二人は無言で廊下を進む。
途中で付き添いの警備を外し、二人きりでエレベーターに乗った。
しばし沈黙が流れる。
「あの・・・」
先に口を開いたのはソニンだった。
「あなたも、その・・・するの?」
「・・・何をですか?」
「だから、その・・・『変身』を・・」
「・・・できます。」
「じゃあやっぱり・・・」
「はい、改造人間です。」
それを聞くとソニンは黙り込んでしまった。
資料を目にしたり五木から直接聞いたことはあったが、やはり目の前で見ると・・・
見た目は普通のこの女性が、あの写真の怪物に変身するのだ。
ましてゼティマが作り上げたものではない。五木が、政府が行ったことだ。
いくらゼティマに対抗するためとはいえ、こんなことが許されるのか・・・
「・・・後悔はしていませんよ。」
そんなソニンの気持ちを察したのか、前田が小さくつぶやいた。
「むしろ感謝しています。奴らを倒すチャンスを与えてくれたのですから・・」
ソニンは何も言えない。
資料を読んで、何故前田がこの戦いに身を投じたのかは知っている。
ゼティマに家族を殺された。
よくある話だ。守備隊の隊員もほとんどがそうだ。
そして自分は守備隊の隊員達を改造した。
正確には「強化人間」であるが、ソニンの方法ではかなり寿命が縮む。
自分がやっていることもゼティマや五木と同じ、悪魔の所業である。
「・・・ソニンさんはどうして戦っているんですか?」
今度は前田がソニンに聞いた。
ソニンは即答できない。
いわゆる正義のため、国のため、初代研究所長の遺言・・・表向きの理由はいろいろある。
しかし本当の理由はユウキのためだ。そのためにZ対を利用してると言えなくもない
「資料に何も書いてなかったもので、やはり行方不明の家族と何か関係が・・・」
家族のことは誰にも話していない。もちろんユウキのことも、そして仮面ライダーのことも。
「言いたくなければいいんですが・・・・」
前田がそう言ったところでエレベーターが1階に到着した。