54 :
ねぇ、名乗って:
「ヒントください、ヒント」
「いやいや。ノーヒントで」
「えー」
私は写真集をじっと見詰めた
有力候補は、石川さんあたりだけど・・・
いや、でも案外飯田さんみたいな大人っぽい美人がタイプなのかも
ま、まさか・・・いくらなんでも道重ちゃんってことはないよね
「決まった?」
「・・・・一応」
15人の集合写真
私はちょうど真中に映るその子を指差した。
「この子で」
「ファイナルアンサー?」
「ファ、ファイナルアンサァ・・・」
「・・・・・うん」
「正解!?」
「ブー。残念」
がっくりと肩を落とす。
何だったんだ、さっきの「うん」って。
55 :
ねぇ、名乗って:04/03/04 01:18 ID:+4zy1IJb
「正解は、この子!」
「・・・・・・・亀井ちゃん?」
「若き日の宝野アリカに似てるよね」
知らない。
「うーん。誰かに似てるなぁ」
「その子も14歳ですよ」
そういうと、
よっすぃさん(仮)はえぇ!?と驚いた声をあげた
「なんだ、ガキさん同い年か」
「まぁ」
「最近の子は発育いいなぁ」
「・・・」
「あ、いや、冗談だよ、冗談」
親父くさい発言まで吉澤さんに似てる。
いや、吉澤さんはまだ「女」なんだから許せる範囲だけど
今度亀井ちゃんを家に呼ぶ約束してたけど
当分の間はよした方がいいな。
56 :
ねぇ、名乗って:04/03/04 01:19 ID:+4zy1IJb
「というわけで」
「え?」
「ビーフストロガノフはお預けってことで」
「そ!そんなぁ」
不満たらたらの私を無視して
鼻歌まじりによっすぃさん(仮)はキッチンへ消えてった。
残された写真集をふと手にとって
少し眺めてみる
亀井ちゃん、か。
わからなくはないな。可愛いし。
女の子っぽくて、天然で、面白いし。
どんどん人気も出てきてるし。
私と同い年で
でも、私の後輩で。
やっぱりなんか、複雑だ。
57 :
ねぇ、名乗って:04/03/04 01:22 ID:+4zy1IJb
「ガキさん、お〜い、ガキさーん」
よっすぃさんの呼ぶ声ではっと気がついた。
「ご飯できたYO」
「あ、はいはい」
変な座り方をしてたせいか、足がいたい。
写真集を元通りファイルに直して
よっこいせ、と起き上がる。
すると何やら
終始見ていたらしいよっすぃさん(仮)は真剣な顔で、
「・・・・・・ガキさん、最近思ってたんだけどさ」
「何ですか」
「ガキさんってさ」
・・・何。なんか神妙な顔つき。
吉澤さんの顔で、そういうの勘弁してほしい、ほんと。
それに私は
そういうのに悉く慣れてなかったりするわけで。
生唾をごくんと飲み込んだ。
「ガキさんって、オバさんっぽいとこあるよね」
58 :
ねぇ、名乗って:04/03/04 01:22 ID:+4zy1IJb
「ガキさん〜」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・何ですか」
「機嫌直してよ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・怒ってませんよ、全っ然」
「さっきのは、ほら、言葉のあやっていうか〜」
「さっきのって何ですか?」
「いや・・・その・・・」
失礼すぎる。
仮にも14の!
うら若き中学生に向かって
「オバさん」発言!
よっすぃ(仮)さんには言われたくない。
つーかオマエこそ、何歳なんだよって話だ。
よっすぃさん(仮)は年齢まで企業秘密らしい。
教えてくれないから私は勝手に吉澤さんと同じ18ってことにしてる。
顔カタチ全部同じなんだから、実際もそれぐらいの筈ってことで。
59 :
ねぇ、名乗って:04/03/04 01:23 ID:+4zy1IJb
「オバさんってことはさ、裏を返せば大人っぽいってことなんだよ」
そうですか。
「最高の誉め言葉なわけだ」
あぁそうですか。
無理やり過ぎて笑えない。
私はまだ無視してやった。
「それに、ガキさんってなんかすごい大人っぽいよなぁ」
今度は誉め殺し作戦か。
そんなんで私が心動かすと思ったら大間違いだ。
「・・・その目。ガキさん、また信じてないね?」
「信じてません」
60 :
ねぇ、名乗って:04/03/04 01:27 ID:+4zy1IJb
あーぁ〜、とよっすぃさん(仮)はおもむろにため息をついた。
「俺って信用ないなぁ」
「当たり前です」
「いや、でもこれだけは本当!」
いきなりよっすぃさん(仮)が前のめりになるから
キッチンクロスの上のお皿ががしゃん、と鳴った。
「ガキさん、大人っぽいよ。よく言われない?」
「知りませんよっ」
「惜しいなぁ。あと3年早く生まれてたら恋人候補になったのになぁ」
「結っっっ構です」
っていうか
追い出しますよ?
天性の女タラシなのか、この人も、本物の吉澤さんもそうだし。
なんか因縁みたいなモノを感じる。
61 :
ねぇ、名乗って:04/03/04 01:29 ID:+4zy1IJb
「バカな事言ってると」
「ガ、ガキさん!?」
「今度こそっっっ!!!出てってもらいますからね!!!」
その一言で
よっすぃさん(仮)は一気にしゅんとなった。
はぁ、疲れた。
なんでこんなことに。
あぁ、そもそもよっすぃさん(仮)の
オバさん発言が原因じゃないか!
ばからしい・・・。
なんだかんだで
私もこの人に結構振り回されてるような・・・。
「・・・・ガキさん」
「まだ何か!!??」
「みそ汁」
「え?」
「こぼれてるよ、床に」
62 :
ねぇ、名乗って:04/03/04 01:31 ID:+4zy1IJb
先週洗ったばかりのカーペットをもう一度洗濯機に押し込んで
ようやくリビングに戻った私は
また激昂しそうになった。
「・・・・よっすぃさん・・・何してるんです」
「いや〜、カワイイね、これ」
でも、ちょっとキツいな、と
鏡の前でくるくる回る。
私のほうが眩暈を起こしそうだ。
「勝手に漁らないでって言ったじゃないですか!!!」
「だ、だってさぁ」
「だっても糞もないですっ」
「く、糞・・・!!女の子がそんな汚い言葉使うなYO」
「ほんっとに怒りますよ!」
「どうせならウンコといいなさい、ウンコと!」
「そ、そんな大きい声で・・・っっ!隣に聞こえるじゃないですか!」
とにかくよっすぃさん(仮)は
声がデカい上に高いのだ。