仮面ライダーののBLACKRX

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89名無しハンペン
「ブレーザーカノン!」
「V3ィィ反転キィィィック!」

──どおぉぉぉぉおん

大爆発を起こすロボットが、大きなディスプレイに映し出された。

「ええい! またしても!」

その光景を見て歯がみする一人の男。
その後ろにいるもう一人の老人も、忌々しげに舌を鳴らした。
ゼティマの下部組織、デスターを率いるドクターQ。
そして元テンタクルの首領、プロフェッサーK。

「あやつらの所為で、ワシらの仕事はあがったりじゃわい!」

彼らの仕事、それは子供達を泣かせること。
子供達の涙こそが、魔神ゴーラの像からダイヤを吐き出させるために必要なのである。
加えてプロフェッサーKにとって、子供はアレルギーの元。
だからこそ彼らはその叡智を振るい、子供を泣かせることにその全てを賭けてきた。
子供達をいじめること、それは趣味と実益をかねた、彼らの生き甲斐と言っても良いものなのだ。
しかし、最近ではそれも満足には出来なくなっていた。
90名無しハンペン:04/02/25 13:48 ID:dfQISR3a
「なぜだ! なぜアイツラはこんなに早く我らの計画に気が付くのだ!」
「……たしかにおかしい。ここ最近、奴らの来るタイミングが早すぎる。
 まるで、子供達となにかネットワークでも持っているかのようじゃ」
「ば、ばかな! そんなことにでもなったら、ワシらの生活は……」
「首領、今日のダイヤですわ」

落ち込む二人の老人に、若い女性の声がかかった。
ドクターQの秘書であるシルビア。
そしてその後ろには、いつものようにシルビアと張り合うリタの姿。

「ちょっと! あたしが持っていくって言ったでしょ」
「うるさいわね! 早い者勝ちよ!」
「これ、やめんか! ……むぅ、やはり今日も少ないのぉ」

ここのところ、魔人ゴーラの像から手に入るダイヤの量は激減していた。
犯罪組織とはいえ、所詮ゼティマの下部組織。
ノルマがこなせなければ待っているものは厳しい処分だ。

「さてさて、これからどうしたもんか……」
「あら? お父様、これなにかしら」

リタがダイヤの入れ物を指さす。
その指の先には、ダイヤとは異なる輝く石があった。
91名無しハンペン:04/02/25 13:48 ID:dfQISR3a
「なんじゃ、これは」

ドクターQは首を捻りながらそれを手に取った。
ピンポン球ぐらいの大きさの二つの石。
まるで自らが光を放っているかのように、赤と青にぼんやりと輝く。

「なぜこんなものが……」
「それを渡して貰おうか。ドクターQ」

不意に名前を呼ばれ、ドクターQは慌てて振り返った。
いつの間に現われたのか、白いローブを着た三人組が、部屋の中央にふわりと浮かんでいた。

「お、お前達は……三神官!」
「ごくろうであったな、ドクターQ」
「それこそが、我らの求めていた石」
「ふふ、今まで待った甲斐があったというもの」

ダロムが手を伸ばすと、Qの手にあった石がふわりと浮かび上がり、その手の中に収まった。

「そ、その石はいったい何なんじゃ!」
「これは『王者の石』。
 インカの秘宝、ギギとガガの腕輪に納められし秘石、『太陽の石』と『月の石』。
 それらと合わさることで『キングストーン』へと変わる魔石だ」
「そ、そんなものがなぜゴーラ像から!」
「ふふふ、もともとゴーラ像とはこの『王者の石』を造るためのものなのだ。
 ダイヤなぞ、その時に出来るただの失敗作に過ぎん」
「な、なんだと……」

驚きの事実に呆然とするドクターQ達。
92名無しハンペン:04/02/25 13:48 ID:dfQISR3a
「これで全ての準備は整った」
「後は運命の娘の覚醒を待つのみ。
 彼のものの19回目の生誕の日を。
 明日の日食の時を」
「だが良いのか? 運命の日に生まれたのはただ一人。
 もう一人は……」
「心配はいらぬ。このビシュムの左目が見た未来は絶対。
 世紀王となる運命の娘は、あの二人を置いて他にはない」

