1 :
名無し募集中。。。:
安倍豚は美貴帝に負けたのに何で生きてるの?
2 :
ねぇ、名乗って:04/03/21 11:49 ID:fmXOOYl8
すれ立てるほどのことじゃないだろ
3 :
名無し募集中:04/03/21 11:53 ID:SdckQk/N
お ま え も は や く 氏 ね
4 :
名無し募集中。。。:04/03/21 11:55 ID:6TOq2WPY
もはや狼なみに適当なスレが立つようになってきたな
7 :
名無し募集中。。。:04/03/21 16:46 ID:+kJyuid0
8 :
名無し募集中:04/03/21 17:19 ID:SdckQk/N
>>1 =
>>5 糞スレ立ててる暇有るんなら
国産牛肉持参して吉野家逝って
牛丼つくてもらって食ったら首つって氏ね
9 :
名無し募集中:04/03/21 17:28 ID:SdckQk/N
10 :
名無し募集中。。。:04/03/21 20:05 ID:2LQvzCJy
安倍氏ね
13 :
名無し募集中。。。:04/03/22 08:58 ID:tWxkt/Av
安倍氏ね
14 :
名無し募集中。。。:04/03/22 14:23 ID:m2QnNKNL
安倍氏ね
15 :
名無し募集中。。。:04/03/23 01:05 ID:nu/bQlyh
安倍氏ね
16 :
名無し募集中。。。:04/03/23 07:38 ID:DHoJ2zxi
安倍氏ね
18 :
名無し募集中。。。:04/03/23 11:34 ID:2bw4zUTN
安倍氏ね
美紀ヲタ氏ね
20 :
名無し募集中。。。:04/03/23 21:06 ID:WlZEsDRt
安倍氏ね
21 :
名無し募集中。。。:04/03/24 23:08 ID:0yzmbBQu
安倍氏ね
22 :
名無し募集中。。。:04/03/25 19:46 ID:hXEabnuH
安倍氏ね
23 :
名無し募集中。。。:04/03/25 21:08 ID:j+xlirCa
モッさん氏ね
24 :
名無し募集中。。。:04/03/25 22:36 ID:QJgw0HvQ
安倍氏ね
25 :
名無し募集中。。。:04/03/26 00:26 ID:vXA47mOD
安倍氏ね
26 :
名無し募集中。。。:04/03/26 14:47 ID:3TJeOUGV
安倍氏ね
27 :
名無し募集中。。。:04/03/26 16:09 ID:gto/2upO
安倍氏ね
老けすぎ
28 :
名無し募集中。。。:04/03/28 10:57 ID:k/n1vdS6
安倍氏ね
29 :
名無し募集中。。。:04/03/28 16:02 ID:k/n1vdS6
安倍氏ね
30 :
名無し募集中。。。:04/03/28 21:08 ID:hhZbmZnf
安倍氏ね
31 :
ねぇ、名乗って:04/05/11 01:53 ID:KtQzpVHN
いやっほぅー、モッさん最高!!
何となく保全
33 :
えっと:04/06/06 00:30 ID:muGKYRS2
34 :
19話:04/06/06 00:33 ID:muGKYRS2
19.「青髭」
松浦自体は充分な力を持っている。
松浦自身も、こう言っては悪いが一緒に消えたと思われる人と比べて、
自分は明らかにレベルが違うと自覚していた。
それでも、松浦は『鶺鴒』の選別によって独房へと落とされた。
これには、松浦の内面の、精神的な面が関係している。
松浦はGacktが王の間に現れて以来、終始冷静を装いながらも、精神的には
かなり怯え、恐怖に駆られていた。あの時、戦ったときに感じた、恐怖をそのまま引きずって。
35 :
19話:04/06/06 00:34 ID:muGKYRS2
『ヒヤシンス』
そう唱え、一瞬にしてGacktのバックを取った瞬間、こいつ、大した事ない、
と勝手に思いこんだ事が、松浦の敗因かもしれない。
最近、主戦力として活躍して、先輩の言葉を借りるなら、
松浦は「調子に乗っていた」といえる。
自信が慢心に変わる瞬間、それは一番危険な時だ。
絶望感に襲われながらもその自信からGacktへと突っ込み、
バックを取れてしまった時点で、松浦の敗北は決定事項だったのだ。
『Good bye boy』
松浦が一番打ち慣れ、使い慣れていた呪文。
確実に決めに行ったはずだった。
これで決まりだろう、そう思っていた瞬間、松浦は脇腹をえぐられる様な感覚を覚える。
何で?!
Gacktの顔を見ると、少しだけ笑っている・・・・。
ここで松浦の意識は途切れ、ただ恐怖だけが松浦の全身に植えつけられてしまった。
それ故の畏縮から、松浦は落とされていったのだった。
36 :
19話:04/06/06 00:35 ID:muGKYRS2
「・・・・・・・・・・・。」
「大丈夫?」
松浦はしばし呆然と回想を続けていたため、石川が心配して松浦の方を見る。
松浦は慌てて振り向くと、笑顔を造ってみせた。
「大丈夫です!・・・どうします?上飛んで戻れるなら戻った方がいいかもしれませんけど。」
松浦は天上に指を指しながら言った。
二人は落下時意識を失っていないため、どうやってここまで来たか鮮明に
覚えている。
「行ってもいいけど・・・、多分戻れないと思う。」
石川の冷静な一言に、松浦は少しびっくりした。
「確かにこの天上は魔法仕掛けですり抜け式、でも王の間から落ちたのは
Gacktの魔法、せきれいだっけ?
それで落ちたから、戻るなら突き破って王の間に出るか、もしくは・・・。」
石川は道が続いている方へと指を指すと、言った。
「進む。」
37 :
19話:04/06/06 00:36 ID:muGKYRS2
松浦はかなり驚いていた。石川さんって、寒いだけじゃなかったんだ、
なんて思いつつ、二人で先に進んで行く。
部屋を横切る度に、凶悪で強大な邪気をひしひしと感じる。
二人とも地下牢の噂は耳にしていたから、本当だったのか、と考えると同時に、
気持ちを引き締め直していた。いつ誰かが出て来るか分からない。
出て来られたら、戦うしかなさそうだし、一人一人強いという事も邪気から
判断して分かる。戦わないのが無難。二人は慎重かつ迅速に移動を続けた。
「他のみんな大丈夫かな?」
石川が呟く。なるべく声を出さない方がいいとの判断の元だった。
「多分みんな二人一組に分かれていると思いますよ、立ち位置からして。」
松浦は『鶺鴒』を浴びたときの情景を思い出しながら言う。
松浦は石川と藤本の間に挟まれていて、辻と加護、紺野と小川はセット。
だからおそらく孤独な娘はいないはず・・・。
38 :
19話:04/06/06 00:37 ID:muGKYRS2
「これで連絡とれればいいんだけどね・・・。」
石川は通信機を摘んだ。
この通信機は中澤とのみ繋がっているため、中澤が死んでしまった今、
経由を頼む事すら出来ない。仮に中澤の持っている通信機から声が聞こえたとしても、
Gacktとの戦いの間で果たして返事が出来るだろうか。
大体通信機はまだ生きているのか?
「とりあえず、出口探すしかないですよ。」
それしか今はもう、する事が思いつかなかった。
二人は無言のまま、静かに一本道を進んでゆく。しかしある時不意に、
ガチャガチャガチャガチャ!!!
「いたぞ!!!」
『行くぞ!!!』
『・・・え?』
なんと周りの部屋のほとんどから、部屋の住人が飛び出してきた。
39 :
19話:04/06/06 00:39 ID:muGKYRS2
どうやらGacktが裏に手を回したらしい。
次々と部屋から厳つい者達が飛び出してくる。男もいれば女もいた。
だが全員共通していたのが、とても強い気を放っている事。
これは一筋縄ではいかない、石川がそう思っていると、松浦は既に攻撃を開始していた。
敵に囲まれた状態で、松浦は舞う。
踊るように。
すると不思議と次々に敵が倒れてゆく。松浦は舞いながら、睡眠効果のある
“芳香”を、魔法によって発しているのだ。石川が浴びないように、調節もしっかりとして。
これで敵の中でも強敵の部類に入る敵以外は皆眠ってしまった。
『奇跡の香りダンス。』
松浦が付け加えるように呟く。
とりあえずこれによって敵は10人弱にまで縮小された。石川も負けじと、
『シャボン玉ぁ!!』
パンパンパンパンパン!!!
「はぁ?」
敵はなんでもない顔をしている。
「効かない〜!!!」
40 :
19話:04/06/06 00:39 ID:muGKYRS2
「だめですよ石川さん、シャボン玉ってのは・・・・。」
松浦は掌と掌をピッタリと合わせ、魔力を蓄積してゆく。
そして腕を一気に広げると、
「こうしないと!!!」
100単位のシャボンが敵に降り注ぐ。
石川は悲しそうな顔をしながら、弾けてゆくシャボンを眺める。
「まあ、見よう見まねなんですけど。」
「弱いって悲しいね・・・。」
さて、とりあえずこの場にいた敵は全員倒した。二人は先へと進もうとすると、
『いたぞ!!!』
「また来た〜!!!!!」
敵は総力戦で来ていた。
41 :
19話:04/06/06 00:41 ID:muGKYRS2
今度はさっきのようにはいかない。いくらなんでも相手が多すぎる。
二人は必死に走った。しかし追ってくる敵は逃げれば逃げるほど増えてゆく。
せめてもの救いといえば、さっき来た大群は全員前の部屋から来たから、
挟み撃ちにされる心配がないことか。
そしてそれは出口、もしくは行き止まりが近い事を意味する。後者ならば・・・・。
『Good bye boy』
後ろも見ずに魔弾を力いっぱい放つ松浦。
石川はそうしたいのは山々だがそんな器用な事が出来ない。
というよりレベル不足で使える攻撃呪文がほとんどない。石川は辛かった。
後輩に頼るしかない、自分の弱さが。
「どうする?!」
目の前には、道が二つ分かれていた。真っ直ぐ行くのか、曲がるのか。
「曲がりましょう!!」
松浦は思った。もしかしたら曲がり角でうまく撒けるかもしれないと。
42 :
19話:04/06/06 00:42 ID:muGKYRS2
二人は曲がると、
ガチャッ。
ちょっと先の部屋のドアが開く。
『!!』
また誰か出てくるのか!?でも後ろへ引き戻す事は出来ない。
やばい!!
松浦は両手に魔力を思い切り溜める。松浦の中で腹が決まった。
前の扉を吹っ飛ばして切り抜ける!!
扉から手だけが顔を出す。親指を自分の部屋へクイッと向けるジェスチャーをした。
『?』
入れ、という事なのだろうか。どうしていいか分からない二人は、かくまって
くれるのではないかというほのかな期待を胸に、中へと急いで入った。
バタンッ。
43 :
19話:04/06/06 00:43 ID:muGKYRS2
ドアは誰も触れてもいないのに勝手に閉まった。
別に驚く事でもないので二人は何も言わない。
ドドドドドドドドドドドド・・・・・。
大量の足音が左から右へと流れてゆく。どうやらバレなかったようだ。
「あの、よく分かりませんがありがとうございまし・・・・た?」
松浦がお礼を言おうと部屋の住人に目をやると、すぐに妙な音が聞こえてきた。
ウィ〜ン
ジョリジョリジョリジョリ・・・・。
「あの?」
「は〜い?」
間の抜けた声に二人拍子抜けした。鏡を見ながら、髭剃りで必死に髭をそっているのは・・・
30後半くらいの男。どう見ても強そうではない。見た目で二人は拍子抜けしてしまった。
この人も、敵国の主戦力として戦っていたというのだろうか。
44 :
19話:04/06/06 00:43 ID:muGKYRS2
『ありがとうございました!』
二人はとりあえず礼を言った。
「別に礼はいいよ。」
男は髭剃りを終えると、
「桃、食べる?」
桃の缶詰を取り出した。
『・・・・・はい?』
とりあえず二人は断りきれずスプーンを一緒に受け取り、無言のまま食べ出す。
なんだかよく分からないが、気まずい。
石川はパクパクと何も考えずに食を進めているのを見て、松浦も食べる事にした。
・・・・・・・・・・・・。
食べ終わった頃、男はまた髭を剃り出していた。
45 :
19話:04/06/06 00:44 ID:muGKYRS2
「あの〜・・・。」
「ん〜?俺は伊藤一朗。いっくんってみんなに呼ばれてる。」
いっくん・・・・。
「あの〜・・・。」
「髭?ごめんね、よく伸びるの。」
「いやそうじゃなくて・・・。」
松浦は凄く言いにくそうに、言った。
「こういう事言うのもなんなんですが、何で助けてくれたんですか?」
いっくんは考え込むような顔をしたまま、止まってしまった。
ウィーン
ジョリジョリジョリジョリ
「また剃るのかよ!!!」
松浦が叫んだ瞬間、石川が驚いて横を向く。松浦は慌てて口を塞ぎ、改めて、
「戦ったり、しないんですか?」
46 :
19話:04/06/06 00:46 ID:muGKYRS2
「はっ?」
いっくんは髭を剃るのに夢中で聞いちゃいない。松浦は考えた。
もしここにおびき寄せたのも、今こうやっているのも全部罠だとしたら危険だ。
ならば、今、隙だらけな今のうちに!
松浦は先手必勝とばかりに、髭を剃るいっくんの背後へと回った。
『ヒヤシンス』
松浦がいっくんの背中に到達した瞬間、
シュッ
「?!」
いっくんがその場から忽然と姿を消す。二人は辺りを見回した。
部屋は広いが、だからと言って隠れる場所があるわけでもない。
どこかにいるはずなのだ。
「あのさ〜。」
『!!!』
二人は驚く。特に松浦に関して更に怯えた。気づくと松浦は後ろから羽交い絞めにされ、
首元にはギターが突きつけられていた。ギターにもたっぷりと魔力が込められているのを肌で感じる。
いっくんはその間の抜けたトーンのまま、言った。
「俺戦意0だから、行きたきゃ行って。でもそっちが戦いたいなら、やるよ。」
「は、はい・・・。」
松浦は離されると慌てて後退した。
47 :
19話:04/06/06 00:47 ID:muGKYRS2
「あ〜、別に休む分には何時までもここいて構わないから。」
「じゃあ、少し休んじゃおうか?」
「え?・・・・そうですね。」
落ち着くのに時間が必要と判断した二人は、しばらくここでおとなしくすることにした。
いっくんは座ると、アコギで静かに旋律を奏で始める。
二人は思わず聞き入る。それはいっくンの風貌からは想像も出来ないような、
優しく、美しい旋律。
やがていっくんは手を止めると、
ウィーン
ジョリジョリジョリジョリ・・・・
『また?!』
To be continued...
更新乙です。
前スレから追いかけてきました。
乙です。新スレでもがんばってください。
50 :
20話:04/06/08 00:02 ID:Qsuvl939
20.「protain」
全身を強く打ちつけた紺野と小川は、なんとか起き上がれたものの、
暫くの間は痛みで動くことが出来なかった。
幸い敵のほとんどは松浦と石川を追いかけて迷走中だったため、
二人を倒そうとする輩はいない。
「あさ美ちゃん・・・大丈夫?」
「・・・・なんとか・・・。」
二人は何とか起き上がると、壁に寄りかかって座った。
二人とも体の痛みであまり動けない。
「あたし回復のカードもう無いから・・・、まこっちゃんお願い。」
「分かった・・・。」
小川は乱れた呼吸のまま、詠唱した。
『Angel tail』
51 :
20話:04/06/08 00:03 ID:Qsuvl939
「ごめん、今の集中力じゃこれが限界。」
小川が出した召喚獣は回復系召喚獣の中でもかなり下等部類に属する。
しかし上級召喚獣を召喚するにはそれなりの精神力を要し、
今現在の小川の体力ではそれを出す余裕はなかった。
「ううん、大分楽になった。・・・・とりあえず動こうか。」
この二人も他の二組に漏れる事無く、ここが噂の地下牢だとすぐに気づいた。
しかし二人は他の二組の知らなかった、別の情報をしっかり握っている。
「出口は城の県内、確か化学くんのエリアに凄い近い場所だったよね。」
紺野が思い出すようにつぶやく。
「そうそう、確かそんな感じ。」
何故二人がこの事を知っているのか、その答えは意外と簡単な所にあった。
52 :
20話:04/06/08 00:04 ID:Qsuvl939
53 :
20話:04/06/08 00:04 ID:Qsuvl939
「二人とも知っとる〜?城の地下牢の話。」
「あー最近噂だよね。」
「うん。知ってるよ。」
高橋に言われて二人は普通に答える。高橋は笑いながら、
「あれの出口、どこにあるか知っとる?」
『え?』
「なんか噂では城だとか城下町だとか・・・。」
小川が悩むように言うと、
「あれ、化学くんのエリアの近くなんやよ。」
『へぇ〜。』
そう、高橋が口を滑らせて全部話してしまっていたのだ。
ついでを言うと高橋は地下牢の構造も教え、二人とも何で知っているのだろう、
と特に深く考える事無く思っていた。まさかスパイだったとは、夢にも思わずに。
54 :
20話:04/06/08 00:05 ID:Qsuvl939
55 :
20話:04/06/08 00:06 ID:Qsuvl939
二人はそれによって自分達が今どこら辺にいるのか、周りの形から判断。
分かれ道に迷う事無く、他の二組とは対照的にすんなりと進んでいった。
「愛ちゃんに感謝〜。」
「ホントホント。」
何もかも順調に進んでいるように思えた次の瞬間、
「おい!待て!行っちゃうのかよ!!!」
変な声が二人を呼び止める。
『・・・・?』
二人は後ろを振り返ると、そこに立っていたのは、なんだかよく分からないけど
やけに筋肉質な男。そして妙にハイテンション。男はなんだか自分の腕の筋肉を
見つめながら、
「おい!上腕二等筋見せちゃうのかよ!」
なにやらよく分からない事を口走っていた。
こういう変質者は相手をしないに限る、二人の意見は一致し、そのまま歩き出す。
56 :
20話:04/06/08 00:08 ID:Qsuvl939
「待てよ!!!」
男はダッシュで一瞬にして二人の前に到達。二人は目を丸くした。
「申し遅れました私中山きんにくん“です”!!」
高橋とはまた別の妙なイントネーションで自己紹介をするこの上半身裸男は、
その筋肉を見せつけながらこっちを意識している。
きんにくんはハイテンションのままよく分からない一言。
「健康のためなら死ねる!」
「ですねぇ〜。」
沈黙。
きんにくんはその後も何度もよく分からないボケをかますも、
ことごとく紺野天然にかわされ、落ち込んだ。しかしすぐに、
「筋肉で勝つ!」
男はそのまま紺野へと突っ込んで行く。
57 :
20話:04/06/08 00:09 ID:Qsuvl939
『イノキング』
しかしそれを小川の召喚獣が遮る。イノキングも肉弾戦、筋肉系の武道派。
きんにくんにとっても、イノキングにとっても、戦うにはちょうど良い相手だろう。
筋肉と筋肉はいきなり激しくぶつかった。
「グロいかも。」
小川はちょっとだけイノキングのセレクトを後悔するも、ぶつかり合いは続く。
イノキングの強烈な左ストレートを、きんにくんはそのまま受け止めてみせると、
強引に腕を持ち上げ、投げ飛ばそうとする。しかしイノキングも簡単には投げさせない。
がら空きだった脇腹にキックを放ち、きんにくんの腕を解かせた。
そしてそのままタックル。きんにくんはまたも避ける事無く、両腕でガードを固める。
きんにくんの足元にひびが入り、ミシミシと音を立てて少しずつ後退してゆく。
ある時、きんにくんの足はピタリと動かなくなった。
きんにくんはニヤリと笑うと、思い切りイノキングを投げ飛ばした!
58 :
20話:04/06/08 00:09 ID:Qsuvl939
ドン!!!
激しい激突音が、廊下中を響き渡る。
きんにくんの鮮やかなバックドロップによって、イノキングの頭は地面に
埋まり、動けなくなってしまっていた。
小川はあまりにあっさり負けたイノキングを見て、騒然として、固まる。
しばらくすると、
ポンッ。
「あさ美ちゃんタッチ。」
「え。」
タッチって?
