1 :
うんこ:
きもいいんだよ!!!!!!!!!1
逝く時は一緒だよ♥
3 :
うんこ:04/03/25 02:45 ID:aG/q/94m
まだ死なないの??
早く死んだら???
間時期もいってええええええええええええええ
!!!!!!!!!!!!!!!!
4 :
うんこ:04/03/25 02:46 ID:aG/q/94m
わーい客だ客だ!!
いつ死ぬの??????
まじきもいよ!!!!!!!!!1
5 :
ねぇ、名乗って:04/03/25 02:51 ID:1+/J6QeJ
また、良スレが一つ(ry
6 :
うんこ:04/03/25 02:52 ID:aG/q/94m
やっべ、うんこもれそう!!!
早くみんなが死んでくれないとうんこもれえちゃうよ
みんなまじきもいんだって!!
早くきずけって!!
7 :
ねぇ、名乗って :04/03/25 02:54 ID:Hi5mX+Ui
7
8 :
名無し募集中。。。:04/03/25 02:55 ID:7cwBT2yk
エイトマン
9 :
ねぇ、名乗って:04/03/25 03:00 ID:aG/q/94m
俺もみんなきもいと思うよ
俺もだけど
きもい同士仲良くやろうや
またオラヲタか
11 :
ねぇ、名乗って:04/03/25 03:04 ID:aG/q/94m
>10
だからそういうあなたが一番キモいんですよ!!
12 :
うんこ:04/03/25 03:08 ID:aG/q/94m
はやくしねいい!!!!!!!!1
13 :
うんこ:04/03/25 03:15 ID:aG/q/94m
あ
14 :
うんこ:04/03/25 03:16 ID:aG/q/94m
あ
川*’ー’)
16 :
ねぇ、名乗って :04/03/25 03:40 ID:Hi5mX+Ui
きこりさ〜ん
17 :
ねぇ、名乗って:04/03/25 03:47 ID:k2TvRQen
きりこさ〜ん
癒し系スレ
川o・-・)ノ<……。
20 :
ねぇ、名乗って :04/03/26 02:29 ID:i5R4ksV/
きこりん
21 :
護佐丸娘。:04/03/26 10:31 ID:CX9i18fo
沖縄訛り?
23 :
ねぇ、名乗って :04/03/27 00:14 ID:o2jkmc9X
きこりん
24 :
ねぇ、名乗って:04/03/27 00:26 ID:71kFh28X
もう死んでますが何か
長介
25 :
名無し募集中。。。:04/03/27 02:51 ID:6/FQzf+w
市ね??
町に住んでますが。
市だとなにかあるの?
26 :
ねぇ、名乗って:04/03/27 05:57 ID:D3CIQ1ea
すみませんスベりました
申し訳ありません
27 :
名無し募集中。。。:04/03/27 07:23 ID:rk/r5jPc
>1
石川さん?
ついに史ねとまで言うのですか?
「大の大人」なんで氏ねません!
29 :
名無し募集中。。。:04/03/27 08:57 ID:KxITAiTU
age
長いも
>>1 分かりました。私の心臓が止まるまで、あなたは息を止めて待っていて下さい。
ぽくてー
♡
シャア専用
舘ひろし
てst
38 :
t:04/05/18 05:26 ID:bPHlwIrk
t
test
コンビニの帰り、夜道でケータイを拾った。
辺りには誰もおらず、落とし主はわからない。
――交番届ければ?
電話の声は、偶然コンビニで会って、さっき別れたばかりの
トモダチ。
同じ学校で、最近よく会うので、さんざん立ち読みしながら
バカ話してる。
たぶん店員に要注意人物としてマークされてると思うけど、
おまえだってバイトのくせにバックで店の本を読んでんだろう。
お互い様だ。
お開きになったあとは、家の方向が逆だから、こうやって
電話しながら帰る。
あれ?そういや、こいつの名前なんだっけ。
たしか同じ制服着てたよな。
ん?この時間に制服とは遊び人だな。
そんなトモダチいたっけ?
まーいい。
とにかく、さっき別れたはずが、途切れず喋ってる。
それって、よく考えるとすごい。
ケータイマンセー。
家までは距離があるし、夜道って怖いから、話し相手がいる
といい。
だって、か弱い女の子ですもの。
要するにコンビニから家に帰るまでのたった10分間の恋人。
と同時に、暗闇という眠りからあたしを救い出す王子様という
わけだ。
王子様は、王子様。
名前なんて要らないよね。
――ねー聞いてる?コーバン。
「あぁ、聞いてる聞いてる」
確かに、交番はすぐ近くだ。
「落し物です」って届ければ、ちょっといいことした気分になれ
る。
それで一旦足が向いたけど、すぐに気が変わってポケットに
つっこんだ。
「つーかコレ、チョッパるわ」
――まじ?てか、使い道あんの。
「ううん、べつに」
――じゃなんで。
「だって珍しんだもん、この機種」
――理由そんだけ?うわー、ちょう悪人だよ。
「あはは」
だって本当に珍しかったのだ。
まず、これはどう考えても5年以上前の機種だ。
「au」の名前変わる前のやつ。
確か女子高生の主流がポケベルからケータイに変わった頃
に出たやつだと思う。
レトロな感じがして、一目見て気に入ってしまった。
それにとても小さい。
サイズにして小指の関節いっこぶんくらい。
ようするに、どうみてもこれはストラップなのだ。
古い機種を模したやつ。
ご丁寧に、ストラップも付いている。
本物なら確かに悪人だ。
ケータイは王子様とつながるガラスの靴なのだから。
別の話とごっちゃになってるな。まーいい。
とにかく、ストラップくらい構わないだろう。
これくらいで罰が当たるわけない。
このときあたしはそう思っていた。
自分のケータイにでもつけて学校に持っていったら、暇つぶし
のネタくらいにはなる、という計算もあった。
都会の子とちがってこんな田舎に住んでると、ムダ話のネタ
を集めるのにも苦労するのだ。
在庫はいつもカッツカツ。
ま、そんぐらいの腹積もりは常に持ってないと、きょうび女子
高生やってられませんから。
――ゴメン、電池切れそうだから切るね。
「う、うん…」
――あー、もしかして寂しい?
「ふざけんな!」
――ふふん、どーだか。じゃねー。
ツーーー
ちょうど橋に差し掛かったあたりで電話は切れた。
受話口から聞こえる愛想のない音を聴いていたら、突然
いまひとりであることを意識しだしてしまった。
ツーーー
辺りには誰もいない。
窓の明かりもない。
電話では強がってたくせに…
ツーーー
橋の下を流れる幅広の川には、どす黒い水がひたひたに
なっている。
まるで息を潜めた生き物のようだ。
水面に映った自分の影が、目を光らせてこちらを見ている。
このあたりって、お化け出たっけか?
ツーーー
ケータイを握り締める。
汗ばんでる?
家までけっこう距離がある。
虫の声が際立った。
くそう、なんでこんな、ちょっと心許ない感じになるんだ。
ちょっとおやつ買いに来ただけなのに。
誰でもいい、一刻も早く、おかえり、って言われたい。
なんでもない、を気取ってすまして歩く。
誰も見てねーっつーの。
うわなんか寒くなってきた。
だいたい、母がダイエットなんかして「一家総動員・甘いもの
禁止令」なんて出すからいけないんだ。
何度失敗したら気が済むの。
一家総動員ったって二人しかいないし。
ずいぶん前に別れたくせに、未練たらたらじゃん。
だいたい、誰かが甘いもの食べてるの見ると我慢できない
なんて。
意志の弱いやつ!
だめなヤツ!
だからその娘のあたしもだめなヤツ!
…そう、ダメなやつ。
人気のない夜道にちょっとビビってやんの。
いまだって本当は、小腹が空いたからいつも台所に買い溜め
してあるはずのチョコを食べようとして、でも総動員法によって
すでに徴収されてて、だから仕方なくこっそり買いにきたのだ。
それなのに、店を出るきわに「そういや牛乳切れてたな」とか
思い出し買いして、しっかり者の娘モード入ってるし。
それに、さっきの子とふざけてシガレットチョコなんてだせー
もん買っちゃうし。
うわー、ちょっと足震えてるし。
まったく、ガキの使いかよ。
くそう、くそう。
アスファルトを蹴って、雪駄がちんと泣いた。
それを合図に駆け出した。
うしろは絶対振り向かない。
家まっしぐら。
足なまってるなー。
息せき切ってようやく家に着くと、玄関に鍵がかかってた。
ヤボ用で出てくるって、聞こえるように言ったはずだ。
返事も聞いた記憶がある。
おふくろのヤツ、以前空き巣に入られてから戸締りにうるさく
なった。
それで大家に許可を得て、玄関に鍵を3つも付けたのだ。
女の二人暮しなのだから、それはいい心がけだけど、娘が
いないことに気づけないような無神経なやつが、はたして守れ
るのだろうか。
空き巣から家と財産を。
職場で女のプライドを。
この現代社会で、愛する娘を。
…いや、最後のはなかったことに。
そもそも、あんたのその鍵への異常な執着心のほうが、空き
巣より、お化けより、よっぽど恐ろしいよと言ってやりたい。
この母親、だいたいがふつうじゃない。
この家から男がいなくなって久しいせいか、はやく彼氏を連れ
て来いとうるさくて、手帳のプリクラとか、ケータイのメモリとか
盗み見しまくり。
それで一度、自室のドアに鍵を付けようとした事があった。
でも、鍵のない部屋は日本人の美徳だ、とかいって絶対に
許してくれない。
クソッ!人権返せ。
簡易裁判でも起こしたろか。
彼氏だって、あんたなんかに拝ませてやるつもりはないのだ。
まったく、わが家は安全じゃない。
さて、玄関だ。
カギなんて持ってないし、あたしは空き巣じゃないから、仕方
なく電話をかけて親を起こす。
いやまてよ、メールの方が効果的かもしれない。
イッシッシ。
ピピピッ、っとユビキタス。
送信完了。
________________
|
| ごめんなさい、まま
| もうしませんから
| おうちにいれてください
| もうしません、ごめんなさい
|
| ひとみ
|
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
間接的とはいえ、生まれて始めて親に敬語使った気がする。
ちょっと間があって。
ガチ、ガチ、ガチ、ジャラン。
ものすごい勢いで鍵3つとチェーンが外され、ビックリ顔の母
が出てきた。
「ひとみ!!」
あれじゃ意味わかんないかなーと思って、いちおう電話も
入れとこうと思った矢先だった。
「どどどどど、どうしたの!」
どもってるし。
工事現場か。
心配すんのはわかるけど。
「ったく、コンビニ行くっつったじゃん」
「そんなこと聞いてない!」
えらい剣幕だ。メールのこと怒ってるのか?