そんなQ達を気にもとめず、三神官達は謎めいた会話を続ける。
それが、二人の少女に過酷な運命をもたらす悪魔の言葉であることは、
まだ誰も知る由もないことであった。

「よかろう。では迎えに行くとしよう。
 我らの王となる運命の娘を」
「うむ、世紀王『影なる月』を」
「そして……『黒き太陽』を」
93名無しハンペン:04/02/25 13:49 ID:dfQISR3a
仮面ライダーのの 第53話

  「 黒 き 太 陽 」

94名無しハンペン:04/02/25 13:50 ID:dfQISR3a
「太陽?」
「そ、亜弥ちゃんは太陽みたいな人だねって言ったの」

そう言って、少女は切れ長の目を細め口元に笑みをたたえた。
言われた方の少女は、ふっくらした唇をすぼめ、すねたように上目遣いになる。

「えー、あたしってそんなに暑苦しい?」
「あのー、そんなにくっつかないでくれる?
 てか、重いんですけど」
「へへー、いいじゃん。ミキたんとこうしてるの好きなんだからー」
「もー、しょうがないなあ」

明るい日の光が差す部屋。
真っ白なシーツの敷かれたソファーの上。
他に何も存在しないかのように、まるで子猫のようにじゃれ合う二人。

「どうだー。暑苦しいだろー」
「だから、そうじゃなくって。
 亜弥ちゃん見てると、なんだかぽかぽかと暖かい気分になるって言ってんの」
「んん、そう? それは嬉しいな」
「ホント、亜弥ちゃんの笑顔見てると癒されるよ」
95名無しハンペン:04/02/25 13:54 ID:dfQISR3a
言葉通り、少女──藤本美貴は嬉しそうに微笑んだ。

「あー、まあそうだね。ほら、あたしって癒し系? みたいな」

そう言ってもう一人の少女──松浦亜弥もにっこり笑う。

「お、自分で言うかな。そういうこと」
「にゃははは。あ、そうだ。あたし、新しい入浴剤買ってきたんだ。
 今日も一緒にお風呂入ろうね」
「おー、いいね。あ、ラベンダーじゃん。好きなんだこれ」
「でしょでしょ。絶対気に入ると思ったんだー」

美貴の言葉に亜弥はまたはしゃいだ。
くるくると良く変わる表情。
生命力が、その小さな体に漲っているように感じられる。

「いいよねぇ、亜弥ちゃんは。いっつも楽しそうでさ」
「なによぉ、たんは楽しくないって言うの?
 あたしと一緒にいるっていうのに」
「ちょ、ちょっとぉ。だからそんなにくっつかないでってばぁ」

またひとしきり、二人のじゃれ合う声が聞こえた。
幼い頃からずっと一緒に育ってきた。まるで姉妹のような関係。
仲の良い、かけがえのない存在。
96名無しハンペン:04/02/25 13:57 ID:dfQISR3a
「はー、あんまり変なコトさせないでよね。もう若くないんだから」
「なぁにいってんの。あたしと2つしか違わないでしょ」
「いやいや、明日でもう美貴19歳になるんだよ」

なおもくっついてこようとする亜弥を引きはがし、美貴はソファーの上のクッションを抱えた。

「……あれから十年か」
「そうだね……」

一瞬だけ、二人の間にしんみりとした空気が流れた。
その空気を切り替えるかのように、亜弥はまた笑顔で美貴に尋ねる。

「ね、明日さ、パーティーがあるんでしょ」
「そ、なんか父さん気合い入ってるみたいでさ。
 ここ一週間その話ばっかなんだから」
「船上パーティーかぁ。いやー楽しみだなぁ」
「ちょっと、主役を差し置いて目立とうとか考えてんじゃないでしょうね」
「ま、まっさかぁ……」
「あやしいなあ、その態度。
 さ、正直に白状しなさい!」
「きゃあ、ミキたんやめてよぉ」

今度は美貴が亜弥を押し倒した。
くすくすと笑う二人の声がいつまでも続く。
今日も明日もそれは変わらない。永遠にこの幸せは続いていく。
そう信じていた。
19回目の美貴の誕生日。
あの、運命の日を迎えるまでは。