モッさん最強

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25230話
30.「虹の架け橋」


 「ガックン行くよ。」

 Gacktはある朝、飯田にいきなりそう言われた。
 訳も分からずGacktは聞き返す。

 「?どこに?」

 すると飯田は更に訳の分からない事を言い出した。

 「ガックンはあたしと一緒に最北部。一番近いから。」
 「え?何が?」

 もうこの際ガックンと呼ばれているのは流すとして、
 話が全く飲み込めなかった。Gacktの気持ちがそのまま顔に出たのか、
 飯田は言った。


 「shellを解放するよ。」

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 「すれ違い・・・ってやつかな。」
 「すれ違い?」
 「ああ。」

 たいせーは少しだけ切なそうな表情を浮かべながら答えた。

 「つんくは、全部分かってたんだよ。Gacktの計画も、何もかも。」
 「え?!」

 吉澤は隠し部屋内を響き渡るほど声を張り上げた。驚きを隠しきれない。
 吉澤は混乱して挙動不審になってしまった。

 「落ち着け。つんくはな、この莫大な量の金を、二つの使い方に分ける
 つもりだったんだ。」
 「二つの・・・・。」
 「一つ目はお前らが知っている通り、公共施設建設だな?もう一つが問題だ。」



25530話:04/07/16 22:42 ID:FZHP0wMi


 たいせーは悲しそうな表情をずっとしている。
 つんくの死が無念で仕方がないのかもしれない。たいせーは少しだけ言葉を
 止め、ためを作った。そして暫くしてその重い口を開く。


 「月の子救助計画」
 「!!」

 吉澤の表情は変わった。
 自分たちと、Gacktたちがした事がいかに愚かだったか。いかに理不尽に
 命を奪ったかを知らされた気がした。吉澤だって月の子は本来shellの中から
 出られないことくらいは知っている。Gacktとhydeはどうやって出てきたか、
 考えもしなかったがまさかつんくがそれを読んだ上で重税を強いていたとは・・・。


25630話:04/07/16 22:44 ID:FZHP0wMi


 つんくは公共施設建設資金貯蓄と同時進行で「月の子救助計画」を立て、
 委員会を押し切り可決まで持っていっていたのだ。
 その方法とは次のようなもの。
 

 Shellの周りに柱のような装置を6つ。円を描くように設置。お馴染みの
 六方正の原理だ。その装置は魔力を増幅させる装置であり、そこから6人の
 術者がそれぞれ魔物消滅呪文を放つ。本来魔物消滅呪文は家にかけ、触れた
 クリーチャーを死に至らせるものだが、術者によっては村単位、街単位で
 かけることが出来る者もいる。
 その者達を集め、装置と六方正の力を借りれば・・・。
 魔力は増幅され、シェル全土に魔法が駆け回る。


 しかしこの計画を立てる上でネックとなったのが、術者の召喚だった。
 かなりの魔力が必要で、更にこの呪文、術者の力量以上の魔物には、
 決して効かなかった。そのランクの術者を集めるのは困難を極める。
 しかし今なら。
 革命軍内で魔法を武器とするメンバーをそれぞれ配置すれば。
 それは充分可能と言える。

25730話:04/07/16 22:45 ID:FZHP0wMi


 吉澤は話を聞いた後、すぐに飯田にその事を告げた。飯田は血相を変えて
 すぐにその装置制作に乗り出す。もう可決されていた事からつんくの
 GOサインが出次第だったこともあり、装置はすぐ制作開始された。
 設計図も何もかも出来ていた上、飯田が身体を張り瞬間移動の連発で
 製作者を移動させたため、あっと言う間に装置は出来上がった。