しかし謝ってたまるもんか。
こちとら人権を迫害されている身だ。
お望みとあらば、法廷で会おう。
「言いました」
「いいえ、言ってません!」
しばらくの間、玄関から居間へと舞台を移し、言った言わない
の国会答弁を繰り返した。
まったく、答弁の最中にあたしが牛乳を買い足してきたことが
わかって、ありがとう助かるわ、ときちんと礼を言うそのまとも
さがこの人に無ければ、とっくに家出してるのに。
プチじゃない、ブチ家出だ。
ブチっと縁を切らせていただきます。
ただ実際は居座らせてもらってるんだから文句は言えない。
…というと語弊があるな。
まるで他人みたい。
実際は、れっきとした血縁関係にある。
戸籍も頼み込んで見せてもらったことあるし。
…いやな子供。
それに感謝していることも本当。
ただ法廷で向かい合う覚悟はできてるけどね。
そう、血とは切れないへその緒のようなもの。
大声で言い合っていたら、不思議とさっきの不安感は消えて
いた。
これが親子の絆なのか。
サンクス、マイ・マザー。
しかし袋をのぞくと、買ってきたはずのシガレット・チョコも消え
ていた。
あんなもんでも、なくなると悔しい。
口論の隙に取りやがったな、油断ならねぇ。
ファックオフ、マイ・マザー。
めんどくせー。
もーいい、ふて寝だ、ふて寝。
寝ちまえばいい。
わけわかんないものを全部、夢というゴミ箱につめこもう。
分別は明日の朝すればいいのだ。
真夜中、いきなりケータイが鳴った。
枕元で着信を知らせる光が点滅してる。
間違いない、ケータイだ。
だが寝ぼけていて、自分の着メロのはずなのに、コレは何の
音だ?と頭がとっちらかった。
枕から顔を起こすと、まず時計が目に入って、いま4時44分
だとわかった。
不吉な予感。
(だーもう、うっせえ!)
と声にして叫んだつもりが、どうやら声になってない。
(あれ?声が、遅れて、聞こえるよ)
ウソ。
マジで声がでない。
とにかくケータイ目掛けて枕もとに手を伸ばすが、ぜんぶ目が
開いてないので、いろいろと取りこぼした。
やっと掴んで開き、通話ボタンを押すが、まだ音が止まない。
コレじゃないのか。
――ぐわんぐわん。
とにかく音がでかい。
つーか近所迷惑だろ、コレ。
最大にしてもケータイの音量なんてたかが知れてるから、
ステレオの目覚まし機能じゃないか。
いや、ちがう。
まるで頭の中で鳴ってるみたいだ。
眉間のすこし奥がジンジンする。
脳ミソにでかい虫歯ができたみたいだ。
――ぐわんぐわんぐわん。
音源は何処だ?
こめかみも痛くなってきた。
だが部屋中をうろうろするうちに眠気が覚め、意識がはっきり
としてきた。
聴いたことのない曲だ。トランスみたいな曲。でもいまどきの
クラブではかかってなさそうな曲。
80’sっぽい。
すこしユーロ入ってる。
ジェリービーンズみたい、甘い雰囲気。
――ぐわんぐわんぐわんぐわん。
何か蹴飛ばした。
ストラップだ。
さっき拾ったストラップだ。
しかも光ってる。
アンテナが光ってる。
着信しているよ、おい。
変な着メロだよ、おい。
うそだろ。
だってストラップだよ?
あたしはこめかみを押さえながら、恐る恐るストラップ――
ちっちゃなケータイを手にとって、通話ボタンを押した。
――ぐわんぐわんぐわんぐわんぐわん。
だめだっ。
ボタンが小さすぎて押せない。
あたしは急いで化粧ポーチから安全ピンを取り出して、先っ
ちょで通話ボタンを押した。
ピッ。
止まったー。
静寂に包まれた。
世界に平和が戻ったのだ。
平和にレゲェミュージックなんていらない。
代わりに通話ボタンを押してミホ。
ん間違いない。
しかし、一息ついたのもつかの間。
こんどは声が聞こえてきた。
最初、隣の部屋で寝ている母の寝言かと思ったが、どうやら
このストラップから聞こえてくるらしい。
恐る恐る耳に近づけると、たしかに声が聞こえてきた。
――もしもし。ワタシ、リカちゃん。
アニメ声だ!
鼻にかかってる!
お人形さん抱いてそう!
電話の向こうで、しなつっくってるのが想像できる!
(な、何?何事?)
まだ声は出ない。
(誰?あんた誰?)
必死に、こころで念じてみる。
誰って、リカって名乗ってるじゃん、あたし!
ていうか、この状況受け入れてる?
――リカちゃんダイヤルに、お電話ありがとう。あなたのお名前
とお誕生日を教えて。
(はっ?だから何、あんた!)
そういえば昔、リカちゃん人形とお話ができるという、専用の
電話回線の話を、母親から聞いた覚えがある。
もちろんそれは、声優が吹き込んだ声なのだけど、実際に
あったらしい。
ということはこれ、リカちゃん人形の声?
このストラップ、その声が聞けるおもちゃなの?
でも、あたし、自分からかけてない。
勝手にかかってくるか?ふつー。
――お名前…教えてくれないの?リカ悲しい…
アニメ声がつやっぽくなった!
風引いたときみたいな感じ!
貧血で倒れた子が寝てる保健室に居合わせたっぽい空気!
やさしく介抱してあげたくなる感じ!
なんかすげぇ!
――ねぇぇぇ、お名前ぇ、教えてぇぇっ…。
うわぁ、喘ぎ声みたい。
耳にぞんぞんきた。
男ならコロっと行きそうな、この声。
しかしあたしは女だ。こんな手に引っかかりはしない。
飲み屋のおねえちゃんじゃあるまいし。
素足でタコを踏みつけた感じ、というのかな。
見知らぬ相手の、しかも同姓の喘ぎ声なんて、要するに
不愉快なのだ。
――ねぇ、お名前、教えて?
しつこい!
えーい、こしゃくな、いっそ無視してやれ。
――お名前、教えてよ…
お、テンションがちょっと落ちた。
だが、まだ無視だ。
――…………。
あれ、黙っちゃった。
カマトトぶってる女は自己チューだから、無視されるのが
いちばん凹むのだ。
学校でも、いやなヤツは、こうやってハブるのがいちばん
手っ取り早い。
これ、プチ・トリビア。
つーかそんなこと考えて、あたしも相当イヤな女だな。
――ねぇ、教えてってば。
まだ言うか。
――教えてくれないの?
あー!もう、しつこいなぁ。
――教えろよっ、この(放送コードにより規制します)がぁ!!
おいおい、逆ギレかよ。
――びえーん!リカ、泣いちゃうんだから!
うわー泣き出した、タチ悪ぅー。
――…しくしく…しくしく…。
(もう、わかったよ…ひとみだよ)
あーあ、教えちゃった。
――そう、ひとみちゃんっていうの。
(そ、そうだよ)
立ち直り早いなー。
光ファイバーなみだな。
しかも会話できてるし。
テープ吹き込んでるだけじゃないの?
じゃあ声優さんのナマ声?
ということは、チャットみたいなもん?
ちがうか。
――いいお名前ね。どなたがつけてくださったの?
(知らねぇよ、母ちゃんじゃないの)
おいおい、なにふつうに世間話してんだ?
――そう、いいわね。ワタシお母さんいないの。
(知らねぇよ!)
――ねぇねえ、シュワルツネッガーって、福井の生まれだって
知ってる?
(なんの話だよ!!)
――じゃああなた、自分のお誕生日、知ってる?
(知ってるよ!1985年の4月12日だ)
あ、いきおいで、また教えちゃった。
変なテクニック使いやがる、こいつ。
――そう、教えてくれてありがとう。これでもうお友達ね。じゃ
あ今からあなたのお家に…
(だからさぁ…)
――………………。
とつぜん声が途絶えた。
((((( おまえを、殺しに行くからな!!!!!!)))))
はっ!?
ケータイじゃない!
頭の中から聞こえた!
別人みたいな声だった!
――いま、おまえのマンションの前にいるぞ。
(は?あんた何言っての?)
こんどはまた電話口から聞こえる。
同じアニメ声でも、悪役みたいな声になってる。
同じ人だけど、キャラが変わってる。
どーいうこと?
あたしん家のマンションって、ここのこと?
ウチに来るの?
あたしを殺しに?
なんで住所知ってんの?
ていうか人形が!?
ウチって何階?6階だっけ?
やばい!テンパってる!
おちけつ!おちけつ!
外をのぞこうと窓に手をかけても、開かない。
カギも開いているし、なにもつっかえていないのに。
とりあえず見える範囲に殺人鬼らしいヤツはいない。
リカちゃん人形も見当たらない。
――2階に着いたわ。
(おい、おまえ、ふざけんなよ!)
