モッさん最強

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19127話
27.「Two-O-One」


 2対1。ついさっきなら1対1となんら変わらなかっただろう。だが今は違う。
 完全に覚醒してしまった石川と、体力が全快している吉澤。
 かなり不利な状況なのは確かだった。しかし、吉澤に倒され瀕死の状態から
 石川のミスでなんとか回復した事を考えれば、ツキは確実にこっちにある。
 それに、hydeのためにも、Gacktは負けるわけにはいかなかった。

 「どうせなら後ろの二人もどうかな?4対1くらいなら張り合いも出る。」

 ビクッと身体を震わせ、壁に背中を引っ付けてしまう辻加護。
 Gacktはフッと笑うと、構えた。

19227話:04/07/07 18:27 ID:oRF07lNu

 右に吉澤、左に石川。二人とも拳をしっかりと握り締め、その視線を一点、
 Gacktの目を見つめていた。

 「いくよ・・・・。」

 吉澤が囁くと、石川は静かに頷く。それを確認すると、吉澤は飛び出した。
 それに対してGacktはダッシュが一歩遅れる。
 その代わり、Gacktも拳に邪気を蓄積していた。向かってくる吉澤に向けて、
 拳を突き出す。

 ドン!!!

 「ぐっ!!」

 Gacktは少しだけ体勢を崩した。
 拳から邪気を放つ前に、石川がそれを制したのだ。ひるむGacktに容赦なく、
 畳み掛けるように攻撃を放つ吉澤。

 「うぉぉぉ!!!」

 ラッシュ。
 息もつかせぬ連続攻撃に、Gacktは受け止めきれずに何発か直撃を食らい、
 後方へ吹き飛ぶ。
19327話:04/07/07 18:28 ID:oRF07lNu

 バック転をして体制を立ちなおしたGacktは思わず目を丸くした。
 目の前には既に魔弾。『Miror』を出す時間なんてない。上を見上げる。
 すると足をこっちに向けている吉澤と目が合った。
 少しだけ笑っている。・・・・。Gacktは左手にグッと力をこめて、
 思い切り魔弾を弾きあげた。

 「え?」

 吉澤は予想外の反撃に慌てるも、闘気で少しだけ浮き上がり避けてみせた。
 そしてそのまま再び足がGacktに向け落ちてくる。真正面に視線を移すと
 シャボンの大群。どうする?Gacktは迷った末、

 『Miror』

 シャボンを弾き返した一瞬後、吉澤の足は炎に燃えていた。

 「!!」
 『浪漫』

 吉澤はただ単に打撃を繰り出すだけの格闘家ではない。魔力のこもった
 ナックルは、ほんのわずか、常人より少し上くらいの魔力を増幅する
 ためのものだった。ただし炎しか使えないが。
19427話:04/07/07 18:29 ID:oRF07lNu

 ドン!!!

 ボディに深々と食い込む吉澤の足。炎は一気にGacktの全身に広がる。

 「ぐあ!!!」

 慌てて水の呪文で全身を冷やす。吉澤はそれを見ると皮肉っぽく笑った。

 「さっきまでの勢いはどこにったのかな〜。」

 金髪がそよ風を受けてサラサラとなびいた。吉澤は髪を軽く掻き揚げると、
 
 ガン!!! 

 「!!」

 一方的にGacktを殴り始めた。受身を取ることしか出来ず、防戦一方のGackt。
 しかししばらくすると、吉澤は突然後方に飛び、身構えた。
 チッ、と舌打ちするGackt。

