(・・・ごめんなさい。これはワタシがどうしてもやらなければならない
事。アメリカの夏先生、レフア、ワタシにもし命があったら、その時は)
ゼティマの一員であったことは、常に彼女の心に負い目として存在していた。
自分の研究が多くの人の命をあやめたことに、常に彼女は苛まれていた。自分の
命を捧げたところで、失われた命が帰る事はないだろう。それでも自らの罪を
償おうと、覚悟と共にスロットルを引くライダーマン。ロケットは上昇を続け、
その振動と強い重力は押しつぶさんばかりに狭い操縦室に襲い来る。そのせいか
操縦室はやがて火に包まれ、内部のコントロールパネル付近では小さな爆発が
起こる。操縦桿を握るライダーマンの手元辺りでも爆発は起こり、衝撃と炎が
カセットアームにダメージを与える。だが、ライダーマンは決して操縦桿を
離さない。
「ライダーマン、ミカ・トッドの最期を見ろっ!!」
ライダーマン、ミカの叫びとともに画面は乱れ始め、そして遂に映像がとぎれて
しまった。目の前の映像を制止できず、無言で目をそらす4人ライダーに対して
一人猛り狂うヨロイ元帥は狂ったように駆けだした。
「おのれミカ・トッド!許さん、許さんぞ!!」
「待て!!」
悪鬼の如き形相で元帥はロケットを追って外へと飛び出していく。4人ライダーも
元帥を追って外へと飛び出した。両者が外へとたどり着いたその直後、地上に轟音が
響き渡る。見上げれば上空に描かれた太い筋雲がその先端ではじけていた。
「よくも俺の計画を邪魔してくれたな。生きて帰れると思うなよ」
怒りのヨロイ元帥は銀色のマントを翻す。と、その下から姿を現したのは、先刻
ダブルライダーによって倒されたあの怪人だった。
「お前は!!」
身構える4人の仮面ライダーに対し、怪人〜ザリガーナは腕のハサミを打ち振るって
答える。
「これがヨロイ元帥の正体、そして真のザリガーナよ。かくなる上はお前達の首を
持ち帰らねば引き合わぬ」
ヨロイ元帥は自らの影武者を用意して作戦の陣頭指揮に当たった。しかし、その
影武者がダブルライダーに敗れた事は彼にとって想定外の出来事であった。Z計画を
阻まれ進退窮まった元帥は、正体をさらけだす事で一か八かの賭けに出たのだ。
しかし、今の4人ライダーには戦いにかける強い意志がある。ライダーマンの最期を
無にするまいと、ザリガーナに敢然と立ち向かう覚悟だ。身構えるライダーのの、
その傍らでベルトに手を掛けるのはライダーあい。再びの超変身で難敵との戦いに
望もうというのだ。
「超変身!!」
ほとばしる閃光。しかし、それと共に姿を現したのは先ほどとはうって変わり、白い
生体鎧のクウガだった。金色に輝く角も短く弱々しい。その姿は再びの閃光の後、
一瞬にしてライダーあいを通り越し、加護亜依の姿に戻ってしまった。
「やばっ・・・エネルギー切れ?!」
「加護さん?!」
「あいぼんっ」
突然の出来事に動揺するライダーののとXライダー。ライダーあいからクウガへの
超変身でベルトに蓄えられたエネルギーを消耗しきってしまったのだろうか、亜依の
変身が解除されてしまった。
その亜依を庇うようにライダーののとXライダーが怪人の前に立ちはだかって
身構えるが、そんな二人を制するように進み出た戦士がいる。4人の中でもひときわ
強い闘志とともに怪人に戦いを挑むのは、仮面ライダーV3だ。
「ミカちゃんのためにも、コイツだけはおいらの手で倒す!」
「何をあまっちょろい事を!お前一人で倒せると思ってか!!」
ザリガーナとV3、最終決戦の火ぶたが切って落とされた。腕のハサミの切っ先で
