「・・・ではこの委員会は、守備隊は・・・私のやってきたことは何なんですか?」
政府がゼティマの支配下にあるというなら、自分の立場は一体何なのか。
まさか茶番に付き合わされていたとでも言うのだろうか?
「いや、今政府は本気でゼティマと戦うつもりだ。君たち守備隊は我々の最後の希望だよ。」
「でも・・・」
「最初に委員会が組織されたのは4年前だ。そして僅か1年足らずで奴らに潰された。今の委員会は2代目になる・・・」
「初代」の委員会は例の事件の直後に極秘裏に組織された。
しかし1年足らずで特殊部隊と研究所もろとも襲撃を受け消滅した。
内部にスパイがいたのだ。
その後は何の対策も打ち出せないまま時が過ぎ、日本がゼティマに征服されるのは時間の問題と思われた。
しかしゼティマ側にも問題が起きた。ハカイダーの反乱だ。
この隙をつき政府は再び委員会を組織した。
そしてライダーの出現・ソニンの加入・・・奇跡のような偶然が重なり、
政府はゼティマと交渉できるだけの力を付けた。
特にソニンがいなければ委員会も守備隊もどうなっていたか・・・
「その間の2年間は何もしなかったんですか?」
「・・・そうだ。」
ソニンは政府のあまりの無対応ぶりに少し腹を立てていた。
その態度を見て委員の1人が口をはさんだ。
「・・・君は最初の委員会のメンバーがどうなったか知っているのか?」
「いいえ?」
「全員死んだよ。」
「・・・・・」
「何年か前、時の首相が脳梗塞で倒れただろう。実はあれも奴らの仕業だ。」
ソニンの顔色が変わった。
「研究所の所長だけは改造手術を受けていて助かったんだが・・・君は彼のことは知っているな?」
「はい・・・」
忘れもしない、カゲスターことユウキと同じ日に同じ場所で死んだ、あの老人のことだ。
「首相、時間が・・・」
秘書が間に入った。さっきからしきりに時計を気にしている。
「そうだな。本題に入ろう。」
秘書からソニンに数枚のコピーが渡された。
「さっきも言ったように、ここ1年ぐらいは互角に交渉ができた。だが2ヶ月ほど前から態度が急変した。
・・・それが奴らの要求だ。」
ソニンは渡されたコピーに目を通し、数行を読んだだけで顔を上げた。
「これは・・・」
国会・裁判所の廃止。自衛隊の解散・・・
要求は数十項目に及ぶが、受け入れられるものは1つも無い。
まして全てとなると国を全部よこせと言っているようなものだ。
「全て受け入れないと東京を火の海にすると言って来ている。」
「脅しじゃないんですか?」
「2ヶ月に渡って交渉してきたが、相手は何一つ譲歩しようとしない。」
「それではまるで・・・」
首相はソニンの言葉にうなずく。
「そうだ・・・宣戦布告だ。」
「どうしてそんな強気なんでしょうか。奴らの戦力は前よりむしろ落ちてるはずですが・・・」
ソニンはそこまで言ったところで3ヶ月前の情報を思い出した。
「『探していたものがついに見つかった』・・・」
「そうだ。」
首相がそう言うと背後の壁面の大型モニターに写真が映しされた。
小さな島に爆発と思われるクレーターがあり、その周囲の樹木が焼け焦げている。
「昨日撮影した小笠原諸島の写真だ」
「小笠原って、火山噴火の?・・・」
「火山ではない、奴らの新兵器だ。これで東京を攻撃する気らしい・・・奴らの探していたものというのはおそらくこれだ。」