なカプセルのクスリを取り出した。
「これを常時服用すれば、限界を超えた力を会得することができるんや。
ただし副作用として徐々に精神が毒されてゆくらしいが…」
中澤は頭痛の原因と肉体復活の原因を悟った。
自分はすでにそのクスリを少なからず飲まされているのだ。
その証拠に、数年の寝たきり後とは思えない体力の充実を感じる。
「ここで育てている娘達には皆、これを服用している」
平家が語る。『魔のクスリ・AFU』おそらくは平家自身も服用しているのであろう。
あの少女達の常識外れのレベルもこれで説明がつく。
「精神崩壊の代わりに人間離れした強さを手に入れられるってこと」
「せや。怖いか?」
「望む所だ。元より再起不能の身。今さらそんなもん屁でもあらへんわ」
「ククク…女帝のあんたならば確実に飯田を越える。俺が保証したる」
(悪魔との契約…卑怯やとは思わへんで)
中澤裕子には自身があった。己がクスリごときで自我を失わない自信である。
つんくの誘いは利用するだけ。あくまで自我を保ったままで最強になる。
この飯田圭織への怒りが失われるはずがない。
(再び最強の座につく為ならば悪魔でも利用したる!)
こうして闇の主つんくと女帝中澤裕子の契約は成立した。
『不死人形』石川梨華、『三倍拳』加護亜依に続く三番目の怪物が誕生。
表の格闘技界を倒すだけのメンバーが揃ったのである。
平家が中澤を連れて外へ出たあと、もう一人の側近アヤカにつんくは告げる。
「驚いたな。中澤裕子の意識がこれほどはっきりしとるとは…」
「前もってAFUは注入しておいたはずなのですが」
「腐っても女帝か。厄介やのぅ。アヤカ、中澤裕子へのAFUの濃度を高めておけ」
「これ以上は人体への影響が危険レベルに達しますが…」
「構わんさ。どうせ奴は対飯田用の捨て駒にすぎん」
「…本命は石川梨華?それとも加護亜依ですか?」
「クククククク……」
「つんく様?」
「アヤカ。命が惜しければ余計な詮索はせんことや」
「も、申し訳ありません」
つんくの笑みをアヤカは不気味に思った。
もしかするとマスターは、自分や平家の想像も及ばぬ何かを企んでいるのかもしれない。
「まぁいい。役者は揃った。ほな、宣戦布告にでも行こうやないか」
「宣戦布告ですか?どちらへ?」
「決まっとる、安倍なつみと飯田圭織や。この二人が動けば女子格闘技界は全部動く。
おっと、それから同行者をKより二名程選抜しとけ。そろそろ奴らにお披露目や」
プロジェクトKから2名を選抜。いよいよあの子達が地上に…
あの子供達が表舞台に立てば、間違いなく今の格闘技界の常識が覆る。
時代が動き出す。数歩先で何が起こるかもわからない世界へと。
第33話「野生」終わり
次回予告
「そや。今日は宣戦布告に来た。光と闇の最終決戦や」
つんくの宣言により、夏美会館が、ハロープロレスが、女子格闘界全体が、動き出す。
いよいよ明かされる衝撃の最終決戦ルール。
「考えたもんね。トーナメントではどうあがいてもなっちには勝てないから…」
「逆や。お前等が闇の怪物に勝てるチャンスを与える為の、温情に満ちたルールやで」
一方、激動に蠢く時代とは遥か外の世界で、高橋愛の孤独な戦いは続く。
To be continued
578 :
名無し募集中。。。:04/09/23 21:12:57 ID:3HeGGF0m
☆ノハヽ
ノノ*^ー^)<ワクワク
☆ノハヽ
ノノ*^ー^)<ドキドキ
☆ノハヽ
ノノ*^ー^)<クネクネ
クネクネせんでしゃきっとしろ!
582 :
ねぇ、名乗って:04/09/29 12:27:27 ID:RS+HiIB5
☆ノハヽ
ノノ*^ー^) <ちゃいこー
舌たらずなしゃべりはやめろ!
第34話「宣戦布告」
安倍なつみ・飯田圭織への宣戦布告同行。
この役はプロジェクトKの15名にとって非常に大きな意味を持つ。
マスターつんくへのアピールと同時に、敵の総大将に自らを認知させる事となる。
Kでトップを狙う嗣永や村上だけに留まらず、15人全員が望むこと。
そして教育担当の平家とアヤカによってその二名の名が呼ばれる。
「夏焼雅。菅谷梨沙子」
「はい」
「ふぁい」
「コラ、梨沙子。返事ははいでしょ」
「ふぁい」
Kには二大派閥が存在する。
選ばれた二名が両方ともその一方・夏焼派の中心人物であったのだ。
納得いかないのはもう一方・嗣永派の頭である嗣永桃子である。
「理由を聞かせてください。私はこの二人に劣るつもりはありません」
「今回はあくまで宣戦布告だけ。すぐ喧嘩を始める危なっかしい子は連れていけないの」
反論は予想していたのか、あくまで冷静にアヤカが応じる。
こう言われては嗣永も黙るしかない。教育係に逆らうことはマスターに逆らうこと。
だが納得いかないのは嗣永だけではない。他の娘も次々と立ち上がる。
「私も選ばれなかった理由を聞きたいです」
村上愛。彼女は実力もあり、命令違反を犯すこともない優等生だ。
現に以前の中国遠征ではその代表に任命されている。今回も最有力候補のはずだった。
しかしアヤカはこれもやんわりと退ける。
「あなたは一回選んだから今回は違う子にしただけ。特に理由は無いわ」
(違う)
村上は感じ取っていた。自分が高橋愛に負けたからだと。
次に天才児・鈴木愛理が口を開く。彼女も一応夏焼派である。
しかし同い年の菅谷をライバル視している。菅谷が選ばれたことが納得いかない。
「雅はともかく、どうして梨沙子なんですか?」
この質問に、先ほどまでスラスラと応じていたアヤカが止まる。
代わって平家みちよが口を開いた。
「それはお前達に言う必要は無い」
こう言われてしまっては鈴木もその他の娘ももう何も言えない。
次に反論しようと立ち上がっていた清水や矢島も黙って腰を下ろす。
「では行くぞ。夏焼と菅谷はすぐに準備をしろ」
「はい」
「ふぁい」
教育係に続いて室内を出て行く選ばれし二人を、残るKの子供達はきつい目で見送った。
興味なさ気にしているのは居眠りしていた熊井友理奈くらいであった。
翌朝、つんく・平家みちよ・アヤカ・夏焼雅・菅谷梨沙子の5名が夏美館の門をくぐる。
この中で面識があるのは以前コロシアムへと誘ったアヤカだけ。
だからアヤカの顔を見てなっちはすぐに悟った。敵が来たと。
「邪魔するでぇ」
特に目を引くのが中央で偉そうにしている派手な格好をした男だった。
騒然とする門下生達を沈め、なっちが直々に入口へと向かう。
「ああ、本当に邪魔だね」
「直接顔合わすんは初めてやったな、安倍なつみ。俺がつんくや」
保田圭の台詞が頭をよぎる。
「そうはいかない。どうやら最近つんくがまた影で動き出しているらしいのよ。
ターゲットはもちろんあなた、安倍なつみを中心とした表の女子格闘界」
ついにそのときが来たかと思う。
「話があるんや。上がらせてもらうで」
「りんね、応接室へ案内してあげて。あぁ、茶を出す必要は無い」
本部師範代の戸田りんねがうなずく。
なっちは同行する他のメンバーに視線を移す。
アヤカは知っている。もう一人の女……ただ者ではないオーラをまとっている。
それより気になるのは残りの子供二人だ。まさかこの子達も戦士なのか?
ここでいきなり戦闘を仕掛けてくるとは思えないが、念の為に辻と里田を呼ぶ。
場合によっては彼女達にも関係無くはない話になるであろうから。
夏美会館側には安倍なつみと辻希美、そして海外支部より戻ったばかりの里田が座る。
向き合うつんく側の5人と合わせて計8人。異様な雰囲気が漂っている。
最初に口を開いたのはやはりジッとしていられない辻希美である。
「ねぇ、なちみ。このおっさんが次の敵?」
あいかわらず緊張感に欠けた口調である。
しかし今や夏美会館トーナメント二連覇の王者。向かうところ敵なし。
本気で闘える相手を望む辻は、つんく達の登場にどこか嬉々としていた。
「そや。今日は宣戦布告に来た。光と闇の最終決戦や」
安倍と里田は黙って次の言葉を待つ。
辻だけが『最終決戦』という響きに胸ときめかせていた。
「本当の最強は誰か?そろそろはっきり決着をつけようやないかってことや」
「決着をつけるって事にはなっちも賛成だよ」
「そうか」
「だけどルールは?舞台は?主催や利益の割り振りは?色々ともめるんじゃない?」
なっちの言う通りである。
『有名な格闘家を全員集めて最強を決める大会を行う』
言葉にするのは簡単であるが、実現には色々と問題が多い。
どこの格闘技団体も途方も無い利益を得るそんなイベントは自分の所で開催したいと思う。
また、選手が他団体の大会に呼ばれた場合は破格のファイトマネーを要求する。
金の問題は決着のつかない無限ループなのだ。
夏美会館が昨年の総合トーナメントを開催するのにどれだけ苦労したのか知らない。
あれだけのメンバーを集められたのは、ひとえになっちのカリスマ性がある。
実を言うところ大会運営費も一種の賭けで成り立っていた。
藤本美貴か辻希美、自分の所の選手が優勝しなければ赤字になっていたかもしれない。
優勝後の広告料や入門者数増加が何よりのプラス要因となっている。
もし矢口や高橋が優勝していたらと思うとゾッとする。
経営者とは小難しいものだ。
昔みたいに何も考えず大暴れしてみたい……たまに本気で思う。
だが世界中で門下生が何万人もいる現状となっては、運営費を考えない訳にはいかない。
だからつんくの誘いも、内容次第では断ることを考えていた。
「ルールやけどな。俺も色々考えたんや。トーナメントやと組合わせで不利有利が出るし、
やりたい奴等同士が戦えんこともあるやろ。そこでサバイバル・マッチや。全員を集め
て最後の二人になるまで闘い合う。見つけた相手と戦うも逃げるも自分の選択次第。
誰かと手を組むも裏切るも自分次第。とにかく生き残った者が勝ちのサバイバルや。
舞台はこっちが用意する。太平洋沖に俺が所有する孤島があんねん。巨大闘技場も建設中や。最後まで残った二人がそこで真の決勝戦をやり合う。どうや、おもろいやろ?」
この話に、辻は興奮を隠せないみたいで目を輝かせた。
普段はクールな里田までも口元に笑みを覗かせている。
だがなっちだけは冷静さを失わない。駆け引きが残っている。
今の内容では主催権や利益のすべてがつんくに持っていかれるからである。
「考えたもんね。トーナメントではどうあがいてもなっちには勝てないから…」
「逆や。お前等が闇の怪物に勝てるチャンスを与える為の、温情に満ちたルールやで」
「そこまで自身があるの?じゃあビジネスの話をしましょうか?」
なっちは予定通りビジネスの話に持ち込む。
参加するかしないかの話は全てその後のことだ。
「主催権や放送権の分担。運営費や利益の割合はどうするかという話よ」
「それは飯田や他団体も絡んでくるやろ。選手を出し渋る所も出るかもしれん」
「分かってるじゃん。その辺りをどうする気なのか、意見を聞かせてもらいたいわ」
すでに辻は聞き流している。
闇側の菅谷もあくびをかみ殺していた。
「俺はな、純粋に最強の娘が誰かを決めたいねん。できれば金や権利とか無粋な話は避け
たいんや。そこで思いついた。全ての利益を優勝者が獲得できることにしたらどやろ?」
なっちは思わず聞き返す。まさかつんくがそんな内容を持ち出すとは。
「いいの?自分の所の選手が優勝しなかったら一番大損するのはあんただよ」
「問題無い。100%優勝するから言うとんねん」
「いいわ。そういう話ならば夏美会館は乗った」
なっちの顔に笑みが浮かぶ。当然ジブンが優勝するつもりだからだ。
現時点で誰もが最強候補の一番手にあげる女の顔である。
「ここからは一格闘士としてお話するべさ」
「いい顔だ。俺はお前のそういう余裕に溢れた顔を叩き潰したいんや」
「ようやく本音が出てきたじゃん」
「ククク。俺は最初から何一つ嘘はついてへんで」
究極のバトル・サバイバル。
つんくがその出場権利を込めたチケットを取り出す。
「夏美会館には何枚必要や?」
この質問になっちはしばらく考え、「5枚」と返事した。
「当然なっちは出る。それからここにいるののと里田」
辻希美の顔が華やぐ。里田の顔にも隠しきれぬ闘争本能が現れた。
「それと、紺野あさ美」
「誰やそれ?」
「2年前の大会で高橋愛に負けた空手家です。つんく様」
「なんや雑魚か」
アヤカの説明を聞いてつんくは紺野をザコと判断した。
なっちは特にそれを否定せず黙っていた。
(お前達が紺野をザコと認識するならば、その方が都合がいい)
(その認識…必ず後悔することになるべさ)
「それで…あと一人は誰や?」
「……秘密ということにしておくわ」
辻だけは気付いていた。あと一人……そんなのあの人しかいない。
なちみはミキティを諦めきれていないんだ、と。
「つんく様。そろそろこの子達の紹介を」
すると後ろに控えていた只者ならぬオーラを秘めた女―――平家みちよが口を開く。
その手で夏焼雅と菅谷梨沙子の両名を前に出した。
「おっとそうやったな。二人とも夏美会館の奴らに自己紹介せいや」
「はい。夏焼雅です。14歳です。特技は合気道です」
「あ、あ、えーと菅谷り…梨沙子。じゅ、12歳」
安倍も辻も里田も怪訝な顔を浮かべる。
こんな場所で子供の自己紹介をさせてどういうつもりだというのか?
「こいつらも闇の代表や」
「冗談」
「冗談やあらへんで。おたくの隣にいる辻君や里田君よりはよっぽど使える」
(そんな陳腐な挑発に誰が乗るかよ)
クールな里田は相手にせず顔をそむける。
すると顔を真っ赤にした辻希美が視界に入り、ガクッと肩を落とした。
「上等なのれす!ののがまとめて相手になってやる!」
「おい辻!お前は一応チャンピオンなんだから軽々しく格下の挑戦なんか受けんなよ」
「らって里田さん!あいつらがバカにすんらもん!」
こんなバカが夏見館王者という事実に里田は頭を抱えながら、なんとか引き止める。
こうして辻と菅谷の最アフォ決定戦はかろうじて回避された…かに思えた。
気を取り直してなっちはつんくに尋ねる。
「それで、闇の代表は何人くらいいるのかしら?」
「今のところ全部で20人を予定しとる」
「ずいぶんと集めたじゃない。まぁこんな子供に頼る様じゃ底が知れてるでしょうけど」
「安心せい。安倍なつみに勝てる者が…最低でも3人はおる」
「それはそれは…」
「中澤裕子」
なっちの笑みが止まる。
まさか「その名」がこの男の口から出てくるとは思わなかった。
かつて名実ともに最強を誇っていた女帝。
「闇の力で本物の怪物となった中澤裕子。あんたや飯田でも手に負えへんよ」
「そんな過去の人間まで引っ張り出すなんて…外道め」
「褒め言葉やな。それからもう一人、こっちはおたくに関係するかな」
つんくは辻を指す。
当の辻にはまったく見当がつかない。
「ののは悪い人に知り合いなんていな…」
「加護亜依」
「へ?」
辻希美の表情が…凍りつく。
(いま、なんれいっらの?加護…?亜依…?)
「なぁ…将来の夢ってある?」
「うちはある。あった。もう叶いそうにないけど」
「死んだおとん、格闘技してたんや。全然よわかったんやけど」
「そのおとんが褒めてくれたん。亜依は強い子やって、いつか一番になれるて」
「一番…なりたかたなぁ…」
―――――――――――――――――――――――――――――――
「そういえば名前、まだちゃんと聞いてへんかった」
「辻希美!ののって呼んで!」
「加護亜依や。あいぼんでよろしゅう」
―――――――――――――――――――――――――――――――
「だってあいぼんは地上最強になる人らもん」
「せや!」
「ののはあいぼんが地上最強になる為らったら何でもするのれす」
―――――――――――――――――――――――――――――――
「試合?冗談じゃない!そんなことしたらもう二度と、その腕使えん様になるぞ」
―――――――――――――――――――――――――――――――
「普通の生活はできるみたいやし、違う夢でも探せばええやろ」
「違う…それれいいんれすか」
「ええよ。次はもっと女の子らしい夢でも探そかな」
「…あいぼんがそう言うなら」
―――――――――――――――――――――――――――――――
「ウッウッ…ウエッ…ウッウ…」
―――――――――――――――――――――――――――――――
「なんでいなくなっちゃうんだよーーー!!あいぼーーん!!」
(………あいぼん!!!)
ずっとずっとずっとずっとずっとずっと彼女を探していた。
彼女を探すために、失われた彼女の夢を代わって叶える為に…最強を目指した。
「なんで!?なんであいぼんをお前らが…!?嘘だぁ!そんな訳ないっ!」
「ククク…ほんまや」
「嘘らぁぁぁ!!!!!」
気がつくと辻はつんくに飛び掛っていた。
ヒュッ!
その腕を誰かが掴み、ブウンと回転し叩き落される。
夏焼雅。合気道。その技はすでに達人の領域。
「マスターには指一本触れさせませんわ」
もう一方の腕も同時に締め上げられる。菅谷梨沙子だった。
応接室の中央で辻は二人の子供に両腕の間接を締め上げられる。
(無駄だ)
里田は思った。辻希美に関節技という発想自体が過ちである。
「あいぼんをぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」
ググググゥゥゥ…と力を込める。夏焼と菅谷が技を決めたまま宙に浮き上がった。
常識外れのパワーにつんくは思わず目を見張る。
情報だけでは分からない。これが間近で見る生身の辻希美。
(おもろいで。ますます加護に叩き潰させたくなったわ!)
辻が立ち上がった瞬間、つんくの間に平家みちよが割って入った。
その拳は両腕を押さえ込まれている辻の顔面をとらえている。
「今日は戦いに来た訳ではない。下がれ」
「同感ね」
「っ!!!!」
気がつくと、なっちが平家の首に後ろから触れている。
その動き。辻に気をとられていて誰も察知することができなかった。
「良かったなぁ。もしあんたがののを殴ってたら、その首飛んでいたべさ」
何処までが冗談か分からない。
(これが安倍なつみ!!)
平家みちよは全身が凍りつく。
(もはや私が知る時代の安倍では無いということか…)
闇の王者だった時代は遥か昔。
あれから女子格闘技界がこれほどまでにレベルアップしているとは…。
膠着状態。アヤカと里田は互いに牽制しあって動けない。
均衡をやぶるのはやはり辻希美であった。
「あいぼんは!?あいぼんはぁ!!!?」
「安心せいや。加護は元気やで。あいつもお前に会いたがっとる」
「ほんと!」
「裏切り者を早く倒したいってなぁ!!ギャハハハハッ!!」
「っ!!」
(裏切り者?)
その言葉を聞いた瞬間、辻は全身の力が抜けたかの様にへたり込む。
合わせて夏焼・菅谷・平家は辻から離れる。
なっちも平家から離れて、つんくの方を向く。
「事情は知らないが…ののはなっちにとって妹みたいな存在だ。
だからののの親友も、なっちにとっては妹みたいなもんだべ」
「ほぉ」
「だからその子に何かしたらお前等はタダじゃすまさない。覚えておけ」
ニヤリと笑ってつんくは席を立った。
「加護亜依や。安倍ぇ、お前も覚えておいた方がええで」
「辻を倒した後は加護がお前も倒す。あいつこそが地上最強に相応しい」
「ふぅん」
なっちは気付いていなかった。
その加護という娘が2年前の18歳以下トーナメントで松浦と暴動を起こした娘だとは。
「決戦は半年後の3月31日。せいぜい首洗っとけ」
「お前らこそな」
こうして話し合いは終わった。つんく一味が応接室を出る。
最強候補の3人目・石川梨華の名は結局出さずに。
むっちゃ盛り上がってきた〜!!!
更新乙です。
高橋以外の5期にもう光があたらない現状ではもう
茉麻の合掌捻り、仏壇返し、顔面ルービックキューブに期待するしかないようですねw
まさか茉麻のモデルがボンヤスキーに負けたマケぼ(ryでない事を祈ります。
サバイバルって事で環境慣れした新高橋か。
なるほど、面白いルールだ。
特に仲間ワレとか・・・・ククク。
また今回も紺野はかませになるんだろうな
バ、バ、バトルロワイアル!?
キッズは派閥で仲間割れしそうだよね、うん。
602 :
544:04/10/02 16:34:48 ID:7ENY1poJ
来たぁ!サバイバル!
最高の展開っす!
辻豆さん、前回は失礼な事を書いてすいません。
う〜ん、バトロワか楽しみ楽しみ
ミキティはどうなるだろう・・・気功の最終奥義のロングレンジの攻撃でも出来るようになるのだろうか
鍛針功みたいな感じの
気功って別にあれなんだよね単純な攻撃力じゃなくて内部に直接衝撃を与えるから爆発的な
破壊力があるし。それを極めれば相手に触らなくても攻撃できるし
↑日本語変ですよ
>それを極めれば相手に触らなくても攻撃できるし
そんなの見たことない。
>>606 インドネシア辺りにいるよw相手がゴロンゴロン転がってた
>>598 この先、5期は意外と格好いい役回りになる人が多いかもしれません。光当てます!