 「どうしたの?」

 石川に聞かれた吉澤は、静かに答えた。

 「邪気を思いっ、きり右の拳に溜め込んでた、あいつ。」

 Gacktはすっと立ち上がると、呟く。

 「楽しいね・・・。」
19527話:04/07/07 18:30 ID:oRF07lNu

 「は?」
 「こういうのを待ってたんだよ。」
 「Mっ気のあるコメントなんていらねぇんだよ。」

 吉澤はパキポキと拳を鳴らすと、屈伸運動を始めた。Gacktは気にせずに
 続ける。

 「邪気を溜め込んでいた・・・その意味を愚かな事に吉澤、君は気づいていない。」

 自分の名前を呼ばれた吉澤は横を振り向く。
 その表情はさっきと変わっていた。余裕ぶっていた表情から、焦りにも
 似た表情に。

 「さっき一旦倒れたからね、ストップしてたんだよ、邪気の開放。」

 よく見ると身長も、筋肉もフルパワーになる前の、吉澤一人にボコボコに
 されていたGacktと同じだった。

 「分かったようだね、じゃあ行くよ。」

 Gacktはすっと息を吸うと、Gacktの邪気は月の光を借りて一気に膨張を
 始めた。
19627話:04/07/07 18:31 ID:oRF07lNu

 再びフルパワーになったGackt。
 邪気があふれ出ているあの感じは、何度感じても気持ちが悪いものだった。
 吉澤はハァッ、と溜息をつくと言った。

 「確かにさっきは手も足もでなかったけど・・・。とりあえず一人で充分。」
 「ふん・・・ぬかせ。」

 Gacktは早速恐ろしいスピードで飛び出す。吉澤も一気に駆け出した。

 『うぉぉぉ!!!』

 息もつかせぬラッシュ。互いに一歩も退かない激しい攻防に、石川はボーっと
 してしまった。

 吉澤のワンツー。Gacktは両手で両方とも受け止め、拳を握りつぶしに行く。
 しかしその前にGacktの身体は後方へと押された。
 吉澤の両足が、Gacktのボディーに入る。しかしGacktは耐えた。
 その場で踏みとどまり、吉澤を上へと投げる。Gacktは飛び上がり、
 アッパーを繰り出した。風を切る鋭い音と共に、拳は吉澤の顔面へ。
19727話:04/07/07 18:31 ID:oRF07lNu

 ガン!!

 吉澤は両腕でブロック。と同時に両足をGacktの頭に絡ませた。
 足で強引に首を絞めに行く。落下しながら、Gacktは頭を地面の方へと下げる。
 すると吉澤が下になった。吉澤は両腕を伸ばし、地面を受け止める。
 衝撃が全て吉澤の腕へと。

 「ぐっ・・・。」

 吉澤はそのまま身体を大きく捻り、Gacktの頭を地面へと叩きつけた!

 ドン!!!

 地面にめり込むGacktの頭。しかしGacktはすぐに動き出した。

 「化け物め!!」

 吉澤がそれを見て叫ぶ。双方拳に力を込める。邪気と闘気。
 二つが、激しくぶつかり合う時、

 ドン!!!

 周り一帯を激しい波動が包む。
19827話:04/07/07 18:32 ID:oRF07lNu

 「うわ!!!」

 波動が部屋全体を広がる。
 石川は急いで辻加護の側に寄り、バリアーを張った。
 波動はかき消されたが、間もなくして吉澤が飛び込んでくる。

 「え?」

 辻がすぐに反応した。吉澤を受け止め、その場で踏ん張る。
 辻は笑顔で言った。

 「少しは役に立たないと・・・だめなのれす。」

 吉澤も辻を見て笑った。そしてすぐに表情を険しくすると、石川に言った。

 「やっぱタッグしかなさそうだね。でも、二人で力をあわせれば・・・。」

 見つめあう二人。静かに頷くと、二人は飛び出した。
19927話:04/07/07 18:33 ID:oRF07lNu

 『LUNA』

 Gacktは向かってくる二人に向け両手で魔法を放つ。
 石川はそれを鷲づかみして吸い込んだ。

 「!!」

 Gacktが動揺している間にも、吉澤は動いている。

 『Baby!Knock out!!』

 連続攻撃。しかも『浪漫』のように、炎の属性を持っている。
 Gacktはそれを受け止めると、そこから発火が始まった。

 「ぐっ!!」

 もがいていると、Gacktは真後ろから気配を感じた。 

 『真夏の光線』

 石川はGacktの背中に掌を押し付け、直接それを放つ。
 Gacktは再び全身火に包まれる。しかし今回も同じ様に敗れるわけには
 いかなかった。Gacktは炎に包まれたまま、唱えた。

