206 :
28話:
28.「暁に消ゆるは大蛇の煌き」
「死ね。」
Gacktは両腕を振り上げた。
「はぁぁぁぁ・・・・・・。」
二人は思わず目を閉じた。辻加護はまだ意識が戻らない。
Gacktは一気に、唱えた。
『Another world』
207 :
28話:04/07/09 23:19 ID:j/OPxf1L
しかし、Gacktの声だけがその場をこだました。
「?」
よく分からず目を開けると、Gacktは物凄い顔をして自分の掌を眺めていた。
辻と加護はここで目覚める。
「あれ・・・・・何してるんれすか?」
「さあ・・・。」
吉澤は曖昧に答えた。Gacktはだんだんと体が震え始めた。
「なぜだ・・・・・。」
『?』
「なぜだ!!!!」
大声で叫ぶGackt。
四人は思わずそれ以上下がれない壁に背中を思い切りよくぶつける。
208 :
28話:04/07/09 23:20 ID:j/OPxf1L
「なぜだ!!!邪気が溜まらない!それどころか・・・。」
Gacktの掌に溜まった邪気は、ドンドンなくなっていってしまった。
巨大な邪気は、萎む様に小さくなってゆく。
それでもGacktの身体は放出を続けていた。
ポタ・・・・ポタ・・・・。
「・・・・?」
Gacktが上を見上げると、水滴が目の中に入る。
「うっ。」
うろたえて顔を下げるGackt。それを見て4人は小さく笑った。
雨はすぐに強くなり、5人に降り注いだ。Gacktは改めて上を見上げた。
「何!!」
209 :
28話:04/07/09 23:21 ID:j/OPxf1L
「月がない!!!」
210 :
28話:04/07/09 23:22 ID:j/OPxf1L
月は分厚い雨雲に覆われ、光が全く見えない状況だった。
雨はドンドン強くなってゆき、光は完全に遮断される。
「よっし!!!」
四人はそれを見てガッツポーズをした。Gacktはそれを見てハッとした。
「まさかあの塔で!!くそ・・・・・あ・・!!!」
Gacktの身体が縮んだ。
フルパワー時の大きな身体から、いつもの身体へと変化。
そして間もなく恐ろしい邪気の波動がGacktの身体から放出を始めた。
「あ゛あ゛!!!コントロール・・・・出来な・・・。」
211 :
28話:04/07/09 23:24 ID:j/OPxf1L
212 :
28話:04/07/09 23:25 ID:j/OPxf1L
「ガックンはね?」
いっくんは言った。
「月の子特有の力なんだけど、満月の夜。月の光から常に邪気をもらえて
すふぉふぃ強くなっちゃふの。」
桃の缶詰を口にしながら、緊張感ゼロで話すいっくん。
それでも二人に与えるショックは大きかった。
「そ、それじゃあ・・・・・。」
その場で崩れ落ちる二人を見て、いっくんは思った。
この子達の可能性に、賭けてみよう・・・。
「勝機はあるよ。」
『本当ですか?!』
「立ち直り早いな〜。」
いっくんは二人を見て笑うと、真剣な表情で言った。
「うん。まあ出来るなら、だけどね。」
そう、出来るなら。
213 :
28話:04/07/09 23:26 ID:j/OPxf1L
「策は二つ。」
いっくんはジェスチャーを交えて説明を始めた。
「一つ目は、『時が来るまで待つ。』でもこれは厳しい。」
二人は何も言わず、首を振ることで返事をした。
この時の『時』とは、朝の事。朝になって、満月が太陽へと変わるまで、
耐えることが出来れば勝負が出来る。しかしGacktの満月時の力から考えて、
この策は始めから無理といえた。
しかしいっくんはもう一つ、とっておきの案を持っていたのだ。
「もう一つ。これを見て。」
いっくんは棚を引くと、中からは古帯びた巻物を取り出す。
それを広げ、いっくんは二人に見せた。
「これは?」
松浦はいっくんの目を見る。
「いいかい?」