――もう3階よ。
(おいって!)
――リカね、あなたを殺すために、さっき金物屋さんで包丁を
万引きしてきたの。
(万引きすんな!厨房か!)
――ほら、もう4階。
(ペースはえーよ!)
なんだよコイツ、きちがいかよ!
あー、変な汗かいてきた!
ん、背油!?
つっこみ的確!?
――ほら、5階に着たわ。
(おい、あんた誰なんだよ!いたずらか!?)
でも、誰かに恨み買うようなマネ、あたしはしたこと無いはず。
親以外に迷惑かけたことなんてない。
でも絶対とは言い切れないし。
――金物屋さんで、包丁3割引だったの。お徳でしょ?
(盗んだやつがいうな!)
――ほら、もう3階よ。
(下がってるー!)
――いたずらじゃないわ。この音、聞こえるでしょ?
(え!?)
耳を澄ましてみると、遠くの方で金属のぶつかる音がする。
まじっ!?
そうだ冷静に、冷静にならなきゃ。
まず部屋から出てみよう。
うわくそっ、ドア開かねー!
叩いてみても、力が入らねー!
ひ弱な音しかしねーぞ!
くそう、このまま耳を澄ましてるしかないのか?
カチン、カチン、カチン…
この音、この感じは直感でわかる。
包丁で階段の手すりを叩いてる音だ。
この棟のあちこちに響いてるのが、はっきりとわかる。
そしてだんだんと、近づいてきてる。
――さあ6階だ。もうすぐ、この包丁でおまえをギタギタに
刺し殺してやる。そして積年の恨みを…
恨み?
やっぱ恨まれてる?
どうしてだー?
あたりは完全なる静寂の中。
ついに足音が聞こえてきた。
リカちゃん人形が、パタパタと近づいてくる!
かあちゃん、助けてっ!!
――いま、おまえの部屋の前だ。覚悟しろっ!!
思念波みたいのが、頭にガツンときた。
頭痛がひどくなる。
逃げようと思っても足の自由が利かない。
手もケータイを耳に当てたまま動かない。
汗がうなじから背中を伝って身震いがした。
か、金縛り!?
この空気なんだよ!!
話の流れからして、あたし殺される!?
リカちゃん人形に!?
こんなアニメ声に!?
おいっ、ちょっ、おまえっ、出てくんなよ走馬灯!!
やだよこんなの!!
こんなストラップなんか、拾わなきゃよかった!!
歴史の教科書になんか載んなくていいから、もっとましな
死に方したいよ!!
まだ死にたくないよーーーーー!!!!
――――――――。
何にも起きない!?
ドアも開いた気配は無い。
ただのいたずらだった!?
遊ばれたのかよ、ふざけんなっ!!
そう思った次の瞬間だった。
――いま、うしろにいるよ。
金縛りが解け振り返ると、そこには包丁を持ったリカちゃん
人形が、いままさに飛び掛ってきた!!
((((死ねーーーーっ!!!!))))
(ぎゃーーーーー!!!!)
――スコっ!
(…へ?)
いまさっき、包丁の切っ先が、月に照らされて確かに
ギラリと光った。
驚いたあたしは仰向けに倒れた。
そして馬乗りになったリカちゃん人形は、その包丁であたし
の胸を何度も、何度も、何度も…
――スコッ!スコッ!スコッ!
何度も、何度も、何度も…
――スコッ!スコッ!スコッ!
「なんで刺さらないのよぉ…」
リカちゃん人形は、泣きべそかきながら、あたしの胸を
何度も突いていた。
先っちょが引っ込む、おもちゃの包丁で。
「ぷははははっ!」
緊張がほぐれ、思わずふき出した。
「ちょうウケるー!!」
あたしは腹抱えて、部屋中をころげまわった。
その拍子に、リカちゃん人形は、ぼてっと床に落ちた。
「なによ、空気読みなさいよー、失礼ね!!」
リカちゃん人形は、この上なく心外だというふうに憤慨して
いる。
「これが笑わずにいられるか!!」
「こんなはずじゃなかったんだから!!」
「おまえ、ありえないし、ほんとバカっ!」
「…バカって言う人がバカですっ!」
「つーか金物屋じゃなくて、おもちゃ屋に入ったんだろ」
最近のおままごと道具って、けっこうリアルだと思うし。
つーか、リカちゃん人形が持てるサイズの本物ってありえない。
「あ…そうかも…」
「だっはー!ウケるー!!
つーかギャグ!おまえの存在ギャグ!」
まあ、こうやって人形相手に大騒ぎしてるあたしも、客観的に
みると相当バカなんだけど。
「…ひとみ、うるさいよ」
ドアの向こうから、母の不機嫌そうな声がした。
人形の声が聞こえたか?
一瞬やばいと思ったが、怪しまれたらテレビだって誤魔化せば
いい。
「あ、ゴメン、ゴメン」
「…さっさと寝なさい」
「はーい」
足音が隣の部屋に消えていく。
「いまのひと、お母さん?」
「そうだよ」
「やさしそうな人ね」
「声だけでわかんの?」
「うん、まあね」
「…ふぅん」
ちょっとまて。
いまのやり取りって、ある種、親を紹介したわけで、そういや
彼氏にも紹介したことないのに!と思い出した。
状況が状況なだけに、なんだかちょっと腹が立った。
だから、わざと思い切り訝しがってみた。
「つーかさ、あんた誰?…てか何?」
「ワタシはリカちゃん。お人形さんだよ?」
首をちょっと傾けて、微笑み。
またシナつくった!
背景に、お花畑が見えるんですけどー!
むかーっ!むかつきーっ!
確かに、目の前にいるのは人形だ。
サイズも20センチくらいだし、持ち上げて観てみると、どこを
どうみてもリカちゃん人形。
ただ、よく見るとやたらボロボロで、腕とか足とかのプラスチック
が破損しているらしい箇所に、同系色の布切れでパッチが
してある。
どうやら、かなりのアンティークらしい。
「ちょっと、人をモノみたいに扱わないで」
アンティークのプライドか、鷲掴みされたのが気に入らないらしく
身悶えて逃れようとする。
「エヘエヘ、パンツもちゃんと穿いてるの?」
「きゃー、変態っ!」
「痛てっ、指噛んだ!」
「おまわりさーん、助けて!」
「ウソだよ!ジタバタすんな!」
えらく怒っている。
鮮魚みたいに、ピチピチ動きまくっている。
すごく体脂肪を燃焼しそうな動きだ。
こんどやってみようかな。
とりあえず、ずっと持ってるのはめんどくさいので、それを枕元
において、あたしは床に座った。
それでちょうど、目の高さが同じになった。
人形はいわゆるお姉さん座りをして、つんと澄ましている。
「つーか、モノじゃん?」
「お人形さんとモノは違うの」
ときっぱり。
「はっ、屁理屈だね」
「屁理屈じゃないもん!!リカっていう名前だってあるもん!!」
「つーか、パッチしてるから、パチもんじゃん?」
「パチもんいうな!」
「パチもんじゃん!」
「…ぱ、パチもんじゃ…ない…ふ、グスっ…ない…もん」
おいおい、泣かしちゃったよ。
どーしよ、これ。
電話のときとは違って、マジ泣きくさいんですけど。
人形とはいえ、女の子泣かしちゃうと、微妙に凹む。
あたしってこう、がさつというか、男っぽいというか。
女としてあと一歩が至らない、みたいな。
あーもう、こういう空気イヤ!
こういう空気って、変えるの面倒くさくて、だいっ嫌い!
つーか、あたしって、人間としておかしいのかな?
母親と法廷で会う覚悟のある高校生って、ありえないよね?
この人形の方が、よっぽど人間らしい。
で、この状況、どうよ。
喋って動く、殺人鬼の人形って。
「…へぐっし…ぐすん…へぐっし…」
人形は俯いて、うーうーシクシク唸ってる。
間違っておもちゃ持ってきたからって、なにもそこまで凹まなく
ても。
あーだめだ、いくらありえない状況だからって、少しは同情して
やらないと。
ちょっと反省して、なだめてみる。
「おいおい、泣くなYO!」
「…ほごっ!…ぐすん…ほごっ!…」
「あ、ブタ鼻した!」
「…びえびえーん!!…」
だめ、結果的に逆効果。
でも必死で何度かなだめてるうちに、少し落ち着いてきたみ
たい。
ポツリポツリと身の上を語りだした。
まず、こいつは「恐怖」という、お化けとか妖怪とかみたいな
ものらしい。
人は死ぬと身体から《たましい》が抜け出るが、この世に未練
を持っていると浮かばれず、《たましい》はさまようことになる。
そして大抵の人間はそうなるのだという。
次にその未練の種類に応じて、その《たましい》は、さまざま
な妖怪や幽霊やお化けやらに変化する。
そして、その状態で生きている人に何らかの働きかけをする
ことで、未練を成就させることが出来、そこでやっと浮かばれ、
天国へ行けるのだそうな。
だが未練が強すぎるとそう簡単に成就出来ず、彷徨い続け
ることになる。
それらのことを総じて「恐怖」と呼び、大抵は人間に害をなす。
たとえば、世界制覇を目前にして死んだボクサーはまず
リングに憑依するが、生前の目標が大きすぎて未練が強い
ことが多く、浮かばれることは稀である。
だから、「このリングのコーナーには魔物が棲んでいる」とか
いう決まり文句も、実際にいくつもの「恐怖」が憑依している
ことが理由だったりするらしい。
大抵のはふつう目に見えないが、そんなのがこの世には
ウジャウジャいるらしい。
「この身体は、入れ物みたいなものなの」
それは「リカちゃん人形」というのが、生前に「リカ」という名前
を持っていたやつが憑依するための入れ物だという意味。
「恐怖」は、「ボクサー」が「リング」に憑依するように、生前の
自分に由来のあるものに憑依することがある。
だからこいつの名前も、生前は「リカ」だったらしいのだ。
「らしい、って?」
「…本当は、覚えてないの」
どうやら人は死ぬと、生前の記憶はほとんど失くしてしまう
らしい。
それを思い出す方法としては、生前の記憶を呼び起こすような
何かのきっかけと偶然に出合うか、「恐怖」仲間の先輩に
いろいろ教わって、いま自分が置かれている状況を推測する
しかないとか。
こいつの場合、物心(?)ついた時から人殺しを職業にして
いたのだという。
あのちっちゃな電話は本来こいつの持ち物で、ある番号に
かけるとあの電話に繋がるらしく、そいつん家に乗り込んで
行って殺してしまうのだ。
ん?