 「てなわけで移動だ。ガックンしっかり捕まってなよ。」
 
 Gacktは言われるがままに飯田の手をギュッと握った。

 「行くよ〜。」

 飯田がそう言った瞬間、目の前の景色が一瞬にして変わった。

 「・・・・。」
 「さてさて、他の皆はどうしてるかな〜。」

 飯田はモニターに手をかけた。

25830話:04/07/16 22:48 ID:FZHP0wMi


 紺野は柱の中で目を瞑り、今は亡き先輩の事を想っていた。


 「後藤さん・・・・。」

 松浦と自分を庇い、犠牲となってしまった、革命軍のエース。
 密かに後藤に憧れていた紺野は、未だに後藤の死を信じきれずにいた。
 しかも今、その後藤の命を絶った張本人のために、自分は動いている。
 それはにわか信じがたい事だった。それでも自分は今、柱の中にいる。


 「後藤さん、すみません。でも・・・・もうすぐ終わります。」

 紺野はギュッと両手を握り締め、胸に当てた。


25930話:04/07/16 22:50 ID:FZHP0wMi


 一方高橋は、保田の事を想っていた。自分のせいで死んだ保田。
 自分がスパイなんてしていなければ・・・。
 弱みを新垣に握られていなければ・・・。
 考え出したらキリが無かった。


 「保田さん、本当にごめんなさいやよ・・・・。」

 高橋は俯くと、溜息をついた。そしてもう一回、独り言を呟く。



 「絶対に成功させるがし。・・・見ていてください、保田さん。」



26030話:04/07/16 22:51 ID:FZHP0wMi


 自分がもし注意深く集団を見ていたら、安倍は死ぬ事はなかったはずだった。
 浸食も食らう事はなかったはずだし、当然今もピンピンしているはずだった・・・。

 そう考えると悔しさでやり切れない気持ちになる。
 もしかしたら、他の皆も。特に辻は負い目を物凄く感じているかもしれない。


 「安倍さん・・・・ごめんなさい。」

 藤本は目を瞑り、黙祷を捧げた。
 その閉じた瞳から涙が流れるまで、そう時間は要らなかった。


 「最後まで、見守っていてください。」

26130話:04/07/16 22:52 ID:FZHP0wMi


 飯田は中澤を想い、黙祷を捧げていた。

 「(裕ちゃん・・・・・。)」

 Gacktに悟られぬよう、ひっそりと。


 中澤の死ぬ前のGacktとの戦い、本当に楽しそうに戦っていたのは今でも
 鮮明に頭に焼き付いている。あの激戦の中ふと見せた、中澤の笑顔。
 革命軍の中でもそんなに良い笑顔をみせた事は一度たちともなかった。
 もしかしたら、中澤は最後に幸せに逝けたのかもしれない。
 長い間抑制されていた身体が一気に解放され、フルパワーで好きなだけ
 動いた。悔いはないはずだ。でも、もしも悔いが残っているなら・・・。


 「(残ってるなら、カオリが裕ちゃんの遺志を継ぐから。)」

 飯田は固めた意志を更に固めるかのように、拳を強く握った。

26230話:04/07/16 22:54 ID:FZHP0wMi


 松浦も紺野と同様、後藤の事を想っていた。松浦の場合どちらかというと、
 無念の方が感情を支配していたが。自分がもしあそこでGacktに敗れさえ
 しなければ、もしかしたら3人で逃げられたのではないだろうか?
 不可能に近いのは分かっている。でも可能性がなかったとは言い切れない。
 自分の無力さに松浦は怒りを覚えると共に、今Gacktの最終計画通りに
 動いている自分が悔しかった。だから松浦は考え方を変えることにした。