二度三度と空を切りV3を威嚇してみせるザリガーナだが、V3がそれしきの事で
怯むわけがない。敵の攻撃をかいくぐって素早く懐に潜り込み、怪人の腹にパンチを
喰らわせる。
「バカが。俺は仮にもヨロイ軍団のザリガーナよ。貴様のパンチなど効くものか」
固い装甲は軍団の自慢とばかりに、ザリガーナは外骨格の強度を頼みにV3に対して
プレッシャーを掛けると、腕のハサミをV3の肩口に、背中にと落としていく。
「どうだV3、俺のハサミの威力を思い知ったか!」
「V3!!」
不敵な台詞を吐きながら攻撃を繰り出す怪人に対して、打たれ放題のV3を案じる
言葉が口をつくXライダー達。だが次の瞬間、ひときわ大きく振り上げられた一撃
をV3は見逃さなかった。
愚にも付かない技を数回繰り返したその時、投げつけた破片の一つがV3の
眉間へと飛んだ。しかしV3は容易くそれをキャッチすると、お返しとばかりに
ザリガーナめがけて投げ返す。
「お前の甲羅だ、返してやる!」
言うが早いか投げ返された甲羅は風を切って飛ぶと怪人の胸板に突き刺さり、
またもザリガーナはうめき声と共によろめく。その直後、両者の戦いに決着を
つけるべくV3が空中へと身を躍らせた。
「V3ィィッ!反転、キィィィック!」
空中からのキックが怪人の胸板を捉え、突き刺さった甲羅の破片を深く押し込む。
さらに2度目のキックを繰り出すために空中へと跳躍。身を翻したあとにまたも
胸板めがけて必殺のキックを叩き込んだ。
「グワハァァァーッ!!」
勢いよく吹き飛ばされたザリガーナは地表に叩き付けられる。そしてのたうち回る
その姿が揺らぎ始めると、程なくして元のヨロイ元帥の姿に戻った。そして元帥は
よろめきながらも立ち上がると、おぼつかぬ足取りでゆっくりとV3に向かって
歩み寄る。
「おのれライダー、よくも・・・よくも」
腕の棘つき鉄球を振り上げて最期の悪あがきを見せるヨロイ元帥。だが、次の瞬間
彼の背中に鋭い痛みが走ると、それはそのまま腹までも突き抜けた。苦悶の表情と
共に目をぎょろりと見開く元帥の視線の下に延びているのは、自らの胴体を刺し貫く
鋭い円月状の刃だった。
「ガハッ・・・これは・・・」
元帥の胸を刺し貫いていたのは、復讐の右腕カセットアーム。直後元帥の背後から
聞き覚えのある声が聞こえた。
「ヨロイ元帥。みんなの仇、取らせて貰う!」
「貴様はぁ・・・生きていたのか?!」
元帥の背後に立っていたのは、コクピットの爆発で千切れたカセットアームを左腕に
縛り付け、血と埃にまみれボロボロになった仮面もそのままに現れたライダーマン
だった。ライダーマン、ミカ・トッドは生きていたのだ。信じられない光景に、
仲間達も己の目を疑った。だが、それは紛れもなく彼女だった。ライダーマンは左腕
にさらに力を込めて言葉を続けた。
「生きていたんじゃない・・・生かされたの。お前達と戦う事が、ワタシの贖罪
だとみんなが教えてくれたの」
「おっ・・・おのれぇぇぇ」
腹を貫くカセットアームを引き抜こうと足掻くヨロイ元帥。と、その時蠍谷の大地が
大きく揺らぐと、その直後巨大な地割れが発生した。基地の地下で爆発が始まったのだ。
「報いを受けるときが来たのよ。地獄へ堕ちろ!」
「何をする!やっ、やめろ!うっ・・・うわぁぁぁぁぁ!!」
ライダーマンは渾身の力でヨロイ元帥を抱え上げると、もがく元帥をそのまま足下の
地割れへと投げ落とす。断末魔の叫び声と共にカセットアームで刺し貫かれたままの
元帥は奈落の底に転落し、やがて爆発のためと思われる巨大な火柱が地割れから
迸った。この瞬間、ついにライダーマン・ミカは怨敵ヨロイ元帥を倒したのだ。