職業?
つーか何で殺すの?
ケータイだけに、タチが悪い。
なんつって。
ともかく、それなのに、その大事な商売道具をどこかで失く
しちゃって、それで仕方なく向こうから掛けてきたって寸法。
「ワタシ、昔からあわてんぼうなの」
ケータイ失くしたの初めてで、思いっきりテンパっちゃって、
凶器の包丁もどっかに忘れてきちゃって、それで間に合わせ
で盗んできたのが玩具だったという悲惨さ。
なんだか、ちょっと感情移入しちゃうかな。
この状況はやっぱありえないけど、せめて「リカ」と名前で
呼んであげようと思った。
「…あれだけ演出してこのざまなんて、ホワイトキックです
よね」
リカは、涙を拭き拭き言った。
「…は?」
一瞬、何て言ったのかわからなかった。
「いまなんて?」
「だからあ、ホワイトキックですよ」
もうっ、わかってるくせにいっ!
って肘でちょんちょん突付いてくる。
☆解説しよう!!
これは、
《(場が)しらける=白蹴る=ホワイトキック》
という意味の、10年前の流行語なのだ。
「…あのう、それ死語ですけどなにか問題でも?」
「え!うそ!そうなの!?」
リカはすごく驚いた顔してる。
ビックリして耳でっかくなっちゃった。
「『アウトオブ眼中』とか、使いません?」
「…いえ、まったく」
「ノリピー語は?」
「…お気の毒ですが」
「またまたぁ!…」
「……」
「…びえーん!!」
まーた泣き出しちゃったよ。
表情がコロコロよく変わるねー。
「ズームイン!朝」の、いれこみ人形か。
こいつが生きてたのが10年位前で、それで思い出してつい
使ってしまったんだろうか。
でも、ふつーに死語使ってたもんなー。
恥の上塗りだもんなー。
あたしだったら、このおもちゃの包丁で無理やり切腹するね。
シャコ、シャコ。
「まー、そう落ち込むなよ」
「…しくしく…そうですね…ポジティブですよね…」
「なにそれ、流行ってんの?」
「はい、マイブームです…ぐすん…いいでしょ?」
すごい得意げな顔してる。
ぜんぜん羨ましくないけど。
でも、なんだかよくわからんけど、このままおだてりゃ泣き
止むな、これ。
「要するにあんたバケモノ…じゃなかった、お化けなんでしょ、
なんか他に得意技ないの?」
ほら、今いいフリしたよ、あたし。
立ち直るきっかけ与えてやったんだから、活かせよ。
「…ありますよ、それくらい」
「じゃ、見せて見せて」
ほら、あんたが主役の空気だよ。
つーかやっぱ、ふたりっきりだと、空気変えるの楽なー。
あたしのさじ加減ひとつだし。
こういうの、大勢いると大変なんだよ。
教室規模だと、もう至難の業。
「…そんなに見たい?」
ほら、食いついた。
「うん、見たい見たい」
「ほんとに?」
「ほんとにほんと」
「でも、ちょっと恥ずかしい…」
モジモジ。
「はずかしがんなよー!」
「でもぉ…」
モジモジモジ。
「自分に負けんな!」
まっけんな!まっけんな!じぶんにまっけんな!
まっけんな!まっけんな!じぶんにまっけんな!
ついキックザカンクルーの「地球ブルース」の替え歌で
煽ってしまった。
チェケラッチョ!
「…やっぱりダメです」
なに!?一生懸命に煽ってやったのに。
「…ふん、所詮ただのパチもんか…」
「ぱ、パチもんいうな!!」
「…パチもんじゃん」
おもしろがって、何度もパチもんパチもん煽っていると、リカ
は次第に眉を吊り上げ、怒り始めた。
「…ぱ、パチもんじゃ………ないもんっ!!!!」
そしていきなり声高になったかと思うと、リカの髪の毛が逆立ち、
あたしの体にも身の毛がよだつような震えが奔った。
「な、なんだっ!?」
そして竜巻が発生するように、リカの周りから白い煙が放射状
に噴き出した。
煙はものすごい風圧と、凍て付くような寒さを伴いながら、
加速度的に勢いを増していく。
カーテンが巻き上がり、ゴミ箱が宙を舞い、テレビが傾き始め
ると、もうまっすぐ立っていられないほどになった。
風圧に負けて、あたしはとっさに低い姿勢をとった。
「…あ゛ぁっ!!」
いちど痙攣を起こした後、リカは慌てて股間を押さえたが、
次第にスカートの股のところが盛り上がっていき、グロテスク
な何かがパンツを破り出た。
「…だ、だめぇ!!」
そのグロい何かは、めりめりと音を立てながらどんどん巨大化
していき、リカの身の丈をはるかに超える大きさになった。
あたしは床に這いつくばったまま、飛び回る教科書やらケータイ
やらを手で避けつつ、リカの様子を凝視した。
そのグロい何かは…そう、ペニスに似ていた。
でも、先っちょの形状が違う。
あれは足。
グロテスクな色をした、巨大な足。
リカの股間から、怒るように反り返った3本目の足が生え出て
いたのだ。
「…こ、こすってぇ!!」
リカは部屋を飛び回る物体が足にぶつかる度に、あっ!とか
いやんっ!とか喘いでいたが、その合間に精一杯の声で
叫んだ。
「な、なんでっ!?」
あたしは訳もわからずに叫んだ。
だって、急にペニスを擦れって言われても。
「…は、はやくぅぅぅ!!」
リカはもはや、いっぱいいっぱいの顔をしている。
それを見て、あたしの体は反射的に動き出した。
部屋中を縦横無尽に駆けめぐる風と障害物に行きつ戻りつ
しながら、リカの元へ必死で這い寄った。
そしてそのペニスみたいな足を掴むと、夢中になって擦った。
「…ぅあっ!…ぁうぁぁっ!…」
あたしが腕を上下させる度、リカは恥ずかしそうに顔を手で
覆ったまま、何度も喘いだ。
手にしてみると、本物のペニスと丁度おなじくらいの大きさ
だった。しかし、どくんどくんと脈打つそれには体温というもの
が感じられない。
途中ケータイがすごい勢いで横っ面にぶち当たって眩暈が
したが、かまうもんか。
そして腕に痺れを覚えるまで何度も擦ると、リカは身体を仰け
反らせ、つま先をピンとさせると、びくびく痙攣を起こした。
「…ふわぁぁぁっ!!!!」
ぽんっ!!
仰け反ったリカの胸の辺りから、何かが飛び出した。
それと同時に、ふっと風が止んだ。
今までそこら中を舞っていた様々なものが、ボトボト落ちて
いく。
リカは仰向けに倒れこむと、肩で息をしながら、ぐったりとし
始めた。
洋服の胸の辺りに、ぽっかりと穴が明いている。
「…い、いまのが得意技?」
なにかすごいものを見てしまったという感慨もないまま、思わ
ずそんな言葉がこぼれ出た。
だって、どういう状況で使う技なのか、意味不明。
リカのスカートはめくれたままで、股のところには小さな足が
付いていた。
いや、さっきの光景を見てしまった以上、それは正に萎れた
ペニスだった。
めっちゃ短小だけど。
でもこうやって大人しい状態のを見てみると、ぜんぜんグロ
くなくて、ふつうに足なのだ。
赤ちゃんのおちんちんみたいで、ちょっと可愛いとか思ったり
して。
「…はぁっ、はぁっ…ご、ごめんなさい…」
リカはやっとの様子で、もっそり起き上がった。
「…ワタシ、3本足なんです」
そして呼吸も整わないまま、何かいけないことを弁明するよう
に説明し始めた。
なんでも、かつてリカちゃん人形を作っていた工場では、流れ
作業の手違いで、たまに三本足が出来てしまたんだとか。
ほんとか、それ?
そういうのはふつう失敗作として捨てられてしまうのだが、
それを何処からか手に入れて、遊ぶ物好きがいたらしい。
ということはこの短小も、誰かが拾ってきてふざけて細工した
のだろうか。
でも自分の身体が失敗作って、すごい可哀想なんだけど。
「…ふだんは小さいままなんですけど、興奮したりすると…」
「ああなるわけね?」
「…はい」
「ところでさ、いい加減しまったら?」
「…はい?」
股をじろりと見てやると、リカは慌ててスカートで隠した。
「…もう、お嫁にいけない!!」
いく気だったのかよ。
まぁこの世の終わりみたいな顔してるから、声には出さない
でやったけど。
よく分かんないけど、たぶんさっきの出来事が恥ずかしかった
んだと思う。
「こうなったら、責任とってもらいますからね!!」
「は!?」
「あなたは今日から、ワタシのダンナ様です!!」
「どーしてそうなるの!?」
リカはお母様にご挨拶に行かなきゃ、と言って部屋から出て
行こうとするので、あたしは必死になってそれを止めたの
だった。
とまあ、そんなふうにあたしとリカは出会った。
しかしこれが「恐怖」の日々の始まりなのだった。
――第1話・完
102 :
作者:04/06/01 13:28 ID:41KqxVNn
あとがき忘れてたし…
更新はここまでです。
タイトルは、「あのねのリカちゃん(仮)」です。
しかし氏にスレとはいえ、スレタイが酷すぎますよね(w
怒って帰っちゃった人が多いかも。
でも本当に他意はないんです。
たまたまレスが39だったのでつい。
103 :
作者:04/06/01 13:57 ID:41KqxVNn
つーか、いきなり長すぎるね(w
勢いで書いて投稿したはいいものの、
読み返してみて不備が多すぎることに気づきました。
この後の展開を全然予感させてないし、
文章だってもっと絞る必要がある。
しかもこれ第1話じゃなくて、プロローグだったし。
なんかひとり相撲とってるな…
「あのねのリカちゃん(仮)」プロローグ読みました。
会話がとても楽しいです。
これからどんな話になって行くのか期待してます。
a
てst
107 :
ねぇ、名乗って:04/06/12 23:04 ID:GSHR2qMF
全員、脂ぎってるから嫌い( ゚∀゚)・∵. ガハッ!!
