一方そのころ
某地某所のゼティマ本部・中央研究所
研究室の1室で、ZXが手術台に乗せられていた。
機能は停止され、横に研究員の男が立っていた。
「基本性能はライダーを上回っているはずだ・・・・」
男はブツブツ独り言を言いながらメンテナンスを続けていた。
ZXは2機目となり、あらゆる所に改良が加えられた。
細かいパーツ1つ1つまで磨き上げられ、機械としての性能は20%以上向上している。
まさに「芸術品」と言っても良い。
しかしそれはあくまで計算上の理論値であり、いざ戦いとなると経験などに左右される。
事実、スピード・パワーで勝りながらスカイライダー相手にあそこまで苦戦した・・・
「やはりココの問題か・・・・」
男はそう言いながらZXの頭部を指でコンコンと叩いた。
そして手を止めると、ぼんやりと考え出した。
「たいしたザマだな・・・」
突然背後から女性の声が聞こえた。
声の主は遠慮なく研究室の中に入って来るとZXをはさんで研究員の正面に立った。
男はその様子を畏れと嫌悪感の混じった視線で眺めていた。
「・・・あれだけの予算を使ってあの程度なのか?」
声の主、信田美帆はそう言って男とZXを睨みつけた。
男は怖気づきながらも反論しようとする。
「し、しかし、トップクラスの実力のライダーをあと一歩まで・・・」
「おい!・・・」
信田の目が鋭く光る。
「ぐうっ・・・」
「まさか本気で言っているわけじゃないよね・・・」
片手で研究員の首を締め上げながら無表情で語りかける。
「も・・申し訳ありません。」
手を離すと男は首を押さえながら激しく咳き込んだ。
「奴が手加減しなければ倒されたいたのはこっちの方だ。それを忘れるな!」
「はい・・・・しかしなぜ手加減を?」
「たぶん味方と間違えたのだろう。・・・相変わらず甘い奴らだ」
「機械自体の性能は上がっているのですが・・・」
男はZXの方をチラと見て恐る恐る説明する。
「頭脳の問題か・・・やはりこれはまゆみでないとダメか・・・」
信田はそれだけ言うと黙り込み、そのまま研究室から出て行った。
「クソッ!」
信田が出て行ったのを確認した後で、男は手に持っていた工具を床に叩きつけた。
「・・・どいつもこいつも『まゆみまゆみ』と・・」
この男も研究員としては夏まゆみに負けず劣らず優秀である。
ZXの2号機をここまで磨き上げたのも彼の功績だ。
しかし脳改造に関してだけは夏に遠く及ばない。
2号機の「シンクロ率」は現在40%そこそこ。
つまり全性能の4割しか力を発揮していないことになる。
これまでに何十人もの脳を改造したが、ほとんど使い物にならなかった。
どうにかまともに使える脳が見つかったが、それでもたった40%である。
夏と、その夏が直接教えを受けたつんく博士、加護博士・・・
彼らが直接手にかけた改造人間は揃ってバケモノ並みの性能を持つ。
しかしその脳改造技術は誰にも真似できない・・・
そもそも夏が脱走した原因は信田自身ではないか。
その本人がのこのこ舞い戻って来て偉そうに指示を出している。
男はそこも気に入らなかった。
男は小さくため息をつき、顔を上げた。
誇らしげに、壁の一番目立つところに貼ってあるグラフが目に入った。
「99%」
小川が脱走直前に叩き出した最高記録だ。
「・・・くそ、今に見てろ!」
男はZXの脳の再改造に着手した。
つづく