235 :
29話:
29.「REVOLUTION」
走馬灯・・・・って奴だろうか。
ということは僕は・・・・終わりを迎えてしまうらしい。
Gacktは淡い意識の中、少しだけ目を開けた。
「・・・・・・・・?」
様子がおかしかった。
そこにあったのは雨雲や水滴ではなく、自分が確かに消し去ったはずの
天井。ゆっくりと右へと視線を移すと、そこにはタンスが2つ並んでいた。
よく見ると自分はベッドの中にいる。
「?!」
慌てて起き上がろうとしたが、身体が思うように動かない。
Gacktは訳が分からずにきょろきょろと辺りを見回すと、飯田と視線が
ぶつかった。
「やーっと、起きた。」
飯田は座っていた椅子から飛び上がると、Gacktの側までゆっくりと寄った。
236 :
29話:04/07/13 22:29 ID:P1qQNzZU
「何故だ・・・・。」
Gacktは極めて小さな声で呟いた。
「え?なんだって?」
飯田は強気な姿勢でGacktをその大きな目でじっと、睨むように見つめた。
かっとなったGacktは思わず叫ぶ。
「何故生かした!!!僕を!!何故!!」
飯田は少しも臆する事無く、表情すら変えずにGacktをただただ傍観者の
ように眺める。何も言わない飯田。それはGacktの心を更にヒートアップさせた。
「なんのつも・・うっ。」
Gacktは起き上がろうとベッドに手をつくも、その腕はGacktの身体を支える
事が出来なかった。力なくそのまま倒れこむGackt。
「死に掛けた男がそー簡単に動ける訳ないでしょ。抑制呪文しっかりかけたから。」
237 :
29話:04/07/13 22:30 ID:P1qQNzZU
飯田は腕を組み、ハァッと溜息を着く。
そしてベッドのすぐ横にある椅子に座りなおした。
「寝てなさい。カオリが看病してあげてるんだから、ありがたく思ってよ。」
そう言うと、飯田はすぐに視線が明後日の方向へと行ってしまった。
半分意識がないみたいになってしまった飯田に、Gacktは何も言えなかった。
それにしても、何故自分を助けたのだろう。Gacktは訳が分からなかった。
後藤を殺し、中澤を殺し、自分達を死のギリギリまで追い詰めた自分を、
生かした理由・・・。Gacktにはそれが理解できなかった。自分なら絶対に
とどめを刺している。それなのに革命軍は、自分を生かした。
「理解出来ない・・・。」
Gacktは頭を抱えた。
238 :
29話:04/07/13 22:31 ID:P1qQNzZU
「何で生かしたかって?」
眠りにつこうと思っていたGacktは、いきなり話しかけられ目を開けた。
飯田はGacktの方を振り向き、言った。
「あんた達は裕ちゃんを殺した。」
「・・・・・・・・。」
「ごっちんを殺した。」
「・・・・・・・・。」
「hydeはなっちを殺した。圭ちゃんも死んだ。」
「・・・・・・・・。」
Gacktは何も言わなかった。何を言われてもひたすら黙る気だった。
「その罪は、死を持って償えるほど軽いものじゃない。」
239 :
29話:04/07/13 22:32 ID:P1qQNzZU
「・・・・・・え?」
ついさっきまで絶対に黙る気でいたのに、Gacktは思わず声を出す。
膝の前においてある飯田の拳がプルプルと震える。飯田は立ち上がった。
「生きろ!!!!」
飯田は思い切り叫ぶ。
「生きて、この国のために働く事で罪を償え!!!」
「・・・・・・・・。」
Gacktは何も言わなかった。今度は何も言えなかった。
ただ心の奥底に強い衝撃を受けた気がする。飯田は乱暴に椅子に座ると、
「あんた。裕ちゃん殺した後、言ったんだってね。
『ごめんね、もうすぐ終わるよ。』」
「!!それは・・・。」
「その時矢口思ったんだって。こいつを絶対に倒す。でも殺さない・・・・って。」
飯田はもう一度立ち上がると、ドアの方へと歩き出した。
ドアノブに手をかけて回し、外へ出る。
そしてドアを閉める直前に、飯田はGacktの顔を見た。
「矢口に感謝しろよ。」
240 :
29話:04/07/13 22:33 ID:P1qQNzZU
―――正午。
半壊してしまった王の城。ここでこれから歴史的な出来事が行われようとしていた。
Gacktを倒した後、すぐに兵を降伏させた。
そして朝、逃げていた貴族が帰ってくる。飯田を先頭にそれを出迎え、
殺したりもしないし何もしない事を告げた。
「(それがつんくへのせめてもの罪滅ぼしかな。)」
重税の裏にあった、国のためにしていた貯蓄と言う真実。
知らなかったとはいえ、革命軍としてつんくを忌み嫌い、戦い続けていた事実は
消せない。もう死んでしまったつんくに直接何かすることは出来ないなら、
その周りの人に、せめて・・・。革命軍の考えは一つだった。
その後、革命軍は大慌てで準備を始めた。『革命宣言』のための。
正午、城の前の広場に国民を呼び出す。
それまでにある程度城を修復しなければまずい。
241 :
29話:04/07/13 22:34 ID:P1qQNzZU
「あたしが直しま〜す。」
「却下。ピンクにするだろ。」
0.5秒の返答に石川はその場ですぐに崩れ落ちる。
「しょーがない、松浦と高橋。頼んだ。」
『はい!』
飯田は二人の返事を聞くと、大慌てで駆け出した。
その時藤本は松浦を不安そうに眺めていた。
「(あの子もピンクにしちゃうのよ・・・・。)」
風呂場の泡を思い出しながらほんの小さな声で呟く。
飯田は二人が去っていったのを確認すると、大慌てで駆け出した。
「カオリどうしたの〜?」
「原稿。ビシッと決めないとまずいっしょ。」
飯田は振り向いていた首を前へ戻し、再び走り出した。
242 :
29話:04/07/13 22:35 ID:P1qQNzZU
正午。
国の各所にはモニターが設置され、その全ては城の広場を映し出している。
城の広場は遠すぎる、という地方の国民は、大概このモニターを眺めていた。
木こりの男は、呟いた。
「なにごとだい。」
数千という群集が、これから何を聞かされるか何も知らされずに待っている。
モニターのアングルが、城のバルコニーの方へと移ってゆく。
そこにはいつもなら立っているはずの二人の男も、鬼神もいなかった。
その代わりに若い少女達がズラリと並んでいる。
そして太陽が真上から広場を照らしたとき、少女の中で一番長身の、
20過ぎくらいの女性が3歩、足を踏み出した。
ざわつく群衆。
それはモニターの前も一緒だった。しかし、
パチンッ!