 『Vannila』
20027話:04/07/07 18:35 ID:oRF07lNu

 迂闊だった。
 吉澤と石川は表情をゆがめる。至近距離から攻撃を放つことで大ダメージを
 与えた。そこまではいい。しかしよく考えてみればそれは、相手にも
 チャンスを与えている事。
 まさかあの状態から反撃が来ると思っていなかった二人は、あろうことか
 中澤を死に追いやったあの技を、交わすことが出来なかった。

 『あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!』

 声にならない叫び声を上げ、二人は全身に強烈な邪気の衝撃を受ける。

 「梨華ちゃん!魔力を一気に開放して!邪気を吹き飛ばさないと死ぬ!!」

 痛みにのた打ち回りながら、吉澤の叫び声をなんとか聞き取った石川は、
 言われた通りにする。

 「あああ!!!!」

 一気に開放された石川の魔力は、その場で爆発を起こす。
 さっき生まれた波動よりも遥かに強い衝撃。その場にいた全員吹き飛ばされた。
20127話:04/07/07 18:36 ID:oRF07lNu

 「あ〜・・・・。」

 同時に闘気を全て放出していた吉澤以外、Gackt、辻、加護はそれぞれ
 三者三様の飛ばされ方をして、辻加護は意識を失いかけていた。
 Gacktは受け流しながら逃げたためダメージはない。余裕そうな顔をして、
 闘気、魔力を放出し全員の力が抜け切っている二人を見ていた。

 「形勢逆転・・・・ってとこかな。」

 ドン

 「うっ!」

 Gacktは表情一つ変えずに吉澤を壁際へと蹴り飛ばす。
 石川の側まで転がると、吉澤は這うように石川の側へと行った。

 「り・・・・か・・・ちゃ・・・・ん・・。だい・・・じょう・・・・ぶ?」
 
 もはや虫の息の吉澤に、石川はそっと右手を添える。
 右手と吉澤の身体の間が、やさしく暖かい光で包まれた。

 「・・・あたしは、大丈夫・・・・。」

 石川はなんとか起き上がると、壁に背中を向けよっかかった。
20227話:04/07/07 18:38 ID:oRF07lNu

 やはり邪気を開放しているGacktは強い。止め処なく溢れる邪気の量は、
 相変わらず途方もない量だった。満月の光から常に邪気を貰っているのだから
 当たり前かもしれないが、留まる事を知らない。
 しかしこの開放を急に止める事は出来ないだろう。
 Gacktの身体ではもう放出が当たり前になっていて、と言うよりも溜め込めば
 Gacktの身体自らがパンクしてしまうから、止める事が出来ない。
 そんなペースで放出し続けているということは、急に吸収を止めても、
 放出はそう簡単に止まらない。

 「何を考えている・・・。」

 悩んでいる顔をしていたのか、Gacktは吉澤の顔を見てそう言った。

 「早く決めておいたほうが、良さそうだな。正直今君達を殺してしまえば
 怖いのは高橋くらいだ。」

20327話:04/07/07 18:39 ID:oRF07lNu


 Gacktがあのときのように、両手に邪気を蓄積し出した。
 目は蒼く光り、身体が小刻みに震える。

 「違う世界に、今度こそ連れて行ってやる。」
 「まずい・・・どうする?よっすぃ〜・・・。」

 身体に自由の利かない二人。意識が半分飛んでいる二人。
 凌ぐ方法も、かわす方法も、今の四人にあるはずがない。
 Gacktはそんな四人を見て笑った。

 「死ね。」

 To be continued…