この攻撃に続いてキカイダーが空中へと身を躍らせると、高空からの必殺技が
敵を襲う。クロスした両腕が左右に振り下ろされるのと同時にほとばしるエネルギー
が敵の身体を打ち砕く。
「デン・ジ・エーンド!」
必殺の電磁エンドがアクアラングマンを粉砕したその直後、今度は01の必殺技が
炸裂する。
「ブラストエンド!」
二人の人造人間の大技がアクアラングマンを一撃の下に葬り去った。バラバラと
砕け散るのは先ほどまで破壊ロボットだった者の残骸。しかしアクアラングマン達
もまた、ひるむことなく次々と二人に襲い掛かる。
そしてファイズも二人に加勢するべく反撃に出ようとしていた。右手に握られて
いたのは絵里から手渡されたあのファイズアクセル。その時一瞬脳裏をよぎった
のは、あのクレインオルフェノクとの戦いにおける大破壊の光景であった。
(・・あん時はやりすぎたからなぁ。でも、今これを使わないでいつ使う?)
戸惑いはあったが、今はやるしかない。ファイズアクセルを装着、そしてミッション
メモリを換装すると胸部のフルメタルラングが展開しファイズはアクセルフォームへと
二段変身を遂げた。
『Start Up』
電子音声とともに銀色の閃光が地を駆ける。目にもとまらぬスピードでアクアラングマン
達に一撃を加えていくファイズ。残り時間のカウントはまだ余裕がある。となれば、
目指す相手はただ一人。必殺の一撃を放つために身構えるファイズ。ファイズポインター
を足に装着するその姿さえ肉眼ではまず捉えられない程の早さだ。
「何?一体何だアレは?」
ファイズの標的はシャドウナイト。そのスピードは彼の目をもってしても、かろうじて
捉える事が出来る程度なのだ。高速移動、そして破壊力の倍加。
アクセルフォームと化したファイズの攻撃をまともに食らえばシャドウナイトとてタダ
では済まない。
「はぁぁぁっ!!」
跳躍するファイズの姿がようやく空中で発見できた時、すでにその蹴り足から放たれた
円錐状の赤い光がシャドウナイトを捉えていた。
「ぐっ・・・まさか!!」
もはやシャドウナイトに逃れる術はない、そう思われたその時。突如どこからともなく
延びてきた、まるでムカデの様な鞭がシャドウナイトの身体に巻き付くとそのまま彼を
大きく空中へと放り投げた。そしてアクセルフォームのファイズはその突然の出来事に
よって攻撃目標を見失い、必殺のクリムゾンスマッシュは不発に終った。その蹴り足が
埠頭のコンクリートを穿つ。巻き起こる土煙と衝撃波が周囲に走り、巻き込まれた
アクアラングマンの一団が次々と爆発していく。かくしてひとみとまいの活躍、そして
ファイズの必殺の一撃によってアクアラングマン部隊は壊滅したが、シャドウナイトを
救った者ははたして誰なのか。
『所詮ロボットはロボット・・・ギアに手を出すのはやめておいた方が身のため
ですよ?』
巻き起こった土煙が収まった頃、不敵な言葉と共に姿を現したのはムカデの姿を
持つ異形の者。琢磨逸郎が化身するオルフェノク、センチピードオルフェノクだ。
思わぬ形で危機を救われたシャドウナイトだったが、オルフェノクは反目している
相手である。当然ながら恩義など感じるはずはない。
「貸しを作ったつもりか?!俺の力でもどうにかなったものを!」
『まぁ、そう言う事にしておいてあげますよ。それより・・・』
そう言いかけてセンチピードオルフェノクはファイズの方を見る。ちょうどその時
アクセルフォームのタイムアウトが訪れ、その姿が元に戻った瞬間だった。
『ボーっとしている暇はないんじゃないですかねぇ?!』
言うやいなやセンチピードオルフェノクはまたも鞭を振るい、その一撃は的確に
ファイズのベルトを狙い、これをたたき落とす。
「うぁっ!!」
強制的にベルトを脱着された事でその身体は閃光に包まれ、光の収束と共に
倒れ伏した一人の少女だけを残した。
「手間を取らせてくれるお嬢さんだ・・・」
人間の姿に戻った琢磨の手がベルトに伸びようとしたその時、今度はダブルライダー
が駆けつけて立ちはだかる。
「それをもって何処へ行くつもりや?」
「悪い事は言わないれす、おいて行きなさい!!」
身構える二人の戦士を前にしてさしもの琢磨も状況不利と見たか、一言悪態を
ついて踵を返す。
「そのベルトはもうしばらくあなた達に・・・預けておきます」
余裕の口ぶり、しかし引きつった口元には悔しさがにじむ。あと一歩のところで
ベルト強奪に成功するところだったのだが、今回は退却せざるを得ないと悟った
琢磨はシャドウナイトと共に戦線を離脱した。