172 :
黒さゆ ◆m68dVLRBiQ :
「藤本さん?」
「うん。絵里はどう思うの」
さぁ・・・と亀井は首を傾げ
眠そうな目をさらに細めた
そして
「わかんない」
予想通りの答えが返ってきた
173 :
黒さゆ ◆m68dVLRBiQ :04/05/01 10:21 ID:qauT+Szd
「さゆは?」
「え」
「さゆは苦手なの?」
思わず狼狽を隠せない
亀井は真っ黒の目でじっと私を見ている
本音が零れそうになったのを慌てて飲み込んだ
174 :
黒さゆ ◆m68dVLRBiQ :04/05/01 10:22 ID:qauT+Szd
「そんなこと」
「?」
「・・・そんなことないけど」
ややぶっきらぼうに答える
亀井は何か言いたげな顔をしたが
何も言わず、ゆっくりと目を伏せた
175 :
黒さゆ ◆m68dVLRBiQ :04/05/01 10:24 ID:qauT+Szd
「えり?」
「ん?」
見間違いだったのだろうか
亀井のその、眠そうな目が
一瞬潤んで見えたのは
176 :
黒さゆ ◆m68dVLRBiQ :04/05/01 10:25 ID:qauT+Szd
それから、二人ともしばらく無言のまま
休憩室を後にした。
恐らく絵里が今、考えているのは
藤本のことだろう。
そう考えると
なぜだか無性に苛立ってくる。
177 :
黒さゆ ◆m68dVLRBiQ :04/05/01 10:29 ID:qauT+Szd
藤本美貴とはどんな女なのか。
一般的視点で見るその姿は
藤本の本当の素顔なのか。
藤本もまた
私と同じように
内なるものを持っているのではないか、と。
178 :
黒さゆ ◆m68dVLRBiQ :04/05/01 10:33 ID:qauT+Szd
「あ」
突然、亀井が気の抜けた声をあげる。
私もつられて伏せていた顔をあげた。
「二人とも、また一緒にいる〜」
にこ、と嘲う
あの毒々しさを滲ませる笑み。
藤本だった。