「まこっちゃん、いる!?」
新垣は中澤家に到着するなり大声で怒鳴り散らした。
肩には紺野を抱えている。
「小川なら、居間でひとみとテレビをチェックしてるけど・・・紺ちゃん、どうしたの?」
玄関で出迎えた梨華はあっけに取られながら、紺野の様子を気にしていた。
「あさ美ちゃんをお願い。」
「ちょっと!何があったの?」
新垣は紺野を梨華に預け、居間に走って行った。
「あはは・・・相変わらず草野仁は笑わせよんなあ。」
「・・・ひとみさん、本気でそう思ってます?」
居間でひとみと小川がTV番組をチェックしているところへ、新垣が飛び込んできた。
「まこっちゃん!!何があったか知らないけど、いくらなんでもやり過ぎだよ!!!」
居間に入るなり物凄い剣幕で小川を怒鳴りつけた。
ひとみと小川はキョトンとしている。
「里沙ちゃん・・・何のこと?」
「とぼけないでよ!さっきあさ美ちゃんに・・・」
「小川なら今日ずっとここにいたよ?」
ひとみが言った。
「え?・・・だって・・・」
「あさ美ちゃんがどうかしたの?」
「いや・・さっき2人が大ゲンカをして、あさ美ちゃんがボコボコに・・・」
「里沙ちゃん・・・それは違うの・・・」
梨華に抱えられ、紺野が入って来た。
「あさ美ちゃん!」
紺野の様子を見て小川が叫び声を上げた。
「・・・一体何があったの?」
夕食時、パトロール係と紺野を除いた全員が居間に集まっていた。
「それで、結局紺野ちゃんを襲ったのは偽者だったのれすか?」
「偽者ゆーか、あっちも本物や。いや、小川が『試作機』という意味ではむしろあっちが本物で、
小川が偽者と言うべきかも知れんな。」
辻に中澤が説明する。
小川はうつむいたまま黙っている。
「まだZX計画は生きとったんやな・・・」
「ZX計画って、そもそもどういう計画なの?」
安倍が中澤に聞く。
「うちらもあんまり詳しくは知らんのやけどな・・・」
「中澤さんが持ち出した資料と、私がゼティマにいたころに聞いた噂。そして北信越支部のデータから推定するしかないけど・・・」
中澤と石黒はそう前置きして説明を始めた。
「・・・『ライダーキラー』って、つまり私達を倒すためだけに作られたってこと?」
「いや、もともとは少数精鋭の特殊部隊を作るつもりだったみたいだけど。」
「ライダーが現れて名前が変わっただけみたいや。当面の標的がライダー、ってことらしいな。」
「今更出てきたってことは、いよいよ量産が始まったってことなの?」
安倍が心配そうな顔をした。
「うーん・・・費用が並の改造人間の50人分とも100人分とも言われてるしな。」
中澤は腕を組んで考え込んだ。
「まこっちゃんの体を調べたけど、あんな手間のかかるもんそうそう数は揃わへんで。」
加護も量産化には否定的だった。
「・・・よかったあ。あんなのが何十人も来たらさすがにヤバイよね。」
安倍がホッとした様子で言った。
矢口と飯田、ケイまでも黙ってうなずいていた。
「・・・ところで紺野の様子は?」
飯田が新垣と高橋に聞いた。
「思ったより軽症でした、もう1人で歩けます。」
「1週間もすれば元通り闘えるようになります。」
「じゃあなんで夕食に来ないの?あの食いしんぼが・・・」
新垣と高橋はそれを聞くと黙ってうつむいてしまった。
「まさか、また・・・」
「はい・・・落ち込んでます。」
「なーによ、1回負けたぐらいで。相手を考えろってのよ!」
「そうだよ、辻加護2人でもあれだけ苦戦したんだから。ねえ?・・・」
「ちょっと!・・・」
騒ぐ飯田と矢口を安倍が止めた。
テーブルを見ると小川が肩をすぼめてショボーンとうつむいていた。
「あっ、ごめん小川。そういう意味じゃなくてさ・・・」
「・・・と、とにかく紺野を呼んでくるよ」
飯田はそう言って慌てて席を立った。
「待って。落ち込んでる時に無理に連れてこない方がいいよ。」
安倍が飯田を止めた。
「どうするの?」
「こういう時はね、体を動かすとスッキリするから・・・紺野と二人で地下に行って来るね。」
「ええけど、もうすぐ食事やし、ケガ人やから無理させたらあかんで。」
中澤が後ろから声をかけた。
「・・・まあ紺野も悩んでもいつもそれなりに答えを出すから大丈夫でしょ。」
「別にまこっちゃんの責任じゃないんだから元気出しなよ・・・」
皆があれこれ話しているところへ安倍が戻って来た。
「・・・みんなごめん、手伝って〜!」
背中にはぐったりした紺野がおぶさっていた。
「だから無理するなって言ったやろ・・・」
つづく
>>696 感想サンクス。
今回は肩の凝らないアクション中心です。
>>705 今回みたいなメンバー間の友情、みたいな話は今後も楽しみ。