そして運命の日・・・
ソニンを乗せたリムジンは、防災放送や緊急車輌のサイレンがけたたましく鳴る町の中を官邸へと急いでいた。
数日前に小笠原諸島で大規模な火山の噴火があり、さらに数十分ほど前に「関東に大地震が起こる可能性あり」
との注意情報が発表され、都内はパニック状態になっていた。
「こちらへ・・」
ソニンは官邸の地下・・普段案内される部屋のさらに奥深くの「危機管理センター」に案内された。
着替える時間すら無く、研究所の白衣のままである。
部屋に通されると、首相のほか、自衛隊統幕僚長、警察庁長官、各省の次官クラス・・・
「Z対策委員会」の主要メンバーが揃っていた。
四角く並べられたテーブルの正面中央で、首相が疲れきった表情でうつむいている。
他のメンバーも同様に、まるで何かにすがるような目でこちらを見ている。
「・・・ソニンくん。」
重い沈黙の中、首相が口を開いた。
「この騒ぎは地震・・・ではないんですね?」
ソニンの言葉に首相が重く頷く。
「先ほど、我々とゼティマの交渉が決裂した。」
「交渉?・・・・」
意外な言葉にソニンは驚く。
「驚いたと思うが、我々はゼティマとの正式な交渉チャンネルを持っている。
・・・そして、政府の中にゼティマの協力者がいることは君も知っていると思うが。」
ソニンは動揺を隠せないでいる。首相はその様子を見ながら吐き捨てるようにつぶやいた。
「・・・我々が・・その親玉だ!」