108 :
ねぇ、名乗って:04/06/12 23:06 ID:MKqb/ImJ
モーヲタは蛆虫。早く氏ね!!!!!!!!!!!!!!!
109 :
ねぇ、名乗って:04/06/13 08:15 ID:Y+6E0tDG
ひゃっほう!
110 :
ねぇ、名乗って:04/06/13 10:10 ID:TR1lWPsK
俺大阪市(σ~▽~)σ
112 :
名無し募集中。。。:04/06/13 13:54 ID:4Zwli04i
113 :
ねぇ、名乗って:04/06/14 22:50 ID:CxPhU2eg
>>108 どうも☆「死ね」って漢字違いますよ(^^)日本語は正しく使おうぜぃ!!
114 :
ねぇ、名乗って:04/06/15 21:08 ID:VlgnsQhN
厨房多杉。
115 :
ねぇ、名乗って:04/06/15 21:15 ID:aMxMShZv
>>113 久しぶりにおまえみたいなヤツハケーンしたYO!
117 :
ねぇ、名乗って:04/06/15 21:22 ID:VlgnsQhN
>>113直ちにに出ていけ
もう二度と来るな。
そして、輝け!(この意味が分からない女又も帰れ)2chの質が落ちる(´Д`)
119 :
ねぇ、名乗って:04/06/15 22:17 ID:aMxMShZv
これだからモーヲタは頭が(ry
>>118 質が落ちる・・・ってw
おまいは2ちゃんにどっぷり浸かってんのなwwwwww
121 :
ねぇ、名乗って:04/06/16 02:58 ID:8PL1cF78
これだからモー(ry
122 :
ねぇ、名乗って:04/06/20 21:36 ID:XBoaG7t+
age
123 :
ねぇ、名乗って:04/06/21 20:34 ID:X8NXAng0
死ね!まぢきもい!
124 :
ねぇ、名乗って:04/06/21 20:39 ID:qGcG75KI
モーヲタきもいからみんな死ね!ばか!ばか!ばか!ばか!ばか!ばか!ばか!死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね
125 :
ねぇ、名乗って:04/06/22 01:29 ID:gwUSDZO/
hokurobuta
126 :
ねぇ、名乗って:04/06/22 12:55 ID:XZkzyxl+
>>43 >「au」の名前変わる前のやつ。
セルラー
127 :
作者:04/06/28 16:07 ID:Adv4cIhA
>>104 ごめん、レスもらったの気づかなかった…
いまプロットから練り直しているので、
本編はもう少し時間がかかりそうなのです。
>>126 ツーカーセルラーだね、ありがとう。
128 :
作者:04/06/28 16:10 ID:Adv4cIhA
それと「あのね」の前に、別の短編をうpします。
タイトルは、「しないよ」
石川が主役のネタ小説です。
暇つぶしに読んでやってください。
129 :
しないよ:04/06/28 16:11 ID:Adv4cIhA
「ありがとー!!」
華やかなステージが幕を下ろし、14人の娘。たちは
スポットライトから抜け出した。
「今日はいつも以上に盛り上がったねー!!」
「うん、気持ちよかったー!!」
メンバーは興奮した様子で、控え室へと帰る道すがら、
スタッフに挨拶をしつつ、汗を拭き拭き、ステージの感想
を語り合っていた。
「それでさ、見た今日の?」
「うん、見た見た!」
「ウケるよねー」
いま、メンバーにとって最大の関心事は、珍しいお客に
ついてだった。
130 :
しないよ:04/06/28 16:12 ID:Adv4cIhA
このツアー中、いつも客席の最前列にいて、ネクタイ姿
に法被を羽織り、狂ったように踊る人物がいたのだ。
おそらくは会社帰りのサラリーマンだろうが、それなら
よくあること。
問題は、彼が踊るばかりで、初めから終わりまで全く
舞台を見ようとはしないことだった。
最初に気づいたのは藤本だった。
それからというもの、メンバーは彼を観察することを
ステージに上がる密かな楽しみにしていた。
ただ一人、石川を除いて。
「格好からして、あの人、石川さんのファンみたいですね」
小川が揉み手にすり足で寄ってきた。
131 :
しないよ:04/06/28 16:13 ID:Adv4cIhA
石川は思う。
この子はなぜ、いつもゴマをするような態度でいるのだろう。
「…そうなのよー、困っちゃう」
あの奇妙なお客に、石川は初めから気づいていた。
だから、ここしばらくは、極力それを見ないよう、二階席へ
ばかり目線を送っていた。
一生懸命応援してくれるのなら、どんなに滑稽でもいい。
しかしメンバーには目もくれず、自己陶酔して踊り明かして
いるのを見るのは、気分が悪い。
金を払った以上、どう振舞おうが個人の自由じゃないかと
言われてしまえばそれまでなのだが。
「大の大人がね…」
思わず、口にした。
132 :
しないよ:04/06/28 16:14 ID:Adv4cIhA
「あー、そんなのファンに聞かれたら、愛想尽かされちゃ
うよ」
「だって本当のことですもん」
ゴシップで痛い目に遭ったことのある矢口は心配そうに
語るが、自分には無縁だと、石川は気にも留めていなか
った。
「梨華ちゃん、マイク忘れてる」
「あ、ほんとだ、ありがとう」
石川は慌てて引き返し、謝ってマイクを返した。
スタッフも丁度、ひとつ足りないと慌てていた。
いつもは舞台が跳ねるとすぐ、袖にいるスタッフに預ける
のだが、今日は考え事をしていて持ってきてしまった。
それがこのあと、大きな波紋を呼ぶことになるとは知らず
に。
133 :
しないよ:04/06/28 16:28 ID:Adv4cIhA
あれから数日後の、「ハロモニ」収録日のことだった。
「でないよ」
収録を終えた石川は、テレビ東京のトイレに篭っていきば
っていた。
ひどい便秘になって、もう一週間なのである。
便秘と知られては恥ずかしいので、いつも使っている楽屋
の傍のトイレでなく、そのひとつ先のトイレにいる。
小学校のとき、いちばん奥の個室に「トイレの花子さん」と
いうお化けが出るという怪談があった。
信心深いほうなので、それにあやかって、いちばん奥の
個室に入った。
だって、「出る」かもしれないから。
134 :
しないよ:04/06/28 16:31 ID:Adv4cIhA
便秘の原因は見当たらなかった。
とくに不摂生をしたわけでもなく、生活リズムを崩したわけ
でもない。
ましてや連日ステージをこなしているのだから、運動不足
ということもない。
本格的な便秘は、19歳にしての初体験だ。
だからコーラックも飲んでるし、健康管理に明るい飯田
にアドバイスを受けて、3日目あたりから意識して食物
繊維を摂るようにしていた。
それでも出ないのだ。
このところずっと、空いた時間をみつけてはこうやって
個室で粘っているのだが、便意どころか、その予感すら
ない。
135 :
しないよ:04/06/28 16:34 ID:Adv4cIhA
それから30分がんばったが、あきらめて個室を出ること
にした。
排泄してはいないが水を流す。
こういうのは、気持ちの問題である。
もしかしたら、自分の腸は宇宙空間に直接つながって
いて、肛門を出る前に、異空間に転送されてしまうの
ではないか。
便器の排水口は、いかにも宇宙へつながっていそうだ。
ごうごうと音を流れるそれを眺めながら、そんなバカな
ことを考えた。
化粧室で手を洗い、鏡に映る自分の顔を見る。
汗をかいたので化粧を直すが、のりが悪い。
というより、日に日に悪くなっていく。
頬もちょっとやつれた。
136 :
しないよ:04/06/28 16:35 ID:Adv4cIhA
肩を落とすと、スカートの上からでも、若干だが下腹部
が膨らんでいるのが分かる。
だが、何を考えても、出ないものは出ない。
重い足取りで、楽屋へ戻っていく。
「梨華ちゃん、出た?」
入るなり、辻が茶化してきた。
「なんで?」
バレてないつもりだったので意表をつかれたが、
年齢3つぶんの年の功で、取り澄ましてみせる。
「えー、石川さん、どこか体調でも悪いんですかぁ?」
6期までが口を挟んできた。
はっとして楽屋を見渡すと、みんな訳知り顔でくつくつ
とやっている。
137 :
しないよ:04/06/28 16:36 ID:Adv4cIhA
(6期って意外と食わせもの…)
