数日後。国際線ロビーの一角に少女達の一団がいた。笑顔で言葉を交わす彼女達が
日本の平和を脅かす悪の陰謀を、熾烈な戦いの末に阻止したと誰が気づくだろうか。
小さな体に秘められた、無限の力を誰が知るだろうか。しかし、それは彼女たちが
知っていればいい事なのかもしれない。例え離れていても心は一つ。正義の心と
友との確かな絆を胸に秘め、少女達は旅立つ仲間を見送るために集まったのだ。
別れの時までのわずかな時間を惜しむように語らう少女達。それは出発案内の
アナウンスが聞こえてきてもなお続いていた。しかし、最終出発を知らせるアナウンス
が別れの時を告げる。
出発ロビーのガラス窓越しに映る仲間へと、しきりに手を振る少女達。そして誰から
ともなくこんな言葉が聞こえてきた。
「上に行こうよ!ミカちゃんの乗る飛行機が見えるかもしれない」
その言葉にはじかれるように少女達は階段を駆け上がり、展望ロビーを目指す。一方
仲間達の声に送られて一人機中の人となった少女もまた、ターミナルの建物が見える
窓側の席に座る。展望ロビーには仲間の少女だけではなく、旅立つ人を見送る人々や
飛行機を見学する人がフェンス際に集まっていた。それでも機中の少女は目を凝らし、
仲間の姿を求めた。するとロビーの一角に、小さな体に見合わず大きなしぐさで手を振る
小さな人影が見える。
すると、せっかく目に付いた仲間達らしき人影が不意にぼやけた。それと同時に、
頬のあたりに緩やかに伝うものに気づいた彼女は、人差し指で拭うと唇をかみ締めた。
(・・・みんな、本当にありがとう。ワタシは自分のするべきことを終えたら、必ず
帰ってきます。だってワタシは、仮面ライダー4号なんですもの)
一人の少女の決意を乗せて、鋼の翼が徐々にその速度を上げていく。そして機体は彼女に
まるで何かを諭すかのように、騒音とともにゆっくりとした浮揚感を与えた。一方、
展望ロビーでもいよいよ日本を離れていく飛行機を目で追いながら、別れの涙で崩れて
しまいそうな笑顔を支えながら、友の姿を見送る少女達の姿があった。
ミカ・トッド、またの名をライダーマン。そして、栄光の仮面ライダー4号の名を
贈られた彼女は今、新たな戦いの場へと旅立っていった。自らの前に立ちはだかる謎を
解き明かしたその時、彼女は再びライダーマンとして戻ってくるだろう。日本は未だ、
悪の秘密結社ゼティマによって狙われている。仮面ライダー4号として、彼女が再び敵と
対峙する時はそう遠いことではないだろう。
第57話 「仮面ライダー4号は君だ!」 終