ちなみに茉麻の対戦相手はすでに決定しております。(ヒント:今回の更新に登場してる)
>>602 特に気にしてないので大丈夫ですよ。
トーナメントはもうやったので、今度はサバイバルで最高の展開となるよう頑張ります。
>>603 一応、気孔系に関しては田中が最高峰という設定です。(この先わかんないけど)
藤本の必殺技は色々と考えているのですが、かなり変則的な技になるかも…。
同日の夕刻、ハロープロレス本社ビル。
ジョンソン飯田達とつんく達が向かい合っている。
ハロプロ側はソファに飯田と石黒が座り、その後ろにソニンと新垣が控えている。
闇側はソファをつんくが占領し、アヤカと夏焼と菅谷と平家が後方に並んで立っている。
つんくは夏美会館で説明した内容とほぼ同じ事柄をここでも語った
さっきから主に応対しているのは副社長の石黒だ。
ジョンソン飯田は一言も口を開かず、後ろの4人を品定めでもしている様だ。
ただそれだけの行為が異様なプレッシャーとなる。平家は思った。
(安倍なつみとはタイプが違うが……こいつも脅威だ)
「…以上や。安倍なつみは乗った。あんたはどうや?ジョンソン飯田」
飯田は口をへの字にしたまま答えない。
代わって、現役を退いて主な運営を一手に引き受けている副社長・石黒彩が口を開く。
「すべての利益を優勝者だけが得るとしたら莫大な額になるぜ、つんくさんよぉ」
「わかっとる」
「そして俺の相棒の飯田圭織に勝てる人間はこの世には存在しない。分かるか?」
「そっちはわからへんなぁ」
「お前等はわざわざハロープロレスに莫大な寄付をしてくれるってことだよ」
「クックック…それはこの話に乗ると受け取ってええんやな」
「当たり前だ。ハロプロは逃げも隠れもしねえ」
石黒には類まれな話術と交渉術が備わっている。
相手がつんくでも一歩も引かない。
やや無口な飯田に代わって、ここまでハロプロを大きくしたのはこの副社長の力が大きい。
「うちの代表は飯田圭織。ソニン。新垣里沙の3名だ」
誰もが認める最強に最も近き存在『プロレスの神』飯田圭織。
韓国でテコンドー王者との異種格闘技戦にも勝利し勢いに乗るソニン。
『ガキさん』ネームで今やプロレス界一の人気レスラーにまで成長した新垣里沙。
微塵の隙もない最強布陣であるが…。
「もう一人いる」
ここで初めて、ジョンソン飯田が口を開いたのだ。
全員の視線が彼女に注目する。果たしてもう一人とは…?
「今頃何処の空の下をうろついているか知らねえが…」
「結局あいつが戻ってくる場所はひとつしかない」
「…プロレスしかない」
闇側の人間にはジョンソン飯田が何を言っているのか理解不能だった。
だが石黒・ソニン・新垣には、飯田が誰のことを言っているのか痛い程分かる。
―――――――――かつて、宇宙一強いプロレスラーを目指す無謀すぎるバカがいた。
飯田の気持ちを察した石黒はつんくに告げた。
「そういう訳でチケットは4枚だ」
すでに現役は退いている石黒はゲスト解説としてその場に立ち会う約束をした。
これは闇が卑怯な手立てを行わぬ様に外側から見張る、という意味が強い。
話し合いが終わりつんく一向は出て行った。『中澤裕子』の名は出さなかった。
夏美会館とハロープロレスがこのバトル・サバイバルを承諾した以上、
他の格闘技団体にも断る理由はなくなる。
むしろ財と名誉を一挙に手にする夢のビッグ・チャンスとなる。
闇からのチケットは各地の最強候補者たちの元へも次々と届けられる。
講道館・矢口真里。
あの5対5戦後、世界柔道でまた金メダルを獲得。前人未到の7連覇を達成。
その強さにはさらに磨きがかかっている。
柔道界にもはや敵はいない。矢口の視界にはもう全格闘技界最強の文字しかみえない。
だからバトル・サバイバルの誘いは願っても無いことであった。
(よ〜やく辻のガキと道重のガキをぶん投げられるときがきたか!)
矢口は気合を入れなおす。そこで小川麻琴の存在に気付いた。
「ん、チケットは1枚だけ?マコの分はないの?」
「いや〜私なんかじゃ無理っすよ。矢口さん」
「何言ってんだよ、お前だって今や最重量級の金メダリストだろ!自信をもてよ」
そう、あの『喧嘩柔道』の小川麻琴!
彼女も無差別級の日本代表に選ばれて見事金メダルを獲るまでに強くなっていたのだ。
天才・小川五郎の孫。真面目に柔道に打ち込めばできる娘である。
しかし逆に強くなって見えることもある。
矢口真里にはどうあがいても追いつけっこないという現実。
今の小川にはどんな手段を使ってでも出場したいという気迫が無くなっていた。
凶暴だった「越後の虎」の牙は、すっかり抜け落ちていたのだ。
(そうだよ。私なんかが出てもかませ犬がいい所なんだ…)
(これでいいんだ…)
市井流柔術・後藤真希。
「真希。お前宛に手紙が届いているぞ」
「んあ〜」
寝起きの目をこすりながら手紙を受け取る黄金の娘。
書かれた内容を読んで、血圧の低そうなその眼がバッチリと開かれた。
「市井ちゃん…奴だ」
「奴って?」
「よっすぃーを……あんな目に合わせた奴!!」
それを聞いて市井は、恐れていた時がついに訪れたかと息を飲み込む。
真希の瞳に鬼神の如き怒りが芽生える。
「私は優勝賞金でもう一度市井流の道場を立て直したいんだ。あの頃みたいに…」
「別に私はもう…」
「だけどその前にこいつだけは!こいつだけは絶対に倒すから!」
「真希…」
こいつを倒さなければ、永遠に黄金時代は帰ってこない気がしていた。
だからこのルールはありがたい。トーナメントと違って抽選頼みという事が無い。
絶対に許せない。絶対にこの手でヨッスィーの仇を討つ。そう真希は誓う。
「石川梨華!」
闇からのチケットはあの怪物集団の元へも届いていた。
「あ〜あ、退屈ぅ」
「もっと大暴れしとーと。体が訛って仕方なか」
亀井絵里と田中れいなが愚痴をこぼす傍で、ボロボロの藤本美貴が転がっていた。
二人がかりで身動きできなくなるまで叩き潰された後である。
この怪物二匹が手加減抜きで撃ち込んだのだ。常人ならば百回は死んでいる。
「意外と丈夫だね」
「見直したばい美貴姉」
藤本の特訓相手に道重さゆみは外されている。
一度、本気で怒らせてしまって脇腹を刺され、本当に死に掛ける事件があったからだ。
藤本の右脇腹にはまだその傷跡が残っている。
「本物の人間を斬りたいの」
そう言いながらさゆみは右手で丸太をサクサク削っている。
丸太は人間の形に削りこまれていた。そしてその心臓の部分を何度もえぐっている。
(怖っ!!)
絵里とれいなが引く程に、さゆの御機嫌はななめっていた。
そこへ師匠・保田圭が現れる。
三人の機嫌を取り戻させるニュースを携えて。
「最後の二人になるまでやりあうサバイバル!!おもしろか!!」
「斬ってもいいの?」
「ちゃいこ〜♪」
闇からの誘いを、怖いもの知らずの三人は嬉々として受け入れる。
(本当におもしろいわね。生き残り戦でこの三人に勝てる奴なんているのかしら?)
保田は三人の弟子にチケットを渡す。送られたチケットは四枚であった。
(おそらくもう一枚は私宛でしょうけど…)
ボロボロで転がっている女にチラリと視線を移す。
すると、三日は動けないであろうと思われたその女の指がピクリと動いた。
「ま、まだ…まだだ…」
エリの超絶キックとれいなの発勁を合計十発はもらっている女が立ち上がった。
すでに手も足も動いてはいないが、眼光だけは少しも怯んでいない。
「た…たいしたこと…ねーなぁ…」
「誰に向かって言っとるばい」
れいなが飛んだ。
気力を振り絞って放った藤本の右突きをスルリと避け、懐に潜り込む。
パァンと一瞬で吹き飛ばされるその先にはエリが先回りしていた。
飛んできた藤本にクネッと絡みつき、地面に締め落とす。
亀井絵里の驚異的な柔軟性と格闘センスが可能にする荒業である。
すでに限界を超えている藤本は再び血を吐いて意識を失う。
(アハハハハハおもしろ〜い)
「とどめはさゆが刺すの」
「刺さんでいい」
手を刃のように構えたさゆは自分だけ保田に止められて、頬を膨らませた。
道重のとどめは冗談にならない。
(しかし、この子達にこれだけやられてまだ立ち上がろうなんて)
プライドをかなぐり捨てて、鬼気迫る勢いで手加減抜きの特訓を続ける藤本美貴。
保田は自分の手元にあるチケットを見る。
(やはり…四枚目は……)
もしも藤本美貴が、こんな無茶苦茶な特訓に半年後まで生き延びることができたならば。
あるいはどんな過酷な条件下でも生き延びる戦闘マシーンとなるのではないか。
そうなれば藤本美貴。田中れいな。道重さゆみ。亀井絵里。
(田中はいざとなれば人でなくなれる。サバイバルには一番有利だ)
(一番不安定なのは道重だ。だが一番危ないのも道重だ)
(亀井は……あいつだけはまだ読めん。笑いながら生き残ってそうな気もする)
想像しただけで敵が身震いを起こすチームの完成。
この4人ならば莫大な優勝賞金は自ずと保田の元へ転がり込むことになる。
(笑いが止まらないわねぇ。つんくもバカな提案をしたものよ)
(サバイバルという誰も経験したことが無い条件下での戦いに賭けたのかしら?)
(悪いけど…勝つのはつんくでも安倍でも飯田でもない!この私よ!)
誰も経験がしたことの無いサバイバル。
保田だけではない。出場選手のほとんど全員がそう思っていた。
―――まさに今、本物のサバイバルを身を持って体験する娘がいるとも知らずに。
――――――
――――――――――――
――――――――――――――――――
ジャングルの夜明け。長い長い暗闇からの開放。
結局、一睡もできなかった。一晩中ずっと殺気にまとわりつかれていた。
全身にへばりつくような嫌な汗。麻酔をうった後みたいに指先まで感覚がおかしい。
喉が強烈に渇いている。お腹がすいているのに吐き気がする。最悪の体調。
(もう…ダメ……)
四六時中いつ何処から襲われるか分からないこの状況。
愛の肉体も精神もすでに限界に近づきつつあった。
(無理に決まってるわ、こんなの)
おいしいご飯を食べたい。
柔らかいベッドで眠りたい。
みんなに会いたい。
みんな…
みんな元気かなぁ……?
バタン。
草むらの中へ前のめりに愛は崩れ落ち、そのままピクリとも動かなくなった。
すると四方から獣達が動き出す。
ようやく味わえる上質な獲物によだれを垂らすハイエナ達。待ちかねた時が来た。
グルルルルルルルルルルルル………
このままでは、生きたまま食われてしまう。
しかしここはジャングル。愛には救いの手など差し伸べられるはずが無…
ドドン!!
薄れ行く意識の中で愛は見た。
何か大きな物体が突進してきてハイエナを蹴散らしてゆくさま。
(だ…誰や………?)
しかしそれを確認する余裕もなく愛の意識は深層へと堕ちていった。
――――――――――――――――――
――――――――――――
――――――
どれくらい眠っていただろうか。
愛はある洞穴の中で目覚めた。見たことも無い風景。
「生きてる?」
ガバッと体を起こすとまず手と足の存在を確認する。
(全部ちゃんとついている。私は生きている)
誰が助けてくれたのか?
誰がここまで運んでくれたのか?
次々浮かび上がる疑問に戸惑っていると、洞穴の入口から小さな影が駆け寄ってきた。
「キキィー」
子サルだった。子ザルは愛の胸に飛び込んでくる。
(この子、見覚えがある)
(あ!昨日クロヒョウから助けたあの…)
すると入口から、愛よりも体の大きな物体が姿を見せる。
「キキキーー」
「あなたのお母さん?」
どうやら愛は一つ勘違いをしていたらしい。
この子はサルの子じゃなかった。
「あなたが助けてくれたんですか?」
「ウォウウォウォウ…」
「エヘヘへ」
きっと子供を助けてくれたお礼だって言っているに違いない。
いい事したら、いい事が帰ってくるって本当だ。
洞穴の外には綺麗な湖と、おいしそうな木の実のなる森が広がっていた。
愛がググーとお腹を鳴らすとそれらを採って持ってきてくれた。
遠慮せず頂いた。
めちゃくちゃおいしかった。
愛の顔に、ジャングルに落ちて以来、初めての笑みが咲く。
「ありがと!オラウータンさん!」
赤褐色の毛に被われたこの大きな野生動物もウホウホと笑い返した。
―――――――――――この出逢いが、高橋愛の運命を変えることになる。
第34話「宣戦布告」終わり
次回予告
とある娘に訪れる転機。
「その目で確かめてきなさい。あなたの求めている真実を」
渡される地獄行きのチケット。
また一人の娘が、運命の道を歩みだすことに…。
To be continued
619 :
名無し募集中。。。:04/10/06 20:13:05 ID:VtKYxzvd
更新キタ━━━(゚∀゚)━━━!!
茉麻の相手は飯田だな 巨体対決だ
なっちのチケットが1枚無駄になっちゃったな
これが高橋に行くのかな
やはり小川にはヘタレが似合うな
623 :
辻っ子のお豆さん ◆No.NoSexe. :04/10/09 12:22:20 ID:bBeTWDdX
バトル・サバイバル出場者リスト(現時点35名)
【夏美会館】
安倍なつみ・辻希美・紺野あさ美・里田まい・????
【ハロープロレス】
飯田圭織・新垣里沙・ソニン・????
【講道館】
矢口真里
【市井流柔術】
後藤真希
【保田一派】
亀井絵里・田中れいな・道重さゆみ・藤本美貴
【闇】
石川梨華・加護亜依・中澤裕子・平家みちよ・アヤカ
プロジェクトK15人
なんで辻豆さんのトリップは、ののSEXなんだろう
たぶんセクシーだろ
たぶん のの'S exeでWクリックすると・・・
こうなってくるとやっぱ吉澤は損な役回りだったなあ…
森の人が出てきたことに感激しました。
「高橋×森の人」の絡みが出てくる小説なんて初めてなんじゃないでしょうか
森の人が助けてくれたのは、きっと同ぞk
うわぁーーーぁぁ・・・・
>>624 トリップについてはノーコメント。
>>627 そうですね。だから前半になるべく活躍させようと思っていました。
>>628 史上初の「高橋×森の人」小説?
てか普通は誰も書かないでしょうw
土曜のめちゃいけ視聴率が凄かったそうで。
辻希美と若槻千夏のバカ対決は絶対実現してほしいです。
さて今日はとっとと更新して、K-1とオマーン戦をみよう。
という訳でいきます。
第35話「プッチ公園の落日」
もともとヒト気のない場所であった。
しかしその過疎化も今や燦々たる事になっている。
何もないこの公園に普通ならばわざわざ近寄る者はいない。
けれどある娘達にとっては大切な想い出の場所である。
プッチ公園。
「アニキ、何か思い出しますか?」
「……」
車椅子の女性とそれを押す娘がいた。
女性というが二人とも普通の女性とは体格が異なる。
車椅子の女性はボクサーの吉澤ひとみ。それを押す娘は柔道の小川麻琴だ。
二人は中学の先輩後輩である。
当時からボクシングで有名だった吉澤を小川が一方的に慕う感じではあったが。
吉澤は中学卒業後アメリカに渡り、皆が知る様に世界チャンピオンとなった。
しかし謎の事故に合い、もう一年以上も植物状態となっている。
医師が語るには
「ふとしたきっかけで意識が戻ることもあるが、このまま一生戻らないこともある」
だそうだ。
そのきっかけを探すため、小川はわざわざ吉澤をここへ連れてきたのだ。
昔、吉澤から何度も聞かされた。
後藤真希と幾多の激闘を繰り広げた思い出のこの場所。
それがこのプッチ公園なのだ。
「………」
しかし吉澤は何も反応を起こさない。
諦めきれない小川はそこで小一時間、色々な思い出を語って聞かせる。
「覚えてます?私が1年のときの学芸会。入学したばかりなのに何故か私がヒロイン役に
選ばれちまって、そしたらアニキが女子なのに主演で…何かすげー恥ずかしくって…」
「アニキの『おいで、踊ろう』って台詞、実はちょっと感動したりなんかして…」
「実はあれから…ずっと…アニキのこと……って何言わせんすかぁーーー!!!」
シーーーーーーーーーン
プッチ公園は相変わらずの静寂。
小川のひとり言だけがむなしく風に流れていた。
「か、帰るかぁ?」
なんか恥ずかしくなった小川は、公園の出口を振り返る。
すると誰もいなかったその場所に、一人の女性が立っていた。
悲しそうな瞳でこちらを見ている。
「だ、誰だよてめえ。今の聞いていたのか?」
「……吉澤ひとみを倒した者を知っている」
唐突に女性はそう告げた。小川の顔に衝撃が走る。
現実離れした美しさ。女性はアヤカであった。
プッチ公園に新たな風が吹きだす。吉澤ひとみ・小川麻琴・アヤカ
陽も赤く染まりだしたこの空間に3人の微妙な空気が流れ出した。
「知っているって誰だよ!!」
「それを教える資格があるかどうか、試しましょう」
ブワッっとアヤカから戦気が溢れ出る。
(なんなんだこいつ!普通じゃねえ!!)
すぐに危険を感じ取った麻琴は構えをとる。
「資格って何のつもりだ!殺されてぇのかコラ!」
「できるものでしたら…」
妖艶な笑みを浮かべアヤカの蹴りが舞う。
ヒュッヒュッヒュッヒュッヒュッヒュッ!!!
柔道ではありえない変則的な連続攻撃。何発かはかわした。だが何発かは入った。
腹を抱えて腰を落とした麻琴にため息を落とすアヤカ。
「この程度ですか?残念ですけど…」
「…んだとコノヤロ」
「あそこにいる吉澤ひとみは私が頂いて帰りましょう」
ギンッ!!
その台詞に、小川麻琴の中の『虎』が目つきを変えた。
「ふざけんじゃねぇ!!!」
上等じゃねえか!!
やってやる!!ぶっとばしてやるよ!アニキは俺が守る!
俺が誰だか分かってねえな!
世界柔道無差別級王者!小川麻琴だぜ!!
その程度の蹴りが何だってんだ!もっと速ぇ奴を知ってるよ!
どうぞ蹴ればいいさ!好きなだけ蹴りやがれ!
代わりにぶん投げるからよ!
その襟を掴まれたときは覚悟しやがれ。もっとも…覚悟する暇もやらねえけど。
ケッ。
ちょこまか動き回りやがって。
スピードで翻弄すれば勝てると思ってんのか?
甘ぇ。
俺がパワーを付ける為だけに体重を増やしたとでも勘違いしているのだろう。
一つだけ教えてやるよ。
(ほら、追いついた)
俺は動けるデブなんだよ。
ガシィ!!
掴んだぜ。
この襟を捕まえちまったら、もうこの世界中で俺に勝てる奴は一人しかいねえよ。
(払い腰!!)
柔道をなめんじゃねぇ!!
そうだろう、矢口さん。
倒した。俺は追う。あいつは逃げる。
逃がすかよ。
俺が上になっている。襟と腕を掴んでいる。
このまま首までもっていけたら一気に締め落とす。
パワーは俺が上のようだ。もう無理だぜ。
この体勢になったらもう跳ね返されねえよ。
ドボッ
妙な音がした。
巨大な何かが自分の中に入り込んでくる様な音。
そして異質な感覚。それから痛烈な痛み。
何だこれは?頭がまるごと引っ張り込まれる。
そうか!
そうかお前!
耳の穴に指を引っ掛けてきやがった。
ムリヤリ頭が投げ飛ばされる。
やばいぞ。
上半身を起こしたあいつが、顔面目掛けて衝掌を打ってくる。
まだ耳が外れない。逃げれない。
ドドン!!
地面と掌に挟まれて、頭蓋骨がバウンドした。
「ぬおっ!」
俺は声を漏らした。
あいつが立ち上がろうとしている。
俺もすぐに立ち上がろうとする。
だがダメージが足に来ていて、立ち上がれない。
どてっ腹を蹴り上げられた。
地面を転がる。
口の中に土が入ってきやがった。
ブエッと吐き出す。
その瞬間、顔面を蹴り込まれた。
容赦がねえ。
キレイな顔してやることが、えげつない。
一体どういう環境で育ってきやがったんだこいつ。
ククク…
なんだ俺は?笑っているじゃあないか。何を喜んでいやがる?
嬉しいのか?こんなにボコボコにされて?
柔道の大会でここまで全身が打ち震えたことがあるか?
ねえな。緊張はしたけど、これとは違う。
体中の細胞が打ち震えてやがる。
手を踏まれながら、顔面を蹴り上げられた。
ここまでするか?
ここまでするということは、俺も同じ事をしていいってことだよな?
そのキレイな顔を思いっきり踏み潰していいって訳だ。
ククク…
すまねえな。思い出したぜ。
悪いのは俺の方だった。これは柔道の試合なんかじゃねえんだよな。
なんでもありの……ただの喧嘩だ。
そして俺は、柔道よりそっち(喧嘩)の方が得意なんだよ。
技術も糞もねえ。
俺はがむしゃらにぶつかっていった。
蹴られても関係ねえ。
体と体とぶつかったらどうなるか分かるか?
自慢じゃねえが俺はお前より体重が重いぜ!
ズドォン!!
ガキの喧嘩みたいにぶつかってそのまま転げ回る。
転がりながら俺は地面の土を握りとった。
ちょっと蹴られすぎて呼吸が苦しくなっている。
あいつは下から殴ってきた。
これはダメージを与える為のパンチじゃない。隙を作る為のパンチだ。
少しでも隙を見せたらすぐに間接をとってくるに違いねえ。
させるかよ!
俺は手に土を含んだまま殴り返した。
殴ると同時にバッと手を離した。
あいつの顔に土が散らばり、あいつはバッと顔をそむける。
その瞬間、俺は柔道のけさ固めに入った。
ただのけさ固めじゃない。肘で相手の首をねじりながら絞めている。
「柔道」と「喧嘩」の融合。
これこそが小川麻琴の真骨頂『喧嘩柔道』
もう外さねえぞ!!
また目や耳を狙われないように、細心の注意を払っている。
…ガッ!!
石!?こいつ、後頭部を石で殴りつけてきやがった。
あまりの痛みに俺は思わず頭を抱える。その好きに脱出しやがった。
こいつも……喧嘩慣れしてやがる。
起き上がるとすぐに蹴ってくる。
間合いが離れるとこっちが不利だ。俺はすぐに間合いを詰める。
奴は逃げる。逃げながら蹴ってくる。
さっきからダメージを受けているのは一方的に俺ばかりだ。
だが勝てないとは思っていない。
何でもありの今の俺なら、何でもできる。
襟を取りにいく。当然、奴はそれ避けようとする。
そこで軌道を変えて裏拳を放つ。
予測していなかった奴の頬にヒットする。
おい、これは柔道じゃねえんだぜ。
柔道家の俺がゲンコツで殴らないなんて一言も言っちゃいねえ。
一気に畳み掛ける。
奴も半端な根性しちゃいねえ。
不意を突かれてもすぐに反撃してきやがる。
おもしれえ。どつき合いだ。
ノッてくるか?