「このあと、みんなでご飯しようと思ったんだけど、梨華
ちゃんは除外ねー」
「や、矢口さん、あたしも行きたいですよ!」
「いーのいーの、ムリしない」
石川を軽くあしらうと、矢口はメシ組みを部屋の真ん中
に集め、何食べるー?と話しはじめた。
「…もうっ」
そうやって、ポーズで頬を膨らませるが、本当は食欲なん
てない。
矢口がムリするなと言うのも、石川が便秘に参っている
ことを知っているからだ。
138 :
しないよ:04/06/28 16:37 ID:Adv4cIhA
いまだって、石川が帰ってくるまで話し合いを始めなかっ
たのがその証拠だった。
すっきりとした顔して帰って来たら、食事に誘おうと思っ
ていたのだろう。
それで気を揉ませているのだなぁと、ちょっと凹んだ。
ため息だったら、すぐに出せるのだけどなぁ、と。
139 :
しないよ:04/06/28 16:43 ID:Adv4cIhA
その後、いくつかの仕事をこなすと夜になっていた。
最後にマネージャーがやってきて、明日のスケジュール
の確認をし、そのまま解散となった。
みんなは、さっさと行ってしまった。
石川は仕方なく、駅へ向けてひとり歩き出す。
明日のコンサートにも、例のネクタイ法被は来るだろうか。
夜道を歩き、そんなことを考えようとして、すぐに止めた。
便秘のこともあって、あまりにも気重だったから。
前方に明かりが気になり始めた。
駅が近い。
まっすぐ家に帰ろうか。
それとも、いまからでもメンバーを追いかけようか。
140 :
しないよ:04/06/28 16:46 ID:Adv4cIhA
店の場所は聞いてある。
しかし自宅は、同じ路線の逆方向だ。
どちらへ乗ろう。
執行猶予の期限が迫る中、揺れる気持ちのまま、建物
の角を曲がった。
その時だった。
目の前に、ぬるりと人影が現れ、石川につかみかかって
きた。
「きゃっ!!」
思わず悲鳴を上げた。
しかし相手は構うことなく、石川の肩を掴んだまま、思い
つめた顔で立ち尽くしている。
暗がりの中、他に人はおらず、その目は確かに石川を
捉えていた。
141 :
しないよ:04/06/28 16:51 ID:Adv4cIhA
よく見ると男だ。
細身のその男は、影であり、どす黒い塊のようだった。
ただならぬ雰囲気を感じ逃げ出そうとするが、突然のこと
に足がすくんで動かない。
「誰かー!誰かー!」
殺される。
そう思い必死で叫んだ。
「…大の大人が、そう取り乱すなよ」
男は何かつぶやいた。
骨が砕けそうなほどの握力に、石川は顔をゆがめる。
この細い身体のどこに、こんな力があるというのか。
「お願い…許して…」
混乱する頭で懇願した。
142 :
しないよ:04/06/28 16:55 ID:Adv4cIhA
「だめだ…裏切ったから…」
肉をえぐる大きな手。
こころを犯すような瞳。
いま男は、恐怖の塊だった。
しかし唸ってばかりで、それ以上なにもしない。
「おい、何してる!!」
遠くで人の声がして、誰かが駆け寄ってくる。
足音は複数あった。
さっきの悲鳴を聞きつけたのだ。
声の主たちが駆けつけると、男はあっけなく引き剥がされ、
路上に組み敷かれた。
「…裏切ったんだ…」
男はなおもくぐもった声でうめき、その場にへたり込んだ
石川を睨み続けていた。
143 :
しないよ:04/06/28 16:58 ID:Adv4cIhA
助かった。
しかし身体は強張ったままだった。
駆けつけた男の一人が石川を立ち上がらせようとするが、
腰が抜けてしまっていて、近くのベンチに腰を下ろさせた。
そして何度も大丈夫かと声をかけ、石川がうなづいたのを
確認すると、ケータイで警察を呼んだ。
石川の意識を確認したのは、場合によっては110でなく
119にかける必要があったからだ。
暫くするとパトカーがやってきて、男は連行されていった。
車に押し込まれる際も、男は唸り続けた。
「…裏切った」
サイレンの音とともに、その言葉が耳に残っていた。
144 :
しないよ:04/06/28 17:01 ID:Adv4cIhA
――モー娘。石川、ファンに襲われる。
翌朝から、このことは事件として各メディアに報道された。
テレビ局の近くだったことが災いして、事務所の隠ぺい
工作が及ばなかったのだ。
石川も警察署で事情聴取を受け、マネージャーがそれに
付き添った。
警察署へ行き、「面通し」といって、マジックミラーごしに
犯人の顔を確認させられたが、昨夜の男と同一人物か
どうかわからなかった。
幸いなことに怪我ひとつなく、大事には至らなかったため、
1日だけ休暇をもらい、石川はすぐに仕事復帰した。
145 :
しないよ:04/06/28 17:05 ID:Adv4cIhA
「でないよ」
石川は相変わらず、テレ東のトイレの、やはりいちばん
奥に篭って、東スポを読んでいた。
各メディアの中でも、やはりこの事件を一番大きく報じ
たのが「東スポ」だった。
その記事によると、犯人はネット上に流れていた音声
ファイルを聴き、石川への復讐を思い立ったのだという。
それは、モーニング娘。がコンサートで使っている無線
マイクを傍受し、録音したもので、そこに石川がファン
のことを「大の大人が…」と嘲る声が入っていた。
取り調べで犯人は、「梨華ちゃんにはそんなこと言っ
て欲しくなかった」と語り、動機を「イメージを裏切られ
た」からだと話した。
はじめから危害を加える気はなかったという。
146 :
しないよ:04/06/28 17:08 ID:Adv4cIhA
(あたし、そんなこと言った?)
石川は「大の大人発言」を、覚えていなかった。
(それに、イメージって?)
自分のタレントとしてのイメージについて、考えたこと
はあった。
しかしそれは、ぶりっこキャラで笑いを取るのが自分の
持ち味なのだ、という程度の認識だ。
最近でこそ出番は少ないが、チャーミー石川という持ち
キャラは、かなり評判がよかった。
だから、夜道で襲われた原因がその発言にある理由
が理解できなかった。
マスコミの報道により、この事件は当然、ネット界隈の
モーヲタの知るところとなった。
147 :
しないよ:04/06/28 17:11 ID:Adv4cIhA
犯人や、事務所のタレント管理能力を非難する書き込
みが続き、アンチ石ヲタはここぞとばかりにスレを乱立
させていった。
しかし、それは石川の知らない世界の出来事。
事務所に送られてくる励ましの手紙や花束が、石川の
こころを癒したこと以外、この事件におけるファンからの
アプローチを、石川は知らなかった。
頭を抱えていると、誰かがトイレに入ってきた。
「梨華ちゃんも大変だよねー」
矢口の声がして、石川は便座から飛び上がった。
楽屋からは離れたトイレを使っているのに、なぜ矢口が
ここへ入ってくるのか。
いつものトイレが故障しているのだろうか。
いずれにしろ、石川は身動きが取れなくなった。
148 :
しないよ:04/06/28 17:15 ID:Adv4cIhA
トイレのドアは2つ開けられた。
もう一人いるらしい。
用を足し終えると、ふたりは化粧室で話し始めた。
「石川さん、けっこう平気そうでしたよね」
「東スポ見せたら、まっ先に、自分の写真うつりを気に
してたしねー」
改めて指摘されると、ちょっと恥ずかしい。
「やっぱ、ファンの人って、ああいうの嫌なんですか?」
「あたりまえっしょ」
もうひとつの声は小川だ。
事件のことについて喋っている。
石川は東スポを握りしめ、ドアの向こうへ耳をそばだてた。
「でも、あの法被ネクタイの人、そんな凶暴そうには
見えませんでしたけどね」
149 :
しないよ:04/06/28 17:18 ID:Adv4cIhA
(え!?)
石川は耳を疑った。
昨日自分を襲ったファンと、あのネクタイ法被のお客が
同一人物なんて知らなかったのだ。
「じつは石川さん、裏でもっと酷いことしてたりして」
「おー、言うねー後輩」
(しないよ!)
と言えないのがつらい。
便秘はメンバーにとって公然の秘密とはいえ、トイレの
ドアからこんにちは、というのはちょっと嫌だ。
「それに、便秘でしょう?」
「アナルにローソクでもつっこんだら溶けちゃって、抜け
なくなったとか」
「なはは、石川さんやりそー」
150 :
しないよ:04/06/28 17:21 ID:Adv4cIhA
(し、しないよ!!)
石川はもどかしさを噛みしめた。
変なイメージで語らないで!
