突如地中から姿を現したゼティマの改造人間、そして彼に率いられた戦闘員達。
彼らは本来ならば、ダブルライダーと同様に埠頭へと赴き仮面ライダー達と戦う
ことを主たる任務としていた部隊である。だが、思いがけず彼らは標的である
仮面ライダー、それも名だたるダブルライダーと遭遇したのだ。行きがけの駄賃と
言うには、あまりにも大きな標的である。それを狙うは、ヨロイ元帥の懐刀とも
言うべきザリガーナ。
「仮面ライダーだけかと思ったら裏切り者とFBIの犬も一緒か。地獄の道づれは
多い方がよかろうて・・・やれ!」
ザリガーナの号令のもと、軍団は一斉にダブルライダーと貴子達に襲いかかる。
敵は己が野望のためならば女子供とて容赦のない地獄の軍団である。だが、4人は
決して怯まない。ダブルライダーが前を固め、そして貴子がアヤカを庇うようにして
身構えると寄せ来る敵を次々と叩きのめしていく。
「とうっ!」
「とうっ!!」
岩をも砕く鉄拳が敵の顔面を捉える。ぶちのめされた戦闘員は二回三回と回転して
宙を舞いたたき落とされ、また稲妻のような蹴りは敵を大きく吹き飛ばす。
例え敵が武器を持っていたとしても、ダブルライダーの敵ではない。敵の
振り下ろした一撃をライダーののがブロックすると、自慢の手槍はまるで飴の
様に折れ曲がる有様だ。また敵が剣を振るえばクウガは華麗に身をかわし、
当て身を入れて投げ飛ばす。一方では貴子も奮戦して襲い来る戦闘員を叩き伏せ、
あっという間に戦闘員達は3人の手によって倒されてしまっていた。
「ぐぬううう、こうなったら俺が相手だ。来い、ライダー!」
「いくぞ!」
鋭いハサミを突きつけて見得を切ると、ザリガーナはダブルライダーに向かって
駆けだした。まずはライダーののが受けて立ち、襲い来るザリガーナの一撃を
捌いてパンチを繰り出す。だが、その一撃が怪人のボディを捉えても敵は怯む
様子もない。
「俺様の身体にその程度のパンチが効くとでも思ったか」
「しょんな・・・なんて固い身体なんれしょう」
ヨロイ軍団のトレードマークとも言うべき、体表の頑強さもさすがはザリガーナ
他の軍団員を圧倒する強度を誇っているようだ。ライダーのののパンチが通じて
いない。さらにライダーののは攻撃を繰り出すが、やはりその固い身体の前に
歯が立たない状態だ。
「・・・気が済むまでやってみろ。俺には効かんがな」
ライダーののの攻撃が通じない。二人の戦いに割り込めないままその様子を
見つめているクウガ〜亜依。と、その時彼女の脳裏によぎったのはまたしても
古代の戦士の姿。それは霊石アマダムの記憶。先史時代を戦い抜いた、
先代クウガの戦いの記憶だった。
イメージは告げる。クウガの前に現れたのは、鋼のような肉体を誇る異形の者
だった。敵の肉体の前にクウガの攻撃が通じない。と、その時クウガの身体に
異変が起きた。光に包まれたその直後、再び現れたその姿は紛れもなくクウガで
あったが、古代のプロテクターとも言うべき生体鎧の色は彼女の知る金色と赤
ではなく銀色と紫色をしており、そしてその身体には変化が起きる前よりも圧倒的
な力強さが漲っている。そして、その手に握られているのは光り輝く大剣だった。
『邪悪なる者あらば鋼の鎧を身につけ、地割れの如く邪悪を切り裂く戦士あり』
霊石の告げる古の伝承。超変身の時が来た。
今日の分は以上です。続きはまた明日。
「超変身!」
構えと共に天に叫ぶクウガ。その身体を包み込む閃光がほとばしる。その
あまりのまぶしさに怯むザリガーナ。
「ううっ!」
無二の親友である亜依のもう一つの姿、仮面ライダークウガ。ライダーのの
こと希美はその光景を固唾をのんで見守っていた。
(あいぼん・・・)
光の収束と共に姿を見せたのは、紫色の生体鎧で身を固めた戦士。クウガの
新しい力、「タイタンフォーム」だ。タイタンフォームはスピードこそ通常の