その華奢な体で俺と真っ向から殴り合うなんて…気に入った。
やってやろうじゃねえか!
このプッチ公園の激闘の歴史に新たな記録を刻み込んでやろう!
後藤真希。
市井紗耶香。
八極拳のババア。
そして吉澤ひとみ。
偉大な人たちが築き上げてきた伝説に俺達も載ってやろうじゃねえか!
考えただけでワクワクするぜ、なぁ。
wow wow wow♪
そうか!なんでアヤカがわざわざ?と思ってた。
なるほど、ぷっちかぁ。
最後の行でやっと気付いた…鈍すぎ_| ̄|○
>>639 俺なんか最後まで読んでもわからず、あんたのレスで気づいた
WOW WOW WOW プッチ公園を歩きたい〜♪
某作品のまんまじゃん・・・
夕日が山間にその姿を隠そうとしている。
プッチ公園の落日。
一人の女が地べたに崩れ落ちていた。
「お前の勝ちだ……」
仰向けで虫の様にか細い息を吐きながら、アヤカはそう呟いた。
夕日を背に小川麻琴はまっすぐ立ち尽くしていた。
壮絶な激闘。最後まで立っていたのは小川麻琴であったのだ。
「アニキを倒した奴、知ってるって言ってたよなぁ」
「ええ」
「言えよ」
「そうね。あなたにはもうその資格があるわ」
「俺がアニキに代わってそいつをぶっとば…」
「石川梨華」
よく聞こえなかった?
いや待て。その名前は…。そんなはずは…!!
「そんなはずねえ!!」
「違わないわ。吉澤ひとみを半殺しにしたのは石川梨華よ」
「嘘だ!嘘つくな!」
「あなたにこんな嘘をつく理由なんてないわよ」
「梨華さんはな!あの人はなアニキの!!!そんなはずねえんだ!!」
私は見てきた。
アニキが梨華さんと笑っているところを。
一番近くで見ていた。一緒に助けにいったりもした!
だから、梨華さんがどんな目でアニキを見ていたかも知っている!
だから分かるんだ。
あの人がアニキを傷つけるはずない。
どんな事があっても!それだけはあるはずがねえんだ!!!
「梨華さんに会わせろ!!直接聞く!!あの人はどこに行っちまったんだ!!」
するとアヤカは上着の内ポケットから一枚の紙を取り出した。
激しい戦いで擦り切れたそれは……バトル・サバイバルの出場チケット!
「私は今、資格を失った。これはお前の物だ」
「こ、これって!?何でこんなもの?」
「それに石川梨華も出場する」
「なっ!!!」
「その目で確かめてきなさい。あなたの求めている真実を」
麻琴はチケットを受け取るとギュッと握り締めた。
(この目で…)
また一人、修羅の道を歩みだす娘がここに。
そこで麻琴は、ふと後方に気配を感じる。
振り返ってみると、なんと吉澤ひとみが車椅子から立ち上がっていた!
どんな治療を施しても、決して自ら動くことのなかった植物状態の吉澤が!
「アニキ!!意識が戻ったのか!?」
「…」
麻琴が駆け寄ると、ストンと吉澤は車椅子に腰を落とし、また動かなくなった。
だが、間違いなく今、一人で立ち上がった。
アヤカがニィと笑みを浮かべる。
「本能ね」
「なんだって?」
「死闘の中で失った吉澤の意識を蘇らせるものは…やはり激しい闘争本能しかない」
「私とあんたの戦いに反応して、アニキが立ち上がったっていうのか?」
「おそらく。だけどあれでは全然物足りなかったみたいね」
麻琴は驚愕する。
今のアヤカとの戦い。これまで経験してきたどの試合よりも激しいものであった。
それでも物足りないという。
(一体アニキはどれほどの死闘を経験したっていうんだ!?)
「当日の会場に、彼女も連れてきなさい」
「えっ?」
「怪物が集結するバトル・サバイバルならば……あるいは彼女の意識も」
いや、おそらくはそれこそが唯一無二の方法。
闇に囚われ続ける吉澤ひとみの心を解放することができるものは…。
麻琴は決意を固めた。
落日のプッチ公園からまた一人、修羅の道へと踏み出す娘が現れる。
この日、闇の戦士に襲われたのは小川麻琴だけでは無かった。
日本全国各地で出場資格を試すための戦いは繰り広げられていたのである。
「ゆきどん!!!」
道場の仲間達が見守る前で、『日本拳法の闘姫』前田有紀は投げ飛ばされた。
しかも相手は突然現れた子供である。氷の様な瞳の子供。
(そんな…そんな…)
夏美会館オープントーナメント西日本予選でミカ=トッドに敗れた。
あれがスタート地点。それ以来、死に物狂いのトレーニングを積んできた。
まだ一つの花も咲かせてはいない。これから…という時期であった。
その努力が一瞬で全て水の泡になる。
「私は!!まだ!!!戦え…っ!!」
ドドォン!!
その技は柔道の様であり、柔道とはまた異なる。
投げた後に上から打撃を連打。少しの躊躇いもなく顔面を打つ。
むき出しの闘士も無い。声も出さない。マシンの様に無言で殴り続ける。
ピクリとも動かなくなるまで殴り続けた。道場生は誰も止めることができなかった。
「…アウト」
熊井友理奈はボソッと呟くと、前田有紀と道場生達を一瞥する。
そしてまた無言で去っていった。
「ピョーンパンチ!!」
『ボクシングミニマム級統一世界王者』ミカ=トッドの拳がうなりをあげる。
しかし聞こえる音は風を切る音のみ。ヒットする音は一向に聞こえない。
「世界王者の実力ってこんなものなんだ」
呆れる様にその少女は言った。
少女はミカが日本で世話になるボクシングジムに突然現れた。
「一番強い人と戦いたい」と言った少女をジムの大人たちは笑って適当に受け流した。
すると少女は一番近くにいたボクサーを目にも止まらぬ速さで蹴り倒した。
「もう面倒だから全員こうするね」
プロの資格を持つ者が4人。練習生が7人いた。全員が一瞬で葬り去られた。
桁違いの強さ・桁違いの速さをもつ子供であった。
そして最後に世界王者のミカが残った。
「私はやられる訳にはいきません!!!」
吼えるミカ。しかし少女のスピードは必殺ピョーンパンチを遥か凌駕していた。
目にも止まらぬ赤白グローブの連打を軽々かわすと、飛び蹴りからネリチャギで秒殺。
「アクビが出るわ」
プロジェクトKのスピードキング・矢島舞美は笑って言った。
中澤裕子が自宅からいなくなったという話を聞きつけて、あの4人が久しぶりに集まる。
T&C四天王の稲葉・小湊・信田・ルルである。
「こいつは事件だ。中澤さんは動ける体じゃなかった」
ただ一人現役を続ける稲葉が皆に声をかけたのだ。
他の3人とて引退はしたが、まだ昔の魂を失った訳ではない。
かつての恩師・中澤裕子に異変が起きたというのなら、真っ先に立ち上がる。
「じゃあ、何か情報を掴んだらすぐに連絡を取り合って…」
「知っていますわ」
そこへガラリと扉を開けて現れたのはやけに大人びた少女。
T&Cの4人は突然のことに面を喰らう。
この古いプロレス道場に集まることは誰にも知られていなかったはず。
最初から尾行されていたということか?
「あなたどこの子?子供が大人の話に口を挟むものじゃ…」
「中澤さんのことでしょ。それを知っていると言ってるんですわ」
「おい!ガキが何を…」
気の短い信田が少女の肩を掴む。その瞬間、天と地がひっくり返った。
自分はほとんど力を要さず相手をひっくり返す。合気道。
少女はその達人であった。仰向けにひっくり返した信田の首を思い切り踏みつける。
悲鳴も出せずに信田は悶絶した。T&Cの他3人の顔色が変わる。
大人びた少女・夏焼雅は涼しげな顔でそれらを眺めていた。
「野蛮な方は嫌いですわ」
「おいガキ。いくら子供でもこれは許せる事じゃねーぜ」
稲葉が睨む。小港とルルが左右に分かれて夏焼を挟む。
元一流レスラーの3人に囲まれても、夏焼は涼しげな笑みを崩しはしなかった。
3人が襲いかかろうとしたとき、扉から別の影が3つ飛んで来た。
「ずるいぞ雅!一人でいい格好して!」
鈴木愛理が叫ぶ。あとの二人も夏焼派の須藤茉麻と菅谷梨沙子であった。
「さぁ!天才・愛理ちゃんのファースト・マッチだい!!」
小港はレスラーの中でも異彩を放つテクニシャンである。
その小港が鈴木愛理のテクニックに舌を巻いた。
(この年齢で…これほどの!!!そんな…本当に…天…)
数々の相手と戦ってきたが、これほどに天武の才に恵まれた娘を見た事がなかった。
何処をどうされて敗れたのか分からなかった。気が付くと小港は天井を見上げていた。
「ど〜〜ん!!」
須藤茉麻の張り手。技も糞も無い。ただの張り手だ。
その一発でルルは吹っ飛んだ。大人が子供の張り手に吹き飛ばされるという屈辱。
怒りに震えたルルは反撃のナックルを叩きつける。しかし須藤茉麻はビクともしない。
二発目の張り手は脳天から下へ叩き潰すもの。ガードも無意味であった。
ルルはたった二発の張り手で地面に埋め潰された。
信じられるか。
数年前までは一流のプロレスラーであった自分たちが子供に、文字通り子供扱い。
信じられる訳が無い。
目の前の出来事が現実とは思いたくない。これは夢だ。そうだ、夢だ!
中澤さんがいなくなったのも夢に違いない。
いや、元々中澤さんが飯田に敗れたのも夢じゃあないのか?
目が覚めればまた中澤さんと私達のプロレス最強時代に戻るんだ。そうだ。
夢とわかったら怖くなんかねえよ。
子供がこんなデタラメに強いはずがねえもんな。
ほら、ガキども、とっとと消えろ。
お、生意気に技なんかかけてきやがって。まぁどうせ夢のことだ。
ん?んん?夢のくせに痛ぇなぁ。おい、ちょっと待てよ。
イテ!イテテ!イテテテテテテテテテテテテテ!!!!!!
どうなってんだよ!夢じゃねぇのかよ!
「うぎゃあああああああああああああぁぁぁぁ!!!!!!」
稲葉貴子の悲鳴が聞こえると、菅谷梨沙子はそっと間接を解いた。
夢でも見ていたのだろうか。稲葉は笑みを浮かべながら気絶してしまった。
「甘いなぁー。折っちまえば良かったんだ」
「ふぇ〜?」
「コラ愛理。梨沙子に余計な事は言わなくていいの」
「けどさ。4人もいてまともな人、1人もいなかったね」
茉麻の言う通り。夏焼一派のテスト合格者は結局0名に終わった。
更新キタ━━州*‘ o‘リ∂_∂'ル’ー’リ川刀O∇^登゚ー゚从´・_・`川´∇`从’w’)━━!!!!
ぶっちゃけキッズは名前要らないよ。
キッズA、B、Cで十分。
なんか強さが飽和状態で、末期のドラゴンボールみたいでつ。
未だにキッズの名前と顔とキャラが一致しない…il||li _| ̄|○ il||li
キッズオタはいいのかもしれないが・・・なんか全てぶち壊し・・・キッズは雑魚キャラで十分なのでは・・なんて大きなお世話だな
更新乙です
>>653 倒した相手のレベルで言えばまだDBで言えばナムやドランくらいではないかと思います
この世界で言えば夏美会館主催トーナメントの予選レベルでしょ?
問題はこの上のレベル(里田・あさみ・みうな・紺野・りんね?・柴田)とどう整合性をつけるかですよ
斉藤・村田・大谷もいるけど作者も忘れてる可能性あるので触れないでおこうw
強さがインフレしつつあるからこそのサバイバル戦って事じゃない?
インフレでトーナメントだったらインフレさせる意味すらなかったし。
でも、安倍以下のダンゴ状態はちょっとレベル的に密集しすぎかな、とは思う。
658 :
653:04/10/19 16:39:44 ID:pIuMYZns
言い忘れてましたが、更新乙です。
更新おつです。
>>653 正直自分もキッズ分からんが名前は欲しいぞ。
数字や文字だけじゃわけわからんくなるし。
個人的にはオリジナルキャラみたいに思ってます。
りしゃこと戦えば夢が見られるなんてステキっ!
661 :
黄金時間:04/10/21 19:52:23 ID:UIuWsP8D
↑PC無害精神有害 ドッキリ物注意
答えラッコですかァ?
精神年齢10歳未満の君たちには有害かもね。
>>653 A・B・Cだと作者が逆に混乱するのでご勘弁を。
強さは飽和しているようで、実は結構差があることがサバイバル本番で判明します。
>>654 659さんみたいにオリジナルキャラと思ってもらえれば…
実際キッズの性格とか知らないから、ほぼ作者のオリジナル状態ですし。
>>656 斉藤・村田・大谷のことは片時も忘れたことはな……
>>657 本戦の前から順位付けが決まっていたらおもしろくないので
わざと強さが密集しているみたいに書いています。
>>661 まだ見てないですけど、精神的ブラクラなら別に見なくてもいいでしょうか?
あまり小説と関係ないものは張って欲しくないです。
では、更新いきます。
同時刻、清水佐紀・梅田えりか・村上愛・岡井千聖の4人は摩天楼にいた。
狙いはもちろんあの4人の出場資格テストである。
「おいおいガキども、ここが何処か分かっているのか?」
「あなた方が摩天楼で有名なメロン一味ですね」
ボス斉藤の脅しに少しも屈せず、清水佐紀は淡々としゃべった。
すると隣の村上愛が一言付け加える。
「…弱くて有名な」
「んだとゴラァ!!」
メロンの斉藤・大谷・村田は怒りを露にする。
摩天楼には子供だから許されるというルールは無い。
「半年後、地上最強を決する一大イベントが開催されることはもうご存知ですか。
私達はその出場資格のテストに伺ったのです。私達に勝てればテストは合格。
もちろん出る気がないのでしたらこのまま帰りますが。どうされます?」
「ごちゃごちゃうるせえ!!!」
清水の説明に構うことなく、斉藤は殴りかかってきた。
「テスト開始、と受け取ります」
と言うと清水はスッと斉藤の打撃を受け流す。
しかしその打撃はフェイント。斉藤瞳は寝技のスペシャリストである。
「ぬるいですね」
「なにぃ!!」
「寝技に自信があるようですけど、まだまだたいしたことはありません」
プロジェクトK最大派閥・嗣永派のNo2清水佐紀。
彼女は古武道の使い手である。長い歴史に培われた寝技の技術も備わっている。
大柄な斉藤を小柄な清水が完全に支配していた。
「ちなみに…私よりグラウンドを得意とする娘がKにはあと二人程いますので」
その台詞が耳に入る前に、斉藤は締め落とされて意識を失っていた。
「うらああああああああああああ!!!!」
一方、メロンきってのパワーファイター大谷雅江は激しい打ち合いを演じていた。
相手はこれまたプロジェクトKきっての打撃屋、梅田えりかである。
一見互角の打ち合いの様に見えるが、実は一方的な展開となっていた。
大谷の拳も蹴りもすべて見切られている。当たっているのは梅田の拳ばかり。
「あいつ(嗣永)に比べたら、ちっとも怖くない」
梅田の右フックがアゴをとらえ、大谷はグラッと頭が揺れる。
(ゴッ!冗談じゃねえぞ…こんなガキどもに…負けてたま…)
大谷が立ちなおそうと堪えた瞬間、渾身の左ストレートが鼻柱に入った。
負けられぬという意識も一発で飛ばされる一撃。
メロン一のパワーファイター・大谷雅恵。敗北。
メロンで一番厄介な相手。それはもしかするとこの村田めぐみかもしれない。
変則的で予測不能な戦闘スタイルは相手を混乱に陥れる。
かつて小川麻琴も苦戦を強いられた程の使い手だ。
「ニャハハハハ」
しかし少女はそれをむしろ楽しんでいた。
プロジェクトKでもっとも予測不能な少女・岡井千聖である。
村田のどんな変則技もスルリと対応してしまっている。
「ど、どうやらこの私を本気にさせてしまったみたいですわね」
「おー!次はなんだ!?」
村田はおもむろにマスクをかぶる。あのメロンマスクXが再び蘇る!!
さっきまでとはまるで別人。言動も、佇まいも、全てが異様。
さらに変態度を増した動きで敵を翻弄する…かにみえたが。
「マスクかっけー!!」
なんとXをさらに上回る動きで逆に岡井が翻弄している。
「そ、そんなバナナ…」
「あーでももう飽きちゃった。バイバイ」
岡井はXの肩を掴むと簡単に外してみせた。ひびく悲鳴。
マスクもはぎとられた村田、完全敗北。
摩天楼最強と称されたメロンの3人が、子供相手に何もできず敗れる。
もはやプロジェクトKの実力は疑いないものと証明された。
「あと一人。いないよなぁ。何処にいる?」
村上愛が地面に転がる3人に尋ねる。
始めから狙いはその女であった。あの高橋愛と拳を交えたことがあるという女。
どちらが上か?どちらが高橋へのリベンジ権を得る資格があるか?試してみたいと思った。
「クハハハハハ!」
突然、目を覚ましたメロンのボス斉藤が高笑いを上げ始めた。
「何を笑っている?」
「村田さん。もう完成しているんだよなぁ!」
「ええ」
「クハハハハハ調子にのりすぎだぜガキども。お前等もここまでだ」
斉藤の高笑いと共に正面の建物の扉が開く。
コッコッと足音を立てて一人の美しき娘が姿を見せた。
Kの子供達を見ても、その傍らで倒れている3人の仲間を見ても、顔色一つ変えない。
柴田あゆみである。
すぐに攻撃しようと思っていた村上愛はピタリと動きを止めた。
彼女の持つ異質さに気がついたのだ。
「なんだ?こいつ…」
「どうした愛?あんたがいかないなら私が頂くぜ」
「おいらも頂きっ!!」
じっと固まる村上に痺れを切らした梅田と岡井が、柴田へ向かって飛び込む。
「ちょっと待って、二人とも!」
様子が変だと感じ取った清水が声をあげるが間に合わない。
先手を取ったのはスピードもある岡井だった。変則的な動きですぐに柴田の右腕を取る。
柴田は防御どころかまだ身動きすらしていない。
「折っちゃうぞっと!」
予告どおり。岡井千聖はあっというまに柴田の右腕を逆へ捻じ曲げた。
しかし柴田はまるで反応示さない。
そこで岡井は初めて気が付いた。この感触は人の腕のそれではない。
次の瞬間、想像を絶する光景が目の前に起こる。
なんと!折れたはずの右腕がググッと180度に回転し、反動で岡井を投げ飛ばしたのだ!
投げ飛ばされてきた岡井にぶつかり梅田もその場に倒れる。
冷静な清水佐紀の額にも汗が浮かび上がっている。
ひきつった笑みを浮かべながら村上愛は言った。
「あんた、人間捨てたか」
柴田あゆみは、未だ表情の無い顔で闇の子供たちを見下ろしていた。
「サイボーグだ!あゆみはもう、私が改造した戦闘サイボーグとなった!!」
村田が高らかに声を発する。
そしてようやく柴田あゆみが自ら口を開いた。
「最強となれるならばもう、人で無くともよい」
高橋愛に敗れ、辻希美に敗れ、道重さゆみに敗れた。
極限にまで傷つけられた柴田あゆみのプライドが、彼女をこの道に歩ませた。
そして手に入れた人を超えし強さ。
「えりか!愛!千聖!ここは一旦引いた方がいいわ」
つんくや平家の指示を仰いだ方がいいと清水佐紀は判断した。
さっきまであれほど暴れていたKの少女達が、明らかに動揺している。
梅田は清水に頷いた。しかし村上は納得していない。
「敵に尻尾をまいて逃げるつもりはない!」
「愛!あなたならば敵の強さが判断できるでしょう!」
わかっている。どう低く見積もっても強い。
伝わってくる異質さが並大抵のものではない。
人間が人間のままで手にすることのできない強さを手にしてしまっている。
あるいは本当に『最強』の座をさらってゆくかもしれぬ程に。
「それでも…私は逃げない!」
一触即発となったそのとき、もう一人の少女・岡井千聖が予測不能な行動に出た。
「サイボーグ!かっけー!!」
顔を輝かせながらパッと起き上がると、懐からチケットを取り出す。
そして自分をふっとばした相手に近づくとそのチケットを差し出した。
「おいらの負けだぁ!だからサイボーグの姉ちゃんには資格があるよ」
「千聖!」
「佐紀ちゃん。おいらは間違ってないよ。強い奴を決める大会だもん」
岡井千聖はニッと笑った。
Kの少女らしからぬ笑みであった。
柴田あゆみは黙ってそのチケットを受け取った。
「やれやれ仕方ないわね。これでここでのテストは終わりよ。愛もいいわね」
「…ええ」
「ほいじゃあなサイボーグの姉ちゃん。頑張れよ」
こうして、嵐のようにKの少女達は去っていた。
テスト合格者は柴田あゆみだけ。しかしその強さ、今までの彼女とはケタが違う。
360度回転可能な肘や膝を組み込まれた彼女に関節技は通用しない。
その攻撃力も防御力も強大。無尽蔵のスタミナ。すべてが最強と呼ぶに値するもの。
…ただ、もはや人間とは呼べないが。
サイボーグしばた バトル・サバイバル出場決定!!
業界では名の知れたムエタイ道場がある。
そこに今、タイの現役チャンプが来日しているとの情報が舞い込んだ。
向かったのはもちろんムエタイ使いの嗣永桃子。
そして嗣永の腰ぎんちゃく石村舞波と、何故か最年少の荻原舞も一緒だ。
「チャンプは私がやる。お前等は周りのザコの相手でもしてろ」
「へっへーもちろんですよ桃子さん」
「ワクワクするのれしゅ」
嗣永桃子はプロジェクトK最大派閥の長。その強さには自信をもっていた。
だからムエタイチャンプを倒して、マスターの評価を高めようと画策していたのだ。
ところがその考えは思わぬ方向に転がることになる。
3人がムエタイ道場の扉を開けたとき、チャンプはリングの上にいた。
ものすごい戦気。対戦相手の顔は影になっていて見えない。
ゴングが鳴った。
ムエタイチャンプのキックがもの凄い速さで対戦相手の頭を狙う。
すると、それ以上に速いタックルで対戦相手はチャンプを倒してのけた。
次に聞こえたのは骨のくだける音とチャンプの悲鳴。
その場の誰もが声を失った。
ムエタイチャンプを秒殺できる者など…そうお目にかかれる者ではない。
振り返るその顔がKの3人に気付く。同時に彼女の名をあげるコールが響いた。
『勝者!アミーゴ・ロムコー!!』
第35話「プッチ公園の落日」終わり
次回予告
次々と名乗り出る最強候補の猛者たち。
いよいよ出揃うバトル・サバイバル全出場選手。
「生きていろ、高橋」
今、すべての道がひとつに繋がる。
To be continued
>「サイボーグだ!あゆみはもう、私が改造した戦闘サイボーグとなった!!」
激ワロタw
いつも話の中に軽いギャグを(しかも真面目な設定として)入れてくれるから好きだ
更新乙です
サイボーグしばた…
これで硬質系最強(そもそも1人しかいない)の道重との対決が楽しみになってきました
岡井をあの使い方で生かすとはかなりあの番組見てますねw個人的には修羅の門の神武館ブラジル支部徳永さんみたいなキャラっぽいかな?