紺野が困っていると、小川はその間にイノキングを引っ込めてしまった。
「任せた!!!」
妙なハイテンションで喜んでいるきんにくんを指差す小川。
紺野は露骨に嫌な顔をした。一方きんにくんはと言うと、
「プロテイン多めに上げちゃうぞ!!」
なにやらシェイカーで何かをかき混ぜて飲み物を造っていた。
59 :
20話:04/06/08 00:11 ID:Qsuvl939
「でもこれって、二人で同時攻撃した方がいいんじゃないの?」
紺野がそう言っても、小川は聞く耳を持たない。その気が無いのなら・・・
紺野はタロットを取り出す。
『CHARIOT』
紺野の声と共に、ケンタウルスが姿を見せる。ケンタウルスは血走った眼で、
今にも飛び出しそうな勢いだ。
『WHEEL OF FORTUNE』
高速回転する車輪達が、紺野の周り、空中に現れる。
シェイカーで飲み物を一気飲みしていたきんにくんは、
驚いて飲む事をやめた。
「同時攻撃してくれないなら・・・・。」
ケンタウルスが勢い良く駆け出し、車輪も回転をどんどん速めながら
きんにくんへと迫る。そして、
「行きます!!!」
紺野、自ら突っ込む!!
三つの物が同時に一つの敵を攻撃する。それはある意味後藤の
『スクランブル』と似ていた。
「いじめ・・・・。」
小川は紺野を見てそう呟いたと言う。
60 :
20話:04/06/08 00:11 ID:Qsuvl939
61 :
20話:04/06/08 00:12 ID:Qsuvl939
ウィーン
ジョリジョリジョリジョリ・・・・。
「まあ、俺に勝てないとガックンには勝てないと思うけどね。」
髭を剃りながら、いっくんはふと言った。まったりしていた石川と松浦も
流石にこれに賛同するわけにはいかない。
「そんな!皆必死で戦っているんです!!」
石川が珍しく強く押す。しかしいっくんは特に動じる様子も無く、ボーっと
した表情のまま、
「ふ〜ん。」
と髭を剃り続けた。髭が剃り終わると、
「でもよりによって今日はないっしょ〜。満月っすよ〜?」
『え?』
よく分からない、と言った顔をする二人を見て、
いっくんも訳が分からなくなってしまう。
「え、君達、知らないの?」
「何をですか?」
松浦に強く聞き返され、いっくんは、
「ガックンはね?」
62 :
20話:04/06/08 00:13 ID:Qsuvl939
いっくんの口から飛び出したのは、衝撃の事実。
それをなんでもない顔で言ういっくん。
「そ、それじゃあ・・・・・。」
二人はその場で崩れ落ち、絶望した。なんで・・・よりによって・・・。
眼の裏が凄く熱くなってくる。やがて二人の目からは一筋の雫が零れ落ちた。
そんな二人を見て、いっくんは肩を叩く。
「勝機はあるよ。」
『本当ですか?!』
凄い勢いで起き上がる二人。いっくん二人を見て思わず笑った。
「立ち直り早いな〜。」
いっくんは言った。
「うん。まあ出来るなら、だけどね。」
いっくんの表情が真剣になると、自然と二人の顔も締まってくる。
緊張感漂う室内。
63 :
20話:04/06/08 00:14 ID:Qsuvl939
「策は二つ。」
いっくんはジェスチャーを交えて説明を始める。
「一つ目は、『時が来るまで待つ。』でもこれは厳しい。」
二人は何も言わず、首を振ることで返事をした。
この策ははっきり言って無謀だろう。Gacktの力はあまりにも強大過ぎる。
粘るなんて、不可能だと思っていい。
「もう一つ。これを見て。」
いっくんは棚を引くと、中からは古帯びた巻物を取り出す。
それを広げ、いっくんは二人に見せた。
「これは?」
松浦はいっくんの目を見る。
「いいかい?・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
いっくんが一通り説明し終えた所で、松浦は呟いた。
「だそうです、矢口さん。」
64 :
20話:04/06/08 00:15 ID:Qsuvl939
65 :
20話:04/06/08 00:16 ID:Qsuvl939
「もう気が済んだ?」
「うん。」
惨状を目の前に、小川は紺野に問いかける。
まるでストレス解消のためかのように、きんにくんは理不尽に痛みつけられまくった。
全身はボロボロで、さっきまでの筋肉美は見る影も無い。
荒みきった身体はもう戦えるものではなかった。
「すっきりした♪」
ニコニコ笑う紺野に、小川は一瞬だけ、恐怖を覚えたという。
この娘は単純な力では他の先輩に劣るものの、別の意味で恐ろしい。
タロット、武術というはちゃめちゃな組み合わせから編み出されるのは、
『何でもアリ』
これ程恐ろしいものは、この世には無いのではないだろうか。
とりあえず出口へ向け歩き出すと、もう二度と使わないと思っていた通信機から、
声が聞こえてきた。
To be continued...
66 :
えっと:04/06/08 00:20 ID:Qsuvl939
更新終了です。
今回のいっくんの台詞は後藤と違って字数関係ないです。
>>48 レスありがとうございます。
そのようなレスを頂きますと書く上で非常に励みとなります。
このスレで話は完結すると思いますが、最後まで楽しんで頂けたら
幸いです。
>>49 レスありがとうございます。
まさかここで書き始めた当初は二つ目のスレで書いているなんて
夢にも思いませんでした。まだまだ未熟者ですが、精進しますので
これからもよろしくお願いします。
保全
68 :
21.:04/06/12 01:11 ID:e7AsfwMR
21.「%」
少しだけ、時計の針を戻してみる。
中澤がGacktの『Vanilla』によって敗れ、そのまま朽ちた時、矢口は中澤に泣きついた。
「裕ちゃん!!!!裕ちゃん!!!」
中澤の身体にしがみついた時、指に僅かに触れた固い何かに矢口は気づく。
?
矢口はそれを手にとって見た。相変わらず泣きながら。
「これって・・・・・。」
それは通信機だった。中澤はこれを使って自分達と会話していたらしい。
気づくとGacktが近づいてきた。
矢口は慌てて通信機を回収し、泣き真似を続ける。
「忘れたのか?僕は月の子だ。」
Gacktはそう言って、顔を中澤のすぐ側にまで寄せる。
矢口は一瞬殺される!と思ったが、聞こえてきたのは意外すぎる一言だった。
69 :
21.:04/06/12 01:12 ID:e7AsfwMR
「ごめんね、もうすぐ終わるよ。」
70 :
21.:04/06/12 01:13 ID:e7AsfwMR
「(謝っている?)」
確かに二人は元戦友。しかし今は敵同士だ。
遂さっき殺し合いをした相手にどうして『ごめんね』なんて言えるのだろう。
しかしそんな疑問も、矢口の頭の中に浮かんだ一つのシーンによって、解決した。
「(そういえば二人とも、笑っていた・・・。)」
戦っている最中の事。
紺野に言われてみんな気がついたが、二人は戦いながら確かに笑っていた。
今まで全力に戦えなかった中澤、全力で戦う敵がいなかったGacktの、
お互いたまりにたまった何かが爆発した、と考えれば自然かもしれない。
なら・・・・。
「(分かったよ。分かったよ裕ちゃん。)」
矢口は拳をグッと握り締め、中澤の耳に装着されていたイヤフォンをはめる。
そして誓った。
「(絶対にこいつを倒す。でも...ない。)」
71 :
21.:04/06/12 01:14 ID:e7AsfwMR
すぐに聞こえてきたのは辻加護が戦っている音。
しかしなんだか妙だったので通信機を切り替える。
・・・・・・・・・・・。
繋がったのは石川と松浦。
黙って聞いていると、どうやら地下牢の住人と話をしている。
「(・・・っと。)」
危ない、矢口は自分が聞くほうに夢中になりすぎている事に気がついた。
場面は凄い緊張感に包まれ、高橋とGacktが話をしている。
とりあえず矢口は一歩退き、安全な場所に身を隠した。
どうやら地下牢の住人“いっくん”は、Gacktについて自分達が知らない情報を
握っているようだった。満月とGacktの関連性。
『月の子』について矢口は何も知らないから、全然見当もつかなかった。
黙って会話に耳をすませる。
72 :
21.:04/06/12 01:15 ID:e7AsfwMR
「(・・・・・嘘。)」
矢口は、松浦と石川がそうだったように、絶望した。
絶対に、Gacktには勝てない。さっき誓ったばかりなのに・・・。
しかしいっくんから救いの手が差し伸べられる。
矢口は思わず声をあげて喜びそうになり、慌てて口を塞いだ。
そしていっくんが話し終わると、
『だそうです、矢口さん。』
突然松浦に呼ばれ、矢口は驚いた。
「気づいていたの?」
矢口は極力声のトーンを落す。松浦は笑顔がすぐ近くにあるように思えるような
笑い声をあげ、
『やるしかないですよ。』
「うん。じゃあとりあえずそこ抜けて。あとは分かるでしょ?」
『はい!』
二人の元気な声が聞こえてきて、矢口は少し安心した。
73 :
21.:04/06/12 01:16 ID:e7AsfwMR
矢口は続いて急いで通信機を辻、加護、紺野、小川の4人へと繋ぐ。
「お前ら生きてるか〜?」
『え?』
4人は突然の声に驚く。そして口々に何か話している。
とりあえず4人とも無事なのを確認できた矢口は、話を進めることにした。
「Gacktを倒す方法、一つだけ見つかりました。」
『お〜!!』
妙なノリだが、そんな事を気にしている暇はない。
矢口は早急にその方法を話し、リアクションを言わせる前に、次へと進んだ。
「というわけで今からして欲しい事があるの。まずこんこんとまこっちゃん!」
『はい!』
「・・・・・・・・。OK?」
『分かりました。やってみます。』
紺野は少しだけ自信なさ気に答えた。
矢口はそれに喝を入れる。
74 :
21.:04/06/12 01:16 ID:e7AsfwMR
「やってみる、じゃなくてやる!それしか生き残る道はない!」
『分かりました、やります!でも矢口さん達はどうやるんですか?』
「大丈夫、考えてある。」
本当はまだ何も考えていなかったが、ここで二人を不安にさせる事がいかに
無意味か矢口は知っていた。
「よっし行けー!!!」
『はい!!』
二人は大きな声を出すと、走り出した。
「辻加護は・・・・後で説明するからとりあえず4人と合流!」
『はい!』
こっちも負けずとも劣らないスピードで駆け出している、そんな映像が見えた気がした。
・・・・・頼んだよ。
75 :
21.:04/06/12 01:17 ID:e7AsfwMR
今すぐに戦線復帰しても良かった。
しかし矢口はもう一つだけ考えなければならない事があった。
矢口は必死に考え、思い出していた。Gacktの持っている技を。
・・・・・・。
矢口は考えをまとめると、通信機を5人へと繋ぐ。
そして自分の考えた策を囁いた。
あの4人なら大丈夫、特に反応せずにGacktに察せられる事はないだろう。
作戦のポイントはいかに大技を出させるか。
それが出来なければ、それは革命軍の完全なる敗北を意味する。
矢口はもう一度だけ拳を握り締めると、
「よっしゃー!!!!」
雄たけびを上げ、戦線復帰した。
76 :
21.:04/06/12 01:18 ID:e7AsfwMR
藤本がGacktを斬りつける。Gacktは持っている剣でそれを防ぎつつ、
目から怪光線を放った。標的は矢口。ちょうど声が聞こえたのだ。
矢口は素早くそれをかわすと、腰から短剣を取り出し、突っ込む。
それと同時に、飯田と高橋が魔法を放ち、吉澤は矢口とは反対側から攻め込んだ。
4方向からの同時攻撃、そして藤本も剣を振り上げる。
Gacktはどれを受け、どれをかわす事を選択するのか。
しかしGacktの取った行動は、5人に自分達の考えがいかに浅はかで、
次元の低い話だったかを思い知らせるものとなった。
『Miror』
Gacktが唱えた呪文は、高橋と飯田の放った魔法をいとも簡単に跳ね返した。
残るは同時に斬りつけてくる3人。動揺している暇はない。
3人は一気に畳み掛ける様に攻撃した。
77 :
21.:04/06/12 01:19 ID:e7AsfwMR
パシッ。
Gacktは、藤本の剣を素手で掴み、矢口の短剣を指で止め、吉澤の真後ろからの拳も、
足で完璧に止めた。Gacktは涼しい表情で笑うと、縮こまっていた身体を一気に伸ばす。
それだけで3人は部屋の端まで吹っ飛ばされてしまう。
一体どれだけ強いと言うのか、この男。全員再び絶望感に襲われた。
しかし、いっくんの言葉を信じて、今は戦うしかない。
5人は立ち上がり、再び構える。
Gacktは5人を嘗めまわす様に視線を動かすと、
窓際で月光を浴びていた飯田へと駆けた。
「(あ〜、もう夜だっけか。)」
吉澤はそんな事を思いながらも、動き出す。
「うらぁぁ!!!」
ブンッ!!!
Gacktは自分が空振りをしたことに一瞬気がつかなかった。
振り向くと飯田は部屋の反対側にいる。
「(瞬間移動!)」
Gacktが驚いている間に、吉澤は得意技を、彼に向けて打ち込んでいた。
78 :
21.:04/06/12 01:20 ID:e7AsfwMR
『Moon light Blast!!』
ドン!!!!
本来なら、辺り一面閃光に包まれるはずが、この時は包まれなかった。
それどころか、拳はGacktを捉える事無く、Gacktの掌の中に納まっている。
「・・・・ニヤリ。」
「な?!」
ミシミシミシミシ・・・。
「あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!」
Gacktは少しだけ笑いながら、掌を閉じてゆく。
少しずつ閉じるたびに、聞こえてくる骨の砕けそうな音。
吉澤は悲鳴を上げずにはいられなかった。
「まずは一人目。」
Gacktの眼は、ひどく冷徹だった。
79 :
21.:04/06/12 01:23 ID:e7AsfwMR
ズバッ!!!
「!!」
ボトッ。
切り離された左腕は、重力に逆らう事無く地へと落ちた。
地面と触れ、弾き上がる腕。Gacktの腕からは血が惜し気もなく流れている。
さっきは剣を平気で受け止めた手も、油断していれば普通の腕。
その腕からは血が萎れた泉のように流れていた。
「・・・・・。」
藤本は乱れた呼吸の中、血に濡れた剣を構えながら、眼はGackt一点を見据えていた。
Gacktはそんな藤本を見て、寒気がするほど恐ろしい声で、呟く。
「腕・・・・・。この代償は高くつくぞ。」
地に落ちていたはずの腕が、ゆっくりと宙に浮かぶ。
ある程度閉まっていた掌は開き、猛スピードで藤本の首を捉えた!
80 :
21.:04/06/12 01:23 ID:e7AsfwMR
「!!!」
腕は勢いを衰える事無く加速してゆき、首を掴まれた藤本はそのまま宙に浮く。
強く壁にたたきつけられる藤本。
「ごふっ!」
藤本の口からは赤黒い液が零れ落ちた。
掌は手を緩めずに、何度も何度も藤本の身体を壁にぶつける。
「やめて!!!」
飯田が絶叫するも、その声に答える者は誰もいない。
掌の往復運動は、藤本が気絶するまで続いた。
やがて藤本の意識が完全に飛ぶと、腕は消滅し、藤本はそのまま地面へと落ちた。
ドサッ。
「・・・・・ったく。ん?」
Gacktは不意に目の前に現れた高速回転する車輪に、目を奪われた。
To be continued...
81 :
えっと:04/06/12 01:25 ID:e7AsfwMR
名前欄21.→20話へと、全部訂正(別にどうでもいい)
>>67 保全ありがとうございます。
こんなに待たせてこんな量で、すみません。
82 :
えっと:04/06/12 01:25 ID:e7AsfwMR
名前欄21.→21話へと、全部訂正(別にどうでもいい)
>>67 保全ありがとうございます。
こんなに待たせてこんな量で、すみません。
おつです
84 :
22話:04/06/15 23:24 ID:mbkteFNH
22.「天才」
『HEAVEN’S DRIVE』
それはあまりにも突然すぎた。
「何?!」
知っていても、やはり肉眼でそれを放っている所を見るとやはり驚く。
しかも更に驚くべき事は、スピード、車輪の大きさ共に、hydeの放つそれと
まったく劣らなかった事だ。かわしきれない、そう判断しGacktはすぐに
ガードの姿勢に入る。
ドン!!!!
ガリガリガリガリ!!!!
肉を引きちぎる音が部屋中を響く。
Gacktは苦しそうな表情をしながら、ただただ耐える。
車輪はGacktと当たる度に、車輪も摩れ、小さくなってゆく。
「!!」
どうやらGacktはガードしつつその腕から何かをしているらしい。
車輪が急激に小さくなってしまった。
しかしGacktのダメージも半端ではない。摩擦によって血が弾け飛び、
Gacktの白い肌を少し紅く染めた。同時に肉片が四方八方へと散り、
矢口は降って来たそれを「うわ!」と叫んで慌てて避ける。
85 :
22話:04/06/15 23:25 ID:mbkteFNH
全ての車輪を受けきると、Gacktの腕は少しずつ再生を始めた。
しかしそれよりも速く、高橋は次の行動に出ていた。
Gacktが体勢を整えた時には、高橋はもう目の前で腕を振り上げていた。
その手にはなんとオーラブレード。
「くそっ・・・。」
中澤を倒した時に壊すべきだったのだろう。
眉をしかめながらGacktは剣を空中から取り出し、応戦。
オーラのみの、いわば具象気体と、実態のあるが闇の込められている剣。
双方がぶつかり合うと、激しい波動が室内を波紋のように広がる。
それは中澤とGacktが戦っていた時の様に、近寄りがたい、触れがたい空気を
放っていた。高橋は三歩後退すると、高く飛び上がり、叫んだ。
86 :
22話:04/06/15 23:26 ID:mbkteFNH
『Mizerable』
それは僕の技!!
どういう事だ、僕はhydeとは違う。
技を教えてるなんて甘い事はしていない!Gacktは困惑した。
そして気がつくとGacktは自らの持ち技に、今まさに餌食となる所まで来ていた。
オーラブレードから伸びた光が天井を突き破り、天へと果てしなく伸びる。
それを開放し、一気に敵へと叩き付けるのが、『Mizerable』という技だ。
とりあえず、もうかわす時間はない。
「くっ!」
Gacktはついさっき藤本によって欠落した左腕を差し出す。
次の瞬間、驚くべき光景を見た。一瞬にして左腕が傷口から生え、
その腕には一瞬にして魔力が蓄積されていく。
高橋は大きく目を見開いて驚き、動きが空中で止まった。
87 :
22話:04/06/15 23:28 ID:mbkteFNH
『LUNA』
Gacktの腕から放たれたのは、月の光を魔弾に変化させ、放つ呪文。
光と光は互いにぶつかり合うと、新たな光がそこから生まれた。
そしてその中心から、オーラブレードも、『LUNA』も吸い込まれるように
消えてしまった。
相殺。
Gacktは息を切らしながら、生えてきたばかりの左腕を痛そうに摩った。
いくら再生させる魔力を持ってしても、それを実行するには多大な体力を要する。
Gacktは疲れた表情をそのまま出し、ピクピクと痙攣を続け、血管が浮き出しに
なっている左腕を『抱える』形で、窓際へと駆けた。
Gacktはそこで月の光を浴びながら、一息つく。
しかし高橋はそんな時間をGacktに与える気なんて、最初からなかった。
88 :
22話:04/06/15 23:28 ID:mbkteFNH
『LUNA』
『え?!』
「何っ?!」
誰もが驚いた。
なんと高橋は、ついさっきGacktが放ったばかりの呪文をそのまま見よう見まねで
打ってみせたのである。あまりに急過ぎて、Gacktは避けれない。
右腕を大きく振り上げ、
『Mirror』
完全には跳ね返しきれない。光は右へと逸れた。
「うわ!!」
矢口が依然倒れたままの藤本を抱えて逃げる。
その刹那光は壁へとぶつかり、壁にはすっぽりと大きな穴が生まれた。
穴から月の光が差し込み、改めて夜を感じさせる。
89 :
22話:04/06/15 23:29 ID:mbkteFNH
Gacktは恐怖を覚えていた。つい先日まではむしろただ小ばかにするくらいの
存在だった小娘が、今目の前で立ち塞がっている。いつもとは明らかに違う、
強い目をして。放つ気もとても同じ人間とは思えない程の差があった。
「・・・・・・。」
Gacktは高橋をにらみつけた。そしてすぐに突っ込む。
剣に邪気をため、空高く舞い上がり、ついさっき高橋がGacktに撃った様に、
Gacktは放った。
『Mizerable』
さっきとはちょうど逆の状況。
しかしGacktは驚いてスピードを緩めるような事はしない自信があった。
「(僕はそんなに甘くない。)」
Gacktは間髪入れずに決めに行く。邪気を一気に高橋めがけて、叩き付けた。
90 :
22話:04/06/15 23:30 ID:mbkteFNH
属性の差から、吸収は出来ない。
その代わり高橋は、超スピードで振ってくるGacktの剣を、あっさりと凌いでみせた。
『Mirror』
またしても見よう見まね。
しかもGacktよりも素早く準備された鏡は、見事にGacktの技を防いだ。
ただし一瞬だけ。
パリン!!!