マイティフォームに劣るものの、そのパワーと耐久力は数倍になるのである。
「・・・何かと思えば、姿が多少変わったくらいで何だというのだ。それ
しきのことで俺に勝てると思うのか」
クウガの変化に一瞬たじろいだザリガーナだったが、彼はまだクウガの身に
起きた変化を感じ取れているはずはなく、その戦意は少しも衰えてはいない。
それどころかこの台詞である。拳を握りしめたライダーののが前に歩み出て
再びザリガーナと一戦交えようとするが、クウガがそれを制する。そして
傍らに落ちていた戦闘員の剣を拾い上げた。すると、それは見る間に光輝く
大剣「タイタンソード」へと姿を変えた。まさにイメージのままの光景だ。
しかし、それだけではない。ZXとの戦いの時のように、刀身にほとばしるのは
あの金色の稲妻、ライジングパワーだ。
「なっ?!」
ハサミをかざして身構えるザリガーナに対して、タイタンフォームのクウガ
はゆっくりと歩み寄る。全くの無防備状態に、この機を逃すまいとザリガーナ
は一気に間合いを詰めて襲いかかる。
「バカが、死にに来たか!これでも喰らえ!」
巨大なハサミがクウガの頭部を捉えんばかりに振り下ろされるが、この攻撃を
タイタンソードでがっちりと受け止める。これに対してザリガーナはさらに
体重を掛けて圧力を加えていくが、クウガはこの攻撃を真っ正面から受け止めて
微動だにしない。
「まさか!!あり得ん」
「どうしたん?もっと押してみ?」
ザリガーナの猛攻にも余裕の表情といった風のクウガ。倍加した防御力とパワー
で、怪人の攻撃をほとんど無効化している。しかしクウガも押されっぱなしと
言うわけにはいかない。漲る力でザリガーナのハサミを押し返すと、そのまま
体をかわしてザリガーナの後ろを取る。
「何ぃっ!!」
狼狽する怪人の背中を、クウガのタイタンソードが襲う。ザリガーナの背中に
張り付いた巨大な甲羅を一太刀ではぎ取る。さらにそのままなすすべ無く
身を翻すだけのザリガーナを返す刀で一息に刺し貫く必殺の一撃。タイタン
フォームの必殺技「カラミティタイタン」が炸裂したのだ。
「グワァァッ!!」
敵の土手っ腹を刺し貫く剣からほとばしるライジングパワー。クウガが勢いよく
刀身を引き抜くと、ザリガーナの腹部から火花が飛び散る。ライジングパワーが
怪人のボディを内部から破壊しているのだろう。と、その時ザリガーナの姿がまるで
陽炎のように揺らぐと、一瞬だけ赤銅の鎧に身を包んだ男の姿へと変化した。
「まさか、あの怪人は・・・!」
その光景を目撃したアヤカが叫ぶ。一瞬だけかいま見えたその姿は、彼女たちが
憎むある男の姿に酷似していた。だが、ザリガーナの姿が変化したのはその一瞬で
再びその姿は元のザリガニの怪人へと戻った。
「クソッ・・・勝負は預けた!!」
敵わぬとみたザリガーナは、死力を振り絞ってものすごい勢いでアスファルトを
ハサミで掘り返すとあっという間に地中に姿を消す。基地に逃げ帰って修理を受ける
つもりなのだろう。立ちこめる土煙の中ライダーののの声が聞こえる。
「あいぼん、敵が!!」
「判ってる!」
ザリガーナが遁走を決めもうとしていたのはクウガにも判っていた。おもむろに
タイタンソードを構えたクウガは、足下に伝わる地響きの方向を超感覚で感知すると
そのまま大上段に振り上げ、渾身の力で振り下ろした。タイタンソードの一降りが
うなりを上げて大地を砕く。その衝撃波は地中を逃走するザリガーナを追うかのように
伝搬し、そして遂に敵の姿を捉え地中で一刀のもとに両断した。
「グッ・・・グワァァァァ!!」
遙か前方から吹き上がる土煙。ライジングパワーが逃げる怪人を地中で完全に破壊し、
ザリガーナが再び地上にその姿を現すことはなかった。
× ザリガーナが遁走を決めもうと
○ ザリガーナが遁走を決め込もうと
です。失礼いたしました。続きはまた。