茉麻と小川のメガトン対決も見たいし…
とにかく面白いわくわくする作品期待してます
678 :
ねぇ、名乗って:04/10/23 17:46:37 ID:xnTO5CJH
更新乙です!
サイボーグしばたキタ━━━(゚∀゚)━━━!!状態っす!
キッズにやられなくてヨカタ
>『勝者!アミーゴ・ロムコー!!』
…il||li _| ̄|○ il||li ダレダー
ヤンジャンですよ
俺もサイボーグ柴田に笑った。辻豆サイコー!
全てが10倍だったら…恐ろしい…
>>682 サイ柴のノリだったら、
「殴られたら10倍ふっ飛ぶ」
とか
「敵に尻尾をまいて逃げるつもりはない!」
ワロタ
逃げられないっちゅーの
柴ちゃんがサイボーグになっちまったなんて
そうかだからあれだけ加護ちゃんをサイボーグにして復活を。とお願いしてもだめだったのか
>683
紺野は10.5倍?
>>677 柴田vs道重の硬質対決は考えてなかったですね。おもしろいかも。
ところで岡井のあの番組とは?実はキッズオーデぐらいでしか岡井を見たことないんです。
メガトン対決…w。
>>679 ごっちんの番外編で登場済みのキャラです。
>>682 10倍ネタは加護の三倍拳とかぶり、強さバランスもメチャクチャになるので止めて、
純粋にサイボーグ(機械人間)という設定にしました。
>>685 そうです。それに三倍ネタを使いたかったから。
第36話「すべての道がひとつに繋がる」
格闘技界最強と尋ねられれば、誰もがロムコー一族と答える時代があった。
しかしたった一人の娘によりその一族は壊滅の危機に陥る。
最強の遺伝子を受け継ぐ一族の生き残りは、復讐のため日本の地に訪れることを決意。
それがアミーゴ・ロムコーだ。
「どけ」
プロジェクトKの石村舞波は凍りつく。
ムエタイチャンプ目当てで訪れた場所で、とんでもない大物と遭遇してしまったからだ。
目の前に立つだけでその強さのレベルが規格外であると分かる。
ロムコーとまともに戦える者など「石川」「加護」「中澤」くらいのものか?
(…うちらの手に負える相手じゃないっすよ)
石村は泣きそうな顔で嗣永を見た。そして驚く。
嗣永桃子が闘争本能に満ちた顔つきをしているからだ。
「桃子さん、やる気ですか!?」
「当たり前だろ。テストに来たんだぜ」
「やばいっすよこいつは!」
「ツイてるじゃねぇか。こんなおいしそうな奴に会えるなんてよ」
止めなければ、と石村舞波は思った。
ここで嗣永桃子が消えれば、今までの自分が彼女を慕う演技が無駄になるからだ。
Kは夏焼派に支配され、嗣永派の自分の立場がなくなってしまう。
それだけは阻止しなければならない。
「半年後、地上最強を決める大会がある。その出場権をテストしにきた」
苦悩する石村に構わず、嗣永はさっさと話を切り出す。
ムエタイジムの全選手に、そしてアミーゴ・ロムコーに。
言い終えると嗣永はヒュンと消えた。
次の瞬間、アミーゴの横にいたムエタイ選手が蹴り跳んだ。明らかな挑発。
(くそっ、やるしかねえか!)
石村舞波も続く。桃子仕込みのムエタイで周りのザコを始末していく。
二人の少女のムエタイが、チャンプのそれより上だとアミーゴは認識する。
「何物だ。貴様達」
「プロジェクトKでしゅ」
K最年少・荻原舞がいつの間にかアミーゴの前にいた。
正統派空手の構えをとると、その小さな体で周りのムエタイ選手を殴り倒した。
気が付くとアミーゴ以外の選手は全員倒されてしまっている。
「ひどいガキどもだ。罪の無い選手まで」
「よく言うわ。自分だってチャンプの骨を粉々にしたくせに」
「ロムコーが本気を出すのは正当な試合の相手だけだ。貴様等と戦う気は無い」
去ろうとするアミーゴを、嗣永が回り込んで止める。
「じゃあ正当に試合を申し込む。それでいいんだろ?」
「こっちは一人。そっちは三人。審判もいない。ルールもない。どこが正当だ?」
「そいつの言うとおりですよ桃子さん。こいつにはチケットを渡しましょう。
バトル・サバイバルで正当にぶっ倒せばいいじゃないですか」
石村舞波がそう言うと、嗣永はギロリと睨んだ。
「そうだな。じゃあ舞波、お前のチケットを奴に渡せ」
(え?)
何を言っている?と石村は思った。私のチケットをアミーゴに渡す。
そんなことをしたら私が出場できないじゃない。今まで嗣永派で尽くしてきた私が?
「どうした?さっさとしろよ舞波」
桃子!私は今までお前のために頭を下げておだてて…
それなのに、それなのに…この仕打ち!!
よぅくわかった。そうか。あんたはやっぱり自分のことしか頭に無い最低の…!
石村舞波は震えていた。
こんな所で出場の資格を失われる訳にはいかない。しかし嗣永には逆らえない。
困り果てたその隣で、Kで一番小さな影が動き出した。
「勝負!!」
荻原舞!
正拳突きの構えでいきなりアミーゴに突進する。フワリと風が舞った。
風のようにアミーゴが正拳突きを放った腕に絡みついていたのだ。
一瞬の出来事。そして骨が外れる音が響く。
「いやあああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「舞っ!!」
「ロムコーは子供だからと手加減はしない。特に不意打ちなんかする卑怯者には」
腕が外れ、泣きわめく荻原を石村が抱きとめる。
仲間がやられたことでまた嗣永に闘争本能が戻る。
「正当な理由ができたよな。仇討ちだ」
「よく言うぜ」
「待って桃ちゃん!!舞の!舞のこれを!!」
見ると、泣きながら荻原舞は自分のチケットを取り出していたのだ。
『自分を倒した相手に自分のチケットを渡す』それがルール。
石村はハッと気付く。
「舞。まさか、まさか私が困っているの見て?」
「何言っているでしゅか?舞は自分が戦いたかっただけでしゅ」
舞波は歯を噛みしめ、荻原舞を抱き上げた。すぐに連れ帰って治療を受けさせなければ。
一方の嗣永は荻原からチケットを取るとアミーゴに渡す。するとアミーゴが口を開く。
「ひとつ尋ねる。後藤真希という女を知っているか?」
「ん?ああ、たしか出場選手の中にいたよ。それが何だ?」
「いや、なんでもない」
嗣永達が去ると、クールだったアミーゴ・ロムコーが強烈な笑みを浮かべた。
石井リカは日本サンボの第一人者である。
現在も彼女を越えるサンボ選手は存在していない。
いや本来は存在するはずだった。かつてサンボ界に稀代の天才が二人いたのだ。
一人はあの藤本美貴。そしてもう一人が…。
「お久しぶりです。石井先生」
「あなた……千奈美!!今までどうしていたの!?皆心配して…」
「別の場所で、サンボを…学んでいました」
「まさか、お姉さんの仇を討つつもり?」
「…そんなつもりはありません。あれは事故ですから」
プロジェクトKの徳永千奈美は語る。その表情は普段の元気な姿とは異なる。
そう、かつてサンボ界にいたもう一人の天才。それは徳永千奈美の姉である。
徳永の姉と藤本美貴は良いライバル同士であった。
この二人が競い合い、日本サンボ界が発展することを石井リカは期待していた。
しかし運命は残酷な事件を起こす。
全日本サンボトーナメント。決勝でぶつかった二人の天才。
「お姉ちゃん!」
まだ幼かった千奈美の脳裏に焼きついている映像。
藤本美貴の放った打撃に胸部の骨を折られる。それと気付かず締め技に入った藤本。
折れた骨が肺へ。制限時間がすぎ試合が終わったときには姉の命も止まっていた。
あれは事故だった。試合中の事故は罪にはならない。
だが藤本美貴はその後すぐサンボを捨てた。
私も彼女を恨んでいる訳ではない。だけど…。
「今日はテストに伺いました」
「一体どうしたというの!?親類の方々がどれほど心配していたと…」
親なんかいない。プロジェクトKの娘は全員孤児だ。
私も姉を失った時点でみなしごとなった。
預けられた遠い親戚の家を飛び出し、行き場を失っていたときつんく様に拾われた。
私達はあの人がいなかったら野垂れ死にしていたかもしれない。
だからKの娘はあの人の命令ならば何でもする。
かつての姉の恩師を倒せと言うのならば…。
「私とのサンボの試合、受けてください石井先生」
「本気…なのだな」
いつも笑顔だった千奈美が笑っていないことで、石井リカはそれを感じ取った。
武道家と名乗るならば、挑まれた勝負から逃げたりはしない。
「いいでしょう。ただし手加減はしないわ」
「私もです」
道場へ向かうと、石井リカと徳永千奈美は互いに向かい合う。
合図もなく試合は始まった。
そして試合は一分も経たぬうちに終わった。
汗一つかかぬまま、仰向けに転がる石井リカを見下ろす徳永千奈美。
(恨んではいないけれど…私は藤本美貴と戦います)
(私は姉を越えたか?それを確かめる為に)
日本サンボ界に生まれし三番目の天才が、己の道を歩き始める。
「全員そろうとるな」
闇の孤島。その中央に位置するつんく城。
赤色の玉座に座るつんくは、面前に並ぶ側近とKの子供達に言った。
「負けたんは岡井千聖と荻原舞と…」
「…」
「まさか、お前もとはのぅ。アヤカ」
「申し訳ありません」
「まぁちょうどええわ。お前には大会実行の方で働いてもらう。あとの二人もな」
「はい」
「そんで今回、一番働きの良かった娘は…」
全員がテストした結果の表を眺めながら、つんくが続ける。
(私だ)(私ですわ)(私しかいない)
Kの娘達の誰もが自分だと確信していた。しかし呼ばれたのは意外な名前。
「中島早貴」
「はい」
「えっ!!!!!!!!!!!!!!!!」
中島以外のK全員が驚愕の表情を浮かべる。
というかそこにいることすら皆気付いていなかった。恐るべき存在感の無さ。
戸惑いが収まらぬ中、その内訳をつんくが語る。
「テストした格闘家108人全員に勝利」
108人!!
他の少女は多くても10人がいいところであった。あまりに膨大な数字。
ニヤリとほくそ笑む中島。
実はこれには大きな理由があった。108人全員が不意打ち一発の勝負だったのである。
あまりの存在感の無さにどの格闘家も超接近されるまで気付かなかったのだ。
こうして中島は誰にも気付かれぬまま次々と一流格闘家を葬りさっていったのである。
「それから、どえらい秘密兵器を闇側に連れてきおった」
「秘密兵器?一体誰ですか?」
平家が聞き返す。側近の平家やアヤカですら聞いていない。
「ククク…入れ」
つんくが声をかけると入口の扉が開き、そこに一人の女が立っていた。
その顔を見た瞬間、つんくと中島以外の全員がまた驚く。
しかもその驚きはさっきの比ではない。
誰もが知る顔。絶対に闇側に来るはずのない顔であったからだ。
「バカな!どうしてお前が!!」
あの平家みちよが、戸惑いに声を震わせる。
中島早貴が挑んだ109人目がこの女だった。そして唯一中島の存在に気付いた女。
気付かれるとすぐ中島は戦闘の意思を捨て去り、闇への勧誘を始めた。
意外にもこの女はあっさりとそれを受諾。
闇の秘密兵器となることを受け入れたのである。
「だまされるな平家。彼女はあの女やないで」
「え?」
「だがあの女に対する強力な切り札となるやろ。ククク」
秘密兵器の女は持っていたフードをかぶると、危険すぎるその顔を隠した。
そして無言のまま、その場を退出する。
玉座の間を出ると左右に長い回廊が続く。ふと見ると一人の女が廊下の脇に立っていた。
「驚いたで。あんた、こない所にいてええんか?」
中澤裕子である。
しかしフードの女は無言のまま、通り過ぎようとする。
「おたくが何を企んでここに来たか知らへんが、せいぜい用心することやな。
あのつんくって男は一筋縄じゃあいかんわ。あんたのことを秘密兵器ゆうとるが…
まだうちやあんたには言わへん秘密を隠し持っとるで。これはうちの勘やねんけど」
「……」
するとフードの娘はピタリと歩みを止めて、中澤を見た。
「安心せい。その点うちは何も隠し事はない。『最強』の称号を手にしたい。それだけや」
女帝は凶暴な笑みを浮かべてフードの女を見下ろす。
フードの女はフッとそれを受け流すと、結局一言も喋らぬまま行ってしまった。
「やれやれや。さ〜て、あの子の存在が吉とでるか凶とでるか…」
乙です。
そういえば、この子も残ってたね。
もう少し意外な人物だと思ってました。
つんく城には深い地下施設が存在する。
一本の極秘エレベータのみが地上へと通じる道。
Kの子供達からの伝令を終えたマスターつんくは、ひとりこのエレベータを下っていた。
「お待ちしておりました。つんく様」
最下層。二人の娘がつんくを出迎える。
この二人はある娘の世話と管理の為だけに、この最下層で暮らしている。
三好絵梨香と岡田唯。ともにコロシアム戦士の生き残り。
そして闇の中でも異端児扱いされていたあの娘を慕う、たった二人の娘。
「梨華の様子は?」
「あいかわらずです」
眉をひそめながら答える三好。岡田はムッツリと口を閉じている。
やがて視界に入る強化ガラス張りの小さな個室。
部屋の中央に置かれたソファにもたれるように彼女は座っていた。
恐れ知らずで裏世界を駆け抜けたマスターつんくが、思わず顔をそむける。
「……ほんまに、生きとるんやな?」
あの吉澤ひとみとの死闘から1年以上の月日。以来ずっと彼女は心を失ったまま。
深い地下の底で、動きもせず、食事もせず、まるで人形のように。しかし決して死なない。
点滴のチューブに巻かれ、灰色に濁った瞳。骨と皮だけになった四肢。石川梨華。
「はい、生きていますよ。体だけですが…」
乙!石川はどうやってフカーツするのか…
麻美?
>>700 ソレダーil||li _| ̄|○ il||li
ってことは
>>517で言ってたのはこの人のことだったのか
702 :
:ねぇ、名乗って :04/11/01 22:59:12 ID:9nJZ2iRy
辻豆さん乙です!
自分的には石川さんの復活は吉澤さんきっかけキボンヌスミダw
>>702 意表をついて、中澤さんに瀕死になるまで責められて
感情を取り戻す展開キボーン。
愛する人を自らの手で殺した自責の念。
そしてそれを仕向けたつんくへの復讐。
こうすることが、戦わないことが、彼女の最期の抵抗だった。
「おい梨華。俺や、つんくや」
返事はない。ピクリとも動かない。
本当に生きているのか?つんくは疑問に思った。
不死身のコロシアム王者・石川梨華は闇の絶対的存在である。
つんくの計画、石川抜きの成功はありえないと思っている。
だから吉澤戦以来心を失った石川に、つんくは正直焦りさえ覚えていた。
だから『3倍拳』の加護亜依を手中に収めたときの喜びは計り知れなかったのだ。
加護の強さは石川の穴を補う破壊力に満ちていた。
しかしできることならば、不死身と呼ばれた石川梨華の戦いがみたい。
闇の勝利をより絶対的なものにするにはやはり石川梨華の力は必要不可欠!
それで、つんくは再びここを訪れた。
今まで何度訴えても決して耳を貸そうとしなかった人形に……心を蘇らせるため。
「吉澤ひとみが立ったそうだ」
その名に、目が僅かだが、動いた。
この1年間、何を訴えても反応の無かった人形の目が……揺らいだ。
「アヤカからの報告や」
「……」
「目の前で激闘を見せられた吉澤ひとみが、自らの力で車椅子から立ち上がったと…」
「けど意識が戻った訳やない。またすぐに座って植物状態に戻ったそうや」
「……」
「だがこれで吉澤ひとみの意識を取り戻す可能性が見えた」
「……」
「死闘の中で失った意識を戻すには、それを上回る程に激しい死闘しか無い!!」
「……っ」
「そして、それが可能な者は…お前しかおらんやろ。梨華」
「…あ……ぁあ…」
虚ろな灰色の瞳が濡れ始めた。
骨の浮き出たあまりにも細すぎる肉体が際限なく震え始めた。
かすれる様な声が、喉の奥から絞り出る。
1年以上の月日を越えて、現れた不死人形の心。
「…ぁ……あぁ………ヨッ…スィー…」
「戦うか?それとももう戦わへんか?」
「………ョ……ヨッ……」
「ただし…梨華が戦わへん言うなら、吉澤ひとみは二度と戻らんやろな」
「………うっ……ううっ…………」
梨華の瞳から大粒の涙がこぼれ落ちる。
そんな選択肢、えらべるのは一つしかない。
石川梨華が吉澤ひとみを救わないはずがない!
「…戦い……ます」
「俺はその言葉を聞きたかった」
用は済んだ、とつんくは回れ右する。
あとは彼女しだい。
後ろに控えていた三好と岡田に、つんくは告げる。
「梨華の介護とトレーニングを頼むぞ」
「ハッ」
「半年で、完全形へとしたてあげろ」
半年、それはこの不死身の怪物にとって十分すぎる時間であった。
厳密に言えば石川梨華という娘は格闘家ではない。
トレーニングという行為自体、彼女にとって必ずしも必要ではないのだ。
ブランクというのも彼女には関係ない。
石川梨華は生まれながらにして美と勇に選びぬかれし存在。
生まれながらにして最強の道を昇りゆく存在。
「大丈夫ですか?石川さん」
ガラス扉を開くと三好と岡田は急いで石川に駆け寄る。
梨華は小声で呪文のように繰り返していた。もう戻れない道。
「……私は……戦う…」
この手で殺した吉澤ひとみを蘇らせる為ならば、もうこの手がどんなに汚れても構わない。
不死人形は絶対に負けない。愛する人が目を覚ますまで、もうどんな死闘もいとわない。
夏美会館・北海道支部。
支部長の木村あさみが、一枚のチケットを携えて東京から帰郷してきた。
「紺野、紺野はいるか?」
バトル・サバイバル出場チケットを紺野あさ美に渡すため帰郷したのだ。
ところが返事がない。別の者に尋ねるが、なにやら言い出しにくそうにしている。
「おい!紺野は?」
「紺野さんなら、大雪山へ山篭りに行ってしましました」
「や、山篭りぃ!?あそこはもう吹雪いてるだろう!!」
「止めたんですけど…誰も止められませんでした」
「…バカヤロ!!凍え死ぬに決まってんだろ!助けにいくぞ!!」
「無理ですよ。あさみ支部長まで遭難してしまいます!!」
「っ!!じゃあ警察に!!」
「紺野さんの伝言で、『心配は無用です』と…」
「……あの馬鹿」
一年中、豪雪が積もる地。
神が宿る地とも呼ばれている。
真っ白い光景の中、真っ白い空手着だけをまとった娘が立ち尽くしていた。
娘は何かにとり憑かれた様に拳を撃ち続けていた。
それは異常とも呼べる光景。
(…………フシュゥゥゥゥゥゥ)
異常とも呼べるその荒行の中、その拳に確かに何かが宿ろうとし始めていた…。
バトル・サバイバル。誰も想像していなかった落ちこぼれが天秤を覆すかもしれない。
「それでは、確かにお預かりしました」
「娘は…愛は…元気でやっていますか?」
「ええ、元気すぎて困るくらいですよ」
「そうですか、それは何より。どうぞよろしくお願いします。福田さん」
頭を下げたのは高橋愛の父。
福田明日香は顔をそむけて、松葉杖で歩を進めた。
(娘を殺してしまったかもしれない者に、頭なんか下げるなよ)
とは言えなかった。言えるはずがなかった。
―――――――――――――――高橋愛がジャングルに飛び降りて一ヶ月。
何の音沙汰も無い。
まだ生きているか、もう死んでいるのか、それすらも知ることはできない。
福田明日香は自分のミスを悔いた。
まさかあのはったりを愛が本気にするとは思わなかったのだ。
本心では、高橋愛という若き才能に、心の闇が溶かされかけていたのだ。
高橋愛は自分にもう忘れかけていた光を思い出させてくれた。
そして詫びの気持ちもあったのか、一旦日本に戻った福田は愛の実家を訪ねた。
もちろんジャングルに落としたなんて、言えるはずがなかった。
中国で修行にはげんでいることになっている。
そこで渡された一通の封筒。バトル・サバイバル出場権利のチケット。
必ず愛に渡すと約束したもの。必ず戻ると信じて…。
「生きていろ、高橋」
バトル・サバイバル出場チケット、最後の一枚。高橋愛。
こうしてバトル・サバイバルの出場者は出揃った。
――――夏美会館空手(5名)――――
『太陽王』安倍なつみ
『奇跡の仔』辻希美
『神の拳』紺野あさ美
『怪物』里田まい
????
――――ハロープロレス(4名)――――
『プロレスの神』飯田圭織
『敗北の鎮魂者』新垣里沙
『マッスル・クイーン』ソニン
????