この技は見た目よりも遥かに大量の魔力を必要とするため、中途半端な魔力では
しっかりとした鏡を作ることが出来ないのだ。
邪気はそのまま高橋の目と鼻の先へ。高橋は腹をくくった。
ガシッ。
「何?!」
なんと、高橋は『Mezerable』を素手で掴み、手繰り寄せ始める。
少しずつではあるが確実に引っ張られるGackt。
91 :
22話:04/06/15 23:31 ID:mbkteFNH
「くっ・・・・このっ・・・・ああ!!!」
いくら引っ張ってみても、高橋は掴んで離さない。
高橋は一呼吸入れ、思い切り引っ張ると、Gacktは一気に高橋の眼前にまで
連れてこられた。
高橋はGacktと目の合った瞬間、唱える。
『Baby!Knock out!!-type gun-』
「ごっちんの!!」
吉澤が声を大にする。
そう、この技は以前後藤との戦いで高橋がノックアウトを食らった、
言うならば因縁のある技。
高橋はそれを本能的に記憶から掘り起こし、放ったのだ。
威力、スピード共に申し分なく、もしかしたら後藤を超えているかもしれない程だった。
ならばGacktにそれを免れる術はない。
ドンドンドンドンドンドン!!!!
92 :
22話:04/06/15 23:32 ID:mbkteFNH
「ぐっ!!!」
Gacktは全て直撃を食らい、一瞬よろめく。
しかし、Gacktはダメージを受けながらもそのまま高橋へと突っ込む。
「!!」
その瞬間、高橋は思い出してしまった。
あの日の後藤との戦いの結末を、鮮明に。
それはあまりにもこの状況と酷似していた。あの時感じた恐怖が、再び高橋を襲う。
Gacktは少しだけ不思議そうな顔をしながら、しかし手を抜く様子はない。
『OASIS』
水の波動が、高橋へと押し寄せる。あくまで体感、存在はしない。
水に沈む、埋もれる感覚だけを相手に与えるのがこの技だ。
「高橋!!」
その時飯田が動く。何をボーっとしていたんだ、飯田は自分を叱った。
瞬間移動で高橋の前に到達。高橋を掴むとそのままもう一度瞬間移動。
二人は部屋の反対側に着地すると、飯田は激しい動悸に襲われ蹲る。
93 :
22話:04/06/15 23:34 ID:mbkteFNH
「ハァッ・・・・ハァッ・・・。」
瞬間移動による魔力、体力の浪費は凄まじい。
それを一度に2回、しかも人を連れて行ったのだから、
飯田の疲労は一瞬にして蓄積された。しかし高橋をなんとか救えたから、
よしとしよう。飯田は高橋へと視線を移す。しかしその表情は、さっきまでとは
別人のようだった。覇気がない。
「高橋?」
「・・・・・!!」
高橋は何も言えずに、ただただ震えるばかり。
この行動には全員首を傾げる。この変貌振りは一体、何だというのだろうか。
「二人のうちどっちか、ミキティを!」
矢口が小さい身体を必死に動き、なんとか飯田の側へと藤本を運ぶ。
飯田は体力に余裕がない。高橋がすぐに動き、回復呪文を唱えた。
94 :
22話:04/06/15 23:34 ID:mbkteFNH
「・・・・・・ごめんなさい、迷惑かけちゃって。」
目覚めて一言目がこれだから、逆に全員心配してしまう。
「美貴ちゃんさん、頭打っておかしくなっちゃった?」
「ないない。」
藤本はすぐに立ち上がり、身構えた。
しかし、Gacktは何故か部屋の反対側で一人、考え事をしていて動かない。
『?』
迂闊に近づくのは危険だろう。
5人はとりあえず動かず、負傷している藤本、吉澤の治療をする事にした。
95 :
22話:04/06/15 23:35 ID:mbkteFNH
Gacktは一度頭を冷やし、冷静になって分析していた。高橋愛について。
高橋ははっきり言って、戦いの天才だ。敵の魔法を吸収する才能に長け、
初見で威力までも、場合によっては超えてしまう実力は、驚愕に値する。
一度でも記憶にとどめておけばいつでも再現してしまう。どんな技でも・・・。
Gacktは少しだけ寒気がした。
別に闇の属性の呪文は吸収するだけだから問題がないにせよ・・・。
瞬時の状況判断、肉弾戦は劣るものの、それ以外の面では後藤真希を超えていると
言って間違いないだろう。
96 :
22話:04/06/15 23:37 ID:mbkteFNH
ただ、フルパワーで戦うには何かきっかけがいるらしい。
ついさっきも、マネキンの時も、とにかく突然攻撃に転じ、突然納まる。
神出鬼没。だが本人の意思ではなさそうだ。
それはさっき『OASIS』を全く避けようとしなかった所から明らか。
自分では完璧にコントロールが出来ないのだ。
おそらく感情が波打った瞬間に、いきなり爆発する・・・。
マネキンに『使えないもん』と死んだ仲間をけなされた時、
藤本をとにかく徹底的に痛めつけた時。
おそらくこの仮説は正しい。ならば。
「出る杭は打たないとね・・・。」
Gacktは不適に微笑む。
5人はそれを見ると再び身構えた。
97 :
22話:04/06/15 23:38 ID:mbkteFNH
月の明かりを浴びて、Gacktが怪しく光る。
見る見るうちに膨らんでいく邪気。これが、月の子が月の子たる由縁。
彼らは満月の夜、月の光さえ浴びれば、邪気を失うことはない。
常にフルパワーでいられる。
だから中澤と戦ったときも、常に邪気を放出し続けたし、今も邪気を放出し続けていた。
今現在、Gacktの邪気は、無限だ。
「食らえ!!そして絶望するがいい!!」
Gacktは気を溜め込んだ両手を、一気に広げて見せる。
「人間がいかに脆く、儚いかを!!」
両手の邪気が濃縮される。手を握り締めると、邪気は再び膨張した。
「違う世界へ連れて行ってやる。」
Gacktの青い瞳に、更に青みが増してゆく。
「逃げろ!!!」
矢口が叫び、5人は一斉に出口へと駆け出す。
しかしその前に、Gacktは放った。
98 :
22話:04/06/15 23:38 ID:mbkteFNH
『Another world』
『!!』
完全なる闇が全てを支配する瞬間を、5人は垣間見た。
Gacktが叫んだ瞬間、邪気がまるで津波の様に、地面から上へと弾け飛ぶ。
そしてその波は猛スピードで5人へと迫った。一気に押し寄せる閉塞感。
弱まる事を知らない闇の波動は、あっという間に5人を飲み込んでいった。
王の間の片側の壁は全て消滅。
月明かりがキレイに差込み、各フィールドの風景がよく見えた。
Gacktはなくなった壁を満足そうに確認すると、呟いた。
「・・・・終わった。」
To be continued...
99 :
えっと:04/06/15 23:40 ID:mbkteFNH
>>83 レスありがとうございます。
これだと待っている方が疲れてしまうのではないかと心配ですw
早く書きたいのですが、なかなか書けなくて・・・。
次はなるべく早く上げたいです。
100 :
えっと:04/06/15 23:41 ID:mbkteFNH
( ^▽^)<100
更新お疲れ様です。
102 :
23話:04/06/18 23:50 ID:fNv/+dlX
23.「もう一人の天才」
「・・・・終わった。」
Gacktはもう一度だけ呟くと、自然を笑いがこみあげてきた。
頬が緩んでしょうがない。やっと、終わったのだ。
予想以上に苦戦を強いられたが、この王の間の惨状から見て全員殺しただろう。
あと残るは地下牢へと落とした面子だが、あんなレベルの奴等は問題ない。
今頃全員抹殺されている事だろう。もう終わったも同然だ。
部屋の反対側の壁は完全に消え去り、地面もほとんど抉れ、ここが遂さっきまで
王の間だったなんてまるで嘘みたいに思えてくる。降り注いで来る様に輝く星の光は、
Gacktをこの上なく上機嫌にさせた。
「AHHHHH!!!」
雄たけびを上げる。頬をもう一度緩ませ、天井へと魔弾を放った。
天井は全て吹き飛び消滅し、月がはっきりと見える。
月の光はGacktに無限の力を与えているかのように、一層輝きを増していた。
103 :
23話:04/06/18 23:51 ID:fNv/+dlX
「hyde・・・・・。」
Gacktはふと、思い出したように呟いた。
Gacktはさっきマネキン戦を見たときのように巨大モニターを出し、
hydeが藤本や辻達と戦っている映像を見る。
・・・見てすぐに後悔した。
Gacktの目に映ったのは、親友がボロボロになりながらも戦い、
粉々に切り刻まれているシーンだった。月の子言えど、
身体を粉々にされてしまっては再生のしようがない。Gacktはその瞳から
生暖かい涙が流れる事に気づくと、それをごまかすかのように床を思い切り
踏みつけた。
「くそ!!!」
床には大きなひびが入り、そこから大きな穴が出来る。
床へと不意に視線を落すと、足元に出来た大きな穴から意外な人物が現れた。
104 :
23話:04/06/18 23:52 ID:fNv/+dlX
「ちーす。」
「な?!」
ガン!!
唖然とするGacktに、吉澤はすかさず顔面に一撃。
「くっ!」
Gacktはそのまま壁まで飛び、ぶち当たった。吉澤から受けた打撃は、
さっき受けた『Moon light blast』より遥かに重く感じる。
顔を抑えながら起き上がると、吉澤はもう目の前に立っていた。半笑いで。
「ちょっと遊んでくれない?」
「他の奴等はどこだ?」
「答える必要はない。」
「どうやって『Another world』を凌いだ!!!」
Gacktが一番気に食わなかったのはそれだった。
確かに『Another world』は直撃したはず。
たとえ壁に穴を開けて飛び降りたにしても怪我所ではすまないだろうし、
飯田が瞬間移動を放つ体力もまだないだろう。
なのに何故?
105 :
23話:04/06/18 23:53 ID:fNv/+dlX
特に吉澤が一人穴から出てきたのは凄く気になった。どういうことだ?
「だから、言わないって。」
相変わらず笑っている吉澤に、Gacktは怒りを抑え込めずにはいられない。
「なら死ね!!」
邪気を一気に張り上げる。吉澤は少しだけ後退したが、特に驚いた表情を
見せることはなかった。
「好都合。でもそんなに簡単にはやられません。さっきまでは50%くらいしか
出してなかったから、ちょっとは楽しめるんじゃないかな。」
「50%?そんな嘘誰が信じるか。」
Gacktは完全にバカにしていた表情。
「バレた?」
吉澤はへらへらと笑った後、武道家の構えを取る。その瞬間吉澤の表情は
引き締まり、Gacktは今までに感じたことがないほど強大な闘気を感じて
吹き飛ばされそうになった。
106 :
23話:04/06/18 23:53 ID:fNv/+dlX
「ご名答。今までは20%さ。」
107 :
23話:04/06/18 23:54 ID:fNv/+dlX
108 :
23話:04/06/18 23:55 ID:fNv/+dlX
「痛たたた・・・・・・。」
矢口は数え切れない擦り傷を気にしながら、フラフラと紺野達がいる場所へと
3人を案内した。時間はあまりない。
吉澤が時間を稼ぐといい地面に潜り込んでいるが、一体どれくらい持つか
分からないから危険だ。
「ごめんね矢口、カオリが瞬間移動できてたらよかった。」
「ううん、しょうがないよ。
でもまさか飛び降りるとはGacktも思わないでしょ〜。」
矢口が笑顔になる。
その姿はどうも小学生くらいの子供が、喧嘩に勝って勝ち誇っているように
藤本には写った。
109 :
23話:04/06/18 23:56 ID:fNv/+dlX
『Another world』
この技が来るのを、全員が待っていた。
石川松浦がいっくんに可能性を持ちかけられた時点で、まともに倒すことは
諦めていたのだ。だがだからと言ってGacktの視線を掻い潜って抜け出し、
呪文を実行するのはかなり困難な作業。
そこでこっちがGacktの姿を見ることの出来ない、つまり向こうもこっちの
姿を確認できなくなるタイミングを待っていた。そしてやっと来たチャンス。
藤本が壁に穴を開け、吉澤は地面に穴を開けビバークの要領で潜り込み、
それぞれ分かれる。
藤本が飛び、自由落下する矢口と体力が果てかけている飯田を支えながら
地面へと降りた。しかし藤本にも限界があり、地上5メートル地点で落下。
木に引っかかった矢口は全身擦り傷だらけとなった。
「とりあえず行きましょうか。みんな待ってます。」
110 :
23話:04/06/18 23:57 ID:fNv/+dlX
矢口が集合場所に決めたのは、地下牢の出口だった。
そこならば辿り着けさえすれば誰も迷わない。
自分達はリモートしてもらい着けばいいだろう。
現地に既に到着している6人から指示を受けながら、3人はなるべく急いで進んだ。
外は予想以上に暗く、化学くんのエリアだったため森の中を進まなければならず、
藤本が剣で作ったたいまつが唯一の頼りと言う状態だった。
「あ、ここでーす!!」
甲高いアニメ声が聞こえ、3人は少し小走りになる。
到着すると紺野は既に精神を集中させていた。
彼女の役目は、タロットの『TOWER』で全員を天高くまで運ぶ事。
紺野の全身が魔力を帯びて来た時、紺野は目を開いた。
111 :
23話:04/06/18 23:58 ID:fNv/+dlX
「行きますよ・・・。」
全員の中心に立った紺野は、少し緊張した表情でタロットを取り出した。
タロットは淡い光を帯びて、暗闇を照らす。
『TOWER』
10人の足元が盛り上がる。
紺野を中心とした半径10メートル弱の円を頂上とした塔が、
地面から一気に天へと伸びてゆく。
「うわっ!」
何人かは慌てて座り込んだ。下手に立っていると振り落とされてしまう。
塔が城の頂上を追い越したところで、辻と加護は完全に開けた王の間へと
飛び移った。
「いってらっしゃーい。」
小川が軽く手を振る。塔はどんどん高くなってゆき、城の頂上の遥か上空、
月も大きく見えてしまう気がする辺りまで登り、そこで止まった。
「はぁ・・・・はぁ・・・。こんなもんでしょうか?」
「上出来。」
飯田は紺野の肩をポンと叩いた。
112 :
23話:04/06/18 23:59 ID:fNv/+dlX
「これです。」
松浦がいっくんから貰った書物を取り出すと、全員の視線が一気にそこへと集まる。
書物は埃を被っていて、何人かは一歩引いた。
「この通りに唱えるの?」
「はい。」
飯田の問いに、石川が答える。
「でも、一人の人間で起こせるのはほんのちょっとらしいです。
だから六方正の原理で魔力を一気に増幅しないと厳しいです。」
「なるほどね・・・。じゃあ美貴ここに立つ。」
藤本がとりあえず端に立ち、その向かいは石川が立った。
そのまま等間隔に左右二人ずつ入る。
並びは藤本から時計回り順に飯田、小川、石川、紺野、松浦。
矢口は中心で書物を読み上げる係だ。
そして溢れた辻加護はさっき時間を稼ぐために王の間に残った吉澤の助っ人へ。
「さて、行ってみましょうか。まず魔力放出から。」
矢口の言葉と共に全員は、一気に魔力を中心の書物へと送り込んでいった。
113 :
23話:04/06/18 23:59 ID:fNv/+dlX
スタッ。
『助っ人参上!・・・あれ?』
114 :
23話:04/06/19 00:00 ID:lmVK03t3
バキ!!ガン!!ドン!!ドコ!!ドン!
塔から飛び降りて着地した辻と加護が見たものは、Gacktが吉澤に一方的に
押されまくっているという、なんとも不可解な画。吉澤は表情一つ変えず、
と言ったら表現が間違っているかもしれないが、
終始笑顔でGacktをたたき続けていた。
「(ば、バカな・・・。さっきまでは本当に20%だったというのか?)」
Gacktが右ストレートを繰り出すと、吉澤はそれを受け止め、思い切り握りつぶす。
ミシミシミシ・・・。
「あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!」
さっきとちょうど逆の構図だ。
吉澤は満足そうな笑みを浮かべると、うずくまるGacktにすかさず蹴りを放った。
ドン!
気持ちのいいくらいに音がよく響く。その度にGacktは悲鳴を上げた。
辻と加護には、もうなんだか訳が分からなかった。
115 :
23話:04/06/19 00:01 ID:lmVK03t3
「今の、ごとー達の、中で、ごとー以外.、あんたとまともに、・・・戦う力、
あるのは、もう、よっすぃと、高橋しか、いない・・・。」
116 :
23話:04/06/19 00:02 ID:lmVK03t3
後藤の台詞を、Gacktはまた思い出していた。
まともに戦う力がある所の騒ぎじゃない。半端なく強い。
格闘技だけで言えば中澤を凌ぐ力を持っている。一発一発の攻撃が重く、
そして速かった。まさか、こんなにも強いとは・・・。
ガン!!
壁のない方の部屋の端へと吹き飛ぶ。
「くっ!!」
Gacktは空中へと放り出されたが、空中で着地したようなポーズのまま静止した。
月の光を浴びて、しばし休憩を取る。吉澤は空中浮遊なんて出来ない。
だから加護に、
「あいぼんなんか投げて!」
「よし来た!!」
シュッ!
飛び出したのはブーメラン。
風をビュンビュンと斬りながら、Gacktの周りを一周して帰って来た。
117 :
23話:04/06/19 00:03 ID:lmVK03t3
「だめじゃん!」
「いや、あれ周りに膜があって当たらんようになっとるみたいやぞ。」
加護は冷静に説明をする。
そんな3人を傍観していたGacktは、漸く口を開いた。
「どうやら、本気を出さないと君には勝てないらしい。」
「は?」
吉澤は嘲笑う様に吐き捨てると、さっきGacktが吉澤に向けてした、
あの表情をした。
「今まで何%だった?20とか言わないでよ?」
「100%だよ。僕が僕でいられる中の、ね。」
嫌な匂いを嗅ぎ取った吉澤は、すぐに緩みきっていた頬を締め直す。
「hydeは残念だ。全力を出す前に負けてしまったのだからね。
月の子の真髄、思い切り味わうがいい!!」
Gacktから激しい邪気が押し寄せる。
吉澤は思い切り踏ん張りなんとか耐えるも、足は勝手に地面にめり込み、
勝手に後退してゆく。辻と加護にいたっては既に吹っ飛ばされ壁に激突していた。
「AHHHHHHH!!!」
Gacktの瞳の中には、月が浮かんでいた。
To be continued…
118 :
えっと:04/06/19 00:05 ID:lmVK03t3
更新終了です。
>>101 レスありがとうございます。
楽しんでいただけているでしょうか?
