191 :
27話:
27.「Two-O-One」
2対1。ついさっきなら1対1となんら変わらなかっただろう。だが今は違う。
完全に覚醒してしまった石川と、体力が全快している吉澤。
かなり不利な状況なのは確かだった。しかし、吉澤に倒され瀕死の状態から
石川のミスでなんとか回復した事を考えれば、ツキは確実にこっちにある。
それに、hydeのためにも、Gacktは負けるわけにはいかなかった。
「どうせなら後ろの二人もどうかな?4対1くらいなら張り合いも出る。」
ビクッと身体を震わせ、壁に背中を引っ付けてしまう辻加護。
Gacktはフッと笑うと、構えた。
192 :
27話:04/07/07 18:27 ID:oRF07lNu
右に吉澤、左に石川。二人とも拳をしっかりと握り締め、その視線を一点、
Gacktの目を見つめていた。
「いくよ・・・・。」
吉澤が囁くと、石川は静かに頷く。それを確認すると、吉澤は飛び出した。
それに対してGacktはダッシュが一歩遅れる。
その代わり、Gacktも拳に邪気を蓄積していた。向かってくる吉澤に向けて、
拳を突き出す。
ドン!!!
「ぐっ!!」
Gacktは少しだけ体勢を崩した。
拳から邪気を放つ前に、石川がそれを制したのだ。ひるむGacktに容赦なく、
畳み掛けるように攻撃を放つ吉澤。
「うぉぉぉ!!!」
ラッシュ。
息もつかせぬ連続攻撃に、Gacktは受け止めきれずに何発か直撃を食らい、
後方へ吹き飛ぶ。
193 :
27話:04/07/07 18:28 ID:oRF07lNu
バック転をして体制を立ちなおしたGacktは思わず目を丸くした。
目の前には既に魔弾。『Miror』を出す時間なんてない。上を見上げる。
すると足をこっちに向けている吉澤と目が合った。
少しだけ笑っている。・・・・。Gacktは左手にグッと力をこめて、
思い切り魔弾を弾きあげた。
「え?」
吉澤は予想外の反撃に慌てるも、闘気で少しだけ浮き上がり避けてみせた。
そしてそのまま再び足がGacktに向け落ちてくる。真正面に視線を移すと
シャボンの大群。どうする?Gacktは迷った末、
『Miror』
シャボンを弾き返した一瞬後、吉澤の足は炎に燃えていた。
「!!」
『浪漫』
吉澤はただ単に打撃を繰り出すだけの格闘家ではない。魔力のこもった
ナックルは、ほんのわずか、常人より少し上くらいの魔力を増幅する
ためのものだった。ただし炎しか使えないが。
194 :
27話:04/07/07 18:29 ID:oRF07lNu
ドン!!!
ボディに深々と食い込む吉澤の足。炎は一気にGacktの全身に広がる。
「ぐあ!!!」
慌てて水の呪文で全身を冷やす。吉澤はそれを見ると皮肉っぽく笑った。
「さっきまでの勢いはどこにったのかな〜。」
金髪がそよ風を受けてサラサラとなびいた。吉澤は髪を軽く掻き揚げると、
ガン!!!
「!!」
一方的にGacktを殴り始めた。受身を取ることしか出来ず、防戦一方のGackt。
しかししばらくすると、吉澤は突然後方に飛び、身構えた。
チッ、と舌打ちするGackt。
「どうしたの?」
石川に聞かれた吉澤は、静かに答えた。
「邪気を思いっ、きり右の拳に溜め込んでた、あいつ。」
Gacktはすっと立ち上がると、呟く。
「楽しいね・・・。」
195 :
27話:04/07/07 18:30 ID:oRF07lNu
「は?」
「こういうのを待ってたんだよ。」
「Mっ気のあるコメントなんていらねぇんだよ。」
吉澤はパキポキと拳を鳴らすと、屈伸運動を始めた。Gacktは気にせずに
続ける。
「邪気を溜め込んでいた・・・その意味を愚かな事に吉澤、君は気づいていない。」
自分の名前を呼ばれた吉澤は横を振り向く。
その表情はさっきと変わっていた。余裕ぶっていた表情から、焦りにも
似た表情に。
「さっき一旦倒れたからね、ストップしてたんだよ、邪気の開放。」
よく見ると身長も、筋肉もフルパワーになる前の、吉澤一人にボコボコに
されていたGacktと同じだった。
「分かったようだね、じゃあ行くよ。」
Gacktはすっと息を吸うと、Gacktの邪気は月の光を借りて一気に膨張を
始めた。
196 :
27話:04/07/07 18:31 ID:oRF07lNu
再びフルパワーになったGackt。
邪気があふれ出ているあの感じは、何度感じても気持ちが悪いものだった。
吉澤はハァッ、と溜息をつくと言った。
「確かにさっきは手も足もでなかったけど・・・。とりあえず一人で充分。」
「ふん・・・ぬかせ。」
Gacktは早速恐ろしいスピードで飛び出す。吉澤も一気に駆け出した。
『うぉぉぉ!!!』
息もつかせぬラッシュ。互いに一歩も退かない激しい攻防に、石川はボーっと
してしまった。
吉澤のワンツー。Gacktは両手で両方とも受け止め、拳を握りつぶしに行く。
しかしその前にGacktの身体は後方へと押された。
吉澤の両足が、Gacktのボディーに入る。しかしGacktは耐えた。
その場で踏みとどまり、吉澤を上へと投げる。Gacktは飛び上がり、
アッパーを繰り出した。風を切る鋭い音と共に、拳は吉澤の顔面へ。
197 :
27話:04/07/07 18:31 ID:oRF07lNu
ガン!!