――――講道館柔道(2名)――――
『柔』矢口真里
『越後の虎』小川麻琴
――――市井流柔術(1名)――――
『黄金の娘』後藤真希
――――高橋流柔術(1名)――――
『ロード・オブ・エース』高橋愛
――――チーム・メロン(1名)――――
『サイボーグしばた』柴田あゆみ
――――保田一派(4名)――――
『狂気の満月(フルムーン)』藤本美貴
『悪猫』田中れいな
『生体凶器(リビング・エッジ)』道重さゆみ
『地上ちゃいこー』亀井絵里
――――特別招待選手(1名)――――
『最強一族の生き残り』アミーゴ・ロムコー
――――闇の戦士(18名)――――
『不死人形(アンデッド・ドール)』石川梨華
『三倍拳』加護亜依
『女帝』中澤裕子
『古(いにしえ)の紫式部』平家みちよ
『キャプテン・サブミッション』清水佐紀。
『桃を継ぐ者』嗣永桃子。
『乱舞流』梅田えりか。
『烈空の隼』矢島舞美。
『それいけマイッハー』石村舞波。
『微笑みの守護者』徳永千奈美。
『新・重戦車』須藤茉麻。
『早熟のカリスマ』夏焼雅。
『巡る勇士』村上愛。
『孤高の女王』熊井友理奈。
『いない子』中島早貴。
『ファイティング・アーティスト』鈴木愛理。
『ラスト・ファンタジー』菅谷梨沙子。
『闇の秘密兵器』?????
以上37名
そして彼女達の月日は、清流の様に瞬く間に流れてゆく。
ある者は夢を追い、
ある者は夢を失い、
ある者は己の為に
ある者は友の為に、
ある者は友を倒す為に、
またある者はすべてを破壊する為に、
ただおもしろいからという者もいる。
人生のすべてを賭けた者もいる。
たった一つのちっぽけな約束を信じてきた者もいる。
すべての者、それぞれにそれぞれの道は続く。
やがてその道々は、たった一つの場所に集結する。
『地上最強』というたった一つだけの場所。
――――――――半年後。
いよいよ、すべての道がひとつに繋がる。
第36話「すべての道がひとつに繋がる」終わり
次回予告
バトル・サバイバルついに開幕!!
集結する最強を追う娘たち。
しかし開始時刻が迫る中、巻き起こる小さな異変。
「まだ二人、来ていないな」
――――――――同じ夢を追えど道を違えたあの二人は……来るのか!?
To be continued
石川フカーツ&サバイバルキタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━!!!!
辻豆さん乙!
乙!
「同じ夢を追う」って言ったらあの二人か?あの二人なのか!?
陳腐な展開
全員普通の異名がついてしまったか・・・
新垣なんかは、オチをつけるようなアダ名が良かったなあ・・・
いや、ボツになったから言ってるんですがw
ようやく本編って感じですね。長かったなあ〜
ようやく本編ですw
本当に長かったなあ〜
3スレも消費してしまった
でも無事ここまで書ききれてホッとしています
あとは怒涛のバトルシーンが続くので、テンション上げていきます!
もう少しだけ(じゃないかも?)お付き合いください
という訳で更新いきます
第37話「バトル・サバイバル開幕」
まだ冷たさの残る弥生の風に桜の花びらが舞い上がる。
緑の丘を越えると潮騒の香りが鼻腔をくすぐり、背丈の小さな娘は黄色い声をあげた。
「海だぁ〜!!」
3月31日。決戦の日。
舞台となる孤島を望む海岸線が集合の場所。
雲ひとつない快晴。それだけでこの娘の機嫌はすごぶる良い。
金髪のショートカットを風になびかせながら、娘はウーンとおおきくノビをした。
「矢口さ〜ん。よくそんなはしゃげますね」
呼びかけられて背丈の小さな娘・矢口真里は振り返る。
はるか後方から彼女より二まわりは大きそうな体を揺らす姿が見えた。
講道館の後輩、小川麻琴。その顔色はすぐれない。
「麻琴ぉ〜。な〜にガラにも無く緊張しちゃってんだよ。ほらぁ行くぞ!」
「ま、待って下さいよぉ!緊張くらいするでしょ普通!!」
「一番乗りすんだよ!急げ急げぃ!!」
みんなこの日にすべてを賭けてきているんだ。
緊張しない方がどうかしてるんだよ。と小川は思いながら追いかけた。
そんな気持ちは露知らず、矢口真里はスキップしながら丘を駆け下りていった。
「あージョンソン飯田!!」
「矢口か。あいかわらず騒がしいな」
一番乗りを狙っていた矢口。しかし集合場所にはすでにあの一団が待ち構えていた。
名実共に最強最大のプロレス団体。ハロープロレス。
パイプイスに腰かける社長・ジョンソン飯田。その傍らに立つ副社長・石黒彩。
そして両脇には今やプロレス界のスター的存在にまで成長したソニンと新垣里沙。
「先越されてたみたいっすね。矢口さん」
「ちっくしょー!一番乗り狙ってたのにいぃ!!」
ハロープロレスが早いのには理由があった。
4人目。あの娘が来るのでは、という想いがあったからである。
しかし予想通りというべきか会場にその姿はなかった。
「フフ…残念ながら、一番は我々では無い」
「え、誰?誰?どこ?」
会場一番乗りの件を飯田に訂正され、矢口はキョロキョロ辺りを見渡す。
すると誰もいないと思っていた草陰に一人の女が寝転がっていた。
「Zzzzzzzz……んあ〜」
後藤真希。
この日が待ちきれず真夜中に到着してしまい、結局寝てしまったトンデモナイ女。
彼女のふてぶてしさにはさすがの矢口も呆れて閉口した。
「夏美館の連中はまだ来てないみたいだね」
「フン。安倍のヤロウなら、本命は遅れて登場とか言い出しかねん」
矢口と飯田がそんな会話をかわしていると、丘の上から超ハイテンションな奇声。
「なちみーー!!!うみうみうみうみうみぃ〜〜〜〜!!!!キャッホー!!」
「コラ!のの!そんなに慌てると転ぶ…」
ズベッ!!
坂を転がり落ちながら、夏美館王者・辻希美参上!!
「だから、言ったべさ」
「…ふぁい」
対称的に真面目な顔して降りてきた『怪物』里田まい。
そしてその後ろには口を逆への字に緩めた紺野あさ美が続く。
一見変わりは無い、しかし小川麻琴、そしてハロプロに新垣里沙はその変化に気付く。
(…なんか変わったな、あいつ)
そして太陽の様な笑みを浮かべて夏美館館長・安倍なつみ登場。
「お待たせ。本命の登場だよ」
やっぱりと、矢口と飯田は微妙な苦笑いを浮かべ合った。
「ケッ、そんな笑っていられるのも今日までだぜ」
「ところで…そいつが5人目か」
飯田が尋ねたのは、なっちの後方に控える娘。
当日の今日まで夏美会館の5人目の選手は秘密とされていた。
辻や里田など一部の者は、なっちが藤本を諦めていないことに気付いている。
しかし当然というべきか藤本は帰ってこなかった。
あらかじめそれを予想していた里田は、補欠選手という名目で候補者を選抜していた。
・戸田りんね(東京本部)
・木村あさみ(北海道支部)
・斉藤みうな(静岡支部)
戸田は自ら身を引いた。すでに力が及ばぬことを悟っている。
という訳で木村あさみと斉藤みうなにより決定戦が行なわれた。
あさみは『重戦車』の異名を持ちトーナメントでも毎年上位に食い込む実力者である。
誰もが彼女の優勢を信じた。しかし試合を巧みにリードしていくのはみうなの方。
起死回生の突進を試みるあさみに、みうなは必殺のかかと落としを繰り出す。
このかかと落としは高橋愛により一度破られている。
それ以来、みうなはこの必殺技をさらに高みへと極秘に昇華させていたのだ。
かかと落としを読みガードするあさみ。
その瞬間、物凄い勢いで迫り上がる蹴りがあさみのアゴを打ち上げる。
仰向けに倒れる重戦車。決着!
上下から襲う蹴りはさながら野獣の牙の如し。みうなの新必殺技『獣牙』
こうして彼女もまたバトル・サバイバルに名乗りをあげたのである。
「ええ。彼女が夏美館の5人目。斉藤みうなよ」
安倍・辻・紺野・里田・斉藤
夏美館は絶対勝利の布陣を完成させてきたのである。
「ところで、そちらの4人目は?まさか石黒さんの復帰かしら?」
なっちが聞き返すが、飯田はこれに答えない。答えられないのだ。
石黒はゲスト解説である。決して4人目の選手で連れてきた訳ではない。
というよりも『ハロプロの切り札』と呼べる娘は…あの娘しかいないのだ。
あいつが来なければ仕方ない。ハロープロレスは3人で戦う。
ジョンソン飯田やソニンはその腹積もりができている。
新垣に至っては始めから、逃げ出したあの娘をアテにする気などない。
むしろ現れたら自分が倒すくらいの思いがある。あまりに因縁深き相手だ。
「あれ、誰だろ?見慣れない女っすね」
安倍・飯田と話していた矢口に、小川が声をかけてくる。
ふと全員の視線がそちらにうつる。
ずっと柔道の世界にいた矢口も見覚えが無い顔がそこにはいた。
しかし安倍や飯田はその顔を見て思わず息を飲み込んだ。
「あれはアミーゴ・ロムコーだべさ」
「強ぇのか?」
「数年前の最強一族だ。はっきりいって海外ではここの誰よりも有名人だぜ」
「フン。アミーゴだかボンジョルノだか知らねえが、
そんな時代遅れヤローはおいらが投げ飛ばしてやるよ」
「…まぁ、楽しみが一つ増えたってとこだべ」
するといきなり派手な音楽が鳴り出した。突然の轟音に不機嫌な顔で後藤も起き出す。
「んあ〜何もーうるさいねぇ」
『ようこそ!よくぞ逃げ出さずに来た勇敢な娘たちよ!俺がつんくや!!』
特設ステージから闇の首領つんくがアヤカと二人の少女を引き連れて登場。
(耳障りね)
なっちが顔をしかめる。長く聞くには不快な声。
『今から出場選手は全員あの島へ渡ってもらう。ルールは簡単。素手であること以外は
何でもあり!どんな手段を使ってでも最後まで勝ち残ればええ。最後の二人になった
時点でサバイバルは終了や。島の中央にある闘技場で決勝戦を行なう』
あってないようなルール。
勝ち残る、それだけが全てのルール。
『俺のかわいい娘達総勢18人があの島で待っとる。お前等の健闘を期待しとるで』
「ひとつ、いいかい?」
『おぉどうぞ、安倍なつみ選手』
「そいつら全員ぶったおして優勝したら、あんたもぶっとばしていいかい?」
平然と言い放つなっち。ブッと爆笑するつんく。
『ギャハハハハ!!!構わへんで!!できるもんやったらのぅ!!ギャハハハ!!!』
隣にいた辻だけが見た。安倍なつみの瞳にとても冷酷な色が浮かんだこと。
孤島へは自動操縦のボートが用意されている。
一人各一台。
片道の燃料しか積まれていない。
このボートのスイッチを押した瞬間、もう後戻りはできなくなる。
「ののが一番目だぁ!!」
「なにおー辻どけ!!おいらだよ!!」
怖いもの知らずの辻と矢口がまるで臆することなくボートに駆け出す。
そんな二人を尻目に、黄金の速さで後藤がボートのスイッチを押す。
誰よりも早く死闘の舞台へと躍り出たのは『黄金の娘』後藤真希だ。
「あーズルい!!」
「あの後藤って奴!いつもいつもおいらの先手取りやがって!投げてやる!!」
「…やめといた方がいいべさ」
とツッコむ安倍も、いつの間にかボートの脇にいる。
自動操縦なので島のどの位置に到着するかは、着くまで誰にも分からない。
仲間と組もうにも最初からバラバラになる確率の方が高い。
(一方の闇さんは最初からチームで動ける……どんな手段を使ってでもか、フン)
文句をつける気すら起きない。始めから徒党を組むつもりなんてないから。
それに実際サバイバルが始まれば敵も味方も関係ないであろう。
(自分以外の全員が敵だと思っていた方が…気が楽だべさ)
「なちみ、ワクワクするね♪」
「のの…」
辻は不自然なくらいはしゃいでいる。
加護亜依。
あの名前を聞いたときからだ。辻の態度が妙におかしくなったのは。
「ののはだまされやすいから気をつけな。味方と思ってた子が敵かもしれな…」
「大丈夫!大丈夫!なちみは味方だよね♪」
「のの、それは違う。次に会うときはなっちも敵だ。そのつもりでいな」
「またまたぁーなちみったら」
「茶化さないで。そういうルールなんだから。いい?」
「……う、うん」
少し不満気に唇をとがらせながら辻は頷く。
これくらいキツク言わなきゃ分かってくれないと思った。
だがなっちは嫌な予感がしていた。
少なくとも序盤の内はののと一緒にいるべきなのでは、とも思った。
だが首を振る。それでは辻が成長しない。いつまでも甘やかしてはいけない。
「紺野、里田、斉藤。お前達も気をつけて、がんばれよ」
「押忍!!」
門下全員に声をかけると安倍なつみはボートのスイッチを押した。
あとの3人も続く。
最後に唇を尖らせたままの辻がボートに飛び乗る。
(仲間を信じちゃダメって、なにさ…)
(ののをだます訳ないじゃん。……そうだよね、あいぼん)
辻希美を乗せたボートも、悲しみの再会が待つ孤島へと動き始めたのであった。
「石黒、このチケットを頼む」
「ああわかってる」
ジョンソン飯田は4枚目の出場権を解説として残る石黒に託し、ボートに乗りこんだ。
そして両隣の新垣とソニンに声をかける。
「俺は一人で動く。だがお前達はなるべく一緒に行動しておけ。敵も徒党で来るはずだ」
「それなら飯田社長も一緒の方が…」
「プロレスの神は敵味方の区別をつけん。一人の方が都合がいいんだ」
「た、確かに」
「案ずるな。お前達二人の実力は俺が一番認めている。それに…負けない理由もある」
「負けない理由?」
「聞きたいか?」
「はい是非」
「お前達が本物のプロレスラーだからだ」
ジョンソン飯田を載せたボートが動き出す。
「マメ。初めてだぜ」
「何がですか?」
「あの人に認められたことがだ」
「同じです。まいったな、もぅ体が振るえてきちゃいましたよ」
尊敬する背中を見つめる新垣里沙とソニンの魂には、熱い炎が着火していた。
同時にスイッチを押すプロレス界の若き二大エース。
『光』も『闇』も関係ない!『プロレス』の最強を証明してやろう!
後藤真希を先頭に次々と孤島を目指すボートの群れ。
それらを遠巻きに眺める娘達―――――――あいつらが来た!
「美少女戦隊キャメレンジャー参上!!」
「違か!れいにゃーず参上!」
「はい!超・美少女サユミン参上!!」
「あ〜ずる〜い!じゃあエリは超・超・美少女戦隊いぃ!!」
「じゃあ、さゆは超・超・超・美少女」
「じゃあじゃあエリは超・超・超・超……」
3人の様子を、冷たい視線で遠巻きに眺める藤本と保田。
「あんた師匠ならあいつら止めろ。こっちまで同類扱いされる」
「無理よ」
こいつらこそ光も闇も何もお構いなしの暴走軍団!!亀井絵里・田中れいな・道重さゆみ。
そしてクールに威圧する『狂気の満月』藤本美貴
師匠である毒手の保田圭は出場しない。
自分が出ずとも確実に優勝できる自信に満ちているから。保田は高らかに声をあげる。
「さぁ、いくわよ!!美少女戦隊ケメレンジャーのお出ましよ!!」
「オエ〜」
亀井・田中・道重は1000のダメージを受けた。
(私は他人だ…うん)
もはやツッコム気すら起きない藤本は、一人でとっとと会場へと降りていった。
今回、ゲスト解説として招かれたのは4名。
石黒彩。市井紗耶香。保田圭。福田明日香。
いずれも格闘技界の歴史を支えてきた猛者ばかりだ。
戦場となる孤島には無数のカメラが設置されており、多面モニターで観戦できる。
そのモニターの前に彼女達と主催者のつんくが並んで座っている。
「開始時刻まで…残り30分やのぅ」
保田の弟子である4人が孤島へ渡ったあと、柴田あゆみが一人きりで現れた。
不気味な沈黙のままルール確認を行なうと意味深な言葉を残しボートに乗り込む。
「武器は使わない。自分の体以外はね」
これでほとんどの選手が揃った様に思われたが、つんくはリストを確認して呟いた。
「まだ二人、来ていないな」
よく見るとボートがまだ2台残っている。
残り2枚のチケットのうち1枚はハロープロレスの石黒が握っている。
気になるのはもう1枚だが…まだ来ていない市井か福田が持っているのだろうか?
などと考えていると、その内の一人、福田明日香が松葉杖を付いて現れた。
右手には1枚のチケットが握られている。
「なんや、あんたが出る気か?」
つんくの問いに福田は首を振る。その顔に覇気はない。
結局、当日の今日となっても彼女からは連絡一つ無いままであったのだ。
(生存確率…そんなもの知らない)
(人類未踏のジャングル)
(凶暴な野獣の生息地)
あらためて考えてみれば無茶苦茶な話であった。
生きていることを期待する方がどうかしていたのだ。
(だが…それでも…)
(それでもあと少しだけ、希望をくれ)
福田明日香はチケットを握ったまま、ゲスト解説席に腰を下ろした。
「おひさしぶりねぇ。私が怖くて逃げ出した福田明日香さん」
嫌らしい笑みで出迎える保田圭。はるか昔のトーナメントの話。
保田は、福田が自分を恐れて逃げ去ったのだと勘違いして笑ったのだ。
しかし福田はまるで相手にせず聞き流している。
「おーやだやだ。両隣のどちらも悲痛な顔していて」
反対側には石黒が腰を下ろしている。
こちらもチケットを握り締めて、あの娘が来ることを願っている。
だから保田は皮肉って言ったのだが、どちらもまるで反応が無い。
(やれやれ、誰を待っているのか知らないけど。…うちの子に勝てるはずもないのに)
石黒と福田が待つふたり。
あのふたりである。あのふたりしかいない!
最強を目指す道は、二人を生きてこの地へと導かせるか!?時は迫っている。
逆への字
辻豆さん乙!
733 :
ねぇ、名乗って:04/11/08 23:47:48 ID:KmBrASEQ
辻豆さん乙れしゅ!
続きがワクワク!
おつです。わくわくしますな。
更新オツです。圭ちゃんひとりだったらケメレンジャーじゃなくて
美少女戦士オシエンジャーですよね。
あと亀井は美少女戦隊キャメレンジャーが覚えれず、
美少女キャメレンジャーって言ってた。
ある意味そっちの方が正しいんだけどね。一人だから。
「開始まであと10分か。結局もう誰も来ないみたいやの」
「まだ10分ある」
「…まぁええわ。誰が来ても優勝はうちの石川か加護やろ」
つんくのこの台詞に保田圭がピクリと反応する。
「何を言うのかしら。優勝は藤本・亀井・田中・道重の4人の誰かよ」
「もちろん俺はあいつらの実力は知っとるで。確かに強いが優勝にはちと役不足や」
「つんくさんはあの子達の本当の恐ろしさを知らないから…貴女はどう思うの、石黒さん」
石黒は、つんくと保田に視線を向けると小さくため息をついた。
「あんた達は肝心な人間を忘れている。うちの飯田と夏美館の安倍だ。
なんだかんだ言っても結局、この二人を中心にサバイバルは展開するだろう」
「ククク…飯田と安倍かい。まぁそれは無いやろな」
「同感ね」
「どういう意味だ?保田、お前まで」
「その二人は名前が売れすぎとる。それだけ狙われるっちゅうことや」
「そういうことよ。このルールでは圧倒的に不利になる。いかに安倍と飯田でも…」
とは言いつつも、保田は自分の台詞に自信がある訳ではなかった。
例え複数相手だろうとあの二人が負けるという姿がどうしても想像できない。
なっちの次元の違いすぎる強さを、身に染みて知っているからだ。
だが今の藤本と亀井達ならば、その想像を打ち破られると確信している。
(本当に楽しみだわ。復讐のそのときが…)
「不利な状況だということをあの二人が気付かぬはずがない。
その程度で敗れる程の二人ならば、もう何年も前にこの世界から消えているさ。」
すでに現役をリタイアしている石黒は心の底からそう思っている。
もう7年以上は経つか。
この格闘技の世界でそれだけ長きにおいて頂点にいることの厳しさ、想像もつかない。
飯田圭織と安倍なつみ。この二人は本当に尊敬に値する。
「言いよるのぉ石黒」
「フン。だから順当にいけば決勝戦は飯田対安倍になると思っている」
「そこまで予想しとるか」
「逆に言えば、もし飯田圭織と安倍なつみを倒す者が現れたとしたら…」
「したら…?」
「その娘がこのバトル・サバイバルの中心人物となるだろう」
言い切った石黒。しばしの沈黙。
流れを変えようと保田は福田にも話を振る。
「…福田さんは黙っていらっしゃる様だけど、ぜひ予想を聞かせてもらいたいわねぇ」
「予想か」
福田は静かに手の中のチケットを眺めた。
「優勝予想は分からんが、可能性を持つ奴ならば知っている」
「誰?」
「あいにく、まだここには来ていな……」
そのときだ。
ゾクリと。
まるで『恐怖』という言葉を具現化した様な感触が、場の全員の背筋を駆け抜けた。
嫌な汗がぬるっと額を伝う。心臓が爆発しそうなほど動悸が激しい。
ゆっくりと、後ろを振り返った。
木々の間に一人の娘が立っていた。
それは間違いなくそれであった。
(何故ここに…)
あのクールな福田が唇を紫に震わせて後ずさる。
(何この子?)
(なんやこいつ?)
保田やつんくでさえも、その邪悪な気質に目を疑う。
(本当に…亜弥?)
彼女を待っていた石黒すら、思わず自らに問いかけた。
そこに立つ娘の形をしたそれは…まぎれもない『死神』であったからだ。
「匂うね」
ポツリと呟く。
前髪をかき上げる。
うすく笑む。
そのすべてが『死』を連想させる。
「血の匂いだ」
松浦亜弥が牙を覗かせて、現れた。
「あ、亜弥ちゃん!待っていたぞ。このバトル・サバイバルに参加しに来たんだろ。
チケットは用意してある。またハロープロレスとして戦って…」
気を取り直しなんとか声を掛けたのはやはり、ハロープロレスの石黒。
松浦にとって高校時代から高橋流道場で世話になったお姉さん的存在である。
ところが、今の松浦はその石黒の手をピシッとはねのける。
「それ以上、近寄るな」
「え…?」
「プロレスなんて遊びは……忘れた」
氷のような瞳。氷のような声。
あの頃の亜弥はもういないのか…。石黒は愕然と肩を落とす。
「この一年で…さらに修羅場をくぐったのか」
「あぁ、あんたか。よく生きていたね。元死神さん」
次に声を掛けたのが福田明日香。覚悟はできている。
「バトル・サバイバルに参加しにきたのか?」
「さぁね。殺意の風に誘われてここへきた。それだけだ」
「残念だがチケットを持たぬお前に参加資格はない」
絶対にこの女を参加させる訳にはいかない。そう思って福田は言った。しかし…。
「関係ないね。ここにいる奴全員殺せば誰も文句は言わないだろう?」
福田明日香。石黒彩。保田圭。つんくと配下のアヤカ、岡井千聖、萩原舞。
松浦の吐いた一言に全員が凍りついた。
「言ってくれるじゃない」
ギラついた蛇の如き視線で、前に躍り出るのは保田圭。
ヤル気だ。
「やめろ!!」
「止めるな福田。こいつは殺す」
「お前が死ぬぞ!」
一旦キレてしまった保田はもう止められない。
右腕の包帯を巻き取る。悪魔の所業『毒手』再び!