自分としては場面を緊迫させたいのですが、なかなかそうはならないみたいで。
色々と不安になります。
更新乙です。
あっちではああいうことになってしまったけど、あまり気になさらないようにね。
あと、小説のほうですが、自分としては十分楽しんでいますよ。あまり周りのことを気にせずに作者様の信じる道を進んで下さい。
ところどころダイの大冒険が入ってて
いい感じ
122 :
24話:04/06/21 22:25 ID:FwTY9AUg
24.「PHANTOM」
月の光を浴びて、Gacktは薄気味笑い笑みを浮かべていた。
自分の力を確かめるかのように、両手に目をやり、ゆっくりと握り締める。
夜の空に、彼は完全に同化していた。風がなびく。髪が少しだけ揺れると
Gacktはフッと笑い、ゆっくりと王の間まで降りてきた。
「ふーっ・・・。」
何度も拳を閉じたり開いたりするGackt。己の力を噛み締めるかのように、
何度も何度も繰り返した。その姿に吉澤は物凄い不快感を覚える。
「(なんなんだよ・・・こいつ。)」
心なしかさっきよりも背が高く、より筋肉質になっている。
そして何よりも違うのは、圧倒的な邪気。
もし数値にしてこの邪気を表せるならば、天文学的数値になるのは間違いない。
それほどまでにどうしようもない、力の差を感じた。
123 :
24話:04/06/21 22:26 ID:FwTY9AUg
途方もない差。
栓が壊れたみたいにGacktの全身から溢れ続ける邪気に、吐き気がした。
「AHHHHHHH!!」
再び突然の雄たけび。
今度は至近距離だったこともあり、吉澤はあっさりと吹き飛ばされてしまった。
一気に辻加護が激突した壁に激しく接触。
「ぐっ!!」
背中を強く打った吉澤は口を手で抑えた。
その手を離すとその手には赤い液が垂れている。
辻と加護は急いで吉澤の下へと駆け寄った。
「大丈夫?!」
吉澤は辛そうな顔をしながら、2人に囁いた。
「二人とも、どのくらい残ってる?」
「ほとんど。」
「やな。」
それを聞くと吉澤は満足そうな笑みを浮かべる。
両手をそれぞれ2人に差し出し、言った。
「じゃあほとんど頂戴!」
124 :
24話:04/06/21 22:27 ID:FwTY9AUg
「え〜、あれ死ぬほどきついやん。」
「死ぬほどきついのと死ぬの、どっちがいいのかな?」
強い口調、強い目で言われた2人は、言い返せずに吉澤と手を繋いだ。
「いただきます。」
吉澤は二人に一礼すると、精神を集中。
繋いだ両手が軽く光を帯び、暗闇の中輝いた。
「?」
Gacktが3人の不審な動きに気づく。
「何をしている!!」
Gacktが一気に近づいてくる。
時間はない。
吉澤は一気に事を進めた。
『1.2.3!』
125 :
24話:04/06/21 22:28 ID:FwTY9AUg
辻と加護の気が、繋いだ手を伝って一気に吉澤へと流れてゆく。
『1.2.3!』は、繋いだ手から繋いだ相手のエネルギーを吸収する事により、
相手のエネルギーを吸った分だけ自分の闘気に足し算する技。
つまり今吉澤には、3人分の闘気が宿っている。3倍とはいかないものの、
少なくとも吉澤の闘気は倍に膨れ上がった。
「・・・・・・・。」
Gacktは吉澤の気がどんどん強くなってゆくのを、特別驚く様子も見せず、
微動だにせずにただ見ていた。
「(これだけ闘気放っても反応無しかよ。)」
吉澤は不快感をそのまま顔に出す。どんだけ底がねぇんだ、Gacktは。
自分は確かに急激に強くなっているはずなのに、何故かさっきよりも
恐怖感が高まっている。少し手も震えていた。
126 :
24話:04/06/21 22:29 ID:FwTY9AUg
「(てことは・・・・。)」
吉澤は二人の手を離し、ゆっくりと一歩、足を踏み出した。
辻と加護は疲れた表情を見せてその場に座り込む。
二人の気をギリギリにまで吸い取って、尚も吉澤の力はGacktの安全圏内。
勘弁してくれよ・・・。
吉澤は逃げ出したい気持ちを抑え、必死に分析した。
とりあえず分かる事は、Gacktの邪気はこれ以上上がる事もないし下がる事もない、
という事だ。
通常、闘気邪気関係なく普段は体内に抑え込み、外にはなるべく出さない。
というより、あんな風に流れ出ている事は意識的に出さないとありえない。
すぐに出し尽くして萎れてしまうからだ。ただ、今のGacktは満月から常に
邪気の供給を受けているから、いくら需要しても減る事はない。
だが逆に言えば抑えていないことは、現状の邪気が最大値。
月の力を浴びて進化して、更に進化するとは思えないから、この仮説は正しいはずだ。
127 :
24話:04/06/21 22:30 ID:FwTY9AUg
つまり、吉澤がGacktとまともにやりあうには、
「(あたしも栓をぶち壊さないといけないらしいね。)」
吉澤は苦笑いした。
需要供給曲線がおかしなことになっているGacktに対して、
自分は供給がないため、需要すれば需要するほど減ってゆく。
あっという間にしおれてしまうのは間違いない。
果たして何分持つか・・・。それが問題だった。
例えまともにやり合ったとして、一瞬にして使い果たしてしまっては
全く意味がない。二人からもらっている事を考慮すると、もって・・・・。
「(10分、いや5分でいい。もってくれよ、あたしの身体!)」
吉澤の目つきが変わる。
Gacktはそれを見て思わず身構えた。
128 :
24話:04/06/21 22:31 ID:FwTY9AUg
「はぁ!!」
一気に膨張を見せる吉澤の闘気。今度はGacktが吹き飛ばされた。
Gacktはギリギリ城の外へと投げ出されない辺りまで転がる。
起き上がると、既に目の前には吉澤の姿があったことにGacktは驚いた。
『Baby!Knock out』
さっきと比べ、更に破壊力を増した打撃を、Gacktを襲う。
「ぐはっ!!!」
直撃を食らったGacktの口からは血が吹き出た。
「やった!」
辻と加護はそれを見てガッツポーズ。
しかし2人の予想以上に、吉澤は全力で飛ばしていた。
間髪入れずに連続攻撃を放ってゆく。
吉澤が右フックを打つと、Gacktは左へと避ける。しかしそれは誘いだった。
「(来た!)」
避けたGacktの視界に、吉澤の左ハイが飛び込んできた。
129 :
24話:04/06/21 22:32 ID:FwTY9AUg
捉えた!
吉澤がそう確信したその時、Gacktは忽然と姿を消してしまった。
いや、正確には消えたわけではない。
「(後ろ!!)」
「遅い。」
Gacktはにやりと笑うと、右手に思い切り邪気を蓄積した。
『au revoir』
130 :
24話:04/06/21 22:33 ID:FwTY9AUg
吉澤の『Moonlight blast』と同系統の技だった。
しかし、威力は遥かに凌駕する。
吉澤は突然、世界がどうにかなってしまったのではないか?と錯覚を覚えた。
何もかもがスローモーション。近づいてくるGacktの拳、それをかわそうと
必死に身体を動かす自分。精一杯逃げようとしているのに、
身体がゆっくりにしか動かせない。ゆっくりと、確実に近づいてくる闇の拳。
そこから放たれる邪気も、ゆっくりと吉澤の肌とぶつかっていた。
1メートル、50センチ、30センチ、10センチ。
メリッ。
胸の骨が、ゆっくりと嫌な音を立てて軋む。
拳が胸の奥に食い込むような感覚。
喉の奥から、生暖かい液体が逆流してきた。そうするうちにも、拳を伝い
闇の波動が、身体の奥へ、奥へと流れて行く。
131 :
24話:04/06/21 22:34 ID:FwTY9AUg
Gacktが更にもう一押しすると、胸と拳はゆっくりと離れ、
吉澤は宙に浮かんでいるような感覚を覚えた。
現に浮いているのだから、空を飛んでいる、と言った方が適切なのかもしれない。
ゆっくり、ゆっくりと後ろへ飛んでゆく。やがて背中に硬い感覚を覚えた。
「(壁?)」
随分と冷静に分析している自分がなんだか笑えた。
しかしすぐにそれも間違いだという事に気づく。
背中の一点に、集中的に痛みを覚えたからだ。後ろを急いで振り向く。
ゆっくりと首が動き、やがて視界に現れたのは、笑っているGacktだった。
背中の感触は、先回りしていたGacktの足だったのだ。
月が笑っていた。
To be continued…
132 :
えっと:04/06/21 22:38 ID:FwTY9AUg
今回はちょっと短めでした。
>>119-120 レスありがとうございます。
そうですか、それを聞いて安心しました。
自分の思うがままに、頑張っていい物を書きたいと思います。
>>121 レスありがとうございます。
そうですね、ダイの大冒険は影響受けています。全巻持ってますしw
とても敵いませんが、少しでも面白さが近づけるよう頑張ります。
更新乙です。
134 :
25話:04/06/23 21:53 ID:E+fMkXIF
25.Underplot
「石川少ない!!」
「もう出ません!!」
さっきからそんな会話ばかりが、塔で展開していた。
石川は周りから攻められまくりもう泣きそうな状態。
六方正の原理を成功させるためには円の全員がほぼ同量の魔力を放たなければ
ならないのだ。しかもただ同じだけでは呪文は成功しない。半端ない量の
魔力を要する。しかし石川は、
「一人レベル低いから仕方ないね。」
藤本にさくっと一言言われ、石川は落ち込んだ。
石川だって必死に出せるだけの魔力を中心の書物へと送り込んでいた。
しかし周りとはレベルが違いすぎる。
周りが高すぎるし石川自身も大分低い。そんな状態では魔力を浪費するだけで、
無駄な時間を過ごすことになってしまう。
135 :
25話:04/06/23 21:54 ID:E+fMkXIF
「化学くんにさらわれてばかりいるからですよ。」
今度は紺野に言われ、石川はしゃがみこんだ。
「弱いって悲しいね・・・。」
ここまで沈黙を守り続けていた飯田は、困った表情を浮かべながら六方正を解いた。
『え?』
この行動には全員驚く。
飯田自らが六方正を崩したことにより、全員慌てて魔力の放出をストップした。
飯田は自分へと視線が集中したのを確認すると、言った。
「この際五方正で妥協しよう。その分魔力上げれば威力上がるはずだから。」
「異議なし!」
矢口が手を上げると、続々と手が上がってゆく。
136 :
25話:04/06/23 21:54 ID:E+fMkXIF
「異議なし!」
「賛成〜!」
「完璧です!」
「名案。」
「なぁんで〜・・・。」
石川は悲しそうに矢口の側へと。
飯田は面倒臭そうな顔をして、石川に告げる。
「しょうがない、愛しのよっすぃ〜の所へ行っておいで。」
「え?」
「ここにいても狭いし邪魔だから。」
石川は泣きながら塔を飛び降りた。
137 :
25話:04/06/23 21:55 ID:E+fMkXIF
吉澤の世界は急激に加速をし始めていた。
さっきとは一変、今度は何もかもがあっという間に過ぎてゆく。
闘気が放出を続け、吉澤の身体が暴走していることの表れだった。
遂さっきまでのスローモーションは、いわば交通事故やボクサーと同じ原理。
本能が死を予感した結果・・・。
自分が蹴り飛ばされ吹き飛んでいる事を吉澤は漸く理解すると、周りを見た。
目の前には森がどこまでも果てなく続いている。
「(落ちる!)」
吉澤は力を振り絞り、両腕から精一杯闘気を放った。
『!!』
辻と加護は固唾を呑んでその様子を見守っている。吉澤は反動でなんとか
王の間まで戻ったが、着地しきれずその場で崩れ落ちた。
「よっすぃ〜・・・。」
辻と加護は悲痛な表情で吉澤を見ていた。回復呪文の一つも使えずに、
目の前の仲間の死を何も出来ずに見送る苦しみ。
辻にとっては今日だけで2度目の体験。辻の目は悲しみに濡れていた。
138 :
25話:04/06/23 21:56 ID:E+fMkXIF
のの・・・・。
吉澤はそんな辻を見て、なんとか地面を這いつくばった。
あたしが・・・あたしが戦わなきゃ!吉澤は立ち上がると、また転んだ。
「はぁ・・・・はぁ・・・はぁ・・。」
「よっすぃ〜!もうええ!!もうええ!」
「・・く・・・・・。」
吉澤は地面に掴むように思い切り地面を叩く。腕にグッと力をいれ、
腕立て伏せのように体を起こそうとするも、腕が痙攣するだけでその先へと
進めなかった。
「ぁぁ!!!ぁぁ!!」
精一杯の声を張り上げ、なんとか上半身を起こす。
しかし次の瞬間には、地面に派手に堕ちていた。
まるで、たたきつけられているかのように。
「もういいれす・・・・よっすぃ〜もう休んでてくらさい・・・。」
辻がなんとか声を出すも、吉澤には届かない。
139 :
25話:04/06/23 21:57 ID:E+fMkXIF
「無駄だ。お前の体は貫かれたはずだ。」
Gacktは静かに呟いた。
『au revoir』はこれまでGacktが使ってきた中でもかなり恐ろしい技といえる。
全体攻撃としては完全に『Another world』の方が威力は上だが、
単体攻撃としての破壊力は『au revoir』が遥かに上を行く。
この技の直撃を食らい生き残った敵はいないほどに。この技の恐ろしい所は、
2回に分けて攻撃を行う時、正確に一撃目に叩いた所の『裏』を蹴るところにある。
これによって両側の陥没から敵の胸にはぽっかりと穴が開き、貫通した形になってしまう。
身体を貫かれた敵を待つものは、死の他にない。
「ぐっ・・・・っ・・・・・!!」
しかし吉澤はなんと、立ち上がってみせた。
「何?!」
再び闘気を全て開放し攻撃を繰り出す。
140 :
25話:04/06/23 21:58 ID:E+fMkXIF
「うっ」
しかし、吉澤は1メートルも前に進む事は出来なかった。
刹那、
「ごふっ。」
吉澤は手で口を覆うと、そのまま背中から地面へと崩れた。
手を離すと、手は真っ赤に染まっている。
それを見ただけで辻と加護は気が狂いそうになった。吉澤はなんとなく
感じる欠落感を確かめるかのように、そっと胸を摩る。
「・・・・・・あれ。ある。」
「何?」
Gacktが吉澤の呟く言葉にピクリと反応する。
一撃目でかなり深いダメージを受けていたはずの傷。
陥没した感覚があったはずなのに、胸骨は確かに残っていた。
ひびが入ったような感覚はあるものの、確かに。なんで・・・?
吉澤のその疑問は、服の中を覗き込むことですぐに解決した。
141 :
25話:04/06/23 21:59 ID:E+fMkXIF
142 :
25話:04/06/23 22:00 ID:E+fMkXIF
「よっすぃ〜。」
「これは?」
「あたしの魔力たっぷり込めた、お守り。」
143 :
25話:04/06/23 22:01 ID:E+fMkXIF
「梨華ちゃん・・・。」
胸の中にあったのは、石川から貰ったペンダント。
無残に砕けてしまっているが、どうやらこれで一命を取り留めたらしい。
背中には激しい痛みを感じるが、そんな事は言っていられない。
なんだか吉澤は少しだけ活力が戻った。
石川に救ってもらったこの命で、石川達を救う。
たとえどんなに傷つき、倒れそうでも。吉澤の決意は固まった。
死を覚悟し、恐れることを忘れた人間の力は恐ろしい。
吉澤はゆっくりと立ち上がり、もう一度構えてみせた。
「っし・・・。」
しかしGacktの方へと視線を移すと、
Gacktの視線はあさっての方向へと向かっていた。
144 :
25話:04/06/23 22:02 ID:E+fMkXIF
Gacktは焦っていた。
『au revoir』をどんな形であれ、凌がれた事に。
『au revoir』はGacktが最も自信を持ち、勝負所で使っていた、使い慣れた技だった。
それをペンダントのせいとはいえ失敗した事は、Gacktの精神にショックを与えるには充分。
かわし方から見て向こうに運が来ているかもしれない。
これで向こうに勢いつく可能性は否定出来ない。
勝利を確信した所から突然の吉澤復帰で、Gacktはかなりネガティブになっていた。
そんな時、不意にGacktの視線にある物が飛び込んだ。
・・・・・なんだあれは?
・・・・・塔?
・・・・・まさか。
145 :
25話:04/06/23 22:02 ID:E+fMkXIF
「貴様ら、何をたくらんでいる!!」
塔に向かって思い切り吠えるGacktを見て、3人は焦った。
やばい、気づかれた!
そしてまさにその最悪のタイミングに、塔の方から一人の娘が降り立つ。
「よっすぃ〜どうしたの?!大丈夫??」
吉澤は思わず目を瞑った。何でこんなときに、こんな身体が動かない時に、
一番守ってあげなければならない娘が・・・。
「お前ら、何をしている!!!」
Gacktは石川へと迫る。
「え?!ちょっと!!いきなり〜?!」
緊張感のない声をあげる石川を見て、吉澤は覚悟を決めた。
146 :
25話:04/06/23 22:05 ID:E+fMkXIF
「(梨華ちゃん!)」
残った気を、全て右の拳に込める。
梨華ちゃんのおかげで救われた命。
今度はあたしが救う番だ!
「うおおおお!!!!」
吉澤は叫び声と共に、Gacktの背中に全てを叩きつけた。
『Moon light blast』
To be continued…
147 :
25話:04/06/23 22:11 ID:E+fMkXIF
>>133 レスありがとうございます。
毎回本当に感謝しています。
ところでそろそろ試験が近づいてまいりました。
中間は結構ギリギリまで書いていましたが科目が一気に増えるので
もしかしたら試験が終るまで全く更新できないかもしれません。
ご了承ください。
因みに試験は再来週の水曜日に終ります。
乙!
試験がんばれ!
149 :
名無し募集中。。。:04/06/24 00:08 ID:5q4fQGal
南君の恋人て、高橋が出るんだっけ
試験頑張れ!!
保全
154 :
26話:04/07/03 12:29 ID:Tp/TnGt2
26.「覚醒」
『Moon light blast』
155 :
26話:04/07/03 12:29 ID:Tp/TnGt2
まさに魂を込めた一撃だった。吉澤の全てが拳に注ぎ込まれている。
放てばもう立つ事すら出来ないだろう。
吉澤全身全霊の一発が、Gacktの背中を捉えた!
「!!」
ミートした瞬間、周辺全てが明るい光に包まれる。
通常よりも明らかに強い、吉澤の生命の光。
石川はまぶしくて思わず目を細めながら、名前を呼ぶ。
「よっすぃ〜!」
156 :
26話:04/07/03 12:30 ID:Tp/TnGt2
光の中心に、二つの人影。
一つの影は自らの体重を支えきれずにふらついて、今にも倒れそうな状態。
そしてもう一方は、果てていた。
「よっすぃ〜!」
石川は素早く状況を分析した。
まだ影しか確認出来ないが、さっきの技の破壊力と吉澤の闘気の爆発具合
から考えて、倒れているのは・・・吉澤?
吉澤はあの一撃に全てを込めている。
なら、あたしの仕事は・・・。
石川は倒れている影に駆け寄った。すぐに最大級の回復呪文を放つ。
『I wish』
影はすぐに生気に満たされてゆく。石川はもう一度名を叫んだ。
「よっすぃ〜!」
157 :
26話:04/07/03 12:31 ID:Tp/TnGt2
「梨華ちゃん・・・無事だった・・・。」
「え?」
石川は聞こえるべきでない方向から、よく聞きなれた声を聞いた気がした。
「よっすぃ〜?」
言霊を唇から話した瞬間、光は漸く晴れる。
後ろを振り向くと、おぼつかない足取りで吉澤がなんとか立っていた。
吉澤は、ふらついている方だった!
