222 :
0−4:
0−4「get out from the shell」
暗闇の砂浜に、一人寝そべっている男がいた。男は空で輝いている星空を
眺めながら、ただ時間が過ぎてゆくのも待っていた。
何もかも退屈で仕方がなかった。
でもそれから逃げ出す事を許さないこの島に、最悪の宿命を感じながら、
男は目を閉じた。少しだけ、眠りにつく。
223 :
0−4:04/07/11 22:03 ID:8B1HnhQt
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224 :
0−4:04/07/11 22:04 ID:8B1HnhQt
目覚めてもまだ悪夢からは逃れられない。これは自分が生きてゆく限り、
半永久的に、月の子の寿命である400年は続いてゆく悪夢だった。
そしてそれは、月の子が生まれた時から課せられた宿命でもある。
不意に、寝そべっている男の横に、長身の男が座った。
男は砂を掌で掬い上げると、手を開き、砂を指と指の間から流れさせる。
それを何度も繰り返しているうちに、寝そべっていた方の男が話しかけた。
「ガックン、ここ来てもいつもそればっかりだよね。」
長身の男はそう言われても一連の動作を繰り返した。やがてその手が止まると、
ガックンと呼ばれた男は拳を砂へと叩き付けた。
225 :
0−4:04/07/11 22:05 ID:8B1HnhQt
月の子はこの世界において、唯一外部との交流を完全に遮断していた。
というよりも、遮断されていた。『月の子』というのはその外部の人達が
付けたもので、詳しい知識もその大部分が憶測に過ぎなかった。
なんせ知る事が全く出来ないのだから。ただ外の人々も仲の人々も、
共通した言葉をこの島に付けていた。
『shell』
皆そう呼んでいた。それは貝のように中に閉じこもったまま一生を終える、
と言う意味。そして周りが海に囲まれているが、海(sea→s)を取ったら
ただの地獄(hell)という、皮肉も込められていた。
Shellに住む月の子達は、生まれてから誰もそこから出る事無く、生まれ、
育ち、やがて死んでゆく。
226 :
0−4:04/07/11 22:06 ID:8B1HnhQt
月の子達がshellから出られないことには理由があった。Shellは島なのだが
回りは空海共に凶暴なクリーチャーが多く生息していて、たとえ船を出してみても
襲われ誰一人として生き残れない。月の子は皆強力な力を持っているが、
数には対応しきれない。クリーチャーはピラニアのように血の匂いを嗅ぎ付け
ドンドン増えてゆく。そして逃げ出そうとする月の子を一人残らず食い尽くして
しまうのだ。それを皆知っていたから、誰一人としてここから抜け出そう
だなんて考えもしなかった。
「こんなところで終わっていいはずがない。」
Gacktはふと、呟いた。
「皆そう思いながら、結局このおぞましい地獄から抜け出せずに
終っていくのかな・・・。」
そう嘆くhydeに、Gacktは言った。
227 :
0−4:04/07/11 22:07 ID:8B1HnhQt
「こんな計画があるんだが、どうだ?」
228 :
0−4:04/07/11 22:07 ID:8B1HnhQt
Gacktの考えた計画はあまりに無謀で、破天荒なものだった。
Shellを抜け出し、一番の強国の軍に入る。そして暗殺等を駆使して地位を
上げていって王座に着き、shellの周りのクリーチャーを総力を上げて
絶滅させる。最初から最後まで、ひたすら滅茶苦茶な計画。
しかしhydeは、その計画とはいえない夢物語に魅力を感じた。
もしも、もしもそれが達成できたなら・・・。
夢のない島で夢を持つ事をやめていた青年にとって、それは非常に魅力的な
ものだったのだ。Hydeはその計画に乗ってしまった。
「でもどうやってこっから出るの?」
Gacktは軽く笑って言った。
「根性。」
229 :
0−4:04/07/11 22:08 ID:8B1HnhQt
「はぁ・・・・・はぁ・・・・・。はい・・・ど・・・大丈夫・・・・か?」
「・・・・・な・・・・ん・と・・・か・・な。」
満月の夜、力を全て解放し、フルパワーで一番近い沖まで飛ぶ。
無鉄砲なその計画は、全身傷だらけになりながらも成功してしまった。
ただし二人の体力の限界も近い。二人はそのまま瞳を閉じた。
230 :
0−4:04/07/11 22:10 ID:8B1HnhQt
この時期hydeは詞を書いていた。
抜け出した大地で手に入れたのは自由。
Maybe lucky Maybe lucky I dare say I’m lucky
レールの上に沿ってどこまで行けるかな
Maybe lucky Maybe lucky I dare say I’m lucky
(STAY AWAY)
hydeの当時の心境を率直に表した詞といえるかもしれない。
231 :
0−4:04/07/11 22:10 ID:8B1HnhQt
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232 :
0−4:04/07/11 22:12 ID:8B1HnhQt
「生きとるか?」
二人が目覚めたのはある民家だった。
二人は海辺で倒れている所をこの家の住人に発見され、介抱された。
この時助けたのが、
「うちは中澤裕子。裕ちゃんでええで。」
中澤だった。
暫く3人での生活が始まる。そこで二人が知ったのは、中澤と言う人間は
物凄い戦闘力を持った女だと言う事。
月の子でも上位に入る力を持っているといえるだろう。そんな中澤は、
二人の計画をまるで知っているかのように、一つ提案をした。
「アップフロント国の軍隊に入軍せえへん?」
二人にとって、この上なく都合のいい展開が待っていた。
その後は周知の通り、二人は戦で結果を残し、暗殺を繰り返し、今。
目標は目の前までに来ていた。
しかし目前で、夢は潰えた・・・。
To be continued…