「後悔しても遅いわよ」
松浦は保田に視線すら向けない。保田の右手は難なく松浦を捉えた。
「触った!私の毒手に触ったわよ!アハハ…これでお前は死ぬわ!アハハ…」
…ところが、松浦は平然と触られた箇所をつかみ取る。
「戦場では猛毒の兵器など当たり前だ」
「…え?」
「とっくに免疫はできている」
グウギュギュリュ!!!!!
「ぃぎゃああああああああああああああああああ!!!!!!」
言い終わると松浦は、握力で毒手をにぎり潰す。
骨の砕かれる音に転げまわる保田。
「むしろ、お前の汚い手に触られたことの方が…問題だね」
想像を絶する光景に、他の者は何もできない。
あの恐ろしき『毒手』の保田を、まるで赤子の様にひねり潰す超越者。
(私と戦った一年前より…はるかに強くなっている)
福田明日香の絶望はさらに深みを増した。
「次は誰かしら。後ろで大きく構えてる大将さんはどう?」
闇の王・つんく。
もちろん唯我独尊の松浦亜弥にはそんなこと関係ない。
アヤカ・岡井・萩原らがつんくの前に立ちはだかる。
「ええ度胸やの小娘。俺に手ぇ出したらどうなるか、知らんようやの」
「知らないし、興味もない」
自分以外のすべてを敵にまわしても構わないといった眼光。
まだ年端もいかぬ岡井と萩原はその眼光だけで、気落とされてしまった。
このまま松浦亜弥の手で皆殺しとなるのか…。
「やめろ松浦」
松浦の前に立ちはだかったのは福田明日香。
コロンと松葉杖を倒す。すでに自分の力で歩けるまでに怪我は治っている。
「バトル・サバイバルは殺し合いではない。格闘技だ。貴様の出る幕ではない」
「変わったね福田さん。あんたの口からそんな台詞」
福田明日香を変えたのは一人の娘である。
もちろん亜弥はそんなこと知らない。
「貴様を死神にしたのは私の責任だ。命に代えても私が止める!」
「ただの人に成り下がったあんたに何ができるかしら?」
「……再び死神にでもなろう」
「ふ〜ん、また殺されたいんだ」
とても勝てない。
前に立っただけで福田にはそれが理解った。絶望的に開いた実力差。
しかし引き下がる訳にはいかない。
一人の娘を黒き闇に包まれた死神へと変えた責任。
一人の有望な若き格闘家を死地に追いやった責任。
そしてこれ以上の犠牲を出さぬ為に…。
(この命に代えてでも、この死神はここで止めなければいけない!)
死を覚悟した。福田は吼え、松浦に飛び込んだ。松浦は笑った。
「死ね」
亜弥の手が福田の首を刈ろうとしたそのときである!
闇の世界を切り裂くほど明瞭な雄叫びが、丘の向こうから鳴り響いたのは!
「まにあったああああああああぁぁぁぁぁぁ!!!!」
一見。野生の動物が飛び込んで来たのかと思う。
それほどに汚れた塊が、丘の上から飛び降りて来たのだ。
毛皮に包まれた体。
土垢に濡れた肌。
ボサボサの髪。
恐れなきまっすぐな瞳。
その場の全員が、それの姿形に目を奪われた。
「あ、バトル・サバイバルってここでええんやろ?」
その口から出たのは日本語。しかもかなり独特な訛り。
福田明日香は、こんな場所へこんな格好で来てこんな喋り方をする奴を一人しか知らない。
「ん、ん、あの〜、皆さん固まってえんと誰か答えてや」
生きていたか。
一度は死神へと堕ちた自分が涙というものを流すとは思わなかった。
だが今、こんなにも涙をこらえている。
万感の想いを胸に、福田は待ち望んだ弟子の名を呼んだ。
「高橋愛」
自分の名を呼ぶ声に、愛は目をまぁ〜るくして飛びついた。
「あ〜〜福田さん!!こんなとこにいたぁ〜!探したんやよ〜!」
「よく生きて秘境から出れたな」
「ジャングルなんか一ヶ月前に出たわ。でもお金もないし場所も言葉もわからんし、
そんで走って銀杏まで戻ったのに福田さんえんのやもん!!いじわるや!」
「走って?アフリカから中国へ?」
「ほやあ!途中で道まちがえて迷って一ヶ月もかかってもたが」
「ここへは?」
「銀杏のマスターに福田さんの伝言を聞いて、急いで泳いで来たんやが!も〜!」
「中国から泳いでか?」
「一文無しやしこんな格好やし、船も電車も使えんが!全部走ったわ」
「ハハハ」
「笑い事じゃないわ!ほんとに死ぬかと思ったんやよ!」
福田は笑った。なんというバカ。
声を出して笑うなんて何年ぶりだろう。
「愛……」
「はい?」
「お前に会えてよかった」
「ハァ?何すかいきなり!?恥ずかしいわ!」
「…今すぐでも戦えるか?」
24時間臨戦状態のジャングルを生き抜いた高橋愛にとって、それは愚問である。
「当たり前やよ!」
戦える。その為にここへ来たのだ。
愛は怪物たちとの決戦の舞台となる孤島を眺めた。――――――1人の娘が視界に入る。
「えっ!?」
「…」
「亜弥?亜弥や!!」
「……愛」
高橋愛と松浦亜弥。
実に2年近く道を違えた親友同士の再会。
「うわぁ!!ほんとひさしぶりぃ!!元気やったか!」
「うん」
「私も元気やよ!」
「見ればわかる」
「あっ、そっか〜ニヒヒヒ」
「ちょっと待って」
喜んで駆け寄ろうとした愛を、亜弥が制す。
「それ以上、近寄らないで」
「え?」
「…自分が抑えきれなくなるから」
口元の牙を手で覆う亜弥。
まだ、ここじゃない。二人が目指した決戦の場所はこんなところじゃない!
「あ〜〜そやの」
理解した愛は歩みを止める。
二人を別つ距離。約10m。それ以上近づいたらもう我慢できなくなる。
これはまだ再会ではない。
「決着をつけるのは地上最強を決める場所やった」
「あぁ」
「それはそうと…亜弥……ずいぶんと変わったね」
「そっちこそ……愛……ずいぶんと変わったよ」
高橋愛はなつかしい松浦亜弥の顔を見つめた。
松浦亜弥はなつかしい高橋愛の顔を見つめた。
二人とも語りつくせないほどの修羅場を越えてここまで生き抜いてきた。
「楽しみにしてるから、途中で負けたあかんよ」
「誰に言ってんの?そっちこそね」
「うん、じゃあ」
「上でね」
バッと二人は同時に背中を向け合った。
次に向かい合うときは…そういうときである。
亜弥は死神の気を潜め、ハロープロレスの石黒の方へと歩む。
「…亜弥」
「気が変わりました。そのチケットを受け取ります」
「ハロプロに戻るってことか?」
「いいえ。ジョンソン飯田も倒すつもりです」
「…そうか。わかった」
石黒はハロープロレス最後のチケットを松浦亜弥に渡す。
たとえそれがハロプロにとって最大の敵を招く結果となったとしても…
(あとは信じるのみだ……運命と、飯田圭織と、松浦亜弥を)
「愛。これがお前の出場チケットだ」
一方、福田は高橋流道場で受け取ったチケットを愛に渡す。
「それから、これも」
「わぁ」
もう一つ福田が取り出したもの、それは高橋流の胴着であった。
「流石にそのボロボロの水着みたいな格好で大会には出せないだろう」
「うわぁ〜ありがと、福田さん」
「愛。お前はあくまで高橋流柔術だ。福田流などにするつもりはない。その血を忘れるな」
「うん」
「それから最後にひとつ」
(何もできない出来損ないの師匠からの最後の言葉だ)
「勝ってこい」
松浦亜弥・高橋愛。
二人を乗せた最後のボートが、島の左右へそれぞれ分かれて行く。
(本当にここまで来たんだな)
二人が高校生だった頃から知る石黒は、懐かしむ思いで見送った。
「聞いたよ。あんたが日本一なら、私は世界一の格闘家になるんやって」
「ベーだ。じゃああややは宇宙一のプロレスラーになるもん」
「宇宙にプロレスなんてないわバカ!」
「やる気?」
「やるか?」
二人ともまだまだ子供だった。
それがいつの間にか、本当に頂点を目指せる場所にまで成長した。
想像を絶するほど過酷な修羅場を越えて。
感慨深いものがある。
できることならば本当に決勝戦で二人を戦わせたいという気持ちも少なからずある。
だがそれを叶えるには、あまりにも強烈すぎる怪物達が待ち受けている。
もう、自分には手の出しようも無い世界。
「がんばれ」
それだけが唯一、石黒彩個人が二人へ送ることのできる言葉だった。
(愛ちゃん。亜弥。がんばれ)
第37話「バトル・サバイバル開幕」終わり
次回予告
バトル・サバイバルの幕開けとなる第一戦は、あの娘とあの娘のリベンジマッチ!
「思い出すねぇ、あの大会」
この試合をかわきりに、島のアチコチで激闘の火蓋は切って落とされてゆく。
そして序盤戦最注目の一戦も!
To be continued
更新乙
次回も楽しみにしてます
いよいよですね
お、更新来てた。 辻豆さん乙です!序盤戦最注目とは…楽しみ!
なっちい
あの口調は矢口かな
一番最初の方の大会のような気がする
第38話「序盤戦」
高橋愛は海岸線に降り立った。
島の西側、長い砂浜が広がる一帯に着いた様だ。
『ただ今よりバトル・サバイバルの開幕を宣言する!!』
巨大なスピーカー音が聞こえた。
どうやら島の至る所に小型カメラとスピーカーが設置されている様だ。
出場選手全37名が島に立ったのを確認して合図したのだろう。
(こんな舞台まで用意するなんて、そうとう物好きな人やの)
(ま、ありがたいけどね)
愛は辺りを見渡した。
島の中央に巨大な城が見える。あれが闇の根城だろう。
左右は長く伸びる砂浜、前方は少し小高い堤防の先に緑の森が広がっている。
するとその森から一人の女が現れた。
(いきなり?いや、私を狙って待ち伏せてたか)
「50%の確率が当たりましたわ」
「ああ、お前かぁ」
「最後のボートのどちらかが貴女だと信じていましたから」
この女はわざわざボートの方向を追って、海岸線で待ち伏せていたのだ。
すべては高橋愛にリベンジを誓うため。
「いいよ。闘ろう。斉藤美海」
出場選手の誰と誰よりも早く出会った二人。
バトル・サバイバル第一試合は高橋愛vs斉藤美海
「思い出すねぇ、あの大会」
両足を肩幅に広げながら、愛は言った。
思い返せば、高橋流柔術の公式戦最初の相手がこの娘である。
あのときと同じ夏美会館の胴着と構え。しかしその顔つきはあの頃と比較にならない。
「お前もめっちゃ修行したみたいやの〜」
「当たり前ですわ。あなたにリベンジできるこの日を待ちわびていた」
「そっか」
「覚悟なさい!」
ザッと美海は砂浜を駆けた。
足場の悪いこの場でも、揺らぐことなく一直線に向かってくる。
相当に足腰の鍛錬も積んだのであろう。
一方の愛は両足を肩幅に広げて棒立ちのまま、これを待っている。
とても戦いのスタイルとは思えないが、顔には笑みが浮かんでいた。
(嗚呼〜なつかしぃこの感覚)
やはり人間を相手に戦うのが一番いい。
そんなことを考えていた愛の頬に美海の拳が走る。
当たった!!と思った美海だが、拳はギリギリの所で宙を切った。
(何っ?)
愛はまだ棒立ちのまま空を仰いでいる。
「いい天気やよ」
棒立ちのノーガード。そんな構えで愛はこんなノンキな台詞を吐いている。
当然、美海の怒りに油を注ぐ。
「ふざけないで!」
後ろ回し蹴り三連打。
美海ほどのバランス感覚がなければ、この砂浜でなかなかできる芸当ではない。
しかし、そのすべてがふぅと空振りに終わる。
愛はまだ一歩も動いていない。
美海は怖くなってきた。
まるでそこに存在していないような…幽霊でも相手にしている感覚。
もちろん愛は幽霊ではない。
上半身のわずかな振りだけで攻撃を避けているのだ。
それも美海ほどの実力者が気付かない程のスピードで。
「な、なんですの!?あなた…本当にあの…高橋愛?」
ニィと愛は笑ってみせた。それが余計に美海を恐怖に誘う。
最初に闘ったときとも、トーナメントで石黒や辻と闘っていたときとも、まるで別人。
強くなっているという類の変化ではない。
そこに立つ存在・恐怖・威圧・全てが別人。
この短期間で一体なにをすれば、こんなにも人は変わるというのだろうか!?
「もっちろん。高橋愛やよ」
「いいですわ。奥の手のつもりでしたけれど、やはりこれを使うしかないみたいですね」
「おっ!」
美海の気の質がグゥンと上がった。
これはかつての自分を越えているかもしれない。
(何かする気やなぁ)
スッと、ここで初めて愛は膝を落とした。
棒立ちからいつでも動ける体勢へと変化したのだ。
「賢明な判断ですわ」
「たしか…お前の得意技は…」
ニヤリと美海が牙を覗かせると、右足を高らかに上げた。
得意技は…かかと落とし!!
(前回の失敗は…片足で不安定になった所を倒されたこと)
(しかし今回は違います!)
ものすごい勢いで振ってくるかかとを、愛は上半身の振りでかわそうとする。
そのとき真下から競りあがってくる別の物体!
左の軸足による蹴り上げだ。
上下から獣の牙の様に相手を襲う美海の新必殺技『獣牙』
タックルに来た相手はこの下からの蹴りでアゴを叩き割られる。
この技の必殺度は、同門の木村あさみを相手に証明済み。
「私の勝ちです!!」
ガガッ!!
普通だった。
上下連蹴りというこのアクロバティックな技を愛は普通にかわした。
獣の牙を避けることなど日常茶飯事だという顔で。
「え!?」
「獣の牙って…そんなもんじゃないよ」
「あ、あなた…」
「だってそれ、ちっとも怖くないもん」
「……っ!!」
自慢の必殺技を少しの動揺も無く避けられたことに、うろたえる美海。
想像をはるかに超えている。
この高橋愛の変化は……想像を絶している!
「本物、教えたげる」
右手の指で牙を形作る愛。
すると美海は物凄い重圧を感じ、動けなくなった。
(な、何ですの…!?)
牙の指をゆっくりと美海の鼻先に近づける。
(嫌……)
(殺されるっ!!)
美海の目に、手の牙が生身の野生肉食獣に見えた。
(やめ…)
「やめてえぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!」
―――――――――――――――――――――世界が戻る。
青い海と白い砂浜。
美海は砂の上で尻餅をついていた。
目の前では牙を解いた高橋愛が笑っていた。
「どうやった?」
まだ体の震えが止まらない。
やっとの思いで喉から絞り上げた言葉。
「…ま、参りました」
「うん!」
リベンジどころでは無かった。
相手はもう見えないくらいの遠くへ行ってしまっていた。
触れることもできなかった。両足を動かせることもできなかった。
「強く…なりましたわね…本当に」
「ほんとか!よかったぁ!!誰とも試合してないから分からんかったんや!そっかぁ!」
呆れる。なんてことはとうに越えている。
「何を目指してらっしゃるの、高橋さん」
「決まってるが。いちばん上やよ」
もうそれが、ちっとも無謀に聞こえない。
『勝負あり!』
安堵のため息をついたとき。愛と美海は思わず島の中央部を見上げる。
突然、巨大なスピーカー音が島全体に向けて響き始めたのだ。
『敗者!斉藤美海!』
つんくの声。
今の戦いの一部始終が何処かで見られていたのだ。
そして放たれた決着の合図。これが審判のいないこのサバイバルの勝敗判定法か。
『勝者!高橋愛!』
自分の名前も呼ばれてドキリとする愛。
これで島全体に斉藤美海を倒したのが高橋愛だと知れ渡るということになる。
(な〜るほど、そういうシステムね)
『残り36名!』
バラバラに散りながらも誰が誰を倒したのか知ることができる。
その情報はこの生き残り戦において、とてつもなく大きな意味を持つ。
勝者として名が何度も挙がる娘は…まちがいなく強いということ。
逆に名を呼ばれず生き残る娘は…無傷で戦闘を回避している、別の意味で危険。
その情報は終盤になればなるほど大きな意味をもってくる。
戦うか?逃げるか?
もちろん愛は最初から前者しか考えていない。勝って勝って勝って頂点へ!
愛が到着した砂浜から見て孤島のちょうど反対側。
島の東側、ゴツゴツした岩肌の絶壁に松浦亜弥のボートは到着していた。
もちろん彼女の所にも愛が勝利した放送は届いている。
(あんにゃろ〜もう戦いやがったのか。ズルい)
対戦相手どころか生物すらいないような絶壁の真下で亜弥は立往生していた。
とりあえずはロッククライミングするしか選択肢はないようだ。
(あ〜なんかイライラしてきたぁ!私も早く戦いたいぞぉ!)
牙を研ぎながら、垂直に近い絶壁を亜弥は腕の力だけでスルスルと登っていった。
安倍なつみは島の北西に広がる森の中でこの放送を聞いていた。
(美海…負けたか)
早すぎる、と思った。
開始の合図からまだ3分も経っていない。
すぐに出会ったとしても戦闘時間は2分足らずか?
はっきり言って美海は強くなっている。
高橋愛といえど、これほどの短時間で勝てる娘では無くなっているはずだ。
(不意打ち……いや、高橋はそんな手を使う娘ではない)
(…ということは姿を消していたこの一年で……相当に化けたか)
もともと安倍にとって高橋愛は、紺野を倒して計画の邪魔をした敵である。
コロシアムで一時手を組みはしたが、やはり高橋流が敵であることに変わりは無い。
(高橋愛。一応記憶には留めておくべ)
だがそれよりも優先すべき敵がいる。
つんくの手先。いわゆる闇の軍団と呼ばれる連中だ。
誰よりもこいつらの全滅こそが最優先事項。
…とはいえ、今のなっちは立ちはだかる者ならば誰であれ手加減しない。闘気の塊。
(まぁ……皆殺しでいいべさ)
なっち皆殺しキタ━━━(゚∀゚)━━━!!
766 :
名無し募集中。。。:04/11/19 23:15:31 ID:QRb4rHj+
皆殺し!皆殺し!皆殺し!皆殺し!
意外にアヤヤがイイ奴でビックリ
もっと捻じ曲がってるものだと思ってた
768 :
名無し募集中。。。:04/11/20 14:48:29 ID:rRoQVpFS
なっち皆殺し!!!!!!終に!終に!うれしいです!辻豆さん!
ずっと前からみんなが熱望していたなっち皆殺し!
楽しくなってきたぁ!高橋や松浦は手刀一発で倒されるとか、タノしみぃ
新時代のドラゴンボールですか?
おおう!なっち皆殺しきたよ!きたよ!
♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪みなーごろーしー♪♪♪♪♪♪♪♪♪
>>765>>766>>768>>770 皆殺し厨が多すぎw
皆殺しにしちゃったら小説終わってしまうと何度言ったら分か…w
>>767 愛と再会した影響かな。やっぱり高橋愛は特別な相手であって。
それ以外の娘には結構捻じ曲がっているかも。
ただサバイバルの間でも色々と変わりそうです。
>>769 かめはめ波出したり、空飛んだりはしないんでw
ギリギリ現実的な方向で。無茶な設定な人も色々出てきていますけど…。
闇の者達はつんく城の広間でバトル・サバイバル開幕の宣言を聞いた。
プロジェクトKの嗣永派や夏焼派と呼ばれる連中は、すぐに徒党で飛び出していく。
Kの子供達にとってはどれだけ敵を倒したかが自分達の評価につながる。
おそらく積極的に戦闘を仕掛けていくであろう。
すぐには動かず出方を見る子達もいる。村上や矢島や熊井といった派閥を組まぬ連中だ。
そんな中、初の勝利者の放送が流れる。
「始まったようやな」
中澤裕子が窓の外を眺めながらニヤリと笑みを浮かべる。
さっきから声を出しているのは彼女だけである。
他の石川や加護といった者たちは無言で押し黙っている。
(洗脳されとるようやから仕方ないっちゃ仕方ないんやけど……空気重いわ)
『秘密兵器』と称されるフードの娘もしゃべらない。
平家みちよもKの子に簡単な指示を出すだけで、無駄口は一切たたかない。
もともとプロレスラーでお祭り好きの中澤にはどうにも居心地の悪い空間であった。
「ちょっと!あんたらはどうするん?戦いに行くんか?ここで待つんか?」
中澤は石川梨華・加護亜依・秘密兵器の娘・平家みちよの4人に向かって言った。
まともに答えたのは平家だけ。
「私は最後まで城に残る。つんく様の指示だ」
「……つんく様、ね」
すると突然、加護亜依が前に出てきた。
クスリでの洗脳をほどこされた娘の中で、もっとも濃度の高い洗脳を受けたのが彼女。
明るくて無邪気であった加護亜依の記憶は少しも残されていない。
今や言葉どころか感情すら出さぬ戦闘マシーンと化している。
「……」
加護は無言で外へ通じる扉へと歩き出した。
「ほぅ、あいつは戦る気やな」
感心する中澤の横で、目を光らせる平家。
彼女は小声でKの娘に指示を出した。
「村上。矢島。お前達はしばらく加護の後をつけろ」
「はい」
「はい」
「洗脳が解けるとは思えないが、念の為だ」
「もし裏切った場合は?」
村上愛が尋ね返す。
平家は少し考えて答えた。
「好きにすればいい」
「了解」
加護は何かに誘われるように……外への扉を開いた。
加護に続いて村上と矢島も出る。そのあと他のKも全員が出て行った。
こうして広間には中澤・平家・石川・フードの娘の4人だけが残る。
「さ〜て、石川さんと秘密兵器のあんたはまだ答えてへんかったねぇ」
「…」
「なんやまだダンマリかい」
「そういう貴女はどうする気?」
と聞き返したのは平家。ようやくあった反応に、中澤は嬉しそうに答える。
「うちか、うちはしばらく様子見や。序盤はどうせザコの潰しあいやろ」
「たいした自信ね」
「うちの狙とる奴は序盤で消えるほどヤワな奴やないから」
「なるほど」
「あんたもそやろ。秘密兵器さん」
中澤は奥に座るフードの娘に言う。
返事はない。だがフードの奥の目がチラリと動いた。
「どうせあんたも狙いは一人だけやろ。安心せい、ちゃんと譲ってあげるから」
中澤は満足気に笑った。
その笑い声にかき消されるほどか細い声が……意外な所から漏れる。
「私、戦います」
ポツリと呟かれた声。なんと壁によりそい佇む石川梨華の声であった!