「よっすぃ〜!」
すぐに『I wish』をかけなおす。
吉澤は一気に癒えてゆく身体を少し動かしながら、
「さっきからそればっかりだよ梨華ちゃん。」
と言って少しだけ笑った。
身体が完全に癒えると、吉澤は心を込めて礼を唱える。
「ありがとう。」
その笑顔につられて、石川も笑う。
158 :
26話:04/07/03 12:32 ID:Tp/TnGt2
石川はGacktに回復呪文を書けた事を完全に忘れていた。
そんなことよりもなんとか一命を取り留めた吉澤への喜びに気が行って
しまっていたのだ。
だから、背後から回復してしまったGacktにも気がつかない。
吉澤の手を握り、ただ無邪気に喜んでいた。そんな時吉澤は強烈な邪気の
膨らみを感じる。
「(なに・・・?)」
確かに仕留めたはずだった。
それなのに、この回復振りは一体?吉澤は混乱した。
流石にフェータルな一撃を与えれば月の光を持ってしても回復は難しいと
思っていたのに・・・。邪気は間もなく石川の真後ろへと移動した。
Gacktは右腕を引くと、すぐに突き出した。
「梨華ちゃん危ない!」
自分の手を握り締めている石川の手を思い切り後ろへと投げる。
それが吉澤の出来る精一杯だった。
「きゃっ!」
石川は訳も分からずに投げられた。吉澤にかわす時間は、ない。
冷徹な一撃は、吉澤の身体を今度こそ貫いた。
159 :
26話:04/07/03 12:34 ID:Tp/TnGt2
声は強烈な魔力の塊となりGacktを吹っ飛ばす。石川は表情一つ変えずに吉澤を見た。
『I wish』
最大回復呪文が吉澤を優しく包み込む。吉澤の傷はさっきよりも遥かに早く癒えた。
「のの!あいぼん!よっすぃ〜を端に寄せて!」
『は、はい!』
いつもの石川じゃない。
それだけは確かだった。
あまりに違いすぎる石川を目の当たりにしてびびった二人は、黙って言う事を
聞いた。恐ろしい速さで吉澤の側に到達し、一瞬にして壁際まで運んでゆく。
石川はそれを確認すると相変わらず無表情のまま、
「ありがとう。」
とだけつぶやいた。
160 :
26話:04/07/03 12:36 ID:Tp/TnGt2
石川は戦うには相手の気持ちを考えすぎていた。戦意があるわけでもない。
吉澤にくっついて一緒に革命軍の一員となっただけ。おそらくそのせいだろう。
石川はあらゆる攻撃呪文の契約に成功しながら、殆ど使用する事が出来なかった。
しかし、吉澤を倒された事によって、石川の中で眠っていた獅子が完全に目覚めた。
今の石川は敵意、殺意共に剥き出しの野獣。
あるいはそれよりももっとタチの悪い代物か。
そして彼女は無意識に知る。沸き起こってくる、溢れそうなほどの魔力を。
それを操れる自分を。思えばこれだけの戦場を経験して、強くならないはずがなかった。
石川はゆっくりとGacktへと近づくと、掌に魔力をため、唱えた。
161 :
26話:04/07/03 12:37 ID:Tp/TnGt2
『シャボン玉』
百単位どころではすまない。千単位の魔弾がGacktに降り注いでゆく。
「何?!」
数が多すぎてかわすことができない。
Gacktは少しずつ王の間の隅、部屋の切れ目まで追い込まれてゆく。
「!!」
少しずつ後退していたが、もう後がない。
一つのシャボンはゆっくりとGacktの肩に触れると、弾けた。
パンパンパンパンパンパン!!!!
一つがはじけるとその周りもその衝撃で弾ける。
シャボンに込められた魔力は、Gacktの周り一帯に広がった。
「ぐぁ!!!・・くそ!」
Gacktは逃げ場を求め、天高く飛び上がった。
石川はそれを見ると一テンポ遅れて飛び上がる。
162 :
26話:04/07/03 12:44 ID:Tp/TnGt2
「何?!」
Gacktは動揺を隠せない。
石川は相も変わらず人形のように無表情のまま追い討ちをかける。
『ピース』
ピースサインをした石川の指から、同じ形をした巨大な魔弾恐ろしい
スピードで飛び出す。瞬き一つする間もなくそれはGacktの目の前にあった。
ガードを取る事すら、Gacktは許されなかった。
「!!」
直にそれを食らったGacktはそのまま王の間へと落下していった。
渇いた音がよく周りを響く。
「・・・・・・・。」
石川は静かに、呟いた。
マケルキガシナイ・・・。
163 :
26話:04/07/03 12:45 ID:Tp/TnGt2
Gacktはかつてないほどの恐怖を感じていた。
それは高橋の時と似ていたが全く違った。高橋の場合前兆はあった。
後藤の一言。
しかし石川の覚醒に関して、後藤ですら予想だにしなかった、完全な伏兵。
Gacktにとって、伏兵ほど怖いものはなかった。
伏兵は全くその力が予測出来ない。底が見えないのだ。
今の石川の力をもってすれば、おそらく自分を一瞬にしてこの世から消滅させる
ほどの呪文を使いこなせるだろう。
しかしそれをしないのは明らかにGacktへの怒り、吉澤をあんな目に合わせた復讐だ。
痛めつけて痛めつけて、そして殺す。それが石川の考え。
それはあの無表情ながらも、沸き起こってくる自信と、自分に酔いしれている
様子から見て分かった。
仮にこれがGacktのマイナス思考、ただの妄想であったとしても、石川は
恐ろしい力を得てしまった。それだけは確かである。
164 :
26話:04/07/03 12:46 ID:Tp/TnGt2
どうにかしなければならない。どうにかして石川の弱点を探さなければ。
しかし石川はそんなに考える暇を与えてはくれそうになかった。
少しずつ、ゆっくりと一歩一歩Gacktへと歩を進めている。
しかしさっきと違う所は、表情に少しだけ笑みが見えたところだ。
それはいつもの笑顔とは違う、卑劣な、いやらしい顔。
敵を嘲笑い、自分に完全に酔っているナルシストのような顔をしている
石川は、手に魔力を込めた。
『ズバッと!!』
初めて語調を強めて放つ。強くなった語調に合わせて、威力も倍増した。
低弾道のまま魔弾はGacktの真横を通過する。
間もなくしてGacktの右足から血が吹き出た。Gacktは反応すら出来なかった。
「ぐっ・・・・。」
右足を軽く摩り、Gacktは石川を睨みつける。
どうする?
165 :
26話:04/07/03 12:47 ID:Tp/TnGt2
石川は相変わらずいやらしい笑いのまま、少しずつGacktへ近づく。
まるで死の恐怖をGacktに与えるためかのように。
辻と加護はそれを見て怯えていた。
一体石川は、どうしたというのだろうか。いつもの石川とはかけ離れた魔力。
それだけならよかったのだが、その強大な魔力によって、石川は人格までも
変わってしまっている。自分の強さを楽しんでいるかのような、
そんな様子が伺える。
「やめてや・・・・やめてや梨華ちゃん・・・。」
「怖いのれす・・・・。」
その時、二人の横で倒れていた体がピクリと反応した。
166 :
26話:04/07/03 12:49 ID:Tp/TnGt2
突然石川は歩くペースを速めた。
瞬間移動とも思えるスピードで、Gacktの目の前に現れる。
そしてフッと笑ってみせると、左手をGacktの胸にかざした。
「ばいば〜い。」
「!!」
月の力を借りて、Gacktは後方へと退く。
遂さっきの石川と変わらないスピードで、Gacktは逃げた。
「・・・・・。」
Gacktは覚悟を決めた。月の光を限界まで使い、Gacktは防御力を高めてゆく。
「AHHHH!!!」
Gacktは吠えると、突っ込んだ。
「!!」
石川はここで初めて表情に不安をにじませる。
思いもよらなかった反撃に驚いた石川は、魔弾を連発する。
167 :
26話:04/07/03 12:49 ID:Tp/TnGt2
「えい!えい!えい!えい!」
ドン!ドン!ドン!ドン!
魔弾の直撃を食らいながらも、Gacktは全速力で石川へと近づいていく。
その目は鬼気迫るものがある。
今度は石川が恐怖を覚えた。
「AHHHHH!!!」
Gacktは右腕を思い切り引く。右の拳には一瞬にして邪気が蓄積された。
Gacktの狙いは、肉弾戦。いくら魔法が強くなっても、生身はただの人間。
そして実戦への対応が高橋と比べて明らかに甘い。
ならば魔法だけ耐えて近づけば、一撃で勝負は決まる。
「きゃーーー!!!!」
もう表情はいつもの石川に戻っていた。
168 :
26話:04/07/03 12:53 ID:Tp/TnGt2
ドン!!!
ガードの上からでも威力は充分過ぎるほど石川に響く。
石川はそのまま壁へと吹き飛んだ。
空中でのた打ち回りながら、石川は涙を流していた。
チラッと後ろを見ると、石川は目を閉じた。
ガシッ。
「・・・・あれ?」
目をゆっくりと開け後ろを見ると、そこに立っていたのは・・・。
「だめだよ強くなったからって調子乗っちゃ。油断が一番怖いんだから。」
吉澤は軽く石川のおでこにデコピンをする。
された途端、石川の表情は見る見るうちに変わっていった。
「・・・・よっすぃ〜!!」
「うわ!ちょっと?!」
突然抱きつかれて吉澤は慌てた。石川としては当然の事をしたまでだが。
石川は顔をゆっくりと起こすと、笑顔で言った。
「一人でダメなら、二人で行こうよ!」
二人は立ち上がり、Gacktを睨みつける。Gacktは明らかに嫌な顔をした。
To be continued…
169 :
えっと:04/07/03 12:58 ID:Tp/TnGt2
試験期間中ですが余裕が出来たので更新しました。
>>148 レスありがとうございます。
がんばってます!
>>149 狩狩の高橋さんが何か言っていた様な・・・。誤爆ですか?
>>150 レスありがとうございます。
がんばってます!(同じかよ)
>>151 保全ありがとうございます。
保全されると申し訳ないような気持ちと見ている人がいるんだなという気持ちが・・・。
>>152 保全ありがとうございます。
さっそく見てみました。勉強になります。現実の勉強もしなきゃw
>>153 保全?ありがとうございます。
保全要らないんですか。逃げやすい(?)環境にはなりましたかね。
絶対に書き上げますけど。
更新おつー
試験の調子はいかがですか
更新乙です。
試験、ラストスパート頑張れ!!!
158と159の間って何も入らないんですか?
>>172 ご指摘ありがとうございます!
あります!自分では投稿したつもりだったんですが・・・。
26話飯食ったらまとめてうpしなおします、追加するだけだと読みにくいんで。
174 :
26話:04/07/04 12:57 ID:MVCvVwPx
26.「覚醒」
『Moon light blast』
175 :
26話:04/07/04 12:58 ID:MVCvVwPx
まさに魂を込めた一撃だった。吉澤の全てが拳に注ぎ込まれている。
放てばもう立つ事すら出来ないだろう。
吉澤全身全霊の一発が、Gacktの背中を捉えた!
「!!」
ミートした瞬間、周辺全てが明るい光に包まれる。
通常よりも明らかに強い、吉澤の生命の光。
石川はまぶしくて思わず目を細めながら、名前を呼ぶ。
「よっすぃ〜!」
176 :
26話:04/07/04 12:58 ID:MVCvVwPx
光の中心に、二つの人影。
一つの影は自らの体重を支えきれずにふらついて、今にも倒れそうな状態。
そしてもう一方は、果てていた。
「よっすぃ〜!」
石川は素早く状況を分析した。
まだ影しか確認出来ないが、さっきの技の破壊力と吉澤の闘気の爆発具合
から考えて、倒れているのは・・・吉澤?
吉澤はあの一撃に全てを込めている。
なら、あたしの仕事は・・・。
石川は倒れている影に駆け寄った。すぐに最大級の回復呪文を放つ。
『I wish』
影はすぐに生気に満たされてゆく。石川はもう一度名を叫んだ。
「よっすぃ〜!」
177 :
26話:04/07/04 13:00 ID:MVCvVwPx
「梨華ちゃん・・・無事だった・・・。」
「え?」
石川は聞こえるべきでない方向から、よく聞きなれた声を聞いた気がした。
「よっすぃ〜?」
言霊を唇から話した瞬間、光は漸く晴れる。
後ろを振り向くと、おぼつかない足取りで吉澤がなんとか立っていた。
吉澤は、ふらついている方だった!
「よっすぃ〜!」
すぐに『I wish』をかけなおす。
吉澤は一気に癒えてゆく身体を少し動かしながら、
「さっきからそればっかりだよ梨華ちゃん。」
と言って少しだけ笑った。
身体が完全に癒えると、吉澤は心を込めて礼を唱える。
「ありがとう。」
その笑顔につられて、石川も笑う。
178 :
26話:04/07/04 13:00 ID:MVCvVwPx
石川はGacktに回復呪文を書けた事を完全に忘れていた。
そんなことよりもなんとか一命を取り留めた吉澤への喜びに気が行って
しまっていたのだ。
だから、背後から回復してしまったGacktにも気がつかない。
吉澤の手を握り、ただ無邪気に喜んでいた。そんな時吉澤は強烈な邪気の
膨らみを感じる。
「(なに・・・?)」
確かに仕留めたはずだった。
それなのに、この回復振りは一体?吉澤は混乱した。
流石にフェータルな一撃を与えれば月の光を持ってしても回復は難しいと
思っていたのに・・・。邪気は間もなく石川の真後ろへと移動した。
Gacktは右腕を引くと、すぐに突き出した。
「梨華ちゃん危ない!」
自分の手を握り締めている石川の手を思い切り後ろへと投げる。
それが吉澤の出来る精一杯だった。
「きゃっ!」
石川は訳も分からずに投げられた。吉澤にかわす時間は、ない。
冷徹な一撃は、吉澤の身体を今度こそ貫いた。
179 :
26話:04/07/04 13:02 ID:MVCvVwPx
吉澤の背中から、真っ赤な羽が生えてくる。
石川はそんな風にこの状況を一瞬だけ錯覚した。
吉澤は仁王立ちしたまま動かない。腕が吉澤の身体の中へと戻ってゆくように
引っ込むと、吉澤は受身もなしに力なく倒れた。
そして石川の視界に今度は赤黒く汚れた殺人鬼が飛び込んでくる。
思わず目を逸らすと、足元にはぴくぴくと小刻みに震える身体。
口と、胸に発生した『第二の口』から赤い水が流れ落ちると、石川の中で
何かが目覚めた。
「・・さない。」
「?」
Gacktはよく聞き取れず、石川に一歩近づいた。
それを見た石川は、大声で言い直す。
「許さない!!」
180 :
26話:04/07/04 13:02 ID:MVCvVwPx
声は強烈な魔力の塊となりGacktを吹っ飛ばす。
石川は表情一つ変えずに吉澤を見た。
『I wish』
最大回復呪文が吉澤を優しく包み込む。吉澤の傷はさっきよりも遥かに早く癒えた。
「のの!あいぼん!よっすぃ〜を端に寄せて!」
『は、はい!』
いつもの石川じゃない。
それだけは確かだった。
あまりに違いすぎる石川を目の当たりにしてびびった二人は、黙って言う事を
聞いた。恐ろしい速さで吉澤の側に到達し、一瞬にして壁際まで運んでゆく。
石川はそれを確認すると相変わらず無表情のまま、
「ありがとう。」
とだけつぶやいた。
181 :
26話:04/07/04 13:03 ID:MVCvVwPx
石川は戦うには相手の気持ちを考えすぎていた。戦意があるわけでもない。
吉澤にくっついて一緒に革命軍の一員となっただけ。おそらくそのせいだろう。
石川はあらゆる攻撃呪文の契約に成功しながら、殆ど使用する事が出来なかった。
しかし、吉澤を倒された事によって、石川の中で眠っていた獅子が完全に目覚めた。
今の石川は敵意、殺意共に剥き出しの野獣。
あるいはそれよりももっとタチの悪い代物か。
そして彼女は無意識に知る。沸き起こってくる、溢れそうなほどの魔力を。
それを操れる自分を。思えばこれだけの戦場を経験して、強くならないはずがなかった。
石川はゆっくりとGacktへと近づくと、掌に魔力をため、唱えた。
182 :
26話:04/07/04 13:04 ID:MVCvVwPx
『シャボン玉』
百単位どころではすまない。千単位の魔弾がGacktに降り注いでゆく。
「何?!」
数が多すぎてかわすことができない。
Gacktは少しずつ王の間の隅、部屋の切れ目まで追い込まれてゆく。
「!!」
少しずつ後退していたが、もう後がない。
一つのシャボンはゆっくりとGacktの肩に触れると、弾けた。
パンパンパンパンパンパン!!!!
一つがはじけるとその周りもその衝撃で弾ける。
シャボンに込められた魔力は、Gacktの周り一帯に広がった。
「ぐぁ!!!・・くそ!」
Gacktは逃げ場を求め、天高く飛び上がった。
石川はそれを見ると一テンポ遅れて飛び上がる。
183 :
26話:04/07/04 13:05 ID:MVCvVwPx
「何?!」
Gacktは動揺を隠せない。
石川は相も変わらず人形のように無表情のまま追い討ちをかける。
『ピース』
ピースサインをした石川の指から、同じ形をした巨大な魔弾恐ろしい
スピードで飛び出す。瞬き一つする間もなくそれはGacktの目の前にあった。
ガードを取る事すら、Gacktは許されなかった。
「!!」
直にそれを食らったGacktはそのまま王の間へと落下していった。
渇いた音がよく周りを響く。
「・・・・・・・。」
石川は静かに、呟いた。
マケルキガシナイ・・・。
184 :
26話:04/07/04 13:06 ID:MVCvVwPx
Gacktはかつてないほどの恐怖を感じていた。
それは高橋の時と似ていたが全く違った。高橋の場合前兆はあった。
後藤の一言。
しかし石川の覚醒に関して、後藤ですら予想だにしなかった、完全な伏兵。
Gacktにとって、伏兵ほど怖いものはなかった。
伏兵は全くその力が予測出来ない。底が見えないのだ。
今の石川の力をもってすれば、おそらく自分を一瞬にしてこの世から消滅させる
ほどの呪文を使いこなせるだろう。
しかしそれをしないのは明らかにGacktへの怒り、吉澤をあんな目に合わせた復讐だ。
痛めつけて痛めつけて、そして殺す。それが石川の考え。
それはあの無表情ながらも、沸き起こってくる自信と、自分に酔いしれている
様子から見て分かった。
仮にこれがGacktのマイナス思考、ただの妄想であったとしても、石川は
恐ろしい力を得てしまった。それだけは確かである。
185 :
26話:04/07/04 13:10 ID:MVCvVwPx
どうにかしなければならない。どうにかして石川の弱点を探さなければ。
しかし石川はそんなに考える暇を与えてはくれそうになかった。
少しずつ、ゆっくりと一歩一歩Gacktへと歩を進めている。
しかしさっきと違う所は、表情に少しだけ笑みが見えたところだ。
それはいつもの笑顔とは違う、卑劣な、いやらしい顔。
敵を嘲笑い、自分に完全に酔っているナルシストのような顔をしている
石川は、手に魔力を込めた。
『ズバッと!!』
初めて語調を強めて放つ。強くなった語調に合わせて、威力も倍増した。
低弾道のまま魔弾はGacktの真横を通過する。
間もなくしてGacktの右足から血が吹き出た。Gacktは反応すら出来なかった。
「ぐっ・・・・。」
右足を軽く摩り、Gacktは石川を睨みつける。
どうする?
186 :
26話:04/07/04 13:10 ID:MVCvVwPx
石川は相変わらずいやらしい笑いのまま、少しずつGacktへ近づく。
まるで死の恐怖をGacktに与えるためかのように。
辻と加護はそれを見て怯えていた。
一体石川は、どうしたというのだろうか。いつもの石川とはかけ離れた魔力。
それだけならよかったのだが、その強大な魔力によって、石川は人格までも
変わってしまっている。自分の強さを楽しんでいるかのような、
そんな様子が伺える。
「やめてや・・・・やめてや梨華ちゃん・・・。」
「怖いのれす・・・・。」
その時、二人の横で倒れていた体がピクリと反応した。
187 :
26話:04/07/04 13:12 ID:MVCvVwPx
突然石川は歩くペースを速めた。
瞬間移動とも思えるスピードで、Gacktの目の前に現れる。
そしてフッと笑ってみせると、左手をGacktの胸にかざした。
「ばいば〜い。」
「!!」
月の力を借りて、Gacktは後方へと退く。
遂さっきの石川と変わらないスピードで、Gacktは逃げた。
「・・・・・。」
Gacktは覚悟を決めた。月の光を限界まで使い、Gacktは防御力を高めてゆく。
「AHHHH!!!」
Gacktは吠えると、突っ込んだ。
「!!」
石川はここで初めて表情に不安をにじませる。
思いもよらなかった反撃に驚いた石川は、魔弾を連発する。
188 :
26話:04/07/04 13:13 ID:MVCvVwPx
「えい!えい!えい!えい!」
ドン!ドン!ドン!ドン!
魔弾の直撃を食らいながらも、Gacktは全速力で石川へと近づいていく。
その目は鬼気迫るものがある。
今度は石川が恐怖を覚えた。
「AHHHHH!!!」
Gacktは右腕を思い切り引く。右の拳には一瞬にして邪気が蓄積された。
Gacktの狙いは、肉弾戦。いくら魔法が強くなっても、生身はただの人間。
そして実戦への対応が高橋と比べて明らかに甘い。
ならば魔法だけ耐えて近づけば、一撃で勝負は決まる。
「きゃーーー!!!!」
もう表情はいつもの石川に戻っていた。
189 :
26話:04/07/04 13:18 ID:MVCvVwPx
ドン!!!