 「(あたしはGacktのために動いているわけじゃない。
 Shellに住む全ての人々のため、あたしはやるのよ・・・。)」

 松浦は一瞬だけ目を閉じると、一息ついた。

26330話:04/07/16 22:54 ID:FZHP0wMi


 この流れから来ると間違いなく石川も誰かを想っているはずだが、
 石川は違った。


 「はぁ〜・・・・。」

 溜息をつきながら、柱から外の景色をただ眺めている。
 そして不意に、呟いた。


 「よっすぃ〜かっこよかったな〜・・・。」


 その表情は何故か少しうっとしていた。
26430話:04/07/16 22:55 ID:FZHP0wMi


 「みんな、準備はOK?」
 『はーい!』

 飯田が操る通信機を見て、Gacktの心は少しだけ痛んだ気がした。
 飯田は他の5人の返事を確認すると、説明を始める。


 「目の前に斜めに切られた円柱状の筒みたいのがあるでしょ?
 それに掌を当てて。」


 飯田はそう言うと、自らの手も筒に当てた。筒が一瞬だけ光る。

 『おぉ。』

 他の5人は口々にリアクションを打った。

 「せーので魔力放出するよ。」
 『また調節するんですか?』
 「藤本良い質問。ありったけの魔力を放出しちゃって。均等にする必要は
 ない。出せるだけ出さないとshell全土に消滅呪文行き渡らないよ。」

 言い終えると飯田は目を瞑る。すぅーっと息を一息つくと、


 「せーの!」

26530話:04/07/16 22:56 ID:FZHP0wMi







26630話:04/07/16 22:58 ID:FZHP0wMi


 「本当に・・・・・クリーチャーが・・・。」

 Gacktは信じられないと言った表情で、もう二度と踏めないかもしれないと
 思っていたshellの大地を噛み締めた。何もかもが懐かしく思える。
 そして今日から、shellの鎖国は解かれるのだ。しかし月の子達のうち
 何人がそれに気づいているだろう。
 

 「shellを治めている王はいないの?」
 「いる。テッちゃん。」
 「テッちゃん?」

 なんかあだ名無駄に多いなぁ、なんて飯田は思いつつ、Gacktの案内の元
 そのテッちゃんが住む家へと向かった。残り5人は柱に放置プレー中なのが
 少しだけ気がかりだったが、特に問題はないだろう。

26730話:04/07/16 22:59 ID:FZHP0wMi


 しばらく談笑が続いた後、飯田はパチンッと指を弾いた。
 革命宣言をしたときのように、二人は静かになる。


 「そういえばあんた誰だ?Gacktもそうだけど、どうやって入ってきたんだ?」

 tetsuは極力冷静を装おうとしているのがよく分かる顔だった。
 やはりリーダーとしてここで慌てるわけにはいかないのかもしれない。

 「今日はその事で報告に来ました。Shellを取りまくクリーチャーを、
 全て消滅させました。」
 「・・・・・・え?」

 tetsuは一瞬理解できずに首をかしげた。

 「私達がここにいるのが、何よりの証拠だと思います。」

 飯田が最後に一言。tetsuの表情は見る見るうちに変わってゆく。

 「マジで?!」

 希望に満ち溢れた、笑顔だった。

26830話:04/07/16 23:00 ID:FZHP0wMi


 hydeに死について知らされると、tetsuは残念そうな表情で、
 俯いてしまった。


 「そっか・・・・・。」

 tetsuは天を見上げ、呟いた。

 「でもあいつらしいのかもな・・・・。」
 「え?どういう意味ですか?」


 飯田はtetsuに聞いたが、tetsuは曖昧に笑って何も答えなかった。


 この歴史的出来事がshellと世界を初めて繋いだ架け橋という由来から、
 shellと少しだけもじり、L’arc~en~cielと言われるのは、
 もう何百年か後の事。


 To be contined…
26930話:04/07/16 23:03 ID:FZHP0wMi
更新終了、次回エピローグ。ツッコミ所満載なのはお見逃しくださいw

>>250  レスありがとうございます。
    今回は本当にちょっと疲れました(汗)
    いや何がって、それは後書きにでも・・・。

>>251  レスありがとうございます。
    そうですね、もう次でラストです。
    最後までどうかお付き合いを願います。


 多分最後の更新は火曜日くらいに行うと思います。