思いつめた瞳でずっと足元を見つめている。
「なんやしゃべれるんかい」
加護と同様に重度の洗脳で言葉すら発せないと勘違いしていた。
だが石川の目に宿るその意思は、確かに自我を持つ瞳。
「私は…戦わなければ……戦い続けなきゃいけない…」
「思いつめ過ぎちゃうか?」
石川梨華の事情を知らない中澤は軽く返す。
だが石川の表情はどんどん深く沈みこむばかり。
(戦い続けることだけが…あの人を救う唯一の方法)
「この城に入ってきた者は……誰であろうと私が倒します」
きっぱりと宣言する石川梨華。
平家とフードの女は無言でそれを聞く。中澤だけがニヤついた。
「言うねぇ。けどジョンソン飯田だけはあかんで」
「全員…です」
「あかんてコラ!」
「全員……」
「しつこい!!」
結局、1F広間には石川と平家が残り、中澤とフードの娘は上で待つことになった。
中澤とフードの娘は二人並んで階段を上がる。
すると、それまで一言も口を割らなかったフードの娘が突然口を開いた。
「あの石川梨華という子、どう思う?」
「おお!珍しいなぁ。やっとしゃべりかけてくれたんか!」
「質問に答えて。あなたは完全に闇の者ではないからよ」
「ウフフ…お互い闇を利用しとる立場同士かい。まぁええ…石川のことか」
「ああ」
「はっきりいって分からん。それほど強そうには見えんし…戦闘に向いてなさそうや」
「同感ね。それでもあのつんくが選抜するからには、何かあるのか?」
「まーまーそう気にせんこっちゃ。すぐに敵対する訳やないやろ。利用しとけばええねん」
「……あんたはもう少し気をくばった方がいいと思う」
「ご忠告どうも」
「ということはやはり気付いていないか。Kの中にもバケモノが二匹ほど潜んでいるぞ」
「K!?あのガキんちょどものことか!」
「ああ。おそらくあの大人数はバケモノを隠すカモフラージュ」
「へぇ〜。そこはまったくノーマークやったのぅ」
「巧妙に力を隠して子供の中に紛れてはいるが……私の目はごまかせない」
「プッ…ククク…」
「何がおかしい」
「いや、何も考えてなさそうなあんたが、こんなに注意深く観察しとったのに驚いたんや」
「闇に利用される気はないからね」
「結構なことや。まぁせいぜい頑張りや。うちはうちのやり方でやる」
フードの娘と別れると、中澤裕子は2Fの広間に陣取り、静かにそのときを待つ…。
島の南東には古い集落が残っている。
ずっと昔にはこの孤島にも、ひっそりと島人達が住んでいたのだろう。
(捨てられた村かぁ)
紺野あさ美は誰もいなくなった廃屋の合間を静かに歩いていた。
こんな場所でもいつ誰と遭遇するか分からない。
常に周囲を注意しながら進む。
(ここは障害物が多すぎる。戦うなら…もっと広い場所がいいな)
色んなタイプの敵がいる。
中には障害物や地形を利用して戦闘を有利に運ぶ者もいるであろう。
どちらかといえば紺野はそういった機転が利くタイプではない。
使用するのは己の肉体のみ。
それだけを信じて鍛え上げてきた。
だから紺野は闇雲に動かず、なるべくそういった地形の良し悪しを考慮に入れている。
(集落に長居するのは得策じゃない。早く別のエリアに動こう)
後方には山が広がっている。山はもっといけない。そこら中が障害物だらけだ。
すると山の手前で鳥居と長い階段を見つけた。
(神社かな?……境内ならある程度のスペースがあるはず)
即決すると紺野は足早に階段を上りだした。
上り切る途中で、境内から何者かの気配を感じて足を止める。
(誰かいる。気配は一人)
このまま行くか?戻るか?
考えは一瞬で決まった。前へ。
勝利の女神は常に前進する者にこそ微笑む。
拳を握り締める。いつでも準備はできている。
(みてろ愛!次は私よ!)
紺野あさ美は神社の境内に踏み込んだ。
皆殺し厨なんていわないでくださいよぉ・・・
皆純粋になっちの皆殺しが見たいだけなんで・・・
まあ、それだけなっちのキャラが際立ってるんでしょうね。
逆に高橋とかはどうなっても高橋・・・といった感じでしょうか、まあそれもおもしろいんですが
779 :
名無し募集中。。。:04/11/25 02:20:20 ID:N/EyY6XN
ふ〜
うーん。洗脳されてきた・・皆殺しが見た杉、キャラがいい意味で成長してるなあ、なっちだけ
見たいけど。まあ、ありえないけどね。松浦高橋ヘタレ過ぎってのはどう?なっち皆殺しより
Kの二人か・・・一人は予想がつくけど、もう一人はサッパリだ
あと、なんかナッチは格下に不意打ちされて負けそうな予感。
>>778>>780 バトル系の話は主役より周りのキャラに人気が出ることが多い。本小説も例に漏れず。
作者もなっちのキャラはお気に入りだから人気が高いのは嬉しいのだけど…。
高橋はおそらく次のバトルが肝ですかね。相手は読者も予想外の人だと思います。
>>781 Kの二人…ヒントは単純に作者のお気に入り。
誰と誰が生き残るかおまけ的要素で楽しんで下さい。
なっちからしたらほとんどの娘が格下扱いなので…どうなるでしょうか?
最近オールスターズのおかげで色んな人が同時に見れて良いですね。
先週のうたばんは特に、辻が締めで非常に満足でした。
ハロモニも今日みたいに毎回全員出演だったらいいのに。
さて、娘話はこれくらいにして更新します。
神社境内の中央、佇む影に紺野は声をつまらせる。
そしてそれはどうやら相手も同じ様だ。
「なんだ紺野かよ」
「それはこちらの台詞です。里田さん」
なんと紺野が感じた気配の相手は、同じ夏美会館の先輩・里田舞であったのだ。
わざわざ戦闘の覚悟を決めて踏み込んだというのに…。
「言っておくが私はわざわざここまで来てお前なんかと闘る気はねぇぞ」
「それも私の台詞です」
せっかくのサバイバル。
わざわざ同門同士で潰しあう程マヌケなことはない。
海外支部で腕に磨きをかけてこのサバイバルに挑む元夏美館王者・里田は頭を垂れる。
「しかし最初に出遭う相手がよりによってお前とは……ツイてないな」
「そうでもないかもしれませんよ。里田さん」
「ん?」
「2対2です」
紺野は冷静に、神社裏の山道から降りてくる二人を見つめていた。
向こうも紺野達の存在に気がついたようだ。
「あいつらは…」
「ハロープロレスのソニンと新垣里沙」
「夏美会館の里田舞と紺野あさ美っすね」
新垣里沙が隣のソニンに言った。
まさか最初に遭遇する奴等が、長き因縁を含むあの団体とは。
「なんてぇ巡り合わせだ。これは偶然か…それともやはり」
「必然っすよ」
「ああ、そうだな」
ソニンが飛び出した。
これはもう引き下がる訳にはいかない場面。新垣も続く。
「うちの社長とおたくの館長はいないけど…長年のケリをつけようじゃねぇか」
「いいだろう」
里田が前に出て、構える。
「夏美会館とハロプロのどちらが上か?」
「ちげぇよ」
「?」
「プロレスと空手のどちらが上か、だろう」
言い終わると同時にソニンが低空姿勢で襲い掛かってきた。
里田は膝蹴りで撃墜を狙うも、ソニンが地面で身をよじり当たらない。
そのまま里田をかわすとソニンは後ろの紺野目掛けて飛び込んだ。
紺野はローキックの構えで待っていた。里田はもう一人の新垣に注意する。
新垣はいつの間にか、誰よりも真後ろに回りこんでいた。
後ろから腕を引っ張られた紺野は反動でソニンへのローキックが空振りしてしまう。
ソニンは、その隙を逃さない。
タックルで紺野を倒す。
「くぅ」
紺野は力にも自信があった。
しかし、このソニンのタックルにまるで歯が立たない。
(これが…プロレスラーのパワー)
そういえば夏美館にもプロレス出身者は一人だけいる。
辻希美だ。
彼女達が特別なのか、プロレスラーという人種全体がそうなのか知らないが。
(プロレスラーに力勝負をするべきじゃないですね)
(だけど空手家にも……誰にも負けぬモノがあります)
倒されながら紺野は拳を握る。
一撃の破壊力!
「危ない!」
新垣の声!
拳を放った瞬間、同時にソニンが紺野から飛び離れる。去り際も早い!
そして紺野が立ち上がるよりも早く二人がかりで里田に飛びかかっている。
紺野はプロレスラーという人種の認識を改める。
(スタミナもある。いや…それよりも問題は…)
2対2という状況だ。奴等はタッグマッチに慣れている。
空手家の自分達にとって、2対2の組手を行なう機会はほぼ皆無。
(このままではいけない!)
紺野は里田を助けに飛び込んだ。
「背中を!」
「ああ!」
紺野の呼びかけを里田はすぐ理解する。
互いに背中合わせで相手と向かい合えば、片方だけが狙われることが無い。
自然に一対一の状況が作れる。
咄嗟に浮かんだ紺野の機転である。
「ふぅん」
ジリジリと回るプロレスラーに合わせて中央で回る空手家。
幾多の修羅場を越えてきた熟練レスラーのソニンはこれに笑みを浮かべる。
「考えたな。まぁこっちは別にサシでも構わねぇけれど。どうだお豆?」
「構わないっす」
新垣里沙は無愛想に応じた。
「どっちがいい?」
ソニンが聞いた。
里田舞と紺野あさ美のどちらとサシで闘りたいか?と。
新垣里沙はくいっとアゴで示す。
―――――紺野あさ美。
里田舞はもって生まれた身体能力を生かして上り詰めた女。
そういう意味では生粋の体力自慢であるソニンに近い。
一方の紺野あさ美はある意味おちこぼれ。努力で這い上がってきた女。
自分と同じだ。
選んだ道が空手だったかプロレスだったかの違いだけ。
そういう奴と試したい。
空手を信じて0から這い上がってきた娘と、プロレスを信じて這い上がってきた自分。
そういう相手とトコトンやりあいたい。
「わかった。じゃあ私は里田を頂く」
ソニンが里田舞と向かい合う。
一方の新垣里沙は紺野あさ美の正面に立った。
「例のコロシアム以来ですね」
「そうだな」
「一対一ならば、絶対に負けません」
「へっ、こっちだって…」
(負ける為に練習してるんれすか?)
新垣は誰かの声を思い出し、唇を釣り上げる。
あいつのおかげで自分は変われた。ああ、そうだ。
「勝つ為の……プロレスだ」
紺野vs新垣。里田vsソニン。
この二試合が始まった頃、別の場所でも新たな闘いが始まろうとしていた。
島の南西、丘陵地帯。
田中れいなは孤島に到着して初めて、人の気配を感じ取った。
(誰かいるたい…)
けれど岩で死角になっていて互いの姿は見えない。
元々気の扱いに長けているれいなは、相手の気配を誰より先に察知できると自負する。
だからサバイバルは得意中の得意。
血が騒ぐ。
(負けられんちゃ)
暴れたくてウズウズする気を抑える。
敵は何も気付かない様子で、こちらへ歩いてくる
姿は確認していないが歩き方で分かる。まるで気付いていない。
(やってよかとね)
あと10mくらいか。
れいなは即座に八極拳を叩き込む体勢で待つ。
(誰か知らんけどかわいそ)
5m
4m
3m
2…
1…
(瞬殺たい)
ドドンッ!!
田中れいなの発勁が物凄い勢いで、現れた娘を弾き飛ばした。
また別の場所。
島の北部に広がる森の中を、辻希美が駆けていた。
辻は迷うことなくまっすぐにある場所を目指している。
島の中央に聳える建物…つんく城。
(あそこに…あいぼんがいる)
北の海岸線から、南へ。
そしてつんく城をすでに発った加護亜依もまた、迷うことなく歩を進める。
(……)
何かに誘われるように、北へ。
上空から確認したらまるでその二点が磁石の様に見えるかもしれない。
二人を引きつけ合うものは運命か?
もしこのサバイバルの巡り合せを決めるものが運命ならば…
この二人ほど真っ先に出逢わなければいけない二人はいない。
辻希美と加護亜依。
絶対死の墜落事故から生き延びた二人。
それからずっと二人で生きてきた。
そんな二人が、離れ離れになってもう2年以上の年月が流れている。
ついに訪れる再会のとき。
森の中に直径10m程の小さな原っぱがあった。
辻希美がそこへ駆け込むと、目の前に懐かしい顔が立っている。
(あいぼん……)
(本物だ!本物だ本物だ本物だ!あいぼんだ!)
辻は叫んだ。叫んで飛び出した。
「あいぼぉぉぉん!!!!!」
もぅすぐそこにいる。もぅすぐ手が届く。もうすぐ抱き合える。
涙が出てきた。止まりそうになかった。辻は加護の胸に飛び込んだ。
(よかった)(本当にいた)(信じてたよ)(嬉しい)(生きてる)(あいぼ…)
ズドォッ!!!
(………え??)
辻が抱きとめた感触は柔らかい加護の胸ではなく、冷たく固い土。
そして…痛み。突き飛ばされた痛み。
辻は信じられないという顔で加護を見上げた。
加護は何の感情も持たぬ瞳で、足元に転がる辻を見下ろした。
(あ、あいぼ…?)
「うひゃひゃひゃひゃひゃ!!!!はじまったで!!」
同時刻、本土海岸線の設置された大会本部席。
加護が飛んできた親友を突き飛ばす映像を見て、大きく笑うつんく
「さぁ序盤戦最注目の一戦や!!」
第38話「序盤戦」終わり
次回予告
加護亜依vs辻希美
運命が二人を避けられぬ激突へといざなう。
悲しみの決着の先に待つ悲しみと怒り……そして儚い希望。
「ののぉーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!」
この世界でただ一人だけ、奇跡を起こせない相手がいる………
To be continued
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!
キタ━━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━━━ !!!
おいおいキッズ出だしてから読んでなかったらこんな面白い展開かよ。やられた。
そしてまだ全然追いついてないな俺、文章力も何かもorz
( ^▽^)<この程度のスレにはこの程度の保全がお似合いだ ハッハッハ
他人の技を盗む「パーフェクトピッチ」は
なっちが盗作している事を示していたんですね!
>>796 そこまで予測していたんなら辻豆は本当のネ申だな
799 :
辻っ子のお豆さん ◆No.NoSexe. :04/12/01 23:57:36 ID:BGQvnutk
今回の件は…さすがにちょっと
謝罪とか見てらんなかった
リアルになっちに皆殺しされそう
>>796 俺も思ったが、
さすがに書き込み中につらくなったんで止めたよ。
俺はこれを思い出した
「ゴマッコンの出番ですか?」
803 :
ねぇ、名乗って:04/12/02 20:43:28 ID:9r77KxzA
あややとなっちとごっつぁんの絡みが見ものだな
804 :
辻っ子のお豆さん ◆No.NoSexe. :04/12/02 22:32:08 ID:eEyVtX8P
何かバカな小説書いてることが忍びない雰囲気(←お利巧だから変換できるw
なっちのかっけーシーンとか凄く書き辛いんですけど
他の作者さんとか影響うけてないのかな?
マジになんなよw
何でもネタにして楽しむのが本来のモ板
今は必死なマジヲタ、アンチばっかでツマランね
矢口のニャンニャン写真もネタにした辻豆さんなのにね
やっぱり辻と安倍は思い入れが違うんだろうな
いいんじゃね
あくまで小説なんだから。
辻豆さんガンガレ(`・ω・´)!!
ああ…パーフェクト・ピッチがでる度に思い出しそう。
印刷枚数が700枚超えて重いので電車男みたいに文庫化出来ませんか。
>>809 俺も出して欲しい
一般本じゃなくて、同人みたいな形なら出来るんじゃないか?
811 :
辻っ子のお豆さん ◆No.NoSexe. :04/12/05 03:20:11 ID:ZFwtftKL
K−1見に行ってきました!!初の格闘技観戦です!
友人達と賭けてて、自分はレミー・ボンヤスキーを予想してて見事的中!
(仲間内ではホーストやモーの評価が高かっただけに余計嬉しい一人勝ち♪)
そのせいもあって最高でした。やっぱTVで見るのと全然迫力が違いますね。
ボンヤスキーvsホーストのときは本気で手が震えて、勝利の瞬間は心から吼えたよ。
まだ興奮してて書きたいこといっぱいあるけど眠いんでまた後日に。
もう盗作とか忘れそう。
執筆意欲、湧いてきたね。
乙です。TVだとあんまり迫力は伝わってきませんでした。
中量級選手がスタミナ合戦の印象が強くて・・・
>>812 帰ってTVで見たら確かにそれほどでもなかったかも。
おもしろい試合ほどカットされてたり…
やっぱりまた機会があれば現地へ見に行きたいです。
さて小説の方ですけど、師走で土日の予定がほとんど埋まってしまっていて
書きたくてもなかなか書く暇がない状況に…
しかも次は大事に書きたい辻加護戦なので適当にできないし。
なんとか時間作って続き書きますんで、どうか待っていてください。
了解しました。
そこで 消力 ですよ
羊って保全いるの?一応保全。
>>816 全部は確認してませんけど映ってないと思います。
では大変長らくお待たせしました。
久しぶりの更新いきます。
1年前からずっと書きたかった対戦です。
おそらくこのスレの締めになるはずですので、ご期待下さい。
第39話「加護亜依vs辻希美」
丘陵地帯に二人の娘がいる。
「この可愛い顔に傷でもついたらどーするのよ!もう!」
「あーわかったわかった、悪かったたい」
頭を掻いて適当に流す田中れいな。
そしてもう一人は、鏡で念入りに顔をチェックする道重さゆみ。
(ハァー、ついてなか)
まさかサバイバルで最初に不意打ちを仕掛けた相手がこの道重だとは…。
気配を消して死角から放った発勁。
相手が肉体を硬質化できる道重でなかったら瞬殺であったろう。
「本気でさゆに喧嘩売ってくるのかと思ったよ」
「それはなか。少なくともさゆとえりには手ぇ出さん」
「ほんと?」
「友達やけんね。たった3人だけの…友達」
「うん、エヘ」
「なに笑っとー!」
「だってぇ〜れいなの口からそんなハズすぎる台詞でるなんてぇ〜エヘヘ」
「さゆぅ〜〜〜!!!」
「いやぁ〜ん。さゆも友達には手出ししないよ〜♪れいな」
たとえどんな状況になっても絶対に…トモダチだから…
「トモダチ…だよね?」
何を言っている?
「ののとあいぼんは…トモダチだよね?」
知るか。
私はその汚い顔を蹴り飛ばした。
「ぷぎゃ!」と声をあげて、奴はふっとんだ。
その途端ゾクンという感触が全身を駆け巡る。
これだ。
加護亜依は大きく息を吸い込むと体中の震えを押さえ込んだ。
私が求めていたものはこれに違いない。
目の前にいるこの薄汚い小娘の息の根を止めること。
事実、体が反応している。
他の奴ではこうはならなかった。
これほどまで戦闘欲求を刺激する奴はいなかった。
手も。足も。眼も。鼻も。口も。耳も。体中のすべてが奴に興奮している。
「あいぼん!!どうして?どうしてなの!?…こんなこと?」
どうして?
それはお前がその身で教えろ。
どうして私がこれほどお前だけを求めるのか!
途方も無い虚無感に目を覚ました。
暗闇を仰ぐ様に私は立ち上がる。
アテも無く進む。
何も思い出せない。自分が誰で何をしていたか。
いやそれ以前に…それらを思い出せないことすらどうでもよい自分がいる。
ただ胸の奥底から沸き起こってくるのは闘争本能。
(タタカイタイ…タタカイタイ…タタカイタイ)
闇。
そう呼ばれる場所にどうやら私は属しているらしい。何も思い出せない。どうでもいい。
周りにいる奴等、どいつもこいつも危ない面をしている。
こいつらではない。
確かに戦闘には飢えているが、それを満たすのはこいつらではない。
どこだ?どこにいる?
この渇きを満たしてくれる奴は一体どこにいる!?
(……ぼん)
!!!!!!!!!!!!!!
聞こえた。確かに聞こえた。
他の誰も聞こえていないのか?私には確かに聞こえた。
血が猛った。
こいつだ。私の望む敵だ。この渇きを癒す者だ!
欲の赴くまま私は闇の根城を飛び出した。声の呼ぶ方へ。
(……あいぼん)
森を進む。
まるで覚えが無い道なのに不思議と迷いはしない。
呼んでいるんだ。奴が。この血が。
後ろから闇の者が二人ほどついてきている。
離れて干渉しなければ別に咎めるつもりはない。
だがもし私の戦闘を邪魔する気なら、ただでは済まさない。
そして邂逅の刻。
「あいぼぉぉぉん!!!!!」
私と同じくらいの年頃の娘が視界の向こうに現れた。
…トクン
ほんのすこし高ぶる鼓動。
(間違いない)
奴はいきなり飛び掛ってきた。
私はその胸を突き飛ばした。
尻餅をついて地べたに転がるその娘は、絶望と仰天の入り混じった顔を浮かべる。
「私だよ…のの…辻希美だよ。忘れたの?」
知らない。
貴様の名前などどうでもよい。
知りたいのは貴様が私の渇きを癒せるか否か?
それだけだ。
「トモダチ」
奴はその言葉を繰り返す。
悪いがそんな言葉は知らないし必要としていない。
戦え。
私は拳で奴の頬を殴り飛ばした。奴は立ち上がってきた。
私は爪先で奴の腹を蹴り上げた。奴は立ち上がってきた。
何度も何度も地面に投げつけた。その度に奴は立ち上がってきた。
ボロボロになって泥にまみれながらも奴は立ち上がる。
その度に繰り返す。
「あいぼん…トモダチだよね」
いい加減いらつく。
(あいぼん?なんだそのふざけた名は?私は何でもない!その名を呼ぶな!)