ガードの上からでも威力は充分過ぎるほど石川に響く。
石川はそのまま壁へと吹き飛んだ。
空中でのた打ち回りながら、石川は涙を流していた。
チラッと後ろを見ると、石川は目を閉じた。
ガシッ。
「・・・・あれ?」
目をゆっくりと開け後ろを見ると、そこに立っていたのは・・・。
「だめだよ強くなったからって調子乗っちゃ。油断が一番怖いんだから。」
吉澤は軽く石川のおでこにデコピンをする。
された途端、石川の表情は見る見るうちに変わっていった。
「・・・・よっすぃ〜!!」
「うわ!ちょっと?!」
突然抱きつかれて吉澤は慌てた。石川としては当然の事をしたまでだが。
石川は顔をゆっくりと起こすと、笑顔で言った。
「一人でダメなら、二人で行こうよ!」
二人は立ち上がり、Gacktを睨みつける。Gacktは明らかに嫌な顔をした。
To be continued…
190 :
えっと:04/07/04 13:20 ID:MVCvVwPx
ご迷惑おかけしましたm(_ _)m
>>170 レスありがとうございます。
試験の方はおかげさまでなんとか乗り切れそうです。
>>171 レスありがとうございます。
明日から残り半分なんで気合入れて頑張ります。
では私は勉強を・・・・(するのだろうか
191 :
27話:04/07/07 18:26 ID:oRF07lNu
27.「Two-O-One」
2対1。ついさっきなら1対1となんら変わらなかっただろう。だが今は違う。
完全に覚醒してしまった石川と、体力が全快している吉澤。
かなり不利な状況なのは確かだった。しかし、吉澤に倒され瀕死の状態から
石川のミスでなんとか回復した事を考えれば、ツキは確実にこっちにある。
それに、hydeのためにも、Gacktは負けるわけにはいかなかった。
「どうせなら後ろの二人もどうかな?4対1くらいなら張り合いも出る。」
ビクッと身体を震わせ、壁に背中を引っ付けてしまう辻加護。
Gacktはフッと笑うと、構えた。
192 :
27話:04/07/07 18:27 ID:oRF07lNu
右に吉澤、左に石川。二人とも拳をしっかりと握り締め、その視線を一点、
Gacktの目を見つめていた。
「いくよ・・・・。」
吉澤が囁くと、石川は静かに頷く。それを確認すると、吉澤は飛び出した。
それに対してGacktはダッシュが一歩遅れる。
その代わり、Gacktも拳に邪気を蓄積していた。向かってくる吉澤に向けて、
拳を突き出す。
ドン!!!
「ぐっ!!」
Gacktは少しだけ体勢を崩した。
拳から邪気を放つ前に、石川がそれを制したのだ。ひるむGacktに容赦なく、
畳み掛けるように攻撃を放つ吉澤。
「うぉぉぉ!!!」
ラッシュ。
息もつかせぬ連続攻撃に、Gacktは受け止めきれずに何発か直撃を食らい、
後方へ吹き飛ぶ。
193 :
27話:04/07/07 18:28 ID:oRF07lNu
バック転をして体制を立ちなおしたGacktは思わず目を丸くした。
目の前には既に魔弾。『Miror』を出す時間なんてない。上を見上げる。
すると足をこっちに向けている吉澤と目が合った。
少しだけ笑っている。・・・・。Gacktは左手にグッと力をこめて、
思い切り魔弾を弾きあげた。
「え?」
吉澤は予想外の反撃に慌てるも、闘気で少しだけ浮き上がり避けてみせた。
そしてそのまま再び足がGacktに向け落ちてくる。真正面に視線を移すと
シャボンの大群。どうする?Gacktは迷った末、
『Miror』
シャボンを弾き返した一瞬後、吉澤の足は炎に燃えていた。
「!!」
『浪漫』
吉澤はただ単に打撃を繰り出すだけの格闘家ではない。魔力のこもった
ナックルは、ほんのわずか、常人より少し上くらいの魔力を増幅する
ためのものだった。ただし炎しか使えないが。
194 :
27話:04/07/07 18:29 ID:oRF07lNu
ドン!!!
ボディに深々と食い込む吉澤の足。炎は一気にGacktの全身に広がる。
「ぐあ!!!」
慌てて水の呪文で全身を冷やす。吉澤はそれを見ると皮肉っぽく笑った。
「さっきまでの勢いはどこにったのかな〜。」
金髪がそよ風を受けてサラサラとなびいた。吉澤は髪を軽く掻き揚げると、
ガン!!!
「!!」
一方的にGacktを殴り始めた。受身を取ることしか出来ず、防戦一方のGackt。
しかししばらくすると、吉澤は突然後方に飛び、身構えた。
チッ、と舌打ちするGackt。
「どうしたの?」
石川に聞かれた吉澤は、静かに答えた。
「邪気を思いっ、きり右の拳に溜め込んでた、あいつ。」
Gacktはすっと立ち上がると、呟く。
「楽しいね・・・。」
195 :
27話:04/07/07 18:30 ID:oRF07lNu
「は?」
「こういうのを待ってたんだよ。」
「Mっ気のあるコメントなんていらねぇんだよ。」
吉澤はパキポキと拳を鳴らすと、屈伸運動を始めた。Gacktは気にせずに
続ける。
「邪気を溜め込んでいた・・・その意味を愚かな事に吉澤、君は気づいていない。」
自分の名前を呼ばれた吉澤は横を振り向く。
その表情はさっきと変わっていた。余裕ぶっていた表情から、焦りにも
似た表情に。
「さっき一旦倒れたからね、ストップしてたんだよ、邪気の開放。」
よく見ると身長も、筋肉もフルパワーになる前の、吉澤一人にボコボコに
されていたGacktと同じだった。
「分かったようだね、じゃあ行くよ。」
Gacktはすっと息を吸うと、Gacktの邪気は月の光を借りて一気に膨張を
始めた。
196 :
27話:04/07/07 18:31 ID:oRF07lNu
再びフルパワーになったGackt。
邪気があふれ出ているあの感じは、何度感じても気持ちが悪いものだった。
吉澤はハァッ、と溜息をつくと言った。
「確かにさっきは手も足もでなかったけど・・・。とりあえず一人で充分。」
「ふん・・・ぬかせ。」
Gacktは早速恐ろしいスピードで飛び出す。吉澤も一気に駆け出した。
『うぉぉぉ!!!』
息もつかせぬラッシュ。互いに一歩も退かない激しい攻防に、石川はボーっと
してしまった。
吉澤のワンツー。Gacktは両手で両方とも受け止め、拳を握りつぶしに行く。
しかしその前にGacktの身体は後方へと押された。
吉澤の両足が、Gacktのボディーに入る。しかしGacktは耐えた。
その場で踏みとどまり、吉澤を上へと投げる。Gacktは飛び上がり、
アッパーを繰り出した。風を切る鋭い音と共に、拳は吉澤の顔面へ。
197 :
27話:04/07/07 18:31 ID:oRF07lNu
ガン!!
吉澤は両腕でブロック。と同時に両足をGacktの頭に絡ませた。
足で強引に首を絞めに行く。落下しながら、Gacktは頭を地面の方へと下げる。
すると吉澤が下になった。吉澤は両腕を伸ばし、地面を受け止める。
衝撃が全て吉澤の腕へと。
「ぐっ・・・。」
吉澤はそのまま身体を大きく捻り、Gacktの頭を地面へと叩きつけた!
ドン!!!
地面にめり込むGacktの頭。しかしGacktはすぐに動き出した。
「化け物め!!」
吉澤がそれを見て叫ぶ。双方拳に力を込める。邪気と闘気。
二つが、激しくぶつかり合う時、
ドン!!!
周り一帯を激しい波動が包む。
198 :
27話:04/07/07 18:32 ID:oRF07lNu
「うわ!!!」
波動が部屋全体を広がる。
石川は急いで辻加護の側に寄り、バリアーを張った。
波動はかき消されたが、間もなくして吉澤が飛び込んでくる。
「え?」
辻がすぐに反応した。吉澤を受け止め、その場で踏ん張る。
辻は笑顔で言った。
「少しは役に立たないと・・・だめなのれす。」
吉澤も辻を見て笑った。そしてすぐに表情を険しくすると、石川に言った。
「やっぱタッグしかなさそうだね。でも、二人で力をあわせれば・・・。」
見つめあう二人。静かに頷くと、二人は飛び出した。
199 :
27話:04/07/07 18:33 ID:oRF07lNu
『LUNA』
Gacktは向かってくる二人に向け両手で魔法を放つ。
石川はそれを鷲づかみして吸い込んだ。
「!!」
Gacktが動揺している間にも、吉澤は動いている。
『Baby!Knock out!!』
連続攻撃。しかも『浪漫』のように、炎の属性を持っている。
Gacktはそれを受け止めると、そこから発火が始まった。
「ぐっ!!」
もがいていると、Gacktは真後ろから気配を感じた。
『真夏の光線』
石川はGacktの背中に掌を押し付け、直接それを放つ。
Gacktは再び全身火に包まれる。しかし今回も同じ様に敗れるわけには
いかなかった。Gacktは炎に包まれたまま、唱えた。
『Vannila』
200 :
27話:04/07/07 18:35 ID:oRF07lNu
迂闊だった。
吉澤と石川は表情をゆがめる。至近距離から攻撃を放つことで大ダメージを
与えた。そこまではいい。しかしよく考えてみればそれは、相手にも
チャンスを与えている事。
まさかあの状態から反撃が来ると思っていなかった二人は、あろうことか
中澤を死に追いやったあの技を、交わすことが出来なかった。
『あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!』
声にならない叫び声を上げ、二人は全身に強烈な邪気の衝撃を受ける。
「梨華ちゃん!魔力を一気に開放して!邪気を吹き飛ばさないと死ぬ!!」
痛みにのた打ち回りながら、吉澤の叫び声をなんとか聞き取った石川は、
言われた通りにする。
「あああ!!!!」
一気に開放された石川の魔力は、その場で爆発を起こす。
さっき生まれた波動よりも遥かに強い衝撃。その場にいた全員吹き飛ばされた。
201 :
27話:04/07/07 18:36 ID:oRF07lNu
「あ〜・・・・。」
同時に闘気を全て放出していた吉澤以外、Gackt、辻、加護はそれぞれ
三者三様の飛ばされ方をして、辻加護は意識を失いかけていた。
Gacktは受け流しながら逃げたためダメージはない。余裕そうな顔をして、
闘気、魔力を放出し全員の力が抜け切っている二人を見ていた。
「形勢逆転・・・・ってとこかな。」
ドン
「うっ!」
Gacktは表情一つ変えずに吉澤を壁際へと蹴り飛ばす。
石川の側まで転がると、吉澤は這うように石川の側へと行った。
「り・・・・か・・・ちゃ・・・・ん・・。だい・・・じょう・・・・ぶ?」
もはや虫の息の吉澤に、石川はそっと右手を添える。
右手と吉澤の身体の間が、やさしく暖かい光で包まれた。
「・・・あたしは、大丈夫・・・・。」
石川はなんとか起き上がると、壁に背中を向けよっかかった。
202 :
27話:04/07/07 18:38 ID:oRF07lNu
やはり邪気を開放しているGacktは強い。止め処なく溢れる邪気の量は、
相変わらず途方もない量だった。満月の光から常に邪気を貰っているのだから
当たり前かもしれないが、留まる事を知らない。
しかしこの開放を急に止める事は出来ないだろう。
Gacktの身体ではもう放出が当たり前になっていて、と言うよりも溜め込めば
Gacktの身体自らがパンクしてしまうから、止める事が出来ない。
そんなペースで放出し続けているということは、急に吸収を止めても、
放出はそう簡単に止まらない。
「何を考えている・・・。」
悩んでいる顔をしていたのか、Gacktは吉澤の顔を見てそう言った。
「早く決めておいたほうが、良さそうだな。正直今君達を殺してしまえば
怖いのは高橋くらいだ。」
203 :
27話:04/07/07 18:39 ID:oRF07lNu
Gacktがあのときのように、両手に邪気を蓄積し出した。
目は蒼く光り、身体が小刻みに震える。
「違う世界に、今度こそ連れて行ってやる。」
「まずい・・・どうする?よっすぃ〜・・・。」
身体に自由の利かない二人。意識が半分飛んでいる二人。
凌ぐ方法も、かわす方法も、今の四人にあるはずがない。
Gacktはそんな四人を見て笑った。
「死ね。」
To be continued…
更新お疲れ様です。
試験終わったんですね。おめでとう御座います。これから楽しい夏休みですか。いいですね〜。
作者様の書く文章は勢いがあっていいと思います。では、これからも頑張ってくださいね。
205 :
204:04/07/07 19:51 ID:0YAMIRVt
あ、そうそう >201の『闘気、魔力を放出し全員の力が抜け切っている二人を見ていた。』
~~~~~~
上の波線の部分は『全身の力』ですか。いや、もし違っていたら忘れてください。
206 :
28話:04/07/09 23:18 ID:j/OPxf1L
28.「暁に消ゆるは大蛇の煌き」
「死ね。」
Gacktは両腕を振り上げた。
「はぁぁぁぁ・・・・・・。」
二人は思わず目を閉じた。辻加護はまだ意識が戻らない。
Gacktは一気に、唱えた。
『Another world』
207 :
28話:04/07/09 23:19 ID:j/OPxf1L
しかし、Gacktの声だけがその場をこだました。
「?」
よく分からず目を開けると、Gacktは物凄い顔をして自分の掌を眺めていた。
辻と加護はここで目覚める。
「あれ・・・・・何してるんれすか?」
「さあ・・・。」
吉澤は曖昧に答えた。Gacktはだんだんと体が震え始めた。
「なぜだ・・・・・。」
『?』
「なぜだ!!!!」
大声で叫ぶGackt。
四人は思わずそれ以上下がれない壁に背中を思い切りよくぶつける。
208 :
28話:04/07/09 23:20 ID:j/OPxf1L
「なぜだ!!!邪気が溜まらない!それどころか・・・。」
Gacktの掌に溜まった邪気は、ドンドンなくなっていってしまった。
巨大な邪気は、萎む様に小さくなってゆく。
それでもGacktの身体は放出を続けていた。
ポタ・・・・ポタ・・・・。
「・・・・?」
Gacktが上を見上げると、水滴が目の中に入る。
「うっ。」
うろたえて顔を下げるGackt。それを見て4人は小さく笑った。
雨はすぐに強くなり、5人に降り注いだ。Gacktは改めて上を見上げた。
「何!!」
209 :
28話:04/07/09 23:21 ID:j/OPxf1L
「月がない!!!」
210 :
28話:04/07/09 23:22 ID:j/OPxf1L
月は分厚い雨雲に覆われ、光が全く見えない状況だった。
雨はドンドン強くなってゆき、光は完全に遮断される。
「よっし!!!」
四人はそれを見てガッツポーズをした。Gacktはそれを見てハッとした。
「まさかあの塔で!!くそ・・・・・あ・・!!!」
Gacktの身体が縮んだ。
フルパワー時の大きな身体から、いつもの身体へと変化。
そして間もなく恐ろしい邪気の波動がGacktの身体から放出を始めた。
「あ゛あ゛!!!コントロール・・・・出来な・・・。」
211 :
28話:04/07/09 23:24 ID:j/OPxf1L
212 :
28話:04/07/09 23:25 ID:j/OPxf1L
「ガックンはね?」
いっくんは言った。
「月の子特有の力なんだけど、満月の夜。月の光から常に邪気をもらえて
すふぉふぃ強くなっちゃふの。」
桃の缶詰を口にしながら、緊張感ゼロで話すいっくん。
それでも二人に与えるショックは大きかった。
「そ、それじゃあ・・・・・。」
その場で崩れ落ちる二人を見て、いっくんは思った。
この子達の可能性に、賭けてみよう・・・。
「勝機はあるよ。」
『本当ですか?!』
「立ち直り早いな〜。」
いっくんは二人を見て笑うと、真剣な表情で言った。
「うん。まあ出来るなら、だけどね。」
そう、出来るなら。
213 :
28話:04/07/09 23:26 ID:j/OPxf1L
「策は二つ。」
いっくんはジェスチャーを交えて説明を始めた。
「一つ目は、『時が来るまで待つ。』でもこれは厳しい。」
二人は何も言わず、首を振ることで返事をした。
この時の『時』とは、朝の事。朝になって、満月が太陽へと変わるまで、
耐えることが出来れば勝負が出来る。しかしGacktの満月時の力から考えて、
この策は始めから無理といえた。
しかしいっくんはもう一つ、とっておきの案を持っていたのだ。
「もう一つ。これを見て。」
いっくんは棚を引くと、中からは古帯びた巻物を取り出す。
それを広げ、いっくんは二人に見せた。
「これは?」
松浦はいっくんの目を見る。
「いいかい?」
いっくんは二人を見ると、二人は静かに頷く。
214 :
28話:04/07/09 23:27 ID:j/OPxf1L
「これは古来より伝わる、飢饉の村を救うために使われた呪文書なんだ。」
「飢饉?」
「そう、飢饉。」
少しして二人は手を叩いた。
「雨が降れば雲で月が隠れる!!」
「ぴったしいっくん!」
謎の返答に戸惑いながらも、二人は喜んだ。
「ただしこれは一人の力ではとてもじゃないけど無理。小雨が精一杯だね。」
「え・・・・。」
「だから、六方正の原理。知ってる?」
『はい!』
「これを使って一気に増幅させる。そうすれば大雨だって降らせられる。」
いっくんが笑うと、松浦は通信機に向かって呟いた。
「だそうです、矢口さん。」
215 :
28話:04/07/09 23:28 ID:j/OPxf1L
そして計画は始まる。
矢口はすぐに計画を立てた。
Gacktの持つ最も強力な全体呪文、『Another world』発生間に吉澤以外
逃げ出す事に成功。なるべく月に近づくため紺野のタワーで天高くへと上昇。
ここまでは計画通りそのものだった。ただここで問題が一つ発生する。
とりあえず呪文を全員で唱える事でこの呪文は完成するのだが、
全員強力勝つ同程度の魔力を常に出さなければならない。それなのに、
「石川少ない!!」
「もう出ません!!」
石川が想像以上に弱すぎた。
仕方がないから五人で五方正を組み、一人当たりの魔力の量を増やす事になった。
216 :
28話:04/07/09 23:28 ID:j/OPxf1L
「じゃあ行きます。おいらが読み上げるから、皆で復唱・・・ってなにこれ。」
「どしたの矢口。」
「とりあえず読むから、復唱お願い。」
矢口は首をかしげながら、読み始める。
「窓に映る私 すごくかわいくないわ」
5人とも「ん??」という顔をして復唱すると、じっと矢口を見た。
「だから書いてあるんだって!!」
矢口は嫌そうな顔で続ける。
「わざとウソついたりしたから・・・」
途中まで読み上げると、矢口は一瞬動きを止めた。
「どうしました?」
「・・・「会いたくない!」なんてwow yeah」
突然の不意打ち、『wow yeah』に5人は爆笑した。
「だから書いてあるんだって!!」
矢口は顔を真っ赤に染めていた。
217 :
28話:04/07/09 23:29 ID:j/OPxf1L
「今日の涙はしょっぱすぎるわ」
『今日の涙はしょっぱすぎるわ』
「見られたくないわこの涙」
『見られたくないわこの涙』
「ねえ晴れ通り雨のちスキ」
『ねえ晴れ通り雨のちスキ』
「OH YES!」
『OH YES!』
復唱後、爆笑により一時中断。
「I LOVE YOU FOR WHAT YOU ARE」
『I LOVE YOU FOR WHAT YOU ARE』
「スキスキスキ」
『スキスキスキ』
218 :
28話:04/07/09 23:30 ID:j/OPxf1L
「本当に効くんですかねこれ。」
紺野が空を見上げると、
ポタポタ・・・。
「嘘ぉぉ!!」
藤本は信じられない!