しないよ、と言えないのが、こんなにつらいとは。
それに仲間に好き勝手言われるし、なんだか凹んで
しまう。
しかも片方は後輩だ。
小川って、こういうときフォローしてくれるタイプの子だと
思っていたのに、イメージが壊れてしまった。
なんだか、がっかりだ。
と、そこまで考えて、石川は思った。
あのネクタイ法被の人も、自分に対して同じ気持ちだった
のではないのか。
151 :
しないよ:04/06/28 17:25 ID:Adv4cIhA
『梨華ちゃんには、そんなこと言って欲しくなかった』
その言葉を思い出すと、胸に突き刺さった。
いま自分が小川に感じたように、あの人も自分に対して
失望しているのかも…
「じゃ、お先にー」
小川が出て行ったと思ったら、入れ替わりに藤本が入っ
てきた。
「長いっすねー」
「あー、梨華ちゃんのトイレ?」
話しながら、藤本は個室に入っていく。
「いえ、矢口さんの化粧直し」
「おいらかよ!」
「冗談ですよ」
152 :
しないよ:04/06/28 17:28 ID:Adv4cIhA
いつもなら微笑ましい取りも、石川は笑えなかった。
藤本も用を足しに来たらしい。
個室から出てくると、鏡の前で雑談を始めた。
「いまごろ、お通じついてるかもしれませんよ」
「それで、一週間分だから出すぎちゃって、流せなく
なってたり」
(…しない…よ)
なんだか石川は、あの発言の責任を取らされて、罰を
受けている気分になってきた。
「ところで、ミキティはどう思う?」
「梨華ちゃんの事件ですか?」
「そう、イメージってやつ」
「美貴は、大事にしてますよ」
藤本は、それが当たり前のことのように言った。
153 :
しないよ:04/06/28 17:32 ID:Adv4cIhA
「北海道の真ん中ら辺、ってやつ?」
「あと、眼つきが悪いとか」
「大事だもんね、そーいうの。
おいらもミキティ寄りのキャラだし、よくわかる」
「そう、だから梨華ちゃんは、甘いと思います」
梨華ははっとして胸を押さえた。
まるで自分に向けて言われたみたいだ。
「きびしいねー」
「あたしは必死ですから」
「そうは見えないけど」
「だてに、真ん中ら辺から出てきてないですよ」
そう言って、藤本は、かかと笑った。
154 :
しないよ:04/06/28 17:35 ID:Adv4cIhA
「そんなこと言って、その花瓶の下に盗聴機あるかもよ?」
「いいですもん、キャラはみ出てないから」
「まぁ、ウチらはね…」
そのあと話題は、藤本の実家経由で焼肉の方に流れて
いき、会話は終わった。
ふたりが出て行くと、石川はひとりトイレに残された。
(…イメージって大事なんだ)
石川は、みんなの会話から、大事なことに気づいた気が
した。
そして便座から立ち上がり、東スポを強く握り締めた。
紙面の顔写真はくしゃくしゃになっていたが、ぜんぜん
構わなかった。
155 :
しないよ:04/06/28 17:38 ID:Adv4cIhA
はやく、ステージに立ちたい。
そして、あの人に謝りたい。
そんな想いが、便秘のお腹以上に膨れ上がっていくの
を感じていた。
156 :
しないよ:04/06/28 17:42 ID:Adv4cIhA
しかし、ネクタイ法被のひとは、あれ以来ライブに現れ
なくなっていた。
それでも石川は、いままで以上にチャーミーキャラで愛想
を振りまいたが、どこか空しさだけが残った。
便秘は相変わらず続き、もう6週目に入った。
お腹のふくらみは衣装で誤魔化せるが、顔を化粧でカバー
するには限界がある。
どんどんチャーミーじゃなくなっていく自分が、そこには
いた。
あまりの様子に、親やメンバー、事務所は入院を勧めた
が、石川は断固拒否した。
いつかあの人が戻ってきてくれる時のために。
157 :
しないよ:04/06/28 17:45 ID:Adv4cIhA
しかし、そんな熱意は、症状の悪化とともに、いつしか
消え失せていった。
そして便秘が始まって2ヶ月が過ぎた頃、レッスン中に
石川は倒れた。
マネージャーに担がれて病院へ行くと、即時入院を言い
渡された。
当然、仕事にもドクターストップがかかった。
お腹がいびつに膨れ上がり、本物の妊婦のようになって
いたのだ。
折りしも担ぎ込まれた病院が総合病院で、すぐさま産婦人
科に通されたほどだった。
吸引機で肛門から便を吸い出すことが提案されたが、
いかなる装置をもってしても吸引力が足りず、断念した。
158 :
しないよ:04/06/28 17:49 ID:Adv4cIhA
この異常な事態に、腹を切開して便を排泄させるという
案まで出されたが、それは事務所が断固として許さなか
った。
それに、原因がわからない以上、定期的にそれを繰り
返さなければならず、医師としても得策ではないと判断
したのだ。
そして、少し体調の落ち着いた翌週のこと。
メンバーがお見舞いにやって来た。
「やっほー!げん……」
石川の姿を見るなり、行き場を失った矢口の言葉は床に
落ちた。
すっかり寝付いたせいで、張りつめていた気が抜けてしま
い、石川は10歳も老けて見えた。
159 :
しないよ:04/06/28 17:53 ID:Adv4cIhA
とりあえずでも、「元気?」と声をかければ、石川の気も
丈夫になるのではないか、という矢口の考えは、だから
浅はかだった。
遅れて藤本が入ってきたが、差し出された椅子には
座ろうとしなかった。
「ちょうど、ふたり揃ってオフでさ」
「うん、ありがとう」
石川はメンバーを歓迎すべく起き上がろうとするが、
差し入れの袋を受け取り損ねるほどに覚束なかった。
「いい、楽な格好でいて」
「…ありがとう」
「どっちがお客か分からないね」
「…はは、そうだね」
ふたりは明るく振舞おうとするが、布団のふくらみが
異様な存在感でそこにあって、それで空回りをした。
160 :
しないよ:04/06/28 17:56 ID:Adv4cIhA
「自分のおなかじゃないみたい」
石川は苦笑して腹をさすった。
「…あのひと、来た?」
「…ううん」
「…さすがにムリっしょ」
「…そうだね。もう来ないよね」
石川は、深いため息をつき、肩を落とした。
「会社も、クビになったって」
窓の外を睨んでいた藤本が、はじめて口を開いた。
「ミ、ミキティ?それは言わないって!」
「…いいの、聞かせて」
「…でも」
「お願い」
161 :
しないよ:04/06/28 18:00 ID:Adv4cIhA
矢口は渋々ながら、ライブでヲタ芸をする客が激減した
ことを告げた。
「…ごめん、あたしがあんなこと言ったから」
「いいよ、気にすんなって」
「………」
ふたりの会話が袋小路へ入ると、藤本はベッドに雑誌
を広げた。
「ミキティ、それ!!」
「フライデー?」
「マネージャーが男だったのが、まずかった」
――モー娘。石川梨華・できちゃった結婚!?
記事には、お腹の大きな石川が、マネージャーに抱え
られて病院へ入っていく写真が掲載されていた。
162 :
しないよ:04/06/28 18:03 ID:Adv4cIhA
すぐにでも卒業か?と記事にはある。
「…そう」
「お客さんが離れていった。おかげでライブに張りがなく
なった」
「おい、言いすぎだよ!」
矢口の言葉を無視するように、藤本は窓の外を睨んで
いた。
「…ごめんね」
「いや、おいらたちのことは気にすんなって」
「謝る相手がちがうでしょ」
つばでも吐くように、藤本が言った。
「じゃ誰!?」
163 :
しないよ:04/06/28 18:07 ID:Adv4cIhA
その態度に苛立った矢口が、藤本に噛み付いた。
「…あの人」
石川は、シーツを力なくつかみ寄せた。
「同情するの?」
「うん…あ、ううん。同情とはちょっとちがうかも」
「どっちなんだよ」
石川の表情が曇るたび、藤本はますます尖っていく。
「き、今日はこのへんで帰るね」
「…あ、うん」
耐え切れなくなった矢口は、そのまま藤本を引っ張って
部屋を出て行った。
「ありがとう」
164 :
しないよ:04/06/28 18:11 ID:Adv4cIhA
石川は二人の後姿に声をかけた。
藤本だけは振り返らなかった。
ひとり病室に残った石川は、足の上に載せられた雑誌
の記事に目をやった。
トイレの中で聞いた、藤本の言葉を思い出した。
――梨華ちゃんは、甘いと思います。
――あたしは、必死ですから。
藤本は北海道から上京して、2年も地道にレッスンを
積み、ようやくデビューできた苦労人。
思い返せば、自分のように、初めて受けたオーディシ
ョンで、こんな大きなグループに拾ってもらえた甘ちゃ
んとは大違いだった。
色々な思いに胸がつまり、フライデーの記事から目を
逸らすことができなかった。
165 :
しないよ:04/06/28 18:15 ID:Adv4cIhA
それから一週間後、ネクタイ法被がライブに戻ってきた
というメールを受けた。
藤本からだった。
――そのお腹は、誰のものでもない、梨華ちゃんが
受け止めるべきものだよ
そう添えられていた。
いや、そちらが本文だったのかもしれない。
ヲタに襲われた事件から、ちょうど2ヵ月後のことだっ
た。
石川はいても立ってもいられず、ステージに立ちたいと
主治医に申し出た。
しかし絶対安静だといって、受け入れられないまま
更に一週間が過ぎた。
166 :
しないよ:04/06/28 18:19 ID:Adv4cIhA
快方に向かう気配などない。
しかし黙って寝てなどいられない。
石川は病室を這うように出た。
お腹の重みを確かに感じていた。
(こんな無様な姿見られたら、誰でも幻滅だよね)
覚束ない足取りで病院を出ると、国道でタクシーを拾っ
た。
行き先は、モーニングのコンサート会場。
167 :
しないよ:04/06/28 18:23 ID:Adv4cIhA
舞台には、13人のモーニング娘。がいた。
「こっちー!!」
右へ左へ。
後ろへ前へ。
いつもなら会場を変幻自在に煽る娘。たちだが、この日は
無力だった。
メンバーがひとり足りない。
しかしその事実以上に、客席の異様な光景がメンバーを、
そしてステージを楽しみに詰め掛けたファンを戸惑わせた。
一部のヲタが、ステージのあいだ中なにもせず、ただ立ち
尽くしていたのだ。
その中には、あのネクタイ法被の彼もいた。
168 :
しないよ:04/06/28 18:27 ID:Adv4cIhA
ちょうど一週間前、彼はライブに復帰し、やはり最前列
にいて、何もせず立ち尽くした。
そして来る日も来る日も、蚊の鳴くような声で、しないよ、
しないよ、と唸り続けた。
その声は、MCにすら支障をきたさないほど弱かった。
そのため公演は通常通りに行われたが、誰もがそれを
不気味に思っていた。
ネットでも彼の振る舞いが噂になっていた。
そして、それに共鳴した者は、石川ヲタであるか否かに
関係なく、応援やヲタ芸をやめた。
2日経ち、3日経ち、1週間が経った今日、会場の3分
の1が彼に倣った。
169 :
しないよ:04/06/28 18:30 ID:Adv4cIhA
それは、ゴシップに踊らされたりしないよ、というヲタなり
の意思表示だった。
「ありがとー!!」
衣装チェンジを終えたメンバーは、誰もが同じ不満の種
を抱えたまま、アンコールのステージに立った。
しかし、客席の鼓動はまばらで弱かった。
会場は広く、そして冷たく感じた。
そして、田中がキレた。
「ちょっと、あんたら、おかしいんやなかとね!!」
そこまでは台本どおりのMCをこなしていたが、客の
あまりにひねた態度に耐え切れなくなったのだ。
170 :
しないよ:04/06/28 18:35 ID:Adv4cIhA
――石川を出せ!