蹴った。
奴はまた倒れた。
地面に血反吐をばらまいた。見苦しい。
ヘドを吐きながら涙に濡れた目で私を見てくる。
「…ぁいぼぉ……」
うっとうしい。
ちっとも満たされやしない。
苛立ちが増すばかりだ。
望んでいたものはこんなものではない!
「戦え!!」
気が付くと私の口が勝手にそんな言葉を吐き出していた。
奴はずっと殴られっぱなし。殴り返そうとする素振りすらみせない。
理解できない。それで一体どうなるというのだ?
「殴り返してこい!!勝負しろ!!」
また口が勝手に開く。
この声は誰の意思だ?私か?どうしてこれほど奴に執着する?
向かってくる気がないのなら、そのまま叩き潰してしまえばよいではないか。
こんなバカなど知ったことではない。そうだ。
私が目指す場所は遥か高み……
こんなザコにいつまでも構っている暇は無い。
「ののはできないよ…」
黙れ。
「あいぼんと戦うなんて…できないよ…だって」
黙れザコ!
「トモダ…」
ドガッ!!
立ち上がった辻希美は両腕を後ろに回した。
それは絶対に攻撃をしない、加護の攻撃を受けもしないという意味。
信じる。
『辻希美は加護亜依を信じる』
そういう想いを込めた行為だ。
その行為を見た加護は口元をニィと歪め、躊躇なく攻撃をぶち当てた。
(死ね)
ノーガードで加護の打撃をくらった辻は、地面を10mは転がり木の幹にぶつかり止まった。
もはや、全身すり傷と青痣だらけのボロクズとなり果てていた。
それでもまだ腕は後ろに回したまま…
必死で立ち上がろうとする。
「…っぁ…ぃぼ…ん……」
「黙れ」
ヨロヨロ近寄ってきた辻の胸倉を掴み挙げた。
宙吊りで首を締め上げる。
辻はケフンと咳き込む。瞳に大きな涙の粒がたまる。しかし抵抗はしない。
死ぬほど苦しい顔をしているくせに、一切その腕を使おうとしない。
「本当に…殺されたいか?」
「……っぼ…ん」
「黙れぇっ!!!!」
加護は叫んだ。そして辻を思い切り投げ捨てた。
もうダメだ…
苛立ちが限界を超えてしまった。
このバカを目の前から消しさらなければこの不快感は消えやしない!
殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!
(殺せっ!!)
「ケフッ、ケホッ、ケフン!!」
頬を地につけたまま咳き込み、気道に息を流す。
(ののは…あいぼんを…信じて…い…………っ!?)
そして辻希美は空気の変化を感じた。
あまりにも桁外れな気質。
これまで日本中に奇跡を振りまいていた辻希美が、初めて自ら味わう奇跡。
加護の皮膚から漏れる強烈すぎる闘気。
人間という種族がどんなに精進しても辿り着けぬ境地を…遥か超えている。
辻希美は目を丸くしてそれを見上げた。
鳥肌が立っていた。
小刻みに震えていた。
『奇跡』と呼ばれた存在が初めて、この世界にもう一人だけ存在する『奇跡』に慄いた。
「もう…お終りだ」
加護亜依はそっと囁いた。
奇跡の奥義。三倍拳。
ズゴ(ryキター
更新乙です!
書き込むのは今日が初ですが、去年の11月くらいから楽しく読ませてもらってます。
オレは川o・-・)推しなんですがこの小説では
何故か川 v )に一番魅かれてます。
更新期待してますんで辻豆さんのペ―スで頑張ってくださいv
良スレ発見作者さん頑張って
すいません。もう少しだけ更新待っててください。
合間に7期オーデについての自分の意見でも載せておきます。
国分:高橋や紺野とかぶってるからインパクトが足りない
洞口:顔も年齢も性格も歌もいい感じ。なにより出身が…。今回の本命。
白井:彼女は一番ダメ。お笑いはもう間に合っている。
小部屋:微妙。可も不可もあり。
辻本:ビジュアル要員で必要そう。他の事務所に採られる前にとっとくべき
町田:なんか嫌。入ったら娘が彼女中心のグループになりそうで。
という訳で7期は洞口と辻本の17歳コンビを希望
仙台と滋賀で新しい地域のファンも得られそうだし
辻本はトークで空気読まないで喋りそう
>>830 エースをとるって言ってるんだから辻豆さんの感想を信じるなら
町田が順当ってことなんじゃないの?
>お笑いはもう間に合っている
マコのことかぁぁぁぁぁああああああああああ
>>831 空気読まないくらいの方がおもしろい。アウェーで喋れる奴が欲しい。
>>832 後藤クラスじゃないならポッと出エースなんていらない。
エースは高橋か藤本でいいと思っている。
>>833 小川を含め、前回のハロモニで三列目に座られた方々
どうにも偏った七期論ですいません。
でも今後の娘にとって凄く大事なことだから、中途半端にはしてほしくない。
…とまぁそっちの話はこれくらいで置いといてようやく更新できます。
その空気の変化は島の各地にいる娘たちもそれぞれ感じ取っていた。
「すご…」
高橋愛は大きく目を見開いて空を見上げた。
どれだけ離れた場所で誰が発しているのかも分からないが、圧倒的。
いや、誰が発したかは今に分かる。次に勝利者として名を呼ばれる者だ。
藤本美貴は岩場の影でこの気を感じ取った。
(どこのどいつか知らねえが…おもしれえ)
ゴロンとそこに寝転がり身を休める。
本当に戦いたい奴とぶつかるまで無駄な体力は使いたくない。
松浦亜弥はボートが到着した絶壁地帯をようやく抜けた所だった。
(この気…どっかで)
そして島の何処かで爆発的に立ち昇った気に、何かを感じ取る。
彼女こそ加護亜依と辻希美の両名と本気でぶつかった経験を持つ唯一の娘である。
安倍なつみは胸騒ぎを感じて眉を歪めた。
不吉な予感がしてならない。この気と戦っているのがあの娘である様な…。
(のの…じゃないよね。死ぬなよ)
身を案じはするが助けにいくつもりはない。
これはジブンの闘い。他の誰かが横から手を出していいものではない。
なっちにはなっちの闘いがある。
さっきから自分を見下ろす影に気付いていた。
(やれやれ…いつまで隠れてるつもり?なっちを恐れて出てこれないの?)
これ以外の娘達もそれぞれが様々な想いで、三倍拳の気に気付いた。
驚いたのは島内の者だけではない。
モニター観戦する海岸沿いの解説陣も固唾を呑んでいた。
「あの強さからさらに三倍だとぉ…反則じゃねぇのかよ」
「ククク…反則やない。あれが加護亜依の奥義や」
「つんくさんよぉ。あんたが余裕ぶってる理由がわかったわ」
保田圭はひたいに流れる汗をふき取り、考え込む。
モニターには呆然とする辻と、立ち尽くす加護が映っている。
(勝負あったわね。辻が手を出そうが関係ない。二人のレベルが違いすぎている)
(それにしても加護亜依。信じられないバケモノがいたものね…)
(もしこの先、うちの子達とぶつかったとき…勝てるか?)
(いや勝てる!ただ三倍なんてうますぎる話があるはずない。絶対どこかに弱点がある)
(せいぜい今のうち余裕ぶっていなさい、つんくさん)
(うちの亀井絵里。田中れいな。道重さゆみ。そして藤本美貴。全員バケモノよ)
内心でほくそ笑む保田と同様に、つんくも裏で笑う。
加護は切り札の一枚にすぎない。まだ後ろに石川梨華、中澤裕子らが控えている。
さらに隠されたカードもある。負ける要素がない。
ハロプロで辻を指導したこともある石黒は特に衝撃を受けていた。
三倍拳にはあの福田ですら顔色を変えていた。
まさに格闘技界の常識をうちやぶる脅威の秘技!つんくは高笑う。
「ハハハハハハハ!負ける要素があらへんわ!」
「さぁ加護!とくと見せてやれ!三倍拳の破壊力!!」
遠くにいたはずの加護はいつのまにか間合いの内にいた。
もはや辻には見えてすらいない。三倍のスピード。
辻は咄嗟に顔面をかばう。
信じる!ガードはしない!そう宣言した両腕で。
本能が…その両腕を動かした。
ガードの上から人間の力とはとても思えない打撃がぶつかってきた。
三倍のパワー。例えるなら超特急金属ハンマー。
もしガードをしていなかったら…そう考えると凍りつく。
(死んでいた)
間違いない。
あのままノーガードでいたら、頭蓋骨が破壊されていた。
事実、両腕が死んだ。
ガードした腕が動かない。たったの一撃で!?
(…!?)
辻は思考を止めた。
攻撃をくらいほんの少し思考している間に、加護の姿が消え去ったのだ。
(いな…)
いないと思うのも間に合わない。
その思考を脳が体に伝達する前に後ろから足を掴まれた。
クイッ。
指だけで膝の関節を外される。外されながら投げ落とされる。
三倍のテクニック。
仰向けに倒された辻のみぞおちに加護が全体重を乗せたかかとを落とす。
三倍の体重。
静かな森に辻希美の声に鳴らぬ悲鳴が響く。
もはや勝負と呼べるものではない。一方的な殺戮。
加護は三倍拳を解除する。
これ以上使用する必要はない。
辻はもう起き上がる力すら残されてはいない。呼吸もか細い。
ただ虚ろな瞳で加護を見つめるだけ。
「わかっただろう」
「…ヒュー……クヒュー……」
「まいったと言え。そうすれば命は助けてやる」
「……ッウウ…」
加護はまた辻の腹を踏んだ。
「ゲェゲホッ!」
逆流した胃液が辻の口から吹き出て、顔に落ちる。
「最後だ。まいったと言え」
加護は辻を踏んだまま、問いた。
もう何もできない辻は力を振り絞った。
振り絞って、首を横に振った。
「…ぁ……ぃ…ぼ………ん」
「そうか。死ね」
言い放つと加護は、静かに強く、辻の首を掴み天に持ち上げた。
両手の握力でギリギリと辻の首を絞める。
胸が張り裂けそうだ。
こいつを殺せばこの痛みから解放されるに違いない。
加護はさらに力を込めた。
「死ね」
口に出た。
バカな奴め。
一体何を望んでいるというのだ。
何の抵抗もせずただ殴られ続けて。
逃げもせず。懇願もせず。立ち上がる。
あげくの果てにこの様だ。
何の意味も無く死んでいく。こんなバカなことがあるか。
なぁ…
ポタ。
何かが落ちてきた。
冷たい。これは何だ。
涙?
まさかお前、泣いているのか?
今更死ぬのが怖くなったのか?
アハハハハハハ。
どれ、その泣き面、拝んでやろう。
バカめ…
ん?
笑っている?
なんで笑っているんだ、お前。
とうとう頭がおかしくなったか?
ボコボコに殴られて、首を絞められて、これから死ぬ奴が、なぜ笑う!?
この涙は嬉し泣きだとでもいいたいのか。
ミリィ…
やめろ!
その笑顔をやめろ!胸が痛い!
なんでだ!?なんでこんなに胸が痛む!?分からない!何も分からない!くそっ!
「やめろーーー!!!」
持ち上げていた辻を地面に叩きつけた。
奴はむせかえっている。
私も呼吸が荒い。
いらだつ。
なぜ奴の涙と笑顔にこんなにも、私の体が抑制されるのか!!
やはりこいつだ!
こいつが生きている限り、私に自由はない。
とどめを刺せ!加護亜依!
奴はもう何もできやしない。
笑うことと泣くこと、それだけで精一杯だ。
コロ…
「…ぅれ…し…ひ……」
ドクン。
また胸が熱くなった。
体が動くことを拒否している。
何なんだ!何なんだお前は!!!
「……ぁぃ…ぼ……っ…ょく……なっ……れふ……」
何を言っている!
やめろ!
その笑みをやめろ!
その口を止めろ!
その涙をやめろ!
「…か……なぅ……よ………ゅめ」
ドクン!!
ゆめ。
その単語が背筋をゾクリと駆け抜けた。
信じられない。
お前まさか本当に笑っているのか!?
私が強くなったことを本当に、涙を流すほど喜んでいるというのか!?
…本物のバカか!?
「……ぁ…ぃ…ぼ……ん……」
うわあああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!
(…………のの)
違う。出てくるな!
(……ののっ……)
殺すんだ!こいつを殺すんだ!!
(…のの!)
お前は誰だ?さっきから私の胸を締め付けるお前は誰だ!?
この肉体は私の物だ。今から奴の息の根を止めるんだ!
(ののっ!!)
黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ!!!!!!
私は地上最強になるべくして誕生した存在!!
この肉体をこの私が支配することこそがお前達が望む夢だろう!!
(ののぉーー!!!)
捨てる気か!?お前は夢を捨ててそいつを選ぶのか?
あれほど追い続けた夢を、この私を捨てる気か!?
不可能だぞ!私抜きで地上最強を目指すなど!
考え直せ!甘っちょろい貴様だけで進める道じゃない!
加護亜依!!!
「なぁ…将来の夢ってある?」
「うちはある。あった。もう叶いそうにないけど」
「死んだおとん、格闘技してたんや。全然よわかったんやけど」
「そのおとんが褒めてくれたん。亜依は強い子やって、いつか一番になれるて」
「一番…なりたかたなぁ…」
なんだそれは…?
私に何を見せる気だ!?
「そういえば名前、まだちゃんと聞いてへんかった」
「辻希美!ののって呼んで!」
「加護亜依や。あいぼんでよろしゅう」
おい!待て!やめろ!この映像を止めろ!
「だってあいぼんは地上最強になる人らもん」
「せや!」
「ののはあいぼんが地上最強になる為らったら何でもするのれす」
どうなっている?
これじゃ…これじゃまるでこいつが…!このバカが…!私の…
(トモダチ?)
嘘だ!嘘じゃない?もしそうだとしたら…私は。私は…とんでもないことを?
辻…のの!…死ぬな!おい!お願いや。死ぬな!死んだあかん!!死んだあかんで!!
「ののぉーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!」
「……ぃぼん……」
「のの。うちや!ごめんな!ほんまごめんな」
「…ぃ……ぃ…よ…」
「ののは一回もうちに手ぇ出さへんかったのに…うちは…うちは…」
完全に目が覚めた。
私は心の底から親愛する相棒を抱きしめた。
彼女は、辻希美は、闇に染められた私を信じて、すべてを受け止めたのだ。
それに比べて私は…私は何て弱い…。
闇のせいだけじゃない。
きっと私の心の片隅に少しでもそういう気持ちがあったということだ。
(辻希美に負けたくない)
そういう気持ちがあったということだ。
「もぅ離さへんから!ずっと一緒におるから!…のの……」
微かな吐息と共に、仰向けに眠る辻希美を、抱きしめて泣いた。
(このままずっと一緒に…)
そう想っていた私の心を現実に呼び戻すかの如く、その音は突然響き出した。
『ザ、ザザー』
このスピーカー音。大会主催者つんく!それは決着の合図!!
血の気が引いた。
『勝負ありぃ!!』
『敗者!つ…!』
「あかん!!!!ののはまだ死んでへん!!!!!!!!!!!!!!」
モニターの向こう側。解説連中まで届く程の大声で、加護は叫んだ。
瀕死の辻を抱きとめながら、必死でスピーカーを睨む。
「ののはまいったも言ってへんし。意識を失った訳でもない!!だからまだや!!
なによりうちが勝者であることを認めてへん!!勝手に決めんなアホ!!」
この反論に島から遠く離れた解説陣は苦笑をこぼす。
無理もない。
つんくが誇らしげにしていた加護が、そのつんくをアホ呼ばわりしたのだ。
石黒は必死で笑みをこらえている。保田などはあからさまに笑っている。
「勝者がああ言っているんだ。勝手に勝敗を決める訳にはいかんだろ。つんくさんよぉ」
一人クールに意見を述べる福田明日香。
石黒も同調するように頷く。
「ま、まぁ、しゃーないやろ。今回は大目に見たるわ」
つんくは寛大な素振りを見せ付け、決着を取りやめる。
しかしその内面はドロドロに怒りが沸騰しきっていた。
(おのれ加護ぉ…!!誰がアホやと…)
我慢ができなかったのか、つんくは解説席を立ち上がり出て行った。
モニターの設置されたテントを出て側近に声をかける。
「おいアヤカ!加護についとるKに連絡は取れるか?」
「はい、K全員に小型無線を渡してありますので」
「辻にとどめを刺せと命じろ」
「は、はい」
「あんなボロ雑巾くらい訳ないやろ!俺に逆らえばどうなるか教えたる!!」
すぐさま加護と辻の戦いを遠巻きに眺めていたK二人に連絡が入る。
高橋愛と闘ったこともあるKのトップファイター・村上愛
Kだけでなく格闘技界最速にも手をかけるスピードファイター・矢島舞美
命令が入ると二人はすぐ木の上から飛び降りた。
「なんやお前等!」
「加護さん。あんたにもう用はない。そこの怪我人を渡してください」
「…ののをどうする気や!?」
「とどめをさすだけです」
ブチリ…
堪えていた怒り。
たった一人の相棒を瀕死に追い込んだ自分への怒り。
そうなる様に仕向けたつんくへの怒り。
Kの村上が吐いたセリフにより、渦巻いていた加護の怒りが爆発した。
「…ののに、指一本でも触れたら…殺すで」
それはこれまで加護が見せたことも無い鬼の表情であった。
思わずたじろぐ村上と矢島。
だがマスターの命令に逆らう訳にはいかない。
目的は加護ではない、動けない辻だ。恐れる必要はない。
そういう気持ちがK二人を突き動かした。
まず村上が加護の注意をひきつける。その間に速さに自信がある矢島が辻を捉える。
暗黙でその作戦を実行する。村上と矢島は左右に飛んだ。
ドンッ!!
一瞬であった。注意を引き付ける間もない。
飛び出したその瞬間に村上は蹴り飛ばされていた。加護亜依に。
矢島は急ブレーキをかける。
村上を蹴り飛ばした加護が、もう自分と辻の間に移動していたのだ。
(三倍拳…三倍のスピード………)
速さには自信があった。
だが加護の速さは常識を超えすぎている。
自分が対面して改めて感じる三倍という恐ろしさ。
村上は蹴り一発で気絶してしまっている。恐らくはもう立ち上がれまい。
三倍の攻撃力だ。それで当たり前。
ノーガードで加護の攻撃を何十発も受けてまだ意識のある辻がおかしいのだ。
(…ダメね)
矢島は回れ右して逃げた。
もし一対一だったら例え矢島でも逃げ切れなかっただろう。
だが今の加護は辻一人残して深追いしない。
矢島は逃げ切った。命令に逆らうことよりも加護亜依を恐れた結果であった。
『敗者!村上愛!』
『勝者!加護亜依!』
『残り35名!』
スピーカーから、つんくの怒りを堪える声が島中に鳴り響いた。
「のの」
「…ぁい…ぼん」
木の木陰に寄り添いながら、二人は互いの名を呼び合う。
本当に、ようやく、やっとやっと会えた。
「とりあえずここは目立ちすぎるから、何処か休めそうトコ探そ」
「…ぅん」
そう言うと加護は辻をおぶる。
「軽なったなぁ。昔は重かったのに」
「…ぅ…る…ひゃ…い…」
「これならいつまでもおぶってられるで。だから安心してええよ、のの」
「…ぅん」
加護と辻は再び歩き出した。
怪物どもが待ち受けるこの島に安息の場所など無い。
それでも道が続く限り歩き続ける。
二人で。
「愚かな。加護一人ならば本当に頂点も見えたでしょうに…」
モニターを見ながらアヤカは呟いた。
瀕死の辻希美という足かせを背負った以上、道は絶たれたも同じ。
つんくは苦虫を噛み潰した様な表情でため息を落とす。
「断言してもええで。加護はいずれ必ず辻を捨てる」
「そうでしょうか?」
「今はまだ現実味が無いだけや。最強の栄光が手に届く場所に迫ったとき、人は変わる」
「なるほど」
「勝てる相手なのに辻が足を引っ張って勝てない。そういう状況が続くと、な」
「変わりますか」
「変わる。敗北を選ぶか友情を捨てるかで苦しみ、そして…ククク」
アヤカは闇に染まる支配者の顔に、背筋が寒くなるのを覚えた。
加護は敵にしてはいけない男を敵にしてしまった。
モニターに映る小さな影に、少なからずの同情を覚える。
「こっからまた始まるんやで、のの!」
「…ぅん」
「うちらの夢や!絶対に二人一緒に叶えような、のの!」
いつまでも、二人一緒に。
辻と加護の道は続く。
第39話「加護亜依vs辻希美」終わり
次回予告
バトル・サバイバルは徐々にその激しさを増してゆく。
亀井絵里。松浦亜弥。石川梨華。
島の各地でいよいよ血の雨を降らす怪物たち。
「エリも遊んじゃうよ?」
To be continued
乙です。
さすがに、辻豆さんがこだわっただけありますね。
完敗です。おもしろすぎです。
良いお年を。
やっと亀ちゃんクル━━━(゚∀゚)━━━!!
楽しみに待ってます!
体重も三倍だなんてー orz
854 :
辻っ子のお豆さん ◆No.NoSexe. :04/12/25 16:39:54 ID:hLUVyQXz
応援ありがとうございます
次回は新スレに移行します
>>854 聖夜の更新お疲れ様でした
二人の生き様がびんびん伝わってくる展開でした
ところで、前スレpart2は落とす方針でよろしいでしょうか?
細々と保全してたんですが 馬鹿がよってきちゃって
856 :
辻っ子のお豆さん ◆No.NoSexe. :04/12/25 21:13:14 ID:hLUVyQXz
落とす方針で構いません。
今まで保全してくれた方々ありがとうございました。
part2のまとめサイトないの?
>>857 part2の855さんがアップしてるらしいですよ
どこだろう?
ごめん855じゃなくて885だった
>>860 おお、ありがとうございます。
これで安心して新スレ立てれます。
新スレは来年ですな。よいお年を。
川o・∀・)b!<辻っ子のお豆さん
川*'ー')<今年1年お疲れサマやよー
( ^∇^)ノシ<良いお年をー
865 :
辻っ子のお豆さん ◆No.NoSexe. :05/01/01 14:59:51 ID:H8sUipGh
866 :
ねぇ、名乗って:05/01/01 17:24:04 ID:O27D+uM8