と言った顔をして空を見ている。雲があっと言う間に月を覆い隠し、
雨が六人を冷たくぬらしてゆく。
「ちょっとあさ美ちゃん、これ屋根とかないの?」
「まこっちゃん贅沢言わないで。」
六人は城の方へと次第に視線を移し始めた。
すると城の方ではGacktがのたうち回っていた。
219 :
28話:04/07/09 23:31 ID:j/OPxf1L
止め処なく溢れ続ける邪気。
Gacktは次第に頬がこけ始め、栄養失調のようにやせ細ってしまった。
相変わらず全くコントロール出来ないGacktは、遂に歩く事をやめ、
その場に倒れ込む。
「はぁっ、はぁっ、くそっ、ぁっ、ぁっ・・・。」
遂に声すら失ったGacktは、静かに、その場で目を閉じた。
To be continued…
220 :
えっと:04/07/09 23:33 ID:j/OPxf1L
更新終了です。
>>204-205 レスありがとうございます。
そうですね、部活で大部分予定は決まってしまいますがw
文章はまだまだ未熟ですが、誉めて頂いて嬉しく思ってます。
全員→全身です。ご指摘ありがとうございました。
更新お疲れ様です。
「ねえ晴れ通り雨のちスキ」爆笑しました。ということはあっちの曲もそのうちでるんですかね〜。
いや、帝のソロ曲ですかね?何が出るにしても楽しめそうです。
それでは、お体に気をつけて頑張ってください。
222 :
0−4:04/07/11 22:02 ID:8B1HnhQt
0−4「get out from the shell」
暗闇の砂浜に、一人寝そべっている男がいた。男は空で輝いている星空を
眺めながら、ただ時間が過ぎてゆくのも待っていた。
何もかも退屈で仕方がなかった。
でもそれから逃げ出す事を許さないこの島に、最悪の宿命を感じながら、
男は目を閉じた。少しだけ、眠りにつく。
223 :
0−4:04/07/11 22:03 ID:8B1HnhQt
―――――――――――――――――。
224 :
0−4:04/07/11 22:04 ID:8B1HnhQt
目覚めてもまだ悪夢からは逃れられない。これは自分が生きてゆく限り、
半永久的に、月の子の寿命である400年は続いてゆく悪夢だった。
そしてそれは、月の子が生まれた時から課せられた宿命でもある。
不意に、寝そべっている男の横に、長身の男が座った。
男は砂を掌で掬い上げると、手を開き、砂を指と指の間から流れさせる。
それを何度も繰り返しているうちに、寝そべっていた方の男が話しかけた。
「ガックン、ここ来てもいつもそればっかりだよね。」
長身の男はそう言われても一連の動作を繰り返した。やがてその手が止まると、
ガックンと呼ばれた男は拳を砂へと叩き付けた。
225 :
0−4:04/07/11 22:05 ID:8B1HnhQt
月の子はこの世界において、唯一外部との交流を完全に遮断していた。
というよりも、遮断されていた。『月の子』というのはその外部の人達が
付けたもので、詳しい知識もその大部分が憶測に過ぎなかった。
なんせ知る事が全く出来ないのだから。ただ外の人々も仲の人々も、
共通した言葉をこの島に付けていた。
『shell』
皆そう呼んでいた。それは貝のように中に閉じこもったまま一生を終える、
と言う意味。そして周りが海に囲まれているが、海(sea→s)を取ったら
ただの地獄(hell)という、皮肉も込められていた。
Shellに住む月の子達は、生まれてから誰もそこから出る事無く、生まれ、
育ち、やがて死んでゆく。
226 :
0−4:04/07/11 22:06 ID:8B1HnhQt
月の子達がshellから出られないことには理由があった。Shellは島なのだが
回りは空海共に凶暴なクリーチャーが多く生息していて、たとえ船を出してみても
襲われ誰一人として生き残れない。月の子は皆強力な力を持っているが、
数には対応しきれない。クリーチャーはピラニアのように血の匂いを嗅ぎ付け
ドンドン増えてゆく。そして逃げ出そうとする月の子を一人残らず食い尽くして
しまうのだ。それを皆知っていたから、誰一人としてここから抜け出そう
だなんて考えもしなかった。
「こんなところで終わっていいはずがない。」
Gacktはふと、呟いた。
「皆そう思いながら、結局このおぞましい地獄から抜け出せずに
終っていくのかな・・・。」
そう嘆くhydeに、Gacktは言った。
227 :
0−4:04/07/11 22:07 ID:8B1HnhQt
「こんな計画があるんだが、どうだ?」
228 :
0−4:04/07/11 22:07 ID:8B1HnhQt
Gacktの考えた計画はあまりに無謀で、破天荒なものだった。
Shellを抜け出し、一番の強国の軍に入る。そして暗殺等を駆使して地位を
上げていって王座に着き、shellの周りのクリーチャーを総力を上げて
絶滅させる。最初から最後まで、ひたすら滅茶苦茶な計画。
しかしhydeは、その計画とはいえない夢物語に魅力を感じた。
もしも、もしもそれが達成できたなら・・・。
夢のない島で夢を持つ事をやめていた青年にとって、それは非常に魅力的な
ものだったのだ。Hydeはその計画に乗ってしまった。
「でもどうやってこっから出るの?」
Gacktは軽く笑って言った。
「根性。」
229 :
0−4:04/07/11 22:08 ID:8B1HnhQt
「はぁ・・・・・はぁ・・・・・。はい・・・ど・・・大丈夫・・・・か?」
「・・・・・な・・・・ん・と・・・か・・な。」
満月の夜、力を全て解放し、フルパワーで一番近い沖まで飛ぶ。
無鉄砲なその計画は、全身傷だらけになりながらも成功してしまった。
ただし二人の体力の限界も近い。二人はそのまま瞳を閉じた。
230 :
0−4:04/07/11 22:10 ID:8B1HnhQt
この時期hydeは詞を書いていた。
抜け出した大地で手に入れたのは自由。
Maybe lucky Maybe lucky I dare say I’m lucky
レールの上に沿ってどこまで行けるかな
Maybe lucky Maybe lucky I dare say I’m lucky
(STAY AWAY)
hydeの当時の心境を率直に表した詞といえるかもしれない。
231 :
0−4:04/07/11 22:10 ID:8B1HnhQt
――――――――――――――――――。
232 :
0−4:04/07/11 22:12 ID:8B1HnhQt
「生きとるか?」
二人が目覚めたのはある民家だった。
二人は海辺で倒れている所をこの家の住人に発見され、介抱された。
この時助けたのが、
「うちは中澤裕子。裕ちゃんでええで。」
中澤だった。
暫く3人での生活が始まる。そこで二人が知ったのは、中澤と言う人間は
物凄い戦闘力を持った女だと言う事。
月の子でも上位に入る力を持っているといえるだろう。そんな中澤は、
二人の計画をまるで知っているかのように、一つ提案をした。
「アップフロント国の軍隊に入軍せえへん?」
二人にとって、この上なく都合のいい展開が待っていた。
その後は周知の通り、二人は戦で結果を残し、暗殺を繰り返し、今。
目標は目の前までに来ていた。
しかし目前で、夢は潰えた・・・。
To be continued…
233 :
えっと:04/07/11 22:14 ID:8B1HnhQt
更新終了です。
>>221 レスありがとうございます。
爆笑していただけてなによりですw
でもあれ実は「空を見ろよ」にする説も自分の中にあったので、
多分ほかの曲は・・・。
というよりもうすぐ終わります。あと3回です。
29,30、エピローグ。
更新乙です。
今回の話は月の子二人の生き様が垣間見えたようで、良かったです。そしてあの歌にはそういう意味があったのですね。
そろそろ最終回ということで残念ですが、最後まで頑張って下さい。
235 :
29話:04/07/13 22:28 ID:P1qQNzZU
29.「REVOLUTION」
走馬灯・・・・って奴だろうか。
ということは僕は・・・・終わりを迎えてしまうらしい。
Gacktは淡い意識の中、少しだけ目を開けた。
「・・・・・・・・?」
様子がおかしかった。
そこにあったのは雨雲や水滴ではなく、自分が確かに消し去ったはずの
天井。ゆっくりと右へと視線を移すと、そこにはタンスが2つ並んでいた。
よく見ると自分はベッドの中にいる。
「?!」
慌てて起き上がろうとしたが、身体が思うように動かない。
Gacktは訳が分からずにきょろきょろと辺りを見回すと、飯田と視線が
ぶつかった。
「やーっと、起きた。」
飯田は座っていた椅子から飛び上がると、Gacktの側までゆっくりと寄った。
236 :
29話:04/07/13 22:29 ID:P1qQNzZU
「何故だ・・・・。」
Gacktは極めて小さな声で呟いた。
「え?なんだって?」
飯田は強気な姿勢でGacktをその大きな目でじっと、睨むように見つめた。
かっとなったGacktは思わず叫ぶ。
「何故生かした!!!僕を!!何故!!」
飯田は少しも臆する事無く、表情すら変えずにGacktをただただ傍観者の
ように眺める。何も言わない飯田。それはGacktの心を更にヒートアップさせた。
「なんのつも・・うっ。」
Gacktは起き上がろうとベッドに手をつくも、その腕はGacktの身体を支える
事が出来なかった。力なくそのまま倒れこむGackt。
「死に掛けた男がそー簡単に動ける訳ないでしょ。抑制呪文しっかりかけたから。」
237 :
29話:04/07/13 22:30 ID:P1qQNzZU
飯田は腕を組み、ハァッと溜息を着く。
そしてベッドのすぐ横にある椅子に座りなおした。
「寝てなさい。カオリが看病してあげてるんだから、ありがたく思ってよ。」
そう言うと、飯田はすぐに視線が明後日の方向へと行ってしまった。
半分意識がないみたいになってしまった飯田に、Gacktは何も言えなかった。
それにしても、何故自分を助けたのだろう。Gacktは訳が分からなかった。
後藤を殺し、中澤を殺し、自分達を死のギリギリまで追い詰めた自分を、
生かした理由・・・。Gacktにはそれが理解できなかった。自分なら絶対に
とどめを刺している。それなのに革命軍は、自分を生かした。
「理解出来ない・・・。」
Gacktは頭を抱えた。
238 :
29話:04/07/13 22:31 ID:P1qQNzZU
「何で生かしたかって?」
眠りにつこうと思っていたGacktは、いきなり話しかけられ目を開けた。
飯田はGacktの方を振り向き、言った。
「あんた達は裕ちゃんを殺した。」
「・・・・・・・・。」
「ごっちんを殺した。」
「・・・・・・・・。」
「hydeはなっちを殺した。圭ちゃんも死んだ。」
「・・・・・・・・。」
Gacktは何も言わなかった。何を言われてもひたすら黙る気だった。
「その罪は、死を持って償えるほど軽いものじゃない。」
239 :
29話:04/07/13 22:32 ID:P1qQNzZU
「・・・・・・え?」
ついさっきまで絶対に黙る気でいたのに、Gacktは思わず声を出す。
膝の前においてある飯田の拳がプルプルと震える。飯田は立ち上がった。
「生きろ!!!!」
飯田は思い切り叫ぶ。
「生きて、この国のために働く事で罪を償え!!!」
「・・・・・・・・。」
Gacktは何も言わなかった。今度は何も言えなかった。
ただ心の奥底に強い衝撃を受けた気がする。飯田は乱暴に椅子に座ると、
「あんた。裕ちゃん殺した後、言ったんだってね。
『ごめんね、もうすぐ終わるよ。』」
「!!それは・・・。」
「その時矢口思ったんだって。こいつを絶対に倒す。でも殺さない・・・・って。」
飯田はもう一度立ち上がると、ドアの方へと歩き出した。
ドアノブに手をかけて回し、外へ出る。
そしてドアを閉める直前に、飯田はGacktの顔を見た。
「矢口に感謝しろよ。」
240 :
29話:04/07/13 22:33 ID:P1qQNzZU
―――正午。
半壊してしまった王の城。ここでこれから歴史的な出来事が行われようとしていた。
Gacktを倒した後、すぐに兵を降伏させた。
そして朝、逃げていた貴族が帰ってくる。飯田を先頭にそれを出迎え、
殺したりもしないし何もしない事を告げた。
「(それがつんくへのせめてもの罪滅ぼしかな。)」
重税の裏にあった、国のためにしていた貯蓄と言う真実。
知らなかったとはいえ、革命軍としてつんくを忌み嫌い、戦い続けていた事実は
消せない。もう死んでしまったつんくに直接何かすることは出来ないなら、
その周りの人に、せめて・・・。革命軍の考えは一つだった。
その後、革命軍は大慌てで準備を始めた。『革命宣言』のための。
正午、城の前の広場に国民を呼び出す。
それまでにある程度城を修復しなければまずい。
241 :
29話:04/07/13 22:34 ID:P1qQNzZU
「あたしが直しま〜す。」
「却下。ピンクにするだろ。」
0.5秒の返答に石川はその場ですぐに崩れ落ちる。
「しょーがない、松浦と高橋。頼んだ。」
『はい!』
飯田は二人の返事を聞くと、大慌てで駆け出した。
その時藤本は松浦を不安そうに眺めていた。
「(あの子もピンクにしちゃうのよ・・・・。)」
風呂場の泡を思い出しながらほんの小さな声で呟く。
飯田は二人が去っていったのを確認すると、大慌てで駆け出した。
「カオリどうしたの〜?」
「原稿。ビシッと決めないとまずいっしょ。」
飯田は振り向いていた首を前へ戻し、再び走り出した。
242 :
29話:04/07/13 22:35 ID:P1qQNzZU
正午。
国の各所にはモニターが設置され、その全ては城の広場を映し出している。
城の広場は遠すぎる、という地方の国民は、大概このモニターを眺めていた。
木こりの男は、呟いた。
「なにごとだい。」
数千という群集が、これから何を聞かされるか何も知らされずに待っている。
モニターのアングルが、城のバルコニーの方へと移ってゆく。
そこにはいつもなら立っているはずの二人の男も、鬼神もいなかった。
その代わりに若い少女達がズラリと並んでいる。
そして太陽が真上から広場を照らしたとき、少女の中で一番長身の、
20過ぎくらいの女性が3歩、足を踏み出した。
ざわつく群衆。
それはモニターの前も一緒だった。しかし、
パチンッ!
女性が指を鳴らすと、不思議とざわめきは静まり、音一つしなくなった。
それはまるで、魔法のようだった。
243 :
29話:04/07/13 22:36 ID:P1qQNzZU
「今日皆さんをこういう形で集まっていただいたのは他でもありません。」
飯田はおぼろげの記憶を必死に辿りながら話した。
「私がここに立っている事から、既にお察しの方も多いかもしれません。」
再びここで一テンポ置く。
その緊張した様を見ながら、矢口はふと、思った。
「(裕ちゃん・・・・。)」
涙が出て来そうになった。でも群衆の前で涙を流すわけにはいかない。
矢口は目を擦り、無理やりそれを抑え込んだ。
「ちくしょぉ・・・。」
矢口はうつむくと小さな声で、そう呟く。
その拳は固く握られ、小刻みに震えていた。
244 :
29話:04/07/13 22:37 ID:P1qQNzZU
「昨晩私達革命軍は城に突入し、王の首を取りました。」
それを聞いた瞬間、群衆はワッと湧いた。
本当はhydeが暗殺したのだが、その細かい詳細は貴族にのみ伝えた。
飯田は本当の事を最初から言うつもりはなかったのだ。自分達が倒した。
その方が形的にもしっくり行くし、Gacktとhydeの話をするのは時間の無駄。
飯田はもう一度指を鳴らすと、最後に一言、言った。
「只今を持って私飯田圭織を国王とし、ここに革命を宣言します!!」
群衆はまるで大爆発を起こしたみたいに騒ぎ出した。
中には嬉し涙を流す者まで、飯田の視界に入ってくる。
飯田はなんだか複雑な気持ちになった。つんくは国民に重税を強いて、
嫌われていたが別に私利私欲のために使ったりは、一切しなかった。
そればかりか、むしろ国のために金を貯めていたのだ。
何も知らない自分達が倒し、その金を使ってつんくの作ろうと思っていた
公共施設を建設する。国民は自分達の事を英雄として称えるだろう。
245 :
29話:04/07/13 22:38 ID:P1qQNzZU
「カオリ、また交信してんの?」
矢口に話しかけられ、飯田はハッとした。
また随分と考え込んでいたらしい。
「ごめん。」
飯田は矢口にそう一言だけ告げると、天を見上げた。
「・・・・・・・。」
飯田は空に向かって一人、敬礼をした。
246 :
29話:04/07/13 22:38 ID:P1qQNzZU
――――――――――――――――――。
247 :
29話:04/07/13 22:39 ID:P1qQNzZU
吉澤は一人、昨晩Gacktに連れられ訪れた隠し部屋にいた。
一つだけ気になった事があり、それを確かめるためである。
吉澤は四桁の数を必死に思い出していた。
「っと・・・なんだっけな〜。」
「1029。」
「え?」
いきなり話しかけられ、吉澤は慌てて後ろを振り向く。
そこに立っていたのは王家のたいせー。
「ちょっとくらいちょろまかしてもバレないからさ。いいよ。」
「いや、そういうつもりじゃないんですけど。気になる事があって。」
「え?」
たいせーは意外そうな顔をして、言った。
248 :
29話:04/07/13 22:40 ID:P1qQNzZU
「昨日見て気づいたか。」
「はい。いくらなんでも、多すぎますよね。お金の量。重税の割に
そのほとんどを貯めていたのが分かります。自分たちの暮らしを圧迫する
くらいに。これって・・・どういうことですか?」
たいせーは少し、嫌そうな顔をする。
「すれ違い・・・ってやつかな。」
「すれ違い?」
「ああ。」
たいせーは話した。
つんくがそれほどまでに金を溜め込んでいた理由を。
それを聞いた吉澤は驚き、慌てて駆け出した。飯田の元へ。
To be continued…
249 :
えっと:04/07/13 22:42 ID:P1qQNzZU
更新終了です。
>>234 レスありがとうございます。
ただ自分がラルク好きなのを見せているだけな気がしてきましたw
最後までどうかお付き合いの程を。
更新お疲れ様です。
更新乙〜
そろそろラストか
252 :
30話:04/07/16 22:40 ID:FZHP0wMi
30.「虹の架け橋」
「ガックン行くよ。」
Gacktはある朝、飯田にいきなりそう言われた。
訳も分からずGacktは聞き返す。
「?どこに?」
すると飯田は更に訳の分からない事を言い出した。
「ガックンはあたしと一緒に最北部。一番近いから。」
「え?何が?」
もうこの際ガックンと呼ばれているのは流すとして、
話が全く飲み込めなかった。Gacktの気持ちがそのまま顔に出たのか、
飯田は言った。
「shellを解放するよ。」
253 :
30話:04/07/16 22:41 ID:FZHP0wMi
254 :
30話:04/07/16 22:41 ID:FZHP0wMi
「すれ違い・・・ってやつかな。」
「すれ違い?」
「ああ。」
たいせーは少しだけ切なそうな表情を浮かべながら答えた。
「つんくは、全部分かってたんだよ。Gacktの計画も、何もかも。」
「え?!」
吉澤は隠し部屋内を響き渡るほど声を張り上げた。驚きを隠しきれない。
吉澤は混乱して挙動不審になってしまった。
「落ち着け。つんくはな、この莫大な量の金を、二つの使い方に分ける
つもりだったんだ。」
「二つの・・・・。」
「一つ目はお前らが知っている通り、公共施設建設だな?もう一つが問題だ。」
255 :
30話:04/07/16 22:42 ID:FZHP0wMi
たいせーは悲しそうな表情をずっとしている。
つんくの死が無念で仕方がないのかもしれない。たいせーは少しだけ言葉を
止め、ためを作った。そして暫くしてその重い口を開く。
「月の子救助計画」
「!!」
吉澤の表情は変わった。
自分たちと、Gacktたちがした事がいかに愚かだったか。いかに理不尽に
命を奪ったかを知らされた気がした。吉澤だって月の子は本来shellの中から
出られないことくらいは知っている。Gacktとhydeはどうやって出てきたか、
考えもしなかったがまさかつんくがそれを読んだ上で重税を強いていたとは・・・。
256 :
30話:04/07/16 22:44 ID:FZHP0wMi
つんくは公共施設建設資金貯蓄と同時進行で「月の子救助計画」を立て、
委員会を押し切り可決まで持っていっていたのだ。
その方法とは次のようなもの。
Shellの周りに柱のような装置を6つ。円を描くように設置。お馴染みの
六方正の原理だ。その装置は魔力を増幅させる装置であり、そこから6人の
術者がそれぞれ魔物消滅呪文を放つ。本来魔物消滅呪文は家にかけ、触れた
クリーチャーを死に至らせるものだが、術者によっては村単位、街単位で
かけることが出来る者もいる。
その者達を集め、装置と六方正の力を借りれば・・・。
魔力は増幅され、シェル全土に魔法が駆け回る。
しかしこの計画を立てる上でネックとなったのが、術者の召喚だった。
かなりの魔力が必要で、更にこの呪文、術者の力量以上の魔物には、
決して効かなかった。そのランクの術者を集めるのは困難を極める。
しかし今なら。
革命軍内で魔法を武器とするメンバーをそれぞれ配置すれば。
それは充分可能と言える。
257 :
30話:04/07/16 22:45 ID:FZHP0wMi
吉澤は話を聞いた後、すぐに飯田にその事を告げた。飯田は血相を変えて
すぐにその装置制作に乗り出す。もう可決されていた事からつんくの
GOサインが出次第だったこともあり、装置はすぐ制作開始された。
設計図も何もかも出来ていた上、飯田が身体を張り瞬間移動の連発で
製作者を移動させたため、あっと言う間に装置は出来上がった。
「てなわけで移動だ。ガックンしっかり捕まってなよ。」
Gacktは言われるがままに飯田の手をギュッと握った。
「行くよ〜。」
飯田がそう言った瞬間、目の前の景色が一瞬にして変わった。
「・・・・。」
「さてさて、他の皆はどうしてるかな〜。」
飯田はモニターに手をかけた。
258 :
30話:04/07/16 22:48 ID:FZHP0wMi
紺野は柱の中で目を瞑り、今は亡き先輩の事を想っていた。
「後藤さん・・・・。」
松浦と自分を庇い、犠牲となってしまった、革命軍のエース。
密かに後藤に憧れていた紺野は、未だに後藤の死を信じきれずにいた。
しかも今、その後藤の命を絶った張本人のために、自分は動いている。
それはにわか信じがたい事だった。それでも自分は今、柱の中にいる。
「後藤さん、すみません。でも・・・・もうすぐ終わります。」
紺野はギュッと両手を握り締め、胸に当てた。
259 :
30話:04/07/16 22:50 ID:FZHP0wMi
一方高橋は、保田の事を想っていた。自分のせいで死んだ保田。
自分がスパイなんてしていなければ・・・。
弱みを新垣に握られていなければ・・・。
考え出したらキリが無かった。
「保田さん、本当にごめんなさいやよ・・・・。」
高橋は俯くと、溜息をついた。そしてもう一回、独り言を呟く。
「絶対に成功させるがし。・・・見ていてください、保田さん。」
260 :
30話:04/07/16 22:51 ID:FZHP0wMi
自分がもし注意深く集団を見ていたら、安倍は死ぬ事はなかったはずだった。
浸食も食らう事はなかったはずだし、当然今もピンピンしているはずだった・・・。
そう考えると悔しさでやり切れない気持ちになる。
もしかしたら、他の皆も。特に辻は負い目を物凄く感じているかもしれない。
「安倍さん・・・・ごめんなさい。」
藤本は目を瞑り、黙祷を捧げた。
その閉じた瞳から涙が流れるまで、そう時間は要らなかった。
「最後まで、見守っていてください。」
261 :
30話:04/07/16 22:52 ID:FZHP0wMi
飯田は中澤を想い、黙祷を捧げていた。
「(裕ちゃん・・・・・。)」
Gacktに悟られぬよう、ひっそりと。
中澤の死ぬ前のGacktとの戦い、本当に楽しそうに戦っていたのは今でも
鮮明に頭に焼き付いている。あの激戦の中ふと見せた、中澤の笑顔。
革命軍の中でもそんなに良い笑顔をみせた事は一度たちともなかった。
もしかしたら、中澤は最後に幸せに逝けたのかもしれない。
長い間抑制されていた身体が一気に解放され、フルパワーで好きなだけ
動いた。悔いはないはずだ。でも、もしも悔いが残っているなら・・・。
「(残ってるなら、カオリが裕ちゃんの遺志を継ぐから。)」
飯田は固めた意志を更に固めるかのように、拳を強く握った。
262 :
30話:04/07/16 22:54 ID:FZHP0wMi
松浦も紺野と同様、後藤の事を想っていた。松浦の場合どちらかというと、
無念の方が感情を支配していたが。自分がもしあそこでGacktに敗れさえ
しなければ、もしかしたら3人で逃げられたのではないだろうか?
