しかし、敵もみすみす少女達の侵入を許すはずはない。基地入り口の守りを
固めるのは軍団の戦闘員達。各々が手に武器を構えて侵入者を排除しようと
臨戦態勢だ。そしてその戦闘員達を束ねるのは、かつてライダーに敗れ去った
はずの改造人間達。改造人間はダメージの程度にもよるが、破壊された場所を
修理する事によって復活出来るのだ。大酋長の羽根飾りをまとったサソリの
怪人で、インディアンの勇者ジェロニモの血を引く「サソリジェロニモ」、
大泥棒石川五右衛門の魂を継ぐガマガエルの怪人「ガマゴエモン」、そして
それを束ねるのは悪名高き第三帝国の亡霊。かのアドルフ・ヒトラーの遺伝子を
受け継ぐヒトデの怪人、地獄の独裁者「ヒトデヒットラー」。かつてXライダー
達によって倒された怪人達の怨念はこの蠍谷で蘇った。
「よいか、貴様達は我が輩の指揮下において、命がけでライダー共の前進を
食い止めよ!」
「イーッ!!」
ステッキを振るい、命令を発するヒトデヒットラー。脇を固めるサソリジェロニモ
とガマゴエモンも槍を振り上げて気勢を上げる。と、その時遠くから響く爆音が
怪人達の耳にも入ってきた。
「来たぞ!!」
サソリジェロニモが指さす先に見えるのは、5台のライダーマシンを駆る少女達の
姿。戦闘員達を従えて、怪人達が一斉に殺到する。
「みんな、来たよ!」
「おう!!」
対する少女達も怪人達と真っ向勝負だ。真里の言葉に力強く頷くと、マシンの
速度をさらに上げて群がる敵へと全速力で突っ込むと、ライダーマシンが次々と
悪の手先を蹴散らしていく。さらに土煙を上げてスピンターンを決め、舞い散る
砂塵が敵を寄せ付けない。
「おのれ、怯むな!戦え、戦え!!」
ガマゴエモンが戦闘員達に檄を飛ばし、戦闘員達は再び少女達に殺到する。マシン
から降りた少女達は敵の攻撃に応戦して次々と戦闘員達を叩きのめす。5人を
取り囲むように戦闘員と怪人が円陣を組んで包囲にかかるが、それしきで怯む
彼女たちではない。襲い来る敵をなぎ倒し、相手を見やるなり各々が変身の構えを
取る。
「変身!」
かけ声も勇ましく、5人が一斉に変身を遂げる。ダブルライダーとV3、そして
ライダーマンとXライダー。5人ライダーは取り囲む戦闘員達を次々と叩きのめして
基地の入り口を目指す。一人また一人と戦闘員達が倒されていく中で、捲土重来を
期して三大怪人も戦いを挑む。
「ここから先は我が輩達が通さんぞ!」
「そっちがその気なら、押し通るまでや!!」
ライダーあいのパンチが火を噴くと、ヒトデヒットラーの顔面を直撃。出鼻を
くじかれた怪人はよろよろと後退する。あわてて残りの二大怪人がライダー
に挑みかかるが、手にした槍は振りかざすも空を切るばかりだ。
「愛ちゃん、いくよ!」
「はい!」
ライダーマンがサソリジェロニモを、そしてXがガマゴエモンの腕をガッチリと
捉え、プロレス技のハンマースルーの要領でそのまま勢いよくぶん投げる。勢い
を自力で止められない怪人は、同士討ちを避けられず互いにぶつかり合う。
「ぐえっ!」
「ぎゃっ!!」
鉢合わせになった怪人同士、前後不覚に陥ったかふらふらと足取りもおぼつかない。
そこへ二人のライダーが敵から奪い取った武器を投げつけると、槍は容易く二大怪人
を刺し貫いた。二人まとめて串刺しになったまま、横倒しになったガマゴエモンと
サソリジェロニモはなすすべもなく倒れ伏すと、爆風と共に消滅した。
こうなると残るはヒトデヒットラーだけ。しかし彼もまたV3とダブルライダー
の3人がかりの猛攻でグロッキーに陥ってしまった。V3がとどめの飛行機投げを
喰らわすと、三大怪人は良いところ無く爆風の彼方に消えた。
「ええい役立たず共が・・・何をしておるのだ!!」
戦いの様子をモニターで見ながら、歯がみするヨロイ元帥。その間にも、5人
ライダーは入り口を守る部隊を蹴散らして基地内部に潜入した。
基地の内部でも5人の戦いは続いていた。行く手を阻むは元帥配下の軍団員。
再生怪人に率いられた戦闘員達が果敢に5人ライダーに戦いを挑むが、もはや
ライダー達の敵ではない。寄せ来る敵を打ち倒す5人ライダーの姿に元帥の
怒りと焦燥感は頂点に達しようとしていた。
「ええいお前達!何とかしろ、何とかしろぉぉぉ!!」
わめき散らす元帥に右往左往する戦闘員達。こうなると科学者達もロケット発射
準備どころの話ではない。と、その時だ。管制室の赤いランプが点滅し、地の
底から響くかのような支配者の声が響き渡る。
『何を取り乱しておるか、ヨロイ元帥』
声の主はゼティマ首領その人であった。その声にはじかれたように恭しく跪いて
みせるヨロイ元帥。
『Z計画の進捗状況をと思ったが、みすみす奴らの侵入を許すとは一体何を
しておるのだ!』
「もっ・・・申し訳ございません!!」
弁解の余地もなく、ただひれ伏すばかりのヨロイ元帥。
『この失地を回復できなければ、命はないと思うがよい!』
首領の最後通告。怒気のにじむ声に顔面蒼白のヨロイ元帥。この期に及んで
仮面ライダーの手で作戦が失敗しようものならば、元帥の命はない。赤い
ランプの点滅が収まった時、元帥は決意と共に立ち上がった。
一方、5人ライダーは管制室を目指していた。プルトンロケットのコントロール
システムを破壊すれば、打ち上げそのものを阻止する事が出来るからだ。守りを
固める敵の軍団は未だにライダー達に対して抵抗を続けていたが、5人を止める
だけの力は無かった。
戦いのさなか、ライダーマンは窓に映るロケット群を見た。屹立する悪魔の
兵器は発射の時を待っている。仮に5人が管制室にたどり着いたとしても、
ヨロイ元帥がスイッチを押せばロケットは東京に向かって発射されてしまう。
すべてが発射される必要はない。一基でも発射、着弾すれば日本は大パニックに
陥ってしまうだろう。最も近いところにある一基が発射準備を終えた状態だと
察知したライダーマンは、ある決意を胸に戦線を離脱すると、ロケットへ延びる
ブリッジへと駆けだした。
「ライダーマン・・・ミカちゃん?!」
「ワタシにはやる事があります!みんなは早くヨロイ元帥のところへ!!」
そう叫ぶと、V3の声にも振り返らずライダーマンはロケットを目指す。一方
4人のライダーも迫り来る敵を退け、遂に管制室へとたどり着いた。