女性が指を鳴らすと、不思議とざわめきは静まり、音一つしなくなった。
それはまるで、魔法のようだった。
243 :
29話:04/07/13 22:36 ID:P1qQNzZU
「今日皆さんをこういう形で集まっていただいたのは他でもありません。」
飯田はおぼろげの記憶を必死に辿りながら話した。
「私がここに立っている事から、既にお察しの方も多いかもしれません。」
再びここで一テンポ置く。
その緊張した様を見ながら、矢口はふと、思った。
「(裕ちゃん・・・・。)」
涙が出て来そうになった。でも群衆の前で涙を流すわけにはいかない。
矢口は目を擦り、無理やりそれを抑え込んだ。
「ちくしょぉ・・・。」
矢口はうつむくと小さな声で、そう呟く。
その拳は固く握られ、小刻みに震えていた。
244 :
29話:04/07/13 22:37 ID:P1qQNzZU
「昨晩私達革命軍は城に突入し、王の首を取りました。」
それを聞いた瞬間、群衆はワッと湧いた。
本当はhydeが暗殺したのだが、その細かい詳細は貴族にのみ伝えた。
飯田は本当の事を最初から言うつもりはなかったのだ。自分達が倒した。
その方が形的にもしっくり行くし、Gacktとhydeの話をするのは時間の無駄。
飯田はもう一度指を鳴らすと、最後に一言、言った。
「只今を持って私飯田圭織を国王とし、ここに革命を宣言します!!」
群衆はまるで大爆発を起こしたみたいに騒ぎ出した。
中には嬉し涙を流す者まで、飯田の視界に入ってくる。
飯田はなんだか複雑な気持ちになった。つんくは国民に重税を強いて、
嫌われていたが別に私利私欲のために使ったりは、一切しなかった。
そればかりか、むしろ国のために金を貯めていたのだ。
何も知らない自分達が倒し、その金を使ってつんくの作ろうと思っていた
公共施設を建設する。国民は自分達の事を英雄として称えるだろう。
245 :
29話:04/07/13 22:38 ID:P1qQNzZU
「カオリ、また交信してんの?」
矢口に話しかけられ、飯田はハッとした。
また随分と考え込んでいたらしい。
「ごめん。」
飯田は矢口にそう一言だけ告げると、天を見上げた。
「・・・・・・・。」
飯田は空に向かって一人、敬礼をした。
246 :
29話:04/07/13 22:38 ID:P1qQNzZU
――――――――――――――――――。
247 :
29話:04/07/13 22:39 ID:P1qQNzZU
吉澤は一人、昨晩Gacktに連れられ訪れた隠し部屋にいた。
一つだけ気になった事があり、それを確かめるためである。
吉澤は四桁の数を必死に思い出していた。
「っと・・・なんだっけな〜。」
「1029。」
「え?」
いきなり話しかけられ、吉澤は慌てて後ろを振り向く。
そこに立っていたのは王家のたいせー。
「ちょっとくらいちょろまかしてもバレないからさ。いいよ。」
「いや、そういうつもりじゃないんですけど。気になる事があって。」
「え?」
たいせーは意外そうな顔をして、言った。
248 :
29話:04/07/13 22:40 ID:P1qQNzZU
「昨日見て気づいたか。」
「はい。いくらなんでも、多すぎますよね。お金の量。重税の割に
そのほとんどを貯めていたのが分かります。自分たちの暮らしを圧迫する
くらいに。これって・・・どういうことですか?」
たいせーは少し、嫌そうな顔をする。
「すれ違い・・・ってやつかな。」
「すれ違い?」
「ああ。」
たいせーは話した。
つんくがそれほどまでに金を溜め込んでいた理由を。
それを聞いた吉澤は驚き、慌てて駆け出した。飯田の元へ。
To be continued…