不可能に近いのは分かっている。でも可能性がなかったとは言い切れない。
自分の無力さに松浦は怒りを覚えると共に、今Gacktの最終計画通りに
動いている自分が悔しかった。だから松浦は考え方を変えることにした。
「(あたしはGacktのために動いているわけじゃない。
Shellに住む全ての人々のため、あたしはやるのよ・・・。)」
松浦は一瞬だけ目を閉じると、一息ついた。
263 :
30話:04/07/16 22:54 ID:FZHP0wMi
この流れから来ると間違いなく石川も誰かを想っているはずだが、
石川は違った。
「はぁ〜・・・・。」
溜息をつきながら、柱から外の景色をただ眺めている。
そして不意に、呟いた。
「よっすぃ〜かっこよかったな〜・・・。」
その表情は何故か少しうっとしていた。
264 :
30話:04/07/16 22:55 ID:FZHP0wMi
「みんな、準備はOK?」
『はーい!』
飯田が操る通信機を見て、Gacktの心は少しだけ痛んだ気がした。
飯田は他の5人の返事を確認すると、説明を始める。
「目の前に斜めに切られた円柱状の筒みたいのがあるでしょ?
それに掌を当てて。」
飯田はそう言うと、自らの手も筒に当てた。筒が一瞬だけ光る。
『おぉ。』
他の5人は口々にリアクションを打った。
「せーので魔力放出するよ。」
『また調節するんですか?』
「藤本良い質問。ありったけの魔力を放出しちゃって。均等にする必要は
ない。出せるだけ出さないとshell全土に消滅呪文行き渡らないよ。」
言い終えると飯田は目を瞑る。すぅーっと息を一息つくと、
「せーの!」
265 :
30話:04/07/16 22:56 ID:FZHP0wMi
266 :
30話:04/07/16 22:58 ID:FZHP0wMi
「本当に・・・・・クリーチャーが・・・。」
Gacktは信じられないと言った表情で、もう二度と踏めないかもしれないと
思っていたshellの大地を噛み締めた。何もかもが懐かしく思える。
そして今日から、shellの鎖国は解かれるのだ。しかし月の子達のうち
何人がそれに気づいているだろう。
「shellを治めている王はいないの?」
「いる。テッちゃん。」
「テッちゃん?」
なんかあだ名無駄に多いなぁ、なんて飯田は思いつつ、Gacktの案内の元
そのテッちゃんが住む家へと向かった。残り5人は柱に放置プレー中なのが
少しだけ気がかりだったが、特に問題はないだろう。
267 :
30話:04/07/16 22:59 ID:FZHP0wMi
しばらく談笑が続いた後、飯田はパチンッと指を弾いた。
革命宣言をしたときのように、二人は静かになる。
「そういえばあんた誰だ?Gacktもそうだけど、どうやって入ってきたんだ?」
tetsuは極力冷静を装おうとしているのがよく分かる顔だった。
やはりリーダーとしてここで慌てるわけにはいかないのかもしれない。
「今日はその事で報告に来ました。Shellを取りまくクリーチャーを、
全て消滅させました。」
「・・・・・・え?」
tetsuは一瞬理解できずに首をかしげた。
「私達がここにいるのが、何よりの証拠だと思います。」
飯田が最後に一言。tetsuの表情は見る見るうちに変わってゆく。
「マジで?!」
希望に満ち溢れた、笑顔だった。
268 :
30話:04/07/16 23:00 ID:FZHP0wMi
hydeに死について知らされると、tetsuは残念そうな表情で、
俯いてしまった。
「そっか・・・・・。」
tetsuは天を見上げ、呟いた。
「でもあいつらしいのかもな・・・・。」
「え?どういう意味ですか?」
飯田はtetsuに聞いたが、tetsuは曖昧に笑って何も答えなかった。
この歴史的出来事がshellと世界を初めて繋いだ架け橋という由来から、
shellと少しだけもじり、L’arc~en~cielと言われるのは、
もう何百年か後の事。
To be contined…
269 :
30話:04/07/16 23:03 ID:FZHP0wMi
更新終了、次回エピローグ。ツッコミ所満載なのはお見逃しくださいw
>>250 レスありがとうございます。
今回は本当にちょっと疲れました(汗)
いや何がって、それは後書きにでも・・・。
>>251 レスありがとうございます。
そうですね、もう次でラストです。
最後までどうかお付き合いを願います。
多分最後の更新は火曜日くらいに行うと思います。
更新お疲れ様です。最終回ですか。残念ですが仕方がない。ということで次回更新楽しみに待っています。
エピローグ
『ケーキショップ NATUMI』
「いらっしゃいませー!ご注文は何になされますかぁ?」
辻は安倍と一緒に開く予定だったケーキショップを開いていた。
最初のうちは苦しかったものの、親友加護の助けもあってか今は順調。
特にNATUMIケーキの売り上げは右肩上がりだった。
ただ一点。
二人には不満な事があった。
「ちゃんとやってるか〜?」
「やぐ・・・店長・・・。」
二人は軽く溜息をついた。
「なんだよ!言ってるだろ!これは親友として!」
『ケーキショップ NATUMI』は、いつも楽しく賑やかだ。
ガチャッ。
「あ、おかえり〜!御飯にする?お風呂にする?それともぉ〜」
「御飯。」
「あ、ひどぉ〜い。1回くらい言わせてよぉ。」
石川はまるで新婚ホヤホヤの主婦のように吉澤に抱きつく。
「結局こうなんだよなぁ〜・・・。」
「なんか言った?」
「いや?」
結局二人は何だかんだ言って未だに一緒に住み続けている。
「この光魔法と闇魔法は相互に作用し合い・・・。(まこっちゃん)」
紺野のアイコンタクトに気づいた小川は、スライドの写真を変えた。
「このように全く新しい属性を持つ呪文が精製されます。詳しい事はまだ
研究段階なのでなんとも言えませんが、これはおそらく・・・」
暫く紺野の力説が続く。このまま3分ほど話すと、
「以上で私の研究論文の発表を終わります。」
パチパチパチパチパチパチ・・・・・。
「あ〜、疲れたぁ。」
紺野は椅子に座り込むと、大股を広げその間に手をペタッと置いた。
「大学って緊張するね。」
小川は少しだけ挙動不審にきょろきょろと部屋を見回す。紺野はうわごとの
ように呟いた。
「博士号取るぞ〜。」
「いい?まず頭の中で火をイメージするの。」
松浦は若干上を見上げながら話した。
「そのイメージを段々膨らませていって。」
「はい。」
生徒は目を瞑り、悩ましげな表情を浮かべた。
「あ、そんなに固くならなくていいから。」
生徒はそのまま暫く目を瞑った後、掌を広げた。すると掌から炎が飛び出す。
「!!」
「やったじゃん!」
藤本が嬉しそうに肩を叩く。
「可愛く出来ました。」
生徒は満足そうに炎を眺めていた。
「エリの方がかわいいもん!」
横のもう一人の生徒も同じ様に念じ、こちらは氷を呼び起こしていた。
「さゆ!」
「エリ!」
「さゆ!」
「エリ!」
「本当にごめんなさい。こんな二人じゃけん、許して欲しいっちゃ。」
「田中ちゃんも苦労するねぇ。」
田中ちゃん、と呼ばれた生徒は軽く二人にお辞儀をする。その時だった。
バタン!!
「ちょっと二人とも、何勝手に教えてるの!!」
飯田登場。
「いやだって、王は趣味でたまに来ますけどここ美貴達の持ち場ですよ?」
「いいじゃないの。王なんてかたっ苦しい言い方はしないでよ。」
遅れて高橋登場。
「飯田さん!またここに来てるんですか?!
魔法ならあたしが教えますから!」
「美貴が。」
「あたしが。」
「あっしが。」
「あーもう!!カオリが!」
生徒達3人は軽く頭を抱えていた。くだらない喧騒が続く中、ふとした瞬間に
高橋は思い出したように呟く。
「あ、そういえば今日やよ。」
『あ!!!』
「ごめんごめん!!」
遅れての登場の5人に、他のメンバーは少し不満げな表情を浮かべていた。
「うち店閉めてるんだからね!」
“うち”という言葉に辻と加護は軽く反応しつつも、何も言わない。
吉澤と石川は相変わらず中良さそうに寄り添っている。
紺野と小川は少しだけ痩せたような印象を、飯田は感じた。
とりあえず、全員揃った。
「じゃあ行こうか、会いに。」
12人の元革命軍メンバーは、城の南門に集合した後ゆっくりと歩き出した。
目指すは静かなあの場所。自然の音と自分達の声だけが奏でる静寂の空間を
求めに。12人は12人全員見事なまでに違う表情だった。だが不思議と
心からの笑顔を浮かべる者は一人もいない。
それに気づいた矢口は大きな声で言った。
「ほら、笑った笑った!!これから会いに行くってのに、そんなしけた面
じゃみんなに合わせる顔ないって!」
言いながら矢口は笑みをこぼす。
ね?と小さく呟くと、全員ニコッとそれに返した。
そうだ、笑って会おう。笑って会わなきゃ。
12人の行進は、次第に笑顔で溢れたものへと変わった。
そして遂にその場所に到着する。飯田は一人の前に立ち、
「裕ちゃん。」
そのまま横へと歩きながら名前を呼んでゆく。
「圭ちゃん。」
「なっち。」
「彩っぺ。」
「明日香。」
「みっちゃん。」
「ごっちん。」
「・・・・沙耶香。・・・せーの。」
『久しぶり!』
fin.
280 :
えっと:04/07/20 17:42 ID:bMTSGw1x
「1作目コメディで行ったから、次は真面目に行ってみよう。」
まず最初に、最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
これだけ先に言わせてください。
上の「」が『REVOLUTION』を書き始めたきっかけでした。
『Wonder Neighbor』でコメディタッチに最後ちょびっと恋愛を絡める形で
話を作ってみたから、次はアンリアルをやってみよう。
軽く考えて構想を練り始めました。
ちょうどその頃辻豆さんの『ハッピーエンド』を読んでいまして、
「じゃあ剣と魔法の世界の話を考えよう」
と思い気がつくとこんな話になっていました。
Gacktとhydeの『月の子』の由来は二人の主演の映画『Moon Child』から
もじらせて頂きました。映画自体、見たこと無いのですが(ぉ)
響きがいいなぁと思い、敵キャラにちょうど悩んでいたから採用。
Gacktからうたばんへリンク。結果あんな無茶苦茶な敵達になってしまい、
逆に悩みました。そのせいでシリアスに行ければと思っていたのに序盤
強引なギャグばっかりになってしまったし・・・。
281 :
えっと:04/07/20 17:43 ID:bMTSGw1x
そう言う意味では後半は『Wonder neighbor』を読んでくださった方には
「なんだよこれ」な風に写ってしまったかも分かりません。
ていうか自分でも後半シリアスを保てなくていっくんとか出してしまったんですけどねw
最後tetsuを出すか出すまいかは悩みました。話のプロットが出来た当初
結末に大分悩み、取ってつけたようにGacktを生かしたのですが、
shellの処理をどうにかしないとすっきりしたエンディングにできない事に
気がつき慌ててプロットを練りました。
その時に単に「shellは解放された」で終わるんじゃなく、
Gacktがshellの誰かに報告をした方がいいんじゃないか?と思い、
「でも『Moon child』見てないからキャストぜんぜん知らないし、
いいやラルクで。」
なんていう相変わらず軽いノリでtetsu登場となりました(汗)
282 :
えっと:04/07/20 17:43 ID:bMTSGw1x
『Wonder neighbor』の時も書いて、使い古しみたいで悪いのですが、
本当にここまで書けたのは読者様方のおかげです。
では最後にもう一度、『REVOLUTION』を読んでいただき、
ありがとうございました。
283 :
えっと:04/07/20 17:45 ID:bMTSGw1x
>>270 レスありがとうございます。
これにて終了となりましたが、どうだったでしょうか?
残念に想っていただける事は、作者冥利に尽きます。
284 :
えっと:04/07/20 17:52 ID:bMTSGw1x
285 :
えっと:04/07/20 17:58 ID:bMTSGw1x
286 :
えっと:04/07/20 17:59 ID:bMTSGw1x
やっぱり不恰好だ_| ̄|○
最終回更新お疲れ様でした。本当にもう終わってしまうんですね。
いつも更新が待ちどうしかったです。しかも作者様、更新が早いから余計期待してしまうんですよね。
本当に作者様の小説に出会えて幸せな時をすごせました。
と言うことで、m-seekのどこで書かれているのか教えてください。お願いします。
完結乙です!
長い間楽しませていただきました。ありがとうございました。
289 :
えっと:04/07/27 00:17 ID:OGEX609y
とりあえず返レスを。
>>287 レスありがとうございます。
そこまで誉められるとなんて言っていいのやら・・・・。
M-seekは金と空に一つずつスレを持っています。
名前は当然えっとではありませんが、一応共通点はありますので、
頑張って探してみてください。ですが作風が全く違うので注意が必要です(汗)
>>288 レスありがとうございます。
長い間お付き合い頂きありがとうございました。
こちらから礼を言わせていただきたいくらいです。
次回作の方は完全に未定です。M-seekとの兼ね合いで決まる可能性がおそらく高いですが、
次はどんなジャンルを書こうか・・・なんぞ考えております。
・・・でも自分は真面目なものよりコメディタッチの方が性に合うのかもしれません。
290 :
287:04/07/27 10:19 ID:zi6TxTGn
>>289 よ〜し、さがしちゃうぞ!どちらも37〜8スレしかないし。(酢
狩狩の方も楽しみにしてますね。
あれも更新が早くて良いんですが、あまり無理をなさらずに部活頑張ってください。
291 :
えっと:04/07/28 17:22 ID:9CzMv03S
見つかりましたか?
292 :
287:04/07/28 18:05 ID:u0HOvFwx
>>291 見つけましたけど、m-seekってモリタポ効かないから大変
で、空版と金版一つづつですよね?
293 :
えっと:04/07/28 18:39 ID:9CzMv03S
そうです。
ところでモリタポってなんですか?
294 :
287:04/07/28 18:49 ID:u0HOvFwx
295 :
えっと:04/07/28 21:01 ID:9CzMv03S
なるほど、解説どうもです。
作風全く違う上に暴走コメディにスポーツという取り合わせ。
REVOLUTIONのようなタイプの話が好きならもしかしたら合わないのかもしれませんが・・・。
どうでしょう?
いやいや、面白いですよ。ジャンル固定したら、かえってつまらないですし
だから、狩狩のアレも読んでます。ってアレは小説じゃないか
297 :
えっと:04/07/28 23:24 ID:9CzMv03S
ありがたきお言葉です。
とりあえずこっちで行く書くかは未定ですが、しばらくは飼育と狩狩メインに
なりそうです。
脱稿お疲れ様でした。
いつも更新楽しみに読んでました。
一つ苦言を呈させていただくと、2スレ目に入ったあたりからパワーバランスが著しく崩れてかなり萎えました。
ん〜・・・ドラゴンボールの初期から最後までを凝縮した感じと言いますか。。。
トータルでは大変好きな話でしたのでかなり残念だったです。
一読者の戯言ですが、少しでも今後の参考になればと思いまして。
本当にお疲れ様でした。
ほ
300 :
287:04/07/29 09:44 ID:cDu7KUUU
>>297 そうですか、部活ともども頑張ってください。
ところで、作者様の部活ってやっぱり空版のアレですか?やけに専門用語に詳しいなと思いまして
301 :
えっと:04/07/29 13:16 ID:R/9VhV33
>>298 レスありがとうございます。
パワーバランスの崩れですか、それは自分でもかなり反省しております。
上手く話が進められないためセルの形態変化みたいなノリでやって
しまい後悔・・・。バトル物初めてにして初めての失敗です。
今後に生かせればと思うので、批評、ありがたく頂戴いたします。
>>300 そうです、空版の部です。走りまくっておりますw
302 :
ねぇ、名乗って:
テスト