吉澤は両腕でブロック。と同時に両足をGacktの頭に絡ませた。
足で強引に首を絞めに行く。落下しながら、Gacktは頭を地面の方へと下げる。
すると吉澤が下になった。吉澤は両腕を伸ばし、地面を受け止める。
衝撃が全て吉澤の腕へと。
「ぐっ・・・。」
吉澤はそのまま身体を大きく捻り、Gacktの頭を地面へと叩きつけた!
ドン!!!
地面にめり込むGacktの頭。しかしGacktはすぐに動き出した。
「化け物め!!」
吉澤がそれを見て叫ぶ。双方拳に力を込める。邪気と闘気。
二つが、激しくぶつかり合う時、
ドン!!!
周り一帯を激しい波動が包む。
198 :
27話:04/07/07 18:32 ID:oRF07lNu
「うわ!!!」
波動が部屋全体を広がる。
石川は急いで辻加護の側に寄り、バリアーを張った。
波動はかき消されたが、間もなくして吉澤が飛び込んでくる。
「え?」
辻がすぐに反応した。吉澤を受け止め、その場で踏ん張る。
辻は笑顔で言った。
「少しは役に立たないと・・・だめなのれす。」
吉澤も辻を見て笑った。そしてすぐに表情を険しくすると、石川に言った。
「やっぱタッグしかなさそうだね。でも、二人で力をあわせれば・・・。」
見つめあう二人。静かに頷くと、二人は飛び出した。
199 :
27話:04/07/07 18:33 ID:oRF07lNu
『LUNA』
Gacktは向かってくる二人に向け両手で魔法を放つ。
石川はそれを鷲づかみして吸い込んだ。
「!!」
Gacktが動揺している間にも、吉澤は動いている。
『Baby!Knock out!!』
連続攻撃。しかも『浪漫』のように、炎の属性を持っている。
Gacktはそれを受け止めると、そこから発火が始まった。
「ぐっ!!」
もがいていると、Gacktは真後ろから気配を感じた。
『真夏の光線』
石川はGacktの背中に掌を押し付け、直接それを放つ。
Gacktは再び全身火に包まれる。しかし今回も同じ様に敗れるわけには
いかなかった。Gacktは炎に包まれたまま、唱えた。
『Vannila』
200 :
27話:04/07/07 18:35 ID:oRF07lNu
迂闊だった。
吉澤と石川は表情をゆがめる。至近距離から攻撃を放つことで大ダメージを
与えた。そこまではいい。しかしよく考えてみればそれは、相手にも
チャンスを与えている事。
まさかあの状態から反撃が来ると思っていなかった二人は、あろうことか
中澤を死に追いやったあの技を、交わすことが出来なかった。
『あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!』
声にならない叫び声を上げ、二人は全身に強烈な邪気の衝撃を受ける。
「梨華ちゃん!魔力を一気に開放して!邪気を吹き飛ばさないと死ぬ!!」
痛みにのた打ち回りながら、吉澤の叫び声をなんとか聞き取った石川は、
言われた通りにする。
「あああ!!!!」
一気に開放された石川の魔力は、その場で爆発を起こす。
さっき生まれた波動よりも遥かに強い衝撃。その場にいた全員吹き飛ばされた。
201 :
27話:04/07/07 18:36 ID:oRF07lNu
「あ〜・・・・。」
同時に闘気を全て放出していた吉澤以外、Gackt、辻、加護はそれぞれ
三者三様の飛ばされ方をして、辻加護は意識を失いかけていた。
Gacktは受け流しながら逃げたためダメージはない。余裕そうな顔をして、
闘気、魔力を放出し全員の力が抜け切っている二人を見ていた。
「形勢逆転・・・・ってとこかな。」
ドン
「うっ!」
Gacktは表情一つ変えずに吉澤を壁際へと蹴り飛ばす。
石川の側まで転がると、吉澤は這うように石川の側へと行った。
「り・・・・か・・・ちゃ・・・・ん・・。だい・・・じょう・・・・ぶ?」
もはや虫の息の吉澤に、石川はそっと右手を添える。
右手と吉澤の身体の間が、やさしく暖かい光で包まれた。
「・・・あたしは、大丈夫・・・・。」
石川はなんとか起き上がると、壁に背中を向けよっかかった。
202 :
27話:04/07/07 18:38 ID:oRF07lNu
やはり邪気を開放しているGacktは強い。止め処なく溢れる邪気の量は、
相変わらず途方もない量だった。満月の光から常に邪気を貰っているのだから
当たり前かもしれないが、留まる事を知らない。
しかしこの開放を急に止める事は出来ないだろう。
Gacktの身体ではもう放出が当たり前になっていて、と言うよりも溜め込めば
Gacktの身体自らがパンクしてしまうから、止める事が出来ない。
そんなペースで放出し続けているということは、急に吸収を止めても、
放出はそう簡単に止まらない。
「何を考えている・・・。」
悩んでいる顔をしていたのか、Gacktは吉澤の顔を見てそう言った。
「早く決めておいたほうが、良さそうだな。正直今君達を殺してしまえば
怖いのは高橋くらいだ。」
203 :
27話:04/07/07 18:39 ID:oRF07lNu
Gacktがあのときのように、両手に邪気を蓄積し出した。
目は蒼く光り、身体が小刻みに震える。
「違う世界に、今度こそ連れて行ってやる。」
「まずい・・・どうする?よっすぃ〜・・・。」
身体に自由の利かない二人。意識が半分飛んでいる二人。
凌ぐ方法も、かわす方法も、今の四人にあるはずがない。
Gacktはそんな四人を見て笑った。
「死ね。」
To be continued…