どこからか野次が飛んだ。
「石川さんのこととか、関係なかっ!!あたしはこんな
心のちっさい人達のために歌いたくなかだけとっ!!」
田中はマイクを投げ捨てると、そのまま舞台袖へ向けて
歩き出した。
「田中」
藤本がマイクを拾い上げると、田中のもとへ歩み寄った。
「マイク投げ捨てるなんて、歌手失格だよ」
「…っ!!」
「プロ意識、アンタにはないの?」
「じゃあ、プロは歌う相手を選んじゃいけないんですか?」
171 :
しないよ:04/06/28 18:39 ID:Adv4cIhA
噛み付く田中に、藤本はそっとその手をとり、マイクを握ら
せた。
「いま、その疑問に答えられるのは、あたしじゃない」
「…え?」
「でも、きっともうすぐ…」
――待って!!
突然、スピーカーから石川の声がした。
とても凛とした声だった。
そして会場がどよめいた。
舞台袖から、石川が現れたのだ。
石川は、娘。たちと同じ衣装を身にまとい、グロテスクに
膨れた腹を、隠そうともしなかった。
その姿に誰もが目を見張り、そして背けた。
172 :
しないよ:04/06/28 18:43 ID:Adv4cIhA
ネクタイ法被の彼は、やはり俯いたまま、フロアの一点を
睨んでいる。
「そんなのおかしい!」
会場へ向け、石川は叫んだ。
そして舞台の最前へ歩み寄ろうとし、半ばで力尽きた。
「梨華ちゃん!!」
メンバーが倒れた石川の元へ駆け寄り、手を差し出した。
しかし、それを拒んだ石川は叫んだ。
「こんなの、みんなじゃない!!」
――だって大人気ないんだろ?
どこからか、冷めた野次が飛んだ。
それを非難する者は、誰もいない。
173 :
しないよ:04/06/28 18:46 ID:Adv4cIhA
「…ごめんなさい」
石川は打ちひしがれたように肩を落とした。
「…あたしが間違ってた。みんなの気持ちなんて、何にも
考えてなかった…」
そして静まり返った会場に、涙が床をたたく音が響いた。
いつか、マイクを通して石川の本音を聞いたヲタたちは、
同じようにして、いまの石川の本音を知った。
――大の大人は…
蚊の泣くような声がした。
石川はすぐにその人を見つけた。
俯いたままの、ネクタイ法被の彼だった。
彼のこぶしは、きつく握られていた。
174 :
しないよ:04/06/28 18:49 ID:Adv4cIhA
「大の大人は、そんなこと…」
石川が立ち上がった。
そして、震える足でステージの縁へと歩き出した。
――大の大人は…
もう一度、蚊が泣いた。
そして、石川は叫んだ。
「するよ!!」
両手を一杯に広げていた。
マイクはもう、口元にはなかった。
「大の大人は、そんなこと、するよ!!」
生の声で、もう一度叫んだ。
それが会場中に響いた。
175 :
しないよ:04/06/28 18:51 ID:Adv4cIhA
突如、ネクタイ法被が踊りだした。
――するよっ!するよっ!するよっ!ピ〜スピ〜ス♪
怒号のような声をあげ、髪を振り乱し、踊り狂う。
それは、替え歌された「ザ☆ピ〜ス!」だった。
視線こそステージに向けられてはいなかったが、その姿
には神々しさすら漂っていた。
――するよっ!するよっ!するよっ!ピ〜スピ〜ス♪
そして、公演のあいだ中、ずっと沈黙を守っていたヲタ達
も唄いだし、そして踊りだした。
はじめ疎らだったうねりは、さざ波が津波を呼ぶように、
次第に会場中を包み込んでいった。
176 :
しないよ:04/06/28 18:52 ID:Adv4cIhA
「みんな…」
石川は両手を広げ、そのうねりを全身で受け止めた。
そしてステージ上のメンバーも合唱を始めた。
それは、マイクなど通さない、生の声と体が響き合う
ほんもののコミュニケーション。
――ゴロゴロゴロ…
突如、落雷のような音が会場に鳴り響き、会場がまた
静まり返った。
「うぅっ!」
石川が呻き声をあげ、身体をねじらせた。
そして急に走り出すと、舞台袖へ消えていった。
177 :
しないよ:04/06/28 18:54 ID:Adv4cIhA
全ての人が、その様子に唖然としていた。
石川の消えた会場には、なにか訳のわからない声や
物音が聞こえている。
そして、石川の姿が消えて1分ほどあとのことだった。
――ブピピピピピピー!!!!
バタン、という扉の閉まるような音のあと、突如、会場中
に卑猥な音が鳴り響いた。
――あぁぁぁぁぁーー!!!!
石川らしき人物の叫び声もした。
それは、3時間ぶりに正座から立ち上がったような、風呂
上りにジョッキで一杯やったような、苦痛を裏返したような
快楽に満ちた声。
178 :
しないよ:04/06/28 18:55 ID:Adv4cIhA
それで誰もが理解した。
それは、まごうことなき排便の音であった。
「…マイク」
我に返って、矢口が呟いた。
石川はマイクを持ったままトイレに駆け込んでしまった
のだ。
2ヶ月ぶりの排便の音はすさまじく、特撮映画のダムの
決壊を思わせた。
そして、それが延々と続き、もう誰もが聞くに堪えないと
思ったそのとき。
どこからともなく歌声が起こった。
――ヲタなの子、理解してよ〜♪
179 :
しないよ:04/06/28 18:57 ID:Adv4cIhA
石川のソロ曲。
「理解して<女の子」だった。
ネクタイ法被の彼が、ヲタ芸を踊っていた。
彼は、コンサートで歌うことのない曲にまで、オリジナル
のヲタ芸を開発していたのだ。
――ヲタなの子、理解してよ〜♪
確かに彼は、人としてあるまじき事をした男だった。
しかし石ヲタとしての彼は真摯だった。
あの事件は、それゆえの過ちだった。
いつしか、会場にいた全ての人が大合唱をはじめた。
その会場を揺るがすほどの歌声は、あの卑猥な音を
見事に遮った。
180 :
しないよ:04/06/28 18:59 ID:Adv4cIhA
「ちゃお〜!」
フルコーラスを2回ほど歌い終わると、石川が舞台に
戻ってきた。
グロテスクだったお腹もすっきりへこんでいた。
その表情は、舞台から消える前よりいっそやつれて
見えたが、この上なくチャーミーだった。
「大人しいみんななんて、ヲタなげないぞ!!」
矢口が叫んだ。
石川もあとに続く。
「そうですよ、『大のヲタな』なんだから!!」
それは、排便と同じく腹の底から出た本音だった。
181 :
しないよ:04/06/28 19:01 ID:Adv4cIhA
――ちゃんと流したの!?
客席から、誰かが叫んだ。
石川はにんまりと笑みを浮かべ、両手をチャーミー仕様
で広げた。
そして…
\( ^▽^)/<しないよ
石川は今まさに、舞台の中心で、愛をさけんだ。
総立ちの大喝采が起こった。
ごうごうと、鼓膜を破るほどの。
スタンディングオベーションとは、まさにこの光景のみ
を指すべき言葉だった。
182 :
しないよ:04/06/28 19:02 ID:Adv4cIhA
その晩のこと。
この日、会場に居合わせたある著名なモーヲタは、自身
のサイトに、この晩のヲタの行動に関して、こう書き記した。
『90年度のサッカーW杯において、反則行為を一度も
犯さなかった、かのイングランドチーム以上の、紳士的
行為であった』
そして、こう追記した。
『私は聞いた。
彼女は、その一言が狂喜するヲタの大歓声にかき消され
ることを決して恐れなかった。
183 :
しないよ:04/06/28 19:03 ID:Adv4cIhA
「するよ」と「しないよ」に揺れる石川とヲタに向けて、まさ
しくサッカーの主審のごとき威厳さを持って、藤本美貴は
こう判定を下した。
――どっちなんだよ。
「つっこみ」とは「ジャッジメント」である。
だからあの藤本の一言は、比類なき優秀なアドバンテー
ジであり、客席の熱を冷ますどころか、更なる白熱を生み
だした。
そう、ツッコミキティの存在によって、あの晩、会場は奇跡
足りえたのだ。
この日、あの会場に居合わせたことを、モーヲタ人生に
おける、最も輝かしい瞬間として記憶にとどめておこうと
思う』
184 :
しないよ:04/06/28 19:05 ID:Adv4cIhA
――しーないよっ、ヲイ!しーないよっ、ヲイ!
会場では、また新たなコールが起こった。
それをさけぶヲタと娘。は止めどなく涙し、コールもまた、
止むことはなかった。
その晩、会場に居合わせた全ての人にとって、最高の
フィナーレは、新たな幕開けとなった。
ネクタイと法被が、笑っていた。
《浣》
185 :
作者:04/06/28 19:09 ID:Adv4cIhA
以上です。
投稿に3時間もかかってしまったw
上の方にある小説は、引き続きこのスレに
投稿しようと思います。
浣ワラタ
ho
ほ
191 :
ねぇ、名乗って:
>1
石川さん?
ついに史ねとまで言うのですか?