いっくんは二人を見ると、二人は静かに頷く。
214 :
28話:04/07/09 23:27 ID:j/OPxf1L
「これは古来より伝わる、飢饉の村を救うために使われた呪文書なんだ。」
「飢饉?」
「そう、飢饉。」
少しして二人は手を叩いた。
「雨が降れば雲で月が隠れる!!」
「ぴったしいっくん!」
謎の返答に戸惑いながらも、二人は喜んだ。
「ただしこれは一人の力ではとてもじゃないけど無理。小雨が精一杯だね。」
「え・・・・。」
「だから、六方正の原理。知ってる?」
『はい!』
「これを使って一気に増幅させる。そうすれば大雨だって降らせられる。」
いっくんが笑うと、松浦は通信機に向かって呟いた。
「だそうです、矢口さん。」
215 :
28話:04/07/09 23:28 ID:j/OPxf1L
そして計画は始まる。
矢口はすぐに計画を立てた。
Gacktの持つ最も強力な全体呪文、『Another world』発生間に吉澤以外
逃げ出す事に成功。なるべく月に近づくため紺野のタワーで天高くへと上昇。
ここまでは計画通りそのものだった。ただここで問題が一つ発生する。
とりあえず呪文を全員で唱える事でこの呪文は完成するのだが、
全員強力勝つ同程度の魔力を常に出さなければならない。それなのに、
「石川少ない!!」
「もう出ません!!」
石川が想像以上に弱すぎた。
仕方がないから五人で五方正を組み、一人当たりの魔力の量を増やす事になった。
216 :
28話:04/07/09 23:28 ID:j/OPxf1L
「じゃあ行きます。おいらが読み上げるから、皆で復唱・・・ってなにこれ。」
「どしたの矢口。」
「とりあえず読むから、復唱お願い。」
矢口は首をかしげながら、読み始める。
「窓に映る私 すごくかわいくないわ」
5人とも「ん??」という顔をして復唱すると、じっと矢口を見た。
「だから書いてあるんだって!!」
矢口は嫌そうな顔で続ける。
「わざとウソついたりしたから・・・」
途中まで読み上げると、矢口は一瞬動きを止めた。
「どうしました?」
「・・・「会いたくない!」なんてwow yeah」
突然の不意打ち、『wow yeah』に5人は爆笑した。
「だから書いてあるんだって!!」
矢口は顔を真っ赤に染めていた。
217 :
28話:04/07/09 23:29 ID:j/OPxf1L
「今日の涙はしょっぱすぎるわ」
『今日の涙はしょっぱすぎるわ』
「見られたくないわこの涙」
『見られたくないわこの涙』
「ねえ晴れ通り雨のちスキ」
『ねえ晴れ通り雨のちスキ』
「OH YES!」
『OH YES!』
復唱後、爆笑により一時中断。
「I LOVE YOU FOR WHAT YOU ARE」
『I LOVE YOU FOR WHAT YOU ARE』
「スキスキスキ」
『スキスキスキ』
218 :
28話:04/07/09 23:30 ID:j/OPxf1L
「本当に効くんですかねこれ。」
紺野が空を見上げると、
ポタポタ・・・。
「嘘ぉぉ!!」
藤本は信じられない!
と言った顔をして空を見ている。雲があっと言う間に月を覆い隠し、
雨が六人を冷たくぬらしてゆく。
「ちょっとあさ美ちゃん、これ屋根とかないの?」
「まこっちゃん贅沢言わないで。」
六人は城の方へと次第に視線を移し始めた。
すると城の方ではGacktがのたうち回っていた。
219 :
28話:04/07/09 23:31 ID:j/OPxf1L
止め処なく溢れ続ける邪気。
Gacktは次第に頬がこけ始め、栄養失調のようにやせ細ってしまった。
相変わらず全くコントロール出来ないGacktは、遂に歩く事をやめ、
その場に倒れ込む。
「はぁっ、はぁっ、くそっ、ぁっ、ぁっ・・・。」
遂に声すら失ったGacktは、静かに、その場で目を閉じた。
To be continued…